31,060 文字
主文 一、 原判決を取り消す。二、 第一審原告と第一審被告A、B、C、D、Eの五名との間において、(イ) 別紙第二目録に記載の建物が被相続人亡Fの相続財産であること、(ロ)第一審原告が右建物につき三分の一の共有持分(相続分)を有すること。(ハ)東京家庭裁判所昭和三八年(家)第五、一六一号、第五、四七三号、第五、四七四号遺言書検認事件の対象である遺言者亡F作成名義の昭和三八年四月一五日付遺言書二通(別紙第一および第二遺言書参照)、同年同月二六日付遺言書一通(別紙第三遺言書参照)が真正に成立したものであることを、それぞれ確認する。三、 第一審被告Aは第一審原告に対し別紙第二目録に記載の建物につき三分の一の共有持分(相続分)の移転登記手続をせよ。四、 第一審原告が第一審被告Gとの間において、第二項の(ハ)に記載の遺言書三通が真正に成立したものであることの確認を求める訴を却不する。五、 第一審原告のその余の請求(当審における新たな請求を含む)を、いずれも棄却する。六、 訴訟費用は、第一、二審を通じて、(1)第一審原告と第一審被告Gとの間においては、全部第一審原告の負担とし、(2)第一審原告と第一審被告Gを除くその他の五名の第一審被告らとの間においては、これを五分し、その四を第一審原告の、その余を右五名の第一審被告らの負担とする。事実 第一審原告代理人は、「一、原判決のうち第一審原告の敗訴部分を取り消す。二、原判決の第二項以下を次のとおり変更する。(一)第一審被告Gは第一審原告に対し、別紙第一目録に記載の建物を明け渡し、かつ、第一審被告Gおよび同Aは第一審原告に対し各自金四一四万円および(a)内金八二万八、〇〇〇円に対する昭和三九年 する。(一)第一審被告Gは第一審原告に対し、別紙第一目録に記載の建物を明け渡し、かつ、第一審被告Gおよび同Aは第一審原告に対し各自金四一四万円および(a)内金八二万八、〇〇〇円に対する昭和三九年五月三日より、(b)内金八二万八、〇〇〇円に対する同四〇年五月三日より、(c)内金八二万八、〇〇〇円に対する同四一年五月三日より、(d)内金八二万八、〇〇〇円に対する同四二年五月三日より、(e)内金八二万八、〇〇〇円に対する同四三年五月三日より右建物明渡ずみにいたるまでそれぞれ年五分の割合による金員ならびに昭和四三年五月三日より右建物明渡ずみにいたるまで月額金七万四、四〇〇円の割合による金員を支払え。 三日より、(b)内金八二万八、〇〇〇円に対する同四〇年五月三日より、(c)内金八二万八、〇〇〇円に対する同四一年五月三日より、(d)内金八二万八、〇〇〇円に対する同四二年五月三日より、(e)内金八二万八、〇〇〇円に対する同四三年五月三日より右建物明渡ずみにいたるまでそれぞれ年五分の割合による金員ならびに昭和四三年五月三日より右建物明渡ずみにいたるまで月額金七万四、四〇〇円の割合による金員を支払え。(二)第一審原告と第一審被告A、B、C、D、Eの五名(以下、これを第一審被告Aら五名と略称する)との間において、別紙第一目録に記載の建物が第一審原告の所有であることを確認し、かつ、第一審被告Aら五名は第一審原告に対し右建物につき「取得者・第一審原告、登記原因・昭和三八年五月二日遺贈(又は相続)」の所有権移転登記手続をせよ。(三)もし前項の請求の全部が理由がないときは、第一審原告と第一審被告Aら五名との間において、別紙第二目録に記載の建物が第一審原告の所有であることを確認し、第一審被告Aは第一審原告に対し右建物にき所有権移転登記手続をなし、かつ、右建物を明け渡し、なお、金六一六万二、〇〇〇円、および(a)内金一二三万二、四〇〇円に対する昭和三九年五月三日より、(b)内金一二三万二、四〇〇円に対する同四〇年五月三日より、(c)内金一二三万二、四〇〇円に対する同四一年五月三日より、(d)内金一二三万二、四〇〇円に対する同四二年五月三日より、(e)内金一二三万二、四〇〇円に対する同四三年五月三日より右建物明渡ずみにいたるまでそれぞれ年五分の割合による金員 四一年五月三日より、(d)内金一二三万二、四〇〇円に対する同四二年五月三日より、(e)内金一二三万二、四〇〇円に対する同四三年五月三日より右建物明渡ずみにいたるまでそれぞれ年五分の割合による金員、ならびに昭和四三年五月三日より右建物明渡ずみにいたるまで月額金一〇万二、七〇〇円の割合による金員を支払え。(四)もし前記(二)の請求が一部理由がないとき、すなわち別紙第二目録に記載の建物につき第一審原告が三分の一の共有持分権(相続分)を有するにすぎないときには、(1)第一審原告と第一審被告Aら五名との間において、別紙第二目録に記載の建物が被相続人亡Fの相続財産であること、ならびに第一審原告がこれに対し三分の一の共有持分(相続分)を有することを確認し、かつ、第一審被告Aは第一審原告に対し右建物につき三分の一の共有持分(相続分)の移転登記手続をせよ。 、すなわち別紙第二目録に記載の建物につき第一審原告が三分の一の共有持分権(相続分)を有するにすぎないときには、(1)第一審原告と第一審被告Aら五名との間において、別紙第二目録に記載の建物が被相続人亡Fの相続財産であること、ならびに第一審原告がこれに対し三分の一の共有持分(相続分)を有することを確認し、かつ、第一審被告Aは第一審原告に対し右建物につき三分の一の共有持分(相続分)の移転登記手続をせよ。(2)第一審被告Aは第一審原告に対し昭和三八年五月二日より遺産分割にいたるまで月額金三万四、二三三円の割合による金員を支払え。(五)昭和三八年五月二七日付東京家庭裁判所昭和三八年(家)第五、一六一号、同第五、四七三号、同第五、四七四号遺言書検認事件の対象である遺言書三通がいずれも真正に成立したものであることを確認する。(六)訴訟費用は第一、二審とも第一審被告らの負担とする。」との判決ならびに第一審被告Gおよび同Aの金員支払い、右Gの建物明渡および右Aの建物明渡につき仮執行の宣言、第一審被告らの控訴につき控訴棄却の判決をそれぞれ求め、第一審被告ら代理人は、「一、原判決のうち第一審被告らの敗訴部分を取り消す。二、第一審原告の請求を棄却する。三、 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。」との判決、第一審原告の控訴につき控訴棄却の判決、当審における第一審原告の新たな請求につき請求棄却の判決をそ 、第一審原告の請求を棄却する。三、 訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。」との判決、第一審原告の控訴につき控訴棄却の判決、当審における第一審原告の新たな請求につき請求棄却の判決をそれぞれ求めた。当事者双方の事実上および法律上の陳述ならびに証拠の関係は、次に付加、訂正するほか、原判決の事実摘示と同じであるから、ここにこれを引用する(ただし、原判決七丁裏二行目に「同第一一号証の一、二、同第一九号証の一」とあるのは、「同第一一号証の一、二、同第一三号証、同第一九号証の一」の一五丁表六行目に「二階九坪九合八勺(三二、九九平方メートル)」とあるのは、「二階一九坪九合八勺(六六、〇四平方メートル)」の(成立に争いのない甲第一三号証参照)、各明らかな誤りであるので、これを更正する)。(第一審原告代理人の陳述)一、 被相続人亡Fは昭和三八年四月一五日付でした自筆証書遺言において、別紙第一目録に記載の建物(以下、本件第一建物という)を第一審原告に相続させ、もし右建物が第一審被告Gの所有とされ遺贈できない場合には、別紙第二目録(以下、本件第二建物という)を第一審原告に相続させる旨の意思表示をしている。 (成立に争いのない甲第一三号証参照)、各明らかな誤りであるので、これを更正する)。(第一審原告代理人の陳述)一、 被相続人亡Fは昭和三八年四月一五日付でした自筆証書遺言において、別紙第一目録に記載の建物(以下、本件第一建物という)を第一審原告に相続させ、もし右建物が第一審被告Gの所有とされ遺贈できない場合には、別紙第二目録(以下、本件第二建物という)を第一審原告に相続させる旨の意思表示をしている。(1)右にいわゆる相続させるとは、前記建物を第一審原告に遺贈するとの趣旨であつて、単に遺産分割の方法を指定したものではない。(2)仮に右にいわゆる相続させるというのが、遺産分割の方法を指定したものであるとしても、その指定物件の価額が相続人の法定相続分を上廻つておれば、それは分割方法の指定であるとともに相続分の指定という意味をもつており、もしまた法定相続分に達しない不足分は別に遺産の中から補充的な分割を受けるという意味であるならば、法定相続分の変更はないのであるから、単なる分割方法の指定とみるべきである。本件における亡Fの相続財産をみ た法定相続分に達しない不足分は別に遺産の中から補充的な分割を受けるという意味であるならば、法定相続分の変更はないのであるから、単なる分割方法の指定とみるべきである。本件における亡Fの相続財産をみるに、不動産としては本件第一建物および同第二建物だけであり、債務は松沢信用金庫に対する前記遣言当時における債務(登記簿上の記載は金一〇〇万円とされているが、現存債務は金六〇万円であり、これに対し同金庫に対する定期預金三五万円を相殺すると残額は金二五万円である。)、動産としては家財道具約一五万円であるところ、本件第一建物は賃料収入月額六万九、〇〇〇円、本件第二建物は賃料収入月額一〇万二、〇〇〇円であつたのであるから、本件第一建物につき分割方法の指定を受けた第一審原告は右建物だけで法定相続分の三分の一をいささか超過する(これに家財道具を加え債務二五万円を考慮するときは、ほぼ法定相続分三分の一であるか、またはこれを上廻る)から、その指定は分割方法の指定であるとともに、共同相続人の相続分変更の指定である。もし前記遺言が法定相続分変更の指定を含まない単なる分割方法の指定であるとしても、一切の相続財産の現物分割としての指定であることは明らかであり、第一審原告は相続における現物分割によつて本件第一建物の所有権全部を取得するにいたつたのである。 債務二五万円を考慮するときは、ほぼ法定相続分三分の一であるか、またはこれを上廻る)から、その指定は分割方法の指定であるとともに、共同相続人の相続分変更の指定である。もし前記遺言が法定相続分変更の指定を含まない単なる分割方法の指定であるとしても、一切の相続財産の現物分割としての指定であることは明らかであり、第一審原告は相続における現物分割によつて本件第一建物の所有権全部を取得するにいたつたのである。よつて、第一審原告は、本件第一建物の所有権にもとづき、(1)第一審被告Gに対し、東京法務局世田谷出張所昭和三八年三月二九日受付第七、七九六号をもつてした同被告に対する所有権移転登記の抹消登記手続をすることを求め(原判決主文第一項)、(2)(イ)同被告に対し、右建物を第一審原告へ明け渡すべきことを求め、(ロ)第一審被告Gは本件第一建物につき何ら正当な権限なくしてこれを不法に占有し、第一審被告Aは被相続人Fの委任がなく 第一項)、(2)(イ)同被告に対し、右建物を第一審原告へ明け渡すべきことを求め、(ロ)第一審被告Gは本件第一建物につき何ら正当な権限なくしてこれを不法に占有し、第一審被告Aは被相続人Fの委任がなく右建物に対する処分の権限がないことを知りながら印鑑を冒用して右建物の所有名義を第一審被告Gに不法に移転したことにより、右第一審被告両名は共に第一審原告の右建物の所有権を侵害し損害を与えたものであるから、共同してその損害を賠償すべき義務があるところ、その賃料相当の損害金は昭和三八年五月三日から同四三年五月二日までは月額六万九、〇〇〇円、年額八二万八、〇〇〇円であつて、その間の総計は金四一四万円であり、これに対する損害金は各一年経過後の昭和三九年ないし同四三年の各五月三日より本件第一建物明渡ずみにいたるまで各一年ごとに年額八二万八、〇〇〇円であるから、これにつき民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を併せて請求し、かつ、昭和四三年五月三日より右建物明渡ずみにいたるまで月額七万四、四〇〇円の割合による損害金の支払いを求める。(控訴の趣旨第二項の(一))。二、 前記のごとく本件第一建物は第一審原告の所有であるところ、第一審被告Aら五名は右建物が第一審原告の所有に属することを争うので、同人らとの間においてその点の確認を求め、かつ、右五名が第一審原告に対し、右建物につき「取得者・第一審原告、登記原因昭和三八年五月二日遺贈(又は相続)」との所有権移転登記手続をなすべきことを求める(控訴の趣旨第二項の(二))。 支払いを求める。(控訴の趣旨第二項の(一))。二、 前記のごとく本件第一建物は第一審原告の所有であるところ、第一審被告Aら五名は右建物が第一審原告の所有に属することを争うので、同人らとの間においてその点の確認を求め、かつ、右五名が第一審原告に対し、右建物につき「取得者・第一審原告、登記原因昭和三八年五月二日遺贈(又は相続)」との所有権移転登記手続をなすべきことを求める(控訴の趣旨第二項の(二))。三、 仮に前項の請求全部の理由がない場合には、本件第二建物のみが相続財産となり、被相続人亡Fは遺言をもつてこれを第一審原告に単独相続させる旨の指定をしたのであるから、同原告の法定相続分三分の一を超えることになるので、この場合こそまさに分割方法の 第二建物のみが相続財産となり、被相続人亡Fは遺言をもつてこれを第一審原告に単独相続させる旨の指定をしたのであるから、同原告の法定相続分三分の一を超えることになるので、この場合こそまさに分割方法の指定であるとともに法定相続分変更の指定であり、第一審原告は右建物の所有権全部を取得するにいたつたのである。しかるに、(1)第一審被告Aら五名は、本件第二建物が第一審原告の所有に属することを争うので、同人らとの間においてこれが確認を求め、(2)また第一審被告Aは右建物につき登記簿上の所有名義をもち、昭和三八年五月三日より右建物を正当な権限なくして占有しているので、右建物の明け渡しを求めるとともに、右不法占有による賃料相当の損害金は昭和三八年五月三日より同四三年五月二日まで月額一〇万二、七〇〇円、年額一二三万二、四〇〇円であつて、その間の総計は金六一六万二、〇〇〇円であり、これに対する損害金は一年経過後の昭和三九年五月三日より同四三年五月二日まで各本件第二建物明渡ずみにいたるまで各一年ごとに年額一二三万二、四〇〇円であるから、これにつき民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を併せて請求し、なお昭和四三年五月三日より右建物明渡ずみにいたるまで月額一〇万二、七〇〇円の割合による損害金の支払いを求める(控訴の趣旨第二項の(三))。四、 仮に前記第二項の請求が一部理由がないとされるとき、すなわも本件第二建物につき第一審原告が三分の一の共有持分権(相続分)を有するにすぎないと認定される場合においても、他の相続人たる第一審被告Aら五名はこれを争い、また第一審被告Aは右建物につき単独所有名義の登記をしているほか、右建物全部を不法に使用収益し、第一審原告に対して昭和三八年五月三日より賃料相当額月額一〇万二、七〇〇円の三分の一にあたる同額三万四、二三三円の 求が一部理由がないとされるとき、すなわも本件第二建物につき第一審原告が三分の一の共有持分権(相続分)を有するにすぎないと認定される場合においても、他の相続人たる第一審被告Aら五名はこれを争い、また第一審被告Aは右建物につき単独所有名義の登記をしているほか、右建物全部を不法に使用収益し、第一審原告に対して昭和三八年五月三日より賃料相当額月額一〇万二、七〇〇円の三分の一にあたる同額三万四、二三三円の 被告Aは右建物につき単独所有名義の登記をしているほか、右建物全部を不法に使用収益し、第一審原告に対して昭和三八年五月三日より賃料相当額月額一〇万二、七〇〇円の三分の一にあたる同額三万四、二三三円の損害を与えている。よつて、第一審原告は、(1)第一審被告Aら五名に対し、本件第二建物が被相続人亡Fの相続財産であること、ならびに第一審原告がこれに対して三分の一の共有持分(相続分)を有することの確認を求め、また(2)第一審被告Aに対し右建物につき三分の一の共有持分(相続分)の第一審原告名義への移転登記手続をなし、かつ、昭和三八年五月二日より遺産分割にいたるまで月額金三万四、二三三円の割合による損害金の支払いをなすべきことを求める(控訴の趣旨第二項の(四))。五、 昭和三八年五月二七日付東京家庭裁判所昭和三八年(家)第五、一六一号、第五、四七三号、第五、四七四号遺言書検認事件の対象である遺言書三通は、その作成者たる被相続人亡Fの意思にもとづき真正に成立したものであるにもかかわらず、第一審被告らはこれを争うので、右遺言書が真正に成立したものであることの確認を求める(控訴の趣旨第二項の(五))。六、 (A) 第一審被告Gの当審における表見代理の主張が、故意または重大な過失にもとづく時期に遅れた防禦方法であることは、本件訴訟の経過に徴して明らかであり、これを許せば徒らに訴訟の完結を遅延させることになるから、却下されるべきである。(B) 仮に右本案前の抗弁が理由がないとすれば、右表見代理の抗弁を争う。(イ)もともと民法第一一〇条に定める表見代理の主張が認められるためには、基本代理権の存在を必要とするところ、第一審原告の主張自体において基本代理権とみられるものの主張がなく、亡F作成名義の委任状(乙第二号証)をもつて基本代理権と主張するもののよう 認められるためには、基本代理権の存在を必要とするところ、第一審原告の主張自体において基本代理権とみられるものの主張がなく、亡F作成名義の委任状(乙第二号証)をもつて基本代理権と主張するもののようであるが、仮に右委任状をFが作成したものであつても、その記載自体財産管理の権限を委任したにとどまり、物件の処分を委任したものではないから、処分についての基本代理権が与えられていないため、民法第一一〇条の表見代理の適用をみるわけがない。 権の存在を必要とするところ、第一審原告の主張自体において基本代理権とみられるものの主張がなく、亡F作成名義の委任状(乙第二号証)をもつて基本代理権と主張するもののようであるが、仮に右委任状をFが作成したものであつても、その記載自体財産管理の権限を委任したにとどまり、物件の処分を委任したものではないから、処分についての基本代理権が与えられていないため、民法第一一〇条の表見代理の適用をみるわけがない。管理の権限はその保存行為を含むけれども、物件処分の権限は管理に属するものではない。もし第一審被告GにおいてAに与えられた財産管理権をもつて基本代理権たる処分権限であると解したならば、同被告の重大な過失である。(ロ)第一審被告Gは、委任状(乙第二号証)、遺言状(乙第三号証)がFの意思にもとづき真正に成立したものであるというが、これは事実に反する。(ハ)表見代理が成立するためには、相手方の善意無過失を要件とするが、本件において第一審被告Gは同AにFの代理権限があるか否かをFおよび第一審原告につき調査すれば極めて容易に判明するにもかかわらず、これをしなかつたことは右Gに過失があつたものというべく、表見代理は成立しない。七、 第一審被告らは、本件遺言書の作成が強迫または詐欺によつてなされたものであるというが、これを否認する。Fは昭和三八年四月頃P弁護士の示唆によつて右遺言書を作成したものであつて、もともと病気全快後は本件第二建物をAらに譲り、本件第一建物に自分達夫婦で居住したいとの希望をもつており、かつ、第一審原告がいわゆる後妻であるところから遺産の分配につき今後の紛争を避けるため、その真意にもとづき自発的に右遺言書を作成したのであつて、意思表示のうえに何らの瑕庇もない。八、 本件損害金の請求は、不法行為により所有 妻であるところから遺産の分配につき今後の紛争を避けるため、その真意にもとづき自発的に右遺言書を作成したのであつて、意思表示のうえに何らの瑕庇もない。八、 本件損害金の請求は、不法行為により所有権を侵害された期間に対する賃料相当額の支払いを求めるものであつて、不当利得の返還請求ではないから、現実に何程の家賃収入があり、収益がいかほどであつたかは問題でなく、昭和三八年五月当時月額六万九、〇〇〇円の家賃を収得し得る状態である限り、同家賃相当額をもつて損害金の請求をすることができる。 的に右遺言書を作成したのであつて、意思表示のうえに何らの瑕庇もない。八、 本件損害金の請求は、不法行為により所有権を侵害された期間に対する賃料相当額の支払いを求めるものであつて、不当利得の返還請求ではないから、現実に何程の家賃収入があり、収益がいかほどであつたかは問題でなく、昭和三八年五月当時月額六万九、〇〇〇円の家賃を収得し得る状態である限り、同家賃相当額をもつて損害金の請求をすることができる。第一審被告Gは、本件第一建物の管理費用として管理人Bに対し月額一万五、〇〇〇円の管理手当を支給しているというが、同人は右建物二階六畳の部屋に居住しており、管理費用を支払う余地はない。右六畳の部屋の家賃はこれを適正に評価すれば少なくとも月額八、〇〇〇円を相当とするので、この部屋の無償使用のほかに、家賃収入月額六万九、〇〇〇円のうち管理手当一万五、〇〇〇円を支払うがごときことはとうてい承認できない。また第一審被告Gは、本件第一建物の管理保存費用相当額と第一審原告の請求する賃料相当の損害金とを対等額で相殺するというが、後者のごとき不法行為による損害金と前者をもつて相殺することは許されない。仮に第一審被告Gの主張する管理保存費用が適正であつたとしても、不法行為者にして不法占有者たる同人がその占有期間中の管理保存費用を建物の所有者たる第一審原告に請求しうるものではないし、もし第一審原告が建物につき三分の一の共有持分(相続分)を有するにとどまるとしても、共有物の管理費用の分担は共有者間の関係であつて、共有者でない第一審被告Gがその分担を請求し、相殺しうるものではない。九、 本件第二建物は固定資産税納付義務者であり、しかも建築主であつたFの所有であることは明白であ は共有者間の関係であつて、共有者でない第一審被告Gがその分担を請求し、相殺しうるものではない。九、 本件第二建物は固定資産税納付義務者であり、しかも建築主であつたFの所有であることは明白である。それにもかかわらず、右建物が第一審被告Aの所有名義に登記されているのは、第一審原告が申請した処分禁止の仮処分の登記をするに際し、当時すでにFの死亡後であつたため、便宜上右Aを名義人として職権登記がなされたにすぎない。また右建物で行なつた下宿業には右Aは何ら関係がなく、また同人が右建物から別居するに際しても、その所有権に何らの変更をも生ずることがなかつた。 築主であつたFの所有であることは明白である。それにもかかわらず、右建物が第一審被告Aの所有名義に登記されているのは、第一審原告が申請した処分禁止の仮処分の登記をするに際し、当時すでにFの死亡後であつたため、便宜上右Aを名義人として職権登記がなされたにすぎない。また右建物で行なつた下宿業には右Aは何ら関係がなく、また同人が右建物から別居するに際しても、その所有権に何らの変更をも生ずることがなかつた。(第一審被告ら代理人の陳述)一、 第一審原告は、亡Fより本件第一建物を遺贈されたと主張するが、本件遺言書の記載内容をその文言どおりに解すると、とうてい遺贈したものとは考えられず、ただ単に共同相続人に対する遺産分配の方法を指示したものにすぎない。右の点について述べた同一の遺言書のなかで、家財道具一切を第一審原告に渡すこと、松沢信用金庫の借入残金を第一審被告Aが支払うことや、病院の費用は保険金で支払うことを第一審原告に指定していることなどは、いずれも相続財産の分割方法を指示していることにほかならない。さらに本件第二建物を第一審被告Aら四名に相続させるとしていることは、右四名に遺贈したものではなく、遺産の分割方法を指定したものとしか考えることができない。要するに、本件遺言書の内容は、全体を総合して遺贈か否かを判定すべく、しかるときは遺産分割の方法の指定とみるのが相当であつて、これを遺贈と解するのは早計といわねばならない。第一審原告は、第一審被告Aが亡Fの委任がないにもかかわらず、その印鑑を冒用して本件第一建物の所有名義を第一審被告Gに移転したとし、そのことをもつて共同不法行為を構成する 早計といわねばならない。第一審原告は、第一審被告Aが亡Fの委任がないにもかかわらず、その印鑑を冒用して本件第一建物の所有名義を第一審被告Gに移転したとし、そのことをもつて共同不法行為を構成すると主張するが、右事実を否認する。もし右Aの行為が印鑑冒用であつたとしても、第一審被告Gは同人が財産処分の権限を委任されているものと信じ、しかもそのように信ずるにつき過失がなかつたから、不法行為による損害賠償責任はない。第一審被告が当審で拡張請求した損害額は、現在までに第一審被告Gがすでに取得した賃料額を特定したものであつて、その主張からも明らかなように仮に右Gに賃料相当額の賠償義務があるとすれば、同人が現実に受領し得なかつたことによる金額が損害となるものである。 しても、第一審被告Gは同人が財産処分の権限を委任されているものと信じ、しかもそのように信ずるにつき過失がなかつたから、不法行為による損害賠償責任はない。第一審被告が当審で拡張請求した損害額は、現在までに第一審被告Gがすでに取得した賃料額を特定したものであつて、その主張からも明らかなように仮に右Gに賃料相当額の賠償義務があるとすれば、同人が現実に受領し得なかつたことによる金額が損害となるものである。すなわち、右損害額の算定は観念的なものではなく、現実に蒙つた損害額(過去の損害額の填補賠償)が判明する限りそれによるべきであり、右請求にかかる損害額はその根拠を欠き失当である。二、 第一審被告Gは、亡Fから本件第一建物を処分する権限を与えられた第一審被告Aとの間で、昭和三八年三月二八日右建物を代金三〇〇万円で売買する旨の確定的な契約をして右建物を買い受けその所有権を取得したが、右契約当時から同年六月一五日頃までの間に合計金二一一万円を支払つた。もつともそのうち金四五万円は約定にもとづき地主に対し借地人名義変更料として交付したのであり、代金額と右二一一万円との差額八九万円は借室人から差し入れられていた敷金の返還債務を買受人が承継したので、現実に支払はなされていない。三、 (A) 仮に原審で主張した抗弁の理由がなく、第一審被告Aが本件第一建物の売却処分に関する代理権をもたず、その保管中の印鑑を冒用して第一審被告Gに右建物を売り渡したものであるとしても、右Aの売却行為は権限踰越による で主張した抗弁の理由がなく、第一審被告Aが本件第一建物の売却処分に関する代理権をもたず、その保管中の印鑑を冒用して第一審被告Gに右建物を売り渡したものであるとしても、右Aの売却行為は権限踰越による表見代理行為であり、第一審被告Gはこれを信ずるにつき相当の理由があり、しかも善意無過失であつたので、本件第一建物についてされた前記売買契約は有効である。すなわち、(イ) 亡Fは昭和三八年三月五日第一審被告ら数名同席のうえで、Aに対して自己の有する財産管理、債権債務の整理から、財産に関する一切の代理権を授与する旨の書面を作成交付した。(ロ)亡F作成の委任状(乙第二号証)、遺言状(乙第三号証)は同人の意思にもとづき真正に成立したものであるが、これにはFの生前および死後における財産処理その他一切の権限を付与する趣旨の記載がなされている。 約は有効である。すなわち、(イ) 亡Fは昭和三八年三月五日第一審被告ら数名同席のうえで、Aに対して自己の有する財産管理、債権債務の整理から、財産に関する一切の代理権を授与する旨の書面を作成交付した。(ロ)亡F作成の委任状(乙第二号証)、遺言状(乙第三号証)は同人の意思にもとづき真正に成立したものであるが、これにはFの生前および死後における財産処理その他一切の権限を付与する趣旨の記載がなされている。(ハ)Aは亡Fよりその実印を預り遺産の処理をしており、昭和三八年三月中には松沢信用金庫より金九万七、〇一〇円を亡F名義で借り入れ、また日本生命より保険金担保で金一一万〇、二〇〇円を借り入れて、Fの入院費用等一切の金策や本件第一建物および同第二建物の管理などをFのために代行していた。(ニ)第一審被告Gは昭和三八年二月二一日より同年八月二四日まで病気のため入院し、本件第一建物の売買は右入院中にされたものであるが、売買の交渉はHの長子である第一審被告Aが代行し、その兄弟姉妹全員が右建物の買取方を依頼したのであるから、社会観念上右Aの代理権限を疑うべき余地はない。(ホ)また前記売買の経過にかんがみ、第一審被告GがFおよび第一審原告につきAの権限の有無を調査確認しなかつたからといつて、過失があつたとすることは相当でない。(B) 第一審原告は右の主張を時機に遅れた防禦方法であるというが、第一審被告Gとしては、前記売買行為は つきAの権限の有無を調査確認しなかつたからといつて、過失があつたとすることは相当でない。(B) 第一審原告は右の主張を時機に遅れた防禦方法であるというが、第一審被告Gとしては、前記売買行為はあくまでも正当な代理行為であると信じていたため、原審で予備的主張もしなかつたにすぎず、第一審において敗訴を予想してあらゆる抗弁を出さねばならぬものではない。事実審理の終審である当審で、第一審の結果にかんがみ、新たな主張をするのは訴訟手続上当然に許容されるところである。しかも右主張は原審の審理中に現われた証拠を勘案して判断しうるものであるから、それによつて格別訴訟の遅延を生ずることもない。四、 第一審原告主張の昭和三八年四月一五日付(甲第二号証の二、三)および同年同月二六日付(同第二号証の五)の各遺言書は、遺言者たるFの正常な判断力(意思能力)が欠如ないし減退した状態を利用し、その意思に反してなされたものであるから、遺言としての効力を有しない。 れるところである。しかも右主張は原審の審理中に現われた証拠を勘案して判断しうるものであるから、それによつて格別訴訟の遅延を生ずることもない。四、 第一審原告主張の昭和三八年四月一五日付(甲第二号証の二、三)および同年同月二六日付(同第二号証の五)の各遺言書は、遺言者たるFの正常な判断力(意思能力)が欠如ないし減退した状態を利用し、その意思に反してなされたものであるから、遺言としての効力を有しない。仮りに右遺言が有効であるとしても、それはいずれも第一審原告およびその娘I、実姉Jらの圧迫、哀訴嘆願による強迫または詐欺によつてされたものであるから、第一審被告Aら五名は本訴において取消の意思表示をする。とくに本件第一建物を第一審被告Gに売却してFの病気療養費その他の費用を作つたところ、第一審原告が自己の相続分を侵害するものと即断してFにこれを強調したことは、同人を欺固したことにほかならない。五、 仮に前記遺言が有効であり、そして第一審被告Gの本件第一建物の所有権取得が無効であるとすれば、同被告は第一審原告に対して賃料相当の損害金を支払うべき債務を負担することになり、昭和三八年五月当時における右建物の賃料は月額六万九、〇〇〇円であつた。ところで、右遺言によると、右建物は第一審原告に遺贈されたもので に対して賃料相当の損害金を支払うべき債務を負担することになり、昭和三八年五月当時における右建物の賃料は月額六万九、〇〇〇円であつた。ところで、右遺言によると、右建物は第一審原告に遺贈されたものではなく、相続財産分割の指定をしたにすぎないため、右建物は相続人の相続分に応じた共有になる。そうすると、共有物の管理保存費用は共有者の負担となるので、その負担部分は反対債権として前記請求額より相殺されるべきところ、右管理保存費用の合計額は金一三四万五、九九九円であつて(月別の明細は記録二九七丁、二九八丁参照)、その内訳は本件第一建物の管理人Bに対する毎月一万五、〇〇〇円の管理手当、家屋に対する火災保険料、地代、電話二本の基本料、家屋修理費用および共用雑費などである。したがつて、第一審原告が右建物につき相続分三分の一を取得すれば、昭和四一年九月末日までの分として負担すべき債務は金三三万六、二八九円である。かように第一審被告Gは第一審原告に対して、右三三万六、二八九円の不当利得返還請求権を有するので、これを第一審原告の主張する賃料相当の損害金と対等額において相殺する。 管理手当、家屋に対する火災保険料、地代、電話二本の基本料、家屋修理費用および共用雑費などである。したがつて、第一審原告が右建物につき相続分三分の一を取得すれば、昭和四一年九月末日までの分として負担すべき債務は金三三万六、二八九円である。かように第一審被告Gは第一審原告に対して、右三三万六、二八九円の不当利得返還請求権を有するので、これを第一審原告の主張する賃料相当の損害金と対等額において相殺する。六、 本件第二建物は亡Fの相続財産ではなく、第一審被告Aの所有物件である。右Aはその所有にかかる建物を昭和二三年五月二二四日代金二四万五、〇〇〇円で売却し、その代金で同二四年四月頃本件第二建物を建築し、同所で電気商の店舗を開くとともに下宿屋として使用し居住していたものである。もつとも右建物の建築主名義人は当時建築業をしていた亡Fとなつているが、これは便宜上そのようにしたにすぎず、同人の所有物とする意思で建築届の申請をしたのではない。そして右建物で下宿業をしていた頃にはAの名義で賃貸していたが、昭和二六年二月頃亡Fが事業に失敗し、当時居住していた家屋を売却し居住すべき場所がなくなつた とする意思で建築届の申請をしたのではない。そして右建物で下宿業をしていた頃にはAの名義で賃貸していたが、昭和二六年二月頃亡Fが事業に失敗し、当時居住していた家屋を売却し居住すべき場所がなくなつたため、第一審被告Aが世田谷区a町に家屋を月賦で買い取つて移転し、本件第二建物を亡Fに明け渡し居住させていたのである。(証拠の関係)第一審原告代理人は、甲第二〇号証、証第二一号証の一、二、第二二ないし第二五号証、第二六号証の一、二、第二七号証を提出し、当審における第一審原告本人尋問の各結果(第一、二回)を援用し、後記乙号証のうち、乙第二〇号証、第二六号証の一ないし七、第二八号証、第二九号証の一の成立は不知、第二二号証のうち登記官署作成部分の成立を認め、その余の部分の成立は不知、第二九号証の二ないし四はその写真撮影当時被写体建物の状態がこのとおりであつたことは認める、その余の乙号各証の成立は認める、と述べ、第一審被告ら代理人は、乙第一二、一三号証、第一四号証の一ないし一五、第一五号証の一ないし四七、第一六ないし第二五号証、第二六号証の一ないし七、第二七号証の一ないし三、第二八号証、第二九証の一ないし四、第三〇ないし第三五号証、第三六号証の一ないし七、第三七号証の一ないし三を提出し、なお、乙第三七号証の一、二はいずれもJ、同号証の三のうちペン書き部分はA、その余の部分はJがその作成者であると付陳し、当審における第一審被告G、A(第一、二回)、C各本人尋問の結果を援用し、前記甲号証のうち甲第二一号証の一、二、第二二、二三号証の成立は不知、その余の甲号各証の成立は認める、と述べた。 二九証の一ないし四、第三〇ないし第三五号証、第三六号証の一ないし七、第三七号証の一ないし三を提出し、なお、乙第三七号証の一、二はいずれもJ、同号証の三のうちペン書き部分はA、その余の部分はJがその作成者であると付陳し、当審における第一審被告G、A(第一、二回)、C各本人尋問の結果を援用し、前記甲号証のうち甲第二一号証の一、二、第二二、二三号証の成立は不知、その余の甲号各証の成立は認める、と述べた。理由 一、 Fが第一審原告(後妻)の夫であつて、昭和三八年五月二日に死亡し、その相続人が第一審原告のほか、Fと先妻との間の長男である第一審被 の成立は認める、と述べた。理由 一、 Fが第一審原告(後妻)の夫であつて、昭和三八年五月二日に死亡し、その相続人が第一審原告のほか、Fと先妻との間の長男である第一審被告A、二男である第一審被告B、長女である第一審被告C、二女Kの子である第一審被告D(代襲相続人)、三女である第一審被告EおよびFと第一審原告との養女である訴外Iの七名であること、本件第一建物がもとFの所有であつたこと、本件第一建物につき東京法務局世田谷出張所昭和二八年三月二九日受付第七、七九六号をもつて第一審被告Gのため売買を原因とする所有権移転登記がなされていることは当事者間に争いがない。第一審原告は、第一審被告Gが本件第一建物につき右登記に対応する実体関係(所有権)を有しないと主張するところ、第一審被告らは同GがFの代理人たる第一審被告Aから昭和三八年三月二八日右建物を代金三〇〇万円で買い受け、その所有権を取得したと抗争するので、これを判断する。原審証人Lの証言により第一審被告AがFに代つてその署名押印をなし、第一審被告Eがその夫たる同Gに代つてその署名押印をなし、その他真正に成立したと認める乙第一号証、原審証人B、Cの各証言によつてFの署名押印部分は同人がしたと認められ、その他真正に成立したと認める乙第二、三号証、原審証人Aの証言によつて真正に成立したと認める乙第六号証、原審証人Mの証言によつて真正に成立したと認める乙第九号証、原審における被告A本人尋問の結果によつて真正に成立したと認める乙第一〇号証、原審における被告G本人尋問の結果によつて真正に成立したと認める乙第一三号証、成立に争いのない乙第一二号証、第二七号証の一ないし三および原審証人N、Aの各証言の一部、原審証人E、B、C、Lの各証言、原審における被告C、G、A各本人尋 真正に成立したと認める乙第六号証、原審証人Mの証言によつて真正に成立したと認める乙第九号証、原審における被告A本人尋問の結果によつて真正に成立したと認める乙第一〇号証、原審における被告G本人尋問の結果によつて真正に成立したと認める乙第一三号証、成立に争いのない乙第一二号証、第二七号証の一ないし三および原審証人N、Aの各証言の一部、原審証人E、B、C、Lの各証言、原審における被告C、G、A各本人尋 つて真正に成立したと認める乙第一三号証、成立に争いのない乙第一二号証、第二七号証の一ないし三および原審証人N、Aの各証言の一部、原審証人E、B、C、Lの各証言、原審における被告C、G、A各本人尋問の結果ならびに当審における第一審被告A(第一回)、G、C各本人尋問の結果を総合すると、以下の事実を認定することができる。Fは昭和三八年二月一八日胆石症(後に胃ガン、その肝臓転移などと診断)のため東京逓信病院に入院し、同月二二日開腹手術を受け、同年五月二日死亡するまで同病院で加療し、またその妻である第一審原告は同年二月一九日頃蜘蛛膜下出血で倒れ一時絶対安静を要する程の状態となり自宅で病気加療したが、同年四月上旬にはほぼ回復した。Fが手術を受けた昭和三八年二月二二日から同年四月三日頃まではFの長女Cが病院に泊り込みで看護にあたつていたけれども、右四日頃からFの死亡にいたるまで約一か月間は病気の回復した第一審原告がCに代つて病院に泊り込み看護にあたつた。これよりさき、昭和三八年三月上旬、病院よりFの手術料などを含む一〇日間分の入院料として約一〇万円の支払いを請求され、かつ、第一審原告の病気療養費、生活費、諸雑費として予想外の出費がかさんで来たため、長男のAがFにその支弁方法を相談したところ、Fは松沢信用金庫に約三〇万円の預金があるから差しあたりこれで当座の支払いを済ませるよう指示したので、Aが右金庫につき調査したところ、すでに同年二月二三日に金八万円が引き出され、残額元本は僅かに一、七六八円にすぎないことが判明した。そこでAはその旨をFに報告するとともに、その後の処置を相談したところ、当時Fの病状は予断を許さず、相当長期間にわたる入院生活も覚悟しなければならないような状況にあり、またFとしてはどのように多額の出費を要しても自己の健康を回復した もに、その後の処置を相談したところ、当時Fの病状は予断を許さず、相当長期間にわたる入院生活も覚悟しなければならないような状況にあり、またFとしてはどのように多額の出費を要しても自己の健康を回復したいと熱望しており、他方第一審原告の病気などのためにも相当多額の出費が予想されたため、AはFに対し松沢信用金庫および日本生命から金員借受方を指示したので、Aが奔走した結果、右両所より合計二〇万円程度の金員を借り受けることができた。 したところ、当時Fの病状は予断を許さず、相当長期間にわたる入院生活も覚悟しなければならないような状況にあり、またFとしてはどのように多額の出費を要しても自己の健康を回復したいと熱望しており、他方第一審原告の病気などのためにも相当多額の出費が予想されたため、AはFに対し松沢信用金庫および日本生命から金員借受方を指示したので、Aが奔走した結果、右両所より合計二〇万円程度の金員を借り受けることができた。しかし、その程度の借受金額ではとうてい入院費その他の多額にのぼる出費をまかなうことが困難であるとみられたところから、FとAらとでその対策を協議した結果、FはAに対し金員調達方を命じ、しかもFにはその所有にかかる本件第一建物および第二建物のほか他にみるべき資産、収入ともにないため、事情のいかんによつては本件第一建物を売却してもやむを得ないものと考え、その旨を指示した。Aとしてはもとより父Fの指示に従い金策をしようと考えたが、Fには後妻の第一審原告、その連れ子である養女Iがあるなど家庭内が複雑な関係にあり、後日親族間で財産上の争いが生ずることを慮り、昭和三八年三月五日Fの病室にFの姉N、長女C、三女E、二男Bらの集合を求め、そこで改めて同人らの面前でFよりAに対し右依頼のあつたことを直接明確にするとともに、「Fの遺産はAに一切の権限を委任する」旨の遺言書と題する書面(乙第三号証)および「AをFの代理人と定め、財産管理ならびに債権債務の件、裁判上裁判外の件についての権限を委任する」旨の委任状と題する書面(乙第二号証)を作成し、これにFの自署押印を得た。そこでAは早急に本件第一建物を担保として他から金融を得、あるいはこれを相当額で他に売却したいと考え種々努力してみたが、右建物には松沢信用金庫に対する債務一〇〇万円について抵当 Fの自署押印を得た。そこでAは早急に本件第一建物を担保として他から金融を得、あるいはこれを相当額で他に売却したいと考え種々努力してみたが、右建物には松沢信用金庫に対する債務一〇〇万円について抵当権が設定されその旨の登記記入があつたりなどしたため、容易に適当な融資先ないし買受人が見当らず苦慮していた。その頃たまたま都立広尾病院に肺結核で入院加療中の義兄にあたる第一審被告G(同Eの夫)を病気見舞かたがた訪問し、右の事情を述べるとともに、右建物を担保とする金融もしくは買取方を求めたところ、同人は金融は拒絶したが、買取りならば応じてもよいとの意向を示したため、同人との折衝を進め、売買代金三〇〇万円、ただしそのうちから敷金額を控除、敷地(借地)の地主に対する名義書替料は売主負担とする旨の条件で売買してもよいとの了解に達した。 院に肺結核で入院加療中の義兄にあたる第一審被告G(同Eの夫)を病気見舞かたがた訪問し、右の事情を述べるとともに、右建物を担保とする金融もしくは買取方を求めたところ、同人は金融は拒絶したが、買取りならば応じてもよいとの意向を示したため、同人との折衝を進め、売買代金三〇〇万円、ただしそのうちから敷金額を控除、敷地(借地)の地主に対する名義書替料は売主負担とする旨の条件で売買してもよいとの了解に達した。Aはその後間もなく入院中のFに右の点を報告し、またGは三月一六日頃同じく入院中の岳父Fに対し電話で、前記事情のもとに本件第一建物を買い受けることにする旨を話したところ、Fもこれを了承した。ついで昭和三八年三月二八日Fの代理人AとGの代理人たる妻第一審被告Eとが訴外L方において、同訴外人立会のもとに、本件第一建物を前記条件で売買する旨を確定的に約し、その趣旨を記載し売買当事者各本人名義をもつてする売買契約書(乙第一号証)、契約書(乙第一〇号証)を作成し、右Eは即日売買代金の内金五〇万円をAに交付し、同年六月一七日頃までの間に数回に分割して代金全額(敷金八九万円、地主に対する名義書替料四五万円を控除し、残額二一一万円を分割弁済)を支払つた。これに対して、第一審原告提出にかかる甲第二号証の二ないし五、第三号証、第七号証の一、二、第一〇号証の二ないし四の各記載および原審証人O、J(第一、二回)、P・、Q、Iの各証言、原審および た。これに対して、第一審原告提出にかかる甲第二号証の二ないし五、第三号証、第七号証の一、二、第一〇号証の二ないし四の各記載および原審証人O、J(第一、二回)、P・、Q、Iの各証言、原審および当審(第一回)における第一審原告本人尋問の各結果のなかには、右認定に反するごとき各記載および供述部分があるが、それらはいずれも前示各証拠に対比するとこれをたやすく措信することができず、ことにFがAに対し本件第一建物を他に売却するについての代理権を授与したことを否定する趣旨のFの発言がなされたのは、いずれも第一審原告の病気が回復し、同人が病院でFの看護にあたるようになつた昭和三八年四月四日頃以降であつて、前示各証拠および弁論の全趣旨を併せ考えるときは、右四日頃以降Fの心境に変化をきたし前言をひるがえしたものとみられるため(この点については後に触れる)、前示認定を妨げるものではないし、また成立に争いのない乙第四号証および原審証人N、Aの各証言中前示認定に反する部分はいずれも信用せず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。 復し、同人が病院でFの看護にあたるようになつた昭和三八年四月四日頃以降であつて、前示各証拠および弁論の全趣旨を併せ考えるときは、右四日頃以降Fの心境に変化をきたし前言をひるがえしたものとみられるため(この点については後に触れる)、前示認定を妨げるものではないし、また成立に争いのない乙第四号証および原審証人N、Aの各証言中前示認定に反する部分はいずれも信用せず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。前に認定した事実によると、第一審被告Gの代理人Eは昭和三八年三月二八日Fの代理人Aとの間で、Fより本件第一建物を代金三〇〇万円で買い受ける旨の契約を締結し、該契約にもとづき第一審被告Gが右建物の所有権を取得したものというべきであり、第一審被告らの前示抗弁は理由がある。してみると、その後右建物の所有権をFの遺贈、または法定相続分の変更を伴う遺産分割方法の指定、法定相続分変更を伴わない単なる遺産分割方法の指定たる現物分割によつて取得したことを前提とする第一審原告の請求は、すべて失当たるを免れない。二、 次に第一審原告は、本件第二建物が亡Fの相続財産(遺産)であること、および同人の右建物に関する遺言が有効であることを前提として ことを前提とする第一審原告の請求は、すべて失当たるを免れない。二、 次に第一審原告は、本件第二建物が亡Fの相続財産(遺産)であること、および同人の右建物に関する遺言が有効であることを前提として、右建物の所有権確認その他の請求をするところ、第一審被告Aら五名はこれを争い、右建物は第一審被告Aの所有物件であるとし、また、右遺言の効力を争うので、これを検討する。1 後述のとおり真正に成立したと認める甲第二号証の三、四、五、官署作成部分の成立については争いがなく、その余の部分は弁論の全趣旨によつて成立を認めうる甲第一七、一八号証の各一、弁論の全趣旨により原本の存在ならびに成立ともに認めうる甲第一七号証の二、弁論の全趣旨により成立を認めうる甲第一七号証の一、二、第一九号証の二ないし四、第二一号証の一、二、成立に争いのない甲第一九号証の一および原審ならびに当審(第一回)における第一審原告本人尋問の各結果および本件弁論の全趣旨を綜合すると、本件第二建物は昭和二四年秋頃Fが建築主となり、下宿業を営むため建築したものであり、建築当初は第一審被告Aが住んでいたが、昭和二六年春頃Fの指示にしたがつてAは世田谷区a町にFから買い与えられた家屋に転居し、そのあとにFおよび第一審原告らが入居し、引き続き同所で下宿業をしていたが、昭和二七年春頃第一審原告名義で右建物に増改築をなし、その完成後間もない頃第一審原告名義で旅館業をはじめ、以来Fの死亡にいたるまでこれを継続していたこと、この間Fは右建物が自己の所有に属するものとして居住し、使用収益しており、これに対し第一審被告Aらが格別異論を述べなかつたことが認められ、右認定に反する乙第一七号証、当審における第一審被告A(第一回)、C各本人尋問の結果は前示各証拠に照らして信用せず、他に右認定を左右するに足る証拠 物に増改築をなし、その完成後間もない頃第一審原告名義で旅館業をはじめ、以来Fの死亡にいたるまでこれを継続していたこと、この間Fは右建物が自己の所有に属するものとして居住し、使用収益しており、これに対し第一審被告Aらが格別異論を述べなかつたことが認められ、右認定に反する乙第一七号証、当審における第一審被告A(第一回)、C各本人尋問の結果は前示各証拠に照らして信用せず、他に右認定を左右するに足る証拠 審被告Aらが格別異論を述べなかつたことが認められ、右認定に反する乙第一七号証、当審における第一審被告A(第一回)、C各本人尋問の結果は前示各証拠に照らして信用せず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。してみれば、本件第二建物はFの生前は同人の所有に属したものであり、その死亡によつて相続財産となつたもの(遺贈の対象となつたか否かの点はしばらく措く)というべきである。2 第一審原告提出にかかる甲第二号証の三ないし五によると、F作成名義の昭和三六年四月一五日付遺言書二通(東京家庭裁判所昭和三八年(家)第五、一六一号、第五、四七三号)、同年同月二六日付遺言書一通(前同第五、四七四号)が存在し、その記載内容が別紙第一ないし第三遺言書のとおりであることが認められる。しかして、原審証人P・の証言によつてその成立を認めうる甲第四号証の一ないし五、第七号証の一、二および原審証人J(第一、二回)P・、I、Mの各証言ならびに原審における第一審原告本人尋問の結果を総合すると、前記遺言言三通はそれぞれに記載の作成年月日に遺言者Fが自己の意思にもとづき自らその全文を記載し署名捺印したものであることが認められる。原審証人E、B、Cの各証言、原審における被告C本人尋問の結果ならびに当審における第一審被告A(第一回)、C各本人尋問の結果のなかには右認定に反し、前記各遺言書は偽造されたものであるとか、無理に書かされたものと思われるとかいう趣旨の供述があるが、それらは多く憶測の域を出ないものである。もつともFがさきに第一審被告Aに対し本件第一建物の処分を承認し、その後第一審被告Gがこれを買い取ることになつた旨の報告を受けていたことは前示のとおりであること、前示証人Cの証言および原審証人Mの証言によれば、Fは昭和三八年二月に開腹手術を受け、同年三月中は経過も順調であ 被告Gがこれを買い取ることになつた旨の報告を受けていたことは前示のとおりであること、前示証人Cの証言および原審証人Mの証言によれば、Fは昭和三八年二月に開腹手術を受け、同年三月中は経過も順調であつたが、同月に入つてから次第に病状が悪化し、同月末頃には重態であつた事実が認められること、そしてまた前記三通の遺言書が作成された同年四月一五日および同二六日には、その前後の期間をも含め、第一審被告Cが昼間は第一審原告とともにFの看護にあたつていたにもかかわらず、同人が全然知らないうちに前記三通の遺言状が作成されたものであることが同人の証言によつて認められることを併せ考えると、第一審被告雄繁らにおいて前記遺言書の作成ないし記載内容につき疑惑を抱くのは一応もつともなことであると考えられないでもない。 前記三通の遺言書が作成された同年四月一五日および同二六日には、その前後の期間をも含め、第一審被告Cが昼間は第一審原告とともにFの看護にあたつていたにもかかわらず、同人が全然知らないうちに前記三通の遺言状が作成されたものであることが同人の証言によつて認められることを併せ考えると、第一審被告雄繁らにおいて前記遺言書の作成ないし記載内容につき疑惑を抱くのは一応もつともなことであると考えられないでもない。しかしながら、前示証人Mの証言によると、昭和三八年四月二六、七日頃でもまだFは回転式ベツトの上半身をあげて貰い、これに支えられるようにして短い文章を書くという程度のことなら必ずしも不可能ではなかつたことが認められるから、Fの病状の点から前記各遺言書が本人の意思にもとづかないで作成されたものと推認することはできない。さらに原審および当審(第一回)における第一審原告本人尋問の各結果によると、第一審原告はもともとFが健康であつた頃から将来Fとともに本件第一建物に住みアパートを経営して生活することを希望していたことが認められること、当審における第一審被告A(第一回)、C各本人尋問結果によれば、第一審被告AがFから本件第一建物の処分を委任され、これを第一審被告Gに売り渡したのは第一審原告の病臥中にその意向を確めないままにされたものであることが明らかであることからすれば、右建物処分の事実を知つた第一審原告がこれに対して強い不満を感じ、それを夫Fに訴えたであろうこと たのは第一審原告の病臥中にその意向を確めないままにされたものであることが明らかであることからすれば、右建物処分の事実を知つた第一審原告がこれに対して強い不満を感じ、それを夫Fに訴えたであろうことは容易に推測しうるところである。してみれば、Fはいわば第一審被告Aらと第一審原告との間で板ばさみの状態に置かれるにいたつたともみられ、それに病状の悪化に伴なう精神的不安定とも相まつて、次第に心境に変化を来たすにいたり、さきに本件第一建物の処分を承認したのを否定し、前記のような遺言書を作成したということも十分に考えられるところである。したがつて、第一審被告CがFの傍にいないときに作成されたからといつて直ちに第一審原告らがFに対し強迫または欺罔手段を用いて前記遺言書を書かせたとか、Fの意思にもとづかずに作成されたなどと推測するのも早計であるというべきである。 神的不安定とも相まつて、次第に心境に変化を来たすにいたり、さきに本件第一建物の処分を承認したのを否定し、前記のような遺言書を作成したということも十分に考えられるところである。したがつて、第一審被告CがFの傍にいないときに作成されたからといつて直ちに第一審原告らがFに対し強迫または欺罔手段を用いて前記遺言書を書かせたとか、Fの意思にもとづかずに作成されたなどと推測するのも早計であるというべきである。そのほか、前記遺言書がFの意思にもとづかずに作成され、あるいは第一審被告ら主張のごとく強迫ないし詐欺によつて作成されたものと認めうる適切な証拠資料はない。してみると、前示各遺言書の記載は遺言者Fの作成にかかりその真意に出たものというべく、これが同人の正常な判断力の欠如ないし減退した状態を利用し、その意思に反してなされたものであるとし、あるいは右遺言書の作成が強迫ないしは詐欺によつてなされたことを前提とする第一審被告らの主張は、これを採用することができない。三、 第一審原告は、本件第一建物に関する前記請求の全部の理由がないとしても、亡Fの遺言にもとづき本件第二建物の所有権全部を取得したと主張するので、これを審案する。Fが昭和三八年四月一五日付の遺言書で「本件第二建物を第一審被告A、Bに、本件第一建物を第一審原告に相続せしめる」(別紙、第一遺言書)、同日付遺言書で「本件第一建物を第一審被告 これを審案する。Fが昭和三八年四月一五日付の遺言書で「本件第二建物を第一審被告A、Bに、本件第一建物を第一審原告に相続せしめる」(別紙、第一遺言書)、同日付遺言書で「本件第一建物を第一審被告Gより取戻し解決することができない場合は本件第二建物を第一審原告に相続せしめる」(別紙、第二遺言書)、同年同月二六日付遺言書で「前に本件第二建物を第一審被告A、Bに相続せしめるとしたのを、同A、B、C、Rの四名に相続せしめる」(別紙、第三遺言書)旨の遺言をしていることは前に説示したとおりである。すなわち、右の各遺言によると、Fは本件第二建物を当初第一審被告A、Bに相続せしめるとし、後にこれと右Aら四名に相続せしめるものと改め、また本件第一建物を第一審原告に相続せしめるものとしたが、他方、第一審被告Gより本件第一建物を取り戻し解決することができない場合には、本件第二建物を第一審原告に相続せしめるものと指示したのである。 」(別紙、第三遺言書)旨の遺言をしていることは前に説示したとおりである。すなわち、右の各遺言によると、Fは本件第二建物を当初第一審被告A、Bに相続せしめるとし、後にこれと右Aら四名に相続せしめるものと改め、また本件第一建物を第一審原告に相続せしめるものとしたが、他方、第一審被告Gより本件第一建物を取り戻し解決することができない場合には、本件第二建物を第一審原告に相続せしめるものと指示したのである。しかるに、前示のとおり本件第一建物の所有権はすでに第一審被告Gに移転しており、本件口頭弁論の全趣旨に徴しこれを任意に取り戻し解決することができない状態にあると認められるから、「本件第二建物を第一審原告に相続せしめる」との遺言がその効力を生じたものというべく、したがつて右遺言の趣旨をいかに解すべきかが考察されねばならない。<要旨第一>よつて案ずるに、被相続人が自己の所有に属する特定の財産を特定の共同相続人に取得させる旨の指示を</要旨第一>遺言でした場合に、これを相続分の指定、遺産分割方法の指定もしくは遺贈のいずれとみるべきかは、被相続人の意思解釈の問題にほかならないが、被相続人において右の財産を相続財産の範囲から除外し、右特定の相続人が相続を承認すると否とにかかわりなく(たとえばその相続人が相続を放棄したとしても)、その相続人 の意思解釈の問題にほかならないが、被相続人において右の財産を相続財産の範囲から除外し、右特定の相続人が相続を承認すると否とにかかわりなく(たとえばその相続人が相続を放棄したとしても)、その相続人に取得させようとするなど特別な事情がある場合は格別、一般には遺産分割に際し特定の相続人に特定の財産を取得させるべきことを指示する遺産分割方法の指定であり、もしその特定の財産が特定の相続人の法定相続分の割合を超える場合には相続分の指定を伴なう遺産分割方法を定めたものであると解するのが相当である。これを本件についてみるに、Fが本件第二建物を相続財産の範囲から除外し、第一審原告が相続を承認すると含とにかかわりなく、同人に取得させようとする意思を有していたなどという特別な事情の存在を認めうる証拠はなく、かえつて本件第二建物を第一審原告に「相続せしめる」と指示しているところからみると、Fの意思は遺産分割にあたり、本件第一建物を遺産の範囲から除外するほかない場合の処置として、第一審原告に本件第二建物の所有権を取得させるべきことを指示する遺産分割方法の指定をしたものというべきである。 を承認すると含とにかかわりなく、同人に取得させようとする意思を有していたなどという特別な事情の存在を認めうる証拠はなく、かえつて本件第二建物を第一審原告に「相続せしめる」と指示しているところからみると、Fの意思は遺産分割にあたり、本件第一建物を遺産の範囲から除外するほかない場合の処置として、第一審原告に本件第二建物の所有権を取得させるべきことを指示する遺産分割方法の指定をしたものというべきである。なお、右遺産分割方法の指定が相続分の指定を伴なうか否かが問題となる余地があるが、右の点は本件における直接の審理の対象ではなく、これを確定する必要もないので、これを判断しない。Fの遺言の趣旨が右のとおりであるとすれば、同人の遺産を相続した共同相続人の間で遺産分割の協議または調停をするに際しては、右遺言の趣旨をできるだけ尊重すべく、遺産分割が審判によつて行なわれるときは右遺言の趣旨に従わねばならぬのはもとよりであり、その結果第一審原告が本件第二建物の所有権を取得する旨の遺産分割が成立した場合には、同人は相続開始の時にさかのぼり右所有権取得の効果を付与されることになる。しかしなが ねばならぬのはもとよりであり、その結果第一審原告が本件第二建物の所有権を取得する旨の遺産分割が成立した場合には、同人は相続開始の時にさかのぼり右所有権取得の効果を付与されることになる。しかしながら、それがいかなる方法によつてなされるにせよ、右遺産分割が成立するにいたるまでは、第一審原告は単にFの相続財産たる本件建物につき同人の死亡当時の配偶者として民法の定めるところによつて三分の一の共有持分(法定相続分)を有するにとどまり、ただ将来財産分割によつて右建物の所有権を取得しうる地位を有するけれども、未だ遺産分割のなされていない今日にあつては右建物につき確定的な所有権を有するものではない。してみると、Fの遺言によつて直ちに本件第二建物の確定的な所有権を取得したことを前提とする第一審原告の第一審被告Aら五名に対する請求は、その余の点につき判断するまでもなく、すべてその理由なしとしなければならない。四、 次に第一審原告は、前記請求の一部が理由がないとき、すなわち本件第二建物につき第一審原告が三分の一の共有持分(相続分)を有するにすぎない場合であることを前提として、(1)第一審原告と第一審被告Aら五名との間において、本件第二建物が被相続人亡Fの相続財産であること、ならびに第一審原告が右建物につき三分の一の共有持分(相続分)を有することの確認、(2)第一審被告Aが第一審原告に対し右建物につき三分の一の共有持分(相続分)の移転登記手続をなすべきこと、(3)第一審被告Aが第一審原告に対し昭和三八年五月二日より遺産分割にいたるまでの損害金の支払いをなすべきことを求めるので、これを審案する。 被告Aら五名との間において、本件第二建物が被相続人亡Fの相続財産であること、ならびに第一審原告が右建物につき三分の一の共有持分(相続分)を有することの確認、(2)第一審被告Aが第一審原告に対し右建物につき三分の一の共有持分(相続分)の移転登記手続をなすべきこと、(3)第一審被告Aが第一審原告に対し昭和三八年五月二日より遺産分割にいたるまでの損害金の支払いをなすべきことを求めるので、これを審案する。1 本件第二建物がFの生存中は同人の所有に属していたものであり、その死亡によつて相続財産となつたものであること、第一審原告がFの死亡当時の妻として相続人たる地 とを求めるので、これを審案する。1 本件第二建物がFの生存中は同人の所有に属していたものであり、その死亡によつて相続財産となつたものであること、第一審原告がFの死亡当時の妻として相続人たる地位にあることFの遺産につき未だ分割の成立しない今日の段階においては、第一審原告はFの相続財産たる本件第二建物につき三分の一の共有持分(相続分)を有するにとどまること前示のとおりであるところ、第一審被告Aら五名が右の事実を争つていることは弁論の全趣旨によつて明らかであるため、第一審原告は第一審被告Aら五名との間に右の二点につき確認の利益を有するものということができる。2 成立に争いのない甲第一三号証によると、本件第二建物につき昭和三八年五月一六日東京法務局杉並出張所受付第一二、五九八号をもつて第一審被告A名義の所有権保存登記がなされていることが認められるが、前段で説示したとおり第一審原告は右建物につき三分の一の共有持分(法定相続分)を有するのであるから、右登記を実体に符合させるため、第一審被告Aに対し右建物につき三分の一の共有持分(相続分)の移転登記手続を求めることができる。3 第一審原告はさらに、第一審被告Aにおいて本件第二建物のうち自己の共有持分(相続分)三分の一の割合に相当する部分を不法に使用収益し、これを侵害しているとして、相続開始時から遺産分割時まで賃<要旨第二>料相当額の三分の一にあたる月額三万四、二三三円の割合による損害金の支払いを請求する。思うに相続</要旨第二>が開始し数人の共同相続人があるときは、相続財産はそれら相続人の共有に属し、各自の相続分に応じて右財産上の権利を承継するのであるが、この場合における各相続人の相続財産に対する相続分(共有持分)は、通常の確定的な権利とはその意義を異にし、後に行なわれる遺産分割の結果、 産分割時まで賃<要旨第二>料相当額の三分の一にあたる月額三万四、二三三円の割合による損害金の支払いを請求する。思うに相続</要旨第二>が開始し数人の共同相続人があるときは、相続財産はそれら相続人の共有に属し、各自の相続分に応じて右財産上の権利を承継するのであるが、この場合における各相続人の相続財産に対する相続分(共有持分)は、通常の確定的な権利とはその意義を異にし、後に行なわれる遺産分割の結果、 属し、各自の相続分に応じて右財産上の権利を承継するのであるが、この場合における各相続人の相続財産に対する相続分(共有持分)は、通常の確定的な権利とはその意義を異にし、後に行なわれる遺産分割の結果、共同相続人中の何びとがどの程度の割合で具体的な相続財産を取得するか不明であり、その意味において権利性は極めて浮動的・潜在的であり、しかもそれが現実に分割された場合における所有権帰属の効果は相続開始時にまで遡及するものとされている。共同相続人が相続財産に対して有する相続分の性格が右のようなものであることを考えると、共同相続人中の一人が相続開始前より引き続き相続財産に属する建物の全部を使用収益しているとしても、それによつて直ちに相続開始時より遺産分割時までの間使用収益しない相続人の右建物に対してもつ相続分(共有持分権)を故なく侵害し不法行為を構成するものと解することはできず、その間における建物の使用収益に関しては共同相続財産の管理として、民法、家事審判法、家事審判規則などの関係法令の定めるところにしたがつて処理すべきである。したがつて、たとえば単純承認後、遺産分割申立までの間に右建物を直接使用収益していない相続人が自己の相続分の範囲内で使用収益することを求めるときは、全相続人の相続分率にしたがい過半数をもつてその是非を定めることができ(民法第二五二条参照)、また遺産分割の審判申立後、家庭裁判所の選任した遺産管理人は相当であると認めれば前記相続人が右建物の使用収益を許容しうる旨を定めることができるのであるが、(家事審判規則第一〇六条第一項参照)、右の定めがなされたにもかかわらず、現に使用収益する相続人の一人が使用収益を許容された他の相続人の使用収益を故なく妨害するときは不法行為を構成するものというべく、また遺産分割に際しては相続開始時より遺産分割 なされたにもかかわらず、現に使用収益する相続人の一人が使用収益を許容された他の相続人の使用収益を故なく妨害するときは不法行為を構成するものというべく、また遺産分割に際しては相続開始時より遺産分割時までの使用収益によつて得た利益は分割の対象たる積極財産の一種として評価し清算されるべきであり、さらに最終的遺産分割までに右利益の帰属に関して特段の定めがなされなかつたときは、遺産分割によつて右建物につき確定的にして遡及的効果を伴なう所有権を取得した相続人が相続開始時より遺産分割成立の前後にいたるまで右建物を使用収益した相続人に対し、不当利得の返還もしくは不法行為による損害賠償を請求することが可能である。 使用収益によつて得た利益は分割の対象たる積極財産の一種として評価し清算されるべきであり、さらに最終的遺産分割までに右利益の帰属に関して特段の定めがなされなかつたときは、遺産分割によつて右建物につき確定的にして遡及的効果を伴なう所有権を取得した相続人が相続開始時より遺産分割成立の前後にいたるまで右建物を使用収益した相続人に対し、不当利得の返還もしくは不法行為による損害賠償を請求することが可能である。してみると、いまだ遺産分割がなされておらず、しかも第一審原告が本件第二建物をその相続分(共有持分権)の範囲内で使用収益することを許容されたことにつき何らの主張、立証のない本件にあつては、第一審原告の右請求は失当たるを免がれない。五、 第一審原告は、第一審被告らとの間において、東京家庭裁判所昭和三八年(家)第五、一六一号、第五、四七三号、第五、四七四号遺言書検認事件の対象である遺言者F作成名義の昭和三八年四月一五日付遺言書二通(別紙、第一、第二遺言書)、同年同月二六日付遺言書(別紙、第三遺言書)がいずれも真正に成立したものであることの確認を求めるので、これを審究する。まず第一審被告Gとの関係についてみるに、同被告は遺言者Fの相続人ないし受遺者たる地位にあるものではなく、単にその所有に属した本件第一建物の買主たる地位を有するか否かという点につき第一審原告と法律上の利害関係をもつにとどまり、前記遺言書の真否確定に関しては別段の権利義務の関係がないため、その確認を求めるにつき即時確定の利益が存在しないから、右被告に対する請求は不適法たるを免がれ 原告と法律上の利害関係をもつにとどまり、前記遺言書の真否確定に関しては別段の権利義務の関係がないため、その確認を求めるにつき即時確定の利益が存在しないから、右被告に対する請求は不適法たるを免がれない。これに対して、第一審被告Aら五名は、第一審原告らとともに亡Fの共同相続人であり、現に東京家庭裁判所に遺産分割事件が係属しており、右Aら五名が前記遺言書が真正に成立したものであることを争つているため、第一審原告はこれが確認を求める利益を有するものというべきところ、右遺言書がいずれも遺言者Fの意思にもとづき真正に成立したものであることは前に説示したとおりであるから、右請求部分は理由がある。六、 以上に説示したとおり、第一審原告の本訴請求のうち、(1)第一審原告と第一審被告Aら五名との間において、本件第二建物が亡Fの相続財産であること、第一審原告が右建物につき三分の一の共有持分(相続分)を有すること、および遺言者亡F作成名義の前記遺言書三通がいずれも真正に成立したものであることの各確認を求める部分は理由があるのでこれを認容すべく、(2)第一審被告Gとの間において前記遺言書三通が真正に成立したものであることの確認を求める部分は不適法として却下し、(3)当審における新たな請求を含むその余の請求部分はいずれも理由がないので棄却を免がれない。 原告が右建物につき三分の一の共有持分(相続分)を有すること、および遺言者亡F作成名義の前記遺言書三通がいずれも真正に成立したものであることの各確認を求める部分は理由があるのでこれを認容すべく、(2)第一審被告Gとの間において前記遺言書三通が真正に成立したものであることの確認を求める部分は不適法として却下し、(3)当審における新たな請求を含むその余の請求部分はいずれも理由がないので棄却を免がれない。よつて、原判決は不当であるから民事訴訟法第三八六条によつて取り消したうえ、第一審原告の請求を右のとおり認容、却下、棄却するものとし、訴訟費用の負担につき同法第九五条、第九三条、第九二条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官多田貞治裁判官上野正秋裁判官岡垣学)(別紙)第一目録東京都世田谷区ab丁目c番地所在家屋番号同町d号一、木造亜鉛葺二階建店舗(現状 とおり判決する。(裁判長裁判官多田貞治裁判官上野正秋裁判官岡垣学)(別紙)第一目録東京都世田谷区ab丁目c番地所在家屋番号同町d号一、木造亜鉛葺二階建店舗(現状アパート)一棟建坪二〇坪(六六・一一平方メートル)外二階一六坪(五二・八九平方メートル)第二目録東京都杉並区eb丁目f番地所在家屋番号同町h番のj一、木造瓦葺二階建店舗一棟一階二二坪八合(七五・三七平方メートル)二階一九坪九合八勺(六六・〇四平方メートル)第一遺言書(東京家庭裁判所昭和三八年(家)第五、一六一号)私は右の通り遺言す杉並区efのg家屋二階旅館一棟右家屋はABに相続せしめる世田谷区abノcアパート家屋dはSに相続せしめる家財道具一切はSに渡す事三十八年四月十五日F 「印」第二遺言書(東京家庭裁判所昭和三八年(家)第五、四七三号)世田谷区abノcアパートはGに売渡シタおぼえは絶対なし私は入院中でしらなかつた但し解決シナイばはいはefノg旅館をSに相続セシめる事松沢の残金はAが支払事病院保険金でSが支払事昭和三十八年四月十五日F 「印」第三遺言書(東京家庭裁判所昭和三八年(家)第五、四七四号)一、私の昭和三八年四月十五日付遺言書中efノgの旅館をABに相続せしめると書いたのをABCRの四名に相続せしめると訂正する二、世田谷のアパートを他の売却することをAに委任したことは絶対にないからAは元の通り私の名義に回復しなければならない昭和三八年四月二十六日F 「印」 残金はAが支払事病院保険金でSが支払事昭和三十八年四月十五日F 「印」第三遺言書(東京家庭裁判所昭和三八年(家)第五、四七四号)一、私の昭和三八年四月十五日付遺言書中efノgの旅館をABに相続せしめると書いたのをABCRの四名に相続せしめると訂正する二、世田谷のアパートを他の売却することをAに委任したことは絶対にないからAは元の通り私の名義に回復しなければならない昭和三八年四月二十六日F 「印」 ならない 昭和三八年四月二十六日 F「印」
▼ クリックして全文を表示