令和5(わ)134 電磁的公正証書原本不実記録、同供用、公職選挙法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
令和5年7月19日 高知地方裁判所
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判決文本文2,744 文字)

令和5年第134号電磁的公正証書原本不実記録、同供用、公職選挙法違反被告事件 主文 被告人を懲役1年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和5年4月23日施行の奈半利町議会議員選挙に立候補する決意を有していた者であるが、第1 Aと共謀の上、同人の氏名等を奈半利町の選挙人名簿に登録させる目的で、令和5年1月4日、高知県安芸郡奈半利町乙1659番地1所在の同町役場において、同町職員に対し、真実は、Aが同町a 番地b に転入した事実がないのに、同所に転入した旨の虚偽の住民異動届を提出し、その頃、同町役場において、情を知らない同町職員に、同所に設置されている公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルに、その旨不実の記録をさせ、これを即時同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供するとともに、同年4月17日、同町役場内の同町選挙管理委員会室において、情を知らない同委員会職員に、前記住民基本台帳ファイルの記録に基づき、同町の選挙人名簿にAの氏名等を登録させ、第2 Bと共謀の上、同人の氏名等を前記奈半利町の選挙人名簿に登録させる目的で、令和5年1月4日、前記奈半利町役場において、同町職員に対し、真実は、Bが同町a 番地b に転入した事実がないのに、同所に転入した旨の虚偽の住民異動届を提出し、その頃、同町役場において、情を知らない同町職員に、同所に設置されている公正証書の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルに、その旨不実の記録をさせ、これを即時同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供するとともに、同年4月17日、同町役場内の 同町選挙管理委員会室において、情 ある住民基本台帳ファイルに、その旨不実の記録をさせ、これを即時同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供するとともに、同年4月17日、同町役場内の 同町選挙管理委員会室において、情を知らない同委員会職員に、前記住民基本台帳ファイルの記録に基づき、同町の選挙人名簿にBの氏名等を登録させ、第3 前記奈半利町議会議員選挙に際し、Aと共謀の上、令和5年4月19日、兵庫県尼崎市東七松町一丁目23番1号所在の尼崎市役所内の同市選挙管理委員会において、同人が、同委員会係員に対し、前記第1の不正な手続により資格を偽って交付を受けた不在者投票証明書を提示して、同じく不正な手続により資格を偽って交付を受けた投票用紙を用いて投票し、もって詐偽の方法により投票し、第4 前記奈半利町議会議員選挙に際し、Bと共謀の上、令和5年4月22日、高知県安芸郡奈半利町乙1269番地1所在の奈半利町保健センターに設置された期日前投票所において、同人が、前記第2の不正な手続により資格を偽って交付を受けた投票所入場券を用い、同投票所係員から投票用紙の交付を受けて投票し、もって詐偽の方法により投票した。 (量刑の理由)本件は、町議会議員選挙に立候補する決意を有していた被告人が、いずれも自身の親族2名とそれぞれ共謀の上、同人らの氏名等を選挙人名簿に登録させるために虚偽の住民異動届を提出して住民基本台帳ファイルに不実の記録をさせ、これらを電磁的公正証書の原本として供用させた上、その記録に基づき同人らの氏名等を選挙人名簿に登録させた電磁的公正証書原本不実記録、同供用、詐偽登録(公職選挙法違反)2件(判示第1及び第2)と、前記町議会議員選挙に際し、前記親族2名が、これらの不正な手続により資格を偽って交付を受けた投票用紙を用いるなどして被告人に投票した詐偽投票 、詐偽登録(公職選挙法違反)2件(判示第1及び第2)と、前記町議会議員選挙に際し、前記親族2名が、これらの不正な手続により資格を偽って交付を受けた投票用紙を用いるなどして被告人に投票した詐偽投票(公職選挙法違反)2件(判示第3及び第4)の事案である。 各電磁的公正証書原本不実記録、同供用、詐偽登録の犯行は、公正証書の原本として用いられる住民基本台帳ファイルの信用を害し、本来は選挙人の資格がない者を選挙人名簿に登録させることで民主主義及び住民自治の根幹となる公正な選挙の 前提をも損なっており、各詐偽投票の犯行も、本来は投票権のない者に投票権を得させて投票させ、自らの得票数を不正に増加させて選挙の公正を直接的に害しているから、いずれも悪質である。しかるに、被告人らは、被告人が初めて出馬した平成19年4月の町議会議員選挙以降、被告人が選挙に立候補する度に本件と同様の不正行為を繰り返し、その中で本件各犯行に及んでいるのであって、このような経緯に照らしても本件各犯行はいずれも厳しい非難を免れない。 被告人は、平成19年以降、一部の期間を除いて町議会議員を務めていたところ、町議会議員選挙での自身の当選を確実なものにするために共犯者らの票を得たいと考え、親族である被告人の役に立ちたいという共犯者らの心情に乗じ、同人らに働き掛けて本件各犯行に及んだものであって動機や経緯に酌むべき点はなく、終始犯行を主導してそれによる利益を専ら享受しているからその責任は共犯者らに比して格段に重い。しかも、被告人は、平成23年3月に町議会議員の地位に係るあっせん収賄罪により執行猶予付き懲役刑に処せられたことがあるにもかかわらず本件各犯行に及んでいるのであって、町議会議員ないしはそれになろうとする者としての自覚や順法精神が欠けていると言わざるを得ない。したが 賄罪により執行猶予付き懲役刑に処せられたことがあるにもかかわらず本件各犯行に及んでいるのであって、町議会議員ないしはそれになろうとする者としての自覚や順法精神が欠けていると言わざるを得ない。したがって、被告人の刑事責任を軽く見ることは許されない。 一方、被告人については、本件で議員辞職を余儀なくされるなどの社会的制裁を受けたこと、公訴事実をいずれも認めて反省の態度を示していること、妻が情状証人として出廷し監督を誓約していること、被告人のために嘆願書が作成されていること、前記前科等の前科があるもののいずれも10年以上前のものであることなど有利な事情も認められる。 以上からすれば、本件は懲役刑を選択すべき事案ではあるものの直ちに実刑をもって臨むべきものとはいえないから、以上の事情を総合考慮し、被告人を主文の刑に処した上、その刑の執行を猶予するのが相当と判断した。 (求刑・懲役1年)令和5年7月19日 高知地方裁判所刑事部 裁判長裁判官稲田康史 裁判官鈴木美香 裁判官野澤尚純

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