平成24(行ウ)591 行政処分取消義務付け等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年3月7日 東京地方裁判所
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判決文本文59,674 文字)

平成26年3月7日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成24年(行ウ)第591号行政処分取消義務付け等請求事件口頭弁論終結日平成25年12月6日判決アメリカ合衆国メリーランド州<以下略>原告レクサンファーマシューティカルズインコーポレイテッド大韓民国デジョン<以下略>原告コーリアリサーチインスティテュートオブケミカルテクノロジー上記2名訴訟代理人弁護士中村 稔同松尾和子同熊倉禎男同富岡英次同辻居幸一同田 中 伸一郎同吉田和彦同補佐人弁理士箱田 篤同西島孝喜東京都千代田区<以下略>被告国処分行政庁特許庁審査官裁決行政庁特許庁長官同指定代理人木村智博同梅田 敦 同上田智子同駒﨑利徳同古閑裕人同蛭田 敦 主文 駒﨑利徳同古閑裕人同蛭田 敦 主文 1 特許庁審査官が原告らに対し特許出願2007-542886につき平成23年10月31日付け(平成23年11月7日発送)でした「原査定を取り消す。この出願については,拒絶の理由を発見しないから,特許査定をする。」旨の特許査定を取り消す。 2 特許庁長官が,原告らに対し平成24年4月26日付けでした行政不服審査法による異議申立て(20120329行服特許第2号)を却下する旨の決定を取り消す。 3 原告らの主位的請求第1項,第2項の請求をいずれも棄却する。 4 原告らの主位的請求第3項及び予備的請求第3項に係る請求をいずれも却下する。 5 訴訟費用はこれを2分し,その1を被告の負担とし,その余を原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求(主位的請求) 1 特許庁審査官が原告らに対し特許出願2007-542886につき平成23年10月31日付け(平成23年11月7日発送)でした「原査定を取り消す。この出願については,拒絶の理由を発見しないから,特許査定をする。」旨の特許査定が無効であることを確認する。 2 特許庁長官が,原告らに対し平成24年4月26日付けでした行政不服審査法による異議申立て(20120329行服特許第2号)を却下する旨の 決定を取り消す。 3 特許庁審査官は,特許庁審査官が原告らに対し特許出願2007-542886につき平成23年10月31日付け(平成23年11月7日発送)でした「原査定を取り消す。この出願については,拒絶の理由を発見しないから,特許査定をする。」旨の特許査定を取り消 2007-542886につき平成23年10月31日付け(平成23年11月7日発送)でした「原査定を取り消す。この出願については,拒絶の理由を発見しないから,特許査定をする。」旨の特許査定を取り消さなければならない。 (予備的請求) 1 主文第1項同旨 2 主文第2項同旨 3 特許庁審査官は,特許庁審査官が原告らに対し特許出願2007-542886につき平成23年10月31日付け(平成23年11月7日発送)でした「原査定を取り消す。この出願については,拒絶の理由を発見しないから,特許査定をする。」旨の特許査定を取り消さなければならない。 第2 事案の概要本件は,原告らが,その平成17年10月18日付け出願に係る特願2007-542886につき,誤った内容を記載した手続補正書を提出したのに対し,特許庁審査官が,上記手続補正に係る特許出願につき,平成23年10月31日付けで拒絶査定を取り消し,特許査定をする旨の決定をし(以下「本件特許査定」という。),原告らが,本件特許査定につき取消しを求める旨の行政不服審査法(以下「行服法」という。)に基づく異議申立てをしたのに対し,特許庁長官が,平成24年4月26日付けで却下決定をした(以下「本件却下決定」という。)ことに関し,主位的には①本件特許査定が無効であることの確認(行政事件訴訟法〔以下「行訴法」という。〕3条4項所定の抗告訴訟としての無効確認訴訟),②本件却下決定の取消し(行訴法3条3項所定の裁決取消訴訟)及び③特許庁審査官につき本件特許査定を取り消すことの義務付け(行訴法3条6項2号所定の申請型義務付け訴訟)を求め,予備的には①本件特許査定の取消し(行訴法3条2項所定の抗告訴訟としての取消訴訟),②本 件却下決定の取消し(上記主位的請求②と同じ),③特許庁審査官につ 2号所定の申請型義務付け訴訟)を求め,予備的には①本件特許査定の取消し(行訴法3条2項所定の抗告訴訟としての取消訴訟),②本 件却下決定の取消し(上記主位的請求②と同じ),③特許庁審査官につき本件特許査定を取り消すことの義務付け(上記主位的請求③と同じ)を各求めた事案である。 1 前提事実(争いのない事実以外は,証拠等を末尾に記載する。)(1) 本件特許出願ア原告らは,平成17年10月18日,発明の名称「1-[(6,7-置換-アルコキシキノキサリニル)アミノカルボニル]-4-(ヘテロ)アリールピペラジン誘導体」とする発明につき,平成16年11月17日を出願日とする大韓民国特許庁10-2004-0094232及び10-2004-0094233を基礎とするパリ条約に基づく優先権を主張して,千九百七十年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約(以下「PCT条約」という。)に基づき,大韓民国特許庁を受理官庁とする国際出願(国際出願番号:PCT/KR2005/003463)をした。 上記国際出願は,特許法184条の3第1項に基づき,上記国際出願日に日本国においてされた特許出願とみなされた(以下「本件特許出願」という。)。 イ原告らは,本件特許出願について,日本国特許庁長官に対し,平成19年5月17日に同法184条の5第1項各号所定の書面を,同年7月17日に同法184条の4第1項所定のPCT国際出願の明細書及び請求の範囲等の翻訳文を各提出した(上記翻訳に係る明細書を「本願明細書」という。)。 本件特許出願には,出願番号として特願2007-542886号が付され,その翻訳文等は,平成20年6月19日に国内公表された。 ウ本件特許出願に係る【特許請求の範囲】の【請求項1】の出願当初の記載は次のとおりである 願番号として特願2007-542886号が付され,その翻訳文等は,平成20年6月19日に国内公表された。 ウ本件特許出願に係る【特許請求の範囲】の【請求項1】の出願当初の記載は次のとおりである。 「下記化学式1で表される1-[(6,7-置換-アルコキシキノキサ リニル)アミノカルボニル]-4-(ヘテロ)アリールピペラジン誘導体又は薬剤学的に許容可能なそれらの塩。 (化学式1~省略~)前記化学式1において,X及びYは各々NまたはC-R7であり,R1及びR2は各々水素原子,C1-C6アルコキシ,C1-C6アルキルまたはハロゲンであり,R3はC1-C6アルキルであり,R4,R5,R6及びR7は各々水素,C1-C6アルコキシ,C1-C6アルキル,C1-C6ハロアルキル,C1-C6アルキルカルボニル,ハロゲン,シアノまたはニトロである。」また,本願明細書の段落【0260】には,発明の産業上の利用可能性として,「癌を含む過剰増殖性疾患の治療に有効である。」と記載されている(以上につき甲1)。 (2) 出願審査請求原告らは,平成19年8月7日,特許庁長官に対し,本件特許出願について出願審査請求をした。 (3) 拒絶理由通知・手続補正書の提出等ア特許庁審査官であるA(以下「担当審査官」という。)は,平成22年7月20日,同月8日起案に係る本件特許出願についての拒絶理由通知書を発出した。 上記拒絶理由通知記載の拒絶理由の1点目は,請求項8の発明は,引用文献1,2(特開昭55-105685号公報,林英作ら「含窒素芳香族複素環化合物84種の抗腫瘍性について」)に記載等された発明であるから,新規性を欠くというものであった。 上記拒絶理由通知記載の拒絶理由の2点目は,請求項1-6,9,10に係る発明は,引用文献3( 複素環化合物84種の抗腫瘍性について」)に記載等された発明であるから,新規性を欠くというものであった。 上記拒絶理由通知記載の拒絶理由の2点目は,請求項1-6,9,10に係る発明は,引用文献3(特表2002-538153号公報)により進歩性を欠くというものであり,理由2の説明の備考欄には,次のように 記載されていた。 「請求項1-6,9,10に係る発明と引用文献3に記載された発明を対比すると,同項に係る発明はキノキサリン環の6位,7位の置換基としてアルコキシ,アルキル,ハロゲンといった水素原子以外の官能基を有する化合物が含まれる点で,引用文献3に記載された発明と相違する。しかしながら,…引用文献3記載のキノキサリン化合物において,キノキサリン環の6位,7位にアルコキシ,アルキル,ハロゲンといった創薬化学で汎用される置換基を導入した化合物を創製し,その抗潰瘍活性を確認することは,当業者が容易に想到するものである。」(甲2)イ原告らは,平成23年1月20日,特許庁長官に対し,本件特許出願に係る手続補正書(甲4)及び意見書(甲3)を提出した。 上記手続補正書により,本件特許出願に係る【特許請求の範囲】の【請求項1】の記載は次のとおりのものとなった(甲4)。 「下記化学式1で表される1-[(6,7-置換-アルコキシキノキサリニル)アミノカルボニル]-4-(ヘテロ)アリールピペラジン誘導体又は薬剤学的に許容可能なそれらの塩。 (化学式1~省略~)前記化学式1において,X及びYは各々NまたはC-R7であり,R1及びR2は各々水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたはハロゲンであり,R3はC1-C3アルキルであり,R4,R5,R6及びR7は各々水素,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキル,C1-C3ハロ 素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたはハロゲンであり,R3はC1-C3アルキルであり,R4,R5,R6及びR7は各々水素,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキル,C1-C3ハロアルキル,C1-C3アルキルカルボニル,ハロゲン,シアノまたはニトロである。ただし,R1及びR2が同時に水素原子であることはない。」原告らは,意見書(甲3)において,拒絶理由通知の理由1について,次のように述べている。 「請求項8はこれを削除しましたので,引用文献1,2に基づく拒絶理由は解消されました。…補正後の請求項1に係る発明は,『キノキサリン環の6,7位の置換基R1及びR2が同時に水素原子であることはない』と規定され,引用文献3記載の化合物とは明確に区別されています。」原告らは,また,拒絶理由通知の理由2について,引用文献3の化合物42と本願発明の化合物10(本願明細書の段落【0247】~【0253】の【表1】に示された実施例としての196の化合物及び段落【0258】の【表2】に示された上記196の化合物のうちで細胞成長抑制効果の実験効果が示された50の化合物の双方の表に示されている番号10の化合物)ついて,「ヒトの癌細胞株に対する細胞成長抑制(IC50(μM))」についての比較結果についての表を示し,「上記の表から,本願発明の化合物は,引用文献3の化合物と比較して顕著な抗潰瘍活性を有することがわかります。」と述べた。 (4) 拒絶査定担当審査官は,平成23年2月14日,前記(3)イの補正後の本件特許出願について拒絶査定をした(以下「本件拒絶査定」という。)(甲5)。 拒絶査定の備考欄では,次のように述べられている。 「確かに意見書中の比較試験結果に使用される本願発明の化合物10は,引用文献3の化合物 絶査定をした(以下「本件拒絶査定」という。)(甲5)。 拒絶査定の備考欄では,次のように述べられている。 「確かに意見書中の比較試験結果に使用される本願発明の化合物10は,引用文献3の化合物42に比して優れた抗潰瘍活性を示すものと認められる。 しかしながら,本願明細書の表2に記載される薬理試験結果をみると,引用文献3の化合物42と同程度の活性又は劣る活性を示す化合物も存在する(例えば,化合物52,73,115,136,157,172,193など)ことから,化学式1で表される化合物全体についてまで格別顕著な作用効果を奏するものと認めることができない。」本願発明の化合物10は,本願明細書の段落【0247】で示された本願発明の実施例の10番目のもの(番号10)であり,R1がフッ素,R2が 水素のものであった。 (5) 拒絶査定不服審判請求等ア原告らは,平成23年6月20日,特許庁長官に対し,本件拒絶査定につき拒絶査定不服審判を請求するとともに,本件特許出願に係る手続補正書(甲10)(以下「本件補正書」という。)を提出した(以下,本件補正書に係る補正を「本件補正」という。)(甲9,10)。 イ本件補正により,本件特許出願に係る【特許請求の範囲】の【請求項1】の記載は次のとおりのものとなった(甲10。なお,補正箇所には下線を付した)。 「下記化学式1で表される1-[(6,7-置換-アルコキシキノキサリニル)アミノカルボニル]-4-(ヘテロ)アリールピペラジン誘導体又は薬剤学的に許容可能なそれらの塩。 (化学式1~省略~)前記化学式1において,X及びYは各々NまたはC-R7であり,R1はフッ素であり,R2は塩素であり,R3はC1-C3アルキルであり,R4,R5,R6及びR7は各々水素,C1-C3アルコキシ )前記化学式1において,X及びYは各々NまたはC-R7であり,R1はフッ素であり,R2は塩素であり,R3はC1-C3アルキルであり,R4,R5,R6及びR7は各々水素,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキル,C1-C3ハロアルキル,C1-C3アルキルカルボニル,ハロゲン,シアノまたはニトロである。ただし,R1及びR2が同時に水素原子であることはない。」ウ前記補正は,「R1はフッ素であり,R2は水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素であり」と補正すべきところを,出願人(原告ら)代理人であったB(以下「担当弁理士」という。)が誤って「水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは」の部分を削除して本件補正書を作成したことによりされたものであった(甲7ないし9,14の10,23,証人B)。 (6) 審査前置移管通知 特許庁長官は,前記拒絶査定不服審判請求について,本件特許出願の担当審査官にその審査をさせることとし(特許法162条),同年8月8日発送に係る審査前置移管通知により,原告らに対しその旨を通知した(甲11)。 (7) 本件特許査定担当審査官は,同年10月31日,原査定を取り消し,本件補正後の本件特許出願につき本件特許査定をし(甲12),原告らは,同年11月7日,本件特許査定の謄本の送達を受けた。 (8) 行政不服審査法による異議申立てア原告らは,平成24年1月6日,行服法に基づき,特許庁長官に対し,本件特許査定を取り消す旨の決定を求める異議申立てをした(以下「本件異議申立て」という。)(甲13)。 異議申立ての理由において,原告らは,審査官は,実際にされた補正の内容が真実は出願人と合意に至ったものではなく,審査官自らがその進歩性を認 以下「本件異議申立て」という。)(甲13)。 異議申立ての理由において,原告らは,審査官は,実際にされた補正の内容が真実は出願人と合意に至ったものではなく,審査官自らがその進歩性を認めた本願発明10の化合物が包含されない記載内容であるにもかかわらず,出願人と合意した内容のものであると誤信し,特許査定したものであるなどと主張し,審査官又は審判官が錯誤により特許査定した場合に,特許庁サイドの職権で取り消す場合があることを指摘した。 イ特許庁長官は,同年4月26日,特許査定について行服法により異議申立てをすることは,特許法195条の4(平成23年法律第63号による改正前のもの。)及び行服法4条1項に違背し不適法であるとして,同法47条1項を適用し,本件異議申立てを却下する旨の決定(本件却下決定)をした(甲15)。 (9) 本件訴訟の提起原告らは,平成24年8月27日,当庁に本件訴訟を提起した(当裁判所に顕著)。 2 争点 (1) 本案前の争点ア本件特許査定の取消義務付けの訴え(主位的請求第3項及び予備的請求第3項)の適法性(ア) 本件が「法令に基づく申請又は審査請求がされた場合」(行訴法3条6項2号)に該当するか。 (イ) 本件特許査定の取消義務付けの訴えが行訴法37条の3第3項の要件(併合提起)及び同条1項2号の要件(処分等取消訴訟等の認容)を満たすか。 イ本件特許査定の取消しの訴え(予備的請求第1項)の適法性(2) 本案の争点ア本件特許査定についての無効事由の有無(主位的請求第1項)イ本件特許査定についての取消事由の有無(予備的請求第1項)ウ本件却下決定についての取消事由の有無(主位的請求第2項及び予備的請求第2項)エ本件特許査定の取消しの義 主位的請求第1項)イ本件特許査定についての取消事由の有無(予備的請求第1項)ウ本件却下決定についての取消事由の有無(主位的請求第2項及び予備的請求第2項)エ本件特許査定の取消しの義務付けの成否(主位的請求第3項及び予備的請求第3項)第3 争点に対する当事者の主張 1 本案前の争点(争点(1)ア・本件特許査定の取消義務付けの訴えの適法性)(1) 本件が「法令に基づく申請又は審査請求がされた場合」(行訴法3条6項2号)に該当するか(争点(1)ア(ア))。 (被告の主張)ア行訴法3条6項2号及び37条の3第1項によれば,申請型の義務付けの訴えは,「法令に基づく申請又は審査請求」がされた場合に提起することができるところ,「法令に基づく申請又は審査請求」とは,法令に基づき申請又は審査請求をする権利が国民に認められる場合におけるその申請又は審査請求をいう趣旨と解されており,申請権がない場合又は申請権等 があっても申請等がされていない場合には,上記要件を満たさず,かつ,原告適格も認められないことになる。 イ本件において,原告らは,本件特許査定の取消しの義務付けを求めているから,当該訴えが適法であるためには,本件特許査定の取消しという法令に基づく申請又は審査請求が適法にされていることが前提となる。しかしながら,特許法上,上記申請又は審査に係る規定は存在せず,そのような申請をする権利も認められていない。 ウこの点,原告らは,本件異議申立てをもって,「法令に基づく申請又は審査請求」がされていると主張する。 しかし,特許法195条の4は,拒絶をすべき旨の査定と特許をすべき旨の査定を区別することなく,単に「査定…については,行政不服審査法による不服申立てをすることができない」と規定しており,同条の「査定」 し,特許法195条の4は,拒絶をすべき旨の査定と特許をすべき旨の査定を区別することなく,単に「査定…については,行政不服審査法による不服申立てをすることができない」と規定しており,同条の「査定」に,同法51条にいう特許査定が含まれることは,文言上明らかである。特許法において,同様に「査定」と規定する特許法52条及び54条2項も,いずれも拒絶をすべき旨の査定と特許をすべき旨の査定を含むと解されている。 原告らは,瑕疵のある特許査定について出願人が争う利益につき主張するが,そもそも特許査定につき出願人が争う利益を有する場合が想定し難い。また,仮に出願人がこれを争う利益を有する場合であっても,出願人は行訴法3条2項又は4項に基づく特許査定取消しの訴え又は無効確認の訴えをすることが可能であるから,出願人の救済手段に欠けるものではない。 したがって,特許査定は,行服法4条1項但し書きの「他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分」に該当し,本件異議申立ては,「法令に基づく申請又は審査請求」に当たらない。 (原告らの主張) ア原告らは,本件特許査定につき,本件異議申立てを行っているから,本件は「法令に基づく申請又は審査請求がされた場合」(行訴法3条6項2号)に該当する。 イ被告は,特許査定については,特許法195条の4により,行服法による不服申立てをすることができないから,本件査定に対してなされた本件異議申立ては「法令に基づく申請又は審査請求」(行訴法3条6項2号及び37条の3第1項)に当たらないと主張する。しかし,特許法195条の4にいう「査定」は拒絶査定を意味し,上記「査定」には,特許法51条にいう特許査定が含まれないものと解すべきである。 すなわち,特許法195条の4は,①査定又は審 主張する。しかし,特許法195条の4にいう「査定」は拒絶査定を意味し,上記「査定」には,特許法51条にいう特許査定が含まれないものと解すべきである。 すなわち,特許法195条の4は,①査定又は審決,②審判又は再審の請求書の却下の決定,③この法律の規定により不服を申し立てることができないこととされている処分につき,行服法による不服申立てをすることができないと規定しているところ,上記①及び②については,いずれも特許法上の特別の不服申立手続が規定され(特許法121条),又は直接行政訴訟を提起すべきことが規定されており(同法178条),行服法に基づく不服申立てを許す必要性がない。また,上記③については,必要性及び妥当性の観点から,不服申立てができないことが特許法上で明示されている(除斥又は忌避申立てについての決定についての同法143条3項等参照)。 これに対し,特許査定は,特許法上,不服を申し立てることができないことが明示されているものではない。また,特許法121条は,不服審判の対象を「拒絶をすべき旨の査定」に限定しているところ,上記規定は,旧特許法において「査定」としていたものを「拒絶をすべき旨の査定」に限定したものであるから,上記査定に特許査定は含まれず,特許査定については,特許法上,独自の不服申立手続は規定されていない。 そうすると,瑕疵ある特許査定についての出願人の利益を保護するため, 行服法による不服申立ての利益を確保させるべく,特許法195条の4にいう「査定」は拒絶査定に限定され,特許査定は上記「査定」に含まれないものと解するべきである。 被告は,52条及び54条2項の「査定」が特許査定と拒絶査定の双方を含むものであることを指摘するが,これらの規定は49条(拒絶査定)と51条(特許査定)を,同じ第3章 ものと解するべきである。 被告は,52条及び54条2項の「査定」が特許査定と拒絶査定の双方を含むものであることを指摘するが,これらの規定は49条(拒絶査定)と51条(特許査定)を,同じ第3章(審査)の規定の中で,直接受けたものであるのに対し,195条の4は49条,51条から離れて第10章(雑則)に置かれており,その立法趣旨もそれぞれ異なるから,52条及び54条2項の「査定」が特許査定と拒絶査定の双方を含むからといって,195条の4の「査定」を同様に解すべきことにはならない。 なお,特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」[第19版]は,特許法195条の4の列記する,行服法による不服申立てをすることができない処分とは,「査定のように特許法上で審判という不服申立ての途を設けているものである。」と記載しているのであるから,審判による不服申立てが認められていない特許査定については,行服法による不服申立てを許すというのが立法趣旨であると解される。学説上も,拒絶査定が行服法による不服申立ての対象外とされた趣旨は,別途不服申立ての途が設けられていることにあると説明されている。 ウこのように解することなく,特許法195条の4にいう「査定」に特許査定が含まれると解することは,行政庁の処分その他公権力の行使に対し広く不服申立てを認め,行政庁による再審査により簡易迅速な手続で国民の権利利益の救済を図るとともに,行政の適切な運営を確保するという行服法の趣旨や,高度の専門的知識を要する査定の当否判断を,専門的知識を有し,かつ,裁判所に類似する機能を備える審判合議体にさせることとした特許法195条の4の趣旨に反するものであり,手続経済上も,特許出願人の権利救済の上でも著しく不当な結論となる。 エ被告は,特許査定についてはこれを取 備える審判合議体にさせることとした特許法195条の4の趣旨に反するものであり,手続経済上も,特許出願人の権利救済の上でも著しく不当な結論となる。 エ被告は,特許査定についてはこれを取り消す実益がなく,不服申立てを認める必要性がないと主張するが,現実には,特許査定が過誤によってされ,これにより出願人が不利益を被ることが十分に考えられるのであり(三宅正雄著「特許争訟雑感」〔改訂版〕35頁以下は上記不利益について言及している。),学説上も,査定に重大な瑕疵がある場合には審査官がこれを取り消すことができると解するものがある(青木康・荒垣恒輝著「新版・特許手続法」102頁)。このような観点に立てば,当然,特許法195条の4の「査定」に特許査定は含まれないという見解が導かれるはずである。 オ特許庁が作成した「職権取消通知等に関する審査官用マニュアル」によれば,特許査定が誤りによってなされた場合であって,審査官自らが誤りに気付いたときのみならず,出願人側がこれに気付いて指摘をしたときにも,審査官が特許査定について職権取消通知を行うことを定めている。出願人が誤りに気付いて指摘をした場合に職権取消が行われ得るにもかかわらず,出願人が上記指摘ではなく行服法による異議申立てをした場合には,上記異議申立てが却下されるとすれば,明らかに不合理である。 カしたがって,特許法195条の4にいう「査定」には特許査定は含まれないから,原告らが本件特許査定についてした本件異議申立ては,「法令に基づく申請又は審査請求」(行訴法3条6項2号)に該当する。 (2) 本件特許査定の取消義務付けの訴えが行訴法37条の3第3項の要件(併合提起)及び同条1項2号の要件(処分等取消訴訟等の認容)を満たすか(争点(1)ア(イ))。 (被告の主張)ア行訴 2) 本件特許査定の取消義務付けの訴えが行訴法37条の3第3項の要件(併合提起)及び同条1項2号の要件(処分等取消訴訟等の認容)を満たすか(争点(1)ア(イ))。 (被告の主張)ア行訴法37条の3第1項2号に係る申請型義務付けの訴えを提起するときには,同号に規定する処分に係る取消訴訟等を併合して提起しなければならないところ(行訴法37条の3第3項),当該取消訴訟等は訴訟要件 を満たす適法なものでなければならない。また,行訴法37条の3第1項2号からは,当該取消訴訟等が認容されることが訴訟要件となるものと解される。 イ原告らは,主位的請求第1項の本件特許査定無効確認の訴え及び予備的請求第1項の本件特許査定の取消しの訴えを併合提起しているから行訴法37条の3第3項2号の要件を満たし,かつ,これらは認容されるべきものであるから同条1項2号の要件も満たすと主張する。しかし,争点(1)イ,争点(2)アに関し主張するとおり,本件特許査定の取消しの訴えは不適法として却下されるべきものであり,かつ,本件特許査定の無効確認の訴えが認容されないことが明らかであるから,本件特許査定の取消義務付けの訴えは,行訴法37条の3第3項,同条1項2号の要件をいずれも満たさない。 (原告らの主張)ア原告らは,本件特許査定取消義務付けの訴えに併合して,主位的請求第1項において本件特許査定無効確認の訴えを,予備的請求第1項において本件特許査定取消しの訴えを併合提起しているところ,本件特許査定の取消しの訴えが適法であること並びに本件特許査定が無効とされ,又は取り消されるべきものであることは,争点(1)イ及び争点(2)ア・イについて主張するとおりである。 イしたがって,本件特許査定の取消義務付けの訴えは,行訴法37条の3第3項,同条1項2 れ,又は取り消されるべきものであることは,争点(1)イ及び争点(2)ア・イについて主張するとおりである。 イしたがって,本件特許査定の取消義務付けの訴えは,行訴法37条の3第3項,同条1項2号の要件をいずれも満たすものである。 ウ被告は,本件特許査定処分の取消しについて,出訴期間を徒過しているため訴えを提起することができないとして争っている上,無効等確認の訴えについても,固有の訴訟要件を欠くためにこれを提起することができないとされる場合があり得るのであるから,原告らが,このような場合(本件特許査定につき処分取消しの訴え又は無効等確認の訴えを提起すること ができないとされる場合)に備え,本件特許査定の取消義務付けの訴えを提起することに問題はない。 2 本案前の争点(争点(1)イ・本件特許査定の取消しの訴えの適法性)(被告の主張)(1) 取消訴訟は,処分又は裁決があったことを知った日から6か月を経過したときは提訴することができない(行訴法14条1項本文)。 本件において,原告らは,平成23年11月7日に本件特許査定の謄本の送達を受けているから,平成24年5月7日の経過をもって取消訴訟の出訴期間が経過したものである。しかるに,原告らは,上記出訴期間経過後の同年8月27日に本件訴訟を提起したものであり,上記出訴期間の徒過に行訴法14条1項但し書きにいう「正当な理由」も認められないから,本件特許査定の取消しの訴えは,出訴期間を徒過した不適法な訴えである。 (2) 原告らは,本件却下決定があったことを知った日から6か月経過前に本件却下決定取消しの訴えを提起し,同訴えに併合して本件特許査定の取消しの訴えを提起しているから,行訴法20条により,本件特許査定の取消しの訴えについても出訴期間が遵守されている旨主張する。 に本件却下決定取消しの訴えを提起し,同訴えに併合して本件特許査定の取消しの訴えを提起しているから,行訴法20条により,本件特許査定の取消しの訴えについても出訴期間が遵守されている旨主張する。 しかし,行訴法20条は,「前条第1項前段の規定により,処分の取消しの訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えに併合して提起する場合」と規定しているところ,本件異議申立ては不適法なものとして却下決定がされているのであるから,本件特許査定の取消しの訴えに行訴法20条の適用はない。 また,仮に同条の適用があるとしても,その効果は「処分の取消しの訴えは,裁決の取消しの訴えを提起した時に提起されたものとみなす」というものであるから,本件において,本件特許査定の取消しの訴えと本件却下決定の取消しの訴えが同日に提起されている以上,行訴法20条の適用によって結論が異なるものではない。 なお,行訴法14条3項により出訴期間の延長が認められるのは,「処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合」であり,不適法な審査請求に対する却下裁決がされた場合には同条は適用されないから,本件異議申立てが不適法なものであり,これが却下されている以上,本件特許査定の取消訴訟について,同条は適用されない。 したがって,原告らの主張はいずれも失当である。 (原告らの主張)(1) 原告らは,平成24年4月26日付けで本件却下決定の送達を受け,これにより本件却下決定処分を知ったものであるところ,同日から6か月を経過する前である同年8月27日,本件却下決定の取消しの訴えを提起したものであるから,同訴訟につき行訴法14条1項所定の出訴期間の要件を充足している。そして,原告らは,上記本件却下決定取消しの訴えと併合して,その原処分に 27日,本件却下決定の取消しの訴えを提起したものであるから,同訴訟につき行訴法14条1項所定の出訴期間の要件を充足している。そして,原告らは,上記本件却下決定取消しの訴えと併合して,その原処分に該当する本件特許査定についての取消しの訴えを提起しているのであるから,行訴法20条の規定により,本件特許査定の取消しの訴えについても,同法14条1項所定の出訴期間の要件を充足するものである。 (2) 原告らは,本件特許査定について行服法による審査請求(本件異議申立て)をしているのであるから,行訴法14条3項により,出訴期間の延長が認められる。なお,本件異議申立てが適法なものであることは,争点(1)ア(ア)で主張したとおりである。 なお,本件却下決定は,特許査定が特許法195条の4の「査定」に含まれ,行服法4条1項但し書きにより,本件特許査定について異議申立てをすることができないという誤った判断に基づくものであるから,本件異議申立てが却下されていることをもって行訴法20条及び14条3項の適用を否定することはできない。 3 本案の争点(争点(2)ア・本件特許査定についての無効事由の有無)(原告らの主張) (1) 本件特許査定に至る経緯ア原告らは,前記前提事実(3)のとおり,本件特許出願につき,担当審査官から拒絶理由通知を受けたことから,平成23年1月20日付けで手続補正書(甲4)及び意見書(甲3)を提出し,引用文献3記載の化合物42と本願明細書記載の化合物10の抗腫瘍活性の比較試験結果を示すとともに,化合物の一部を限定した。担当審査官は,これに対し,本件拒絶査定をしたものであるが(前記前提事実(4)),本件拒絶査定は,本願明細書記載の化合物10については抗腫瘍活性が認められるものの,その余の化合物中に引用文献3の化合物4 査官は,これに対し,本件拒絶査定をしたものであるが(前記前提事実(4)),本件拒絶査定は,本願明細書記載の化合物10については抗腫瘍活性が認められるものの,その余の化合物中に引用文献3の化合物42と抗腫瘍活性において同等又は劣るものが含まれているから拒絶査定するというものであり,担当審査官が特許請求の範囲に含まれる化合物を適当な範囲に限定すれば特許査定が可能であると考えていることが明らかであった。 イそこで,原告ら代理人であった担当弁理士は,平成23年6月8日,手続補正書の作成に際して予め担当審査官にその案を説明するため(特許庁作成の「面接ガイドライン」「1.2 面接の代表例とその概要」(2)),担当審査官と電話面接を行い,担当弁理士がR1をフッ素に限定する補正を申し出たところ,担当審査官はこれを了承した。その上で,担当審査官は,R2のうちの「ハロゲン」が,このままではフッ素も含むことになるので,塩素に限定しなければならないことを示唆し,担当弁理士は,出願人である原告らの承認を得ることを条件としてこれを了承した。上記示唆は,担当審査官が,適正な補正がなされるよう,可能な範囲で補正の示唆等を含め意見を述べた(上記ガイドライン第2節参照)ものであり,当該示唆に従う補正がなされる限り,面接後に新たな事実,証拠を発見した場合を除き,特許査定がされるべきことが事実上合意されたことを意味する。 ウ担当弁理士は,上記示唆に従い,R2のうちの「ハロゲン」を塩素に限定することにつき,出願人である原告らの了解を得て,本件補正書を作成 したが,上記作成に当たり,本来,「水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素」とすべきところ,錯誤により「水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは」の部分を削除して,R 記作成に当たり,本来,「水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素」とすべきところ,錯誤により「水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは」の部分を削除して,R2を「塩素」という著しく狭い範囲に限定し,かつ,削除すべき但し書き部分(「ただし,R1及びR2が同時に水素原子であることはない。」)を残してしまった。 エ担当審査官は,前記のとおり誤ってなされた本件補正後の発明につき,本件特許査定をした。 (2) 特許査定についての重大な瑕疵(その1)特許法51条は,「審査官は,特許出願について拒絶の理由を発見しないときは,特許をすべき旨の査定をしなければならない。」と規定しているところ,「拒絶の理由を発見しないとき」とは,特許出願に係る発明の技術分野を担当する審査官のうち,平均的な審査官が職務において通常払うべき注意を払って審査した結果,拒絶の理由を発見することができなかった場合をいうと解されるから,審査官は,上記注意を払って審査を行うべき義務を負う。なお,特許法162条の規定に照らし,拒絶査定不服審判請求と同時に手続補正書により補正がされた場合に,手続補正に係る発明について審査をすることは,審査官に課せられた義務であり,審査官は,手続補正に係る発明が特許性を有するかどうか審査すべき責任を負うところ,特許法51条は,同法163条3項により,前置審査の場合に準用されている。 したがって,手続補正に係る発明の特許性について,審査官が全く審査することなく,または実質的に審査をすることなくして特許査定(拒絶査定を取り消し,上記補正に係る特許出願につき特許査定をする旨の決定)を行った場合,特許法51条の定める審査官の審査義務に違背する重大な違法があるというべきである。そして,本件において,担当審査官が本件補 取り消し,上記補正に係る特許出願につき特許査定をする旨の決定)を行った場合,特許法51条の定める審査官の審査義務に違背する重大な違法があるというべきである。そして,本件において,担当審査官が本件補正後の発明を全く審査せず,又は実質的に審査することなく本件特許査定をしたもの であることは,次の点から明らかである。 ア本件補正後の発明について,本件拒絶査定記載の拒絶理由が解消されていないのに,これを看過していること(ア) 本件拒絶査定の理由は,本願発明の化合物10は,引用文献3の化合物42に比して優れた抗腫瘍活性を示すものと認められるが,これを除く本願明細書の【発明の詳細な説明】【表2】の化合物中には,上記化合物42と同程度又は劣る活性を示す化合物も含まれるから,請求項1記載の化合物全体にまで顕著な効果を認めることができないというものであった。これによれば,担当審査官が,引用文献3の化合物42に比して優れた抗腫瘍活性を示すものでなければ進歩性を有しないと判断していたことは明らかである。 (イ) しかるに,本願明細書には,R1がフッ素,R2が塩素の化合物の実施例の記載自体がなく,その薬理データも全く示されていない。そもそも,R1がフッ素,R2が塩素である化合物の製造の実施例もないのであるから,そのような化合物の薬理データを示し得るはずもなかった。 また,R1とR2が共にフッ素である化合物,R1とR2が共に塩素である化合物の抗腫瘍活性は,引用文献3の化合物42の抗腫瘍活性と比較して劣るから(本願明細書の化合物172,177の薬理データ参照。 例えば,化合物172,177の示す細胞成長抑制作用は,最良でも0. 56μmであり,審査官が進歩性判断の基準とする引用文献3の化合物42の0.05μmと比較して10分の1程度である。),本願 参照。 例えば,化合物172,177の示す細胞成長抑制作用は,最良でも0. 56μmであり,審査官が進歩性判断の基準とする引用文献3の化合物42の0.05μmと比較して10分の1程度である。),本願明細書の記載から,R1がフッ素,R2が塩素の化合物の抗腫瘍活性が優れていると予測することも不可能である。 (ウ) したがって,本願明細書からは,本件補正後の発明に記載された化合物が,引用文献3の化合物に比して優れた抗腫瘍活性を示すものとは認められず,本件補正により拒絶理由が解消されたとは到底認定できな いものであるところ,担当審査官は,この点を看過したものである。 (エ) この点に関し,被告は,担当審査官は,本件補正後の発明に記載された化合物と引用文献3に記載された化合物との構造上の違いを重視し,原告らの提出した平成23年1月20日付け意見書や本願明細書の記載内容等を総合考慮して,本件補正後の発明に進歩性があると判断した旨主張する。しかし,化合物発明において,基本骨格が同じ化合物について,単に置換基が異なることをもって構造上の違いがあるとし,当該相違点を重視して進歩性を判断することは当業者の常識及び特許庁における実務慣行に明らかに反する。担当審査官も,本件拒絶理由通知(甲2)においては,両化合物の基本骨格が同じであり,かつ,導入される置換基が創薬化学で汎用されるものである場合には,置換基の違いにより引用文献記載の化合物と比して格別の効果が認められなければ進歩性を認められないとして,上記技術常識及び実務慣行に沿った論理を用いている。したがって,担当審査官が,その述べるような理由により本件補正後の発明に進歩性があると判断したとは到底考えられない。 イ本件補正後の発明は,本件拒絶査定において特許性があると判断された発明を包含してい って,担当審査官が,その述べるような理由により本件補正後の発明に進歩性があると判断したとは到底考えられない。 イ本件補正後の発明は,本件拒絶査定において特許性があると判断された発明を包含していないのに,これを看過していること本件拒絶査定において,担当審査官は,本願明細書記載の化合物10(R1がフッ素,R2が水素のもの)は引用文献3の化合物42に比して優れた抗腫瘍活性を示すものと認められる旨記載しており,上記化合物10について特許性があると判断していたことが明らかである。ところが,本件補正に係る発明においては,R1がフッ素,R2が塩素の化合物のみを特許請求していることとなり,上記のとおり特許性があると判断された化合物10を包含しないものとなっていたところ,担当審査官はこの点を看過したものである。 ウ本件補正後の発明には,特許法36条4項1号(実施可能要件),6項 1号(サポート要件),2号(明確性要件)違反の新たな拒絶理由が生じているのに,これを看過していること(ア) 特許法36条4項1号(実施可能要件)a 特許法36条4項1号にいう「その実施をすることができる」とは,当該発明が物の発明である場合には,その物を作ることができ,使用できることをいう。 b 本件補正後の発明に記載された化合物については,本願明細書の記載から薬理作用の有無を把握することができない。化合物の構造が類似していても,類似の薬理作用を奏するとは限らないことは技術常識であるところ,本願明細書に記載された置換基の種類と薬理作用との相関関係を見ると,当該置換基がR1とR2のいずれの部位に結合するか,又は置換基の組み合わせ如何によって,薬理作用に大きな相違が生じることが看取されるのであって,置換基の種類を問わず,一定以上の薬理作用があるとは ,当該置換基がR1とR2のいずれの部位に結合するか,又は置換基の組み合わせ如何によって,薬理作用に大きな相違が生じることが看取されるのであって,置換基の種類を問わず,一定以上の薬理作用があるとは到底いえない。 c したがって,本件補正後の発明に記載された化合物の薬理作用は本願明細書に示されていないのであるから,本件補正後の発明は,当業者が実施することができる程度に明細書に記載されたものに当たらず,実施可能要件を満たさない。 (イ) 同法36条6項1号(サポート要件)a 化学物質発明の審査においては,明細書に化学物質の同定資料を記載し,かつ,少なくとも1つ以上の製造方法を記載することが求められ,また,特許請求の範囲に記載された化学物質全体が十分に裏付けられる程度に具体的な記載がされていなければならない。特許庁の審査実務において上記記載が求められていることは,審査事例(甲28,30の2,31の2)からも明らかである。 b しかるに,本件補正に係る発明において明示された「R1がフッ素, R2が塩素である化合物」については,本願明細書中の実施例に記載がないのであるから,同定資料が記載されておらず,かつ,その製造方法も記載されていないものである。また,本願明細書にこれを裏付けることが可能な程度の記載もされていないから,本件補正後の発明はサポート要件を満たしていない。 c なお,特許庁編「『明細書,特許請求の範囲又は図面の補正(新規事項)』の審査基準改訂について」の「第Ⅲ部第Ⅲ節明細書,特許請求の範囲又は図面の補正に関する事例集審査基準」で規定する「新規事項の判断に関する事例12」(甲29,38の4)で説明されているとおり,請求項が減縮補正された結果,要求されるサポート要件がより厳格に判断されることは,日本の特許庁にお 審査基準」で規定する「新規事項の判断に関する事例12」(甲29,38の4)で説明されているとおり,請求項が減縮補正された結果,要求されるサポート要件がより厳格に判断されることは,日本の特許庁における現行の審査実務である。上記判断手法によれば,R1がフッ素の実施例,R2が塩素の実施例があっても,R1がフッ素,かつ,R2が塩素の実施例が記載されていなければ,当初明細書に記載した事項の範囲内における補正ではないと判断すべきものである。原告らの主張は,上記審査実務を踏まえ,広い請求項のサポート要件とこれより狭い請求項のサポート要件が異なることを前提とするものであり,原告らの主張に一貫性がないとする被告の主張は上記審査実務を無視するものである。 (ウ) 同法36条6項2号(明確性要件)本件補正に係る請求項1は,冒頭でR1をフッ素,R2を塩素と限定しているにもかかわらず,その末尾で「ただし,R1及びR2が同時に水素原子であることはない。」と記載しているところ,上記記載は相互に矛盾するものであり,請求項1の記載全体から,そこに開示されている発明の趣旨,技術的範囲を正確に理解することは不可能である。 したがって,本件補正後の発明は明確性要件を欠く。 (エ) 以上のとおり,本件補正後の発明には,上記(ア)ないし(ウ)の新た な無効理由が生じているにもかかわらず,担当審査官はこれを看過したものである。 エ本件補正後の発明は,担当審査官と担当弁理士の電話面接により担当審査官から示唆され,担当弁理士が了承した発明の内容と異なるものであったのに,これを看過していること(ア) 前記(1)イのとおり,原告ら代理人であった担当弁理士は,担当審査官との電話面接により,R1をフッ素,R2のうち「ハロゲン」を「塩素」に補正することについて示 のに,これを看過していること(ア) 前記(1)イのとおり,原告ら代理人であった担当弁理士は,担当審査官との電話面接により,R1をフッ素,R2のうち「ハロゲン」を「塩素」に補正することについて示唆を受け,出願人である原告らの了承を受けることを条件としてこれを承諾した。被告は,上記やり取りがされたことを否認するが,上記やり取りが実際に行われたものであることは,担当弁理士と原告らの本国代理人との間のメールのやり取り(甲7,8)等から明らかである。本件において,担当審査官に作成が義務付けられている面接記録が作成されていなかったことを奇貨として上記事実を争うことは許されない。 (イ) 特許庁作成の「面接ガイドライン」が,面接において出願人が審査官の説明を理解したかどうか,及びその結果,どのような対応を約束したかにつき記録を作成することを義務付け,その変更があった場合に出願人等に対し連絡することを要請していることに照らせば,本件における担当審査官との上記やり取りが,単なる示唆にとどまるものではないことは明らかである。出願人が審査官の示唆に従う限り,審査官はその示唆に拘束され,出願人が審査官の示唆を受け容れて了承することは,事実上の「合意」である。本件では,担当弁理士が,担当審査官の示唆を受けて,依頼者(出願人)に確認した上で,示唆された減縮を行うつもであると述べているのであるから,事実上の「合意」が成立している。 そして,本件補正の内容は,上記面接において示唆され,担当弁理士が了承した発明を著しく減縮したものであり,極めて不自然であったにも かかわらず,担当審査官はこれを看過したものである。 オ上記アないしエの事情は,いずれも,担当審査官が本件補正後の発明を全く審査しなかったと判断するに十分な事実である。 カそもそも特許査定 かかわらず,担当審査官はこれを看過したものである。 オ上記アないしエの事情は,いずれも,担当審査官が本件補正後の発明を全く審査しなかったと判断するに十分な事実である。 カそもそも特許査定のように,専門的な知識と高度な判断能力を備えた専門家による周到な審査を要求し,その効力も重大な行政処分について,審査を全く行わず,又は実質的に審査をしていないに等しいような名目的審査のみしか行われていない場合には,その査定の適法性,正確性,妥当性について手続的に何らの保証もないことになるから,その結果なされた特許査定には重大な瑕疵があるというべきである。 (3) 特許査定についての重大な瑕疵(その2)また,仮に,担当審査官が本件補正後の発明について審査を行ったとしても,担当審査官には,行政処分の対象を誤った違法がある。 すなわち,前記(1)イ,ウのとおり,原告ら代理人は,審査官と事実上合意した特許請求の範囲の記載とは異なり,事実上合意した内容の重要部分を削除した本件補正書を提出したところ,審査官は,本件補正書の上記誤りに気付かず,上記合意どおりの特許請求の範囲が記載されているものと誤信し,本件特許査定を行ったものである。したがって,本件は,別の案件を誤って特許査定した場合と異なるところはなく,処分の対象を誤った場合に該当するのであり,この意味でも,本件特許査定には重大な瑕疵があるというべきである。 (4) 特許査定についての重大な瑕疵(その3)さらに,本件においては,前記(2)アないしエでみた事情により,本件補正が,出願人である原告らの重大な過誤,誤記による補正であることが担当審査官に明らかであったところ,このような場合には,担当審査官には,補正の内容が出願人である原告らの真意に沿うものであるかどうかを確認すべき手続上の義務がある な過誤,誤記による補正であることが担当審査官に明らかであったところ,このような場合には,担当審査官には,補正の内容が出願人である原告らの真意に沿うものであるかどうかを確認すべき手続上の義務がある。これは,特許庁「特許・実用新案審査基準」におい て,審査官が迅速性,的確性,公平性及び透明性を確保し,出願人(代理人を含む。)との意思疎通の確保に留意しつつ,効率的な審査をすることが義務付けられていることや,「面接ガイドライン」に,面接後に新たな事実や証拠を発見した等の理由により,面接記録に記載された面接結果と異なった判断や処分をすることとなった場合には,その旨を通知することと記載されていることからも明らかである。 このような審査官の確認義務は,審査前置における特許査定という,出願人が後に補正の過誤や誤記をただすことができないような重大な処分をする場合であり,かつ,本件のように,訂正審判によって救済することもできないような重大な過誤・誤記が存在する場合には,手続上極めて重要というべきである。 にもかかわらず,本件において,担当審査官は上記義務を怠ったものであり,この点でも,本件特許査定には重大な瑕疵がある。 (5) 特許査定についての重大な瑕疵による処分の無効事由ア以上のとおり,本件特許査定には重大な瑕疵があるところ,本件は,特許査定の当初から,当業者において,本件補正書の記載が誤認によるものであることが外形上客観的に明白であるにもかかわらず,実質的に無審査で特許査定をしたため,これを看過したというものであり,重大かつ明白な瑕疵に当たるというべきである。 イまた,行政行為の瑕疵が重大で,これによって被る当事者の損害が大きいのに,行政目的や第三者の信頼保護にさしたる害のない事案については,個別的妥当性を重視して,瑕疵が明 当たるというべきである。 イまた,行政行為の瑕疵が重大で,これによって被る当事者の損害が大きいのに,行政目的や第三者の信頼保護にさしたる害のない事案については,個別的妥当性を重視して,瑕疵が明白でなくともこれを無効とした最高裁判決があり(最一小判昭和48年4月26日・民集27巻3号629頁),下級審においても,行政庁が特定の行政処分をするに際し,その職務上当然に要求される調査義務を尽くさず,しかも上記調査義務の履行として簡単な調査をすることにより容易に判明する重要な処分要件の存否を誤認し てなした場合に,明白な瑕疵があると解すべきである旨判示したものがある(東京高判昭和34年7月7日)。また,学説上も,①行政庁の側に重大な過誤があり,②相手方国民の法益侵害が深刻で救済の必要性が大きく,③救済を認めても公益ないし第三者にマイナスの影響が及ばない場合には,行政行為を無効と認めて救済を与えるのが妥当であるとするものがある。 しかるに,本件においては,本件特許査定の瑕疵が重大であり,これによって,出願人である原告らが被る不利益は,以下でみるとおり極めて大きいものである。また,本件特許出願についていまだ特許登録がされていない現段階において本件特許査定を無効として特許出願手続を継続させても,特許行政の目的や第三者の信頼保護に害は認められない。したがって,本件特許査定に係る瑕疵が,その明白性の有無にかかわらず,無効原因に該当するものであることは明らかである。 ウ本件特許査定により原告らの被る不利益が極めて大きいこと原告レクサン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド(以下「原告レクサン」という。)は,本件特許出願の出願当初の明細書に記載された化合物を有効成分とする薬剤を,がんの増殖,進行,転移において重要な役割を果 ーマシューティカルズ・インコーポレイテッド(以下「原告レクサン」という。)は,本件特許出願の出願当初の明細書に記載された化合物を有効成分とする薬剤を,がんの増殖,進行,転移において重要な役割を果たすリン酸化p68RNAヘリカーゼを抑制する効果を有する第1級の抗がん剤として,同社の開発順位の3番目に位置づけて開発を行っているところ,上記化合物は,本願明細書において【0248】の【表1】の「化合物5」(R1がフッ素,R2が水素)に該当するものであり,本件特許査定に係る請求項1の化合物(R1がフッ素,R2が塩素)に含まれないものである。 原告レクサンは,上記化合物につき,臨床試験の第Ⅰフェーズに入れる状況に進行し,プレスリリース等を行っているのであって,本件特許出願が適正な請求項の範囲で得られるか否かは,上記抗がん剤の日本における独占的保護が受けられるか否かという問題であり,薬剤の開発を専門とす る原告レクサンにとって極めて重要な利害に関わる。本件特許査定が無効とされ,又は取り消されない場合には,原告レクサンの事業に重大な損害が生じることは明らかである。 (被告の主張)(1) 行政事件訴訟法3条4項の規定による無効確認の訴えに関し,当該行政処分が無効であるというためには,当該処分に重大かつ明白な瑕疵が存在しなければならず(最大判昭和31年7月18日・民集10巻7号890頁),当該瑕疵が明白であるか否かは,処分の外形上,客観的に瑕疵が一見して看取し得るか否かにより決せられるべきものである(最一小判昭和44年2月6日・最高裁判所裁判集民事94号233頁参照)。そして,「重大かつ明白な瑕疵」の存在に係る主張立証責任は原告らにある(最二小判昭和42年4月7日・民集21巻3号572頁)。しかるに,本件特許査定については,次のとおり 民事94号233頁参照)。そして,「重大かつ明白な瑕疵」の存在に係る主張立証責任は原告らにある(最二小判昭和42年4月7日・民集21巻3号572頁)。しかるに,本件特許査定については,次のとおり,何ら瑕疵は存在せず,また,処分の外形上,客観的に瑕疵が一見して看取し得るものとは到底いうことができないから,本件特許査定に無効事由はない。 (2) 本件特許査定に瑕疵が存在しないことア本件において,担当審査官は,それまでの審査経過やその内容を把握した上で,本件補正書及び拒絶査定不服審判請求書を十分に審査して,本件特許査定をしたものであり,本件特許査定に,原告らの主張するような瑕疵は存在しない。 イこの点に関し,原告らは,①本件拒絶査定の拒絶理由が解消されていない,②本件補正後の発明に新たな無効理由が生じている,③本件補正後の発明は,担当審査官と原告ら代理人との合意内容に反するものとなっていると主張し,これらを理由として,担当審査官は本件特許出願について審査をしていないか又は誤解に基づいて本件特許査定をしたものであると主張する。 (ア) しかし,①本件補正後の請求項1は進歩性を有しており,本件拒絶査定の拒絶理由は解消されている。 すなわち,進歩性の判断は,引用発明に基づいて当業者が請求項に係る発明を容易に想到できたことの論理付けができるか否かによって行われ,その判断に際しては,単に効果の有無によって判断するのではなく,あくまで当該請求項に係る発明が先行技術に基づいて容易に想到し得たか否かを判断するのであり,その際に,有利な効果も併せて参酌し,総合的に判断されるのである。そして,本件において,本件補正後の請求項1に記載された化合物は,引用文献3に記載された化合物と比較して,相互に異なる置換基を有しており,構造上の相違が も併せて参酌し,総合的に判断されるのである。そして,本件において,本件補正後の請求項1に記載された化合物は,引用文献3に記載された化合物と比較して,相互に異なる置換基を有しており,構造上の相違が認められる。担当審査官は,進歩性の検討に当たり,引用文献3に記載された上記化合物や他の周知・慣用技術,技術常識等から,本件補正後の発明について進歩性を否定し得る理論の構築を試みたものであり,その際には,原告らが平成23年1月20日付けで提出した意見書(甲3)における,キノキサリン環の6,7位に置換基を導入した化合物が,引用文献3に記載された化合物と比較して優れた効果を有するとの意見や,本願明細書における実施例記載の化合物の効果等も参酌して,総合的に判断したものである。その結果,担当審査官は,構造上の相違を重視して,進歩性を有すると判断したものであり,上記判断に明らかな誤りがあるとはいえない。 原告らは,本件補正後の請求項1記載の組み合わせを含む化合物について特許査定がされることを期待していたのであるから,本件補正後の請求項1記載の発明に進歩性がなく,又は特許要件を欠くと主張することは一貫性がなく,この点からしても,原告らの主張に理由がないことは明らかである。 (イ) また,②本件補正後の発明に新たな無効理由は生じていない。 a 確かに,本願明細書に,本件補正後の請求項1記載の「R1がフッ素,R2が塩素」の化合物の記載はない。しかし,明細書の発明の詳細な説明に,特許請求の範囲に記載の化合物と類似する化合物が,製造実施例等をもって具体的に記載されており,出願時の技術常識も参酌した場合に,特許請求の範囲に記載の化合物を,発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が把握できる場合には,サポート要件違反は問題とならない。そして,本件 体的に記載されており,出願時の技術常識も参酌した場合に,特許請求の範囲に記載の化合物を,発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が把握できる場合には,サポート要件違反は問題とならない。そして,本件においては,本件補正後の請求項1に記載の化合物(R1がフッ素の化合物及びR2が塩素の化合物)と類似する化合物が,本願明細書の発明の詳細な説明に実施例として記載されており,これらの化合物の有する効果についても具体的に記載されている。そうすると,本件補正後の請求項1に記載の化合物は,上記実施例から一般化できる範囲のものとして捉えることができ,当業者において,上記化合物を発明の詳細な説明の記載から十分に把握することができるのであるから,本件補正後の発明にサポート要件違反はない。 原告が担当審査官と事実上合意したと主張する補正予定内容のR2には塩素が含まれており,原告は「R1がフッ素,R2が塩素」という組合せの化合物もサポート要件を満たすと考えていたはずであるから,原告の主張は一貫性を欠く。 b また,特許法36条4項にいう「その実施をすることができる」とは,当該発明が物の発明であるときには,その物を作ることができ,使用できることをいうところ,本願明細書には,R1がフッ素の化合物及びR2が塩素の化合物のそれぞれについて,製造実施例が具体的に記載されているから,当業者において明細書及び出願時の技術常識に基づき,その物(「R1がフッ素,R2が塩素」という組合せを含む化合物)を製造することができる程度の記載がされているというこ とができる。さらに,本願明細書には,特許請求の範囲に記載の化合物が「癌を含む過剰増殖性疾患の治療」という特定の用途に用いられることが明確に記載され,かつ,類似の化合物(R1がフッ素の化合物及びR2が塩素の化合物 に,本願明細書には,特許請求の範囲に記載の化合物が「癌を含む過剰増殖性疾患の治療」という特定の用途に用いられることが明確に記載され,かつ,類似の化合物(R1がフッ素の化合物及びR2が塩素の化合物)が実施例として記載されているのであるから,当業者において,特許請求の範囲に記載の化合物を上記用途に用いることができる程度の記載がされているというべきである。 したがって,本件補正後の発明に実施可能要件に反する点もない。 原告が担当審査官と事実上合意したと主張する補正予定内容のR2には塩素が含まれていたことから,原告は「R1がフッ素,R2が塩素」という組合せの化合物が実施可能要件を満たすと考えていたはずであり,原告の主張が一貫性を欠くのはサポート要件の場合と同様である。 c さらに,本件補正後の請求項1の但し書きの記載は,不要な記載ではあるものの,本文の記載と矛盾するものではなく,但し書きの記載があることにより,同請求項に記載された発明の範囲が変わるものではない。また,同請求項において発明を特定するために記載された事項自体に,その意味を理解することができないような文言の記載もなく,同請求項記載の発明の範囲は明確であるから,同請求項に明確性要件に反する点はない。 (ウ) さらに,③担当審査官と原告らとの間に原告らの主張するような合意はなく,それに従った手続を執る契機も存在しない。 a そもそも,担当弁理士と原告らの本国代理人との間のやり取りからは,担当審査官からR1をフッ素に限定し,R2をフッ素以外の置換基に限定することが示唆されたことがうかがわれるのみであり,「R1をフッ素,R2を水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素」という特定の文言をもって補正を行う旨の合意があっ たとする原告らの主張は事実に反する われるのみであり,「R1をフッ素,R2を水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素」という特定の文言をもって補正を行う旨の合意があっ たとする原告らの主張は事実に反するものである。 b また,仮に担当審査官が「R1をフッ素,R2を水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素」とするという補正内容を示唆したものであるとしても,特許庁審査官の行う面接は,審査官と出願人等とが特許出願の審査につき意思疎通を図るという目的で行われる行政サービスにすぎないのであるから,担当審査官と原告らとの間に,何らかの合意が成立したとみることはできない。 c 上記のとおり,特許庁審査官が行う面接は行政サービスにすぎず,出願人に対し審査官が面接において示唆した内容の手続補正書の提出を強制するものではなく,手続補正書の補正内容の記載は,出願人において自己責任により決定されるべきものであるから,原告らの提出した本件補正書の内容が担当審査官の示唆と異なる内容のものであったとしても,担当審査官に,その真意を確認する等の義務はない。しかも,本件では,本件補正書(甲10)と同時に提出された審判請求書(甲9)の双方に,同じ補正内容の記載があったのであるから,それらを見た担当審査官が,手続補正書の補正の内容が代理人の真意に沿わない錯誤によってなされたものではないかとの疑いを抱かず,同人などに確認しなかったことは,無理からぬことである。 仮に,特許庁審査官が行った示唆の内容と異なる手続補正書が提出され,これに基づいて特許査定がされた場合に,当該特許査定が無効とされるのであれば,特許庁審査官から補正内容の示唆を受け,これと異なる内容の手続補正書を提出して特許査定を受けた出願人は,上記手続補正書の内容が示唆と異なるものであることを理 ,当該特許査定が無効とされるのであれば,特許庁審査官から補正内容の示唆を受け,これと異なる内容の手続補正書を提出して特許査定を受けた出願人は,上記手続補正書の内容が示唆と異なるものであることを理由として審査のやり直しを求めることができることになり,特許請求の範囲等の補正をすることができる期間の定め(特許法17条の2)を実質的に延長することになるばかりか,特許査定の公的安定性を欠くことになり, 妥当ではない。 これらの点を措くとしても,本件補正の内容は,「R1をフッ素,R2を水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素」とする旨の示唆の内容に沿ったもの(準じたもの)であるから,担当審査官が何らかの確認をすることなく審査を進めることに問題はない。 (エ) 担当審査官による拒絶査定の理由をみれば,担当審査官が,化合物10以外の全ての化合物の特許性を否定しているものではないことは明らかである。そうであるから,本件補正書で補正した請求項1に,化合物10が含まれていないとしても,補正後の請求項1に記載された発明自体に優れた効果があり,拒絶理由が存在しないと担当審査官が判断した場合には,化合物10と補正後の請求項1との関係などについては特段の指摘をすることなく特許査定を行うのであり,そうしたことは,手続上当然にあり得ることである。 したがって,単に,担当審査官が本件拒絶査定において優れた効果があると認めた化合物10が,本件補正の請求項1に含まれていないことをもって,審査官が補正された特許請求の範囲にかかる発明の審査をしなかったなどと結論づけることはできない。 担当審査官が本件特許出願について審査をしていない旨をいう原告らの主張は失当である。 (3) 担当審査官に,本件補正の内容について確認すべき義務違反 をしなかったなどと結論づけることはできない。 担当審査官が本件特許出願について審査をしていない旨をいう原告らの主張は失当である。 (3) 担当審査官に,本件補正の内容について確認すべき義務違反はないことア本件補正が出願人の重大な過誤,誤記による補正であることが明らかではなかったこと(ア) 担当審査官と担当弁理士が電話面接した時点において,担当弁理士が示した補正案は,出願人の了解未了の未確定なものであった上,担当弁理士は,上記電話面接に際し,R2に関し「塩素」以外の化合物(水 素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキル)を残すかどうかについて明示的に言及していないのであるから,書面による補正案の提示もない口頭でのやり取りの中で,担当弁理士がR2につき「水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキル」を残すことについて,担当審査官に対し,正確に伝達できていたのか疑問が残る。しかも,担当弁理士自身が,R2を塩素に限定する補正書を提出し,特許査定受領時及び英訳作成時にも上記誤りに気付いていないのであるから,担当審査官において,補正案の内容を原告らが主張するようなものとして認識し得なかった可能性が否定できない。 加えて,本件補正に係る請求項1の記載は,原告らが提示したとする補正案の範囲内のものである上,本件補正書と同時に提出された審判請求書には,本件補正書と矛盾のない記載がされているのであるから,仮に,電話面接で補正についての一定の方向性が示唆されていたとしても,担当審査官において,本件補正書が出願人の重大な過誤,誤記によるものであることが明らかであったとは到底いえない。 (イ) 原告らは,本件拒絶査定において優れた効果があるとされた化合物10が本件補正において削除されていることから,本件補正が過誤,誤 誤記によるものであることが明らかであったとは到底いえない。 (イ) 原告らは,本件拒絶査定において優れた効果があるとされた化合物10が本件補正において削除されていることから,本件補正が過誤,誤記によるものであることが明らかであると主張する。しかし,拒絶査定後の審判請求時における手続補正は,出願人にとって最後の補正の機会となる可能性が高いことから,確実に権利化できるよう,出願人は真に権利化を望む範囲に限定した補正を行う傾向があるのであって,担当審査官も,当初の請求項から大幅に減縮された補正書が提出されることがある旨証言している。そうすると,化合物10が削除されていたとしても,担当審査官において,これをもって本件補正が過誤,誤記によるものと認識することはできないものというべきである。 (ウ) R1がフッ素,R2が塩素という化合物が引用文献3の化合物42 に比して優れた効果をもつとの判断が可能なことは,前記(2)イ(ア)で述べたとおりであり,R1がフッ素,R2が塩素という化合物について薬理効果の記載がないことをもって,担当審査官が誤記であると認識できたとはいえない。 (エ) 本件補正による請求項1にただし書きの記載があることをもって,明確性要件違反がないことは,前記(2)イ(イ)cで述べたとおりであり,担当審査官が誤記であると認識できたとはいえない。 イ担当審査官に補正の内容が出願人の真意に沿うものであるかどうか確認する手続上の義務は存在しないこと(ア) 特許法上,審査官が補正された請求項の内容につき出願人に真意を確かめるべき義務を負う旨定めた規定は存在しない。前置審査について特許法163条3項が同法51条を準用している趣旨は,前置審査において拒絶の理由を発見しないときは拒絶査定を取り消し,特許査定を行うことを定めた 義務を負う旨定めた規定は存在しない。前置審査について特許法163条3項が同法51条を準用している趣旨は,前置審査において拒絶の理由を発見しないときは拒絶査定を取り消し,特許査定を行うことを定めたものにすぎない上,本件において,担当審査官は拒絶の理由を発見しなかったのであるから,特許査定をするほかなく,あえて特許査定前に出願人に補正の内容が真意に沿うものであるか否かを確認しなければならない手続上の義務はない。 (イ) 「特許・実用新案審査基準」は,審査官の留意事項を定めたものであって,審査官に義務を課したものではない上,本件において,本件補正の内容が過誤,誤記によるものであることが担当審査官にとって明らかであったとはいえないことから,担当審査官が補正内容の確認をせずに行った本件特許査定は審査基準を逸脱したものではない。なお,審査基準は特許庁の判断の公平性,合理性を担保するのに資する目的で作成された判断基準であって法規範ではないから,審査基準の逸脱があったとしても,直ちに手続上の違法を問うことはできない。 (ウ) 本件において,面接後に新たな事実等の発見等の判断変更の契機と なるべき事情は生じておらず,かつ,判断の変更も生じていないから,「面接ガイドライン」の規定の予定する事案に該当しない。 4 争点(2)イ(本件特許査定についての取消事由の有無)(原告らの主張)争点(2)アで主張したとおり,本件特許査定は,担当審査官において手続補正に係る発明が特許性を有するかどうかについて審査を行うべき義務を怠り,審査を全くせず又は実質的に審査することなく本件特許査定をした点,特許査定を行うべき行政処分の対象を誤った点及び本件補正の内容が出願人である原告らの真意に沿うものであるかどうかを確認すべき手続上の義務を怠った点で違 実質的に審査することなく本件特許査定をした点,特許査定を行うべき行政処分の対象を誤った点及び本件補正の内容が出願人である原告らの真意に沿うものであるかどうかを確認すべき手続上の義務を怠った点で違法性を有する。したがって,本件特許査定は取り消されるべきである。 なお,本件特許査定が無効と確認され又は取り消された後の手続としては,本件における審査の経緯や前置審査の制度趣旨に照らせば,特許法163条2項,50条に従い,審査官によって拒絶理由通知が発せられ,再度の補正の機会が与えられるのが最も適切かつ妥当な救済方法である。 (被告の主張)争点(2)アで主張したとおり,本件特許査定に原告らの主張するような瑕疵はなく,本件特許査定は適法にされたものである。 5 争点(2)ウ(本件却下決定についての取消事由の有無)(原告らの主張)(1) 特許法195条の4にいう「査定」は拒絶査定に限られ,上記「査定」に特許法51条にいう特許査定が含まれないことは,争点(1)アにおいて主張したとおりである。 (2) したがって,特許査定に対する異議申立ては特許法195条の4及び行服法4条1項に違背するとして本件異議申立てを却下した本件却下決定には,行服法の趣旨に反し,同法がその目的として1条に掲げる「簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済」の途を奪い,特許法195条の4の解釈を誤 った違法がある。 本件却下決定は,本件特許査定によって設定される特許に対しては,訂正審判を求めれば足りる旨を述べているが,訂正審判は,適法に設定された特許を前提として設けられている制度であり,本件のように審査官が誤ってした瑕疵ある処分に対する不服申立てとして設けられている制度ではない。 (被告の主張)(1) 特許法195条の4にいう「査 許を前提として設けられている制度であり,本件のように審査官が誤ってした瑕疵ある処分に対する不服申立てとして設けられている制度ではない。 (被告の主張)(1) 特許法195条の4にいう「査定」が拒絶をすべき旨の査定と特許をすべき旨の査定の両者を含むものであることは,争点(1)アにおいて主張したとおりである。 (2) したがって,特許査定に対し行服法4条1項に基づく不服申立てをすることはできないから,本件異議申立てを却下した本件却下決定は適法である。 6 争点(2)エ(本件特許査定の取消しの義務付けの成否)(原告らの主張)本件特許査定の無効確認の訴え及び本件特許査定の取消しの訴えに理由があることについては,争点(2)ア及びイで主張したとおりである上,特許庁審査官が本件特許査定を取り消す旨の処分をすべきであることは法令の規定から明らかであるから,本件において,本件特許査定の取消しの義務付けがされるべきである。 (被告の主張)本件特許査定の無効確認の訴え及び本件特許査定の取消しの訴えに理由がないことについては,争点(2)ア及びイで主張したとおりであるから,本件特許査定の取消しの義務付けがされるべきではない。 第4 当裁判所の判断 1 本案前の争点(争点(1)ア・本件特許査定の取消義務付けの訴えの適法性)について(1)ア原告らは,行訴法3条6項2号所定のいわゆる申請型義務付け訴訟と して,特許庁審査官につき,同審査官がした本件特許査定を取り消すべきことを命ずることを求めている(主位的請求及び予備的請求の各第3項)。 同号所定の訴訟は,行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において,当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされない場 の各第3項)。 同号所定の訴訟は,行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において,当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされない場合に,当該行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求めるものであって(行訴法3条6項本文,2号),当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合に提起することができるものである(同法37条の3第1項2号前段)。 したがって,本件においては,原告らにより,特許庁審査官に対し,本件特許査定を取り消すことを求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされ,当該申請又は審査請求が却下又は棄却されたことを要することとなるところ,特許庁審査官に対し特許査定の取消しを求める旨の申請又は審査請求について定めた法令はなく,原告らが上記申請又は審査請求をした事実も認められない。 イ原告らは,本件異議申立てを行い,これを却下されていることから,「法令に基づく申請又は審査請求を却下する旨の裁決がされた場合」(行訴法37条の3第1項2号前段)に該当すると主張する。しかし,本件異議申立ては,特許庁長官に対し,本件特許査定を取り消す旨の裁決を求めるものであるから,原告らが特許庁長官に対し本件特許査定を取り消す旨の裁決をすべき旨を命ずることを求めるのであれば格別,特許庁審査官に対し,本件特許査定の取消しをすべき旨を命ずることを求めている本件において,本件異議申立てが,上記請求の趣旨との関係で「法令に基づく申請又は審査請求」に該当するものとは認められない。 ウなお,原告らは,担当審査官に対し,本件特許査定を職権により取り消すよう要請し,これを拒絶されたものであるが(証人B),特許査定の職 権取消しは,審査官が自ら特 ものとは認められない。 ウなお,原告らは,担当審査官に対し,本件特許査定を職権により取り消すよう要請し,これを拒絶されたものであるが(証人B),特許査定の職 権取消しは,審査官が自ら特許査定の誤りに気付いたとき又は出願人若しくは代理人から特許査定の誤りについて指摘を受けたときであって,審査官が特許査定に対して職権取消通知を行うべきと判断したときに,出願人等の同意を得て職権で行うものであり(甲14の3),出願人に申請権が認められているものではないから,上記要請がされていることをもって「法令に基づく申請又は審査請求」がされているものとみることもできない。 エ原告らの請求は,特許庁長官に対し本件特許査定を取り消す旨の裁決をすべき旨を命ずることを求める趣旨であるとも解される。しかし,行訴法37条の3第1項2号所定の義務付けの訴えのうち,行政庁が一定の裁決をすべき旨を命ずることを求めるものは,処分についての審査請求がされた場合において,当該処分に係る処分の取消しの訴え又は無効等確認の訴えを提起することができないときに限り,これを提起することができるところ(同条7項),本件訴えが,特許庁長官に対し本件特許査定を取り消す旨の裁決をすべき旨を命ずることを求めるものであるとすれば,本件においては,後述のとおり,本件特許査定に係る処分の取消しの訴え又は無効確認の訴えを提起することができるのであるから,本件異議申立てが「法令に基づく申請又は審査請求」に当たり得るとしても,行訴法37条の3第7項により,上記訴えは不適法なものであって,いずれにせよ却下を免れない。 (2) したがって,本件訴えのうち,本件特許査定の取消しの義務付けを求める訴え(主位的請求第3項及び予備的請求第3項)は,いずれも不適法であるから却下を免れない。 2 本案 下を免れない。 (2) したがって,本件訴えのうち,本件特許査定の取消しの義務付けを求める訴え(主位的請求第3項及び予備的請求第3項)は,いずれも不適法であるから却下を免れない。 2 本案前の争点(争点(1)イ・本件特許査定の取消しの訴えの適法性)について(1) 原告らは,平成23年11月7日,本件特許査定謄本の送達を受け(前 記前提事実(7)),平成24年8月27日に本件訴訟を提起したものである(前記前提事実(9))。しかし,原告らは,本件特許査定の送達を受けた日の翌日である平成23年11月8日から起算して60日以内である平成24年1月6日に本件特許査定につき本件異議申立てをしており(前記前提事実(8)ア,行服法14条1項),下記(2)でみるとおり,上記異議申立ては適法になされたものである。そうすると,原告らは,本件異議申立てに対する本件却下決定(平成24年4月26日付け)があったことを知った日から6か月以内である平成24年8月27日に本件訴訟を提起しているのであるから,本件特許査定の取消しの訴えは,出訴期間を徒過して提起されたものに当たらない(行訴法14条3項)。 (2) これに対し,被告は,特許法195条の4において,「行政不服審査法による不服申立てをすることができない」とされる「査定」に特許査定も含まれるから,特許査定は,「他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分」(行服法4条1項但し書き)に該当し,本件は「処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合」(行訴法14条3項)に当たらないと主張する。 アそこで検討するに,「査定」には,特許法49条の定める特許出願について拒絶をすべき旨の査定(いわゆる拒絶査定)と,特許法51条が定める特許出願について特許すべき旨の査定(い らないと主張する。 アそこで検討するに,「査定」には,特許法49条の定める特許出願について拒絶をすべき旨の査定(いわゆる拒絶査定)と,特許法51条が定める特許出願について特許すべき旨の査定(いわゆる特許査定)があるところ,特許法195条の4は,「査定又は審決及び審判若しくは再審の請求書又は第134条の2第1項の訂正の請求書の却下の決定並びにこの法律の規定により不服を申し立てることができないこととされている処分については,行政不服審査法による不服申立てをすることができない」と規定している(平成23年法律第63号による改正後のもの。同改正前の特許法においては,訂正の請求書の却下決定は195条の4の対象とされていなかった。)。 本件では,本件特許査定は上記改正前の平成23年10月31日にされ(同年11月7日送達),本件異議申立ては上記改正後の平成24年1月6日にされている。同改正に基づく経過措置に関する規定においては,特許法195条の4について特別の定めはないから,平成23年12月31日までは同改正前の特許法195条の4が,平成24年1月1日以後は,同改正後の特許法195条の4が適用されるものと解される。したがって,以下の検討においては,本件異議申立て以後の手続については,本件異議申立てがされた平成24年1月6日を基準として,同改正後の特許法195条の4について検討する。もっとも,同改正による特許法195条の4は,訂正請求書の却下を行服法の不服申立てができないものとして加えたものにすぎないから,同改正前後のいずれの規定によるかによって,以下の検討の結論及び理由が異なるものではない。なお,特許法195条の4の解釈と関連して以下で援用する他の特許法の規定のうち同改正により改正されたものについても,特に経過措置に関する規定 によって,以下の検討の結論及び理由が異なるものではない。なお,特許法195条の4の解釈と関連して以下で援用する他の特許法の規定のうち同改正により改正されたものについても,特に経過措置に関する規定において特別の定めがない限り,同改正後の規定について検討する。また,同改正により改正がない条文については,同改正前の最終改正後の条文を摘示する。 特許法195条の4の規定により,行服法による不服申立てをすることができないとされる処分等のうち,審決及び審判若しくは再審の請求書又は特許法134条の2第1項の訂正の請求書の却下の決定については,いずれも知的財産高等裁判所に対し訴えを提起することができ(特許法178条1項),また,上記「査定」のうち,拒絶査定については,拒絶査定不服審判を請求することができるのであって(特許法121条),特許法195条の4が,これらについて行服法による不服申立ての対象外とした趣旨は,判断が二重に成立することにより齟齬が生じることを避けることにあると解される。 また,「この法律の規定により不服を申し立てることができないことと されている処分」としては,①補正却下(特許法53条1項・3項),②除斥・忌避の申立てについての決定(同法143条1項・3項),③参加申請に対する決定(同法149条3項・5項),④対価の部分についての裁定(同法83条2項・91条の2・92条・93条)が挙げられるところ,これらの処分のうち,①補正却下の決定については拒絶査定不服審判の審理において補正却下の決定に対する不服を申し立てることが(同法53条3項但し書き),②除斥・忌避の申立てについての決定については,審決取消訴訟の中でその当否について争うことが,③参加申請に対する決定については,参加を申請して拒否された者は審決に対し訴えを提 3条3項但し書き),②除斥・忌避の申立てについての決定については,審決取消訴訟の中でその当否について争うことが,③参加申請に対する決定については,参加を申請して拒否された者は審決に対し訴えを提起することが(同法178条2項),④特許庁長官が裁定において定める対価の額については,異議申立てを経ずに直接訴え(行訴法4条前段のいわゆる形式的当事者訴訟)を提起することが(特許法183条),それぞれできるのであって,これは,①については,補正が却下されれば,通常は当該特許出願については拒絶査定がされ,出願人は拒絶査定不服審判を請求するものであり,上記審判の中で補正却下決定の当否について争うことで十分であると解されること,②については,除斥・忌避申立ては審判事件との関係において付随的・派生的手続にすぎない一方,独立の不服申立てを認めた場合の審理の遅延等の不利益が著しいこと,③については,独立の不服申立てを認めた場合の審理の遅延等の不利益に比して参加を申請した者の不利益がそれほど大きいものではないこと,④については,裁定自体の当否については公共の利益や産業政策上の考慮が関わるのに対し,対価額は私益的事項であり,直接の利害関係を有する裁定請求人と特許権者間の訴訟により紛争を解決させることが適切であると解されることといった考慮に基づくものであると解される。以上によれば,特許法195条の4が,これらの処分等につき行服法による不服申立ての対象外とした趣旨は,これらの処分等(「この法律の規定により不服を申し立てることができな いこととされている処分」)については,特許法上,当該処分に対する不服を審理すべき手続が別に存在し,かつ,当該手続によって当該処分の不服を審理することが必要かつ適切であると認められることにあると解することができる。 イ )については,特許法上,当該処分に対する不服を審理すべき手続が別に存在し,かつ,当該手続によって当該処分の不服を審理することが必要かつ適切であると認められることにあると解することができる。 イこれに対し,特許査定については,特許法上,特許法特有の手続としての不服申立手続については特に定めが置かれていない。 明治42年特許法において,査定に不服のある者は再審査を請求することができる旨定められ(同法65条),大正10年特許法においても,「査定又ハ審判ノ審決ヲ受ケタル者不服アルトキハ其ノ査定又ハ審決ノ送達ヲ受ケタル日ヨリ三十日以内ニ抗告審判ヲ請求スルコトヲ得」(同法109条)と定められており,特許査定についても再審査(明治42年法)又は抗告審判(大正10年法)により不服を申し立てることができると解する余地があった。 しかし,この点について,現行特許法(昭和34年法律第121号)121条は,「拒絶をすべき旨の査定を受けた者は,その査定に不服があるときは…」と明記したものであるから,現行法下において,拒絶査定については,同法121条所定の不服審判を請求することができるものの,特許査定については同条所定の不服審判を請求することができないことは明らかである。 そこで,特許査定について,特許法特有の手続としての不服申立手段のない中で,特許査定につき,その不服を審理すべき別の手続として行訴法3条2項に基づく特許査定取消しの訴え又は同法3条4項に基づく無効確認の訴えを挙げることができる。これらの訴えは,たとえ特許法195条の4の「査定」の中に特許査定が含まれ,特許査定については行政不服審査の申立てができないと解した場合であっても,特許査定が行政処分である以上,その訴訟の対象から除外されることはないと考えられる(もっと も,訴えの利益 が含まれ,特許査定については行政不服審査の申立てができないと解した場合であっても,特許査定が行政処分である以上,その訴訟の対象から除外されることはないと考えられる(もっと も,訴えの利益がないなどの理由により不適法とされることは考えられるが,訴え自体が特許査定を対象としないということにはならないと考えられる。)。したがって,特許法195条の4の「査定」の中に特許査定を含めて考えるべきかを検討するに当たり,これらの訴訟による救済によって,不服申立手続として十分であり,特許査定に対する不服はこれらの手続によるとすることが必要かつ適切であるかについて検討する。 まず,特許査定に対する実体的理由に基づく不服について検討する。実体的理由に基づく不服については,特許査定された内容よりも出願人に有利な範囲の特許査定がされるべきであったとする不服と,特許の実体的要件を備えないのに特許査定がされたという不服が考えられる。このうち,後者の不服(特許の実体的要件を備えないのに特許がされたという不服)について,特許法は,特許無効審判を請求することができるものとしており,その無効理由について詳細に定めている(特許法123条1項)。したがって,それ以上に不服申立てを認める必要はないものと解される。前者の不服(特許査定された内容よりも出願人に有利な範囲の特許がされるべきであったとする不服)については,それが出願人の真意に基づく出願どおりに特許査定された限りにおいては,出願人は出願どおりの利益処分を受けたのであるから,実体的理由に基づくその救済手続を認める必要は存しない。また,仮に,審査官において出願より狭い範囲の特許査定しかできない場合は,通常,拒絶査定がされるのであるから,それに対する不服申立てである拒絶査定不服審判を申し立てれば足りる。 そうす 存しない。また,仮に,審査官において出願より狭い範囲の特許査定しかできない場合は,通常,拒絶査定がされるのであるから,それに対する不服申立てである拒絶査定不服審判を申し立てれば足りる。 そうすると,特許査定に対する実体的理由に基づく不服については,それを必要とする場合について,特許法上の救済手段が設けられており,他の手段によることが必要かつ適切かを問うまでもないと考えられる。これに加えて行訴法に基づく取消又は無効確認の訴えを提起できるとされているのであるから,不服申立手段としては十分であると考えられる。 したがって,特許法195条の4の「査定」について,特許査定の実体的理由に基づく不服を申し立てる場合を含まないと解釈する必要はないものと解される。 次に,特許査定に対する手続的理由に基づく不服について検討する。特許法における手続的理由に基づく不服申立についてみると,不適法な手続であって補正をすることができない場合の却下(特許法133条の2)のように出願人側の手続違背の場合の取扱いについての規定はあるものの,審査官側の手続違背を理由とする救済手段についての定めは見当たらない。 しかるに,現行特許法が制定された昭和34年より後の昭和37年に訴願制度が改められて行服法が制定され,行政の適切な運営の確保が求められ(行服法1条の法律の趣旨においては,国民の権利利益の救済とともに,行政の適正な運営を確保することが挙げられている。),同年,行訴法が制定され,さらに,平成5年には,行政運営の公正の確保のため行政手続法が定められたのであって(特許法195条の3は行政手続法第2章,第3章の規定の適用は排除しているものの,「行政運営における公正の確保と透明性…の向上を図り,もって国民の権利利益の保護に資する」という同法1条の目的等の規定を含 法195条の3は行政手続法第2章,第3章の規定の適用は排除しているものの,「行政運営における公正の確保と透明性…の向上を図り,もって国民の権利利益の保護に資する」という同法1条の目的等の規定を含む第1章の規定の適用は除外していない。),これらにより,行政手続についての不服申立手段が整備されたものということができる。したがって,行服法においては,行政の適正な運営の確保のために,実体的な違法理由だけではなく,手続的な違法理由をも考慮し,同法1条1項の「違法…な処分」であるか否かが審査されるものというべきである。 以上のとおり,行服法は,行政機関の専門的知識を活用し,簡易迅速な手続により,行政庁の違法(手続的違法を含む)又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し,国民に対し広く行政庁に対する不服申立ての途を開くことを目的として制定されたものであるところ,特許査定に ついて,特許法上,特段,審査官側の手続違背についての定めがないことに照らせば,審査官の手続違背による違法について,行服法上の不服申立手続(行服法1条1項)を排除し,行訴法上の訴えのみをその救済手段とすることが必要であり,又は適切であるとみるべき事情は見出せない。 被告は,特許査定が利益処分であって,出願人がこれを争う利益を有する場合が想定し難いことを理由として,行服法による不服申立てを排除することは相当である旨主張するが,審査官の手続違背を理由として特許査定を取り消すことが相当とされる場合があり得ることは,特許庁作成の「職権取消通知等に関する審査官用マニュアル」(甲14の3)にも挙げられているとおりであって,出願人が特許査定を争うべき場合が想定されないとはいうことができない。同マニュアルに職権取消事由の類型として挙げられている「対象案件を取り違えて特許査定 14の3)にも挙げられているとおりであって,出願人が特許査定を争うべき場合が想定されないとはいうことができない。同マニュアルに職権取消事由の類型として挙げられている「対象案件を取り違えて特許査定した場合」や「補正書が特許査定の謄本と行き違いで提出された場合」は,まさに審査官の手続違背の場合を定めたものと解することができる。 ウ以上によれば,特許査定について審査官の手続違背を理由とする不服については, 特許法195条の4において列記された処分につきみられた,前記アの「行政不服審査法による不服申立てをすることができない」とすることが相当である理由,がいずれも妥当しないのであるから,同条にいう「査定」には特許査定の全てが含まれるのではなく,処分に審査官の手続違背があると主張される場合の特許査定は含まれないものと解するのが相当である。 エしたがって,特許査定は,処分に審査官の手続違背があると主張される限り,「他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分」(行服法4条1項但し書き)に当たらないから,原告らが審査官の手続違背を主張する本件においては(前提事実(8)ア参照),原告らは本件異議申立てを適法にすることができることになる。そうすると, 本件は「処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合」(行訴法14条3項)に該当するものであって,前記(1)のとおり,原告らが,本件却下決定(後記(4)のとおり同決定は違法として取り消されるべきものである。)があったことを知った日から6か月以内に本件訴訟を提起している以上,本件特許査定取消しの訴えは,出訴期間を徒過して提起されたものに当たらず,却下すべきものに当たらない。 3 本案の争点(争点(2)ア・本件特許査定についての無効事由の有無,争点(2)イ・本 る以上,本件特許査定取消しの訴えは,出訴期間を徒過して提起されたものに当たらず,却下すべきものに当たらない。 3 本案の争点(争点(2)ア・本件特許査定についての無効事由の有無,争点(2)イ・本件特許査定についての取消事由の有無)について(1) 前記前提事実に加え,証拠(各認定事実の末尾に摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア原告らは,前記前提事実(1)のとおり本件特許出願を行い,前記前提事実(3)アのとおり,担当審査官から拒絶理由通知(甲2)を受けたものであるところ,前記拒絶理由通知記載の拒絶理由のうち「2.」に記載されたもの(以下「拒絶理由2」という。)は,特表2002-538153号公報(以下「引用文献3」という。甲26)を引用文献とし,本件特許出願の請求項1-6,9,10につき,「請求項1-6,9,10に係る発明と引用文献3に記載された発明を対比すると,同項に係る発明はキノキサリン環の6位,7位の置換基としてアルコキシ,アルキル,ハロゲンといった水素原子以外の官能基を有する化合物が含まれる点で,引用文献3に記載された発明と相違する。しかしながら,創薬化学の技術分野において,活性向上を期待して,中心骨格構造を固定し,その周辺の置換基を種々改変した化合物を創製することは,当業者が一般に行う技術的事項に過ぎないから,引用文献3記載のキノキサリン化合物において,キノキサリン環の6位,7位にアルコキシ,アルキル,ハロゲンといった創薬化学で汎用される置換基を導入した化合物を創製し,その抗腫瘍活性を確認することは,当業者が容易に想到するものである。また,明細書の記載をみ ても,本願発明の奏する効果が当業者にとって進歩性を推認するに足る格別顕著なものとは認められない。」として,進歩性欠如(特許法29 ,当業者が容易に想到するものである。また,明細書の記載をみ ても,本願発明の奏する効果が当業者にとって進歩性を推認するに足る格別顕著なものとは認められない。」として,進歩性欠如(特許法29条1項3号)の拒絶理由を通知するものであった(甲2)。 イ原告らは,前記前提事実(3)イのとおり,上記拒絶理由通知に対し手続補正書(甲4)及び意見書(甲3)を提出し,本件特許出願から請求項8を削除するとともに,請求項1に「ただし,R1及びR2が同時に水素原子であることはない。」との記載を追加する補正をした。なお,上記記載の追加は,本願明細書の実施例に,R1及びR2が同時に水素原子である化合物が全く記載されておらず,本件特許出願の優先権主張基礎出願にも上記化合物が記載されていないことを理由とするものであった。 また,原告らは,上記意見書において,拒絶理由2に関し,本件発明の化合物10(R1がフッ素,R2が水素のもの。本願明細書【0248】【表1】参照。)及び引用文献3の化合物42のヒトの癌細胞株に対する細胞成長抑制効果について本願発明者が行った試験結果(上記意見書5頁記載の表)を示し,上記試験結果によれば,上記化合物10が引用文献3の化合物42に比べて極めて顕著な抗腫瘍活性を奏することが明白であるから,キノキサリン環の6位,7位にアルコキシ,アルキル,ハロゲン等の置換基を導入した本願発明の化合物は,引用文献3の化合物と比較して,当業者が予測し得ない程度の顕著な抗腫瘍活性を有するものであり,拒絶理由2は解消されたものと考える旨の意見を述べた(甲3,4)。 ウ(ア) これに対し,担当審査官は,前記前提事実(4)のとおり,平成23年2月14日付けで本件拒絶査定をしたものであるが,本件拒絶査定の備考欄には,「出願人は意見書にて本願発明の奏する ,4)。 ウ(ア) これに対し,担当審査官は,前記前提事実(4)のとおり,平成23年2月14日付けで本件拒絶査定をしたものであるが,本件拒絶査定の備考欄には,「出願人は意見書にて本願発明の奏する効果について,引用文献3の化合物42との比較試験結果を示し,キノキサリン環の6位,7位にアルコキシ,アルキル,ハロゲン等の置換基を導入した本願発明の化学式1で表される化合物は当業者が予測し得ない程度の優れた抗腫 瘍活性を奏する旨主張する。確かに意見書中の比較試験結果に使用される本願発明の化合物10は,引用文献3の化合物42に比して優れた抗腫瘍活性を示すものと認められる。しかしながら,本願明細書の表2に記載される薬理試験結果をみると,引用文献3の化合物42と同程度の活性又は劣る活性を示す化合物も存在する(例えば化合物52,73,115,136,157,172,193など)ことから,化学式1で表される化合物全体についてまで格別顕著な効果を奏するものと認めることができない。したがって,出願人の主張は採用することができない。」と記載されていた(甲5)。 (イ) なお,本願明細書の実施例には,化合物1ないし196の製造方法が記載され(本願明細書【0023】~【0246】),そのうち,化合物2,3,5,8,10,11,15,24,26,29,31,32,36,45,47,50,52,53,57,66,71,73,78,87,92,94,95,108,110,113,115,116,120,129,131,134,136,141,150,155,157,158,162,167,172,177,191,193,194,196の50個の化合物について,ヒトの癌細胞株に対する細胞成長抑制実験結果が示されている(本願明細書【0258】【表2】)。こ 7,158,162,167,172,177,191,193,194,196の50個の化合物について,ヒトの癌細胞株に対する細胞成長抑制実験結果が示されている(本願明細書【0258】【表2】)。これらの化合物におけるR1,R2の組み合わせは次のとおりである。 化合物1~21 R1 フッ素 R2 水素化合物22~42 R1 塩素 R2 水素化合物43~63 R1 メチル R2 水素化合物64~84 R1 メトキシ R2 水素化合物85~105 R1 水素 R2 フッ素化合物106~126 R1 水素 R2 塩素 化合物127~147 R1 水素 R2 メチル化合物148~168 R1 水素 R2 メトキシ化合物169~175 R1 フッ素 R2 フッ素化合物176~182 R1 塩素 R2 塩素化合物183~189 R1 メチル R2 メチル化合物190~196 R1 メトキシ R2 メトキシ担当審査官が上記拒絶査定の備考欄において,引用文献3の化合物42と活性において同程度又は劣ると指摘した化合物におけるR1,R2の組み合わせは次のとおりである。 化合物52 R1 メチル R2 水素化合物73 R1 メトキシ R2 水素化合物115 R1 水素 R2 塩素化合物136 R1 水素 R2 メチル化合物157 R1 水素 R2 メトキシ化合物172 R1 フッ素 R2 フッ素化合物193 R1 メトキシ R2 メトキシエ担当弁理士は,原告らの本国代理人に対し本件拒絶査定の内容等について連絡し,平成23年6月7日 2 R1 フッ素 R2 フッ素化合物193 R1 メトキシ R2 メトキシエ担当弁理士は,原告らの本国代理人に対し本件拒絶査定の内容等について連絡し,平成23年6月7日付けで,上記代理人から,R1をハロゲン)のみ又はさらに減縮してフッ素に限定することにより特許査定がされるか否かにつき,担当審査官との電話面接を行うよう電子メールで依頼を受けた(甲6)。 オ担当弁理士は,同月8日,担当審査官に対し電話を架け,R1をフッ素に限定する意向を伝え,担当審査官から肯定的な返答を得た。さらに,担当弁理士は,前記ウのとおり,本件拒絶査定において引用文献3の化合物42と同程度又は劣る活性を示す化合物の例として挙げられた化合物中に,R1がフッ素,R2がフッ素のもの(本願明細書の化合物172)が含ま れており,R1をフッ素に限定しても,なお,上記化合物については特許請求の範囲に含まれてしまうことから,R2(水素原子,C1-C6アルコキシ,C1-C6アルキルまたはハロゲン)中の「ハロゲン」を塩素に限定することによる特許査定の可否について担当審査官の見解を尋ね,この点についても肯定的な返答を得た(甲7,14の10,23,証人B,証人A)。 カ担当弁理士は,同月8日,原告らの本国代理人に対し,電子メールで担当審査官との電話面接の結果として,「審査官は,仮にR1がフッ素に限定され,R2がフッ素以外の置換基に限定されるのであれば,本出願は特許査定されるであろうと考えています。」とした上で,本件出願の請求項1を「R1はフッ素であり,R2は水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素であり…」とする補正案を提案し(甲7),同月9日,本国代理人から,上記補正案を了承する旨の返答を得た(甲8)。 キ本件補正書 ,R2は水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたは塩素であり…」とする補正案を提案し(甲7),同月9日,本国代理人から,上記補正案を了承する旨の返答を得た(甲8)。 キ本件補正書による補正の内容が「R1はフッ素であり,R2は塩素であり…」というものであったこと及び上記補正が担当弁理士の誤りによるものであったことは,前記前提事実(5)のとおりであり,本件特許出願が前置審査に付されたこと及び担当審査官が本件補正に係る本件特許出願につき本件特許査定をしたことは,前記前提事実(6)及び(7)のとおりである。 (2)ア以上の認定に関し,被告は,担当審査官と担当弁理士との間の電話面接において,担当弁理士からR1をフッ素に限定し,R2の「ハロゲン」を塩素に限定するというような具体的言及はなく,そのような特定の文言をもって補正を行うことにつき合意があったものでもないと主張する。 イしかし,担当弁理士と原告本国代理人との電子メールのやり取り(前記(1)エ,カ)によれば,担当弁理士が,R1をハロゲン又はフッ素に限定することで特許査定が可能かどうかを確認するために,担当審査官と電話面接を行ったものであることが明らかである。また,本件補正前のR2は, 「水素原子,C1-C3アルコキシ,C1-C3アルキルまたはハロゲン」とされていたものであるところ(前記前提事実(3)イ),担当弁理士は,上記電話面接後に,原告らの本国代理人に対し,担当審査官がR1とR2が共にフッ素である化合物につき進歩性が欠如していると判断している旨を記載した上で,「担当審査官はR2をフッ素以外の置換基に限定されるのであれば本出願は特許査定されるであろうと考えている」旨を伝えているのであって(前記(1)カ),フッ素が「ハロゲン」に含まれるものであること,本願明 当審査官はR2をフッ素以外の置換基に限定されるのであれば本出願は特許査定されるであろうと考えている」旨を伝えているのであって(前記(1)カ),フッ素が「ハロゲン」に含まれるものであること,本願明細書の実施例には,「ハロゲン」(フッ素,塩素,臭素,ヨウ素,アスタチン)のうち,フッ素,塩素以外のものを用いた化合物についての記載はないこと(前記(1)ウ(イ)),上記本国代理人へのメールにおいて,「ハロゲン」を「塩素」とする旨の補正案が提案されていることも考慮すれば,担当弁理士が,担当審査官に対し,R1とR2が共にフッ素である化合物を除外するためのR2の限定方法として,「ハロゲン」を「塩素」と限定する旨を尋ねたと考えるのが合理的というべきである。 そして,上記電話面接の目的が,請求項の記載を限定する補正をすることにより,いったん拒絶査定を受けた特許出願につき特許査定を受けられるか否かを確認することにあったことを考慮すれば,担当弁理士は,本件発明の請求項1に係る化合物を,上記内容のものに補正することにより,特許査定を受けられるか否かにつき,担当審査官の見解を尋ねたものとみるのが合理的かつ自然であるところ,担当審査官が,特許査定の可否について「弱い示唆」をした可能性を認めていることや,上記電話面接記録を作成しなかった理由につき,「特許査定だからまあいいかと思った」旨述べていること(証人A)からすれば,担当審査官は,上記補正により特許査定をすることが可能である旨の肯定的な返答をしたものであると認められる。なお,担当審査官作成の陳述書(乙7)には,上記認定に反する記載部分があるが,上記内容は同審査官自身の上記証言とも整合しないもの であるから,上記陳述書の記載により,上記認定は左右されない。 ウしたがって,担当弁理士と担当審査官の 記認定に反する記載部分があるが,上記内容は同審査官自身の上記証言とも整合しないもの であるから,上記陳述書の記載により,上記認定は左右されない。 ウしたがって,担当弁理士と担当審査官の電話面接の内容は前記(1)オのとおりのものであったと認められるのであって,被告の主張のうち,これに反する部分は採用できない。 (3)アそこで,以上の事実に照らして検討するに,原告は,担当審査官が本件補正に係る発明につき全く又は実質的に審査することなく本件特許査定をしたものであるから,本件特許査定には内容における瑕疵がある旨主張する。 イ確かに,特許法162条は,拒絶査定不服審判の請求と同時に,その請求に係る特許出願の願書に添付した特許請求の範囲等につき補正があったときは,審査官に「その請求を審査させなければならない。」と規定しており,かつ,特許法163条3項は,上記審査において審判の請求を理由があるとする場合に,特許法51条(「審査官は,特許出願について拒絶の理由を発見しないときは,特許をすべき旨の査定をしなければならない。」)を準用しているのであるから,いわゆる前置審査の場合において,審査官により審査を行うことが,特許査定をなし得るための要件として,特許法上要求されているものと解される。 ウそこで,本件特許査定に当たり,担当審査官による審査が行われたものといえるか否かについてみるに,前記認定事実によれば,本件特許査定に係る化合物(本件補正後の「請求項1」記載の化合物)については,①原告らが,拒絶理由通知に対する意見書において,引用文献3の化合物42に比べて顕著な抗腫瘍活性を奏することを,試験結果をもって示した化合物10(R1がフッ素,R2が水素のもの)を含まないものとなっていること(前記前提事実(5)イ,(7)),②当該化合物 の化合物42に比べて顕著な抗腫瘍活性を奏することを,試験結果をもって示した化合物10(R1がフッ素,R2が水素のもの)を含まないものとなっていること(前記前提事実(5)イ,(7)),②当該化合物とR1,R2の組み合わせにおいて同一の化合物(R1がフッ素,R2が塩素の化合物)については,本願明細書に,製造方法及び薬理データの記載が一切ないこと(前記 (1)ウ(イ)),③当該化合物が,R1がフッ素,R2が塩素とするものであるにもかかわらず,請求項1の末尾に,「ただし,R1及びR2が同時に水素原子であることはない。」との記載があること,④電話面接において,担当弁理士が特許査定の可否について尋ね,担当審査官が肯定的返答をした化合物よりも著しく狭い範囲のものであることを指摘することができる。 そして,担当審査官は,拒絶理由通知において,本願発明に係る化合物が,R1,R2にアルコキシ,アルキル,ハロゲンといった水素原子以外の官能基を有することのみでは,引用文献3の化合物との関係で進歩性を有するものとは認めないとしていたのである(前記(1)ア)。しかるに,本件拒絶査定における備考欄の記載内容(前記(1)ウ(ア))からは,担当審査官が,化合物10(R1がフッ素,R2が水素のもの)の薬理試験結果を,本願発明の化合物の一部につき,その抗腫瘍活性が引用文献3の化合物42との関係で優れたものであることの裏付けとすることができることを認めつつ,本願明細書の記載上,薬理効果が引用文献3の化合物42と同程度又は劣ることが明らかな化合物も存在する以上,本願発明に係る化合物全体について進歩性を認めることはできないとの判断をしたものであると解されるのであって,担当審査官が,上記のように,専ら化合物10の薬理試験結果を具体的裏付けとして本願発明の進歩性に 明に係る化合物全体について進歩性を認めることはできないとの判断をしたものであると解されるのであって,担当審査官が,上記のように,専ら化合物10の薬理試験結果を具体的裏付けとして本願発明の進歩性について検討してきたものとみられるにもかかわらず,上記①のとおり,化合物10を含まず,かつ,上記②のとおり,化合物10の薬理試験結果に代わるような薬理効果の記載もない化合物(R1がフッ素,R2が塩素)につき本件特許査定をしたことには一貫性を欠く点とみられる点があるというべきである。そうすると,上記③のとおり,R1をフッ素,R2を塩素とするのであれば不要となるべき但し書きの記載が残存したままとなっていることや,④電話面接の内容との齟齬があることも相まって,本件補正に係る発明につき,十分な審査がなされたことについて疑念を呈する原告らの主張にも 理解できるところがあるということができる。 エしかし,この点につき,担当審査官は,出願人(原告ら)の提出した意見書には,キノキサリン環の6位,7位(R1,R2)に置換基を入れたことが特徴部分である旨記載されていたこと,化合物10の薬理試験結果から,R1にフッ素を含むことが,抗腫瘍活性において重要であるとみられたこと,本件補正により,本件拒絶査定において抗腫瘍活性が認められない旨を指摘した化合物はいずれも特許請求の範囲外となったこと,本願明細書に,本発明は実施例に限定されない旨の記載があったこと,本件補正に係る化合物の抗腫瘍活性が劣るという積極的根拠もないこと等を総合的に考慮して進歩性を肯定したものであると思うと証言し,また,但し書きの記載については,当然のことを記載したものにすぎず,害のある記載ではない旨,電話面接の内容については具体的記憶がないが,当初の請求項から大幅に減縮された形の補正がさ と思うと証言し,また,但し書きの記載については,当然のことを記載したものにすぎず,害のある記載ではない旨,電話面接の内容については具体的記憶がないが,当初の請求項から大幅に減縮された形の補正がされたとしても,出願人が特許査定を受けたかった範囲が当該部分であると考えるにとどまる旨の証言をしているのであって(証人A),前記ウでみた点は,担当審査官が,本件補正に係る発明について検討をした上で,上記のような考えに基づき本件特許査定をしたものであることを否定するに足りるものではないというべきである。また,担当審査官が上記のような検討をしたとする場合に,上記検討が,特許法上,特許査定に当たり要求されるべき「審査」におよそ当たるものではなく,又は審査をしていないに等しい名目的なものであると評価することもできない。 オそうすると,本件特許査定に当たり,担当審査官による審査が全く行われず,又は実質的に行われなかったものと認めることはできず,この点に関する原告らの主張は採用できないものというべきである。 (4)アまた,原告らは,担当審査官が,本件補正書において,電話面接において事実上合意された内容の補正案どおりの特許請求の範囲が記載されて いるものと誤信し,本件特許査定をしたものであるから,本件特許査定には,処分の対象を誤った瑕疵があるとも主張する。 イしかし,前記(3)エのとおり,担当審査官が本件補正後の発明につき検討を行った上で本件特許査定をしたものであることを否定することができない以上,担当審査官が,原告らの上記主張のような誤信に基づき,本件特許査定をしたものであると認めることもできない。 (5)アさらに進んで,原告らは,本件特許査定は,担当審査官において,補正の内容が出願人である原告らの真意に沿うものであるかどうかを確認す ,本件特許査定をしたものであると認めることもできない。 (5)アさらに進んで,原告らは,本件特許査定は,担当審査官において,補正の内容が出願人である原告らの真意に沿うものであるかどうかを確認すべき手続上の義務を怠ってされたものであるから,本件特許査定には手続上の瑕疵があると主張するので,この点について検討する。 イまず,本件において,担当審査官に,原告らが主張するような手続上の義務が課されているといえるか否かについて検討する。 (ア) 審査官の資格は政令で定めるものとされるところ(特許法47条2項),特許法施行令12条は,審査官の資格を有する者につき,4年以上特許庁において審査の事務に従事した者(同条1号)等であって,職務の級が一定以上の者であり,かつ,独立行政法人工業所有権情報・研修館における所定の研修課程を修了した者とする旨定めている。また,審査官には,除斥の規定が適用される(特許法48条,139条1号ないし5号,7号)。 このように,審査官は,その資格によって,専門的知識を有する者であることが担保され,かつ,除斥の規定によって,その公正性も担保されているものであり,特許法は,このように専門的知識を有し,かつ,公正性が担保された審査官に特許出願を審査させるものとすることにより(特許法47条1項),特許審査が公正かつ適切にされることを担保し,発明の適切な保護を確保しているものと解される。 (イ) また,審査官は,特許出願が特許法49条各号のいずれかに該当す るときは,その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならないものとされ(特許法49条),拒絶の理由を発見しないときは,特許をすべき旨の査定をしなければならないものとされる(特許法51条)。 そして,拒絶査定をしようとするときには,審査官は ばならないものとされ(特許法49条),拒絶の理由を発見しないときは,特許をすべき旨の査定をしなければならないものとされる(特許法51条)。 そして,拒絶査定をしようとするときには,審査官は,特許出願人に対し,拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定して,意見書を提出する機会を与えなければならないものとされ(特許法50条),拒絶理由通知を受けた特許出願人は,上記期間内において,補正をすることができる(特許法17条1項)。 このように,審査官は,特許出願について拒絶理由がある場合に,直ちに拒絶査定をするのではなく,出願人に対する拒絶理由の通知をすることによって,出願人に意見書を提出し,かつ,補正をする機会を与えるものとされている。その趣旨は,特許出願人に,拒絶理由につき意見を述べ,かつ,補正によって拒絶理由を解消する機会を与えるという手続的利益を保障するとともに,審査官にも,特許出願人から提出される意見書を検討することによって再考の機会を与え,特許査定又は拒絶査定の適正を確保し,かつ,発明の適切な保護を確保しようとするところにあると解される。 拒絶理由通知及びこれに対する意見書の提出・補正の機会を設けた特許法の上記趣旨に鑑みると,拒絶理由通知が特許出願人に正しく理解され,これに対応した意見書の提出及び補正がされ,審査官がこれを十分に理解することによって,適正な内容の特許査定又は拒絶査定がされることを特許法は予定しているものと解することができる。 (ウ) 特許法は,拒絶査定に対する拒絶査定不服審判の請求と同時にその請求に係る特許出願の願書に添付した明細書等につき補正があったときは,当該拒絶査定をした審査官にその請求を審査させなければならない としているところ(いわゆる前置審査,特許法162条),これは,拒絶査定 出願の願書に添付した明細書等につき補正があったときは,当該拒絶査定をした審査官にその請求を審査させなければならない としているところ(いわゆる前置審査,特許法162条),これは,拒絶査定不服審判請求と同時に明細書等につき補正があった事案につき,拒絶査定をした審査官に再審査をさせることによって,事件の適正かつ迅速な処理を図ろうとするものである。そして,審判請求人は,拒絶理由通知及び拒絶査定の内容(拒絶査定における備考欄の記載等)を検討し,上記拒絶査定の原因となった拒絶理由を解消して特許査定を受けるべく,拒絶査定不服審判を請求し,かつ,意見書及び補正書を提出するものと解されるのであって,前置審査において,審査官は,審判請求時の適法な補正によって拒絶査定の理由が解消され,かつ,他に拒絶理由が発見されない場合には,原拒絶査定を取り消して特許査定をすることとなるのであるから(特許法51条,164条1項),拒絶査定がされた場合においても,特許出願人において拒絶理由通知又は拒絶査定から看取される拒絶理由について意見を述べ,かつ,拒絶理由を解消する機会を与えるという手続的利益の保障と,審査官において再考の機会を与え,その判断の適正と発明の適正な保護を確保するという前記趣旨において,拒絶理由通知がされた段階と異なるところはない。 したがって,拒絶査定がされた場合においても,特許出願人がこれに対し拒絶査定不服審判を請求し,かつ,意見書及び補正書を提出する場合には,同様に,上記拒絶理由が特許出願人に正しく理解され,これに対応した意見書の提出及び補正がされ,審査官においてこれを十分に理解することによって,適正な内容の審査が行われることを特許法は予定しているものと解される。 (エ) もとより,特許出願人は,願書における特許請求の範囲を自ら決 正がされ,審査官においてこれを十分に理解することによって,適正な内容の審査が行われることを特許法は予定しているものと解される。 (エ) もとより,特許出願人は,願書における特許請求の範囲を自ら決定することができ(特許法36条2項),審査官は,当該特許出願について,その実体的特許要件の審査を行うのであるから(特許法49条,51条),審査官は,特段の事情がない限り,出願人の出願に係る特許請 求の範囲に記載された発明が特許要件を充たすか否かを判断すれば足り,これを超えて出願人の出願内容がその真意に沿うものであるか否かを確認する義務はない。 しかし,拒絶理由通知又は拒絶査定がされ,これに対し意見書の提出及び補正をする場合については,上述したその趣旨(拒絶理由について意見を述べ,かつ,拒絶理由を解消する機会を与えるという手続的利益を特許出願人に保障し,審査官に再考の機会を与えることにより,その判断の適正と発明の適正な保護を確保する)からみて,拒絶理由を出願人が正しく理解し,これに対応した意見書の提出及び補正がされ,審査官においてこれを十分に理解して審査を行うことが予定されているのであるから,拒絶理由通知又は拒絶査定に記載された拒絶理由と補正の内容とがかみ合ったものであることが,その前提として,特許法上予定されているものというべきである。 そうすると,拒絶理由通知又は拒絶査定に記載された拒絶理由と意見書又は補正書(通常,意見書と補正書の趣旨は一致することから,以下においては,両者のうち補正書及びそれによる補正のみをとり上げる。)の内容が全くかみ合っておらず,当該補正書が,出願人の真意に基づき作成されたものとはおよそ考え難い場合であって,そのことが審査の経緯及び補正の内容等からみて審査官に明白であるため,審査官において補 の内容が全くかみ合っておらず,当該補正書が,出願人の真意に基づき作成されたものとはおよそ考え難い場合であって,そのことが審査の経緯及び補正の内容等からみて審査官に明白であるため,審査官において補正の正確な趣旨を理解して審査を行うことが困難であるような場合には,このような補正に係る発明につき適正に審査を行うことが困難であり,また,発明の適正な保護にも資さないのであるから,審査官は,特許出願人の手続的利益を確保し,自らの審査内容の適正と発明の適正な保護を確保するため,補正の趣旨・真意について特許出願人に対し確認すべき手続上の義務を負うものというべきである。 ウ(ア) これを本件についてみると,本件特許査定に至る経緯は前記(1)で みたとおりであり,担当審査官は,出願人らに対し,引用文献3に基づく進歩性欠如の拒絶理由を通知し(前記(1)ア),出願人らは,これを受けて,引用文献3の化合物42におけるR1,R2の組み合わせ(R1及びR2が水素)を除く旨の補正(「ただし,R1及びR2が同時に水素原子であることはない。」との記載の追加)をするとともに,本願明細書の化合物10(R1がフッ素,R2が水素)が引用文献3の化合物42に比べ顕著な抗腫瘍活性を有することを薬理試験結果の対比表を用いて示し,本願発明に進歩性がある旨主張したものであって(前記(1)イ),本件拒絶査定は,上記補正及び意見書の記載を踏まえ,本願明細書の化合物10の抗腫瘍活性が,引用文献3の化合物42との関係で優れたものであることを認めつつ,本願明細書の記載上,薬理効果が上記化合物42と同程度又は劣ることが明らかな化合物がある以上,本願発明に係る化合物全体について進歩性を認めることはできないとの判断を示したものと解されるところである(前記(1)ウ(ア),(3)ウ)。 42と同程度又は劣ることが明らかな化合物がある以上,本願発明に係る化合物全体について進歩性を認めることはできないとの判断を示したものと解されるところである(前記(1)ウ(ア),(3)ウ)。 そうすると,上記拒絶査定は,本願発明に係る化合物のうち,化合物10の薬理試験結果により進歩性を認め得る部分があることを前提として,特許出願人に対し,その趣旨における補正の機会を与えたものと評価できるものであり,上記拒絶理由を正しく理解した場合には,その趣旨に沿った補正,すなわち,本願発明に係る化合物を,化合物10の薬理試験結果により進歩性を裏付けることのできる範囲に減縮しつつ,上記拒絶査定において薬理効果が引用発明の化合物42と同程度又は劣るとされた化合物を除外する補正がされることが当然に予想されるものであったということができる。 (イ) 加えて,本件においては,前記(1)オでみたとおり,担当審査官と担当弁理士との間で電話面接が行われ,担当審査官は,担当弁理士から,R1をフッ素と限定すること及びR2のうち「ハロゲン」を塩素と限定 することによる特許査定の可否について意見を求められ,肯定的な返答をしたものと認められる。そして,上記電話面接の内容からは,審査官において,出願人らが,R1がフッ素,R2が水素である化合物10を根拠として,R1をフッ素に限定する補正を検討しつつ,R1をフッ素と限定しても,本件拒絶査定において引用文献3の化合物42と同程度又は劣る活性を示す化合物の例として挙げられた化合物のうち,R1がフッ素,R2がフッ素のもの(本願明細書の化合物172)を除外できないことから,これを特に除外する意図で,R2を限定する補正案を打診してきたものであることを容易に理解可能であったというべきであり,このような補正案が提出されるであ 明細書の化合物172)を除外できないことから,これを特に除外する意図で,R2を限定する補正案を打診してきたものであることを容易に理解可能であったというべきであり,このような補正案が提出されるであろうことを,より明確かつ確実に予測すべきものであったというべきである。 (ウ) それにもかかわらず,本件補正に係る特許請求の範囲が,R1をフッ素,R2を塩素とするものであったことは,前記前提事実(5)イのとおりである。 a 本件補正に係る化合物は,本件拒絶査定において進歩性を裏付けることのできる根拠とされ,かつ,上記(イ)の電話面接において出願人らも補正の根拠としていることが明らかであった化合物10を含まないものであるばかりか,本件拒絶査定に係る拒絶理由において,担当審査官が除外すべきとした範囲(本件拒絶査定において引用文献3の化合物42と同等又は劣る活性を示す例として挙げられた化合物の範囲)であって,上記(イ)の電話面接において,出願人らが本件補正によって除外しようと考えていることが明らかであった範囲よりも,著しく広い範囲の化合物を除外したものであった。 b また,本件補正に係る化合物は,本願明細書において,実施例として,R1とR2につき12通りの組み合わせ(合計196個の化合物)につき製造方法が示され,かつ,そのうち,50個の化合物につ き,薬理試験結果(ヒトの癌細胞株に対する細胞成長抑制実験結果)が示されているにもかかわらず,これらの実施例において全く記載がない化合物であった。本件補正は,このように,本件明細書に多数の実施例の記載があるにもかかわらず,それらの実施例の1つにも該当せず,その薬理効果の具体的根拠付けを欠くというべき化合物に,本願発明に係る化合物を減縮するものであり,原告らが,拒絶理由通知に対する意見書で, 載があるにもかかわらず,それらの実施例の1つにも該当せず,その薬理効果の具体的根拠付けを欠くというべき化合物に,本願発明に係る化合物を減縮するものであり,原告らが,拒絶理由通知に対する意見書で,化合物10(R1がフッ素,R2が水素)の薬理試験結果につき,一覧表までをも示してその抗腫瘍活性について具体的主張をしていたものであり,前記(イ)のとおり,電話面接においても,化合物10を軸として,これを含みつつ,できる限り広い範囲の化合物に補正を行おうという意図であることが明らかであったことに照らせば,本件拒絶査定に至った経緯や,担当弁理士との電話面接の結果から当然に予期又は予測された補正内容と,著しく食い違うものであった。 さらに,本件補正に係る請求項の末尾には,「ただし,R1とR2は同時に水素原子であることはない。」という,R1をフッ素,R2を塩素とする補正をするのであれば不要となるべき記載が残存しており,一見して特許請求の範囲の記載に矛盾を含むものであった。 c 以上の事情を考慮すれば,本件補正書の内容は,拒絶査定に記載された拒絶理由と全くかみ合っておらず,本件補正書による補正は,原告らの真意に基づき作成されたものとはおよそ考え難いものであった。 そして,担当審査官が,一連の経過に接し,かつ,原告ら代理人との間で電話面接を行ってその補正の意図を認識していたものである以上,このような審査の経緯及び本件補正の内容からみて,本件補正書に係る補正が,上記のとおり,拒絶理由に対応しないものであり,原告らの真意に基づき作成されたものとおよそ考え難いことは,担当審査官 に明白であったと認められる。そして,その結果として,審査官は補正の正確な趣旨を理解して審査を行うことが困難であったと認められる。 (エ) この点に関し,被告は,担当審査 は,担当審査官 に明白であったと認められる。そして,その結果として,審査官は補正の正確な趣旨を理解して審査を行うことが困難であったと認められる。 (エ) この点に関し,被告は,担当審査官において,電話面接の結果,補正案の内容を原告らの主張するようなものと認識し得たか否かは疑問であり,また,上記電話面接は,口頭でされたものにすぎないのであるから,電話面接の内容を根拠にして,担当審査官において本件補正書に疑問をもつべきであるとみるのは相当ではない旨を主張する。 しかし,担当弁理士において,電話面接において上述したような内容の補正案を提示したものと認められることは前述のとおりである。 そして,特許庁が出願人向けに配布していると認められる「面接ガイドライン」(【特許審査編】平成19年11月1日施行版)によれば,電話面接は,審査官と代理人等との間の意思疎通を円滑にし,審査の迅速性・的確性の確保を図る趣旨で行われるものであり,審査官は,面接終了時に,応対の内容や結果などを記載することにより,出願人側応対者や第三者が閲覧などによって当該記載内容を確認することを可能とするとともに,手続の透明性を担保するために応対記録を作成するものとされている(甲14の2)。このことを考慮すれば,応対記録の作成を法的義務ということはできないものの,電話面接が拒絶理由通知や補正による審査の迅速・的確な実施という特許法の趣旨に基づいたものである以上,審査官において,補正に係る重要な事項について,電話面接の内容を記憶せず,又はその内容に基づくことなく補正書の審査を行うことは許されないものというべきである。とりわけ,本件においては,証人尋問の結果からうかがわれる電話面接の内容に照らし,担当審査官において,電話面接において,担当弁理士から示された補正案につき, うことは許されないものというべきである。とりわけ,本件においては,証人尋問の結果からうかがわれる電話面接の内容に照らし,担当審査官において,電話面接において,担当弁理士から示された補正案につき,仮包袋記録に当たるなどして十分に理解した上で回答をしたものであるこ とがうかがわれるのであるから,本件補正書の審査時において,担当審査官が上記電話面接の内容を考慮して審査を行うことができなかったことを相当とすべき理由はない。 エ以上によれば,本件において,担当審査官は,本件特許査定に先立つ審査に当たり,特許出願人である原告らに対し,本件補正の内容が原告らの真意に沿うものであるかどうかを確認すべき手続上の義務があったところ,上記義務を怠ったものであり,担当審査官には手続上の義務違背があったものと認められる。 なお,念のため,本件特許査定が取り消された後の手続について検討する。担当審査官が,上記義務を遵守してした上記確認(本件特許査定が手続違背を理由に取り消された場合には,この確認前の段階に戻ることになるから,担当審査官は確認をする義務を負った状態になる。)により,本件補正の内容が原告らの過誤又は錯誤によってされたものであることが判明した場合には,本件補正には,出願人の真意に基づかない補正という手続上の不備があったことが判明したことになる。この時点で,拒絶査定後の拒絶査定不服審判請求と同時にした補正(特許法17条の2)について,出願人の真意に基づかない補正という手続上の不備が判明したことになるが,そもそも補正が出願人の真意に基づくかという意味での補正の適法性の問題の解決が,補正された内容について審査官の判断に先行すべきものであるから,上記問題の解決をすることなく,担当審査官において拒絶理由通知を発すべきであるとの原告の主張を いう意味での補正の適法性の問題の解決が,補正された内容について審査官の判断に先行すべきものであるから,上記問題の解決をすることなく,担当審査官において拒絶理由通知を発すべきであるとの原告の主張を採用することはできない。 そこで,補正書を真意に基づくものとするという意味での補正を適法にする手続の根拠について検討する。特許法17条1項本文は,手続をした者は,事件が特許庁に係属している場合に限り,その補正をすることができるとしている。この時点で,真意に基づかないことを理由とする補正書の内容の補正が常に適法とされるものとは解されないが,少なくとも,本 件のように,拒絶理由通知又は拒絶査定に記載された拒絶理由と意見書又は補正の内容が全くかみ合っておらず,当該補正書が,出願人の真意に基づき作成されたものとはおよそ考え難い場合であって,そのことが審査の経緯及び補正の内容からみて審査官に明らかであるため,審査官において補正の正確な趣旨を理解して審査を行うことが困難であるような場合には,審査の経緯に鑑みて認められる範囲の出願人の真意に基づく内容について,補正書の補正が適法なものと認められるというべきである。 これに対し,同項ただし書は,本件補正で問題となる特許請求の範囲の補正については,同法17条の2から17条の4までの規定による補正することができる場合を除いてはできないと規定している。しかし,本件で問題となっているのは,補正が出願人の真意に基づくという意味で適法である場合の補正の許容される範囲の問題ではなく,補正が真意に基づかないという意味で不適法である場合にその適法性の確保を図るべき場合である。したがって,少なくとも,本件補正書を出願人の真意に基づいて補正する場面においては,同法17条1項本文のみが適用され,同項但し書きの規 意味で不適法である場合にその適法性の確保を図るべき場合である。したがって,少なくとも,本件補正書を出願人の真意に基づいて補正する場面においては,同法17条1項本文のみが適用され,同項但し書きの規定は適用されないものと解される。もとより,そのようにして適法に補正がされた後の補正書に基づく補正の許容範囲については,同項ただし書の規定が適用される。本件の場合に適用の対象となるのは,同項但し書きに掲げられた条文のうち,同法17条の2第5項(その前提としての同条1項4号)である。そうすると,同法17条の2第5項で許容される特許請求の範囲の減縮に当たるか否かの基準となるのは,本件拒絶査定時における補正された特許請求の範囲,すなわち,前提事実(3)イに記載された特許請求の範囲であり,この記載を基準として特許請求の範囲の減縮に当たるかどうかが判断されることになる。そして,この規定により,同項2号の特許請求の範囲の減縮に当たると判断されれば,本件補正書(真意に基づく内容に補正された後のもの)による補正が認められることになる。 以上は,原告ら(出願人)が自ら補正する場合であるが,審査官が特許法164条3項に基づき,出願人の真意を確認すべき場合であると特許庁長官に報告した場合には,特許庁長官は,同法17条3項2号の規定に基づいて,相当の期間を定めて,手続の補正(真意に基づく内容への本件補正書の補正)をすべきことを命ずることもできるものと解される。 (6) 以上のとおり,本件において,担当審査官には手続上の義務違背があったものであるから,本件特許査定には手続上の瑕疵があるものと認められる。 しかも,その瑕疵は,手続上の軽微な瑕疵にとどまるものではなく,前記(5)イ(エ)で述べた場合に該当するにもかかわらず,その義務に違反した場合であって, は手続上の瑕疵があるものと認められる。 しかも,その瑕疵は,手続上の軽微な瑕疵にとどまるものではなく,前記(5)イ(エ)で述べた場合に該当するにもかかわらず,その義務に違反した場合であって,特許査定制度において制度が適正に運営されるために必要な重大な手続上の義務の違背であると解される。 (7) もっとも,行政処分は,それが当該国家機関の権限に属する処分としての外見的形式を有する限り,仮にその処分につき違法とすべき点があったとしても,当該違法が重大かつ明白である場合を除いては,法律上当然に無効とすべきではない。そして,当該瑕疵が明白であるというためには,処分要件の存在を肯定する処分庁の認定に誤認があることが,処分成立の当初から外形上,客観的に明白であることを要するものというべきであるところ,本件における上記瑕疵は,本件特許査定成立の当初から外形的,客観的に明白であるものとは認められない。 したがって,本件特許査定が無効であるものとは認められない。 (8) 他方,本件特許査定に手続上の重大な瑕疵があることは前述のとおりであるところ,上記手続上の瑕疵により,本件特許査定の内容に影響が及ぶものであることは明らかであるから,本件特許査定はこの点において取消しを免れない(争点(2)イ)。 4 争点(2)ウ(本件却下決定についての取消事由の有無)について(1) 本件却下決定は,特許査定について行政不服審査法により異議申立てを することは特許法195条の4及び行服法4条1項に違背し不適法であるとして,同法47条1項に基づき,本件異議申立てを却下したものであるところ(前記前提事実(8)イ),特許法195条の4にいう「査定」に審査官の手続違背を理由とする不服申立ての場合の特許査定が含まれず,そのような場合の特許査定が「他の法律に審 てを却下したものであるところ(前記前提事実(8)イ),特許法195条の4にいう「査定」に審査官の手続違背を理由とする不服申立ての場合の特許査定が含まれず,そのような場合の特許査定が「他の法律に審査請求又は異議申立てをすることができない旨の定めがある処分」(行服法4条1項但し書き)に該当しないことは,争点(1)イに関する当裁判所の判断でみたとおりである。 (2) そして,本件異議申立てが,審査官の手続違背を理由とするものであったことは前提事実(8)のとおりであり,本件異議申立てにおいては,前記3で述べたとおりの理由により,審査官の手続違背を理由として本件特許査定を取り消すべきものであった。 (3) 原告は,主位的請求及び予備的請求各第2項で本件却下決定の取消しを求めているが,このうち,主位的請求第2項における本件却下決定の取消しは,本件特許査定が無効である場合に,その取消しを求める趣旨と解されるから,前記3(7)のとおり,本件特許査定が無効とは認められない以上,主位的請求第2項の請求は理由がない。これに対し,予備的請求第2項における本件却下決定の取消しは,本件特許査定が取り消されるべきものである場合に,その取消しを求める趣旨と解されるから,理由がある。 したがって,本件却下決定には,特許法195条の4の解釈を誤った点において瑕疵があり,その結果,本来,手続的瑕疵を理由として取り消すべきであった本件特許査定を取り消さず,申立てを却下したものであるから,違法として取消しを免れない。 第5 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えのうち,本件特許査定の取消しの義務付けを求める請求(主位的請求第3項及び予備的請求第3項)はいずれも不適法であるからこれらを却下し,本件特許査定の無 効確認を求める請求 でもなく,本件訴えのうち,本件特許査定の取消しの義務付けを求める請求(主位的請求第3項及び予備的請求第3項)はいずれも不適法であるからこれらを却下し,本件特許査定の無 効確認を求める請求及び本件特許査定が無効である場合に本件却下決定の取消しを求める請求(主位的請求第1項及び第2項の請求)はいずれも理由がないからこれを棄却し,本件特許査定の取消しを求める請求(予備的請求第1項)及び本件特許査定が取り消すべきものである場合に本件却下決定の取消しを求める請求(予備的請求第2項)はいずれも理由があるからこれを認容すべきことに帰着する。 したがって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官森川さつき

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