昭和44(ネ)342 福岡県公立学校教職員給与請求

裁判年月日・裁判所
昭和46年3月31日 福岡高等裁判所
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【DRY-RUN】主   文 一 原判決中被控訴人A、同B、同Cに関する部分を次のとおり変更する。  控訴人は、被控訴人Aに対し金六二二円、被控訴人Bに対し金六八七円、被控訴 人Cに対し金九三九円及び各金員に対する昭和

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主文 一原判決中被控訴人A、同B、同Cに関する部分を次のとおり変更する。 控訴人は、被控訴人Aに対し金六二二円、被控訴人Bに対し金六八七円、被控訴人Cに対し金九三九円及び各金員に対する昭和三三年八月二二日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 被控訴人A、同B、同Cのその余の請求を棄却する。 二控訴人の被控訴人A、同B、同Cを除くその余の被控訴人らに対する本件各控訴を棄却する。 三訴訟費用中、控訴人と被控訴人A、同B、同Cとの間に生じた分は第一、第二審とも控訴人の、控訴人とその余の被控訴人らとの間に生じた控訴費用は控訴人の各負担とする。 事実 控訴代理人は、「原判決中被控訴人ら関係部分を取消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。 当事者双方の主張及び証拠関係は、控訴代理人及び被控訴人ら代理人においてそれぞれ別紙準備書面記載のとおり陳述し、立証として、被控訴人ら代理人において、甲第二ないし第七号証を提出し、当審証人Dの証言を援用し、乙第一一ないし第一六号証(第一四、第一五号証については原本の存在を含む。)の成立を認める、と述べ、控訴代理人において、乙第一一ないし第一六号証を提出し、当審証人Eの証言を援用し、甲第二ないし第七号証(第二、第三号証については原本の存在を含む。)の成立を認める、と述べたほかは原判決事実摘示(ただし、原判決一五枚目表上段七行目にある『「請求金額」欄記載の各金額』の次に「(同欄内訳記載の本俸と暫定手当の合計額の意味)」を加え、原判決事実摘示中「斗争」とあるのをすべて「闘争」と訂正する。)中被控訴人ら関係部分と同一であ 行目にある『「請求金額」欄記載の各金額』の次に「(同欄内訳記載の本俸と暫定手当の合計額の意味)」を加え、原判決事実摘示中「斗争」とあるのをすべて「闘争」と訂正する。)中被控訴人ら関係部分と同一であるから、これをここに引用する。 理由 一、当裁判所も被控訴人A、同B、同Cを除く被控訴人らの本訴請求はすべて理由があつてこれを認容すべく、被控訴人A、同B、同Cの本訴請求は一部理由があつてこれを認容すべく、その余の部分は理由がないものとしてこれを棄却すべきものと判断するが、その理由は次に付加、訂正または削除するほかは原判決理由記載中被控訴人ら関係部分(原判決四枚目表八行目から同八枚目裏九行目まで及び同一一枚目裏四行目から同一二枚目表八行目まで)と同一であるから、これをここに引用する。 二、原判決五枚目表七行目、同枚目裏一行目にある「各金額」の次に「(原告ら主張の意味での金額)」を加え、同五枚目表一二行目に「同月二一日」とあるのを「八月二一日」と訂正し、六枚目表四行目以下掲記の事実認定の資料として、成立に争いのない乙第一三号証及び当審証人Eの証言を加え、同六枚目裏三行目「ものである」の次に「(原告らを含む県下公立学校教職員一七、一八二名が平常の勤務日である同日一せいに出校せず、勤務しなかつたことは、当事者間に争いがない。)」を、同七枚目表七行目「目標にして」の次に「同月一〇日には福岡市教育長、福岡県教育庁出張所長を招集して六月分給与の支給日に減額するよう通知する等」をそれぞれ加え、同九行目から一〇行目にかけて「六月一〇日を」とあるのを「日時も」と、前記引用の原判決理由記載中「斗争」とあるのをすべて「闘争」とそれぞれ訂正し、原判決理由欄第五、第六項(原判決八枚目裏一〇行目から同一一枚目裏三行目まで)を次のとおり改める。「五、と 「日時も」と、前記引用の原判決理由記載中「斗争」とあるのをすべて「闘争」とそれぞれ訂正し、原判決理由欄第五、第六項(原判決八枚目裏一〇行目から同一一枚目裏三行目まで)を次のとおり改める。「五、ところで、本件減額当時地方公務員法五八条二項(昭和四〇年五月一八日法律第七一号による改正前のもの)により地方公務員にも適用があつた労働基準法二四条一項本文の規定は賃金全額が確実に労働者の手に渡ることを保障しようとするものであるから、その内容のひとつであるいわゆる賃金全額払の原則は、使用者をして賃金全額につき現実の履行をなさしめる趣旨であると解すべく、したがつて、使用者が自己の労働者に対する反対債権にもとづきほしいままに相殺を主張して賃金の一部又は全部を控除することは許されないけれども、賃金支払の実際においては、計算の困難等のため、時として過払を生ずることは避けがたいところであり、その場合における過払額相当額をその後支払うべき賃金と清算することは、形式的には、不当利得返還請求権を自働債権とする相殺である点において一般の相殺と異なるところはないとしても、事の実質に即してこれをみれば、適正な賃金額を支払うための調整であり、結果においては、本来支払われるべき賃金を正当に支払つたことになるのであつて、賃金と全く関係のない債権による相殺と同一視すべきではない。もつとも、前記二四条一項本文の法意にかんがみるときは、過払を原因とする相殺は、過払のあつた時期から見て、これと賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされる場合であり、しかも、その金額、方法等においても、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合に限つて許されるものと解するのが相当であり、しかも、このような相殺を許容すべき例外的な場合に当たるか否かの判断にあたつては、 、方法等においても、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合に限つて許されるものと解するのが相当であり、しかも、このような相殺を許容すべき例外的な場合に当たるか否かの判断にあたつては、前記二四条一項本文の法意を害することのないよう、慎重な配慮と厳格な態度をもつて臨むべきものであり、みだりに右例外の範囲を拡張することは厳につつしまなければならないのであつて(最高裁判所昭和四〇年(行ツ)第九二号同四四年一二月一八日第一小法廷判決、同裁判所昭和四二年(行ツ)第六一号同四五年一〇月三〇日第二小法廷判決参照)、これと異なる成立に争いのない乙第一一、第一二号証記載の見解にはにわかに賛同することができない。 六、本件についてこれをみるに、前認定事実によれば、本件減額事由が発生したのは五月七日であつて、右減額をその月の給与支払日である同月二一日に同月分の給与から減額することは、本件給与過払の原因となつた原告らの無断欠勤が福教組の勤務評定反対闘争という異常な事態のもとに行われ、欠勤した者の範囲も広範かつ多数におよんだ事実に照らして事実上不可能であつたものといわなければならないが、県教委は同月末頃には欠勤の実体につきこれを把握していたのであり、しかも減額分も被控訴人らの月給与手取額の四パーセントにも達しない額であつたのであるから、翌六月分の給与から減額することは可能であつたといわなければならない。しかるに本件減額がおくれた主たる原因は、減額に反対する福教組の圧力のもとに県教委が減額することにつきその法律上の可否、根拠等の調査研究のため、当時同種事案をかかえていた東京都または中央官庁の意見を徴したりしていて東京都の出方を待つていたところ、東京都においてはその減額を八月分について実施することになつたので、県教委においてもこれにならつて八月分につき かかえていた東京都または中央官庁の意見を徴したりしていて東京都の出方を待つていたところ、東京都においてはその減額を八月分について実施することになつたので、県教委においてもこれにならつて八月分につき本件減額を実施することとしたものであるから、前記説示するところからすれば、被告のした過払を原因とする相殺は、過払のあつた時期から見て、これと賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされたものとは認め難く、したがつて被告のした給与の減額は労働基準法二四条一項本文に違反し無効のものといわなければならない。」三、そうすると、控訴人の主張はいずれも採用することができず、本件減額は労働基準法二四条一項に違反するというほかはないから、被控訴人A、同B、同Cを除く被控訴人ら(ただし、被控訴人F、同G、同H関係についてはその被相続人I)から控訴人に対し、八月分給与債権の未払分として控訴人が減額した原判決添付別紙第二「請求金額」欄記載の各金額(被控訴人J、同Kの請求金額は計算上内金となる。)及びこれに対するその支払期限の翌日である昭和三三年八月二二日から各支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める本訴各請求は理由があるものというべく、被控訴人Aについては別紙第二記載の控訴人が減額をした本俸及び暫定手当の合計額は金六二二円であり、被控訴人Bについては前同の合計額は金六八七円であり、被控訴人Cについては前同の合計額は金九三九円であるので、右被控訴人三名の本訴請求は右合計額及び前同様の遅延損害金の支払を求める限度において理由があるが、その余の部分は失当として棄却を免れない。 よつて、原判決中被控訴人A、同B、同Cに関する部分を主文のとおり変更し、その余の被控訴人らに対する本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき あるが、その余の部分は失当として棄却を免れない。 よつて、原判決中被控訴人A、同B、同Cに関する部分を主文のとおり変更し、その余の被控訴人らに対する本件控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、九六条、八九条、九二条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官中池利男白川芳澄富永辰夫)(別紙)準備書面控訴人福岡県被控訴人 J外三二名右当事者間の御庁昭和四四年(ネ)第三四二号給与支払請求控訴事件について左のとおり陳述します。 一本件給与の減額支給は、いわゆる過払賃金調整のための控除である。すなわち福岡県教職員組合は勤務評定規則制定に反対して昭和三三年五月七日一せい休暇闘争を実施し、県下市町村立小中学校教職員一七、一八二名が校長の承認を得ることなく職務を放棄したものであつて、被控訴人らも右闘争に参加して同五月七日は全日勤務せず、したがつて同日分の賃金について過払が生じ、これが調整のため同年八月二一日支給の賃金から精算控除をなしたものである。 二右のような過不足調整のための過払賃金の控除は、最高裁判所判決(昭和四〇年(行ツ)第九二号昭和四四年一二月一八日第一小法廷判決)も認めるところである。 本件給与の減額は、同判決が判示する「過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」との趣旨に抵触するものではなく、したがつて同判決の論旨のとおり労働基準法二四条一項の禁止に該当しない適法な減額と解される。 (一) 本件給与の減額は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に「合理的に接着した時期」に行なつたものである 論旨のとおり労働基準法二四条一項の禁止に該当しない適法な減額と解される。 (一) 本件給与の減額は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に「合理的に接着した時期」に行なつたものである。 本件給与の減額事由は、前記のとおり五月七日に発生したものであるが、被控訴人らを含む本県教職員の給与は毎月二一日に当月分が支給されているところ、減額すべき五月七日分の給与を当月分給与支給日の五月二一日において精算することは、右闘争参加者が一万七千余名の多数におよんだこと、さらには被控訴人ら県費負担教職員の特殊性からその服務に関する調査は各市町村教育委員会を通じて行なう必要があつたことなどから闘争参加の実態把握に多大の時間を要し、県教育委員会においてその結果を完全に掌握し得たのは漸く五月末頃であつたことからして事実上不可能であつた。そのため五月二一日支給の給与には減額すべき五月七日分の給与を含めて支給する結果となつた。 そこで翌六月二一日の給与支給日において右過払分を清算調整すべく六月一〇日市教育長および教育庁出張所長を招集してその旨を通知したが、これを察知した福岡県教職員組合は勤務評定反対闘争とからませて右減額についても強く反対し、そのため各学校における減額支給のための給与調書作成事務は困難をきわめ、一方、六月一四日支給の期末および勤勉手当の支給事務を進める必要もあつて、事務処理上実施できない状態となり延期せざるを得なかつた。 ついで翌七月二一日の支給日においても実施すべく事務を進めたが、右教職員組合の減額反対のための行動は依然として続き、この事態を重視した県議会(六月二四日から七月一日までが会期)では、本件減額についての問題が取り上げられ、活発な論議が交された結果、他県の事情等をも参酌して慎重に処理するようとの強い要望が県教育委員会に 態を重視した県議会(六月二四日から七月一日までが会期)では、本件減額についての問題が取り上げられ、活発な論議が交された結果、他県の事情等をも参酌して慎重に処理するようとの強い要望が県教育委員会に対してなされた。そこで県教育委員会としては議会制民主主義の建前からこれを尊重して再度延期することとし、結局八月二一日の支給日において本件減額を行なつたものである。 前記最高裁判所にかかる事案は、昭和三三年一二月一五日において支給した勤勉手当の過払分を翌三四年二月分または三月分の給与から減額したものであるところ、本件もまた五月二一日に支給した給与の過払分を八月二一日の給与から減額したものであり、また右三ケ月経過の実情に徴してもその期間中本件減額事務は継続していたのであるから、同判決にいう「合理的に接着した時期」に行なわれたというべきである。 (二) 本件給与の減額は、あらかじめ予告されていたものである。 昭和三三年五月一日付通達「教職員の服務について」(乙第四号証)をもつて「休暇の承認を得ずして集会に出席した者については、無届欠勤として給与が減額される」ことをあらかじめ各教職員に周知徹底を図つたところである。 また、右減額に反対する福岡県教職員組合とは、同年六月五日、同一二日および七月二日に本件減額について話し合いをもつたところであり、一方六月一〇日には市教育長および教育庁出張所長に六月分給与から減額を行なう旨通知し、六月二六日には県議会において教育委員長が「給与の減額は、七月実施をめどとしてすすめている」旨答弁するなど県教育委員会は終始これが実施について態度を表明してきたところである。 しかるところ同年七月三一日県議会文教委員会における質問に対して県教育長は、「八月支給の給与から減額する」旨答弁し、八月二日右給与減額を八月二一日の給与支給 いて態度を表明してきたところである。 しかるところ同年七月三一日県議会文教委員会における質問に対して県教育長は、「八月支給の給与から減額する」旨答弁し、八月二日右給与減額を八月二一日の給与支給日に実施する旨八月一日付書面をもつて各関係機関に通知する一方、右教職員組合に対しても同旨の通知書(乙第六号証)を手交したところである。これに対して八月八日同組合傘下組合員は「減額無効の仮処分申請」を行なつたところでもある。 右経緯のとおり被控訴人らが本件減額処分をあらかじめ了知し得る状態にあつたことは明らかであるし、また被控訴人らが減額処分を予期していた時期に本件給与の減額支給はなされたものである。 (三) 本件給与の減額は多額にわたらない。 本件減額の額は被控訴人らの給与手取額の四%をこえない程度のものであり、何ら被控訴人らの経済生活の安定を阻害するものではない。 三要するに本件給与の減額は前記のとおり過払のあつた時期と清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされたものであり、かつ右減額は、あらかじめ被控訴人らに予告されていたものであつて、その額も手取額の四%にも満たない額であるから何ら被控訴人らの生活をおびやかすものではない。 四労働基準法二四条一項の解釈については次の学説を相当と考える。 いわゆる過不足調整のための過払賃金の控除について、吾妻光俊教授は、労働基準法二四条一項をもつて禁止すべき理由はなく、特に労働者の生活をおびやかすことがない限り、時期的制限を認めるべきではないとされている。(乙第一一号証および乙第一二号証参照)また、同法条の全額払の原則について、石川吉右衛門教授は賃金の過不足調整のための相殺は、同法条に何ら抵触するものではなく、相殺を制限する条文は、労働基準法一七条、民事訴訟法六一八条、民法五〇九条 また、同法条の全額払の原則について、石川吉右衛門教授は賃金の過不足調整のための相殺は、同法条に何ら抵触するものではなく、相殺を制限する条文は、労働基準法一七条、民事訴訟法六一八条、民法五〇九条のみであるとし、結論として前記法条の制限内において過払賃金の控除は可能であるとの前提に立つて、本件と類似の群馬県教組事件に対する前橋地裁判決(昭和三六年三月三日判決行裁集一二巻三号五五一頁)を支持されている。(L博士還暦記念「裁判法の諸問題下」六三五頁以下参照)五右何れの点からみても本件給与の減額は適法である。 右陳述します。 昭和四五年九月一〇日控訴人代理人 M同 N同 O福岡高等裁判所第一民事部御中昭和四四年(ネ)第三四二号準備書面控訴人福岡県被控訴人 J外三二名右当事者間の給与支払請求事件につき、被控訴人等は左記のとおり陳述する。 昭和四五年九月一〇日被控訴人等代理人 P福岡高等裁判所第一民事部御中記一控訴人は、吾妻光俊教授の清算・調整的賃金控除は、時期的な問題を度外して認めるべきであるという学説(乙第一一、一二号証)を引用しつゝ昭和四〇年(行ツ)第九二号給与支払請求事件昭和四四年一二月一八日最高裁第一小法廷判決(乙第一四号証)を右学説と同一立場に立つもののように考えているようである。 しかしながら、右最高裁判決は「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならないものと解せられる。」と判示するところから明らかのように、吾妻説を支持するものではない。それのみならず右最高裁判決の「接着した時期においてなされ 活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならないものと解せられる。」と判示するところから明らかのように、吾妻説を支持するものではない。それのみならず右最高裁判決の「接着した時期においてなされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとかその額が多額にわたらないとか」という判示は、それらすべてを要件として考えているものと解される。右判示の「また」という文言は、「または」と異り、「更に」と同様に重畳的文言であること「とか」という表現も同様の意義であることに照し明白であろう。 ところで右最高裁判決は、第一、二審が、清算・調整の相殺について、昭和三三年九月分給与中の過払金返還請求権を発生時から約四ケ月経過して始めて減額すべき旨の予告した分については、調整的相殺に属しないとし、勤勉手当中の過払金返還請求権の発生時から起算して、減額すべき予告が翌月にあたる分は、調整的相殺が許されるとしている判決中、調整的相殺として許されるとする部分に対する上告判断であつて、調整的相殺が許されないとした部分は、第二審で既に確定した事案である。 そして、第一審の判示は、第二審で支持され、結局「これを原判決の判示するように労働者の日常生活の安定を保障するという労働基準法第二四条第一項の本来の立法趣旨に照して考えてみれば、右調整的相殺が(イ)給与の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてなされ(ロ)事前に予め労働者にそのことが予告され(ハ)相殺額にして労働者の経済生活の安定をおびやかす虞がない場合である限り、右立法の趣旨に牴触するところはないと考えられる」(甲第三号証第二審判決)と判示する仙台高裁判決と右最高裁判決は同一見解に立つものと解される。 そうであれば、本件事案の場合、事前に何等の予告も原告等になく、原告等の昭和三三年五月分給与中 れる」(甲第三号証第二審判決)と判示する仙台高裁判決と右最高裁判決は同一見解に立つものと解される。 そうであれば、本件事案の場合、事前に何等の予告も原告等になく、原告等の昭和三三年五月分給与中過払金返還請求権について、その発生時から三ケ月後に突然一方的に相殺し、その額も一日分であつて教員の給与の実態からして決して少額といえない金額(証人Dの証言、甲第四号証参照)を差引いているのであるから、到底右最高裁判決の示す基準に照らして許される調整的相殺とは認められない。 もつとも、控訴人は当審において乙第一三号証福岡県における勤務評定規則等の実施の経過及び証人Eの証言によつて、六月二一日までに調整的相殺のための事務手続が完了していなかつたごとく証明しようとしているが、第一審証人Qの証言(乙第一〇号証)にあるとおり、六月二一日には事務手続は終了していたが、議会の要請で相殺しなかつたという証言に照して到底乙第一三号証の記載及び証人Eの証言は措信できない。 なぜなら、Q証人は当時教職員課長の職にあつてEの上司であり勤務評定実施の事実上の責任者であつたこと。六月十日に六月分給与支給日に減額するよう市教育長出張所長に通知していることからして、既に計算その他の事務が完了していたことを示すものであること、又、公の記録として、議会の要請により中止ということを残すことができない政治的道義的理由があつたこと等の事実に徴して、明らかである。 以上の次第であるので、本件調整的相殺は、最高裁判決の判示する労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合に該当しない違法な相殺というべきである。 よつて控訴人の控訴は理由がない。 相殺というべきである。 よって控訴人の控訴は理由がない。

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