平成24(行ウ)372 収用補償金増額請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年1月22日 東京地方裁判所 公用負担・公用収用など
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判決文本文41,146 文字)

- 1 -平成27年1月22日判決言渡平成24年(行ウ)第372号収用補償金増額請求事件 主文 1 参加行政庁が平成23年12月8日付けでした別紙1(物件目録)記載1及び2の各土地の収用に係る裁決における原告に対する損失補償額を3億4572万0754円から3億5037万2408円と変更する。 2 被告は,原告に対し,465万1654円及びこれに対する平成24年12月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを6分し,その5を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 参加行政庁が平成23年12月8日付けでした別紙1(物件目録)記載1及び2の各土地の収用に係る裁決における原告に対する損失補償額を3億4572万0754円から3億7518万3614円と変更する。 2 被告は,原告に対し,2946万2860円及びこれに対する平成24年2月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,別紙1(物件目録)記載1及び2の各土地(以下「本件各土地」という。)の借地権を有し,本件各土地上に工場等を所有していたところ,被告が施行する調布都市計画道路3・2・6号調布保谷線及び三鷹都市計画道路3・2・6号調布保谷線(以下,併せて「本件路線」という。)の都市計画事業(以下「本件事業」という。)の用に供するため,参加行政庁がした土地収用法 - 2 -の規定による収用の裁決(以下「本件裁決」という。)において,本件各土地の収用による原告に対する損失補償額(以下「本件損失補償額」という。)が合計3億4572万0754円とされたことに対し,本件損失補償額を不服として 裁決(以下「本件裁決」という。)において,本件各土地の収用による原告に対する損失補償額(以下「本件損失補償額」という。)が合計3億4572万0754円とされたことに対し,本件損失補償額を不服として,① 同法133条1項に基づき,本件損失補償額を上記3億4572万0754円から3億7518万3614円と変更することを求めるとともに,② 被告に対し,同条2項に基づき,上記各金額の差額である2946万2860円及びこれに対する本件裁決における権利取得の日である平成24年2月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は,当事者間に争いのない事実である。)⑴ 本件事業の概要ア本件路線は,東京都調布市αを起点とし,東京都三鷹市βを終点とする延長7800m,標準幅員36mの都市計画道路である。(乙6)イ本件事業は,本件路線のうち,建設大臣及び関東地方整備局長による都市計画事業及びその変更の認可の告示があった東京都調布市γ,同市δ,同市ε,同市ζ,同市η,同市θ,同市ι,同市λ,同市μ及び同市ν並びに東京都三鷹市ξ,同市π及び同市σ地内の事業延長2200mの区間で,現道を基本計画幅員36mに拡幅し整備するものである。(乙7の1から3まで,乙8)⑵ 当事者等ア原告は,別紙2(現況重ね図)記載×-13A,×-13B(別紙1記載2の土地)及び×-14(同記載1の土地)の土地上に工場(以下「本件工場」という。)及び事務所(以下「本件事務所」という。)を所有するとともに,同×-3,×-4A及び×-5の土地上に倉庫(以下「本件倉庫」といい,本件工場及び本件事務所と併せて「本件工場等」という。)を所有し,本件工場等において事業を営んでいた。 なお,別紙2 るとともに,同×-3,×-4A及び×-5の土地上に倉庫(以下「本件倉庫」といい,本件工場及び本件事務所と併せて「本件工場等」という。)を所有し,本件工場等において事業を営んでいた。 なお,別紙2記載のとおり,本件倉庫と隣接したところに木造2階建て - 3 -の集合住宅(以下「本件住宅」という。)がある。 イ被告は,本件事業の施行者である地方公共団体である。 ⑶ 本件裁決に至る経緯ア被告は,平成22年3月31日,参加行政庁に対し,土地収用法39条1項に基づく収用の裁決の申請及び同法47条の2第3項に基づく明渡裁決の申立てをした。(甲1)イ株式会社P1(以下「本件鑑定会社」という。)は,参加行政庁からの依頼を受けて,平成23年10月1日時点の本件工場等に係る工作物の損失補償額及び営業休止の損失補償額を鑑定し,同月26日,参加行政庁に対し,鑑定報告書(以下「本件鑑定報告書」という。)を提出した。(甲12)ウ参加行政庁は,平成23年12月8日,東京都調布市λ×番14(収用し,明け渡すべき土地の面積298.30㎡〔実測〕)及び同×番33(同19.34㎡)の本件各土地を収用する土地及び明け渡すべき土地の区域とし,損失の補償を定め,権利取得の時期を平成24年2月6日,明渡しの期限を同年12月3日とする権利取得裁決及び明渡裁決(両裁決を併せたものが本件裁決である。)をした。 本件裁決における原告に対する補償項目及び補償金額は,次のとおりであり,損失補償額は,合計3億4572万0754円である。(甲1)(ア) 土地に対する損失補償額合計 5493万4894円a 借地権消滅 5196万1769円b 残借地権 258万7488円c 残地の使用 償額合計 5493万4894円a 借地権消滅 5196万1769円b 残借地権 258万7488円c 残地の使用貸借による権利 38万5637円(イ) 土地に対する損失の補償以外の損失補償額合計 2億9078万5860円 - 4 -a 建物移転 1億2342万7945円b 工作物 1億3979万3674円c 立木 46万4000円d 動産移転 213万3200円e 移転雑費 923万8440円f 営業休止 1540万0281円g 自動車の保管場所の確保に関する費用 32万8320円⑷ 本件訴えの提起原告は,平成24年6月7日,本件訴えを提起した。(顕著な事実) 2 争点本件の争点は,本件裁決における本件損失補償額が適正であるかどうかである。具体的には,次の各項目に係る損失補償額又は補償の要否が争われており,その余の損失補償額の相当性については争いがない。 ⑴ 工作物の損失補償額(クラブ型天井走行クレーン,ギロチンプレス)⑵ 営業休止の損失補償額(得意先喪失補償)⑶ 借家人補償の要否(本件住宅の使用貸借に係る補償) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 争点⑴(工作物の損失補償額)について(原告の主張)アクラブ型天井走行クレーン(ア) 移動式クレーン作業費用a 本件工場に設置されていたクラブ型天井走行クレーン(以下「本件天井クレーン」という。)は,地上7m以上の場所に設置された重量物であり, ラブ型天井走行クレーン(ア) 移動式クレーン作業費用a 本件工場に設置されていたクラブ型天井走行クレーン(以下「本件天井クレーン」という。)は,地上7m以上の場所に設置された重量物であり,その撤去及び据付工事には移動式クレーンが必要であるが,本件鑑定報告書中の本件天井クレーンの撤去費及び据付費の欄には移動式クレーンの費用についての記載がないため,本件裁決においても, - 5 -同費用が漏れている可能性が高い。 b 中央用地対策連絡協議会(以下「用対連」という。)の定める用地調査等標準仕様書の別記3機械設備調査算定要領(以下「用対連算定要領」という。)の別添2機械設備工事費算定基準(以下「工事費算定基準」という。)第9(据付費)の二「仮設費」においては,「仮設費とは,機器等の据付に当たって必要となる仮設材等の費用をいい,必要に応じて,積上げにより算定する。」旨定められているところ,建築における一般常識からしても,操作員(オペレータ)の費用を含む移動式クレーンのリース費用は,上記仮設費に含まれるものである。 他方で,工事費算定基準第5(据付工数)においては,移動式クレーンに関する費用について一切言及されていない。また,工事費算定基準に定めのない工数歩掛等として採用される公共建築工事積算基準(工事費算定基準第4・6号)においては,「トラッククレーンに係る費用は,設置日数を別途算定し計上する」ものと定められているところ,これは,クレーンの作業については,法令上,移動式クレーン運転士免許を取得した者が行うことが義務付けられており,工事の実務においては,運転免許を有する操作員と機器とを一組として借り上げることが通例となっており,費用の算定においてもこうした特殊な考慮を要することによるものである。このように,据付工数で算定した作 の実務においては,運転免許を有する操作員と機器とを一組として借り上げることが通例となっており,費用の算定においてもこうした特殊な考慮を要することによるものである。このように,据付工数で算定した作業員の費用と移動式クレーンの操作員の費用とでは,算定の基礎を全く異にするものである。以上に加え,移動式クレーンの操作員は,平成23年度公共工事設計労務単価の定める定義に従えば,「運転手(特殊)」に該当するものであり,「設備機械工」に該当するものではないことからすれば,移動式クレーンの費用は,工事費算定基準第5(据付工数)に含まれるものではなく,本件鑑定報告書中の「機械設備据付工数等計算書」における「設備機械工」には含まれていないという - 6 -べきである。 また,工事費算定基準第13(直接経費)の三「機械経費」においては,「機械経費とは,機器等の据付及び撤去工事に必要な工具,器具等の損料等」と定められているところ,移動式クレーンが公道を走行することが可能な車両であることからしても,「工具,器具等」には当たらないのであって,その費用は,本件鑑定報告書中の「機械設備直接工事費明細書」における「機械経費」にも含まれていないものというべきである。 c 移動式クレーンは,一般に,専門業者から借り上げるものであるところ,本件天井クレーンについての操作員付きの移動式クレーンの作業料金は1日当たり4万5000円であり,据付けに必要な日数は3日,撤去に必要な日数は2日であることからすれば,移動式クレーン作業費用相当額は,合計22万5000円(4万5000円/日×〔3日+2日〕)である。 (イ) 再築補償率a 本件裁決においては,本件天井クレーンの実態的耐用年数を20年とした上で,経過年数が22年であるため耐用年数が満了しているとして,運 0円/日×〔3日+2日〕)である。 (イ) 再築補償率a 本件裁決においては,本件天井クレーンの実態的耐用年数を20年とした上で,経過年数が22年であるため耐用年数が満了しているとして,運用益損失額の補償が否定されている。しかし,運用益損失額が,当該機械設備を耐用年数の満了前に取り壊すことに対する特別な損失を補償するものであることからすれば,その正当な損失補償額を算定するためには,更に何年稼働できるのかを調査する必要があるというべきである。そして,本件天井クレーンが現在も支障なく稼働している以上,その実態を踏まえた実態的耐用年数を認めた上で,それを前提とした運用益損失額が補償されるべきである。 b 本件天井クレーンの実態的耐用年数は,① 本件天井クレーンが,参加行政庁が認定した実態的耐用年数である20年を経過した後に2 - 7 -年間使用され続けていることを踏まえ,上記20年に2年を加えるとともに,さらに,② 耐用年数を経過した固定資産の評価のための基準である,減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号。以下「本件省令」という。)3条1項2号イにおいて,法定耐用年数の全部を経過した資産の耐用年数について当該資産の法定耐用年数の100分の20に相当する年数とする旨定められていることに鑑み,上記20年の100分の20に相当する年数である4年を加えることにより,26年と認めるべきである。 c そうすると,本件天井クレーンの再築補償率は,経過年数,標準耐用年数(又は実態的耐用年数)及び年利率(2.5%)を所定の算定式(用対連算定要領9条2項,都実施細目第15の1⑹一ア参照。以下「再築補償率に係る算定式」という。)に当てはめることにより,38.7%とすべきこととなる。 (ウ) まとめ以上の(ア)及 算定式(用対連算定要領9条2項,都実施細目第15の1⑹一ア参照。以下「再築補償率に係る算定式」という。)に当てはめることにより,38.7%とすべきこととなる。 (ウ) まとめ以上の(ア)及び(イ)を踏まえると,本件天井クレーンの適正な損失補償額は,別紙3(天井走行クレーン算定額(要求額)比較表)記載「要求額」中「補償額」欄のとおり,1743万3300円であり,これと本件裁決における損失補償額との差額は,同「差額」欄のとおり,789万7132円である。 イギロチンプレス(ア) 移動式クレーン作業費用a 本件工場に設置されていたギロチンプレス(以下「本件プレス」という。)は,地下5m以上の場所に設置された重量物であり,その撤去及び据付工事には移動式クレーンが必要であるところ,本件鑑定報告書中の本件プレスの撤去費及び据付費欄には,移動式クレーンの費用についての記載がないため,本件裁決においても同費用が漏れてい - 8 -る可能性が高い。 b 移動式クレーンに係る費用が設置日数を別途算定し計上することとされていることなど,前記ア(ア)b記載の主張は,本件プレスについても当てはまるものである。 c 移動式クレーンは,一般に,専門業者から借り上げるものであるところ,本件プレスについての操作員付きの移動式クレーンの作業料金は1日当たり8万9000円であり,据付けに必要な日数は25日,撤去に必要な日数は10日であることからすれば,移動式クレーン作業費用は,合計311万5000円(8万9000円/日×〔25日+10日〕)である。 (イ) 冷却装置工事等に係る費用本件鑑定報告書には,被告が本件プレスの工事費として算定していた次のaからcまでの各工事(以下「本件冷却装置工事等」という。)に係る費用の記載がなく,本件裁決に (イ) 冷却装置工事等に係る費用本件鑑定報告書には,被告が本件プレスの工事費として算定していた次のaからcまでの各工事(以下「本件冷却装置工事等」という。)に係る費用の記載がなく,本件裁決においても同費用が漏れている可能性が高い。なお,株式会社P2(以下「P2」という。)が本件鑑定会社に対し作成した見積書(甲12〔127頁〕。以下「本件見積書」という。)の機械本体として計上されている費用中に,本件冷却装置工事等に係る費用が含まれていることを裏付ける証拠はない。 a 冷却装置工事一式 76万8300円b 給排気設備工事一式 40万2185円c 鉄骨製階段・小屋一式 60万0078円(ウ) 再築補償率a 本件裁決においては,本件プレスの実態的耐用年数を25年とした上で,経過年数が18年であり耐用年数が満了していないとして,これらを再築補償率に係る算定式に当てはめることにより算定される再築補償率(51.5%)に基づく運用益損失額を補償することとされ - 9 -ており,正当である。 b これに対し,被告は,具体的な耐用年数として標準耐用年数を超える実態的耐用年数を設定するためには,特別な補修を行うなどの特段の理由が必要となる旨主張する。 しかし,東京都の事業の施行に伴う損失補償基準実施細目(以下「都実施細目」という。)の定める「標準耐用年数によることが適当でないと認められる場合」であるかどうかは,機械の使用実態を踏まえて解釈することが必要不可欠であることからすると,専門メーカー等から意見を聴取するなど,その他適切な方法を用いることにより,標準耐用年数による算定が適正な補償であるか否かを判断すべきであり,特別な補修を行うなどの特段の理由がある場合に限定されるとの解釈は相当でないというべきである。 その他適切な方法を用いることにより,標準耐用年数による算定が適正な補償であるか否かを判断すべきであり,特別な補修を行うなどの特段の理由がある場合に限定されるとの解釈は相当でないというべきである。 また,この点をおくとしても,本件プレスが標準耐用年数を経過した後も稼働を続けているのは,原告が点検及び修理に必要な経費を定期的に負担し,老朽化や陳腐化に対してはその都度必要な改良を加えるなどの労力を注いだ結果であることからすると,本件プレスについて,被告の主張する「特別な補修を行うなどの特段の理由」もあるというべきである。 (エ) まとめ以上によれば,本件プレスの適正な損失補償額は,別紙4(ギロチンプレス算定額(要求額)比較表)記載「要求額」中「補償額」欄のとおり,1億1818万6799円であり,これと本件裁決における損失補償額との差額は,同「差額」欄のとおり,447万5115円である。 (被告の主張)ア本件天井クレーン及び本件プレスの適正な損失補償額(ア) 算定方法 - 10 -被告は,本件天井クレーン及び本件プレスについては,復元費及び復元に伴う営業補償の合計額と比べて再築費及び再築に伴う営業補償の合計額の方が低額であったため,再築費を補償することとし,具体的には,東京都の定める補償算定要領(以下「都算定要領」という。)の第1の4⑵イの⑵「再築費」のとおり,「現在価額(再調達価格×現価率)+運用益損失額+解体処分費-売却価格=機械設備等の新設費×再築補償率+解体処分費-売却価格」という計算式に基づいて算出することとした。 (イ) 本件天井クレーン被告は,本件天井クレーンの再築費の算出に当たり,東京都の事業の施行に伴う損失補償基準,都実施細目,東京都の事業の施行に伴う損失補償基準実施細目(別表・参考編)( た。 (イ) 本件天井クレーン被告は,本件天井クレーンの再築費の算出に当たり,東京都の事業の施行に伴う損失補償基準,都実施細目,東京都の事業の施行に伴う損失補償基準実施細目(別表・参考編)(以下「都実施細目別表編」という。),都算定要領及び別冊補償算定要領・別表補償標準単価表(以下,これらを併せて「都算定基準」という。)に基づき,新設費を3421万1540円,撤去費を162万0700円と見積もった。 また,原告所有の機械設備全体が,都実施細目別表編の参考第7-2・12の「鉄くず処理業用設備」に当たると認定した上で,その耐用年数が15年と規定されているのに対し,本件天井クレーンの経過年数が21年であることから,これらを再築補償率に係る算定式に当てはめることにより,再築補償率を20.0%と認定した。 以上により,本件天井クレーンの再築費について,846万3008円(3421万1540円〔新設費〕×0.2〔再築補償率〕+162万0700円〔撤去費〕)と算出した。 (ウ) 本件プレス被告は,本件プレスの再築費の算出に当たり,都算定基準に基づき,新設費を1億5845万1270円,撤去費を1932万円と見積もっ - 11 -た。 そして,原告所有の機械設備全体が,都実施細目別表編の参考第7-2・12の「鉄くず処理業用設備」に当たると認定した上で,その耐用年数が15年と規定されているのに対し,本件プレスの経過年数が17年であることから,これらを再築補償率に係る算定式に当てはめることにより,再築補償率を20.0%と認定した。 以上により,本件プレスの再築費について,5101万0254円(1億5845万1270円〔新設費〕×0.2〔再築補償率〕+1932万円〔撤去費〕)と算出した。 イ再築補償率原告は,① 本件天井クレー り,本件プレスの再築費について,5101万0254円(1億5845万1270円〔新設費〕×0.2〔再築補償率〕+1932万円〔撤去費〕)と算出した。 イ再築補償率原告は,① 本件天井クレーン及び本件プレスの耐用年数について,標準耐用年数ではなく実態的耐用年数によるべきであるとした上で,実態的耐用年数が満了していないことから,これを前提とした運用益損失額を補償すべきである,② 実際に標準耐用年数を超えて使用していることから,実態的耐用年数を認めるべきである旨主張する。 しかし,上記①については,標準耐用年数は,通常の使用方法を前提として定められたものであり,特別な大規模補修を行わず,通常のメンテナンスに要する補修のみを行うことを前提として定められた耐用年数であることからすれば,標準耐用年数を超える実態的耐用年数を認定するためには,特別な補修を行っていたことなどの特段の理由を要するものというべきである(なお,標準耐用年数によることが適当でないと認められるか否かについて,専門メーカー等から意見を聴取するなど,その他適切な方法を用いて判断すべきである旨の原告の主張は,都実施細目第15の4⑵を無視する誤った解釈である。)。そして,本件天井クレーン及び本件プレスを含む原告所有の機械設備は,通常のメンテナンスが行われていたにすぎず,耐用年数を延ばすための特別な補修をすることなく使用されていた - 12 -ことがうかがわれることからすれば,標準耐用年数を超える実態的耐用年数を認める特段の理由があるとは認められない。 また,上記②については,標準耐用年数は,現在価額を算出する際に用いるものであるため,物理的老朽化のみならず,機能的及び経済的陳腐化による当該財産の残存する経済価値をも含めて評価した上で設定されたものであって,実際に使用 標準耐用年数は,現在価額を算出する際に用いるものであるため,物理的老朽化のみならず,機能的及び経済的陳腐化による当該財産の残存する経済価値をも含めて評価した上で設定されたものであって,実際に使用しているという実態のみを根拠に標準耐用年数を超える実態的耐用年数を認めることは,機械設備の機能的及び経済的陳腐化を一切考慮しないこととなるため,誤りである。 なお,本件天井クレーンについて実態的耐用年数を20年と認定した本件裁決について,これを26年として算定すべきである旨の原告の主張に対しては,後記(参加行政庁の主張)エ記載の参加行政庁の主張を援用する(本件裁決に係る本件鑑定報告書は,被告が算定の根拠とした都算定基準ではなく,用対連算定要領に基づき算定をしたため,被告とは異なり,標準耐用年数によることが適当でないと判断した上で,本件プレスについては,その実態的耐用年数を25年と認定し,経過年数が18年であることから,再築補償率を51.5%とし,本件天井クレーンについては,その実態的耐用年数を20年と認定し,経過年数が22年であることから,再築補償率を20.0%としている。また,被告は,土地収用法47条の3第1項1号ニに基づき明渡しの申立てをした平成22年の経過年数を基に算定しているのに対し,本件鑑定報告書は,同法73条に基づき裁決時点である平成23年の経過年数を基に算定しているため,両者の基礎とする経過年数も異なっている。)。 ウ移動式クレーン作業費用移動式クレーン作業費用に係る前記(原告の主張)ア(ア)及びイ(ア)記載の原告の主張に対しては,後記(参加行政庁の主張)イ記載の参加行政庁の主張を援用する。 - 13 -エ本件冷却装置工事等本件鑑定報告書を作成した鑑定人は,原告代表者の立会いの下,2度にわたり調査をした ては,後記(参加行政庁の主張)イ記載の参加行政庁の主張を援用する。 - 13 -エ本件冷却装置工事等本件鑑定報告書を作成した鑑定人は,原告代表者の立会いの下,2度にわたり調査をした上で本件鑑定報告書を作成している以上,本件冷却装置工事等についても,その存否を確認した上で,何らかの判断に基づき,本件プレスに係る損失補償額等に含まれるなどの判断をしたと考えることが合理的である。 オまとめ被告は,本件天井クレーン及び本件プレスを除く工作物に係る損失補償額を2314万9142円と算定し(当事者間に争いがない。),工作物の適正な損失補償額を8262万2404円(846万3008円〔前記ア(イ)〕+5101万0254円〔前記ア(ウ)〕+2314万9142円)と算出したところ,本件裁決においては,これを上回る1億3979万3674円を補償することとされているから,適正な損失補償額が算定されているということができる。 (参加行政庁の主張)ア本件鑑定報告書の作成に至る経緯参加行政庁は,原告が,通常妥当と認められる移転先に通常妥当と認められる移転方法によって移転をするのに要する費用についての判断資料を得るため,土地収用法65条1項2号に基づき,本件各土地上の本件工場等に係る工作物補償及び営業休止補償について鑑定を命じ,鑑定人として本件鑑定会社を選定し,鑑定を依頼したところ,本件鑑定会社は,現地調査等を経て,工作物補償及び営業休止補償を算定し,参加行政庁に本件鑑定報告書を提出した。本件鑑定報告書記載の本件天井クレーンの損失補償額は,別紙3記載「収用委員会鑑定書」欄のとおりであり,本件鑑定報告書記載の本件プレスの損失補償額は,別紙4記載「収用委員会鑑定書」欄のとおりである。 - 14 -そして,参加行政庁は,本件 は,別紙3記載「収用委員会鑑定書」欄のとおりであり,本件鑑定報告書記載の本件プレスの損失補償額は,別紙4記載「収用委員会鑑定書」欄のとおりである。 - 14 -そして,参加行政庁は,本件鑑定報告書を検討した結果,これが妥当なものであると認め,本件裁決において,本件鑑定報告書における鑑定額のとおり,工作物の損失補償額を認定した。 イ移動式クレーンの作業費用本件鑑定会社は,本件プレス等の機械設備の鑑定をするに当たり,用対連算定要領に基づき算定したところ,用対連算定要領においては,据付け及び撤去に係る項目及び内訳があらかじめ記載され,そこに必要な事項を記載して算定する様式や,鑑定する機械設備についての重量等の個別の条件により,据付けや撤去に要する作業量等について割り増しの補正や調整をする様式が定められているのであり,移動式クレーンに要する作業費用を別途取り出して算定し,これを記載するものとはされていない。 実際にも,工事費算定基準第5(据付工数)には,機械等の据付けに要する工数は,様式第6による機械設備据付工数等計算書を用いて算出するものとする旨規定されているところ,この据付工数は,移動式クレーンの操作員の費用に相当するものである。そして,本件鑑定報告書では,上記様式第6の計算書において,移動式クレーンの操作員の費用である据付工数が算定されている。 また,工事費算定基準第13(直接経費)は,移動式クレーンのリース費用に相当するものであるところ,本件鑑定報告書では,機械設備直接工事費明細書において,直接経費の数量及び金額が計上されている。 ウ本件冷却装置工事等に係る費用本件鑑定会社は,本件プレスの再築費を算定するに当たり,本件プレスを生産し,施工した専門メーカーであり,本件プレスの構造等を最も熟知するP2から徴した ている。 ウ本件冷却装置工事等に係る費用本件鑑定会社は,本件プレスの再築費を算定するに当たり,本件プレスを生産し,施工した専門メーカーであり,本件プレスの構造等を最も熟知するP2から徴した本件見積書を参考にした。そして,本件冷却装置工事等に係る費用は,本件見積書における本件プレスの購入費(1億0400万円)に含まれている。 - 15 -エ本件天井クレーンの再築補償率本件鑑定会社は,本件天井クレーンの専門業者の現場調査や意見聴取をした結果,本件天井クレーンの実態的耐用年数を20年と適正に認定したものである。 ⑵ 争点⑵(営業休止の損失補償額)について(原告の主張)ア本件裁決においては,本件各土地の収用に伴う営業休止期間を1か月とし,短期休業と認定するとともに,原告の業種について卸売業であると認定した結果,所定の売上減少率表(本件鑑定報告書188頁,都実施細目別表編別表第19参照。以下「本件売上減少率表」という。)により,売上減少率が45%であることを前提として,営業休止の損失補償額のうち得意先喪失補償額が算出されている。 (ア) しかし,本件各土地の収用に伴う営業休止期間は,少なくとも3か月程度必要であり,長期休業を適用すべきである。 本件工場の機械設備の撤去,移転先における機械設備の設置,撤去後の片付け等の必要な作業の量に鑑みれば,原告が1か月の休止期間により移転先で営業を再開することは著しく困難である。動産の移転及び運搬は,実際にも数か月を要したものであり,動産の整理及び梱包に要する期間が2日,動産の移転(運搬)に要する期間が20日ということはあり得ない。また,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に基づく産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者の変更の届出に要する (運搬)に要する期間が20日ということはあり得ない。また,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)に基づく産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者の変更の届出に要する期間は,施設の設置場所が異なる以上,事前計画書を提出し,現場調査を受けた上で,更新申請をする必要があり,これらに要する期間が1日ということはあり得ない。 (イ) また,得意先喪失による損失補償額の算定においては,業種ごとに定められた売上減少率の数値を機械的に当てはめるのではなく,被補償 - 16 -者の事業の実態を具体的に把握する必要があるところ,原告の業務は,卸売業とは異なり,廃材の処理というサービスを提供するという側面が強く,処理施設の所在地が営業に大きく影響することからすれば,サービス業であるというべきであるから,「その他のサービス業」であることを前提とする売上減少率を用いて得意先喪失補償額を算定すべきである。なお,得意先喪失補償額の算定に用いられる売上減少率は,本件売上減少率表によることとされているところ,本件売上減少率表は,日本標準産業分類の定める分類とは異なる独自のものであるから,同分類に従い税務申告書類に記載された業種と上記補償額の算定の際に適用すべき業種とが必ずしも一致するとは限らないのであって,原告も,上記の補償について想定した上で税務申告書類を作成したわけではないことからしても,税務申告書類の記載内容をもって売上減少率に係る原告の業種を認定するのは適当でないというべきである。 イそうすると,営業休止期間について長期休業を適用し,原告の業種についてその他のサービス業であると認定すると,本件売上減少率表により,売上減少率は80%とすべきこととなるため,営業休止の損失補償額のうち適正な得意先喪失補償額は,924万5 を適用し,原告の業種についてその他のサービス業であると認定すると,本件売上減少率表により,売上減少率は80%とすべきこととなるため,営業休止の損失補償額のうち適正な得意先喪失補償額は,924万5742円(520万0729. 98円〔被告の見積額〕÷45%×80%)であるということができる。 (被告の主張)ア(ア) 被告は,本件工場には本件プレス等の特殊な工作機械があることから,移転準備期間として0.25か月,移転後の動産整理等の期間として0.25か月のほか,実情に応じて定めた移転工事期間を加えることにより,相当な営業休止期間を算定することとした。 そして,上記移転工事期間については,再築工法を採用した本件天井クレーンや本件プレス等の大型機械工作物は,移転先において事前に再築された後に移転をするものと想定されることから,これらの工事期間 - 17 -については考慮せず,それ以外の機械工作物のうち復元に最も時間を要すると想定されるロータリーユンボの復元に必要な期間をもって全ての工作物の復元に必要な工事期間であると認定することとした上で,ロータリーユンボの復元については,0.5か月(15日)あれば移転工事期間として十分であると認定した。 以上により,相当な営業休止期間を合計1か月であると算定した。 (イ) 原告は,産業廃棄物処理業者等の変更の届出に要する期間を1日としたことを論難する。しかし,そもそも,損失補償額の算定においては,移転先において従前と同様の事業を行うことを前提とするところ,事業内容に変更がなく,従前と同様の営業を移転先において再開する場合に必要なのは,住所等の変更の届出手続にすぎず(廃棄物処理法14条の2第3項,7条の2第3項),事業の範囲の変更の際に必要となる都道府県知事の許可を要するものではないのであって において再開する場合に必要なのは,住所等の変更の届出手続にすぎず(廃棄物処理法14条の2第3項,7条の2第3項),事業の範囲の変更の際に必要となる都道府県知事の許可を要するものではないのであって,上記の届出自体は1日で完了するものである。なお,原告の主張する事前計画書の提出は,旧施設の稼働中に行われるべき新施設の建設段階においてされるべきものであるため,このことを根拠として営業休止期間の長短を論ずるのは相当でないし,また,原告の主張する現場審査も,1日程度で終了するものである。 また,損失補償額の算定の基礎となる営業休止期間の認定に当たっては,通常休業を要する期間を前提とすべきであることからすれば,原告が動産の整理及び梱包,動産の移転(運搬)に実際に数か月要したことを根拠として,営業休止期間が3か月であると認めるのは相当でない。 イ被告は,原告の営業形態が,顧客から鉄くず等を引き取り,これを加工し,製鉄及び非鉄金属原料として出荷し,取扱業者を対象に販売するものであること,原告から提出を受けた営業申告書において,その業種が「製鉄,非鉄金属原料の卸売」であると申告されていたこと,原告の棚卸資産 - 18 -に鉄,銅,アルミ等の在庫があることから,原告の業種を卸売業と認定した(原告の業種をサービス業と認定するのは,上記申告書における申告内容と相違するものである。)。 その上で,被告は,構外移転(店舗等を構外再築工法により移転する場合),短期休業(おおむね1か月以下の休業),店頭以外での販売を主とする卸売業(小売業における店頭販売とは異なる販売形態)の場合であることを前提に,本件売上減少率表により,売上減少率45%を適用し,営業休止の損失補償額のうち得意先喪失補償額を520万0729.98円と見積もったものである。 そして 異なる販売形態)の場合であることを前提に,本件売上減少率表により,売上減少率45%を適用し,営業休止の損失補償額のうち得意先喪失補償額を520万0729.98円と見積もったものである。 そして,本件裁決においては,得意先喪失補償が520万0729円と算定されており,適正な損失補償額が認められている。 ⑶ 争点⑶(借家人補償の要否)について(原告の主張)ア土地収用法第八十八条の二の細目等を定める政令(以下「本件政令」という。)25条は,建物の賃借人に対する補償の内容を定めているにすぎず,賃借人以外の者に対する補償を否定するものではなく,使用借権が賃借権と比べて権利性が弱いとしても,被収用者が収用により居住の権利を失う以上,新たな賃借物件を賃借するのに通常要する費用及び一定期間の賃料について,土地収用法88条の「通常受ける損失」として補償される必要がある。 イ本件住宅は,原告と無関係の賃借人の住居として使用されている一つの居室を除き,原告の従業員の社員寮,トイレ,休憩場所及び洗濯場所並びに原告の事業のための金庫,道具及び書類の保管場所として使用されており,原告の事業に必要不可欠であった。本件事務所は,事務机,応接セット,書類棚を置くのが精一杯の面積(34.78㎡)しか有しておらず,原告従業員の休憩場所として十分なスペースがなく,また,その位置や建 - 19 -物の構造上,安全面の観点からも貴重品の保管には不向きである。本件工場や本件事務所は,スペースが狭く,そこにトイレを設置することは困難であった。さらに,夜間や休日において本件工場の付近に従業員がいない状態にすることは,危機管理上も問題があった。 したがって,本件住宅は,被告が認定した一団の土地(本件工場等)と機能的に一体であるということができ,原告は,本件事業 て本件工場の付近に従業員がいない状態にすることは,危機管理上も問題があった。 したがって,本件住宅は,被告が認定した一団の土地(本件工場等)と機能的に一体であるということができ,原告は,本件事業により本件工場等が移転することとなれば,移転先においても本件住宅と同様の物件を賃借しなければならないから,そのための費用が通常受ける損失として補償される必要がある。 なお,被告は,従前,原告に対し,本件住宅に関連する損失補償を提案していたものであり,本件各土地の収用に伴い本件住宅を使用することができなくなることが通常受ける損失に当たることを認めていた。 ウ借家人補償の損失補償額の算定は,被収用者の使用借権の実態に応じてされるべきであるところ,本件住宅の使用貸人が原告代表者の母であり,原告に対し長年にわたり本件住宅の使用貸借を継続してきたことに鑑みると,補償年数については4年とすべきである。また,本件各土地の周辺地域における1㎡当たりの平均賃料は,約2300円である。 以上を踏まえると,適正な損失補償額は,次のとおり,合計1304万5600円である。 (ア) 家賃差額 1252万3776円(式)(2300円-0円)×113.44㎡×12月×4年(イ) 敷金・礼金 52万1824円(式)(2300円-0円)×113.44㎡×2×1月(被告の主張) - 20 -ア使用貸借が借家人補償の対象とならないことについては,後記(参加行政庁の主張)記載の参加行政庁の主張を援用する。 イ本件住宅は,原告代表者及び従業員でもある原告代表者の兄弟3名が居住する自宅であると認められ,本件工場等とは用途が明らかに異なるものであり,本件工場等と機能的に一体であるというこ を援用する。 イ本件住宅は,原告代表者及び従業員でもある原告代表者の兄弟3名が居住する自宅であると認められ,本件工場等とは用途が明らかに異なるものであり,本件工場等と機能的に一体であるということはできない。 本件事務所は,約34㎡の延床面積を有する建物であり,仕事の休憩や現金の保管をするのに何ら支障はなく,仮に,本件住宅を従業員の休憩場所や現金の保管場所に使用していた事実があったとしても,それは,従業員が自宅である本件住宅で休憩や現金の保管を事実上していたにすぎず,上記事実によっても,本件住宅が本件工場等と機能的に一体であるということはできない。また,本件工場又は本件事務所内には,トイレを設置することができる十分なスペースがあり,原告の従業員らが本件住宅のトイレを便宜上使用していたとしても,それは,原告代表者の母がたまたま本件工場等に隣接する場所に本件住宅を所有し,原告代表者及び従業員らが本件住宅に居住していたという特別の事情に基づく便益によるものにすぎないことからすれば,公平負担の原則に照らして公共で負担すべき性質の損失であるとはいい難く,土地収用法88条の「通常受ける損失」には当たらないというべきである。さらに,本件工場の機械類は大型機械であるし,書類等の重要な財物は本件事務所において保管することが可能であるから,本件工場に機械類や書類等の重要な財物があるからといって,本件住宅に従業員が寝泊まりしなければならないとまでいうことはできない。 なお,土地収用法に基づく収用手続は,収用手続前の任意の買収交渉において起業者が提示した条件にかかわらず,収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくさせるような補償であるかどうかを判断する手続であるところ,上記のとおり,本件住宅が本件工場等と機能的に一体であるということができない以上, かかわらず,収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくさせるような補償であるかどうかを判断する手続であるところ,上記のとおり,本件住宅が本件工場等と機能的に一体であるということができない以上,本件住宅について借家人補償をすることは認め - 21 -られない。 (参加行政庁の主張)借家人補償については,本件政令25条において,土地の収用に係る土地にある建物の全部又は一部を現に賃借する者に対して,賃借の継続が通常不能となる場合の補償が定められているところ,原告は,本件住宅を無償で借りており,賃貸借契約の存在が確認できない以上,借家人補償をすることは認められないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(工作物の損失補償額)について⑴ 前提参加行政庁は,本件裁決に当たり,土地収用法65条1項2号の規定により,本件鑑定会社に調査のための鑑定を命じ,本件鑑定会社が工作物の損失補償額を1億3979万3674円であると鑑定したことを踏まえて検討した結果,本件裁決において,工作物の損失補償額を同額と認定したものである(前提事実⑶イ・ウ,甲1,12)。 これに対し,原告は,上記のとおり本件裁決の認定の根拠とされた本件鑑定報告書における工作物の損失補償額についての鑑定額のうち,本件天井クレーン及び本件プレスの損失補償額を争っており(別紙3,4参照),これら以外の工作物の損失補償額(合計2314万9142円)については争っていない。 そこで,以下では,本件裁決における本件天井クレーン及び本件プレスの損失補償額が適正なものといえるか否かについて検討する。 ⑵ 本件鑑定報告書の内容ア証拠(甲12)によれば,本件鑑定報告書における本件天井クレーン及び本件プレスの損失補償額の鑑定の内容について,次のとおり認められる。 るか否かについて検討する。 ⑵ 本件鑑定報告書の内容ア証拠(甲12)によれば,本件鑑定報告書における本件天井クレーン及び本件プレスの損失補償額の鑑定の内容について,次のとおり認められる。 本件鑑定会社は,原告代表者らの立会いの下,調査員6名で,本件工場 - 22 -等の建物及び工作物の物件の調査をするとともに,ギロチンプレス及びクラブ型天井走行クレーンの専門業者各2社による機械設備の物件調査をした。 鑑定額の算出根拠について,機械設備は,用対連算定要領に基づき算定することとし,原則として建物の復元工法に準じて算定し,復元費を補償することとしたものの,復元が可能な機械設備において復元期間が長期となり営業休止期間が長期間となる場合には,機械設備の復元費,再築費及び営業休止補償を経済的に比較し,妥当な工法を認定する必要があるとした。そして,本件プレス及び本件天井クレーンについては,復元が可能であるものの,営業休止期間が長期となり営業休止補償額が多額となる上,本件プレスの復元費が再築費と比較して高額となるため,再築費を補償することとした。 その上で,本件プレス及び本件天井クレーンの再築費を補償するに当たり,両機械設備は,工事費算定基準第5ただし書の質量10tを超えることから,同第4により,専門メーカー等から見積りを徴し,工数歩掛の妥当性を検証し,その採用の可否を判断した。また,本件プレス及び本件天井クレーンは,質量が10tを超えており,標準的な機械とはいい難いことから,標準耐用年数によることが適当でないと認められるため,専門メーカー等からの意見を聴取することにより,実態的耐用年数で算定することが妥当であると判断し,各機械の専門業者の現場調査,確認をした上で,意見を聴取した結果,本件プレスの実態的耐用年数を25年,本件天井ク ー等からの意見を聴取することにより,実態的耐用年数で算定することが妥当であると判断し,各機械の専門業者の現場調査,確認をした上で,意見を聴取した結果,本件プレスの実態的耐用年数を25年,本件天井クレーンの実態的耐用年数を20年と認定し,以上を前提として,再築費を補償した。 イ本件プレス及び本件天井クレーンの型式等は,次のとおりであると認められる(甲12〔21,23頁〕)。 (ア) 本件プレス - 23 -a 型式 ○b 機械寸法 L11850×W5600×H9550c 機械重量 170.0td 電源動力三相200Ve 油圧ポンプ出力37KW×6基f 附属設備制御盤,冷却用クーリングタワー1基,冷却水循環ポンプ(2.2kw)1台,オイルクリーナー1基(イ) 本件天井クレーンa 型式 4.8t×12.98m クラブ型走行クレーンb 定格荷重 4.8t (試験荷重 6.0t)c 揚程 12.00md 走行クレーン寸法 L13315×W5350e 機械重量 18.6t(12.0+3.8+2.8)f 電源動力三相200V電灯 400W水銀灯×3灯(耐震型)g 電動機巻上出力25KW 速度25m/min横行出力3.0KW 速度50m/min走行出力3.7×2KW 速度55/minh 附属設備リフマグ1500φ,制御盤,走行レール22kg/m-22m,運転室内:クーラー,ヒーター,放送設備等,走行給電設備⑶ 本件天井クレーンア移動式クレーン作業費用(ア) 原告は,本件鑑定報告書中の本件天井クレーンの撤去費及び据付費の欄には移動式クレーンの作業費用についての記載がなく,本件裁決においても同費用が漏れている可能性が高 移動式クレーン作業費用(ア) 原告は,本件鑑定報告書中の本件天井クレーンの撤去費及び据付費の欄には移動式クレーンの作業費用についての記載がなく,本件裁決においても同費用が漏れている可能性が高い旨指摘する。 - 24 -その前提として,原告は,本件天井クレーンの撤去及び据付工事には移動式クレーンが必要である旨主張するところ,被告及び参加行政庁も,同工事において移動式クレーンを要すること自体については特に争っていないことに鑑み,以下では,同工事においては移動式クレーンが使用されるものであることを前提に検討する。 (イ) この点に関して,法令上,事業主は,つり上げ荷重が1トン以上の移動式クレーンの運転の業務については,移動式クレーン運転士免許を受けた者でなければ,当該業務に就かせてはならないと定められている(労働安全衛生法61条1項,労働安全衛生法施行令20条7号,クレーン等安全規則68条)ところ,証拠(甲48)及び弁論の全趣旨によれば,工事実務においては,上記の法令上の定めを踏まえ,通常は,移動式クレーンを借り受ける際の費用については,移動式クレーン運転士免許を有する当該クレーンの操作員の費用を含めた作業費用として算定するものとされていることが認められる。 (ウ)a 参加行政庁は,本件天井クレーンの工事に要する移動式クレーンの作業費用について,本件鑑定会社が算定の基礎とした用対連算定要領においては,これを別途取り出して記載するものとはされておらず,工事費算定基準第5の据付工数において移動式クレーンの操作員の費用に相当する額が算定されるとともに,工事費算定基準第13の直接経費において移動式クレーンのリース費用に相当する額を計上しているのであり,本件鑑定報告書においても移動式クレーンの作業費用が算定されている旨主張する。 定されるとともに,工事費算定基準第13の直接経費において移動式クレーンのリース費用に相当する額を計上しているのであり,本件鑑定報告書においても移動式クレーンの作業費用が算定されている旨主張する。 b そこで検討すると,まず,参加行政庁の主張する本件鑑定報告書における移動式クレーンの作業費用に係る算定の内容は,上記(イ)で認定した通常の工事実務における算定方法とは異なるものといわざるを得ない。 - 25 -また,据付工数において算定されているという移動式クレーンの操作員の費用に関しては,証拠(甲12〔42頁〕,13)によれば,工事費算定基準第5においては,機器等の据付に要する工数は,当該機械を第1類(簡易な機器等),第2類(一般汎用機器等),第3類(貯槽類等),第4類(搬送・荷役機器等)の機械区分に分類し,機器等の1台当たりの質量(t)をそれぞれの区分ごとに定められた工数歩掛の算定式に当てはめることにより形式的に算出することとされており,本件鑑定報告書においては,本件天井クレーンは,上記第4類の機械区分に当たることを前提に,その工数歩掛について,所定の算定式(7.5X)に質量(18.6t)を当てはめることにより,139.500と算定されていることが認められる。以上の事実によれば,本件鑑定報告書においては,据付工数について,移動式クレーンの操作員の費用などの個別の費用を積算する方法により算定されているわけではないということができる。 加えて,証拠(甲12〔37,38,42頁〕,13)によれば,工事費算定基準第5においては,上記の方法により算定された据付工数については,その90%を設備機械工,その10%を普通作業員とするとされており,本件鑑定報告書においても,上記工数歩掛139. 500の90%(125.55)を設備機械工 方法により算定された据付工数については,その90%を設備機械工,その10%を普通作業員とするとされており,本件鑑定報告書においても,上記工数歩掛139. 500の90%(125.55)を設備機械工,10%(13.95)を普通作業員とした上で,これに所定の単価(設備機械工については1万7500円,普通作業員については1万3400円)を乗ずることにより据付費及び撤去費が算定されていることが認められる。したがって,移動式クレーンの操作員の費用が上記据付工数に算定されているというためには,同操作員が上記の設備機械工又は普通作業員に当たることを要することとなるが,証拠(甲47)及び弁論の全趣旨によれば,工事の労務単価の算定においては,一般に,移動式クレー - 26 -ンを運転する移動式クレーン運転士免許を有する者は,「重機械(主として〔中略〕労働安全衛生法61条1項に規定する免許,資格もしくは技能講習の修了を必要とし,運転及び操作に熟練を要するもの)の運転及び操作について相当程度の技能を有し,主として重機械の運転又は操作して行う作業について主体的業務を行うもの」に当たるものとして,「運転手(特殊)」の職種に当たるものということができ,他方で,設備機械工とは,「機械設備工事について相当程度の技能を有し,冷凍機,送風機,ボイラー,ポンプ,エレベーター等の大型重量機器の据付け,調整又は撤去作業について主体的業務を行うもの」をいうものであることからすれば,移動式クレーンの操作員が設備機械工に当たるということはできない。そうすると,移動式クレーンの操作員が,設備機械工及び普通作業員として算定される据付工数に当たるものと解することには無理があるといわざるを得ない。 以上によれば,本件鑑定報告書上,移動式クレーンに係る操作員の費用が,上記据付工 作員が,設備機械工及び普通作業員として算定される据付工数に当たるものと解することには無理があるといわざるを得ない。 以上によれば,本件鑑定報告書上,移動式クレーンに係る操作員の費用が,上記据付工数として計上されていると認めることはできない。 c また,証拠(甲12〔37,38頁〕,13)によれば,工事費算定基準第13において,機械経費とは,機器等の据付け及び撤去工事に必要な工具,器具等の損料等をいい,据付労務費及び撤去労務費に機械経費率として2%を乗ずることにより算定することとされており,本件鑑定報告書中の機械設備直接工事費明細書においても,この方法に従い本件天井クレーンについて機械経費が算定されていることが認められる。しかし,移動式クレーンは,専門の運転士免許を有する者が運転しなければならないものであり(前記(イ)),一般的にみて「工具,器具等」に当たるものとは解することができないことに加え,その操作員について据付工数として計上されているとは解することができないこと(上記b)からすれば,移動式クレーン自体のリース費用 - 27 -についても,機器等の据付け及び撤去工事に必要な工具,器具等に含まれるものとして,通常の機械経費として算定されるべきものであるということはできない。 そうすると,本件鑑定報告書上,移動式クレーンに係る機械のリース費用が,上記機械経費として計上されていると認めることはできない。 (エ) そうすると,本件鑑定報告書においては,本件天井クレーンに係る撤去及び据付工事に要する移動式クレーンの費用について算定されておらず,本件鑑定報告書を踏まえた本件裁決の認定においても,移動式クレーンの費用が含まれていないものと認められ,これに相当する額が本件損失補償額として増額されるべきである。 上記移動式クレーン ておらず,本件鑑定報告書を踏まえた本件裁決の認定においても,移動式クレーンの費用が含まれていないものと認められ,これに相当する額が本件損失補償額として増額されるべきである。 上記移動式クレーンの費用は,証拠(甲12〔137頁〕,48)及び弁論の全趣旨によれば,18.6tの機械重量を有する本件天井クレーンのために使用するラフテレーンクレーン20t吊り(操作員付きで1日当たり4万5000円)を撤去工事期間2日,据付工事期間3日にわたり借り上げることを前提として,撤去費として9万円,据付費として13万5000円であると認めるのが相当であり,この認定を覆すに足りる証拠はない。 イ再築補償率(ア) 本件鑑定報告書においては,本件天井クレーンの再築補償率を算定するに当たり,その耐用年数について,前記⑵アのとおり,実態的耐用年数により算定することが妥当であるとした上で,その実態的耐用年数を20年と認定し,本件裁決も,同旨の認定をし,これを前提に再築補償率を20%と認定している。そして,原告も,本件天井クレーンの再築補償率について実態的耐用年数を用いて算定すること自体は争っていない。 - 28 -(イ)a これに対し,被告は,都実施細目を前提とする損失補償額の算定において,標準耐用年数を超える実態的耐用年数を認定するためには,特別な補修を行っていたことなどの特段の理由を要するものというべきであるとし,本件天井クレーンについて,耐用年数を延ばすための特別な補修をすることなく使用されていたことがうかがわれることからすれば,標準耐用年数を超える実態的耐用年数を認める特段の理由があるとは認められない旨主張する。 b しかし,そもそも,本件裁決が参照する本件鑑定報告書は,用対連算定要領にのっとって鑑定をしているものであること(前記⑵ア える実態的耐用年数を認める特段の理由があるとは認められない旨主張する。 b しかし,そもそも,本件裁決が参照する本件鑑定報告書は,用対連算定要領にのっとって鑑定をしているものであること(前記⑵ア)からすれば,被告の主張は,その前提において失当というべきである。 c もっとも,証拠(甲5,13,乙2)によれば,用対連算定要領も都実施細目も,再築費の算定に当たり,機械設備の現在価額と運用益損失額との合計額を算定する際の再築補償率を認定するための標準耐用年数について,所定の機械設備等標準耐用年数表を適用して求めるものとし,ただし,同表によることが適当でないと認められる場合は,実態的耐用年数を定めることができるものとすると定めている点において共通していると認められることを踏まえ,被告の上記主張について,用対連算定要領における耐用年数の認定においても妥当するものであるかどうかを更に検討する。 ここで,用対連算定要領にいう「機械設備等標準耐用年数表によることが適当でないと認められる場合」については,その規定の文言からすれば,特別な補修をしていた場合のみに限られると解する必要はない。そして,当該機械設備が機械設備の種別ごとに定められた機械設備等標準耐用年数表を適用するのに通常想定される規模を超えるものであったような場合には,たとえ標準耐用年数を経過していたとしても,経済的合理性の観点からみて通常の想定以上に機械本体の維持 - 29 -管理に努められるものと考えられ,これにより当該機械設備の年数の経過に伴う通常の物理的老朽化,機能的及び経済的陳腐化の程度も軽減されていることなどから,なお実態的耐用年数を経過していないものとして,運用益損失額を補償するのが相当な場合もあり得ると解される(この点については,原告代表者が,本件天井クレーンに 腐化の程度も軽減されていることなどから,なお実態的耐用年数を経過していないものとして,運用益損失額を補償するのが相当な場合もあり得ると解される(この点については,原告代表者が,本件天井クレーンについて,機械設備を丸ごと取り替える場合には,建屋の解体を伴う大掛かりな工事を要するものであることもあって,そのようなことはほとんどなく,機械設備の機能的な陳腐化に対しては部品の交換などで適正に対処していくものである旨,上記説示に沿う供述をしている〔原告代表者1ないし4頁〕。)。そして,前記のとおり,本件鑑定報告書は,本件天井クレーンについて,その質量が10tを超えており,標準的な機械とはいい難いことから,標準耐用年数によることが適当でないと認められるとしているところ,その認定は,上記のような場合を考慮したことによるものとして,合理的な判断であるということができる。 d したがって,いずれにしても,被告の上記主張を採用することはできない。 (ウ)a 次に,用対連算定要領においては,所定の機械設備等標準耐用年数表によることが適当でないと認められる場合は,専門メーカー等からの意見聴取等,その他適切な方法により,実態的耐用年数を定めることができるものとすると定められている(甲13)ところ,本件鑑定報告書においては,本件天井クレーンの本体価格の見積書の提出を求めた3社の専門メーカーのうち,その価格を採用したP3株式会社(以下「P3」という。)を除く2社(株式会社P4及びP5株式会社。以下「本件2社」という。)が,いずれも,本件天井クレーンの実態的耐用年数がおおむね20年程度である旨の意見を述べており(甲 - 30 -12〔139,141頁〕),本件鑑定会社は,これらの専門業者からの聴取した意見等を踏まえ,本件天井クレーンの実態的耐用年数 年数がおおむね20年程度である旨の意見を述べており(甲 - 30 -12〔139,141頁〕),本件鑑定会社は,これらの専門業者からの聴取した意見等を踏まえ,本件天井クレーンの実態的耐用年数を20年と認定したものと認められることからすれば,その認定には,合理性があるものと推認することができる。 b これに対し,原告は,本件天井クレーンが現在も支障なく稼働している以上,その実態を踏まえた実態的耐用年数を認めた上で,それを前提とした運用益損失額が補償されるべきであり,具体的には,本件天井クレーンの使用実績を踏まえ,20年に2年を加えるとともに,本件省令3条1項2号イの規定に鑑み,上記20年の100分の20に相当する年数である4年を加えることにより,本件天井クレーンの実態的耐用年数を26年と認めるべきである旨主張する。 そして,この点に関し,証拠(甲26から31まで,46,62,原告代表者〔1,20ないし31頁〕)によれば,① 原告においては,原告代表者が,平成4年6月に社団法人P6(以下「本件協会」という。)における天井クレーン定期自主検査者安全教育の過程を修了したこと,② 原告は,本件天井クレーンについて,原告代表者の自主検査による月例点検及び本件天井クレーンのメーカーであるP3による年次点検を行うとともに,2年ごとに労働基準監督署から委託を受けた本件協会による性能検査を受けていたものであること,③ 本件天井クレーンは,特記すべき異常がない旨の本件協会による平成23年1月20日付けの性能検査の結果を受けて,三鷹労働基準監督署から,その検査証を平成25年1月まで更新されたこと,④ 原告は,本件天井クレーンを本件工場等の明渡しをした平成24年12月に廃止するまで稼働していたこと,⑤ P3は,本件天井クレーンについて,一般のク その検査証を平成25年1月まで更新されたこと,④ 原告は,本件天井クレーンを本件工場等の明渡しをした平成24年12月に廃止するまで稼働していたこと,⑤ P3は,本件天井クレーンについて,一般のクラブ式天井クレーンとは異なり堅牢堅固に製作されており,通常の維持管理をし続けたならば30年,40年は使用可能と思 - 31 -われる旨の見解を述べていることが認められる。 しかし,機械設備の実態的耐用年数は,適正な損失補償額を算定するに当たり,当該機械設備の一般的な物理的老朽化,機能的及び経済的陳腐化を勘案して認定されるべきものである以上,対象となる機械設備それ自体について通常必要な維持管理がされ,労働基準監督署による検査証の更新を受けて稼働し続けていることのみをもって,実態的耐用年数をいまだ有するものと直ちに認めることができるものではないというべきである(本件2社も,原告において使用されていた本件天井クレーンそれ自体の実態的耐用年数ではなく,本件天井クレーンと同種の一般的なクラブ型天井走行クレーンについて,適正な点検,部品交換がされていた場合の実態的耐用年数について意見を述べたものである。)。また,上記⑤のP3の意見は,その使用可能とする年数が30年から40年という大きな幅を持つものであることからすれば,単に自社製の本件天井クレーンが長期間の使用に耐え得るものであるという抽象的な意見を示すものにとどまるといわざるを得ず,本件2社との意見の相違が大きいことに照らしても,これに依拠して本件天井クレーンの実態的耐用年数を認定するのは相当でないというべきである。 以上によれば,前記認定した事実を踏まえても,本件天井クレーンの実態的耐用年数を20年と認定したことは,客観的に見て適正であるというべきであり,原告の上記主張を採用することはで いうべきである。 以上によれば,前記認定した事実を踏まえても,本件天井クレーンの実態的耐用年数を20年と認定したことは,客観的に見て適正であるというべきであり,原告の上記主張を採用することはできない。 (エ) 以上のとおり,本件天井クレーンの実態的耐用年数を20年と認定した本件裁決の判断に誤りがあるとは認められず,そうである以上,この耐用年数を前提として,再築補償率に係る算定式により本件天井クレーンの再築補償率を20%とした本件裁決の判断に誤りがあるということもできない。 - 32 -ウ小括以上検討したところによれば,本件天井クレーンの正当な損失補償額は,次の(ア)(撤去費)及び(イ)(据付費)の各費用を加えた額から(ウ)(スクラップ価格)の費用額を減ずることにより,971万2707円と算定されるから,同額から本件裁決における本件損失補償額(953万6168円)を控除することにより算定される17万6539円を増額するのが相当である。 (ア) 撤去費 163万2647円撤去工事に係る移動式クレーンの費用として9万円増加し,これに伴い,共通仮設費(直接工事費に5.87%を乗じた額〔ただし,100円未満切捨て〕),現場管理費(純工事費に25.29%を乗じた額〔ただし,100円未満切捨て〕)及び一般管理費(工事原価に13.75%を乗じた額〔ただし,100円未満切捨て〕。以下,併せて「共通仮設費等」という。なお,上記各率は,本件鑑定書において採用されている率に依拠したものであり〔甲12・27,28頁〕,工事費算定基準第16及び第18並びに別表2及び3の各表による率とは必ずしも一致しないものもある。以下同じ。)も増加することにより,本件天井クレーンの撤去費は,別紙3記載「要求額」欄中の「撤去 〕,工事費算定基準第16及び第18並びに別表2及び3の各表による率とは必ずしも一致しないものもある。以下同じ。)も増加することにより,本件天井クレーンの撤去費は,別紙3記載「要求額」欄中の「撤去費」の区分における「合計額」欄のとおり,163万2647円と認めるのが相当である。 (イ) 据付費 825万7318円据付工事に係る移動式クレーンの費用として13万5000円増加し,これに伴い,共通仮設費等も増加することにより,本件天井クレーンの据付けに係る工事費は,別紙3記載「要求額」欄中の「新設費」の区分における「再築工事費」欄のとおり,4128万6594円となり,これに再築補償率20%を乗ずることにより,据付費は,825万7318円(ただし,小数点以下切捨て)と認めるのが相当である。 - 33 -(ウ) スクラップ価格 17万7258円⑷ 本件プレスア移動式クレーン作業費用(ア) 原告は,本件鑑定報告書中の本件プレスの撤去費及び据付費の欄には移動式クレーンの作業費用についての記載がなく,本件裁決においても同費用が漏れている可能性が高い旨指摘する。 その前提として,原告は,本件プレスの撤去及び据付工事には移動式クレーンが必要である旨主張するところ,被告及び参加行政庁も,同工事において移動式クレーンを要すること自体については特に争っていないこと(証拠〔甲20,21〕によれば,本件プレスの撤去工事において移動式クレーンが使用されていることが認められる。)に鑑み,以下では,同工事においては移動式クレーンが使用されるものであることを前提に検討する。 (イ) 参加行政庁は,本件プレスの工事に要する移動式クレーンの作業費用について,本件天井クレーンの工事に要する移動式クレー 事においては移動式クレーンが使用されるものであることを前提に検討する。 (イ) 参加行政庁は,本件プレスの工事に要する移動式クレーンの作業費用について,本件天井クレーンの工事に要する移動式クレーンの作業費用と同様に,本件鑑定報告書中の据付工数及び直接経費において計上している旨主張する。 しかし,同費用について前記⑶ア(ウ)で認定,説示した内容は,本件プレスの工事に要する移動式クレーンの作業費用についても当てはまるものということができる。すなわち,本件鑑定報告書においては,移動式クレーンの操作員の費用などの個別の費用を積算する方法により算定されているわけではなく,加えて,同操作員が,設備機械工及び普通作業員として算定される据付工数に当たるものと解することができないことからすれば,同操作員の費用が,上記据付工数として計上されていると認めることはできない(前記⑶ア(ウ)b)。また,本件鑑定報告書上,移動式クレーンに係る機械のリース費用が,工事費算定基準第13の機 - 34 -械経費として計上されていると認めることもできない(同c)。 したがって,参加行政庁の上記主張を採用することはできない。 (ウ) そうすると,本件鑑定報告書においては,本件プレスに係る撤去及び据付工事に要する移動式クレーンの費用について算定されておらず,本件鑑定報告書を踏まえた本件裁決の認定においても,移動式クレーンの費用が含まれていないものと認められ,これに相当する額が本件損失補償額として増額されるべきである。 上記移動式クレーンの費用は,証拠(甲12〔129頁〕,48)及び弁論の全趣旨によれば,170.0tの機械重量を有する本件プレスのために使用するラフテレーンクレーン50t吊り(操作員付きで1日当たり8万9000円)を撤去工事期間10日,据付工事期間 ,48)及び弁論の全趣旨によれば,170.0tの機械重量を有する本件プレスのために使用するラフテレーンクレーン50t吊り(操作員付きで1日当たり8万9000円)を撤去工事期間10日,据付工事期間25日にわたり借り上げることを前提として,撤去費として89万円,据付費として222万5000円であると認めるのが相当であり,この認定を覆すに足りる証拠はない。 イ再築補償率本件鑑定報告書においては,本件プレスの再築補償率を算定するに当たり,その耐用年数について,前記⑵アのとおり,実態的耐用年数により算定することが妥当であるとした上で,その実態的耐用年数を25年と認定し,本件裁決も,同旨の認定をし,これを前提に再築補償率を51.5%と認定している。そして,原告も,本件裁決の認定が正当であるとして,これを争っていない。 これに対し,被告は,本件プレスの耐用年数についても,本件天井クレーンと同様に,標準耐用年数を超える実態的耐用年数を認める特段の理由があるとは認められない旨主張するが,前記⑶イ(イ)で説示したところに照らすと,本件鑑定報告書が,本件プレスについて,その重量が10tを超えており,標準的な機械とはいい難いことから,標準耐用年数によること - 35 -が適当でないと認めた判断は合理的であるということができる。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 したがって,本件プレスの耐用年数は,本件裁決の認定のとおり,25年とするのが相当であり,そうである以上,この耐用年数を再築補償率に係る算定式に当てはめることにより,本件プレスの再築補償率を51.5%とした本件裁決の判断は,相当であるというべきである。 ウ本件冷却装置工事等の補償(ア) 証拠(乙19の1,21の1)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,起業者とし レスの再築補償率を51.5%とした本件裁決の判断は,相当であるというべきである。 ウ本件冷却装置工事等の補償(ア) 証拠(乙19の1,21の1)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,起業者として,本件プレスの新設工事費を算定するに当たり,本件プレスの機械本体の工事費について,被告(東京都北多摩南部建設事務所)宛てのP2作成の見積書(以下「被告見積書」という。)において,本件プレスの機械本体が1億0400万円とされていたことを踏まえ,同額の5%に相当する金額を低減することにより9880万円と算定するとともに,機械本体とは別に,本件冷却装置工事等の工事費として,冷却装置工事を76万8390円,給排気設備工事を40万2185円,鉄骨製階段・小屋工事を60万0078円と算定していることが認められる。 (イ) この点について,参加行政庁は,本件鑑定会社が,本件プレスの再築費を算定するに当たり,P2から徴した本件見積書を参考にしたものであり,本件冷却装置工事等に係る費用は,本件見積書における本件プレス購入費(1億0400万円)に含まれている旨主張し,被告も,本件鑑定報告書を作成した鑑定人が,本件工場等の調査をした上で本件鑑定報告書を作成している以上,本件冷却装置工事等についても,その存否を確認した上で,何らかの判断に基づき,本件プレスに係る損失補償額等に含まれるなどの判断をしたと考えることが合理的である旨主張する。 - 36 -しかし,証拠(甲12〔127頁〕,乙19の1)によれば,被告見積書における見積りの内容は,本件鑑定報告書中の本件見積書における見積りの内容と全く同一の内容であることが認められ,このことを前提とすると,本件見積書における本件プレスの機械本体の工事費に本件冷却装置工事等が含まれると解することは,上記(ア)の 件見積書における見積りの内容と全く同一の内容であることが認められ,このことを前提とすると,本件見積書における本件プレスの機械本体の工事費に本件冷却装置工事等が含まれると解することは,上記(ア)のとおり,被告が,被告見積書を基礎として,本件プレスの機械本体の工事費とは別に本件冷却装置工事等の費用を算定していることと矛盾することになることからすれば,上記のような解釈をするのは相当でないというべきである。 したがって,参加行政庁及び被告の上記主張を採用することはできない。 そうすると,本件鑑定会社は,本件鑑定報告書において,本件冷却装置工事等の費用を本件プレスの機械本体の工事費とは別に計上すべきであったにもかかわらず,これを計上しなかったものと認めるのが相当である。 (ウ) 以上によれば,本件鑑定報告書を踏まえた本件裁決の認定においても,本件冷却装置工事等の費用が含まれていないものと認められ,これに相当する額が損失補償額として増額されるべきである。 本件冷却装置工事等の費用は,証拠(乙21の1)及び弁論の全趣旨によれば,冷却装置工事につき76万8390円,給排気設備工事につき40万2185円,鉄骨製階段・小屋工事につき60万0078円の合計177万0653円であると認めるのが相当であり,この認定を覆すに足りる証拠はない。 エ小括以上検討したところによれば,本件プレスの正当な損失補償額は,次の(ア)(撤去費)及び(イ)(据付費)の各費用を加えた額から(ウ)(中古品売却価格)の費用額を減ずることにより,1億1818万6799円と算定されるから,同額から本件裁決における本件損失補償額(1億1371万1 - 37 -684円)を控除することにより算定される447万5115円を増額するのが相当である。 (ア) 撤去費 から,同額から本件裁決における本件損失補償額(1億1371万1 - 37 -684円)を控除することにより算定される447万5115円を増額するのが相当である。 (ア) 撤去費 2222万0200円撤去工事に係る移動式クレーンの費用として89万円増加し,これに伴い,共通仮設費等も増加することにより,本件プレスの撤去費は,別紙4記載「要求額」欄中の「撤去費」の区分における「合計額」欄のとおり,2222万0200円と認めるのが相当である。 (イ) 据付費 1億1801万4599円据付工事に係る移動式クレーンの費用として222万5000円増加するとともに,本件冷却装置工事等の費用として177万0653円増加し,これらに伴い,共通仮設費等も増加することにより,本件プレスの据付けに係る工事費は,別紙4記載「要求額」欄中の「新設費」の区分における「再築工事費」欄のとおり,2億2915万4563円となり,これに再築補償率51.5%を乗ずることにより,据付費は,1億1801万4599円(ただし,小数点以下切捨て)と認めるのが相当である。 (ウ) 中古品売却価格 2204万8000円⑸ まとめ以上によれば,工作物の損失補償額については,本件裁決における本件損失補償額を465万1654円増額するのが相当である。 2 争点⑵(営業休止の損失補償額)について⑴ 前提原告は,本件裁決における営業休止の損失補償額のうち得意先喪失補償額の算定に当たり,売上減少率が45%とされている点について,その前提とされた営業休止期間及び原告の業種の認定に誤りがあり,売上減少率は80%とすべきであった旨主張するので,以下では,上記算定に当たり,本件各土 - 38 -地の収用に いる点について,その前提とされた営業休止期間及び原告の業種の認定に誤りがあり,売上減少率は80%とすべきであった旨主張するので,以下では,上記算定に当たり,本件各土 - 38 -地の収用に伴う営業休止期間及び原告の業種をどのように認定すべきであるのかを検討する。 ここで,本件政令は,土地等の収用又は使用に伴い,営業の全部又は一部を通常一時休止する必要があるものと認められるときは,休業することにより,又は営業を行う場所を変更することにより,一時的に顧客を喪失することによって通常生ずる損失額(休業を通常必要とする期間中の収益の減少額を除く。)を補償するものとすると定めている(21条1項3号)。 ⑵ 相当な営業休止期間ア証拠(甲1,12〔7,10ないし12,188,230,231頁〕)によれば,営業休止期間に関し,① 本件鑑定会社は,本件鑑定報告書において,営業休止の損失補償額については,構外再築工法における営業休止に伴う損失を算定することとし,営業休止期間について,工事の移転工程表(以下「本件工程表」という。)を基に営業休止工程表を作成し,閉店準備,動産及び機械設備等の移転期間(整理,梱包,運搬,荷解,配置)並びに開店準備を考慮した上で,休止期間を30日と認定し,その結果,本件売上減少率表のうち「構外移転・短期休業」を適用することとしたこと,② 本件工程表は,閉店準備に3日,動産の整理及び梱包に2日,動産の移転(運搬)に20日,動産の整理及び配置に2日,開店準備に3日を要するとして,営業休止期間を合計30日とし,動産の移転(運搬)期間においては,これと並行して,都民の健康と安全を確保する環境に関する条例に基づく工場設置許可申請(10日),機械設備を除く工作物の移転(3日),機械設備(トラックスケール,ユンボ等)の移設(5 期間においては,これと並行して,都民の健康と安全を確保する環境に関する条例に基づく工場設置許可申請(10日),機械設備を除く工作物の移転(3日),機械設備(トラックスケール,ユンボ等)の移設(5日)並びに廃棄物処理法に基づく産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者の変更の届出(1日)をすることとしていること,③ 本件裁決においては,本件鑑定報告書の鑑定の内容を踏まえ,本件各土地の収用に伴う機械設備について,移転工法を判断し,移転に伴う営業の一時休止等を考慮 - 39 -して,休止期間が1か月と認定されたことが認められる。 イこれに対し,原告は,本件各土地の収用に伴う営業休止期間は,少なくとも3か月程度必要であり,長期休業を適用すべきである旨主張するので,以下では,その根拠として指摘する事情を踏まえて検討する。 (ア) まず,原告は,本件工場の機械設備の撤去,移転先における機械設備の設置,撤去後の片付け等の必要な作業の量に鑑みれば,原告が1か月の休止期間により移転先において営業を再開することは著しく困難であるし,動産の移転及び運搬には実際にも数か月を要したものであることからしても,動産の整理及び梱包が2日,動産の移転(運搬)が20日ということはあり得ない旨を指摘し,原告代表者も,この指摘に沿う供述をする(甲46,原告代表者〔13頁〕)。 しかし,前記1⑵アのとおり,本件鑑定会社が,本件工場等の現場調査をした上で本件鑑定報告書を作成していることからすれば,本件各土地の収用に伴い通常休業を要する期間としては,本件工程表記載の移転に係る工程のとおり認めるのが相当であり,これに対し,原告代表者の上記供述は,これを裏付ける客観的な事実又は証拠がない以上,上記の認定を覆すには足りないものというべきである。この点について,原告代 に係る工程のとおり認めるのが相当であり,これに対し,原告代表者の上記供述は,これを裏付ける客観的な事実又は証拠がない以上,上記の認定を覆すには足りないものというべきである。この点について,原告代表者は,原告が,本件各土地の明渡しに伴い,本件工場等の移転先が決まっていなかったことから,動産類を一旦本件倉庫に移転し,その際動産の移転に数か月を要した旨供述している(甲46,原告代表者〔13頁〕)が,本件裁決において営業休止補償の認定の基礎となる通常妥当と認められる移転方法として採用された構外再築工法は,残地以外の土地に従前の建物と同種同等の建物を建築し,移転する工法であって,上記のとおり原告が動産類を既存の建物である本件倉庫に保管したことは,構外再築工法による移転方法とは異なるものである以上,仮に原告が本件工場等の動産を本件倉庫に移転するのに数か月を要したものであっ - 40 -たとしても,その事実は,前記の認定を何ら左右しない。 (イ) また,原告は,廃棄物処理法に基づく産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者の変更の届出に要する期間は,施設の設置場所が異なる以上,事前計画書を提出し,現場調査を受けた上で,更新申請をする必要があり,これらに要する期間が1日ということはあり得ない旨主張する。 しかし,本件各土地の収用に伴う営業休止の損失補償額の算定においては,移転先においても従前と同様の事業を行うことが前提となるため,原告についても,従前と同様の事業内容である産業廃棄物収集運搬業及び産業廃棄物処分業を行うことが前提となるところ,廃棄物処理法は,産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者が住所を変更したときは,その旨を都道府県知事に届け出なければならないと定めるのみであり(14条の2第3項,14条の5第3項,7条の2第3項 物処理法は,産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者が住所を変更したときは,その旨を都道府県知事に届け出なければならないと定めるのみであり(14条の2第3項,14条の5第3項,7条の2第3項),その業を新たに行う場合(廃棄物処理法14条1項,14条の4第1項参照)や事業の範囲を変更する場合(廃棄物処理法14条の2第1項,14条の5第1項参照)のように,都道府県知事の許可を得る手続を要するとされているわけではない。そして,本件工程表において,上記の産業廃棄物処理法に基づく産業廃棄物収集運搬業者及び産業廃棄物処分業者の変更の届出に1日を要するとしているのは,その手続の内容に照らし,妥当であるということができ,これを前提とした本件鑑定報告書及び本件裁決の認定に誤りがあるということはできない。 この点について,原告代表者は,廃棄物処理法14条の2第3項の規定による変更の届出について,行政書士によれば,施設の設置場所が異なる以上,東京都環境局産業廃棄物対策課からは新しい施設での事前計画書の提出が求められるとともに,現地調査が当然に行われ,変更届出に係る現地調査及び書類作成には約30から40日を要するとのことで - 41 -あり,また,更新許可申請に係る事前計画書は,許可期限が切れる4か月前から提出が求められている旨供述する(甲46,原告代表者〔12,13頁〕)。 しかし,仮に,廃棄物処理法14条の2第3項の住所の変更届出の手続について,廃棄物処理法14条2項の規定による産業廃棄物処理業の更新許可申請と同様の手続を要するとの実務上の運用がされているとしても,証拠(甲49,乙31)及び弁論の全趣旨によれば,事前計画書は,施設の設置に先立ち,廃棄物の処理を行う建築物の設計段階から作成し,提出すべき性質のものであり,また,現地調査は がされているとしても,証拠(甲49,乙31)及び弁論の全趣旨によれば,事前計画書は,施設の設置に先立ち,廃棄物の処理を行う建築物の設計段階から作成し,提出すべき性質のものであり,また,現地調査は,当該施設が完成した後申請を行うまでの間にされるものであり,これらの手続は,いずれも旧施設の稼働中に新施設を建設する際に必要なものであることからすれば,損失補償の対象となる営業休止期間とは別の期間にされるべきものであるということができ,そうである以上,営業休止期間の認定とは直接関係がないものということができる。 (ウ) したがって,本件各土地の収用に伴う営業休止期間が3か月必要であり,長期休業を適用すべきである旨の原告の上記主張は,その根拠として指摘する事情を踏まえても,これを採用することができない。 ウ以上検討したところによれば,本件各土地の収用に伴う営業休止期間は,1か月と認めるのが相当であり,短期休業を適用すべきである。 ⑶ 原告の業種ア本件裁決においては,本件鑑定報告書の認定,判断(甲12〔162ないし174頁〕参照)を踏まえ,原告が,主として,有価材を引き取り,特定の事業者へ販売する事業を行っているものと認められること,本件工場内の機械設備等からすれば,その性質,形状を大きく変更する作業を行っているとは認められないこと,法人事業概況説明書の事業内容の項目において「製鉄,非鉄金属原料の卸売」と記載していること等を根拠として, - 42 -原告の業種が卸売業であるとの認定がされている(甲1〔35頁〕)。 イこれに対し,原告は,原告の業務は,卸売業とは異なり,廃材の処理というサービスの提供という面が強く,処理施設の所在地が営業に大きく影響することからすれば,サービス業であるというべきであって,「その他のサービス業」で ,原告の業務は,卸売業とは異なり,廃材の処理というサービスの提供という面が強く,処理施設の所在地が営業に大きく影響することからすれば,サービス業であるというべきであって,「その他のサービス業」であることを前提とする売上減少率を用いて得意先喪失補償額を算出すべきである旨主張する。 しかし,証拠(甲12,乙11の1及び2,乙15〔5枚目〕)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成20年12月5日に被告に対して提出した営業申告書において,業種欄に「製鉄,非鉄金属原料の卸売」と記載していること,原告の営業形態は,顧客から鉄くず等を引き取り,これを加工した上,製鉄及び非鉄金属原料として出荷し,取扱業者を対象に販売するというものであること,原告が,平成19年3月1日から平成20年2月29日まで(第20期)において,棚卸資産として,鉄,銅,アルミ等の在庫を有していることが認められ,これらの事実によれば,原告の営業内容を業種に当てはめると,製鉄,非鉄金属原料の棚卸業であると認めるのが相当である。 この点について,原告代表者は,原告は,現在,代金の支払を受けて産業廃棄物を処分したことの証明書を発行することを主な業務としており,小売業とは異なる旨供述する(甲46,原告代表者〔13,14頁〕)。 しかし,本件全証拠によっても,原告の売上げの内訳が,その業務内容ごとに明らかにされているわけでもなく,原告代表者の上記供述は,客観的な事実又は証拠の裏付けを欠くものといわざるを得ず,上記の認定を覆すに足りるものではない。 ウしたがって,原告の業種を製鉄及び非鉄金属原料の卸売業であるとした本件裁決の認定は,相当である。 ⑷ まとめ - 43 -以上によれば,営業休止期間を1か月(短期休業)とし,原告の業種を製鉄及び非鉄金属原料の棚卸業であるとした上 料の卸売業であるとした本件裁決の認定は,相当である。 ⑷ まとめ - 43 -以上によれば,営業休止期間を1か月(短期休業)とし,原告の業種を製鉄及び非鉄金属原料の棚卸業であるとした上で,これらを前提として,本件売上減少率表により,売上減少率を45%として営業休止の損失補償額を算定した本件裁決の認定に誤りがあるとは認められない。 3 争点⑶(借家人補償の要否)について⑴ 原告は,原告代表者の母から本件住宅の使用貸借を受け,本件住宅を原告の従業員の社員寮,トイレ,休憩場所及び洗濯場所並びに原告の事業のための金庫,道具及び書類の保管場所として使用していたものであり,本件住宅が本件工場等と機能的に一体であるということができるのであるから,本件住宅を賃借するための費用が通常受ける損失として補償される必要がある旨主張する。 ⑵ これに対し,まず,被告及び参加行政庁は,本件政令25条を根拠として,原告が本件住宅を無償で借りており,賃貸借契約の存在が確認できない以上,借家人補償をすることは認められない旨主張する。 この点について,土地収用法は,建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し,又は使用することによって土地所有者又は関係人が通常受ける損失は,補償しなければならず(88条),同条の規定の適用に関し必要な事項の細目は,政令で定めるとし(88条の2),同条の規定を受けた本件政令25条は,土地等の収用又は使用に係る土地にある建物の全部又は一部を現に賃借する者がいる場合において,賃借の継続が通常不能となるものと認められるときは,新たに従前の賃借の目的物に照応する物件を賃借するための契約を締結するのに通常要する費用及び同物件における居住又は営業を安定させるために通常必要と認められる期間中の当該物件の通常の賃借料のうち従前の賃借 従前の賃借の目的物に照応する物件を賃借するための契約を締結するのに通常要する費用及び同物件における居住又は営業を安定させるために通常必要と認められる期間中の当該物件の通常の賃借料のうち従前の賃借の目的物の賃借料の額を超える部分の額を補償するものとする旨定めている。 しかし,建物の使用貸借を無償で受けていた者であっても,土地の収用に - 44 -伴いその使用貸借を継続することができなくなった場合,建物の使用借権を市場において取得することは一般に困難であることからすれば,土地収用法88条の「通常受ける損失」として,土地の収用に伴い新たに従前使用していた建物に照応する建物を賃借するために要する費用等を補償すべき場合があるものと解される。また,本件政令は,典型的な損失について細目を定めたものにすぎず,土地等の収用又は使用に伴う損失の補償について必ずしも網羅的に定めたものではないと解されることからすれば,本件政令に定められた損失以外の損失についても,同条の規定により補償すべき場合もあるということができる。そうすると,原告が本件住宅について無償で使用貸借を受けていたにすぎないからといって,そのことから直ちに本件住宅に係る損失の補償を要しないものと解することはできない。 したがって,被告及び参加行政庁の上記主張を採用することはできない。 ⑶アそこで,原告の本件住宅の使用状況等をみた上で,原告の主張する損失が,本件各土地の収用に伴う通常受ける損失に当たるか否かを検討する必要がある。 ここで,「通常受ける損失」とは,通常の事情の下において客観的に受けるべきものと認められる損失をいい,特別の事情に基づく損失は含まれないものと解される。そして,ある損失が通常受ける損失であるのか特別の事情に基づく損失であるのかは,公平負担の原則に照らして公共 受けるべきものと認められる損失をいい,特別の事情に基づく損失は含まれないものと解される。そして,ある損失が通常受ける損失であるのか特別の事情に基づく損失であるのかは,公平負担の原則に照らして公共で負担すべき性質の損失であるか否かの観点から判断すべきであると解するのが相当である。 なお,原告は,損失補償は,原告が本件裁決の時点において物件を現に使用している状況に基づいてされるものであり,仮定に基づいた算定をするのは相当ではないという趣旨の主張もしているが,この主張が,上記のような通常受ける損失であるのか特別の事情に基づく損失であるのかを考慮する必要がないという趣旨のものであるならば,上記説示したところに - 45 -照らし,これを採用することはできない。 イ証拠(甲18,19,46,54,乙11の3,乙16,原告代表者〔4ないし12頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,原告の本件住宅の使用状況等について,次の事実が認められる。 (ア) 本件住宅は,原告代表者の母が所有する木造2階建の建物で,1階及び2階に各3室の独立した居室(一室の占有面積24.84㎡。以下,1階及び2階の各居室を南側の居室から順に①から③までの番号を付して「1階居室①」,「2階居室①」などという。)を有する共同住宅(延べ床面積149.04㎡)である。 なお,原告代表者及びその兄弟であり原告の取締役である3名は,いずれも,住民票上の住所を本件建物としていた。 (イ) 1階居室①の6帖の和室の一部及び1階居室②の4.5帖の和室の一部には,原告の業務に使用するパソコンや書類が置かれ,1階居室③の4.5帖の和室には,原告の業務のための現金,重要書類等が保管されている金庫が置かれていた。また,2階居室①は倉庫(物置),2階居室③は洗濯置場として使用されていた。なお 書類が置かれ,1階居室③の4.5帖の和室には,原告の業務のための現金,重要書類等が保管されている金庫が置かれていた。また,2階居室①は倉庫(物置),2階居室③は洗濯置場として使用されていた。なお,2階居室②は,原告とは無関係の賃借人が賃借し,居住している。 (ウ) 原告は,小口の顧客は本件事務所の1階に,大口の顧客は本件事務所の2階に通した上,本件住宅から書類や現金を持参するなどして,決済をしていた。また,原告は,業務上の打合せをする際に,本件事務所には来客があることから,本件住宅で行うことがあった。 (エ) 本件工場等にはトイレがなく,原告代表者や原告の従業員は,本件工場等での勤務中,1階居室③又は2階居室③のトイレを使用していた。 ウ(ア) 上記の事実を踏まえて検討すると,1階居室①から③までの一部には,原告の業務に使用するパソコンや書類が置かれていたり,その業務のための現金,重要書類等が保管されている金庫が置かれていたりし, - 46 -また,原告代表者や原告の従業員は,本件工場等での勤務中,1階居室③又は2階居室③のトイレを使用していたものであるから,本件住宅に原告の業務のために使用されていた部分があったことは認められる。 (イ) しかし,まず,原告が,原告代表者の母から本件住宅の使用貸借を受けていたことを裏付ける客観的な証拠はなく,本件全証拠によっても,契約日のほか,契約期間や契約の対象となる部分などの契約内容が明らかにされているということができない上,上記認定の事実のとおり,本件住宅は,独立した6室の居室から成る共同住宅であり,原告代表者及びその兄弟がいずれも住民票上の住所を本件住宅としており,本件住宅の居室の写真(甲18)を見ても,少なくとも1階居室①から③までは,通常の自宅と同様に使用されている様子もうか 宅であり,原告代表者及びその兄弟がいずれも住民票上の住所を本件住宅としており,本件住宅の居室の写真(甲18)を見ても,少なくとも1階居室①から③までは,通常の自宅と同様に使用されている様子もうかがわれることからすれば,そもそも原告が本件住宅を使用貸借していたと認めること自体に疑問がある(原告代表者やその兄弟が,個人として,原告母から本件住宅の使用貸借を受けた上で,本件住宅を原告の事業のためにも事実上使用していたという可能性又はそのような評価,解釈をする余地が十分にあると解される。)。 また,仮に,本件住宅に原告の事業のために使用されている部分があることをもって,原告が本件住宅を使用貸借していたと評価するとしても,上記認定の事実のとおり,原告は,本件住宅のうちの一部分を使用しているにすぎない。加えて,本件工場は1階床面積258.72㎡を有する建物,本件事務所は約34.78㎡の延べ床面積を有する2階建ての建物,本件倉庫は延べ床面積193.59㎡を有する建物であること(甲12,乙17の1・2)からすれば,本件工場等は,通常の使用によれば,原告の業務のために使用するパソコンや金庫等を置いたり,トイレを設置したりするのに十分な場所を有するものであったということができる(証拠〔甲53〕からうかがわれる本件工場等の実際の使用 - 47 -状況からしても,本件工場等は,上記のような十分な場所を有するものであったと認められる。)。 そうすると,原告が,本件工場等に加えて本件住宅の一部をその事業のために使用していたのは,主として,原告代表者の母が本件工場等に隣接する場所に本件住宅を所有し,これを無償で借り受けることが可能であったという事情があったからにすぎないといわざるを得ない。 以上によれば,原告が,本件各土地の収用に伴い本件工場等を明 件工場等に隣接する場所に本件住宅を所有し,これを無償で借り受けることが可能であったという事情があったからにすぎないといわざるを得ない。 以上によれば,原告が,本件各土地の収用に伴い本件工場等を明け渡すことにより,本件住宅を従前と同様の目的により使用することができなくなるとしても,これにより本件住宅に替わる物件を賃借するための費用相当額は,公平負担の原則に照らして公共で負担すべき性質の損失であるか否かの観点からすれば,特別の事情に基づく損失というべきであって,これを通常受ける損失として補償すべきであるとは認めることができない。 エなお,原告は,被告が,従前,本件各土地の収用に伴い本件住宅を使用することができなくなることが通常受ける損失に当たることを認めていた旨主張し,この点について,証拠(甲14から18まで,46,50から53まで,原告代表者〔11,12頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,本件事業による本件各土地の明渡しに伴う損失補償額の算定に当たり,平成19年8月に会社に委託して本件工場等のほか本件住宅の調査を行い,その後,原告に対し,本件住宅についても損失補償を行うことを前提とした連絡をしていたことが認められる。 しかし,土地収用法に基づく収用による適正な損失補償額が,その手続の前の任意の交渉経過により左右されることはないのであり,原告の上記主張によっても,前述のとおり,本件住宅に替わる物件を賃借するための費用相当額が,公平負担の原則に照らして公共で負担すべき性質の損失であるか否かの観点からすれば,特別の事情に基づく損失というべきである - 48 -旨の前記の認定は左右されないというべきである。 4 総括以上検討したところによれば,本件裁決における本件損失補償額は,適正な本件損失補償額よりも465万1654 べきである - 48 -旨の前記の認定は左右されないというべきである。 4 総括以上検討したところによれば,本件裁決における本件損失補償額は,適正な本件損失補償額よりも465万1654円少ない額であることから,原告の請求については,本件裁決における本件損失補償額を3億4572万0754円から3億5037万2408円と変更するとともに,被告に対し,465万1654円の支払を求める限度で理由がある。 また,原告は,正当な本件損失補償額と本件裁決に定められていた補償額との差額に対する本件裁決における権利取得の日(平成24年2月6日)から支払済みまでの遅延損害金を請求しているが,本件において被告が原告に対して追加して支払うべき損失補償額465万1654円は,明渡裁決に係る補償金であり,被告が,明渡裁決で定められた明渡しの期限までに,同補償金の払渡しをすべきであったものであること(土地収用法97条1項)からすれば,原告が被告に請求することができるのは,上記損失補償額に対する明渡しの期限の翌日である同年12月4日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の法定利率に相当する金員の限度にとどまるものと解するのが相当である。 第4 結論よって,原告の請求は,主文1項及び2項の限度で理由があるからこれを認容し,その余はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官増田稔 - 49 - 裁判官村田一広 裁判官不破大輔 裁判官 村田一広 裁判官 不破大輔

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