主文 被告人を懲役2年に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 本件公訴事実中死体遺棄の点については,被告人は無罪。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,被告人を暴力団員であると誤信して怖がっているAから,同人の妻であるBが被告人の現金を使い込んだとしてその返済金の名目及びBが被告人の関係するホストクラブの利用料金を未払であるとしてその未払利用料金の名目で現金を脅し取ろうと考え,Cと共謀の上,令和元年8月31日午後1時48分から同日午後2時47分までの間,大阪府内にいたAに対し,電話でCが「200万円を兄貴が立て替えてくれたので,Bに預けていたら,Bがホストクラブで使い込んだ。」などと言い,同日午後6時28分から同日午後6時32分までの間,Cが2台の携帯電話のうち一方の携帯電話でAの携帯電話に,他方の携帯電話で被告人の携帯電話に電話をかけ,Cの2台の携帯電話のスピーカーフォンの機能をいずれも作動させて被告人,C及びAの三者で通話ができる状態にした上,大阪府内にいたAに対し,被告人が「200万円はよろしく頼むぞ。」などと言い,同年9月1日午後3時23分から同月2日午前零時35分までの間,山口県内,佐賀県内,福岡県内又はその周辺にいたAに対し,電話でCが「BがホストクラブのDに50万円,Eに55万円のツケをしている。このホストクラブ2店舗は兄貴の企業舎弟が経営していて,10月に新装開店するので,ツケを9月中に回収し,兄貴に支払わないといけない。」などと言い,次いで,同月9日午後7時48分から同日午後7時50分までの間,前記同様に三者で通話ができる状態にした上,Cが,福岡県内又は山口県内にいたAに対し,被告人がBに対して「金を用意で い。」などと言い,次いで,同月9日午後7時48分から同日午後7時50分までの間,前記同様に三者で通話ができる状態にした上,Cが,福岡県内又は山口県内にいたAに対し,被告人がBに対して「金を用意できんのやったら,お前とAをさらうぞ,こらぁ。」などと怒鳴っている声を聞かせた上で,「Bが兄貴から怒られよる。やば いけん早くお金を用意した方がいいよ。」などと言い,さらに,同月23日午後4時59分から同日午後8時5分までの間,佐賀県内にいたAに対し,電話でCが「できませんじゃあ,話とおらんけんさあ。」「すいません,ごめんなさいって言ったら何でも許されるって,警察いらんやん。」などと言い,その間の同日午後5時から同日午後7時27分までの間,前記同様に三者で通話ができる状態にした上,佐賀県内にいたAに対し,被告人が「お前,弁護士入れたところで終わると思ってんのかこらー。」などと怒鳴るなどして現金合計305万円の交付を要求し,もしその要求に応じなければ,A及び同人の妻であるBの生命身体等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示してAを怖がらせ,同人から現金を脅し取ろうとしたが,同人が弁護士に相談するなどして要求に応じなかったため,その目的を遂げなかった。 (量刑の理由)被告人が暴力団員であると誤信して怖がっている被害者に対して,共犯者と一緒になって執ように脅迫文言を告げた態様は悪質であるし,喝取しようとした現金も305万円と高額である。被害者が弁護士に相談するなどして現金支払の要求に応じなかったため,犯行は未遂に終わっているが,被告人らの行為によって被害者が受けた精神的苦痛は大きく,被害者が被告人に対して厳罰を求める心情は十分に理解できる。 被告人は,かわいい妹分であるという共犯者からの依頼を受けて,自らの分け前が欲しい気持ちもあって犯行 被害者が受けた精神的苦痛は大きく,被害者が被告人に対して厳罰を求める心情は十分に理解できる。 被告人は,かわいい妹分であるという共犯者からの依頼を受けて,自らの分け前が欲しい気持ちもあって犯行に加わっているところ,そうした動機,経緯に酌むべき点はない。被告人自身,被害者から喝取しようとする現金につき,共犯者から聞いていた額に50万円を上乗せしたほか,暴力団員を装って被害者に強烈な脅迫文言を告げており,犯罪遂行において重要かつ不可欠な役割を果たしている。 他方,前記のとおり犯行は未遂に終わっていること,被告人には前科がなく,犯行を認めて反省の言葉を述べていること,父親が証人として出廷し,今後の被告人の監督を誓約したことなどの事情も認められる。 そこで,以上の諸事情を考慮し, 被告人には主文の刑を科した上で,その刑の執 行を猶予するが,猶予期間は4年間とするのが相当である。 (死体遺棄の点について無罪とした理由) 1 本件死体遺棄の公訴事実(令和元年11月19日付け起訴状記載のもの)の要旨は,「被告人は,F及びCらと共謀の上,令和元年10月20日午前5時19分頃から同日午前6時14分頃までの間,Bの死体を自動車の後部座席に積載した状態で福岡市a区bc丁目付近路上から福岡県太宰府市de丁目f番地gのインターネットカフェ『G店』駐車場に至るまで同車を走行させて同死体を運搬し,もって死体を遺棄した。」というものである。 なお,検察官は,令和2年8月7日付け回答書で,前記公訴事実中の「F及びCら」の「ら」について,Hである旨釈明した。 2 関係証拠によれば,C,F及びH(以下,この3名を「C及びFら」という。)が,前記1の公訴事実記載の時間帯に,Bの死体を自動車の後部座席に積載した状態で同車に同乗し,同公訴事実記載の地点間を同車で走 関係証拠によれば,C,F及びH(以下,この3名を「C及びFら」という。)が,前記1の公訴事実記載の時間帯に,Bの死体を自動車の後部座席に積載した状態で同車に同乗し,同公訴事実記載の地点間を同車で走行し,同死体を運搬したこと(以下「本件行為」という。)が認められる。 検察官は,本件行為が死体遺棄罪(刑法190条)の遺棄(隠匿行為)に該当し,C及びFらが本件行為を行った際,C及びFらと電話で通話していた被告人には,死体遺棄の共謀共同正犯が成立する旨主張する。これに対して,弁護人は,本件行為は死体遺棄罪の遺棄に該当せず,また仮に遺棄に該当するとしても,被告人にC及びFらとの共謀は成立しないから,被告人は無罪であると主張する。 3 そこで検討すると,関係証拠によれば,以下の事実が認められる。 FとCは,平成27年頃に知り合い,交際を始め,平成29年頃から,福岡県太宰府市にある居宅において二人で同居し,令和元年9月初旬頃からは,前記居宅においてBを含めた3人で同居していた。F及びCは,Bと同居していた期間に,Bに暴行を加えており(F及びCの各検察官調書(甲35,39,43)に加え,甲58添付の録音データ(以下「録音データ」という。)及び甲57添付の反訳書(以下「反訳書」という。)により認定できる。),本件行為の 時点で,Bの臀部や大腿部などには広範囲の傷痕があった。被告人は,Cとは20年以上にわたって付き合いがあり,Cは被告人のことを「兄貴」などと呼び,被告人はCのことをかわいい妹のような存在と思っていた。被告人は,本件行為以前に,Cを介して知り合ったFと電話で話すことがあった。 Cは,令和元年10月19日夜,福岡市a区hのホストクラブに行った後,翌同月20日(以下「本件当日」といい,時刻のみの記載は,特に断らない限り を介して知り合ったFと電話で話すことがあった。 Cは,令和元年10月19日夜,福岡市a区hのホストクラブに行った後,翌同月20日(以下「本件当日」といい,時刻のみの記載は,特に断らない限り,同日のそれを指す。)未明,Hが経営するhのバーに行った。Fは,Cから連絡を受けて,Cを迎えに行くために,午前4時30分頃,普通乗用自動車(以下「本件車両」という。)を運転して,後部座席に乗ったBとともに,hに向けて前記居宅を出発した。Fは,本件車両を運転してしばらく走行した頃,Bが息をしていないことに気づき,Cにその旨連絡した。Fは,午前5時前頃に,hのコインパーキングに本件車両を駐車させ,午前5時過ぎ頃にC及びHと同所で合流した。そして,午前5時8分頃,Fが本件車両の運転席,Cが同助手席,Hが同後部座席にそれぞれ乗り,同後部座席にBの死体を積載した状態で,C及びFらは,Fが運転する本件車両で前記コインパーキングを出発した。 Cは,本件車両で出発した当初から,F及びHに対して,防犯カメラがあるところを避けて本件車両を走行させ続け,警察への説明方法を考えてから救急車を呼ぶ旨の発言をしていたところ,本件車両が福岡市a区bc丁目付近の福岡都市高速道路bインターチェンジに入った午前5時19分頃,被告人に相談の電話をかけた。被告人は,当時長距離トラックの運転手の仕事をしており,広島県のiサービスエリアで仮眠中であったが,Cからの電話で,C及びFらが,Bの死体を車に載せた状態で移動中であることを認識した。 本件車両は,その後一般道に降りて,午前5時32分頃から午前6時12分頃までの間,太宰府市内にあるIのJ店の駐車場に駐車した。 被告人とC及びFらとの間の通話は,後述のとおり本件車両がインターネットカフェ店駐車場に到着した午前6時1 32分頃から午前6時12分頃までの間,太宰府市内にあるIのJ店の駐車場に駐車した。 被告人とC及びFらとの間の通話は,後述のとおり本件車両がインターネットカフェ店駐車場に到着した午前6時14分頃まで続けられた。その通話の中 で, 被告人は,当初,Cに対して,Bを病院に連れて行くなどするように言ったが(録音データ及び反訳書並びに被告人質問の結果により認定できる。),Cは,Bの体に傷があり,救急車を呼んだ場合の説明方法について考えがまとまっていなかったことなどから,直ちに救急車を呼ぶことには難色を示した。そこで,被告人は,Cが刑事責任を負う事態を阻止しようと考え,Bの体の傷痕に関して事件性が発覚するのを隠蔽するために,Cに対し,Bの死体を埋めることを提案したが,Cは,それは無理だと答えた。被告人はまた,Fが本件車両を離れている間に,Cに対し,FにBの死体を埋めさせてFも消すという提案もしたが,Cは,人に手をかけることはできないと言って断った。その他,被告人,C及びFらは,Bの体に傷ができた原因,Bの身元及びCとの関係性,暴行に用いた木刀の処分方法,Bの死亡に気づいた経緯等についての警察への説明方法等を相談し,口裏合わせを行った。 なお,FとCは,前記I駐車場に駐車中の本件車両内において被告人と通話をしている最中に,Bの死体から汚物が出ている旨の会話をしたことがあった。 ⑷ C及びFらは,午前6時14分頃,Bの死体を積載した状態の本件車両を,前記I駐車場から福岡県太宰府市所在のインターネットカフェであるG店の駐車場に移動させると,同所から救急車を呼ぶことにし,そのことについて当時通話中の被告人も了承した。 午前6時16分頃,C及びFは,同店駐車場から119番通報をして,Bが息をしていないことなどを伝えた。そして,通報 所から救急車を呼ぶことにし,そのことについて当時通話中の被告人も了承した。 午前6時16分頃,C及びFは,同店駐車場から119番通報をして,Bが息をしていないことなどを伝えた。そして,通報を受けて救急隊員が間もなく同所に臨場し,午前6時39分,Bの死体はK病院に搬送された。 4 以上の事実を前提に,本件行為につき,遺棄該当性の有無及び共謀の成否を検討する。 本件行為は,死体遺棄罪(刑法190条)の遺棄に該当するかア刑法190条にいう死体遺棄罪は,死者に対する社会的風俗としての宗教的感情を保護法益とするものであって,死体を現在の場所より他所に移して 放棄するのはもちろん,宗教風俗上,死体の処置に関し,道義上首肯しえないような方法で埋葬,冷遇放置,隠匿する場合には,死体遺棄罪が成立するものと解するのが相当である(東京高裁昭和56年3月2日判決・高等裁判所刑事裁判速報集昭和56年108頁)。 イ検察官は,本件行為は,宗教風俗上,道義上首肯し得ないような方法で(下死体を隠匿する行為といえるから,死体遺棄罪の遺棄に該当する旨主張するので,以下,検討する。 Bは,本件当日,Fが本件車両を運転してhに向けて出発するに当たり,自ら本件車両の後部座席に乗って座り,そのまま死亡した。C及びFらは,119番通報に対応した消防隊員の指示を受けて車外に出すまでは,Bの死体を同車両内で動かしておらず,物を被せるなどして,Bの死体を外部から見えないようにしたこともない。本件行為当時,本件車両の後部座席の窓は,車外から車内が見通せない,いわゆるスモークの状態になっていたところ(本件行為当時,被告人がそのことを知っていたとまでは認められず,被告人,C及びFらが本件行為の最中に後部座席の窓の状態に言及した形跡もない。),C及びFらが わゆるスモークの状態になっていたところ(本件行為当時,被告人がそのことを知っていたとまでは認められず,被告人,C及びFらが本件行為の最中に後部座席の窓の状態に言及した形跡もない。),C及びFらが,Bの死亡後に,Bの死体を同後部座席に移動させたわけでもない。 判例や裁判例上,死体の隠匿行為をもって死体遺棄罪の遺棄と認定されているものとしては,殺害した死体を屋内床下に運び入れて隠匿したもの(最高裁第二小法廷昭和24年11月26日判決・刑事判例集3巻11号1850頁),犯跡隠蔽のため死体を殺害現場である家屋の押入れ内の奥の布団と壁との間に落とし込むように入れ,マットレスを被せて覆い,外部から容易に発見し得ないようにしたもの(前記東京高判),死体を被告人方納戸の洋タンス内に運び入れ,同タンスの扉を閉じて粘着テープで目張りするなどしたもの(東京地裁八王子支部平成10年4月24日判決・判例タイムズ995号282頁)などがあるが,C及びFらは,本件行為の際, Bの死体の場所的移動は行っているものの,そのほかに,従前の判例や裁判例で指摘されているような,死体を隠匿するための積極的な作為は何ら行っていない。 また,前記認定のとおり,C及びFらが本件車両にBの死体を積載した状態でhのコインパーキングを出発してから119番通報をするまでには1時間余りしか経過していない上,被告人,C及びFらの会話の内容及び行動状況,とりわけ,出発した当初から,CがF及びHに対して,最終的には救急車を呼ぶつもりであるという趣旨の発言をしており,死体を埋めるといった話も被告人から出たがCに拒否され,結局は119番通報を行っていることなどを踏まえると,C及びFらが本件車両でBの死体を運搬するという本件行為に及んだのは,Bの死体に関する事件性が発覚する前に関係者間で 告人から出たがCに拒否され,結局は119番通報を行っていることなどを踏まえると,C及びFらが本件車両でBの死体を運搬するという本件行為に及んだのは,Bの死体に関する事件性が発覚する前に関係者間で警察への説明方法等につき口裏を合わせるための時間稼ぎが目的であったといえるが,被告人,C及びFらによって,Bの死体につき実際に何らかの処置を行うための準備行為等が行われた形跡は全くない。 これらの点を総合すれば,本件行為は,Bの死体を福岡市a区内から福岡県太宰府市内まで相当距離運搬する行為ではあるものの,死体を隠匿する行為であるとはいえない(なお,放棄,埋葬,冷遇放置したともいえない。)。 この点,検察官は,①C及びFは,人目や防犯カメラを意識しつつ,できる限り停止することなく本件車両を走行させているところ,走行中の車両内の状況を外から視認して詳細に把握するのは極めて困難であり,しかも,本件のように,死亡した直後で外見上はそれほど生前と変わりがないような場合には,走行中の車両内にいる者が生きているか死んでいるかを判断するのは非常に困難であるから,本件行為は,客観的にみて死体を死体と分からないように秘密にし,包み隠す行為,すなわち隠匿行為であると評価できる,②被告人,C及びFは,刑事事件の捜査対象となったとき, 訴追を免れることができるような方策を立てる目的の下,同目的を実現する手段として,同方策が立つまでの間,死体を隠す意図で,本件行為を行っていた,として,本件行為は,死体を隠匿する行為といえる旨主張する。 ①について検討する。本件行為の際,Cは,防犯カメラを意識した発言を度々しているが,その発言の状況を個別に見ると,例えば,CがFに対し,カメラが付いているから本件車両から降りない方がいいと述べているのは(反訳書6枚目),F自身が ,Cは,防犯カメラを意識した発言を度々しているが,その発言の状況を個別に見ると,例えば,CがFに対し,カメラが付いているから本件車両から降りない方がいいと述べているのは(反訳書6枚目),F自身が防犯カメラに映らないように注意しているものであるし,Cが被告人に対し,「カメラは全部調べられるけん,Iで今停まっとーのは,まだ話よったで通じるけど」と述べているのは(反訳書27枚目),今後Bの死亡の事実が警察に発覚した際に,C及びFらの本件当日の行動状況についての警察への説明が不自然な形にならないようにとの意図からの発言と認められる。そのほかにも,被告人,C及びFらは人目や防犯カメラを意識した発言を何度かしているが,いずれも同様の意図から述べられたものと認められる。そもそも,本件行為の当時はBの死亡後一,二時間程度しか経過しておらず,本件車両の外からBを見ても死亡の事実が直ちに分かるわけではなかったことからすれば,C及びFらが,Bの死体が人目に触れたり防犯カメラに映ったりする事態を避けることを専ら意図してこうした発言をしていたとは考え難い。防犯カメラ等を意識しつつ本件車両を走行させることで,結果としてBの死体が外部から発見しにくい状況が続いていたことは事実であるが,既に論じたように,遺棄該当性を肯定した判例や裁判例で指摘されたような死体を隠匿するための積極的作為をC及びFらが何ら行っていないことや,「隠匿」という言葉が本来持つ意味も併せ考えれば,本件行為が客観的にみて死体の隠匿行為と評価できる旨の検察官の主張には,およそ無理があるといわざるを得ない。 ②について検討すると,確かに,C及びFらは,検察官が主張するような方策が立つまでの間,Bの死体を積載した状態で本件車両を走行させる などしているが,既に述べたとおり,C及びFらが本件行 。 ②について検討すると,確かに,C及びFらは,検察官が主張するような方策が立つまでの間,Bの死体を積載した状態で本件車両を走行させる などしているが,既に述べたとおり,C及びFらが本件行為に及んだのは,Bの死体に関する事件性が発覚する前に関係者間で警察への説明方法等につき口裏を合わせるための時間稼ぎが目的であったといえるところ,これに伴いBの死体を本件車両で運搬した行為が,その間Bの死体を隠す意図によるものであったとする検察官の主張には,同様に無理があるといわざるを得ない。 また,検察官は,被告人,C及びFは,自身の犯罪行為について訴追を免れるための方策を立てるという悪質な目的で,Bの死亡を認識した時点で迅速に医療従事者等に引き渡すなどの本来期待される行為とは対極的な行為を行い,しかもその間,Bの死体を排泄物の上に座らせたままで本件車両を走行させ続け,不衛生な状態に置いて死体の尊厳を傷つける行為を行い,さらに,その間にも死体の状態は,死後硬直が始まり,場所的な移動もあって死亡発覚時から大きく変更されているとし,このような事実関係を踏まえれば,本件行為は,宗教風俗上,道義上首肯し得ないような死体の処置であるとも主張する。 刑事責任を免れるべく口裏合わせを行う時間稼ぎのためにBの死体を迅速に医療従事者等に引き渡さなかったことは,身勝手な行為との非難を免れないし,Bの死体を一定の時間不衛生な状態に置いたことも,決して好ましいことではない。しかし,C及びFらが本件車両にBの死体を積載した状態でhのコインパーキングを出発してからBの死体を医療従事者等に引き渡すまでの時間は1時間余り(C及びFらがBの死亡を知ってからでも,最大で2時間程度)であり,Bの死体を不衛生な状態に置いた時間はそれより短い上,C及びFらが意図的に らBの死体を医療従事者等に引き渡すまでの時間は1時間余り(C及びFらがBの死亡を知ってからでも,最大で2時間程度)であり,Bの死体を不衛生な状態に置いた時間はそれより短い上,C及びFらが意図的にそのような不衛生な状態を作出したわけでもない。その間にBの死体は死後硬直が進んでいるとはいえ,腐乱,損壊等は生じていない。被告人,F及びCらが,本件行為の最終盤には,119番通報をしてBの死体を医療従事者等の手に渡す方針を固め, 実際,本件行為の終了後間もなく同通報をしたことにより,Bの死体が救急隊員の手に渡され病院に搬送されることとなり,遺族によるBの死体の埋葬が困難になったといった事情はうかがわれないことも踏まえると,本件行為が,宗教風俗上,道義上首肯し得ないような方法による死体の処置であるともいえない。 ウ以上によれば,本件行為は,死体遺棄罪(刑法190条)の遺棄に該当しない。 被告人とF及びCらとの間で,死体遺棄の共謀が成立したといえるか当裁判所は,既に論じたように,本件行為が死体遺棄罪の遺棄に該当しないと判断するものであるが,検察官の主張を踏まえ,念のため,共謀の成否についても判断を示すこととする。 ア被告人は,C及びFらが,Bの死体を本件車両の後部座席に積載した状態で同車両により移動を開始し,同車両が既に福岡都市高速道路に入った後に,CからBの死体の処置等について電話相談を受けてこれに応じたにとどまり,Bの死体を本件車両に積載した状態で移動等させることの意思決定に関与したわけではない。しかも,本件行為の最中に,被告人が,CからBの死亡の事実を聞き,Cと種々のやり取りをした後,Cから太宰府に到着するのでどうしたらいいかという相談を受けて,冷静に考えるためにCに本件車両の停止を求めたのに対し,Cは 最中に,被告人が,CからBの死亡の事実を聞き,Cと種々のやり取りをした後,Cから太宰府に到着するのでどうしたらいいかという相談を受けて,冷静に考えるためにCに本件車両の停止を求めたのに対し,Cは,止まったら怪しまれるだけなどと述べてこれを拒みそのまま本件車両を走行させていること(反訳書17枚目)からも明らかなように,本件車両の移動等については,Cが,被告人に意見を求めつつも主体的に判断して行っていたと認められる。被告人が,Bの死体を本件車両で運搬することについて,C及びFらと何らかの謀議をした事実は認められない上,前記のとおり本件車両の移動等につき被告人が決定権を有していなかったことにも照らすと,被告人がC及びFらに対し,Bの死体を埋めることを提案するなどしたことをもって,同人らと本件行為につき黙示の謀議 を遂げたとみることも困難である。 イ被告人は,Cから電話がかかってきた当初,Cに対してBを病院に連れて行くなどするように言ったが,CからはBの体に傷があるなどとして直ちに救急車を呼ぶことについて難色を示されている。また,被告人は,Bの死体に傷痕があることを認識してからは,傷痕の存在が警察に明らかになりCが刑事責任を負う事態を阻止するために,Cに対し,Bの死体を埋めることや,それと併せてFを消すことなどを提案したが,Cからはいずれも拒否されている。そして,被告人が,最終的にはC及びFらの意見を尊重して,救急車を呼んでBを病院に搬送することを了承したという経過も踏まえれば,Bの死体の処置について,被告人が最終的な決定権を持っていたとか,重要な役割を果たしたとは認められない。なお,検察官は,Bとの関係性等に関するC及びFらとの口裏合わせの場面において,被告人の意見が採用されているという趣旨の主張をするが,Bの死体の処置とは とか,重要な役割を果たしたとは認められない。なお,検察官は,Bとの関係性等に関するC及びFらとの口裏合わせの場面において,被告人の意見が採用されているという趣旨の主張をするが,Bの死体の処置とは別の事項に関するやり取りであり,前記判断を左右しない。 ウ被告人は,Bが死亡したことに関して,かわいい妹分であるCが何らかの刑事責任を負う事態を阻止したいと考えており,Cから相談を受けてBの死体を埋めること等を提案し,口裏合わせにも加担しているが,Bの死体を本件車両で運搬すること自体に,何らかの関心や利害関係を有していたわけではない。 エそうすると,被告人は,Bの死体を本件車両で運搬することについて,C及びFらとの間で何らかの謀議をしたことはない上(黙示の謀議を遂げたとみることも困難である。),Bの死体の処置について,最終的な決定権を持っていたとか,重要な役割を果たしたということもなく,本件車両でBの死体を運搬すること自体に特段の関心や利害関係を有していたわけでもなかったのであるから,仮に,C及びFらが行った本件行為が死体遺棄罪の遺棄に該当するとしても,被告人とC及びFらとの間でこれに関する共謀が成立した とは認められない。 5 以上のとおり,C及びFらが本件車両でBの死体を運搬した本件行為については,死体遺棄罪(刑法190条)の遺棄に該当せず,被告人とC及びFらとの間で,これに関する共謀が成立したとも認められない。 よって,本件公訴事実中死体遺棄の点(令和元年11月19日付け起訴状記載の公訴事実)については,犯罪の証明がないことになるから,刑訴法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。 (求刑懲役2年6月)令和3年1月21日福岡地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官足立勉 なるから,刑訴法336条により被告人に対し無罪の言渡しをする。 (求刑懲役2年6月)令和3年1月21日福岡地方裁判所第3刑事部 裁判長 裁判官 足立勉 裁判官 國分進 裁判官 加藤貴
▼ クリックして全文を表示