平成15(わ)419 殺人,死体損壊,死体遺棄

裁判年月日・裁判所
平成19年2月23日 岐阜地方裁判所
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判決文本文20,857 文字)

- 1 -平成19年2月23日宣告平成15年(わ)第358号,第419号,第663号判決主文被告人を死刑に処する。 理由 (第1の犯行に至る経緯)被告人は,昭和62年ころ,保険会社の代理店研修を通じて,夫と子がいるAと知り合い,不倫関係となった。被告人は,平成元年ころ,結婚仲介業を始め,Aにもその仕事を手伝ってもらい,平成2年には,同業務を行うD株式会社を設立し,代表取締役に就任した。被告人は,Aから子供もいるし,夫が別れてくれないなどと言われ,Aと結婚できなかったため,平成4年7月にCと婚姻したが,その直前に,Aが被告人宅に来て,自殺するふりをし,被告人の結婚をやめさせようとしたことがあった。被告人は,Cとの結婚後もAとの交際を続ける一方で,平成6年9月にはCとの間に双子の子供をもうけた。そのような中,同年11月に,D株式会社が倒産し,被告人は,債権者の取立てから身を隠すため,自宅を出て,妻とも連絡をとらず,Aと生活するようになり,平成7年2月ころからスーパーで働き,Aも同年3月ころからE銀行(当時)でパートとして勤務し収入を得ていたが,パチンコで浪費もしていたため,金が足りず,かといって,破産手続中であった被告人は消費者金融等が利用できなかったため,A名義のクレジットカード等で借金を重ね,生活費等のやりくりについていわゆる自転車操業の生活を送るようになった。 被告人は,平成7年10月ころ,F株式会社に転職し,Aに告げずに,妻子と共に,,。 ,生活するようになったがその後間もなくAとの不倫関係を再開した被告人は自分の給料は全額妻に渡し,自由になる金は小遣いだけであったため,Aの生活費や同女との遊興費等については,Aの収入だけでは足りず,A名義のクレジットカード等での借金で補充していた。被告人は,平成8年11月こ 料は全額妻に渡し,自由になる金は小遣いだけであったため,Aの生活費や同女との遊興費等については,Aの収入だけでは足りず,A名義のクレジットカード等での借金で補充していた。被告人は,平成8年11月ころ,Aから,アルバ- 2 -イト先のスナックのマスターと恋仲にある旨告げられ,嫉妬心等から,平成9年1月ころ,親戚から借りた金で,Aのために愛知県海部郡a町所在のHビルの部屋を,,,,賃借し同年5月ころ以降自らも同所で生活するようになったが2人の収入は被告人の小遣いとAのパート代しかなく,家賃等の生活費や遊興費に窮するようになり,被告人は,F株式会社の同僚等から借金をして補うようになった。また,借金に使っていたA名義のクレジットカード等の中には,Aの勤務先のE銀行の系列会社発行のGカードがあったところ,被告人は,平成10年5月ころ,前記Gカードの返済が滞ったため勤務先の銀行との関係からそのことを気にかけていたAから,金策について文句や,愚痴を言われたりするようになった。これを受けた被告人は,その後,妻に嘘を言うなどして,F株式会社からの給料の大半をAとの生活費等に使えるようにしたが,被告人とAがパチンコで浪費したことやF株式会社の,,,同僚等から金を借りられなくなったことから借金の返済資金等に窮し被告人は平成11年6月ころから,寿司の宅配のアルバイトも兼ねるようになった。被告人は,同年7月上旬ころ,同僚等から被告人が借金していたことを知ったF株式会社の上司から退職を促されたため,転職活動を始め,同月25日付けで同社を退職した。被告人は,転職先として,回転寿司等の外食チェーン店の経営等を業務とするI株式会社の幹部社員募集に学歴を詐称して応募し,同年8月9日,役員面接を経て,I株式会社本社経営企画室に採用されることとなったが,こ は,転職先として,回転寿司等の外食チェーン店の経営等を業務とするI株式会社の幹部社員募集に学歴を詐称して応募し,同年8月9日,役員面接を経て,I株式会社本社経営企画室に採用されることとなったが,この転職をAには話さなかった。被告人は,東証2部上場を目指す一流企業であるI株式会社のエリート社員として出世し,借金まみれの生活から抜け出して成功するためにも,I株式会社では絶対に失敗できず,全力で仕事をして頑張ろうと思った。しかし,そうすると,これまでのように,アルバイトをして妻子とAの両方の生活費を賄うような二重生活はできないから,多額の借金を負ったAとの生活の方を終わらせようと思った。同月10日は,Gカードの決済日であったが,被告人は,返済資金を調達で,,,,,,きず同日夜帰宅したHビルにおいてAに対しその旨伝えたところAから被告人の親から金を借りてこい,自分が行ってやろうか旨ののしられた。これを受- 3 -けた被告人は,このようなAがI株式会社への就職を知れば,それを台無しにするようなことをするかも知れないと思い,Aと借金が消えれば一石二鳥であるので,Aを殺害しようと考えるようになった。 (罪となるべき事実第1)被告人は,平成11年8月15日ころの夜,愛知県海部郡町b町c丁目d番地ae所在のHビルf号室に帰宅したところ,借金の返済資金を調達できなかったことにつき,A(当時43歳)から「女1人囲えんのに,大きな顔をせんといてよ。 ,こんなんなら,マスターのとこ行こうかな」などとなじるように言われ,Aから。 飲んでいたビールの缶を投げ付けられたため,激高し,同女の殺害を決意し,そのころ,同所において,Aに対し,殺意をもって,その腹部に馬乗りになってその頸部を両手で扼し,よって,その場で同女を窒息死させて殺害した ビールの缶を投げ付けられたため,激高し,同女の殺害を決意し,そのころ,同所において,Aに対し,殺意をもって,その腹部に馬乗りになってその頸部を両手で扼し,よって,その場で同女を窒息死させて殺害したものである。 (第2の各犯行に至る経緯)被告人は,平成11年11月ころ,I株式会社の開発部部長に昇進するなどしたが,平成12年12月に系列のJT店店長に異動となり,左遷されたことからI株式会社を辞め,同月,焼肉店等の外食チェーン店の経営等を業務とするK株式会社に入社し,平成13年2月に同社の開発本部開発1部部長に抜擢されるなど出世していった。そのような中,被告人は,平成14年3月ころ,異業種交流会で知り合ったBと肉体関係を伴った交際を始め,同年11月には,Bの住居として愛知県一宮市所在のLマンションg棟h号室を賃借して交際を続けていたところ,次第に,夫と離婚していて独身であったBから強く結婚を迫られるようになり,他方で,被,。 ,告人は平成15年3月ころから別の女性とも交際をするようになったところで被告人は,K株式会社の開発部長としての地位を利用し,K株式会社の取引業者からバックリベートを得たり,K株式会社の取引に関し,被告人が設立したM有限会社等を介在させるなどの方法により,被告人やM有限会社等が利益を得るというK株式会社に対する背信的取引をしていたところ,平成15年2月ころ,その背信的取引についてBの知るところとなり,被告人は,Bから不正行為を公表しないこと- 4 -と引き替えに結婚を迫られていると感じ,前記のとおり,別の女性と交際を始めたこともあって,Bを疎ましく思うようになった。同年5月15日ころ,K株式会社の上司に被告人が行っていた前記背信的取引が発覚したが,被告人は,すぐに解雇されなかったことから安堵し,開発部長の立場を利用 こともあって,Bを疎ましく思うようになった。同年5月15日ころ,K株式会社の上司に被告人が行っていた前記背信的取引が発覚したが,被告人は,すぐに解雇されなかったことから安堵し,開発部長の立場を利用して,M有限会社を単体で順調に利益を上げられる会社にしようなどと考えた。被告人は,同月24日,前記同年3月ころから交際していた女性と名古屋市i区所在のマンションで過ごしていたところ,被告人の携帯電話にBから頻繁に連絡が入ったため,翌25日午前零時ころ,前記LマンションのB方に向かった。 (罪となるべき事実第2)被告人は, 平成15年5月25日午前零時30分ころ,愛知県一宮市jk丁目l番m号Lマンションg棟h号室に到着し,B(当時49歳)をなだめるなどしたものの,被告人との結婚を求めるBと口論になり,Bから,K株式会社に行って前記背信的取引のことやBとの不倫関係について全部公表する旨や,被告人の妻に対しても全部ばらす旨などと言われたことで激高し,Bを殺害することを決意し,同日午前1時30分ころ,同所において,Bに対し,殺意をもって,その胸部に馬乗りになってその頸部を両手で扼し,よって,その場で,同女を窒息死させて殺害した Bの死体を解体して遺棄しようと企て,同日ころ,前記Lマンションg棟h号室の浴室内において,カッターナイフを用いて,同女の死体を左右下肢部,左右上肢部,頭部及び胴体の六つに切断した上,黒色ビニール袋4袋に入れ,,(),同日ころ岐阜県羽島郡n町op丁目q番地当時付近のO川右岸において前記左下肢部等をO川に投棄し,さらに,同月27日ころ,愛知県中島郡町r大字字官有地内(当時)P川河口から上流23.6キロポスト付近のP川st左岸河川敷の雑木林内において,前記頭部及び左右上肢部を同所の土中に埋めるなど に,同月27日ころ,愛知県中島郡町r大字字官有地内(当時)P川河口から上流23.6キロポスト付近のP川st左岸河川敷の雑木林内において,前記頭部及び左右上肢部を同所の土中に埋めるなどし,もって,死体を損壊して遺棄した- 5 -ものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明等)第1はじめに被告人は,判示第1のA殺害の事実につき,捜査段階及び第3回公判期日の罪状認否では,Aの殺害を認める供述をしていたが,第11回公判期日に至って,その供述を変更し,それ以後,Aは自殺したのであり,自分が殺害したのではない旨供述している。 ,,,そして弁護人は被告人の第11回公判期日以降の公判供述を前提として被告人は,Aを殺害しておらず,被告人の捜査段階の自白には証拠能力がないなどとして,被告人の無罪を主張する。 そこで,当裁判所が判示第1のとおり,被告人がAを殺害したと認定した理(,,「」,由を補足して説明するなお以下の説明では判示第1の事件をA事件判示第2の各事件を「B事件」という。 。)第2前提となる事実と推認まず,被告人が争っていない事実関係のみを前提として検討する。 関係各証拠によれば,被告人とAは,長年にわたる不倫関係にあり,平成1f1年8月当時共に配偶者と子供がある身であったが判示第1記載のHビル,,号室において,同居して生活していたこと,同月15日ころ,Aが同所において死亡したこと,被告人は,同月16日ころから同月17日ころにかけて,同所浴室内において,カッターナイフ等を用いてAの死体を切断して,頭部,胸部,腰部,左右下肢部,左右上肢部等に解体し,それらを別々の黒色ビニール袋等に入れるなどした上,同月17日ころ,これらを自動車で運ぶなどして,草むら,焼却炉,鉄製ゴミ箱等の複 体を切断して,頭部,胸部,腰部,左右下肢部,左右上肢部等に解体し,それらを別々の黒色ビニール袋等に入れるなどした上,同月17日ころ,これらを自動車で運ぶなどして,草むら,焼却炉,鉄製ゴミ箱等の複数の場所に投棄したこと,その後,被告人は,平成15年10月28日に至るまで,Aが死亡したことを誰にも話さなか- 6 -ったことが認められ,これらの事実については,被告人自身が公判廷で認めている。 そこで検討すると,被告人の前記のような行動,すなわち,死亡した者の遺体を切断して解体し,それらを複数の場所に投棄し,その後同人が死亡したことを誰にも話さないという行動は,犯罪行為により人を死亡させた者が自らの犯行を隠蔽することを目的としてとる行動であることは,社会通念上明らかであり,このような行動を被告人がとったことは,Aが自殺したのではなく,被告人がAを殺害したことを強く推認させる事実である(なお,このような行動に関する被告人の弁解については,後に検討する。 。) この点につき,弁護人は,被告人がAの死体を切断して解体し,遺棄した行為は,死体損壊罪,死体遺棄罪としては公訴時効が成立しているから,これを主張立証したり,審理することは許されず,本件における検察官の主張立証活動,当裁判所の審理は違憲,違法であるなどと主張する。しかし,前記2のとおり,前記のような被告人の行為は,被告人が犯罪行為によりAを死亡させたことを強く推認させる事実であり,A事件の犯行そのものを立証する事項として極めて重要な間接事実であることは明らかであるから,検察官の主張立証は当然許されるものであり,弁護人の主張は失当である。 第3被告人の捜査段階の自白の証拠能力次に,被告人の捜査段階の自白の証拠能力について検討する(なお,この項で単に「自白」というときは,捜査段階の 当然許されるものであり,弁護人の主張は失当である。 第3被告人の捜査段階の自白の証拠能力次に,被告人の捜査段階の自白の証拠能力について検討する(なお,この項で単に「自白」というときは,捜査段階の自白を指す。 。) 弁護人は,A事件の自白(乙31ないし56)には証拠能力がないとし,具体的には,先行して行われたB事件の取調べにおいて,被告人に対し,任意捜査の名を借りた無令状の身柄拘束,連続した長時間の取調べ,脅迫を伴う取調べが行われ,その結果,被告人には恐怖心等が植え付けられた上,その後に行,,,われたA事件の取調べもその影響のもとで行われたからA事件の自白にはB事件の自白(乙1ないし29)と同様,任意性がなく,また,違法収集証拠- 7 -であり,証拠能力がない旨主張する。 そこで検討すると,関係各証拠等によれば,被告人に対する取調べの経過及び状況等の概要として,以下の事実が認められる。 㨯前記第2の1のとおり,被告人が解体して複数の場所に投棄したAの遺体のうち,愛知県小牧市内の焼却炉に投棄した頭部については,その白骨化した頭蓋骨が平成11年8月29日に発見されたが,捜査機関は,その身元を特定できずにいた。 㨯被告人は,判示第2の1のとおり,平成15年5月25日午前1時30分ころ,B方において,同女を殺害し,判示第2の2のとおり,同日ころ,B方で同女の死体を六つに切断した上,黒色ビニール袋4袋に入れ,左下肢部等をO川に投棄し,同月27日ころ,P川左岸河川敷の雑木林内の土中に頭部と左右上肢部を埋め,Bの死体を損壊,遺棄した。同年6月2日,岐阜県羽島市内のQ川左岸において,被告人が遺棄したBの左下肢部が発見され,捜査機関は,DNA鑑定等の捜査の結果,その左下肢部がBのものであることを把握し,当時Bと交際していた被告人に対 6月2日,岐阜県羽島市内のQ川左岸において,被告人が遺棄したBの左下肢部が発見され,捜査機関は,DNA鑑定等の捜査の結果,その左下肢部がBのものであることを把握し,当時Bと交際していた被告人に対し,Bの死体損壊,遺棄等の嫌疑を向けた。 㨯ア同年7月15日朝,B事件の捜査を担当していたR警部補,S警部補らは,当時被告人が居住していた名古屋市西区内のマンションに赴き,被告人に対して任意同行を求め,被告人がこれに応じたため,被告人を自動車に乗せて岐阜県羽島警察署に同行し,被告人に対する取調べを実施した。 午前中の取調べでは,被告人は,ほとんど黙秘の状態であったが,昼食後の午後の取調べの開始後まもなく,Bの死体損壊,遺棄を認める供述をした。しかし,被告人は,同女の殺害については,同女は自殺していたと虚偽の供述をしていた。以上の間に,R警部補らは,被告人に対し,大声で名前を呼んだり,スチール机を叩いたり,同机を蹴ったりしたことがあった。その後,被告人を立会人として,Bの死体損壊現場等の引当捜査が行- 8 -われ,夕食後さらに被告人に対する取調べが行われた。その中で,被告人は,Bの殺害についても認める供述をしたが,Bの死体は,すべて川に流したなどと虚偽の供述をしていた。被告人に対する取調べは,同日午後11時ころまで行われ,被告人は,警察官に付き添われて,岐阜羽島駅近くのビジネスホテルに宿泊した。以上の間に,被告人は,取調べを拒否する旨や帰宅したい旨の申し出をしなかった。 イ被告人は,翌16日,Bの死体損壊,遺棄を被疑事実として逮捕され,その日のうちに,検察官送致された。被告人は,検察官に対しても,Bの殺害,死体損壊,遺棄を認める供述をした。被告人は,Bの死体損壊,遺棄を被疑事実として勾留され,同年8月5日に同事実で起訴された。その,, ちに,検察官送致された。被告人は,検察官に対しても,Bの殺害,死体損壊,遺棄を認める供述をした。被告人は,Bの死体損壊,遺棄を被疑事実として勾留され,同年8月5日に同事実で起訴された。その,,,,後被告人は同月19日にBの殺害を被疑事実として逮捕されその後同事実で勾留された。同月25日,Bの死体損壊,遺棄被告事件につき,,,。 国選弁護人が選任され同月26日ころから弁護人の接見等が行われた被告人は,同年9月10日,B殺害の事実で起訴された。被告人は,以上の間,一貫して,Bの死体損壊,遺棄,殺害を認める供述をしていた。その後,同年10月27日,B事件の第1回公判期日が開かれ,同期日の罪状認否において,被告人は,いずれの公訴事実も間違いない旨述べ,弁護人は,被告人と同意見であるとした上で,検察官が証拠請求した被告人の供述調書を全て同意するとの意見を述べた。 㨯R警部補らは,B事件の捜査の過程で,以前に被告人と交際していたAの行方が数年前から分からなくなっていることを把握し,これに対する被告人の関与の可能性を考えるようになった。そこで,同年10月28日朝,R警部補らは,被告人の同意を得て,Aの行方不明等に関し,被告人に対するポリグラフ検査を実施し,さらに,同日中に被告人を取調べたところ,被告人は,全く否認することなく,Aの殺害を認めた。その後,被告人は,同年12月5日,A事件で逮捕され,勾留を経て,同月26日に起訴された。被告- 9 -人は,以上の間,一貫して,Aの殺害を認める供述をしていた。その後,平,,成16年2月23日に第3回公判期日が開かれ同期日の罪状認否において被告人は,A事件の公訴事実につき,そのとおり間違いない旨述べた。 㨯同年11月8日,第11回公判期日が開かれ,同期日では公判手続の更新が行われたが に第3回公判期日が開かれ同期日の罪状認否において被告人は,A事件の公訴事実につき,そのとおり間違いない旨述べた。 㨯同年11月8日,第11回公判期日が開かれ,同期日では公判手続の更新が行われたが,その際,被告人は,A事件の罪状認否での供述を変更し,Aは自殺したのであり,自分が殺害したのではないなどと述べた。 ,,。 まず弁護人の主張にかんがみB事件の自白の証拠能力について検討する㨯ア弁護人は,前記2㨯アの任意捜査の一環としての被告人に対する取調べが違法であり,B事件の自白には証拠能力がない旨主張する。 ,,イ任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは個人の意思を制圧し,,,身体住居財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段(強制手段)によることができないものであるところ,他方で,事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において,許容されるものである。 そこで検討すると,まず,被告人に対する当初の任意同行については,,,捜査の進捗状況からみて被告人に対する容疑が強まっており事案の性質重大性等にもかんがみると,その段階で直接被告人から事情聴取する必要性があったことは明らかであり,任意同行の手段,方法等についても相当性を欠くところがあったとは認められない。 また,前記任意同行に引き続くその後の被告人に対する取調べ自体についてみると,前記2㨯アのような取調時間には不相当というべき点は見当たらない。もっとも,取調べの態様をみると,R警部補の供述や被告人の公判供述によれば,その取調べの際,R警部補らは,被告人が場当たり的な嘘をついたり,何を聞いても答えなくなってしまった場合に, 見当たらない。もっとも,取調べの態様をみると,R警部補の供述や被告人の公判供述によれば,その取調べの際,R警部補らは,被告人が場当たり的な嘘をついたり,何を聞いても答えなくなってしまった場合に,大声で名前を呼んだり,スチール机を叩いたり,同机を蹴ったりしたと認められ,- 10 -このような取調べは,被告人の心理に不当な影響を与えるおそれがあり,取調べの方法として適正かつ妥当とは言い難いが,本件における取調べの際の被告人の対応状況,被告人の年齢,経歴等からすれば,これらの事情が,被告人の供述の任意性に影響を及ぼすような事情であったとみること。 ,,,,はできないこの点については被告人自身が公判廷でBの死体損壊遺棄については,既にBの足の一部が見つかっていたことから捜査機関に,,,明らかになっていると思い自ら認める供述をしたBの殺害については当初は捜査機関には分からないと思い,Bは自殺していたと嘘を言っていたが,何度も尋ねられ,それについても話をするべきだと思って,自ら認める供述をした旨供述し,いずれも,最終的には自分の意思で認める供述をしたことを認めているところである。 さらに,被告人が宿泊施設に一泊した点についてみると,前記2㨯イのとおり,被告人は,翌日にはBの死体損壊,遺棄の被疑事実によって逮捕されており,宿泊の事実によって,被告人が任意捜査の一環としての取調べを強いられたなどといった状況は認められない。 そして,被告人が,宿泊や取調べを拒否し,宿泊施設等から退去して帰宅することを申し出るといった行動に出ていないこと,捜査官らが,取調べを強行し,被告人の帰宅,退去等を拒絶したり,制止したといったこともないことなどからすれば,取調べや宿泊は,被告人が任意に応じていたものと認められる。 ウ以上の諸事情を総合 と,捜査官らが,取調べを強行し,被告人の帰宅,退去等を拒絶したり,制止したといったこともないことなどからすれば,取調べや宿泊は,被告人が任意に応じていたものと認められる。 ウ以上の諸事情を総合すると,前記2㨯アのような被告人に対する取調べは,社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度のものであるといえ,任意捜査として許容される限界を越えた違法なものであったとは言えない。 㨯アまた,弁護人は,B事件の自白は,連続した長時間の取調べ,脅迫を伴う取調べが行われた結果として得られたものであるから,任意性がないと- 11 -主張する。 イそこで検討すると,任意捜査の一環としての被告人に対する取調べにおいて,被告人の供述の任意性に影響を及ぼすべき事情が見当たらないこと,。 ,,,は前記㨯のとおりであるこの点弁護人は前記㨯の任意捜査の際に被告人に対する黙秘権告知が行われていないと主張するが,そもそも,黙秘権告知がなかったからといって,直ちに,その際の供述の任意性が失われるものではなく,任意捜査の際の被告人の対応状況等にかんがみれば,被告人が自己に供述義務があると誤信し,又は,誤信させられて自白に至ったものではないことは明らかであり,弁護人の主張は理由がない。 ,,,,また取調時間等についてみると関係各証拠によればBの死体損壊遺棄事件に関する取調べは,前記の任意捜査の日を含めて22日間にわたって,連日,おおむね朝から夜まで行われ,留置場に戻った時間(平成1),5年7月15日は取調べが終了した時間が午後9時を過ぎた日が16日そのうち午後10時を過ぎた日が9日,さらに,そのうち翌日午前零時を過ぎた日が2日(同年7月16日が午前零時45分,同月27日が午前零時20分)であったこと,Bの殺人事件に関する取調べ た日が16日そのうち午後10時を過ぎた日が9日,さらに,そのうち翌日午前零時を過ぎた日が2日(同年7月16日が午前零時45分,同月27日が午前零時20分)であったこと,Bの殺人事件に関する取調べは,同年8月6日から行われ,起訴当日までの36日間のうち28日で取調べが行われ,それらは,おおむね朝から夕方又は夜まで行われ,留置場に戻った時間が午後9時を過ぎた日が4日,そのうち午後10時を過ぎた日が3日であったことが認められる。このような取調状況は,それ自体,不相当に長時間の取調べであるなどとは言い難い上,被告人の公判供述その他関係各証拠に,,,よれば取調べにおいては被告人に適宜休憩や喫煙の自由等が与えられ持病である狭心症等の体調面についても相応の配慮がされていたこと,取調べが深夜に及んだ日の次の日の取調べは,午後から行われることもあるなど一定の配慮がされていたことが認められ,これらの事情に加え,事案,,,の性質や重大性被告人の供述状況等も併せればB事件の取調時間等が- 12 -被告人の供述の任意性に影響を及ぼすとみられるような不相当なものであったとは到底言えない。 さらに,取調べの方法についてみると,この点,被告人は,①平成15,「。」年7月16日に初めて検察官から取調べを受けた際検察官から極刑だと言われた,②その後2,3日間のR警部補による取調べの際「地獄に,落としてやる」とか「死刑にしてやる」と言われた旨供述する。しか。 ,。 し,①については,B事件の内容,同種事案の量刑の傾向等にかんがみれば,検察官が,被告人の最初の取調べの際に,被告人が供述するような内容の発言をするとは到底考えられず,被告人の供述は不自然,不合理であり,到底信用できない。他方,②については,R警部補が,公判廷において,被告人が供述す 最初の取調べの際に,被告人が供述するような内容の発言をするとは到底考えられず,被告人の供述は不自然,不合理であり,到底信用できない。他方,②については,R警部補が,公判廷において,被告人が供述するような言葉自体は言っていないが,被告人には嘘が多かったり,自分がやったことについての反省がみられないところがあったので「そのようなことをいつまでも言っていると地獄に落ちるぞ」,。 というようなことを言ったことはある旨供述していること,被告人が検察官による起訴後の取調べにおいて「私がうそをついたときに,R警部補,から「お前なんか死刑にしてやる」などと言われたことがあった」と。 。 供述していること(乙54)等からすれば,被告人が,Bの死体損壊,遺棄事件による逮捕後2,3日間の取調べの際,R警部補から「地獄に落,ちるぞ「死刑にしてやる」と言われたことがうかがわれる。そこで,。」,。 この点について検討すると,このような捜査官の発言は,たとえ被告人が虚偽の弁解をするなどしていたとしても,その心理に不当な影響を与えるおそれがあり,取調べの方法として適正かつ妥当とは言い難いが,前記発言自体は,被告人に供述を強制したり,被告人が供述を強制されたりするような内容ではないこと,本件における被告人の年齢,経歴,取調べの際の被告人の対応状況等からすれば,このような発言をもって,被告人の供述の任意性に影響があるとは到底言えない。 - 13 -加えて,B事件の自白調書を内容的にみても,その内容には,その供述の任意性に疑いを生じさせるような不自然,不合理な点は全くなく,むしろ,被告人が自ら供述したのでなければ備えることができない具体性,迫真性を備えている。また,被告人は,殺害直前にB方に向かう際,既にBを殺害するつもりだったのではないかなどといった捜査 くなく,むしろ,被告人が自ら供述したのでなければ備えることができない具体性,迫真性を備えている。また,被告人は,殺害直前にB方に向かう際,既にBを殺害するつもりだったのではないかなどといった捜査官の追及に対し,これらを否定するなど自己の供述を貫いている部分が複数あり,このようなB事件の自白調書の内容は,被告人が任意に供述していたことを端的に物語っているといえる。 ウ以上の諸事情を総合すれば,B事件の自白の任意性に疑いを差し挟む余,,地がないことは明らかでありその他弁護人の主張する事情を検討してもこの判断に疑問の余地はない。 㨯以上のとおり,B事件の自白の証拠能力は優に認められ,弁護人の主張は採用できない。 次に,A事件の自白の証拠能力について検討する。 㨯A事件の自白には証拠能力がないとの弁護人の主張は,前記1のとおり,B事件の取調べが,B事件の自白の証拠能力を否定するようなものであったことを前提とするものであることは明らかであり,その主張は前提を欠くというに尽きる。 さらに付言すると,前記2㨯イのとおり,被告人は,平成15年9月10日にB殺害の事実で起訴されているところ,それまでに国選弁護人が選任されていた上,A事件の自白は,その起訴から1か月半以上が経過した同年10月28日以降にされたものであり,しかも,同年10月27日にはB事件の第1回公判期日を経ているのであるから,このような経過からみて,そもそもB事件での取調べの影響が,それから相当期間が経過した後に行われたA事件の取調べにも及んでいたとは到底考えがたく,このような観点からしても,弁護人の主張は理由がない。 - 14 -㨯なお念のために,A事件の取調べに着目して,A事件の自白の任意性の有無を検討しておく。 まず,取調時間についてみると,関係各証拠によれば,A からしても,弁護人の主張は理由がない。 - 14 -㨯なお念のために,A事件の取調べに着目して,A事件の自白の任意性の有無を検討しておく。 まず,取調時間についてみると,関係各証拠によれば,A事件に関する取調べは,平成15年10月28日から行われ,起訴当日までの60日間のうち51日で取調べが行われ,それらは,おおむね朝から夕方又は夜まで行われ,留置場に戻った時間が午後9時を過ぎた日が6日,そのうち午後10時を過ぎた日が3日,さらに,そのうち翌日午前零時を過ぎた日が1日(同年12月25日が午前零時10分)であったことが認められるところ,このような取調時間は,それ自体,不相当に長時間であるなどとは言えず,事案の性質や重大性,被告人の供述状況等も併せれば,被告人の供述の任意性に影響を及ぼすとみられるような不相当なものであったとは到底言えない。 また,取調べの方法についてみると,被告人の公判供述を前提としても,任意性に疑いを差し挟むべき事情は見当たらない。この点,R警部補の供述等によれば,A事件の取調べの間に,取調室内にA4大のAの写真が掲げてあったことが認められ,このことは,被告人の心理に不当な影響を与えるおそれがあり,取調べの方法として適正かつ妥当とは言い難いが,本件における被告人の年齢,経歴,取調べの際の被告人の対応状況等に加え,被告人自身が,写真が掲げてあったこと自体が圧力に感じたとは供述していないことも併せれば,被告人の供述の任意性に疑いを生じさせる事情とは言えない。 さらに,A事件の自白調書の内容には,その供述の任意性に疑いを生じさせるような点は一切なく,被告人は,捜査官の追及に対しても,自らの主張を貫いている部分があり,供述の訂正も申し立てており,被告人が任意に供述していたことをうかがわせる内容となっている。 以上に加え,前 るような点は一切なく,被告人は,捜査官の追及に対しても,自らの主張を貫いている部分があり,供述の訂正も申し立てており,被告人が任意に供述していたことをうかがわせる内容となっている。 以上に加え,前記2㨯イ及び㨯のような国選弁護人の選任状況,その後の経過等も併せれば,A事件の取調べに着目しても,A事件の自白の任意性に疑いを差し挟む余地がないことは明らかであり,その他弁護人が指摘する事- 15 -情を考慮しても,この判断は動かない。 以上検討したとおり,A事件の自白には,証拠能力が優に認められ,弁護人の主張は採用できない。 第4被告人の各供述の信用性さらに,被告人の各供述の信用性について検討する。 1㨯被告人の捜査段階の供述は,判示第1のとおり,Aを殺害したことを認める内容であり,その要旨は,次のとおりである。 ア平成11年8月9日,I株式会社本社の経営企画室に採用されることが決まり,東証2部上場を目指す一流企業のエリート社員として出世し,借金まみれの生活から抜け出して成功するためにも,I株式会社では絶対に失敗できず,全力で仕事をして頑張ろうと思った。しかし,そうすると,これまでのように,アルバイトをして妻子とAの両方の生活費を賄うような二重生活はできないから,借金にまみれたAとの生活の方を終わらせようと思った。同月10日夜,A名義で作った借金の金策を巡り,Aから,被告人の親から金を借りてこい,自分が行ってやろうか旨ののしられ,その際,このようなAがI株式会社への就職を知れば,それを台無しにするようなことをするかも知れない,Aを殺害するしかない,借金とAが消えれば一石二鳥だと思った。 イ同月15日夜,判示第1記載のHビルf号室に帰宅したが,借金の返済資金を調達できなかったことにつき,Aから「女1人囲えんのに,大き,な顔をせ しかない,借金とAが消えれば一石二鳥だと思った。 イ同月15日夜,判示第1記載のHビルf号室に帰宅したが,借金の返済資金を調達できなかったことにつき,Aから「女1人囲えんのに,大き,な顔をせんといてよ。こんなんなら,マスター(以前のAの浮気相手)のとこ行こうかな」などとなじるように言われ,Aから飲んでいたビール。 の缶を投げ付けられたため,激高し「所詮こいつも金か。こんなアル中,姉ちゃん,今殺してやるわ。借金とともに世の中から消えろ」などと思。 いながら,判示第1のとおり,Aを殺害した。 ,,,ウAの殺害後自分の犯行を隠蔽するためにAの死体を切断して解体し- 16 -複数の場所に投棄した。 㨯これに対し,第11回公判期日以降の被告人の公判供述は,Aは自殺していたのであり,自分が殺害したのではないというものであり,その要旨は次のとおりである。 アI株式会社の就職が決まったが,回転寿司を作っている会社の事務方の仕事にありついたという認識であり,特別にうれしいという気持ちはなかった。上場企業という意味すら知らなかったし,本社経営企画室が重要な。 。 部署だという認識もなかったAとの生活を終わらせるつもりもなかったイ平成11年8月15日夜,判示第1記載のHビルf号室に帰宅したが,前記㨯イと同様に口論となり,頭に来て,Aに対し「マスターのところ,に行って,セックスして,誰の子か分からんような子を妊娠しておろすようなことにでもなればいい」などと暴言を言ったところ,Aからビール。 缶を投げ付けられた。そこで,自分は,部屋を飛び出し,妻子方に自動車で向かったが,帰省中であり,妻子はいなかった。翌16日朝,判示第1記載のHビルf号室に戻ると,Aが浴室の浴槽内で手首を切って自殺していた。Aが突然自殺したのは,前日の自分の暴言,更 妻子方に自動車で向かったが,帰省中であり,妻子はいなかった。翌16日朝,判示第1記載のHビルf号室に戻ると,Aが浴室の浴槽内で手首を切って自殺していた。Aが突然自殺したのは,前日の自分の暴言,更年期症状,Gカードの決済ができずE銀行を辞めなければならないこと,Aの子供の行状や進学問題等に思い悩んだためだと思う。 ,,,ウAの死体を切断して解体し複数の場所に投棄したがその理由として自分がAと交際していたことについて,妻のCや実家の両親に知られることを恐れたことやAの遺体を誰にも渡したくないという気持ちがあった旨供述したこともあったが,結局のところ,どうしてそのようなことをしたのかが自分でも分からないので,情状鑑定を実施し,専門家に自分を調べてもらいたい。 まず,被告人の捜査段階の供述をみると,その内容は,当時の被告人を取り巻く状況等に照らして,自然かつ合理的である上,極めて具体的かつ詳細であ- 17 -り,真に体験したのでなければ供述できないような迫真性に富んでいる。とりわけ,Aを殺害したとの供述は,被告人自身が認めている事後の行動,すなわち,Aの死体を切断して解体し,複数の場所に投棄し,その後捜査機関に追及されるまで,誰にもAが死亡したことを話さなかったという行動と正に整合するものである。そして,被告人は,B事件に引き続く2件目の殺人事件の嫌疑を掛けられており,いずれも有罪となれば極めて重い処罰となることが誰にでも分かる状況下において,捜査段階で一度も否認することなく,Aの殺害を認,,,める供述を続け第3回公判期日の罪状認否でもAの殺害を認める供述をし第11回公判期日に至るまで,これを維持していたものである。このような供述経過は,被告人の捜査段階の供述の信用性を強度に裏付けるものといえる。 また,その他の事情をみ 認否でもAの殺害を認める供述をし第11回公判期日に至るまで,これを維持していたものである。このような供述経過は,被告人の捜査段階の供述の信用性を強度に裏付けるものといえる。 また,その他の事情をみても,被告人の捜査段階の供述の信用性に疑いを抱かせるような事情は一切見当たらない。 これに対し,被告人の第11回公判期日以降の公判供述についてみると,まず,Aが自殺していたこととAの死体に対する被告人の事後の行動は,全く整合しないものであり,この点につき,被告人から納得できる説明は一切なく,これらの関係を合理的に説明できる事情を推測することもできない。また,被告人の供述経過は前記2のとおりであり,平成16年2月23日の第3回公判期日の罪状認否でも,Aの殺害を否定せず,それから約9か月もの期間が経過した同年11月8日の第11回公判期日に至って,突如として供述を変更した理由につき,被告人から納得できる説明はされていない。さらに,被告人や弁護人がAが自殺した理由として主張する事情は,相当以前からAを取り巻いていた状況であったり,それ自体,Aを自殺に駆り立てるようなものとは到底考えがたい事柄であるなど,いずれも,本件当日に突然Aが自殺したと疑わせるに足りるものとは言えない。加えて,被告人は,I株式会社の就職につき,前記1㨯アのような供述をするが,被告人自身が作成してI株式会社に提出した,,,,,履歴書の記載内容被告人の当時の状況年齢生活歴等に照らせば不自然- 18 -不合理な内容である。 以上のとおり,被告人の捜査段階の供述は,極めて高い信用性を有するとい,,。 えこれに対する被告人の第11回公判期日以降の供述は到底信用できない第5結論以上検討したとおり,前記第2のような被告人の事後の行動,前記第3及び第4のとお て高い信用性を有するとい,,。 えこれに対する被告人の第11回公判期日以降の供述は到底信用できない第5結論以上検討したとおり,前記第2のような被告人の事後の行動,前記第3及び第4のとおり極めて高い信用性を有する被告人の捜査段階の自白,被告人の第3回公判期日の供述その他関係各証拠を総合すれば,被告人が,判示第1のとおり,Aを殺害したことは明らかであり,この認定に疑問の余地はない。 よって,判示第1のとおり認定した次第である。 第6信義誠実の原則違反の主張弁護人は,検察官が,平成15年10月27日の第1回公判期日において,A事件を被告人が犯したことを確信していながら,これを秘匿して,B事件の冒頭陳述を行い,弁護人が証拠意見を述べた後,B事件の冒頭陳述を大幅に訂正,追加してやり直したことは,信義誠実の原則に違反し,被告人の防御権を侵害するもので,違法である旨主張する。 しかしながら,そもそも,検察官は追起訴の有無について,弁護人に対し事前に明らかにしなければならない義務があるとまでは考えられない上,本件においては,検察官は,前記第1回公判期日までの間において,A事件に関する被告人の弁解を聴取しておらず,被告人がA事件を犯したことを立証するに足りる十分な証拠が収集されていなかったことがうかがわれるから,検察官が前記第1回公判期日までに,A事件が存在することについて,弁護人に明らかにせず,同期日に申請した証拠の内容に基づいて,B事件に関する冒頭陳述を行ったからといって,信義誠実の原則に違反するものでも,被告人の防御権を侵害するものでもなく,違法であるとはいえない。弁護人の主張は失当である。 (法令の適用) 罰条- 19 -㨯判示第1及び第2の1の各行為いずれも行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法1 違法であるとはいえない。弁護人の主張は失当である。 (法令の適用) 罰条- 19 -㨯判示第1及び第2の1の各行為いずれも行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法199条に,裁判時においてはその改正後の刑法199条に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による(有期懲役刑の長期は,行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によることになるが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による)。 㨯判示第2の2の行為包括して刑法190条 刑種の選択(判示第1及び第2の1の各罪)いずれも死刑を選択 併合罪の処理刑法45条前段,46条1項本文,10条(刑及び犯情の最も重い判示第2の1の罪の刑で処断。同罪につき死刑を選択したので他の刑を科さない)。 訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由) 本件は,被告人が,交際していた女性を口論の末に扼殺し(判示第1「A事,件,さらに,その3年9か月余り後に,再び交際していた女性を口論の末に」)扼殺して,その死体を損壊し,遺棄した(判示第2の1及び2「B事件)と,」いう事案である。 まず,A事件の犯行に至る経緯及び動機についてみると,被告人は,判示第1の犯行に至る経緯に記載のとおり,妻子がいる身でありながら,かねてAと不倫の交際をしていたものであるが,妻子との二重生活を続けつつ,Aとのパチンコ- 20 -等の遊興費などのために,A名義のクレジットカード等により多額の借金を重ねたことで同女との生活に行き詰まりを感じていたところ,被 ものであるが,妻子との二重生活を続けつつ,Aとのパチンコ- 20 -等の遊興費などのために,A名義のクレジットカード等により多額の借金を重ねたことで同女との生活に行き詰まりを感じていたところ,被告人に新たな就職先が決まったことでAを疎ましく思うようになり,借金の返済資金を巡る同女との口論の最中,同女からなじられ,飲んでいたビール缶を投げ付けられたことで激高し,同女の殺害に至ったものである。被告人は,事前にはA殺害のための具体的な行動をとっていたものとはいえない上,前記のような直接の殺害動機や同女殺害の態様及びその後の状況等からすると,Aの殺害は事前の具体的な計画に基づくものとは認められないものの,被告人とAは,A名義の借金等により,二人の遊興費等を捻出していたところ,その借金の額が多額にのぼった上,AのGカードの返済資金を被告人が調達できなかったことから,前記のとおり被告人とAとの間で口論となったものであり,Aが被告人に文句を言ったことについては相応の理由がある上,被告人がAを疎ましく感じたからといって,Aと別れようとする努力を何らせずに,自己保身のためにAを殺害したものであって,被告人がAの殺害に至ったことは,誠に短絡的で,自己中心的かつ身勝手極まりないというほかない上,Aには殺害されねばならないような落ち度はなく,A殺害の経緯や動機に酌量の余地は全くない。 次に,B事件の犯行に至る経緯及び動機についてみると,被告人は,判示第2の犯行に至る経緯に記載のとおり,A殺害の約2年半後にBとも不倫の交際をするようになったものであるが,やがて同女から強く結婚を求められるようになったことなどから同女を疎ましく思うようになり,結婚のことで同女と口論となった際に,同女から,当時被告人が勤務先の会社で行っていた背信的取引のことやBとの不倫交際のこ ら強く結婚を求められるようになったことなどから同女を疎ましく思うようになり,結婚のことで同女と口論となった際に,同女から,当時被告人が勤務先の会社で行っていた背信的取引のことやBとの不倫交際のことなどを会社や家族に暴露する旨などと言われたことに激高し,同女の殺害に至ったものである。Bに対する殺人等の犯行も,前記のような直接の殺害動機や同女殺害の態様及び同女の死体を遺棄する場所について事前に考えていなかったことなどの状況等からすると,事前の具体的な計画に基づくものとは認められないものの,被告人はBに対し,妻と別れてBと結婚することを- 21 -前提とする言動を取り続けていたのであって,Bが被告人との結婚を強く望んでいたことは理解できるものであるところ,被告人は,疎ましく思うようになったBに対し,別れようとする行動を何ら取らないまま,自己保身のためにBを殺害,,,,したのであって被告人がBの殺害に至ったことはA事件同様誠に短絡的で自己中心的かつ身勝手極まりないというほかない上,Bにも殺害されねばならないような落ち度はなく,B殺害の経緯や動機に酌量の余地は全くない。 本件各殺人の犯行態様についてみると,被告人は,いずれも各被害者に馬乗り,,になりその抵抗を排して絶命するまでその頸部を扼し続けたというものであり,,。 ,いずれも確定的殺意に基づいた執ようで冷酷かつ残酷なものである加えて被告人は,B殺害後,罪証を隠滅するためにその死体を損壊して遺棄するなどし,,。 たのであり死者に対する畏敬の念が全く見られずその犯情は一層悪質である各被害者は,それぞれが暮らしていた部屋の中で,突如として同居していた被告人から馬乗りになられて首を絞められ,耐え難い苦痛を味わわされた末に,その命を奪われたものである。Aは,当時43歳と 質である各被害者は,それぞれが暮らしていた部屋の中で,突如として同居していた被告人から馬乗りになられて首を絞められ,耐え難い苦痛を味わわされた末に,その命を奪われたものである。Aは,当時43歳という年齢であり,自己の家庭と離れて被告人と生活をしていたものの,しばしば夫が留守の間に子供らの世話をするなど,子供らの将来を気に掛け,その成長を楽しみにしながら生活していたものであり,Bは,当時49歳という年齢であり,前夫と離婚後,二人の子供を育てながら,被告人との交際後は被告人との結婚にも期待しながら生活していたものであり,いずれも同居人であった被告人の凶行により,無惨にも突然にその命と未来を永遠に断ち切られることになったものであって,その絶命の淵に味わった苦痛は筆舌に尽くし難く,また,その無念はいかばかりであったかと察するに余りある。被告人は,各被害者の遺族らに対し,見るべき慰謝の措置をとっておらず,各被害者の遺族らは,被告人に対して極刑を望む旨述べるなど,その被害感情は極めて厳しいが,それも当然のことである。また,交際していた女性を,時を異にして1度ならず2度までも殺害したなどという本件各犯行が社会に与えた衝撃は容易に推察することができ,本件各犯行の社会的影響は大きいものがあ- 22 -る。 さらに,被告人は,A及びBの殺害後のいずれにも,罪証隠滅行為を行ってお,。 ,,りそれぞれの犯行後の情状も悪い被告人はこれまで前科がなかったもののAを殺害した後に,良心の呵責を覚えたり,少なくとも再び凶悪な犯罪を犯すことのないよう自らを抑制する精神を持つこともなく,わずか3年9か月余りで再びBの殺害という同種の犯行に及んだものであり,このこと自体,被告人の危険で進んだ犯罪性向を示すものといえる。さらに,被告人は,判示第2の各犯行については を持つこともなく,わずか3年9か月余りで再びBの殺害という同種の犯行に及んだものであり,このこと自体,被告人の危険で進んだ犯罪性向を示すものといえる。さらに,被告人は,判示第2の各犯行については認めて反省の言葉も述べているが,判示第1の犯行については第11回公判期日以降否認に転じ,頑なに不自然かつ不合理極まりない弁解を繰り返すなどしており,全く反省していない。これらの事情に加えて,被告人は,自ら会社を経営したり,入社した会社で部長に抜擢されるなど,豊富な社会経験を有し,分別を持ってしかるべき年齢であるのに,2度にわたって凶悪な犯行に及んだものである。 他方,前記のとおり,本件各犯行はいずれも事前の具体的な計画に基づくものであるとは認められないことや,被告人は判示第2の各犯行については認めて反省の言葉も述べていること,公判廷において否認に転じたとはいえ,捜査段階ではA事件につき素直に認めて自ら積極的に供述し,真相の解明に協力していたこと,被告人にはこれまで前科がないこと,被告人の父親が,各被害者の遺族に謝罪し,自分たちが居住している土地建物を売却し,被害弁償に充てたい旨述べていることなど,被告人にとって有利に斟酌できる事情もある。 しかしながら,本件各犯行の罪質,結果の重大性,動機,態様,遺族の被害感情,犯行後の情状等にかんがみると,被告人の刑事責任は誠に重大であるというほかなく,前記被告人に有利な一切の事情を最大限考慮してもなお,罪刑の均衡の見地からも,一般予防の見地からも,被告人に対しては極刑をもって臨むほかない。 よって,被告人を主文の刑に処することとする。 - 23 -(求刑死刑)平成19年2月23日岐阜地方裁判所刑事部裁判長裁判官土屋哲夫裁判官森田強司裁判官渡邉康年 主文の刑に処することとする。 - 23 -(求刑死刑)平成19年2月23日岐阜地方裁判所刑事部裁判長裁判官土屋哲夫裁判官森田強司裁判官渡邉康年

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