平成14(ワ)1409 各学納金返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年12月24日 神戸地方裁判所
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判決文本文18,794 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件甲事件被告は,甲事件原告に対し,金30万円及びこれに対する平成14年7月4日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 乙事件乙事件被告は,乙事件原告に対し,金91万1000円及びこれに対する同年8月20日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 丙事件丙事件被告は,丙事件原告に対し,金91万1000円及びこれに対する同年10月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(以下,甲事件原告Aを「原告A」,乙事件原告Bを「原告B」,丙事件原告Cを「原告C」という。)本件は,被告が設置運営する大学の各学部の入学試験に合格し,さらに入学に必要な手続を行った原告らが(原告Aについては第1次手続のみ完了,原告B及び原告Cについては第2次手続まで完了),合格発表の時点で被告と原告らとの間で準委任契約である在学契約が成立し,その後に大学への入学を辞退し在学契約を解除したとして,不当利得による利得金返還請求権に基づき,被告に対して,入学金,前期授業料,前期施設設備費及び前期教育充実費(ただし,原告Aについては入学金のみ)の返還と同合計額に対する各訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。これに対し,被告は,上記入学金等の法的性質及び在学契約において,一旦納入された入学金等は理由のいかんを問わず返還しない旨の特約があることを根拠に,支払を拒絶している。 第3 前提となる事実以 ,被告は,上記入学金等の法的性質及び在学契約において,一旦納入された入学金等は理由のいかんを問わず返還しない旨の特約があることを根拠に,支払を拒絶している。 第3 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,各項末尾掲記の証拠により容易に認定できる。 1 当事者原告Aは,平成14年2月1日,被告が設置運営する大学経営学部の入学試験を受験し,同月15日,同大学から合格通知を受けた者である。(争いがない)原告Bは,同年2月5日,同大学理工学部の入学試験を受験し,同月15日,同大学から合格通知を受けた者である。(争いがない)原告Cは,平成13年2月5日,同大学理工学部の入学試験を受験し,同月16日,同大学から合格通知を受けた者である。(争いがない) 2 同大学の入学手続(1) 概要同大学では,入学までの一連の手続を出願,受験及び入学手続に分類しており,出願においては,受験生が入学試験要項を熟読して出願する入試制度を決定する段階や,出願書類を準備する段階,入学受験料を振り込んだ上で,受験生が実際に出願する段階で必要な手続が規定されており,受験においては,受験生が受験票を受け取って,入学試験を受験し,大学側が合格発表をするまでの手続が規定されており,入学手続においては,第1次入学手続と第2次入学手続(詳細は後述)の段階と,入学に必要な書類を提出する学生部関係手続の段階及び入学式に出席する手続が規定されている。(甲2)なお,同大学の入試制度は,文学部,理工学部,経済学部,法学部及び経営学部の全学部について,A,B,C及びDの4つの日程で行われるほか,理工学部についてB日程S方式の入試が,経済学部及び経営学部についてEBA総合コース一般入試D方式の 学部,経済学部,法学部及び経営学部の全学部について,A,B,C及びDの4つの日程で行われるほか,理工学部についてB日程S方式の入試が,経済学部及び経営学部についてEBA総合コース一般入試D方式の入学試験が行われる。このうち,A日程,B日程,B日程S方式及び文学部,経済学部,法学部,経営学部のC日程については,入学手続が上記のとおり第1次,第2次の2つに分けられているが,理工学部のC日程,D日程及びEBA総合コース一般入試D方式(出願時期が2月末ころであり,合否通知が3月14日ころになされる。)については,入学手続を一括した「一括入学手続」が,他の入試制度の第2次入学手続と同時期に行われ,一括入学手続では,第1次入学手続において納入すべき入学金と,前期授業料,前期施設設備費,前期教育充実費を一括して支払うこととされている。(甲2)(2) 第1次入学手続同大学では,入学試験の合格者は,合格通知日から1週間程度の期間内に第1次入学手続納付金(以下「入学金」という。)を振り込まなければならず,合格者が同期間内に入学金を振り込まなかった場合は,合格者が入学を辞退したものとみなされ,合格者に対し第2次入学手続関係書類は送付されない。同大学の場合,入学金は全学部学科を通じて30万円である。(乙4)第1次入学手続の期間は,平成13年度は,同年2月16日から同月23日であり,平成14年度は,同年2月15日から同月22日までとされていた。 (甲2,乙4,弁論の全趣旨)なお,理工学部の複数の学科で入学試験に合格した者は,合格を希望する学科に手続を行うこととされ,第1次入学手続完了後の学科の変更は認められていない。(乙4)また,第1次入学手続要項には,「既納の入学手続納付金は、いかな 合格した者は,合格を希望する学科に手続を行うこととされ,第1次入学手続完了後の学科の変更は認められていない。(乙4)また,第1次入学手続要項には,「既納の入学手続納付金は、いかなる事情があっても返還しません。」との記載(以下,第2次入学手続納付金の返還を拒む後記(3)の条項と併せて,「不返還条項」という。)がある。(乙4)(3) 第2次入学手続第1次入学手続を行った合格者は,さらに,3月中旬から下旬にかけての所定の入学手続期間内に前期授業料と前期施設設備費(理工学部の場合には更に前期教育充実費)を併せた第2次入学手続納付金(以下「授業料等」という。)を振り込まなければならず,期間内に振り込まなかった場合は入学を辞退したものとみなされる。平成14年度の授業料等は,経営学部が43万7000円で,理工学部が61万1000円である。(乙5)第2次入学手続の期間は,平成13年度は,同年3月15日から同月24日であり,平成14年度は,同年3月15日から同月25日である。(乙5,弁論の全趣旨)また,第2次入学手続要項には,「既納の入学手続納付金は、いかなる事情があっても返還しません。」との記載があるほか,「入学手続完了後、入学を辞退する場合は、「退学願」を提出しなければなりません。「退学願」の用紙は、下記(省略)の同大学教務部まで請求してください。」との記載,並びに「「退学願」を提出された場合は、諸費および生活協同組合出資金を返還します。諸費の返還については、「退学願」に同封されている「諸費返還願出書」の提出により行います。」,「なお、それぞれの返還に関する問い合わせは、下記(省略)までお願いします。」との記載がある。(乙5) 3 原告らが入学を辞退した経緯(1) ている「諸費返還願出書」の提出により行います。」,「なお、それぞれの返還に関する問い合わせは、下記(省略)までお願いします。」との記載がある。(乙5) 3 原告らが入学を辞退した経緯(1) 原告A関係原告Aは,平成14年2月20日に入学金30万円を被告に納入したが,その後の入学手続を行わなかった。(争いがない)(2) 原告B関係原告Bは,同月22日に入学金30万円を被告に納入し,同年3月22日に授業料等61万1000円及び学生自治会入会金等諸費5万7500円,並びに生活協同組合出資金3万円を納入した。(争いがない)同原告は,同年度の同大学入学式に参加することなく,また,授業に出席することもなかった。(弁論の全趣旨)同原告は,同年5月2日に生活協同組合出資金3万円の,同年6月4日に学生自治会入会金等諸費5万7500円の各返還金を受領した。(争いがない)(3) 原告C関係原告Cは,平成13年2月20日に入学金30万円を被告に納入し,同年3月23日に授業料等61万1000円及び学生自治会入会金等諸費5万7500円,並びに生活協同組合出資金3万円を納入した。(争いがない)同原告は,同年度の同大学入学式に参加することなく,また,授業に出席することもなかった。(弁論の全趣旨)同原告は,同年4月27日に学生自治会入会金等諸費5万7500円,同年5月14日に生活協同組合出資金3万円の各返還金を受領した。(争いがない) 4 その他平成14年度の国公立大学入学試験の後期日程の合格発表は,同年3月20日から同月24日までであるが,できるだけ同月23日までとされ,実際には同日が土曜日であるので,同月22日までになされ 平成14年度の国公立大学入学試験の後期日程の合格発表は,同年3月20日から同月24日までであるが,できるだけ同月23日までとされ,実際には同日が土曜日であるので,同月22日までになされた。(弁論の全趣旨)第4 争点及び当事者の主張 1 入学金及び授業料等(以下,併せて「学納金」という。)の法的性質(1) 原告らの主張ア在学契約の性質在学契約とは,被告が原告らに対して広く知識を授けると共に,知的・道徳的及び応用的能力を展開させるための教育を提供するべき義務を負担し,原告らが,被告に対して,上記教育役務に対する対価を支払う義務を負う継続的有償双務契約であり,その法的性質は準委任契約である。 入学案内の交付が在学契約ないし学校教育契約(以下,総称して「在学契約」という。)の申込みの誘引であり,原告らが被告に対して入学願書を提出することが在学契約の申込み,被告が入学試験の合格発表をすることが承諾にあたる。したがって,原告らと被告との間では,遅くとも,入学金納付時には,入学者が学則に規定された入学手続を履践しないこと,あるいは,入学式に参加しないことを解除条件とする在学契約が成立していたものである。なお,合格発表による承諾は,受験生が合格発表後の所定の手続を履践することを条件とした条件付き承諾であって,受験生が所定の手続を履践しない場合には,その時点で在学契約に規定された解除条件の成就によって在学契約が解消される。在学契約の解除原因は個別的な合意解除や,受験生からの一方的解約通知である(民法651条1項)。 したがって,原告Aは,第2次入学手続の期限である平成14年3月25日に在学契約を解除したことになり,原告Bは,同月30日に入学を辞退する旨を通知し, ある(民法651条1項)。 したがって,原告Aは,第2次入学手続の期限である平成14年3月25日に在学契約を解除したことになり,原告Bは,同月30日に入学を辞退する旨を通知し,原告Cは,平成13年3月29日に入学を辞退する旨を通知したことから,民法651条もしくは合意解除に基づき,それぞれに上記在学契約が解除されたことになり,被告は,原告から受領した学納金を,受任者の前払費用ないし前払報酬として,在学契約の終了に基づき,不当利得として原告らに返還すべき義務を負う。 また,仮に,民法651条の適用がなく,また,個別的合意解除が認められなかったとしても,原告B及び原告Cは入学式に参加していないから,解除条件の成就によって,在学契約は解除されたものである。 仮に,合格発表が在学契約の承諾ではなく,入学手続要項(乙4,5)所定の必要書類を提出すると共に,学納金を納入した時点において成立するとしても,下記理由から原告らは学納金である91万1000円ないし30万円の返還を請求できる。 イ入学金について入学金は,本来は,学生証発行などの入学手続を行うための事務手数料ないし事務費用として徴収され始めたものであるが,人件費その他の大学運営の経費一般に充てられており,役務提供の対価,すなわち,教育役務の報酬としての性格が強いものである。したがって,在学契約を解除することによって,原告らは,それぞれ,自らが納付した入学金30万円の返還を被告に請求することができる。 被告は,入学金が入学資格保持の対価であると主張するが,そのような地位の保持を必要としない編入学においても入学金は要求されており,被告の説明には理由がない。 ウ授業料等について学生 学資格保持の対価であると主張するが,そのような地位の保持を必要としない編入学においても入学金は要求されており,被告の説明には理由がない。 ウ授業料等について学生が納付する金額は名目の如何を問わず大学側の役務提供の対価というべきであるが,授業料は,その名称,毎年支払うという性格,金額の大きさからみて,大学の教育役務の対価であることは明らかである。また,施設設備費及び教育充実費は,毎年支払うという性格,金額の少額さから判断して,教育役務の提供に伴う費用と解される。 したがって,在学契約を解除することによって,原告B及び原告Cは,それぞれ,自らが納付した授業料等61万1000円の返還を求めることができる。 (2) 被告の主張ア在学契約の性質(ア) 第2次入学手続は,在学契約の申込みの黙示の意思表示であって,被告としては,合格者からの入学手続があった場合には承諾する義務を負っているので,慣習上特段の意思表示をしないことになっており,被告が授業料等を受領した際に在学契約が成立すると解すべきである。 (イ) 原告らの主張するとおり,在学契約が準委任契約として民法651条1項の適用があるのであれば,大学も在学契約を解除し,学生に対する教育等の提供を拒絶することが可能となるが,大学側からの在学契約の解除は,学校教育法施行規則13条3項各号の処分事由がある場合に制限されているなど,典型的な準委任契約と考えることはできない。 (ウ) 原告B,原告Cが,同原告らの主張する時期に入学を辞退したことは不知。同大学では,第2次入学手続以降に入学辞退の申し出があっても応じておらず,学生の二重学籍を避けるため,自主退学届を提出させ,教授会で審議した上,遡 同原告らの主張する時期に入学を辞退したことは不知。同大学では,第2次入学手続以降に入学辞退の申し出があっても応じておらず,学生の二重学籍を避けるため,自主退学届を提出させ,教授会で審議した上,遡及して4月1日付けで退学としている。 (エ) その余の原告らの主張は争う。 イ入学金について入学金は合格者が当該大学への入学申込資格(在学契約締結権)を在学契約締結期限(第2次入学手続期限)まで保持する対価と評価すべきものである。 したがって,同期限の経過によりその対価たる目的を達成しており,返還の問題など発生しない。 ウ授業料等について在学契約は授業料等の払込みによって成立するものであるから,授業料等は,学生としての地位を取得することと教育を受け施設等を利用する権利を取得することの対価である。 ところで,在学契約の一方的な解除は認められていないところ,一方的な辞退によって解除が可能である現状に鑑みると,授業料等は,法的には,学生(場合によっては,受験生)にとって,「理由なしの解約権」取得の対価と解される。 すなわち,在学契約においては,民法651条1項の適用はないから,受験生からの一方的無理由解除が認められるとしても,契約の一般原則からして,履行利益の損害賠償責任を負うべきであるところ(最高裁昭和56年1月19日判決・民集35巻1号1頁参照),授業料等を放棄することによって被告はその賠償を求めないのであるから,不返還条項も適法である。 この点,原告らは,民法651条1項で解除できるというが,同項を不当に拡張して適用することは,契約法の一般原則とも整合的でなく慎むべきであり,同条同項の適用があるのは,無償契約又は法律 この点,原告らは,民法651条1項で解除できるというが,同項を不当に拡張して適用することは,契約法の一般原則とも整合的でなく慎むべきであり,同条同項の適用があるのは,無償契約又は法律行為の委任契約の場合に限られるものと解するべきである。 したがって,いずれにせよ,在学契約成立後の一方的な入学辞退に際して,授業料等の返還の問題は発生しない。 2 在学契約は消費者契約法2条3項にいう「消費者契約」か(1) 原告らの主張個人である原告らは,消費者契約法2条1項に規定された「消費者」に該当し,法人である被告は,同条2項に規定された「事業者」に該当する。 したがって,原告らと被告との間で締結された在学契約は,同条3項にいう「消費者契約」に該当する。 (2) 被告の主張消費者契約法が適用される契約の範囲は,同法1条の目的規定から限定的に解釈すべきところ,消費者契約法の目的は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差の是正にあるのであるから,いずれの大学でも実施されていることが周知の事実であり,かつ,同大学の入学試験要項及び入学手続要項にも記載されている本件では,上記情報の格差がなく,また,一方的辞退が問題である本件では交渉力の格差も問題とならない以上,不返還条項を含む在学契約に消費者契約法の適用はない。 そもそも,消費者契約法は,情報力の格差を前提に立法されたのに,情報力の格差を要件とせず,包括的に契約一般に適用される構造となっている点で矛盾しているのであり,情報格差のない契約に拡張して適用することは慎むべきである。 3 不返還条項は,消費者契約法9条1号にいう「契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める条項」か 矛盾しているのであり,情報格差のない契約に拡張して適用することは慎むべきである。 3 不返還条項は,消費者契約法9条1号にいう「契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し,又は違約金を定める条項」か(1) 原告らの主張不返還条項は,在学契約を解除した際に学納金を違約金ないし解約料として没収する内容の契約条項であるところ,実質的に損害賠償の額を予定し又は違約金を定めたものとして機能していることから,同条号前段に該当することは明らかである。また,同条号の「解除」には,消費者による法定解除権の行使による解約告知も,事業者・消費者間の合意解除も含まれる。なお,特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」という。)49条の解釈においても,不返還条項は損害賠償の予定又は違約金を定めたものと理解されている。 (2) 被告の主張不返還条項が損害賠償額の予定や違約金条項にあたらないことは文言上明らかである。また,自己の利益較量という自己の事情で納付金によって得た利益を放棄した以上,原被告間の情報の質及び量並びに交渉力の格差が問題となる余地がないから,消費者契約法9条1号は適用されるべきではない。 そもそも,不返還条項は原状回復を制限するものであって,損害賠償額や違約罰を定めたものではないから,損害賠償額や違約罰の定めに関して規定する同号は,不返還条項については適用されない。 なお,大学教育を特定商取引法にいう「特定継続的役務提供」と定める政令はないし,学校法人や学校教育法に規定する学校は特定商取引法にいう「役務提供事業者」に該当しないと解釈されている(平成11年10月21日生衛発第1531号,平成11年10月13日産局第5号参照)。 4 不返還条項は,消費者契約法9条1号にいう「平均的 引法にいう「役務提供事業者」に該当しないと解釈されている(平成11年10月21日生衛発第1531号,平成11年10月13日産局第5号参照)。 4 不返還条項は,消費者契約法9条1号にいう「平均的な損害の額」を超えるものか(1) 原告らの主張ア 「平均的な損害の額」の立証責任「平均的な損害」とは,損害額算定に合理性があり,かつ,社会常識にも合致した通常の損害額という意味であり,そのような意味における平均的な損害は,事業者こそよく知り得るところであり,証拠にも事業者が最も近い立場にある。したがって,その額の立証責任は被告にある。 イ被告の損害の額役務提供開始前に在学契約を解消した段階において教育機関に生じる経済的損害(「平均的損害」)などは一般的に考えがたく,そもそも,大学としては,定員割れを防ぎつつ,公的補助費を削減されない人数を確保するため,辞退者を見越した人数の合格を認めているので,辞退者の出現は予定されているものであって,被告に損害が生じる余地はない。 したがって,原告らが前納した学納金全額を没収する不返還条項は,平均的損害を超えた定めであるから,学納金全額について,無効な契約条項である。 なお,仮に被告に損害があるとしても,それは,特定商取引法施行令16条に定める金額である,1万5000円や1万1000円程度である。 (2) 被告の主張ア 「平均的な損害の額」の立証責任消費者契約法9条1号は,損害賠償額の予定等が平均的損害を超える場合には当該超える部分が無効となると規定している。したがって,例外である無効を主張する原告が立証責任を負うべきである。なお,平均的損害という積極的事実を証明対象とす 額の予定等が平均的損害を超える場合には当該超える部分が無効となると規定している。したがって,例外である無効を主張する原告が立証責任を負うべきである。なお,平均的損害という積極的事実を証明対象とするものであるから,消極的事実の立証の負担を原告に負わせることにはならない。 イ被告の損害の額在学契約における「平均的損害」とは,入学辞退の場合,学生が4年間の在学期間中に納入する学納金であり,入学時納付金の不返還によって被告が取得する額は「平均的な損害」を超えるものではない。 5 不返還条項は,消費者契約法10条にいう「消費者の利益を一方的に害するもの」として無効か(1) 原告らの主張ア主張立証責任について消費者契約法10条の規定の判断は,当該条項によって消費者が受ける不利益と当該条項を無効とすることで事業者が受ける不利益との利益衡量で決されるところ,消費者と事業者は,それぞれの不利益につき,評価根拠事実と評価障害事実を主張立証することを要すると解すべきである。 イ原告らの不利益(評価根拠事実)学納金は金額も高額で,財産権の侵害は大きいし,自己決定権・大学選択の自由への制約もあるほか,受験生や親の心理につけ込んで押しつけられた不利益約款であるから,不利益の内容は著しい一方,事業者に不利益は存在せず,不返還条項を定める必要性,相当性がない。 ウ被告の不利益(評価障害事実)合格者の入学辞退によって入学者が収容定員を下回る不利益は考えられるが,私立大学においては,毎年5月1日時点で入学定員の1.47倍を入学させた場合には公的補助金が交付されなくなるから,被告にとっては,むしろ,一定の割合で入学辞退をしてもらわねば困るくらいである。 が,私立大学においては,毎年5月1日時点で入学定員の1.47倍を入学させた場合には公的補助金が交付されなくなるから,被告にとっては,むしろ,一定の割合で入学辞退をしてもらわねば困るくらいである。 (2) 被告の主張ア主張立証責任について消費者契約法10条の規定は,民法の一般原則に対する重大な例外を定めた規定であるし,規定の体裁からしても,無効を主張する原告らが主張立証すべきである。 イ双方の不利益消費者契約法10条によって無効となるのは,当該契約条項によって消費者が受ける不利益とその条項を無効にすることによって事業者が受ける不利益を衡量して両者が均衡を失する場合で,その程度が信義則に反するほど重大な場合に限られるところ,原告らの解除には,原告らが支払った学納金を上回る履行利益の損害賠償義務を伴うことを考慮すると,本件不返還特約が,上記均衡を失するとはいえない。 6 不返還条項は,公序良俗に反して無効か(1) 原告らの主張不返還条項は,以下の事情から,暴利行為に該当し,公序良俗に反する無効な特約である。 ア他人の無思慮・窮迫に乗じていること被告は,学納金の納入期限を他大学の合格発表前に設定し,原告らは,国立大学等の他大学の合否が未定の段階で,被告大学に入学するか否かの決断をせざるを得ない立場に立たされていたところ,不返還条項は同大学から出される一方的な条件で,原告らにとって変更の余地のないものである。 仮に,学納金を納めず,他大学にも不合格であるとすると,更に1年間準備するか,場合によっては大学進学自体を断念しなければならず,その精神的・経済的負担は多大なものがあるから,不返還条項は原告らの窮迫に乗じたものである。 格であるとすると,更に1年間準備するか,場合によっては大学進学自体を断念しなければならず,その精神的・経済的負担は多大なものがあるから,不返還条項は原告らの窮迫に乗じたものである。 イ甚だしく不相当な財産的給付を約させていること被告は過去長期間にわたって,入学希望者の特殊かつ不安定な立場を利用して,何らの役務の提供を受けていない受験生から経済的対価性のない財産的給付を取得して,大学を運営してきた。 ウ消費者契約法の立法経緯消費者契約法の立法経緯及び学納金問題に関する議論の動向等を十分に考慮すれば,消費者契約法の内容は,平成13年3月31日以前の在学契約に関しても,民法90条の内容となって,適用されるものである。 エその他学納金納入の事実はなんら入学意思の強さを表すものではなく,不返還条項は,学生を確保するインセンティブとなるものではないのに,被告は,経営資金確保するため,不返還条項を原告らに強いた。 被告は,定員の1.47倍まではオーバーしても何らのペナルティーも受けない。原告らには,大学選択の自由があるにもかかわらず,被告の経営状況によって,原告らの権利が侵害されることは不当である。 私立大学は,単なる一法人ではなく,国立大学と並ぶ公益的機関として存在しているところ,私学助成法3条は,学校に在学する学生の修学上の経済的負担の適正化を図る努力義務を定めており,この趣旨は原告ら受験生に対しても及ぶというべきである。 (2) 被告の主張ア他人の無思慮・窮迫に乗じたものではない同大学の第2次入学手続は,国公立大学の後期日程の合格発表後であるから,授業料等の不返還条項は原告 (2) 被告の主張ア他人の無思慮・窮迫に乗じたものではない同大学の第2次入学手続は,国公立大学の後期日程の合格発表後であるから,授業料等の不返還条項は原告らの窮状に乗じたものではない。 そもそも,入学金は入学資格を国公立大学の後期日程の合格発表まで保持する対価であり,授業料等は学生たる地位の取得の対価であるか,学生からの無理由解約権の対価であるから,いずれも対価性を有している。 原告らは,受験生や親の冷静な判断能力を奪われた心理状態につけ込んでいると主張するが,受験前から分かっていることであって,理由にならない。経済的困窮は,原告らについて述べられたものではない。 イ甚だしく不相当な財産的給付を約させたものではない原告らは,入学金及び授業料等の払込みによって,同大学に入学する権利を確保したのであって,入学辞退は利益較量の上で自らその権利を放棄したもので,いわゆる滑り止めとしてそれ相当の利益を享受したものである。他方で,同大学は定められた収容定数を遵守すべき義務があり,定数超過も定数割れも,国庫補助金を受給する上では望ましくなく,受験生が多数校を受験する現状にあっては,早期に,かつ,確実に収容定数に足りる入学生を確保する必要性があることに加え,被告は公益法人の一種であるから,返還されなかった納付金は,在学生の学費の軽減に役立っている等の事情からすると,納付金の不返還が公序良俗に反することはない。 授業料等については,受験生からの無理由解除を認める対価であるから,不相当な財産的給付ではない。受験生は,これによって,被告からの履行利益の損害賠償請求を免れることができるのである。 ウ消費者契約法の立法経緯 無理由解除を認める対価であるから,不相当な財産的給付ではない。受験生は,これによって,被告からの履行利益の損害賠償請求を免れることができるのである。 ウ消費者契約法の立法経緯消費者契約法の内容は創設的なものであるから,同法の内容が民法90条の内容となって遡及的に公序良俗の内容を形成するものではない。 エその他原告らは,特定商取引法の規定と対照しているが,4年の修業年限が定まった在学契約とは異なるほか,学校法人や学校教育法に規定する学校は,同法にいう役務提供事業者に該当しないとするのが通達の見解である。 第5 争点に対する判断 1 在学契約について(争点1)(1) 大学の在学契約とは,大学が一定の教育役務等を提供し,学生がその対価を支払うことを内容とする有償の双務契約である。 私立大学を設置運営する学校法人と在学契約を締結しようとする者は,当該大学の入学試験を受験してそれに合格することが要求され,合格した者には入学資格が与えられる(なお,編入学等の手続によって入学資格を取得する場合もあるが,在学契約の前提として入学資格を取得することが必要である点は同じである。)。合格者は入学手続要項等に記載された手続を完了することによって在学契約の申込みを大学側に対して行ったことになり,大学が異議を留めないで入学手続の完了を受け付けることによって,在学契約の黙示の承諾があったものとみなされる。 もっとも,入学手続に,第1次手続,第2次手続と段階がある場合には,その一連の過程を完了して初めて有効な在学契約が成立すると解すべきであるから,学校側で定める全ての入学手続を経た時点において,はじめて完全に在学契約が成立すると解される。したがって,被告が設置運営す その一連の過程を完了して初めて有効な在学契約が成立すると解すべきであるから,学校側で定める全ての入学手続を経た時点において,はじめて完全に在学契約が成立すると解される。したがって,被告が設置運営する同大学においても,第1次入学手続要項(乙4)や第2次入学手続要項(乙5)に,所定の手続を行わない場合には入学を辞退したものとみなす旨の記載があることからも明らかなように,大学の指示する一連の手続を全て終えることが在学契約成立の前提であると解される。 (2) これに対し,原告らは,入学試験を受験することが在学契約の申込みであり,合格発表が承諾であると主張するが,大学側が,合格発表後に各種の入学手続を定め,それに応じない場合には入学辞退と見なすものと規定している現状に鑑みると,合格発表を経たにすぎない段階で在学契約が成立し,学生が潜在的にも役務の提供を受けることができる地位を取得したものとは到底考えられないのであって,原告らの主張は採用できない。 2 学納金の性質について(1) 学納金とは,上記入学手続の過程において,被告の定める入学手続要項による入学手続(入学後は在学契約の内容となる約款等の規約)に基づいて,学生となろうとする者(入学後は学生として役務の提供を受け続けようとする者)が学校側に納付する金員をいうところ,一口に学納金といっても,その内容は様々な性質を帯びたものと解され,その金額や支払時期,名目等からその性質は個々に決定されるべきものである。 (2) 授業料等について学納金のうち,授業料等については,その名目からしても,また,学部ごとに金額の差があることが一般に知られていることや,学生が入学後においても支払うべき金員であるという性格を有していることに鑑みても,入学後において被告から役務の提供 その名目からしても,また,学部ごとに金額の差があることが一般に知られていることや,学生が入学後においても支払うべき金員であるという性格を有していることに鑑みても,入学後において被告から役務の提供を受けることの対価としての性質を有するものと理解すべきである。 この点,被告は,授業料等が,無理由の解約の対価であると主張するが,在学契約も準委任契約類似の無名契約として,少なくとも学生の側から理由のない一方的解除が可能な契約であるとするに疑いないものであるし,中途退学者が在学契約を解除するに際して,やむを得ない事由や学納金相当の財産権の放棄がなければ,大学から損害賠償請求を受け得る地位にあるとは到底考えられないから,被告の上記主張は採用できない。 (3) 入学金についてア前記争いのない事実及び公知の事実によると,入学金は,学生が入学時に一度だけ支払うべき金員であるという性格を有する上,その他の学納金に比してその額が低額であり,納入時期についても入学手続の冒頭の合格発表から比較的短期間に設定され,「私立大学の入学手続時における学生納付金の取扱いについて」(文管振第251号昭和50年9月1日文部大臣所轄各学校法人理事長あて文部省管理局長文部省大学局長通知・乙1,以下「通知」という。)に,「入学料以外の学生納付金については,合格発表後,短期間内に納入させるような取扱いは避けること」とされていることから,文部行政においても,入学金は,その他の授業料等の学納金とは性質が異なるものとして扱われていると見られることに照らし,大学から教育役務等の提供を受けること自体の対価であるとは解されない。 他方,これを納付する学生の立場からすれば,自ら入学試験に合格することによって得た,特定の大学に入学し得る地位 学から教育役務等の提供を受けること自体の対価であるとは解されない。 他方,これを納付する学生の立場からすれば,自ら入学試験に合格することによって得た,特定の大学に入学し得る地位を保持することは,それによって当該大学への進学というひとつの進路が確保されることであり,その他の可能性と併せて,自らの進路についての選択肢を多様化することにつながるものである。 したがって,特定の大学に入学し得る地位を取得すること自体に一定の価値を有するものと評価することが可能であり,前記のとおり,入学金が入学時に一度だけ支払うべき金員であることにも鑑みれば,当該大学に入学し得る地位を保持することの対価(一種の権利金)としての性質を有するものと解するのが相当である。 イこの点,原告らは,入学金も,被告から教育役務を受けることの対価であると主張するが,入学金が授業料等とは別の時期において,なおかつ,合格発表直後の早期に比較的短期間で徴収されている現状(公知の事実)からすると,入学金名目で徴収されている金員の性質を原告らの主張するようなものとして理解することはできない。 また,原告らは,編入学生は入学資格を保持する必要がない旨を述べて,編入学生からも入学金を徴収している以上,入学金を権利金と考えることはできないと主張するが,入学金の性格を,編入学生から徴収するそれと統一的に解するべきであるとは必ずしもいえず(一般の入学生との負担の均衡を図るため編入学生にも入学金を負担させていると解することもできる。),少なくとも合格発表後の短期間に支払期限が設定される入学金が,複数の大学を受験する一般の受験生を主たる対象として設定されているものであることは公知の事実といえるから,原告らの主張は,理由にならないも なくとも合格発表後の短期間に支払期限が設定される入学金が,複数の大学を受験する一般の受験生を主たる対象として設定されているものであることは公知の事実といえるから,原告らの主張は,理由にならないものであって,上記判断を覆すに足るものではない。 ウなお,同大学の入試制度においても,上記争いのない事実のとおり,C日程理工学部,D日程,EBAD方式においては,3月中旬から下旬にかけて,入学金を授業料等と併せて一括して納付することとされているが,同じ学生としての地位を取得するものであるから学生相互間の平仄を合わせる趣旨で納入すべきとされているものとも解されるし,合格発表後の一定期間(平成14年度入試では,3月14日に合格発表が行われ,3月15日から同月25日までに一括して納付すべきものとされている,甲1)に納付すべきとされてはいるものの,3月中旬から下旬にかけて授業料等と一括して納付すべきとされる場合の入学金の性質は,原告らが納付した入学金とは性質を異にするものといわざるを得ないものであるから,単に名目が同じである一括納付制度における入学金の性質いかんによって,上記判断が覆えるものではない。 したがって,原告らの主張には理由はない。 3 学納金返還の可否について(1) 入学金について以上の認定判断によると,学納金のうち,入学金については,受験生が大学に入学し得る地位を得たことの対価であるという性質を有しているから,第1次入学手続において入学金の納付が要求されている同大学では,その後の第2次入学手続を行い得る地位が確保されれば,入学金を納入した瞬間に,反対給付としての地位を取得したものとしてその目的を達するといえるのであって,その額が著しく高額とはいえない限り,その後に受験生から大学側に 手続を行い得る地位が確保されれば,入学金を納入した瞬間に,反対給付としての地位を取得したものとしてその目的を達するといえるのであって,その額が著しく高額とはいえない限り,その後に受験生から大学側に対して入学金の返還を求めることはできないものである。 (2) 授業料等について他方,授業料等については,学納金を納入して在学契約が締結された後に,支払った学納金と対価性を有する役務提供,すなわち,次年度が開始されることによって学生が享受する役務提供を受ける前に,在学契約が解除されれば,被告から教育役務等の提供を受けることなく在学契約が終了する以上,前払報酬及び前払費用にあたる授業料等は,受験生に返還されるべきものと解される(民法656条,651条1項,652条,620条参照)。 4 在学契約の終了についてそこで,在学契約の終了時期及び終了方法につき検討するに,在学契約は,役務の提供を内容とする準委任契約類似の無名契約であるところ,大学は学生の委託に基づいて役務を提供するのみであって,在学契約成立後に,少なくとも学生側から一方的に在学契約を将来に向かって解除することができるものというべきであるから,学生からの解除をもって,在学契約は終了することになる。 もっとも,在学契約は,通常の役務提供契約とは異なる社会的・公益的な契約関係を生じさせるものであることは明らかであるから,二重学籍等の発生を避けることが社会的に要求されており,かつ,慎重かつ段階的な各種の入学手続を経て在学契約が締結されている経緯との対比に照らしても,学生からの在学契約の解除については,その意思確認を厳密に行うため,その方法について一定の制限が加えられることもやむを得ないというべきであり,とりわけ,同大学の場合には,在学契約の成立が,国 ても,学生からの在学契約の解除については,その意思確認を厳密に行うため,その方法について一定の制限が加えられることもやむを得ないというべきであり,とりわけ,同大学の場合には,在学契約の成立が,国公立大学の後期日程の発表もおおよそ終了した時期と考えられる3月の下旬に設定されていることにも鑑みれば,入学辞退による在学契約の終了についても既に在籍している学生の場合と同様の手続が求められても不合理といえない事情があると考えられる。したがって,同大学において,退学願の提出を入学辞退による在学契約終了の方式と定めていることは相当性があり,それを要求することが入学手続要項(乙5)においても明記されていることから,当該規定は一種の約款として在学契約の内容となっているものと解するのが相当である。 5 原告らの在学契約の成否について以上検討したところに照らせば,本件では,原告Aについては,第2次入学手続の期限である平成14年3月25日の経過をもって入学手続を辞退したものとみなされており,結局,原告Aと被告との間に在学契約は成立していないものと認められる。他方,原告Cについては,同原告が第2次入学手続を行い,異議を留めず同大学が学納金等を受領した平成13年3月23日に,同原告と被告との間で在学契約が成立したと認められ,また,原告Bについても,同原告が第2次入学手続を行い,異議を留めず同大学が学納金等を受領した平成14年3月22日に,同原告と被告との間で在学契約が成立したと認められる。 6 原告らは学納金の返還を求め得るか(1) 入学金についてア上記争いのない事実によれば,原告らは,いずれも第1次手続を終え,入学金を被告に対して納付しているが,原告B及び原告Cは,その後に被告に対する第2次入学手続を経て在学契約を締結 いてア上記争いのない事実によれば,原告らは,いずれも第1次手続を終え,入学金を被告に対して納付しているが,原告B及び原告Cは,その後に被告に対する第2次入学手続を経て在学契約を締結するに至っており,原告Aにおいても,第2次入学手続を行うことができる地位を取得していること自体は疑いはないから,いずれの原告も,入学金を納付した時点で,反対給付としての入学し得る地位を取得しているのであって,その後に,入学手続を辞退して在学契約を締結しなかったり,あるいは,在学契約をいったん締結した後に在学契約を解消したとしても,被告が入学金を返還すべき義務を負うことはないと解すべきである。 イなお,上記のとおり,入学金は一種の権利金としての性格を有するものであるから,その交付にかかる契約関係は,在学契約に従たる手付契約類似の性質のものとも解されるのであって,平成13年4月1日以降は消費者契約法の法理により,また,それより前においては,民法90条の法理によって,それぞれ規律を受けるとも考えられる。この点,入学金が著しく高額であったり,払込時期が甚だしく早期である等,その設定が極めて不当であると評価し得る場合には,入学金の受領が不相当な財産的利益を目的とするものとして無効であると考える余地もないではない。しかし,大学側では,最短でも4年間に渡って学生人数の影響を受ける立場にあり,定員割れがあれば財政的に支障を生ずることや受験生側では入学資格を確保することにより安んじてより志望の高い他大学を受験できる利益を得ることなどの事情を考慮すると,本件の30万円という入学金の額が甚だしく高額であるともいえないし,2月20日前後を払込期限とするその時期に照らしても,同大学における入学金規定が著しく不相当であるとは解されない。また,上記性質を有す の30万円という入学金の額が甚だしく高額であるともいえないし,2月20日前後を払込期限とするその時期に照らしても,同大学における入学金規定が著しく不相当であるとは解されない。また,上記性質を有する入学金の定めが,何らかの契約に付随する損害賠償の額の予定であるとか,違約金の定めに当たるといえないことは明らかであるし(消費者契約法9条各号参照),消費者の利益を一方的に害する義務加重条項に当たるといえないことも明らかである(同法10条参照)。 したがって,原告らは,いずれも入学金の返還を求めることはできない。 (2) 授業料等について上記認定判断に照らすと,授業料等の合計61万1000円を納めた原告C及び原告Bについては,同原告らが,対価である学校教育役務の提供を受ける前である4月1日までに各自の在学契約を解除していれば,各原告において学納金の返還を被告に対して求めることができるものと解される。 しかし,被告と同原告らとの間の在学契約の解除は,一方的な電話による通知などでは足りず,同大学教務部(以下「教務部」という。)において準備される退学願を教務部に提出して行うことによってなされるべきことは既に認定説示のとおりである。なお,仮に上記のような厳格な要式まで求められないとしても,それに代替し得る客観的に明確な方法で通知する必要があるというべきである。 かかる観点から同原告らにつき検討すると,同原告らは,単に入学辞退を通知したと主張するのみであり,原告Cが平成13年3月31日までに教務部に退学願を提出したこと及び原告Bが平成14年3月31日までに教務部に退学願を提出したこと,ないしそれに代替し得る方法で通知したことを主張立証しないから,結局,原告Cについては平成13年4月1 務部に退学願を提出したこと及び原告Bが平成14年3月31日までに教務部に退学願を提出したこと,ないしそれに代替し得る方法で通知したことを主張立証しないから,結局,原告Cについては平成13年4月1日の到来により,また,原告Bについては,平成14年4月1日の到来によって,授業料等の返還を求め得る地位を失ったものである。 したがって,原告B及び原告Cは,授業料等についても,返還を求めることはできない。 (3) 結論そうであれば,原告らは,いずれも学納金の返還を求めることはできない。 7 結語以上によれば,その余につき判断するまでもなく,原告らの請求にはいずれも理由がないことは明らかである。 第6 結論よって,原告らの本訴請求にはいずれも理由がないからこれを棄却し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官田中澄夫 裁判官大藪和男裁判官三宅知三郎

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