令和4特(わ)2542 金融商品取引法違反

裁判年月日・裁判所
令和5年6月8日 東京地方裁判所
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判決文本文2,915 文字)

令和5年6月8日東京地方裁判所刑事第16部宣告令和4年特第2542号、同第2713号金融商品取引法違反被告事件 主文 被告人を懲役3年及び罰金400万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、金1万円を1日に換算し た期間被告人を労役場に留置する。 この裁判が確定した日から5年間その懲役刑の執行を猶予する。 被告人から金1億7657万4930円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実) 第1 被告人は、株式会社A(以下「A」という。)B部に勤務していた従業員であり、令和元年11月25日頃、その職務に関し、AC事業本部に勤務していた従業員らが、株式会社D(以下「D」という。)が開設する有価証券市場に株券を上場している株式会社E(以下「E」という。)とAが共同で進めていたゲームタイトル「F」の関連作品となる携帯電話機向け新作ゲームの開発に係る業 務提携契約の履行及び同ゲームの配信開始後にその配信等を共同して運営していく旨の業務提携契約の交渉に関し知った、同ゲームの共同開発が配信開始を見込める段階まで進捗したことなどのEの運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実及びEの業務執行を決定する機関が前記交渉に係る業務上の提携を行うことについての 決定をした旨のEの業務等に関する重要事実をそれぞれ知り 1 法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である令和元年12月2日から令和2年2月4日までの間、株式会社G(以下「G」という。)を介し、東京都中央区a町b番c号所在のD及び東京都港区de丁目f番g号所在のH株式会社において、被告人名義で、Eの株券合計7万2100株を代金合計 2083万5920円で 下「G」という。)を介し、東京都中央区a町b番c号所在のD及び東京都港区de丁目f番g号所在のH株式会社において、被告人名義で、Eの株券合計7万2100株を代金合計 2083万5920円で買い付け 2 知人であるIにあらかじめEの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、前記各重要事実の公表前である令和元年12月26日頃、東京都内において、Iに対し、電話で、前記各重要事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けたIが、法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である同日から令和2年2月5日までの間、Gを介し、Dにおいて、I名義で、 Eの株券合計9万700株を代金合計2641万2900円で買い付け第2 被告人は、AB部に勤務していた従業員であり、令和2年9月25日頃、その職務に関し、AJ事業本部に勤務していた従業員らが、Dが開設する有価証券市場に株券を上場している株式会社K(以下「K」という。)とAが共同で進めていたゲームタイトル「L」の関連作品となる携帯電話機向け新作ゲームの 開発に係る業務提携契約の履行及び同ゲームの配信開始後にその配信等を共同して運営していく旨の業務提携契約の交渉に関し知った、同ゲームの共同開発が配信開始を見込める段階まで進捗したことなどのKの運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実及びKの業務執行を決定する機関が前記交渉に係る業務上の提携を行うこ とについての決定をした旨のKの業務等に関する重要事実をそれぞれ知り 1 法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である令和2年9月29日から令和3年2月25日までの間、Gを介し、D及び前記H株式会社において、被告人名義で、Kの株券合計9万1700株を代金合計1 法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である令和2年9月29日から令和3年2月25日までの間、Gを介し、D及び前記H株式会社において、被告人名義で、Kの株券合計9万1700株を代金合計1億503万2660円で買い付け 2 知人であるMにあらかじめKの株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、前記各重要事実の公表前である令和2年12月28日頃、埼玉県内において、Mに対し、前記各重要事実を伝達したものであり、これにより伝達を受けたMが、法定の除外事由がないのに、前記各重要事実の公表前である令和3年1月14日から同年2月19日までの間、Gを介し、Dほか1か所におい て、M名義で、Kの株券合計1万株を代金合計1186万560円で買い付け たものである。 (量刑の理由)本件は、インサイダー取引2件及び情報伝達2件の事案である。いずれも取引規模は相当程度で、金融商品市場の公正性や健全性に対して悪影響を与えるものといえ、犯行態様は悪質である。被告人は、将来の生活に関する不安や友人との人間関 係等から本件各犯行に及んだ旨述べるが、短絡的な犯行であって動機に酌むべき事情があるとはいえない。同種犯行を繰り返していることからみて責任非難の程度は重いというほかなく、被告人の刑事責任は軽視できない。 他方で、被告人は事実を認めて反省の態度を示し二度とこのような犯罪を犯さない旨誓っていること、雇用主や妻が更生に向けた支援を行うことを約束しているこ と、被告人に前科がないことなど、被告人に有利に考え得る事情がある。 そこで、今回に限り、懲役刑の執行を猶予することとしたが、この種事案が経済的に割に合わないことを自覚させるため、罰金刑を併科することとした。 なお、弁護人は、追徴額につき、被告人の更生や る。 そこで、今回に限り、懲役刑の執行を猶予することとしたが、この種事案が経済的に割に合わないことを自覚させるため、罰金刑を併科することとした。 なお、弁護人は、追徴額につき、被告人の更生や家族の生活等に対する影響にかんがみて主文掲記の額の一部に限定すべき旨主張する。しかしながら、犯罪行為に より得た利益のみならず、犯罪行為により得た財産及びその対価として得た財産を原則として没収ないし追徴すべきとする金融商品取引法198条の2の趣旨は、不公正取引によって取得した財産を残らず剥奪することにより、更なる違法行為への再投資を妨げるとともに、不公正な取引を抑止し、健全な取引市場の確保を図る点にある。例外的に没収の減免を認める同条1項ただし書は、取得の状況等にかんが みて財産を没収・追徴することが被告人に過酷な結果となる場合などの例外的な場合に、没収・追徴を裁量的に減免することを許容するものと解される。本件において被告人に過酷な結果となることは、被告人が本件で買い付けた株券を売却して得た代金について没収・追徴を行うことによって、十分避けることができるのであり、本件においては、利益額や被告人の現在の資産額、買付けの一部が信用取引による ものであることなどといった弁護人が指摘する諸事情を踏まえて同条1項ただし書 により追徴額を減ずるべきとは認められない。 (求刑懲役3年6月及び罰金400万円、主文同旨の追徴)令和5年6月8日東京地方裁判所刑事第16部 裁判官安永健次

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