【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 第一 当事者の求めた裁判 控訴人は「原判決中被控訴人らに関する敗訴分を取り消す。被控訴人らが控訴人 に対し
主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判控訴人は「原判決中被控訴人らに関する敗訴分を取り消す。被控訴人らが控訴人に対し、労働契約上の義務を有しないことを確認する。被控訴人らの控訴人に対する反訴請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人らは、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。 第二当事者の主張、証拠当事者双方の主張、および証拠は次に附加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。 控訴人の主張 1 当事者間に労働契約関係が成立しているか否かは、その関係が労働基準法の所定基準に合致しているかどうか、若し部分的に不一致があつても全体として、ないし重要な基本的事項において、右法の所定基準に合致しているか否かで決すべきところ、本件当事者間の関係はそのいずれにも合致しない。 2 被控訴人らは労働組合結成後になつて労働契約関係の成立を主張しているのであつて、かかる主張は禁反言の法理に反し許されない。 被控訴人らの主張 1 当事者間に労働契約関係が存在するか否かは、その形式にとらわれることなく、その実体において従属労働が認められるか否かによつて判断さるべきである。 労働基準法は労働者保護のための労働者に有利な労働条件の効力は認めながら、法的基準に達しない条件は最近基準にまで引上げ、部分的に無効である旨を定めているに過ぎない。 2 労働者が労働組合を結成し、使用者に対し、労働条件の改善向上を要求することは当然であり、控訴人の主張は労働者の団結権を否定するものである。 証拠(省略) 理由 一控訴人が肩書地においてキヤバレー「ナナエ」を営む会社であり、被控訴人らが を要求することは当然であり、控訴人の主張は労働者の団結権を否定するものである。 証拠(省略) 理由 一控訴人が肩書地においてキヤバレー「ナナエ」を営む会社であり、被控訴人らが楽団演奏のサービスを提供するため右「ナナエ」に出演していることは、当事者間に争いがない。 二被控訴人は、被控訴人らと控訴人との間に締結された出演契約は労働契約であり、被控訴人らは控訴人の従業員である旨主張するに対し、控訴人は、バンドマスターである被控訴人A、同Bとの間に、「ナナエ」での楽団演奏の請負契約を締結したにすぎない旨主張するので、この点について判断する。 成立に争いのない甲三ないし二一号証、二五号証、乙一一ないし二〇号証、二五号証、三三号証、原審における被控訴人B本人尋問の結果によつて真正に成立したと認める乙一〇、二六号証の各一ないし六、原審および当審証人C、原審証人D、当審証人Eの各証言、原審における被控訴人A、同B、原審原告F、同G各本人尋問の結果(以上のうち、いずれも後記措信しない部分を除く)ならびに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。 1 楽団編成と「ナナエ」への出演に至る経緯(一) 控訴人は「ナナエ」におけるシヨーおよび遊客とホステスのダンスの伴奏等の業務に従事させるために、従前より楽団を出演させていたが、昭和四四年六月頃、それまで約三年間にわたりシヨーの伴奏を担当してきたHバンドが解散したので、その楽団の一員であつた被控訴人Aがバンドマスターとして、楽団員八名で構成されるAバンドを編成し、控訴人のテストを受けて合格し、以後「ナナエ」に出演することとなつた。しかし、Aバンドは主としてダンス音楽やムード音楽の演奏を担当することとなつたため、シヨーの伴奏を主として担当する楽団(以下、「シヨーバンド」という。)が必要 以後「ナナエ」に出演することとなつた。しかし、Aバンドは主としてダンス音楽やムード音楽の演奏を担当することとなつたため、シヨーの伴奏を主として担当する楽団(以下、「シヨーバンド」という。)が必要となつた。そこで、控訴人は「ナナエ」のシヨーに出演する歌手や踊子をあつせんしていた保川プロダクシヨンのIに、適当なシヨーバンドがいないかと相談し、Iは被控訴人Aにシヨーバンドを編成できる人を探して欲しい旨依頼した。 (二) 被控訴人Aは、同年六月中旬頃、知人であり当時大阪市<以下略>の喫茶店「慕情」の楽団員であつた被控訴人Bに対し、バンドマスターとしてシヨーバンドを編成し、キヤバレー「ナナエ」で楽団演奏をするよう勧誘し、その際、控訴人から聞いた次のような条件を挙げた。 (1) 楽団は九人編成とし、その編成は被控訴人Bに一任する。 (2) 楽団の一か月の演奏料は、楽団員一人平均手取り六万五〇〇〇円として九名分の合計五八万五〇〇〇円の範囲内とする。 (3) 契約期間は一年とし、その間問題がなければ期間を自動延長する。 (4) 「ナナエ」の営業時間は午後五時三〇分から同一一時三〇分までで、楽団の演奏時間は午後六時三〇分から同一一時二〇分までとする。 (5) 休日は控訴人の休業日たる毎月第二、第三日曜日および年末年始の一二月三一日から一月二日までの間とする。 (6) 楽団員に対する給与所得税の源泉徴収は、控訴人が行なうこととする。 (7) その他細部については控訴人の規則や指示に従うこととする。 (三) 被控訴人Bは、同Aの右勧誘に応じ、過去に同じ楽団で仕事をしたことのある被控訴人JやG等を集めて、自己をバンドマスターとする九名構成のBバンドを編成し、同年六月末頃、「ナナエ」のステージにおいて、控訴人専務取締役D、前記I、被控訴人Aおよび控訴人の音楽顧問的な立場 ある被控訴人JやG等を集めて、自己をバンドマスターとする九名構成のBバンドを編成し、同年六月末頃、「ナナエ」のステージにおいて、控訴人専務取締役D、前記I、被控訴人Aおよび控訴人の音楽顧問的な立場にあつたK等立会のうえ、控訴人のテストを受け、これに合格したが、その際控訴人は被控訴人Bらに対し、Iおよび被控訴人Aを通じて、前記条件のほか、同年八月一日からAバンドと同様、「ナナエ」で楽団演奏業務に従事し、演奏時間は午後六時三〇分から同一一時二〇分までの間で、実際の演奏時間は営業部長またはIの指示に従うこと、演奏料は毎月二日、一二日、二二日に三分の一ずつを一括して被控訴人Bに交付し、各楽団員に対する分配は同被控訴人に一任すること等の諸条件を示し、同被控訴人らはこれに合意した。しかし、これらの諸条件を契約書として取り交わすことはしなかつた。 2「ナナエ」における楽団員の出演等の実態(一) 被控訴人Aは昭和四四年六月頃から、同B、同Jは同年八月一日から、いずれも「ナナエ」において演奏にあたつた。同年八月一日現在Aバンドは八人編成、Bバンドは九人編成であつたが、その後楽団員の入替りがあり(「ナナエ」においては右楽団員のみでなく、営業部長、ボーイ、ホステスの場合も入替りがはげしい)、同年八月一日の右両バンドの構成員で本件弁論終結当時残つているのは被控訴人らのみである(Aバンドについては本件紛争発生後控訴人が六名全員に対し契約の解除通知をし、交渉の結果Aを除く他の構成員は「ナナエ」を去り、被控訴人Aはそのまま単独演奏をしている)。 (二) 演奏時間は、Bバンドは、月曜日と火曜日は第一回目が午後六時三〇分から同七時二〇分まで、第二回目が同八時から八時三〇分まで、第三回目が同九時から九時三〇分まで、第四回目が同一〇時から一〇時三〇分までの四ステージ、水曜 ドは、月曜日と火曜日は第一回目が午後六時三〇分から同七時二〇分まで、第二回目が同八時から八時三〇分まで、第三回目が同九時から九時三〇分まで、第四回目が同一〇時から一〇時三〇分までの四ステージ、水曜日から土曜日までは、第一回目が午後六時三〇分から同七時まで、第二回目から第四回目までは月曜日、火曜日と同じであり、Aバンドは、午後七時から同一一時一五分までの間で、Bバンドの休憩時間中に同じく四ステージ出演していた。 また休日は、控訴人において昭和四五年一月以降毎月の休業日を廃止したため、年末年始の休業日である前記三日間のみになつたが、同四七年五月以降はBバンドが毎週日曜日を、Aバンドが毎週月曜日あるいは火曜日を休日とするようになつた。 そして、楽団員が前記演奏時間以外の時間帯に他に出演することは禁ぜられてなかつたが、それは事実上困難であるため、出演してもせいぜい臨時のアルバイト程度のものであり、いずれも控訴人の従業員であるという認識のもとに継続して楽団演奏の業務に従事してきた。 (三) 楽団演奏業務の対価は、昭和四四年八月からBバンドが月額五八万五〇〇〇円、Aバンドが同四八万円であつたが、物価も上昇したため同四八年一二月からはBバンドが七三万八〇〇〇円、Aバンドが五三万一〇〇〇円、同四九年一二月からはBバンドが八九万八〇〇〇円、Aバンドが六一万一〇〇〇円、同五一年一二月からはBバンドが一〇〇万円にそれぞれ増額された。バンドマスターである被控訴人A、同Bは毎月三回に分けてこれを演奏料として夫々自分の名義で受領し、これを自己を含めた各バンドの楽団員に配分し、各楽団員はこれを主たる収入源として生計をたてている。右配分については、被控訴人A、同Bが控訴人から任せられ、各人の演奏能力を考慮してその額を決定していたが、バンドマスターと他の楽団員との 配分し、各楽団員はこれを主たる収入源として生計をたてている。右配分については、被控訴人A、同Bが控訴人から任せられ、各人の演奏能力を考慮してその額を決定していたが、バンドマスターと他の楽団員との間にさしたる差はなく、またその配分割合は毎月ほぼ一定していた。そして、右楽団員に対する給与所得の源泉徴収は控訴人が行なつている。もつとも、控訴人は被控訴人らに対し前判示のとおり手取額を約していたこともあつて、各人に所得税等の税が賦課されぬよう正確な申告をしていなかつた。 (四) 控訴人は、Bバンドを採用した際には、楽団員の各自について住所・氏名・年齢・配分額・扶養家族等の報告を受けた。しかし、控訴人は、両バンド共に右を除き楽団員の退団または入団については、楽団全体としての演奏水準が著しく低下せず、また控訴人にとつて好ましくない者でない限りバンドマスターに一任していた。しかし、控訴人は昭和四六年一二月頃、楽団員一名を技量が劣悪であることを理由に被控訴人Aに指示してこれを退団させたことがあつた。 (五) 楽団員が病気等で休む場合にこれを補充する臨時雇の採用や楽団員の退団に伴う後任者の補充については、音楽的な知識や緑故関係を持たない控訴人が自らこれを実施することはむつかしく、そのためバンドマスターたる被控訴人A、同Bに一任し、同人らは各楽団員の協力を得てこれにあたり、その場合後任者に対する配分額はおおむね前任者と同額であり、臨時雇に支給する手当は、バンドマスターによつて欠勤者に配分さるべき分のうちから支給された。尚後任者については、前判示のとおりバンドマスターにその選任が任され、その氏名等をその都度控訴人に連絡することはなく、毎年一月に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を控訴人に提出するにとどめていたが、各楽団員が出演するステージは「ナナエ」で最 にその選任が任され、その氏名等をその都度控訴人に連絡することはなく、毎年一月に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を控訴人に提出するにとどめていたが、各楽団員が出演するステージは「ナナエ」で最も眼につくところであり、店内を統轄する営業部長は、個々の楽団員を知悉している。 (六) 楽団の演奏については、控訴人は、楽団に対して、歌謡曲とかジヤズ、ハワイアンといつた包括的な指示をするほか、その場の雰囲気をもりあげるよう指示したり、客の希望する曲があればその曲を演奏するよう指示し、またクリスマスその他一定の催しを行なう際にはそれにふさわしい曲目を演奏するよう指示している。そのほかのこまかな演奏曲目の特定や演奏指揮などについては、控訴人にその能力がないため、音楽の専門家であるバンドマスターに任せている。 しかし、楽団の演奏技術とか音質等については、Iや営業部長がバンドマスターに気づいたことなどを指摘し、音量についても、客席の状況に合わせて調節するように指示し、楽団員の人員の不足については営業部長がバンドマスターに注意することがある。 (七) 「ナナエ」では、楽団員以外の事務職員、ボーイやホステスについては、出勤簿またはタイム・レコーダーが備えつけられているが、楽団員についてはこれがなく、欠勤の場合にも本件紛争までは欠勤届も出されなかつた。しかし、「ナナエ」の支配人(営業部長)は、毎日楽団員の不足、音の良否等を点検し、これを日報に記載して控訴人に報告していた。 (八) 「ナナエ」においては、楽団員の控室として、最初はホステスの更衣室の一部があてられており、同控室には当時、店主名でもつて「バンドマン心得」なる楽団員に対する指示事項が紙に書かれて貼付されていたが、これには、飲酒演奏の禁止、ホステスとの雑談禁止、とばくの禁止、たばこの後始末の注意等 おり、同控室には当時、店主名でもつて「バンドマン心得」なる楽団員に対する指示事項が紙に書かれて貼付されていたが、これには、飲酒演奏の禁止、ホステスとの雑談禁止、とばくの禁止、たばこの後始末の注意等が掲げられており、楽団員が「ナナエ」のホール内をくわえたばこで歩いたときや客席に呼ばれて飲酒したときには、営業部長から注意されることがあつた。 (九) 控訴人には、従業員で組織する「ナナエ会」と称する親睦会があり、楽団員もこれに加入している。会費は、役付従業員、ホステスおよび楽団員が月額二〇〇円、その他の従業員が同一〇〇円であり、楽団員の会費の徴収は、控訴人が演奏料を支払う際にこれから天引するという方法でなされている。「ナナエ会」の活動としては、慰安旅行や宴会の実施、慶弔時の祝金、見舞金の支給等があり、慰安旅行に要する経費が会費の積立金額を超過するときは控訴人がその超過分を負担している。 以上の事実が認められ、前掲証拠中右認定に反する部分は直ちに措信し難く、他に右認定を左右し得る証拠はない。 右に認定の事実によると、被控訴人らはいずれも控訴人との間に締結された優先出演契約に基づいて、年間を通じ控訴人の経営する「ナナエ」に必要な楽団演奏者としてその組織にくり入れられ、控訴人の指定する日時、場所において包括的に指示された方法によつて出演すべき義務を負つて継続的に演奏業務に従事して来たものであるところ、これらの演奏業務に従事するに当つては、控訴人の一般的な指揮監督のもとにあり、またその出演報酬は、演奏労働の対価とみられる程度のものであり、被控訴人らはいずれもこれを主たる収入源としてその生計をたてているものであり、これらによると、控訴人と被控訴人との間には、いわゆる労働契約関係があり、被控訴人らは控訴人の従業員であると認めるのが相当である。控訴人は れもこれを主たる収入源としてその生計をたてているものであり、これらによると、控訴人と被控訴人との間には、いわゆる労働契約関係があり、被控訴人らは控訴人の従業員であると認めるのが相当である。控訴人は、被控訴人A、同Bに演奏を請負わせているに過ぎないと主張するけれども、前判示のとおり、同被控訴人らは各バンドリーダーであるが、各団員と共に演奏業務に従事し、受取つている演奏料配分額も他の楽団員とさして変りがないのであり、控訴人から独立して自己の名義と計算においてバンドを経営している状況にはなく、控訴人のもとにあつて、楽団員を管理するいわば職制的役割にとどまるものというべきである。 もつとも、前掲証拠によれば、控訴人は事務職員あるいはボーイなどの従業員については採用する際に履歴書等を出させ、個人面接をするなどの手続をなし、また前判示のとおり、出勤簿、タイムカードを備えて勤務評定をしていることが認められるのに対し、被控訴人らバンドの採用の場合には前判示の選考をするのみであり、また右出勤簿等の備付による出勤状況の管理をしていないことが認められるのであるが、採用手続や管理方法が職種によりまたその必要性の程度によつて違うことは何ら異とするに足りないのであつて、バンドの場合はボーイ等と違い、楽器の演奏者であり、かつ集団的な労務提供をするものであるから、控訴人は個人の独奏者としての能力、個性、態度よりも、合奏者としての調和性や能力、人柄等に着目して採用し、かつその出勤状況についてもその管理をバンドマスターに一任しているものと解される。 また、楽団員が休んだ場合の臨時雇の採用、楽団員の退団に伴う後任者の補充がバンドマスターたる被控訴人A、同Bによつてなされ、その都度控訴人に報告されるわけではないこと、また演奏料は控訴人から右A・Bに一括して支払い、各同人 の臨時雇の採用、楽団員の退団に伴う後任者の補充がバンドマスターたる被控訴人A、同Bによつてなされ、その都度控訴人に報告されるわけではないこと、また演奏料は控訴人から右A・Bに一括して支払い、各同人から各所属楽団員あるいは臨時雇に支払われていることは前認定のとおりであるが、前判示のとおり楽団員の補充、採用は、音楽的な知識、縁故関係を持たない控訴人がこれを実施することは難しいために、右各バンドマスターに右採用・補充の権限を委せているのであり、また、給与所得の源泉徴収については当初から各楽団員毎に行なつているが、演奏料の配分、欠演者の演奏料の差引・臨時雇への手当支給なども採用補充の権限を委せた右マスターにそのやりくりをさせた方が結果として公平経済的であり、円滑な運営がなされるとの配慮から行われているものと解され、従つて、右のような各事実は、形式的には請負的な外形を有するとしても、実質的には楽団出演という特殊な雇傭契約に随伴するものとみるべきであり、右事実のみから控訴人と被控訴人らとの出演契約が請負であるものとは認め難く、その間に労働契約関係があり、被控訴人らが控訴人の従業員であるとの前記認定判断を覆えすものとは認め難い。 尚、右出演契約には賃金支払方法等に労働基準法の規定に反する部分があることはこれまで判示したところにより明らかであるが、違反事項があるからといつて、直ちに両者の関係が労働契約関係にないとは認め難いのであつて、基準法の定める項目は右存否の判断をする際の判断基準の一として考慮するべきものにすぎず、それが労働契約関係であるか否かは右契約の形式名目のみにこだわることなく、労務遂行過程の実態から判断すべきものである。 また、被控訴人らにおいて、控訴人に対し演奏料の増額を求め、かつ労働組合を結成し団体交渉を求める以前には、双方には右 の形式名目のみにこだわることなく、労務遂行過程の実態から判断すべきものである。 また、被控訴人らにおいて、控訴人に対し演奏料の増額を求め、かつ労働組合を結成し団体交渉を求める以前には、双方には右契約の性質をめぐつて特に紛争がなかつたことは前掲証拠によつて明らかであり、そのために従前は被控訴人らにおいて両者間の契約が労働契約である旨の明示的な主張をする必要がなかつたに過ぎないので、労働者が右主張を必要とする段階即ち組合を結成して労働条件の改善を使用者に対して求める段階になつてその主張をすること自体何ら禁反言にふれるものでなく、この点についての控訴人の主張は採用できない。 次に、控訴人において、被控訴人らが控訴人の従業員たる地位を有することを争つていることは、本訴を提起していることによつても明らかであり、したがつて、被控訴人らには右地位の確認を求める利益があるものと認められる。 三以上の事実によると、控訴人の本訴請求は失当であり、また被控訴人らが控訴人の従業員の地位にあることの確認を求める被控訴人らの反訴請求は理由がある。 よつて、控訴人の本訴請求を棄却し、被控訴人らの反訴請求を右の限度で認容した原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官谷野英俊丹宗朝子西田美昭)
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