主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,4933万2558円及びこれに対する平成19年7月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,福岡県鞍手郡宮田町(同町は平成18年2月11日の合併により被告である宮若市となった。)及び合併後の被告が実施する指名競争入札の参加資格を有する土木工事業者である原告が,宮田町において平成15年度から平成17年度まで,被告において合併後の平成18年2月11日から同年12月31日まで,それぞれが発注する公共工事の指名業者として原告を選定しなかったのは,町長あるいは市長としての裁量権を逸脱又は濫用したもので,違法であると主張して,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,逸失利益4713万2558円,信用毀損による損害200万円及び弁護士費用相当の損害20万円,並びにこれに対する上記違法行為後の本訴状送達日の翌日である平成19年7月18日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事件である。 1 前提事実(証拠を挙げない事実は,当事者間に争いがない。)(1)当事者等ア原告は,土木工事一式等を目的とする宮若市内に本店を定める有限会社であり,宮田町と被告における入札参加資格を有し,後記(5)のとおり,格付を受けてきた者である。 イ平成18年2月11日,宮田町は福岡県鞍手郡若宮町と合併し,被告である宮若市となった(以下,合併前の宮田町を「旧宮田町」,若宮町を 「旧若宮町」といい,旧宮田町と被告とを一括するときは「被告ら」という。)。 (2)指名競争入札に関する規定等 告である宮若市となった(以下,合併前の宮田町を「旧宮田町」,若宮町を 「旧若宮町」といい,旧宮田町と被告とを一括するときは「被告ら」という。)。 (2)指名競争入札に関する規定等ア旧宮田町は,昭和54年4月1日に「宮田町建設工事請負業者選定要綱」を制定し(以下「旧宮田町選定要綱」という。),これに基づき,一般競争入札,指名競争入札及び随意契約を実施してきた(B1)。 その要旨は以下のとおりである。 (ア)資格審査(3条)町長は前条の規定により,建設工事入札指名願申請書を提出した建設業者のうち,次の各号のいずれかに該当する者については,入札に参加する資格を与えないものとする。 a 宮田町建設工事請負契約に係る指名停止等措置要綱(平成4年宮田町告示第38号)の規定に基づき,現に指名停止措置を受けている者b 審査日の前2年のそれぞれの1年における決算において完成工事高のないもの(イ)有資格建設業者の級別格付(4条)a 町長は,前条各号に該当する建設業者を除き,宮田町建設工事入札参加者資格審査委員会(以下「資格審査委員会」という。)の審査の結果に基づき土木一式工事,建築一式工事その他の建設工事についてA級,B級,C級,D級のいずれかに格付を行うものとする。 b 前項の格付は,国土交通大臣又は都道府県知事が実施する経営事項審査結果及び建設工事入札指名願申請書並びに旧宮田町が行う主観的事項の評定を総合勘案し,決定する。 c 初めて入札指名人名簿に登載される者については,最下位の等級に格付けるものとする。 (ウ)格付の期間(5条) 格付は毎年これを行い,その有効期間は,格付を決定した日の翌日から翌年において される者については,最下位の等級に格付けるものとする。 (ウ)格付の期間(5条) 格付は毎年これを行い,その有効期間は,格付を決定した日の翌日から翌年において改定される日までとする。 (エ)格付の変更等(7条)a 町長は,特に格付の調整の必要を認めた場合については,格付の変更をすることができる。 b 町長は,請負契約を履行しない建設業者,経営状況が特に悪い建設業者又は建設工事入札指名願申請書等に虚偽の事項を記載した建設業者に対しては,失格とし,又は降級させることができる。 (オ)発注の基準(8条)建設業者に対する各等級別の発注の請負金額の基準は,次のとおりとする。 請負対象額建設業者の級別土木一式工事建築一式工事A級5000万円以上略B級5000万円未満2200万円以上略C級2200万円未満600万円以上略D級600万円未満 (以下略)(カ)指名業者等の選定基準(9条)a 一般競争入札,指名競争入札及び随意契約の場合における建設業者の選定は,格付された建設業者の中から前条の表の区分に従い行うものとする。ただし,工事の執行上必要があるときは,直近上下位等級に格付された者の中から選定することができる。 b (以下略) (キ)指名業者の選定の留意事項(11条)指名業者の選定に当たっては,次の各号に掲げる事項について留意するものとする。 1号当該工事に対する地理的条件2号施行能力の現状把握3号不誠実な行為の有無4号 条)指名業者の選定に当たっては,次の各号に掲げる事項について留意するものとする。 1号当該工事に対する地理的条件2号施行能力の現状把握3号不誠実な行為の有無4号手持ち工事の状況5号指名及び契約の実績(ク)資格審査委員会(12条)a 指名願を提出した建設業者の資格の判定及び等級別格付等を行うため資格審査委員会(以下「委員会」という。)を置く。 b 委員会の構成は,次のとおりとする。 (a) 委員長助役副委員長企画財政課長(b) 委員事業担当課長(商工振興課,都市計画課,環境対策課,人権福祉課《以下略》)及び総務課長並びに企画財政課長補佐c (以下略)(ケ)審議結果の報告及び決定(15条)a 委員長は,委員会の審議結果を町長に報告しなければならない。 b 町長は,委員長の報告に基づき,等級の格付を決定するものとする。 (コ)有資格者名簿(16条)a 委員会は,前条2項に定める決定がなされたときは,有資格者名簿を作成し,格付を行った建設業者については,有資格者名簿に等級を付する。 b 有資格者名簿は,企画財政課で保管する。 c 有資格者名簿の有効期間は,名簿作成の日から次年度の名簿等作成の日までとする。 イ被告である宮若市においても,「宮若市建設工事請負業者選定要綱」(以下「被告選定要綱」という。)を制定して平成18年2月11日から施行し,これに基づき,一般競争入札,指名競争入札及び随意契約を実施している(B10)。 内容については,上記アとほぼ同旨であり,指名業者の選定の留意事項に関して以下の規定がある(11条)。 行し,これに基づき,一般競争入札,指名競争入札及び随意契約を実施している(B10)。 内容については,上記アとほぼ同旨であり,指名業者の選定の留意事項に関して以下の規定がある(11条)。 指名業者の選定に当たっては,次に掲げる事項について留意するものとする。 1号当該工事に対する地理的条件2号施行能力の現状把握3号不誠実な行為の有無4号手持ち工事の状況5号指名及び契約の実績また,資格審査委員会の副委員長は企画財政部長とされ,有資格者名簿の保管は企画財政部企画財政課が行うとされている。 ウ旧宮田町選定要綱3条1項により入札参加資格が与えられない者については,「宮田町建設工事請負契約に係る指名停止等措置要綱」(平成4年5月1日告示第38号。A5。以下「旧宮田町措置要綱」という。)3条が,概ね,以下のとおり定めている。 a 町長は,建設業者が別表第1から別表第4までの措置要件のいずれかに該当するときは,情状に応じて,当該別表の期間の欄に定めるところにより期間を定め,指名停止を行うものとする。 b 町長が指名停止を行ったときは,契約担当者は,指名競争入札を行うに際し,当該指名停止に係る建設業者を指名してはならない。 c 別表第1には「事故等に基づく措置基準」が,別表第2には「贈賄及び不正行為等に基づく措置基準」が,別表第3には「暴力的組織等に対 する措置基準」が,別表第4には「契約不履行等に基づく措置基準」が定められ,別表第2には「(不正又は不誠実な行為)建設業者の代表役員等,一般役員等又はその使用人が宮田町発注工事に関して暴力その他違法行為を行った疑いがあり,宮田町発注工事の相手方として不適当と認められるとき。」や「別表第1及び前各号に掲げる場合のほか の代表役員等,一般役員等又はその使用人が宮田町発注工事に関して暴力その他違法行為を行った疑いがあり,宮田町発注工事の相手方として不適当と認められるとき。」や「別表第1及び前各号に掲げる場合のほか,業務に関し不正又は不誠実な行為をし,宮田町発注工事の請負契約の相手方として不適当であると認められるとき。」の措置要件に該当する場合の期間を,当該認定をした日から1か月以上9か月以内,「(談合)建設業者の代表役員等,一般役員等又はその使用人が談合の容疑により逮捕され,又は逮捕を経ないで公訴を提起されたとき。」の措置要件に該当する場合の期間を,逮捕又は公訴を知った日から2か月以上12か月以内と定められている。 エ被告選定要綱3条1項により入札参加資格が与えられない者については,「宮若市建設工事請負契約に係る指名停止等措置要綱」(平成18年2月11日告示第35号。A7。以下「被告措置要綱」という。)3条が,概ね,以下のとおり定めている。 a 市長は,建設業者が別表第1から別表第4までの措置要件のいずれかに該当するときは,情状に応じて,当該別表の期間の欄に定めるところにより期間を定め,指名停止を行うものとする。 b 別表第1ないし第4については,上記ウcと同旨の措置基準が定められている。 (3)原告の被告らに対する訴訟提起等平成10年10月29日,旧宮田町と,原告及び有限会社地建で構成する特定建設工事共同企業体との間で,「上大隈農園緑地公園造成工事(2工区)」の請負契約が締結された(以下,この工事を「前訴造成工事」,請負契約を「本件請負契約」という。)。同工事においては,工事期間の延長や 工事内容の変更等があったところ,原告と旧宮田町の間に報酬の増額を巡る紛争が発生し,その後,両者間で交渉が持たれ 事」,請負契約を「本件請負契約」という。)。同工事においては,工事期間の延長や 工事内容の変更等があったところ,原告と旧宮田町の間に報酬の増額を巡る紛争が発生し,その後,両者間で交渉が持たれたこともあった。しかし,両者が,合意に至ることはなく,原告が平成14年8月9日に申し立てた調停も不調に終わった。 原告は,同年11月5日,旧宮田町を被告として前訴造成工事の請負代金請求訴訟(以下「前訴」という。)を提起した。前訴は,平成17年4月21日,福岡地方裁判所直方支部で請求棄却の判決が言い渡され,原告が控訴したが,平成18年5月16日,福岡高等裁判所は控訴棄却の判決を言い渡した。原告は,さらに上告及び上告受理の申立てをしたが,同年10月3日,上告棄却決定及び上告不受理決定がなされた。 (4)前訴係属中の平成15年度から平成17年度までの間,旧宮田町は,原告に対して,旧宮田町措置要綱3条による指名停止の措置は採らなかったものの,同町の公共工事につき,原告を指名競争入札において選定しなかった。 合併後の被告は,平成18年12月31日まで原告を指名業者として選定したことはなかった(以下,平成15年度から平成18年末まで旧宮田町町長及び被告市長が原告を指名競争入札において選定しなかったことを「本件指名回避」という。)。原告は,平成18年度内の平成19年1月16日の指名競争入札において「尾園水路ほか1災害復旧工事」(工事金額277万2000円。以下「尾園工事」という。)を落札し,被告と契約を締結した。 被告らにおいては,指名回避に関する規定は存在せず,一般的な手続も存在しない。 なお,平成14年度以降,旧宮田町が旧宮田町選定要綱11条3号(「不誠実な行為の有無」)に基づいて指名業者として選定しなかった業者は,原 指名回避に関する規定は存在せず,一般的な手続も存在しない。 なお,平成14年度以降,旧宮田町が旧宮田町選定要綱11条3号(「不誠実な行為の有無」)に基づいて指名業者として選定しなかった業者は,原告のみである。 被告らにおいて,当該年度に一度落札した業者については,通常,当該年度に再び指名業者として選定されない運用となっている。 (5)平成4年度から平成18年度における原告の公共工事と格付ア平成4年度から平成18年度において,被告らが原告に対して請け負わせた工事は,別表「平成4年度ないし平成18年度において,宮田町及び宮若市が原告に発注した工事」のとおりである。 イ上記期間の原告の土木一式工事の建設業者としての格付は,次表のとおりである(平成17年度までは,前期は4月ないし9月を指し,後期は10月ないし翌年3月を指す。平成18年度以降は,前期・後期の区分はない。格付は,旧宮田町では毎年10月1日に見直されていたため,後期の格付と,次年度の前期の格付とは,同一の格付となっていた。また,被告においては,毎年6月1日に見直しているため,平成18年度以降は,6月から翌年5月までが同一の格付となる。)。 年度 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19前期 AAAAAAAAABCCDC後期 AAAAAAAABCCDCDDC 2 争点(1)旧宮田町町長が平成15年度から平成17年度まで,合併後の被告市長が,平成18年末まで,それぞれ原告を指名業者として選定しなかったことが,裁量権の逸脱又は濫用として,国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たるか。 (2)原告の損害 3 争点に関する当事者の 平成18年末まで,それぞれ原告を指名業者として選定しなかったことが,裁量権の逸脱又は濫用として,国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たるか。 (2)原告の損害 3 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)(違法性)について【原告の主張】ア地方公共団体の工事請負契約締結行為は,その経費が納税等によって賄 われていることから,私法上の行為であるといえども,地方自治法上も,業者選択については,適正な競争を通じた業者選択による公平性,手続の透明性,経済性を確保するように規定が設けられており(地方自治法234条1項ないし6項,同法施行令167条の11第2項),被告らにおいても,措置要綱を設け,町長や市長が指名業者を指名候補から外す場合には,当該措置要綱に従った手続をすることが求められており,合理的な理由がない限りかかる手続に則ることなく指名停止等の措置を採ることは許されない。 そして,指名回避が実質上指名停止と変わらないことによれば,指名回避に当たっては,当該業者について指名停止措置に相当する事情が存在する必要がある。しかも,指名回避は要件も手続も不明瞭な事実上の措置であるから,基本的に,指名停止以上の合理性が必要である。 イ(ア)被告は,原告の被告らに対する前訴が,存在しない債権に基づく不合理な請求であるとして,前訴における原告の主張や請求が,旧宮田町選定要綱11条3号の「不誠実な行為」に当たると判断し,本件指名回避をしたと主張する。しかし,原告の前訴における請求及び主張は,以下のとおり不合理なものではない。 (イ)前訴における主張の合理性等についてa 旧宮田町の企画振興課課長A(以下「A課長」という。)の指示による減工,増工原告は,平成11年5月26日に旧宮田町から渡され ない。 (イ)前訴における主張の合理性等についてa 旧宮田町の企画振興課課長A(以下「A課長」という。)の指示による減工,増工原告は,平成11年5月26日に旧宮田町から渡された契約内容変更要求書に対し,請書を出していないが,旧宮田町は,同年末に工事代金の支払をしており,原告が旧宮田町による契約内容の変更に応じ,適正に工事を完成させたことを旧宮田町が認めている。上記契約内容変更要求書には工事費内訳書がホッチキス止めしてあったが,同年3月26日ころの契約内容変更要求書には,工事費内訳表の添付はなく, 原告は,旧宮田町の求めるがままに工事変更に応じてきた。A課長も,前訴において,変更工事を文書で指示したことはないと供述している。 b 「Aゾーン」(旧貝島炭坑社宅の跡地)からの土の持出しはなかったこと前訴において,被告らは,前訴造成工事現場の一部である「Aゾーン」から大量の土が持ち出されていたため,当初計画より土量が少なく,土工事が大幅に減少し,それに伴い代金額も減少したと主張した。 しかし,航空写真によっても「Aゾーン」の高さは一定であり,そこから大量の土が運び出されたりした事実はない。むしろ土が余ったため,原告はA課長に相談し,変更後の高さではなく当初計画高で施工し完成させた。 c 工事内容のさらなる追加・変更官渠工事においては,A課長の指示により,堀削工事の施工方法が矢板工法からオープンカット工法に変更となり,矢板工法はゼロになる一方,新たにオープンカット工法に掛かる費用が発生したが,旧宮田町は同工法について全く積算せず工事代金に計上しなかった。 石積工事においても,A課長の指示する追加工事を行ったが,工事数量の拡大について,旧宮田町は積算せず,工事代金に計上しなか ,旧宮田町は同工法について全く積算せず工事代金に計上しなかった。 石積工事においても,A課長の指示する追加工事を行ったが,工事数量の拡大について,旧宮田町は積算せず,工事代金に計上しなかった。 平成11年6月29日,A課長より,未曾有の大雨に伴う災害出動要請があり,原告は従業員を派遣して応急工事を行ったが,当該工事についても積算されず,工事代金に計上されなかった。 d 代金額について原告は,工事内容の変更・追加に伴い,多量の増工,工事費用の増大を強いられた。当然,工事代金の調整が行われるものと考えていた。 ところが,A課長は,見積もなく,一方的に減工増工を命じてきた にもかかわらず,代金額の調整は一切なされなかった。 e 増減表(B24の1)について被告は,原告が増減表(B24の1)によって一旦請求した後に,多額の請求をする前訴を提起し,請求額が変動したことをもって原告が「不誠実」な行為をしたと主張するようである。 しかし,この増減表は,平成11年当時に原告の従業員ではなかったBが,県職員の経験を生かし,後輩であるA課長に対し,少し聞いた限りでも不足額が生じているのではないかとの観点から作成したものであり,不足額全額を請求する意思で作成したものではない。よって,原告の前訴は何ら不当請求ではない。 fA課長との話合い平成11年11月に,A課長は,原告代表者C(以下「原告代表者」という。)に対し,前訴造成工事に関して,原告に損害を与えたので,A課長の在職残期間4年間のうちに,毎年1000万円程度の工事を発注することで埋合わせをしたいと提案した。この話合いに立ち会った歯科医師D(以下「D医師」という。)は,旧宮田町の助役E(以下「E助役」という 職残期間4年間のうちに,毎年1000万円程度の工事を発注することで埋合わせをしたいと提案した。この話合いに立ち会った歯科医師D(以下「D医師」という。)は,旧宮田町の助役E(以下「E助役」という。)と面談し,旧宮田町が原告に追加工事を出して損失を穴埋めする旨の提案を受けたことを供述しており,旧宮田町が,前訴造成工事に関し,原告に損失が生じていることを認識していたことは明らかである。 (ウ)原告は,旧宮田町関係各機関と3年以上折衝を続けたが合意に至らず,民事調停も不調に終わった。そのため,原告は,やむを得ず,平成14年11月5日に前訴を提起した。 上記のとおり,原告の主張事実や請求は,A課長やE助役も自認するように,理由がある。しかも,原告が前訴を提起したからといって,原告が不合理な請求をする蓋然性が高いという論理性は認められず,その ような蓋然性を認めること自体が,判断の恣意性を示している。加えて,本件指名回避は,被告らが上記の原告代表者とA課長とのやりとり,D医師とE助役のやりとり等が白日の下に晒されることを懸念して原告を兵糧攻めにするために決定したものであると考えられる。また,前訴の係属中,本件指名回避を続けることを内容とする決定は,指名停止の長期との比較,訴訟の長期化に伴う業者の被る損害の拡大の観点から,裁量権を逸脱して違法というべきである。談合で有罪判決を受けた業者が,級別格付を下げることなく1年で従前どおり稼働していることと比較すると,違法の程度は顕著である。 ウそればかりでなく,不利益行政処分をするには,不利益処分の名宛人に意見陳述の機会を与えるとともに(行政手続法13条),処分理由を告知しなければならない(同法14条)が,指名停止の長期上限を著しく超えて原告に不利益を強いる本件指名回避につき ,不利益処分の名宛人に意見陳述の機会を与えるとともに(行政手続法13条),処分理由を告知しなければならない(同法14条)が,指名停止の長期上限を著しく超えて原告に不利益を強いる本件指名回避につき,原告にはそのような機会が与えられていない。 エまた,そもそも,被告らの各選定要綱11条は,業者を当該入札や契約において指名するか否かの判断資料を示したものにすぎず,業者に選定要綱11条3号の「不誠実な行為」に該当する事実があったとしても,本条項をもって,当該業者を長期間指名回避する根拠とすることはできない。 オ以上によれば,本件指名回避が国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たることは明白である。 カなお,被告は,平成9年度の工事においても原告が不当な要求をしていたと主張するが,事実無根である。原告は,被告主張の災害復旧工事,付帯工事のいずれについても工事費が安価である,工法・工事内容が納得できないなどとの申入れをしたことはない。しかも,本件指名回避に関しては,明らかに理由の後付けにほかならず,合理性を欠いていることは明白である。 【被告の主張】ア旧宮田町が平成15年度から平成17年度にかけて原告を指名業者として選定しなかった理由は,以下のとおりである。 (ア)平成10年10月29日,旧宮田町は,入札の結果,原告に対し,工期を同年11月4日から平成11年3月3日(後に工期は同年5月28日までと変更された。)とする前訴造成工事を請け負わせた。 原告は,同年7月ころ,旧宮田町に対し,180万6011円多く請求する権利があるとする増減表(B24の1)を提出した上,Bをして,その具体的金額を説明させた。 原告は,同年8月ころに上記工事を完成させた。 旧宮田町は 6011円多く請求する権利があるとする増減表(B24の1)を提出した上,Bをして,その具体的金額を説明させた。 原告は,同年8月ころに上記工事を完成させた。 旧宮田町は,原告に対し,当初の契約どおり,平成10年12月28日,平成11年4月20日,及び同年12月20日の3回にわたり,上記工事の工事代金合計1億1550万円を支払った。 (イ)原告は,平成14年11月5日,旧宮田町を被告として,福岡地方裁判所直方支部に対し,旧宮田町との間の本件請負契約における請負代金の未払金があると主張して,1812万5000円を請求する前訴を提起した。なお,原告は,提訴前に,旧宮田町に対し,増減表(B24の1)を除き,具体的な金額を示して請求をしたことはなかった。 原告は,前訴の係属中,上記請求額を,平成15年5月に1935万3000円,平成16年12月13日に2757万1000円にそれぞれ拡張した。 旧宮田町は,原告の提訴を受け,本件請負契約を検討した結果,訴状には事実と異なる内容が数多く記載されており,原告の請求は,存在しない債権に基づく不合理な請求であると判断した。 例えば,原告は,訴状において,旧宮田町が指示していない工事を指示したと主張したり,旧宮田町が契約内容変更要求書に本工事費内訳表 を添付していたにもかかわらず,添付していなかったと主張した。 また,本件請負契約の工事請負契約条項では,設計図書と工事現場の状況が一致しないなどの場合,請負人は直ちに書面をもって監督員にこれを通知しなければならず(15条1項),これにより工事内容,工期又は請負代金額を変更する必要があるときは,協議し,書面によりこれを定め(同条3項),旧宮田町は,必要がある場合には工事内容を変更 これを通知しなければならず(15条1項),これにより工事内容,工期又は請負代金額を変更する必要があるときは,協議し,書面によりこれを定め(同条3項),旧宮田町は,必要がある場合には工事内容を変更等することができるが,請負代金額又は工期を変更する必要があるときは,双方が協議して書面により定めるものとされている(16条1項)。 本件請負契約では,工期が変更された際には,そのことに関する書面が作成されていたが,原告が主張する請負代金額の変更及び復旧工事につき,上記規定に基づく書面が作成された事実はなかった。 原告が訴訟を提起すること自体は問題となるものではないが,原告の請求内容は事実と異なる主張をし,存在しない債権に基づく不合理な要求であることが明らかであった。 前訴の係属中である平成15年8月ころ,入札業務を担当していた旧宮田町企画財政課において,今後,原告に対する指名を継続することにより,一旦入札により決定した工事代金を後に不当に増額請求するなど前訴と同様の紛争が再発することを懸念して,何らかの対策がとれないかとの話が持ち上がり,同月ころ,旧宮田町企画財政課が中心となり,原告を指名業者として選定しないことが検討された。その後,町長が,原告を指名業者として選定しないことを決定した。その直後の「宮田町土木等請負業者指名選考委員会」において,上記町長の決定が報告された。 (ウ)原告の前訴における請求が全く理由のないものであったことは,本件についての第1審判決,控訴審判決及び上告審決定を通じて,明快に判示されたとおりである。 イ原告は,以下のとおり,平成9年度の工事についても不当な要求をしていた。 平成9年4月17日,旧宮田町は,入札により,原告に対し,工期を同月18日から同年8月25日までとす 。 イ原告は,以下のとおり,平成9年度の工事についても不当な要求をしていた。 平成9年4月17日,旧宮田町は,入札により,原告に対し,工期を同月18日から同年8月25日までとする「宮田~三坑線道路改良舗装工事」(契約金額5080万9500円)を請け負わせた。 同年7月23日,旧宮田町は,随意契約により,原告に対し,追加して,上記舗装工事の付帯工事として,「宮田~三坑線法面応急工事」(契約金額121万8000円。以下「契約①」という。)を請け負わせた。 同年10月7日,旧宮田町は,随意契約により,原告に対し,追加して,上記舗装工事の付帯工事として,「宮田~三坑線道路災害復旧工事」(契約金額120万7500円。以下「契約②」という)を請け負わせた。 同月14日,旧宮田町は,随意契約により,原告に対し,追加して,上記舗装工事の付帯工事として,「宮田~三坑線道路舗装付帯工事」(契約金額204万7500円。以下「契約③」という。)を請け負わせた。 旧宮田町は,上記①ないし③の3つの随意契約の締結に当たり,原告代表者及び原告現場代理人に対し幾度も説明した上で,原告代表者との間で工事内容及び請負金額を合意していた。 それにもかかわらず,原告代表者は,旧宮田町に対し,契約②及び契約③について,旧宮田町が契約書を作成し提示した際,原告代表者は,職員の具体名を挙げ,「以前,あいつを助けてやった。貸しがあるとぞ。」などと告げた。また,「安い,この単価はなんか。」などと発言した。このように,原告は,契約②及び契約③のそれぞれにおいて,各数回にわたり,上記の申入れをしてきたため,旧宮田町は,その都度対応し,原告代表者の要求が不当であることを理解させ,当初の契約どおりに支払をした。 ウ指名業者の選定は,普通地方公共団体の長の裁量に委 わたり,上記の申入れをしてきたため,旧宮田町は,その都度対応し,原告代表者の要求が不当であることを理解させ,当初の契約どおりに支払をした。 ウ指名業者の選定は,普通地方公共団体の長の裁量に委ねられているところ,原告が,前訴において,明らかに不合理な主張及び請求をしているこ とから考えて,旧宮田町としては,原告を指名業者として選定した結果,仮に原告が落札し,原告と契約を締結する事態になった場合,原告から同様の不合理な請求をされる蓋然性が高く,発注者として,多大なリスクを背負うことが強く懸念されたので,前訴が裁判所に係属していた時期,各工事の入札において,原告を指名業者として選定しなかったものである。 したがって,原告の前訴における明らかに不合理な主張及び請求が,旧宮田町選定要綱11条3号にいう「不誠実な行為」に該当するとして,指名業者として選定しなかった旧宮田町町長の判断は,裁量権の範囲内のものであり,何ら裁量権を逸脱したり濫用したものではない。 エ被告は,平成18年2月11日の合併後,同年12月31日までの間,原告を指名業者として選定しなかったが,その事情は以下のとおりである。 (ア)上記期間,原告が属していた土木Dランクにおける工事は,平成18年12月4日に入札がなされた黒丸水路改修工事(工事金額180万6000円)のみであった。 同工事は,旧若宮町地区の工事であったので,同工事において指名業者として選定されたのは,「地理的条件」により(被告選定要綱11条1号),同地区の業者のみであった。 (イ)被告は,平成19年1月9日,尾園工事等について,原告を指名業者として選定した。尾園工事も,旧若宮町地区の工事であったが,災害のため,土木Dランクの工事だけで6件の工事の入札が予定されていたため,旧若宮町地区 19年1月9日,尾園工事等について,原告を指名業者として選定した。尾園工事も,旧若宮町地区の工事であったが,災害のため,土木Dランクの工事だけで6件の工事の入札が予定されていたため,旧若宮町地区外の原告も指名業者として選定されたものである。 原告は,同月16日の指名競争入札において,尾園工事(工事金額277万2000円)を落札し,被告と請負契約を締結した(B6)。被告らにおいて,当該年度に一度落札した業者については,通常,当該年度に再び指名業者として選定しない運用とされている。 (ウ)以上のとおり,合併後の被告において,原告を指名業者として選定 しなかったことにつき,何らかの判断によりなされたものではなく,平成18年12月末までは,選定の機会が存しなかっただけである。すなわち,被告において,裁量権の逸脱・濫用となる行為はない。 (2)争点(2)(損害)について【原告の主張】ア逸失利益について(ア)旧宮田町が原告に与えた損害旧宮田町の平成15年度から平成17年度のAランク相当の土木工事の発注件数及び総額は,30件で14億8303万3020円【A】である。 原告の平成4年9月期から平成10年8月期までの旧宮田町発注のAランク工事の受注率は,同期間の旧宮田町のAランク工事発注件数の年度平均が6.14件であり,そのうち,原告が受注したAランク工事の平均が2.57件であるから,41.85%である【B】。 原告の平成4年9月期から平成10年8月期の利益率は,5.58%である【C】。 よって,旧宮田町が原告に与えた損害額は,下記計算式により,3463万2231円となる。 (計算式)14億8303万3020円【A】×41.85%【B】×5.58%【C】=3463万2231円 宮田町が原告に与えた損害額は,下記計算式により,3463万2231円となる。 (計算式)14億8303万3020円【A】×41.85%【B】×5.58%【C】=3463万2231円(イ)被告が原告に与えた損害被告については,合併日より平成18年12月31日までの間のAランク工事金額が5億3529万3202円であるので,上記と同様に計算すると,被告が原告に与えた損害額は,1250万0327円となる。 (計算式)5億3529万3202円×41.85%【B】×5.58%【C】=1250万0327円(ウ)そこで,原告の逸失利益は,上記とを合計した4713万2558円となる。 (エ)級別格付に関する被告の主張に対する反論原告が前訴造成工事の残代金について旧宮田町と協議を求めている間,原告は指名業者として選定されていたが,その間の平成11年度から平成14年度にかけての旧宮田町の原告に対する発注件数・金額は,平成11年度が2件・32万円,平成12年度が6件・約6000万円,平成13年度が1件・21万円,平成14年度が1件・20万7900円であったもので,平成14年度より,実質的な指名回避が始まっていたのである。 Aランクであった原告の級別格付は,平成12年度後期からBへ,平成13年度後期からCへ,平成14年度後期からDへ下落した。本件指名回避がなされていた期間,原告は公共工事を受注することができず,経営事項審査結果の客観点は下がるし,被告らにおける級別格付においても,他の業者との比較という担当者の主観が介在する要素を最終判断の材料としている。そして,平成13年度から平成14年度に,経営事項審査結果の点数が8点上昇しているにもかかわらず,ランクは上がっ いても,他の業者との比較という担当者の主観が介在する要素を最終判断の材料としている。そして,平成13年度から平成14年度に,経営事項審査結果の点数が8点上昇しているにもかかわらず,ランクは上がっていないところ,原告のように前訴造成工事の請負代金について激しく主張を対立させているという事情があれば,不利益に評価が流れることは十分起こり得ることである。 原告は被告らから違法な本件指名回避を受け続けたことにより,経営事項審査結果の総合点が必然的に下降し,級別格付が下がったのであるから,前訴造成工事に関する紛争が具体化する平成11年以前の期間の 平均受注率及び平均利益率を用いて損害額を算定すべきである。 また,原告の格付下降は,上記工事に関する紛争に基づく本件指名回避によって生じたのであるから,従前のAランク相当の土木公共工事の発注総額を基礎に損害額を算定すべきである。 イ信用毀損の損害について(ア)原告は,被告による違法な本件指名回避により,以下のとおり,社会的信用を著しく傷つけられた。 a 平成19年ころ,原告は地主より「あんたちゃんとせないかんばい。」と言われ,同地主は,子である被告の課長補佐から「原告は,被告に対して不当な請求をして指名回避になっている。」と聞き,その旨発言したと回答した。 b 平成19年ころ,宮若市の外に居住している原告代表者の妻の叔母は,その所属する日本舞踊水穂会のサークルにおいて,多数の会員の面前で,ある会員から「あなたの甥(原告代表者)は,被告相手に,賠償金目当てに裁判を起こし指名停止になっている。」と中傷された。 叔母が尋ねると,その会員の息子である被告の係長からそのように教えられたと回答した。 c 宮若市管内の県道,水路工事にあっては,福岡県 に裁判を起こし指名停止になっている。」と中傷された。 叔母が尋ねると,その会員の息子である被告の係長からそのように教えられたと回答した。 c 宮若市管内の県道,水路工事にあっては,福岡県は被告と打ち合わせた上で工事を発注する。本件指名回避がされて以降,原告が県土木の工事に関し福岡県を訪ねた際,原告は県の担当職員から「原告は被告から睨まれているから原告への発注がはばかられる。」旨聞かされた。このように,被告は県土木の担当者に対しても,原告が不当な請求をする業者であり,本件指名回避をしている事実を広めた。これにより原告は県土木発注工事に関しても不当に低い評価を受け,受注を減らさなければならなかった。 d 平成20年,原告代表者は,消防の永年勤続につき長官表彰を受け たが,表彰に当たり,被告の総務課長Fに対し,総務委員会委員である被告の市議会議員が「なぜ原告が指名回避を受けているのに原告代表者を表彰するのか。」とクレームをつけた。 e 平成21年,被告の議会総務委員会において,市議会議員の一人が「原告は,不当な請求をして指名回避を受ける裁判マニアである。」旨中傷する発言をした。 (イ)このように,被告らが原告に対して違法な本件指名回避をしたことにより,原告に対する誤った風評が被告らの職員らを通じて広く伝播するなどし,原告の社会的信用は著しく傷つけられた。原告は,原告代表者を中心とする少人数の家族経営体であるから,代表者の信用と法人の信用は区別が困難なほど一体化しており,指名を受けられない状態にあるという事実自体が,法人の信用を毀損するのである。 (ウ)以上の損害額は,200万円を下らない。 ウ弁護士費用相当の損害について原告の弁護士費用のうち20万円は,被告に負担させ という事実自体が,法人の信用を毀損するのである。 (ウ)以上の損害額は,200万円を下らない。 ウ弁護士費用相当の損害について原告の弁護士費用のうち20万円は,被告に負担させるべきである。 【被告の主張】ア逸失利益について仮に,本件指名回避が違法な行為と判断されたとしても,原告の損害額は65万7672円を上回ることはない。 (ア)原告の損害額の主張は,次のとおり,不当・不合理である。 a 原告を指名していなかった期間における指名競争入札による工事総額【A】ついて原告は平成15年度ないし平成17年度の期間,Aランクに格付されていたわけではなく,C又はDランクに格付されていたのであり,Aランク相当の土木工事の発注総額を損害の基礎とするのは妥当でない。Cランク又はDランク相当の指名競争入札に基づく土木工事の発 注総額を基礎とすべきである。 同期間におけるCランク及びDランク相当の指名競争入札に基づく工事の実績は,次表のとおりである。 Cランクの工事Dランクの工事原告のランク平成前期後期件数総額平均金額件数総額平均金額15年度 CD 13 139,326,750 10,717,442 11 42,446,250 3,858,75016年度 DC 9 128,832,900 14,314,767 7 24,964,800 3,566,40017年度 CD 6 53,270,700 8,878,450 9 34,240,550 3,804,500合計 28 321,430,350 11,479,655 27 101,651,550 3, ,270,700 8,878,450 9 34,240,550 3,804,500合計 28 321,430,350 11,479,655 27 101,651,550 3,764,872 仮に,原告が3年間一貫してCランクであったとしても,当該3年間,同ランクにおける指名競争入札に基づく工事の総額は3億2143万0350円ということになる。 したがって,損害の基礎とすべき3年間の工事総額は,3億2143万0350円を上回ることはない。 b 平均受注率【B】について原告は,平均受注率の算出に当たり,全体の「工事発注数」及び原告の「受注数」について誤った数値を提示していることに加え,分母となる全体の「工事発注数」には随意契約の件数を含めていないにもかかわらず,分子となる原告の「受注数」には随意契約の件数を加えるという不合理な計算をしている。 平成4年度から平成14年度までの間において,①原告が格付され ていたランク,②同ランク対象の工事について旧宮田町が指名競争入札を行った工事件数,③そのうち原告が指名競争入札において落札し,旧宮田町と契約した件数は次表のとおりである。 平成(年度) 前記後期の別 4 5 6 7 8 9 10 11前後前後 14 合計①原告格付ランクAAAAAAAAABBCC②上記ランクの指名入札工事件数 13 9 11 12 15 9 13 14 11 5 2 3 9 126③原告の落札件数 1 0 1 1 0 1 1 1 1 0 0 0 0 7 9 13 14 11 5 2 3 9 126③原告の落札件数 1 0 1 1 0 1 1 1 1 0 0 0 0 7 同表のとおり,平成4年度から平成14年度までの11年間,原告が所属するランクにおいて,指名競争入札工事は126件行われた。 そのうち,原告は7件を落札しており,原告の平均受注率【B】は,下記の式により5.56%である。 (計算式)原告の落札件数7件/指名競争入札工事件数126件=5.56%c 原告の平均利益率【C】について原告は,損害額の算定に当たり,自社の業績の良かった平成4年9月から平成10年8月まで(原告の会計年度でいう19期ないし24期)の平均利益率を用いている。 しかしながら,損害額の算定に当たっては,指名をされていなかった時期の直近の平均利益率を基礎とすべきである。 そこで,直近3年間の業績を基に平均営業利益率を算出することにし,原告と同様,原告作成の「営業状況報告書」(A9)の「工事収入金」の「計」欄の数値を分母とし「営業利益」欄の数値を分子とし て,平成11年9月から平成14年8月まで(原告の会計年度でいう26期ないし28期)の3年間の平均営業利益率を計算すると,原告の平均利益率はマイナス3.39%となる。 仮に,原告に有利なように,原告が約1814万円もの損失を出した平成13年9月から平成14年8月までの1年間(28期)を計算の根拠から外し,その直前3年間(平成10年9月から平成13年8月まで。25期ないし17期)の平均利益率【C】を算出するとすれば,3.68%となる。 d 以上のとおり,旧宮田町に関す 算の根拠から外し,その直前3年間(平成10年9月から平成13年8月まで。25期ないし17期)の平均利益率【C】を算出するとすれば,3.68%となる。 d 以上のとおり,旧宮田町に関する原告の損害額の算定に当たり,年間の工事総額【A】や利益率【C】の算出において原告の有利となるように算定したとしても,下記計算のとおり,損害額が65万7672円を上回ることはない。 【A】(3年間の工事総額)3億2143万0350円×【B】(原告の平均受注率)5.56%×【C】(原告の平均利益率)3.68%=65万7672円(イ)被告の本件指名回避による損害は,以下のとおり,存在しない。 原告は,旧宮田町当時,平成17年度後期からDランクに格付されており,合併後も,平成18年度はDランクに格付されたままであった。 平成18年度,原告は,平成19年1月16日の指名競争入札において尾園工事(工事金額277万2000円)を落札し,被告と契約を締結している。そして,被告においては,当該年度に一度落札した業者については,通常,当該年度に再び指名しない運用としていたから,平成18年度において,原告には損害が存しないことになる。 なお,合併後,Dランクにおいて,原告が落札した平成19年1月16日より前の時期になされた指名競争入札は,平成18年12月4日の 1回のみ(「黒丸水路改修工事」工事金額180万6000円)であった。 以上のとおり,原告に損害は存しない。 (ウ)旧宮田町の本件指名回避は,以下のとおり,原告の級別格付に影響を与えてはいない。 a 原告の毎年度の総合評点(A),「主観的事情の評定」数値(B), に損害は存しない。 (ウ)旧宮田町の本件指名回避は,以下のとおり,原告の級別格付に影響を与えてはいない。 a 原告の毎年度の総合評点(A),「主観的事情の評定」数値(B),総合数値(A+B)及び級別格付は,次表のとおりである(なお,同表の「経審」とは「福岡県知事が実施する経営事項審査結果」の略称である。以下同じ)。 格付年度経審基準日経審の総合評点(P)(A)「主観的事項の評定」数値(数値/満点)(B)総合数値(A+B)前期後期平成8年度 H7.8.31 748不明不明 AA平成9年度 H8.8.31 764不明不明 AA平成10年度 H9.8.31 775不明不明 AA平成11年度 H10.8.31 768不明不明 AA平成12年度 H11.8.31 67393/120 766 AB平成13年度 H12.8.31 668163/210 831 BC平成14年度 H13.8.31 676165/210 841 CC平成15年度 H14.8.31 590165/210 755 CD平成16年度 H15.8.31 649100/120 749 DC平成17年度 H16.8.31 63520/120 655 CD平成18年度 H17.8.31 56520/120 585 D平成19年度 H18.8.31 70140/ 50 741 C b 原告は,平成12年度の後期にAランクからBラ 20/120 585 D平成19年度 H18.8.31 70140/ 50 741 C b 原告は,平成12年度の後期にAランクからBランクに下落している。 この下落の要因は,平成11年8月31日を基準日とする経審の「総合評点(P)」が前年の768点から673点へと95点も低下したことによるものである。旧宮田町は,この当時,原告を指名業者として選定しており,旧宮田町の行為が原告のBランクへの下落に影響を及ぼしたものではない。 c 原告は,平成13年度の後期にBランクからCランクに下落している。 この下落の要因としては,平成12年8月31日を基準日とする経審の「総合評点(P)」が,前年の673点から668点へと5点低下したことなどが考えられる。 旧宮田町は,この当時,原告を指名業者として選定しており,旧宮田町の行為が原告のCランクへの下落に影響を与えたものではない。 d 原告は,平成15年度の後期にCランクからDランクに下落している。 この下落の要因は,平成14年8月31日を基準日とする経審の「総合評点(P)」が,前年の676点から590点へと86点も下落したことによるものである。旧宮田町は,この当時,原告を指名業者として選定しており,旧宮田町の行為が原告のDランクへの下落に影響を与えたものではない。なお,この年の「主観的事項の評定」数値は前年と同じである。 e 仮に,旧宮田町が平成15年度から平成17年度において原告を指名業者として選定しなかったことにより格付に影響を与えたとすれば,影響を受ける年度は,平成17年度から平成19年度になるが,原告 の平成18年8月31日を基準日とする経審の「総合評点(P)」は として選定しなかったことにより格付に影響を与えたとすれば,影響を受ける年度は,平成17年度から平成19年度になるが,原告 の平成18年8月31日を基準日とする経審の「総合評点(P)」は701点となり,平成19年度の格付はCランクに上昇している。 f 原告の「主観的事項の評定」数値(B)については,平成12年度から平成16年度まで,毎年,全業者の平均数値を上回る数値がついていた。 それにもかかわらず,原告は経審の「総合評点」(A)が低かったことにより,格付決定の際の「総合数値」(A+B)が低くなり,そのため,平成13年度後期以降はCランク,平成15年度後期以降はDランクにそれぞれ格付されていた。 g さらに,旧宮田町が原告を指名業者として選定していなかった時期は,平成15年度から平成17年度にかけてであり,仮にこのことに基づく損害額を算定するならば,同期間における損害額が算定されるべきものである。 原告は,旧宮田町が原告を指名業者として選定しなくなる以前の平成13年度後期から,既にCランクに格付されていた。すなわち,平成15年度から平成17年度にかけて原告がC又はDランクに格付されていたことは,旧宮田町が原告を指名業者と選定していなかったことに基づくものではない。 h 仮に,平成17年度の後期に,原告がDランクに格付されたことが,旧宮田町が原告を指名業者として選定していなかったことに基づくとしても,被告の算定する損害額は,平成15年度から平成17年度を通じて,原告がDランクに格付されていた時期についてもCランクに格付されているものと仮定して計算したものであって,原告の損害額は被告算定の損害額を上回るものではない。 イ信用毀損の損害について(ア)原告の主張イ いた時期についてもCランクに格付されているものと仮定して計算したものであって,原告の損害額は被告算定の損害額を上回るものではない。 イ信用毀損の損害について(ア)原告の主張イ(ア)aは否認又は不知。同bは不知。 (イ)同cは否認又は不知。福岡県が,宮若市内の県道等の工事をするに当たり,場合によっては,市道と接する部分の工事内容について被告と協議することはあるが,発注先について被告と打合せをすることはない。 (ウ)同dについては,原告代表者が永年勤続につき消防庁長官から表彰を受けたことは認める。その余は否認する。 (エ)同eについては,平成21年の被告議会総務委員会の議事録には,原告を中傷する内容の記載はない。 (オ)上記のとおり,原告が主張する事実はいずれも存しない。そもそも,原告が挙げる事実のほとんどは,原告代表者個人に関する事実であり,法人である原告の社会的信用が著しく傷つけられたとの主張の根拠事実とはならない。 第3 争点に対する判断争点(1)(違法性)について 1 地方自治法234条1項は「売買,賃貸,請負その他の契約は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」として,普通地方公共団体による契約締結の方法を定め,同条2項は「前項の指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる。」とし,その政令に当たる同法施行令167条は,指名競争入札について,契約の性質又は目的が一般競争入札に適しない場合などに限り,これによることができると規定している。このような地方自治法等の定めは,普通地方公共団体の締結する契約については,その経費が住民の税金で賄われることなどに鑑み,機会均 入札に適しない場合などに限り,これによることができると規定している。このような地方自治法等の定めは,普通地方公共団体の締結する契約については,その経費が住民の税金で賄われることなどに鑑み,機会均等の理念に最も適合して公正であり,かつ,価格の有利性を確保し得るという観点から,一般競争入札の方法によることを原則とし,それ以外の方法を例外的なものとして位置づけていると解することができる。さらに,「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号。以下「適正化法」とい う。)3条は,公共工事の入札等について,入札の過程の透明性が確保されること,及び入札に参加しようとする者の間の公正な競争が促進されることなどによりその適正化が図られなければならないと規定するところ,地方自治法234条6項,同法施行令167条の11第2項,3項,167条の5は,指名競争入札の参加者の資格については,地方公共団体の長において,あらかじめ,指名競争入札に参加する者につき,契約の種類及び金額に応じ,工事,製造又は販売等の実績,従業員の数,資本の額その他の経営の規模及び状況を要件とする資格を定めて,これを公示しなければならないと規定し,また,適正化法8条1項,同法施行令7条1項2号,3号は,指名競争入札の参加者の資格についての公表や参加者を指名する場合の基準を定めたときの当該基準の公表を義務付けている。 ただ,これらの法令は,指名競争入札の参加者についての具体的な指名基準や手続を定めておらず,このことは,いかなる者を指名競争入札に参加させるのが相当であるかの判断を普通地方公共団体の長の広範な行政上の裁量に委ねることとし,これにより,より適切で妥当な契約を締結させ,ひいては経費を賄う税金を納めている住民全体の共同の利益に資するようにし のが相当であるかの判断を普通地方公共団体の長の広範な行政上の裁量に委ねることとし,これにより,より適切で妥当な契約を締結させ,ひいては経費を賄う税金を納めている住民全体の共同の利益に資するようにしたものと解される。他方,地方自治法等の法令が,上記のとおり,普通地方公共団体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき,機会均等,公正性,透明性,経済性(価格の有利性)を確保することを図ろうとしていることからすると,地方公共団体の長が恣意的な指名又は指名停止・指名回避をすることは許されず,恣意的な指名又は指名停止・指名回避をしたときは,裁量権の逸脱・濫用があるとして国家賠償法上違法になるものと解するのが相当である(最高裁平成18年10月26日第一小法廷判決・裁判集民事221号627頁参照)。 2 そこで,以下,本件指名回避について,これを検討する。 (1)上記第2,1の前提事実,証拠(各項の末尾に掲記)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,原告代表者が昭和45年ころから個人で営んでいた土木工事業を昭和49年に法人化した旧宮田町(現宮若市)内の土木工事業者であり,平成3年度から平成12年度前期まで,旧宮田町が実施する指名競争入札において,Aランクに格付されてきた(A2,35,73,原告代表者)。 イ旧宮田町は,上大隈緑地公園の造成工事については,全体を2つの工区(1工区,2工区)に分割した上で,指名競争入札を実施し,1工区については有限会社原口建設,2工区については原告と有限会社地建を構成員とする「中部・地建特定建設工事共同企業体」(以下「原告JV」という。)が落札し,旧宮田町と原告JVとは,平成10年10月29日付けの工事請負契約書により,落札金額である1億1550万円(消費税を含む。) 中部・地建特定建設工事共同企業体」(以下「原告JV」という。)が落札し,旧宮田町と原告JVとは,平成10年10月29日付けの工事請負契約書により,落札金額である1億1550万円(消費税を含む。)で前訴造成工事を施工する旨の本件請負契約を締結した。 同契約書においては,工期は着工が平成10年11月4日,完成が平成11年3月3日とされ,さらに,別紙として添付された工事請負契約条項において,変更契約の方式等については,設計図書と工事現場の状況が一致しないなどの場合,請負人は直ちに書面をもって監督員にこれを通知しなければならず(15条1項),これにより工事内容,工期又は請負代金額を変更する必要があるときは,発注者と請負人において協議し,書面によりこれを定めるとされ(同条3項),さらに旧宮田町は,必要がある場合には工事内容を変更等することができるが,請負代金額又は工期を変更する必要があるときは,双方が協議して書面により定めるものとされていた(16条1項)。しかし,前訴造成工事に関して,原告が上記通知をしたり,上記書面が作成されることはなかった。 また,同契約条項1条において,請負人は,「別冊の図面及び仕様書」に基づき,頭書の請負代金額をもって,頭書の工期内に,頭書の工事を完成しなければならないとされ,添付の「土木工事仕様書」に「本工事費内訳表(2工区)」(以下「内訳表A」という。)が添付され,これに,本 工事費の工種,種別,細目,単位,数量が記載されていた。 (A11,B15,原告代表者)ウ旧宮田町の前訴造成工事の担当者であったA課長は,平成10年12月24日,同工事の工程会議において,原告JVに対し,「設計図に誤りがあり,現地の実際の地盤高に即した工事内容の変更が必要であり,これにより原告J 訴造成工事の担当者であったA課長は,平成10年12月24日,同工事の工程会議において,原告JVに対し,「設計図に誤りがあり,現地の実際の地盤高に即した工事内容の変更が必要であり,これにより原告JVが施工すべき土工の数量が大幅に減少するので,本来は請負代金が減額になるが,追加工事を発注することにより請負代金総額が減額とならないよう配慮する。」と説明し,原告代表者はこれを了承した(B21の1)。 エ旧宮田町は,平成10年12月28日,原告JVに対し,請負代金のうち3465万円を支払った(B21の1)。 オ前訴造成工事については,水利関係者との最終的な調整や,他の工事との調整等を理由に工期が延長され,最終的には平成11年5月28日まで延長された(A65ないし68)。 カ旧宮田町は,原告JVに対し,前訴造成工事の途中である平成11年3月26日,契約内容変更要求書により工事内容の変更を申し入れた(以下,この契約内容変更要求書を「要求書①」という。)。同要求書には,別紙1の「本工事費内訳表」(B16の2。以下「内訳表①」という。)が添付されており,これには,内訳表Aの各工事の数量と変更後の数量が併記されていた。これらの趣旨は,内訳表①の「土工,法覆工,排水工,土留工」の内容変更により1900万7078円の減額工事となり,一方,「土工,擁壁工,排水工,路面工,防護柵工,管理棟駐車場舗装,仮設道路」の内容変更及び新規工事の追加により,1900万7078円の増額工事となり,結局,請負代金は変更前後を通じて同額であるというものであったが,要求書①及び内訳表①はこれに沿うものであった。要求書①には,原告JVに対し,同月29日までに契約変更請書を提出することを求 める旨記載されており,これに対して,原告及び有限会社地建は ったが,要求書①及び内訳表①はこれに沿うものであった。要求書①には,原告JVに対し,同月29日までに契約変更請書を提出することを求 める旨記載されており,これに対して,原告及び有限会社地建は連名で記名押印した請書を,内訳表①と同じ「本工事費内訳表」を添付した上で提出した。なお,要求書①と内訳表①との間に契印は押されていないが,同時期に,上大隈農園緑地公園造成工事(1工区)を請け負っていた有限会社原口建設に対して交付した契約内容変更要求書においても,同要求書と本工事費内訳表との間に契印は押されていなかった。 (A69,70,B16の1・2,17の1・2,19の1・2,21の1)キ旧宮田町は,平成11年4月20日,原告JVに対し,請負代金のうち5195万円を支払った(B21の1)。 ク旧宮田町は,原告JVに対し,前訴造成工事の途中である平成11年5月26日,契約内容変更要求書により工事内容の変更を申し入れた(以下,この契約内容変更要求書」を「要求書②」という。)。要求書②には,別紙2の「本工事費内訳表」(B18の2。以下「内訳表②」という。)が添付されており,これには,内訳表①の各工事の数量と変更後の数量が併記されていた。これらの趣旨は,内訳表②の「擁壁工」のうち「1号ブロック積,2号ブロック積,基礎工,天端コンクリート工」の数量を増減し,「管理棟内舗装工(駐車場)」の工事内容を軽減することにより,「擁壁工」及び「管理棟内舗装工(駐車場)」につき83万8792円の減額工事となり,一方,「擁壁工」につき83万9056円の増額工事となるが,端数処理をして,結局,請負代金は変更前後を通じて同額となるというものであったが,要求書②及び内訳表②はこれに沿うものであった。要求書②には,原告JVに対し,同月27日 056円の増額工事となるが,端数処理をして,結局,請負代金は変更前後を通じて同額となるというものであったが,要求書②及び内訳表②はこれに沿うものであった。要求書②には,原告JVに対し,同月27日までに契約変更請書を提出することを求める旨記載されており,原告は,同日付けの契約変更請書の用紙と併せて交付を受けたが,同請書は提出されなかった。 (A71ないし73,B18の1・2,21の1,原告代表者) ケ原告による前訴造成工事は,変更後の工期である平成11年5月28日を経過しても完成せず,同年6月29日には福岡県は集中豪雨に襲われた。 A課長は,原告代表者から,豪雨に対する応急処置はした旨の報告を受けた。(B21の1)コ原告代表者は,知人であり,福岡県庁等で公共工事の発注・積算を担当した経験のあるB(同人は,平成12年の終わりころ,原告の土木部長に就任した。)に,要求書②及びこれに添付された内訳表②に基づく前訴造成工事代金の積算を依頼した。Bは,これに応じて,工事の工種及び数量については内訳表②の内容のとおりとし,単価については,原告JVが前訴造成工事の入札に参加する前に,Bが積算した際に用いた原告設定の単価を用いて計算した増減表(B24の1)を作成し,原告代表者に交付した。これによると,直接工事費で180万6011円の増額となっていた。 原告代表者は,上記増減表を旧宮田町に提出し,その内容を見たA課長が作成者との面談を申し入れたことにより,平成11年7月,BとA課長が2人で面談をした。 A課長は,上記増減表に旧宮田町の採用した単価及び積算結果を赤色ペンで付記した書面(B24の2)をBに交付し,直接工事費で129万8700円の減額となり,むしろ旧宮田町が過払いとなる状況にあると A課長は,上記増減表に旧宮田町の採用した単価及び積算結果を赤色ペンで付記した書面(B24の2)をBに交付し,直接工事費で129万8700円の減額となり,むしろ旧宮田町が過払いとなる状況にあると説明し,Bはこれに特段の反論はしなかった。 (A79,80,84,B21の1,22,24の1・2)サ原告JVは,平成11年7月に前訴造成工事に関する完成届を旧宮田町に提出し,これを受けて旧宮田町は,同年8月12日,前訴造成工事の工事完了検査を実施して同工事を合格とし,その引渡を受けた(B21の1,22,原告代表者)。 シ前訴造成工事に関して,平成11年9月ころ及び同年10月初めころ,A課長の知人であるD医師が仲介役となって,原告代表者とA課長が面談 した。さらに同年12月,旧宮田町の町会議員に依頼され,D医師は,前訴造成工事の請負残代金について,E助役と話し合った。(A31,証人D,原告代表者)ス旧宮田町は,原告JVに対し,原告JVが提出した納品請求書(これには,請負代金増額の趣旨は何ら記載されていなかった。)に基づき,平成11年12月20日,要求書②のとおりの工事残代金である2890万円を支払った(A2,B21の1,原告代表者)。 セ原告は,平成12年8月,町議会議長に前訴造成工事の工事代金に不足がある旨の陳情をし,平成13年6月には旧宮田町議会に対し同様の陳情書を提出し,さらに,平成14年2月に旧宮田町の監査委員に措置要求書を提出し,同年4月25日には,原告代表者らと,E助役及びA課長(当時,既に退職していた。)らとで協議する機会を持った。しかし,事態は進展しなかったため,原告は,同年8月9日,直方簡易裁判所に対して調停を申し立てた。その際,原告は,本件請負契約に基づく残代金を 当時,既に退職していた。)らとで協議する機会を持った。しかし,事態は進展しなかったため,原告は,同年8月9日,直方簡易裁判所に対して調停を申し立てた。その際,原告は,本件請負契約に基づく残代金を1712万5000円とし,上記ケの集中豪雨による災害復旧工事(以下,原告主張に係るこの工事を「本件災害復旧工事」という。)の請負契約に基づく請負代金は100万円を下らないとしていた。この調停も,2回の期日を経て不成立となったことから,原告は,同年11月5日に前訴を提起した(福岡地方裁判所直方支部平成14年第72号請負代金請求事件)。 (A2,54,原告代表者)ソ前訴における原告の当初の請求金額は,1812万5000円であり,その内訳は,工事内容の変更により増額となった請負工事代金1712万5000円及び本件災害復旧工事代金100万円であった。また,訴状において,原告は,旧宮田町が提示した要求書①には,変更内容として記載されている「別紙仕様書及び図面」は添付されていなかったと主張した。 さらに,原告は,本件災害復旧工事の請負契約に基づく請負代金について, 提訴時には工事内訳を明らかにせず,平成15年3月11日に実施された第3回口頭弁論期日において,同工事の見積書を提出することにより,工事内訳及び代金額を特定した。 原告は,同年5月20日付け請求拡張申立書により,請求金額を1935万3000円(そのうち,本件災害復旧工事関係は182万6000円であった。以後この金額に変更はなかった。)に,同年11月18日付け請求拡張申立書2により,請求金額を2576万6000円に,平成16年12月13日付け請求の拡張申立書により2757万1000円にそれぞれ拡張した。最初の請求拡張申立てにおいて主張された,前訴造成工事における原告 により,請求金額を2576万6000円に,平成16年12月13日付け請求の拡張申立書により2757万1000円にそれぞれ拡張した。最初の請求拡張申立てにおいて主張された,前訴造成工事における原告施工の工事内容及び数量は,別紙3の「上大隈農園緑地公園造成工事(第二工区)工事比較表」のとおりであった。そして,原告は,請書を提出した要求書①添付に係る内訳表①に記載された減工分について,「当初計画どおり完成のため,±減工とは認められない。」と主張した(別紙3の備考欄参照)。 (A2,54ないし58)タ最初の請求拡張の申立てがなされた後である平成15年8月ころ,旧宮田町企画財政課において,今後,原告に対する指名を継続することにより,一旦入札により決定した工事代金を後に不当に増額請求するなど前訴と同様の紛争が再発することを懸念して,何らかの対策がとれないかとの話が持ち上がり,原告を指名業者として選定しないことが検討された。そして,このころ,旧宮田町町長は,弁護士にも相談した上,前訴における原告の主張及び請求が,旧宮田町選定要綱11条3号の「不誠実な行為」に該当すると判断し,前訴が裁判所に係属する間は,各工事の入札において,原告を指名業者として選定しないことを決定した。 本件指名回避については,平成17年3月9日から同月24日まで実施された平成17年第1回旧宮田町議会定例会において,議員による原告に 対する入札排除の事実の有無に関する質問に対し,同町企画財政課長Gは,原告について「指名停止はいたしておりませんが,指名回避という形で実質上指名は行っておりません。理由としては,私の方はかかる債権,町に対する債権がないにもかかわらず,債権があるというようなことを言われておるということで,今後指名をすれば,町に損害 回避という形で実質上指名は行っておりません。理由としては,私の方はかかる債権,町に対する債権がないにもかかわらず,債権があるというようなことを言われておるということで,今後指名をすれば,町に損害を与える可能性があるということで指名回避をいたしております。」と発言した。 (A6,B11,証人G)チ前訴の第1審においては,変更設計図が不正確であるとの原告の主張に対し,旧宮田町は,同町が主張する変更契約の内容の相当性を裏付けるため,変更設計図が前提とする現況地盤線の正確性の立証に時間を費やし,さらには,原告申請の鑑定も採用したことなどにより,口頭弁論の回数は25回を重ねるに至った。原告は,平成17年2月23日付けの最終準備書面においても,「要求書①及びその請書には,仕様書《内訳表①》は添付されておらず,変更契約は成立していないので,各変更契約は変更図面を交付する際に『請負代金を相当額と定めて』成立したとしか考えられない。本件災害復旧工事については,工事現場でA課長から原告に直接指示があって取り掛かったものであり,本件請負契約とは別個に契約がなされたものである。」と主張していた。これに対して旧宮田町は,「変更契約における工事代金の増減は0円である。本件災害復旧工事の施工をA課長を含む被告職員が申し入れた事実はなく,原告が自Fの判断でなしたものであり,工事は当時未完成であって原告の責任において施工すべきものである。」と主張した。 前訴の第1審判決は,平成17年4月21日に言い渡され,結局,旧宮田町と原告JVとの間で,原告が主張するような変更契約が成立したとは認められないことを理由に,原告の請求を棄却した。なお,同判決では,要求書①には,内訳表①は添付されていなかったと認定された。 (A2,6 原告が主張するような変更契約が成立したとは認められないことを理由に,原告の請求を棄却した。なお,同判決では,要求書①には,内訳表①は添付されていなかったと認定された。 (A2,60,B23の1・2)ツ原告は,上記判決に対して控訴した(福岡高等裁判所平成17年(ネ)第567号請負代金請求控訴事件)。福岡高等裁判所は,平成18年5月16日言渡の判決において,原告の控訴を棄却した。控訴審判決は,要求書①,②にはそれぞれ内訳表①,②が添付されていたと認定し,これによれば,工事内容の増減を調整して工事代金額を増額するとの合意はなされておらず,完成検査で合格とされた施工結果について,合併後の被告が,合意された額以上の請負代金支払義務を負うことはないと判断した。さらに本件災害復旧工事代金についても,一担当課長であるA課長が別途復旧工事につき契約を締結する権限を有するはずがないとし,さらに,原告が控訴審において追加した不当利得が成立するとの主張についても,旧宮田町は本件請負契約に基づき対価を支払っており,法律上の原因なくして旧宮田町が利得し,原告JVが損失を被ったということはできないとして,原告の主張を退けた。(A3)テ旧宮田町は,上記チの第1審判決が言い渡された後,原告の指名回避を継続するか否かについて検討をしたが,原告が控訴したため,指名回避を続けることとした(証人G)。 ト原告は,上記ツの控訴審判決に対して上告及び上告受理申立てをしたが,平成18年10月3日,「本件上告を棄却する。本件を上告審として受理しない。」との決定がなされて,前訴は確定した(A4,63,64)。 ナ原告は,前訴の確定後,被告発注の公共工事の指名競争入札に参加できるようになり,平成19年1月17日には,別表「平成4 しない。」との決定がなされて,前訴は確定した(A4,63,64)。 ナ原告は,前訴の確定後,被告発注の公共工事の指名競争入札に参加できるようになり,平成19年1月17日には,別表「平成4年度ないし平成18年度において,宮田町及び宮若市が原告に発注した工事」記載のとおり,尾園工事を請け負った。 その後,原告は,同年7月にも被告から指名競争入札における入札参加業者に選定されたが,原告は,入札方式が郵便入札制度となったにもかか わらず,当該工事の入札参加者であるという建設業者より電話が入るなどしたことを理由に入札辞退届を提出し,さらに平成20年12月にも指名競争入札における入札参加業者に選定されたが,原告は,被告に対して,これまで指名回避されてきたのに,なぜ指名されたか不明である旨の質問状を提出したが,入札書提出期限までに回答がなかったため,入札を辞退した。その後,原告は,被告の平成21年1月15日付け回答書を受け取ったが,その回答書には,指名回避の理由として,「原告が入札で工事を落札した場合,不合理な請求をされる蓋然性が高く,発注者として多大なリスクを負うことが懸念されるので,裁判所に係属している期間は業者として選定していないが,最高裁の決定以後は,原告が最高裁決定を真摯に受け止め,以後,不合理な請求をすることがないと判断したため,指名業者として選定している。」と記載されていた。 (A36,原告代表者)ニその後,原告は,平成21年1月28日にも,2件の指名競争入札の入札参加業者に選定されたが,1件の指名競争入札の参加業者から電話があったことなどを理由に辞退した(A36)。 (2)ア上記⑴ウの認定に対し,原告は,国土交通地理院による航空写真(A50ないし52の各1・2,81の1な の指名競争入札の参加業者から電話があったことなどを理由に辞退した(A36)。 (2)ア上記⑴ウの認定に対し,原告は,国土交通地理院による航空写真(A50ないし52の各1・2,81の1ないし6)及び付近住民の陳述書(A83)を提出して,前訴造成工事現場の「Aゾーン」と呼ばれていた部分(旧貝島炭坑社宅の跡地)の地盤高は一定であったと主張する。 この点については,前訴において,旧宮田町は,「契約締結時に用いられた測量図面は昭和57年ころに作成されたもので,その後の昭和63年に前訴造成工事現場から大量の土が搬出されており,契約当初の図面は不正確であり,平成10年に新たに『Aゾーン』付近を測量した上作成した図面が正確である。」と主張し,これに沿った立証をしていたことが認められるところ(A2,3,B23の2),上記航空写真によれば,前訴造 成工事現場は元貝島炭坑の社宅の跡地であり,昭和60年ころには社宅は撤去されており,平成2年ころには社宅跡地の表面に変化が生じていることが認められるものの,前訴造成工事現場の地盤高に変化があったか否かは不明といわざるを得ない。そして,他に上記ウの認定を覆すに足りる証拠はない。 イ上記カの認定に対し,原告は,要求書①には,内訳表①は添付されていなかったと主張するが,次の理由により,原告の上記主張は採用できない。 (ア)要求書①は,本文が1枚の旧宮田町町長作成名義の原告JV宛ての文書で,「工事名『上大隈農園緑地公園造成工事(2工区)』の内容を『別紙仕様書及び図面』のとおり変更したいので平成11年3月29日までに契約変更請書を提出されたい。工事代金の変更増減額は0円であり,変更後の請負額は1億1550万円,工期は従前どおり同年5月28日までとする。」旨が記載され, 変更したいので平成11年3月29日までに契約変更請書を提出されたい。工事代金の変更増減額は0円であり,変更後の請負額は1億1550万円,工期は従前どおり同年5月28日までとする。」旨が記載され,被告が提出する要求書①の控え(B16の1・2)には,町長,助役,収入役,財政課長,課長補佐,係長,課長及び係の欄にそれぞれ決裁印が押捺されており,また,平成11年3月29日付けの契約変更請書(B17の1・2)は,原告JVの構成員として原告及び有限会社地建が連名で記名押印し,さらに連帯保証人である貝島工営株式会社も記名押印した旧宮田町町長宛ての書面であり,要求書①とほぼ同内容の記載がなされるとともに,本文中で「『別紙設計仕様書及び図面』のとおり契約内容変更の要求を受けましたが当該要求のとおり変更を承諾します。」と記載されているのであって,以上の要求書①や上記請書の作成経過等に照らすと,このように多数の関係者が,「別紙仕様書及び図面」の添付がないのに,これらの書類を承認したとは到底考えられないところである。 (イ)原告は,要求書②と内訳表②はホッチキスで止めてあったが,要求 書①にはホッチキスで止めた跡がないと主張する。しかし,前訴において,原告が提出したA4の1(要求書①)の原本につき,ホッチキスの綴じ跡が確認された形跡はなく(被告が提出したB4の1・2《要求書①》については,第2回口頭弁論期日で,ホッチキスの綴じ跡3か所が確認されたようである。),他に上記主張を裏付けるに足りる証拠もないのであって,上記認定を覆すことはできない。 (ウ)そもそも,旧宮田町が内訳表①の添付がない要求書①だけを原告に交付して,請書を提出させ,事後的に,原告に内密に内訳表①を作成して添付する意図を有していたのであれば,内訳表②を添付した要 (ウ)そもそも,旧宮田町が内訳表①の添付がない要求書①だけを原告に交付して,請書を提出させ,事後的に,原告に内密に内訳表①を作成して添付する意図を有していたのであれば,内訳表②を添付した要求書②を,あえて作成して原告に交付することはなかったものと考えられ,要求書①に内訳表①が添付されていたことを前提にしなければ,その後の旧宮田町の行動を合理的に説明することはできない。 ウ原告は,上記⑴シで認定した平成11年10月ころの面談において,A課長が原告に対し,同課長の在職期間4年間のうちに,毎年1000万円程度の工事を発注することで埋め合わせをしたいと提案したと主張する。 しかし,D医師は,A課長が「在職期間である4年間のうちに,どうにかして原告にお金を返したい。」との提案をしたと供述するが,他方,原告代表者は,A課長が「1000万円ずつ払う。」と言ったと供述し,両名の供述は食い違っている上,原告の上記主張とも異なっている。また,原告代表者は,A課長に対して,全体の損害額を示したことはないと供述しているところ,そうであれば,A課長が上記のような金員の支払を約束する合理的な理由はないことになる。さらに,D医師は,陳述書(A31)に「毎年1000万円ずつ返す。」と記載していたにもかかわらず,その点の供述を曖昧にするに至っており,また,平成11年10月ころにA課長が提示した工事代金と原告代表者が提示した工事代金との間には2000万円位の差があったと供述するが,これも,原告代表者の供述とは 異なっている。以上の両名の供述内容に照らすと,D医師及び原告代表者の上記供述部分はいずれも直ちには採用できないというべきである。 エ D医師は,上記⑴シで認定した平成11年12月のE助役との話合いにおいて,E助役から,追 容に照らすと,D医師及び原告代表者の上記供述部分はいずれも直ちには採用できないというべきである。 エ D医師は,上記⑴シで認定した平成11年12月のE助役との話合いにおいて,E助役から,追加工事を発注することにより原告に生じた損失の穴埋めをすることで納得してもらえないかという提案があったと供述する。 しかし,そもそも,上記のとおりD医師の供述には信用できない部分が多い上,上記⑴コで認定したとおり,原告からの増減表に基づく協議に対しては,A課長がむしろ旧宮田町が過払いの状況にあると説明していたことに照らすと,D医師の上記供述部分も到底信用することができない。 (3)そこで,上記⑴の事実に基づいて検討する。 ア(ア)原告は,平成3年度以降,Aランクに格付されて公共工事の指名競争入札に参加し,公共工事を請け負ってきたのであるから,原告代表者は,本件請負契約で定められているように,請負金額の変更等には町との協議による書面の作成が必要であることや,公共工事の発注については,これが予算措置を講じる必要から契約書の作成が必要であることは,知悉していたものと推認することができる。ところが,原告代表者は,要求書①,②には明確に請負代金額の増減はない旨が記載してあり,他にその増額を認めた書面は作成されていないのに,平成11年7月ころ,単価の違いにより直接工事費で180万6011円の増額になる旨が記載された増減表(B24の1)を旧宮田町に提出したのを皮切りに,第三者を立てて工事代金の増額等を求めたり,当初の請負代金合計1億1550万円の支払終了後の平成12年以降には,旧宮田町の町議会議長や町議会に陳情をしたり,同町の監査委員に措置請求をするなどし,ついには,平成14年11月5日前訴を提起し,自己の主張を有利にするため,請書 円の支払終了後の平成12年以降には,旧宮田町の町議会議長や町議会に陳情をしたり,同町の監査委員に措置請求をするなどし,ついには,平成14年11月5日前訴を提起し,自己の主張を有利にするため,請書を提出していた要求書①には内訳表①が添付されていなかったなどという虚偽の主張をして,上記請負代金額の1割(請求拡張後は 2割)を超える高額な残代金の支払を求めたものであり,また,本件災害復旧工事については,旧宮田町との書面を交わすこともなく,A課長の指示のみで本件請負契約とは別の契約が成立したと主張して,旧宮田町に182万円余りの支払を求めたものである。 (イ)ところで,競争入札における入札金額は,本来請負人が自らの責任で設計図面に基づいて積算し,採算を検討した上で決定するものである。 そして,公共工事における経済性の観点から,入札制度を採用して,最低制限価格の範囲内で最低の金額を入札金額とした入札参加業者と請負契約を締結して,公共工事を発注しているのであるから,請負工事においては,現実に工事を施工するに当たって,工事内容に変更が生じる事態は想定されるものの,その場合でも,工事内容の変更や請負代金の変更に当たっては,経済的合理性の観点から,事後の紛争の発生を防止するべく,その手続等を契約において定め,かつこれを遵守することが必要であると解される。本件請負契約において,工事の変更等について定めが設けられているのも,かかる趣旨に基づくものであると解される。 しかるに,原告代表者は,本件請負契約上,請負残代金を請求することはできないことを知りながら,あえて前訴を提起し,虚偽の事実を交えた主張をしてこれを追行したものであって,このような前訴の提起・追行は,一旦,低い入札金額において公共工事を落札しておきながら,事後的に自 ないことを知りながら,あえて前訴を提起し,虚偽の事実を交えた主張をしてこれを追行したものであって,このような前訴の提起・追行は,一旦,低い入札金額において公共工事を落札しておきながら,事後的に自らが主張する不足額の填補を求めるに等しく,公正な競争の形成を阻害するものであり,経済性(価格の有利性)の観点から採用されている競争入札の趣旨を没却するものというべきである。そうすると,旧宮田町において,今後も原告を指名業者として選定し,その結果原告が落札して原告と請負契約を締結した場合には,同様の主張を展開する可能性があると判断したことには合理的な理由があると認められ,それは,同時に,旧宮田町選定要綱及び被告選定要綱の各11条3号に規定 する「不誠実な行為」にも該当する。そして,原告は,前訴の係属中,一貫してその主張を続けていたのであるから,原告による上記「不誠実な行為」は,その間も継続していたものと評価できるものである。 以上によると,原告による前訴の提起・追行は,競争入札における公正な競争を阻害するものであり,今後契約の相手方とした場合に,住民全体の共同の利益を害する蓋然性があり,その状態が継続していたものと認められ,本件指名回避をもって,裁量権の逸脱又は濫用があったということはできない。 イ(ア)これに対し,原告は,原告代表者とA課長のやりとりや,D医師とE助役とのやりとりなどが白日の下に晒されることを懸念して,原告を兵糧攻めにするために,本件指名回避を決定したものであって,本件指名回避は恣意的な判断に基づくものであると主張する。 しかし,原告主張のやりとりがあったとするD医師の供述や原告代表者の供述が採用できないことは,上記ウ,エのとおりである。さらに,原告の主張によっても,被告らが本件指名回避を決定し 。 しかし,原告主張のやりとりがあったとするD医師の供述や原告代表者の供述が採用できないことは,上記ウ,エのとおりである。さらに,原告の主張によっても,被告らが本件指名回避を決定したことは原告には伝えられていなかったというのであるから,これと,本件指名回避が原告主張のやりとりの公表を未然に防ぐためになされたこととは矛盾するものであって,到底認められない。また,旧宮田町がE助役による追加工事を発注するとの発言の実現を迫られることを避けようとしたとの点についても,指名競争入札はあくまでも落札することが請負契約を締結する前提であるから,本件指名回避を決定する動機になるとは認められない。以上によると,本件指名回避は,原告が主張するような理由による恣意的な判断に基づいて決定されたものであると認めることはできない。 (イ)また,原告は,本件指名回避は指名停止の長期上限を著しく超えるものであるのに,行政手続法13,14条に定めるような,意見陳述の 機会を与えられていないし,処分理由の告知も受けていないと主張する。 しかし,本件指名回避は事実行為であって,行政手続法にいう不利益処分には当たらないから(行政手続法2条4号イ参照),本件指名回避に同法の適用がないのはもちろん,本件指名回避に当たり,意見陳述の機会を与えず,処分理由を告知しなかったとしても,それだけでは,本件指名回避は違法とはならないというべきである。 なお,原告は,本件指名回避が指名停止の長期上限を著しく超えていると主張するところ,確かに,本件指名回避は前訴が確定するまでの3年以上にわたってなされており,その期間は,旧宮田町措置要綱及び被告措置要綱の各3条における「業務に関し」「不誠実な行為」をした場合の指名停止期間の上限である9か月を超過 避は前訴が確定するまでの3年以上にわたってなされており,その期間は,旧宮田町措置要綱及び被告措置要綱の各3条における「業務に関し」「不誠実な行為」をした場合の指名停止期間の上限である9か月を超過しているのであるが,上記アのとおり,原告の「不誠実な行為」は継続していたものであるから,完結した1個の行為に長期間指名回避が続けられたわけではなく,これを同列には論じることができない。そもそも,本件指名回避が長期に及んだのは,前訴において,原告の請求内容が3度にわたって変更され,その根拠についても当初から確定していたものではなかったことや,その立証も十分なものではなく,そのため鑑定が採用されるなどして,結果的に長期化したものであって,むしろ,原告の責めに帰するものであったというべきである。 第4 結論以上によると,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。 福岡地方裁判所飯塚支部 裁判長裁判官川久保 政 裁判官西 森 みゆき 裁判官神田温子
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