- 1 -主文 原判決を取り消す。 別紙2平成16年処分一覧表及び別紙3平成18年処分一覧表の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分の名宛人」欄記載の各被保護者に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく保護変更決定のうち,上記各別紙の「金額」欄記載の各金額を減額する部分を取り消す。 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨主文同旨第2事案の概要(略称等は原判決の例による)。 1(1)本件は,北九州市の住民であり生活保護を受けていた控訴人らが,厚生労働大臣の定める生活保護基準が平成16年3月25日及び平成18年3月31日に改定されて老齢加算が減額又は廃止されたことにより,自らが又は世帯主が社会福祉事務所長から生活保護法25条2項に基づく保護変更決定を受けたものであるが,同決定は憲法25条1項,生活保護法56条等に違反するとして,被控訴人に対し,その取消しを求めた事案である。 ,,(2)原審は老齢加算の減額又は廃止を含む前記(1)の保護基準の改定が違憲違法なものであるということはできないなどとして,控訴人らの請求をいずれも棄却した。 (3)控訴人らは,これを不服として,控訴した。 事案の概要は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2章事案の概要」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)8頁20行目,24行目及び9頁4行目の「3760円」を「7520円」に,11行目の「3130円」を「6890円」に,18行目の「P2- 2 -」「」,「」「」。 をP23に19行目の3760円を7520円に改める(2)83頁25行目の末尾に「」を加え,86頁24行目の「高齢者 8行目の「P2- 2 -」「」,「」「」。 をP23に19行目の3760円を7520円に改める(2)83頁25行目の末尾に「」を加え,86頁24行目の「高齢者どお。 し」を「高齢者どうし」に,88頁5行目の「貯蓄されて続けて」を「貯蓄」,「」「」,「」され続けてに106頁12行目の(ア)をアに18行目の(イ)を「イ」に,110頁5行目の「基準生活」を「基準生活費」に改める。 第3当裁判所の判断 生活保護制度の概要(1)生活保護法の目的生活保護は,生活保護法(以下,単に「法」ともいう)に基づいて実施。 される公的扶助制度であり,憲法25条に規定する理念に基づき,国が生活,,,に困窮するすべての国民に対しその困窮の程度に応じ必要な保護を行いその最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とするものである(法1条。 )(2)生活保護法の基本原理法の解釈及び運用は,以下の法の基本原理に基づいてされなければならない(法5条。 )アすべて国民は,法の定める要件を満たす限り,法による保護(以下,単に「保護」ともいう)を無差別平等に受けることができる(法2条。 。 )イ法により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない(法3条。 )ウ保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべて法による保護に優先して行われるものとする。ただし,急迫した事,。()由がある場合に必要な保護を行うことを妨げるものではない法4条(3)保護の種 の扶養及び他の法律に定める扶助は,すべて法による保護に優先して行われるものとする。ただし,急迫した事,。()由がある場合に必要な保護を行うことを妨げるものではない法4条(3)保護の種類- 3 -保護の種類としては,生活扶助,教育扶助,住宅扶助,医療扶助,介護扶助,出産扶助,生業扶助及び葬祭扶助があり,これらの扶助は,現に保護を受けているといないとにかかわらず,保護を必要とする状態にある者(以下「要保護者」という。法6条2項)の必要に応じ,単給又は併給として行われる(法11条。 )ア生活扶助生活扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して,衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの及び移送の範囲内において,原則として1月分以内を限度として前渡する金銭給付によって行われる(法12条,31条。 )イ住宅扶助住宅扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して,住居及び補修その他住宅の維持のために必要なものの範囲内において,原則として金銭給付によって行われる(法14条,33条。 )ウ医療扶助医療扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して,診察,薬剤又は治療材料,医学的処置,手術及びその他の治療並びに施術,居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看,(,護等の範囲内において原則として現物給付によって行われる法15条34条。 )(4)保護の基準及び程度保護の要否は,厚生労働大臣の定める基準(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という)に基づいて判断され,要保護者の需要の。 うちその者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行われる(法8条1項。保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構) 保護基準」という)に基づいて判断され,要保護者の需要の。 うちその者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行われる(法8条1項。保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構)成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度- 4 -の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これをこえないものでなければならない(同条2項。 )保護は,保護基準に基づいて算定される当該世帯の最低生活費から当該世帯の収入を控除して,不足分を補う形で行われている(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知。乙A2。 )(5)生活扶助に関する基準と加算ア保護基準は,扶助の種類別に別表を定めて基準を設定している(保護基準別表第1から第8まで。このうち生活扶助に関する基準(保護基準別)表第1。以下「生活扶助基準」という)は,基準生活費(第1章)と加。 算(第2章)に大別されている。 イ居宅で生活する者の基準生活費は,第1類と第2類に分けられ,原則として,世帯ごとに,第1類の個人別の額を合算したものと第2類の額を合計して算出される。個人ごとに算出される第1類の額(以下「第1類費」。),,(「」というは級地及び年齢別に定められ第2類の額以下第2類費という)は,級地等及び世帯人員別に定められている。級地は,市町村。 別に1級地-1から3級地-2まで六つに区分して定められており,北九州市は1級地-2とされている(保護基準別表第9。 )第1類費は,食費,被服費等の個人単位の経費に対応するものであり,第2類費は,光熱費,家具什器等の世帯単位の経費等に対応するものとされている(乙A10の4・資料1の2頁。 )ウ平成16年3月25日付けの保護基準の改定前は,加算には,妊産婦加算,老 のであり,第2類費は,光熱費,家具什器等の世帯単位の経費等に対応するものとされている(乙A10の4・資料1の2頁。 )ウ平成16年3月25日付けの保護基準の改定前は,加算には,妊産婦加算,老齢加算,母子加算,障害者加算,介護施設入所者加算等があり,それぞれ該当する者について,保護基準で定められた一定額が基準生活費に加算して支給されていた。 エ平成16年3月25日付けの保護基準の改定前の1級地-2の居宅で生活する70歳以上の者の第1類費は一人当たり3万1180円,第2類費- 5 -は単身世帯で4万1560円,二人世帯で4万6000円であった(乙A3。したがって,単身世帯の基準生活費は原則として7万2740円,二人世帯の基準生活費は原則として10万8360円であった。 。)これに対して,1級地-2の居宅で生活する者の老齢加算の額は1万7930円であったから(乙A3,老齢加算の他に加算がない1級地-2)の居宅で生活する単身世帯の被保護者において,老齢加算の額が生活扶助の支給額全体に対して占める割合は,約19.8%(小数点第2位以下四捨五入)であった。 前提事実当事者間に争いのない事実に証拠(甲A1,2,9,20,21,104,107,119,173,乙A1,5,6,7,9,10の1から12まで,乙A16,17の1から3まで,乙A19,22,40)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (1)老齢加算の創設及びその後の経緯ア老齢加算は,昭和35年4月,70歳以上の者を対象として,前年度に開始された福祉年金(月額1000円)を収入認定するのに対応して,同額を加算するものとして創設された。この際,老齢加算は,老人の特殊な需要に対応するものとして考えられており,①観劇,雑誌,通信費等の教養費,②下衣,毛布, 1000円)を収入認定するのに対応して,同額を加算するものとして創設された。この際,老齢加算は,老人の特殊な需要に対応するものとして考えられており,①観劇,雑誌,通信費等の教養費,②下衣,毛布,老眼鏡等の被服・身回り品費,③炭,ゆたんぽ,入浴料等の保健衛生費及び④茶,菓子,果物等のし好品として積算されていた(甲A1,2)。 イ老齢加算の額は,老齢福祉年金が増額されるのに伴ってこれと同額が増。 ,,,額されていたしかし昭和48年以降老齢福祉年金が大幅に増額されそれまでの敬老年金的性格に代わって基礎的生活需要に対応するものという性格を強めるに至ったことから,老齢加算として老齢福祉年金と同額を加算する方式について疑問が呈されるようになった。そして,昭和50年- 6 -10月から老齢福祉年金が月額7500円から1万2000円(70歳の男女平均の1類基準額の約77%)に引き上げられることになったため,厚生省当時以下同じの中央社会福祉審議会生活保護専門分科会以(。 。)(下「専門分科会」という)は,同年9月,次の内容を含む「生活保護制。 度における加算の取扱いについての意見」を提示した(甲A1,2,乙。 A22)・当分科会は,月額7500円という老齢福祉年金と同額の現行老齢加算が,一般生活費の付加的部分として生活上の老人特有の需要に見合うものであり,生活扶助基準との均衡等からみても容認しうるものと認識してきた。しかしながら,老齢福祉年金額1万2000円という水準は,生活保護制度における基準額と対比するとき,これが従来と同様の趣旨のものとして,理解しうるものかどうか十分検討を加える必要がある。 この際,生活保護制度としては,老齢,障害者,母子の各加算額について,制度本来の立場に立って適切,かつ,合理的な算定を と同様の趣旨のものとして,理解しうるものかどうか十分検討を加える必要がある。 この際,生活保護制度としては,老齢,障害者,母子の各加算額について,制度本来の立場に立って適切,かつ,合理的な算定を行うこととすべきである。 ・加算の額は,本来,通常の基準額の範囲でまかなうことができない老人等の特別の需要に見合うべきであり,したがって,1類基準額との間にある程度の均衡が保たれていることが望ましい。このような見地から制度本来の建前に即したあり方として,1類基準額の一定割合にするという方法が検討に値する。 これを受けて,厚生省において老齢加算の額の具体的な決定方式が検討されたが,作業は難航し,昭和51年1月になって,老齢加算の額は,1級地65歳以上1類基準額の男女平均額の50%とすることが決定された(甲A1,2)。 厚生省は,昭和51年1月当時,上記加算方式の主な根拠として,①老- 7 -齢加算はあくまで一般生活費の附加的部分である以上,ある程度の限度があると考えられること,②老齢者に特有の需要に見合う所要額は,1類基,,準額のおおむね2分の1程度と判断されること③創設時の老齢加算額が当時の1類基準額の約2分の1であったこと,④老齢者の特別基準を一般生活費の一定割合とする方法は,西ドイツにもその例があること(西ドイツの場合は3割)を挙げていた。また,厚生省は,当時,老齢者に特有の需要として,①食料費(生鮮魚介,野菜等の中でも消化吸収がよく,ビタミン等の豊富な食品を他の年齢層より余分に摂取する必要がある,②。)光熱費(老人は小人数世帯の場合が多く,肉体的条件から暖房等のための費用を余分に必要とする,③被服費(寒気,湿気等に対応できるよう。)寝具,衣料品などの費用を余分に必要とする,④保健衛生費(保健医。)療,理容衛生費 場合が多く,肉体的条件から暖房等のための費用を余分に必要とする,③被服費(寒気,湿気等に対応できるよう。)寝具,衣料品などの費用を余分に必要とする,④保健衛生費(保健医。)療,理容衛生費としての家庭薬,栄養剤等また入浴関係などの費用を余分に必要とする,⑤雑費(墓参,親戚知人への訪問関係の費用,交際費。)また老人クラブ関係費などの教養娯楽費等を余分に必要とする)を挙げ。 ていた(乙A9)。 ,,,ウ専門分科会は生活保護の水準生活扶助基準改定方式の適否等のほか生活扶助基準における各種加算のあり方について検討を行い,昭和55年,「」。 12月生活保護専門分科会審議状況の中間的とりまとめを発表したその中では「老令者は咀しゃく力が弱いため、他の年令層に比し消化吸,、、収がよく良質な食品を必要とするとともに肉体的条件から暖房費被服費保健衛生費等に特別な配慮を必要とし、また近隣、知人、親せき等への訪問や墓参などの社会的費用が他の年令層に比し余分に必要となる「現。」,行加算制度は福祉年金額が大幅に改善され、それが基礎的生活需要に対応、、するという性格を強めたため昭和50年9月の当分科会の意見に基づきそれまでの福祉年金と同額の加算額を生活扶助の第一類基準額の一定割合とすることに改められたものである。その際、老齢、母子、障害者の特別- 8 -需要を算定するに当って、福祉年金の趣旨・給付額・家計調査等から得られる消費実態、外国の加算制度の実態等を総合的に勘案して定めたものであり、その妥当性の根拠は現在も変っていない。又、現在利用可能な資料を用いて特別需要額を推計してみると、現行の加算額は、金額的にもそれぞれの特別需要にほぼ見合うものと考えられる」と述べられていた(乙。 。 A5)エ厚生省の中央社会福祉審 又、現在利用可能な資料を用いて特別需要額を推計してみると、現行の加算額は、金額的にもそれぞれの特別需要にほぼ見合うものと考えられる」と述べられていた(乙。 。 A5)エ厚生省の中央社会福祉審議会は,昭和58年12月「生活扶助基準及,び加算のあり方について(意見具申」を発表した。同審議会は,この意)見具申において,近年における国民生活の変化及び保護基準の改善等の結果,加算額の妥当性についての再検討が必要な事態に立ち至ったとの認識のもと,専門分科会において,低所得者世帯の家計に関する各種の資料を基にして,加算対象世帯と一般世帯との消費構造を比較検討した,その結果,老齢者の特別需要としては,加齢に伴う精神的又は身体的機能の低下に対応する食費,光熱費,保健衛生費,社会的費用,介護関連費などの加算対象経費が認められているところ,その額は,おおむね現行の加算額で充たされているとの所見を得たとした。そして,老齢加算については,その実質的水準が今後とも維持できるようにすることが必要であるが,その改定に当たっては,生活扶助基準本体の場合とは異なった取扱いをするよう検討すべきであるとした(乙A6)。 上記意見具申を受けて,昭和59年4月以降,老齢加算の額は,第1類費相当の消費者物価指数の伸び率によって改定されるようになった(乙。 A19)(2)老齢加算の見直しに関する提言等及び生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という)における検討経過。 ア財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は,平成15年6月9日,財務大臣あてに「平成16年度予算編成の基本的考え方について」と題す,- 9 -る建議を提出したその中では生活保護についての問題意識として受。 ,,「給者に一定の収入を保障するものであるが故に、保障水準 成16年度予算編成の基本的考え方について」と題す,- 9 -る建議を提出したその中では生活保護についての問題意識として受。 ,,「給者に一定の収入を保障するものであるが故に、保障水準やその執行状況によっては、モラルハザードが生じかねず、かえって被保護者の自立を阻害しかねないという面も指摘される。このため、制度・運営面について、……しっかりとした点検と見直しが必要である「近年の物価・賃金動。」,向等の社会経済情勢の変化を踏まえるとともに年金制度改革における給付水準の見直しとも一体的に検討すれば、生活扶助基準・加算の引下げ・廃止、各種扶助の在り方の見直し、扶助の実施についての定期的な見直し・期限の設定など制度・運営の両面にわたり多角的かつ抜本的な検討が必要である「特に、原則70歳以上の高齢者に上乗せされる老齢加算(1。」,7,930円1級地-1)は福祉年金創設との関係から昭和35年に創設されたが、年金制度改革の議論と一体的に考えると、70歳未満受給者と、、の公平性高齢者の消費は加齢に伴い減少する傾向にあること等からみて廃止に向けた検討が必要であると考えられる」などと述べられていた。 。 (甲A20)イ厚生労働省の社会保障審議会は,平成15年6月16日「今後の社会,保障改革の方向性に関する意見」を取りまとめた。その中では「生活保,護については、他の社会保障制度との関係や雇用政策との連携などにも留意しつつ、今後、その在り方についてより専門的に検討していく必要がある」と述べられていた(乙A7,10の2・資料1)。 。 ウ内閣は,平成15年6月27日「経済財政運営と構造改革に関する基,」。 ,「、、本方針2003を閣議決定したその中では生活保護においても物価賃金動向、社会経済情勢の変化、年金 ウ内閣は,平成15年6月27日「経済財政運営と構造改革に関する基,」。 ,「、、本方針2003を閣議決定したその中では生活保護においても物価賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老、。」齢加算等の扶助基準など制度運営の両面にわたる見直しが必要であると述べられていた(甲A21)。 エ厚生労働省の社会保障審議会は,平成15年7月28日の第6回福祉部- 10 -会において,専門委員会を設置した。同部会における専門委員会の設置に,,,,関する審議の過程ではまず社会・援護局長から生活保護については平成12年の社会福祉事業法改正時の附帯決議のほか,前記イ,ウのとおり,検討や見直しが必要であるという指摘がされている旨のあいさつがあった。そして,具体的な審議の概要としては,主に老齢加算の問題が議論された(甲A119)。 オ専門委員会では,平成15年8月6日(第1回,同年9月30日(第)2回,同年10月14日(第3回,同年11月18日(第4回)及び))同月25日(第5回)に会議が開かれた(乙A10の1から10まで)。 (ア)第1回会議においては,保護課長が,生活保護制度に関する総論的な説明の後,①まず生活保護基準の在り方について議論して,その後,自立支援等生活保護の制度・運用の在り方について議論されたいこと,②現在,低所得者の家計消費等の実態に関する調査結果の取りまとめを行っており,当面,これに基づいて,まず保護基準についての検討を始められたいこと,③保護基準について議論した結果,一定の方向が見出せれば,保護基準について先行して取りまとめることも考えられたいことなどを述べた。また,保護課長は,委員の質問を受け,全体としては平成17年度予算の概算要求の前くらいまでに取 結果,一定の方向が見出せれば,保護基準について先行して取りまとめることも考えられたいことなどを述べた。また,保護課長は,委員の質問を受け,全体としては平成17年度予算の概算要求の前くらいまでに取りまとめる必要がある旨述べた(乙A10の1)。 (イ)第3回会議においては,事務局から,専門委員会の検討スケジュール案が示された。この案では,第3回会議から第6回会議(平成15年12月上旬ころ)までが「最低生活保障の体系と生活保護基準の在り方について,第7回会議から第12回会議(平成16年6月ころ)まで」が「自立支援等生活保護の制度・運用の在り方について」をテーマとされ第6回会議の議題は中間とりまとめについてとされている乙,「」。(A10の5,6)- 11 -(ウ)専門委員会での老齢加算に関する議論は,特に第4回会議以降具体化した。 第4回会議においては,事務局から,総務省統計局が平成11年に実施した全国消費実態調査によって得られた調査票を用いて,収入階層・年齢階層別に単身世帯の年間収入額を12で割った額,消費支出額及び生活扶助相当支出額等を厚生労働省がまとめた結果(以下「特別集計」という)等が説明資料として提示された。 。 特別集計は,次のとおりとなっている。 (乙A10の8,乙A16,17の1から3まで)60歳から69歳70歳以上平均収入額18万0833円17万5833円消費支出額16万7588円14万2714円生活扶助相当11万8209円10万7664円第1・収入額6万2380円6万1555円5分位消費支出額12万1360円9万0848円生活扶助相当7万6761円6万5843円第1・収入額4万3654円4万7093円10分位消費支出額11万8790円9万2518 5分位消費支出額12万1360円9万0848円生活扶助相当7万6761円6万5843円第1・収入額4万3654円4万7093円10分位消費支出額11万8790円9万2518円生活扶助相当7万9817円6万2277円ただし「収入額」は年間収入額を12で割って算出した額「生活扶,,助相当」は生活扶助相当支出額をいう。 (エ)第4回会議においては,老齢加算について,委員長から「加算については,またこれ自体問題点として投げかけられておりますので,……加算も含めた御議論を年内にしていただくということをお願いしたいと。」,,思いますとの発言があった上前記(ウ)の説明資料等を前提として次のような意見及びその他の意見が出された(乙A10の7)。 - 12 -①老齢加算は不要ではないかと思う。年をとれば消費額が結構少なくなっているというのが全国消費実態調査で明らかになった。今までの前提が必ずしも成り立っていなかった以上,長期的には減らしていくべきと思う。 ②全国知事会では,老齢加算についてはもう廃止していいのではないかというのが全体的な意見である。 ③高齢者の最低生活をどうとらえるのかについて,高齢者の消費の実態からすれば老齢加算は必要ないかもしれないが,相対化だけではなく,社会として容認できないような絶対的な水準があると考えれば,見方が変わるのではないか。例えば高齢者の社会参加などが加算に相当するものか,あるいは生活扶助基準に含まれるのかどうか。 ④保護施設の場合,例えば老齢加算しかない人は,老齢加算だけが本人が自由に使える金銭である。人間の尊厳というか,最低生活,あるいは最低の自分の意思で生きているという一つの基準は,どの程度自分の考え,裁量で使える現金を持つかどうかということだと思う。単に が本人が自由に使える金銭である。人間の尊厳というか,最低生活,あるいは最低の自分の意思で生きているという一つの基準は,どの程度自分の考え,裁量で使える現金を持つかどうかということだと思う。単に消費水準が下がったから扶助基準を下げるという形ではなく,保護施設の中で生活を余儀なくされる人たちの文化生活,人間の尊厳を十分考慮に入れて加算の在り方等を決定されたい。 ⑤老齢加算について,確かにそしゃくの問題に関する食料費や,暖房費,被服費,保健衛生費等についての妥当性はないのかもしれない。 しかし,社会的費用等についてはまだ相当程度の妥当性があるのではないかとか,もう少しそこのところをきめ細かく見る必要があると思う。場合によっては,特別需要という加算的な形での需要相当額がないとしても,社会的費用等については第1類費の中に溶け込ませるという手法も大いにあると思う。その辺りについては,もう少しきめ細かさが必要かと思う。 - 13 -⑥70歳になったから突然需要が増えるという実感はないが,例えば長期の保護を受けていることによって,ストックがないための生活のちょっとした消耗,減価償却分が出てくるということはある。また,単身者の基準が大変低いという現状において,老齢加算はある種大きな影響があるというか,非常に助かっているという面もある。したがって,その辺も含んで老齢加算をどうするかを検討しなければならない。 ⑦議論の仕方について,aとりあえず加算に見合うニーズがあるとした場合,例えば特別需要の従来の議論にそれを加えながら,新しくこのニーズには応じていくべきだが,運用を少し見直し,誰にでも一律加算するのとは別の方法がないかを議論するという流れになるのか,それとも,b加算そのものを廃止してその後に他の措置を議論するという流れになるのか。bの いくべきだが,運用を少し見直し,誰にでも一律加算するのとは別の方法がないかを議論するという流れになるのか,それとも,b加算そのものを廃止してその後に他の措置を議論するという流れになるのか。bの方法では問題があるのではないかという危惧がある。12月中までにどのような議論をどのように準備したらいいのか。 ⑧(⑦の意見を受けて,委員長が発言)まず加算を廃止してその後の対応を考えるという議論ではないと思う。もし,議論の結果,加算を廃止するとすれば,当然,別のこういうものが必要だという議論になる。例えば,③の意見のように,相対比較を行った結果,金額だけの問題では加算に合理性がないとする。しかし,もともと加算の意味やいろいろな実態を考えれば,例えばこういうニーズがある世帯は当然存在するということになる。 まず加算をなくそうという議論をここでしようというわけではないので,いろいろな御意見をうかがいたい。つまり,12月にやるかどうかは別であるが,仮に加算としてはなくしてもいいという結論に達,,したとしてもそれは代わりにこういう仕組みを設けるということを- 14 -セットで出さざるを得ないと思う。 中間取りまとめにおいて,例えば相対比較だけでいえば必ずしも妥,,当性があるとはいえないというようなことを言ったとしてもしかし現実にはこういう問題があるというような言い方もできる。まず加算を外そうということをすべてに優先して議論するということではないと理解している。 (オ)第5回会議においては,老齢加算について,次のような意見及びその他の意見が出された(乙A10の9)。 ①加算の必要性,妥当性については,前回の会議の説明資料では一般低所得世帯の消費水準と比較してどうかという議論だったが,それだけでなく実際の保護世帯の消費構造や生活構造か れた(乙A10の9)。 ①加算の必要性,妥当性については,前回の会議の説明資料では一般低所得世帯の消費水準と比較してどうかという議論だったが,それだけでなく実際の保護世帯の消費構造や生活構造から検証してみるということも必要ではないかと考える。というのは,専門委員会で最初に報告された調査報告をみると,特に母子世帯や老齢世帯の生活実態が今の状況でも大変であるというのがとても如実に表れていて,そこから加算を引いたら本当にどうなるのかというイメージを持った。そういう意味から,立証の仕方として,第1類費,第2類費で実際にどう暮らしているのかというところからみていかないと,大きな問題を見落としてしまうのではないかという感じがする。 ②加算について確かに70歳を過ぎてから突然支出がどんと増えることはあり得ない。むしろ,もともと単身の基準が実感として非常に低いのではないかと現場の中で感じている。あと長期で保護を受けていると目減り分があるので,結果的には,70歳になってようやくごほうび的な形で加算が付くという感じになっている。であるから,加算が70歳になってどっと上がるというのは不自然といえば不自然であるが,その一方で60歳からずっとトータルでみていると,この加算の合理性というのはそれなりにあると思っている。むしろ,70歳を- 15 -過ぎてから加算を付けるという形ではなくて,高齢者世帯,特に生活保護世帯の中で圧倒的に多い単身世帯の基準をどういうふうに考えるかという視点で加算を考えた方が適切ではないかと思う。 ③(委員長が発言)②で言われたように,加算だけ議論すると,加算を付けるか付けないかという議論になってしまうので,今回,全体の最低生活保障体系そのものをまず俎上に載せて,その中の生活扶助のところを議論している。生活扶助本体の方をどう考 加算だけ議論すると,加算を付けるか付けないかという議論になってしまうので,今回,全体の最低生活保障体系そのものをまず俎上に載せて,その中の生活扶助のところを議論している。生活扶助本体の方をどう考えるかによって,加算の持ってくる意味も大分変わってくる。 高齢者世帯は圧倒的多数が単身であり,単身世帯をどう扱うかによっても高齢者世帯の問題は大きく変わる。単身世帯はかなり異質の生活構造・家計消費をするわけなので,標準世帯を今のように3人世帯にだけ置くのではなく,単身と3人世帯の二つに置くとか,単身とカップルと3人世帯の三つに置けば大分変わってくる。 ④都道府県の現場の意見としては,老齢加算の場合,廃止又は引き下げが妥当であるというのが7割台で,現行のままでよいという意見はなかった。したがって,老齢加算については批判の声が大きいのではないかと思う。ただ,老齢加算を廃止する場合でも,経緯のある話なので,老齢加算の目的である特別の事情について必要性がないという説明責任があるのではないか,また,もし老齢加算を廃止ではなくて引き下げるという場合は,廃止して一時扶助で対応するとか,年金受給者のみに支給するなどといった方法もあるという意見があった。 ⑤今の加算がどういう意味をもつかというと,イメージ的には最低生活費プラスアルファのイメージを持ちがちだと思う。しかし,今の加算の位置付けというのは,加算を加えて最低の基礎的なニーズを満たすものだと思う。プラスアルファではなくて,絶対必要な,それがないと最低生活以下になってしまうものだという位置付けだということ- 16 -で,ちょっと全体で議論をしたい。 ⑥(⑤の意見に対して,委員長が発言)そうなると加算である必要がなくならないか,加算があって初めて最低限だということになると,母子や老人の世帯類型を作 16 -で,ちょっと全体で議論をしたい。 ⑥(⑤の意見に対して,委員長が発言)そうなると加算である必要がなくならないか,加算があって初めて最低限だということになると,母子や老人の世帯類型を作ればよいのではないか。 ⑦加算も今回の見直しの中でかなり重要な部分なので議論が集中するのはやむを得ないと思う。ただ,最初から加算ありきというのは,この委員会をやった意味がないのでやめた方がよいと思う。 最低生活の保障というものは,国が公費を使って支給する合理的な判断基準ということだから,実態生活に近いものに最低生活の保障をできるようにするというのが当然であるが,相対的に合理的な基準だということ以外の割り切りしかないと思う。そういう中で考えてみたときに,低所得者の生活需要というものを一般需要と特別需要と分けた場合に,加算イコール特別需要と,そういう時代もあったかもしれないが,今日では果たしてどうなのかということが問われているのではないか。やはり,生活扶助というのは一般需要で,それに対して各種の他の扶助が特別需要に対応するものという体系になっているはずである。 もしかしたら世帯類型別に障害,老人,母子というような形ではなくて,他の扶助をうまく組み合わせを狙ってできるということも十分考えられると思う。 ,,カ財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は平成15年11月26日,「」。 財務大臣あてに平成16年度予算の編成等に関する建議を提出したその中では,生活保護について前記アの建議と同様の問題意識が述べられた上で「制度・運営の両面にわたる多角的かつ抜本的な改革」として,,「まず、被保護者の属性に着目して一律に適用される加算については、一般世帯との均衡がとれていないことから、必要性について検証した上で、- 17 -見直すことが必要で かつ抜本的な改革」として,,「まず、被保護者の属性に着目して一律に適用される加算については、一般世帯との均衡がとれていないことから、必要性について検証した上で、- 17 -見直すことが必要である「特に、原則70歳以上の高齢者に上乗せさ。」,れる老齢加算(17,930円1級地-1)は福祉年金創設との関係から昭和35年に創設されたが、70歳未満受給者との公平性、加齢に伴い減少する高齢者の消費実態等からみて、廃止することが適当である」と。 述べられていた(甲A104)。 キ専門委員会は,平成15年12月2日の第6回会議において,事務局作「()」,成の生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ案について以下のとおり議論した(12名の委員中9名が出席(乙A10の11,)。 12)(ア)上記案における老齢加算に関する記述は,次のとおりであった。 「○単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について、70歳以上の者と60歳~69歳の者との間で比較すると、前者の消費支出額の方が少ないことが認められる。 ○したがって、消費支出額全体でみた場合には、70歳以上の高齢者について、現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないため、廃止の方向で見直すべきである。 また、見直しに当たっては、次の点について考慮すべきとの意見があった。 ・高齢者世帯の社会的費用については一定の需要があると認められるので、生活保護基準の体系の中でその点に配慮すること・年金受給者と非受給者とを区別して取り扱うことについて検討すること・被保護世帯の生活水準が急に低下することのないよう、激変緩和の措置を講じるべきこと」(イ)前記(ア)の老齢加算に関する記述について,まず,次のような意見及びその他の意見が出された。 - と・被保護世帯の生活水準が急に低下することのないよう、激変緩和の措置を講じるべきこと」(イ)前記(ア)の老齢加算に関する記述について,まず,次のような意見及びその他の意見が出された。 - 18 -①老齢加算の額がちょっと高すぎるという議論ぐらいまでは今までの専門委員会の議論でも可能かと思われるが,老齢によるニーズそのものがなくて加算を廃止してもよいという結論になるのかがとても疑問である。今までは廃止を明言したということでは議論してこなかったから,廃止を明言する限りは,そこから起きてくる問題をもう少しちゃんと議論して,本当に問題がないという議論の上でないと廃止ということが軽々に言えないのではないか。 ②この間の議論は,確かに老齢加算の付いている世帯について,他の一般低所得世帯と比べて,若干基準が高いということは言われてきたが,老齢加算そのものを廃止してというところまで意見として集約するだけの議論をしたかどうか。 ③老齢加算の廃止をするならばそれに当たる代替措置をという形で議論が進められたと記憶しているので,そのように表現上変えた方が専門委員会の中では一番適当ではないかと考える。 (ウ)前記(イ)の意見を受けて,委員長は「今,付いている金額を廃止,するというのは,非常にやりにくいことですし,できれば避けたいという気持ちは私もあります。そしてまた当然中間取りまとめですから,ここの委員会である程度……議論した結果を記述するというのが基本ではあると思うんです「しかし,いつまでもわからないと言っていられ。」,ないのと,加算という性格上,……例えば特別需要を加算のような形で付けて,生活保護の内部に取り込んで膨らませていくという考え方と,例えば……特別の需要というのはむしろ生活保護の外で児童扶養手当とか,そういうような外の制 格上,……例えば特別需要を加算のような形で付けて,生活保護の内部に取り込んで膨らませていくという考え方と,例えば……特別の需要というのはむしろ生活保護の外で児童扶養手当とか,そういうような外の制度ともっとリンクさせて,その収入の何割かはむしろ認定から外すという考え方……もあると思います「貧困の。」,罠という問題からいうと,……生活保護に入ると何もかも付いてくるのに,出てしまうと何もなくなってしまうという,もしかすると加算をあ- 19 -まり積み上げていきますと,そうなる可能性も実はあるという気もちょっとしているんです「これは,だから老齢加算,母子加算は廃止し。」,てもいいかどうかという極論に走るつもりはありませんが,保護基準は相対比較ですから,……妥当かどうかということを判断しにくいとは思うんです「……やはり加算が一つの若干の余裕部分として家計の回。」,転になめらかな感じになっているのかなという感じももちろんするわけです「最低生活費の考え方の中に,加算でそれをするのか,もっと。」,別の資産とか,そういうものとしてそれをしていくべきなのかというのは,制度全体の考え方ともかかわってくると思いますので,その方もにらみながら,何らかの中間的な結論を,皆さんの納得いく表現で出しておきたいと思います」などと述べた。 。 (エ)その後,次のような意見及びその他の意見が出された。 ①これはデータも出してかなり議論したところで,やはり生活扶助の加算について議論していた。医療扶助が必要であればそれを申請しなければならない。医療扶助が入っているからという議論をしてしまうと,生活扶助と医療扶助の体系はどうなのかという議論となり,生活扶助と他の扶助との関係,全体の生活の体系の中で低所得者を支援していくのである。だからそれをすべて加算で いるからという議論をしてしまうと,生活扶助と医療扶助の体系はどうなのかという議論となり,生活扶助と他の扶助との関係,全体の生活の体系の中で低所得者を支援していくのである。だからそれをすべて加算でという従来の考え方が古くなっているのではないかという議論はしていたと思う。今まで議論したことを元に戻して,出だしに戻るわけにはいかない。 。 ,②①の意見は確かにそうである加算という制度的な体系を使わずに例えば生活扶助という中であれば第1類費の中に反映させるとか,他の扶助の中で反映できるとか,そういう形の仕分けをしながらやっていくということで話が進んでいると思う。だから廃止ということがすべてなくなるということではなくて,内容を精査して,それぞれ必要なところに実質的にそれを復元するような制度的な仕組みにやってい- 20 -くという形の整理でしてもらえばいいのではないかと思う。 ③(委員長が発言)年齢別の消費支出の全体の動向を少し見ながら,そこの刻み等に今後少し色々な工夫を加えて,高齢者,特に70歳以上の高齢の生活保護の利用者,あるいは高齢者に対する貧困基準としての生活保護基準が現在より大幅に下回るということはもちろんないような,色々な工夫,そして,実態からそれほどずれないというような工夫はもちろんしなければならないと思う。 ④前記(ア)の「・高齢者世帯の社会的費用については一定の需要があると認められるので、生活保護基準の体系の中でその点に配慮すること」という文章は本文の中に挙げて,例えば今までの老齢加算の考え方に沿った需要は確かに検証されなかったが,一方で社会的費用には一定の需要があるのではないかということも議論され,そういった部分も含めて生活保護体系の中で見直すべきであるというような文言の工夫をしてもらいたい。 ⑤高齢者の社会 かったが,一方で社会的費用には一定の需要があるのではないかということも議論され,そういった部分も含めて生活保護体系の中で見直すべきであるというような文言の工夫をしてもらいたい。 ⑤高齢者の社会参加が加算が取れたことによってできなくなることがないような配慮をするという意味で,前記(ア)の「○したがって」以下の文章と「・高齢者世帯の社会的費用については一定の需要があると認められるので、生活保護基準の体系の中でその点に配慮すること」を「ただし」という形で一体のものにする,前記(ア)の激変緩和については「○」で始まる項目として,もし色々なことをするときはこれも考慮するというふうにした方が整理しやすい。 (オ)前記(イ)から(エ)までの議論の中で,個別の高齢者の特別需要あるいは社会的費用について,第1類費の中に加える,あるいは一時扶助に加えるなどの可能性が指摘されているところであるが,事務局は,この点について,要旨次のとおり述べた。 上記の点については,必ずしも重要な意見の集約がされなかったと考- 21 -えて「・高齢者世帯の社会的費用については一定の需要があると認,められるので、生活保護基準の体系の中でその点に配慮すること」という表現にした。まだ具体的にこういうふうにやるということは決めていないが,専門委員会の議論の結果を踏まえて,扶助基準の全体体系の中でも適切な対応,見直しをしたいと考えている。 (カ)以上の議論を踏まえて,前記「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ(案」について,事務局と委員長が前記(エ)のとおり指)摘された文言を修正して,議論があるところは検討課題という表現にすること,その他にも文言について委員長が気づいた点を修正して,委員が確認し,それをもって中間取りまとめとすることが合意された。 ク専門 された文言を修正して,議論があるところは検討課題という表現にすること,その他にも文言について委員長が気づいた点を修正して,委員が確認し,それをもって中間取りまとめとすることが合意された。 ク専門委員会は,平成15年12月16日「生活保護制度の在り方につ,いての中間取りまとめ(以下「中間取りまとめ」という)を発表した。 」。 中間取りまとめにおける老齢加算に関する記述は次のとおりである乙,。(A1。以下「本件記述」という。前記キ(ア)の案に付加された文言に下線を引き,削除された文言を二重線で抹消する)。 「○単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について、70歳以上の者と60歳~69歳の者との間で比較すると、前者の消費支出額の方が少ないことが認められる。 ○したがって、消費支出額全体でみた場合には、70歳以上の高齢者について、現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないため、加算そのものについては廃止の方向で見直すべきである。また、見直しに当たっては、次の点について考慮すべきとの意見があった。 ・ただし、高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して社会的費用については一定の需要があると認められるので、生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検- 22 -討する必要がある。その点に配慮すること・年金受給者と非受給者とを区別して取り扱うことについて検討すること○・また、被保護世帯の生活水準が急に低下することのないよう、激変緩和の措置を講じるべきことである」。 ケ厚生労働省の社会保障審議会は,中間取りまとめが発表された平成15年12月16日の第7回福祉部会において,中間取りまとめについて議論した。その際,老齢加算については次のような意見及びその他の意見が出さ 労働省の社会保障審議会は,中間取りまとめが発表された平成15年12月16日の第7回福祉部会において,中間取りまとめについて議論した。その際,老齢加算については次のような意見及びその他の意見が出された。また,一部の委員から平成16年度予算の中での老齢加算の取扱いはどのようになっているのかとの質問があったが,保護課長は,中間取りまとめを受けて,今後予算の中でどのようにしていくか検討していくと答えたのみであった(甲A173,乙A40)。 (ア)基本的には老齢加算については廃止の方向で見直すべきだという結論であるが,ただし書のところでは,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で最低生活が維持できるように引き続き検討する必要があるとされており,これは第1類費,第2類費の比率の問題,あるいは単身世帯の見直しというような全体の中で老齢加算をどのように取り扱うか検討するという趣旨だと認識している。老齢加算について廃止という方向で見直す場合には,生活保護基準全体の体系の中でどのように見直すかを考えるべきである。 そのように考えた場合,来年度の予算の中で,老齢加算だけを先行して廃止するべきではない。そうなればまさに財政のつじつま合わせのために老齢加算だけ削ったということになりかねないので,やはり生活保護全体の基準の在り方,体系の中での見直しとして整理すべきである。 中間取りまとめの中でも,これを見直すに当たって緩和措置が必要だという配慮について記載がされており,そういう観点からこの問題は対- 23 -応すべきである。 (イ)中間取りまとめの案は,全国の現場の意見がおおむね反映された形になっていると理解している。 生活扶助基準,そして改定の時期等については,厚生労働大臣が適切に決定するものと理解している。その上で,今回の 間取りまとめの案は,全国の現場の意見がおおむね反映された形になっていると理解している。 生活扶助基準,そして改定の時期等については,厚生労働大臣が適切に決定するものと理解している。その上で,今回の生活扶助基準の見直し,特に老齢加算の廃止については,単に廃止するだけでなく,高齢者,,が社会で孤立しないために社会参加に使われる費用自体は必要なのでそういったものを生活扶助基準の中に含めるなど,何らかの形で認めるように,引き続き御検討いただきたい。 (ウ)老齢加算については,特別の需要が認められないことから,廃止の方向で見直すとした点は妥当な判断である。廃止した場合に,個別に需要に応じて別途加算する,あるいは生活扶助本体へ一定額を組み込む等の考え方があるように聞いているが,その場合でも認定される金額は極力圧縮する方向で検討すべきではないか。 コ財務省は,平成15年12月20日,平成16年度予算の財務省原案を内示した。同原案には,老齢加算を3年間かけて段階的に廃止すること,具体的には,1級地の居宅で生活する70歳以上の者の老齢加算の額を従前の1万7930円から9670円に減額することなどが盛り込まれた。 (甲A107,弁論の全趣旨)内閣は,平成15年12月24日,上記の内容を含む平成16年度予算案を閣議決定した(甲A107,弁論の全趣旨)。 (3)老齢加算の減額及び廃止ア厚生労働大臣は,平成16年3月25日,保護基準を改定し,老齢加算を減額した。具体的には,1級地の居宅で生活する70歳以上の者の老齢加算の額は,従前の1万7930円から8260円減額され,9670円となった(平成16年厚生労働省告示第130号。以下「平成16年告。 - 24 -示」という)。 イ厚生労働大臣は,平成17年3月31日,保護基準を改定し,老齢加算 60円減額され,9670円となった(平成16年厚生労働省告示第130号。以下「平成16年告。 - 24 -示」という)。 イ厚生労働大臣は,平成17年3月31日,保護基準を改定し,老齢加算を減額した。具体的には,1級地の居宅で生活する70歳以上の者の老齢加算の額は,5910円減額され,3760円となった(平成17年厚。 生労働省告示第193号)ウ厚生労働大臣は,平成18年3月31日,保護基準を改定し,老齢加算を廃止した(平成18年厚生労働省告示第315号。以下「平成18年告示」という。 。)(4)老齢加算の減額及び廃止後の経過ア専門委員会は,平成16年12月15日「生活保護制度の在り方に関,する専門委員会報告書」を発表した。同報告書には,老齢加算に関する記述としては「老齢加算については、既に中間取りまとめにおいてその廃止」。 の方向での見直しを提言したところであるというものがあるのみである(甲A9)イ中間取りまとめにおける本件記述のうち「ただし、高齢者世帯の社会,生活に必要な費用に配慮して、生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要があるとの部分以。」(下「本件ただし書」という)については,少なくとも平成22年2月1。 5日までの間,厚生労働省内において検討されていない(被控訴人の同日付け「求釈明事項に対する回答」と題する書面3項。 ) 保護基準の不利益変更に基づく保護の不利益変更についての違法性判断の枠組み(1)保護基準の不利益変更に基づく保護の不利益変更と生活保護法56条別紙2平成16年処分一覧表及び別紙3平成18年処分一覧表の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分の名宛人」欄記載の各被保護者に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活 と生活保護法56条別紙2平成16年処分一覧表及び別紙3平成18年処分一覧表の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁が「処分の名宛人」欄記載の各被保護者に対して「処分日」欄記載の各年月日付けでした生活保護法25条2項に基づく保- 25 -護変更決定のうち上記各別紙の金額欄記載の各金額を減額する部分以,「」(下「本件各決定」と総称する)は,平成16年告示及び平成18年告示に。 よって保護基準が改定され,老齢加算が減額又は廃止されたこと(以下「本件保護基準の改定」という)に基づくものである。 。 生活保護法の規定に基づき要保護者又は被保護者が国から生活保護を受けるのは,単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく,法的権利であって,保護受給権とも称すべきものと解すべきである(最高裁昭和42年5月24日大法廷判決・民集21巻5号1043頁参照。そし)て,法56条が,被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を不利益に変更されることがないと定める趣旨は,一度保護の実施機関が被保護者に対し保護を決定したならば,法に定める事情の変更の場合に被保護者が該当し,かつ,保護の実施機関が法に定める変更の手続を正規にとらないうちは,被保護者は,その決定された内容において保護を実施することを請求する具体的権利を有するということにあると解すべきである。 以上のような法56条の趣旨にかんがみれば,保護基準の改定に基づいて既に決定された保護を不利益に変更される被保護者との関係においては,単に保護基準が改定されたというだけでは,同条にいう「正当な理由」があるものと解することはできず,その保護基準の改定(不利益変更)そのものに「正当な理由」がない限り,これに基づく保護の不利益変更は同条に反し違法となるものと解するのが相当である。 う「正当な理由」があるものと解することはできず,その保護基準の改定(不利益変更)そのものに「正当な理由」がない限り,これに基づく保護の不利益変更は同条に反し違法となるものと解するのが相当である。 なお,保護基準の改定に基づいて既に決定された保護を不利益に変更されるのではなく,改定前の保護基準によれば将来一定の保護を受けることが期待されたが,保護基準の改定によって上記期待が実現されなくなったというにとどまる被保護者や,現に保護を受けていない要保護者との関係においては,法56条の適用が問題となる余地はない。 (2)保護基準の不利益変更に関する「正当な理由」の判断基準- 26 -そもそも,保護基準は憲法25条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りるものでなければならないそうであるところ健」。 ,「康で文化的な最低限度の生活」というのは極めて抽象的・相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定される,,べきものであるとともにこれを行政過程において具体化するに当たっては国の財政事情を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。したがって,保護基準の設定は厚生労働大臣の合目的的な裁量にゆだねられており,現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し,法律によって与えられた裁量権の限界を超えた場合又は裁量権を濫用した場合のみ違法となると解される(前掲最高裁昭和42年5月24日大法廷判決参照。以上のように,保護基準)の設定が厚生労働大臣の裁量にゆだねられていることからすると,保護基準 場合又は裁量権を濫用した場合のみ違法となると解される(前掲最高裁昭和42年5月24日大法廷判決参照。以上のように,保護基準)の設定が厚生労働大臣の裁量にゆだねられていることからすると,保護基準の改定も,一定程度厚生労働大臣の裁量にゆだねられていると解するのが相当である。 したがって,保護基準の不利益変更に関する「正当な理由」の有無を判断するに当たっては,保護基準の不利益変更についての厚生労働大臣の判断が裁量権の行使としてされたことを前提とした上で,その判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し,その判断が,重要な事実の基礎を欠くか,又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って,裁量権の逸脱又は濫用として「正当な理由」のない不利益変更に当たるものと解するのが相当である。 本件保護基準の改定が「正当な理由」のない不利益変更に当たるか(1)以上を前提に本件について検討するに,前記1,2の事実によれば,以下の点を指摘することができる。 - 27 -ア老齢加算の廃止によって,老齢加算の他に加算がない1級地-2の居宅で生活する70歳以上の者の生活扶助の支給額は,単身世帯においては約19.8%減額されることとなった。 イ本件保護基準の改定についての厚生労働大臣の判断は,専門委員会による中間取りまとめ中の本件記述を前提としている。そこで,本件記述ができた過程をみると,特別集計等を前提に老齢加算は廃止すべきであるという意見が出される一方,相対的な比較だけではなく,絶対的に保障されるべき水準があるのではないか,高齢者の社会参加に要する費用を考慮すべきではないか,単身者の保護基準が低い現状で老齢加算によって非常に助かっている面もある,高齢者の需要について加算という制度を使わずに第1類費の中に反映させる ,高齢者の社会参加に要する費用を考慮すべきではないか,単身者の保護基準が低い現状で老齢加算によって非常に助かっている面もある,高齢者の需要について加算という制度を使わずに第1類費の中に反映させるなどの可能性もあるといった旨の意見等も出された。その結果,本件記述は,当初の事務局案から次のとおり変更された。 ①「廃止の方向で見直すべきである」という文言の前に「加算そのも。 のについては」という文言が付加された。 ②高齢者の社会生活に必要な費用への配慮が「見直しに当たっては、,次の点について考慮すべきとの意見があった」という一部委員の意見。 という位置付け(事務局は,必ずしも重要な意見の集約がされなかったとの認識から,このように位置付けていた)から「加算そのものに。 ,ついては廃止の方向で見直すべきである」との本文の直後のただし書。 (本件ただし書)という位置付けに変わった上「高齢者世帯の最低生,活水準の維持」という観点が明記された。 ③激変緩和措置も②と同様に一部委員の意見という位置付けから加,,「算そのものについては廃止の方向で見直すべきである」との項目と並。 列した一項目という位置付けに変わった上,単なる考慮事項から「激,変緩和の措置を講じるべきである」というより強い表現に変わった。 。 以上の経過に照らすと,本件記述のうち,本件ただし書,及び「被保護- 28 -世帯の生活水準が急に低下することのないよう、激変緩和の措置を講じるべきである」との部分は,老齢加算の廃止という方向性と並んで重要な。 事項であるというべきである。 ウ厚生労働省は,中間取りまとめが発表された平成15年12月16日の時点で,老齢加算については,中間取りまとめを受けて,今後予算の中でどのようにしていくか検討していくとの立場を示していた(前記 。 ウ厚生労働省は,中間取りまとめが発表された平成15年12月16日の時点で,老齢加算については,中間取りまとめを受けて,今後予算の中でどのようにしていくか検討していくとの立場を示していた(前記2(2)ケ。 )ところが,そのわずか4日後には,老齢加算を3年間かけて段階的に廃止すること,具体的には,まず1級地の居宅で生活する70歳以上の者の老齢加算の額を従前の1万7930円から9670円に減額することなどを含む平成16年度予算の財務省原案が内示された。前記2(2)エからコまでの事実経過に照らせば,厚生労働大臣は,遅くともこのとき(平成15年12月20日)までには,本件保護基準の改定を実質的に決定したものというべきである。 しかるに,この決定の過程において,本件ただし書の内容については何ら検討されなかった。また,激変緩和措置については,中間取りまとめについての議論の経過(前記2(2)オ,キからケまで)に照らせば,それが直ちに単なる段階的廃止を意味するとは限らず,何らかの代替措置を意味すると考える余地もあるほか,代替措置を執らないとしても,期間や1年。 ,ごとの削減幅については慎重な検討が求められるところであるところが激変緩和措置の決定の過程等をみると(当裁判所は,その検討の経過及,)「,び内容を具体的に主張立証するよう求めたものであるが行政において激変緩和措置を講ずる場合には,2年から数年程度の期間を置く例が多いところ,……老齢加算廃止という要請と激変緩和という要請や,他の予算全体の配分等を考慮して」上記の内容が決定されたというのである(被控訴人の平成22年4月28日付け「求釈明事項に対する回答(その2」)と題する書面6頁,8頁。そして,既に老齢加算を前提とする保護を受)- 29 -けている被保護者が老齢加算の廃止に ある(被控訴人の平成22年4月28日付け「求釈明事項に対する回答(その2」)と題する書面6頁,8頁。そして,既に老齢加算を前提とする保護を受)- 29 -けている被保護者が老齢加算の廃止によって被る不利益等が具体的に検討された上で,代替措置を執らないこと,3年という期間及び1年ごとの削減幅が決定されたという形跡はない(なお,激変緩和措置の具体的内容の決定に当たっては「他の予算全体の配分等」が考慮されたという。確か,に,このような事項は考慮の対象となり得るが,前判示のとおり,既に老齢加算を前提とする保護を受けている被保護者はそれを前提とする具体的な法的権利を有しているのであるから,法56条の趣旨にかんがみて,上記事項を過大に評価するのは相当でない。 。)エなお,専門委員会が設置された前の月である平成15年6月には,財務省の審議会が,老齢加算は,高齢者の消費は加齢に伴い減少する傾向にあること等から見て,廃止に向けた検討が必要であると考えられる旨の記載を含む建議を提出し,内閣も,老齢加算等の見直しが必要であるとの内容を含む閣議決定をしていた。また,中間取りまとめについて議論された専門委員会の第6回会議の前の同年11月には,財務省の審議会が,老齢加算は,加齢に伴い減少する高齢者の消費実態等からみて,廃止することが適当である旨の(同年6月の建議よりも強い表現である「平成16年。)度予算の編成等に関する建議」を提出していた。 (2)前記(1)の諸事情によれば,老齢加算の廃止は既に老齢加算を前提とする保護を受けている被保護者にとっては支給額の相当程度の減額を意味するところ,本件記述のうち老齢加算の廃止という方向性と並んで重要な事項である本件ただし書の内容について何ら検討せず,同じく重要な事項である激変緩和措置について十分検討 支給額の相当程度の減額を意味するところ,本件記述のうち老齢加算の廃止という方向性と並んで重要な事項である本件ただし書の内容について何ら検討せず,同じく重要な事項である激変緩和措置について十分検討することなく,中間取りまとめが老齢加算を廃止の方向で見直すべきであるとしたことなどの理由で行われた本件保護基準の改定は,考慮すべき事項を十分考慮しておらず,又は考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠き,その結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたものということができる。したがって,本件保護基準の改定は,裁量- 30 -権の逸脱又は濫用として「正当な理由」のない保護基準の不利益変更に当たるというべきである。 ,, 本件各決定は本件保護基準の改定に基づく保護の不利益変更であるところ「」,本件保護基準の改定は正当な理由のない保護基準の不利益変更であるから本件各決定は法56条に反し違法となる。 第4 結論 したがって,控訴人らの請求はいずれも理由がある。 ,,,よって原判決を取り消し控訴人らの請求をいずれも認容することとして主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第1民事部裁判長裁判官古賀寛裁判官川野雅樹裁判官齋藤毅- 31 -(別紙2)平成16年処分一覧控訴人処分の名宛人処分行政庁処分日金額P1P1門司福祉事務所平成16年4月1日8,260P2P2門司福祉事務所平成16年4月1日8,260P3P3門司福祉事務所平成16年3月19日8,260P4P4戸畑福祉事務所平成16年3月18日16,520P5P5戸畑福祉事務所平成16年3月10日8,260P6P6戸畑福祉事務所平成16年3月10日8,260P7P7戸畑福祉事務所平成16年3月10日 6年3月18日16,520P5P5戸畑福祉事務所平成16年3月10日8,260P6P6戸畑福祉事務所平成16年3月10日8,260P7P7戸畑福祉事務所平成16年3月10日8,260P8P8戸畑福祉事務所平成16年3月10日8,260P9P9八幡東福祉事務所平成16年3月26日16,520P10P10八幡東福祉事務所平成16年3月26日8,260P11P11八幡東福祉事務所平成16年3月26日8,260P12P12八幡東福祉事務所平成16年3月26日8,260P13P13八幡東福祉事務所平成16年3月26日8,260P14P14八幡東福祉事務所平成16年3月26日8,260P15P15八幡東福祉事務所平成16年3月26日8,260P16P17八幡東福祉事務所平成16年3月26日6,880P18P18八幡東福祉事務所平成16年3月29日8,260P19P19八幡西福祉事務所平成16年3月22日8,260P20P20八幡西福祉事務所平成16年3月22日8,260P21P21八幡西福祉事務所平成16年4月1日8,260- 32 -P22P23八幡西福祉事務所平成16年3月29日16,520P24P24八幡西福祉事務所平成16年3月22日8,260P25P25八幡西福祉事務所平成16年3月22日8,260P26P26八幡西福祉事務所平成16年3月22日8,260- 33 -(別紙3)平成18年処分一覧控訴人処分の名宛人処分行政庁処分日金額P1P1門司福祉事務所平成18年3月22日3,760P2P2門司福祉事務所平成18年3月22日3,760P3P3門 成18年処分一覧控訴人処分の名宛人処分行政庁処分日金額P1P1門司福祉事務所平成18年3月22日3,760P2P2門司福祉事務所平成18年3月22日3,760P3P3門司福祉事務所平成18年3月22日3,760P27P27門司福祉事務所平成18年3月22日3,760P28P28門司福祉事務所平成18年3月22日3,760P29P29小倉北福祉事務所平成18年4月1日3,760P30P30小倉北福祉事務所平成18年3月24日7,520P31P32P32小倉北福祉事務所平成18年4月1日3,760P33P33若松福祉事務所平成18年3月27日3,760P34P34若松福祉事務所平成18年3月27日3,760P4P4戸畑福祉事務所平成18年4月1日7,520P35P5P5戸畑福祉事務所平成18年4月1日3,760P6P6戸畑福祉事務所平成18年4月1日3,760P7P7戸畑福祉事務所平成18年4月1日3,130P8P8戸畑福祉事務所平成18年4月1日3,760P36P36戸畑福祉事務所平成18年4月1日3,760P9P9八幡東福祉事務所平成18年3月20日7,520P37P10P10八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P11P11八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P12P12八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760- 34 -P13P13八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P14P14八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P15P15八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P16P17八幡東福祉事務所平成18年3月20日6 3,760P14P14八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P15P15八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P16P17八幡東福祉事務所平成18年3月20日6,890P18P18八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P38P38八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P39P39八幡東福祉事務所平成18年3月20日3,760P19P19八幡西福祉事務所平成18年3月14日3,760P20P20八幡西福祉事務所平成18年3月14日3,760P21P21八幡西福祉事務所平成18年3月14日3,760P22P23八幡西福祉事務所平成18年3月14日3,760P24P24八幡西福祉事務所平成18年3月14日7,520P40P25P25八幡西福祉事務所平成18年3月14日3,760P26P26八幡西福祉事務所平成18年3月14日3,760P41P41八幡西福祉事務所平成18年3月14日3,760- 35 -(原裁判等の表示)主文 18年事件のうち,同事件原告P42に関する部分は,平成▲年▲月▲日同人の死亡によって,同事件原告P43に関する部分は,平成▲年▲月▲日同人の死亡によって,いずれも終了した。 19年事件のうち同事件原告P42に関する部分は,平成▲年▲月▲日同人の死亡によって終了した。 18年事件原告ら(第1項の原告らを除く)の請求をいずれも棄却する。 。 19年事件原告ら(第2項の原告を除く)の請求をいずれも棄却する。 。 18年事件の訴訟費用は,18年事件原告らの負担とする。 19年事件の訴訟費用は,19年事件原告らの負担とする。 事実及び理由 (目次)第1章請求(5頁)第118年事件 も棄却する。 。 18年事件の訴訟費用は,18年事件原告らの負担とする。 19年事件の訴訟費用は,19年事件原告らの負担とする。 事実及び理由 (目次)第1章請求(5頁)第118年事件(5頁)第219年事件(5頁)第2章事案の概要(5頁)第1争いのない事実等(6頁) 原告ら(6頁) 平成16年の老齢加算の減額(6頁) 平成16年の変更決定等(6頁) 平成18年の老齢加算の減額(8頁) 平成18年の変更決定等(8頁)第2争点(10頁)第3争点に関する当事者の主張(10頁)第3章当裁判所の判断(10頁)- 36 -第1生活保護制度の概要(10頁) 生活保護法の目的等(10頁)(1)目的(10頁)(2)基本原理(10頁) 保護の種類及び実施(11頁)(1)保護の種類(11頁)(2)保護の要否・程度と保護基準(11頁)(3)生活扶助基準と加算(12頁)第2老齢加算制度の導入から廃止までの経緯(13頁) 導入及びその後の経緯(13頁)(1)導入の経緯(13頁)(2)加算額の算定方式の変更(13頁)(3)昭和55年における検証(14頁)(4)昭和58年における検証と算定方式の変更(15頁) 見直しから廃止までの経緯(15頁)(1)老齢加算の見直しに関する提言等(15頁)(2)専門委員会による検討の経緯(16頁)(3)老齢加算の減額・廃止(17頁)第3老齢加算制度を廃止することの適法性について(18頁) 判断の枠組み(18頁)(1)本件各決定における保護基準に対する審査基準,審査方法について(18頁)(2)老齢加算が減額・廃止された理由について(19頁)(3)社会権規約に関する主張について(21頁) 一般低所得者世帯の消費水準との る保護基準に対する審査基準,審査方法について(18頁)(2)老齢加算が減額・廃止された理由について(19頁)(3)社会権規約に関する主張について(21頁) 一般低所得者世帯の消費水準との比較において保護基準を定めること(考え方①)の合理性について(21頁)- 37 -(1)生活扶助基準の算定方法の推移(21頁)(2)生活扶助基準と低所得者世帯の消費支出額の比較(24頁)(3)考え方①の合理性について(24頁)(4)漏給層の存在等について(26頁)(5)変曲点について(28頁)(6)第1・10分位と比較する根拠が明らかでない等の主張について(29頁) 60歳代の者と70歳以上の者の消費支出額の比較(比較①)について(30頁)(1)全国消費実態調査の特別集計に基づく比較(30頁)(2)特別集計の原調査(全国消費実態調査)に基づく分析等について(31頁)(3)比較対象となった年代,世帯,支出内容の適否について(34頁)(4)専門委員会に提出された資料の信頼性について(35頁) 70歳以上の者の生活扶助額と第1・5分位の生活扶助相当消費支出額の比較(比較②)等について(37頁)(1)生活扶助額と所得階層別の生活扶助相当消費支出額の比較(37頁)(2)検討(38頁) 小括(38頁) 原告の主張に対する検討(38頁)(1)特別需要の存在等について(38頁)(2)第1類費の伸び率について(41頁)()(3)生活扶助基準の妥当性が検証されていない等の主張について42頁(4)専門委員会の議論の過程等について(44頁)(5)本件保護基準の改定が中間取りまとめに反するとの主張について(47頁)- 38 -(6)老齢加算の廃止によって家計の弾力性が失われたとの主張について( の議論の過程等について(44頁)(5)本件保護基準の改定が中間取りまとめに反するとの主張について(47頁)- 38 -(6)老齢加算の廃止によって家計の弾力性が失われたとの主張について(48頁) 本項の結論(50頁)第4原告らの生活状況等についての検討(50頁) 原告らの生活状況等と本件処分の適法性の関係(50頁) 原告らの一般的な生活状況(51頁)(1)住居(51頁)(2)食事(51頁)(3)衣類(51頁)(4)電化製品(51頁)(5)入浴(52頁)(6)社会的活動(53頁)(7)収支(53頁) 原告らの健康状態等(55頁)(1)高齢者の医学的特徴等(55頁)(2)原告らの健康状態,生活状態等(56頁) 個別原告の生活状況(57頁)(1)原告P15について(57頁)(2)原告P39について(58頁)(3)原告P20について(59頁)(4)原告P13について(60頁) 原告らの生活状況等に対する検討(61頁) 本項の結論(68頁)第5結論(68頁)別紙1当事者等目録1(69頁)別紙2当事者等目録2(72頁)- 39 -別紙3平成▲年(行ウ)第▲号生活保護変更決定取消請求事件請求の趣旨(76頁)別紙4平成▲年(行ウ)第▲号生活保護変更決定取消請求事件請求の趣旨(78頁)別紙5原告の主張(80頁)別紙6被告の主張(102頁)第1章請求第118年事件別紙3記載のとおり第219年事件別紙4記載のとおり第2章事案の概要本件は,平成16年3月25日及び平成18年3月31日,厚生労働大臣の定める生活保護基準が変更され,原則として70歳以上の者を対象とする生活扶助の加算(以下「老齢加算」ともいう)が減額又は廃止され,生活保護を受け 6年3月25日及び平成18年3月31日,厚生労働大臣の定める生活保護基準が変更され,原則として70歳以上の者を対象とする生活扶助の加算(以下「老齢加算」ともいう)が減額又は廃止され,生活保護を受けていた7。 ,()0歳以上の原告らが社会福祉事務所長から保護変更決定生活保護法25条2項,,,を受けたことから同決定は憲法25条1項生活保護法56条等に違反する違憲違法なものであるとして,その取消しを求めた事案である。 第1争いのない事実等次の事実は当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨又は括弧内掲記の書証によって容易に認定することができる。 原告ら平成18年事件原告ら及び平成19年事件原告ら(以下,併せて「原告ら」ともいう)は,いずれも北九州市の住民である。 。 平成16年の老齢加算の減額平成16年3月25日,厚生労働大臣は生活扶助に関する保護基準を改定し- 40 -た(同日付厚生労働省告示第130号。北九州市に居住し,居宅で保護を受)けている生活保護受給者は,原則として,平成15年度には1人当たり1万7930円の老齢加算を受けていたが,これが8260円減額され,9670円となった。 平成16年の変更決定等平成18年事件原告ら等は,平成16年,下表のとおり,保護変更決定を受け,審査請求を行なったが,いずれも棄却の裁決を受けた。 (表1:平成16年の変更決定)氏名処分行政庁処分日老齢加算の減少額 P1門司4月1日1万6520円 P2門司4月1日8260円 P3門司3月19日8260円 P4戸畑3月18日1万6520円 P5戸畑3月10日8260円 P6戸畑3月10日8260円 P7戸畑3月10日8260円 P8戸畑3月10日8260円 戸畑3月18日1万6520円 戸畑3月10日8260円 戸畑3月10日8260円 戸畑3月10日8260円 戸畑3月10日8260円 八幡東3月26日1万6520円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日6880円 八幡東3月29日8260円 八幡西3月22日8260円 八幡西3月22日8260円 八幡西4月1日8260円 八幡西3月22日8260円 八幡西3月22日8260円 八幡西3月22日8260円 八幡西3月29日1万6520円 ただし「処分庁」のうち「門司」は門司福祉事務所「戸畑」は戸畑福祉事務所「八幡東」は八幡東福祉事務所「八幡西」は八幡西福祉事務所を指し「処分日」はいずれも平成16年のものである。 18年事件原告P16は訴外P17と同一世帯の者であり,便宜上世帯主である同人を名宛人とする保護変更決定がなされているが,原告P16は保護変更の当事者であり,保護変更決定の取消訴訟の原告適格を有するものと解される。 18年事件原告P23は,平成▲年▲月▲日死亡し,同人と同一世帯の世帯員であったP22が訴訟を承継した。 18年事件原告P42は,平成▲年▲月▲日死亡し,同事件原告P43は,平成▲年▲月▲日死亡し,同事件のうちこれらの者 平成▲年▲月▲日死亡し,同人と同一世帯の世帯員であったP22が訴訟を承継した。18年事件原告P42は,平成▲年▲月▲日死亡し,同事件原告P43は,平成▲年▲月▲日死亡し,同事件のうちこれらの者に関する部分はいずれもこれによって終了した。 主文 平成18年の老齢加算の減額平成18年3月31日,厚生労働大臣は生活扶助に関する保護基準を改定した(同日付厚生労働省告示第315号)。北九州市に居住し,居宅で保護を受けている生活保護受給者は,原則として,平成17年度には1人当たり3760円の老齢加算を受けていたが,これが廃止された。 理由 平成18年の変更決定等平成19年事件原告ら等は,平成18年,下表のとおり,保護変更決定を受け,審査請求を行なったが,いずれも棄却の裁決を受けた。 (表2:平成18年の変更決定) 氏名 処分行政庁 処分日 老齢加算の減少額 P1 門司 3月22日 3760円 P2 門司 3月22日 3760円 P3 門司 3月22日 3760円 P27 門司 3月22日 3760円 P28 門司 3月22日 3760円 P29 小倉北 4月1日 3760円 P30 小倉北 3月24日 3760円 P32 小倉北 4月1日 3760円 P33 若松 3月27日 3760円 P34 若松 3月27日 3760円 P4 戸畑 4月1日 3760円 P5 戸畑 4月1日 3760円 P6 戸畑 4月1日 3760円 P7 戸畑 4月1日 3130円 P8 戸畑 4月1日 3760円 P36 戸畑 4月1日 3760円 P9 八幡東 3月20日 3760円 P10 八幡東 3月20日 3760円 P11 八幡東 3月20日 3760円 60円 P36戸畑4月1日3760円 P9八幡東3月20日3760円 P10八幡東3月20日3760円 P11八幡東3月20日3760円 P12八幡東3月20日3760円 P13八幡東3月20日3760円 P14八幡東3月20日3760円 P15八幡東3月20日3760円 P17八幡東3月20日3130円 P18八幡東3月20日3760円 P38八幡東3月20日3760円 P39八幡東3月20日3760円 P19八幡西3月14日3760円 P20八幡西3月14日3760円 P21八幡西3月14日3760円 P22八幡西3月14日3760円 P24八幡西3月14日3760円 P25八幡西3月14日3760円 P26八幡西3月14日3760円 P41八幡西3月14日3760円 ただし「処分庁」のうち「門司」は門司福祉事務所「小倉北」は小倉北福祉事務所「若松」は若松福祉事務所「戸畑」は戸畑福祉事務所「八幡東」は八幡東福祉事務所「八幡西」は八幡西福祉事務所を指し「処分日」はいずれも平成18年のものである。なお,19年事件原告らのうち,P31はP30と,P35はP4と,P37はP9と,P40はP24と,P16はP17とそれぞれ同一世帯の者であり,便宜上世帯主である後者に対し保護変更決定がなされているが,上記原告らは保護変更がなされた当事者であり,いずれも後者の者を名宛人とする保護変更決定の取消訴訟につき原告適格を有すると解される。 19年事件原告P42は,平成▲年▲月▲日 更決定がなされているが,上記原告らは保護変更がなされた当事者であり,いずれも後者の者を名宛人とする保護変更決定の取消訴訟につき原告適格を有すると解される。 19年事件原告P42は,平成▲年▲月▲日死亡し,同事件のうち同人に関する部分はこれによって終了した。 第2 争点 本件の争点は,厚生大臣が保護基準を改定して老齢加算を減額又は廃止し,これに基づいて福祉事務所長が給付額を減少させた決定を行なったことが,生- 44 -活保護法8条,56条,憲法25条等に違反するかである。 なお,原告は老齢加算の減額又は廃止以外の理由に基づく減額の適法性については争っていない。 第3争点に関する当事者の主張別紙5「原告の主張」及び別紙6「被告の主張」のとおりである。 第3章当裁判所の判断第1生活保護制度の概要 生活保護法の目的等(1)目的生活保護は,生活保護法(以下「法」ともいう)に基づいて実施される。 公的扶助制度であり,憲法25条に規定する理念に基づき,国が生活に困窮するすべての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とするものである(法1条。 )(2)基本原理生活保護法に基づく保護(以下,単に「保護」ともいう)は,同法の定。 める要件を満たす限り,無差別平等に受けることができ(法2条。無差別平等の原理,これによって保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生)活水準を維持することができるものでなければならない(法3条。最低生活の保障。 )また,保護は,生活に困窮する者が,利用し得る資産,能力等をその最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ,民法上の扶養や他の法律による扶助が保護に優先するものとされている(法4条。保護の補足性。 に困窮する者が,利用し得る資産,能力等をその最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ,民法上の扶養や他の法律による扶助が保護に優先するものとされている(法4条。保護の補足性。 ) 保護の種類及び実施(1)保護の種類- 45 -生活保護法上の保護には,生活扶助,教育扶助,住宅扶助,医療扶助,介護扶助,出産扶助,生業扶助及び葬祭扶助がある(法11条1項。 )ア生活扶助生活扶助は,衣食その他日常生活の需要を充たす等のために必要な範囲内において,原則として金銭が給付される(法12条,31条。 )イ住宅扶助住宅扶助は,住居及び補修その他住宅の維持のために必要なものについて,原則として金銭で給付がされる(法14条,33条。 )ウ医療扶助医療扶助は,診察,薬剤,手術,居宅における療養上の管理,入院及び,(,その療養に伴う世話について原則として現物で給付がされる法15条34条。 )エ介護扶助介護扶助は,介護保険法の定める要介護者に対して,居宅介護,福祉用,,,,具住宅改修施設介護を行うとともに同法の定める要支援者に対して介護予防,介護予防福祉用具,介護予防住宅改修を行うものであり,原則として現物で給付がされる(法15条の2,34条の2。 )(2)保護の要否・程度と保護基準保護の要否は,厚生労働大臣が定める基準(昭和38年厚生省告示第158号。これを「保護基準」という)に基づいて判断され,その者の金銭又。 は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行われる(法8条1項。厚生労働大臣の定める保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯)構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これをこえないものでな 臣の定める保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯)構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これをこえないものでなければならない(同条2項。 )保護は,保護基準に基づいて算定される当該世帯の最低生活費から,当該- 46 -世帯の収入を控除して,不足分を補う形で行われている(昭和36年4月1日厚生省発第123号厚生事務次官通知。乙A2。 )(3)生活扶助基準と加算ア保護基準は,扶助の種類別に別表を定めて基準を設定している(保護基準別表第1から第8。このうち生活扶助に関する基準(保護基準別表第)1(以下「生活扶助基準」という)は,大別して,基準生活費と加算に。 分けられている(同第1章及び第2章。 )イ居宅で生活する者の基準生活費は,第1類と第2類に分けられ,原則として,世帯ごとに,第1類の個人別の額を合算したものと第2類の額を合計して算出される。個人ごとに算出される第1類の額(以下「第1類費」という)は,級地及び年齢によって定められ,第2類の額(以下「第2。 類費」という)は級地等及び世帯人員ごとに定められている。級地は,。 市町村別に1級地-1から3級地-2まで6つに区分して定められており,北九州市は1級地-2とされている(保護基準別表第9。 )第1類費は,食費,被服費等の個人単位の経費に対応したものであり,第2類費は光熱費,家具什器等の世帯単位の経費等に対応したものと想定されている(乙A10の4(資料4頁。 ))ウ加算には,現在,妊産婦加算,母子加算,障害者加算,介護施設入所者加算,在宅患者加算,放射線障害者加算,児童養育加算,介護保険料加算があり(生活扶助基準第2章,それぞれ該当する者について,保護基準)で定められた一定額が基 ,母子加算,障害者加算,介護施設入所者加算,在宅患者加算,放射線障害者加算,児童養育加算,介護保険料加算があり(生活扶助基準第2章,それぞれ該当する者について,保護基準)で定められた一定額が基準生活費に加算されて支給される。 第2老齢加算制度の導入から廃止までの経緯括弧内掲記の書証(枝番を付さないものは全ての枝番を含む。以下同じ)。 及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 導入及びその後の経緯(1)導入の経緯- 47 -老齢加算は,昭和35年4月1日,70歳以上の者を対象として,前年度に開始された老齢福祉年金(月額1000円)を収入認定するに伴い,同額を加算するものとして創設された。老齢加算は,老人の特殊な需要に対応するものとされ,観劇,雑誌,通信費などの教養費,下衣,毛布,老眼鏡等の被服・身回り品費,炭,湯たんぽ,入浴料等の保健衛生費,茶,菓子,果物等のし好品として積算されていた(甲A1,2,乙A19。 )(2)加算額の算定方式の変更ア老齢加算は,老齢福祉年金が増額されるに伴い,これと同額が増額されてきたが,同年金は,当初の敬老年金的性格から基礎的生活需要に対応するという性格が強まり,昭和50年10月には,月額7500円から1万2000円に引き上げられることになったため,老齢加算の額を老齢福祉年金と同額とする方式が再検討されることになった。昭和50年9月19日,厚生省中央社会福祉審議会生活保護専門分科会(以下「専門分科会」という)は,老齢加算の額は1類基準額との間である程度の均衡が保た。 れることが望ましく,1類基準額の一定割合にするという方法が検討に値。 ,,,する旨を提言したこれを踏まえ老齢加算の額は昭和51年1月から1級地65歳以上1類基準額の男女平均額の50%とされることになった 1類基準額の一定割合にするという方法が検討に値。 ,,,する旨を提言したこれを踏まえ老齢加算の額は昭和51年1月から1級地65歳以上1類基準額の男女平均額の50%とされることになった(甲A1,2,乙A9,22)。 イ厚生省は,上記アのように制度を変更する根拠として,老齢者に特有の需要に見合う所要額は,1類基準額のおおむね2分の1程度と判断されること,創設時の老齢加算額が,当時の1類基準額の約2分の1であったこと等を挙げている。そして,老齢者に特有の需要として,食料費(生鮮魚介,野菜等の中でも消化吸収がよく,ビタミン等の豊富な食品を他の年齢層よりも余分に摂取する必要がある,光熱費(老人は小人数世帯の場。)合が多く,肉体的条件から暖房等のための費用を余分に必要とする,。)被服費(寒気,湿気等に対応できるよう寝具,衣料品などの費用を余分に- 48 -必要とする,保健衛生費(保健医療,理容衛生費としての家庭薬,栄。)養剤等また入浴関係などの費用を余分に必要とする,雑費(墓参,親。)戚知人への訪問関係の費用,交際費また老人クラブ関係費などの教養娯楽費等を余分に必要とする)があると説明している(昭和51年1月20。 日社保第11号・厚生省社会局保護課長通知「老齢・母子・障害者の三加算方式の改正について(乙A9。 」))(3)昭和55年における検証昭和55年12月,専門分科会は「生活保護専門分科会審議状況の中間的とりまとめ(以下「昭和55年中間的とりまとめ」という。乙A5)を発」表し,生活保護の水準,生活扶助基準改定方式の適否等のほか,生活扶助基準における各種加算のあり方について検討を行なった。同分科会は,同中間的とりまとめにおいて「老令者は咀しゃく力が弱いため,他の年齢層に比,し消化吸収がよく良質 準改定方式の適否等のほか,生活扶助基準における各種加算のあり方について検討を行なった。同分科会は,同中間的とりまとめにおいて「老令者は咀しゃく力が弱いため,他の年齢層に比,し消化吸収がよく良質な食品を必要とするとともに肉体的条件から暖房費,被服費,保健衛生費等に特別な配慮を必要とし,また近隣,知人,親せき等への訪問や墓参などの社会的費用が他の年令層に比し余分に必要となる」。 と述べ,その加算額について「現在利用可能な資料を用いて特別需要額を,推計してみると,現行の加算額は,金額的にもそれぞれの特別需要にほぼ見合うものと考えられる」として,その当時における老齢加算の必要性及び。 その額の妥当性を認めた(乙A5)。 (4)昭和58年における検証と算定方式の変更ア昭和58年12月,厚生省中央社会福祉審議会は「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申(以下「昭和58年意見具申」という。 )」乙A6)を発表した。 同審議会は,意見具申において,近年における国民生活の変化及び保護基準の改善等の結果,加算額の妥当性についての再検討が必要な自体に立ち至ったとの認識のもと,専門分科会において,低所得者世帯の家計に関- 49 -する各種の資料を基にして,加算対象世帯と一般世帯との消費構造を分析したとして,その結果,老齢者の特別需要としては,加齢に伴う精神的又は身体的機能の低下に対応する食費,光熱費,保健衛生費,社会的費用,介護関連費などの加算対象経費が認められているところ,その額は,おおむね現行の加算額で充たされているとの所見を得たとした。そして,老齢加算については,その実質的水準が今後とも維持できるようにすることが必要であるが,その改定に当たっては,生活扶助基準本体の場合とは異なった取扱いをするよう検討すべきであると述べた(乙A そして,老齢加算については,その実質的水準が今後とも維持できるようにすることが必要であるが,その改定に当たっては,生活扶助基準本体の場合とは異なった取扱いをするよう検討すべきであると述べた(乙A6)。 イ同提言を受けて,昭和59年4月以降,老齢加算の額は,第1類費相当()。 の消費者物価指数の伸び率によって改定されるようになった乙A19 見直しから廃止までの経緯(1)老齢加算の見直しに関する提言等ア平成12年5月10日,衆議院厚生委員会は,社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案について,介護保険制度の施行後5年後をめどとした同制度全般の見直しの際に,生活保護の在り方について,十分検討を行う旨の付帯決議を行なった(乙A10の2・資料1。 )イ平成15年6月9日財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は平,,「成16年度予算編成の基本的考え方について(甲A20)を発表した。 」その中で,同分科会は,生活保護制度全般について,多角的かつ抜本的な検討が必要であるとした上で「特に,原則70歳以上の高齢者に上乗せ,される老齢加算(17,930円1級地-1)は福祉年金創設との関係から昭和35年に創設されたが,年金制度改革の議論と一体的に考えると,70歳未満受給者との公平性,高齢者の消費は加齢に伴い減少する傾向にあること等からみて,廃止に向けた検討が必要であると考えられる」と。 提言した(甲A20)。 - 50 -ウ同月16日,厚生労働省社会保障審議会は「今後の社会保障改革の方,向性に関する意見」において「生活保護については(中略)今後その在,り方についてより専門的に検討していく必要がある」と述べた(乙A1。 0の2・資料1。 )エ同月27日「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 」において「生活保護については(中略)今後その在,り方についてより専門的に検討していく必要がある」と述べた(乙A1。 0の2・資料1。 )エ同月27日「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(甲,」)。 ,「,A21が閣議決定された同基本方針の中では生活保護においても物価,賃金動向,社会経済情勢の変化,年金制度改革などとの関係を踏まえ,老齢加算等の扶助基準など制度,運営の両面にわたる見直しが必要である」と述べられている(甲A21)。 。 (2)専門委員会による検討の経緯ア前記(1)ア,ウ及びエの指摘を踏まえ,平成15年7月,厚生労働省社会保障審議会福祉部会に,生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という)が設置され,同年8月6日,第1回の会議が。 行われた。 イその後,専門委員会は,同年9月30日(第2回,同年10月14日)(第3回,同年11月18日(第4回,同月25日(第5回)及び同))年12月2日(第6回)に会議を行い,同月16日付けで「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ(以下「中間取りまとめ」という。 」乙A1)を発表した(乙A10)。 専門委員会は,同取りまとめにおいて,老齢加算について,次のような提言を行なった。 「○単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について,70歳以上の者と60歳~69歳の者との間で比較すると,前者の消費支出の方が少ないことが認められる。 ○したがって,消費支出額全体でみた場合には,70歳以上の高齢者について,現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認- 51 -められないため,加算そのものについては廃止の方向で見直すべきである。ただし,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で 相当するだけの特別な需要があるとは認- 51 -められないため,加算そのものについては廃止の方向で見直すべきである。ただし,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要がある。 ○また,被保護世帯の生活水準が急に低下することのないよう,激変緩和の措置を講じるべきである(乙A1,10)。」(3)老齢加算の減額・廃止ア厚生労働大臣は,平成16年3月25日,保護基準を改定し,老齢加算を減額した。70歳以上の1級地の在宅者は,従前,1万7930円の老齢加算を得ていたが,8260円減額され,9670円となった(平成。 16年厚生労働省告示第130号。以下「平成16年告示」という)。 イ厚生労働大臣は,平成17年3月31日,保護基準を改定し,老齢加算を減額した。70歳以上の1級地の在宅者の老齢加算の額は,5910円,。()減額され3760円となった平成17年厚生労働省告示第193号ウ厚生労働大臣は,平成18年3月31日,保護基準を改定し,老齢加算を廃止した(平成18年厚生労働省告示第315号。以下「平成18年告示」という。 。)第3老齢加算制度を廃止することの適法性について 判断の枠組み(1)本件各決定における保護基準に対する審査基準,審査方法について本件各決定は,厚生労働大臣の告示である16年告示及び18年告示によって,保護基準が改定され(以下「本件保護基準の改定」ともいう,老。)齢加算が減額又は廃止されたことに基づくものである。 ア厚生労働大臣の定める保護基準は,法8条2項所定の事項を遵守したものであることを要し,憲法の定める健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りるものでなければならないところ,健康で文化的 ある。 ア厚生労働大臣の定める保護基準は,法8条2項所定の事項を遵守したものであることを要し,憲法の定める健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りるものでなければならないところ,健康で文化的な最低限度の- 52 -,,,,生活は抽象的・相対的な概念であってその具体的内容は文化の発達国民経済の進展に伴って向上するのはもとより,多数の不確定的要素を総合的に考慮して初めて決定しうるものである。したがって,何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は,厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねられており,現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定するなど,憲法及び生活保護法の趣旨・目的に反し,裁量権の限界を逸脱・濫用した場合に違法となるものと解される(最高裁大法廷昭和42年5月24日判決・民集21巻5号1043頁。 )イ他方,法56条1項は「被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を,不利益に変更されることがない」と定めているところ,。 保護の要否及び程度は保護基準に基づいて定められるのであるから(法8条1項,前記第1,2,(2) ,保護基準が不利益に変更されれば,結局,)個々の被保護者に対して行われる保護も,原則として不利益に変更されることとなる。したがって,法56条1項の趣旨,目的に照らすと,保護基準の不利益変更は,法律上,保護決定の不利益変更をもたらすものであって,同条にいう「正当な理由」が必要であると解すべきである。 ウそこで保護基準を不利益に変更する場合に求められる「正当な理由」の判断基準・方法について検討する。 (ア)保護基準は,健康で文化的な最低限度の生活水準を具体的に指し示すものであるところ「健康で文化的な最低限度の生活(以下「最低,」生活」ともいう)を具体化するにあたっては,国 いて検討する。 (ア)保護基準は,健康で文化的な最低限度の生活水準を具体的に指し示すものであるところ「健康で文化的な最低限度の生活(以下「最低,」生活」ともいう)を具体化するにあたっては,国の財政事情を無視す。 ることができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから(最高裁大法廷昭和57年7月7日判決・民集36巻7号1235頁,保護基準)を変更する際にも,当然,このような専門技術的・政策的判断を避けることができない。 - 53 -(イ)すると,厚生労働大臣が保護基準を不利益に変更するためには法56条にいう「正当な理由」がなければならないが,その理由が「正当」なものかの判断については,そもそも何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断について厚生労働大臣が裁量権を有していること(前記ア)や,保護基準の専門技術的・政策的性格(前記(ア))から,厚生労働大臣に一定の裁量権があるというべきであり,裁判所は,その理由の正当性に関する厚生労働大臣の判断が,著しく合理性を欠き,裁量を逸脱・濫用したといえるかを審査すべきものと解される。 (ウ)その裁量権の逸脱・濫用の有無を審査するに当たっては,変更理由の内容並びに判断過程及び判断資料等の合理性を検討することになる。 また,保護基準を不利益に変更する場合の厚生労働大臣の裁量権の範囲は,既存の保護基準があることや,被保護者に不利益を与えるものであることを考慮すると,新規に保護基準を定立する場合に比べて小さいというべきである。 (2)老齢加算が減額・廃止された理由について以上によれば,本件各処分が適法であるためには,老齢加算を廃止した保護基準の改定に法56条にいう「正当な理由」があるかが問題となる。 ア厚生労働大臣が (2)老齢加算が減額・廃止された理由について以上によれば,本件各処分が適法であるためには,老齢加算を廃止した保護基準の改定に法56条にいう「正当な理由」があるかが問題となる。 ア厚生労働大臣が老齢加算を減額・廃止した理由について検討すると,被告は,その理由として,平成15年12月16日,専門委員会が,中間取りまとめにおいて,老齢加算そのものについては廃止の方向で見直すべきであるとの提言をしたこと,一般低所得高齢者世帯の消費実態の検証結果により,70歳以上の高齢者に老齢加算に相当するだけの特別な消費需要がないと認められること,老齢加算制度の合理性を基礎づけていた事情が現在ではほぼ失われていると解されることを挙げている(別紙6。 )そして,前記の被告の主張及び専門委員会に提出された資料(乙A10の2,4,6,8,10,12)及び中間取りまとめの内容(乙A1)に- 54 -よれば,老齢加算の減額・廃止に関する前記厚生労働大臣の判断は(ア)生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水,,準との関連においてとらえられるべき相対的なものであり具体的には年間収入階級第1・10分位(調査対象者を年間収入額順に並べ,対象,。 者数をn等分した場合にm番目に低いグループを第m・n分位と表す以下同じ)の世帯の消費水準に着目することが適当であるとの考え方。 (以下「考え方①」という)を前提に。 (イ)単身無職の60歳から69歳までの者と70歳以上の者の生活扶助相当消費支出額(消費支出額の全体から,生活扶助以外の扶助に該当するもの,被保護世帯は免除されているもの及び家事使用人給料・仕送り。 。)金など最低生活費になじまないものを控除したものをいう以下同じを比較すると,全世帯平均,第1・5分位,第1・10分位において,い 被保護世帯は免除されているもの及び家事使用人給料・仕送り。 。)金など最低生活費になじまないものを控除したものをいう以下同じを比較すると,全世帯平均,第1・5分位,第1・10分位において,いずれも60歳から69歳までの者より70歳以上の者の生活扶助相当消費支出額が低い状況となっていること(以下「比較①」という)。 (ウ)第1・5分位の70歳以上の単身無職の者の生活扶助相当消費支出額と,70歳以上の者の老齢加算を除く生活扶助基準額を比べると,生活扶助基準額が高い状況となっていること(以下「比較②」という)。 に基づくものと認められる。 イそこで,以下では,これらの厚生労働大臣の判断手法に著しく不合理な点がないかを検討した上で(以下の2ないし4,原告の主張について検)討を加えることにする(以下の6。 )(3)社会権規約に関する主張についてなお,原告らは,生活保護における老齢加算の廃止が,憲法及び生活保護法に加えて,経済的,社会的および文化的権利に関する国際規約(以下「社」。),。 会権規約という9条11条及び15条に違反する旨を主張しているしかし,社会権規約2条1項は,締結国に「この規約において認められる- 55 -権利の完全な実現を漸進的に達成する」ための行動を求めており,同規約9条,11条及び15条によって認められている権利が,直ちに個人に対して具体的に付与されているものとはいえない(最高裁平成元年3月2日第一小法廷判決・裁判集民事156号271頁参照。そして,これらの条項の内)容に照らすと,老齢加算を減額,廃止した厚生労働大臣による保護基準の改定に,法56条にいう「正当な理由」がある場合においても,本件各処分が社会権規約9条,11条及び15条に違反し,違法となることがあるとは考え難い。 そうすると, 止した厚生労働大臣による保護基準の改定に,法56条にいう「正当な理由」がある場合においても,本件各処分が社会権規約9条,11条及び15条に違反し,違法となることがあるとは考え難い。 そうすると,社会権規約違反を理由とする原告ら主張には理由がない。 一般低所得者世帯の消費水準との比較において保護基準を定めること(考え方①)の合理性について保護基準の定め方に関する考え方①の合理性を判断する前提として,まず,生活扶助基準の算定方法がこれまでどのように推移し,生活扶助基準と一般世帯の消費支出額の対比を検討する。 (1)生活扶助基準の算定方法の推移ア昭和21年から昭和39年まで生活扶助基準は,当初,経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生活費(「」。),を基に算出する方式以下標準生計費方式というによっていたが昭和23年8月から,最低生活を営むために必要な飲食物費,衣類,家具什器,入浴料といった個々の品目ごとに要する費用を個別に積算し,最低生活費を算出する方式(以下「マーケットバスケット方式」という)に。 よって計算されるようになった。その後,昭和36年4月から,栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たしうる食品を理論的に積み上げて飲食物費を計算し,別に低所得世帯の実態調査からこの飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め,この両者から総生活費を算出する(「」。)。 方式以下エンゲル方式というによって計算されるようになった- 56 -(乙A10の5,19)イ格差縮小方式(ア)昭和37年8月22日,厚生省社会保障制度審議会は「社会保障,制度の総合調整に関する基本政策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告(乙A21)を発表し,同審議会は,生活保護につ」いて「最低生活水準 2日,厚生省社会保障制度審議会は「社会保障,制度の総合調整に関する基本政策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告(乙A21)を発表し,同審議会は,生活保護につ」いて「最低生活水準は一般国民の生活の向上に比例して向上するよう,にしなければならない「国民所得倍増計画が推進され,国民一般の。」生活水準が高くなった今日,従来の保護基準はそれにおくれている」。 と述べた上「生活保護水準の引き上げは,昭和45年に少なくとも昭,和36年度当初の水準の実質3倍になるように年次計画をたてる」と。 提言した。 (イ)昭和39年12月16日,専門分科会は,生活保護水準に関する審議の中間報告(乙A20)を発表し,同分科会は「低所得階層の消費,水準とくに生活保護階層に隣接する全都市勤労者世帯第1・10分位階級の消費水準の動向に着目した改善を行うことがとくに必要である。す,,なわち第1・10分位階級における消費水準の最近の上昇率に加えて第1・10分位階級と生活保護階層との格差縮小を見込んだ改善を行うべきである」と提言した。 。 (ウ)これらの提言を受け,昭和40年から,生活扶助基準は,一般国民の消費支出の伸び率以上の率で引き上げ,一般国民と被保護世帯の消費水準の格差の縮小を図る方式(以下「格差縮小方式」という)による。 ことになった。 昭和55年12月に専門分科会が発表した昭和55年中間的取りまとめにおいても,この方式は「格差縮小が十分でない現状においては,,現行方式の考え方は妥当性を有するものと認められる」とされた。 。 (乙A5,10の5,19,20,21)- 57 -ウ水準均衡方式(ア)昭和58年12月23日,厚生省中央社会福祉審議会による昭和58年意見具申(乙A6)は「生活保護において保障すべき最低生活の, ,10の5,19,20,21)- 57 -ウ水準均衡方式(ア)昭和58年12月23日,厚生省中央社会福祉審議会による昭和58年意見具申(乙A6)は「生活保護において保障すべき最低生活の,水準は,一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なものであることは,既に認められているところである「今日にお。」ける最低生活の保障の水準は,単に肉体的生存に必要な最低限の衣食住を充足すれば十分というものではなく,一般国民の生活水準と均衡のとれた最低限度のもの,すなわち家族全員が必要な栄養量を確保するのはもちろんのこと,被服及びその他の社会的費用についても,必要最低限の水準が確保されるものでなければならない」とした上で「このよ。 ,うな考え方に基づき,総理府家計調査を所得階層別に詳細に分析検討した結果,現在の生活扶助基準は,一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た」との見解を示した。 。 ,,,(イ)同意見具申の内容に基づき昭和59年4月から生活扶助基準は政府経済見通しの民間最終支出の伸びを基礎として,当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に,前年度までの一般国民の(「」。),消費実態との調整を図る方式以下水準均衡方式というにより改定されることになった。 (乙A6,10の10,19)(2)生活扶助基準と低所得者世帯の消費支出額の比較ア水準均衡方式が採用されるようになった昭和59年当時,一般勤労者世帯の消費支出額(全国平均1人当たり月額)は7万5149円,被保護勤労者世帯の消費支出額(同)は5万0447円であり,その格差は67. 1%であった。その後,この格差は68.1%から71.9%で推移し,平成14年度には73.0%となった(乙A10の4(資料8 保護勤労者世帯の消費支出額(同)は5万0447円であり,その格差は67. 1%であった。その後,この格差は68.1%から71.9%で推移し,平成14年度には73.0%となった(乙A10の4(資料8頁,1。 )1)- 58 -イ勤労者3人(夫婦子1人)世帯について,全世帯平均の消費支出額は,平成8年から12年までの平均値で月額31万1619円,そのうち生活扶助相当支出額は20万7013円,この期間における第1・10分位の消費支出額は月額21万0769円,そのうち生活扶助相当支出額は13万7708円,第1・5分位の消費支出額は22万4400円,そのうち生活扶助相当支出額は14万6126円であったのに対し,この期間における保護基準額は18万6444円,生活扶助基準額は14万3409円であった(乙A10の8(資料1頁。 ))(3)考え方①の合理性についてア前記認定事実((1))によれば,生活扶助基準は,従前,被保護者の個別的な費目の支出額を想定し,これを基に決められていたところ(標準生活費方式,マーケットバスケット方式,昭和37年及び39年,厚生省)に設置された審議会等が,一般国民の生活水準との比較において保護基準を向上させる必要があることを提言し,格差縮小方式が採用され,保護基準が一般国民の生活水準との対比で算定されるようになったという経緯が認められる。そして,格差縮小方式が採用されていた昭和45年には,一般勤労者世帯と被保護勤労者世帯の全国1人当たりの消費支出格差は54.6%であったのに対し,水準均衡方式が採用されるようになった昭和59年度には,これが67.1%となり,平成14年度の段階では73. 0%となったことが認められる(乙A11。 )イまた,標準的な世帯と考えられる夫婦子1人の世帯についての,平成8年から1 た昭和59年度には,これが67.1%となり,平成14年度の段階では73. 0%となったことが認められる(乙A11。 )イまた,標準的な世帯と考えられる夫婦子1人の世帯についての,平成8年から12年の平均の生活扶助基準額(14万3409円)は,全世帯平(). ,均の生活扶助相当消費支出額20万7013円の約693%であり第1・10分位のそれ(13万7708円)よりも多く,第1・5分位のそれ(14万6126円)に近い額となっている(前記(2)イ。 )ウそもそも「健康で文化的な最低限度の生活」という概念は,抽象的・相- 59 -対的なものであり,その具体的な内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものである(前掲最高裁大法廷昭和57年7月7日判決参照。そして,一般国民の消費支出額は,国民生活の状況を示す)1つの合理的な指標であるから,一般国民の消費支出額との対比において相対的に保護基準を定めることは「健康で文化的な最低限度の生活」を,保障する憲法及び生活保護法に沿うものといえる。 もっとも,一般国民の平均的な消費支出額をそのまま保護基準とすることは「最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,こ,れをこえないもの(法8条2項)という保護基準の性質にそぐわない。 」すると,一般国民のうちどの水準の層の消費支出額に着目するかが問題となるが,この点については,現時点において,一般的・客観的な基準が特に存在するものとは認められない。そして,①「第1・10分位階級と生活保護階層との格差縮小を見込んだ改善」を図るものとして提唱された格差縮小方式が(前記(1)イ(イ) ,絶対的な費目・需要に基づき保護基)準を定めていたそれまでの方 て,①「第1・10分位階級と生活保護階層との格差縮小を見込んだ改善」を図るものとして提唱された格差縮小方式が(前記(1)イ(イ) ,絶対的な費目・需要に基づき保護基)準を定めていたそれまでの方式に比べて,保護基準の向上に資するものであったこと(前記ア,②その結果,昭和58年意見具申において,厚生)省中央社会福祉審議会が「現在の生活扶助基準は,一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達している」との認識を示すに至り(前記(1)ウ,その後,生活扶助の程度が,一般国民の生活水準と比べて特に低下)したとは認められないこと(前記ア及びイ,③平成14年における勤労)者3人世帯についても,生活扶助基準額は全世帯平均の約7割の数値となっているところ,これは第1・10分位の水準を上回り,第1・5分位の水準に近いものであること(前記イ,④後記のとおり,70歳以上の単)身無職者の生活扶助基準額は,第1・5分位の70歳以上の単身無職の者の生活扶助相当消費支出額よりも高額であること(比較②)等を考慮する- 60 -と,第1・10分位の世帯の消費水準に着目して保護基準を考えるのが適当であるとする考え方①が,合理性を欠いているものとは評価できない。 (4)漏給層の存在等についてこれに対し,原告は,実際には,生活保護を受給されるべきであるのに実際には受給していない者(以下「漏給層」という)が多数存在し,低所得。 者層との比較において保護基準を決めることは,保護基準の低下を招くものであると主張する。 ア確かに,考え方①は,低所得者層の消費水準に依拠した相対的基準であり,個々人の具体的な生活像を想定したものではないため,わが国の国民生活の水準が全般的に大きく低下したり,収入階層別の消費支出額の格差が大きく広がったときには,その考え方に基づいて導か 対的基準であり,個々人の具体的な生活像を想定したものではないため,わが国の国民生活の水準が全般的に大きく低下したり,収入階層別の消費支出額の格差が大きく広がったときには,その考え方に基づいて導かれた保護基準が,衣食住及び読書・交際等の必要最小限度の文化的,社会的活動を維持することができない域に達することもありうる。保護基準が,考え方①の観点からは妥当なものであるとしても,現実の生活条件を無視した著しく低いものである場合には,違法となることを免れないと解されるから(前掲最高裁判所大法廷昭和42年5月24日判決参照,この点についての検討)は必要である。 しかし,前記((3)ウ)で指摘した事情に加えて,①水準均衡方式が採用された昭和59年度から平成14年度までの間,一般勤労者世帯と被保護勤労者世帯の消費支出の格差は,概ね70%程度を維持し続けていたこと(前記(2)ア,②昭和59年から平成14年までの第5・5分位の消)費の伸びは約2%であるのに対し,第1・10分位は約7%となっていること(乙A10の8(資料5頁,③勤労者3人世帯の生活扶助基準額))(14万3409円)は,外食,洋服,教養娯楽サービス等,通信費,こづかいの支出の減少が顕著な第1~2・50分位の生活扶助相当支出額12万8559円よりも相当程度上回っていること等にも照らすと乙()(- 61 -A10の8(資料1頁,本件保護基準の改定の時点で,第1・10分))位の消費支出に着目して保護基準を定めたことが,一般に,現実の生活条件を無視した著しく低い基準となるような状況であったとは認め難い。そして,原告らの個別的な生活状況等を検討しても,これが健康で文化的な最低限度の生活水準を下回っているとまではいえないことは,後記第4のとおりである。 イ原告は,漏給層が多数 あったとは認め難い。そして,原告らの個別的な生活状況等を検討しても,これが健康で文化的な最低限度の生活水準を下回っているとまではいえないことは,後記第4のとおりである。 イ原告は,漏給層が多数存在する以上,一般低所得者層の消費水準が健康で文化的な最低限度の生活水準を下回っているから,一般低所得者層の消費水準を基準とすることは論理矛盾であると主張する。 確かに,漏給層が存在する結果,一般国民の生活水準が,これが存在しない場合に比べて低下することは考えられるところ,保護基準が,現実の生活条件を無視した著しく低いものとなる場合には,これが違法となりうることは前示のとおりである。しかし,漏給層が存在していても,現在の第1・10分位の消費水準が,健康で文化的な最低限度の生活を営めない程度に低いものとは認められない(前記ア。また,保護基準の策定に当)たり,一般国民のうち一定の水準の層の消費支出額に着目し,相対的に決めるという考え方を採るときには,消費支出の点において結果として保護基準以下の者が存在するとしても,そのことによって直ちに当該基準の合理性が失われるものとはいえないというべきである。 原告は,捕捉率(保護基準以下の生活を営んでいる者のうち実際に保護を受けている者の割合)が20%に止まる旨を主張し,これに沿う研究結果(甲A13)があることを指摘しているが,これらの研究が貯蓄や稼働能力などの生活保護の受給要件をどの程度正確に反映したものかは明らかでないし,捕捉率がある程度正確に算定できたとしても,それが保護基準の当否に直ちに影響する程度のものかも明らかとはいえない。 ウ以上によれば,原告の前記主張を考慮しても,考え方①が合理性を欠く- 62 -ものとはいえない。 (5)変曲点について次に原告は,考え方①について,変曲点の概念を用い も明らかとはいえない。 ウ以上によれば,原告の前記主張を考慮しても,考え方①が合理性を欠く- 62 -ものとはいえない。 (5)変曲点について次に原告は,考え方①について,変曲点の概念を用いた分析がされておらず,これ以下の生活を営んでいる者については比較の手法は無意味であると主張する。 ,,,ア変曲点とは収入階級毎に消費支出を比較すると所得の減少に伴って消費支出は緩やかに減少するところ,ある所得階層以下になると急激に下方に変曲する所得分位が認められ,この所得分位のことをいうものと解されるところ,変曲点が生じる原因として,ある水準を超えて所得が低くなると,社会的に必要不可欠な消費水準を維持することができなくなり,急激に消費水準が低下するとの説明が考えられ,昭和58年意見具申において,この基準を用いて当時における保護基準の妥当性が検証された(乙。 A10の4)イ以上の変曲点に基づく検証は,最低生活の水準を定める際に採りうる手法の1つであると考えられるが,これによらなければ最低生活を導き出すことができないというような,一義的・普遍的な手法であると認めるに足りない。また,第2回専門委員会に提出された資料によれば,勤労者3人世帯の消費支出額の動向から,変曲点は,第3・50分位から第5・50分位付近に存在するものと仮定されており(乙A10の4(資料1・12頁,第1・10分位に着目した考え方①が,変曲点を調査・分析する))ことによって,合理性を失うことになるかは明らかでない。 なお,原告は変曲点以下の生活を営んでいる者については比較の手法は無意味であるとも主張するが,結果として保護基準以下の生活を営んでいる者が存在していることから,考え方①の合理性が失われるとはいえないことは,前記(4)イ等のとおりである。 ウよって,原告 手法は無意味であるとも主張するが,結果として保護基準以下の生活を営んでいる者が存在していることから,考え方①の合理性が失われるとはいえないことは,前記(4)イ等のとおりである。 ウよって,原告の前記主張を採用することはできない。 - 63 -(6)第1・10分位と比較する根拠が明らかでない等の主張についてア原告は,考え方①に関連して,生活扶助の水準に関して採られてきた水準均衡方式には,第1・5分位や第1・10分位といった低所得者の消費水準に着目するという内容は含まれておらず,そのような低所得者層に着目する根拠が明らかでない旨を主張する。 イ確かに,水準均衡方式それ自体は,毎年の生活扶助基準を政府経済見通しの民間最終支出の伸びを基礎として改定することを内容とするものである(前記(1)ウ(イ) 。 )しかし,その前身である格差縮小方式は,第1・10分位との格差縮小を見込むものとして提唱されたものであり,一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達したとの認識に基づいて水準均衡方式が採用されるようになったこと(前記(1)ウ,昭和55年中間的とりまとめ(乙A5))においても,当時の保護基準が「地域社会の成員としてふさわしい生活を営むために不可欠な交通費,教養費,交際費等社会的経費は一般世帯のみならず全国勤労世帯第1・10分位階級等の世帯と比較しても著しいひらきがあることなど」を勘案して,格差縮小方式が維持されたことを考慮す,。 ると唐突に第1・10分位に着目されるようになったとは認められないそして,一般国民のうちどのような水準の層に着目して保護基準を定めるかについては,一般的・客観的な基準が存在せず,本件保護基準改定の時点において,第1・10分位に着目することが,厚生労働大臣の保護基準の設定に関する裁量権を逸脱,濫用するも 着目して保護基準を定めるかについては,一般的・客観的な基準が存在せず,本件保護基準改定の時点において,第1・10分位に着目することが,厚生労働大臣の保護基準の設定に関する裁量権を逸脱,濫用するものとはいえないことは,前記(3)ウのとおりである。 ウ以上によれば,原告の前記主張を採用することはできない。 60歳代の者と70歳以上の者の消費支出額の比較(比較①)について(1)全国消費実態調査の特別集計に基づく比較ア厚生労働省が,総務省統計局の行なった平成11年度全国消費実態調査- 64 -によって得られた調査票を用いて,収入階層・年齢階層別に単身世帯の年間収入額を12で割った額及び消費支出額等をまとめた結果(以下「特別集計」という)は,次のとおりである(乙A10の8(資料10頁,。 )16,17。 )(表3:無職,単身世帯の収入額,消費支出額及び生活扶助相当支出額)60歳から69歳70歳以上平均収入額18万0833円17万5833円消費支出額16万7588円14万2714円生活扶助相当11万8209円10万7664円第1・収入額6万2380円6万1555円5分位消費支出額12万1360円9万0848円生活扶助相当7万6761円6万5843円第1・収入額4万3654円4万7093円10分位消費支出額11万8790円9万2518円生活扶助相当7万9817円6万2277円ただし「収入額」は年間収入額を12で割って算出した額「生活扶,,助相当」は生活扶助相当支出額をいう。 イ上記表3によれば,70歳以上の者は,60歳から69歳の者に比べ,全世帯平均,第1・5分位,第1・10分位のいずれにおいても,生活扶助相当消費支出額が低くなっている。老齢加算は,70歳以上の者であるこ 表3によれば,70歳以上の者は,60歳から69歳の者に比べ,全世帯平均,第1・5分位,第1・10分位のいずれにおいても,生活扶助相当消費支出額が低くなっている。老齢加算は,70歳以上の者であることを理由に生活扶助の基準生活費に一定額を加算する制度であるから,消費水準に着目して保護基準を定めるとすれば,その必要性・合理性を基礎づけるためには,70歳以上の者の消費水準が他の年齢層よりも高くなければならないと考えられる。しかし,以上の調査結果によれば,70歳以上の者が,60歳代の者に比べて生活扶助の想定する費目に係る消費水準が高いということはできず,その必要性・合理性を認めることは困難と- 65 -いわざるをえない。 (2)特別集計の原調査(全国消費実態調査)に基づく分析等についてこれに対し,原告は,特別集計の原調査である全国消費実態調査の結果を用いると,単身・無職世帯の月間消費支出額は,必ずしも70歳代の者が60歳代の者に比べて低いとはいえないと指摘する。 ,(,アそこで平成11年度全国消費実態調査の第26表60歳以上の男女年齢階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出)を見ると,月間消費支出は男女平均では,①60歳から64歳は19万4397円,②65歳から69歳は15万6981円,③70歳から74歳は16万1600円,④75歳以上は13万1813円となっており,確かに,年齢が上昇するにつれて消費支出が減少し続けているものではない(甲A19,28。ま)た,同表の消費支出のうち,生活扶助相当支出額に比較的類似すると考え,,,,,,られる食料光熱・水道家具・家事用品被服及び履物交通・通信,,(「」教養娯楽諸雑費交際費を集計して算出した額以下生活扶助相当額という)を見ると,男女平均では,①60 ,られる食料光熱・水道家具・家事用品被服及び履物交通・通信,,(「」教養娯楽諸雑費交際費を集計して算出した額以下生活扶助相当額という)を見ると,男女平均では,①60歳から64歳は16万422。 9円,②65歳から69歳は13万4756円,③70歳から74歳は13万8205円,④75歳以上は11万4691円となり(甲A19,28,原告の指摘するとおり,65歳から69歳よりも70歳から74歳)の方が高額となっている。 イ(ア)もっとも,生活扶助の第1類費は年齢別に異なる基準額が定められているところ,60歳以上の者の年齢区分は「60歳から69歳」と,「70歳以上」である。そして,老齢加算は,原則として70歳以上の者を対象とするものであった。このことを考えると,老齢加算の対象者層に加算に対応する消費活動の存在が認められるかを検討するに当たり,60歳代の者と70歳以上の者の生活扶助相当消費支出額を比較して分析することは合理的な方法であり,前記アのように5歳ごとの年齢- 66 -,。 層別の検討等を経ていないとしても著しく不合理であるとはいえない(イ)また,平成11年度全国消費実態調査に基づく生活扶助相当額において,65歳から69歳の者よりも70歳から74歳の者が多額となっていることは原告の指摘するとおりであるが,その結果を全体としてみると,高齢になるにつれて生活扶助相当額が低減する傾向があること自体は否定できない。このことは,平成16年度に行われた全国消費実態調査に基づく試算(甲A29)でも同様である。 (ウ)aさらに,特別集計に基づく上記表3において,60歳代の者と70歳以上の者の収入の違いと支出額の違いをそれぞれ見てみると,第1・5分位の60歳代の者の収入額(6万2380円)と70歳以上の者 ウ)aさらに,特別集計に基づく上記表3において,60歳代の者と70歳以上の者の収入の違いと支出額の違いをそれぞれ見てみると,第1・5分位の60歳代の者の収入額(6万2380円)と70歳以上の者のそれ(6万1555円)にはそれほど違いがないのに対して,前者の生活扶助相当消費支出額7万6761円は後者のそれ (),(万5843円)よりも,1万円以上高い。また,第1・10分位の60歳代の者の収入額(4万3654円)と70歳以上の者のそれ(4万7093円)を比べると,やはりそれほどの違いはないところ(むしろ後者の方が前者よりも多額となっている,前者の生活扶助相。)当消費支出額(7万9817円)は,後者のそれ(6万2277円)よりも,1万7000円以上高い。 ,(,b次に特別集計の原調査である全国消費実態調査の結果甲A19 を見ると生活扶助相当額について65歳から69歳の者 ),,(3万4756円)と70歳から74歳の者(13万8205円)の差額は3449円であるところ,前者の可処分所得は14万7329円であるのに対し,後者の可処分所得は16万0882円であり,後者が1万3553円多額となっている。 c以上で見たところによれば,原告の指摘するとおり,特別集計の原調査である全国消費実態調査の結果に基づけば,70歳から74歳の- 67 -支出の生活扶助相当額は,65歳から69歳の者のそれに比べて多額であることが認められるのであるが,他方で,収入の額にも着目すると,比較的同じ収入である60歳代の者と70歳以上の者の消費支出額を比べると,加齢によって相当程度減少しているのに対して(前記a,65歳から69歳の者と70歳から74歳の者については,可)処分所得が増額してもその程度に応じて生活扶助に相当 以上の者の消費支出額を比べると,加齢によって相当程度減少しているのに対して(前記a,65歳から69歳の者と70歳から74歳の者については,可)処分所得が増額してもその程度に応じて生活扶助に相当する費目の消費支出が増加してはいないことが分かる(前記b。 )この点,原告は,保護基準の当否において,可処分所得の大きい者の消費支出が高くなることを考慮することは,生活水準の程度を消費支出額で測定するとの立場と矛盾するものであると主張する。 確かに,その消費支出額が上昇したにもかかわらず,これが一般低所得者世帯の可処分所得が向上したためであるとして,これを理由に保護基準を改善しないことは,考え方①に抵触するものである。しかし,老齢加算が,70歳以上の者であることを理由に,生活扶助として,基準生活費に加えて一定額が給付される加算の制度であり,消費支出額は一般に可処分所得に合わせて増減すると考えられることに照らすと,その必要性・合理性を基礎づけるためには,同程度の収入又は可処分所得の者について,60歳代の者と70歳以上の者とを比較して,生活扶助に相当する費目の消費支出額が高い傾向にあるか,少なくとも,収入又は可処分所得の増加する程度に応じて,その消費支出額が増加することが必要であると考えられる。 すると,平成11年度全国消費実態調査において70歳から74歳の者の生活扶助相当額が65歳から69歳の者よりも多額になっているとしても,それが老齢加算の必要性・合理性を基礎づけるものと評価することはできない。なお,平成16年全国消費実態調査では,前者は後者より低額になっており,なおさらである。 - 68 -ウ以上によれば,原告の平成11年の全国消費実態調査に基づく前記主張は,前記(1)の判断を左右するものではない。 (3)比較対象となった年代,世帯 低額になっており,なおさらである。 - 68 -ウ以上によれば,原告の平成11年の全国消費実態調査に基づく前記主張は,前記(1)の判断を左右するものではない。 (3)比較対象となった年代,世帯,支出内容の適否についてアまた,原告は,前記(1)の検討に関連して,同じく高齢者である60歳代の者と70歳以上の者の比較は不適切であることや,比較の対象となる(,,,,消費支出の内容が不適切であること等を主張する別紙5第1 (4)エ及びオ。 )イしかし,前記(2)イ(ア)のとおり,第1類費の年齢区分及び老齢加算の対象年齢に照らすと,60歳から69歳と70歳以上の者を比較することが最も合理的であるし,平成15年3月時点で単身世帯が高齢者被保護世帯の87.6%を占めていたこと(乙A10の2(資料2・16頁)を)考慮すると,単身無職者世帯を比較対象としたことにも合理性がある。 また,老齢加算は生活扶助における加算であるから,消費支出のうち生活扶助相当支出額のみに着目して比較検討することが最も合理的である。 加齢に伴う需要の増加が生活扶助以外の費目に係る支出の増加をもたらす可能性があるとしても,前記(1)の手法による検討が著しく合理性を欠く,,,ものとまではいえないし前記表3によれば消費支出額全体についても加齢に伴う消費支出の推移に着目した比較①は成り立つものである。 ウよって,原告の前記主張は,前記(1)の判断を左右するものではない。 (4)専門委員会に提出された資料の信頼性について原告は,前記(1)の比較の基礎となった全国消費実態調査やその結果等に疑義があることを主張するので(別紙5・第1・2・(4)・ウ・(ウ)及び(エ) ,検討する。 )ア全国消費実態調査の手法等について原告は,本件訴訟において全国消費実態調 費実態調査やその結果等に疑義があることを主張するので(別紙5・第1・2・(4)・ウ・(ウ)及び(エ) ,検討する。 )ア全国消費実態調査の手法等について原告は,本件訴訟において全国消費実態調査の調査票等が提出されておらずその検証が不可能であることや,その調査期間がわずか2か月間に止- 69 -まることを主張する。 (ア)全国消費実態調査は,消費・所得・資産に係る水準,構造,分布などを明らかにすることを目的として,5年ごとに行われているものであり,統計法上の指定統計を作成するための調査である(統計法2条,3条1項。同調査は,毎月実施されている家計調査と異なり,詳細な結)果を得るために行われる大規模なものであり,約5万9800の対象世帯が,家計簿や調査票等に毎日の収入・支出や年収,貯蓄,世帯に関する事項,住居に関する事項等を記入し,調査員がこれを集める方法で行われた(乙A16の1)。 (イ)厚生労働省は,総務省に対し,生活扶助基準等の検証を行う基礎資料として,属性別の収入・支出額を把握するため,全国消費実態調査の家計簿,年収・貯蓄等調査票及び世帯票の使用を承認するように求め,,(,平成14年3月20日総務大臣はこれを承認した統計法15条2項乙A17。 )前記表3は,この調査票等を用いて,収入階層・年齢階層別に単身世帯の収入額と支出額等を調べ,集計した結果である(弁論の全趣旨。 )(ウ)統計法15条1項は「何人も,指定統計を作成するために集められ,。」,た調査票を統計上の目的以外に使用してはならないと定めており同条2項の定める総務大臣の承認を経ない限り,調査票等を目的外で使用することは許されていない。家計簿,年収・貯蓄等調査票及び世帯票,(),,,,,,はその書式上乙A16の1氏名 同条2項の定める総務大臣の承認を経ない限り,調査票等を目的外で使用することは許されていない。家計簿,年収・貯蓄等調査票及び世帯票,(),,,,,,はその書式上乙A16の1氏名住所家族構成収入財産生活状況など私生活上の秘密に属する事柄が多数記載されていることが認められる。すると,被告が本件訴訟上において調査票等を提出しないことには合理的理由があるものといえ,このことによって特別集計が恣意的に行われたものと認めることはできない。 また原告は,全国消費実態調査が2か月という短い期間で杜撰に行わ- 70 -れた旨も主張するが,同調査の標本数,調査世帯の選定方法,調査の実施方法等に照らすと(乙A16の1,その結果に統計学上問題がある)ことを具体的にうかがわせる事情があるとは認められない。 イ専門委員会における説明資料の結果の合理性について(ア)その他,原告は,専門委員会における全国消費実態調査等の説明資料の信用性に疑義があるとして,①60歳代無職世帯の生活扶助相当支出額について,第1・10分位が第1・5分位よりも高くなっていること(乙A10の8(資料12,13頁,②第2類費相当の「教養娯))楽費「交際費」について,全体では60歳代よりも70歳代の方が高」いのに,第1・5分位や第1・10分位では60歳代よりも70歳代が低いこと(同12,13頁,③単身の被保護世帯の支出について,6)0歳代の者よりも70歳以上の者の方が高額であること(乙A10の12(資料3,4頁)を指摘する。 )(イ)このうち,①及び②については,確かに自然であるということはできないが,前記アの特別集計が恣意的になされたことを推認させる結果ということまではできない。また,これらの結果から老齢加算の必要性を裏づけるような,低所得者特 いては,確かに自然であるということはできないが,前記アの特別集計が恣意的になされたことを推認させる結果ということまではできない。また,これらの結果から老齢加算の必要性を裏づけるような,低所得者特有の消費活動がうかがわれるものともいえない。 (ウ)次に③については,被保護高齢者単身世帯の家計の状況について,老齢加算のない世帯の消費支出は9万9062円であるのに対し,加算がある世帯は10万1294円となっているが,他方,生活保護給付の額を見ると,老齢加算のない世帯は8万2574円であるのに対し,加算がある世帯は9万5447円である(乙A10の12。すると,主)に60歳代の者である加算のない世帯の消費支出額が,70歳以上の者である加算のある世帯よりも少ない原因は,老齢加算の有無にあると説明することができ,前記③が特に不自然な結果であるとはいえない(む- 71 -しろ,生活保護給付額は1万2873円違うのに対し,消費支出額は2232円しか違わないことに照らすと,加算の必要性に疑問を抱かせる結果ともいえる。 。)ウ以上によれば,原告の前記各指摘を考慮しても,比較①の基礎資料の信用性には特段の問題はないというべきである。 70歳以上の者の生活扶助額と第1・5分位の生活扶助相当消費支出額の比較(比較②)等について(1)生活扶助額と所得階層別の生活扶助相当消費支出額の比較全国消費実態調査が行われた平成11年度における生活扶助額(ただし,70歳以上の者は老齢加算を除いた額)と,先に見た同調査に基づく単身無職世帯の所得階層別の生活扶助相当消費支出額を比較すると,表4のとおりとなる(乙A10の8(資料10頁。 ))(表4:生活扶助額と所得階層別の生活扶助相当消費支出額)60歳から69歳70歳以上生活扶助額加算を除く7万450 費支出額を比較すると,表4のとおりとなる(乙A10の8(資料10頁。 ))(表4:生活扶助額と所得階層別の生活扶助相当消費支出額)60歳から69歳70歳以上生活扶助額加算を除く7万4509円7万1190円()平均11万8209円10万7664円第1・5分位7万6761円6万5843円第1・10分位7万9817円6万2277円(2)検討以上によれば,70歳以上の者の生活扶助額は,老齢加算を除いても,第1・10分位の生活扶助相当消費支出額を上回っているだけでなく,第1・5分位のそれも相当額上回っていることが認められる。 保護基準は第1・10分位の消費水準に着目することが妥当であるとの考え方①によれば,70歳以上の者の老齢加算を除いた生活扶助額(基準生活費)は妥当なものであったということができ,保護基準が「最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これをこえない」ものである- 72 -ことを要することに鑑みると(法7条2項,70歳以上の者であることを)理由に基準生活費に一定額を加算することに合理性があるとは認めがたい。 よって,比較②を理由の1つとして,老齢加算を減額,廃止することに,著しく不合理な点があるとはいえない。 小括以上によれば,考え方①を前提に,比較②及び②を理由として老齢加算を廃止することに著しく不合理な点があるとは認められないから,保護基準の不利益変更に法56条にいう「正当な理由」が必要であると解されることを踏まえても,本件保護基準の改定が違憲,違法なものであるということはできない。 原告の主張に対する検討(1)特別需要の存在等についてア原告は,老齢加算は,従前,高齢者には特別な需要があるものとしてその正当性が繰り返し認められてきたこと,昭和58年意見具申の際に い。 原告の主張に対する検討(1)特別需要の存在等についてア原告は,老齢加算は,従前,高齢者には特別な需要があるものとしてその正当性が繰り返し認められてきたこと,昭和58年意見具申の際に用いられた手法によれば,本件保護基準の改定の際も,老齢加算の必要性が認められること,生活扶助における加算は,類型的にハンディキャップを有する層に対し,これに起因する需要を満たすために行われるものであり,基準生活費とは質的に異なる点を考慮すべきであることを主張する。 そこで,以下,これらの主張について検討する。 イ老齢加算が想定していた需要の内容同年10月5日の専門分科会に厚生省の事務局が提出した説明資料では,老齢加算の内容は,次のように説明された(乙A31(資料3頁。 ))「加工食品老齢化により,そしゃく力や調理能力が低下しているため,調理不要又は簡単で,食べやすいものを買う。栄養的には,非効率であり,かつ割高となる。 暖房費身体的に保温能力低下また病弱等で,在宅時間も長いため,暖房費が余分にかかる。 - 73 -保健医療健康保持あるいは病弱のため,家庭薬等が必要となる。 教養娯楽孤独を免れるため,老人クラブ,旅行,観劇等,テレビ購入等交際費孤独を免れるため,子や孫との相互訪問,近隣の老人とのつき合い,同年配者の死に伴う葬祭費,子や甥,姪等の冠婚費等のつき合い費が多く必要交通通信費老人クラブ出席,旅行,子や孫,親せき等とのつき合いに伴う割高な交通費(タクシー使用等,子や孫との通)信費(電話代,葉書代等」)ウ昭和58年意見具申における検証方法等昭和58年意見具申の際に老齢加算額の妥当性を検証するために用いられた手法は,次のとおりであった(乙A23。 )(ア)昭和54年全国消費実態調査の結果を用いて,①50歳代女性 申における検証方法等昭和58年意見具申の際に老齢加算額の妥当性を検証するために用いられた手法は,次のとおりであった(乙A23。 )(ア)昭和54年全国消費実態調査の結果を用いて,①50歳代女性と70歳から74歳の女性,②50歳代女性と75歳以上の女性につき,消費支出額を費目ごとに比較した。すると,主食,乳卵類,加工食品,果物,水道料,ガス代,保健医療,たばこ,交際費といった費目で,前者よりも後者の方が支出額が高かった。これを合計すると,①で9977円,②で1万1178円であった。 (イ)同調査結果を用いて,③一般夫婦世帯(年間収入140万円未満)と老夫婦世帯(主70歳,年間収入180万円未満,④一般夫婦世帯)(年間収入140万円未満)と老夫婦世帯(主71歳から75歳,年間収入180万円未満)につき,消費支出額を費目ごとに比較した。する,,。 と(ア)と同様一定の費目で前者よりも後者の方が支出額が高かったこれを老夫婦世帯の消費支出が一般夫婦世帯の消費支出と同額と調整し,,。 た上で合計すると③で1万1472円④で1万6005円であった(ウ)当時の老齢加算の額(1万1700円)と比べると,前記①から④- 74 -の差額は,それぞれ,85.3%,95.6%,98%,91.2%に相当した。 (エ)前記(ア)から(ウ)の結果から,専門分科会では,当時における老齢加算の額が妥当であるとされた。 なお,専門委員会で用いられた平成11年度の全国消費実態調査の特別集計を用いて,前記(ア)と同様の手法で,生活扶助相当支出額について60歳代の者より70歳以上の者の方が高額となっている費目について,その差額を集計すると,全世帯平均において9804円,第1・5分位において8180円,第1・10分位において1万3435円となる。 エ検 の者より70歳以上の者の方が高額となっている費目について,その差額を集計すると,全世帯平均において9804円,第1・5分位において8180円,第1・10分位において1万3435円となる。 エ検討(ア)老齢加算は,昭和35年に導入された後,繰り返し,高齢者の保健衛生費,光熱費,教養娯楽費,交際費等の需要に対応するものとして説(,,明されてきたことは前記認定のとおりである前記第2・1・(1) (2)(3) 。そして,昭和58年意見具申の検討の際も,前記アのとおり,)高齢者の特性に応じた支出の必要(以下,これを「特別需要」ということがある)によって,老齢加算の必要性が説明されている。これに対。 し,本件保護基準の改定の際は,高齢者にこのような特別需要があるか否かの検討がなされた事情はうかがわれない。 (イ)しかしながら,このような特別需要が存在することから,直ちに前記イのような手法で老齢加算の要否及び額を検証することが導かれるかは疑わしいものといわざるを得ない。 前記イの手法は,生活扶助相当支出額のうち,高齢者が比較対象となったよりも支出額が高い費目のみに着目し,高齢者の方が支出額が低い費目の存在を考慮していない。しかし,高齢者については,加齢に伴い支出が増大する費目がある反面,自ずから支出が減少する費目があると- 75 -も考えられる。わが国の生活扶助は原則として金銭によって行われ(法31条,現物が給付されるものではなく,その使途が特定の物に制限)されるものでもない。高齢者に前記のような特別需要があるとしても,高齢者は,加算によって給付を受けた金銭ではなく,基準生活費として給付を受けた金銭によってこれを充足することができるのであって,生活扶助における加算の要否は,本来,生活扶助に相当する費目の消費支出額の総額に着目 によって給付を受けた金銭ではなく,基準生活費として給付を受けた金銭によってこれを充足することができるのであって,生活扶助における加算の要否は,本来,生活扶助に相当する費目の消費支出額の総額に着目して比較検討するのが最も合理的だと考えられる。 (ウ)すると,前記イの手法は,少なくともこれによって加算の要否を検,,討しなければならないものということはできずこのような見地からは比較②でみたとおり,老齢加算の必要性を基礎づけることは困難であるといわざるをえない。 (エ)以上によれば,原告の前記主張及び経済学的に見て高齢者に特有の需要がある旨等のその余の特別需要の存在に関する主張を考慮しても,前記5の判断が左右されるものではない。 (2)第1類費の伸び率についてア原告は,1級地の第1類費基準額について,昭和59年と平成17年を,. ,. ,. 比較すると4歳子は123倍29歳女は129倍33歳男は124倍になっているのに対し,70歳男は1.06倍,70歳女は1.11倍に止まっていると指摘し,70歳以上の者の伸び率が低いのは,老齢加算の影響であり,低い第1類費と加算を合わせて初めて最低生活が保障されてきた旨を主張する。 イしかし,高齢者の第1類費の設定をみると,もともと,年齢区分は「60歳から64歳まで」と「65歳以上」とされていたところ,一般高齢者世帯の消費実態によれば,70歳以上の第1類費相当額の消費支出額が69歳以下のそれと比較して低いことや,第1類費基準設定の基礎となっている公衆衛生審議会の年齢別栄養所要量は,60歳代よりも70歳代の方- 76 -が低いことから,60歳代の中で区分する必要はないと考えられるように,「」,なり昭和61年度から65歳以上の額が据え置かれるようになって平成元年には 代よりも70歳代の方- 76 -が低いことから,60歳代の中で区分する必要はないと考えられるように,「」,なり昭和61年度から65歳以上の額が据え置かれるようになって平成元年には「60歳から64歳」と「65歳以上」の額が同額となったため,同年度から,年齢区分を「60歳から69歳」と「70歳以上」とするようになったことが認められる(乙A12。 )すると,前記アのような事実が認められるとしても,それは65歳以上の者の第1類費が,前記の理由によって据え置かれてきたことが強く影響しているものと推認され,老齢加算の存在によって第1類費の伸びが抑制されたという関係を認めることはできない。 よって,原告の前記主張を採用することはできない。 (3)生活扶助基準の妥当性が検証されていない等の主張について,,,ア原告は老齢加算の減額廃止の基となった中間取りまとめの段階では生活扶助費それ自体の妥当性が検証されていない旨を主張する(別紙5,第1,2,(4),カ。 )イそこで検討すると,中間取りまとめ(乙A1)では,生活扶助のうち第1類費と第2類費の設定の在り方について,①マーケットバスケット方式時の栄養所要量を基準として設定されている第1類費の年齢別格差は,概ね妥当ではあるが,年齢区分の幅を大きく取ること等について引き続き検討することが必要であること,②第2類費との対比で第1類費の割合が相対的に大きいため,多人数世帯ほど基準額が割高になることから,第2類費の構成割合を高めることや,多人数世帯の換算率の見直しが必要であること,③単身世帯については,3人世帯を基準とする基準設定では,第1類費と第2類費の割合構成について必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとはなっておらず,別途の生活扶助基準を設定することについて検討する については,3人世帯を基準とする基準設定では,第1類費と第2類費の割合構成について必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとはなっておらず,別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい旨などが指摘されているところである。そして,これらの点については,専門委員会の最終的な報告書(甲A9)にお- 77 -いても,見直しを検討する必要があるとされている。 (,),ウ70歳以上の者の第1類費は成人の中で最も低額であり乙A3 平成15年3月時点で高齢者被保護世帯の87.6%が単身世帯であったこと(乙A10の2(資料2・16頁)に照らすと,前記①から③で指)摘された問題点は,老齢加算が主な対象としていた単身高齢者世帯の生活扶助費について,特に当てはまるものといえる。後に見る,専門委員会における審議経過及び中間取りまとめの表現にも照らすと,平成15年12月の中間取りまとめにおいて前記のような指摘があった中で老齢加算を減額するには,基準生活費の見直しを併せて行うことが望ましかったということはできる。 エしかし,既に比較②で見たとおり(前記4,平成11年全国消費実態)調査に基づく特別集計によれば,70歳以上の者の生活扶助基準額(7万1190円)は,第1・5分位の生活扶助相当消費支出額(6万5843円)を上回っていたことを考慮すると(前記表4,上のような問題点が)あったとしても,本件保護基準の改定の際,70歳以上の者の生活扶助費が,一般に最低生活を下回るものであったと認めるには足りない。平成16年12月に発表された専門委員会の報告書(甲A9)でも,当時の生活扶助基準は,前記のような検討を必要とする点はあるにせよ,基本的に妥当であったとされており,少なくとも高齢単身者世帯の基準生活費が最低生活の水準を下回っ 専門委員会の報告書(甲A9)でも,当時の生活扶助基準は,前記のような検討を必要とする点はあるにせよ,基本的に妥当であったとされており,少なくとも高齢単身者世帯の基準生活費が最低生活の水準を下回っており改善すべきであるとの認識は示されていない。 また,年代別の消費支出額の違いに着目した比較①については,単身高齢者世帯の基準生活費の当否にかかわらず,当てはまるものである。 オこのような点に鑑みると,原告の前記主張を考慮しても,厚生労働大臣が,単身高齢者世帯の基準生活費を見直すことなく,老齢加算を減額,廃止したことが著しく合理性を欠き違法であるとまではいえない。 (4)専門委員会の議論の過程等について- 78 -原告は,そもそも専門委員会は老齢加算を廃止するという結論のもとで設置されたものであり,その議論は不十分である上,中間取りまとめは議論の内容を十分に集約したものではない旨を主張する。 ア専門委員会における議論が不十分である等の点についてそこで検討すると,前記認定事実(前記第1・2・(1))のとおり,第,,1回専門委員会が行われた平成15年8月6日に先だって同年6月9日財政制度等審議会財政制度分科会が老齢加算は廃止に向けた検討が必要であると提言し,同月27日の閣議決定において,老齢加算を含めた扶助基準の見直しが必要である旨が述べられた等の経緯が認められる。これらの提言等の内容は第1回専門委員会において資料として配付されており乙,(A10の2(資料2・7頁及び8頁,専門委員会の委員はこうした提))言等の存在を念頭においていたことがうかがわれる。 ,(,,,,,)もっとも専門委員会の議事録乙A10の1 を見ると,各委員は,それぞれの専門分野や見識に応じて発言を行い,活発に議論が行われ がうかがわれる。 ,(,,,,,)もっとも専門委員会の議事録乙A10の1 を見ると,各委員は,それぞれの専門分野や見識に応じて発言を行い,活発に議論が行われたものと認めることができる。専門委員会では,原告も指摘するように,老齢加算の減額,廃止に消極的な意見も出されており,各委員が前記提言等の内容に沿って発言したとはいえない。また,厚生労働省の職員が,資料説明や制度説明のほか,積極的に発言をした様子もうかがわれず,一定の結論に導こうとしたとも認められない。 そして,このような議論の状況,提出された資料の内容及び専門委員会の開催回数,開催時間,構成人員に照らすと(乙A10,専門委員会に)おける議論が不十分であったということはできない。 イ中間取りまとめの内容について(ア)次に,専門委員会の審議経過と中間取りまとめの関係について見ると,専門委員会において老齢加算について議論されたのは,主に第4回から第6回であり,第4回及び第5回の際,各委員からは,老齢加算の- 79 -存続に消極的な意見が出された一方で(P44委員発言(乙A10の7(4頁,P45委員発言(乙A10の9(4頁,P46委員発言))))(乙A10の9(11頁,老齢加算を存続すべきであることを直接)))的に主張する意見は見当たらないものの,老齢加算については高齢者世帯・単身者世帯の基準をどのように考えるかという視点で考えるべきであるとの指摘(P47委員発言(乙A10の9(2頁,第1類費・))第2類費の考え方と整合性を図る必要がある旨の指摘(P48委員長発言(乙A10の7(9頁)等)が出された。 )これを受けて,平成15年12月2日に行われた第6回では「消費支出額全体でみた場合には,70歳以上の高齢者について,現行 ある旨の指摘(P48委員長発言(乙A10の7(9頁)等)が出された。 )これを受けて,平成15年12月2日に行われた第6回では「消費支出額全体でみた場合には,70歳以上の高齢者について,現行の老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められないため,廃止の方向で見直すべきである。また,見直しに当たっては,次の点について考慮すべきとの意見があった。 ・高齢者世帯の社会的費用については一定の需要があると認められるので,生活保護基準の体系の中でその点に配慮すること,・年金受給者と非受給者とを区別して取り扱うことについて検討すること,・被保護世帯の生活水準が急に低下することのないよう,激変緩和の措置を講じるべきこと」という内容の「中間取りまとめ(案」が資料として提出された。 )これに対し,委員から,老齢加算の廃止を明言するのであれば,そこから生ずる問題を議論すべきである旨の意見(P49委員(乙A10の11(10頁)や,高齢者の社会的費用には一定の需要があり,生活)(((),保護体系の中で見直すべきである旨の意見P50委員同12頁P47委員(同(12頁)などが出された。これらの発言を受けて,)会議の終盤,P48委員長は「先ほどの老齢加算を含めて修正をしまし- 80 -,,,て一度委員の先生方にはごらんいただいた上で確認していただいてそれをもって中間とりまとめとさせていただくということでよろしゅうございますか」と発言し(同(17頁,同日の会議が終了した。 。 ))その後,同月6日付けで,前記第2,2,(2),イの内容の中間取りまとめ(乙A1)が発表された。 平成16年1月27日,第7回の会議が行われ,その冒頭で中間取りまとめについて報告されたが,委員から,特段,異議は出されなかった(甲A23。 )(イ 内容の中間取りまとめ(乙A1)が発表された。 平成16年1月27日,第7回の会議が行われ,その冒頭で中間取りまとめについて報告されたが,委員から,特段,異議は出されなかった(甲A23。 )(イ)以上のような審議経過に照らすと,中間取りまとめは,専門委員会における議論の内容を踏まえ,各委員の了承のもとに発表されたものということができ,これが専門委員会の意見を集約したものではないとは評価できない。 専門委員会において,老齢加算の廃止に対して慎重な意見等が出されていたことは確かであるが「廃止の方向で見直すべきである」という,ことについては大方の合意が得られたというべきであり,これらの慎重意見等は後にみるただし書に反映されたとみることができる。 ウ以上によれば,専門委員会の議論に関する原告の前記主張を採用することはできない。 (5)本件保護基準の改定が中間とりまとめに反するとの主張について原告は,厚生労働大臣による本件保護基準の改定は,老齢加算の廃止について代替措置をとることや激変緩和措置をとることを求めた中間取りまとめの内容に反すると主張する。 ア代替措置が執られていないとの主張について(ア)原告は,中間取りまとめでは,老齢加算の廃止に当たっては代替措置を執ることが求められていた旨を主張する。そして,中間取りまとめでは,老齢「加算そのものについては廃止の方向で見直すべきである」- 81 -という部分(以下「本論部分」という)に続いて「ただし,高齢者。 ,世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要があ。」(「」。)()。 る以下ただし書というとの文言が付加されている乙A1,,,(イ)そこで検討すると既にみたとおり老齢 低生活水準が維持されるよう引き続き検討する必要があ。」(「」。)()。 る以下ただし書というとの文言が付加されている乙A1,,,(イ)そこで検討すると既にみたとおり老齢加算の廃止に当たっては本来,基準生活費のうち,特に単身高齢者世帯に影響の大きい問題点に,,「」ついて併せて検討を行うことが望ましかったといえ加算そのものは廃止の方向で見直すべきであるとした本論部分の表現や「生活保護,基準の体系の中で」高齢者世帯の最低生活を保障すべき旨のただし書の内容も,これを裏付けるものといえる。しかし,この点を考慮しても,厚生労働大臣が,単身高齢者世帯の基準生活費を見直すことなく,老齢加算を減額,廃止したことが著しく合理性を欠き違法であるということまではできないのは,前記((3)エ)のとおりである。 また,専門委員会の審議内容(乙A10)を見ると,老齢加算を廃止する際に一定の代替措置をとるべきであるとの考えをもっていた委員がいたことはうかがわれるが,これを老齢加算を廃止,減額する際の必要条件とするとの合意が委員間で形成されたとみることはできない。 そして,ただし書は,生活保護基準の体系の見直しについて「引き続き検討する必要がある」という表現を用いており,中間とりまとめの。 提言に沿って老齢加算を減額,廃止する際に,何らかの代替措置をとることが必須の条件とされたと読むことまではできない。 ,,(ウ)すると中間取りまとめにおける前記ただし書の存在を考慮しても本件保護基準の改定が違法であるということはできない。 イ激変緩和措置が不十分であるとの点についてなお,原告は,中間取りまとめでは「また,被保護世帯の生活水準が,急に低下することのないよう,激変緩和の措置を講じるべきである」と。 - 82 -提言されて 緩和措置が不十分であるとの点についてなお,原告は,中間取りまとめでは「また,被保護世帯の生活水準が,急に低下することのないよう,激変緩和の措置を講じるべきである」と。 - 82 -提言されているところ,これは一時扶助等の形で特別需要に応えることを意味するものであり,3年間にわたり段階的に廃止するということを意味するものではなかった旨を主張する。 しかし,専門委員会の審議内容(乙A10(特に乙A10の11)を)見ても,中間取りまとめにおける「激変緩和の措置」として,原告の主張するような合意が委員間で形成されたとは認められない「激変緩和」と。 いう表現からしても,3年間にわたって段階的に老齢加算を減額し,これを廃止した厚生労働大臣の措置が,中間取りまとめの趣旨に反するものとは認められない。 ウ以上によれば,原告の前記主張を考慮しても,前記5の判断が左右されるものではない。 (6)老齢加算の廃止によって家計の弾力性が失われたとの主張についてア原告は,第6回専門委員会に提出された被保護高齢単身世帯の家計状況,,に関する資料によれば70歳以上の者の加算を除く収入と支出の差額は60歳代の者のそれよりも少なく,老齢加算が減額,廃止されたことによって,加算が想定していたような,突然の支出や季節・時期によって必要となる費用を支出することが困難となり,家計の弾力性が失われた旨を主張する。 イそこで,第6回専門委員会に提出された被保護高齢単身世帯の収入額と支出額に関する説明資料について,加算なし世帯(主に60歳代の者)と(),加算あり世帯主に70歳以上の者の実収入額と実支出額を比較すると次のとおりである(乙A10の12(説明資料3,4頁。 ))(表5:被保護者高齢単身世帯の家計調査結果)()()加算なし主に60歳代 主に70歳以上の者の実収入額と実支出額を比較すると次のとおりである(乙A10の12(説明資料3,4頁。 ))(表5:被保護者高齢単身世帯の家計調査結果)()()加算なし主に60歳代加算あり主に70歳以上実収入11万2469円12万3571円実支出9万9524円10万1613円- 83 -差額1万2945円2万1958円これによれば確かに加算あり世帯の差額は加算なし世帯の差,,「」,「額」よりも9013円高い。なお,この当時における老齢加算はおよそ1万6922円であった(乙A10の12(同2頁。 ))ウそこで検討すると,前記イの結果は,平成11年度の被保護者生活実態調査に基づくものであるところ,同調査は,全国560の被保護者世帯を対象として,平成11年4月1日から平成12年3月31日までの間,調査員が世帯員と面接して記入する世帯票(世帯員の構成,住居の種類,保護の内容等が記載されている)と世帯員が自ら記入する家計簿を集計す。 る方法によって行われたものである(乙A15の2。原告の主張するよ)うに,ある被保護者世帯における1か月間の家計を調査して,実収入と実支出に差額があったとしても,不必要な保護が実施されたことを直ちに示すものとはいえず,家財道具の買換えや冠婚葬祭費等の一時的・臨時的な多額の支出に将来充てられることが想定されているものとみることができる。しかし,前記結果の資料となった被保護者生活実態調査は,560世帯を対象とし,1年間にわたり,家計簿を記入させる方法により行われたものであることを考慮すると,一時的・臨時的な多額の支出も,その実支出額に反映されていると考えるのが自然である。 エ後にみるとおり,原告の生活実態,特に家計の状況をみると,老齢加算の減額,廃止によ ものであることを考慮すると,一時的・臨時的な多額の支出も,その実支出額に反映されていると考えるのが自然である。 エ後にみるとおり,原告の生活実態,特に家計の状況をみると,老齢加算の減額,廃止によって,家財道具の買換えや冠婚葬祭費などの大きな支出,,をすることが以前よりも困難となったことがうかがわれ老齢加算の減額廃止によって家計の円滑さ・弾力性が失われたという原告の主張は理解で。 ,,,きるしかし前記調査結果に基づけば老齢加算が廃止されたとしても加算あり世帯における収入と支出の差額がマイナスとなるわけではなく,70歳代の生活扶助相当消費支出額は60歳代のそれよりも一般に低いこと(比較②)も併せ考慮すると,原告の主張を踏まえても,本件保護基準- 84 -の改定によって老齢加算を減額,廃止したことが,現実の生活条件を無視して著しく低い保護基準を定めたことになるとまではいいがたい。 オ以上によれば,原告の前記主張を採用することはできない。 本項の結論以上によれば,原告の主張を考慮しても,前記5の判断が左右されるものとはいえず,本件保護基準の改定が違憲,違法なものであるということはできない。 第4原告らの生活状況等についての検討 原告らの生活状況等と本件処分の適法性の関係前示のとおり,厚生労働大臣による本件保護基準の改定が,法56条等に反し違法となるものではないとしても,老齢加算の減額,廃止後に原告らに対し実際に実施された保護が,その生活状況等に照らし,現実の生活条件を無視した著しく低いものである場合には,当該保護が,その限度で法3条等に反し,違法となることを免れないと考えられる。そこで,原告らの生活状況等について検討を加えることにする。 原告らの一般的な生活状況原告の提出した書証(甲B1から12(枝番を含む 限度で法3条等に反し,違法となることを免れないと考えられる。そこで,原告らの生活状況等について検討を加えることにする。 原告らの一般的な生活状況原告の提出した書証(甲B1から12(枝番を含む)等に基づき,原告。)らの一般的な生活状況を概観すると,次のとおりである。 (1)住居原告らのアンケート(甲B2,以下「第1アンケート」という)に対す。 る回答結果によれば,同アンケートに回答した原告ら(35名)の多くは,市営住宅,アパート,長屋といった集合住宅に居住しており,10名が一軒家で生活をしている。第1アンケートに回答した原告らのほとんどが,隣室からの騒音,すきま風,雨漏り,湿気が多い又は害虫が出るといったいずれかの悩みを訴えている。 (2)食事- 85 -原告らのアンケート(甲B3,以下「第2アンケート」という)に対す。 る回答結果によれば,同アンケートに回答した原告ら(39名)は,概ね1日3回の食事を摂っているが,1日2回以下の者も8名いる。同アンケートに回答した原告らの多くが,自炊するか,ご飯のみ炊いておかずを購入するなどして食事を摂っているが,コンビニエンスストアで弁当を購入するなどして食事を摂っている者もいる。 (3)衣類第1アンケートに対する回答結果によれば,同アンケートに回答した原告らのうち,1年内に下着以外の衣類・靴を購入したことがある者は10名であり,残りの者はこれを購入しておらず,親戚や知人等からもらっていると回答している者が相当数見られる。衣類(下着等を含む)が買えなくて困。 っている旨を回答した者は12名である。 (4)電化製品第2アンケートに対する回答結果(甲B3)によれば,主な電化製品の保有状況等は次のとおりである。 ア冷蔵庫1人を除いて全員が保有しており,その1名は必要がないと回答 2名である。 (4)電化製品第2アンケートに対する回答結果(甲B3)によれば,主な電化製品の保有状況等は次のとおりである。 ア冷蔵庫1人を除いて全員が保有しており,その1名は必要がないと回答している。 イ洗濯機3人を除いて全員が保有しており,その3名は必要がないと回答している。 ウ暖房器具(電気ヒーター,石油ストーブ,ガスストーブ,こたつ,ホットカーペット)1名を除いて全員がこれらのいずれかを保有し,その者は欲しいけれども買えない旨を回答している。 エテレビ- 86 -2名を除いて全員が保有しており,その2名は必要がないと回答している。 オクーラー,エアコン第2アンケートに回答した者のうち,これらのいずれかを保有している者が23名,保有していない者が16名である。保有している者には,古いため買い換えたいと回答したり,電気代を節約するために使用していないと回答している者が見られる。また,保有していない者のうち,欲しいけれども買えない旨を回答した者が11名であり,必要ないと回答した者が5名である。 カ買換えの希望,,,,上記の冷蔵庫洗濯機暖房器具テレビ等を保有している者の中には古いため買い換えたいと回答する者が相当数見られ,第2アンケートに回答した原告らのほとんどが,何らかの電化製品について,買換えの希望を持っている。 (5)入浴第1アンケートに対する回答結果(甲B2)によれば,同アンケートに回答した原告らの多くが,夏には毎日入浴したいと希望しているが,実際の入浴回数は週0回から3回の者がほとんどであり(回答のあった32名中29名,希望する回数だけ入浴している者は,32名中3名である。 )(6)社会的活動ア外出第2アンケートに対する回答結果(甲B3)によれば,同アンケートに回答した原告 (回答のあった32名中29名,希望する回数だけ入浴している者は,32名中3名である。 )(6)社会的活動ア外出第2アンケートに対する回答結果(甲B3)によれば,同アンケートに回答した原告らの多くが,少なくとも週に数回は,買い物や散歩のため,定期的に外出している。他方,週に1回かそれ以下の頻度でしか外出しない者も,数名見られる。 イ交際等- 87 -第1アンケートに対する回答結果(甲B2)によれば,親族や友人との間で電話や手紙による交流があると回答した者が20名であり,交流がないと回答した者が14名である。自分が里帰りをし,子や孫が自分の家に里帰りをし,又は墓参をすると回答した者は23名であり,しないと回答した者が11名である。親族や知人の冠婚葬祭については,出席すると回答した者が21名,欠席すると回答した者が13名であり,そのうち欠席の理由としてお金がかかることと回答した者は1名である。 ウ旅行第1アンケートに対する回答結果(甲B2)によれば,同アンケートに回答した原告らのうち,旅行に行くと答えた者は6名であり,28名が行かないと回答している。そのうち,お金がないため行けない旨を回答したのは,約6名である。 (7)収支第1アンケートに対する回答結果(甲B2)では,収支の欄が必ずしも十分に記載されていない者が多いが,ある程度詳細に記載している者の1か月の収支は次のとおりである。 (表6:第1アンケートに対する回答結果に基づく収支の状況)甲B号証B2-11B2-12B2-14B2-15B2-16B2-18B2-19氏名P4P5P7P8P36P10P11収入1345509458310917010060098500102600149050支出家賃2640022000 氏名P4P5P7P8P36P10P11収入1345509458310917010060098500102600149050支出家賃26400220003100028000260003000043000食費76050443004009042000200002400048000電気代3500300025003400 28063833ガス代30002300170043404191水道代1000021003500260016801638電話代3000300055523116- 88 -新聞代5550 3700715041004770交通費30001500150034406600交際費 23002200130018001500015000娯楽費 10000427006000日用雑貨代2532健康食品等3150その他100001000056001000支出合計13530092000957709000098500102600130148()甲B号証B2-20B2-21B2-22B2-23B2-27B2-30B2-32氏名P12P13P14P15P38P20P22収入8330075100104100104100113020103500104100支出家賃107002500330003400093003000035000食費21281309363897022430400005760022500電気代407831173683 50725000ガス代5558 3000035000食費21281309363897022430400005760022500電気代407831173683 50725000ガス代55582220549012934391250020000水道代10501638 4297 電話代 331621323630251124002000新聞代 26003440350028003000交通費41806080830070961000交際費30001600291834200娯楽費1000日用雑貨代18743000200033002000健康食品等その他228012609152008375600015500支出合計52225710169599411798484946108000101000()- 89 -ただし,原告P4の水道代1000円は電話,ガス,水道代を,原告P23のガス代2万円は電気,ガス,水道代をいずれもまとめて1つの欄に記入したと思われる。 原告らの健康状態等(1)高齢者の医学的特徴等(,,,(「」。)) 証拠 甲A46 証人P51以下P51医師ともいうによれば,医学的見地から見た高齢者の特徴等は,次のとおりである。 ア高齢者の医学的特徴として,多病性と中途障害者性がある。 多病性とは,加齢に伴い,一人が複数の疾患を有するようになることである。高齢者は,老化に伴い,高血圧症,糖尿病や骨粗しょう症といった慢性疾患を,付加的に有するようになり,多病性を有する。 中途障害者性とは,これらの疾患の影響などにより,高齢者が,日常的な生活動作をすることが困難となることをいう。 症,糖尿病や骨粗しょう症といった慢性疾患を,付加的に有するようになり,多病性を有する。 中途障害者性とは,これらの疾患の影響などにより,高齢者が,日常的な生活動作をすることが困難となることをいう。日常生活動作は,食事関連動作,排泄関連動作,更衣・整容関連動作,入浴関連動作に分けることができ,後者になるほど複雑であり,難しい動作だとされている。 (以上につき,証人P51・7から18項)イ個々の高齢者につき,多病性や中途高齢者性がどのように現実化するかは,人によって様々であるが,平成14(2002)年に,世界保健機関(WHO)が発表した日本人の健康寿命(心身共に自立した活動的状態で生存できる期間)は,男女平均が73.6歳,男性が71.4歳,女性が75.8歳であった。統計的には,健康寿命から平均寿命までの間は,複数の疾患や日常生活動作に障害を持ちながら生活をすることになると考えることが可能である。 (以上につき,甲A39,46,証人P51・20から25項)(2)原告らの健康状態,生活状態等ア原告らは,いずれも,○,○,○,○,○,○といった慢性疾患に罹患- 90 -し,又は罹患したことがある。第2アンケートに回答した原告らのほぼ全員が少なくとも月1回以上の頻度で定期的に病院に通院している甲,,。(A50,甲B1から3)イP51医師の調査等によれば,原告らの健康状態及び生活状態等は,次のとおりである(甲A39・11頁及び12頁,甲B3。 )(ア)原告らの平均年齢は,78.9歳である。 (イ)第2アンケートに回答した原告のうち,介護保険の申請をしていない者が25名,申請中の者が1名,要支援1の者が3名,要支援2の者が2名,要支援1又は2の者が1名,要介護1の者が2名,要介護2の,,,者が2名要介護4の者が1名 ち,介護保険の申請をしていない者が25名,申請中の者が1名,要支援1の者が3名,要支援2の者が2名,要支援1又は2の者が1名,要介護1の者が2名,要介護2の,,,者が2名要介護4の者が1名要介護であるが程度が不明な者が1名申請の有無及び結果等が不明な者が1名である。 (ウ)P51医師によれば,原告らについて,介護保険制度における要介護,要支援の認定の際に行われる日常生活自立度を判定すると,自立又はJ1の者が24名,J2の者が11名,A1の者が1名,B2の者が1名であり,自立又はJ1の者のうち18名,J2の者のうち6名が,要介護や要支援の認定を受けていない。 個別原告の生活状況次に,本人尋問を行い,ある程度詳細にその生活状況を把握することのできる原告らの生活状況を見ると,次のとおりである。 (1)原告P15についてア原告P15は,昭和▲年▲月▲日に生まれ,73歳ころまで働いた後,平成12年11月ころから,生活保護を受給するようになった。現在はアパートで1人暮らしをしており,長男が東京都に,次男が福岡市に住んでいる。電化製品は,冷蔵庫,電子レンジ,炊飯器,洗濯機,クーラー,こたつ,石油ストーブ,テレビ等を保有しているが,テレビが古くなっているため,買換えを希望している。毎日の食事は,主に総菜を購入して,2- 91 -回に分けて食べている。○,○,○等の持病があり,バスに乗って,4つの病院に定期的に通院しており,そのうち整形外科には月に14回通院している。 1か月の家計は,前記表6のとおりである。交際費として2万9183円が計上されているところ,これには,原告P15が檀家である寺への毎月6000円の支払と,当該アンケートを記入した月に支出した長男の妻の法事代が含まれている。法事にかかる費用は1回に約2万円である。 (以 上されているところ,これには,原告P15が檀家である寺への毎月6000円の支払と,当該アンケートを記入した月に支出した長男の妻の法事代が含まれている。法事にかかる費用は1回に約2万円である。 (以上につき,甲B2の23,3の26,4の26,5の26,原告P15)イ原告P15は,老齢加算があったときに比べて,今は,衣類や食材を買うことができなくなったと感じている。老齢加算が廃止された後に節約す,,,,,,るようになったものとして電気代水道代ガス代たばこ代食事代衣類代,交際費を挙げており,具体的には,入浴の回数を減らしたり,洋服の購入を我慢したり,1日に喫うたばこの本数を減らすなどしている。 また,自宅の回りが坂道となっているところ,心臓に持病があるため,病院への通院時や買い物の時に,タクシーを使いたいと思う時があるが,お金がかかるため我慢している(以上につき,原告P15)。 (2)原告P39についてア原告P39は,昭和▲年▲月▲日に生まれた。働きながら高校を卒業した後,パチンコ店の従業員や,工場内の設備の補修,清掃等の仕事等をしていたが,67歳ころから仕事を得るのが難しくなり,平成14年から生活保護を受給するようになった。現在,つきあいのある親戚等はおらず,貸間で一人暮らしをしている。電化製品は,冷蔵庫,炊飯器,扇風機,こたつ,テレビ等を保有している。洗濯機は置く場所がないため持っておらず,コインランドリーを利用している。食事は,1日3食摂っており,朝はご飯とみそ汁と卵,昼は小さなパン,夜は肉じゃがやカレーなどを作っ- 92 -て食べることが多い。○の持病があり,病院に週1回,徒歩で通院している。自宅に風呂がないため,週に2,3回,銭湯に行き,入浴している。 (以上につき,甲B2の28,3の31,4の31 っ- 92 -て食べることが多い。○の持病があり,病院に週1回,徒歩で通院している。自宅に風呂がないため,週に2,3回,銭湯に行き,入浴している。 (以上につき,甲B2の28,3の31,4の31,原告P39)イ1か月の家計につき,第1アンケートに対する原告P39の回答は次のとおりである(甲B2の28。 )収入10万2550円支出家賃3万0000円食費3万0232円電気代1800円ガス代350円水道代2000円新聞代2900円交通費3000円娯楽費2万0000円日用雑貨代400円その他2300円(合計)9万2982円ただし,同回答欄には,食費は3万5000円くらいであること,被服費が1500円であること,理容費が2800円であること,入浴が4940円であることの付記があるが(甲B2の28・16頁,これがどの)程度上記アンケートの記載に反映されているのかは判然としない(原告P39・187から231項。また,原告P39によれば,このアンケー)トには毎週1本程度の焼酎代が反映されていない可能性があるほか(原告P39・116から119項,娯楽費の中には,原告P39が加入して)いる会の行事として参加した旅行代1万2000円が含まれている(原告P39・154から158項。 )- 93 -ウ原告P39は,節約のため,電気ヒーターの使用を控えたり,洋服の購入を我慢したり,銭湯に行く回数を減らしたり,おかずの品数を減らすなどしている(原告P39。 )(3)原告P20についてア原告P20は,大正▲年▲月▲日に熊本県で生まれた。15歳で学校を卒業し,三重県,熊本県,大阪府で働くなどした後,昭和18年にP52の工員であった夫と結婚し,2人の子をもうけた。昭和34年,手術を要する病気を患い,そ 年▲月▲日に熊本県で生まれた。15歳で学校を卒業し,三重県,熊本県,大阪府で働くなどした後,昭和18年にP52の工員であった夫と結婚し,2人の子をもうけた。昭和34年,手術を要する病気を患い,その治療費に困ったことから,生活保護を受給するようになった。現在は,一軒家(借家)に一人暮らしをしている。自宅は築50年程度経過しており,自宅に風呂はあるものの,使い勝手が悪く一回玄関から外に出る必要がある。電化製品は,冷蔵庫,炊飯器,ポット,洗濯機,扇風機,こたつ,ホットカーペット,テレビ等を保有しているが,冷,,,。 ,蔵庫洗濯機テレビが老朽化しており買換えを希望している食事は毎日3回,自分で作って食べており,近所の者から野菜やおかずをもらうこともある。○の持病があり,月に2回,徒歩で病院に通院しており,要支援1の認定を受けて,週2回,ヘルパーが来宅して,掃除や買い物のサービスを受けている。 。 ()1か月の家計は前記表6のとおりであるただし食費5万7600円,,,は弁当の宅配を受けていたときのものであるが同アンケートに記入後要支援1の認定を受け,弁当の宅配を受けないようになった。 (以上につき,甲B2の30,3の33,4の33,5の33,原告P20)イ原告P20は,老齢加算が減額,廃止された後,食費や交際費をなるべく減らすようにしているほか,電球代や電気代が高いため,電灯の使用を控えるなどしている。老齢加算廃止の前後で,大きな変化は感じていないが,お金が足りない時に,加算があった時は良かったと感じている。お金- 94 -があれば,タクシーでスーパーなどに行って,自分で買い物をしたり,刺身を買って食べたりしたいと考えているほか,身近な人が亡くなったときに香典を出したり,自分の葬式代を準備したいと希望している( -があれば,タクシーでスーパーなどに行って,自分で買い物をしたり,刺身を買って食べたりしたいと考えているほか,身近な人が亡くなったときに香典を出したり,自分の葬式代を準備したいと希望している(以上に。 つき,甲B4の33,原告P20)(4)原告P13について,。 ,ア原告P13は昭和▲年▲月▲日に生まれた長男及び長女を育てた後体調が悪化して仕事を続けることができなくなったため,平成4年から生活保護を受給するようになった。長男とは交流がないが,長女が同じ北九州市αに在住し,日常生活の手助けを受けることがある。また,要支援2の認定を受け,週に1回訪問介護を受け,週に2回デイケアを利用してい。 ,。 ,る現在は築60年近くの一軒家で一人暮らしをしている電化製品は冷蔵庫,電子レンジ,洗濯機,エアコン,石油ストーブ,こたつ,テレビ等を保有しているが,洗濯機は脱水槽が壊れて使いにくくなっており,掃除機も古いものであるため,買換えを希望している。食事は自炊しているが,デイケアの際は,昼食を外で食べている。原告P13には,○,○,○などの持病があり,平成19年にも手術を受けた。 1か月の家計の状況は前記表6のとおりである。ただし,数か月ごとに買う米代など,算入されていない支出もある。 (以上につき,原告P13,甲B2の21,3の24,4の24,5の24)イ原告P13は,節約のため,クーラーや暖房の使用をできる限り控えているほか,バスの利用を控えるなどしている。自宅が老朽化し,家が傾いていてすきま風が入るなどしているため,市営住宅への入居を希望しているが,現在まで入居できていない。お金があれば,古くなった洗濯機や掃除機を買い換えたり,刺身や甘い物を食べたり,自分の葬儀費用に充てたいと考えている(以上につき,原告P13)。 の入居を希望しているが,現在まで入居できていない。お金があれば,古くなった洗濯機や掃除機を買い換えたり,刺身や甘い物を食べたり,自分の葬儀費用に充てたいと考えている(以上につき,原告P13)。 - 95 - 原告らの生活状況等に対する検討以上で見た原告らの生活状況を踏まえ,原告らに対する保護が,現実の生活条件を無視した著しく低いものであり,その生活が,健康で文化的な水準を下回っているか否かを検討する。 (1)アまず,住居及び食事等の基本的な生活条件について,個々の原告らの暮らしぶりを見ると,快適で安全な住居に住んでいるとはいい難い者もいるし,食事についても,食べたいと思う食材の購入や外食等が制約されている状況にあることがうかがわれる。 しかし,住居については,雨漏りなど住居の基本的な機能に支障がある者は一部であって,住宅扶助申請をするなりして対応すべき個人的事情と,,()いうべきであるし食事についてもその回数や第1アンケート甲B2の回答からうかがわれる内容が,一般的な高齢者と比べて特に劣っているということまではできず,原告らの状況を全般的に見ると,その基本的な生活条件が,健康で文化的な生活水準を下回っているということまではできない。 イ電化製品等の保有状況や使用状況については,必ずしも全ての原告らが,,希望するとおりの電化製品を保有し使用している状況であるとはいえずまた,原告らの多くが,老朽化等のため,その買換えを希望しているところ,第1アンケートからうかがわれる家計の状況に照らすと,一度に高額な支出をすることが困難な状況にあることを見て取ることができる。 ,(),他方既にみた原告らのこれらの保有状況等前記2(4)に照らすと原告らのほとんどが,テレビ,冷蔵庫,洗濯機,暖房器具といった電化製品 困難な状況にあることを見て取ることができる。 ,(),他方既にみた原告らのこれらの保有状況等前記2(4)に照らすと原告らのほとんどが,テレビ,冷蔵庫,洗濯機,暖房器具といった電化製品等を現に保有し,クーラーやエアコンについても,半数を超える者が保有していることが認められる。老齢加算の減額,廃止によって,高額な電化製品の買換えが困難となり,原告らが不自由な思いをしていることは理解できるところであるが,原告らの電化製品の保有状況や使用状況が,健- 96 -康で文化的な生活水準を下回っていることを示すものとみることはできない。 ウ入浴について,原告らの多くが希望する頻度で入浴することができておらず,節約のために入浴回数や風呂の水を換える回数を減らしている者がいることは,前記(2(5))のとおりである。 他方で,原告らが高齢者であることを考慮すると,そのうちどの程度の者が,家計上の都合から入浴することができない状況にあるのかは明らかでないし,希望する回数だけ入浴をしたときに家計にどの程度の影響が及ぶのかも明らかとはいえない。 すると,このことから,原告らの生活が健康で文化的な生活水準を下回っているということはできない。 (2)アもっとも,憲法や生活保護法が定める健康で文化的な生活水準は,肉体的生存を維持することができることを意味するものではなく,親類や友人との交際,読書,テレビや映画の視聴といった文化的,社会的活動を一定程度行うことが可能なものであると考えられる。 イここで,第1アンケートからうかがわれる原告らの家計について検討すると(甲B2,表6,収入を上回る支出を余儀なくされている者がいる)反面,収入額が支出額を1万円余り上回っている者も相当数存在するという状況であることがうかがわれる。また,第1アンケートの家計欄に ると(甲B2,表6,収入を上回る支出を余儀なくされている者がいる)反面,収入額が支出額を1万円余り上回っている者も相当数存在するという状況であることがうかがわれる。また,第1アンケートの家計欄につい,,,ては家賃食費や光熱費欄等が空欄となっている者が相当数見られるがこのような者について,その通常想定される額を考慮しても,収入額が支出額を相当程度上回っている者がいることも推認され,少なくとも同アンケートに記入した者の結果をまとめた表6から看取される傾向と大きな違いがあるとは考えがたい。そしてこのことは,被保護者生活実態調査に基づく集計結果である表5(乙A10の12(資料3・4頁)から推認さ)れる状況とも特に矛盾しない。 - 97 -なお,表6記載の原告らの中には,収入を上回る支出を余儀なくされている者がいるが,このうちある程度具体的に生活状況を把握できる原告について見ると,原告P15は法事のため普段よりも支出額が多い月であったことが認められ(前記4(1)ア,原告P20は現在の生活とは食費が)異なっていることが認められる(前記4(2)ア。 )このように,原告らの家計を全体として見ると,世帯や時期によって差はあるものの,収入額が支出額をある程度上回っている状況にあると考えられる。 他方で,こうした収支の結果は,原告らが我慢と節約を重ねた結果であって第1アンケートの回答甲B2原告らの本人尋問及び陳述書甲,(),(B4)によれば,原告らの多くは,食費,電灯の使用,風呂の使用,冷暖房の使用,バスの利用といった日常生活の様々な場面で,倹約を続けていることが認められる。また,毎月における収入と支出の差額は,将来における家財道具の買換え等の一時的・臨時的な多額の支出に充てられるものであることにも留意する必要があり,収入 な場面で,倹約を続けていることが認められる。また,毎月における収入と支出の差額は,将来における家財道具の買換え等の一時的・臨時的な多額の支出に充てられるものであることにも留意する必要があり,収入と支出の間に差額があるからといって,原告らの家計に余裕があると直ちに評価することができるものではない(なお,生活保護法は,保護金品等を一定の期間内に使い切ることまでを要求するものではない(最高裁判所第三小法廷平成16年3月16日判決・民集58巻3号647頁参照。 )。)ウこのような点を踏まえて,文化的,社会的活動という見地から,原告らの供述及び陳述書(甲B4)を検討すると,多くの原告らが,冠婚葬祭時の祝儀・香典代や法事代などの交際費の支出が困難なため,これらに参加することができなかったり,特に親しい者のときにしか参加することができず,肩身が狭い思いや心が痛む思いをしている旨を訴えている。 例えば葬儀に参列する際に香典を出すなど,冠婚葬祭の際に一定額を負担することは,社会通念上避けられないものといえるところ,第1アンケ- 98 -ート(甲B2)からうかがわれる前示の家計の状況に照らすと,祝儀や香典として,臨時に多額の支出をすることは,必ずしも容易とはいえない状況にある。 また,旅行についても,第2アンケートに対し,お金がないため行くことができないと回答した者が6名いる(甲B3。 )エしかしながら,他方で,原告らの多くは,テレビを保有し,新聞を購読しているほか(甲B2,3,ジョギングや散歩,カラオケ,釣り,友人)との会話,読書などの趣味を有している者も多い(甲B1,2,4。ま)た,原告らの多くは,定期的に外出し,買い物や知人らとの会話をしていることがうかがわれ,前記認定(2(6)イ)によれば,第1アンケートの回答のうち3分の2を超 ている者も多い(甲B1,2,4。ま)た,原告らの多くは,定期的に外出し,買い物や知人らとの会話をしていることがうかがわれ,前記認定(2(6)イ)によれば,第1アンケートの回答のうち3分の2を超える者が,里帰りや墓参をするなどして,親戚や知人等と交流している。原告らの中には,第2アンケートに対し,旅行に行くと回答している者も6名いるほか(甲B3,たばこやお酒といった)し好品を消費している者も見られる(甲B2。 )このような原告らの生活の実情を見ると,前記(イ)のような家計のもとで,食費等と違って支出を抑制しやすい趣味,社交等にかける費用の節約を強いられ,老齢加算があった時に比べてこれらに対する支出を減らすことを余儀なくされるとの打撃を受けたことが想像され,各種の制約の中にあって不自由な思いを抱いていることは理解できるところであるが,その暮らしぶりを非文化的なものと評価することは躊躇される。 オなお,冠婚葬祭や贈答などの親戚・知人との交際について,多くの原告らが肩身が狭い思いを感じており,とりわけ冠婚葬祭の際には,一定額の,,支出が社会通念上も避けられないことは前示のとおりであるがもともと親戚や知人の冠婚葬祭等にどの範囲で参加するか,どの程度祝儀や香典等を出すか,中元や歳暮の贈答をするかといった事柄は,個々人の価値観によるところが大きいものであり,すべての国民に健康で文化的な最低限度- 99 -(,の生活を等しく保障するという生活保護制度の性格を考慮すると法1条2条参照,これを十分に充足することは困難なものである。 )第2アンケートに対する回答結果によれば,同アンケートに回答した原告ら39名の中には,親族や知人の冠婚葬祭に出席すると回答している者が23名おり(甲B3,可能な範囲で香典を用意して親戚や知人の冠婚)葬祭 ケートに対する回答結果によれば,同アンケートに回答した原告ら39名の中には,親族や知人の冠婚葬祭に出席すると回答している者が23名おり(甲B3,可能な範囲で香典を用意して親戚や知人の冠婚)葬祭に参加している者も見られるし(甲B4,原告P15のように,自)らの価値観に基づいて,檀家として寺院にお布施をしたり,親族の法事代を支出している者もいる(前記4(1) 。 )すると,現行の保護基準上,一定の制約があることは否定できないものの,原告らが,それぞれの価値観に従って祝意や弔意を示して,親族や知人らと交際をすることが不可能な状況にあるとは認められないのであり,冠婚葬祭や贈答等の要否等は個々人の価値観によって大きく異なるものであることや,健康で文化的な生活水準が相対的で幅のある概念であることも踏まえれば,現時点において,原告らの訴える前記事情をもって,その生活が健康で文化的な生活水準を下回っているとは認められない。 (3)ア原告らは,高齢者の生活実態に関し,①高齢者には多病性・中途障害者性があり,それに伴う需要が存在すること,②買い物時のタクシー代など,生活扶助や介護扶助ではカバーされていない需要等が存在すること,③低所得はそれ自体心身の健康に悪影響を及ぼすものであり,老齢加算の廃止にあたって健康インパクト評価(政策・施策・事業による人々の健康への潜在的な影響と人々の間の影響の分布を評価するための手続,方法,ツールの組み合わせのこと)が行われていないことを主張する。 イ前記3のとおり,一般に高齢者は加齢によって病気がちになり,日常生活における様々な動作が困難になると考えられ,これを多病性と中途障害者性と表現することができる。 (ア)もっとも,病気の治療については,医療扶助の制度があり(法15- 100 -条1項,診察,薬剤,手術 る様々な動作が困難になると考えられ,これを多病性と中途障害者性と表現することができる。 (ア)もっとも,病気の治療については,医療扶助の制度があり(法15- 100 -条1項,診察,薬剤,手術及びその他治療等の給付を,原則として現)物で受けることができる(法34条。 )また,日常生活動作の支障に関しても,身体上又は精神上の障害があるために,一定の期間継続して,入浴,排せつ,食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について常時介護を要し又は支援を要する状態等にある高齢者については,介護保険法7条3項又は4項にいう「要介護者」又は「要支援者」に当たるため,介護扶助として,同法に定める介護又はサービスの現物給付を受けることができる(法15条の2,34条の2。 )したがって,高齢者の多病性や中途障害者性に伴う疾病及び日常生活における基本的動作の支障については,現行の生活保護制度上,保障がされているということができる。 (イ)原告らは,高齢者特有の需要は,要介護又は要支援の認定を受けて初めて生ずるものではなく,それ以前から段階的に生じていること,おむつ代や交際費など介護保険法上の給付でカバーされていない高齢者特有の需要が存在すること,医療扶助や介護扶助等では,移動能の低下に伴う通院,買い物,役所での手続時のタクシー代などが,制度上又は実際上,十分にカバーされていないこと等を主張する(前記②。 ),,しかし高齢者に原告らの指摘するこれらの需要や事情があることは生活保護の受給の有無によって違いがあるものではないと考えられるところ,70歳以上の高齢者の消費支出額が60歳代の者の消費支出額よりも低いことは,既にみた比較②のとおりである。すると,このような需要や事情の存在は,結果として,消費支出額の増加に結びついていないとい ,70歳以上の高齢者の消費支出額が60歳代の者の消費支出額よりも低いことは,既にみた比較②のとおりである。すると,このような需要や事情の存在は,結果として,消費支出額の増加に結びついていないといわざるを得ず,これらの需要等の存在から,老齢加算の必要性を認めることはできない(前記第3,6,(1) 。 )また,高齢者の被保護者の加齢に伴う日常生活上の支障等についてど- 101 -のような施策を講じるかは,健康福祉政策一般の問題という面があるのであって,介護保険制度等の枠組みを用いてこれを実施することも1つの合理的選択であると考えられる。仮に,介護保険法上の仕組みに基づく介護扶助の制度及び運営に一定の課題があったとしても,それが公的扶助制度である生活保護制度における,生活扶助の加算である老齢加算の必要性に結びつくとまではいえない。 (4)以上で見たところによれば,原告らは,老齢加算が減額,廃止されたことによって,その収入が減少し,生活の各方面で節約や制約を強いられ,家財道具の買換えや冠婚葬祭への参加等における臨時的・一時的支出がより困難になっていることが認められ,特に,老齢加算を長年にわたって受給していた者については大きな打撃を受けたことが想像されるところであるが老,(齢加算の減額が開始された平成16年3月25日時点で,北九州市で1人暮らしをしている70歳以上の者の生活扶助費は,加算を除くと7万2600,(),円であり老齢加算平成15年度は1万7930円の家計上の重要性は大きかったものと推認される,原告らの生活が健康で文化的な生活水準。)を下回っているとまでは認め難い。 その他,原告らは,その生活が健康で文化的な生活水準を下回っている旨を縷々主張するが,いずれも以上の認定判断を覆すものではない。 本項の結論 的な生活水準。)を下回っているとまでは認め難い。 その他,原告らは,その生活が健康で文化的な生活水準を下回っている旨を縷々主張するが,いずれも以上の認定判断を覆すものではない。 本項の結論よって,原告に対する保護が現実の生活条件を無視した著しく低いものであるとは認められず,健康で文化的な生活水準を下回るものとして,法3条等に反し,違法であるとは認められない。 第5 結論 以上のとおり,原告らの死亡によって当然に訴訟が終了した部分を除き,原告らの請求はいずれも理由がないから,これを棄却することにし,訴訟費用について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決- 102 -する。 福岡地方裁判所第1民事部裁判長裁判官高野裕裁判官岩崎雄亮裁判官伊藤聡は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官高野裕- 103 -別紙3平成▲年(行ウ)第▲号生活保護変更決定取消請求事件請求の趣旨下表「処分行政庁」記載の処分行政庁が,同表「氏名」欄記載の18年事件原告らに対し,同表「処分日」欄記載の日に行なった生活保護法25条2項に基づく保護変更決定のうち,同表「金額」欄記載の金額を減額する部分を取り消す。 表氏名処分行政庁処分日金額 P1門司4月1日8260円 P2門司4月1日8260円 P3門司3月19日8260円 P4戸畑3月18日1万6520円 P5戸畑3月10日8260円 P6戸畑3月10日8260円 P7戸畑3月10日8260円 P8戸畑3月10日8260円 P9八幡東3月26日1万6520円 P10八幡東3月26日8260円 P11八幡東3月26日8260円 P12 60円 戸畑3月10日8260円 八幡東3月26日1万6520円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日8260円 八幡東3月26日6880円 八幡東3月29日8260円 八幡西3月22日8260円 八幡西3月22日8260円 八幡西4月1日8260円 八幡西3月29日1万6520円 八幡西3月22日8260円 八幡西3月22日8260円 八幡西3月22日8260円ただし「処分庁」のうち「門司」は門司福祉事務所「戸畑」は戸畑福祉事務所「八幡東」は八幡東福祉事務所「八幡西」は八幡西福祉事務所を指し「処分日」はいずれも平成16年のものである。 別紙4平成▲年(行ウ)第▲号生活保護変更決定取消請求事件請求の趣旨下表「処分行政庁」記載の処分行政庁が,同表「氏名」欄記載の19年事件原告らに対し,同表「処分日」欄記載の日に行なった生活保護法25条2項に基づく保護変更決定のうち,同表「金額」欄記載の金額を減額する部分を取り消す。 表氏名処分行政庁処分日金額 門司3月22日3760円 門司3月22日3760円 門司3月22日3760円 門司3月22日3760円 門司3月22日3760円 小倉北4月1日3760円 門司3月22日3760円 P3 門司3月22日3760円 P27 門司3月22日3760円 P28 門司3月22日3760円 P29 小倉北4月1日3760円 P30 小倉北3月24日3760円 P31 小倉北3月24日3760円 P32 小倉北4月1日3760円 P33 若松3月27日3760円 P34 若松3月27日3760円 P4 戸畑4月1日3760円 P35 戸畑4月1日3760円 P5 戸畑4月1日3760円 P6 戸畑4月1日3760円 P7 戸畑4月1日3760円 P8 戸畑4月1日3760円 P36 戸畑4月1日3760円 P9 八幡東3月20日3760円 P37 八幡東3月20日3760円 P10 八幡東3月20日3760円 P11 八幡東3月20日3760円 P12 八幡東3月20日3760円 P13 八幡東3月20日3760円 P14 八幡東3月20日3760円 P15 八幡東3月20日3760円 P16 八幡東3月20日3760円 P18 八幡東3月20日3760円 P38 八幡東3月20日3760円 P39 八幡東3月20日3760円 P19 八幡西3月13日3760円 P20 八幡西3月13日3760円 P21 八幡西3月13日3760円 P22 八幡西3月13日3760円 P24 八幡西3月13日3760円 P40 八幡西3月13日3760円 P25 八幡西3月13日3760円 P26 円 P22八幡西3月13日3760円 P24八幡西3月13日3760円 P40八幡西3月13日3760円 P25八幡西3月13日3760円 P26八幡西3月13日3760円 P41八幡西3月13日3760円ただし「処分庁」のうち「門司」は門司福祉事務所「小倉北」は小倉北,,,,「」,「」,「」福祉事務所若松は若松福祉事務所戸畑は戸畑福祉事務所八幡東は八幡東福祉事務所「八幡西」は八幡西福祉事務所を指し「処分日」はい,,ずれも平成18年のものである。 - 107 -別紙5原告の主張第1老齢加算減額・廃止の不合理性について老齢加算制度の減額・廃止は,①生活保護によって保障すべき最低生活の水準は,年間収入階級第1・10分位(対象者を年間収入額順に並べ,10等分した場合に,最も年間収入額の低いグループをいう)の世帯の消費水準に着。 目して決すべきであるという考え方をもとに,②単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について,70歳以上の者と60歳から69歳までの者との間で比較すると,前者の消費支出額の方が少ないことから,老齢加算に相当する特別な需要があるとは認められないという考えに基づいている。 第1・10分位の消費水準を基準とする考え方の問題点現在の生活扶助費は,一般低所得者層の生活水準の推移に合わせるという水準均衡方式に基づいて定められており,老齢加算制度の廃止・減額についての前記①の考え方もこれに基づくものである。しかし,このような手法自体が適当でない。 (1)漏給層の存在生活保護の捕捉率は20%程度に止まっているといわれ,実際には生活保護を受給されるべきであるのに受給していない世帯(漏給層)が多数にのぼる。したがっ な手法自体が適当でない。 (1)漏給層の存在生活保護の捕捉率は20%程度に止まっているといわれ,実際には生活保護を受給されるべきであるのに受給していない世帯(漏給層)が多数にのぼる。したがって,そもそも一般低所得者層の収入・消費の水準が「健康で文化的な最低限度の生活「健康で文化的な生活水準」を下回るものであり,」一般低所得者層の消費水準をもって保護基準を定めることは論理的矛盾である。このような手法によれば,国が保護を怠れば怠るほど保護基準が引き下げられることになり,合理的な手法とはいえない。 (2)変曲点を用いた分析昭和58年の厚生省中央社会福祉審議会生活保護専門分科会では,変曲点という概念を用いて保護基準の妥当性が検証された。収入階級ごとの消費支- 108 -出額を比較すると,所得の減少に伴って消費支出は緩やかに減少するが,ある所得階層以下になると,それまでの緩やかな低下傾向を離れて,急激に下方へ変曲する所得分位があり,この所得分位を変曲点という。変曲点の存在は,社会的に必要不可欠な消費水準があると仮定すると,所得が減少してもできる限りこの消費水準を維持しようとするが,ある水準を超えて所得が低下すると,この消費水準を維持できなくなり,急激に消費水準が低下するためだと説明することができる。すると,変曲点以下の層は健康で文化的な生活水準を下回るものと考えられ,変曲点以下を含む層の生活水準と合わせる形で保護基準を定めることは相当でない。 老齢加算の減額,廃止に先立って行われた,厚生労働省社会保障福祉部会生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という)。 の第2回における説明資料(乙A10の4・10頁から16頁)によれば,変曲点は第3.32・50分位から第3.70・50分位の位置で想定されており,比較の対象と 委員会(以下「専門委員会」という)。 の第2回における説明資料(乙A10の4・10頁から16頁)によれば,変曲点は第3.32・50分位から第3.70・50分位の位置で想定されており,比較の対象となった第1・10分位のうち,5分の3以上の世帯が変曲点以下で生活していることになる。 (3)水準均衡方式からの逸脱現行の生活扶助基準はいわゆる水準均衡方式によって定められているが,これは,毎年度の政府経済見通しにより見込まれる民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,前年度の同支出の実績等を勘案して必要な調整を行うというものであり,この考え方の中には,第1・5分位や第1・10分位といった低所得者の消費水準に生活保護基準を合わせるという考えは含まれていない。以前の厚生省は,水準均衡方式によって定められる基準の妥当性の検証を,平均的一般世帯の消費支出,低所得世帯の消費支出,被保護世帯の消費支出の3つの間の均衡に留意するとしていたが,そこで対象とされていたのは,第1又は第2・5分位の東京都区部勤労世帯であり,第1・10分位といった下位の階層ではなかった。 - 109 - 特別需要の存在(1)老齢加算の廃止,減額の前後で特別需要を基礎づける事情に変更がないこと,,,老齢加算制度は昭和35年4月に70歳以上の者の被服・見回り品費保健衛生費,教養費,し好品などに関する特別な需要(以下「特別需要」という)に対応するものとして創設され,それ以降,昭和55年の中央社会。 福祉審議会生活保護専門分科会における中間取りまとめ及び昭和58年の同審議会意見具申でもその必要性が肯定されて,平成16年3月に至るまで,度々検証された上で,継続されてきたものである。このように長年にわたって合理性を認められてきた老齢加算が一朝一夕にその必要性を失うことはあり得ず, その必要性が肯定されて,平成16年3月に至るまで,度々検証された上で,継続されてきたものである。このように長年にわたって合理性を認められてきた老齢加算が一朝一夕にその必要性を失うことはあり得ず,廃止・減額の前後において,消費支出額に特段の変化があったことを示す事情もない。 (2)老齢加算の存在によって1類費の改定率が抑えられてきたこと昭和59年以降,老齢加算は第1類費相当の消費者物価指数の伸び率によって改定されるようになったが,同年以降の70歳以上の者の生活扶助1類費は,他の年齢層に比べて伸び率が著しく低い。例えば,1級地の1類費について,昭和59年と平成17年を比較すると,4歳子は1.23倍,29歳女は1.29倍,33歳男は1.24倍になっているのに対し,70歳男は1.06倍,70歳女は1.11倍に止まっている。 これは70歳以上の者が老齢加算を生活費に充ててきたために可能となったものであり,老齢加算と1類費を合わせて初めて高齢者の最低生活が維持されていたとの実態を示すものである。 (3)昭和58年の検証手法によれば特別需要が認められ,これを変更するだけの合理的理由はないことア昭和58年12月の厚生省中央社会福祉審議会生活保護専門分科会の意見具申(以下「昭和58年意見具申」という。乙A6)では,60歳代と- 110 -70歳代の消費支出額を合わせた上,60歳代に比して70歳代の方が高くなっている支出科目に着目し,その金額を合計するという手法で特別需要が確認された。そこで,平成11年の全国消費実態調査に基づいて,同様の手法で検討すると,全国平均で9804円,第1・5分位で8180円,第1・10分位で1万3545円のプラスとなり,特別需要の存在を確認することができる。 イ昭和58年意見具申における検証手法は,70歳代が低くな と,全国平均で9804円,第1・5分位で8180円,第1・10分位で1万3545円のプラスとなり,特別需要の存在を確認することができる。 イ昭和58年意見具申における検証手法は,70歳代が低くなっている支出費目を考慮しないものであるが,低所得者であるにもかかわらず,ある支出費目の割合が他の年齢層に比較して高くなっているということは,定性的に強い需要があることを示すものであり,かつ,一般需要が満たされていない状態にある可能性を示すものでもあって,70歳代が高くなっている費目に着目して検討することは当然である。 ウ本件訴訟において,被告は,老齢加算が減少,廃止が検討されたときと昭和58年当時とでは社会経済情勢が異なると主張し,一般世帯の生活水準との均衡を図るために基準の見直しを行うという政策的判断がなされた旨を主張するが,このことから,加算の必要性を再検証する必要が生じるとしても,その検証手法を変更させることに合理性や正当性が認められることにはならない。そのような形で採用される「検証」手法は,政策決定を都合よく合理化するための手段にすぎない。 (4)専門委員会における老齢加算の検証内容の問題点ア老齢加算減額,廃止の理由専門委員会の意見書によれば,単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について,70歳以上の者と60歳から69歳までの者との間で比較すると,前者の消費支出額の方が少ないとされた(以下「本件検証」という)。 しかし,本件検証の手法及び内容には,次の問題がある。 - 111 -イ加算の意義に対する理解を誤っていることそもそも,生活扶助における加算は,類型的にハンディキャップを有する層に対して,これに起因する需要を満たすものであり,基準生活費とは質的に異なるものである。老齢加算が充足してきた特別需要は,基準生活費 そも,生活扶助における加算は,類型的にハンディキャップを有する層に対して,これに起因する需要を満たすものであり,基準生活費とは質的に異なるものである。老齢加算が充足してきた特別需要は,基準生活費によって充足される一般需要と連続性を有するものも含まれているが,ハンディキャップが存在する以上,特別需要は存在し,一般需要と区別して捉えられるべきものである。本件検証の手法及び内容は,特別需要の意義と加算の位置づけに対する理解を誤っている。 ウ70歳代の消費支出額が60歳代よりも低いとはいえないこと(ア)全国消費実態調査結果に基づく検討本件検証において,専門委員会で用いられた資料である平成11年の(,)全国消費実態調査結果・高齢者世帯結果表の第26表甲A1928を見ると,単身・無職世帯の月間消費支出額は①60歳から64歳の平均19万4367円②65歳から69歳の平均15万6981円③70歳から74歳の平均16万1600円④75歳以上の平均13万1813円であり,65歳から69歳(②)と70歳から74歳(③)を比較すると,後者の方が消費支出額が多い。 同様に,男性単身高齢者について検討すると,65歳から69歳と70歳から74歳を比較すると,後者の方が消費支出額が多く,より新しい平成16年度の全国消費実態調査(甲A29)においては,60歳代()(),60歳から69歳と70代70歳から79歳の比較においても70歳代の方が消費支出額が多い。 (イ)生活保護相当費に絞った集計結果に基づく検討専門委員会で用いられた資料は,前記全国消費実態調査結果における- 112 -消費支出額そのものではなく,生活扶助以外の扶助に相当するもの(家賃,教育費,医療診療代等)や,生活保護のもとでは基本的に認められないもの( 資料は,前記全国消費実態調査結果における- 112 -消費支出額そのものではなく,生活扶助以外の扶助に相当するもの(家賃,教育費,医療診療代等)や,生活保護のもとでは基本的に認められないもの(自動車関係経費,被保護世帯が免除されているもの(NH)K受信料,最低生活費の範疇に含まれないもの(家事使用人給料,仕)送り金)を除いたもの(以下「生活扶助相当支出」という)である。 。 そこで,前記第26表を用いて,消費支出額から,収支項目が「家賃・地代「保健医療「自動車等関係費「教育「仕送り金」に当たる」」」」金額を控除して計算すると65歳から69歳13万3151円70歳から74歳14万5660円となり,やはり後者の消費支出額が多い。 また,平成16年度の全国消費実態調査(甲A29)を用いて,男性単身高齢者について同様の検討を行うと,60歳から64歳まで,65歳から69歳まで,70歳から74歳まで,75歳から79歳までと5年ごとに年齢が上がるにつれて消費支出額も上昇している。 (ウ)被保護高齢単身世帯の実支出額の比較なお,専門委員会で用いられた説明資料(乙A10の12・3及び4頁)によれば,単身の被保護世帯の実支出についても,60歳から69,。 歳の者と70歳以上の者を比べると70歳以上の者の方が高額である(エ)専門委員会で用いられた資料の問題点aそもそも,専門委員会で用いられた資料の原資料である平成11年全国消費実態調査は,単身世帯については,わずか2か月間だけの調査であり,短期間で杜撰な調査というべきである。 b被告は,本件訴訟において,前記原資料の調査票等の提出を形式的な理由で拒んでいるが,第三者による検証を認めない主張は非科学的であって信憑性に欠ける。 - 113 -c第4回専門委員会で用いられた説明 は,本件訴訟において,前記原資料の調査票等の提出を形式的な理由で拒んでいるが,第三者による検証を認めない主張は非科学的であって信憑性に欠ける。 - 113 -c第4回専門委員会で用いられた説明資料(乙A10の8・12及び13頁)を見ると,60歳代無職世帯の生活扶助相当消費支出額について,第1・10分位が第1・5分位よりも多いという逆転現象が生じている。また,2類費相当の「教養娯楽費「交際費」は,全体平」均では60歳代よりも70歳代の方が多額であるのに対し,第1・5分位や第1・10分位では,60歳代の方が70歳代よりも多額であるいう逆転現象が生じている。これは,低所得層特有の消費行動があることや,原資料の特別集計の過程の妥当性に問題があることをうかがわせるものであるが,専門委員会では,これらの点について検討されていない。 エ比較の対象となる年代を誤っていること(ア)昭和58年意見具申の際にも,他の年齢層との消費支出額との比較,,,が行われたがその際は①51歳から59歳の単身女性の消費支出と70歳から74歳の単身女性及び75歳以上の単身女性の消費支出,②一般夫婦世帯(年間収入140万円未満)と,老夫婦世帯(世帯主が70歳で年間収入180万円未満)及び老夫婦(世帯主が71歳から75歳で年間収入が180万円未満)と,幅広い年代が比較されている。ところが,本件検証では,単身無職の一般低所得高齢者世帯との間の比較しかしておらず,また年齢階層も60歳から69歳までの者との間の比較しかしていない。 (イ)そもそも,老齢加算の対象者が70歳以上となったのは,老齢加算制度が老齢福祉年金の発足を契機にしたという歴史的経緯に基づくものにすぎず,60歳から69歳の者も高齢者であることに変わりはない。 加齢に伴う特別需要をもった高齢者どおし 歳以上となったのは,老齢加算制度が老齢福祉年金の発足を契機にしたという歴史的経緯に基づくものにすぎず,60歳から69歳の者も高齢者であることに変わりはない。 加齢に伴う特別需要をもった高齢者どおしを比較しても,特別需要が存在しないことを確かめることはできない。 オ比較の対象となる支出内容を誤っていること- 114 -本件検証では,前記のとおり,生活扶助相当支出額を比較の対象としているが,加齢に伴う需要の増加は,家賃の増加やサービス給付に対する増加といった,生活扶助相当支出額に含まれない形で顕れる部分があり,不適当である。 カ生活扶助基準の妥当性が検証されていないこと専門委員会は,特別受益の有無について,定性的に存在するか否かではなく消費水準全体との関係で存在するか否かを判断している。しかし,仮に,このように特別需要の有無を生活扶助費全体との関係で検討する立場に立つとしても,生活扶助費それ自体の妥当性が検証されていない。 (ア)単身世帯の生活扶助費については,平成15年の専門委員会による「中間取りまとめ」で,現行の3人世帯を基軸とする基準設定では,第1類費及び第2類費の構成割合が消費実態を反映したものとなっておらず,単身世帯について別途の生活扶助基準を設定することを検討することが望ましいと指摘されていたものであり,基準生活費の妥当性自体に疑問が残る。 (イ)前記平成15年「中間取りまとめ」では,基準生活費については第1・10分位の「勤労者3人世帯」の消費水準に着目して検討がされているのに対し,老齢加算については「単身無職」の一般高齢者世帯の消費支出額を比較の対象としている。特別需要の有無を生活扶助費全体との関係で相対的に捉えるという立場に立つとすれば,両者は同じ世帯で比較しないと適切な判断ができないはずである。 (ウ)老齢 世帯の消費支出額を比較の対象としている。特別需要の有無を生活扶助費全体との関係で相対的に捉えるという立場に立つとすれば,両者は同じ世帯で比較しないと適切な判断ができないはずである。 (ウ)老齢加算が減額されたのは平成16年3月であるところ,平成15年12月の専門委員会による中間取りまとめでは,生活扶助基準の評価については引き続き議論することが必要であるとされ,同委員会が勤労3人世帯の生活扶助基準について基本的に妥当であるとの報告書を発表したのは平成16年12月である。すると,生活扶助費についてはきち- 115 -んとした検証がされないまま,老齢加算が減額されたことになる。 キ家計の弾力性が失われること第6回専門委員会に提出された被保護高齢単身世帯の家計状況に関する資料(乙A10の12)によれば,70歳以上の者の収入と支出には差額(2万1958円)があるが,これは費消されずに貯蓄されて続けているものではない。 この額と,60歳代の者における収入と支出の差額(1万2945円)を比べると,その差は9013円となり,当時における老齢加算の額よりも少ない。この収入と支出の差は,単なる貯蓄ではなく,祝弔事の費用やエアコンなど耐久消費財の購入にかかる突然の支出や,季節・時期に応じて支出が必要な費用のために一時的に蓄えられているものであり,これは老齢加算が想定していた特別需要に相当するものである。 (5)専門委員会における老齢加算の検証手続等の問題点ア専門委員会が老齢加算の廃止のために設置されたこと平成15年6月9日,財務省の財政制度審議会は「平成16年度予算編成の基本的考え方について甲A20を発表し老齢加算について廃」(),「。」。 ,,止に向けた検討が必要であると建議したこれを受けて小泉内閣は同月27日「 成16年度予算編成の基本的考え方について甲A20を発表し老齢加算について廃」(),「。」。 ,,止に向けた検討が必要であると建議したこれを受けて小泉内閣は同月27日「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(甲,」A21)を閣議決定し,その中で「生活保護においても(中略)老齢加算等の扶助基準など制度,運営の両面にわたる見直しが必要である」との。 見解を示した。第1回専門委員会は同年8月6日に開催されたが,同日,これらの建議及び基本方針が配布され,各委員はこれらを意識して審議せざるを得なかった。このことは,その後の委員会における各委員の発言からもうかがわれる。 以上のとおり,専門委員会は老齢加算の廃止という結論ありきで設置されたものである。 - 116 -イ専門委員会で十分な議論がされていないこと専門委員会は平成15年8月から平成16年12月まで18回にわたって開かれたが,老齢加算について実質的な議論がされたのは,平成15年。 ,11月18日の第4回及び同月25日の第5回の2回だけであるそして同年12月2日の第6回では,事務局により「中間取りまとめ(案」が)示されており,十分な論議がされたとは言えない。 ウ「中間取りまとめ」の内容が委員の意見を集約したものでないこと「中間取りまとめ」では「単身無職の一般低所得者世帯の消費支出額,について,70歳以上の者と60歳~69歳の者との間で比較すると,前者の消費支出額の方が少ないことが認められる」とした上で「現行の。 ,老齢加算に相当するだけの特別な需要があるとは認められない」と結論。 づけている。しかし専門委員会では,P53委員,P47委員やP49委員等の発言でこれに反対する考え方が示されていた。また「中間取りま,とめ」では,老齢加算を「 要があるとは認められない」と結論。 づけている。しかし専門委員会では,P53委員,P47委員やP49委員等の発言でこれに反対する考え方が示されていた。また「中間取りま,とめ」では,老齢加算を「廃止の方向で見直すべきである」としている。 が,専門委員会の議事録によれば,P44委員及びP45委員からこれに沿う意見が出された程度であって,各委員の意見を正しく集約したものではない。実際,第6回で事務局から示された「中間取りまとめ(案」に)は,委員から異論があげられた。 エ「中間取りまとめ」で指摘された点を検討しないまま減額されたこと「中間取りまとめ」では,加算については廃止の方向で見直すべきであるとしつつ「ただし,高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮して,,生活保護基準体系の中で高齢者世帯の最低生活基準が維持されるよう引き続き検討する必要がある」との提言がされた。しかし,このような代替。 。 ,措置が採られないまま減額が行われた専門委員会の議論の内容によれば代替措置を講じることが廃止の前提条件であったはずである。 オ「中間取りまとめ」で提言された激変緩和措置が講じられていないこと- 117 -「中間取りまとめ」では「被保護世帯の生活水準が急に低下すること,,。」。 のないよう激変緩和措置を講ずるべきであるとの提言もされていたここで合意されたのは,一時扶助などの形で特別需要に応えるということであり,3年間かけて段階的に廃止するということではなかった。 高齢者の特別需要の内容(1)高齢者の多病性,中途障害者性とそれに伴う需要ア多病性と中途障害性高齢者には,老年医学上,多病性と中途障害者性がある。 高齢者は,加齢に伴い慢性疾患にかかりやすくなり,一人で複数の疾患を有するようになる。例えば,ある高齢者が,まず高血圧 要ア多病性と中途障害性高齢者には,老年医学上,多病性と中途障害者性がある。 高齢者は,加齢に伴い慢性疾患にかかりやすくなり,一人で複数の疾患を有するようになる。例えば,ある高齢者が,まず高血圧症にかかり,つぎに糖尿病にかかり,さらに骨粗鬆症にかかると,その高齢者は,3つの慢性疾患を抱えて,生活していかなければならない。これを高齢者の多病性という。 そして,それまで先天的な病気などによる障害を持たず,健常な状態で生活してきた者も,高齢となり,加齢に伴う機能低下や多病性による機能,。 低下により急速にまたは徐々に日常生活活動に障害をきたすようになるこれを,高齢者の中途障害者性という。 イ多病性・中途障害性に伴う需要高齢者の多病性,中途障害者性による需要として,移動能の低下による,,。 もの排泄機能の低下によるもの体温調節機能の低下によるものがある(ア)高齢者は,下肢の機能が低下し,自立的移動に制約が生じる。高齢者の中途障害者性は,公共交通機関の利用がしだいに困難となって,一人では隣近所への外出程度しかできなくなり,その後,外出自体が困難となり,歩行不能となり,最後は座位保持も不能となるという形で進行する。 一人で公共交通機関が利用できなくなると,病院への通院,買い物,- 118 -役所に行くこと,知人や親族との交際といった場面でタクシーの利用が必要となるし,それ以前の場面でも,日常の家事や外出といった場面で知人やヘルパーの援助が必要となる。 ,,,(イ)高齢者は加齢に伴う機能低下により尿失禁を起こすようになり汚れた下着の洗濯や取替え,紙おむつ,入浴といったニーズが生じる。 (ウ)高齢者は,加齢に伴う体温調節機能の低下により,暑さや寒さに対。 ,,する部屋の温度調節が必要となる夏場は脱水症熱中症が問題となり冬 洗濯や取替え,紙おむつ,入浴といったニーズが生じる。 (ウ)高齢者は,加齢に伴う体温調節機能の低下により,暑さや寒さに対。 ,,する部屋の温度調節が必要となる夏場は脱水症熱中症が問題となり冬場は風邪,インフルエンザが問題となるところ,これらはいずれも加齢に伴って発症しやすくなる疾患であり,暖房だけでなく冷房に対するニーズも存する。 ウ高齢者の多病性,中途障害者性に伴う新たな需要が生じてくる年齢WHO(世界保健機関)が提唱した障害調整平均余命(DALE)は,概して健康であり障害などを持つに至らずに自立した生活を送ることができる平均余命を示す概念であるが,2002(平成14)年のわが国のDALEは,男性が71.4歳,女性が75.8歳で,平均73.6歳である(甲A46。 )したがって,高齢者の多病性,中途障害者性に伴う新たな需要は,平均的には,老齢加算が支給されていた70歳を超える年齢になると生じてくるといえる。これは加齢とともに増大し,または負担の重いものとして突然出現する。 エ昭和58年当時における「特別需要」の内容(ア)昭和58年10月5日の生活保護専門分科会における資料以下昭(「和58年分科会資料」という。甲A27)では,次のとおり,特別需要の内容が確認されている。 「加工食品・・・老齢化により,そしゃく力や調理能力が低下しているため,調理不要又は簡単で,食べやすいものを買う。栄養的には,非- 119 -効率であり,かつ割高となる」。 「保健医療・・・健康保持あるいは病弱のため,家庭薬等が必要となる」。 「暖房費・・・身体的に保温能力低下また病弱等で,在宅時間も長いため,暖房費が余分にかかる」。 「教養娯楽・・・孤独を免れるため,老人クラブ,旅行観劇等,テレビ購入等」「交際費・・・孤独を免れるため子や孫と ・身体的に保温能力低下また病弱等で,在宅時間も長いため,暖房費が余分にかかる」。 「教養娯楽・・・孤独を免れるため,老人クラブ,旅行観劇等,テレビ購入等」「交際費・・・孤独を免れるため子や孫との相互訪問,近隣の老人との付き合い,同年輩者の死に伴う葬祭費,子や甥,姪等の冠婚費等の付き合い費が多く必要」「交通通信費・・・老人クラブ出席,旅行,子や孫,親せき等の付き合いに伴う割高な交通費(タクシー使用等,子や孫との通信費(電話)代,葉書代等」)(イ)このような特別需要の内容は,高齢者の多病性,中途障害者性によって説明することができる。健康保持や保温能力低下を理由とする「保健医療「暖房費」はもちろん「加工食品「教養娯楽「交際費「交」,」」」通通信費」の需要も,加齢による移動能の低下を原因の1つとするものとして,現在でも認められるものである。 (2)介護保険の支給内容との対比に基づく特別需要ア介護保険に基づくサービスは,高齢者の加齢に伴う需要に対応するものであるが,一番軽度の要介護度1の者でも,月額5万円の限度額でサービスを受けることができる(甲A39。このことからも,70歳以上の者)が,60歳から69歳の者よりも約3000円低い基準生活費でその需要をカバーすることができるとみることはできない。 イ前記アの需要が介護保険制度によって充足されるのであれば問題はないが,この需要は介護認定されて初めて生じるわけではなく,介護認定され- 120 -ていない段階の者でも金額的には相当の額のサービスに匹敵する需要が潜在的にあるし,おむつ代や交際費はそもそも充足されない。 タクシー代は,医療に関しては法的にはカバーされるが,現実には申請されておらず,すぐには支給されないため,基準生活費からの先払いとなる結果,他の生活需要が満 おむつ代や交際費はそもそも充足されない。 タクシー代は,医療に関しては法的にはカバーされるが,現実には申請されておらず,すぐには支給されないため,基準生活費からの先払いとなる結果,他の生活需要が満たされない可能性が高い。また,買い物や役所での用事のためのタクシー代に対応する交通費は,法的にもカバーされているとは言いがたい。 (3)証人P54の証言に基づく高齢者の生活実態NPO法人P55で,ボランティアや有給職員として8年にわたりホームレス問題に関わってきた証人P54の証言や意見書の概要は次のとおりであり,高齢者の需要が基準生活費で満たされるとはいえない。 ア高齢の生活保護受給者の特徴高齢の生活保護受給者の特徴は,単身者が多く,家族とのつながりが切れている場合が多く,死が身近であるという点である。 イ高齢者の抱える問題高齢者の抱える問題には,次のようなものがある。 第1に,生活費が増加する。高齢になると,食事の用意,買い物,身の回りの整理などの日常の事柄を行うのが難しくなり,単身で家族とのつな。 ,がりが切れている高齢の生活保護受給者には大きな障害となるその結果特に介護保険によるサービスを受けられない自立生活者は,日常の事柄についてもサービスを対価を支払って購入しなければならないようになる。 第2に,人とのつながりを回復することに費用がかかるようになる。単身で,家族とのつながりが切れている特徴を有する高齢の生活保護受給者は,地域で孤立しやすい。孤立防止のための制度として「地域包括支援センター」があるが,同センターは地域で孤立している人のところは巡回せず,限界がある。そこで,意識的に人や制度とのつながりを作る必要があ- 121 -り,お金がかかる。 第3に,生きがいを見いだすためにコストがかかる。健康状態が悪くなり,孤立状態に陥 ころは巡回せず,限界がある。そこで,意識的に人や制度とのつながりを作る必要があ- 121 -り,お金がかかる。 第3に,生きがいを見いだすためにコストがかかる。健康状態が悪くなり,孤立状態に陥ると,生きる意欲を失ってしまう。高齢の生活保護受給者が生きがいを持ち,文化的な生活を実現するためには,費用がかかる。 ウ生活費のモデル8年間の支援活動の経験に基づくと,生きるための最低限の生活をするための費用モデルとして,次の点を指摘することができる。 まず,65歳から70歳になると,健康状態の悪化で清掃などの援助が必要となってくると想定され,有料ヘルパー費用6000円が増加する。 次に,70歳から75歳になると,さらに健康状態が悪化し,介護サービスを受け,さらにヘルパーの援助も受けていると想定され,食材費が弁当代,デイケア食事代,ヘルパー家事援助食材費に置き換わり,さらに外出のためのタクシー費,緊急通報システム利用料を合計して,約2000円増加する。 さらに,75歳から80歳になると,さらに健康状態が悪化すると想定され,弁当代やデイケア食事代が増加する一方,ヘルパー家事援助食材費は減少するとして,約3000円増加する。 つまり,65歳から80歳までの間に,モデル的に見れば,文化的な生活の面を除いた最低限の生活をするための費用が,約1万1000円増加する。 エつながりを構築するための費用のモデル次に,つながりを構築するための費用のモデルとして,証人が勤めるP56が行っている支援活動に要する時間を,同P56が対象とする自立者(,,),帰郷者施設入所者長期入院者を除く161名別にデータを整理しその時間について有料のヘルパーサービス(1800円/1時間)を利用したと仮定して,金銭的に換算した。 - 122 -これによると,一人当 施設入所者長期入院者を除く161名別にデータを整理しその時間について有料のヘルパーサービス(1800円/1時間)を利用したと仮定して,金銭的に換算した。 - 122 -これによると,一人当たりの月平均サポート利用料として,50歳代では,2520円60歳代では,5940円70歳代では,5220円80歳代では,8100円となる。 オP54証言におけるモデルからの帰結前記のP54証言に基づいてモデル的に検討すると,65歳から80歳までの間に,最低限の生活をするための費用が約1万1000円増加し,社会的なつながりを維持した最低限の生活をするための費用が文化的な生活の面を除いても約1万3100円増加することとなる。 したがって,70歳以上の者が,60歳から69歳の者よりも3000円低い基準生活費で固有の需要をカバーすることができるとみることはできない。 (4)高齢者に固有の需要が最低限の生活を維持するために必要であることアP57教授らによる調査()P58大学社会福祉学部のP57教授による社会疫学的調査甲A52によれば(ア)主観的健康感(自分がどの程度健康だと考えているかを示す指標)・抑うつ(イ)歩行時間,転倒歴,健康診断の受診率(ウ)歯,口腔の状態(エ)不眠の有無(オ)ストレス対処能力(SOC:医療社会学者アーロン・アントノフスキーが提唱した概念であり,多くのストレス下でも健康を損なうことなく,そのような体験を糧にして,健康であり続ける人の特徴を得点化し- 123 -たもの)(カ)趣味活動の有無(キ)閉じこもり(外出回数)(ク)被虐待の有無(ケ)地域組織への参加(コ)社会的サポートを自ら提供することの有無(サ)就業,経済的不安の有無,。 といった諸点で低所得や一人暮らしの者が劣 閉じこもり(外出回数)(ク)被虐待の有無(ケ)地域組織への参加(コ)社会的サポートを自ら提供することの有無(サ)就業,経済的不安の有無,。 といった諸点で低所得や一人暮らしの者が劣悪であると指摘されている低所得は,それ自体で健康に対して悪影響を及ぼしている。 イP59ソーシャルワーカー委員会による調査,,P59ソーシャルワーカー委員会が平成19年6月から8月にかけて生活保護受給者388世帯の生活実態を調査した結果の概要は次のとおりである。 (ア)食費保護受給単身世帯の52.1%が1か月の食費を3万円未満に抑えて,. 。 おり単身世帯の233%が1か月の食費を2万円未満に抑えている標準的な食事回数が2回以下と回答した単身世帯は23.6%,夫婦世帯では24.1%を占めている。 (イ)光熱,水道費. ,単身世帯では1か月の光熱・水道費が1万円未満の世帯が518%夫婦世帯では1か月の光熱・水道費が1万5000円未満の世帯が57.8%を占めている。 (ウ)介護・医療通所サービスの食事代が生活保護で給付されないため「デイサービ,スをすすめられたが昼食代が負担で利用を控えた「デイサービスの利」用回数を減らす」などの回答があった。 - 124 -(エ)交通費1か月の交通費が3000円以下の単身世帯は73.4%,交通費が0円の単身世帯は全体の42.6%にのぼる。夫婦世帯でも1か月の交通費が0円の世帯は,33.7%であった。食料品の買い物や通院でバ,。 スなどを利用すれば3000円程度の交通費はすぐにかかってしまうしたがって,交通費を3000円以下に抑えている世帯は,交際のための移動には費用を割くことができていないと考えられる。また,交通費が0円の世帯は,徒歩で移動できる範囲内での生活に閉じこめられている したがって,交通費を3000円以下に抑えている世帯は,交際のための移動には費用を割くことができていないと考えられる。また,交通費が0円の世帯は,徒歩で移動できる範囲内での生活に閉じこめられているといえる状態である。 (オ)通信費1か月の電話代が3000円以下の単身世帯は79.7%を占めている。1か月の電話代が2000円以下の単身世帯は32.1%を占め,夫婦世帯は25.3%であった。 (カ)教養・娯楽費1か月の教養・娯楽費が1万円以下の単身世帯は96.7%,5000円以下の世帯は88.5%,0円の世帯は62.6%であった。夫婦. 。 世帯でも1か月の教養・娯楽費が0円の世帯が590%を占めている(キ)交際費1か月の交際費が1万円以下の単身世帯は95.7%を占めた。5000円以下は全体の90.8%,0円は35.7%を占めた。夫婦世帯では36.1%が0円であった。地域行事の参加についても71.1%が全く参加しないと答えた。冠婚葬祭の知らせが来たときの対応につい,,「」ても単身世帯と夫婦世帯とを合わせて分析すると全く参加しないとの回答が51.3%を占めた。 (ク)被服・履物購入頻度. ,. 1年の被服・履物購入費用は単身世帯の377%夫婦世帯の41- 125 -0%が0円であった。 ウ 結論 ,,,以上のとおり高齢者の加齢に伴う需要が満たされない結果高齢者は主に健康面を中心に,最低限度の生活の維持を脅かされている。 エ健康インパクト評価が実施されていない老齢加算の廃止,減額に当たっては,対象が生活保護を受給している高,。 齢者であるにもかかわらずその健康へのインパクトが評価されていないWHOによる「健康インパクト評価」は「政策・施策・事業による人々,の健康への潜在的な影響と人々の間の影響の分布を評価する ,。 齢者であるにもかかわらずその健康へのインパクトが評価されていないWHOによる「健康インパクト評価」は「政策・施策・事業による人々,の健康への潜在的な影響と人々の間の影響の分布を評価するための手続,方法,ツールの組み合わせ」のことであり,WHOやEUといった国際機,,,関アメリカイギリスといった政府で採り入れられているものであるがこのような評価が実施されていない。 第2老齢加算廃止の違憲性,違法性等 憲法25条違反,13条違反「」,,(1)憲法25条1項にいう健康で文化的な最低限度の生活とは最低限個々人の尊厳が保障され,人間たるにふさわしい生活が営めること,その結果として自己実現が図られるものでなければならず,衣食住が事足りることは当然として,被保護者が様々な面で自己実現及び社会参加を行い,この社会に住む誰が見ても,人として自立した生活を送っているとの評価が与えられるような状態をいうと解される。 (2)また,憲法25条1項には,社会権的効果だけでなく,自由権的効果がある。すなわち,具体化・現実化された生存権を正当な理由なく侵害することは,憲法上の自由権を侵害するのと同様に違憲無効である。 (3)老齢加算の減額,廃止は,原告らがかろうじて維持してきた「健康で文化的な最低限度の生活」という具体的生存権を侵害して,現実の生活条件を無視した著しく低い基準を設定するものであり,憲法25条1項に違反する- 126 -と同時に,生命・健康を脅かすものであって,憲法13条にも違反するものである。 条約違反「経済的,社会的および文化的権利に関する国際規約」は,すべての者に社会保障の権利を認め(9条,十分な食糧,衣服,及び住居を含む十分な生活)水準についての権利(11条)と,文化的な生活に参加する権利(1 的,社会的および文化的権利に関する国際規約」は,すべての者に社会保障の権利を認め(9条,十分な食糧,衣服,及び住居を含む十分な生活)水準についての権利(11条)と,文化的な生活に参加する権利(15条)を認めている。特に,1995年(平成7年,国際人権社会権規約委員会は,)高齢者は社会的な弱者であり,不況や経済危機のもとでは特に危険にさらされるため,特別の措置をとることが要求されているので,締結国は「高齢者の経済的,社会的および文化的権利を促進し保護するために特別の注意を払う義務を負う」としている。老齢加算の廃止,減額は,同規約の前記各条項に違反するものである。 なお,同規約は,憲法上,国に誠実に遵守すべき義務があり,法律に優位するものであるから,生活保護法は人権規約の解釈に沿って規定される権利を実現するように解釈適用されなくてはならない。 生活保護法違反(1)法1条,3条,5条,8条等の違反生活保護法(以下「法」という)は,1条において,同法が憲法25条。 に規定する理念に基づくものであるとした上で,3条において「この法律によって保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と規定し,5条において「前4条に。 規定するところは,この法律の基本原理であって,この法律の解釈及び運用は,すべてこの原理に基づいてされなければならない」と規定する。その。 上で,法8条1項は,保護は,厚生労働大臣の定めた基準により測定した要保護者の需要を基とするとし,同条2項は「前項の基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を- 127 -考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて,且つ,これをこえないものでなければならない」と定める。 別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を- 127 -考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて,且つ,これをこえないものでなければならない」と定める。 。 法8条に基づく厚生労働大臣の裁量は覊束裁量と解すべきであり,仮に一定の自由な裁量が認められるにしても,裁量権の範囲を超え又はその濫用があった場合には,処分が違法となると解されるところ,老齢加算を減額,廃止してなされた本件処分は,現実の生活条件を無視した著しく低いものというべきであり,法1条,3条,5条,8条の趣旨目的に反して違法である。 (2)法56条違反ア法56条の適用範囲法56条は「被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保,護を,不利益に変更されることがない」と規定している。同条は,単に。 保護実施機関だけでなく,法8条の保護基準を定める厚生労働大臣を含めた国の全ての機関を拘束するものと解すべきである。 ,,(ア)法56条は法2条が全国民に認める国に対する保護請求権のうち現に保護を受けている者について定めたものであって,同条は「不利益に変更」する主体を保護の実施機関に限定していないし,同条が置かれた第8章(被保護者の権利及び義務)全体を見ても,権利の主張の相手方として国を排除する規定はない。 (イ)法制定時の政府委員による国会答弁(甲A26)によれば,同条を含む法第8章の立法理由は,保護から慈恵的,恩恵的性格を排除し,その権利性を徹底することにあった。したがって,同条は単に保護実施機関の義務を定めたものではない。 (ウ)保護を実施する保護実施機関(法19条等)は,厚生労働大臣の定める保護基準に従う義務があるのであるから,仮に保護基準の設定には法56条が適用されないとすれば,同条の趣旨が没却されてしまい不合 ウ)保護を実施する保護実施機関(法19条等)は,厚生労働大臣の定める保護基準に従う義務があるのであるから,仮に保護基準の設定には法56条が適用されないとすれば,同条の趣旨が没却されてしまい不合理である。 - 128 -イ「正当な理由」の立証責任既に決定を受けた保護受給者の利益は,法によって具体的な保護受給権として尊重されたものであり,56条にいう「正当な理由」の存在は,被告が立証責任を負うというべきである。 ウ老齢加算の減額,廃止に「正当な理由」がないこと(ア)そもそも,生活保護が健康で文化的な生活水準を維持することを目的とするものである以上(法2条,法56条にいう「正当な理由」と)は,不利益変更がなされても,健康で文化的な生活を営むことに支障がない場合をいう。これを本件に即して述べると「正当な理由」が認め,られるためには,①加齢に伴う高齢者の新たな需要を考慮しても,老齢加算を加えない生活扶助基準で最低限度の生活需要を満たすことが認められる必要があり(実体面,②保護基準の変更が適正な手続に基づい)て行われたことが必要である(手続面。 )(イ)高齢者には,前記のとおり,加齢に伴って新たな需要が生じているにもかかわらず,60歳代と比較して基準生活費は約3000円少ないのであり,老齢加算を加えない生活扶助基準が最低限度の生活需要を満たすとはいえない。 (ウ)また,老齢加算の減額,廃止を決めた専門委員会の議論の過程及び同委員会の「中間取りまとめ」に基づいて老齢加算を減額,廃止することが手続的にみて適正とはいえないことも,前記のとおりである。 (エ)よって,老齢加算の減額,廃止には「正当な理由」はない。 - 129 -別紙6被告の主張第1老齢加算の減額,廃止の合理性 老齢加算制度を減額,廃止した経緯( とおりである。 (エ)よって,老齢加算の減額,廃止には「正当な理由」はない。 - 129 -別紙6被告の主張第1老齢加算の減額,廃止の合理性 老齢加算制度を減額,廃止した経緯(1)老齢加算は,昭和35年4月,前年度に開始された老齢福祉年金を収入認定する代わりにその同額(月額1000円)を加算するものとして設けられたが,その後,老齢福祉年金の額の増大によって同年金の額とは切り離され,昭和51年1月からは生活扶助基準改定率により,昭和59年4月からは基準生活費1類相当の消費者物価指数の伸び率により改定されるようになった。老齢加算制度及びその加算額は,中央社会福祉審議会生活保護専門分科会(以下「専門分科会」という)における昭和55年12月付けの「生。 活保護専門分科会審議状況の中間的とりまとめ(以下「昭和55年中間取」りまとめ」という)及び昭和58年12月23日付けの「生活扶助基準及。 び加算のあり方について(意見具申(以下「昭和58年意見具申」とい)」う)において検証され,それぞれ,その当時における妥当性が裏付けられ。 た。 (2)その後,平成12年の社会福祉事業法等一部改正法案に対する衆参両院における附帯決議や,平成15年の社会保障審議会意見及び財政制度等審議会建議等において生活保護制度の見直しが指摘されたことから,厚生労働省は,同年8月,社会保障審議会福祉部会内に,生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「専門委員会」という)を設置した。 。 専門委員会は,近年の社会情勢の変化に応じた生活保護基準のあり方全般について検討するために設置されたものであるが,老齢加算については,①単身無職の60歳から69歳までの者と70歳以上の者の生活扶助相当消費支出額を比較すると,全世帯平均で60歳から69歳では11万8 について検討するために設置されたものであるが,老齢加算については,①単身無職の60歳から69歳までの者と70歳以上の者の生活扶助相当消費支出額を比較すると,全世帯平均で60歳から69歳では11万8209円であるのに対し70歳以上は10万7664円,第1・5分位(対象者を年- 130 -間収入額順に並べ,5等分した場合に,最も年間収入額の低いグループをいう)で60歳から69歳では7万6761円であるのに対し70歳以上は。 6万5843円,第1・10分位で60歳から69歳では7万9817円であるのに対し,70歳以上は6万2277円となっており,いずれも60歳から69歳までの者より70歳以上の者の生活扶助支出額が低い状況となっていること,②第1・5分位の70歳以上の単身無職の者の生活扶助相当消費支出額が6万5843円であるのに対し,70歳以上の者の生活扶助基準額(老齢加算を除いた平均額)は7万1190円と,生活扶助基準額が高い状況となっていることを確認した。 そこで,専門委員会は,同年12月16日付けの「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ(以下「中間取りまとめ」という)において,」。 以上の2点を指摘した上「70歳以上の高齢者について,現行の老齢加算,に相当するだけの特別な需要があるとは認められないため,加算そのものについては廃止の方向で見直すべきである「被保護世帯の生活水準が急に。」低下することのないよう,激変緩和の措置を講じるべきである」との提言。 を行なった。 厚生労働省では,前記提言があること,一般低所得高齢者世帯の消費実態の検証結果により,70歳以上の高齢者に老齢加算に相当するだけの特別な消費需要がないと認められること及び老齢加算制度の合理性を基礎づけていた事情が現在ではほぼ失われていると解されることを踏まえ 実態の検証結果により,70歳以上の高齢者に老齢加算に相当するだけの特別な消費需要がないと認められること及び老齢加算制度の合理性を基礎づけていた事情が現在ではほぼ失われていると解されることを踏まえ,老齢加算を廃止することにした。なお,専門委員会において激変緩和の措置を求める提言がされたことを踏まえ,3年間をかけて段階的に廃止することにした。 高齢者に特別需要があるとは認められないこと(1)保護基準の考え方についてア生活保護基準の算定方式は,これまで,①最低生活を営むのに必要な飲食物費,衣類費,家具什器費,光熱水費等の個々の需要を一つ一つ積み上- 131 -げて理論計算するマーケットバスケット方式,②標準的栄養所要量を満たす飲食物費を理論計算し,これと同等程度の飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数で割り戻すことによって算定するエンゲル方式,③高度経済成長期の国民の生活水準の向上に併せて保護基準の引き上げを図るため,政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率(見通し)に格差縮小分を加味して改定する格差縮小方式を経て,現在,④政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸びに準拠して改定する水準均衡方式によって行われている。 一般世帯の消費支出を100%としたときの被保護世帯の消費支出の割合(消費支出格差)は,昭和45年度には54.6%であったが,格差縮小方式により昭和58年度には66.4%となり,その後水準均衡方式に,。 よって概ね7割弱で推移し平成13年から7割を超えている状況にあるイ現行の生活保護基準は,肉体的生存に必要最小限の絶対的水準から脱して,相対的最低生活水準の考え方によっているものであり,今日でも,社会経済情勢の変化に応じて,一般国民の生活水準を踏まえて,公平,妥当な最低生活保障水準を探っていくべきであ 小限の絶対的水準から脱して,相対的最低生活水準の考え方によっているものであり,今日でも,社会経済情勢の変化に応じて,一般国民の生活水準を踏まえて,公平,妥当な最低生活保障水準を探っていくべきである。 (2)60歳から69歳と70歳以上の消費支出差ア平成11年度の総務省全国消費実態調査結果をもとに,高齢単身世帯の「生活扶助相当消費支出(消費支出額の全体から,生活保護制度中の生」活扶助以外の扶助に該当するもの(家賃,地代,教育費,医療診療代,)生活保護制度で基本的に認められない支出に該当するもの(自動車関連経費,被保護世帯は免除されているもの(NHK受信料)及び最低生活費)の範ちゅうになじまないもの(家事使用人給料,仕送り金)を除いたものをいう)を算出して,所得階層別に集計し,60歳から69歳の者と7。 0歳以上の者を比較すると,下表のとおりとなる。 (表1)- 132 -60~69歳70歳以上差額一般世帯全体平均118,209円107,664円△10,545円の生活扶(100)(91.1)助相当消第1・5分位76,761円65,843円△10,917円費支出額(100)(85.7)第1・10分位79,81 7円62,277円△17,540円(100)(78.0)イこれによると,一般世帯の生活扶助相当消費支出額は,全世帯平均においても,第1・5分位においても,第1・10分位においても,70歳以上の者の方が,60歳から69歳までの者に比べて,消費支出額が低い。 (3)老齢加算を除いた生活扶助額と第1・5分位,第1・10分位の生活扶助相当消費支出額との対比ア平成11年当時における生活扶助基準額は下表のとおりであった。 (表2)60~69歳70歳以上差額老齢加算有74,509 額と第1・5分位,第1・10分位の生活扶助相当消費支出額との対比ア平成11年当時における生活扶助基準額は下表のとおりであった。 (表2)60~69歳70歳以上差額老齢加算有74,509円88,112円+13,603円生活扶助(100)(118.3)基準額老齢加算無74,509円71,190円△3,319円(100)(95.5)イこれと,70歳以上の単身無職の者の第1・5分位の生活扶助相当消費支出額を比較すると,70歳以上の単身無職の者の生活扶助相当消費支出額が6万5843円であるのに対し70歳以上の者の生活扶助基準額老,(),,齢加算を除いた平均額は7万1190円であり生活扶助基準額が高く逆転現象が生じている。 生活扶助基準は一般世帯との比較において相対的に定められるべきものである。そこで,前記(表1)を用いて,一般世帯における60歳から6- 133 -9歳の者の生活扶助相当消費支出を100として,70歳以上の者の数値を算出してみると,全体平均で91.1,第1・5分位で85.7,第1・10分位で78となり,このうち最も高い全体平均の数字を,60歳から69歳の者の生活扶助基準額に乗じると,6万7878円となる(74,509×0.911 。この額は,老齢加算のない70歳以上の者の生活扶助基準)額である7万1190円よりも高額である。 原告の主張に対する反論(1)捕捉率及び漏給層について生活保護の捕捉率(保護基準以下の低所得者のうち実際に保護を受給している者の割合を推計したもの)については様々な研究結果があるが,原告の主張するように,膨大な漏給層が存在し,第1・5分位や第1・10分位の生活水準が圧縮されているということはない。 (ア)生活保護は,所得が低くても最低生活費を超える資産が な研究結果があるが,原告の主張するように,膨大な漏給層が存在し,第1・5分位や第1・10分位の生活水準が圧縮されているということはない。 (ア)生活保護は,所得が低くても最低生活費を超える資産がある場合や,稼働能力を活用しない場合等には,受給要件を満たさない(生活保護法4条1項。生活保護の捕捉率が20%程度であると推計する研究は存在す)るが,この研究はフロー所得のみを用いて推計しており,資産等の存在を考慮していない。これらの研究において,保有資産や稼働能力を含めて考慮すれば,捕捉率はもっと高くなるはずである。 (イ)捕捉率に関する研究の多くは,低所得世帯の定義として,保護基準そのものか,被保護者に税や社会保険料等の負担がないことを考慮して,これを割増ししたものを用いている。したがって,一般国民の所得水準と比べ保護基準が相対的に高くなれば,低所得世帯の定義も高くなり,捕捉率は必然的に低くなる。 (2)変曲点を用いた検討について専門委員会では,第3回以降,変曲点の概念を用いて保護基準を検討していない。しかし,それは次のような事情によるものと思われる。 - 134 -ア変曲点の分析は,昭和54年の家計調査特別集計における分析では,勤労者4人(有業者1人)世帯を,平成8年ないし12年の家計調査特別集計における分析では勤労者3人(夫婦子1人)世帯をモデルとして行われたが,平成14年度における実際の被保護世帯の1世帯当たりの人員は,単身世帯が73.5%,2人世帯が16.9%であり,前記分析がモデルとした世帯の占める割合が低い。 イ専門委員会において,変曲点を試算した前記分析は,消費と収入階層との関係を分析したものであるが,各収入階層の稠密性が異なると厳密な変曲点を見出すことが難しくなるなど,数値のコントロールが不十分であるとの指摘 において,変曲点を試算した前記分析は,消費と収入階層との関係を分析したものであるが,各収入階層の稠密性が異なると厳密な変曲点を見出すことが難しくなるなど,数値のコントロールが不十分であるとの指摘があった。 (3)昭和55年中間取りまとめ及び昭和58年意見具申について原告は,昭和58年意見具申の際と同様の検証方法によれば,現時点においても老齢加算を基礎づける特別需要の存在を確認しうる旨を主張するが,この検証方法は今日においては妥当しない。 ア昭和58年意見具申における社会経済情勢等専門分科会は,昭和55年中間取りまとめにおいて,一般勤労世帯と被保護労働世帯の消費支出格差がようやく6割に達したか達しないかの水準であり,格差縮小が十分でないとの認識を示していたが,昭和58年意見具申において,生活扶助基準はほぼ妥当な水準に達しているとした。もっとも,国民の生活水準は今後も向上すると見込まれることから,定期的に検証する必要があると指摘し,再度格差が拡大することを懸念していた。 イ特別需要を測定する方法の特徴及び背景(ア)昭和58年意見具申における手法には,次の特徴がある。 a高齢者世帯の総消費支出額を比較対象世帯の総消費支出額と合わせ,各支出科目の金額は総消費支出額に構成比を乗じて算出する。 bその上でプラスとなった支出科目だけを合計し,マイナスとなった- 135 -費目は考慮しない。 (イ)このような手法については,当時から,消費支出額を調整することで実態に適合しなくなるのではないかという点や,プラスとなった費目だけを合計し,マイナス部分を計上しないことの合理性等に疑問が投げかけられていた。 それにもかかわらずこのような検証手法が採られたのは,前記アのとおり,格差拡大の懸念があり老齢加算の存続が必要という政策的判断に基づいたも 分を計上しないことの合理性等に疑問が投げかけられていた。 それにもかかわらずこのような検証手法が採られたのは,前記アのとおり,格差拡大の懸念があり老齢加算の存続が必要という政策的判断に基づいたものであった。 ウ専門委員会の検討時における社会経済情勢等平成15年に専門委員会で老齢加算の適否が検討されたときには,一般勤労者世帯と被保護勤労者世帯の消費支出格差は7割前後に達していた上,右肩上がりの経済成長が終了し,賃金や所得水準が低下して,消費者物価が下落するというデフレの状況にあった。 昭和58年意見具申における特別需要の算定方法は,前記のような時代背景及び文脈で理解されるべきことであり,今日でも妥当するものではない。 (4)70歳以上の者の第1類費について原告は70歳以上の者の第1類費の伸び率が低く抑えられてきたのは老齢加算によるものだと主張するが,これは平成元年度に第1類費に係る60歳以上の年齢区分を改定したことによる結果である。すなわち,従前,60歳,「」「」,以上の年齢区分は60歳から64歳と65歳以上であったところ70歳以上の一般高齢者世帯の第1類費相当の消費支出額が69歳以下のそれと比較して低かったことや,第1類費基準設定の基礎となっている公衆衛生審議会の年齢別栄養所要量が60歳代より70歳代の方が低かったことから,この区分を「60歳から69歳」と「70歳以上」に改めた上で,激変緩和のため,70歳以上の改定率を抑制することで,徐々に年齢階級別に適- 136 -正な水準を図ろうとしたものである。 (5)専門委員会における検証についてア65歳から69歳と70歳から74歳の消費支出の比較について原告は専門委員会の用いた資料に基づいて70歳から74歳の消費支出が,65歳から69歳のそれよりも高いことなど 員会における検証についてア65歳から69歳と70歳から74歳の消費支出の比較について原告は専門委員会の用いた資料に基づいて70歳から74歳の消費支出が,65歳から69歳のそれよりも高いことなどを指摘する。 しかし,生活扶助基準における第1類費の年齢区分は60歳から69歳と70歳以上なのであって,65歳から69歳と70歳から74歳のみを取り上げて比較することに合理性はない。 また,専門委員会が用いた資料は,平成11年度全国消費実態調査結果を収入階層別に集計し直したものであり,そうした処理を行なっていない原告らの集計結果と内容が異なるのは当然である。原告が用いた全国消費実態調査結果において,70歳から74歳の消費支出が64歳から69歳よりも高いのは,可処分所得による影響が原因と考えられる。すなわち,同調査結果によれば消費支出額が高い60歳から64歳は貯蓄現在高1,(621万8000円)が他の年齢層に比べて最も高く,70歳から74歳は可処分所得(16万0882円)が他の年齢層に比べて最も高い。可処分所得の大きい者の消費支出額が高くなるのは当然であり,高額資産保有者についても,資産効果が働き,消費支出が高くなる。したがって,加齢に伴う消費支出差の分析を行うためには,収入階層別に分析する必要があるのであり,専門委員会にはそのようにして分析した結果が提出され,検討されている。 イ昭和58年意見具申と比較対象世帯が異なるとの指摘について平成15年における専門委員会では,老齢加算の対象となる高齢単身世帯の基準生活費の妥当性を検証したものであって,勤労者3人世帯(夫婦子1人)の基準生活費を検証の基礎としているわけではないから,比較対象が異なるのは当然である。 - 137 -ウ老齢加算廃止決定時に基準生活費の妥当性を検証していないとの指摘に 労者3人世帯(夫婦子1人)の基準生活費を検証の基礎としているわけではないから,比較対象が異なるのは当然である。 - 137 -ウ老齢加算廃止決定時に基準生活費の妥当性を検証していないとの指摘について専門委員会における基準生活費の検証は,勤労者3人世帯(夫婦子1人世帯)について,昭和58年意見具申依頼の生活扶助基準の水準の妥当性を検討したものである。一方,老齢加算の妥当性を検証するためには,老齢加算対象世帯の基準生活を検証することが必要であるところ,専門委員会は,一般の低所得高齢単身世帯の消費実態と高齢単身世帯の基準生活費を比較,検証した結果,老齢加算に相当するだけの特別需要が認められないとの結論に至ったものであり,老齢加算対象世帯の基準生活費を適正に検証している。 エ専門委員会における検証手続について(ア)原告は,専門委員会は「最初に結論ありき」で設けられたものだと主張するが,専門委員会では客観的なデータに基づき公正な議論が行われた。平成12年における国会附帯決議や平成15年の財政制度等審議会建議等の制度見直しに関する指摘の存在は,専門委員会で検討を行うことになった理由の1つにすぎない。 (イ)中間取りまとめを検討した第6回専門委員会の議事録を見ると,座長から「一度委員の先生方にはごらんいただいた上で,確認していただ,」,いてそれをもって中間取りまとめとさせていただくとの発言がありその後発表された中間取りまとめに両論併記や少数意見の付記がないことからすれば,これが委員の意見を集約したものであることが明らかである。専門委員会の席上では,原告の指摘するように老齢加算の廃止に反対する意見もあったが,P44委員,P45委員,P46委員などから賛成する意見も出されていた。 (ウ)中間取りまとめでは「高齢者世帯の社会生活に 会の席上では,原告の指摘するように老齢加算の廃止に反対する意見もあったが,P44委員,P45委員,P46委員などから賛成する意見も出されていた。 (ウ)中間取りまとめでは「高齢者世帯の社会生活に必要な費用に配慮,して,生活保護基準の体系の中で高齢者世帯の最低生活水準が維持され- 138 -るよう引き続き検討する必要がある」とされている。 。 この指摘は,文理上,老齢加算廃止の前提条件として記載されているものではないし,専門委員会における議論においても,その内容である「高齢者世帯の社会生活に必要な費用」について個々の委員から様々な意見が出されたが重要な意見集約はなされなかったとされている。専門委員会は,平成16年に発表された報告書において,生活扶助基準の評価・検証等は全国消費実態調査等を基に5年に1度の頻度で検証を行う必要があること,高齢単身世帯の増加が顕著なことから単身世帯基準の設定について検討することが必要であることなどを指摘しており,老齢加算廃止後も引き続き検証作業が必要であることを前提としている。 (エ)なお,中間取りまとめにおける様々な提言は,行政内部で検討を行うものであるが,いつどのように実施するかは,厚生労働大臣の合目的的裁量の範囲内というべきである。 第2老齢加算の減額,廃止が適法であること 憲法25条,法1条,2条,8条等について(1)憲法25条は,国家が生活水準の確保向上に努めるべきことを,国民一般に対して,概括的に国政上の任務として定めたのであって,個々の国民に具体的権利を付与したものではない。具体的な権利は,同条の趣旨を実現するために制定された法によって初めて与えられるものである。これは,生活保護法において,厚生労働大臣の定める保護基準による保護を受ける権利として具体化されている。 保護基準は,法 ,同条の趣旨を実現するために制定された法によって初めて与えられるものである。これは,生活保護法において,厚生労働大臣の定める保護基準による保護を受ける権利として具体化されている。 保護基準は,法8条2項所定の事項を遵守したものであることを要し,憲法25条の定める健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りるものでなければならないが,健康で文化的な生活なるものは,抽象的で相対的な概念であり,その具体的内容は,文化の発達,国民経済の進展に伴って向上するのはもとより,国民一般の所得水準・生活水準や社会経済情勢等の多数の- 139 -不確定要素を総合的に考慮して初めて決し得るものであるから,何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断(保護基準の設定)は,厚生労働大臣の合目的的裁量に委ねられており,裁量権の逸脱・濫用がない限り,違法とされることはない。 (2)前記第1のとおり,老齢加算の減額,廃止には合理性があり,厚生労働大臣による保護基準の設定に裁量権の逸脱,濫用は何ら存しない。また,前記第1のとおり,老齢加算の減額,廃止は原告らの生命,健康を脅かすようなものではないから,憲法13条に違反するとの主張は失当である。 経済的,社会的および文化的権利に関する国際規約について,(「」。)経済的社会的および文化的権利に関する国際規約以下A規約という9条,11条1項本文,15条1項の定めは,締約国において,社会保障についての権利その他各条項所定の権利が,国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し,上記権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって,個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは,同規約2条1項が締約国において「立法措 けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって,個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは,同規約2条1項が締約国において「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ことを求めていることからも明らかである。 そうすると,A規約9条,11条1項本文及び15条1項は,いずれも,個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではないのであって,これらの規定は本件処分の取消事由に当たらない。 法56条について(1)本件各処分は,職権による保護の変更(法25条2項)であり,老齢加算の減額を伴うものであって,既に決定された原告らの保護費を減額するものであるから,法56条の適用がある。 (2)もっとも,同条は,その文言上「決定された」とあるように,被保護者- 140 -に対する個別的な保護の決定をする保護実施機関と,当該被保護者との関係を定めたものであり,同条の対象となる不利益変更は,申請による保護の変更(法24条5項)や職権による保護の変更(法25条2項)等である。基準及び程度の原則そのものである法8条の厚生労働大臣の保護基準の改定には,法56条は適用されない。 (3)同条にいう「正当な理由」とは,法に規定する保護の変更,停止が行われるべき場合に該当することをいう。保護の実施機関は,厚生労働大臣の定める保護基準に拘束されるから(法8条,保護の実施機関である被告北九)州市は,変更決定の適法性を基礎づける評価根拠事実として,保護基準が改定された事実を主張立証すれば足りる。保護基準の改定が裁量権の逸脱,濫用に基づいて違法であることは「正当な理由」の評価障害事実として,原,告が主張立証すべきである。 実として,保護基準が改定された事実を主張立証すれば足りる。保護基準の改定が裁量権の逸脱,濫用に基づいて違法であることは「正当な理由」の評価障害事実として,原,告が主張立証すべきである。
▼ クリックして全文を表示