昭和57(行ウ)2 所有権移転仮登記回復登記手続等請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和62年3月20日 名古屋地方裁判所 住民訴訟
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【DRY-RUN】- 1 - ○ 主文 一 原告らの被告A、同Bに対する訴えを、却下する。 二 原告らの被告Cに対する請求を、いずれも棄却する。 三 訴訟費用のうち参加によつて生じた部分は補助参加人らの負担とし、その余

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判決文本文19,726 文字)

- 1 - ○ 主文 一 原告らの被告A、同Bに対する訴えを、却下する。 二 原告らの被告Cに対する請求を、いずれも棄却する。 三 訴訟費用のうち参加によつて生じた部分は補助参加人らの負担とし、その余は原告ら の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求める裁判 一 原告ら 1 被告Cは、扶桑町に対し、別紙物件目録(一)記載の土地につき昭和四五年四月一八 日売買を原因とする名古屋法務局犬山出張所昭和五二年三月一四日受付第三四五〇号の、 同目録(二)記載の土地につき同出張所同日受付第三四五一号の、同目録(三)記載の土 地につき同出張所同日受付第三四五二号の、各所有権移転仮登記の抹消回復登記手続をせ よ。 2 被告らは、扶桑町に対し、連帯して金一三一五万五〇〇〇円を支払え。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 仮執行宣言 二 被告ら 1 被告A、被告Bの本案前の申立て (一) 被告A、被告Bに対する訴えを却下する。 (二) 訴訟費用は原告らの負担とする。 2 被告らの本案の答弁 (一) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (二) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第二 当事者の主張 一 原告らの請求原因 1 原告ら及び補助参加人らは扶桑町の住民である。 2 被告Aは昭和四五年当時、被告Bは昭和五六年当時、いずれも扶桑町の町長の職にあ つた者、被告Cは昭和四五年当時、扶桑町の町会議員の職にあつた者である。 3 被告Cは、昭和四五年四月一八日、扶桑町との間で、同人所有の別紙物件目録(一) ないし(三)記載の各土地(以下「本件土地」という)を同町に売り渡す旨の売買契 、 。 約 (以下「本件売買契約」という)を締結し、同日、同町から代金四四二.万五〇〇〇 、 。 円 を受領した。 4 扶桑町は、右売買を原因として、別紙物件目録(一)記載の土地につき名古屋法務局 犬山出張所昭和五二年三月 件売買契約」という)を締結し、同日、同町から代金四四二.万五〇〇〇 、 。 円 を受領した。 4 扶桑町は、右売買を原因として、別紙物件目録(一)記載の土地につき名古屋法務局 犬山出張所昭和五二年三月一四日受付第三四五〇号の、同目録(二)記載の土地につき同 出張所同日受付第三四五一号の、同目録(三)記載の土地につき同出張所同日受付第三四 五二号の、各所有権移転仮登記(以下「本件各仮登記」という)手続を了した。 、 。 5 しかるに、扶桑町は被告Cとの間で、 昭和五六年三月二五日、本件売買契約を解除(以下「本件解除」という)し、同日、 、 。 - 2 - 被 告Cから前記売買代金四四二万五〇〇〇円の返済を受け、本件土地につき、前記出張所同 月二七日受付第四八七六ないし四八七八号をもつて、右解除を原因とする本件各仮登記の 抹消登記手続を了した。 6 しかしながら、本件解除は、次の理由により違法、無効である。 (一) 本件解除が行われるに至つた経緯は次のとおりである。 すなわち、扶桑町は、愛知県道愛岐大橋線(以下、単に「愛岐大橋線」という)の造成 。 を 円滑に進める目的のもとに、右道路予定敷地の買収に伴う代替地を先行的に取得すること とし、右代替地の一つとして、被告Cから本件売買契約により本件土地を取得したもので あるが、その後、被告Cが扶桑町に対し、愛知県による扶桑町<地名略>地内の愛岐大橋 線の用地買収単価が決まつたら、その買収単価を基準に算定」た本件土地の代金額と、同 人が本件土地代金として既に受領している前記金員との差額分の追加払いをするように要 求してきた。しかしながら、同町としては、被告Cが受領した前記売買代金額は本件売買 契約締結当時の本件土地の時価相当額であり、追加払いを認める特約条項も契約書面上規 定されていないことなどからして、同人の右要求に応ずることは不可 同町としては、被告Cが受領した前記売買代金額は本件売買 契約締結当時の本件土地の時価相当額であり、追加払いを認める特約条項も契約書面上規 定されていないことなどからして、同人の右要求に応ずることは不可能であると判断した が、反面、同町が行政責任を負つている愛岐大橋線の事業の進捗について、決定的な力を 持つ被告Cの右追加払いの要求を単にはねつけることは得策ではないと考え、同人の無法 な要求に対し、これを「政治的に判断」して、本件売買契約を解除することにしたのであ る。 このような経緯で、被告Cの無法な、悪しき意図に屈服してなされた本件解除は、それが 合意解除であるとしても、公序良俗に反し、民法九〇条により無効なものというべきであ る。 (二) 扶桑町は、本件売買契約により、本件土地の所有権を取得したものであり、本件 土地は同町の公有財産となつた。このことは、扶桑町が被告Cに対し、売買代金を支払つ ていること、本件土地が昭和四四年度の同町の決算書類の中に「公用地取得状況」名下に 「高木地区・・・」として記載され、また、昭和四五年度の同町の財産調書の中に同町の 「土地取得特別会計財産」として「愛岐大橋線公用地」名下に記載されていること、 本件売買契約締結時から約七年後にわざわざ本件各仮登記手続が行われたことなどからも 明らかである。 右のとおり、本件土地は、地方自治法二三七条一項、二三八条所定の扶桑町の公有財産で あるから、同町は、同法二三七条二項の規定により条例又は議会の議決による場合でなけ 、 、 。 れば被告Cに対し適正な対価なくして所有権を復帰させることは許されないのである 同人が受領した代金額で本件売買契約を解除することは、対価の適正を著しく欠く公有財 産の処分であり、右条項に違反する。したがつて、本件解除は、違法、無効である。 (三) 本件売買契約は公共の利益を目的と 同人が受領した代金額で本件売買契約を解除することは、対価の適正を著しく欠く公有財 産の処分であり、右条項に違反する。したがつて、本件解除は、違法、無効である。 (三) 本件売買契約は公共の利益を目的として締結されたものであり、私的解除を許さ ないものである。 愛岐大橋線は、扶桑町においても、本件土地の所在する高木、斉藤地区内を除いて、ほぼ 完成、開通している県道であり、将来は国道となる重要道路である。愛岐大橋線の造成事 業の進捗が遅れている主要な原因は、道路予定敷地の買収が容易に進まないからであり、 - 3 - 進まないのは、右道路敷地の被買収者が代替地を要求するからである。そこで、右道路敷 用地買収を円滑に進めるために、扶桑町が、右代替地(農地・畑)を先行取得することと し、その一つとして本件売買契約も締結されるに至つたのであり、その取得目的は、公共 。 、 、 、 の利益を実現するためであつたまた扶桑町は公用若しくは公共用に供する土地又は 公共の利益のために取得する必要がある土地を予め取得することにより、事業の円滑な執 、 ( 、 ) 、 行を図るため 扶桑町土地開発基金条例 昭和四四年一〇月六日 条例第五号 を制定し 同町土地開発基金を設置するとともに、右用地先行取得事業に係る歳入歳出を経理し、同 町による土地の取得の円滑化を図るために、扶桑町土地取得特別会計条例(昭和四四年一 〇月六日、条例第六号)を制定し、土地取得特別会計を設置しているのであるが、被告C 、 、 に対して支払われた本件売買代金も右基金及び右特別会計から支出されているのであり 、 、「 」 この点からも 同町による本件土地の取得が 公共の利益のために取得する必要のある 場合であることが明らかである。このように、本件土地は、公共的目的のために取得され 、 、 、 たものであり右公共的目的は愛岐大橋線の 同町による本件土地の取得が 公共の利益のために取得する必要のある 場合であることが明らかである。このように、本件土地は、公共的目的のために取得され 、 、 、 たものであり右公共的目的は愛岐大橋線の造成が未だ進捗していない現状からすると 現時点においても存続しているものというべきである。この公共的目的性は、 本件売買契約及びその解除を規制するものというべきであり、右公共的目的の喪失、変更 がないのにされた本件解除は、違法、無効である。 7 仮に、本件解除が有効であり、本件土地の所有権が被告Cに復帰したとしても、本件 解除は前項記載のとおり違法なものであるから、原告らは、予備的に、被告らに対し、違 法な本件解除により扶桑町が被つた損害の賠償を求める。 すなわち、右解除当時の本件土地の時価は一七五八万円を下ることはないから、右違法な 解除により、扶桑町は、少なくとも、本件土地の右時価相当額と被告Cが同町に返還した 前記代金額四四二万五〇〇〇円との差額一三一五万五〇〇〇円の損害を被つたものである ところ、被告Bは、右違法な本件解除がなされた当時の町長であり、被告Cはその相手方 であつて、いずれも本件解除の当事者であるから、同町が被つた右損害を賠償すべき義務 がある。また、被告Bは、本件売買契約につき、被告Cが受領した前記代金を本件売買代 金の内金であると力説し、この内金であることを本件解除の正当理由、根拠としてきたも のであるが、これは、扶桑町が本件売買契約を締結した当時の町長であつた被告Aの見解 を踏襲したものであり、このような種類の売買契約を締結した被告Aも右賠償の責任を免 れ得ない。 したがつて、被告らは、連帯して、右損害を賠償すべき義務がある。 8 原告D、同Eは、昭和五七年二月一日、扶桑町監査委員に対し、地方自治法二四二条 一項に基づき、以上のような趣旨の監査請求をし 得ない。 したがつて、被告らは、連帯して、右損害を賠償すべき義務がある。 8 原告D、同Eは、昭和五七年二月一日、扶桑町監査委員に対し、地方自治法二四二条 一項に基づき、以上のような趣旨の監査請求をしたが、右監査委員は、同年三月二九日付 で右原告らの請求に理由がないとする趣旨の監査結果を右原告らに通知した。 、 、 、 、 9 よつて原告らは地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき扶桑町に代位して 主位的には、被告Cに対し、同町に本件各仮登記の回復登記手続を行うことを、予備的に は、被告らに対し、連帯して金一三一五万五〇〇〇円を同町に支払うべきことを求める。 二 被告A、同Bの本案前の主張 1 被告A、同Bに対する本訴請求は、原告らも自認するとおり、被告Cに対する本件各 仮登記の回復登記手続請求が効を奏せず、本件土地の所有権を扶桑町に復帰させることが 。 、 、 、 できなかつた場合の予備的な請求であるしたがつて被告A 同Bに対する本件訴えは - 4 - 主観的予備的併合の訴えとなるから、不適法であり、 却下されるべきである。 2 原告らは、本件訴えを地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき提起しているが、 同号によつて損害の賠償を求め得る相手方は、当該職員及びその行為の相手方である。し かるに、被告Aは、右当該職員にも、また、右相手方にも該当しない。したがつて、被告 Aに対する訴えは、住民訴訟の要件を欠くものであり、却下されるべきである。 三 被告A、同Bの本案前の主張に対する原告らの反論 主観的予備的併合の訴えが不適法とされる理由は、予備的被告とされた者が、不当に不安 と不利益とを強いられるからである。それ故、諸般の事情により、請求が主観的予備的に 併合されても被告が不当に不利益を受けず、不安定な立場に置かれてもやむを得ないと認 められる場合には、右併合は許されると解す 利益とを強いられるからである。それ故、諸般の事情により、請求が主観的予備的に 併合されても被告が不当に不利益を受けず、不安定な立場に置かれてもやむを得ないと認 められる場合には、右併合は許されると解すべきである。特に、本件訴訟の如く行政訴訟 である住民訴訟の場合は、出訴期間の制限があり、主観的予備的請求の可否につき否定説 を採つた場合には、結局において、原告らの救済の道を閉ざすことに帰し、原告らの不利 益は耐え難いものになる。これに対し、被告B、同Aは、本件の主位的請求の争点である 本件解除行為に直接かかわつた当事者であり、最高責任者であつて、予備的被告とされて も不当に不利益を受けるものとはいえない。 したがつて、本件主観的予備的併合の訴えは適法とされるべきである。 四 請求原因に対する被告らの認否 1 請求原因1、2の各事実は認める。 2 請求原因3のうち、被告Cと扶桑町との間の契約が単なる売買契約であつたこと、及 び売買代金が四四二万五〇〇〇円であつたことを否認に、その余の事実は認める。 右契約は、売買予約契約ないし本件土地を代替地として希望する被買収者が現れ、かつ、 、 、 、 農地法上の許可があることを条件とする売買契約でありまた被告Cが受領した金員は 売買代金の全額ではなく、その内金である。 3 請求原因4、5の各事実は認める。なお、同5のうち、本件解除は前項の趣旨、内容 、 、 。 の契約の合意解除であり被告Cが扶桑町に返還した金員は売買代金の前記内金である 4 請求原因6の冒頭の主張は否認する。 同6(一)は、扶桑町が、愛岐大橋線の造成を円滑に進める目的のもとに、右道路予定敷 地の買収に伴う代替地を確保しておくために、前記の内容の契約を締結したことは認め、 その余は否認する。 同6(二)は否認する。 同6(三)については、被告Cはすべて不知ないし否認、被告B 、右道路予定敷 地の買収に伴う代替地を確保しておくために、前記の内容の契約を締結したことは認め、 その余は否認する。 同6(二)は否認する。 同6(三)については、被告Cはすべて不知ないし否認、被告B、同Aは、原告ら主張の 各条例が制定されたこと、本件売買代金の内金が右各条例により設置された基金及び特別 会計から支出されたものであることは認め、その余は否認する。 5 請求原因7は否認する。 6 請求原因8は認める。 7 請求原因9は争う。 五 被告らの主張 1 本件売買契約について 被告Cと扶桑町との間において、昭和四五年四月一八日、被告C所有の本件土地について - 5 - 売買に関する契約を締結したが、右売買は、将来、敷設される愛岐大橋線の用地買収に伴 う代替地を扶桑町において予め確保しておき、愛知県が行う用地買収についての協力を扶 桑町が求められた場合、その買収事務が円滑に行われることを目的になされたもので、扶 桑町には本件土地を占有、使用する目的はなかつた。したがつて、右契約においては、売 買代金は<地名略>地内(本件土地の所在地内)の愛岐大橋線の用地買収単価が決定した とき、その畑地の単価で算出した額を売買代金と決定すること、本件土地の所有権移転時 期は所有権移転登記時とし、占有移転時期は愛岐大橋線の用地買収単価が決定し、右用地 の被買収者が決定し、その被買収者が本件土地を買収土地の代替地として希望し、それが 確定した時とすることが約されていたのである。右契約を解除した時点では、扶桑酊は未 だ本件土地の所有権移転登記を受けておらず、また、本件土地を代替地として引渡すべき 相手方も決定していなかつたのであるから、右解除の時点では、本件土地の所有権も占有 も、被告Cにあり、扶桑町に移転していなかつたことは、右契約内容に照らし明らかであ る。 本件土地は、地目、現況ともに 相手方も決定していなかつたのであるから、右解除の時点では、本件土地の所有権も占有 も、被告Cにあり、扶桑町に移転していなかつたことは、右契約内容に照らし明らかであ る。 本件土地は、地目、現況ともに農地であるため、扶桑町といえども、省令で定められてい る場合を除くの外、農地を取得しようとするには農地法所定の愛知県知事の許可を必要と するが、本件の場合は、右許可手続はとられていないしその意思もなかつた。それは、前 記のとおり、扶桑町が本件契約を締結した目的が、愛岐大橋線の用地の被買収者のための 代替地を確保しておくことにあり、他に使用の目的はなく、所有権まで扶桑町に移転して おく必要がなかつたからである。その意味で本件土地についての右契約の法的性質は、本 件土地を代替地として希望する被買収者が現れ、かつ、 農地法の許可のあることを条件とする売買契約ないしは売買予約契約である。 また、扶桑町は、昭和四五年四月一八日、被告Cに対し、金四四二万五〇〇〇円を支払つ 、 、 、 、 ているが 右時点では愛岐大橋線の用地買収単価が未だ決定されておらずしたがつて 本件土地の売買代金も確定していなかつたのであるから、右金員の支払いは、売買代金の 内金として支払われたことも、右契約内容に照らし明らかである。 右金員の支払いは、扶桑町土地取得特別会計条例に基づく土地取得特別会計より支出され ているが、本件土地の売買契約の目的は、あくまでも代替地の確保であり、扶桑町の公用 若しくは公共用の土地として先行取得したものではない。 また、扶桑町は、右売買残代金について、町議会の右債務負担行為についての議決を得て いないが、右議決を得なかつた理由は次のとおりである。すなわち、扶桑町は、本件土地 を代替地として希望する被買収者に対し、被告Cとの間の本件売買契約によつて決定され た売買代金と同額で被買収者に を得て いないが、右議決を得なかつた理由は次のとおりである。すなわち、扶桑町は、本件土地 を代替地として希望する被買収者に対し、被告Cとの間の本件売買契約によつて決定され た売買代金と同額で被買収者に本件土地を売却するので、同町が被告Cに支払うべき残代 金は、被買収者から(事実上は、愛知県から)同町が支払いを受ける売買代金によつて賄 うことができ、事実上、扶桑町が債務を負担することにはならないことから、右債務負担 行為の手続をとらなかつたのである。したがつて、債務負担行為の手続をとらなかつたか らといつて、扶桑町が被告Cに対し支払つた前記金員が、売買代金の全額であるとはいえ ない。 2 本件解除の適法性について (一) 本件解除は、被告Cと扶桑町と間の合意による解除であつて、何ら違法な点はな い。 - 6 - (二) 原告らは、本件解除が地方自治法二三七条二項に違反する旨主張するが、右主張 は、次の理由により、失当である。 (1) 本件解除は、合意による契約の解除であつて、普通地方公共団体の所有に属する 財産の譲渡に該当しないので、右条項は、本件解除には適用がない。 (2) 前記のとおり、本件売買契約により、扶桑町は、本件解除の時点において、本件 土地の所有権を未だ取得していないのであるから、本件土地が同町の公有財産であること を前提とする原告らの主張は理由がない。 (三) 原告らは、本件売買契約は公共の利益を目的として締結されたものであり、右公 共目的の喪失、変更がないのにされた本件解除(私的な合意解除)は違法、無効である旨 主張する。 しかしながら、右主張も、次の理由により失当である。 (1) 原告ら主張の公共的目的性の故に私的な解除が制限されるとする根拠はない。 (2) 前記のとおり、本件土地は扶桑町自身が公用若しくは公共用の土地として利用す るために先行取得したもの 失当である。 (1) 原告ら主張の公共的目的性の故に私的な解除が制限されるとする根拠はない。 (2) 前記のとおり、本件土地は扶桑町自身が公用若しくは公共用の土地として利用す るために先行取得したものではないし、その目的からすれば、もともと、本件土地の所有 。 、 、 権を扶桑町が取得するまでの必要性もなかつたものであるまた本件解除の条件として 被告Cは、解除後においても、本件売買契約の趣旨を尊重し、必要あるときは本件土地を 愛岐大橋線の代替用地として提供しなければならないことになつているのであるから、本 件解除は、何ら右公共目的性に反しない。 (三) 前記のとおり、本件売買契約によれば、被買収者において本件土地を被買収地の 代替地として希望したときに、扶桑町は愛知県の用地買収単価でもつて本件売買代金額を 確定し、同町は右代金を被告Cに支払つて本件土地の所有権を取得し、同額の売買代金で もつて被買収者に対し本件土地を売却しなければならないことになつているのであるか ら、 右各売買契約によつて、同町は一銭の利得も得られないのである。したがつて、扶桑町と しては、既払の前記内金全額の返済を受けて合意解除しても、何ら損失を受けたものとは いえない。 六 被告らの主張に対する原告らの認否 被告らの主張1は、本件売買契約締結の目的が被告ら主張のとおりであること及び本件売 、 。 買代金の支払いが土地取得特別会計によりなされたことは認めその余は否認ないし争う 被告らの主張2は、本件解除が合意による解除であることは認め、その余は否認ないし争 う。 第三 証拠関係(省略) ○ 理由 一 被告A、同Bの本案前の申立てについて 原告らの被告A、同Bに対する請求は、被告Cに対する請求との関係で予備的なものであ つて、本訴は、いわゆる訴えの主観的予備的併合であることは、原告らの自認するところ であ 、同Bの本案前の申立てについて 原告らの被告A、同Bに対する請求は、被告Cに対する請求との関係で予備的なものであ つて、本訴は、いわゆる訴えの主観的予備的併合であることは、原告らの自認するところ である。 民事訴訟においては、右主観的予備的併合は、予備的請求の被告とされる者が応訴上、著 しく不安定、不利益な地位に置かれ、原告の保護に偏することになることから不適法と解 するのが相当であり(最高裁判所昭和四三年三月八日第二小法廷判決、民集二二巻三号五 - 7 - 五一頁、行政訴訟においても、右主観的予備的併合は、 ) 主位的請求の被告と予備的請求の被告とが国等の行政主体とその行政庁というような実質 的に一体とみることができるような関係にある場合には、例外的にこれが許容される余地 があるとしても、そうでない限り、不適法と解すべきところ、本件においては、主位的請 求の被告Cは、本件売買契約及び本件解除の相手方であり、予備的請求の被告Aは本件売 買契約当時の、同Bは、本件解除当時の、いずれも扶桑町の町長個人であつて、当事者の 実質的同一性を肯定する余地のない事案であるから、行政訴訟において例外的に主観的予 備的併合が許される場合に当たらないことは明らかである。 この点につき、原告らは、本件訴訟の如き住民訴訟においては出訴期間の制限があり、主 観的予備的請求の可否につき否定説を採つた場合には、結局において、原告らの救済の道 を閉ざすことに帰し、原告らの不利益は耐え難いものになるのに対し、被告B、同Aは、 本件の主位的請求の争点である本件解除行為に直接かかわつた当事者であり、最高責任者 であつて、予備的被告とされても不当に不利益を受けるものではないから、本件主観的予 備的併合の訴えは適法と解すべきである旨主張する。 しかしながら、本件主位的請求と予備的請求は、相互にいずれか一方の請求の判 つて、予備的被告とされても不当に不利益を受けるものではないから、本件主観的予 備的併合の訴えは適法と解すべきである旨主張する。 しかしながら、本件主位的請求と予備的請求は、相互にいずれか一方の請求の判断を待た なければ、他方の請求の判断をなし得ないといつた関係にはなく、同時、かつ、別個に判 断することが可能な請求であるから、このような関係にある右各請求を出訴期間内に別訴 、 、 、 として提起することを原告らに要求したとしても原告らに対しその救済の道を閉ざし 耐え難い不利益を強いるものとはいい難い、また、被告A、同Bが本件解除行為にかかわ つた当事者であり、最高責任者であつたとしても、右両名が本件予備的請求の被告とされ ることによつて、応訴上の不利益を受けることは明らかであり、また、右不利益を受忍し なければならないとする理由はない。 したがつて、原告らの右主張も理由がなく、結局、被告A、同Bに対する本件予備的請求 は不適法というべきであつて、これを却下せざるを得ない(なお、付言するに、仮に本件 において主観的予備的請求が許容される余地があるとしても、後記認定の事実関係からす れば、右請求が理由のないことは明らかである 。 。) 二 被告Cに対する請求について 1 請求原因1、2、4、5の各事実及び同6のうち、 扶桑町が愛岐大橋線の造成を円滑に進める目的のもとに、右道路予定敷地の買収に伴う代 替地を確保しておくために、被告Cとの間で、昭和四五年四月一八日、本件土地の売渡し に関する契約(以下「本件契約」という)を締結した事実は当事者間に争いがない。 、 。 2 そこで、まず、扶桑町と被告Cとの間で締結された本件契約の内容について、以下、 検討する(請求原因3。 ) 、 、、 、 成立に争いのない甲第五号証同第六号証の一 二同第七号証の一ないし三及び被告A 同B各本人尋問の結 桑町と被告Cとの間で締結された本件契約の内容について、以下、 検討する(請求原因3。 ) 、 、、 、 成立に争いのない甲第五号証同第六号証の一 二同第七号証の一ないし三及び被告A 同B各本人尋問の結果並びに前記争いのない事実によれば、以下の事実が認められる。 当時、扶桑町の町長であつた被告Aは、将来、愛知県が行う県道愛岐大橋線敷設のための 用地買収に協力しこれが円滑に行われることを目的として右用地買収に伴う代替地農 、 、 ( 地)を扶桑町において予め確保しておくため、昭和四五年四月一八日、本件土地(地目、 現況ともに農地であつた)の所有者である被告Cとの間で、本件土地の売買に関する本 。 件 - 8 - 契約を締結した。本件契約においては、扶桑町は、被告Cから同人所有の本件土地を、将 来愛知県が<地名略>地内の愛岐大橋線の用地買収単価を決定したとき、その畑地の単価 で算出した額をもつて本件土地の売買代金とし、右単価が決定され次第、被告Cの請求に 、 、 、 より扶桑町が右代金を支払うとの条件により買受けること本件土地の占有移転時期は 愛知県による愛岐大橋線の用地買収が行われ、右用地の被買収者が本件土地を買収土地の 代替地として希望し、扶桑町が右被買収者に本件土地を引渡すことを決定した時点とし、 本件土地の所有権移転登記手続がなされる前の公租公課その他の支出は被告Cの負担とす ること等が約された。 扶桑町は、本件契約を締結したその当日である昭和四五年四月一八日に、被告Cの請求に 応じて、同人に対し、本件契約に関して合計金四四二万五〇〇〇円を支払つたが、当時、 本件契約の当事者である被告A、同Cは、右記載の本件契約の内容からして、右金員は本 件土地の代金の全額ではなく、その内金であると考えており、前記の愛知県による用地買 収単価が将来決定した時点で、その畑地の単価で算出した である被告A、同Cは、右記載の本件契約の内容からして、右金員は本 件土地の代金の全額ではなく、その内金であると考えており、前記の愛知県による用地買 収単価が将来決定した時点で、その畑地の単価で算出した本件土地の価額と、 被告Cが既に受領している右金額との差額に相当する金員の追加支払いが被告Cに対し行 われる予定であつた(右支払額は本件契約当時の本件土地の時価にほぼ近い金額であつた が、当時、愛知県による愛岐大橋線敷設のための用地買収が、その一、二年後に行われる ものと関係者の間で予想されており、右用地買収単価により算出する本件土地の価額の方 が右支払額を幾分上廻ることが見込まれていた 。 。) 本件契約の内容が右のようなものであり、扶桑町が被告Cから本件土地を代替地として取 得するためには、代金の追加支払いが予定されていたのであるが、当時の同町長であつた 被告Aは、次のような見解から、予算上、右契約内容に即した同町議会の議決を経なかつ た。すなわち、扶桑町が本件契約を締結した目的は前記のとおり、愛知県の用地買収に協 力するためなのであるから、同町としては、本件土地の所有権を確定的に取得する必要は なく、右用地買収の過程で、被買収者が本件土地を代替地として希望した段階で、愛知県 に直接、被告Cから本件土地を前記買収単価で買い上げてもらう方法、あるいは、右被買 収者と被告Cとの間で、本件土地につき、右買収単価で算出した売買代金額で、直接、売 買契約を締結する方法により、右代替地提供の目的を果たすことが予定されているのであ り、右のいずれの場合であつても、被告Cは、愛知県ないし右被買収者から、本件契約で 定めた前記買収単価で算出した本件土地の代金を受領することができ、その場合に、扶桑 町としては、実質的にみて、何らの追加支出をする必要がなく、右代金の中から同町が被 告Cに対し支払 収者から、本件契約で 定めた前記買収単価で算出した本件土地の代金を受領することができ、その場合に、扶桑 町としては、実質的にみて、何らの追加支出をする必要がなく、右代金の中から同町が被 告Cに対し支払つた金額を回収することができるのであるから、前記議決を経るまでの必 要はないと、被告Aは考えていた。 本件土地の登記名義は、本件契約締結後も、被告C名義のままであつたが、昭和五二年に なつても、愛知県による用地買収の目処がつかなかつたので、扶桑町は、権利保全の目的 から、昭和五二年三月一四日、本件土地につき、原因を「昭和四五年四月一八日売買」と 。 、 、 、 する本件各仮登記手続を了した被告Cは本件契約締結後も 本件土地の占有を継続し その公租、公課も同人が負担した。 以上の事実が認められ、原告Dの供述中、右認定に反する部分は採用し難い。 右認定の事実関係によれば、本件契約は、その締結当時、 売買契約の重要な要素である売買代金額が具体的な金額でもつて特定しておらず、右代金 - 9 - 額は、将来、行われる予定の愛知県による用地買収の際の単価を基準に算出するものとさ れていたこと、扶桑町としては、愛知県による用地買収に協力し、その代替地を確保して おくために本件契約を締結したのであるが、その場合に、予め本件土地の所有権を確定的 に取得しておく必要はなかつたこと、本件契約締結後も、本件土地の登記名義は被告C名 義のままであり、被告Cが本件土地の占有を継続し、その公租、公課も本件契約の内容ど おり、同人が負担したこと、本件土地は地目、現況とも農地であるが、農地について所有 権を移動する場合には、原則として、売買契約等の成立前に都道府県知事ないし農業委員 会の許可を受けなければならず(農地法三条、五条、許可のない限り、売買契約等は完 ) 全 には効力を生ぜず(同法三条四項、五条二項、 場合には、原則として、売買契約等の成立前に都道府県知事ないし農業委員 会の許可を受けなければならず(農地法三条、五条、許可のない限り、売買契約等は完 ) 全 には効力を生ぜず(同法三条四項、五条二項、その所有権は買主に移転しないと解され ) て いるところ、本件契約締結の際に、右許可申請手続が行われた形跡はなく、また、本件は 、 、 右許可を要しない場合に該当しないことなどが明らかでありこれらの事実を総合すれば 本件契約の締結によつては、本件土地の所有権は扶桑町に移転せず、右所有権は依然とし て被告Cの許にあること、及び本件契約締結の当日に被告Cが同町から受領した前記金員 は、本件土地代金の全額ではなく、その内金であつたことが認められる。 この点に関し、原告らは、本件土地の所有権は、本件契約により扶桑町に移転したもので あり、右契約時に被告Cが受領した金員は、本件土地の売買代金の全額である旨主張し、 (1)被告Cが受領した右金員は、本件契約当時における本件土地の時価相当額であるこ と(2)本件契約において、内金払いを許容するような条項はないこと(3)代金の 、 、 追 加支払いが本件契約上予定されているのであれば、予算上、右債務負担行為についての町 議会の議決が必要であるのに、これがなされていないこと(4)被告Cに対する右金員 、 の 支払いが内金の支払いであるとすれば、これを前金払いないし概算払いと解さざるを得な いが、地方自治法、同法施行令上、本件のような場合にこれを許容する規定はないこと、 (5)同町が農地の所有権を取得し、所有権移転登記手続を行つた例があること等を右主 張の根拠としている。 しかしながら、右(1、 ) (2)の点についてみると、前記認定のとおり、被告Cの受領した金員が、本件契約当時 における本件土地の時価にほぼ近い金額であつたこと及び本件契約上、扶桑 張の根拠としている。 しかしながら、右(1、 ) (2)の点についてみると、前記認定のとおり、被告Cの受領した金員が、本件契約当時 における本件土地の時価にほぼ近い金額であつたこと及び本件契約上、扶桑町が代金確定 前に内金払いの義務を負担するような条項は存在しなかつたことは、原告ら指摘のとおり であるけれども、本件契約の内容は前記のとおりであり、右金員の支払いは、本件契約締 結の当日に行われたものであつて、その際、被告Cと扶桑町との間で、本件契約内容を修 正し、右金員の支払いをもつて、本件土地の売買代金全額の支払いとする旨の特段の合意 、 、 、 ( )、 が成立したものとは 前記認定の事実関係に照らし 認め難いものである以上 右 1 (2)の点から、原告らの右主張を認めることはできない。次に、右(3 (4)の点 )、 に ついてみると、地方自治法上、普通地方公共団体が売買代金等を支払う場合には、支払う べき義務が確定した後に支払いをするのが原則であり(同法二三二条の四第二項、普通 ) - 10 - 地 、 、 方公共団体が支払うべき債務金額の確定前に概算をもつて支出するいわゆる概算払いは 一定の場合に例外的に許容されていること(同法施行令一六二条、また、債務金額が確 ) 定 している場合に行われる前金払いも、一定の場合に許容されているにすぎないこと(同法 施行令一六三条、本件において、扶桑町が被告Cに対してした前記金員の支払いは、同 ) 法 施行令が右概算払いないに前金払いを許容している場合に該当しないこと、代金の追加支 払いが本件契約上予定されているのであれば、予算上、右債務負担行為についての町議会 の議決が必要であるのに、これがなされていないことはいずれも原告らの指摘するとおり である。したがつて、当時の町長であつた被告Aが、本件契約締結の当日、被告Cの請求 、 、 務負担行為についての町議会 の議決が必要であるのに、これがなされていないことはいずれも原告らの指摘するとおり である。したがつて、当時の町長であつた被告Aが、本件契約締結の当日、被告Cの請求 、 、 、 、 に応じ前記金員の支出命令を発し これを支出するに至つたことは前記認定のとおり 、 、 ( ) 、 右時点においては 本件契約上 代金額 債務金額 が未だ不確定であつたのであるから 公金支出についての右関係法令に違反した疑いのある取扱いであつたといわざるを得ない (被告Aも、この点を十分検討しないで右金員を支出したことを自認する旨の供述をして いる 。しかしながら、被告Aのした前記金員の支出が、関係法令に違反した疑いがあ 。) る としても、本件契約の内容が前記のとおりである以上、そのことから、 右金員が本件土地代金の全額であると推認することができないのは当然である。また、そ の当否はともかくとして、被告Aが、右代金の追加支払いに関し、予算上、町議会の議決 を経なくてもよいと考えていたことは前記認定のとおりであるから、右議決のないことか ら、原告主張事実を推認することもできない。更に、右(5)の点についてみると、成立 に争いのない甲第二一ないし三二号証、同第三七、三八号証によれば、扶桑町が、その地 、 、 目が農地である土地について所有権移転登記手続を了している事実が認められるものの 右土地が、本件土地と同様、扶桑町が愛岐大橋線の用地買収に伴う代替用地として確保し たものであることを認めるに足りる証拠はなく、かえつて、成立に争いのない丙第一号証 の一、三、同第二号証の二、同第三、第五号証の各一、書き込み部分については弁論の全 趣旨により被告Cが作成にたものと認められ、その余の部分の成立については争いのない 丙第一号証の二、同第二号証の一、同第三号証の二、同第四号証の一、同 三、第五号証の各一、書き込み部分については弁論の全 趣旨により被告Cが作成にたものと認められ、その余の部分の成立については争いのない 丙第一号証の二、同第二号証の一、同第三号証の二、同第四号証の一、同第五号証の二、 原告D本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により、被告Cが、昭和六〇年頃、<地名略>の 土地の状況を撮影した写真であると認められる丙第三号証の三、同じく<地名略>の土地 の状況を撮影した写真であると認められる丙第四号証の二、同じく<地名略>及び<地名 略>の各土地付近の状況を撮影した写真であると認められる丙第五号証の三、四及び右原 告D本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、扶桑町が、その地目が農地の土地につ いて、同町への所有権移転登記手続を了している事例は、いずれも、同町が当該土地を同 町の上水水源地であるとか、児童遊園地等の同町自身の利用目的(公用若しくは公共用) のために取得したものであることが認められ、したがつて、農地法五条の許可が、例外的 に不要とされる場合(同条一項四号、同法施行規則七条六号)に該当することが窺えるこ と、また、成立に争いのない甲第九号証の一、同第一九号証の一、二、同第二〇号証の一 ないし三、同第三六号証によれば、本件土地と同様、扶桑町が愛岐大橋線の用地買収に伴 - 11 - う代替用地として確保した土地については、いずれも、同町の登記名義にはなつていない ことが認められる。したがつて、右(5)の点から、原告主張事実を肯認することもでき ない。 してみると、原告の右主張は、採用できないものといわざるを得ない。 3 次に、本件解除の適否について以下、検討する(請求原因6。 ) 前記のとおり、扶桑町は被告Cとの間で、昭和五六年三月二五日、本件契約を解除し、同 日、被告Cから、同人が受領していた代金四四二万五〇〇〇円の返済を受け、本件土地に て以下、検討する(請求原因6。 ) 前記のとおり、扶桑町は被告Cとの間で、昭和五六年三月二五日、本件契約を解除し、同 日、被告Cから、同人が受領していた代金四四二万五〇〇〇円の返済を受け、本件土地に つき、名古屋法務局犬山出張所同月二七日受付第四八七六ないし四八七八号をもつて、右 解除を原因とする本件各仮登記の抹消登記手続を了したことは当事者間に争いがない。 また、成立に争いのない乙第二号証及び被告B本人尋問の結果によれば、本件解除当時の 町長であつた、被告Bは、本件契約締結後、一〇年以上経過したのに、愛岐大橋線が着工 の運びとならず、用地買収も行われず、本件土地が買収用地の代替地となる目処も立たな いことから、この際、本件契約を解除し、被告Cに対し、本件契約代金の内金として支払 ( ) 、 、 つた前記金員四四二万五〇〇〇円 の返還を求めることとし 被告Cと話し合つた上で 昭和五六年三月二五日、本件契約を合意解除したこと、その際、被告Cは扶桑町に対し、 同人が本件契約の趣旨を尊重し、本件解除後においても、本件土地を愛岐大橋線の代替用 地として提供し、愛知県による用地買収単価により算出した金額で買収に応じ、今後も、 愛岐大橋線の速やかな開通に積極的に協力する旨を約したことが認められ、右認定を覆す に足りる証拠はない。 原告らは本件解除が違法、無効であるとし、その理由として、まず、扶桑町は本件売買契 約により被告Cから本件土地の所有権を取得したものであり、本件土地は同町の公有財産 となつたものであるのに、同人が受領した代金額と同額で本件契約を解除することは、対 価の適正を著しく欠く公有財産の処分であり、地方自治法二三七条二項に違反する旨主張 する(請求原因6(二 。しかしながら、前記認定のとおり、本件契約の締結によつて )) は、 本件土地の所有権は扶桑町に移転せず、右所有権 く公有財産の処分であり、地方自治法二三七条二項に違反する旨主張 する(請求原因6(二 。しかしながら、前記認定のとおり、本件契約の締結によつて )) は、 本件土地の所有権は扶桑町に移転せず、右所有権は依然として被告Cの許にあつたのであ り、本件土地が同町の所有に属し、公有財産になつたことを認めるに足りる証拠はないか ら、原告らの右主張は、その前提を欠くものというべく、したがつて、本件解除が右条項 に違反すると解する余地はない。 、 、 、 、 次に原告らは本件解除が被告Cの無法な悪しき意図に屈服してなされたものであり 公序良俗に反し、 民法九〇条により無効である旨主張する(請求原因6(一 。しかしながら、原告も主 )) 張 のような経緯、目的で本件解除がなされるに至つたとの事実を認めるに足りる証拠はない 上、仮に、原告ら主張のように、被告Cが扶桑町に対し、愛知県による<地名略>地内の 愛岐大橋線の用地買収単価が決まつたら、その買収単価を基準に算定した本件土地の代金 額と、同人が既に受領している前記金員との差額分の追加払いをするように要求したとし ても、本件契約内容が前記のようなものである以上、これをもつて無法な要求であるとは いい難く、同町が右要求に対し、本件解除をもつて応じたとしても、左記の諸点を考慮す ると、何ら公序良俗に違反する点はないものといわざるを得ない。すなわち(1)もと 、 - 12 - も と扶桑町が本件契約を締結した目的は、前記のとおり、愛知県が行う愛岐大橋線敷設のた めの用地買収に協力し、これが円滑に行われるようにするためだつたのであるから、右目 、 、 的からして扶桑町が本件土地の所有権を確定的に取得するまでの必要性はなかつたこと ( ) 、 、 2本件契約締結時から一〇年以上経過した本件解除時においても愛岐大橋線の着工 用地買収の目処は立つておらず 的からして扶桑町が本件土地の所有権を確定的に取得するまでの必要性はなかつたこと ( ) 、 、 2本件契約締結時から一〇年以上経過した本件解除時においても愛岐大橋線の着工 用地買収の目処は立つておらず、したがつて、その時点で本件契約所定の代金額が確定す る見込みはなかつたこと(3)前記のとおり、扶桑町が被告Cに対してした前記金員の 、 支 払いは、本件契約内容からすれば債務金額確定前かつ支払期限到来前の公金支出であり、 違法の疑いのあるものであつたが、これを、長期間にわたつてそのまま放置することは、 適当ではないこと(4)本件契約内容からすると、前記のとおり、扶桑町が被告Cに対 、 し てした前記金員の支払いをもつて、本件土地代金全額の支払いであるとして、同町が同人 、 、 に対し本件土地の所有権が同町に移転していると主張することはできないものと解され 同町が右所有権を確定的に取得するためには、本件契約上、愛知県による用地買収単価が 決定した時点で、これにより算定した本件土地代金額と前記金員との差額分の追加支払い をしなければならないことになるが、右追加支払いについては、本件契約締結の際、右債 務負担行為について、予算上、町議会の議決を経ていないので、これを行うことは、更に 違法な公金支出を重ねることになり、許されないこと(5)本件契約上、 、 扶桑町が前記金員の支払いにより本件土地の所有権を取得したものとは解し得ない以上、 、 、 、 これを解除しても同町には本件解除それ自体による損害は何ら生じないことすなわち 扶桑町は本件契約縞結の際、被告Cに対し、本件土地の時価にほぼ近い金額を支出してお きながら、それ以降も同人に本件土地を占有させ、一〇年以上経過した時点で、本件契約 を解除し、同人に対し、右支出金員のみの返還を求めることは、これを全体的にみると、 扶桑町が損害を被つ 金額を支出してお きながら、それ以降も同人に本件土地を占有させ、一〇年以上経過した時点で、本件契約 を解除し、同人に対し、右支出金員のみの返還を求めることは、これを全体的にみると、 扶桑町が損害を被つたものとみ得る余地があるが、それは、扶桑町が本件土地の時価にほ ぼ近い金額を支払つておきながら、右金員の支払いによつては、直ちに本件土地の所有権 が同町に移転しない旨の本件契約を締結したこと及び当時の町長であつた被告Aが、近々 のうちに右金員を回収できると即断して、代金額(債務金額)確定前かつ支払期限到来前 に右金員を支出したことにその原因があるのであり、本件解除によつて損害が生じたもの 、( ) 、 、 、 とはいえないこと 6 本件解除の際 扶桑町は被告Cに対し 本件解除後においても 本件契約の趣旨を尊重して本件土地を愛岐大橋線の代替用地として提供することを約束さ せていること等の諸点を考え併せると、本件解除には、原告ら主張の違法の点はないもの というべきである。 更に、原告らは、本件契約は公共の利益を目的として締結されたものであり、右公共的目 的性は私的解除を規制するものというべきであるから、右公共的目的の喪失、変更がない のにされた本件解除は違法、無効である旨主張する(請求原因6(三 。しかしながら、 )) 一般に、普通地方公共団体が契約を締結するに至つた、その公共的目的の喪失、変更がな い場合に、当該契約の合意解除をすることが許されず、その場合になされた当該合意解除 が違法、無効となるとの法理はない(地方自治法上、このような法理を窺わせるような規 定は見当たらない)上、前記の諸点に鑑みると、本件解除は、何ら公共的目的に反しな 。 - 13 - い ものとみるのが相当である。 してみると、本件解除につき、原告らの主張する違法事由は、いずれも、その理由がない ことは明らか 記の諸点に鑑みると、本件解除は、何ら公共的目的に反しな 。 - 13 - い ものとみるのが相当である。 してみると、本件解除につき、原告らの主張する違法事由は、いずれも、その理由がない ことは明らかである。 また、右認定、説示してきたところによれば、本件解除が違法であることを前提とする原 告らの本件予備的主張(請求原因7)もその理由がないことが明らかである。 三 以上の次第であり、原告らの被告A、同Bに対する訴えは不適法であるから、 、 、 、 これを却下し被告Cに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし 訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条一項本文、九四条後 段を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官 高橋利文 加藤幸雄 森脇淳一) 物件目録 (一) 丹羽郡<地名略> 畑 一五八平方メートル (二) 右同所<地名略> 畑 一六一平方メートル (三) 右同所<地名略> 畑 三七六平方メートル 右(一)ないし(三)の各土地に対する一時利用地 高木斉藤柏森工区仮地番三三一の三 畑 五八六平方メートル

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