平成23年9月29日判決言渡平成22年(行ウ)第366号不当労働行為救済命令取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求中央労働委員会が中労委平成21年(不再)第6号事件及び同第7号事件について平成22年6月2日付けでした命令のうち主文第1項及び第2項の部分を取り消す。 第2 事案の概要1(1) 被告補助参加人(以下「組合」という。)には,その組合員である原告の従業員で組織するA分会(以下,同分会を「分会」といい,その構成員を「分会員」という。)があるところ,組合は,原告との間における平成18年度の冬季賞与(以下,平成18年度冬季を「当季」ともいい,同年度冬季賞与を「本件賞与」という。なお,原告の主張では,賞与を一時金と呼称しているが,引用部分以外は賞与に統一する。)に関する団体交渉(以下「団交」という。)を含む交渉過程における原告の組合に対する対応や態度は不誠実なものであり,労働組合法(以下「労組法」という。)7条2号の不当労働行為に該当するとして,平成19年3月28日,東京都労働委員会(以下「都労委」という。)に対し,不当労働行為救済申立てをした(都労委平成19年(不)第25号事件。以下,同事件を「本件初審事件」といい,同申立てを「本件初審申立て」という。)。 (2) 都労委は,平成20年12月16日,本件初審申立てのうち,平成18年 10月12日以降同年11月17日までの間の本件賞与に関する一連の団交において,原告が,①査定結果を含めて分会員に対する本件賞与の個別支給額の根拠の説明を拒否したこと,②組合が開示を求めた資料のうち, 0月12日以降同年11月17日までの間の本件賞与に関する一連の団交において,原告が,①査定結果を含めて分会員に対する本件賞与の個別支給額の根拠の説明を拒否したこと,②組合が開示を求めた資料のうち,非分会員分を含めた全従業員の賞与支給総額,賞与平均支給額,平均月額賃金,平均年齢についてのものを開示しなかったことについて,いずれも労組法7条2号の不当労働行為に該当するとして,原告に対して組合に文書交付をすること等を命じ,その余の申立てを棄却する命令(以下「本件初審命令」という。)を発した。 (3) 原告及び組合は,それぞれ本件初審命令を不服として,中央労働委員会(以下「中労委」という。)に対して再審査を申し立てたところ(平成21年(不再)第6号事件及び同第7号事件),中労委は,平成22年6月2日,上記(2)①の原告の行為のうち平成18年11月9日及び同月17日に開催された団交における対応行為について,不誠実な交渉態度であるとして労組法7条2号の不当労働行為に該当するものと認め,本件初審命令を変更して,原告に対して不当労働行為該当性を認めた上記行為に関して組合に文書交付をすることを命じ,その余の原告の再審査申立て及び組合の再審査申立てを棄却する命令(以下「本件命令」という。)を発した。 (4) 本件は,本件命令中の上記(2)①の行為について文書交付を命じ,その余の原告の再審査申立てを棄却した部分を不服とする原告が,同部分の取消しを求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告原告は,電気部品,産業用コンピューターの輸入販売及び電気工具の輸出等を業とする株式会社であり,平成20年6月1日時点の従業員数は 実)(1) 当事者等ア原告原告は,電気部品,産業用コンピューターの輸入販売及び電気工具の輸出等を業とする株式会社であり,平成20年6月1日時点の従業員数は 38名である。原告には総務経理部と営業統括部があり,営業統括部には,営業,物流,技術等7部門がある。総務経理部を含め,各部門の従業員数は1,2名ないし数名であり,最も多い部門で11名であった。 イ組合組合は,中小企業で働く労働者を中心に組織する合同労組であり,本件初審申立て時の組合員数は約3000名であり,原告の従業員で組織する分会の分会員数は7名である。 (乙C1)ウ分会分会は,平成14年10月,組合に加入した原告の従業員によって結成された。Bは,分会の結成以来,日分会の分会長である。 (乙A19,22,26,乙C1,丙21)(2) 原告における賞与制度ア原告の給与規程32条は,次のように定めている。 第1項会社は,原則として毎年2回,会社の営業成績,経営状態を勘案の上,支給日現在勤続1年以上で,支給日現在在籍する社員に対し,その勤務成績,貢献度,勤務状況を審査して,通常次の時季に賞与を支給する。ただし,業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には,支給日を変更し,又は支給しないことがある。 1) 夏期賞与 7月(支給対象期間は前年10月1日より当年3月31日迄)2) 冬期賞与 12月(支給対象期間は当年4月1日より当年9月1日迄)第2項賞与の支給額は,会社の業績に応じ,能力,勤務成績,勤務態度等を人事考課により査定し,その結果を考慮して,その都度 決定する。 (以下,省略 日より当年9月1日迄)第2項賞与の支給額は,会社の業績に応じ,能力,勤務成績,勤務態度等を人事考課により査定し,その結果を考慮して,その都度 決定する。 (以下,省略)イ原告には,給与規程32条のほかに,賞与に関する規定はない。 (甲15)(3) 本件賞与の支給に関する事実経過本件賞与の支給に関する事実経過の概略は,以下のとおりである。 ア平成18年9月25日,組合から原告に対し,本件賞与に係る「2006年度年末一時金に関する要求書」の提出。 イ同年10月12日,原告と組合間における上記アの要求に関する団交の開催。 ウ同月13日,組合から原告に対し,本件賞与に係る「年末一時金に関する申入書」の提出。 エ同月20日,原告から組合に対する上記ウの申入書に対し,回答書の交付。 オ同年11月6日,原告から各従業員に対し,本件賞与の支給額の通知。 カ同月9日,原告と組合間における上記ウの申入書における要求事項についての団交の開催。 キ同月17日,原告と組合間における上記ウの申入書における要求事項についての団交の開催。 ク同月20日,原告から組合に対し,回答書の交付。 ケ同月21日,組合から原告に対し,「年末一時金会社回答額について」と題する書面の提出。 コ同日,原告から組合に対し,「『年末一時金会社回答額について』への回答」と題する書面の提出。 サ同月24日,組合から原告に対し,「年末一時金に関する会社2006年11月21日付け文書への回答」と題する書面の提出。 シ同月24日,原告から組合に対し,「貴労組発2006年11月24日付年末一時金(賞与)及び団交申入れについ 金に関する会社2006年11月21日付け文書への回答」と題する書面の提出。 シ同月24日,原告から組合に対し,「貴労組発2006年11月24日付年末一時金(賞与)及び団交申入れについて」と題する書面の交付。 ス同年12月8日,原告から分会長Bを除く分会員に対し,本件賞与の支給。 セ同月26日,組合から原告に対し,「年末一時金に関する抗議申入書」と題する書面の交付。 ソ平成19年1月29日,原告と組合間における団交の開催。 タ同年3月28日,組合による本件初審申立て。 (4) 分会員に対する本件賞与の支給ア Bを除く分会員原告は,平成18年12月8日,Bを除く分会員に対し,原告が提示した賞与支給額による本件賞与を支給した。 イ B(ア) Bは,平成19年12月18日,原告を相手方として,東京地裁に対し,原告がBに対して人事権を濫用したこと,本件賞与について著しく低い支給額を通知したことなどが不法行為に当たるなどと主張して,本来あるべき本件賞与の支給額と通知額との差額75万円等合計235万円の損害賠償を求める訴訟(同地裁平成○年(ワ)第○号事件。以下「別件訴訟事件」という。)を提起した。 (乙A16)(イ) 平成20年11月11日,Bと原告は,別件訴訟事件において,Bの勤務場所,Bの組合活動に係る事項のほか,原告がBに解決金204万4000円を支払い,Bが原告に対する当季から平成20年度夏季までの賞与を請求しないことを確認するなどを内容とする裁判上の和解(以下「本件和解」という。)をし,別件訴訟事件を終了させた。 (乙B22) (5) 本件賞与に関する協定書の作成平成21年4月28日,原告と を内容とする裁判上の和解(以下「本件和解」という。)をし,別件訴訟事件を終了させた。 (乙B22) (5) 本件賞与に関する協定書の作成平成21年4月28日,原告と組合は,本件賞与に関して妥結・合意したのでここに文書で協定するとして,同日付け協定書(以下「本件協定書」という。)を作成した。 本件協定書には,本件賞与に関する事項として,支給対象者がBを除く分会員6名であること,Bについては東京地裁における本件和解のとおりとすること,合意・妥結日は平成18年11月21日であること,支給日は同年12月8日であること,賞与支給額は原告が各分会員に通知した額であることが記載されている。 (乙B23)(6) 本件初審事件ア組合は,平成19年3月28日,原告を被申立人として,都労委に対し,原告との間における本件賞与に関する本件団交において原告が組合に対してした次の諸行為が労組法7条2号の不当労働行為に該当するとして,本件初審申立てをした。 (ア) 組合の基準内賃金を基礎とした要求を拒否する回答をしたこと,(イ) 本件賞与支給額の根拠等のうち,a 人事考課による賞与決定の仕組みに関して十分な説明をしなかったことb 分会員の個別賞与支給額の根拠に関して団交の場では説明しないとしたこと(ウ) 組合の要求する資料の開示を拒否したことイ本件初審事件の申立ての趣旨は,以下のとおりである。 (ア) 原告は,夏季賞与及び冬季賞与に関して,基準内賃金に一定の乗率(支給率)をかけた金額を支給するとの組合要求を真剣に検討した上で,組合(分会)員に対する支給額の具体的根拠について説明するな どして,組合と誠実に団交を行うこと。 関して,基準内賃金に一定の乗率(支給率)をかけた金額を支給するとの組合要求を真剣に検討した上で,組合(分会)員に対する支給額の具体的根拠について説明するな どして,組合と誠実に団交を行うこと。 (イ) 原告は,賞与の交渉において,以下のaないしeについて明らかにした上で,組合(分会)員各自に対する支給額の具体的根拠について説明するなどとして,組合と誠実に団交を行うこと。 a 当季及び過去の賞与総額b 当季及び過去の賞与平均支給額c 当季及び過去の賞与の最高支給額,最低支給額d 当季及び過去の部門別(営業,本社事務,物流)の賞与平均支給額e 当季及び過去の従業員の平均月額賃金及び平均年齢(ウ) 陳謝文の手交・掲示ウ本件初審命令都労委は,平成20年12月16日,上記1(2)の内容の本件初審命令を発令した。 (7) 本件再審査事件ア原告及び組合は,本件初審命令を不服として,中労委に対して再審査を申し立てた(平成21年(不再)第6号,第7号)。 イ中労委は,平成22年6月2日,大要,以下のとおり判断し,上記1(3)の内容の本件命令を発令した。 (ア) 基準内賃金を基礎とした組合要求への原告の対応には不誠実な交渉態度は認められない。 (イ) 分会員の個別賞与支給額の根拠は労働条件に関する事項であるから義務的団交事項に該当する。 したがって,原告が,本件団交において,分会員の本件賞与の支給額の根拠についての説明を拒否したことは不誠実な交渉態度であるから不当労働行為に該当する。 (ウ) 原告が,組合の開示要求に係る資料(ただし,本件初審命令後に開 示されたものを除く。)のう の根拠についての説明を拒否したことは不誠実な交渉態度であるから不当労働行為に該当する。 (ウ) 原告が,組合の開示要求に係る資料(ただし,本件初審命令後に開 示されたものを除く。)のうち,a 賞与の部門別平均支給額及び賞与の最高・最低支給額については,個人の支給額が特定されるおそれがある等から,原告が資料の開示に消極的な態度であったとしてもやむを得ない。 b しかし,平成17年度夏季賞与,同年度冬季賞与及び平成18年度夏季賞与の各支給総額と平均支給額,平成17年度及び平成18年度の従業員平均月額賃金及び平均年齢に係る資料の開示を拒否したことは不誠実な交渉態度であるから不当労働行為に該当する。 もっとも,原告は,平成20年度夏季賞与からは組合の求める資料の一部を開示するなどしたことにより,組合は,分会員の賞与支給額の位置付けについて,同賞与以降,資料分析等によりおおよその推認が可能になった。したがって,上記の不誠実な交渉態度は,同賞与に関する交渉以後は,必要な限度で改められており,現時点において救済命令を発令する必要はない。 (8) 原告は,平成22年7月14日,本件命令の取消しを求めて本訴を提起した。 3 争点(1) 原告が,平成18年11月9日及び同月17日に開催された本件賞与に関する団交において,組合に対し,分会員の個別の本件賞与の支給額の根拠に関する説明をしなかったことは,不誠実な交渉態度であるか(争点1)。 (2) 組合は,本件協定書作成後においても,本件賞与に関する交渉過程における原告の不当労働行為責任を追及することができるか(争点2)。 (3) 本件命令が命じた文書交付の適否(争点3) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1について する交渉過程における原告の不当労働行為責任を追及することができるか(争点2)。 (3) 本件命令が命じた文書交付の適否(争点3) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1についてア被告 原告が,平成18年11月9日及び同月17日に開催された組合との間の本件賞与に関する団交において,組合から分会員の個別の賞与支給額の根拠について説明を求められたのに対し,これを拒否して分会員個人に対してのみ説明するとの対応をしたことは,不誠実な交渉態度であり,労組法7条2号の不当労働行為に該当する。本件命令は,以上のとおり判断したものであるところ,本件命令時点(平成22年6月)までに,原告と組合との間の本件賞与に関する団交において,原告が組合に対し,分会員の個別の賞与支給額の根拠について説明をしているなどの格別の事情が認められれば,原告は誠実に団交を行っているということができ,正常な集団的労使関係が回復されていると評価できるのであるが,本件においては,上記のような格別の事情はない。 イ補助参加人(ア) 賞与に関する交渉は,賞与支給基準や賞与の算定方式(例基本給の何か月分等)について行われるのが通例である。原告は,組合が本件賞与について「支給基準を基準内賃金の3か月とすること」を求めたのに対し,そのような計算式で賞与の額を決めていないと回答した上,分会員に対し,個別に決定した賞与支給額を通知した。原告が賞与支給に当たりかかる個別決定方式を採っている以上,本件賞与に関する団交は,分会員に通知された賞与支給額の当否に限定されざるを得ず,個別に通知された賞与支給額の根拠等は労働条件に関わる事項として,義務的交渉事項に当たる。 (イ) 原告は,その主張する苦情処理方法により従業員の個別 賞与支給額の当否に限定されざるを得ず,個別に通知された賞与支給額の根拠等は労働条件に関わる事項として,義務的交渉事項に当たる。 (イ) 原告は,その主張する苦情処理方法により従業員の個別の賞与支給額に関する異議等を解決しており,団交において賞与支給額やその根拠,支給内容について説明しないことは不誠実な交渉態度にならない旨主張するが,そもそも原告にはそのような苦情処理方法はない。また,原告が主張する苦情処理方法は,団交という集団的労使関係における 労働条件決定や紛争解決のためのシステムではない。原告の主張は,団交無視の主張であり,到底採り得ない。 (ウ) したがって,原告が,本件賞与に関する団交の場において,組合から義務的交渉事項に係る分会員の個別の賞与支給額の根拠について説明を求められたのにこれに応じず,分会員各人に対して個別に回答・説明するとの対応をしたのは,組合の団交権を無視する不誠実な交渉態度であり,労組法7条2号の不当労働行為に該当する。 ウ原告(ア) 原告は,分会員の個別の本件賞与の支給額やその根拠,支給内容に関する不満や異議については,団交ではなく,不満や異議のある従業員から上長(上司)に対して申立てや説明要求を行い,上長から説明等をするという苦情処理方法で対応し,これによって解決してきている。 したがって,原告が上記の事項について組合との団交で説明しなかったからといって,これが不誠実な交渉態度であるとされるいわれはない。例えば,組合員が数万人いる大企業の場合,組合員の個別の賞与支給額,その根拠等について当該企業が団交で逐一説明しなければならないなどとされることはなく,そうでなければ,一年間団交を毎日行っても数万人に及ぶ組合員の個別賞与に関して妥結に至ることはできない。 ,その根拠等について当該企業が団交で逐一説明しなければならないなどとされることはなく,そうでなければ,一年間団交を毎日行っても数万人に及ぶ組合員の個別賞与に関して妥結に至ることはできない。 (イ) 原告は,小規模企業であるが,義務的団交事項が会社の規模によって変わるはずはなく,個々の従業員から苦情が出た場合,上長が説明するという苦情処理方法で解決している。 したがって,分会員の個別の本件賞与の支給額やその根拠,支給内容は義務的団交事項でなく,そうである以上,原告がこれらを団交で説明しなかったことが不誠実な交渉態度になるということはできない。 (2) 争点2について ア原告(ア) 本件初審申立て意思の留保の不存在a 団交は,特定の議題(本件では本件賞与)について労使双方がこれに関する合意を目指して行われるものであるところ,本件賞与に関して原告と組合との間で団交が行われ,その最終目標である本件賞与の支給について合意・妥結に至り,労働協約たる本件協定書が作成されている。本件協定書は,組合が当初求めていた不当労働行為の救済申立て意思を留保する趣旨の留保条項が撤回されて,このような留保条項が付されていない内容のものであるから,本件賞与問題に関しては,本件協定書の作成により,本件賞与の支給額だけでなく,その交渉全てについて最終的な解決・決着がされたことになる。 b 団体交渉事項について合意・妥結に至って労働協約を締結した場合,労働組合は「不当労働行為を追及することがある。」,「不当労働行為救済申立権(あるいはその意思)を保留する又は救済申立てを継続する。」との留保が明確に付されているような例外的事情があるときに限り,団体交渉における使用者の不当労働行為責任が残る ,「不当労働行為救済申立権(あるいはその意思)を保留する又は救済申立てを継続する。」との留保が明確に付されているような例外的事情があるときに限り,団体交渉における使用者の不当労働行為責任が残るという解釈が許されるところ,本件協定書には,上記のような留保はない。また,組合は,本件協定書を作成するに際し,「本協定書は,妥結金額のみに対するものであり,現在,東京都労働委員会で係争中の不当労働行為事件(不誠実団交)に対する会社の責を免れるものではない。」との条項を入れることを要求していたが,最終的に同条項を入れないで本件協定書を作成することに同意しているから,組合は,同条項を撤回したというほかない。 したがって,本件協定書作成以後は,本件賞与の支給額のみならず,交渉過程における団交での原告の説明の仕方や資料開示の程度,内 容等について,組合から異論,異議,その他諸要求を原告に対して行うことは許されず,また,原告の対応等について不当労働行為に該当するとの評価を行うことは許されない。しかるに,本件命令は,合意・妥結した団体交渉事項である本件賞与について,組合の判断によって本件協定書作成後も原告の不当労働行為責任を追及することを容認し,原告がそれを甘受しなければならないとするものであり,労組法が定めた労働協約に認められる法的効力を無視するものであって,到底許されないものである。本件協定書には上記のような留保を明確に記載されていない以上,組合は,不当労働行為の被救済利益を放棄した,あるいは被救済利益を喪失したと解釈する以外にない。 c 原告は,本件賞与以前の賞与支給に際して,分会員を含む従業員から,原告が提示した賞与支給額について「異議の申立ては致しません。」という文言が記載された確認・承諾書の提出を受けた上で c 原告は,本件賞与以前の賞与支給に際して,分会員を含む従業員から,原告が提示した賞与支給額について「異議の申立ては致しません。」という文言が記載された確認・承諾書の提出を受けた上で,賞与を支給していた。本件賞与の支給に際しては,上記確認・承諾書の提出に代えて本件協定書を作成したものであり,本件協定書には「支給以後賞与に関する異議の申立てはしない。」旨の条項が入っていないが,上記賞与支給の経緯からすると,組合は,本件賞与が支給された以後,異議の申立てができないというべきであり,原告は,本件賞与に関する交渉における原告の対応について不当労働行為責任を負ういわれはない。 d なお,原告は,上記のような留保のない協定書の作成を提示したものであるところ,仮に,組合においては,本件初審申立ての意思を留保した上で本件協定書の作成をしたというのであれば,組合は条件付き承諾をしたということになるが,原告は,組合の条件に同意していないから,原告と組合との間には本件承諾書の内容及びその 作成について合意が成立していないということにならざるを得ない。 (イ) 和解条項違反本件命令は,分会員の1人であるBに対する本件賞与の支給額について原告が説明を拒否したことを含めて不当労働行為に該当すると認定しているが,別件訴訟事件で成立した本件和解において,Bは原告に対して本件賞与を請求しないことが合意されたのであるから,Bとの関係において,上記の不当労働行為は成立するはずはない。また,本件命令は,原告に文書交付義務を課しているが,本件和解において,原告には和解条項に定める以外の債権債務がないことが確定されているから(以下,この確認をした条項を「本件和解清算条項」という。),そのような義務の履行を命ずることは許 しているが,本件和解において,原告には和解条項に定める以外の債権債務がないことが確定されているから(以下,この確認をした条項を「本件和解清算条項」という。),そのような義務の履行を命ずることは許されない。本件命令は,以上の点において,違法である。 イ被告(ア) 上記ア(ア)についてa 組合は本件賞与に関して本件協定書を作成しているが,本件賞与の支給額について合意・妥結したことと,組合が本件初審申立てを継続する意思を放棄することとは,論理必然的な関係にあるものではない。そして,本件協定書は,本件賞与の支給に関して,賞与の支給対象者,合意・妥結日,支給額及び支給日のみを内容とするものであり,組合は,本件協定書の作成により,本件賞与に関する団交における原告の不誠実な交渉態度を不問に付するものとしていない。 このことは,本件協定書成立後も,組合は本件初審申立てを取り下げておらず,分会員の個別の賞与支給額の根拠について説明を行わない原告の態度を非難していることからも明らかというべきであり,組合が本件初審申立てを維持する意思を放棄したということはできない。 b 賞与の支給に際して従業員(分会員を含む。)が原告に提出した確認・承諾書は,従業員の立場から,原告から通知された賞与支給額に異議はないことを表明するものであり,確認・承諾書の「異議の申立てをしない」との記載には,不当労働行為救済申立てをしないとの趣旨を含むものとはいえない。そして,本件協定書中の「『確認・承諾書』の提出を要しないものとする」との記載は,組合が,原告が通知した分会員の本件賞与の支給額を合意・妥結したことから,分会員に対する本件賞与の支給に際し,改めて分会員から確認・承諾書の提出を求めないとの趣旨の記載であり,組合が原告の 記載は,組合が,原告が通知した分会員の本件賞与の支給額を合意・妥結したことから,分会員に対する本件賞与の支給に際し,改めて分会員から確認・承諾書の提出を求めないとの趣旨の記載であり,組合が原告の不当労働行為の結果を受け入れ,本件初審申立てを継続する意思を放棄したかどうかとは関係がないものである。 (イ) 上記ア(イ)について本件和解は,原告とBとの間の損害賠償請求訴訟においてされたものであり,組合が,本件和解の成立をもって,本件賞与に関する交渉過程における原告の組合に対する不当労働行為を受け入れ,又は本件初審事件を継続する意思を放棄したということはない。また,本件和解清算条項において不存在を確認した「債権債務」は,原告とB個人との間の民事上の債権債務であるところ,本件命令は行政処分であって,本件命令が命ずる文書交付は公法上の義務であり,文書交付の相手方は組合であるのであるから,本件和解清算条項で不存在が確認された「債権債務」には,本件命令が命ずる組合に対する文書交付義務が含まれないことは明らかである。 ウ補助参加人(ア) 上記ア(ア)についてa 本件賞与に関する交渉過程において,原告に説明義務違反の不誠実交渉があった事実は,抹消し得ない歴然たる事実である。本件命令 は,原告の当該交渉態度の不当労働行為性を認めた上で,将来の労使関係の正常化を図るため,原告に対し,将来の団交において同様の不誠実交渉を行わないように留意する旨の表明をさせ,その旨の文書交付を命じたものである。 b 団体交渉過程における使用者の不誠実な交渉は,労組法7条2号の不当労働行為を構成するところ,このような不当労働行為がある場合,団交議題について妥結したからといって,当然に団体交渉権に対 b 団体交渉過程における使用者の不誠実な交渉は,労組法7条2号の不当労働行為を構成するところ,このような不当労働行為がある場合,団交議題について妥結したからといって,当然に団体交渉権に対する侵害状態が除去,是正されたことにはならない。本件協定書の作成と,組合が原告の不当労働行為救済を求めること,言い換えれば,本件賞与に関する交渉過程における原告の不当労働行為につき労働委員会が審査,判定し得ることとは,別次元の問題である。 c 組合が,本件協定書において,本件賞与に関する交渉過程における原告の交渉態度を不問に付する旨を表明したり,交渉過程について今後一切異議を述べないなどの条項を入れることに合意している場合はともかく,そうでない限り,交渉過程における原告の不誠実な交渉態度について不当労働行為責任が免責される理由はない。本件協定書には,本件賞与の支給対象者,合意・妥結日,支給日及び支給額が記載されているだけであり,本件賞与の交渉過程において支給額の根拠について説明を拒否したなどの原告の不誠実な態度について組合が異議を述べないなどの記載は一切ない。 労働協約の規範的効力は,協約において合意された賃金等の労働条件について生じるものであって,交渉過程における不誠実な交渉態度の不当労働行為性に何らの効力を及ぼすものではない。本件協定書においては,組合による上記の表明や合意はないから,本件賞与に関する交渉過程において原告に不誠実な交渉態度があったことを主張して,今後の賞与に関する交渉における誠実交渉を求める権利 が失われることはない。 d 本件協定書に組合が要求した「本協定書は,妥結金額のみに対するものであり,現在東京都労委で係争中の不当労働行為事件(不誠実団交)に対する原告の責を免れるもので が失われることはない。 d 本件協定書に組合が要求した「本協定書は,妥結金額のみに対するものであり,現在東京都労委で係争中の不当労働行為事件(不誠実団交)に対する原告の責を免れるものではない。」との条項が含まれていないのは,単に,合意に至らなかった条項が協定書に記載されていないというだけのことである。組合は,原告に不当労働行為がある旨の主張を撤回したとか,係争中の本件初審事件における原告の不当労働行為責任を免ずることに同意したなどということはない。 e 分会員が賞与の支給に際して原告に提出していた確認・承諾書に「異議の申立ては致しません。」と記載しているのは,賞与支給額について,以後,異議の申立てをしないという趣旨であり,それ以上のものではなく,本件賞与に関する団交等の交渉過程における原告の不誠実な交渉態度について異議を唱えないという趣旨を含むものではない。 (イ) 上記ア(イ)について本件和解は,Bと原告との間の法律関係に関するものであって,組合との間の法律関係に関するものではなく,原告の組合に対する不当労働行為が成立しない根拠となるものではない。また,原告が本件命令で命じられている文書交付は,公法上の義務を課したものであり,本件和解の当事者であるBに対する義務を課したものではない。したがって,本件和解における本件和解清算条項を根拠として,上記文書交付を命ずる本件命令に違法がある旨の原告の主張は失当である。 (3) 争点3についてア原告本件賞与の交渉過程において原告に不当労働行為がないこと,仮にその 交渉過程において原告に何らかの不当労働行為があるとしても,組合は,本件協定書の作成により,当該不当労働行為を問責し得ないことは,上記(1)ウ及び(2 て原告に不当労働行為がないこと,仮にその 交渉過程において原告に何らかの不当労働行為があるとしても,組合は,本件協定書の作成により,当該不当労働行為を問責し得ないことは,上記(1)ウ及び(2)アで述べたとおりである。そして,以上によれば,本件協定書の作成により本件賞与に関する問題は全面的に解決しているから,組合には当該不当労働行為についての被救済利益はない。 イ被告及び組合争う。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記第2の2の前提事実(以下「前記前提事実」という。)(3)ないし(5)並びに証拠(甲2のほか,認定に用いた証拠は認定事実の末尾に記載)及び弁論の全趣旨(当事者間に争いのない事実を含む。)によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件賞与の支給経過ア平成18年11月9日の団交に至るまでの経過(ア) 同年9月25日,組合は,原告に対し,「2006年度年末一時金に関する要求書」と題する書面を提出し,本件賞与の支給率を一律基準内賃金(基本給と諸手当を合計した金額)の3か月分とすること,支給日を同年12月8日とすることを要求し,同年10月12日に開催予定の団交において同要求について協議することを申し入れた。 (乙A1)(イ) 同日,原告と組合との間で上記(ア)の要求等についての団交が約2時間行われた。組合は,同団交において,① 本件賞与の基礎となる原告が行う考課査定に関する事項として,評価基準,評価方法,評価項目,支給額の構成比等を明示すること,公正・透明な評価制度を整備し開示すること,② 資料の開示として,平成17年度夏季賞与,同年度冬 季賞与及び平成18年度夏季賞与の各支給総額,各平均支給額,各最高・最低支給額,各部門(営業,本 公正・透明な評価制度を整備し開示すること,② 資料の開示として,平成17年度夏季賞与,同年度冬 季賞与及び平成18年度夏季賞与の各支給総額,各平均支給額,各最高・最低支給額,各部門(営業,本社事務,物流)別の平均支給額並びに上記両年度の従業員の平均月額賃金及び平均年齢に関する資料の開示を申し入れた。これに対し,原告は,本件賞与の支給日及び支給額の開示日等について説明するにとどまった。 なお,原告は,本件賞与より前の賞与に関する組合との間の団交において,賞与の算定基準については,必ずしも大企業のような明確な計算式があるわけではない旨の回答をし,賞与支給額に関する交渉は,団交では行わず,個別に面談して行うとの対応をしていた。原告では,従業員が賞与の査定結果等について苦情がある場合,上長(上司)に対して申立て等を行い,上長が査定結果等を説明する運用を行っており,上記の個別の面談とはこの運用を指すものである。原告において,従業員から上記申入れ等がされた事例はあるが,そのうち実際に原告が従業員に通知した賞与支給額が変更された事例はない。 (甲15,乙A13の3,21,乙B19,乙C2,4,5)(ウ) 同月13日,組合は,原告に対し,「年末一時金に関する申入書」を提出し,① 支給率を一律基準内賃金の3か月分とすること,② 考課査定を行う場合には,基礎額×支給率によって算定される固定部分と査定部分の比率,評価項目,評価基準,評価方法や賞与支給額の構成比等を明確にすること,③ 当季及び過去の賞与の支給総額,平均支給額,最高・最低支給額及び部門別の平均支給額,当季及び過去の従業員の平均月額賃金及び平均年齢に関する資料を開示することなどについて申入れを行うとともに,同月24日に団交を開催することを申し入れた。 額,最高・最低支給額及び部門別の平均支給額,当季及び過去の従業員の平均月額賃金及び平均年齢に関する資料を開示することなどについて申入れを行うとともに,同月24日に団交を開催することを申し入れた。 (乙A2,乙B2)(エ) 同月20日,原告は,組合に対し,「貴労組発2006年10月13 日付“年末一時金に関する申入書”への回答」と題する書面を交付し,その中で,① 支給率については,原告は組合主張の計算式での賞与の支給をしていないこと,② 考課査定については,原告は,原告及び部門の業績並びに個人の業績を勘案して賞与支給額を決めていること,組合が明確にするよう求める査定部分の比率,評価項目,評価基準,賞与支給額の構成比等は存在しないこと,評価方法は,社長が上記各業績等を勘案し,各部門管理職と相談する方法によっていること,③資料開示は,その義務も必要もないので断るが,分会員に関する資料の開示は可能であることなどを回答した。 (乙A3)(オ) 同年11月6日,原告は,全従業員に対し,「平成18年度冬季賞与支給に関するご通知」と題する文書により,個別に本件賞与の支給額を通知した。 なお,賞与支給額の通知は,従前から上記の方法によっており,分会員に対する賞与支給額の通知も,組合を通すことなく上記の方法により行われていたが,組合は,平成17年度夏季賞与に関する同年6月22日開催の団交において,個々の分会員の賞与支給額は個々の分会員に対してではなく,組合に開示すべきである旨主張し,また,同年度冬季賞与に関する同年10月27日開催の団交において,「全社的な一時金支給を制度としてやっているのだから,全社的な回答をされればよろしい。『個々人の業績に応じて』というなら,いったん個々人の賞与 度冬季賞与に関する同年10月27日開催の団交において,「全社的な一時金支給を制度としてやっているのだから,全社的な回答をされればよろしい。『個々人の業績に応じて』というなら,いったん個々人の賞与支給額を回答し,それに対し組合が意見を述べる方法でもよい。」と主張していた。 (乙A4,13の1・2,乙C3~5)イ平成18年11月9日開催の団交(ア) 同日,原告と組合との間で団交が約2時間行われた。組合側の出席者 は,書記長C(以下「C」という。),特別中央執行委員D,中央執行委員E,分会長B,分会書記長F(以下「F」という。)及び分会員G(以下「G」という。)であった。原告側の出席者は,H取締役営業部長(以下「H営業部長」という。),Iチームマネージャー(以下「Iマネージャー」という。),J顧問(以下「J」という。)及びK顧問(以下「K」という。)であった。 (乙A13の4,乙C1)(イ) 団交内容のうち,賞与支給額の根拠等についてのやり取りは,要旨以下のとおりである。(乙A13の4,乙C1)a 各分会員に対する本件賞与の支給額の根拠について(a) 組合は,原告から通知された本件賞与の支給額に関して,① 原告の物流センターに所属する分会員L(以下「L」という。),G,分会員M(以下「M」という。)については,ともに平成17年度に比べて増加しているが,LとG及びMとの間で増加額に2万円の差があることの根拠,② Fの賞与支給額が前年度に比べて4.5万円増加している根拠,③ 分会員N(以下「N」という。)の賞与支給額が平成16年度に比べて約10万円減少している根拠(平成17年度に比べては増加している。),④ 分会員O(以下「O」という。)の賞与支給額が同 る根拠,③ 分会員N(以下「N」という。)の賞与支給額が平成16年度に比べて約10万円減少している根拠(平成17年度に比べては増加している。),④ 分会員O(以下「O」という。)の賞与支給額が同人より下位の職能資格にある者より低かったことの根拠,⑤ Bの賞与支給額が前年度に比べて約70万円(率にして約74パーセント)減少した根拠について説明を求めた。これについて,原告は,各人の賞与については,団交の場では回答しない,業務の中で個別に答える旨述べた。なお,「業務の中で個別に回答する。」とは,上記ア(イ)で認定した上司による査定結果等についての説明を指している。 (b) 組合は,分会員の個別の賞与支給額の根拠について説明を原告 (上司)から聞く場合,組合書記長の同席が可能であるのか質した。これに対し,原告は,賞与支給額の根拠は個別に回答する旨述べた。 (c) Bは,自身の賞与について組合を通じて交渉することができないか質した。これに対し,原告は,人事権に関する問題である旨回答した。 b 賞与の考課査定について(a) 原告は,上記ア(エ)の回答文書中で回答した評価方法(②)に関して,H営業部長又は社長が各部門管理職からヒアリングを行った上で,最終的に社長が決定している旨回答した。 (b) また,組合が算定根拠について尋ねたのに対し,原告は,「ざっくりとだ。」と回答するとともに,① 営業のように数字が出ている従業員とそうでない従業員がおり,後者の場合には全体の成績で決めている,② 欠勤,無断の職場離脱の場合,上司の指示に従わない場合,寝坊による遅刻の場合等は,賞与支給額の減額対象となる,③ 他の部門からの評価も考慮に入れているなどと述べた。 ウ平成18年11 ,② 欠勤,無断の職場離脱の場合,上司の指示に従わない場合,寝坊による遅刻の場合等は,賞与支給額の減額対象となる,③ 他の部門からの評価も考慮に入れているなどと述べた。 ウ平成18年11月17日開催の団交の状況(ア) 同日,原告と組合との間で団交が約1時間行われた。組合側の出席者は,副委員長P(当時),B,F及びMであり,原告側の出席者は,H営業部長,Iマネージャー,J及びKであった。 (乙A13の5)(イ) 団交内容のうち,賞与支給額の根拠等に関するやり取りは,要旨以下のとおりである。(乙A5,13の5,乙C2,5)a 本件賞与の支給時期について原告は,同月30日までに労使間の合意が成立すれば,同年12月中に本件賞与の支給が可能である旨説明した。 bBに対する本件賞与の支給額の根拠について原告は,Bに通知した本件賞与の支給額の根拠について,個人的問題であるので上司に聞いてほしい旨回答するとともに,Bの本件賞与の対象期間における職能資格について,J3に降格した以降はJ3の営業成績に対応する賞与を支給することになるが,それでは賞与支給額が急激に下がりBに酷であるので,平成18年度夏季賞与までの1年間は,経過措置としてJ3の平均的なところを支給していた旨,また,本件賞与の支給額について,その対象期間中の同年5月10日をもって上記経過措置が終了したので,J3の営業社員としての賞与対象期間における実績に基づいて決定した結果である旨回答したが,賞与支給額を決定した際の具体的な評価の中味については,団交の場で説明することは差し控える旨回答した。 c 各分会員の個別の賞与支給額の根拠を団交の場で説明できない理由について 賞与支給額を決定した際の具体的な評価の中味については,団交の場で説明することは差し控える旨回答した。 c 各分会員の個別の賞与支給額の根拠を団交の場で説明できない理由について原告は,各分会員に対する賞与支給額の根拠を組合に説明できないのは,賃金,賞与の評価には個人情報が絡み,その保護が理由の一つである旨回答した。 d 賞与の考課査定について組合は,同年11月9日開催の団交において原告が人事考課における評価方法について説明した際,H営業部長が他の部門からもヒアリングを行っている旨述べたことについて内容を質したところ,①原告は,当該従業員に仕事を依頼している従業員から可能な限り広くヒアリングしている,② 直属の上司に対しては,普段の仕事ぶり等について随時ヒアリングしている,③ 評価に当たっては,ランク分けは行わず,職務を適切にこなしているか,モチベーションを持っているかなどを評価している,④ 評価結果については事実確認の ため必要に応じてフィードバックしている,⑤ 評価の要素には,目標達成に向けたプロセス,仕事の姿勢も含まれ,例えば,周りの人に迷惑をかけていないか,あの人とは仕事をしたくないとの周囲の声や報告文書の提出期限の遵守なども評価の対象となっている,⑥営業成績,目標達成のプロセス,仕事の姿勢の3要素をそれぞれ3分の1程度の比率で評価している旨回答した。 e 資料の開示について原告は,組合に対し,上記ア(エ)の回答文書中で回答した資料の開示(③)に関して,「全統一労働組合A分会組合員2006年冬季賞与について」と題する文書を交付した。同文書には,分会員全員についての,① 平成17年度冬季賞与及び本件賞与の各支給額,②両年度の各賞与の )に関して,「全統一労働組合A分会組合員2006年冬季賞与について」と題する文書を交付した。同文書には,分会員全員についての,① 平成17年度冬季賞与及び本件賞与の各支給額,②両年度の各賞与の最高支給額及び最低支給額,③ 両年度の各賞与の部門別の分会員の平均支給額及び平均月額賃金等が記載されていた。 エ Bを除く分会員の本件賞与に関する労使間の合意(ア) 平成18年11月21日,組合は,原告に対し,「年末一時金会社回答額について」と題する文書を交付した。その内容は,要旨以下のとおりである。(甲13,乙A6,15の1・2)a 原告は,本件賞与の交渉において,回答額の根拠の説明及び原資等の資料開示を拒否したが,このことは,不当労働行為救済申立事件(都労委平成14年(不)第111号事件)における団交に誠実に応ずる旨の和解内容に反するので,抗議する。 bBに対する本件賞与の差別的な原告回答額は,不当労働行為であるとの疑念を持たざるを得ず,これについて再検討の上,回答してほしい。 c 分会員のF,G,L,M,O及びNに対する本件賞与の原告回答額 については,甚だ不本意であるが,支給日等を考慮し,合意する。 d 上記cの分会員6名については,同年12月8日に本件賞与を支給してほしい。 (イ) 同年11月21日,原告は,組合に対し,文書により,要旨以下のとおり回答した。(甲13,乙A7,乙B27の1)a 組合の抗議や不当労働行為であるとの疑念はいわれのない非難である。 bB以外の分会員の本件賞与についてだけ合意するといっても,これでは,分会員それぞれと個別に交渉して個別に合意した場合と同様の結果となり,分会員全員の賞与について行ってい 難である。 bB以外の分会員の本件賞与についてだけ合意するといっても,これでは,分会員それぞれと個別に交渉して個別に合意した場合と同様の結果となり,分会員全員の賞与について行っている組合との団交が意味のないものになりかねない。よって,原則どおり分会員全員の賞与について合意が成立することを希望するので,再検討を求める。 c 支給日との関係があるので,同月24日までに回答してほしい。 (ウ) 同日,組合は,原告に対し,「年末一時金に関する原告2006年11月21日付け文書への回答」と題する文書を交付し,その中で,「原告回答書は,組合2006年11月21日付『年末一時金原告回答額について』に関して,『組合員各人ごとの個別交渉及び個別合意と同様のもの』,『貴労組との団交が意味のないものになりかねません』,『組合員全員について賞与(一時金)の合意を希望致します』などと述べるが,根拠のない主張であり,組合は受け入れることはできない。」,「組合は,組合員F,同G,同L,同M,同O,同Nについて,原告回答額どおり12月8日に支給するよう,あらためて要求する。」と表明するとともに,本件賞与に関する団交の開催を申し入れた。 (甲13,乙A8,9,乙B27の2) (エ) 同年11月24日,原告は,組合に対し,「貴労組発2006年11月24日付年末一時金(賞与)及び団交申入について」と題する文書を交付し,その中で,「貴組合は原告の主張に対して『根拠のない主張であり,組合は受け入れることはできない』とされました。原告は,貴労組の主張には異論のあるところではございますが,この問題に関する回答は留保させていただきます。原告は,B分会長を除く貴労組組合員につきましては,合意となりましたので12月8日 れました。原告は,貴労組の主張には異論のあるところではございますが,この問題に関する回答は留保させていただきます。原告は,B分会長を除く貴労組組合員につきましては,合意となりましたので12月8日に支給いたします。」と表明するとともに,団交申入れについては,① Bの本件賞与に関する根拠については,過去2回の団交において資料を開示して十分説明していること,② 原告がB個人に対して説明しようとした際,Bは「説明の必要はない」と発言していることから,Bの本件賞与に関して,組合と団交を行う必要はないものと判断した旨回答した。 (甲13,乙A10)(オ) B以外の分会員に対する本件賞与は,同年12月8日に支給されたが,その際,原告と組合との間で協定書は作成されていない。 (甲8,13)(カ) 同月26日,組合は,原告に対し,「年末一時金に関する抗議申入書」と題する文書を交付した。その内容は,要旨以下のとおりである。 (乙A11)aBの本件賞与問題が未解決であるのに,一方的に交渉を打ち切った原告の態度は,明らかな不当労働行為であり,これについて強く抗議を申し入れる。 b 原告は,Bに開示した本件賞与の支給額について,これまでの団交において資料を開示し説明したとするが,これらは賞与支給額の根拠を明らかにするものではない。 原告が個人情報の保護を理由に要求された資料の開示を拒否してい る態度は,明白な不当労働行為である。 c 原告は,本件賞与の人事考課の結果等について説明は必要ないとの分会長の発言があったとするが,事実ではなく,真実は,「この場で質問しない。」ということであり,あくまで団交での説明を求める趣旨のものであった。 (キ) なお, について説明は必要ないとの分会長の発言があったとするが,事実ではなく,真実は,「この場で質問しない。」ということであり,あくまで団交での説明を求める趣旨のものであった。 (キ) なお,原告は,以上の団交の前後において,従業員に対して社内のイントラネットを利用して,決算内容,原告全体及び部門別の売上業績のほか,個別の従業員に関する売上高(営業成績)についても閲覧することができるようにしていた。 (乙B45)オ平成19年1月29日開催の団交と本件初審申立て(ア) 同日,原告と組合との間で団交が約2時間行われた。組合側の出席者は,C,B,F他1名であった。原告側の出席者はH営業部長,Iマネージャー,J及びKであった。 同団交において,組合は,原告がBの本件賞与問題について決着がついていないにもかかわらず団交を拒否しているとして,原告の態度の変更を迫った。これに対し,原告は,Bから説明は要らないとの発言があったので,これ以上の団交は不要であると判断していたものであり,賞与支給額については個別に対応すると何度も述べているので,原告の通知額に合意するならば支給する旨応答し,結局,議論は平行線のまま終了した。 (乙A13の6)(イ) 同年3月28日,組合は,都労委に対し,本件初審申立てをした。 カ Bに対する本件賞与の顛末(ア) 平成19年12月18日,Bは,東京地方裁判所に対し,原告を被告として,Bに対する低額な本件賞与の開示等が不法行為に当たるとし て,別件訴訟事件を提起した。 (イ) 平成20年11月11日,Bと原告は,別件訴訟事件において,①原告はBに対して解決金を支払うこと,② Bは本件賞与以降平成20年度夏季賞与までの賞与 て,別件訴訟事件を提起した。 (イ) 平成20年11月11日,Bと原告は,別件訴訟事件において,①原告はBに対して解決金を支払うこと,② Bは本件賞与以降平成20年度夏季賞与までの賞与を請求しないことなどを内容とする和解をした。 (乙B22)(2) 本件賞与に係る協定書作成の事実経過ア平成19年度夏季及び同年度冬季の各賞与は,それぞれ,原告から各従業員に対する賞与支給額の通知,組合から原告に対するBを除く分会員に係る通知された賞与支給額を合意する旨の通知等のやり取りを経て,同年12月10日,Bを除く分会員に対する上記各賞与が支給された。 その際,原告と組合との間で協定書は作成されていない。 (甲8,13)イ平成20年1月ころ,原告は,組合に対し,Bを除く分会員に係る本件賞与,平成19年度夏季賞与及び同年度冬季賞与について,それぞれ協定書を作成することを申し入れたが,組合はこれを受けなかった。 (乙C5)ウ平成20年2月4日,組合は,原告に対し,原告が通知したBの平成19年度夏季賞与及び同年度冬季賞与の各支給額(それぞれ34.9万円,73万円)について,その根拠をBに対して個別に説明するよう求めた。 これに対し,同月12日,原告のH営業部長とIマネージャーがBに対し,約1時間にわたり説明を行った。 (乙B11,14,乙C3,5)エ同年5月20日,組合は,平成20年度夏季賞与に関する要求書を提出し,透明性と納得性の高い査定方法及び査定基準の明確化について組合との協議を行うこと,回答は分会員個々人に対してではなく,組合に対 してすることなどを申し入れた。 しかし,原告は,同賞与について,各分会員の賞与支給額を記載した通知書を各 いて組合との協議を行うこと,回答は分会員個々人に対してではなく,組合に対 してすることなどを申し入れた。 しかし,原告は,同賞与について,各分会員の賞与支給額を記載した通知書を各分会員宛ての封筒にそれぞれ封入し,それらを一括して入れた封筒に分会書記長のFを宛て先として記載し,これをFに手渡したにとどまり,上記の査定方法及び査定基準の明確化に係る協議に応じないだけでなく,賞与支給額についての説明や交渉も拒否する態度をとった。 (乙A26,乙B20,21,丙21)オ同年10月14日,組合は,原告に対し,原告から通知されたB以外の分会員の平成20年度夏期賞与の支給額について合意する旨の文書を交付した。しかし,同月20日,原告は,組合に対し,Bが原告から通知された同賞与の支給額について合意せず,それゆえに組合が協定書の作成に応じない以上,協定書作成の前提となる分会員全員について合意が得られるまでは支給を行わない旨回答した。 (乙B29,30)カ同月14日,組合は,原告に対し,平成20年度冬季賞与に関する要求書を提出し,その中で,支給率については基準内賃金の3.5月分とすること,査定基準については,透明度と納得性の高い査定方法,査定基準の明確化につき組合と協議すること等を求めていた。しかし,原告は,上記エと同様に,査定方法や査定基準の明確化に係る協議に応じないだけでなく,賞与支給額の説明や交渉を拒否する態度をとった。 (乙A26,乙B44,丙21)キ同年11月11日に別件訴訟事件においてBと原告との間の和解が成立したことを受け,原告は,組合に対し,同月17日付けで,同和解が成立した結果,実質的に分会員全員についての交渉が妥結したことになるので,本件賞与,平成19年度 事件においてBと原告との間の和解が成立したことを受け,原告は,組合に対し,同月17日付けで,同和解が成立した結果,実質的に分会員全員についての交渉が妥結したことになるので,本件賞与,平成19年度夏季賞与,同年度冬季賞与及び平成20年度夏季賞与に係る協定書を作成した上で,各分会員に対して同賞与を 支給する旨の文書を交付した。 (乙B31の1~5)ク同月25日,原告と組合との間で団交が行われ,原告は,組合に対し,改めて上記キの各賞与に係る協定書の作成を求めた。これに対し,組合は,都労委で本件初審事件が係争中であり,同事件への影響が懸念されることから,協定書の作成はできない旨回答した。 (乙B45)ケ同年12月20日,組合は,原告に対し,上記キの各賞与に係る組合側の協定書案を示した。同協定書案は,Bを除く各分会員を支給対象者とするものであり,その4項として,「本協定書は,妥結金額のみに対するものであり,現在,東京都労働委員会で係争中の不当労働行為事件(不誠実団交)に対する原告の責を免れるものではない。」という条項が記載されていた。 これに対し,原告は,同月22日,上記4項の内容には同意できず,これを削除した協定書であれば作成する旨回答した。 (甲13,乙A29~31,乙B33,34の1~4,35,丙21)コ平成21年1月29日,都労委は,前記第2の1の(2)の内容の本件初審命令を発した。これに対し,原告は同年2月10日,組合は同月12日に,それぞれ再審査を申し立てた。 サ同年3月3日,原告と組合との間で団交が行われた。同団交において,原告から,協定書と労働委員会の審査の推移は別次元の問題である旨の発言があり,組合は,本件賞与に関する協定書を作成することに サ同年3月3日,原告と組合との間で団交が行われた。同団交において,原告から,協定書と労働委員会の審査の推移は別次元の問題である旨の発言があり,組合は,本件賞与に関する協定書を作成することに障害が無くなったと認識した。 原告と組合は,同年4月21日,平成20年度冬季賞与について,原告が各分会員に通知した賞与支給額で妥結・合意した旨の協定書を作成し,同月28日,本件賞与,平成19年度夏季賞与及び同年度冬季賞与につ いて,原告がBを除く各分会員に通知した金額で妥結・合意した旨の協定書を作成し,同年5月14日,未支給であった平成20年度夏季賞与及び同年度冬季賞与が支給された。 (乙A26,乙B23~25,乙C5,丙21)シ本件賞与について作成された本件協定書は,前記前提事実(5)のとおり,支給対象者,支給金額及び支給日の3条項から成るものであり,その余の各賞与についての協定書も,同じ事項の3条項から成るものであり,他に特段の記載事項はない。 (乙B23~25) 2 検討(1) 争点1についてア前記前提事実(2),上記1の認定事実(以下「前記認定事実」という。)(1)によれば,原告における賞与支給額の決定方法は,基準内賃金の何か月分というような算定根拠が明確な方法は採っておらず,「原告の業績に応じ,能力,勤務成績,勤務態度等を人事考課により査定し,その結果を考慮して,その都度決定する。」と規定する給与規程32条に基づいて行っており,同規定以外に,賞与支給額の決定方法に関する定めはないこと,原告は,賞与査定について,原告及び部門の業績並びに従業員個々人の業績,勤怠等を勘案して行うものとしており,原告には,組合が明確にするよう求める査定部分の比率,評価項目,評価基準,賞 めはないこと,原告は,賞与査定について,原告及び部門の業績並びに従業員個々人の業績,勤怠等を勘案して行うものとしており,原告には,組合が明確にするよう求める査定部分の比率,評価項目,評価基準,賞与支給額の構成比等の賞与の支給基準に関する具体的な定めがなく,明確な計算式もないこと,従業員個々人の評価・査定は,社長が,上記の各事項を勘案し,各部門の管理職と相談して行い,以上を基に社長が従業員個々人の賞与支給額を決定していること,原告は,分会員を含め,従業員について社長が決定した賞与支給額のみを,個別に通知していることが認められる。 以上の事実によれば,原告における賞与支給額の決定方法は,必ずしも客観性,明確性が十分に担保されているとはいい難く,そうすると,このような賞与支給額決定の仕組みの下では,組合が,分会員の労働条件の一つである賞与について交渉する際に,賞与支給額がその決定過程においてどのように検討され,決定されるに至ったのかという賞与支給額の根拠の説明を求めることは,必要かつ相当なものというべきである。 したがって,原告が上記のような決定方式を採用して賞与支給額を決定している労使関係の下では,分会員の個別の賞与支給額の根拠は,所属分会員の労働条件に関する事項として,義務的団交事項に当たるというべきである。 イ前記認定事実(1)アないしウによると,原告と組合との間の本件賞与に関する平成18年11月9日及び同月17日に開催の団交の場において,組合が,原告に対し,それ以前からの分を含め,分会員の個別の賞与支給額の根拠について説明を再三求めていたのに対し,原告は,団交の場では回答しない,個別に説明するとの対応に終始して,分会員の賞与支給額を決定した具体的根拠の説明は一切行っていないことが認められる。 について説明を再三求めていたのに対し,原告は,団交の場では回答しない,個別に説明するとの対応に終始して,分会員の賞与支給額を決定した具体的根拠の説明は一切行っていないことが認められる。 組合が説明を求めた分会員の個別の賞与支給額の根拠は,上記アで説示したとおり,義務的団交事項に当たるものであるから,これについて全く説明しないとの対応をすることについて正当な理由がない限り,当該事項について全く説明をしない対応は,不誠実なものと評価すべきである。 ウ原告は,賞与支給額に不満や異議のある従業員から上長(上司)に対する申立て等を通じて上長から個別に説明等をするという苦情処理方法で対応しているから,原告の上記対応は不誠実といわれるいわれはない旨主張する。 前記認定事実(1)ア(イ)によれば,原告は,賞与の査定結果等に関する従 業員の苦情等への対応として,上記主張の内容の個別説明をして対応する運用を行っていることが認められる。しかし,このような運用があるとしても,当該運用は,従業員個々人との関係で行われる苦情等への対応であり,組合との団交における義務的団交事項に当たる分会員の賞与支給額の根拠を説明しないことを何ら正当化するものではない。 その他,前記認定事実及び本件で提出された全証拠によっても,原告の上記団交における対応について,これを正当化する具体的事由はうかがわれない。 エ以上によれば,原告が組合に対してした上記団交における対応は,分会員の本件賞与に関する団交において行うべき説明を拒否する不誠実な交渉態度であるというべきであり,労組法7条2号の不当労働行為に該当する。 (2) 争点2についてア原告は,① 本件賞与に関して労使双方が合意を目指して行われた団交において, 実な交渉態度であるというべきであり,労組法7条2号の不当労働行為に該当する。 (2) 争点2についてア原告は,① 本件賞与に関して労使双方が合意を目指して行われた団交において,最終目標である本件賞与の支給額につき労使間で合意・妥結に至り,不当労働行為の救済申立て意思を留保する趣旨の留保条項のない本件協定書が作成された以上,本件賞与問題は,本件賞与の支給額だけでなく,その交渉全てについて解決・決着がされたことになるから,交渉過程における原告の対応について不誠実性が認められて不当労働行為責任が発生することはあり得ず,組合は不当労働行為の被救済利益を放棄又は喪失した旨,② 別件訴訟事件において,本件和解が成立しているから,Bとの関係において不当労働行為が成立することはなく,また,原告には和解条項に定める以外の債権債務がないことを確定する本件和解清算条項を含む本件和解が成立しているから,本件賞与に文書交付に係る命令を発令することは許されない旨主張する。 イ上記①の主張について (ア) 本件賞与について作成された本件協定書の内容は,前記前提事実(5)のとおりのものである,支給対象者,支給金額及び支給日の3条項からなるものであり,本件協定書上,組合が原告に対して原告の組合に対する上記の不誠実交渉態度に係る不当労働行為責任を免責ないし宥恕する文言は存在しないし,上記の各取決め事項のほかに,原告と組合間における権利義務が存在しない旨の清算条項も存在しない。したがって,本件協定書で協定された事項は,特段の事情のない限り,上記3条項に限られるというべきである。 そこで,上記特段の事情の有無について検討するに,Bを除く分会員の本件賞与に関する労使間の合意の成立経過,Bの本件賞与の顛末及び本件協定 限り,上記3条項に限られるというべきである。 そこで,上記特段の事情の有無について検討するに,Bを除く分会員の本件賞与に関する労使間の合意の成立経過,Bの本件賞与の顛末及び本件協定書作成の経過は,前記認定事実(1)エないしカ,同(2)のとおりであり,これらの事実経過に照らすと,原告と組合との間で,本件協定書を作成するについて,組合が上記(1)で認定した本件賞与に関する交渉過程における原告の不当労働行為について不問に付し,あるいは申立てをしていた本件初審申立てを取り下げることを前提として交渉をしていたことをうかがわせる事情はなく,かえって,組合は,協定書を作成することにより当該不当労働行為責任を追及できなくなることを懸念して,そのような事態を招かない協定書作成を目指していたことが認められる。 以上によれば,本件協定書は,上記3条項についてのみ解決に至ったことを確認したものであり,本件協定書が作成されたことにより,組合が上記(1)で認定した本件賞与に関する交渉過程における原告の不当労働行為責任を追及することができなくなったということにはならず,また,組合が当該不当労働行為についての被救済利益を放棄又は喪失したということもできない。 (イ) 原告は,組合が不当労働行為責任の追及に関する留保条件を付してい ないことを理由に,組合が上記不当労働行為による被救済利益を放棄又は喪失した旨主張する。しかし,同主張は,上記(ア)で説示したところにより理由がないものというべきであるから,採用することができない。 (ウ) 原告は,本件賞与に関する交渉における原告の対応に対して組合が不当労働行為責任を追及することを留保しない内容のものとして提案したのに対し,組合が当該留保をすることを条件として本件承諾書 (ウ) 原告は,本件賞与に関する交渉における原告の対応に対して組合が不当労働行為責任を追及することを留保しない内容のものとして提案したのに対し,組合が当該留保をすることを条件として本件承諾書を作成した場合には,当該留保を付すことについて原告は合意していないから,原告と組合との間には本件承諾書の内容及びその作成について合意が成立していないことになる旨主張する。 しかし,本件承諾書の内容及びその作成について合意が成立していないのであれば,そもそも組合が本件賞与に関する交渉における原告の対応について不当労働行為責任を追及することは何ら制限されないことになるから,上記主張は意味のないものである。また,本件賞与の支給額の問題と上記の不当労働行為責任の追及の問題とは,不可分一体の問題ではなく,それぞれ別個に解決することのできる問題であり,本件承諾書の内容に照らすと,本件承諾書は本件賞与の支給額の問題についてのみ解決に至ったことを確認したものと解されることは,上記(ア)で説示したとおりである。 ウ上記②の主張について本件和解は,原告とBとの間で係属していた別件訴訟事件において,その間に成立した訴訟上の和解であるから,その効力は,原告とBとの間で生ずるにすぎず,原告と組合との間における法律関係を規律するものではない。したがって,本件和解が成立したことにより,本件賞与に関する交渉過程における原告の組合に対する不当労働行為の成否に影響を及ぼすことも,当該不当労働行為に係る原告の責任が消滅することもな い。本件和解の成立によって原告の当該不当労働行為責任を問えないとする原告の上記②の主張は,失当というべきである。 (3) 争点3について争点3に関する原告の主張は,本件賞与の交渉過程において原 の成立によって原告の当該不当労働行為責任を問えないとする原告の上記②の主張は,失当というべきである。 (3) 争点3について争点3に関する原告の主張は,本件賞与の交渉過程において原告に不当労働行為がないこと,仮に当該不当労働行為があるとしても,組合は,本件協定書の作成により,当該不当労働行為を問責し得なくなったことを前提とするものであるところ,以上の前提が認められないことは,上記(1)及び(2)で説示したとおりである。したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 3 結論以上の次第であるから,本件命令の主文第1項及び第2項に係る部分の判断は相当であり,本件命令が認定した原告の不当労働行為に対する救済方法として,本件命令主文第1項の文書交付を命じたことも相当である。 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部 裁判官渡邉和義 裁判官島根里織 裁判長裁判官青野洋士は転官のため署名押印することができない。 裁判官渡邉和義
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