- 1 -令和7年2月4日判決言渡令和6年(行ウ)第57号医師国家試験予備試験受験資格認定処分取消差止め等請求事件主文 1 厚生労働大臣は、原告に対し、医師国家試験予備試験の受験資 格の認定処分の取消しをしてはならない。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨 第2 事案の概要本件は、原告が、厚生労働大臣から、令和3年9月1日付けで、医師国家試験予備試験(以下、単に「予備試験」という。)の受験資格の認定処分(以下「本件認定処分」という。)を受けたところ、厚生労働大臣から、本件認定処分の取消し(以下「本件取消し」という。)を受ける蓋然性があるとして、行 政事件訴訟法3条7項の差止めの訴えとして、本件取消しの差止めを求める事案である。 1 関係法令等の定め本件に関係する医師法の定めは、別紙2のとおりであり、「医師国家試験等の受験資格認定の取扱い等について」(平成17年3月24日付け医政発第 0324007号各都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知。令和6年5月7日付け医政発0507第3号各都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知による改正前のもの)別添の「医師国家試験予備試験受験資格認定」における予備試験の受験資格の認定基準等(以下「本件認定基準」という。)の定めは、別紙3のとおりである(甲10)。なお、本件認定基準は、令和6年5 月7日付け医政発0507第3号各都道府県知事宛て厚生労働省医政局長通知 - 2 -(甲24、乙34)による改正(以下「本件改正」という。)により、「1 審査対象者」中の「医師免許を得た者」の次に「。なお、本項において医学校とは現代西洋医学の医学校、医師免許とは現代西洋医学の医師免許を意味するものであり 正(以下「本件改正」という。)により、「1 審査対象者」中の「医師免許を得た者」の次に「。なお、本項において医学校とは現代西洋医学の医学校、医師免許とは現代西洋医学の医師免許を意味するものであり、伝統医学専攻のみ又は伝統医学の医師免許のみを得た者を含まない。」が加えられ、「3 認定基準」、「⑵ 専門科目の履修時間」中の「一 貫した教育」が「一貫した現代西洋医学の専門教育」に改められた(甲21、乙40)。 2 前提事実以下の事実は、当事者の間に争いがなく若しくは当裁判所に顕著であり、又は各項掲記の証拠(特に明示する場合を除き、各枝番号を含む。)及び弁論の 全趣旨から容易に認めることができる。 ⑴ 原告ア原告は、中華人民共和国(以下「中国」という。)の国籍を有する外国人である。 イ原告は、2010年(平成22年)9月から2015年(平成27年) 6月まで、中国の医学校であるA大学(以下「本件大学」という。)において、中医学(いわゆる東洋医学の一つで、漢方など中国の伝統医学を基本とする医学のことをいう。)専攻(5年制)本科の中西医結合(中医学・西洋医学結合)コースに在籍し、同科を修了して卒業した(甲1、19、乙10、弁論の全趣旨)。 ウ中国の医師免許は、西洋医学(臨床医学)と東洋医学(中医学)に分かれているところ、原告は、中国において、中医学に係る国家医師資格試験に合格し、2016年(平成28年)12月2日、中医師(中医学の医師)の資格を取得した(甲2)。 ⑵ 本件の経緯 ア原告は、日本で医師となるため、医師国家試験の受験資格認定及び予備 - 3 -試験の受験資格認定の各申請をしたところ、厚生労働大臣から、令和3年5月14日付けで、上記各申請いずれについても不認定処分を受け 師となるため、医師国家試験の受験資格認定及び予備 - 3 -試験の受験資格認定の各申請をしたところ、厚生労働大臣から、令和3年5月14日付けで、上記各申請いずれについても不認定処分を受けた(甲3、乙1)。 イ原告は、再度、医師国家試験の受験資格認定及び予備試験の受験資格認定の各申請をした(以下「本件各申請」という。)ところ、令和3年9月 1日付けで、医師国家試験の受験資格認定の申請については、不認定処分を受けたが、予備試験の受験資格認定の申請については、認定処分(本件認定処分)を受けた(甲4、乙2)。 ウ原告は、令和5年11月27日、予備試験に合格(以下「本件合格」という。)した(甲5)。 エ原告は、令和6年3月上旬頃までには、B病院において、医師法11条2号に基づく診療及び公衆衛生に関する実地修練(以下、単に「実地修練」ということがある。)を開始する予定であったが、同年1月26日、厚生労働省医政局医事課試験免許室長及び試験専門官と面談した際、同人らから、本件認定処分について誤りがあったため取消し(本件取消し)をする 予定である旨を伝えられた(甲6、7、乙3)。 ⑶ 本件訴えの提起原告は、令和6年2月16日、本件訴えを提起した。 3 争点及び争点に関する当事者の主張争点及び争点に関する当事者の主張は、別紙4のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(「重大な損害を生ずるおそれ」(行政事件訴訟法37条の4第1項)の有無)について⑴ 行政事件訴訟法3条7項の差止めの訴えの訴訟要件については、当該処分がされることにより「重大な損害を生ずるおそれ」があることが必要であり (同法37条の4第1項)、その有無の判断に当たっては、損害の回復の困 - 4 -難の程度 については、当該処分がされることにより「重大な損害を生ずるおそれ」があることが必要であり (同法37条の4第1項)、その有無の判断に当たっては、損害の回復の困 - 4 -難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとされている(同条2項)。 行政庁が処分をする前に裁判所が事前にその適法性を判断して差止めを命ずるのは、国民の権利利益の実効的な救済及び司法と行政の権能の適切な均衡の双方の観点から、そのような判断と措置を事前に行わなければならない だけの救済の必要性がある場合であることを要するものと解される。したがって、差止めの訴えの訴訟要件としての上記「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる 前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である。(最高裁平成24年2月9日第一小法廷判決・民集66巻2号183頁参照)⑵ 医師法は、医師になろうとする者は、医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない旨規定した上で(2条)、医師国家試験の 受験資格について、①大学において、医学の正規の課程を修めて卒業した者(以下「日本医学部卒業者」という。)、②予備試験に合格した者で、合格した後1年以上の診療及び公衆衛生に関する実地修練を経たもの、③外国の医学校を卒業し、又は外国で医師免許を得た者(以下「外国医学校卒業者等」という。)で、厚生労働大臣が上記①及び②に掲げる者と同等以上の学力及 び技能を有し、かつ、 実地修練を経たもの、③外国の医学校を卒業し、又は外国で医師免許を得た者(以下「外国医学校卒業者等」という。)で、厚生労働大臣が上記①及び②に掲げる者と同等以上の学力及 び技能を有し、かつ、適当と認定したものである旨規定し(11条)、上記②の予備試験の受験資格については、外国医学校卒業者等のうち、上記③に該当しない者であって、厚生労働大臣が適当と認定したものである旨規定している(12条)。 前記前提事実⑵イ及びウのとおり、原告は、令和3年9月1日付けで、本 件認定処分を受け、令和5年11月27日、本件合格をしたところ、本件取 - 5 -消しがされた場合、同法12条の規定に照らして、本件合格も当然に無効となると解するのが相当である。そして、同法11条2号によれば、予備試験の合格等が医師国家試験の受験資格の要件となっているから、原告は、本件取消しがされると、同号により医師国家試験の受験資格を得ることができないこととなる。 また、令和6年5月7日付けでされた本件改正の内容(前記第2の1)による場合、今後、原告が、本件大学の卒業又は中医師の資格の取得に基づき、医師国家試験の受験資格認定及び予備試験の受験資格認定の各申請をしたとしても、これらの認定を受けることはできないこととなるから、原告が日本において医師になるためには、医学の正規の課程を修めることのできる日本 の大学(以下「日本の大学の医学部」という。)又は外国の医学校に入学し直す必要があり、それに要する時間も費用も多大なものとなると考えられる。 さらに、本件取消しがされた後にその取消訴訟及び執行停止を申し立てたとしても、その決定までには相応の期間を要し、少なくとも原告が令和8年中に医師国家試験を受けることは困難となる可能性が高いといえるほか、一 消しがされた後にその取消訴訟及び執行停止を申し立てたとしても、その決定までには相応の期間を要し、少なくとも原告が令和8年中に医師国家試験を受けることは困難となる可能性が高いといえるほか、一 度、本件取消しを受けた原告については、その実地修練を受け入れる大学病院等がない蓋然性が高く、令和9年以降も、原告が医師国家試験を受けることは難しいと考えられる。 以上によれば、本件取消しがされた場合、原告は、本件認定処分を受け、本件合格をしたにもかかわらず、多大な時間と費用をかけて日本の大学の医 学部若しくは外国の医学校に入学し直すか、又は日本において医師になることを諦めるかの選択を余儀なくされるのであり、これは原告の職業選択の自由(憲法22条1項)の侵害であるともいい得ることに加え、本件取消しによって、原告が本件認定処分を前提に日本において医師として活動すべく費やしてきた時間や費用も無に帰させることとなることも考慮すれば、本件取 消しによって原告に生ずる損害について、本件取消しがされた後に取消訴訟 - 6 -等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、本件取消しがされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであるということができ、その回復の困難の程度等に鑑み、本件取消しの差止めの訴えについては「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められるというべきである。 なお、被告は、本件取消しがされなかった場合、原告が、現代西洋医学の医療教育を十分に受けていないにもかかわらず、実地修練で医行為を行い、さらには、医師免許を取得する可能性があるのであり、本件取消しによって、患者の生命、身体及び健康が害される危険を回避することができることも勘案され けていないにもかかわらず、実地修練で医行為を行い、さらには、医師免許を取得する可能性があるのであり、本件取消しによって、患者の生命、身体及び健康が害される危険を回避することができることも勘案されるべきである旨主張する。しかし、実地修練は、予備試験の合格が前 提となっており、これを実施する者につき、臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して、医師として具有すべき知識及び技能が一定程度備わっていることが前提となっているだけでなく、日本の大学の医学部生の臨床実習に準じたカリキュラムで行うこととされ(乙31)、かかる臨床実習は、侵襲性のそれほど高くない一定のものに限られること、指導医による指導・監督の下に 行われること、患者等の同意を得ることなどが条件とされている(乙9)から、本件合格をした原告が実地修練を行うことによって、患者の生命、身体及び健康に直ちに危険が及ぶものとはいえない。また、本件取消しの差止めがされて、原告が実地修練を経たとしても、医師免許を取得するためには、医師国家試験に合格する必要があるから(医師法2条)、原告が直ちに医師 免許を取得するものでもない。そうすると、被告が上記主張する本件取消しの内容及び性質を勘案したとしても、上記判断が左右されるものではない。 2 争点2(本件認定処分の瑕疵の有無(原告が医師法12条の「外国の医学校」を卒業した者に該当するか否か))について⑴ア医師法11条1号及び2号によれば、外国医学校卒業者等は、同条3号 に該当しない限り、予備試験の合格及び1年以上の実地修練を経ることに - 7 -よって、初めて日本医学部卒業者と同様に医師国家試験の受験資格を得ることができることになる。そうすると、外国医学校卒業者等が、同法12条に基づき、厚生労働大臣から、予備試験の受験 - 7 -よって、初めて日本医学部卒業者と同様に医師国家試験の受験資格を得ることができることになる。そうすると、外国医学校卒業者等が、同法12条に基づき、厚生労働大臣から、予備試験の受験資格の認定を受けるためには、予備試験に合格し、1年以上の実地修練を経れば、日本医学部卒業者と同等以上の医療に関する学力及び技能を備えているといえる程度の医 学教育を受けていることを要するものと解される。 したがって、同条の「外国の医学校」を卒業した者に該当するためには、日本の大学の医学部で行われるものと同程度の内容の履修科目又は取得単位が設定されている外国の医学校を卒業すること、すなわち、現代西洋医学の各科目に相当する内容の履修科目又は取得単位が設定されている 外国の医学校を卒業することを要するものと解される。 イこれに対し、被告は、医師法12条の「外国の医学校」に該当するためには、当該医学校において、日本の大学の医学部における医学の「正規の課程」(同法11条1号)に準ずる現代西洋医学の各科目に相当する内容の履修科目及び取得単位が設定されているだけでは足りず、当該履修科目 及び取得単位を修めることがカリキュラムや卒業認定等の制度によって担保されていることまで要する旨主張する。 しかし、①同条は、「外国の医学校」を卒業した者について、直ちに医師国家試験の受験を認めておらず、厚生労働大臣が、日本医学部卒業者又は予備試験に合格して1年以上の実地修練を経た者と同等以上の学力及 び技能を有し、かつ、適当と認定したものに限って、医師国家試験の受験を認めていること、②同法12条は、「外国の医学校」を卒業した者について、直ちに予備試験の受験を認めておらず、厚生労働大臣が適当と認定したものに限って、その受験を認めていることからすれ 家試験の受験を認めていること、②同法12条は、「外国の医学校」を卒業した者について、直ちに予備試験の受験を認めておらず、厚生労働大臣が適当と認定したものに限って、その受験を認めていることからすれば、「外国の医学校」を卒業した者について、直ちに、日本の大学の医学部において医学の 正規の課程を修めて卒業した者と同等以上の学力及び技能を有している - 8 -ものとは認めていないのであって、さらに、一定程度の知識・技能を有しているか否かについて、厚生労働大臣が一定の裁量をもって認定することが予定されているというべきである。以上に加えて、外国の学校におけるカリキュラムや卒業認定等の制度は様々であることも考慮すれば、同条の「外国の医学校」に該当するための要件として、現代西洋医学の各科目に 相当する内容の履修科目及び取得単位を修めることがカリキュラムや卒業認定等の制度によって担保されていることまで要求すべきものということはできない。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 ⑵ 前記前提事実⑴イに加え、証拠(甲4の1、12、乙2、22、23、2 6)によれば、本件大学には、臨床医学、生命科学などの現代西洋医学の各科目に相当する内容を履修する学部と考えられるものがあること、国家重点学科の二級学科である中西医結合基礎や原告が在籍していた中医学専攻本科の中西医結合コースにおいては、中医学と現代西洋医学を融合した内容を履修するものと考えられ、現に、原告が本件大学において履修した科目には、 正常人体解剖学、生理学、医学免疫学と微生物学、薬理学、病理学、西医内科学(伝染病を含む。)、西医外科学など、現代西洋医学の科目であると考えられるものが20以上あること、中西医結合については、ポストドクターの受入れの認可を 学免疫学と微生物学、薬理学、病理学、西医内科学(伝染病を含む。)、西医外科学など、現代西洋医学の科目であると考えられるものが20以上あること、中西医結合については、ポストドクターの受入れの認可を受けた科学研究施設も設けられていることが認められ、これらの事実からすれば、原告が卒業した本件大学が中医学だけでなく現代西 洋医学も研究・教育する大学であり、相当数の現代西洋医学の各科目に相当する内容の履修科目又は取得単位が設定されていることが認められるから、本件大学は医師法12条の「外国の医学校」に該当するといえる。 これに対し、被告は、①本件大学の中医学専攻課程の卒業に必要とされる履修科目及び取得単位は、日本の大学の医学部卒業に必要となる履修科目及 び取得単位と比較して、現代西洋医学の科目が質・量ともに足りていないこ - 9 -と、②本件大学が本件各申請時において世界医学教育連盟の作成する医学校リストに報告されていなかったことを主張する。しかし、上記①については、前記⑴のとおり、同条は、「外国の医学校」を卒業した者について、予備試験に合格し、1年以上の実地修練を経れば、日本医学部卒業者と同等以上の医療に関する学力及び技能を備えているといえる程度の医学教 育を受けていることを要するものと解されるから、「外国の医学校」に該当するために、その卒業に必要とされる履修科目及び取得単位が、日本の大学の医学部卒業に必要となる履修科目及び取得単位と比較して、現代西洋医学の科目の質及び量が同程度であることを要するものとまでは解されない。また、上記②については、同条の「外国の医学校」に該当するか否かが 世界医学教育連盟の作成する医学校リストへの報告の有無によって左右されるものと解すべき根拠は見当たらない。上記①及び②の事情は、 た、上記②については、同条の「外国の医学校」に該当するか否かが 世界医学教育連盟の作成する医学校リストへの報告の有無によって左右されるものと解すべき根拠は見当たらない。上記①及び②の事情は、前記⑴において述べた同法11条、12条の条文構造に照らせば、同条の「厚生労働大臣が適当と認定したもの」という要件の考慮要素となり得るかは別として、これらの事情をもって、本件大学が「外国の医学校」に該当し ないということはできない。 ⑶ 以上によれば、原告は、医師法12条の「外国の医学校」を卒業した者に該当するといえるから、原告がこれに該当しないことを理由に本件認定処分に瑕疵があるということはできず、そのほか、被告は本件認定処分の瑕疵を主張しない。 したがって、厚生労働大臣が本件取消しをすべきでないことが本件取消しの根拠となる法令の規定から明らかであると認めることができる。 3 結論よって、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 - 10 - 裁判長裁判官鎌野真敬 裁判官志村由貴 裁判官都 築 健太郎 (別紙1省略)(別紙2)- 11 - ○ 医師法 第一条 医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。 第二条 医師になろうとする者は、医師国家試験に合格 もつて国民の健康な生活を確保するものとする。 第二条 医師になろうとする者は、医師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。 第九条 医師国家試験は、臨床上必要な医学及び公衆衛生に関して、医師として具有すべき知識及び技能について、これを行う。 第十一条 医師国家試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、これを受けることができない。 一 大学において、医学の正規の課程を修めて卒業した者 二 医師国家試験予備試験に合格した者で、合格した後一年以上の診療及び公衆衛生に関する実地修練を経たもの 三 外国の医学校を卒業し、又は外国で医師免許を得た者で、厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の学力及び技能を有し、かつ、適当と認定したもの 第十二条 医師国家試験予備試験は、外国の医学校を卒業し、又は外国で医師免許を得た者のうち、前条第三号に該当しない者であって、厚生 験は、外国の医学校を卒業し、又は外国で医師免許を得た者のうち、前条第三号に該当しない者であつて、厚生労働大臣が適当と認定したものでなければ、これを受けることができない。 第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。 (別紙3)- 12 - 本件認定基準の定め 医師法第12条に基づく医師国家試験予備試験受験資格認定を行うための認定基準等を示す。 1 審査対象者外国の医学校を卒業し、又は外国において医師免許を得た者 2 審査方法審査対象者からの申請書類により、審査対象者が日本の医学校を卒業した 者と同等以上であるか否かについて、以下の認定基準に基づき審査を行う。 3 認定基準下記の⑴から⑼までの認定基準を満たした者に対し医師国家試験予備試験受験資格認定を行う。 ⑴ 外国医学校の修業年数ア) 医学校の入学資格高等学校卒業以上(修業年数12年以上)イ) 医学校の教育年限5年以上(専門課程:4年以上) 但し、インターン期間については教育年数に配慮するものとするウ) 医学校卒業までの修業年限17年以上⑵ 専門科目の履修時間3500時間以上で、かつ一貫した教育を受けていること ⑶ 医学校卒業からの年数 - 13 -10年以内(但し、医学教育又は医業に従事している期間は除く。)⑷ 専門科目の成績良好であること⑸ 教育環境大学附属病院の状況、教員数等が日本の大学より劣っているものでない こと⑹ 以内(但し、医学教育又は医業に従事している期間は除く。)⑷ 専門科目の成績良好であること⑸ 教育環境大学附属病院の状況、教員数等が日本の大学より劣っているものでない こと⑹ 当該国の政府の判断WHOのWorldDirectoryofMedicalSchools に原則報告されていること⑺ 医学校卒業後、当該国の医師免許取得の有無 取得していなくともよい⑻ 当該国の医師免許を取得する場合の国家試験制度制度が確立されていなくともよい⑼ 日本語能力日本の中学校及び高等学校を卒業していない者については、日本語能力 試験1級の認定を受けていること (以下略) (別紙4)- 14 - 争点及び争点に関する当事者の主張 1 「重大な損害を生ずるおそれ」(行政事件訴訟法37条の4第1項)の有無(原告の主張)本件取消しがされると、本件合格も無効となり、原告は、実地修練ができず、 日本で医師となる機会を奪われるから、原告の職業選択の自由(憲法22条1項)が侵害されるといえ、これは単なる経済的損害にとどまるものではない。 本件取消しがされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けたとしても、当該取消訴訟等が確定するまでは、原告が医師国家試験を受験することはできないと考えられ、その間に積むことができるはずだった医師としての経験 が奪われることとなり、原告に回復困難な損害が生ずる。 したがって、本件取消しによって原告に生ずる損害の性質及び程度を勘案すれば、本件取消しの内容及び性質を勘案したとしても、本件取消しがされることにより「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。 (被告の主張) 本件取消しによって害される原告の利益は、本件合格に引き続 しの内容及び性質を勘案したとしても、本件取消しがされることにより「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる。 (被告の主張) 本件取消しによって害される原告の利益は、本件合格に引き続いて実地修練を経て医師国家試験を受験し、これに合格して医師になることができるかもしれないという期待にとどまり、その損害は、かかる期待の下で費やした費用が無駄になるというものにとどまるから、事後的な金銭賠償により相当程度回復することができる。 また、本件取消しがされず、本件認定処分の効力が維持されれば、原告が、実地修練で医行為を行うだけでなく、現代西洋医学を実践するために必要な知識・技能の習得を目標とした医学教育制度による医療教育を受けていないにもかかわらず、医師免許を取得する可能性があるのであり、「重大な損害を生ずるおそれ」の有無の判断に当たっては、本件取消しの内容及び性質として、本 件取消しによって、患者の生命、身体及び健康といった極めて重要な公共の利 - 15 -益が害される危険を回避することができることも勘案されるべきである。 以上によれば、本件取消しがされることにより「重大な損害を生ずるおそれ」があるとは認められない。 2 本件認定処分の瑕疵の有無(原告が医師法12条の「外国の医学校」を卒業した者に該当するか否か) (被告の主張)⑴ 医師法11条の条文構造からすれば、同条3号の「外国の医学校」とは、日本の大学の医学部医学科における「正規の課程」(同条1号)に準ずる履修科目及び取得単位を修めることがカリキュラムや卒業認定等の制度によって担保されている学校と解すべきであり、上記「正規の課程」を定める「医 学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)」(乙9。以下「本件コアカリキュラム」と ムや卒業認定等の制度によって担保されている学校と解すべきであり、上記「正規の課程」を定める「医 学教育モデル・コア・カリキュラム(令和4年度改訂版)」(乙9。以下「本件コアカリキュラム」という。)の内容に照らすと、上記「外国の医学校」は、現代西洋医学を実践するために必要な知識・技能の習得を目指すべく設定された履修科目及び取得単位を修めることがカリキュラムや卒業認定等の制度によって担保されている学校ということになり、同法12条の「外国の 医学校」も同様に解される。 ⑵ 原告が卒業した本件大学の中医学専攻課程は、中国の伝統医学である中医学を主要学科としており、その卒業に必要とされる履修科目及び取得単位は、日本の大学の医学部医学科卒業に必要となる履修科目及び取得単位と比較して、現代西洋医学の臨床医学系科目と臨床実習科目が質・量ともに足りてお らず、本件大学が本件各申請時において世界医学教育連盟(WFME)の作成する医学校リスト(WorldDirectoryofMedicalSchools)に報告されていなかったことも踏まえると、本件大学は、現代西洋医学を実践するために必要な知識・技能の習得を目指すべく設定された履修科目及び取得単位を修めることがカリキュラムや卒業認定等の制度によって担保されている学 校であるといえず、医師法12条の「外国の医学校」に該当しない。 - 16 -⑶ そうすると、厚生労働大臣が、原告が医師法12条の「外国の医学校」を卒業した者であるとして本件認定処分をしたことは誤りであり、本件認定処分には瑕疵があることとなる。 (原告の主張)⑴ 医師法11条、12条の「外国の医学校」という文言に関する定義は法令 上存在せず、字句どおり解釈するのが相当であるところ、「医学校」とは 定処分には瑕疵があることとなる。 (原告の主張)⑴ 医師法11条、12条の「外国の医学校」という文言に関する定義は法令 上存在せず、字句どおり解釈するのが相当であるところ、「医学校」とは一般的には「医学を教える学校」を意味する言葉であるから、上記「外国の医学校」とは、日本以外の国において医学を教える学校をいうと解するのが相当である。 ⑵ 本件大学は、中国の伝統医学並びに中国の伝統医学及び西洋医学を融合さ せた医学を研究・教育する機関であり、医学を教える学校であるから、医師法12条の「外国の医学校」に該当する。 ⑶ したがって、原告は、医師法12条の「外国の医学校」を卒業した者に当たるから、本件認定処分に被告が主張するような瑕疵はない。 3 本件取消しの可否 (被告の主張)本件取消しは、授益的処分の職権取消しに当たるが、前記2の本件認定処分の瑕疵は、本来なら医業が禁止されている者が医師になることを許容することにつながるものであり、その程度は重大であること、本件取消しをしなかった場合、実地修練という制度に対する国民の信頼を揺るがしかねないだけでなく、 医療事故の危険性を高めるなどして、医師法の目的を損なう結果となること、前記1のとおり、本件取消しによって原告に生ずる不利益の程度は重大なものとまではいえないことなどからすれば、本件取消しをすることは可能である。 (原告の主張)本件認定処分がされたことにつき原告に何ら落ち度がないこと、本件認定処 分は原告に予備試験の受験資格があることを認めるものにすぎず、原告は本件 - 17 -合格をしており、医学的専門知識が不足しているわけでもないため、本件認定処分を維持したとしても直ちに国民の健康な生活が損なわれるものではないこと、前記1のとおり、 、原告は本件 - 17 -合格をしており、医学的専門知識が不足しているわけでもないため、本件認定処分を維持したとしても直ちに国民の健康な生活が損なわれるものではないこと、前記1のとおり、本件取消しによって原告に生ずる不利益は重大であることなどからすれば、仮に本件認定処分に瑕疵があったとしても、本件取消しをすることはできない。 4 本件取消しの合憲性(原告の主張)前記1のとおり、本件取消しによって原告の職業選択の自由(憲法22条1項)が侵害される。また、原告は、本件認定基準に係る基準を全て満たし、予備試験に合格しており、そのような場合でも、原告が中医学専攻の大学を卒業 したことを理由に本件取消しをすることは、不合理な差別というべきであり、憲法14条1項に違反する。 したがって、本件取消しをすることは違憲である。 (被告の主張)中医学専攻の大学を卒業した者につき、予備試験の受験資格認定をしないこ とは、医師が医行為という人体に危害を及ぼすおそれがある行為をする以上、必要かつ合理的な規制といえ、本件取消しによって原告の職業選択の自由(憲法22条1項)が侵害されるとはいえないし、本件取消しをすることが原告に対する不合理な差別ということもできないから憲法14条1項にも反しない。 したがって、本件取消しをすることは合憲である。 5 本件取消しの手続的違法の有無(原告の主張)仮に、厚生労働大臣が、申請者の卒業した大学が医師法11条、12条の「外国の医学校」に該当するか否かにつき、中医学専攻の大学はこれに該当しないという基準で判断していたとすれば、当該基準は同条の厚生労働大臣の認定に おける審査基準(行政手続法2条8号ロ)に当たるところ、本件認定処分時に - 18 -おいて、当該 に該当しないという基準で判断していたとすれば、当該基準は同条の厚生労働大臣の認定に おける審査基準(行政手続法2条8号ロ)に当たるところ、本件認定処分時に - 18 -おいて、当該基準は公にされていなかったから、当該基準に基づき本件取消しをした場合は、同法5条3項に違反することとなる。 (被告の主張)本件認定基準が公開されているほか、本件コアカリキュラムも公開されており、予備試験の受験資格認定の申請に係るウェブサイトにおいて外国の医学校 を卒業しても当該受験資格が認定されないことがある旨の注意喚起が行われていることからすれば、本件取消しをしても行政手続法5条3項違反にはならない。
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