平成14(行ウ)117 損害賠償請求事件(住民訴訟)

裁判年月日・裁判所
平成16年3月4日 大阪地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文27,753 文字)

主文 原告らの請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,大阪府に対し,5億円及びこれに対する平成14年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,大阪府の住民である原告らが,被告が,大阪府知事として,大阪府市町村職員共済組合(以下「組合」という。)との間で,大阪府の所有する不動産を組合に売却する旨の契約を締結し,これに基づいて組合に当該不動産を引き渡したのは違法であり,そのため大阪府は7億1646万2250円の損害を被った旨主張して,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項4号前段に基づき,大阪府に代位して,被告に対し,上記損害金のうち5億円及びこれに対する当該不動産が組合に引き渡された日である平成14年3月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を大阪府に支払うよう求めている住民訴訟である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠〔書証番号は特記しない限り枝番を含む。 以下同じ。〕等により容易に認められる事実)(1) 当事者ア原告らは,大阪府の住民である。 イ被告は,平成13年5月17日ないし平成14年3月25日当時,大阪府知事の役職に在った者である。 (2) 本件立退補償契約ア財団法人国際見本市協会(以下「協会」という。)は,大阪府から,別紙物件目録記載1の土地のうち地積5991.78平方メートルの部分(以下「本件建物敷地」という。)を建物所有目的で賃借し,同土地上に所有する同目録記載5の区分所有建物(以下「本件建物」という。)において,大阪コクサイホテルの営業を行っていたが,平成11年1月20日,同年3月末をもって大阪コクサイホテルの営業を終了し,協会自 に所有する同目録記載5の区分所有建物(以下「本件建物」という。)において,大阪コクサイホテルの営業を行っていたが,平成11年1月20日,同年3月末をもって大阪コクサイホテルの営業を終了し,協会自身も解散することとしているとして,大阪府に対し,本件建物を本件建物敷地の借地権(以下「本件借地権」という。)付き建物として買い取るよう申し入れた(乙4,5)。 イ大阪府は,同月19日,協会との間で,次の約定により,立退補償契約(以下「本件立退補償契約」という。)を締結した(乙7)。 (ア) 本件建物敷地の上記賃貸借契約を,同月31日をもって解約する。 (イ) 大阪府は,(ア)の解約に伴い,協会が本件建物敷地から立ち退き,これを大阪府に返還するに当たり,本件建物及びこれに付随する本件借地権の補償金として,51億4012万8000円を協会に支払う。 (ウ) 協会は,(ア)の解約日までに,本件建物敷地からの立退き及びその返還を行い,大阪府は,協会から,本件建物を含む現有有姿により,本件建物敷地の返還を受ける。 (エ) 協会は,(ウ)の返還に当たっては,本件建物に所有権の行使を妨げる権利が存在するときは,これを消滅させ,かつ,その権利に係る登記があるときは,これを抹消しなければならない。 (オ) 大阪府は,契約締結後,協会からの請求に基づき,速やかに,上記補償金の一部として,35億9800万円を協会に支払い,本件建物敷地の返還を受けた後,協会からの請求に基づき,残額を支払う。 (カ) 本件建物の所有権は,(ウ)の返還を完了した時をもって,大阪府に移転する。 (キ) 大阪府は,本件建物の所有権移転後,直ちに本件建物の所有権移転登記を嘱託する。 ウその後,本件立退補償契約に基づき,大阪府から協会に対して上記補償金が支払われるとともに,協会から大阪府に対して本 大阪府は,本件建物の所有権移転後,直ちに本件建物の所有権移転登記を嘱託する。 ウその後,本件立退補償契約に基づき,大阪府から協会に対して上記補償金が支払われるとともに,協会から大阪府に対して本件建物が引き渡され,同年6月30日,本件建物の所有権移転登記手続がされた(乙25の3,27の1,弁論の全趣旨)。 (3) 組合ア組合は,地方公務員等共済組合法3条1項6号の規定に基づいて,大阪府内の法252条の19第1項に規定する指定都市以外の各市町村の職員によって組織され,組合員及びその遺族の相互救済の事業を行い,もってこれらの者の生活の安定と福祉の向上に寄与するとともに,公務の能率的運営に資することを目的とする特殊法人(公共組合)である(乙22)。 イ組合は,大阪市αにおいて,和洋240室の客室,宴会場及びレストラン等の設備を有する地下1階・地上12階建のホテル「新大阪シティプラザ」を営業している(乙1)。 (4) 本件売買契約ア本件立退補償契約の締結に際し,大阪府においては,本件建物敷地及びその北側に隣接する別紙物件目録記載1及び2の各土地のうち地積2407.23平方メートルの部分の土地(地積合計8399.01平方メートル。以下「本件売却予定地」という。)を第三者に売却することを予定していた(乙27の1,弁論の全趣旨)。 イ平成12年2月16日,同目録記載2の土地から同目録記載3の土地の分筆登記がされるとともに,同目録記載1の土地から同目録記載4の土地の分筆登記がされた(以下,同目録記載3及び4の各土地〔地積合計8229.58平方メートル〕を「本件各土地」という。)。本件各土地は,地積では本件売却予定地よりもやや小さいが,これとほぼ重なる,概ね同様の形状の土地である(乙8,9,14,16,17,25,弁論の全趣旨)。 ウ大阪 ル〕を「本件各土地」という。)。本件各土地は,地積では本件売却予定地よりもやや小さいが,これとほぼ重なる,概ね同様の形状の土地である(乙8,9,14,16,17,25,弁論の全趣旨)。 ウ大阪府は,組合との間で,同年12月25日付け覚書において,本件各土地の売買について,次のとおり合意した(乙13)。 (ア) 組合は,本件各土地を新大阪シティプラザの移転用地として購入する。 (イ) 売買契約締結の時期は,平成13年4月中とする。 (ウ) 売買価格は,大阪府が最低価格として提示した平成12年10月1日現在の価格48億1163万円に,平成13年4月1日時点の地価変動率による修正を加えた額から本件建物撤去費5億2500万円を控除した額を基本とする。なお,地価変動率は,同年1月1日付け公示価格の変動率を踏まえた鑑定評価により定める。 (エ) 大阪府は,商工施策推進のため,本件各土地において宿泊飲食提供機能を有する施設が不可欠であると認識しており,上記(ウ)により合意するべく最大限の努力を払う。 エ被告は,同年5月17日,大阪府知事として,組合との間で,次の約定により,売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した(甲2,乙22。ただし,本件各土地に加え,本件建物が本件売買契約の目的物に含まれるか否かについては,当事者間に争いがある。)。 (ア) 売買代金は,36億6864万5000円とする。 (イ) 組合は,大阪府に対し,売買代金のうち18億3430万円を前払金として本件売買契約締結時に,残額を平成14年3月29日までに,それぞれ支払う。 (ウ) 本件各土地及び本件建物の所有権は,組合が売買代金の支払を完了した時に,組合に移転する。 (エ) 組合は,上記所有権移転後,登記に必要な書類を添えて,大阪府に対し,所有権移転登記手続を請求し,大阪府は 件各土地及び本件建物の所有権は,組合が売買代金の支払を完了した時に,組合に移転する。 (エ) 組合は,上記所有権移転後,登記に必要な書類を添えて,大阪府に対し,所有権移転登記手続を請求し,大阪府は,遅滞なく所有権移転登記手続を嘱託する。 (オ) 大阪府は,組合に対し,上記所有権移転後直ちに,本件各土地及び本件建物を現状有姿で引き渡す。 (カ) 組合は,本件建物を,上記所有権移転の日から2年以内に,組合の負担で撤去する。 (キ) 組合は,本件建物の撤去後,上記所有権移転の日から5年以内に,直接,本件各土地を,宿泊,宴会,飲食等提供機能を備えた施設の用途に供しなければならない。 (ク) 大阪府及び組合は,本件各土地の所在する地域の産業振興機能の維持・充実を図るため,必要な範囲内において協議する。 オ組合は,大阪府に対し,本件売買契約に基づき,代金のうち前払金18億3430万円を本件売買契約の締結時に,残金18億3434万5000円を平成14年3月25日に,それぞれ支払った。被告は,同日,組合に対し,本件売買契約に基づき,本件各土地及び本件建物の引渡し及び所有権移転登記手続をした(乙25)。 (5) 本件監査請求及び本件差止請求事件ア原告らは,平成13年5月18日,大阪府監査委員に対し,本件売買契約の締結及び履行は違法・不当であり,これにより大阪府が損害を被るおそれがあるとして,本件売買契約の履行を中断し,その見直しを行うこと等によって大阪府に損害が発生することを防止する措置をとることを求める旨の住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした(甲1)。 イ大阪府監査委員は,原告らに対し,同年8月13日付けで,原告らの上記主張には理由がないものと判断する旨の監査結果(以下「本件監査結果」という。)を通知した(甲1)。 ウ原告らは,同 (甲1)。 イ大阪府監査委員は,原告らに対し,同年8月13日付けで,原告らの上記主張には理由がないものと判断する旨の監査結果(以下「本件監査結果」という。)を通知した(甲1)。 ウ原告らは,同年9月12日,大阪府知事を被告として,法242条の2第1項1号に基づき,本件売買契約の履行の差止めを求める訴えを提起した(当庁平成13年(行ウ)第75号府有地等売渡差止請求事件。以下「本件差止請求事件」という。)。 エ原告らは,平成14年8月28日,本件訴えを提起した。本件は弁論準備手続に付され,同年10月16日の弁論準備手続期日において,本件差止請求事件の口頭弁論に併合された。 オ平成15年4月17日の本件口頭弁論期日において,原告らは,本件差止請求事件の訴えを取り下げる旨陳述し,本件差止請求事件被告大阪府知事は,上記取下げに同意する旨陳述した。 2 本案前の争点及び当事者の主張(1) 住民監査請求前置の有無(被告の主張)本件訴えは,住民監査請求を前置していないので,不適法な訴えである。 (原告らの主張)原告らが平成13年5月18日に行った本件売買契約の履行の差止めを求める旨の本件監査請求に,本件売買契約に基づく本件各土地及び本件建物の引渡しがされたことによる損害賠償請求に関する住民監査請求が含まれていたと解すべきであるから,原告らは,新たに住民監査請求をすることなく,被告に対して法242条の2第1項4号の訴えを提起することができる。 (2) 出訴期間遵守の有無(被告の主張)本件訴えは,本件監査結果が原告らに通知されてから1年以上を経過するとともに,本件各土地及び本件建物の大阪府から組合への引渡し等の本件売買契約の履行が完了し,原告らが本件訴えを提起し得るようになった平成14年3月25日からみても5か月を経過した同年8月28日 するとともに,本件各土地及び本件建物の大阪府から組合への引渡し等の本件売買契約の履行が完了し,原告らが本件訴えを提起し得るようになった平成14年3月25日からみても5か月を経過した同年8月28日に提起されたものである上,本件差止請求事件において被告とされた大阪府知事は行政機関であり,一方,本件の被告はA個人であって,前者に対する判決の既判力が後者に及ぶ関係にもなく,両者は当事者として形式的にも実質的にも同一性を欠いているから,本件差止請求事件の訴え提起の時にさかのぼって本件訴えの提起があったものと同様に取り扱うべき理由はない。したがって,仮に,本件監査請求をもって,本件訴えが監査請求を前置しているものと解するとしても,本件訴えは,法242条の2第2項1号に定められた出訴期間を徒過した不適法な訴えである(最高裁判所昭和58年7月15日第二小法廷判決・民集37巻6号869頁参照)。 (原告らの主張)訴えの変更がされた場合の出訴期間の遵守の有無の判断については,特別の規定がない限り,訴えの変更の時を基準とすべきであるが,変更前後の請求の間に訴訟物の同一性が認められるとき,又は両者の間に存する関係から,変更後の新請求に係る訴えを当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し得る特段の事情があるときには,例外的に当初の訴えの提起の時に新請求の訴えの提起があったものとみなし,出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべきである(最高裁判所昭和61年2月24日第二小法廷判決・民集40巻1号69頁,同昭和37年2月22日第一小法廷判決・民集16巻2号375頁,同昭和31年6月5日第三小法廷判決・民集10巻6号656頁参照)。そして,財務会計上の行為について権限を有する者を被告として当該行為の差止めを求める訴訟と,当該行為がされて地方公共団体に 75頁,同昭和31年6月5日第三小法廷判決・民集10巻6号656頁参照)。そして,財務会計上の行為について権限を有する者を被告として当該行為の差止めを求める訴訟と,当該行為がされて地方公共団体に損害が生じたとして当該職員を被告として損害賠償を求める代位訴訟との間には,訴訟物相互の実質的関連性及び被告の実質的同一性が認められるし,差止請求訴訟の係属中に当該行為がされたならば代位訴訟の形であくまで当該行為の違法を主張しようというのが,この種の訴訟における原告の通常の意思であって,当該行為が完了したならば代位請求を追加するというのは類型的にみて当初から予定された行動であると考えられるから,追加に係る請求もまた当初の訴え提起の時から提起されていたものと同視すべきである。なお,被告の引用する前記最高裁判所昭和58年7月15日第二小法廷判決は,長に対する公金管理の違法確認請求を長個人に対する損害賠償請求に変更する訴状訂正の可否が問題となった事案について,訴え提起の時点において違法確認請求と損害賠償請求の双方が可能な状況下であえて一方の訴えのみを提起したことに着目して他方の訴えを当初から提起したものと同視することはできないとの判示がされたものと解され,本件のように差止請求訴訟提起時には提起不可能であった損害賠償請求代位訴訟についてはその判示の射程外である。 本件訴えは,訴えの交換的変更後の新請求と同様に解することができるところ,本件売買契約の締結を違法として事前にその履行の差止めを求める本件差止請求事件と,事後的に同じ違法を主張して損害賠償を求める本件とは,その中心的な争点を共通とするものであるのみならず,事前の差止請求と事後の損害賠償代位請求は,原告ら住民が遂行する訴訟として密接不可分の関係にあり,差止めが求められている本件売買契約の履行が行 は,その中心的な争点を共通とするものであるのみならず,事前の差止請求と事後の損害賠償代位請求は,原告ら住民が遂行する訴訟として密接不可分の関係にあり,差止めが求められている本件売買契約の履行が行われた後は,これに対する損害賠償請求がされるであろうことは当然予測できるものである。また,被告についてみても,本件差止請求事件における被告が行政機関であるのに対し,本件の被告は大阪府知事の地位にあるA個人であり,両者は観念的には異なるものの,実質的には同一であるということができるし,大阪府知事としての行為をした段階で,本件訴えが提起されることは予想できたものといえる。このような事情の下においては,本件差止請求事件の訴え提起の時に本件訴えが提起されたものとみなされるべき特段の事情があるというべきである。したがって,本件訴えは,本件差止請求事件の訴え提起の時である平成13年9月12日に提起されたものとみなされ,これは原告らが本件監査請求に係る同年8月13日付け監査結果の通知を受けた日から30日以内であるから,法242条の2第2項1号に定められた出訴期間を遵守しており,適法である。 3 本案の争点及び当事者の主張(1) 随意契約の適否(原告らの主張)被告は,組合との間で随意契約の方法によって本件売買契約を締結している。しかし,次のとおり,本件では,契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を考慮したとしても,原則である一般競争入札を排除して随意契約によるべきであったとは到底いえないのであり,法234条2項及び地方自治法施行令(平成14年政令第95号による改正前のもの。以下「令」という。)167条の2の要件に該当する事情は存在しないから,被告が本件売買契約の締結に際し随意契約の方法を採ったことは違法である。 ア契約の種類,内容について売買と る改正前のもの。以下「令」という。)167条の2の要件に該当する事情は存在しないから,被告が本件売買契約の締結に際し随意契約の方法を採ったことは違法である。 ア契約の種類,内容について売買という契約類型は,買主において購入資金さえ用意できれば足り,特殊な技術等を有する必要等もなく,むしろ最も競争入札になじむものである。また,本件売買契約の内容は府有財産である本件各土地を単に売り渡すというものであり,特殊な内容は盛り込まれておらず,例外的方法である随意契約によらなければ実現できないものでもない。したがって,契約の種類,内容という観点からは,原則どおり,競争入札をすべきという結論が導かれるというべきである。 イ性質,目的その他諸般の事情について被告は,大阪府が,β地区が有する産業振興機能を支援する新たなホテル機能の確保を施策目的としていた旨主張するが,既に大阪コクサイホテルが経営不振で閉鎖に追い込まれていたことから明らかなとおり,その跡地である本件各土地でのホテルの需要がどれほど見込まれていたのか甚だ疑問であり,上記施策目的自体が妥当性を失っていた。また,本件売買契約において,上記施策目的や被告の主張するような売却先の条件に関係する約定としては,組合は,本件各土地及び本件建物の所有権移転の日から5年以内に,直接,本件各土地を,宿泊,宴会,飲食等提供機能を備えた施設の用途に供しなければならないとするものと,大阪府及び組合は,本件各土地の所在する地域の産業振興機能の維持・充実を図るため,必要な範囲内において協議するとするもののみであり,この程度の条件であるならば,一般競争入札において,契約条件として上記指定用途を掲げることで十分であり,随意契約の方法によらなければ上記施策目的を達成できなかったということはならない。さらに,大阪府にお 度の条件であるならば,一般競争入札において,契約条件として上記指定用途を掲げることで十分であり,随意契約の方法によらなければ上記施策目的を達成できなかったということはならない。さらに,大阪府において本件各土地の売却交渉をしていた相手方がいかなる点に難色を示して交渉が成立しなかったかについてや,交渉の相手方が組合以外にない状況であったことについて,大阪府議会等において,具体的経過等を示した説明が一度もされておらず,被告の主張の真偽は全く不明である。むしろ,契約条件を示して一般競争入札に付することで,より適切な事業者がより高額な価格で契約に応じた可能性も十分に認められる。したがって,本件売買契約締結の目的の設定自体が誤りであるとともに,仮にその目的が妥当性を有するとしても,その目的達成のために一般競争入札に付することも可能であり,その他諸般の事情からしても随意契約によることが適切であったとはいえない。 (被告の主張)契約の性質又は目的に照らして競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難とはいえなくとも,普通地方公共団体において当該契約の目的,内容に照らしそれに相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法を採るのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり,ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合は,令167条の2第1項1号にいう,「その性質又は目的が競争入札に適しないものとするとき」に該当するものと解される。また,そのような場合に該当するか否かは,個々具体的な契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当であ 場合に該当するか否かは,個々具体的な契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を考慮して当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当である(最高裁判所昭和62年3月20日第二小法廷判決・民集41巻2号189頁)。 本件では,大阪府は,一貫してβ地区が有する産業振興機能を支援する新たなホテル機能の確保を施策目的としてきた。そのため,本件各土地の売却先については自ずと制約があり,①ホテル機能を有した土地利用を行うことが確実であること,②コンベンション機能の維持・継続のため,ホテルを健全に運営できるノウハウと経営基盤を有していること,③β地区における大阪府の産業振興機能の維持・充実施策の趣旨に理解を有していることが求められてきた。この点,組合は,①従前から新大阪シティプラザとしてホテルを経営しており,本件売買契約が成立すれば,同ホテルを移転新築することが確実に見込まれること,②組合員約6万人及び新大阪シティプラザの顧客を有するなど,ホテル経営のノウハウと安定した経営基盤を有しており,本件各土地への移転後も安定した経営が見込まれること,③地方公務員等共済組合法に基づいて設立され,大阪府内の指定都市以外の市町村の職員等によって構成される公共的団体であり,マイドームおおさかや大阪商工会議所と連携した施設経営に積極的な姿勢を有するとともに,β地区における大阪府の産業振興施策に十分な理解を有していることから,大阪府の上記条件をすべて満たすとともに,大阪府の上記施策目的を実現する上で最も適格な相手方であった。また,大阪府は,平成10年以降,上記条件を念頭に置いて外資を含めた数社の事業者と売却交渉を行ってきたが,話がまとまったものはなく,最終的には,大阪府の上記①ないし③の提示条件をすべて満た あった。また,大阪府は,平成10年以降,上記条件を念頭に置いて外資を含めた数社の事業者と売却交渉を行ってきたが,話がまとまったものはなく,最終的には,大阪府の上記①ないし③の提示条件をすべて満たした上で,適正な価格での売却交渉ができる相手方は,組合以外にない状況であった。 したがって,被告は,当該契約の種類,内容,性質,目的に照らして,組合が大阪府の施策目的を適切かつ最も効果的に実現し得る相手方と判断して随意契約の方法により本件売買契約を締結したのであって,本件売買契約の締結及び履行は適正に行われたものである。 (2) 売買代金が「適正な対価」か否か(原告らの主張)被告は,本件売買契約において,本件各土地及び本件建物を一体として36億6864万5000円で売却したものである。そして,本件売買契約は,条例又は議会の議決によるものではないところ,本件売買契約における売買代金額は低すぎるから,到底,法237条2項に規定する「適正な対価」とはいえず,本件売買契約の締結及びその履行は,同項,法2条14項,地方財政法8条に反し,違法である。 ア本件各土地については,本件立退補償契約の締結及び本件売買契約の締結に際し,それぞれ株式会社谷澤総合鑑定所(以下「谷澤総合鑑定所」という。)及び大和不動産鑑定株式会社(以下「大和不動産鑑定」という。)による鑑定評価が行われていたところ,それらの鑑定評価によれば,平成11年1月1日から平成13年4月1日までの間に,本件各土地の更地価格は,谷澤総合鑑定所においては41. 8パーセント,大和不動産鑑定においては41.9パーセント,それぞれ下落したとされている。しかし,谷澤総合鑑定所及び大和不動産鑑定の鑑定評価書等においては,様々な視点が取り上げられているのであり,年数が経過しても,本件各土地の所在や形状に変 9パーセント,それぞれ下落したとされている。しかし,谷澤総合鑑定所及び大和不動産鑑定の鑑定評価書等においては,様々な視点が取り上げられているのであり,年数が経過しても,本件各土地の所在や形状に変化が生じるわけではないから,2年3か月の間の経済状況の変化のみによって,上記のように40パーセントを超える価格の下落が生じたということはできず,上記各鑑定評価は妥当なものとはいえない。 イまた,谷澤総合鑑定所の鑑定評価によれば,平成11年1月11日時点における本件建物の価格は,平成10年9月1日時点から2.8パーセント値下がりした17億6924万9000円であったから,同じ比率によって値下がりが続いたものとしても,平成13年4月1日時点において,本件建物の価格は,14億3486万0939円であったことになる。ところが,本件売買契約においては,本件建物が上記のように莫大な価値を有していることについて,全く考慮されていない。 ウさらに,本件売買契約における売買代金額は,本件各土地の更地価格から本件建物撤去費を差し引いて算出されているところ,そのように本件建物撤去費を差し引くことがそもそもおかしい。仮に本件建物撤去費を差し引くとしても,本件建物撤去費用の根拠となっている平成12年2月付け及び平成13年5月14日付けの各見積書は,いずれも十分に信頼に耐え得るものとはいえない。すなわち,前者については作成者が不明であるし,後者によれば,前者からわずか1年3か月の間に本件建物撤去費用の見積額が1億1445万円(21.8パーセント)増加していることになる上,大幅に増額となっている内部仕上撤去材処分費,設備機械・配管撤去費,埋め戻し費,現場管理費,一般管理費等の費目の増額の根拠が明らかでない。また,両者の間の費目が完全に一致すること,大半の費目において費用が 増額となっている内部仕上撤去材処分費,設備機械・配管撤去費,埋め戻し費,現場管理費,一般管理費等の費目の増額の根拠が明らかでない。また,両者の間の費目が完全に一致すること,大半の費目において費用が同額であることなどから,これらは同一人が作成した見積書である可能性が高いところ,府有財産である本件各土地の売買代金額を減額する要素となる本件建物撤去費について,1社の見積りのみによって決定していること自体極めて不可解である。 (被告の主張)本件売買契約における売買代金額は,平成13年4月1日時点における本件各土地の更地価格について,谷澤総合鑑定所及び大和不動産鑑定から鑑定評価を徴し,谷澤総合鑑定所の同年5月1日付け意見書により同日時点の価格に修正した上,大阪府財産評価審査会に本件建物撤去費相当額も含めて諮問した結果得られた答申額を上回るものであり,適正な価格である。したがって,本件売買契約の締結及び履行は,法237条2項に規定する適正な対価によらない譲渡には当たらない。 原告らは,本件立退補償契約時の鑑定評価と組合への売却時の鑑定評価を単純に比較し,40パーセント以上下落しているのは不当な鑑定評価である旨主張するが,本件各土地周辺における地価公示標準地の公示地価は,平成11年1月1日から平成13年1月1日にかけて,いずれも年間20パーセント前後下落しているから,原告らの上記主張は失当である。 (3) 大阪府の損害及び被告の責任(原告らの主張)次のとおり,被告の故意又は過失による本件売買契約の締結及び履行により,大阪府は合計7億1646万2250円の損害を被ったから,被告にはこれを賠償すべき責任がある。 ア本件各土地の価格についての損害 6億0201万2250円大阪府は,本件立退補償契約に基づき,協会に対し,本件各土地の一部である本 円の損害を被ったから,被告にはこれを賠償すべき責任がある。 ア本件各土地の価格についての損害 6億0201万2250円大阪府は,本件立退補償契約に基づき,協会に対し,本件各土地の一部である本件建物敷地の借地権分として33億7087万9000円,本件建物分として17億6924万9000円,合計51億4012万8000円の補償金を支払っている。その際,本件建物敷地の更地価格をいくらと想定していたかは不明であるが,借地権割合を,谷澤総合鑑定所に65パーセントとして,大和不動産鑑定に60パーセントとしてそれぞれ鑑定評価させていたことから,上記借地権価格は,更地価格の65パーセント以上になることはないと考えられるところ,仮に本件立退補償契約締結の際,借地権割合を65パーセントとしていた場合,本件建物敷地の更地価格は,1平方メートル当たり約86万5000円となる(33億7087万9000円×100÷65÷5991.78平方メートル)。そうすると,本件立退補償契約締結時における本件各土地の更地価格は,71億1851万7500円(86万5000円/平方メートル×8229.58平方メートル)であったと考えられる。そして,仮に,本件立退補償契約締結時から本件売買契約締結時までの間に,本件各土地の更地価格が下落していたとしても,その下落率は30パーセントを上回ることはなく,本件売買契約締結時における本件各土地の更地価格は,49億8296万2250円であったと考えられるところ,本件売買契約においては,本件各土地の更地価格は43億8095万円とされていた。したがって,本件売買契約の締結及び履行により,大阪府は,本件各土地価格分だけでも上記差額6億0201万2250円の損害を被ったことになる。 イ本件建物撤去費についての損害 1億1445万円前記のとお て,本件売買契約の締結及び履行により,大阪府は,本件各土地価格分だけでも上記差額6億0201万2250円の損害を被ったことになる。 イ本件建物撤去費についての損害 1億1445万円前記のとおり,本件建物撤去費は,本件売買契約においては6億3945万円とされているが,当初の見積りでは5億2500万円とされていた。この増加分1億1445万円について,他の業者の見積りを取る等の検証がされたことがない以上,大阪府は,同増加分相当額の損害を被ったことになる。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の争点に対する判断(1) 監査請求前置の有無(本案前の争点(1))について本件において,原告らは,本件売買契約の締結及び履行という財務会計上の行為が違法である旨主張して,これを行った当該職員である被告に対し,大阪府に損害を賠償するよう求めているところ,前記前提事実のとおり,本件監査請求において,原告らは,本件売買契約の締結及び履行が違法・不当である旨主張して,その履行を中断し,本件売買契約の見直しを行うこと等により大阪府の損害の発生を防止する措置を求めていたのであり,本件売買契約の締結及び履行は,本件監査請求の対象とされていたといえる。したがって,本件訴えが法242条の2第1項,242条1項に規定する住民監査請求前置の要件を充たしていることは明らかである。 (2) 出訴期間遵守の有無(本案前の争点(2))についてア法242条の2第1項1号の規定に基づく財務会計上の行為の差止請求(以下「1号請求」という。)と,当該財務会計上の行為をした当該職員に対する同項4号に基づく損害賠償請求(以下「4号請求」という。)は,行政事件訴訟法13条所定の関連請求に当たると解されるから,1号請求に係る訴訟に4号請求に係る訴えを追加的に併合して提 た当該職員に対する同項4号に基づく損害賠償請求(以下「4号請求」という。)は,行政事件訴訟法13条所定の関連請求に当たると解されるから,1号請求に係る訴訟に4号請求に係る訴えを追加的に併合して提起することができる(法242条の2第6項,行政事件訴訟法43条3項,41条2項,19条1項)。そして,住民訴訟は,監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合は,当該監査の結果又は当該勧告の内容の通知があった日から30日の出訴期間内に提起しなければならない(法242条の2第2項1号)ところ,上記の場合における4号請求に係る訴えの出訴期間遵守の有無については,訴えの追加的併合も追加された新請求については新たな訴えの提起にほかならないから,1号請求と4号請求との間に訴訟物の同一性が認められるとき,又は両者の間に存する関係から,4号請求に係る訴えを当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるときを除き,4号請求に係る訴えの追加的併合の時を基準としてこれを決しなければならないものと解される(最高裁判所昭和61年2月24日第二小法廷判決・民集40巻1号69頁参照)。 ところで,前記前提事実のとおり,原告らは,本件監査結果の通知を受け取った日から30日以上を経過した後になって,本件差止請求事件とは別個に,新たな訴えとして本件訴えを提起している。しかし,本件差止請求事件における本件売買契約の履行の差止請求(以下「本件差止請求」という。)と本件損害賠償請求は,行政事件訴訟法13条所定の関連請求に当たると解されるから,原告らは,本件差止請求事件を基本事件として,本件損害賠償請求に係る訴えを追加的に併合して提起することができたものと考えられるし,前記前提事実のとおり,本件は,最初の期日において ると解されるから,原告らは,本件差止請求事件を基本事件として,本件損害賠償請求に係る訴えを追加的に併合して提起することができたものと考えられるし,前記前提事実のとおり,本件は,最初の期日において本件差止請求事件の口頭弁論に併合されて審理が遂げられており,仮に訴えの追加的併合という形式を採っていたとしても,これと全く同様の審理が行われていたものと考えられる。したがって,本件訴えにおける出訴期間遵守の有無については,本件損害賠償請求に係る訴えが本件差止請求事件に追加的に併合して提起された場合と同様に取り扱うのが相当である。 イそこで検討するに,本件差止請求と本件損害賠償請求の訴訟物そのものは別個のものといわざるを得ないが,次のとおり,本件においては,本件差止請求と本件損害賠償請求との間に存する関係から,本件訴えを当初の本件差止請求に係る訴えの提起の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情の存在が肯定される。 すなわち,前記前提事実のとおり,本件差止請求は,本件売買契約の締結及び履行が違法であり,これにより大阪府が損害を被るおそれがあるとして,その権限を有する大阪府知事に対し,本件売買契約の履行の差止めを求めたものであり,本件損害賠償請求は,本件売買契約の履行が完了したため,大阪府知事として本件売買契約の締結及び履行をした当該職員である被告個人に対し,本件売買契約の締結及び履行によって大阪府が被った損害の賠償を請求するものであるが,これらの両請求は,本件売買契約の履行前後の各段階において,本件売買契約の締結及び履行という同一の財務会計上の行為を問題とするものであり,その違法性に関する争点も同一であったと認められる(当裁判所に顕著な事実)から,両請求は,段階的に連続しており,実質的関連性を有 約の締結及び履行という同一の財務会計上の行為を問題とするものであり,その違法性に関する争点も同一であったと認められる(当裁判所に顕著な事実)から,両請求は,段階的に連続しており,実質的関連性を有するものといえる。また,確かに,本件差止請求における被告は大阪府の行政機関たる大阪府知事であるのに対し,本件損害賠償請求における被告は大阪府知事の地位にある私人であり,前者に対する判決の既判力が後者に及ぶ関係にはないが,本件では,本件損害賠償請求は,本件売買契約が既に履行されたことが前提となるから,原告らは,本件売買契約が履行された平成14年3月25日よりも前の,本件監査結果の通知を受けた日から30日以内の時点においては,大阪府知事を被告として本件差止請求に係る訴えを提起するほかなく,A個人を被告として本件損害賠償請求をすることはできなかったという事情がある上,被告は,現実には,本件差止請求事件においても被告大阪府知事の地位に在り,訴訟追行に当たってきており(当裁判所に顕著な事実),本件売買契約の履行がされた場合には,本件損害賠償請求がされることは十分予想できたものと認められる。このような両請求の関係からみれば,本件訴えを当初の本件差止請求に係る訴えの提起の時に提起されたものと同視し,出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるというべきである。 ウ被告は,前記最高裁判所昭和58年7月15日第二小法廷判決を引用して,本件差止請求事件の訴え提起の時にさかのぼって本件訴えの提起があったものと同様に取り扱うべき理由はなく,本件訴えは出訴期間を徒過したものである旨主張するが,上記判決は,当初の訴え提起時において,訴状訂正後の被告に対する訴えを提起することができた事案についてのものであるのに対し,本件は,これと異なり,前記のとお 訴期間を徒過したものである旨主張するが,上記判決は,当初の訴え提起時において,訴状訂正後の被告に対する訴えを提起することができた事案についてのものであるのに対し,本件は,これと異なり,前記のとおり,本件監査結果の通知を受けた日から30日以内の時点においては,本件差止請求に係る訴えを提起するほかなく,本件損害賠償請求をすることはできなかった事案なのであって,上記判決の判旨が直ちに本件に及ぶものではないから,被告の上記主張を採用することはできない。 なお,被告は,本件訴えが本件売買契約の履行された日である平成14年3月25日から5か月以上経過してから提起されたものであることをも問題とするが,本件のような場合に,出訴期間を本件売買契約が履行された時又は原告らがこれを知った時から30日以内などと解すべき法文上の根拠はないものといわざるを得ず,本件売買契約の履行の差止めを求めるという形で監査請求対象である同一の財務会計行為を問題とする訴訟が係属していたことからすれば,被告の指摘する上記事情は,信義則等に照らしても,いまだ本件訴えの適法要件の存否に影響を及ぼすものとは解されない。 エしたがって,本件訴えについては,本件差止請求に係る訴えの提起の時に提起されたものと同視することができ,出訴期間の遵守があったということができる。 (3) 小括よって,被告の本案前の抗弁はいずれも理由がなく,本件訴えは適法である。 2 本案の争点に対する判断(1) 認定事実前記前提事実に加え,証拠(後掲)及び弁論の全趣旨によれば,本件売買契約の締結に至る経緯について,次の各事実が認められる。 ア昭和62年9月,大阪コクサイホテルの北東側隣接地に,大規模な展示場,会議室等を備えた,中小企業の振興等を目的とする施設であるマイドームおおさかが開館し,同ホテル,マイド の各事実が認められる。 ア昭和62年9月,大阪コクサイホテルの北東側隣接地に,大規模な展示場,会議室等を備えた,中小企業の振興等を目的とする施設であるマイドームおおさかが開館し,同ホテル,マイドームおおさか及びこれらに隣接する大阪商工会議所が通路により連結された。これを受けて,大阪府は,平成元年以降,マイドームおおさか及び大阪商工会議所の展示,会議等を伴う催事を開く機能と,同ホテルの有する催事の参加者に対し宿泊,宴会,飲食等を提供する機能とが三位一体の関係にあるとして,上記3施設の所在するβ地区を「都心型新産業育成拠点区域」と捉え,同ホテルとこれに隣接する大阪府商工会館の建て替えを機に,同地区においてデザイン等の新たな産業の育成拠点を整備し,大阪府下の産業振興の拠点を形成する旨の都心型新産業育成拠点整備構想(以下「整備構想」という。)を有していた(乙2,3,23,27の1)。 イ協会は,大阪府から,本件建物敷地を建物所有目的で賃借し,本件建物において,大阪コクサイホテルの営業を行っており,大阪府の協力を得て新ホテル建設を検討していたが,経営の悪化等により,老朽化していた同ホテルの建て替えを断念し,平成11年1月20日,同年3月末をもって大阪コクサイホテルの営業を終了し,協会自身も解散することとしているとして,大阪府に対し,本件建物を本件借地権付き建物として買い取るように申し入れた(乙4,5)。 ウこれを受けて,大阪府は,協会の有する本件建物及びこれに付随する本件借地権の価値を補償して本件借地権を消滅させ,本件建物敷地の完全な所有権を回復した上で,本件売却予定地をホテル機能を有する施設の建設を条件として第三者に売却することとし,同年3月19日,協会との間で,本件立退補償契約を締結した(乙7,27の1)。 エその後,本件立退補償契約 た上で,本件売却予定地をホテル機能を有する施設の建設を条件として第三者に売却することとし,同年3月19日,協会との間で,本件立退補償契約を締結した(乙7,27の1)。 エその後,本件立退補償契約に基づき,大阪府から協会に対して上記補償金が支払われるとともに,協会から大阪府に対して本件建物が引き渡され,同年6月30日,本件建物の所有権移転登記手続がされた(乙25の3,27の1,弁論の全趣旨)。 オ大阪府は,複数の業者等との間で,本件売却予定地にホテル機能を有する施設を整備することを条件に,本件売却予定地の売却交渉を行ったところ,そのうちの1企業グループは,大阪府に対し,同年4月ころ,本件建物の撤去費用を同企業グループが負担することを前提に,同敷地の代金額を約66億円としたい旨の提示があったが,その後,同企業グループがタイアップする予定であったホテル業者との調整がつかなかったため,同年6月ころには大阪府と同企業グループとの交渉は決裂した。他方,大阪府商工部新産業振興課長の役職に在ったBは,同年3月ころ,新大阪シティプラザの建て替えを検討していた組合に対し,本件売却予定地の売却の打診を行った。なお,組合を除くその他の業者等との交渉は,いずれもまとまらなかった(乙6,22,27の1)。 カ大阪府は,組合との間で,平成12年12月25日付け覚書において,本件各土地の売買について,次のとおり合意した(乙13)。 (ア) 組合は,本件各土地を新大阪シティプラザの移転用地として購入する。 (イ) 売買契約締結の時期は,平成13年4月中とする。 (ウ) 売買価格は,大阪府が最低価格として提示した平成12年10月1日現在の価格48億1163万円に,平成13年4月1日時点の地価変動率による修正を加えた額から本件建物撤去費5億2500万円を控除した額を基本と 格は,大阪府が最低価格として提示した平成12年10月1日現在の価格48億1163万円に,平成13年4月1日時点の地価変動率による修正を加えた額から本件建物撤去費5億2500万円を控除した額を基本とする。なお,地価変動率は,同年1月1日付け公示価格の変動率を踏まえた鑑定評価により定める。 (エ) 大阪府は,商工施策推進のため,本件各土地において宿泊飲食提供機能を有する施設が不可欠であると認識しており,上記(ウ)により合意するべく最大限の努力を払う。 キ谷澤総合鑑定所は,大阪府の依頼を受けて,次のとおり,各鑑定評価書等を提出した(乙27の1,2)。 (ア) 平成10年9月4日付け鑑定評価書(乙10)(同月1日時点における本件建物の正常価格)18億2072万7000円(イ) 平成11年1月6日付け鑑定評価書(乙8)(同月1日時点における本件売却予定地の正常価格)75億1710万円,1平方メートル当たり89万5000円(同日時点における本件借地権の正常価格)34億3430万円,1平方メートル当たり57万3168円(ウ) 同月11日付け意見書(乙11)(平成10年9月1日から平成11年1月1日までの期間における本件建物の正常価格の時点修正率)マイナス2.8パーセント(本件建物の平成11年1月1日時点における参考価格17億6924万9000円)(エ) 平成12年10月6日付け意見書(乙14)(平成11年1月1日から平成12年10月1日までの期間における本件売却予定地の更地価格の時点修正率)マイナス35パーセント(オ) 平成13年4月19日付け鑑定評価書(乙16。以下「本件谷澤鑑定評価書」という。)(同月1日時点における本件各土地の正常価格)42億8760万円,1平方メートル当たり52万1000円(カ) 同年5月1日付 月19日付け鑑定評価書(乙16。以下「本件谷澤鑑定評価書」という。)(同月1日時点における本件各土地の正常価格)42億8760万円,1平方メートル当たり52万1000円(カ) 同年5月1日付け意見書(乙19。以下「本件谷澤意見書」という。)(同年4月1日から同年5月1日までの期間における本件各土地の更地価格の時点修正率)マイナス1.6パーセントク大和不動産鑑定は,大阪府の依頼を受けて,次の各鑑定評価書等を提出した(乙27の1,3)。 (ア) 平成11年1月5日付け鑑定評価書(乙9)(同月1日時点における本件売却予定地の正常価格)75億9000万円,1平方メートル当たり90万4000円(同日時点における本件借地権の正常価格)33億1000万円,1平方メートル当たり55万2000円(イ) 平成13年4月19日付け不動産鑑定評価書(乙17。以下「本件大和鑑定評価書」という。)(同月1日時点における本件各土地の正常価格)43億2000万円,1平方メートル当たり52万5000円ケ大阪府公共建築室が同月27日付け工事費等概算書において概算していた本件建物撤去費の見積額は,工事費5億9371万6000円,委託料5125万5000円の合計6億4497万1000円(本件各土地1平方メートル当たり約7万8300円)であった。また,組合は,株式会社ヤマシタから,同年5月14日付けで,本件建物撤去費の見積額を6億3945万円とする見積書を得ていた(乙18,20,弁論の全趣旨)。 コ大阪府は,本件谷澤鑑定評価書及び本件大和鑑定評価書に記載された本件各土地の平成13年4月1日時点の各鑑定評価額に,本件谷澤意見書に記載された同日時点から同年5月1日時点までの期間における時点修正率マイナス1.6パーセントを乗じた価格の平均値である1平方メ た本件各土地の平成13年4月1日時点の各鑑定評価額に,本件谷澤意見書に記載された同日時点から同年5月1日時点までの期間における時点修正率マイナス1.6パーセントを乗じた価格の平均値である1平方メートル当たり約51万4600円から,大阪府公共建築室が同年4月27日付け工事費等概算書によって概算していた本件各土地1平方メートル当たりの本件建物撤去費約7万8300円(合計6億4497万1000円)を控除する方法により,本件建物撤去費を考慮した本件各土地の価格を1平方メートル当たり43万6300円と試算し,大阪府財産評価審査会に諮問したところ,同審査会は,同年5月7日,本件各土地の価格を諮問のとおりとする旨の評価答申をした(乙20)。 {¥521,000/㎡×(1-0.016)+¥525,000×(1-0. 016)}÷2-¥644,971,000÷8,229.58㎡≒¥436,300/㎡サ組合は,大阪府に対し,同月10日付け府有財産買受申請書をもって,新大阪シティプラザの移転改築のため,本件建物の撤去を条件に,本件各土地を買い受けたい旨の申請をした(乙22)。 シ大阪府は,組合に対し,同月15日付けで,本件各土地の売買代金として,本件各土地の更地価格を43億0809万5000円(1平方メートル当たり52万3489円)とした上で,これから組合が得ていた本件建物撤去費の見積額6億3945万円を控除する方法により算定した36億6864万5000円を最終的に提示した(乙21)。 ¥4,308095,000-¥639,450,000=¥3,668,645,000ス被告は,同月17日,大阪府知事として,組合との間で,本件売買契約を締結した。本件売買契約に係る府有財産売買契約書の第2条には,「売買物件は,末尾記載のとおりとし,別紙実測図面のと 5,000ス被告は,同月17日,大阪府知事として,組合との間で,本件売買契約を締結した。本件売買契約に係る府有財産売買契約書の第2条には,「売買物件は,末尾記載のとおりとし,別紙実測図面のとおりとする。」と記載され,同契約書の末尾には,「売買物件の表示」として本件各土地が掲げられた上,本件各土地の丈量図が添付されている。また,同契約書末尾には,「撤去物件の表示」として本件建物が掲げられており,同契約書中,本件建物については「撤去物件」との記載がされている(甲2,乙22)。 (2) 随意契約の適否(本案の争点(1))についてア法234条1項は,「売買,貸借,請負その他の契約は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」と規定し,同条2項は,「前項の指名競争入札,随意契約又はせり売りは,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる。」と規定しており,同項を受けた令167条の2第1項は,随意契約によることができる場合を列挙し,2号において,「不動産の買入れ又は借入れ,普通地方公共団体が必要とする物品の製造,修理,加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。」を掲げている。 「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」とは,契約の性質又は目的に照らして競争入札の方法による契約の締結が不可能又は著しく困難というべき場合に限定されるものではなく,競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難とはいえないが,不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではなく,当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても,普通地方公共団体において当該契約の目 定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが必ずしも適当ではなく,当該契約自体では多少とも価格の有利性を犠牲にする結果になるとしても,普通地方公共団体において当該契約の目的,内容に照らしそれに相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定し,その者との間で契約の締結をするという方法を採るのが当該契約の性質に照らし又はその目的を究極的に達成する上でより妥当であり,ひいては当該普通地方公共団体の利益の増進につながると合理的に判断される場合もまた,これに該当するものと解される。そして,上記のような場合に該当するか否かは,契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている法及び令の趣旨を勘案し,個々具体的な契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を考慮して,当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量判断により決定されるべきものと解するのが相当である(最高裁判所昭和62年3月20日第二小法廷判決・民集41巻2号189頁参照)。 イ本件売買契約は,大阪府がその所有する本件各土地を売却する契約であるから,その種類・性質上,競争入札の方法によること自体が不可能又は著しく困難な場合には当たらない。 しかしながら,前記前提事実のとおり,本件売買契約においては,組合は,直接,本件各土地を宿泊,宴会,飲食等提供機能を備えた施設の用途に供しなければならず,大阪府及び組合は,本件各土地の所在する地域の産業振興機能の維持・充実を図るため,必要な範囲内において協議することとされていることなどからすれば,大阪府は,本件売買契約の締結に至るまで,本件各土地の所在するβ地区を産業振興拠点として位置づけて,本件各土地を売却することにより,本件各土地上に,大阪コクサイホテルに れていることなどからすれば,大阪府は,本件売買契約の締結に至るまで,本件各土地の所在するβ地区を産業振興拠点として位置づけて,本件各土地を売却することにより,本件各土地上に,大阪コクサイホテルに代わる新たなホテル機能を有する施設を誘致し,中小企業の振興等を目的とする施設であるマイドームおおさか及び大阪商工会議所における展示会,国際会議等に対する飲食・宿泊等の提供機能を確保するという政策判断を有していたことが認められる。そして,証拠(乙23,24)によれば,大阪コクサイホテルは,その閉鎖に至るまで,マイドームおおさか及び大阪商工会議所における展示会,会議等の催事に伴う宿泊,宴会,飲食等の提供を行い,上記催事の実施に貢献してきたことが認められるから,大阪府における上記政策判断が,不合理なものであったということはできない。そうすると,大阪府における契約担当者である被告としては,大阪府の所有する本件各土地の売却価格に関心を払うのは当然であるが,そればかりではなく,本件各土地の売却後に,本件各土地上に宿泊,宴会,飲食等の提供機能を有するホテルが開設されるとともに,安定的にその経営が継続され,上記機能が維持されるかどうかといった点についての考慮から,売却の相手方の資力,信用,技術,経験等の能力に大きな関心を持ち,これらを熟知した上で特定の相手方を選定してその者との間で契約を締結するのが,上記政策の遂行上,利点があると見込まれ,妥当であると判断したものと認められ,それには十分首肯するに足りる理由があるというべきである。しかも,前記前提事実及び認定事実のとおり,組合は,従来,新大阪シティプラザにおけるホテル営業を行ってきた実績を有しており,新大阪シティプラザの本件各土地上への移転を目的として大阪府との本件売買契約の締結交渉を行っていたものと認められ おり,組合は,従来,新大阪シティプラザにおけるホテル営業を行ってきた実績を有しており,新大阪シティプラザの本件各土地上への移転を目的として大阪府との本件売買契約の締結交渉を行っていたものと認められるから,被告が,上記政策遂行上,資力,信用,技術経験等の能力の点において,組合は妥当な売却先であると判断したことにも,合理的な根拠があるといえる。 また,前記前提事実のとおり,組合は,大阪府内の法252条の19第1項に規定する指定都市以外の各市町村の職員によって組織される法人であって,大阪府ないし被告と特段の人的・物的関係を有する団体ではなく,その他本件全証拠によっても,本件売買契約を随意契約の方法によって締結したことについて,情実に左右された等の公正を妨げる事情は何らうかがうことができない。 以上からすると,被告が,本件売買契約をもって令167条の2第1項2号にいう「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」に該当すると判断したことに合理性を欠く点があるということはできず,随意契約の方法によって本件売買契約を締結したことに違法はないというべきである。 ウなお,原告らは,大阪府の整備構想に基づくホテル機能の確保という施策目的自体が妥当性を失っていた旨主張する。しかし,本件建物において営業していた大阪コクサイホテルが,経営の悪化等のために閉鎖されたことを考慮しても,本件建物は既に老朽化していたこと,β地区が有してきた産業振興拠点としての機能の維持充実を図るために新たなホテル機能を有する施設を誘致し,マイドームおおさか等の展示会,会議等の催事に伴う飲食・宿泊等の提供機能を確保するという政策自体は不合理とはいえないこと,組合において新大阪シティプラザに代わる新たなホテルの設置が予定されていること,同ホテルには組合の組合員等の顧客が見込まれること ・宿泊等の提供機能を確保するという政策自体は不合理とはいえないこと,組合において新大阪シティプラザに代わる新たなホテルの設置が予定されていること,同ホテルには組合の組合員等の顧客が見込まれること等からすれば,被告が,本件各土地上に大阪コクサイホテルに代わる新たなホテル機能を有する施設を誘致すれば一定の需要があり,安定的な経営が見込まれるとの認識の下,上記施策を遂行する旨の政策判断をしたとしても,それが不合理で妥当性を失っていたとまで評価するのは相当でない。原告らの上記主張を採用することはできない。 エしたがって,本件売買契約が随意契約の方法によって締結されたことについて,法234条2項,令167条の2第1項の各規定の違反はなく,これに基づく本件売買契約の履行にも違法な点はない。 (3) 売買代金が「適正な対価」か否か(本案の争点(2))についてア法96条1項6号,237条2項は,普通地方公共団体の財産は,条例又は議会の議決による場合でなければ,適正な対価なくしてこれを譲渡してはならない旨規定しているところ,これらの規定に反する財産の譲渡は違法・無効となるものと解される。 そして,前記前提事実及び弁論の全趣旨によれば,本件売買契約は,大阪府の有する不動産を組合に譲渡するものであるところ,その締結は,条例や大阪府議会における個別の議決によるものではないと認められるから,売買代金が適正な対価でなかったとすれば違法の瑕疵を帯びることとなる。 イそこで,本件売買契約における売買代金が,大阪府が譲渡する財産の適正な対価といえるか否かについて以下検討する。 (ア) まず,前記前提事実のとおり,本件売買契約上,大阪府から組合に本件各土地及び本件建物の所有権が移転することが約定されているが,他方では,組合は,本件建物を,上記所有権移転の日から2年 する。 (ア) まず,前記前提事実のとおり,本件売買契約上,大阪府から組合に本件各土地及び本件建物の所有権が移転することが約定されているが,他方では,組合は,本件建物を,上記所有権移転の日から2年以内に,組合の負担で撤去するものとされているところ,前記認定事実によれば,本件売買契約における売買代金は,本件谷澤鑑定評価書及び本件大和鑑定評価書に記載された本件各土地の鑑定評価額に本件谷澤意見書に記載された時点修正率を乗じた価格から,組合が得ていた本件建物撤去費の見積額を控除して算定されていることが認められる。また,前記認定のとおり,本件売買契約に係る府有財産売買契約書の第2条には,「売買物件は,末尾記載のとおりとし,別紙実測図面のとおりとする。」と記載され,同契約書の末尾には,「売買物件の表示」として本件各土地が掲げられた上,本件各土地の丈量図が添付され,また,同契約書末尾には,「撤去物件の表示」として本件建物が掲げられており,同契約書中,本件建物については「撤去物件」との記載がされている。確かに,撤去の前提として撤去物件である本件建物の所有権の移転及び所有権移転登記等の定めはあるが,本件建物についての対価は全く予定されていない。 これらの事実にかんがみれば,本件建物が本件売買契約の目的物に含まれないのは明らかであり,本件売買契約の目的物は本件各土地のみであることが認められる。 そして,前記認定事実によれば,本件売買契約における売買代金額である36億6864万5000円は,本件各土地の更地価格を43億0809万5000円(1平方メートル当たり52万3489円)とした上で,これから本件建物撤去費の見積額6億3945万円を控除する方法により算定されたものであるところ,組合において使用する予定のない本件建物の撤去を本件各土地における新たなホテル 3489円)とした上で,これから本件建物撤去費の見積額6億3945万円を控除する方法により算定されたものであるところ,組合において使用する予定のない本件建物の撤去を本件各土地における新たなホテルの建設工事と併せて組合に行わせ,その代わりに本件建物撤去費を本件各土地の価格から控除することには合理性があるといえる。また,前記のとおり,上記更地価格は,本件谷澤鑑定評価書及び本件大和鑑定評価書に記載された平成13年4月1日時点における本件各土地の各鑑定評価額の平均額を上回るものであること,本件谷澤意見書には,同日時点から同年5月1日時点までの期間における時点修正率はマイナス1.6パーセントと記載されており,本件売買契約締結時には,本件各土地の価格は,同年4月1日時点よりも低下していたものと考えられること,上記本件建物撤去費は,大阪府公共建築室が概算していた本件建物撤去費の見積額6億4497万1000円を下回るものであったことが認められる。 以上によれば,本件売買契約における売買代金額は,大阪府にとって特に不利なものとはいえず,本件各土地の適正な対価ではなかったと認めることはできない。 (イ) この点,原告らは,谷澤総合鑑定所及び大和不動産鑑定が行っていた本件売却予定地又は本件各土地の各鑑定評価額が,平成11年1月1日時点から平成13年4月1日時点までの間に41.8ないし41.9パーセント下落していることを指摘し,この間の経済状況の変化のみによってこのような価格の下落が生じたとは考えられないから,これらの鑑定評価額は妥当でない旨主張する。しかしながら,証拠(乙26,27)及び弁論の全趣旨によれば,本件各土地の所在する大阪市γ付近の地価公示標準地の公示地価が,平成11年1月1日時点から平成13年1月1日時点にかけて,毎年,前年比マイナス20パーセ 証拠(乙26,27)及び弁論の全趣旨によれば,本件各土地の所在する大阪市γ付近の地価公示標準地の公示地価が,平成11年1月1日時点から平成13年1月1日時点にかけて,毎年,前年比マイナス20パーセント前後の割合で下落していることが認められるから,上記各鑑定評価額が平成11年1月1日時点から平成13年4月1日時点までの2年3か月間に上記の程度下落しているとしても特に不自然ではなく,その他に谷澤総合鑑定書及び大和不動産鑑定が行った各鑑定評価に特に不当な点は認められない。 また,原告らは,本件立退補償契約において大阪府が協会に対し本件建物の価値に対する補償を行っていることを指摘し,本件建物の価格が本件売買契約において考慮されていないことは不当である旨主張する。しかし,前記のとおり,本件売買契約の目的物に本件建物が含まれていない以上,本件売買契約の売買代金において本件建物の価格を考慮する必要がないのは当然である。確かに,大阪府は,本件立退補償契約においては本件建物の対価を協会に支払っているのに対し,本件売買契約においては,対価なしに本件建物の所有権を組合に移転する上,その撤去費を負担することとされており,両契約において本件建物の取扱いは大きく異なるものとなっているが,前記認定のとおり,本件立退補償契約は,大阪府が本件借地権を消滅させて本件建物敷地の完全な所有権を復活させ,これを含む本件売却予定地を第三者に売却することにより,当該第三者において本件売却予定地上に大阪コクサイホテルに代わる新たなホテル機能を有する施設が整備されるようにするという公益的な目的のためには,協会の本件建物敷地からの立退きに当たって,協会の有する資産である本件建物の価値に対する補償が必要であったものであり,これに対して,本件売買契約においては,本件各土地上に新たなホテル 目的のためには,協会の本件建物敷地からの立退きに当たって,協会の有する資産である本件建物の価値に対する補償が必要であったものであり,これに対して,本件売買契約においては,本件各土地上に新たなホテルの建設を予定している組合にとって,本件建物は,使用収益の対象とすることはできず,かえって,その撤去を要する分,本件各土地の負担となっているにすぎない物件であったと考えられるから,両契約において本件建物の取扱いが異なっているのは不合理とはいえない。 原告らは,本件売買契約の売買代金において,本件各土地の対価から本件建物撤去費を差し引くのはおかしいとか,その算定が過大であるとも主張する。しかし,まず,本件各土地の対価から本件建物の撤去費を差し引くことに合理性があると認められるのは前記のとおりである。また,確かに,前記認定事実及び証拠(乙13,15,18)によれば,大阪府と組合との間の平成12年12月25日付け覚書には,本件建物撤去費を5億2500万円とする旨の記載があり,これに沿う同年2月付けの本件建物撤去費の見積書の存在が認められ,かつ,これと平成13年5月14日付け見積書とは,それらの体裁,項目,金額等の記載の類似性からみて,共に株式会社ヤマシタの作成に係るものであると認められるが,前者の見積書は,表紙がなく,その作成者及び作成日が明示されていないことからして,契約締結交渉の手掛かりとするための概算的な見積りが記載されたものと解し得るし,後者の見積書に記載された本件建物撤去費は,大阪府公共建築室において概算した本件建物撤去費よりも低額であったことが認められるから,後者の見積書に記載された本件建物撤去費が過大なものであったと直ちに認めることはできない。なお,上記のとおり,本件各土地の価格から控除された本件建物撤去費については,組合が株式会社 認められるから,後者の見積書に記載された本件建物撤去費が過大なものであったと直ちに認めることはできない。なお,上記のとおり,本件各土地の価格から控除された本件建物撤去費については,組合が株式会社ヤマシタから得ていた見積りだけではなく,大阪府公共建築室においてもこれを概算していたのであるから,結果的に株式会社ヤマシタ作成の見積書に記載された本件建物撤去費を基に本件各土地の売買代金額が決定されたからといって,そのことを不可解などということはできない。 以上のとおり,原告らの上記各主張はいずれも採用することができない。 ウしたがって,本件売買契約における売買代金は,大阪府が組合に譲渡する財産である本件各土地の適正な対価でないとはいえないから,本件売買契約の締結は,法96条1項6号,237条2項,2条14項,地方財政法8条の各規定に違反せず,これに基づく本件売買契約の履行にも違法な点は認められない。 (4) 結論よって,本件売買契約の締結及び履行は適法であり,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官川神裕裁判官山田明裁判官一原友彦

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