平成13(行コ)71 違法支出公金返還等請求控訴事件(原審・神戸地方裁判所平成9年(行ウ)第3号)

裁判年月日・裁判所
平成14年9月13日 大阪高等裁判所 住民訴訟
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判決文本文10,451 文字)

主文 1 原判決中,控訴人敗訴部分(原判決主文1項)を取り消す。 2 上記取消し部分に係る被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文同旨第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,篠山市(旧篠山町)の住民である被控訴人が,平成8年当時の篠山町長であった控訴人において,同年8月,第2次世界大戦の戦没者の遺族に対し,「お盆」,「英霊」,「ご帰壇」,「お供え」,「合掌」等の用語を用いた書面(乙6の1)(以下「本件添状」という。)を添えて線香又はろうそくを配布し,その購入代金等として公金35万7780円を支出したのは,憲法14条,20条,89条,99条に違反するものであって,これにより篠山市に同額の損害を被らせたと主張し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,篠山市に代位して同市に対する損害賠償を請求した事案である。 原審は,上記線香及びろうそくの配布並びにこれに伴う上記公金の支出が憲法20条3項,89条に違反するなどとして被控訴人の請求を認容したが,控訴人が控訴を提起した。 2 前提となる事実(争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実)(1) 昭和50年に当時の篠山町,多紀町及び城東町が合併して篠山町となり,平成11年4月1日に上記篠山町と西紀町,丹南町及び今田町が合併して現在の篠山市となった(乙25,控訴人本人)。 (2) 被控訴人は,篠山市の住民である。 控訴人は,平成8年4月22日に篠山町の町長に就任し,平成11年3月31日まで町長を務めた者である(なお,同年4月1日の篠山市誕生に伴う市長選挙により市長に当選し,現在に至っている。乙25,控訴人本人)。 (3) 篠山町は,平成8年8月,同町内における第2次世界大 31日まで町長を務めた者である(なお,同年4月1日の篠山市誕生に伴う市長選挙により市長に当選し,現在に至っている。乙25,控訴人本人)。 (3) 篠山町は,平成8年8月,同町内における第2次世界大戦の戦没者の遺族994戸に対し,篠山町長A名義で,本件添状を添え,988遺族には箱入り線香(戦没者1人当たり1個),6遺族には箱入りろうそく(同)をそれぞれ配布した(乙6の1・2,証人B。以下,上記線香等の配布を「本件線香等の配布」という。)。 (4) 篠山町は,同月30日,上記配布に係る線香及びろうそくの購入代金並びに本件添状の印刷代として,合計35万7780円を支出した(以下「本件公金支出」という。)。 なお,本件公金支出は,町長の権限に属する事務であるが,支出金額が上記のとおり50万円未満であったため,篠山町決裁規程(昭和50年11月1日規程第9号。乙24)の6条,別表第3総務課長専決事項(10)(1件10万円以上50万円未満の支出の命令に関すること)に従い,同町総務課長限りで専決処理された(乙25,控訴人本人)。 (5) 本件添状には,下記のとおりの記載がなされていた(乙6の1)。 記歳月の経つのは早いもので、戦後五十年がすぎ、お盆をひかえさぞかし懐かしい英霊のご帰壇を心待ちされている事と存じます。 篠山町といたしましても、国家のため一身を捧げられました諸英霊に感謝し、ささやかではございますが、ここに粗品をお供えし、謹んで追悼の誠をささげたく存じます。(中略)合掌(6) 被控訴人は,平成8年8月14日,篠山町監査委員に対し,本件公金支出は違法であると主張して,地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ,同監査委員は,被控訴人に対し,同年10月18日付けで,措置請求は認められない旨の決定をし,その旨通知した 本件公金支出は違法であると主張して,地方自治法242条1項に基づく監査請求を行ったところ,同監査委員は,被控訴人に対し,同年10月18日付けで,措置請求は認められない旨の決定をし,その旨通知した(甲1)。 3 争点(1) 本件公金支出の違法性の有無(2) 控訴人の損害賠償責任の有無 4 当事者の主張(1) 争点(1)について(被控訴人の主張)アいわゆる愛媛玉串料訴訟事件最高裁判決(最高裁平成9年4月2日大法廷判決・民集51巻4号1673頁)は,愛媛県が靖國神社又は愛媛県護國神社の挙行した祭祀である例大祭等に際し,玉串料,献灯料又は供物料を奉納するため,県の公金から数回にわたって支出したのは,憲法20条3項,89条に違反すると判断したものであるが,本件も,宗教上の儀式の必需品である供物に公金が支出された点で共通している。 イ控訴人が,篠山町の職員を使って,「お盆」,「英霊」,「ご帰壇」,「お供え」,「合掌」等の仏教及び神道の宗教用語を用いた本件添状と共に,宗教的儀式に使用され,その必需品とされる線香(仏教の信者に対して)又はろうそく(神道の信者に対して)を994遺族に配布した行為は,その配布を受けた住民に対し,仏教や神道の宗教的儀式(仏事,祭祀)の挙行を促すもので,「お盆」の宗教行事を強制するものである。また,その線香及びろうそくの配布は,その行為の性質からして,「特定の宗教」を信仰する者を公認的(通例的・原則的)に取り扱い,それと「異なる宗教」を信仰する者や「無宗教」の者を異端的(特例的・例外的)に取り扱うものである。 したがって,本件線香等にかかる公金支出は,憲法14条,20条,89条,99条に違反する。 なお,控訴人は,線香及びろうそくを宗教用具とのみとらえるのは不当である旨主張しているが,本件線香及びろうそくが本件 ,本件線香等にかかる公金支出は,憲法14条,20条,89条,99条に違反する。 なお,控訴人は,線香及びろうそくを宗教用具とのみとらえるのは不当である旨主張しているが,本件線香及びろうそくが本件添状を添えて配布されたものであることに照らすと,これらが宗教用具であることは明らかである。 ウ本件線香等にかかる公金支出の目的が「戦没者の追悼」や「遺族の慰謝」にあったとしても,線香等を配布することは,到底,公共の利益につながるものとはいえず,地方自治法232条の2にいう「公益上必要である場合」という要件を満たしていない。 (控訴人の主張)ア本件線香等の配布は,援護行政又は福祉行政の一環として,戦没者の遺族に対し,8月15日の終戦記念日を念頭において戦没者を追悼するために配布したもので,特定の宗教の儀式や行事を想定したものではない。本件線香等の配布を受けた戦没者の遺族がこれをどのように用いるかは戦没者の遺族の独自の領域であり,地方公共団体が関与できるはずもない。他方,被控訴人指摘の愛媛玉串料訴訟事件最高裁判決は,神社神道の祭式にのっとって行われる例大祭等の宗教的儀式が想定されていた事案に係る判決であって,この点で本件とは決定的に異なる。 イ線香及びろうそくは,特定の宗教に固有のものではなく,特定の宗教と直接あるいは本質的に結びつくものではない。線香等は,仏教等を信仰している者だけが使用するものではなく,今日,死者に対する追悼の意を表する際などには,特定の宗教的信仰や特定の宗教観にかかわりなく広く世俗的に用いられているものであって,これらを宗教用具とのみとらえることは日常生活の幅広い用途を無視するものである。 また,本件添状に記載されている「お盆」,「ご帰壇」,「英霊」,「お供え」,「合掌」を仏教及び神道の宗教用語ととらえるのも当たらない とのみとらえることは日常生活の幅広い用途を無視するものである。 また,本件添状に記載されている「お盆」,「ご帰壇」,「英霊」,「お供え」,「合掌」を仏教及び神道の宗教用語ととらえるのも当たらない。これらの語は,その淵源が特定の宗教に発するものであったとしても,歴史的,時間的経過あるいは社会構造の複雑化等から,その宗教的意義は著しく希薄化しており,世俗的に慣習化し,日常広く汎用する言葉になっている。 なお,配布対象となった994遺族のうち6遺族にろうそくを配布したのは,篠山町においては,昭和50年の多紀町,城東町との合併以前から町内の全遺族に対して線香を配布していたところ,上記合併に際して,たまたま多紀町,城東町の6遺族からろうそくにしてほしいとの要望があったためにすぎず,篠山町として,各遺族が信仰する宗教を調査して配布物を区別したような事実は全くない。 以上のように,本件添状を添えて行われた本件線香等の配布は,特定の宗教と結びつくような宗教的意義はなく,世俗的に慣習化した行為にすぎないものであって,その効果においても,特定の宗教に対する援助,助長,促進又は圧迫,干渉等になることもないから,これに伴う本件公金支出も違法とはいえない。 ウ本件線香等の配布は,悲惨な大戦の犠牲者である戦没者に対し感謝と追悼の意を表して,その遺族になしたものであるから,援護行政・福祉行政としての目的及び方法の相当性の範囲内の行為であって,地方自治法232条の2にいう「公益上必要がある場合」に該当することは明らかである。 (2) 争点(2)について(控訴人の当審における新主張)仮に本件公金支出に何らかの問題があったとしても,本件公金支出は,篠山町決裁規程(乙24)に従い,総務課長専決事項として同町総務課長により専決処理されたものであるから,町長である控訴 ける新主張)仮に本件公金支出に何らかの問題があったとしても,本件公金支出は,篠山町決裁規程(乙24)に従い,総務課長専決事項として同町総務課長により専決処理されたものであるから,町長である控訴人においてこれを阻止すべき指導監督上の義務に違反し,故意又は過失により阻止しなかったと認められる場合に限り損害賠償責任を負うべきところ,本件においては,控訴人がこれを阻止すべき指導監督上の義務に違反し,故意又は過失により阻止しなかったとは認められない。 (控訴人の上記主張に対する被控訴人の反論)本件公金支出が総務課長による専決処理によるものであったとしても,町長であった控訴人がその責任を免れることはない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 証拠(甲4,10,11,乙25,証人B,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア篠山町においては,昭和50年の多紀町,城東町との合併以前から,毎年8月15日の終戦記念日において,第2次世界大戦の戦没者に感謝と追悼の意を表するため,町内の全遺族に対し,本件添状と同様の書面を添えて線香を配布していたが,上記合併に際して多紀町,城東町の6遺族からろうそくにしてほしいとの要望があったため,その後,上記6遺族に対してのみはろうそくを配布するようになった。なお,篠山町として各遺族が信仰する宗教を調査して,配布物を区別したような形跡はない。 イ篠山町は,平成8年8月にも,終戦記念日であり,お盆の時期にも当たる同月15日の数日前に,町内の994遺族に対し,本件添状を添えて本件線香等を配布した。 配布に当たっては,事前に遺族から配布の是非・要否を含めて希望を聞くことはせず,前記6遺族にはろうそく(戦没者1人当たり1個)を,その余の988遺族には線香(同)を配布した。箱入り線香 布した。 配布に当たっては,事前に遺族から配布の是非・要否を含めて希望を聞くことはせず,前記6遺族にはろうそく(戦没者1人当たり1個)を,その余の988遺族には線香(同)を配布した。箱入り線香の価格は1個当たり350円で,箱入りろうそくの価格は1個当たり280円であった。 ウ平成9年及び同10年の各8月にも,本件添状と類似の書面(甲4,11)と線香又はろうそくが上記遺族に配布されたが,その際配布された書面には,本件添状で使用されていた「お盆」,「ご帰壇」,「お供え」,「合掌」という言葉は使用されておらず,その後平成11年4月1日に西紀町,丹南町及び今田町と合併して篠山市となったのを契機に,線香等の配布が廃止された。 (2) 篠山町が第2次世界大戦の戦没者の遺族である町民に対し,町として,戦没者に対する感謝及び追悼の意を表することは,行政の裁量の範囲内の行為というべきであって,その裁量権を逸脱しない限り,許されることはいうまでもない。そして,本件線香等の配布も,前記認定事実によれば,かかる目的に出た行為であると解され(この認定に反する証拠はない。),その費用も必ずしも多額とはいえないことにかんがみれば,それ自体としては,地方自治法232条の2にいう「公益上必要がある場合」に当たらないとはいえない。 そこで,被控訴人の主張する憲法20条,89条等との関連について検討する。 憲法は,20条1項前段において信教の自由を保障するとともに,その保障を確実なものとするため,20条1後段,3項,89条において,いわゆる政教分離の原則に基づく諸規定(以下「政教分離規定」という。)を設けている。 政教分離規定は,いわゆる制度的保障の規定であって,信教の自由そのものを直接保障するものではなく,国家(地方公共団体を含む。以下同じ。)と宗教との分離を制度 政教分離規定」という。)を設けている。 政教分離規定は,いわゆる制度的保障の規定であって,信教の自由そのものを直接保障するものではなく,国家(地方公共団体を含む。以下同じ。)と宗教との分離を制度として保障することにより,間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。そして,憲法の政教分離規定の基礎となり,その解釈の指導原理となる政教分離原則は,国家が宗教的に中立であることを要求するものではあるが,国家が宗教とのかかわり合いを持つことを全く許さないとするものではなく,宗教とのかかわり合いをもたらす行為の目的及び効果にかんがみ,そのかかわり合いが,我が国の社会的,文化的諸条件に照らし,信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものと認められる場合にこれを許さないとする趣旨であると解される。 このような政教分離原則の意義に照らすと,憲法20条3項にいう宗教的活動とは,およそ国及びその機関の活動で宗教とのかかわり合いを持つすべての行為を指すものではなく,そのかかわり合いが上記にいう相当とされる限度を超えるものに限られるというべきであって,当該行為の目的が宗教的意義を持ち,その効果が宗教に対する援助,助長,促進又は圧迫,干渉等になるような行為をいうものと解すべきである。そして,ある行為が上記にいう宗教的活動に該当するかどうかを検討するに当たっては,当該行為の外形的側面のみにとらわれることなく,当該行為の行われる場所,当該行為に対する一般人の宗教的評価,当該行為者が当該行為を行うについての意図,目的及び宗教的意識の有無,程度,当該行為の一般人に与える効果,影響等,諸般の事情を考慮し,社会通念に従って,客観的に判断するべきである(最高裁昭和52年7月13日大法廷判決・民集31巻4号533頁,最高裁平成9 識の有無,程度,当該行為の一般人に与える効果,影響等,諸般の事情を考慮し,社会通念に従って,客観的に判断するべきである(最高裁昭和52年7月13日大法廷判決・民集31巻4号533頁,最高裁平成9年4月2日大法廷判決・民集51巻4号1673頁,最高裁平成14年7月09日第三小法廷判決,最高裁平成14年07月11日第一小法廷判決参照)。 また,憲法89条が禁止している公金その他の公の財産を宗教上の組織又は団体の使用,便益又は維持のために支出すること又はその利用に供することというのも,前記の政教分離原則の意義に照らして,公金支出行為等における国家と宗教とのかかわり合いが前記の相当とされる限度を超えるものをいうと解すべきであり,これに該当するかどうかを検討するに当たっては,前記と同様の基準によって判断するのが相当である(最高裁平成9年4月2日大法廷判決・民集51巻4号1673頁参照)。 (3) 以上の観点から,本件線香又はろうそく等の配布及びこれに伴う本件公金支出が違法であるか否かについて検討する。 前記第2の2の前提となる事実及び前記第3の1の認定事実並びに証拠(甲14~16,乙23,25~27)に弁論の全趣旨を総合すれば,(1) 本件線香等の配布は,特定の宗教団体に対してなされたものではなく,第2次世界大戦の戦没者の遺族に対してなされたもので,その目的は,第2次世界大戦の戦没者に感謝と追悼の意を表することにあり,配布された線香等は,上記のような篠山町の気持を表すための「しるし」(価格も高価ではない。)の意味を有するにすぎなかったこと,(2) これらが配布された日は,たまたまお盆と重なってはいるが,上記目的から,本来は8月15日の終戦記念日が念頭に置かれたものであること,(3)他方,お盆は,元来は,先祖の魂迎えに発する民間年中行事を起源 れらが配布された日は,たまたまお盆と重なってはいるが,上記目的から,本来は8月15日の終戦記念日が念頭に置かれたものであること,(3)他方,お盆は,元来は,先祖の魂迎えに発する民間年中行事を起源とするもので,後年,仏教の影響を受けたとはいえ,一般人の意識としては,現在においても,お盆に幽界から顕界に還ってくる祖先の精霊を迎えて,これを祀り,慰め,供養する日であるとの民間習俗的な意識が混在していること,(4) ろうそくはもとより,線香も,今日,精霊を迎えたり,死者に対する追悼の意を表する際などには,特定の宗教的信仰や特定の宗教観にかかわりなく世俗的に用いられる例があり,その意味では,線香等の用途が仏教や神道の宗教的儀式用に限られているとまではいえないこと,(5) 本件添状に記載された「お盆」については,上記(3)と同様のことがいえるし,「英霊」については,本来の語義は「すぐれた霊気」,「すぐれた人の魂」等の意味で,第2次世界大戦後は「戦没者の霊」という意味で用いられることが多いこと,また,「ご帰壇」なる用語は,造語と思われるが,本件添状においては,その文面全体の意味に照らし,精霊が還ってくる「依代(よりしろ)」としての意味に用いられているものとも解され,また,その余の用語についても,その淵源が特定の宗教に由来するものであったとしても,歴史的経過の中で,その本来の宗教的意義は希薄化しており,むしろ日常は世俗的な意味で用いられることも少なくないことが,それぞれ認められる。 以上の点にかんがみると,控訴人が主張するように,本件添状を添えて行われた本件線香等の配布は,その宗教的色彩や宗教的意義が全く失われているとまではいえないとしても,相当程度に希薄化し,戦没者に対する感謝と追悼の意を捧げるための社会的儀礼としての側面が強いものということが 本件線香等の配布は,その宗教的色彩や宗教的意義が全く失われているとまではいえないとしても,相当程度に希薄化し,戦没者に対する感謝と追悼の意を捧げるための社会的儀礼としての側面が強いものということができ,一般人においても,そのようなものとして受け取る者も少なくなかったことが推測されないではない。 しかしながら,他面において,(1) 配布された品物である線香は,主として宗教上の儀式の際に供物(焼香)として用いられるものであり,また,ろうそくも,同様に供物(灯明)として用いられることの多いものであること,(2) 本件線香の配布時期が,「盂蘭盆経の目連説話に基づき,祖霊を死後の苦しみの世界から救済するための仏事」(広辞苑第5版267頁)とされているお盆の時期に当たること,(3) 本件線香等と共に配布された本件添状には,「お盆」,「英霊」,「ご帰壇」,「お供え」,「合掌」等の用語が用いられており,それら個々の用語が宗教用語であるか否かはひとまずおくとしても,上記のとおり当該用語は仏教に由来するものであったり,宗教的儀式や宗教行事と縁の深い言葉であって,その文面全体をみるときは,これを読む者に仏教的又は宗教的な印象を与えることを否定しがたいこと,(4) また,本件線香等を受領した遺族の多くが,これを各家庭の仏壇等に供える形で用いるであろうことも容易に推測し得るところであって,かかる遺族の行為をもって宗教と関わりのないものとはいえないことなどの諸事情を総合的に考慮して判断すると,本件添状を添えての本件線香等の配布は,その行為の目的が宗教的意義を持ち,その効果が宗教に対する助長,促進等となり,宗教とのかかわり合いの程度が我が国の社会的,文化的諸条件に照らし,信教の自由の保障の確保という制度の根本的目的との関係で相当とされる限度を超えるものとみる余地 果が宗教に対する助長,促進等となり,宗教とのかかわり合いの程度が我が国の社会的,文化的諸条件に照らし,信教の自由の保障の確保という制度の根本的目的との関係で相当とされる限度を超えるものとみる余地がある。 したがって,本件添状を添えて行われた本件線香等の配布は,地方自治体の行為として相当でないことはもとより,憲法20条3項にいう宗教的活動に該当し,同法89条等に違反するとの疑いを払拭することはできない。 2 争点(2)についてアそこで,進んで,本件公金支出が,篠山町の総務課長の専決処理によってなされたことと,同町の町長であった控訴人の責任との関係について検討する。 地方公共団体の長は,事務処理上の明確な定めにより,その権限に属する一定の範囲の財務会計上の行為をあらかじめ特定の補助職員に専決させることとしている場合であっても、上記財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている以上,上記財務会計上の行為の適否が問題とされている当該代位請求訴訟において,地方自治法242条の2第1項4号にいう「当該職員」に該当するものと解すべきである。そして,当該専決を任された補助職員が長の権限に属する当該財務会計上の行為を専決により処理した場合は,その長は,上記補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により上記補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り,普通地方公共団体に対し,上記補助職員がした財務会計上の違法行為により当該普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である(最高裁平成3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁参照)。 イ本件においてこれをみるに,本件公金支出は,町長たる控訴人の権限に属する事務であるが,篠 ものと解するのが相当である(最高裁平成3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁参照)。 イ本件においてこれをみるに,本件公金支出は,町長たる控訴人の権限に属する事務であるが,篠山町決裁規程(乙24)の6条,別表第3総務課長専決事項(10)に従い,同町総務課長によって専決により処理されたことは,既に,前記前提となる事実(4)でみたとおりである。 ところが,被控訴人は,本件において,控訴人の上記故意又は過失の存在等について具体的な主張,立証をしていない。また,その点をおいても,証拠(乙25,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,(1)篠山町では,昭和50年の多紀町,城東町との合併以前から二十数年以上にわたって,本件添状と同様の書面を添えた線香等の配布を行ってきたが,その間,法的問題点の指摘や改廃の議論がなされたことはなく,また,配布を受けた遺族から線香等の受領の拒絶がなされたこともなかったこと,(2) 当時は近隣市町村でも同様の施策が行われていたこと,(3) 本件と類似の事例について,これまで判決等の公権的解釈が示されたことはなかったこと,(4) 控訴人は,平成8年4月22日に町長の職に就任したものであるところ,本件線香等の配布及び本件公金支出はそのわずか4か月足らずの間に行われたものであること等の事実が認められることに加えて,既にみたように,線香等の配布が違憲であるかどうかの判断は微妙かつ困難な問題であって,容易に判断できたものとはいえないことに照らせば,控訴人において,これを阻止すべき指導監督上の義務に違反し,故意又は過失によりこれを阻止しなかったものとまでは認めることができない。 そうすると,控訴人は,本件公金支出に関し,篠山市に対し損害賠償責任を負わないというべきである。 3 その他,原審及び当審における当事 によりこれを阻止しなかったものとまでは認めることができない。 そうすると,控訴人は,本件公金支出に関し,篠山市に対し損害賠償責任を負わないというべきである。 3 その他,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし,原審で提出,援用された全証拠を改めて精査しても,当審の認定・判断を覆すほどのものはない。 第4 結論以上によれば,被控訴人の控訴人に対する本件請求は理由がないものとして棄却すべきところ,これと結論を異にする控訴人敗訴部分(原判決主文1項)を取り消した上,主文のとおり判決する。 (平成14年6月14日口頭弁論終結)大阪高等裁判所第8民事部裁判長裁判官竹原俊一裁判官小野洋一裁判官山田陽三は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官竹原俊一

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