平成17(行ウ)4 勧告無効確認

裁判年月日・裁判所
平成18年10月18日 高松地方裁判所 警察関係
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判決文本文27,113 文字)

- 1 -主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求被告が原告に対し,平成9年12月8日付けでした,観音寺X会病院の開設に対する中止勧告が無効であることを確認する。 第2事案の概要 事案の概要 本件は,医療法人である原告が,香川県観音寺市内における病院の新規開( )設を計画して,被告に対し,医療法7条1項に基づく病院開設の許可を申請したところ,被告が,同法30条の7に基づき,平成9年12月8日付けで,病院開設の中止を勧告し(以下「本件勧告」という。)つつ,平成10年2月26日付けで上記病院開設の許可処分をしたことにつき,本件勧告の手続に重大かつ明白な違法があるなどとして,本件勧告の無効確認を求める事案である。 本件における請求は,平成12年2月3日,平成12年(行ウ)第2号事件( )として高松地方裁判所に提訴されたものであり,同裁判所は,平成15年2月25日,本件勧告は行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらないと判断し,原告の請求を不適法な訴えとして却下し,高松高等裁判所も,平成15年11月14日,同旨の判断をして原告の控訴を棄却したが,最高裁判所は,平成17年10月25日,本件勧告が前記「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると判断して,前記控訴棄却判決のうち本件における請求に関する部分を破棄し,前記第一審判決を取り消して,これを当審に差し戻した。 - 2 - なお,原告は,本件における請求と選択的に,前記病院開設許可処分と同( )日付けで原告に送付された香川県健康福祉部長名の文書に留意事項として記載された,病院の保険医療機関の指定については昭和62年9月21日付け保発第69号厚生省保険局長 前記病院開設許可処分と同( )日付けで原告に送付された香川県健康福祉部長名の文書に留意事項として記載された,病院の保険医療機関の指定については昭和62年9月21日付け保発第69号厚生省保険局長通知があるとの指摘部分が,前記病院開設許可処分に付された附款に当たるとして,その附款部分の無効確認請求をしていたが,その請求については,これを不適法として却下した第一審判決が,控訴棄却,上告棄却により確定している。 前提事実(争いのない事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実) 当事者( )ア原告は,病院,診療所等を経営すること等を目的とし,主たる事務所を大阪府大東市に置き,全国各地に病院等を開設する医療法人である。 イ被告は,香川県において,平成9年当時,国の機関委任事務として医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの。以下同じ。)7条に基づく病院開設許可処分を,国の団体委任事務として同法30条の7に基づく勧告をそれぞれ行う権限を有する行政庁である。同県において,これらの事務は,香川県健康福祉部医務福祉総務課(以下「県担当課」という。)が所管していた。 医療法による病院開設の許可( )医療法によれば,病院を開設しようとするとき又は病院を開設しようとする者等が病床数,病床の種別等を変更しようとするときは,開設地の都道府県知事の許可を受けなければならないこととされていた(医療法7条1項及び2項)。 医療計画( )ア医療法によれば,都道府県は,当該都道府県における医療を提供する体制の確保に関する計画(医療計画)を定めるものとされ(医療法30条の- 3 -3第1項),医療計画には,主として病院の病床(一般病床)の整備を図るべき地域的単位として区分する区域(いわゆる2次保健医療圏)の設定に関する事項 画)を定めるものとされ(医療法30条の- 3 -3第1項),医療計画には,主として病院の病床(一般病床)の整備を図るべき地域的単位として区分する区域(いわゆる2次保健医療圏)の設定に関する事項,一般病床に係る必要病床数等を定めるものとされていた(同条2項)。 また,都道府県知事は,医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合には,病院を開設しようとする者又は病院の開設者等に対し,都道府県医療審議会の意見を聴いて,病院の開設又は病院の病床数の増加等に関して勧告することができるとされていた(医療法30条の7)。 イ医療法30条の7の適用については,「医療計画について」と題する厚生省健康政策局長発の通知(「昭和61年8月30日健政発563各都道府県知事宛厚生省健康政策局長通知」,甲30の2,以下「昭和61年通知」という。)により,次のとおりの解釈が示されていた。 医療法30条の7の「医療計画の達成の推進のため特に必要がある場(ア)合」とは,原則として医療法7条の2第1項に掲げる者以外の者が,病院の開設の申請又は病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更の許可の申請をした場合において,その病床の種別に応じ,その病院の所在地を含む医療法30条の3第2項第1号の区域(2次保健医療圏)又は都道府県の区域における病院の病床数が,医療計画に定める当該区域の必要病床数に既に達している場合又はその病院の開設等によって当該必要病床数を超えることとなる場合をいうものであること。 「病院の開設又は病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更に関(イ)して勧告する」とは,病院の開設又は病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更のそれぞれの行為の中止又はそれぞれの行為に係る申請病床数の削減を勧告するものであること。なお,都道府県知事は,勧告を行うに先立 する」とは,病院の開設又は病院の病床数の増加若しくは病床の種別の変更のそれぞれの行為の中止又はそれぞれの行為に係る申請病床数の削減を勧告するものであること。なお,都道府県知事は,勧告を行うに先立ち,病院を開設しようとする者に対し,可能な限り,他の区域における病院の開設等について,助言を行うことが望ましいものであ- 4 -ること。 医療法30条の7の規定に基づく勧告は,医療法7条の許可又は不許(ウ)可の処分が行われるまでの間に行うものであること。 香川県保健医療計画及び三豊保健医療圏( )香川県は,平成2年12月,医療法の定めるところにより,香川県保健医療計画を決定し,香川県内における2次保健医療圏の一つとして,香川県西部の観音寺市,a町,b町,c町,d町,e町,f町,g町,h町及びi町の1市9町で構成される三豊保健医療圏を設定し,同医療圏における必要病床数を1951床と定めた(乙10)。 その後,香川県は,平成6年3月に,第2次香川県保健医療計画を策定し,三豊保健医療圏内の必要病床数を1937床とした(乙11)。 公正取引委員会による勧告( )ア公正取引委員会は,平成8年12月26日,社団法人A医師会(以下「A医師会」という。)に対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)48条1項(平成9年法律第87号による改正前のもの)に基づき,病院又は診療所の開設,診療科目の追加,病床の増床,増改築等を制限する行為を行わないことなどを内容とする勧告(以下「公取委勧告」という。)をした。また,公正取引委員会は,被告に対しても,同日付けで,A医師会への指導を行うよう要請した。 イ県担当課は,平成9年5月20日,A医師会から,三豊保健医療圏内の増床等を希望する医療機関に関する一覧表(乙9)の提出 委員会は,被告に対しても,同日付けで,A医師会への指導を行うよう要請した。 イ県担当課は,平成9年5月20日,A医師会から,三豊保健医療圏内の増床等を希望する医療機関に関する一覧表(乙9)の提出を受けた。 原告に対する本件勧告等( )ア原告は,平成9年7月25日,県担当課に対し,病床数419床の病院を香川県観音寺市内に開設したいとの意向を表明した。 イ県担当課は,上記(5)イの一覧表に記載されていた三豊保健医療圏内の8つの医療機関(B総合病院,C病院,医療法人社団D病院,医療法人社- 5 -団E病院,医療法人F病院,医療法人社団G病院,医療法人社団H病院及びf町立I病院をいう。以下「地元8病院」という。)との間で事前協議を行い,同年9月5日までに,当時の三豊保健医療圏における不足病床数であった469床を,地元8病院に一応分配する計画を立てた。 ウ原告は,平成9年10月24日,県担当課に対し,開設予定地を香川県観音寺市j町に,病床数を310床にそれぞれ変更したいとして,当初の病院開設計画の変更を申し出た。 エ香川県医療審議会は,平成9年11月6日,会議を開催し,同月26日,被告に対し,地元8病院について増床許可相当,原告については開設中止勧告相当とする答申をした。 被告は,上記答申を受けて,同年12月2日,地元8病院に対して,合計469床の病院開設許可事項の一部変更(増床)を行い,原告に対しては,同月8日,医療法30条の7に基づき,勧告の内容を「観音寺X会病院の開設を中止すること。」,勧告の理由を「観音寺X会病院の開設予定地である観音寺市を含む三豊医療圏の病床数が,第2次香川県保健医療計画に定める必要病床数に既に達しているため。」とする勧告(本件勧告)をした。 原告に対する病院開設許可等( )ア原告は,平成10 る観音寺市を含む三豊医療圏の病床数が,第2次香川県保健医療計画に定める必要病床数に既に達しているため。」とする勧告(本件勧告)をした。 原告に対する病院開設許可等( )ア原告は,平成10年1月22日,被告に対し,本件勧告には従うことができないので,医療法7条3項により速やかに病院開設の許可をするよう求めるとともに,勧告の撤回をも求めた。 これに対し,被告は,同年2月26日,上記(6)ウの変更後の申請に対して病院の開設許可処分を行い,これと同時に,原告に対し,香川県健康福祉部長名で,留意事項として,病院の保険医療機関としての指定については,厚生省保険局長通知(昭和62年9月21日付け保発69号)があることを指摘する文書を送付した。 - 6 -イ原告は,平成11年8月26日,保険医療機関指定申請予定者として,被告に対し,行政手続法9条2項に基づき,観音寺X会病院に対する保険医療機関の指定申請の許否について,情報の提供を求めた。 これに対し,被告は,同年12月13日,「観音寺X会病院については,平成9年12月8日,医療法30条の7の規定による開設中止勧告を受け,これに従っていないことから,仮に保険医療機関の指定の申請があった場合には,健康保険法第43条の3第4項第2号の規定に基づき,申請に係る病床の全部について指定拒否することとなる。」と回答した。 争点 本件勧告における手続の違法( )(原告の主張)ア医療法に定める病院開設の許可申請が被告に到達したときは,透明性をもって,適正・公平に審査されなければならないことは手続法上当然である。適正・公平ということを裏からいえば,行政庁の恣意,独断,他事考慮を疑わせるような手続であってはならないということである。病院開設については,許可を得ても,開設場所の医療圏における医療計 然である。適正・公平ということを裏からいえば,行政庁の恣意,独断,他事考慮を疑わせるような手続であってはならないということである。病院開設については,許可を得ても,開設場所の医療圏における医療計画上必要病床数の範囲内でなければ,知事の中止勧告を受け,保険医療機関として病院の経営ができないこととなる。換言すれば,必要病床数によって限定された病床をめぐる許可申請であるから,複数の申請がいずれも許可要件を充足しているときには,これらを公平に扱い病床を按分する必要があり,被告の恣意や独断ないし他事考慮によって,申請に区別を付けることは不公正・不公平な手続として許されることではない。 保険医療機関の病床の指定に係る国民健康保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う医療法第30条の7の規定に基づく勧告等の取扱いについて(平成10年7月27日厚生省健康政策局指導課長通知)第2の3(2)では,「近接した期間に開設許可の申請等が複数なされた場合には,地域- 7 -の医療提供の実情を踏まえ,かつ,手続の透明化を期する観点から,地域保健医療協議会などの地域の関係行政機関,医療関係団体等との協議の場を活用し,全ての申請者等の参加による病床数等の調整を行うなど,今後とも公平性・公正性の確保に努め,医療計画の達成の推進を図るものとすること。」とされている。この通知の趣旨は,手続法の要請,条理としても当然のことであって,本件のように複数の医療機関から競合する申請があった場合には,被告としては競合する申請者を公正・平等に扱う必要があった。これに反する手続は重大な違法の瑕疵がある。 イ被告は,本件勧告を行うに当たり,行政手続法の趣旨及び条理上,原告を含めた全ての病床開設希望者の参加による病床数の調整を行うべきであったのに,平成9年7月25日以降,原告の病院開設を 疵がある。 イ被告は,本件勧告を行うに当たり,行政手続法の趣旨及び条理上,原告を含めた全ての病床開設希望者の参加による病床数の調整を行うべきであったのに,平成9年7月25日以降,原告の病院開設を妨害する意図の下,原告を排除して原告に参加の機会を与えないまま地元8病院と病床調整を行い,同年9月5日までに病床配分を完了し,それに沿うように地元8病院に対して許可申請書の提出を指導した。 これは被告の恣意,独断,他事考慮に基づくもので,本件中止勧告に重大な手続違反があることは明らかであり,その手続違反は外見上明白である。 ウまた,原告が病院開設の許可を申請した平成9年9月1日の時点で,三豊保健医療圏における不足病床数は469床であり,原告の他に病院の開設や増床申請は一切なされていなかったにもかかわらず,被告は,原告に劣後して同月10日から同月30日までにかけて増床申請をした地元8病院には増床を許可しておきながら,原告には本件勧告をした。 このような被告の手続は著しく不公平であり,重大な手続違反があることが明白である。 (被告の主張)ア改正前の医療法30条の7に基づく都道府県知事の病院開設等の中止勧- 8 -告には裁量性が認められるから,その裁量の逸脱・濫用がある場合でなければこれを違法ということはできず,さらに,これが当然無効となるには,知事が,公定力を含む何らの実体的効力も生じないといえるほどに著しく裁量権を逸脱・濫用した場合であることを要する。 本件の場合,増床希望数全てに開設を認めれば必要病床数を超えることになるので,このような場合に一部の増床希望を抑制することも「医療計画の達成の推進のために特に必要がある場合」にあたると解されている。 また,増床申請が競合した場合の運用については,都道府県医療審議会の意見を聴くこと以外に法令の 部の増床希望を抑制することも「医療計画の達成の推進のために特に必要がある場合」にあたると解されている。 また,増床申請が競合した場合の運用については,都道府県医療審議会の意見を聴くこと以外に法令の定めがないところ,本件勧告は,都道府県医療審議会の答申に則ったものである。さらに,昭和61年通知は,法規範性のない行政通達にすぎず,同通知に記載された指針以外の解釈・運用が一切禁止されるわけではない。 イ病院開設等の申請が競合した場合における必要病床数の配分については,医療法に明文の定めがないことから,①医療計画に記載された医療提供計画の実現(必要病床数以内での許可),②地域が必要とする医療の内容,③申請又は申出の時間的先後,④医療提供の実績,⑤申請内容の実現可能性,⑥都道府県医療審議会の意見,⑦その他の事情を考慮し,最終的には,医療計画の達成の推進の見地から,都道府県知事の裁量により決せられるべきものである。 ウ県担当課においては,地元8病院からの増床希望は,公取委勧告の以前に正式な申請に至らなかった地元病院の病床要求が公取委勧告を契機に一気に噴出したものであり,速やかにその希望の実現を図る必要があったと考えられたこと,地元8病院は,増床希望数の削減に対して柔軟な態度を示していたが,他方,原告は,その要求する病床数が不足病床数の大部分を占め,県担当課による病床数削減の打診があったにもかかわらず,これに固執する対応に終始したこと等から,原告を除き,地元8病院を対象に- 9 -病床数の調整を進めたのである。これは被告に許された合理的な裁量権の範囲内にある行為である。 エ原告は,平成9年9月1日に地元8病院に先駆けて病院開設許可の申請書を提出したが,同年10月24日に当該申請の内容を大幅に変更している。これは病床数の削減にとどまらず,病 囲内にある行為である。 エ原告は,平成9年9月1日に地元8病院に先駆けて病院開設許可の申請書を提出したが,同年10月24日に当該申請の内容を大幅に変更している。これは病床数の削減にとどまらず,病院の開設場所,建物の構造等に及ぶものであり,当初の申請とおよそ同一性を有するものとはいえない。 したがって,この変更時を基準にすると,地元8病院の増床の申請の方が早いことになる。 (原告の反論)ア原告は,県担当課から,平成9年10月9日に行われたヒアリングの際,初めて病床数削減の打診を受けたものであり,それ以前に,被告側から,地元病院との調整は難しい旨伝えられたことはなかった。 イ医療法30条の7の勧告の制度と病院開設の許可とは密接な関係を有しており,後者については国の機関委任事務とされ,旧厚生大臣が都道府県知事の上級機関とされていたから,同条の勧告の要件についても,旧厚生省において都道府県知事の裁量を縛る審査基準というべき通知を発し,これが内部的には規範として機能していた(昭和61年通知及び昭和61年8月30日各都道府県衛生主管部(局)長宛厚生省健康政策局計画課長通知「医療計画について」)。 したがって,本件勧告を発するに当たり被告に裁量権は存在しないのであり,本件勧告が裁量処分であることを理由に,権限の逸脱,濫用が重大明白である場合に限り無効であるとする被告の主張は失当である。 公的医療機関に対する増床配分の違法性( )(原告の主張)医療法は,私人による病院開設等の許可申請については,「その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が第二十一条及び第二十三条の規定に- 10 -基づく省令の定める要件に適合」する以上,申請を許可すべきものとしているが(同法7条3項),公的医療機関における病院開設等の許可申請に対しては,当該申請 二十一条及び第二十三条の規定に- 10 -基づく省令の定める要件に適合」する以上,申請を許可すべきものとしているが(同法7条3項),公的医療機関における病院開設等の許可申請に対しては,当該申請により当該保健医療圏の必要病床数を超える場合には申請を許可しないことができるものとしている(同法7条の2)。すなわち,同法は,私人による病院開設等の自由を保障するために,公的医療機関による病院開設等の自由を制限しているのである。 ところが,被告は,原告その他の私人が競合して病院開設等を申請していたのに,公的医療機関であるB総合病院及びI病院に対して増床を許可し,原告に対しては本件勧告をした。 したがって,私人による病院開設等の自由を保障する医療法の趣旨に反する重大かつ明白な瑕疵があるから,本件勧告は無効である。 (被告の主張)医療法7条の2第1項が公的性格を有する病院をより強い規制の対象としているのは,公的病院の開設,増床等を抑制し,その分の医療資源を病床不足地域や高度,特殊な医療機能に振り向けることにより,地域における医療機関の適正配置や地域に必要な医療機能の確保を図る目的に基づくものであり,必ずしも民間病院に対し,公的病院より優先して病床を配分しなければならないとか,民間病院の営業の自由を侵害しないようにしなければならないといった趣旨ではない。 また,同条項の文言上も「許可を与えないことができる」とされているにとどまる。 本件勧告の理由の提示( )(原告の主張)被告は,本件勧告に際し,わずかに「開設予定地である観音寺市を含む三豊保健医療圏の病床数が,第2次香川県保健医療計画に定める必要病床数に既に達しているため。」との理由を示しただけで,地元8病院に先行して病- 11 -院開設を申請した原告が本件勧告を受けることになった具体的な の病床数が,第2次香川県保健医療計画に定める必要病床数に既に達しているため。」との理由を示しただけで,地元8病院に先行して病- 11 -院開設を申請した原告が本件勧告を受けることになった具体的な理由や病床配分を決定した経緯等を何ら明らかにしていない。 したがって,本件勧告には,行政庁の恣意を防止して判断の公平を担保するため拒否処分の理由を示すよう求めた行政手続法8条に照らし,重大かつ明白な瑕疵があるから,本件勧告は無効である。 (被告の主張)行政手続法8条が申請拒否処分について理由付記を要請しているのは,申請拒否処分について当該処分庁にその理由を明らかにさせることによって,処分庁に対しては,当該処分の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに,申請者に対しては,不服申立てに便宜を与える趣旨である。 そうすると,本件において理由として記載されたところより,本件勧告がなされた理由は一義的に明らかとなっているといえるのであり,同条の趣旨を十分に満たしている。 なお,行政処分の手続的瑕疵は,必ずしも処分の効力に影響を与えるものではなく,与えるとしてもそれは取消原因になるにとどまり,無効原因となるものとは解されない。 第3当裁判所の判断 医療法30条の7の規定に基づく病院開設等の中止勧告は,それが保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たると解するのが相当である。 そこで,本件勧告に無効事由が認められるかにつき検討する。 前提事実,証拠(甲2,3,20ないし24,乙1,2,4,7ないし11,13ないし15,16の1ないし8,乙17の1ないし8,乙18の1,2,乙20ないし27,30,31の1 かにつき検討する。 前提事実,証拠(甲2,3,20ないし24,乙1,2,4,7ないし11,13ないし15,16の1ないし8,乙17の1ないし8,乙18の1,2,乙20ないし27,30,31の1,2,乙32,34ないし38,39の1- 12 -ないし8,乙40の1,2の各1ないし8,乙42ないし47,50ないし57,証人J,証人K,証人L)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。なお,各項目の末尾に関係する証拠を記載することがある。 また,上記証拠(甲20,証人J)中には,以下の事実認定に反する部分があるが,それらの部分は,他の証拠や容易に認定しうる事実関係と整合しないので,採用することができない。 香川県は,平成6年3月,平成2年決定の香川県保健医療計画を見直し,( )三豊保健医療圏における必要病床数を1937床と定めて,第2次香川県保健医療計画を策定・公示した。当該公示当時においては,同圏内の病院の既存病床数は1498床であり,不足病床数は439床であった。 なお,香川県内の他の保健医療圏では,上記見直しにより一般病床の必要病床数が削減され,不足病床数が僅少となり,高松保健医療圏では必要病床数に対する既存病床数が超過する事態となった。 その後,三豊保健医療圏内においては,既存病床数に増減があり,平成8年3月時点では,既存病床数は1468床,不足病床数は469床となっていた。(乙10,11,18の1,乙56) 公正取引委員会は,A医師会において昭和58年ころから行われてきた,( )医療機関の開設及び病床の増床をしようとする者は,医師会内に設置された医療機関新設等相談委員会に申し出をし,同相談委員会及び医師会理事会において,医師会が設定した審査基準に照らし,当該申出に係る医療機関と既存の医療機関との位置関 ようとする者は,医師会内に設置された医療機関新設等相談委員会に申し出をし,同相談委員会及び医師会理事会において,医師会が設定した審査基準に照らし,当該申出に係る医療機関と既存の医療機関との位置関係,専門科目,地域の病床数等を考慮し,当該医療機関の周辺に所在する開業医である医師会会員の意見を参考にして,同意,不同意,条件付き同意又は保留の決定を行い,不同意の決定を受けた者は当初の予定を断念し,条件付き同意又は保留の決定を受けた者は当該決定に従って医療機関の開設等を行うとの取扱いが,観音寺三豊地区の開業医に係る事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限し,医師会会員の行う医- 13 -療機関の病床の増床等を制限するものであり,独占禁止法8条1項3号及び4号に違反するとして,平成8年12月26日,A医師会に対し,そのような制限を行わないことを勧告した。また,公正取引委員会は,被告に対しても,同日付けで,A医師会に対し,かかる行為が行われることがないよう指導を徹底するよう要請した(乙7)。 厚生省健康政策局総務課長は,各都道府県衛生主幹部(局)長に対し,平( )成9年1月23日付けで,各地区医師会において,新規に診療所等の開設等をしようとする者等に対する独占禁止法違反行為が行われることがないよう,指導することを要請する旨の文書を発した(乙8)。 県担当課は,平成6年6月ころ,三豊保健医療圏における病院群輪番制病( )院の指定に向けてのA医師会との打ち合わせ会の席で,B総合病院が,85床程度の増床を計画したいと発言するのを聞き,また,同年秋ころ,約60床の増床をA医師会に申し入れたが認めてもらえず,改めて増床を申請したいというC病院の要望を聞き,平成8年10月,療養型病床群の設置を検討中である旨のI病院の意向を聞き,平成9年 同年秋ころ,約60床の増床をA医師会に申し入れたが認めてもらえず,改めて増床を申請したいというC病院の要望を聞き,平成8年10月,療養型病床群の設置を検討中である旨のI病院の意向を聞き,平成9年2月ころ,病床を100床増やしたい旨のB総合病院の意向を聞いた。また,同年3月には,D病院からA医師会に対して,100床増やしたいとの要望がされていた(甲21,乙26,27,30,56,証人K)。 県担当課は,平成9年3月19日,香川県医師会の理事会において,今後( )の病院開設許可申請等の書類は直接各保健所が受理すること,上記申請の事実等は医師会の運営上必要なものとして情報提供を行っていくことを告げた。 また,A医師会が会員等からのそれまでの増床等の要望を把握していると思われたことから,同会に対し,その状況をリストにして提供するよう求めた(乙25,56,証人K)。 県担当課は,平成9年5月20日,A医師会から,三豊保健医療圏内にお( )いて増床等を希望する医療機関に関する一覧表(乙9)の提出を受け,地元- 14 -8病院から増床734床,3診療所から病院開設に伴う150床の合計884床の増床等の意向があることを把握した(乙9,57,証人L)。 県担当課は,平成9年5月27日,C病院の医院長Mと面談し,同人から,( )同病院が平成元年から平成9年3月まで計5回にわたり50ないし130床程度の増床申請をしたが,A医師会に認められなかったことを聞くとともに,同病院が,療養型病床107床の増床を希望しているとの意向を聞いた。また,同人は,他院からの増床の申請は,便乗増床やX会等対策のための申請である旨述べた。(乙31の1,2) 県担当課は,平成9年6月,当時の三豊保健医療圏内の病院の既存一般病( )床数が1468床で,不足病床 院からの増床の申請は,便乗増床やX会等対策のための申請である旨述べた。(乙31の1,2) 県担当課は,平成9年6月,当時の三豊保健医療圏内の病院の既存一般病( )床数が1468床で,不足病床数が469床であるのに,同圏内にこれを上回る884床の増床等の要望があることから,現行の患者数,医療法に基づく医療従事者数,病床利用率,平均在院日数等を調査し,全体調整を図り,緊急性の高い病院から医療審議会に諮問して順次許可していくとの処理方針案を作成し,そのためのヒアリング調書の様式(乙14)を決めた。 そして,県担当課主幹のK(以下「K」という。),同副主幹のN(以下「N」という。),同係長のL(以下「L」という。)らは,平成9年7月24日,木曜会と称する香川県医師会と香川県との意見交換の場で,同医師会会長,副会長らに対し,上記処理方針案を説明した(乙13ないし15,56,57,証人K,証人L)。 原告の統轄本部秘書室次長を務めていたJ(以下「J」という。),原告( )東京本部課長のO(以下「O」という。)及び原告大阪本部四国担当のP(以下「P」という。)は,平成9年7月25日,県担当課を訪れ,K,Lらと面談し,病床数を419床とする24時間オープンの大型救急病院を香川県観音寺市内に開設したいとの意向を表明し,日付が空白の病院開設許可申請書を提出した。なお,この419という病床数は,平成8年1月当時原告が,三豊保健医療圏の不足病床数として把握していたものであった。(甲- 15 -20,乙34,56,57,証人J,証人L,証人K)。 Kらは,Jらに対し,現在の不足病床数は469床であること,地元の病院から合計約880床の増床等の要望があり,これらについて許可を前提に調整中であることを告げた(甲20,22,乙56,証人J,証人K)。 Jらに対し,現在の不足病床数は469床であること,地元の病院から合計約880床の増床等の要望があり,これらについて許可を前提に調整中であることを告げた(甲20,22,乙56,証人J,証人K)。 L及び県担当課主任主事のQ(以下「Q」という。)は,平成9年8月4()日,原告の大阪本部管理部長のR,J及びPと面談した。その際,Lらは,Rらに対して,同年7月25日の面談以後の進展は特にないこと,880床の計画の熟度は様々であること,増床を認める基準について案はあるが明らかにできないこと,調整方法については検討中であることを告げた(甲23,乙35,57,証人L)。 県担当課は,平成9年8月上旬,増床等を希望していた地元8病院及び3()診療所に対し,ヒアリングを行うこと及びそのための事前の説明会を同月13日に開くことを電話で連絡したが,原告に対してはこれを知らせなかった。 その際,3診療所からは,今回の病院開設の申請を辞退する旨の申出があった(乙57,証人L)。 Kは,平成9年8月12日,当時社民党の県議会議員であったSに呼び出()されて,同人の控室に赴いたところ,Jと四国郵政局に勤務していたTが同席しており,Tから原告の観音寺市内での病院開設についての見通し等について意見を聞かれた。Kは,県担当課では,同年7月25日に初めて原告の病院開設の意向を知ったが,それについても正式な事前協議とは認識していないこと,公正取引委員会の事件処理として地元病院との調整を進めている段階であること,原告の419床という申請では,地元病院との調整は限りなく困難であること,地元病院からの申請は,いわゆる原告の進出を阻止するようなダミー的なものではないこと等の説明をした(乙56,証人K)。 県担当課は,平成9年8月13日,地元8病院等に は限りなく困難であること,地元病院からの申請は,いわゆる原告の進出を阻止するようなダミー的なものではないこと等の説明をした(乙56,証人K)。 県担当課は,平成9年8月13日,地元8病院等に対して説明会を行った。 ()その席上,Kは,増床希望が不足病床数469床を大幅に超えているので,- 16 -できるだけ調整に従ってほしいこと,原告から419床の希望があり,それを除いて調整するわけにはいかないので,469床を全部を配分するつもりはなく,その配分も,原告との関係があるため,再調整される余地のある仮配分であること,原告からの要求419床については,従来の分のまとめが済んでから協議を行うこと等を説明した(乙32,56,証人K)。 県担当課は,平成9年8月18日,25日及び26日の3日間にわたり,()地元8病院に対して個別のヒアリングを行った。その結果,希望病床数を減らす病院もあり,希望病床数の合計は698床となった。 その後,県担当課内部で,各病院への配分方法を検討し,過去に高松医療圏域において病院群輪番制を実施するに当たり,救急専用病床を整備したときの配分方法を参考にして,既許可病床数が当該病院の実績であり,医療提供能力を図る一手法であるとの考えに立って,不足病床数469床を地元8病院それぞれの既許可病床数で按分することとし,平成9年9月5日ころまでには,各病院への一応の配分が終了した。(乙18の1,乙50ないし56,証人L,証人K) 地元8病院は,平成9年9月25日から同月30日までにかけて,被告に()対し,前記病床調整の結果に沿う内容の病院開設許可事項一部変更許可申請書を提出した。(乙17の1ないし8) 原告は,平成9年9月1日付けで,観音寺保健所に対し,開設予定地を観()音寺市k町とする観音寺 床調整の結果に沿う内容の病院開設許可事項一部変更許可申請書を提出した。(乙17の1ないし8) 原告は,平成9年9月1日付けで,観音寺保健所に対し,開設予定地を観()音寺市k町とする観音寺X会病院開設許可申請書(平成9年9月1日付け,乙1)を,原告代理人弁護士U及び同V(以下「V弁護士」という。)作成の書簡(乙44)とともに郵送した。上記書簡には,被告をあて名として,原告の病院開設許可申請に対して被告は裁量権を有さず,許可要件を充足する限り,申請者に対して許可を与えなければならないはずであること,原告としては,被告の策定した医療計画に協力しないわけではないが,医療法上は,医療計画は公的病院等を拘束するだけであって,民間病院の開設予定者- 17 -を拘束するものではないこと等が記載されていた。(乙1,44,57,証人L,証人K) 県担当課は,前記U弁護士らに対して,行政手続法7条に基づき,平成9()年9月12日付けで,上記原告の申請について,原告の定款の添付,100分の1以上の敷地及び建物の平面図,医療従事者数,病院用地に関する調書,開設の目的及び維持の方法等について同月30日までに補正を行うよう求めるとともに,外来患者数,検査部門の内容,設備の状況等について説明を求めた(乙42,43)。 県担当課は,地元8病院からの増床許可申請,原告からの病院開設許可申()請等について諮問するため,香川県医療審議会の日程調整をし,同会が平成9年11月6日に開催される予定となったため,同年10月2日付けで同審議会委員に対してその旨を通知した(乙23,56)。 K,N,L,Qらは,平成9年10月9日,V弁護士,J及びOと面談し,()原告が観音寺市に病院を開設する意図,医療提供の姿勢,医療従事者の確保等についてヒアリ を通知した(乙23,56)。 K,N,L,Qらは,平成9年10月9日,V弁護士,J及びOと面談し,()原告が観音寺市に病院を開設する意図,医療提供の姿勢,医療従事者の確保等についてヒアリングを行った。その際,Kらは,V弁護士らに対して,既存の病院との間で原告よりも早い段階から増床の協議を行ってきた経緯があり,現在の不足病床数はそのまま残らないことを告げ,香川県としては,医療計画の達成のために努力する必要があるので,病床の削減を検討されたい旨の要請をした。 これに対して,V弁護士らは,行政指導は尊重するが,法的に許可を求める旨の回答をし,病床削減については検討したい旨述べた。(乙36,57,証人L) O及びJは,平成9年10月24日,N,L,Qらと面談し,Nらに対し,()開設予定地を香川県観音寺市j町に,病床数を310床にそれぞれ変更したいとして,該当項目が修正された病院開設許可申請書(乙2)を提出し,当初の病院開設計画の変更を申し出た。その際,原告は,310床という数に- 18 -ついて,病院経営のためにはある程度の病床数が必要であること,系列病院の研修医を受け入れるための臨床研修病院の指定を受けるには300床以上が必要であることなどの理由を上げて説明した。 これに対して,Nらは,地元病院との関係では469床で配分する調整が済んでいること,原告の申請については,開設の中止を望むが,中止しない場合には,病床数をできるだけゼロに近い形でお願いしたいと要請したが,原告は,修正後の申請を平成9年11月6日に開催が予定されていた香川県医療審議会に諮問するよう求めた。(乙2,37,56,証人K,証人L) 被告は,平成9年10月30日,香川県医療審議会に対して,三豊保健医()療圏における地元8病院の増床及び原告の病院開 県医療審議会に諮問するよう求めた。(乙2,37,56,証人K,証人L) 被告は,平成9年10月30日,香川県医療審議会に対して,三豊保健医()療圏における地元8病院の増床及び原告の病院開設許可申請等について,意見を求める手続を行った(乙18の1,乙22)。 V弁護士,Jらは,平成9年11月1日,K,L及びQと面談した。その()際,V弁護士らは,県からの要請もあり310床に削減するが,病院経営上の理由や地域での高度医療提供のため,臨床研修指定病院としての要件などを挙げ,300床がギリギリであるなどと述べた。 Kらは,Vらに対して,同年10月24日に提出された計画の変更については,原告の同年9月1日付け開設許可申請の修正として,11月6日開催予定の香川県医療審議会に諮りたいと述べた。(乙38) 香川県医療審議会は,平成9年11月6日,会議を開催し,同月26日,()被告に対し,地元8病院について増床許可相当,原告については開設中止勧告相当とする答申をした。(乙18の2,乙21)被告は,上記答申を受けて,同年12月2日,地元8病院に対して,合計469床の病院開設許可事項の一部変更許可(増床)を行い,原告に対しては,同月8日,医療法30条の7に基づき,勧告の内容を「観音寺X会病院の開設を中止すること。」,勧告の理由を「観音寺X会病院の開設予定地である観音寺市を含む三豊医療圏の病床数が,第2次香川県保健医療計画に定- 19 -める必要病床数に既に達しているため。」とする勧告(本件勧告)をした(甲2,乙39の1ないし8)。 K,N,Lらは,平成9年12月18日,O及びJと面談し,本件勧告の()趣旨ないし経緯について,公取委勧告の事件処理として,地元8病院間の調整を行い,その調整ができたこと,他方,原告の希望病 K,N,Lらは,平成9年12月18日,O及びJと面談し,本件勧告の()趣旨ないし経緯について,公取委勧告の事件処理として,地元8病院間の調整を行い,その調整ができたこと,他方,原告の希望病床数は419床であり,100床とか50床は考えていないと聞いていたこと,原告の申請について,同年10月24日に開催予定地と病床が変更されたこと,医療審議会の意見等を説明した(乙46)。 原告は,平成10年1月22日,被告に対し,本件勧告には従うことがで()きず,医療法7条3項により速やかに病院開設の許可をするよう求めるとの意思を表明した(甲3,乙56,57)。 そこで,被告は,同年2月26日,上記による変更後の内容について,病院の開設許可処分を行い,これと同時に,原告に対し,香川県健康福祉部長名で,留意事項として,病院の保険医療機関としての指定については,厚生省保険局長通知(昭和62年9月21日付け保発69号)があることを指摘する文書を送付した。 V弁護士,Jらは,平成11年6月24日,県担当課の職員と面談した。 ()その際,V弁護士らは,他県の事例では,原告の進出に当たって,公的病院が申請を出すが,財源の問題などから結果として増床しないということがあり,香川県でも公的病院であるB総合病院,I病院が増床を取りやめると考えていた,香川県は,原告にその要求分である150床を割り当てるつもりかと思っていた,県から何か言ってくれば削減に応じる予定であった,例えば150床とかに下げる用意はあったなどと述べた(乙47)。 原告は,平成11年8月26日,保険医療機関指定申請予定者として,被()告に対し,行政手続法9条2項に基づき,観音寺X会病院に対する保険医療機関の指定申請の許否について,情報の提供を求めた。 - 20 -これ 年8月26日,保険医療機関指定申請予定者として,被()告に対し,行政手続法9条2項に基づき,観音寺X会病院に対する保険医療機関の指定申請の許否について,情報の提供を求めた。 - 20 -これに対し,被告は,同年12月13日,「観音寺X会病院については,平成9年12月8日,医療法30条の7の規定による開設中止勧告を受け,これに従っていないことから,仮に保険医療機関の指定の申請があった場合には,健康保険法第43条の3第4項第2号の規定に基づき,申請に係る病床の全部について指定拒否することとなる。」と回答した。 地元8病院は,その後,申請どおり増床を実施した(証人L)。 () 本件勧告における手続の違法について(争点(1)) 病床調整と中止勧告の関係( )ア都道府県知事が医療法30条の7の規定に基づく病院開設等の中止勧告を行う場合の手続について,医療法には,都道府県医療審議会の意見を聴くこと以外に明示の定めがないから,上記意見を聴くこと以外の手続は,都道県知事の裁量に委ねられていると解される。ただし,前判示のとおり,この勧告は行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たるのであるから,この勧告を行う場合の手続が都道県知事の裁量に委ねられているといっても,それは行政処分等を発動するのにふさわしいものでなければならないというべきであり,それが透明性,公平性,公正性を欠き,都道県知事がその与えられた裁量を逸脱し,又は濫用したと評価されるような場合には,その手続には違法の瑕疵があることになる。 イ複数の病院開設等の申請がされ,それらの開設等申請に係る病床数が医療計画に定める必要病床数を超えることとなる場合,最終的には,都道府県知事が,都道府県医療審議会の意見を聴いて,医療法30条の7の規 複数の病院開設等の申請がされ,それらの開設等申請に係る病床数が医療計画に定める必要病床数を超えることとなる場合,最終的には,都道府県知事が,都道府県医療審議会の意見を聴いて,医療法30条の7の規定に基づく病院開設等の中止勧告をすることができるのであるが,本件では,まず,その前段階としての,必要病床数を上回る病院開設等の申請の全部又は一部の撤回又は申請病床数の削減を目的として行われた,病床調整の手法が問題とされている。この病床調整は,都道府県知事又はその補助者- 21 -が,医療計画の達成という行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める事実上の行為であるから,行政指導の一種であると解される。したがって,これには行政手続法の適用があり,透明性,公平性,公正性が要求されているといえる。 しかし,この病床調整自体は,前記勧告を行うための手続そのものではなく,むしろ勧告を回避するために行われるものであるから,その病床調整の手法に不当な点があったとしても,それが勧告における手続の違法に当然に結びつくとはいい難い。すなわち,必要病床数を超える複数の申請については,都道府県医療審議会の審議がされ,中止勧告相当等の意見が付されたものについて,都道府県知事がその意見を尊重しつつ,中止勧告等をすべきかどうかを最終判断するという枠組みなのであるから,病床調整の段階で不当な点があったとしても,その申請が維持されている限りは,都道府県医療審議会の審議に付されるのであるし,都道府県知事の判断の対象となるのである。これを,あたかも病床調整の結果が最終判断であり,医療審議会はその調整結果を形式的に追認するだけの機関であるかのように論ずるのは,制度の正しい理解とはいえない。 ウ原告は,本件勧告が,原告の申請を排除し,地元の医療機関のみに病床配 判断であり,医療審議会はその調整結果を形式的に追認するだけの機関であるかのように論ずるのは,制度の正しい理解とはいえない。 ウ原告は,本件勧告が,原告の申請を排除し,地元の医療機関のみに病床配分を行った上でなされたものであり,公正・公平に行われなければならない重大な手続要件を欠いた無効な処分であるなどと主張するが,病床調整段階における配分は,前記のとおり事実上のものにすぎないのであって,原告の申請については,当然のことながら,香川県医療審議会の審議は行われているし,被告による最終判断もされているのであって,原告の申請をそこから排除したという事実はない。したがって,原告の主張が,病床調整自体が本件勧告の重大な手続要件の一部に当たるとの理解を前提にしてされたものであれば,そもそも失当といわざるを得ない。 エしかし,原告が,被告の主張に対する反論として主張した中には,香川- 22 -県医療審議会の構成が公正でないとするもの,県担当課が同審議会の議事を原告の申請に不利な内容へと誘導したとするもの,被告が当初から原告を排除する意図を有していたとするものなどが散在しており,病床調整の手法が不当であるということを問題にした前記手続的違法の主張を,このような散在する主張との関連において,次のように位置付けるとすれば,失当なものとならずに済む余地がある。すなわち,「県担当課は,当初から原告の病院開設を断念させる目的で,医療法30条の7の規定に基づく勧告に関する香川県医療審議会の意見を聴くに至る以前の病床調整段階において,地元8病院について病床調整をした上でそれに沿った申請をさせる一方,原告に対しては病床数の削減を求めず,同審議会において,原告は病床数の削減に応じる意思がないと説明し,この両者の申請を別個の議案として審議に付するなどして,その議 上でそれに沿った申請をさせる一方,原告に対しては病床数の削減を求めず,同審議会において,原告は病床数の削減に応じる意思がないと説明し,この両者の申請を別個の議案として審議に付するなどして,その議事を原告に不利な結果となるように誘導した。そして,同審議会の構成が公正なものではないため,審議が形骸化しており,被告の意向を形式的に追認するだけの機関として,審議と呼ぶのに値しないような審議によって,中止勧告相当との意見を答申した。」というような事実関係を前提にして,本件勧告は,「都道府県医療審議会の意見を聴いて」という手続要件を実質的に欠いたものであると主張する趣旨に理解するのである。 以下,そのような趣旨として検討する。 近接する申請者の全員の参加による病床調整が行われなかった点について( )ア原告は,本件において,地元8病院の増床希望等についての病床調整が行われた際,県担当課は,原告からの病院開設希望を把握していたのであるから,そのような調整が行われることを原告に通知し,原告もこれに参加させた上で,一緒に病床調整を行うべきであったのに,原告を排除し地元8病院のみの病床調整を行った点が不当であると主張する。 イ原告は,近接した期間に開設許可の申請等が複数なされた場合には,条- 23 -理上,全ての申請者等の参加による病床数等の調整を行うことが要請されているのであり,「保険医療機関の病床の指定に係る国民健康保険法等の一部を改正する法律の施行に伴う医療法第三十条の七の規定に基づく勧告等の取扱いについて」(平成10年7月27日指45各都道府県衛生主管部(局)長宛厚生省健康政策局指導課長通知)の第二の3(2)は,この趣旨を述べたものであると主張する。 しかし,同通知は,近接した時期に出された複数の申請について,申請の全部又は一部 府県衛生主管部(局)長宛厚生省健康政策局指導課長通知)の第二の3(2)は,この趣旨を述べたものであると主張する。 しかし,同通知は,近接した時期に出された複数の申請について,申請の全部又は一部の撤回変更等を求める行政指導を行う場合,その手続の透明化を期する観点から,公的な場でそのような調整を行うことと並列的に,相互監視が及ぶ場面として,全ての申請者等の参加による場合を例示したにすぎないのであって,そのような全員参加の機会を確保しなければ,行政指導の公平性,公正性が確保できないと言っているわけではない。そして,条理上も,近接した期間になされた複数の開設許可申請等について,その病床数等を調整する手続の透明性を確保する手段が,全ての申請者等を同一の場に参加させることに限られるものではないことは明らかである。 このようなことからすると,地元8病院に対する病床調整の場に原告を参加させなかったことが,直ちに被告が当初から原告の病院開設を事実上断念させる目的を有していたことを推認させるような関係にあるとはいえない。そこで,その他の具体的事情につき,更に検討する。 ウ前記2認定の事実経過によれば,次のようにいうことができる。 県担当課は,公取委勧告を踏まえて,平成9年3月,A医師会に三豊(ア)保健医療圏内の増床等の要望に関する情報の提供を求め,同年5月,その提出を受けて不足病床数469床を大幅に上回る884床の増床等の希望を把握し,同年6月から処理方針の検討を始めて,現行の患者数,医療法に基づく医療従事者の現状と確保方法,病床利用率,平均在院日数等を調査したうえで全体調整を図るという方針を決め,そのための各- 24 -病院に対するヒアリング調書の様式を決めるなどの準備に着手しており,同年7月24日には,香川県医師会との意見交換会の場において処 査したうえで全体調整を図るという方針を決め,そのための各- 24 -病院に対するヒアリング調書の様式を決めるなどの準備に着手しており,同年7月24日には,香川県医師会との意見交換会の場において処理方針について説明を行うなどしていた。原告が申請病床数を419床とする病院開設許可申請をする意向を表明したのは平成9年7月25日であるから,地元8病院の増床等の希望についての調整手続は,これに先行して開始されていたといえる。 そして,原告の申請に係る病床数が,三豊保健医療圏の不足病床数の9割近くを占めるほどであるのに,原告は病床数の削減につき柔軟な姿勢を示していなかったことから,県担当課は,原告の申請と地元8病院の増床希望とを同一の場において調整することが困難であると判断し,当初予定していたとおり,平成9年8月下旬に地元8病院に対するヒアリングを行った。地元8病院の増床希望については,同年9月5日ころまでに,不足病床数と同数にまで調整された。 Jは,平成9年7月25日には,県担当課から申請病床数を削減する(イ)よう働きかけを受けていない,そのような話があれば削減に応じるつもりであったと述べ(証人J),Vらも,本件勧告後の県担当課との面談時に,要求があれば150床程度まで要求を下げる用意はあった旨発言している(乙47)。前記認定の事実経過のとおり,原告側が,平成9年10月24日に変更した後の申請数である310床につき県担当課から削減を促されても,臨床研修病院の指定を受けるために最低でも300床は必要であるなどと述べていたという経緯に照らして考えると,原告が病床数の削減に柔軟な考えを有していたというのは疑問であるが,仮にそのような考えがあったとしても,県担当課においてこれを推知することは困難であったというべきである。 このような事実経過に照 ,原告が病床数の削減に柔軟な考えを有していたというのは疑問であるが,仮にそのような考えがあったとしても,県担当課においてこれを推知することは困難であったというべきである。 このような事実経過に照らして考えると,被告が,原告に参加の機会(ウ)を与えないで地元8病院についての病床調整を先行させたことが不合理- 25 -であるとはいえない。 地元8病院に対する仮配分後の病床調整について( )県担当課が,原告から地元8病院間の調整の状況について質問された際,その内容について一切回答をしなかった点や,その後の原告からのヒアリングの際などに,地元8病院に対する仮配分が終わっており,原告の申請については限りなくゼロに近い数字にしてもらいたいと述べている点は,手続の透明性,公正性の観点から問題がないわけではない。既に述べたとおり,県担当課が,地元8病院に対する調整を先行させる方針を決めたことや,その場に原告を参加させないこととしたこと自体は特に不当とはいえないが,県担当課が,地元8病院に対する調整の後に,原告の申請との間でさらに調整をする方針を有していたのであれば,地元8病院に対する調整内容を事前に原告にも伝えておくことが,調整手続の透明性をより高めることにつながったといえるし,地元8病院に対し,仮配分とはいえ不足病床数の全部を割り振った上で,原告の申請について,限りなくゼロに近い数字にしてもらいたいと述べている点は,この仮配分を既成事実化して原告に申請の撤回を事実上迫るようなものと見られかねないからである。 しかし,県担当課は,地元8病院間の調整過程において,原告の申請があるので,前記仮配分は暫定的なものであり,原告との調整の結果によっては,さらに削減することも検討してもらいたいという趣旨の説明をしており,原告が419床の申請を維持す 整過程において,原告の申請があるので,前記仮配分は暫定的なものであり,原告との調整の結果によっては,さらに削減することも検討してもらいたいという趣旨の説明をしており,原告が419床の申請を維持するなら調整は相当困難であるが,原告が大幅な削減をするのであれば,地元8病院に対してさらなる削減を求めることを考慮していたとみられる。原告に対する前記発言は,そのような流動的な状況において,原告の削減についての意向を探るためのものであったと理解される。そして,その後,地元8病院に対する働きかけをしなかった点についても,原告が,300床は最低限必要な数であると述べていたため,県担当課は,これを前提にすると地元8病院との調整は事実上不可能であると考えた- 26 -ためであるから,これには相応の理由があるといえる。 したがって,このような調整の進め方が,実質的に公平性・公正性を欠いていたと評価することはできない。 医療審議会の審議について( )ア香川県医療審議会の運営要綱(乙20)によれば,委員の構成については,委員30人以内で組織し,①医師,歯科医師,薬剤師,②医療を受ける立場にある者,③学識経験者のうちから知事が任命又は委嘱すると定められている(2条)。また,会議について,会長が必要に応じて招集し,会長がその議長となること,委員の過半数が出席しなければ議事を開き議決を行うことができないこと,議事は出席した委員の過半数をもって決し,可否同数のときは会長の決するところによることなどが定められている(4条)。このように,同審議会は,医療を提供する側,医療を受ける側,学識経験者から選ばれた委員によりそれぞれの利益を代弁したり,多様な価値観を反映することが考慮されており,審議について,被告や地元医師会からの中立性,公平性を疑わせるような制度的な 医療を受ける側,学識経験者から選ばれた委員によりそれぞれの利益を代弁したり,多様な価値観を反映することが考慮されており,審議について,被告や地元医師会からの中立性,公平性を疑わせるような制度的な仕組みはとられていない。 原告は,同審議会が中立,公平性が堅持された機関などではなく,単なる被告や地元医師会の御用機関として,被告が行った違法行為を追認する機関にすぎないなどと主張するが,この主張には何ら具体性がなく失当であるといわざるを得ない。 イ原告は,平成9年11月6日に開催された香川県医療審議会の議事に関し,地元8病院の合計469床の増床許可申請についての議案(議題2)と原告の310床の病院開設許可申請についての議案(議題3)とを分け,議題2を先に審議し,その際,原告の申請を考慮することなく許可相当との意見を出した後に,議題3を審議したが,既に不足病床数469の全部について許可相当との意見が出ているから,必然的に中止勧告相当との意- 27 -見になるのであるから,このような議事の進め方は不合理であると主張する。 地元8病院の増床申請と原告の病院開設許可申請とは,その全部を許可相当とした場合には不足病床数を超えるという関係にあり,相互に関連しているのであるから,病床配分における中立性・公平性に疑念を抱かれないようにするためには,これらを一括審議する方がよかったとはいえるであろう。しかし,議題2は既存病院の増床申請に関するものであるのに対し,議題3は病院の新設の申請に関するものであって,その性質が異なるものである。議事の内容を見ても,既存病院の増床については,病床利用率や医療従事者の数というようなこれまでの実績が重視されているが,新設の場合はこれと同様に論じることはできないのであるから,議題を分けたこと自体に合理性がないとはいえな 院の増床については,病床利用率や医療従事者の数というようなこれまでの実績が重視されているが,新設の場合はこれと同様に論じることはできないのであるから,議題を分けたこと自体に合理性がないとはいえない。また,被告が諮問する際に議題が分けられていても,議事進行の問題として,これらを一括審議することは審議会が自由に決められることである。そして,議題2と3は,全部で4つの議題のうちの連続する2つであり,同一期日において審議されたものであるから,出席した委員にとって,不足病床数による限界という観点からの関連性は自ずから明らかなのであって,実際の議事においても,委員がこの点を考慮することなく,単に時間の先後に従って機械的に議題3について中止勧告相当との意見を導き出したわけではなく,原告の開設申請の当否についての意見が述べられている。 このようなことからすると,平成9年11月6日に開催された香川県医療審議会の議事の進め方が不合理であるということはできない。 前記2 ないし4 で検討したところによれば,被告の行った病床調整には,( )( )( )透明性という点で問題がないわけではなかったが,それが直ちに公平性・公正性を失わせるようなものではなく,県医療審議会の審議の進め方についても,公平性に疑念を抱かせないように更に工夫する余地はあったが,結果的- 28 -に見て,審議内容の公平性・公正性が損なわれたとはいえず,審議会の構成が中立,公平性を欠くとは認められず,議事の進め方が不合理であるともいえないから,本件勧告が,実質的にみて,「都道府県医療審議会の意見を聴いて」という手続的要件を欠いているということはできない。 よって,本件勧告に関する手続の違法を理由として,本件勧告が無効であるとする原告の主張には理由がない。 公的医療機関に対する増 の意見を聴いて」という手続的要件を欠いているということはできない。 よって,本件勧告に関する手続の違法を理由として,本件勧告が無効であるとする原告の主張には理由がない。 公的医療機関に対する増床配分の違法性について(争点(2)) 病院の開設許可又は病床の増床等の許可の申請に係る病院の所在地を含む( )区域における病院の病床数が,医療計画におけるその地域の必要病床数に既に達しているか,又は当該申請に係る病院の開設又は病床数の増加等によってこれを超えることとなると認められる場合の取扱いに関し,医療法は,都道府県,市町村等の開設する病院等(公的医療機関)については,都道府県知事が許可を与えないことができるとする(同法7条の2第1項)一方で,公的医療機関以外の病院等(民間医療機関)については,都道府県知事が同法30条の7による勧告をすることができるにとどまり,その申請に係る施設の構造設備等が厚生省令に定める要件を満たす限り,許可を与えなければならないとしている(同法7条3項)。 しかし,この公的医療機関に対する不許可と民間医療機関に対する勧告と( )は,ともに医療計画の達成の推進を図るという目的において共通しており,民間医療機関については,その営業の自由に対する配慮から不許可とすることができないため,これを間接的に規制しようとする点において違いを有するにすぎないのであって,それ以上に,都道府県知事に対して,たとえば不足病床数の割り振りなどの内容面においても,民間医療機関を公的医療機関よりも優先すべきことを求めた趣旨とは解されない。したがって,公的医療機関と民間医療機関から同時に病院の開設等の申請がなされた場合に,そのいずれの申請を優先させるかについては,上記各規定の規範の及ぶところで- 29 -はない。 このほかに,医療法上 って,公的医療機関と民間医療機関から同時に病院の開設等の申請がなされた場合に,そのいずれの申請を優先させるかについては,上記各規定の規範の及ぶところで- 29 -はない。 このほかに,医療法上,民間医療機関の申請を公的医療機関のそれに優先させる義務が都道府県知事に生じると解すべき根拠はない。 したがって,原告の主張は採用することができない。 ( ) 本件勧告の理由の提示(行政手続法8条)について(争点(3)) 本件勧告は,行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力( )の行使に当たる行為」には該当するものの,行政手続法8条にいう「申請により求められた許認可等を拒否する処分」には該当しないから,これには同条の適用はないというべきである。 しかし,行政手続法14条にいう「不利益処分」には該当し,「当該不利( )益処分の理由を示さなければならない」と解される。 不利益処分についてその理由を示さなければならないとされるのは,行政庁の判断の慎重・合理性を担保し,申請者の不服申立て又は訴訟の提起の便宜を図るためであるから,その趣旨に照らすと,単に根拠条文を示すだけでは足りず,当該処分が,いかなる事実に基づいて,いかなる法的理由で行われたのかを含むものでなければならないと解される。 本件勧告には,「観音寺X会病院の開設予定地である観音寺市を含む三豊医療圏の病床数が,第2次香川県保健医療計画に定める必要病床数に既に達しているため。」との理由が示されているところ,これは,医療法30条の7の定める「医療計画の達成の推進のため特に必要がある場合」という勧告の要件について,その解釈基準を「二次医療圏又は当該都道府県の区域における病院の病床数が,医療計画に定める当該区域の必要病床数に既に達している場合又はその病院の開設等によって当 ある場合」という勧告の要件について,その解釈基準を「二次医療圏又は当該都道府県の区域における病院の病床数が,医療計画に定める当該区域の必要病床数に既に達している場合又はその病院の開設等によって当該必要病床数を超えることとなる場合」と定めた昭和61年通知に即して,この基準に該当する旨を基本的事実関係とともに示したものである。 したがって,本件勧告が全く理由を示さずにされたものとはいえないから,- 30 -本件勧告に無効の原因となるような重大かつ明白な瑕疵があるとはいえない。 なお,医療計画における地域の必要病床数の範囲内で,どの申請を許可し,( )どの申請について削減ないし中止を勧告するかといった問題は,複雑な利益衡量の末,都道府県医療審議会の意見を尊重しつつ判断されるのであるから,その理由の詳細を示すことは容易ではないが,本件においては,地元8病院からの増床許可申請と原告による病院開設許可申請が競合していたのであるから,そのような本件の事案の特質にかんがみると,原告に対しては本件勧告がされる一方で,地元8病院に対しては増床許可がされた実質的理由を示すことが,行政手続法14条の趣旨によりよく合致するものといえる。 本件勧告と同時に示された理由には,その点で不十分なところがあるといわざるを得ないが,前判示のとおり,これが本件勧告の無効事由となるとはいえない。 第4 結論 以上によれば,本件勧告について無効事由は認められず,原告の本件請求には理由がないのでこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 高松地方裁判所民事部森實将人裁判長裁判官真鍋麻子裁判官- 31 -冨澤幸弘裁判官- 32 - て,主文のとおり判決する。 高松地方裁判所民事部森實将人裁判長裁判官真鍋麻子裁判官- 31 -冨澤幸弘裁判官- 32 -

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