令和6(行ケ)2 人口比例選挙請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月7日 福岡高等裁判所
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判決文本文19,464 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は、原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 令和6年10月27日に施行された衆議院議員総選挙の小選挙区選出議員選挙について、福岡県第1区ないし第11区、佐賀県第1区ないし第2区、長崎県第1区ないし第3区、熊本県第1区ないし第4区、大分県第1区ないし第3区における選挙をいずれも無効とする。 第2 事案の概要 1 本件は、令和6年10月27日施行の衆議院議員総選挙(以下「本件選挙」という。)について、上記第1に記載の各選挙区(以下「本件各選挙区」という。)の選挙人である原告らが、衆議院小選挙区選出議員の選挙(以下「小選挙区選挙」といい、本件選挙における小選挙区選挙を「本件小選挙区選挙」という。)の定数配分及び選挙区割りに関する公職選挙法の規定は、選挙権(投 票価値)の平等の保障に反するなど、憲法に違反する無効なものであるから、これに基づき施行された本件選挙の本件各選挙区における選挙も無効であるなどと主張して提起した選挙無効訴訟である。 2 前提事実(証拠の記載のない事実は、当事者間に争いがないか、当裁判所に顕著である。)。 (1)ア平成24年法律第95号(以下「平成24年改正法」という。)による改正前の衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下、後記の改正の前後を通じて「区画審設置法」といい、改正前の区画審設置法を「旧区画審設置法」という。)4条は、衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)による改定案の勧告について、〈1〉1項において、統計法5条 2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査(以下「大規模国勢 調査」という。)の結果による人口が最初に官報で 。)による改定案の勧告について、〈1〉1項において、統計法5条 2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査(以下「大規模国勢 調査」という。)の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、〈2〉2項において、1項の規定にかかわらず、各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは、これを行うことができると規定していた。そして、旧区画審設置法3条は、改定案の作成の基準(以下、後記の改正の前後を通じて「区割基準」とい う。)について、〈1〉1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、〈2〉2項において、改定案の作成に当たっては、 各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県にあらかじめ1を配当することとし(以下、このことを「1人別枠方式」という。)、この1に、小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とすると規定していた(以下、この区割基準を「旧区割基準」という。)。 イ平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成21年選挙」という。)は、平成24年改正法による改正前の区割規定(以下「旧区割規定」という。)の定める選挙区割りの下で行われたものであるところ、同日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.304(以下、較差に関する数値は、全て概数である。)であり、選挙人数が最も少ない選 挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区 同日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.304(以下、較差に関する数値は、全て概数である。)であり、選挙人数が最も少ない選 挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は45選挙区であった。 (乙4の1)ウ平成21年選挙につき、最高裁平成22年(行ツ)第207号同23年3月23日大法廷判決・民集65巻2号755頁(以下「平成23年大法廷判決」という。)は、旧区画審設置法3条1項は投票価値の平等の要請 に配慮した合理的な基準を定めたものであると評価する一方、同選挙時に おいて、選挙区間の投票価値の較差が拡大していたのは、1人別枠方式がその主要な要因となっていたことは明らかであり、かつ、人口の少ない地方における定数の急激な減少への配慮等の視点から導入された1人別枠方式は、既に立法時の合理性が失われていたものというべきであるから、旧区割基準のうち1人別枠方式に係る部分及び同基準に従って改定された旧 区割規定の定める選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたと判示した。そして、平成23年大法廷判決は、この状態につき憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割基準を定めた規定及び旧区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできないとした上で、事柄の性質上必 要とされる是正のための合理的期間内に、できるだけ速やかに旧区割基準中の1人別枠方式を廃止し、旧区画審設置法3条1項の趣旨に沿って旧区割規定を改正するなど、投票価値の平等の要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 (2)ア平成23年大法廷判決を受けて、平成24年11月16日、旧区画審設 置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減の措置(各都道府 要請にかなう立法的措置を講ずる必要があると判示した。 (2)ア平成23年大法廷判決を受けて、平成24年11月16日、旧区画審設 置法3条2項の削除及びいわゆる0増5減の措置(各都道府県の選挙区数を増やすことなく議員1人当たりの人口の少ない5県の選挙区数を1ずつ減ずる措置をいう。)を内容とする平成24年改正法が成立した。 イ平成24年改正法が成立したのと同日に衆議院が解散されたため、同年12月16日施行の衆議院議員総選挙(以下「平成24年選挙」という。) は平成21年選挙と同じく旧区割規定の定める選挙区割りの下で行われた。 (乙6)ウ平成24年改正法の附則の規定に基づく区画審の勧告を受けて、平成25年6月24日、0増5減の措置を前提に、選挙区間の人口の較差が2倍未満となるように17都県の42選挙区において区割りを改定することを 内容とする同年法律第68号(以下「平成25年改正法」という。)が成 立した。平成25年改正法による改正後の平成24年改正法によって区割規定が改正され、平成22年に行われた大規模国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.998となるものとされた。(乙5の1及び2、乙6、7)エ平成24年選挙につき、最高裁平成25年(行ツ)第209号、第21 0号、第211号同年11月20日大法廷判決・民集67巻8号1503頁(以下「平成25年大法廷判決」という。)は、同選挙時において旧区割規定の定める選挙区割りは平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲 法の規定に違反するものということはできないとした上で、国会 等の要求に反する状態にあったが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえず、旧区割規定が憲法14条1項等の憲 法の規定に違反するものということはできないとした上で、国会においては今後も平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条(旧区画審設置法3条1項と同内容の規定)の趣旨に沿った選挙制度の整備に向けた取組が着実に続けられていく必要があると判示した。 (3)ア平成26年12月14日、衆議院議員総選挙(以下「平成26年選挙」 という。)が施行されたところ、同日における選挙区間の選挙人数の最大較差は1対2.129であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は13選挙区であった。(乙4の3)イ平成26年選挙につき、最高裁平成27年(行ツ)第253号同年11月25日大法廷判決・民集69巻7号2035頁(以下「平成27年大法 廷判決」という。)は、0増5減の措置における定数削減の対象とされた県以外の都道府県について旧区割基準に基づいて配分された定数の見直しを経ておらず、上記のような投票価値の較差が生じた主な要因は、いまだ多くの都道府県において1人別枠方式を定めた旧区画審設置法3条2項が削除された後の区割基準に基づいて定数の再配分が行われた場合とは異な る定数が配分されていることにあり、このような投票価値の較差が生じた ことは、全体として平成24年改正法による改正後の区画審設置法3条の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたとはいえないことの表れというべきであるとして、平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。そして、平成27年 うべきであるとして、平成25年改正法による改正後の平成24年改正法により改定された選挙区割りはなお憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものといわざるを得ないと判示した。そして、平成27年 大法廷判決は、同条の趣旨に沿った選挙制度の整備については、漸次的な見直しを重ねることによってこれを実現していくことも国会の裁量に係る現実的な選択として許容されていると解されるとし、上記の選挙区割りの改定後も国会において引き続き選挙制度の見直しが行われていること等を併せ考慮すると、平成23年大法廷判決の言渡しから平成26年選挙まで の国会における是正の実現に向けた取組は、立法裁量権の行使として相当なものでなかったということはできず、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったとはいえないと判示した。 (4)ア平成25年改正法の成立の前後を通じて、国会においては、今後の人口異動によっても憲法の投票価値の平等の要求に反する状態とならないよう にするための制度の見直し等について検討が続けられ、平成26年9月以降、有識者により構成される衆議院議長の諮問機関として設置された「衆議院選挙制度に関する調査会」において調査、検討等が行われた。(乙6、10の1ないし17)上記調査会は、平成28年1月14日、衆議院議長に対し、答申を提出 した。同答申は、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とする案が考えられるとした上、投票価値の較差の是正については、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式が満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて配分すること、選 挙区間の投票価値の較差を小さくするた 、投票価値の較差の是正については、小選挙区選挙における各都道府県への議席配分方式が満たすべき条件として、比例性のある配分方式に基づいて配分すること、選 挙区間の投票価値の較差を小さくするために各都道府県間の投票価値の較 差をできるだけ小さくすること、各都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることを挙げ、これらの条件に照らして検討した結果として、各都道府県への議席配分をアダムズ方式(各都道府県の人口を一定の数値で除し、それぞれの商の整数に小数点以下を切り上げて得られた数の合計数が小選挙区選挙の定 数と一致するようにする方式)により行うものとした。そして、同答申は、各都道府県への議席配分の見直しについて、制度の安定性を勘案し、10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口に基づき行うものとし、その中間年に行われる国勢調査の結果、選挙区間の人口の較差が2倍以上の選挙区が生じたときは、区画審において、各都道府県への議席配分の変 更は行うことなく、上記較差が2倍未満となるように関係選挙区の区画の見直しを行うものとした。(乙13)イ前記の答申を受けて、平成28年5月20日、衆議院議員の定数を10削減して465人(小選挙区選出議員の定数につき6削減して289人、比例代表選出議員の定数につき4削減して176人)とするとともに、各 都道府県への定数配分の方式としてアダムズ方式を採用すること等を内容とする同年法律第49号(以下「平成28年改正法」という。)が成立した。 平成28年改正法による改正後の区画審設置法(以下「新区画審設置法」という。)4条は、区画審による改定案の勧告について、〈1〉1項にお いて、平成32年(令和2年) 成立した。 平成28年改正法による改正後の区画審設置法(以下「新区画審設置法」という。)4条は、区画審による改定案の勧告について、〈1〉1項にお いて、平成32年(令和2年)以降10年ごとに行われる大規模国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものと規定し、〈2〉2項において、1項の規定にかかわらず、統計法5条2項ただし書の規定により大規模国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査(以下「簡易国勢調査」という。)の結果による各選 挙区の日本国民の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除し て得た数が2以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、これを行うものと規定する。そして、新区画審設置法3条は、区割基準について、〈1〉1項において、改定案の作成は、各選挙区の人口(最近の国勢調査の結果による日本国民の人口をいう。以下同じ。)の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最 も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることとし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないと規定するとともに、〈2〉2項において、同法4条1項の規定による勧告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の選挙区の数は、各都道府県の人口を小選挙区基準除数(その除数 で各都道府県の人口を除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)の合計数が小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)とすると規定し(アダムズ方式)、〈3〉3項に 数が小選挙区選出議員の定数に相当する数と合致することとなる除数をいう。)で除して得た数(1未満の端数が生じたときは、これを1に切り上げるものとする。)とすると規定し(アダムズ方式)、〈3〉3項において、同法4条2項の規定による勧 告に係る改定案の作成に当たっては、各都道府県の区域内の小選挙区選出議員の選挙区の数は変更しないものと規定する(以下、この区割基準を含む上記各規定による選挙区の改定の仕組みを「新区割制度」という。)。 さらに、平成28年改正法は、アダムズ方式による各都道府県の選挙区数の変更が行われるまでの投票価値の較差是正のための措置として、附則 2条1項において、小選挙区選出議員の定数を6削減することを前提に、新区画審設置法4条の規定にかかわらず、区画審において平成27年に行われた簡易国勢調査(以下「平成27年国勢調査」という。)の結果に基づく改定案の作成及び勧告を行うこととした。そして、同附則2条2項及び3項は、上記改定案の作成について、新区画審設置法3条の規定にかか わらず、各都道府県の選挙区数につき、選挙区数の変更の影響を受ける都 道府県を極力減らすことによって選挙制度の安定性を確保する観点から、いわゆる0増6減の措置(平成27年国勢調査の結果に基づき、アダムズ方式により得られる選挙区数が改正前の選挙区数より少ない都道府県のうち、当該都道府県の人口を同方式により得られる選挙区数で除して得た数が少ない順から6都道府県の選挙区数を1ずつ減じ、それ以外の都道府県 は改正前の選挙区数を維持する措置をいう。)を講じた上で、平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし、かつ、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口に基づく選 維持する措置をいう。)を講じた上で、平成27年国勢調査の結果に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満となるようにし、かつ、次回の大規模国勢調査が実施される平成32年(令和2年)の見込人口に基づく選挙区間の人口の較差が2倍未満であることを基本とするとともに、各選挙区の平成27年国勢調査の結果による人口及び平成32年 (令和2年)の見込人口の均衡を図り、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこととした。 区画審は、平成29年4月19日、内閣総理大臣に対し、0増6減の措置を講ずることを前提に、19都道府県の97選挙区において区割りを改めることを内容とする改定案の勧告を行った。これを受けて、平成29年 6月9日、同年法律第58号(以下「平成29年改正法」という。)が成立し、同法による改正後の平成28年改正法によって区割規定が改正された(以下、同改正後(令和4年法律第89号による改正前)の区割規定を「平成29年区割規定」といい、平成29年区割規定の定める選挙区割りを「平成29年選挙区割り」という。)。この改正により、選挙区間の選 挙人数の較差は、1対1.956になった。(甲81の1、乙16の1及び2、17)ウ平成29年9月28日に衆議院が解散され、同年10月22日、平成29年選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「平成29年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、 選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都 第13区)との間で1対1.979であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。(乙4の4)エ最高裁平成30年(行ツ)第153号同年1 第13区)との間で1対1.979であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は存在しなかった。(乙4の4)エ最高裁平成30年(行ツ)第153号同年12月19日大法廷判決・民集72巻6号1240頁(以下「平成30年大法廷判決」という。)は、 平成29年選挙区割りについて、各都道府県への定数配分を人口に比例した方式の一つであるアダムズ方式により行うことによって選挙区間の投票価値の較差を相当程度縮小させその状態が安定的に持続するよう立法措置を講じた上で、同方式による定数配分がされるまでの較差是正の措置として0増6減の措置や選挙区割りの改定を行うことにより、選挙区間の選挙 人数等の最大較差を縮小させたものであり、投票価値の平等を確保するという要請に応えつつ、選挙制度の安定性を確保する観点から漸進的な是正を図ったものと評価することができるとした。そして、平成29年改正法までの立法措置の内容やその結果縮小した較差の状況を考慮すると、平成29年選挙において、1人別枠方式を含む旧区割基準に基づいて配分され た定数に変更がなくこれとアダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在していることをもって平成29年選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反するということはできず、平成29年選挙当時には新区画審設置法3条1項の趣旨に沿った選挙制度の整備が実現されていたということができるから、 平成28年改正法及び平成29年改正法による選挙区割りの改定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するというべきであり、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法によ 定等は、国会の裁量権の行使として合理性を有するというべきであり、平成27年大法廷判決が平成26年選挙当時の選挙区割りについて判示した憲法の投票価値の平等の要求に反する状態は、平成29年改正法による改正後の平成28年改正法によって解消されたものと評価することができるとし、平成 29年選挙当時において平成29年選挙区割りは憲法の投票価値の平等の 要求に反する状態にあったということはできないと判示した。 (5)ア令和3年10月14日に衆議院が解散され、同月31日、平成29年選挙区割りの下で衆議院議員総選挙(以下「令和3年選挙」という。)が行われた。平成29年選挙区割りの下では、令和2年に行われた大規模国勢調査(以下「令和2年国勢調査」という。)の結果によれば選挙区間の人 口の最大較差は1対2.096となり、選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区)と最も多い選挙区(東京都第13区)との間で1対2.079であり、選挙人数が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は29選挙区であった。(乙4の5、28の2) イ区画審は、令和2年国勢調査の結果を受け、区割改定案の審議を開始した。区画審は、多数の都道府県知事から分割市区町の創出を回避し、解消を求める意見が述べられたことを踏まえて区割改定案を取りまとめ、令和4年6月16日、内閣総理大臣に対し改定案(以下「令和4年改定案」という。)の勧告を行った。勧告の内容は、アダムズ方式を適用して選挙区 の区割りの見直しを行い、定数自体は変更しなかったものの、10増10減の措置を講じた上で、25都道府県の合計140の選挙区について選挙区割りを改めることを内容とするものであった。これを受けて、令和4 の区割りの見直しを行い、定数自体は変更しなかったものの、10増10減の措置を講じた上で、25都道府県の合計140の選挙区について選挙区割りを改めることを内容とするものであった。これを受けて、令和4年11月18日、同年法律第89号(以下「令和4年改正法」という。)が成立し、区割規定が改正された(以下、同改正後の区割規定を「本件区割 規定」といい、本件区割規定の定める選挙区割りを「本件選挙区割り」という。)。これにより、令和2年国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.999となった。(甲9ないし11、乙2、25、26の1及び2、27の1ないし5、28の1、30の1ないし4)ウ最高裁令和4年(行ツ)第130号令和5年1月25日大法廷判決・民 集77巻1号1頁(以下「令和5年大法廷判決」という。)は、平成30 年大法廷判決が平成29年選挙区割りについて、新区割制度及び平成29年選挙区割りから成る合理的な選挙制度の整備が既に実現されていたことから、いまだアダムズ方式による各都道府県への定数配分が行われておらず、アダムズ方式により各都道府県の定数配分をした場合に配分されることとなる定数を異にする都道府県が存在しているとしても、憲法の投票価 値の平等の要求に反する状態は解消されたものと評価することができると判示したことを踏まえ、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によってこれを是正することとしている新区割制度 に合理性が認められることは平成30年大法廷判決が判示するとおりであり、選挙区間の較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない 式により行うこと等によってこれを是正することとしている新区割制度 に合理性が認められることは平成30年大法廷判決が判示するとおりであり、選挙区間の較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできず、令和3年選 挙について、平成29年選挙後に更なる較差是正の措置は講じられず、令和3年選挙における選挙区間の較差が平成29年選挙当時よりも拡大していたとしても、較差は、自然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情はうかがわれないし、その程度も著しいものとはいえないから、較差の拡大をもって、平成29年選挙区割りが令和3年選挙当時 において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできないと判示した。 (6) 令和6年10月9日に衆議院が解散され、同月27日本件選挙が本件選挙区割りの下で行われた。本件選挙区割りの下では、本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差は、選挙人数の最も少ない選挙区(鳥取県第1区) と最も多い選挙区(北海道3区)との間で1対2.059であり、選挙人数 が最も少ない選挙区と比べて較差が2倍以上となっている選挙区は10選挙区であった。(乙3) 3 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 本件選挙時において、本件区割規定が定める本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたか (原告らの主張)ア新区画審設置法3条1項は、改定案の作成は、改定案の作成日において、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもの の平等の要求に反する状態に至っていたか (原告らの主張)ア新区画審設置法3条1項は、改定案の作成は、改定案の作成日において、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにする旨定めている。また、同法4条2項は、前項の規定にかかわらず、審議会は、各選挙区の国勢調査(統計法5条2 項ただし書の規定により、前項の国勢調査が行われた年から5年目に当たる年に行われる国勢調査に限る。)の結果による日本国民の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上となったときは、当該国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に、第2条の規定による勧告を行うものとする、と定めている。さら に、平成28年改正法附則2条3項は、平成27年国勢調査の結果に基づく改定案の作成に当たり、各小選挙区の人口に関し、各小選挙区の平成32年見込人口が、平成32年見込人口の最も少ない都道府県の区域内における平成32年見込人口の最も少ない小選挙区の平成32年見込人口の2倍未満となるよう定めている。これらの規定によれば、区画審は、改定案 の作成に当たり、将来の見込み人口を試算して、次の国勢調査までの5年間を通じて選挙区間の人口の最大較差が1対2を上回らないような内容の改定案を作成すべきであるところ、令和4年改定案は、令和2年国勢調査の結果によれば選挙区間の人口の最大較差は1対1.999となる内容であったが、東京以外の46道府県で一貫して人口が減少している状況を踏 まえれば、早晩、選挙区間の人口の最大較差が1対1.999を上回って 1対2以上になることは容易に推察された。実際に、令和4年1月1日の住民基本台帳の結果によれば、選挙区間の最大較差 まえれば、早晩、選挙区間の人口の最大較差が1対1.999を上回って 1対2以上になることは容易に推察された。実際に、令和4年1月1日の住民基本台帳の結果によれば、選挙区間の最大較差は1対2.034であって、区画審が改定案を作成した時点で既に選挙区間の最大較差が1対2を超えており、令和5年1月1日の住民基本台帳の結果によれば、選挙区間の最大較差が1対2.054に達し、令和6年10月15日付総務省発 表の結果によれば、選挙区間の最大較差が1対2.06に達していた。これらの事情を踏まえれば、区画審の上記改定案、上記の区画審の勧告に基づいて立法された本件区割規定及び本件選挙区割りは、新区画審設置法3条1項に違反して無効であり、本件区割規定及び本件選挙区割りが違法、無効である以上、本件選挙も無効となる。 イ憲法56条2項が「両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、・・・」と定め、憲法1条及び前文第1項第1文後段が国民主権を定め、あるいは宣言し、同文前段が「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し・・・」と定め、憲法43条1項が「両議院は、全国民を代表する選挙された議員 でこれを組織する」と定めていることからすると、憲法は、できる限り1人1票等価値、すなわち、できる限りの人口比例選挙を要求していると解されるところ、前記のとおり、本件区割規定及び本件選挙区割りは、憲法の要請する1人1票等価値及び人口比例選挙に反していたから違法、無効であり、本件区割規定及び本件選挙区割りが違法、無効である以上、本件 選挙も無効となる。 (被告らの主張)ア憲法は、投票価値の平等を要求しているが、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯 規定及び本件選挙区割りが違法、無効である以上、本件 選挙も無効となる。 (被告らの主張)ア憲法は、投票価値の平等を要求しているが、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一絶対の基準ではなく、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現され るべきものである。そのため、国会において小選挙区制度における具体的 な選挙区割りや、その前提となる区割規定を定めるに当たっては、投票価値の平等を最も重要かつ基本的な基準としつつも、較差という客観的かつ形式的な数値だけでなく、当該較差の数値の背後にある選挙制度の仕組みや、当該較差を生じさせる要因等も含めて種々の政策的考慮要素を総合的に考慮した上で、国政遂行のための民意の的確な反映の実現と、投票価値 の平等の要請との調和を図ることが求められるが、選挙制度の仕組みの決定については国会に広範な裁量が認められていることから、これらの調和が保たれる限り、当該選挙制度の仕組みを決定したことが、国会の合理的な裁量の範囲を超えるということにはならないというべきである。 したがって、選挙制度の憲法適合性は、以上のような国会に与えられた 裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになる。すなわち、国会選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、憲法の投票価値の平等の要求に反するため、国会に認められる裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになると解すべきである。 イ前記の判断枠組みの下で、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、違憲状態に至っているか否かについてみると、新区割制度は、投票価値の平等の要請を、 に違反することになると解すべきである。 イ前記の判断枠組みの下で、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、違憲状態に至っているか否かについてみると、新区割制度は、投票価値の平等の要請を、国会が正当に考慮することができる他の政策目的ないし理由との関連において調和的に実現させるとともに、これを安定的に継続させることのできるものであるから、合理的なものであるということができる。 また、新区割制度の整備は、平成23年から平成27年までの各大法廷判決が国会に対して求めてきた立法措置の内容に適合するものであって、新区割制度が合理性を有することは、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決も肯定しているところである。 このように合理性の認められる新区割制度により改定された選挙区割り については、原則として憲法の投票価値の平等の要求に反するものとはい えず、選挙区間の較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情があるときに初めて憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものというべきである。 しかし、新区割制度により改定された本件選挙区割りについて、上記の ような事情があるということはできない。 したがって、本件区割規定の定める本件選挙区割りが、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたということはできない。 ウ原告らは、改定案が改定案の作成日において選挙区間の人口の最大較差が1対2以上になっていたことから、各選挙区の人口のうち、その最も多 いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすると定めている新区画審設置法3条1項に違反していた、同条項や同 1対2以上になっていたことから、各選挙区の人口のうち、その最も多 いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすると定めている新区画審設置法3条1項に違反していた、同条項や同法4条2項、平成28年改正法附則2条3項によれば、次の国勢調査までの5年間を通じて選挙区間の人口の最大較差が1対2を上回らないような内容の改定案を作成すべきであったなどと主張する。しかしながら、新区画審設置 法3条1項にいう人口とは、改定案作成日の人口を指すものではなく、統計法5条2項の規定により行われる国政調査の結果に基づく人口を指すものであるから、改定案が同条項に違反していたとはいえないし、同条項や同法4条2項、平成28年改正法附則2条3項は、いずれも大規模国勢調査から簡易国勢調査までの人口動態について考慮しなければならないこと を規定したものではなく、原告らの主張は理由がない。 (2) 本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた場合、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったか(原告らの主張)前記のとおり、東京以外の46道府県で一貫して人口が減少している状況 を踏まえると、区画審が選挙区間の人口の最大較差が1対2以上になること が容易に推察された改定案を作成し、勧告したことは違法、かつ違憲であり、国会は、その後も選挙区間の選挙人数等の最大較差を縮小させる取り組みを具体的に行っていなかった。平成30年大法廷判決が、各選挙区間の最大人口較差が1対2未満となった場合に違憲状態は解消されたと判示したのに対し、平成27年大法廷判決、平成25年大法廷判決が、各選挙区間の最大人 口較差が1対2を超えていた場合に違憲状態と判断したことを踏まえると、本件選挙区割り に違憲状態は解消されたと判示したのに対し、平成27年大法廷判決、平成25年大法廷判決が、各選挙区間の最大人 口較差が1対2を超えていた場合に違憲状態と判断したことを踏まえると、本件選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたことは、容易に知り得たといえるから、憲法上要求される合理的期間内は徒過していたと解釈すべきである。 (被告らの主張) 憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったといえるか否かを判断するに当たっては、裁判所において投票価値の較差が憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているとの判断が示されるなど、国会が憲法の投票価値の平等の要求に反する状態となったことを認識しえた時期を基準(始期)として、単に期間の長短のみならず、是正のために採るべき措 置の内容、そのために検討を要する事項、実際に必要となる手続や作業等の諸般の事情を総合考慮して、国会における是正の実現に向けた取組が司法判断の趣旨を踏まえた立法裁量権の行使として相当なものであったといえるか否かという観点から評価すべきである。 令和5年大法廷判決は、本件選挙より前に実施された衆議院議員選挙で最 も新しい令和3年10月31日に施行された令和3年選挙における選挙区割りが同選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということはできないと判示しており、令和3年選挙後には、令和5年大法廷判決において合理性が認められた新区割制度に基づき作成された区割改定案に沿った法改正が行われているのであるから、仮に、本件選挙区 割りが違憲状態に陥っているとしても、国会においてその状態を認識し得な い状況であったといえ、合理的期間内における是正がされなかったといえないこ のであるから、仮に、本件選挙区 割りが違憲状態に陥っているとしても、国会においてその状態を認識し得な い状況であったといえ、合理的期間内における是正がされなかったといえないことは明らかである。 第3 当裁判所の判断1(1) 憲法は、選挙権の内容の平等、換言すれば投票価値の平等を要求しているものと解される。そして、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する 重要な基準であるが、国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであるところ、国会の両議院の議員の選挙については、憲法上、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとされ(同法43条2項、47条)、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められて いる。 衆議院議員の選挙につき全国を多数の選挙区に分けて実施する制度が採用される場合には、選挙制度の仕組みのうち定数配分及び選挙区割りを決定するに際して、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められている というべきであるが、それ以外の要素も合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されるのであって、具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現 するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上で な反映を実現 するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められているところである。したがって、このような選挙制度の合憲性は、これらの諸事情を総合的に考慮した上でなお、国会に与えられた裁量権の行使として合理性を有するといえるか否かによって判断されることになり、国会がこのような選挙制度の仕組みについて具体的に定めたところが、上記の ような憲法上の要請に反するため、上記の裁量権を考慮してもなおその限界 を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである(最高裁昭和51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁、最高裁昭和58年11月7日大法廷判決・民集37巻9号1243頁、最高裁昭和60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁、最高裁平成5年1月20日大法廷判決・民集4 7巻1号67頁、最高裁平成11年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁、最高裁平成11年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁、最高裁平成19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁、平成23年大法廷判決、平成25年大法廷判決、平成27年大法廷判決、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決参照)。 (2) 平成30年大法廷判決は、上記の基本的な判断枠組みに立った上で、平成29年選挙区割りについて、新区割制度及び同選挙区割りから成る合理的な選挙制度の整備が既に実現されていたと判示し、さらに、令和5年大法廷判決は、新区割制度について、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制 度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダ 割制度について、選挙区の改定をしてもその後の人口異動により選挙区間の投票価値の較差が拡大し得ることを当然の前提としつつ、選挙制 度の安定性も考慮して、10年ごとに各都道府県への定数配分をアダムズ方式により行うこと等によってこれを是正することとしている制度には合理性が認められるとした上で、選挙区間の較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情や、較差の拡大の程度が当該制度の合理性を失わせるほど著しいものであるといった事情がない限り、 憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできず、令和3年選挙について、平成29年選挙後に更なる較差是正の措置は講じられず、令和3年選挙における選挙区間の較差が平成29年選挙当時よりも拡大していたとしても、較差の拡大をもって、平成29年選挙区割りが令和3年選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていた ものということはできないと判示した。 2(1) 本件選挙における選挙区間の較差は、前記のとおり令和2年国勢調査の結果を前提にした選挙区間の人口の最大較差が1対1.999であったのに対し、本件選挙当日における選挙区間の選挙人数の較差が1対2.059に拡大していたことが認められるが、平成30年大法廷判決及び令和5年大法廷判決が判示するとおり新区割制度の下で較差が拡大したとしても、拡大した 較差は新区割制度の枠組みの中で是正されることが予定されているということができるから、上記のように較差が拡大したとしても、当然に、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできない。令和3年選挙においては、選挙当日の最大較差が1対2.079で、較差が2倍以上となっている選挙区数が29であったのに対 然に、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至ったものということはできない。令和3年選挙においては、選挙当日の最大較差が1対2.079で、較差が2倍以上となっている選挙区数が29であったのに対し、本件選挙においては、 選挙当日の最大較差が1対2.059で、較差が2倍以上となっている選挙区数は10選挙区と、最大較差及び較差が2倍以上となっている選挙区の数はいずれも令和3年選挙を下回る数値となっていたことが認められる。本件選挙区割りは、新区割制度に従ってアダムズ方式を適用して見直しが行われた区割りであること、本件選挙当時における選挙区間の投票価値の較差が自 然的な人口異動以外の要因によって拡大したものというべき事情や、当該較差が憲法の投票価値の平等の要求と相いれない新たな要因によるものというべき事情はうかがわれず、較差の程度も制度の合理性を失わせるほど著しいものとはいえないことを踏まえると、本件選挙区割りが本件選挙当時において憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っていたものということは できない。 したがって、本件選挙当時において、本件区割規定の定める本件選挙区割りは、憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず、本件区割規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。 (2)ア原告らは、前記のとおり、令和4年改定案及び同改定案に基づいて改正、 改定された本件区割規定及び本件選挙区割りが新区画審設置法3条1項、 同法4条、平成28年改正法附則2条3項に違反していたと主張するが、同法3条1項にいう人口は、改定案作成日の人口を指すものではなく、統計法5条2項の規定により行われる国政調査の結果に基づく人口を指すものであることは同条の規定から明らかであるし ていたと主張するが、同法3条1項にいう人口は、改定案作成日の人口を指すものではなく、統計法5条2項の規定により行われる国政調査の結果に基づく人口を指すものであることは同条の規定から明らかであるし、新区画審設置法3条1項、同法4条をみても、改定案の作成を直近の国勢調査の結果によることや大 規模国勢調査の5年後に実施される簡易国勢調査の結果を踏まえて勧告を行うことについて定めただけであり、むしろ、簡易国勢調査の時点で選挙区間の最大較差が2倍以上という事態が生じ得ることを前提としていることからしても、改定案の作成時から次の国勢調査までの全期間について、選挙区間の最大較差が2倍以上にならないことを求めていると解すること はできないから、令和4年改定案の内容が改定案の作成日における選挙区間の人口の最大較差が1対2を超える内容であったり、改定案の作成後、次の国勢調査までの間に選挙区間の人口の最大較差が1対2を超える内容であったりしたとしても、改定案が新区画審設置法3条1項、同法4条に違反するとは認められない。また、平成28年改正法附則2条3項につい ても、新区割制度による選挙区割りの改定案の作成が令和2年大規模国勢調査の結果を待って作成されることになることから、それまでの間に投票価値を是正するための緊急措置として設けられたものにすぎず、新区割制度において将来の人口動態を踏まえて改定案を作成することを定めたものとはいえない。したがって、原告らの上記主張は採用することができない。 イ原告らは、本件区割規定及び本件選挙区割りは、憲法の要請する1人1票等価値及び人口比例選挙に反していたから違法、無効であると主張するが、国会の両議院の議員の選挙については、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められており、憲 、憲法の要請する1人1票等価値及び人口比例選挙に反していたから違法、無効であると主張するが、国会の両議院の議員の選挙については、選挙制度の仕組みの決定について国会に広範な裁量が認められており、憲法上、議員1人当たりの選挙人数ないし人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な 基準とすることが求められているというべきであるが、それ以外の要素も 合理性を有する限り国会において考慮することが許容されているものと解されることは前記のとおりであって、憲法が、1人1票等価値及び人口比例選挙を当然に要請しているとは認められず、原告らの主張は採用できない。 第4 結論 以上のとおり、本件小選挙区選挙の定数配分及び本件区割規定の定める本件選挙区割りは、本件選挙時において、投票価値の平等を要求する憲法に違反する状態に至っていたものとは認められないから、本件各選挙区の各選挙が違憲であるとは認められず、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がない。 よって、原告らの請求をいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官新谷晋司 裁判官平井健一郎 裁判官石川千咲 裁判官石川千咲

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