主文 1 原告ら及び参加人の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、原告らに生じた費用の全部と被告に生じた費用の3分の2を原告らの負担とし、被告に生じたその余の費用と参加人に生じた費用の 全部を参加人の負担とする。 事実 及び理由第1 請求の趣旨 1 第1事件被告は、原告ら各自に対し、77万円及びこれに対する平成30年6月18 日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件被告は、参加人に対し、77万円及びこれに対する平成30年6月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告ら及び相原告であったC(以下「C」という。)は、大阪入国管理局収容場(以下「本件収容場」という。)に収容されていた。 本件は、原告らが、本件収容場において、入国警備官らから、他の被収容者らと共に合計17名で定員6名の居室に24時間以上にわたり監禁されるなど の違法な加害行為を受け、精神的損害を被ったと主張して、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、それぞれ損害賠償金77万円及びこれに対する不法行為の終了日である平成30年6月18日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、参加人が、Cから上記同様の請求権を譲り受け たと主張して、民訴法49条、47条1項に基づく権利承継人の訴訟参加をし、 被告に対し、国賠法1条1項に基づき、上記同様の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実以下の事実は、争いがないか、後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 (1)当事者等ア原告Aは、 記同様の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実以下の事実は、争いがないか、後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 (1)当事者等ア原告Aは、1969年(昭和44年)7月生まれのパキスタン国籍の男性であり、原告Bは、1965年(昭和40年)1月生まれのナイジェリア国籍の男性であり、Cは、1973年(昭和48年)9月生まれのペルー国籍の男性であり、いずれも平成30年6月17日(以下、月日は特記 しない限り平成30年のものである。)当時、退去強制令書の執行により、本件収容場に収容されていた。 イ本件収容場は、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)に基づき設けられた収容場であり、入管法に基づき本件収容場の警備等をする入国警備官(以下、当時の大阪入国管理局ないし本件収容場の入国警 備官を単に「入国警備官」という。)は、国家公務員である。 (2)関連法令等の定め本件に関係する入管法、被収容者処遇規則(令和6年法務省令第37号による廃止前のもの。以下「処遇規則」という。)並びに国際連合の市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「自由権規約」という。)及び 被拘禁者処遇最低基準規則(以下「マンデラ・ルール」という。)の定めは、別紙のとおりである。 (3)本件収容場の状況本件収容場の7階はA~D区域に分けられ、そのA区域(以下、単に「A区域」という。)にA1~A10号室があり、各居室の定員は最大6名であ る。6月17日当時、A区域には、各居室に3名前後ずつ合計25名が収容 され、原告AにはA8号室、原告BにはA2号室、CにはA6号室がそれぞれ居室として割り当てられていた(乙9)。A1号室(以下「本件居室」という。)は、広さが約20㎡(5. 合計25名が収容 され、原告AにはA8号室、原告BにはA2号室、CにはA6号室がそれぞれ居室として割り当てられていた(乙9)。A1号室(以下「本件居室」という。)は、広さが約20㎡(5.38m×3.80m。約12畳)、天井の高さが約3mであり、室内に2段ベッド3台、テーブル1台、椅子4脚等が置かれ、当時被収容者3名の居室とされていた。本件居室とホールとの間 には窓があり、ホールから室内が見える構造になっている。 (4)本件収容場の日課等ア 6月17日当時の本件収容場の日課等は以下のとおりであった。 7時00分起床7時30分清掃 8時00分朝食9時00分朝の点呼9時30分~11時30分開放処遇12時00分昼食13時30分~16時30分開放処遇 17時00分夜の点呼17時30分夕食22時00分就寝イ開放処遇の時間帯には、原則として、各居室の扉が開錠され、被収容者らが、各区域内において、自由に居室間を行き来したりホールを使用した りすることができることとされていた。 (5)本件施錠等ア 6月17日(日曜日)11時58分頃、本件居室内に原告ら及びCを含む被収容者17名がいたところ、入国警備官らは、本件居室の扉を施錠した(以下「本件施錠」という。)。 イ 6月17日13時37分頃、入国警備官らは、ホールにビデオカメラを 設置し、本件居室の撮影を始めた(以下「本件撮影行為」という。)。 ウ 6月18日7時58分頃、大阪北部地震が発生し、本件収容場が所在する大阪市住之江区では震度4の揺れがあった(乙13)。 エ 6月18日12時16分頃、A区域に入国警備官ら37名が集まり、本件施錠を解除し、本件居室内の被収容者らを本来の居室に連行した。 場が所在する大阪市住之江区では震度4の揺れがあった(乙13)。 エ 6月18日12時16分頃、A区域に入国警備官ら37名が集まり、本件施錠を解除し、本件居室内の被収容者らを本来の居室に連行した。 (6)参加人の訴訟参加等Cは、第1事件において、被告に対し、原告らと同様の請求権を行使していたが、令和5年3月、参加人に対し、上記請求権を譲渡した(丙1)。参加人は、同年11月、上記請求権を譲り受けたことを主張して、第1事件につき、独立当事者参加の申出をした(第2事件。民訴法49条、47条1項 に基づき、権利承継人の訴訟参加をしたものと解される。)。Cは、令和6年11月の本件進行協議期日において、請求を放棄した。 3 争点及び当事者の主張本件の主な争点は、違法な加害行為の有無(争点1)及び損害(争点2)である。 (1)争点1(違法な加害行為の有無)について(原告ら及び参加人の主張)ア本件施錠及びその継続は、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱した行為であり、憲法18条、31条、36条、自由権規約7条、9条1項、10条1項、入管法61条の7(令和5年法律第56号による改正前のも の。以下同じ。)、処遇規則1条、2条(平成31年法務省令7号による改正前のもの。以下同じ。)、17条の2、マンデラ・ルールの規則43柱書等に違反し、国賠法上違法な加害行為である。 イ本件撮影行為は、原告ら及びCのプライバシーを侵害し、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱した行為であり、入管法61条の7及び自由権 規約10条1項に違反し、国賠法上違法な加害行為である。 ウ原告ら及びCは、本件施錠継続中、家族や弁護士に電話をかけたいと求めたが、入国警備官らは、これを許さず、電話回線を遮断した(以下「本件電 1項に違反し、国賠法上違法な加害行為である。 ウ原告ら及びCは、本件施錠継続中、家族や弁護士に電話をかけたいと求めたが、入国警備官らは、これを許さず、電話回線を遮断した(以下「本件電話不提供」という。)。本件電話不提供は、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱した行為であり、国賠法上違法な加害行為である。 エ入国警備官らは、本件施錠継続中、原告ら及びCに対し、飲料水の提供 を拒否した(以下「本件飲料水不提供」という。)。本件飲料水不提供は、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱した行為であり、入管法61条の7及び処遇規則1条に違反し、国賠法上違法な加害行為である。 オ原告ら及びCは、本件施錠継続中、医師から処方された薬を提供するよう再三求めたが、入国警備官らは、これを拒否するなどした(以下「本件 処方薬不提供」という。)。本件処方薬不提供は、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱した行為であり、処遇規則30条1項に違反し、国賠法上違法な加害行為である。 カ入国警備官らは、大阪北部地震の発生後、原告ら及びCに対し、十分な安全確保措置を講じなかった(以下「本件地震不対応」という。)。本件 地震不対応は、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱した行為であり、処遇規則17条1項に違反し、国賠法上違法な加害行為である。 (被告の主張)ア原告ら及び参加人の主張(以下、主張の主体に関しては、原告らと参加人を併せて「原告ら」という。)アは、否認ないし争う。本件施錠は、当 時生じていた保安上の支障に対処するために、開放処遇の終了としてされ、本件施錠継続は、継続していた保安上の支障に対処するためにされ、いずれも必要かつ合理的でやむを得ない措置であったから、国賠法上違法と評価される余地はない。 イ原告らの主張 処遇の終了としてされ、本件施錠継続は、継続していた保安上の支障に対処するためにされ、いずれも必要かつ合理的でやむを得ない措置であったから、国賠法上違法と評価される余地はない。 イ原告らの主張イは、争う。本件撮影行為は、被収容者による本件居室内 の器物損壊等の遵守事項違反に備えた記録のためにされ、保安上必要かつ 合理的な措置であったから、国賠法上違法と評価される余地はない。 ウ原告らの主張ウは、否認ないし争う。入国警備官らがホールに設置されていた電話の回線を遮断した措置は、保安上の支障が認められる中でとった必要かつ合理的なものであり、本件電話不提供は、国賠法上違法と評価される余地はない。 エ原告らの主張エは、否認ないし争う。本件居室の洗面所の水道蛇口から供給される水は飲用可能な水道水であり、原告ら及びCはこれを飲むことが可能であった。 オ原告らの主張オは、否認ないし争う。入国警備官らは、原告ら及びCらの求めに応じて、薬を投与した。 カ原告らの主張カは、否認ないし争う。入国警備官らは、大阪北部地震の後、原告ら及びCらにつき十分な安全確保措置を講じた。 (2)争点2(損害)について(原告らの主張)原告ら及びCがそれぞれ被った精神的損害を金銭的に評価すると、本件施 錠及びその継続については40万円を下らず、本件撮影行為、本件電話不提供、本件飲料水不提供、本件処方薬不提供及び本件地震不対応については30万円を下らない。弁護士費用相当額は各7万円を下らない。 (被告の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、証拠(陳述書(甲15、16)、原告本人らのほか、後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)本件施錠に至る 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、証拠(陳述書(甲15、16)、原告本人らのほか、後掲のもの)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)本件施錠に至る経緯 ア 6月17日9時30分、A区域の開放処遇が開始された(乙7)。 イ 6月17日9時51分頃、本件収容場の副看守責任者(以下、単に「副看守責任者」という。)は、A区域のホールに立ち入り、原告Aに対し、原告Aから従前されていたB型肝炎検査実施の要求への対応方針として、B型肝炎ウイルスの潜伏期間を考慮して同検査は後日実施する旨説明した。 原告Aは、この説明に納得せず、大声で不満を述べ、文書で回答せよ、そ れができないのであればできない理由を文書に書いてくれなどと求めた。 その場にいた被収容者の一人は、副看守責任者に対し、「こいつは日本語が読めないんだ。」、「バカかおまえは。」などと述べた。(乙7~11)ウ 6月17日10時1分頃以降、原告Aの大声を聞きつけてA区域のホールに集まった被収容者らは、副看守責任者に対し、口々に、本件収容場に おける医療、給食、衛生面等の不満を大声で述べるとともに、「これからは自分たちでルールを作る。」、「昼食をみて満足のいかないものであればホールに集まり帰室しない。」などと述べた。同日10時39分頃、被収容者の一人は、他の被収容者らに向けて、「みんなっ、部屋に戻らないよっ、ルール守らないよっ」などと述べた。(乙7、9~11) エ 6月17日10時54分頃、本件収容場の看守責任者(以下、単に「看守責任者」という。)は、非常召集を発令した(乙9、11)。 オ 6月17日11時2分頃、原告A及びCを含む被収容者4名は、A区域のホールに座り込んだ(乙7、9)。 カ 6月17日11時 単に「看守責任者」という。)は、非常召集を発令した(乙9、11)。 オ 6月17日11時2分頃、原告A及びCを含む被収容者4名は、A区域のホールに座り込んだ(乙7、9)。 カ 6月17日11時20分頃、A区域の被収容者らに対し、開放処遇終了 時刻の10分前であることが放送で告知された(乙11)。 キ 6月17日11時30分、開放処遇の終了時刻となったため、入国警備官3名が、A区域に立ち入り、原告ら及びCを含む被収容者らに対し、帰室を指示した。しかし、A区域の被収容者25名中21名は、指示に従わず、A区域のホールや廊下に座り込んだり電話をかけ始めたりした。入国 警備官3名は、上記被収容者らに対し、自らの居室に戻るよう説得を続け た。(乙7、9~11)。 ク 6月17日11時46分頃、原告A及びCを含む被収容者5名は、他の被収容者の呼びかけに従い、本件居室に入った。その後、別の被収容者らも本件居室に入った。(乙7、9~11)ケ 6月17日11時56分頃、原告Bは、本件居室に入り(乙10)、本 件居室内の被収容者は合計17名となった。 (2)本件施錠ア 6月17日11時57分頃、看守責任者は、入国警備官らに対し、被収容者らが本来の居室に戻らない場合、そのまま各居室を施錠するよう命じた。入国警備官らは、本件居室内の被収容者らに対し、「帰室する者は今 すぐ部屋から出て、自分の部屋に戻りなさい。今から居室扉を施錠する。」と指示及び告知したが、帰室する者はいなかった(乙7、9~11)。 イ 6月17日11時58分頃、入国警備官らは、A区域の全居室を施錠した(本件施錠)。本件居室内には17名、A2号室内には5名の被収容者がいた。その後、両室内の被収容者らは、断続的に、罵声を発し、激しく 扉を蹴りつけ 頃、入国警備官らは、A区域の全居室を施錠した(本件施錠)。本件居室内には17名、A2号室内には5名の被収容者がいた。その後、両室内の被収容者らは、断続的に、罵声を発し、激しく 扉を蹴りつけるなどした。(乙7、9、11)(3)本件施錠後の状況ア 6月17日11時59分頃、A区域のホールの電話を使用していた被収容者(前記(1)キ)は、電話を終え、ホール等を徘徊していた。同日12時8分頃、入国警備官は、上記電話の回線を遮断した。(乙9、11) イ 6月17日13時7分頃、入国警備官らは、A区域の被収容者25名に昼食を支給した。しかし、原告ら及びCを含む13名の被収容者らは、昼食の搬入を拒否した。(乙7、9、11)ウ 6月17日13時37分頃、看守責任者は、A区域の被収容者らに対し、「時間どおりに部屋に戻らなかったので、今日は、ドアを開けません。」 などと数回告知した。本件居室内の被収容者らは、大声を出して扉を蹴り つけるなどした。入国警備官らは、器物損壊等の遵守事項違反に備えて、記録のため、ホールの本件居室前に三脚を使ってビデオカメラを設置し、両室の撮影を開始した(本件撮影行為)。(乙7、9~11)エ 6月17日13時43分頃、本件居室内の被収容者らは、ホールとの間の窓を毛布、シーツ等で覆い、ホールから室内が見えないようにした。こ の頃、本件居室内の被収容者らは、断続的に、暴言を発し、居室の扉を激しく蹴りつけるなどしていた。看守責任者は、複数回、上記窓の遮へい物を取り外すよう求めたが、上記被収容者らは、従わなかった。そのため、入国警備官らは、本件居室内を見ることができず、上記暴言等の行為者を特定することができなかった。(乙7、9~11、27) オ 6月17日13時58分頃、看守責任者は 従わなかった。そのため、入国警備官らは、本件居室内を見ることができず、上記暴言等の行為者を特定することができなかった。(乙7、9~11、27) オ 6月17日13時58分頃、看守責任者は、前記遮へい物により本件居室内の状況を見ることができないことから、コンセントプラグを使用した火災等の発生の防止等のため、「毛布等を取り外さなければ、居室内の電源等を切る。」などと告知したが、本件居室内の被収容者らはこれに応じなかった。そこで、入国警備官らは、本件居室のコンセント電源への電気 供給を遮断し、両室の室内照明を消灯させたが、エアコンは通常運転させ、常夜灯を最大光量で点灯させた。(乙7、9~11、27)カ 6月17日14時30分頃、本件居室及びA2号室内の被収容者らが断続的に激しく居室の扉を蹴りつけるなどしていたことから、入国警備官らは、扉の破壊、開扉の防止等のため、両室の扉の前に各10枚程度の畳を 積み上げた(乙7、9、10、28)。 キ 6月17日14時32分頃、本件居室内の被収容者が、本件居室の食器搬入口から、入国警備官のいるホールに向けて、複数の昼食の食器を投げつけた。入国警備官らは、本件居室内の様子が見えず、行為者を特定することができなかった。(乙7、9、10、28) ク 6月17日14時50分頃、本件居室及びA2号室内の被収容者らが継 続して激しく扉を蹴りつけるなどしていたことから、入国警備官らは、扉の破壊、開扉の防止等のため両室の扉の前の畳を追加した(乙7、9、10、29)。 ケ 6月17日17時15分頃、入国警備官らは、A区域の被収容者25名に夕食を支給した。しかし、A2号室内の被収容者5名は、夕食の搬入を 拒否した(乙7、9、36)。 コ 6月17日17時35分頃、原告Aは 17時15分頃、入国警備官らは、A区域の被収容者25名に夕食を支給した。しかし、A2号室内の被収容者5名は、夕食の搬入を 拒否した(乙7、9、36)。 コ 6月17日17時35分頃、原告Aは、入国警備官に対し、不満を述べ、本件居室の食器搬入口から夕食の食器等を投げつけた。入国警備官は、注意をしたが、原告Aは食器搬入口を手でたたくなどしながら、大声で更に不満を述べた(乙7、9、10、12、37)。 サ 6月17日21時50分頃、看守責任者は、22時の消灯時間後の不穏行動に備えて入国警備官5名の非常召集を発令した(乙9、11)。 シ本件居室内の被収容者らは、6月17日22時3分頃、22時13分頃、22時18分頃、22時24分頃、22時30分頃、22時42分頃、22時55分頃、23時03分頃、23時8分頃、23時14分頃、23時 19分頃、23時54分頃、6月18日0時7分頃、0時15分頃、0時20分頃、0時31分頃、0時40分頃、0時49分頃、1時2分頃、1時23分頃、1時35分頃、1時47分頃、2時頃、2時11分頃、2時28分頃、2時38分頃、2時48分頃、2時55分頃に、それぞれ激しく扉を蹴りつけるなどした。入国警備官らは、上記行為が継続している間、 本件居室の前で待機し、畳を押さえるなどの対応をしていた。同日3時頃、上記行為が止んだ後も、上記行為が再開されて扉の破壊等がされるのに備えて、入国警備官複数名が、夜明けまで数時間にわたり、本件居室の前で待機していた。(乙7、9、10)(4)地震の発生 ア 6月18日7時58分頃、大阪北部地震が発生した。入国警備官らは、 本件居室内の被収容者らに対し、地震による建物への影響等を確認中である旨を伝えるとともに、避難誘導経路の確保及び全区域の 6月18日7時58分頃、大阪北部地震が発生した。入国警備官らは、 本件居室内の被収容者らに対し、地震による建物への影響等を確認中である旨を伝えるとともに、避難誘導経路の確保及び全区域の施設点検をし、施設、電気・水道等のライフライン、被収容者らに異状のないことを確認したが、地震により本件収容場内のエアコンは停止した(乙7、9、10、13、14)。 イ大阪北部地震の発生により、近畿圏の各鉄道やバス等が運休し、多数の入国警備官らの出勤に支障が生じた(乙9、15)。 ウ 6月18日8時15分頃、入国警備官らは、本件居室内の被収容者らに朝食を支給した(乙10)。 エ 6月18日8時20分頃、入国警備官らは、地震による建物への影響が なかったことなどを本件居室内の被収容者らに説明した(乙9、10)。 (5)本件施錠の解除ア 6月18日11時45分頃までに、本件居室内の被収容者らを本来の居室に戻らせるため、入国警備官ら37名が集められ、同日12時16分、本件施錠が解除された。 イ 6月18日12時16分頃~12時25分頃の間、入国警備官らが、本件居室内の被収容者17名中14名(3名は本件居室が本来の居室)を順次、本来の居室へ連行した。被収容者らは、抵抗することはなかった。 (乙9、10、16、17)(6)処方薬等の投与 ア入国警備官らは、本件施錠継続中、被収容者らに対し、処方薬や救急常備薬を投与したほか、求めに応じて血圧測定を実施したり検温したりした(乙7、9、22、23、27~46、57、58)。 イ 6月17日15時32分頃、入国警備官は、Cに対し、頭痛の訴えを受けて救急常備薬であるセデス(市販の解熱鎮痛薬)を投与した(乙9、2 3、31、32)。入国警備官は、6月18日の朝食支 イ 6月17日15時32分頃、入国警備官は、Cに対し、頭痛の訴えを受けて救急常備薬であるセデス(市販の解熱鎮痛薬)を投与した(乙9、2 3、31、32)。入国警備官は、6月18日の朝食支給後である8時5 3分、Cに対し、朝食後の定時薬であるエナラプリルマレイン酸塩錠(高血圧等の薬)を投与した(乙9、22)。当時、Cに対しては、定時薬として上記薬が、頓用としてロキソプロフェン錠(解熱鎮痛薬)等3種類の薬が処方されていた(乙22、57)。 ウ 6月17日19時1分頃、入国警備官は、原告Aに対し、頭痛の訴えを 受けてセデスを投与した(乙23、41)。また、入国警備官は、原告Aの求めを受けて、同日21時51分及び23時15分に、それぞれ救急常備薬であるアレルギール(かゆみ止め等の薬)及びイララック(精神安定剤)を投与した(乙9、23、46)。当時、原告Aに対しては、頓用としてロキソニン錠(解熱鎮痛薬)等2種類の薬が処方されていた(乙57、 22)。 エ原告Bは、当時、朝食後・夕食後の定時薬としてボルタレンSRカプセル(消炎鎮痛薬)及びテプレノンカプセル「サワイ」(胃薬)の処方を受けていたが、6月17日の夕食後及び同月18日の朝食後、入国警備官に対し、上記定時薬の投与を求めなかった。原告Bは、本件施錠前である6 月17日の朝食後及び本件施錠の解除後である同月18日の夕食後にも、上記定時薬の服用を拒否していた。(乙22、57)(7)本件施錠解除後の本件居室内の状況本件施錠継続中、本件居室内の被収容者らが扉を蹴りつけたりパイプ椅子で殴りつけたりしたことによって、本件施錠解除後、上記扉は、蝶番が曲が ってスムーズに閉まらず、電子錠が正常に作動しない状態になっていた(乙17~19)。また、本件施錠 蹴りつけたりパイプ椅子で殴りつけたりしたことによって、本件施錠解除後、上記扉は、蝶番が曲が ってスムーズに閉まらず、電子錠が正常に作動しない状態になっていた(乙17~19)。また、本件施錠解除後、本件居室内から、脚がねじ切られたパイプ椅子及びねじ切られた約40cmの鉄パイプが発見された(乙18)。 2 争点1(違法な加害行為の有無)について(1)判断枠組み 令和5年法律第56号による改正前の入管法52条5項、3項は、入国警 備官が退去強制令書を執行する場合において、退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときは、送還可能のときまで、その者を入国者収容所等(入国者収容所又は収容場)に収容することができる旨定めているところ、このように収容が退去強制の執行を確保するという目的でされることなどに鑑みれば、入国者収容場等における処遇により被収容者の自由 ないし権利に一定の制約がされることは予定されているものといえる。そして、入管法61条の7第1項は、入国者収容所等の被収容者には入国者収容所等の保安上支障がない範囲内においてできる限りの自由が与えられなければならない旨定めている。これらによれば、入国者収容所等における入国警備官の被収容者に対する処遇上の職務執行行為は、それが被収容者の自由な いし権利を制約する場合においても、入国者収容場等の保安のため、すなわち規律及び秩序を著しく害する行為を制止又は抑止するために、必要かつ相当な範囲内である限り許容され、その範囲を超えていると認められるときに国賠法上違法になるものと解すべきである。 (2)本件施錠及びその継続の違法性について ア入国警備官らは、6月17日11時58分頃、室内に原告ら及びCを含む被収容者17名のいる本件居室扉を施錠 上違法になるものと解すべきである。 (2)本件施錠及びその継続の違法性について ア入国警備官らは、6月17日11時58分頃、室内に原告ら及びCを含む被収容者17名のいる本件居室扉を施錠した(本件施錠)。 前記認定事実によれば、①同日9時51分頃~10時39分頃、入国警備官に対し、A区域の被収容者らが、大声で口々に不満を述べ、暴言を吐いたほか、他の被収容者らに対し、本件収容場の遵守事項を守らな いことや、午前の開放処遇終了時の帰室を拒否することなどを呼びかけたこと、②これを受けて、A区域の被収容者25名のうち21名は、同日11時30分に入国警備官らから帰室指示を受けたにもかかわらず、ホールに座り込むなどして、入国警備官らの帰室の指示や説得に応じなかったこと、③被収容者らが、同日11時46分頃、ホールから本来の 居室ではない本件居室に入り、その後も入国警備官らから帰室の指示、 説得及び本件居室の扉を施錠する旨の告知を受けたが、その指示等に従わず、同日11時56分頃には本件居室内に17名の被収容者らがいる状況となったことが認められる。 これらによれば、被収容者らは、入国警備官に大声で口々に不満を述べ、遵守事項や入国警備官らの指示に従わない旨述べ、騒然とした状況 を生じさせ、その後も鎮静化せず、開放処遇終了時刻になっても、遵守事項に違反して本来の居室に戻らず、本件居室に17名が集まり、入国警備官らからの帰室の指示及び説得に応じなかったのであるから、入国警備官らが、上記の指示及び説得に加えて、指示に従わない場合はそのまま各居室の扉を施錠する旨の告知をするなどの手段を尽くした後、本 件施錠をしたことは、本件収容場の規律及び秩序を著しく害する行為を制止又は抑止するために必要かつ相当な範囲内の職務執行 はそのまま各居室の扉を施錠する旨の告知をするなどの手段を尽くした後、本 件施錠をしたことは、本件収容場の規律及び秩序を著しく害する行為を制止又は抑止するために必要かつ相当な範囲内の職務執行行為であったといえる。 イ入国警備官らは、6月18日12時15分頃まで本件施錠を継続した。 前記認定事実によれば、前記ア①~③の経緯で本件施錠がされた後、 ④本件居室内の被収容者らが、同日3時頃までの間、断続的に、本件居室の扉を蹴りつけたりパイプ椅子で殴りつけたりしていたほか、入国警備官らに対し、大声で暴言を吐き、食器を投げつけるなどの激しい行為に及ぶこともあったこと、⑤上記行為は、事後的に見れば同日3時頃以降に鎮静化したものの、入国警備官らにとってはその時点でそれが鎮静 化したか否かは不明であり、その頃以降も入国警備官複数名が夜明けまで本件居室前に待機して上記行為に備えていたこと、⑥本件撮影行為が開始された6月17日13時58分頃以降、本件居室内の被収容者らが、ホールとの間の窓を毛布等で覆ったため、入国警備官らにおいて、本件居室内の様子を見ることができなくなり、更なる危険行為がされるおそ れに備える必要が生じたこと、⑦本件施錠を解除する場合には、本件居 室内の被収容者17名について、再び上記のような激しい行為に及ぶ危険に備えつつ安全に本来の居室に連行することができるだけの入国警備官らの人数を確保する必要があったところ、6月18日3時以降の深夜ないし早朝の時間帯にはその確保が困難であり、同日7時58分頃の大阪北部地震の発生後には交通機関の乱れによりその確保が困難となり、 その人数として37名を集めることができたのは同日11時45分頃であったこと、⑧本件施錠継続中、入国警備官らは、本件居室内の被収容者ら 震の発生後には交通機関の乱れによりその確保が困難となり、 その人数として37名を集めることができたのは同日11時45分頃であったこと、⑧本件施錠継続中、入国警備官らは、本件居室内の被収容者らに対し、昼食、夕食及び朝食を提供したほか、求めに応じて、処方薬や救急常備薬を提供し、血圧測定や検温を実施するなどしており、本件施錠継続により上記被収容者らの健康等を害することがないような措 置を講じていたことが認められる。 これらによれば、本件施錠後約15時間にわたって、本件居室内の被収容者らが、断続的に、扉を蹴りつけ、パイプ椅子で殴りつけるほか、入国警備官らに対し、大声で暴言を吐き、食器を投げつけるなど、A区域の規律及び秩序を著しく害する行為を続けており、上記約15時間の 経過後も入国警備官らにとってそれが鎮静化したか否かが不明な状況が続いており、その後、上記被収容者17名を安全に本来の居室に戻すことができるだけの入国警備官の人数を確保するために本件施錠の解除の直前までかかったことはやむを得なかったといえることなどからすれば、入国警備官らが、本件施錠後24時間余りにわたりそれを継続したこと は、本件収容場の規律及び秩序を著しく害する行為を制止又は抑止するために必要かつ相当な範囲内の職務執行行為であったというべきである。 ウ以上によれば、入国警備官らの本件施錠及びその継続について、国賠法上違法な加害行為であるとはいえず、憲法18条、31条、36条、自由権規約7条、9条1項、10条1項、入管法61条の7、処遇規則1条、 2条、17条の2、マンデラ・ルールの規則43柱書等に反するともいえ ないから、これと異なる原告らの主張は採用することができない。 エ前記認定・判断に反する原告らの主張は、以下のとおり採用 条、17条の2、マンデラ・ルールの規則43柱書等に反するともいえ ないから、これと異なる原告らの主張は採用することができない。 エ前記認定・判断に反する原告らの主張は、以下のとおり採用することができない。 (ア)原告らは、入国警備官作成の8月28日付け総括報告書(乙9)は、本件施錠等のあった6月17日から2か月以上後に作成されたものであ り、特に動画等の裏付けのない同日10時頃~13時40分頃の状況に係る記載については、信用性が低い旨主張する。 しかし、上記総括報告書の記載は、全体として、入国警備官ら作成の6月17日付け看守勤務日誌(乙7)、同日付け報告書(乙8)及び同月18日付け報告書(乙11)の記載や、本件撮影行為により撮影 された動画(乙27~46)と整合するものである。6月17日10時頃~13時40分頃の状況に係る上記総括報告書の記載についてみても、上記看守勤務日誌、報告書等に記載された発言内容等をより詳細に記載したものであり、A区域のホールに常時設置されている監視カメラにより撮影された映像(音声は記録されていない。映像の一部 を写真にしたものが乙10)とも整合するということができる。原告A本人は、同日11時46分頃に本件居室に入った後、入国警備官らの帰室指示に従わなかった理由を尋ねられ、人間が興奮した状態でそのように冷静に考えることはできない旨供述したところ、これは被収容者らが入国警備官らの指示等に従わない態度を示していた旨の上記 総括報告書の記載に沿う一方、被収容者らが平穏に話合いをしていたにすぎない旨の原告らの主張に沿わないといえる。 これらによれば、前記認定事実に係る上記総括報告書の記載は信用することができ、原告らの上記主張は採用することができない。 (イ)原告らは、原告ら たにすぎない旨の原告らの主張に沿わないといえる。 これらによれば、前記認定事実に係る上記総括報告書の記載は信用することができ、原告らの上記主張は採用することができない。 (イ)原告らは、原告ら及びCは、本件収容場における不当な処遇の改善を 求めるという正当な目的で平穏な話合いを続けるために本件居室に入っ たにすぎず、これに対する本件施錠は合理的に必要な措置とはいえない旨主張する。 しかし、前記アのとおり、被収容者らは、大声で口々に不満を述べ、遵守事項や入国警備官らの指示に従わない旨述べ、騒然とした状況を生じさせ、その後も鎮静化せず、入国警備官らからの帰室の指示や説 得にも応ずることなく本件居室に17名で集まるなど、本件収容場の規律及び秩序を著しく害する行為に及んでいたということができ、平穏な話合いを続けるために本件居室に入ったにすぎないとは認められない。仮に、不当な処遇の改善を求めるという目的が正当であったとしても、被収容者らの上記のような行為は本件収容場の規律及び秩序 を著しく害するといわざるを得ず、本件施錠はそのような行為を制止又は抑止するために必要かつ相当な範囲内のものであったといえる。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 (ウ)原告らは、本件施錠の継続は、被収容者らに対し、制裁的又は懲罰的にされた拷問であるなどと主張する。 しかし、前記イで示した事情に照らせば、本件施錠の継続は、本件収容場の規律及び秩序を著しく害する行為を制止又は抑止するために必要かつ相当な範囲内のものということができ、制裁的又は懲罰的にされた拷問とはいえない。原告らの上記主張は採用することができない。 (エ)原告らは、入国警備官らが、6月17日13時58分頃に本件居室へ の電気の供給を停止 うことができ、制裁的又は懲罰的にされた拷問とはいえない。原告らの上記主張は採用することができない。 (エ)原告らは、入国警備官らが、6月17日13時58分頃に本件居室へ の電気の供給を停止した際、エアコンも停止させ、被収容者ら17名を換気不十分で悪臭の漂う狭い本件居室に長時間にわたり閉じ込めた旨主張し、原告ら本人はこれに沿う供述をする。 これに対し、被告は、6月17日13時43分頃、本件居室内の被収容者らによりとホールとの間の窓が毛布等で覆われ、入国警備官らが、 室内の様子を見ることができなくなったため、コンセントプラグを使 用した火災発生の防止等のため、同日13時58分頃、上記被収容者らに対し、遮へい物を取り外さなければコンセント電源への電気供給を停止する旨告知した上、その電気供給を停止したが、エアコンは停止する理由がないので停止していなかったところ、6月18日7時58分の大阪北部地震により本件収容場内のエアコンが停止した旨主張 し、これに沿う前記証拠を提出するところ、その内容に不合理な点はなく、被告の上記主張のとおりの事実が認められる。原告ら本人は、本件施錠後の早い時点からエアコンが停止された旨供述するが、それが停止されたと認識した根拠を十分に説明することができず、上記各供述を裏付ける証拠もないから、上記各供述は信用することができな い。地震によりエアコンが停止したことをもって、入国警備官ら何らかの義務違反があったということはできない。 本件居室内で17名の被収容者らが24時間以上すごすことになった点については、前記ア及びイのとおり、上記被収容者らが自ら本件居室に入り、帰室の指示や説得に従わない態度を示したことに加えて、 断続的に、大声で暴言を吐き、扉を蹴りつけるなど、本件収容場の規 点については、前記ア及びイのとおり、上記被収容者らが自ら本件居室に入り、帰室の指示や説得に従わない態度を示したことに加えて、 断続的に、大声で暴言を吐き、扉を蹴りつけるなど、本件収容場の規律及び秩序を著しく害する行為に及んでいたといえることなどに照らせば、本件施錠及びその継続は、上記行為を制止又は抑止するために必要かつ相当な範囲内の職務執行行為であったといえるから、上記の点を考慮しても、それが国賠法上違法であったということはできない。 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 (3)本件撮影行為の違法性について原告らは、本件撮影行為が、原告ら及びCのプライバシーを侵害し、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱する行為であり、国家賠償法上違法な加害行為であるなどと主張する。 しかし、前記(2)のとおり、本件居室内の被収容者らが、大声を出して 本件居室の扉を蹴りつけるなどしていたことからすれば、遵守事項違反行為の記録や、本件施錠及びその継続等に係る入国警備官の職務執行行為の適法性を基礎付ける事情の記録等のため、本件撮影行為をする必要性があったといえる。また、元々、本件居室は、窓を通してホールから室内が見える構造になっており、被収容者らのプライシーは、保安に支障のない限度で認めら れているものであったといえる。したがって、本件撮影行為は、本件収容場の規律及び秩序を著しく害する行為を制止又は抑止する行為ないしその適法性を基礎付ける事情の証拠化のための行為として、必要かつ相当な範囲内のものということができ、国賠償法上違法な加害行為とはいえず、入管法61条の7及び自由権規約10条1項に反するともいえないから、これと異なる 原告らの主張は採用することができない。 (4)本件電話不提供の とができ、国賠償法上違法な加害行為とはいえず、入管法61条の7及び自由権規約10条1項に反するともいえないから、これと異なる 原告らの主張は採用することができない。 (4)本件電話不提供の違法性について原告らは、本件電話不提供が、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱する行為であり、国賠法上違法な加害行為であるなどと主張する。 しかし、A区域において、電話は、ホールに設置されており、本件居室を 含む各居室内には設置されていなかったことが認められる(弁論の全趣旨)。 したがって、入国警備官らが6月17日12時8分頃にホールに設置されていた電話の回線を遮断した措置は、本件居室内の原告ら及びCらの権利を制限したものとはいえない。前記のとおり、本件施錠及びその継続が、本件収容場の規律及び秩序を著しく害する行為を制止又は抑止するために必要かつ 相当な範囲内の職務執行行為であったといえることからすれば、これに伴って上記被収容者らが外部に電話をすることができない状況となるのもやむを得ないといえる。したがって、本件電話不提供に係る入国警備官らの職務執行行為が国賠法上違法であるということはできず、原告らの上記主張は採用することができない。 (5)本件飲料水不提供の違法性について 原告らは、本件飲料水不提供が、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱する行為であり、国賠法上違法な加害行為であるなどと主張する。 しかし、本件居室内の洗面所の蛇口から出る水道水は、水質基準を満たしており(乙21の1及び2)、本件居室内の被収容者らが飲用することができたと認められるから、本件飲料水不提供があったとはいえない。 原告らは、上記水道水をそのまま飲用することができるという情報を知らず、従前これを煮沸した後に飲用しており、本 が飲用することができたと認められるから、本件飲料水不提供があったとはいえない。 原告らは、上記水道水をそのまま飲用することができるという情報を知らず、従前これを煮沸した後に飲用しており、本件施錠継続中、入国警備官が、本件居室内のコンセント電源を切ったことにより、上記水道水を煮沸することができなくなり、飲料水の提供を停止したといえる旨主張する。 しかし、原告A本人が、薬を飲むためにしょうがなく上記水道水を飲んだ 旨供述していることからすれば、原告ら及びCが上記情報を知らなかったとは考え難い。仮に、原告ら及びCが、飲料水がなくて困っていたのであれば、入国警備官らにそれを伝えて上記情報を伝えられるなどのやり取りがされるはずであるが、そのやり取りがされたとは認められないことも考慮すれば、原告らは上記情報を知っていたものと推認される。 これらによれば、原告らが本件飲料水不提供と主張する事実があったとは認められず、それに関する入国警備官らの職務執行行為は、国賠法上違法な加害行為といえない。原告らの上記主張は採用することができない。 (6)本件処方薬不提供の違法性についてア原告らは、入国警備官が、原告A及びCに対し、解熱鎮痛剤として、処 方薬であるロキソニン又はロキソプロフェン錠ではなくセデスを投与したことにつき、処方薬を投与すべき義務に違反したと主張する。 しかし、動画(乙31・19:45~20:07、乙32・2:15~2:30、乙41・9:04~9:15)によれば、原告A及びCが入国警備官に対し、自らセデスの投与を求めていたこと、そのやり取りは平穏なものであり、薬の 投与に関して不満は述べられていないことが認められ、これらによれば、 上記のセデスの投与につき入国警備官に何らかの義務違反があった めていたこと、そのやり取りは平穏なものであり、薬の 投与に関して不満は述べられていないことが認められ、これらによれば、 上記のセデスの投与につき入国警備官に何らかの義務違反があったということはできない。 イ原告らは、本件施錠継続中、原告ら及びCが医師から処方された薬を提供するよう再三求めたが、入国警備官らがこれを拒否したと主張する。 しかし、前記認定事実及び前記アの動画におけるやり取り等によれば、 入国警備官らは、原告ら及びCに対し、その求めに応ずるなどして適宜救急常備薬及び処方薬を投与していたことが認められ、原告ら及びCから処方薬の提供を再三求められてこれを拒否したことを認めるに足りる証拠はない。 ウこれらによれば、原告らが本件処方薬不提供と主張する事実があったと は認められず、それに関する入国警備官らの職務執行行為は、国賠法上違法な加害行為といえず、処遇規則30条1項に違反するともいえないから、これと異なる原告らの主張は採用することができない。 (7)本件地震不対応の違法性について原告らは、本件地震不対応が、法令が定める入国警備官らの権限を逸脱し た行為であり、国賠法上違法な加害行為であるなどと主張する。 しかし、①本件収容場の建物は、大阪北部地震による揺れ(震度4)程度であれば倒壊のおそれがない建物であり、本件収容場の災害発生時措置要領においても、その程度の地震では原則として庁舎外への避難はしないこととされていたところ、実際に上記地震によって建物に被害は生じず、避難の必 要はなかったこと(乙9、14、24)、②前記認定事実のとおり、入国警備官らは、上記地震発生後、避難誘導経路の確保、施設点検、ライフラインに異常がないことを確認した後、被収容者らに対し、上記地震によって建物に影 と(乙9、14、24)、②前記認定事実のとおり、入国警備官らは、上記地震発生後、避難誘導経路の確保、施設点検、ライフラインに異常がないことを確認した後、被収容者らに対し、上記地震によって建物に影響がなかったことなどについて説明をしたことが認められる。 これらによれば、原告らが本件地震不対応と主張する事実があったとは認 められず、それに関する入国警備官らの職務執行行為は、国賠法上違法な加 害行為とはいえず、処遇規則17条1項に反するともいえないから、これと異なる原告らの主張は採用することができない。 第4 結論以上によれば、争点2(損害)について判断するまでもなく、原告ら及び参加人の請求は理由がないからこれらをいずれも棄却することとして、主文のと おり判決する。 大阪地方裁判所第18民事部 裁判長裁判官宮崎朋紀 裁判官三浦裕輔 裁判官根間玄実 (別紙) 関連法令等の定め 出入国管理及び難民認定法(入管法)令和5年法律第56号による改正前の61条の7第1項入国者収容所又は収容場(以下「入国者収容所等という」。)に収容されている者(以下「被収容者」という。)には、入国者収容所等の保安上支障がない範囲内においてできる限りの自由が与えられなければならない。 上記改正前の同条6項前各項に定めるものを除く外、被収容者の処遇に関し必要な事項は、法務省令で定める。 被収容者処遇規則(令和6年法務省令第37号による廃止前のもの。処遇規則)1条この規則は、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)により入国者収容所又は収容場(以下「収容所等」という。)に収容されている者 年法務省令第37号による廃止前のもの。処遇規則)1条この規則は、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)により入国者収容所又は収容場(以下「収容所等」という。)に収容されている者(以下「被収容者」という。)の人権を尊重しつつ、適正な処遇を行うことを目的とする。 平成31年法務省令7号による改正前の2条入国者収容所長及び地方入国管理局長(以下「所長等」という。)は、収容所等の保安上支障がない範囲内において、被収容者がその属する国の風俗習慣によつて行う生活様式を尊重しなければならない。 17条1項所長等は、非常災害に際し、収容所等内において避難の手段がないと認めるときは、被収容者を収容所等以外の適当な場所に護送しなければならない。 17条の2 入国警備官は、被収容者が遵守事項に違反する行為をし、又は違反する行為をしようとする場合には、その行為の中止を命じ、合理的に必要と判断される限度で、その行為を制止し、その他その行為を抑止するための措置をとることができる。 30条1項所長等は、被収容者がり病し、又は負傷したときは、医師の診療を受(別紙) けさせ、病状により適当な措置を講じなければならない。 市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)7条何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、何人も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。 9条1項すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。 10条1項自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。 国連被拘禁者 れない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。 10条1項自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる。 国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール。甲13)規則43・1項どのような状況下においても、制限又は規律違反への制裁は、拷問その他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い又は刑罰にあたるものであってはならない。特に、以下の実務は禁止される。 (a)期間を限定しない独居拘禁(b)長期にわたる独居拘禁(c)暗い、ないしは常時点灯された居室への被拘禁者の収容(d)体罰又は食糧や飲料水の削減(e)集団的処罰
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