平成12(ワ)3874 教育企画損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成14年6月4日 名古屋地方裁判所
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判決文本文24,849 文字)

主文 1 被告らは、連帯して、(a)原告A労働組合に対し、金7万円、(b)原告Bに対し、金3万1550円、(c)原告Cに対し、金2万4390円及びこれらに対する平成11年4月16日から各支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 第1項掲記の原告らのその余の請求並びに原告D及び原告Eの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、(a)原告Dと原告Eに生じた費用の全部及び被告らに生じた費用の10分の3を、同原告らの負担とし、(b)その余の訴訟費用は、これを10分し、その9を第1項掲記の原告らの、その余を被告らの負担とする。 4 この判決第1項は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、連帯して、(a)原告組合に対し、80万円、(b)原告Bに対し、31万1550円、(c)原告Dに対し、31万4070円、(d)原告Eに対し、31万4920円、(e)原告Cに対し、30万4390円及びこれらに対する平成11年4月16日から各支払済まで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Fは原告Cに対し、別紙謝罪文を交付せよ。 第2 事案の概要本件は、後示2(1)①の不法行為を主張して、(a)原告らが被告らに損害賠償を請求するとともに、(b)被告Cが被告Fに謝罪文の交付を求める事案である。 1 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(1) 当事者・関係者等① Gと原告Bは、もと「フジゼミ」の名称で学習塾を経営していた株式会社藤ヶ丘ゼミナールに講師として勤務していた者であり、原告組合は、同人らが中心となって平成5年9月20日結成された組合である。同人らは、それぞれ原告組合の執行委員長と執行委員に就任している(組合結成時期につき甲42)。 ② その余の原告らは、本件当時、後示(3)の紛争に関するフジゼミ争議団のメンバーだった者で 組合である。同人らは、それぞれ原告組合の執行委員長と執行委員に就任している(組合結成時期につき甲42)。 ② その余の原告らは、本件当時、後示(3)の紛争に関するフジゼミ争議団のメンバーだった者である(弁論の全趣旨)。 ③ 被告教育企画及び被告知究舎(以下一括して被告各社という。また、そのいずれかに属する従業員を被告側従業員といい、そのうち氏名不詳の者を符号で表示することがある)は、学習塾の運営を主な目的とする会社であり、後者は前者の子会社である。被告教育企画は、「名進研」の名称で学習塾を経営しており、肩書地所在の名進研本社ビル(以下本件ビルという)に本部(以下被告本部という)と学習塾の名進研名駅校を置いている。 ④ 被告Fは、被告各社の代表取締役であり、Hは、被告教育企画の本部長である。 (2) 藤ヶ丘ゼミナールから被告知究舎への営業譲渡契約等両社は、平成5年12月9日付で藤ヶ丘ゼミナールの商号、商標、講師、生徒を含む全営業資産を被告知究舎に譲渡する旨の契約を締結し(以下本件営業譲渡という)、被告Fは、平成6年1月25日藤ヶ丘ゼミナールの従業員に対し、同年2月26日で同従業員らを一旦解雇するが、被告教育企画又はその子会社の名進研グループが新たに採用し、極力雇用する旨の説明をした。 (3) 原・被告ら間の紛争(ただし、その経過等につき争いがある)その後、被告各社は、G及び原告Bとの雇用関係を否定し、これに対し、原告組合が被告知究舎に争議通告し、団体交渉を申し入れる等の紛争となった。 (4) 本件事件の発生(ただし、事件の経過・詳細等につき争いがある)Gと原告ら及びその他の者は、平成11年4月16日被告本部を訪れて、被告各社との団体交渉を求め、これに対し、被告F及び被告側従業員らは、原告側の退去を要求して、両者間に小競り合い等が発生した(以 )Gと原告ら及びその他の者は、平成11年4月16日被告本部を訪れて、被告各社との団体交渉を求め、これに対し、被告F及び被告側従業員らは、原告側の退去を要求して、両者間に小競り合い等が発生した(以下本件事件といい、同日被告本部を訪れた原告側関係者を原告側メンバーという)。 (5) 関連仮処分決定の存在被告らを債権者とし、原告組合、G及び原告Bを債務者とする業務妨害禁止等仮処分事件(当庁平成7年(ヨ)第204号、第321号)において、平成7年7月7日、要旨次の趣旨の決定(以下本件仮処分決定という)が出された。上記債務者らの保全異議に対しては、同年11月15日上記決定を認可する旨の決定が下され、更にこれに対する保全抗告も、平成10年6月29日名古屋高等裁判所で棄却された(甲28、乙4)。 ① 上記債務者らは、被告各社に対し、同被告らの設置する別紙教室目録記載の各学習塾の付近において、拡声装置を用いて演説、宣伝、シュプレヒコールをするなどして被告各社の営業を妨害し、又は第三者をして同様の行為を行なわせてはならない。 ② 上記債務者らは、被告らに対し、被告ら3名に関して、別紙文書目録記載の文言等を使用して、被告らの名誉を棄損する内容の文書を貼付・掲示・配布・郵送等をして、被告らの業務の妨害又は名誉ないし信用を棄損する一切の行為をし、又は第三者をして同様の行為を行なわせてはならない。 2 争点本件の主たる争点は、(a)原告ら主張の不法行為の存否(後示(1)①。請求原因)、(b)被告ら主張の正当防衛ないし緊急避難の成否(後示(2)④。抗弁)である。 (1) 原告らの主張① 本件事件当日午後2時頃、Gと原告ら及びIなど合計9名が、本件ビル8階の被告本部を訪れ、原告Bが同受付カウンター前で団交要求書(別紙1。以下本件要求書という)を読み上げて、団体交 原告らの主張① 本件事件当日午後2時頃、Gと原告ら及びIなど合計9名が、本件ビル8階の被告本部を訪れ、原告Bが同受付カウンター前で団交要求書(別紙1。以下本件要求書という)を読み上げて、団体交渉を申し入れたのに対し、被告Fと被告側従業員らは、現場で共謀のうえ、以下一連の暴行(下記アないしカ)、器物損壊(下記ア、オ)、名誉棄損(下記カ)に出たが、これら行為(以下一括して本件不法行為という)は、被告各社の代表者の職務ないし各社の事業執行につき行なわれたものである。 ア同日午後2時半頃、原告Bが本件要求書を読み終わる頃に、被告Fは、カウンター横の部屋から飛び出し、「また来とるんか。帰れ、帰れ。」「手前ら、いつまでうだうだ言ってやんだ。出て行け。」と言いながら、原告Bのところに来て、同原告の手から、読み上げていた本件要求書とそのコピー2、3枚を奪い取って破り捨てた。 イ次いで、反転した被告Fは、両肩を固め相撲のかち上げのような形で原告Dに突き当たって仰向けに転倒させ、起き上がれないでいる同原告を「頭でも打ったか、ははは。」と嘲笑した。 ウ引き続き、被告Fは、右肩を固めIの右肩に突き当たった後、原告Eの左肩にも激しく突き当たり、同原告を吹き飛ばした。 エそこで、原告Bが被告Fの暴行を写真に撮り始めると、Hや他の被告側従業員は、カメラを奪おうと原告Bに襲いかかり、指を無理やりこじ開けようとしたり、階段を下って逃れようとする同原告に追いすがり、その体や腕を掴むなどの暴行をした。 オ更に、原告側メンバーが本件ビルの外に出た同日午後2時30分頃、同ビル前歩道上において、被告側従業員Bは、原告Eの所持していたビラ(別紙2。以下本件ビラという)300枚を奪い取り、被告側従業員Aは、同原告の胸倉を掴み、背後に突き飛ばした。 カまた、このとき 同ビル前歩道上において、被告側従業員Bは、原告Eの所持していたビラ(別紙2。以下本件ビラという)300枚を奪い取り、被告側従業員Aは、同原告の胸倉を掴み、背後に突き飛ばした。 カまた、このとき、被告Fは原告Cに対し、「黙れ、くそばばあ。」と言いながら、いきなり顔面を平手で1回殴打し、同原告が抗議すると、「殴った。殴って何が悪い。」と暴言を吐いた。 ② 本件不法行為によって、原告組合を除くその余の原告らは、以下の傷害と損害を被り、Iも左肩関節捻挫の傷害を負った。 ア原告B左中指・左環指捻挫a治療費1万1550円(文書料を含む。以下同じ)b慰謝料30万円イ原告D両前腕・左膝部打撲、左肩・頚部挫傷a治療費1万4070円b慰謝料30万円ウ原告E頭部打撲、頚部・前胸部挫傷a治療費1万4920円b慰謝料30万円エ原告C顔面打撲a治療費4390円b慰謝料30万円③ また、原告組合も、本件不法行為によって組合活動を違法に侵害されたが、その無形的損害に対する慰謝料は30万円が相当である。更に、原告組合は、自身の損害のほか上記②の原告らの損害の回復のために、本訴の弁護士費用を負担する立場にあるが、その金額は50万円を下らない。 ④ 更に、前示①カの公道上での殴打等は、女性の人格への侮辱であり、この名誉棄損による損害回復のためには、被告Fから原告Cへの謝罪文の交付が必要である。 ⑤ よって、本件不法行為に基づき、(ア)原告らは被告らに対し、連帯して前示②、③の損害の賠償と不法行為の日以降の遅延損害金の支払を、(イ)原告Cは被告Fに対し、別紙記載の謝罪文の交付を求める。 ⑥ 後示(2)④の違法阻却事由の主張は争う。以下のとおり正当防衛や 帯して前示②、③の損害の賠償と不法行為の日以降の遅延損害金の支払を、(イ)原告Cは被告Fに対し、別紙記載の謝罪文の交付を求める。 ⑥ 後示(2)④の違法阻却事由の主張は争う。以下のとおり正当防衛や緊急避難は成立しない。 ア前示①冒頭及び同アのとおり、本件不法行為が開始された当時、原告らは本件要求書を読み上げていただけであり、かつその終了後退出を予定していたのであって、この状況下で本件要求書を奪い取って破り捨てた被告Fの行為には、必要性や相当性が認められない。 イ本件ビラは、以下のとおり本件仮処分決定に違反せず、また、その配布は争議行為として労組法8条により違法性が阻却されるから、同ビラの奪取が正当防衛となる余地もない。更に、原告Eが持っているだけの状況での同ビラの奪取には必要性や相当性も存しない。 すなわち、本件仮処分決定の禁止事項は、限定列挙と解すべきであり、仮に例示列挙としても、表現の自由及び団体行動権の保障のために厳密に解すべきであって、同決定の基礎となった平成7年2月19日より以降の労使紛争に関する限り、(ア)当該表現が個人を誹謗中傷するか、犯罪行為を強調する部分が目立つもので、(イ)事実に反する場合に限って同決定に違反するというべきであるが、本件ビラは、これら要件を満たさない。 ウまた、原告らが予告せずに被告本部に赴いたのは、過去予告したところ、被告各社が責任者を不在にして交渉を拒否したことに対応したものである。従前被告ら代理人からされた話合いの申入れは、団交拒否を明言しているから、本件ビラ中の被告各社の団交拒否の記載も真実である。 (2) 被告らの主張① 前示(1)①冒頭の事実中、原告側メンバーが被告本部を訪れ、被告側が退去を求めた事実は認めるが、以下のとおり不法行為の成立は否認する。原告側メンバーの行為は、業務妨害 る。 (2) 被告らの主張① 前示(1)①冒頭の事実中、原告側メンバーが被告本部を訪れ、被告側が退去を求めた事実は認めるが、以下のとおり不法行為の成立は否認する。原告側メンバーの行為は、業務妨害そのものを目的とし、また騒ぎになることを予想したもので、これに対し被告Fや被告側従業員が暴力を振るった事実はなく、退去を求めるため、ある程度の有形力を行使したことはあるが、相当な範囲内である。その際転倒した者があったとしても、故意に演技したか、みずから招いた騒擾状態の中で生じたもので、被告らに責任はない。 ア同アの事実中、被告Fが書面を破ったのは認めるが、原告側メンバーから受け取った書面を破り捨てただけで、奪い取った事実はない。仮に、奪ったとしても、後示④のとおり不法行為は成立しない。 イ同イの事実は否認する。被告Fが書面を破り捨てると、原告側メンバーが殺到してきたが、原告Dは、このとき同メンバーらに押されて転倒したもので、被告Fが同原告を転倒させたり、嘲笑した事実はない。 ウ同ウの事実は否認する。被告Fはトイレに行こうと通りかかって原告側メンバーに取り囲まれたが、「トイレに行く」と言って進もうとしたところ原告Eに当たり、同人がわざと転んだので、嘲笑したものである。なお、このとき原告側が「暴行、暴行」と発言したことが被告側従業員の憤激を誘発して、その後揉合い等の興奮状態になった。被告Fは、なおも原告側メンバー数名に取り囲まれたため、かき分けて進もうとして相手方にぶつかったことはあるが、その中に倒れた者はいない。 エ同エの事実中、被告側従業員が写真撮影を阻止しようとしたのは認めるが、カメラの奪取は否認する。原告Bは、被告Fの暴力行為など存在しないのに、一種の挑発行為として写真を撮り始めたものであり、被告側従業員は、これを阻止しようとしたの 撮影を阻止しようとしたのは認めるが、カメラの奪取は否認する。原告Bは、被告Fの暴力行為など存在しないのに、一種の挑発行為として写真を撮り始めたものであり、被告側従業員は、これを阻止しようとしたのであって、カメラを奪取しようとしたものではなく、同原告の挑発に乗ってしまっただけである。 オ同オの事実中、配布を阻止するため、被告側従業員がビラ数十枚を取って破棄した事実は認めるが、300枚もの枚数はなく、すでにかなりの枚数が配布済だった。この点についても、後示④のとおり不法行為は成立しない。被告側従業員が原告Eを突き倒した事実も否認する。同原告は、わざと倒れた振りをしたものである。 カ同カの事実も否認する。 ② 同②の事実は不知ないし争う。原告ら主張の負傷は虚偽か、軽微かつ混乱の中で偶発的に生じた負傷であって、被告らに責任はない。 アすなわち、原告Eは、受傷の事実そのものに疑問がある。 イまた、原告Bが負傷したのなら、その写真撮影を防ごうとした被告側従業員と揉み合い階段から落ちたときと考えられるが、同原告は、原告側メンバーの指揮を取る立場にあり、当初から原告Eとともに威圧的態度で被告らの業務を妨害し、被告側従業員が憤激して揉合いになるのを知っていたから、みずから招いた騒擾行為による負傷というべきである。 ウ原告D及び原告Cは、いずれも揉合いの中で偶発的に負傷等したものであり、被告Fや被告側従業員の暴行によるものではない。 ③ 同③④の主張は争う。 ④ 被告側が本件要求書や本件ビラを奪って破棄した点については、以下のとおり違法阻却事由があるから、不法行為は成立しない。 アすなわち、原告らは、従前から団体交渉事項になり得ない事項について交渉を求め、これに対し被告知究舎は、応諾義務はないものと考えつつも、弁護士を通じて団体交渉に応じる旨を 、不法行為は成立しない。 アすなわち、原告らは、従前から団体交渉事項になり得ない事項について交渉を求め、これに対し被告知究舎は、応諾義務はないものと考えつつも、弁護士を通じて団体交渉に応じる旨を伝えていた。また、原告らは、平成7年以降、被告らを誹謗中傷するビラを私立中学校の入試会場で繰り返し配布し、緊張と不安の中にいる子供らに精神的動揺を与える等したため、原告組合、原告B及びGは、本件仮処分決定により、被告らの名誉ないし信用を棄損し業務を妨害する文書の配布等を禁じられていた。 イしかるに、本件事件当日、原告側メンバーは、あらかじめ紛争を予想して録音機やカメラを用意したうえ、本件仮処分決定に反して、予告なしに名進研名駅校の同居する本件ビルに集団で押しかけ、業務時間中、「団交要求をする」等と怒号して業務妨害を行なったり、居合わせた被告Fに詰め寄って取り囲んだりしたうえ、(ア)本件要求書では、別紙1のとおり、交渉事項の形を取りつつ、実際には、(a)被告Fの組合員脅迫、組合侮辱、(b)被告側従業員の組合活動妨害等の一方的主張や、(c)被告代理人に対する誹謗中傷あるいは上記(b)に対する謝罪要求など、事実無根のおよそ合意の成立する見込みのない事項を掲げたり、(イ)本件ビラでは、別紙2のとおり、(d)被告各社が団交を拒否しているなどの虚偽の事実や、(e)一般人に、被告Fが違法行為を犯し裁判上制裁を受けるかのような誤った印象を与える記載をして、これらを配布するなどの不法行為に出ようとした。 ウしたがって、被告Fや被告側従業員が本件要求書や本件ビラを奪って破棄したとしても、被告らの利益を守るために、原告側メンバーの違法な行為を差し止める目的に出たものであって、民法上の正当防衛ないし緊急避難に該当するから、不法行為は成立しない。 第3 当裁判所 て破棄したとしても、被告らの利益を守るために、原告側メンバーの違法な行為を差し止める目的に出たものであって、民法上の正当防衛ないし緊急避難に該当するから、不法行為は成立しない。 第3 当裁判所の判断 1 前提となる事実(a)前示第2、1(1)ないし(5)の各事実、甲1、甲5、甲6、甲9ないし甲11、甲30、甲32、甲36、甲42、乙1の1ないし15、乙4、(b)当裁判所の再生によっても聴取不可能ないし困難な範囲を除く甲20、(c)いずれも後示採用できない部分を除く甲18、甲21ないし甲26、甲27の1・2、乙2、乙3、証人Hの証言、原告E・原告D及び被告Fの各本人尋問の結果のほか、(d)甲2、甲3、甲31、甲33ないし甲35、甲37ないし甲41、乙5ないし乙13の各存在によれば、以下の事実が認められる。 (1) 藤ヶ丘ゼミナールは、学習塾の運営等を主たる目的としていた会社で、従前「フジゼミ」等の名称で藤ヶ丘校など3校の学習塾を経営していた。同社は、Jが代表取締役を務めていたが、塾生の減少で平成4年12月の決算期に2000万円以上の未処理損失を計上するなど経営状態が悪化していた。 Gは、昭和61年11月から、また原告Bは、平成4年2月から、藤ヶ丘ゼミナールに講師として勤務していたものであるが(以下両名を一括してGらといい、次の原告組合と一括して原告組合らという)、同社における労働条件の維持・改善を目的として、平成5年9月20日原告組合を結成し、それぞれ同組合の執行委員長と執行委員に就任した。 (2) 被告教育企画は、学習塾の運営を主たる目的とする会社で、中学・高校受験の指導を中心に、二十数校の学習塾を経営する、愛知県内でも5指に入る大手塾であり、被告Fが代表取締役を務めている。 被告Fは、平成5年5月頃から前示のとおり経営状態が悪化して る会社で、中学・高校受験の指導を中心に、二十数校の学習塾を経営する、愛知県内でも5指に入る大手塾であり、被告Fが代表取締役を務めている。 被告Fは、平成5年5月頃から前示のとおり経営状態が悪化していた藤ヶ丘ゼミナールのJ社長から営業譲渡の申入れを受けて、これを了解し、結局同年12月9日、被告教育企画の100パーセント子会社である被告知究舎と藤ヶ丘ゼミナールとの間で、同ゼミナールの商号、商標、講師、生徒を含む全営業資産を被告知究舎が譲り受ける旨の本件営業譲渡契約が締結された。 そして、被告Fは、平成6年1月25日藤ヶ丘ゼミナールの従業員に対し、同年2月26日付で同従業員らを一旦解雇するが、被告教育企画又はその子会社の名進研グループが新たに採用し、極力雇用する旨の説明を行なった。 (3) その後、被告各社は、藤ヶ丘ゼミナールの講師全員の授業を見学し、新規採用面接をした後、(a)当時の講師28名中20名は、同年3月1日付で被告知究舎で採用するが、(b)Gらを含む8名は、研修の上、被告教育企画又はその関連会社で採用するとの方針を決定し、被告教育企画から研修対象の講師に対し、その旨及び、研修中に授業内容が改善されない場合や業務命令に反するなど相応しくない場合には新規採用を見合わせる旨通知した。 そして、研修実施後、被告各社は、Gらを不採用とし、被告教育企画は、平成6年2月28日同人らに対し、研修中の執務態度、出勤状況、授業内容、教授技術等を理由して不採用に決定した旨の通知をした。 (4) 他方、原告組合らは、本件営業譲渡の公表前の平成5年11月18日から、藤ヶ丘ゼミナールと賃金等に関する団体交渉を継続しており、その公表後は、従業員の雇用継続の確認と新しい労働条件の開示を求めたが順調に行かなかったことから、平成6年2月24日以降、(a)藤ヶ丘ゼミナー ヶ丘ゼミナールと賃金等に関する団体交渉を継続しており、その公表後は、従業員の雇用継続の確認と新しい労働条件の開示を求めたが順調に行かなかったことから、平成6年2月24日以降、(a)藤ヶ丘ゼミナールが再建策を示さないまま営業譲渡した点を非難し、自主再建ないし雇用条件の保持を求める内容のビラを同ゼミナールに差し入れるなどの行動に出ていた。しかし、上記(3)の不採用通知後、原告組合らは、(b)本件営業譲渡の白紙撤回と藤ヶ丘ゼミナールの自主再建を求めるようになり、その趣旨のビラを配布したが、その一方で、被告各社に団体交渉を申し入れた(甲42・18頁以下、104頁)。 これに対し、被告各社は、原告組合ら要求の団交事項は、ほとんど同原告らと藤ヶ丘ゼミナールと間の問題であり、また不採用となった以上、Gらとの間に雇用関係がないなどとして、団交応諾義務を否定し、更にこれに対して、原告組合が平成6年8月被告知究舎に争議通告をし、同年9月フジゼミ争議団が結成されるなど、紛争は深刻化していった。 (5) そして、この間、原告組合らは、(ア)前示(4)(b)と同趣旨の内容や、(イ)被告FがGに対してした「バカヤロー」「小僧」等の発言や、被告らの他の対応を取り上げて非難したり、(ウ)被告らをウソ、ペテン、藤ゼミ乗っ取り、消費者ダマシ、情報屋などと非難する内容のビラを作成し、①これらを地下鉄藤ヶ丘駅付近等で繰り返し配布したり、②多数の塾生の自宅に直接送付したりしたほか、③被告教育企画の塾生の受験する複数の私立中学校の入試会場で試験開始前に配布する、④授業中の藤ヶ丘校付近でビラを撒き、拡声機を使ってシュプレヒコールあげるなどの行為に出た。 更に、原告組合らは、「A労組は、『争議とは営業妨害することなり』『営業妨害が嫌なら団交に応じよ』を合言葉に、闘争のドロ沼化を恐れ ビラを撒き、拡声機を使ってシュプレヒコールあげるなどの行為に出た。 更に、原告組合らは、「A労組は、『争議とは営業妨害することなり』『営業妨害が嫌なら団交に応じよ』を合言葉に、闘争のドロ沼化を恐れず、…合法果敢な戦いを展開しています。」とか、「知究舎を責任追及しよう!知究舎と争議をしよう! 営業妨害しよう!」等と記載したビラを撒き、営業妨害の闘争方針を明確にした(甲42・131頁、133頁)。 (6) これに対し、被告らは、上記のようなビラ配布等が業務妨害に当たるとして、その中止を申し入れ、特に、前示(5)③のように、12、3歳の受験生が神経を張りつめている入試会場におけるビラ配布は、重大な挑戦の場にいる子供らの精神的動揺を誘うもので、あまりに非常識だとして、平成7年2月被告Fが原告Bに電話でその旨話をしたが、原告組合らは、これに応ぜず、あくまで団交を要求したうえ、この際の原告Bの態度に憤激した被告Fが、「人道上の問題だ。非合法だ。それでもやめないのなら、これらもそれなりの手段を取るぞ。月夜の晩ばっかりじゃねえぞ。」等と発言したのを、原告組合らは、脅迫電話だとして、その旨記載したビラを撒くなどした。 また、被告側弁護士が原告組合に対し、平成6年9月30日付で、前示(4)第2段のとおり、被告知究舎には団交応諾義務はないと考えるが、原告側にも主張があると推察されるので、話合いを持ちたい旨申し入れる書面を送付したが、原告組合は、団交にこだわって話合いを拒否し、更に、争議状態の団交要求に対し代理人から「直接交渉を控えられますようお願い致」されるいわれはないとか、代理人の卒業大学や司法修習生の期を明らかにせよとの文書を送付し、平成7年2月被告Fからの新規採用面接の申入れに対しても、すべてを団体交渉で解決するとして、同様に拒否の態度を取った。 (7 いとか、代理人の卒業大学や司法修習生の期を明らかにせよとの文書を送付し、平成7年2月被告Fからの新規採用面接の申入れに対しても、すべてを団体交渉で解決するとして、同様に拒否の態度を取った。 (7) そのため、被告らは、原告組合らとの話合いを断念し、平成7年2月28日、当裁判所に原告組合らを債務者とする業務妨害禁止等仮処分事件を申し立て、同裁判所は、被告らの申立をほぼそのまま認めて、同年7月7日、前示第2、1(5)①②の内容の本件仮処分決定を下し、これに対する原告組合らの保全異議や保全抗告も排斥され、更に被告らからの間接強制の申立も認められた。 しかし、その後も原告組合らは、本件仮処分決定掲記の禁止事項は制限列挙にすぎない等と主張し、更に前示(5)(ア)ないし(ウ)に類似内容のビラを作成して、被告各社の学習塾付近や私立中学校の入試会場等で多数回配布し、シュプレヒコールなどの示威行為を繰り返し、また被告教育企画の本部(現在の場所に移転前のものを含む)に、何回か予告なしに集団で赴いて、団交を要求したほか(ただし、被告各社は応諾義務がないとの態度を取っており、団交が実現したことはなかった)、上記ビラ配布に対する写真撮影に対し、原告組合の支援者が被告教育企画の藤ヶ丘校の教室内に乱入し、「フィルムを出せ」「こんな塾やめてしまえ」と怒号して授業を不可能にしたりした(以上の日時・場所等の詳細は甲42、乙4参照)。他方、被告らの関係者と思われる人物からGらに嫌がらせの電話等が掛かったり、原告組合の関係者による中学入試会場でのビラ撒きを制止しようとした被告側従業員が、これらの者に暴行を加えるなどの事件も発生し、紛争は一層激化していった。 一方、この間原告組合らは、その団交要求にもかかわらず、労働委員会への斡旋や不当労働行為救済の申立、又は団交に応ずべき地 員が、これらの者に暴行を加えるなどの事件も発生し、紛争は一層激化していった。 一方、この間原告組合らは、その団交要求にもかかわらず、労働委員会への斡旋や不当労働行為救済の申立、又は団交に応ずべき地位の確認訴訟あるいは労働契約上の地位の確認訴訟などの提起その他の法的措置を取ろうとはせず、被告側代理人に団交の日時場所の協議を申し入れることもなかった。 (8) しかるところ、Gと原告ら、及びその他の原告側メンバー(I、K、L、M)合計9名は、従前と同様に、被告各社への団交要求とその周辺でのビラ配布を計画し、本件事件当日昼頃ファミリーレストランに集まって同日の行動計画を打ち合わせたうえ、7、8階に被告本部が、1ないし3階に名進研名駅校が入っている名進研本社ビル(名古屋市N区OP丁目Q番R号所在)に向かった。 このとき、原告側メンバーは、相手に渡す本件要求書や配布予定の本件ビラ、を持ち、組合旗と腕章を携行したほか、従前の経過や後示2(3)認定の事情から被告側との間で紛争が起きることを予想して、原告側に有利な証拠を記録する目的から、あらかじめカメラと録音機を用意して、執行委員長のGが所携のカバンに録音機を入れ、執行委員の原告Bがカメラを携帯した。 (9) 同日午後2時頃、従前同様予告なしに本件ビルを訪れた原告側メンバーは、エレベーターで8階の被告本部受付に向かったが、途中同エレベーター中で、Iが「これがスタートライン、いいね。」、原告Eが「いや。来たら飛ぶからね。おれ。これどうしたって、最低。」と述べて、互いに当日の予定等を確認し、Gは、録音機のスイッチを入れて録音を開始した。 そして、8階に着いた原告側メンバーは、うちGと原告らの5名が同階の被告本部受付に入り(残り4名は、当初外側で待機していたが、後示のような騒ぎにつれて、順次受付内に入っていった れて録音を開始した。 そして、8階に着いた原告側メンバーは、うちGと原告らの5名が同階の被告本部受付に入り(残り4名は、当初外側で待機していたが、後示のような騒ぎにつれて、順次受付内に入っていった)、まず正面受付カウンターの女性事務員に原告組合の名前を名乗った後、団体交渉の要求にきた旨来意を告げた。これに対し、受付の事務員は、原告側と話のできる役職の者は不在である旨を答えたが、原告側は、被告Fがいないかなどを確認しようとした。 すると、丁度そこへ被告教育企画の本部長であるHが戻ってきたため、以後、後示(12)のとおり被告Fがその場所に出てくるまで、もっぱらHが、一人で受付カウンターの前で、複数の原告側メンバーの相手をする形になり、ほかに被告側従業員数名がHの背後に控えるなどしていた。 (10) こうしてHが対応し始めた当初は、双方とも通常の口調で話していたが、受付に入ってわずか1分強余りで、原告EがHに、(a)「ほーう。脅迫するわけ。上等じゃん。こら。」と言うや、いきなり声を荒げ、「(××《以下関係者の発言は甲20によって認定することとし、聞取りが困難な部分は上記のように表示する。 この認定に反する甲19、甲22の記載は採用できない》)くせに。こらぁ(×××)この野郎!」と大声で怒号し、更に続けて、「(×××)それで教育者ヅラするんじゃねぇぞ。こらぁ。」と怒鳴りつけた。 これに対し、Hは、「教育者じゃねぇって言ってるだろ。」等の台詞は使いながらも、かなり落ち着いた様子で応答していたが、更に、(b)原告Eは、声を落として「殴るっていうなら、てめぇから殴れ。」と挑発し、またIが、いきなり「あんたヤクザみたいだねえ。」としゃべりかけ、原告Eも一緒に「ヤクザなんだな、この(×××)てのは。」と決めつける等した。 そして、被告Fの所在を聞かれたHが「 殴れ。」と挑発し、またIが、いきなり「あんたヤクザみたいだねえ。」としゃべりかけ、原告Eも一緒に「ヤクザなんだな、この(×××)てのは。」と決めつける等した。 そして、被告Fの所在を聞かれたHが「いねえよ。」と答えると、(c)原告Eが、再び怒気一杯の大声で「(××)ねえぞ、こらぁ!」等と罵倒し、更に、原告Eらのこのような言動にもかかわらず、他の原告側メンバーが「穏やかに言ってんだから。」などと言うため、Hが、ほぼ普通の言い方で「なにが穏やかなんだ。」と反論したのに対しても、原告Eが喧嘩腰の口調で、「お前が(××)したんだろうが。なんだ、その態度は。」と応じた。 (11) 一方、この間Gや他の原告側メンバーは、比較的普通の調子で、「団交の要求に来たんですけど。」「団交は受けなきゃ、いかんよ。」などと繰り返し発言したり、Gが、「要求書を受け取って、事務折衝の日を、今ここで決めましょう。」と団交応諾を迫ったりし、これに対し、Hは、直接原告側メンバーの退去を求める発言はしなかったものの、決めるべきことはない旨答え、また、まずGと話をするので、それ以外の者は受付の外に出てもらいたい旨述べたり、「解雇されて何年もたっている」旨のGの発言に対し、「解雇した覚えはない」と、被告各社は団交の相手方ではない旨を述べたりした。 しかし、原告側メンバーは、Hのこれら発言には応じず、被告側が団交の席に着かないことについて、被告各社に労働法の知識のある講師はいないのかとか、労働法は強制法規だ、知らないから済まされるものじゃないなどと発言し、結局被告本部受付に入って約6分後から約5分間にわたって、原告Bが、別紙1のとおり、被告らには、団交拒否のほか、暴行、脅迫、組合財産の強奪等の犯罪行為や、組合侮辱、肖像権侵害、Gらの解雇等の不当な行為があるなどの内容の本件要求書を から約5分間にわたって、原告Bが、別紙1のとおり、被告らには、団交拒否のほか、暴行、脅迫、組合財産の強奪等の犯罪行為や、組合侮辱、肖像権侵害、Gらの解雇等の不当な行為があるなどの内容の本件要求書を読み上げて、被告側の回答を要求し、同要求書を渡そうとした。 これに対し、Hは、要求書は勝手に読み上げればいい、被告側は関係ない等と団交を拒絶していたが、すると今度はGが急に話題を変え、Dに対し、「この前来たとき、あなた幸せですか、とか言ってたねぇ。」「解雇した相手に向かって、あなた幸せですか、ぼくは幸せですよってニタニタするって、どういうことですか?」と、それまでと違った険悪な口調で接近し、これをきっかけに、比較的抑制されていたHの口調も次第に厳しくなっていった。 (12) しかるところ、本件事件当日被告Fは、実際には前示受付カウンター隣の理事長室内にいたが、以上のような経過に我慢できなくなり、受付カウンター前に出てくると、「ガタガタ、ガタガタうるせい。」などと言いながら、原告Bに近寄り、これから本件要求書とそのコピー数枚を奪って破り捨てた。 これをきっかけに現場は騒然となり、原告側メンバーは、「組合活動の妨害」等と叫びながら一斉に被告Fに詰め寄り、(a)まずIが被告Fと揉合いになると、原告Eが「暴行、暴行、写真、写真」と叫び、それから一瞬間を置いて、Iが「痛い、痛い。あー痛、あー。」等と長く、周囲に訴える調子で受傷した旨の発言をし、(b)その直後、詳しい態様は不明であるが、原告Dが転倒して大きな悲鳴を上げた(甲22・6頁24行目に相当する付近)。 すると、原告側メンバーは、原告Eが「はーい。写真、写真」と叫び、原告Bがカメラで撮影を始めて証拠に残そうとしたほか、他の者が「あなたが、やったんでしょう。」「お前が突き倒したんだろう。」等と、被告Fに と、原告側メンバーは、原告Eが「はーい。写真、写真」と叫び、原告Bがカメラで撮影を始めて証拠に残そうとしたほか、他の者が「あなたが、やったんでしょう。」「お前が突き倒したんだろう。」等と、被告Fに原告Dへの暴行を認めるよう迫ったが、同被告は、「違う、俺じゃない。」と、暴行を否定する発言をした(甲22・6頁29行目)。 (13) 次いで、被告Fが更に原告側メンバーのいる側に進もうとして、原告Eと揉合いになり、同原告が転んだが、これを見た被告Fは、同人を嘲笑する趣旨の発言をした(この発言は、甲20には聞き取れる形で録音されていないが、被告F自身、発言の事実を認めているー同本人調書8、21頁)。 一方、原告Eは、前示(12)(b)の原告Dの転倒後から自分の転倒の前後と、更にその後にかけて、(ア)何回も同じ調子で、「暴行、暴行」とか「あー暴行、暴行」とか「あー痛、あー痛。」と、被告Fの暴行を訴える発言を繰り返し、(イ)Gも、「あなたたち、見てましたよねぇ。見てましたねぇ。」等と周囲に同様のアピールを行なった。しかし、上記(ア)辺りの原告Eの口調は、本訴で被告Fに後示2(4)①(c)、同②(ア)のような暴行があったとするにもかかわらず、それまでの同原告が前示(10)認定のとおり喧嘩腰の口調だったのから一転して、「あー暴行、暴行」「あー痛、あー痛。」(甲22・6頁末尾から7頁中頃にかけて)と、興奮や緊張感の欠けた、むしろのんびりとした調子を含むものであり、これに続く、「ああ、診断書出してやるからな、覚悟しろよ。」(同7頁34行目)などの発言も同様のしゃべり方であった。また、上記(イ)のGの発言も格別大きな声等ではなく、普通に近い口調だった。 (14) 他方、被告Fは、激高しながら、前示(13)の原告Eの転倒について、「歩いてたら、当たったんだよ。 り方であった。また、上記(イ)のGの発言も格別大きな声等ではなく、普通に近い口調だった。 (14) 他方、被告Fは、激高しながら、前示(13)の原告Eの転倒について、「歩いてたら、当たったんだよ。」と暴行を否定し、その後大声の早口で「どけ」「邪魔なんだよ。」などと怒鳴るとともに、前示(6)(7)の入試会場でのビラ撒きにつき、「12歳の子供を試験会場でいたぶるのが、労働運動か。」などと、その後しばらく、この点に関する原告組合らの行動を非難したうえ、原告側メンバーが「ヤクザ」などの言葉で応じていたのに対して、更に「お前らこそ、ヤクザじゃないか。 ばかやろう。」と応酬した。 しかし、これに対し原告側メンバーは、口々に反論しながらも、一部の者はむしろ落ち着いた口調で「名進研てヤクザだね。」等と言いながら、全体として順次8階受付から廊下に出て、なおも激高する被告Fの「半殺しにしたろか。」等の罵倒にも、「ストップ、ストップ」とほとんど取り合わないまま、エレベーターに乗り込んで、8階の被告本部を退去した(甲20によれば、同エレベーター内の様子は比較的平穏に近いもので、その後1階ロビーに出てからも、原告側メンバーの中に強度の興奮を示している者はいない)。 他方、原告Bは、カメラを奪おうとする被告側従業員と、受付内から8階階段辺りにかけて揉合いになり、手指にケガをしたが、結局他のメンバーとは別に、階段を使って1階に降りた。 (15) その後、1階から本件ビルの外に出た原告側メンバーは、更に同ビル前路上に集まって本件ビラを撒こうとし、様子を知って出てきた被告Fや被告側従業員と歩道上で対峙したが、このとき同メンバーらは、前示(14)第2段のエレベーター内等での比較的平静な様子から更に一転して、原告Cなどが興奮した口調で、「名進研の理事長は」「暴力団だー。」と叫 従業員と歩道上で対峙したが、このとき同メンバーらは、前示(14)第2段のエレベーター内等での比較的平静な様子から更に一転して、原告Cなどが興奮した口調で、「名進研の理事長は」「暴力団だー。」と叫び、これに憤激した被告Fが原告Cの顔面を1回平手打ちにすると、更に原告Eが「殴んなよ、殴んなよ。」と繰り返し被告側を挑発し、また原告Cは「名進研の理事長は、暴力団です。」「みんなに知らせます。」と周囲に向かって叫び続けた。 更に、原告Eは、その後も「やってみろ、こら。」と挑発を続けたうえ、その場に転んで、倒れたまま、近くにいた黒っぽいダブルの背広を来た被告側従業員を指さし、その様子を原告Bが中央分離帯上から写真に撮影したが、(a)この際、原告Eと上記被告側従業員の間には、原告側メンバーが同従業員と対峙して立っており、かつ、(b)このうち後2者は、いずれもほぼ直立の状態で、(c)特に同被告側従業員は、両手を脇につけるか後に回した状態であった。 その後、この路上で、被告側従業員が、原告Eの持っていた本件ビラ相当枚数を奪い取り、被告らにおいて破棄した。 2 本件事件の経過及び本件不法行為の成否(1) 前示1認定の事実によれば、本件当日の被告F及び被告側従業員の行為として、(a)本件ビル8階の被告本部受付カウンター前で、被告Fが原告Bから本件要求書とコピーを奪って破り捨てた行為(前示1(12))、(b)同カウンター前から8階階段辺りにかけて、カメラを奪おうとして被告側従業員が原告Bと揉み合い、手指にケガをさせた行為(同(14))、(c)本件ビル前歩道上で、被告Fが原告Cの顔面を1回平手で殴打した行為(同(15))、(d)同所で、被告側従業員が原告Eから相当枚数の本件ビラを奪って廃棄した行為(同(15))、を認めることができ、上記(b)と(c)の暴行は、 が原告Cの顔面を1回平手で殴打した行為(同(15))、(d)同所で、被告側従業員が原告Eから相当枚数の本件ビラを奪って廃棄した行為(同(15))、を認めることができ、上記(b)と(c)の暴行は、それぞれ直接の相手方となった原告Bと原告Cに対する不法行為に該当し、また同時にこれらの行為及び上記(a)(d)の本件要求書と本件ビラの奪取や破棄は、原告組合の活動に対する妨害に当たり、同原告に対する不法行為に該当するというべきである(これら行為に関する違法阻却事由等の主張に対する判断は、後示(7)(8)のとおり)。 そして、前示1認定の紛争及び本件事件当日の経過によれば、これら行為は、被告Fの被告各社の代表取締役の職務に関してなされたものか、被告各社の事業の執行につき実行されたものと認められるから、被告らには、前示各行為によって生じたそれぞれの相手方の損害を連帯して賠償する責任があるというのが相当である。 (2) これに対し、本件不法行為のうち、原告ら主張のその余の行為、すなわち、前示1(12)の本件要求書の破棄後に、被告Fが連続的に敢行したと主張する、(ア)原告Dに突き当たり仰向けに転倒させた行為、(イ)Iの右肩に突き当たった行為、(ウ)原告Eの左肩に突き当り吹き飛ばした行為、(エ)本件ビルの外で、被告側従業員Aが原告Eの胸倉を掴み、背後に突き飛ばした行為、(オ)前示(1)(c)の暴行時に、被告Fが被告Cに対し「くそばばあ」と発言した行為については、前示1認定の事実に加え、後示(4)認定の事情も考慮すれば、いずれも該当する事実を認めることができず、不法行為の成立は認められない。 (3) 更に、前示(1)認定の不法行為の経過について検討するに、前示1認定の事実によれば、被告側が上記行為に及んだのは、当日原告側メンバーが同(10)(15)認定の態度 行為の成立は認められない。 (3) 更に、前示(1)認定の不法行為の経過について検討するに、前示1認定の事実によれば、被告側が上記行為に及んだのは、当日原告側メンバーが同(10)(15)認定の態度に出ていたことが一因となっていると認められるところ、同メンバーの行動には、(a)同(10)認定のとおり、H側に重大な非があるとも窺われないのに、同人と話を始めてわずか1分ほどで原告EやIが怒号、罵倒、ヤクザ呼ばわりの喧嘩腰の態度や、「てめぇから殴れ」等の挑発的言動に出ていること、(b)これにつき他の原告側メンバーも、「穏やかに言ってんだから。」等と挑発的な発言をしていること、(c)同(15)認定のとおり、原告Eは、本件ビル前でも同様の挑発的言動を繰り返していること、(d)同(12)第2段、同(13)第2段、同(15)第1、2段認定のとおり、被害を受けたとする原告側メンバーが、以後もっぱら暴行の事実を周囲にアピールしたり、これを被告Fら相手方に認めさせるのを主目的とする発言態度に出ていること、(e)同(13)第2段認定のとおり、被告Fの原告側メンバーへの暴行を目撃、体験したはずの原告Eらが、それまでの喧嘩腰あるいは興奮状態から一転して、興奮や緊張感を欠く口調態度になるなど不自然な対応であること(原告Eらが真実Hの対応に憤激していたのであれば、その後被告Fらから予期しない暴行等を受けた結果、興奮の度が高まらず、かえって緊張感を欠くようになるというのは容易に理解し難い経過である)、以上のような挑発的あるいは不自然な点が認められる。 したがって、そのほか、(f)前示1(8)認定の原告側メンバーの準備行為、(g)同(9)認定のエレベーター中での打合わせの事実なども併せ勘案すれば、本件事件当日、原告側メンバーは、みずからの挑発的言動によって相手方が暴行等の )前示1(8)認定の原告側メンバーの準備行為、(g)同(9)認定のエレベーター中での打合わせの事実なども併せ勘案すれば、本件事件当日、原告側メンバーは、みずからの挑発的言動によって相手方が暴行等の行動に出ることを予期して一連の行為に及んだものであり、被告側の行動には、これに誘発された側面もあったと認めるのが相当である。 更に、被告Fが前示1(14)以降の憤激を示したのは、子供らの精神的動揺を防ごうと中止を要請したのに、原告組合らが入試会場でのビラ撒き戦術を継続してきたことに対する強い怒りが要因となっていたものと認められる。 (4) 以上の認定に対し、原告らは、そのほか原告D、原告EとIも暴行を受けており、原告Cは「くそばばあ」と罵倒されたと主張している。 ① そこで、まず原告Dについて検討するに、(a)甲6、甲11、甲18、甲19、甲21、甲22、甲26、甲27の1・2、原告E本人の供述には、原告ら主張に沿う部分があり、(b)原告Dの供述や陳述書(甲23)には、これらと同趣旨のほか、暴行後被告Fから「頭でも打ったか、ははは。」と嘲笑されたとの記載があるほか、(c)原告Eの供述中には、要旨、「Fは、相撲のかち上げのように下からDを突き上げ、同人の体は50センチメートルくらい完全に浮き上がり、最初背中から落ちて、しばらくしてから腹ばいになった。」「Fの暴行の様子ははっきり見えており、その右肩か肘が、Dの左肩辺りに当たった。」などの部分がある。 しかしながら、(ア)暴行の態様等に関する原告Dの当法廷での供述は、極めてあいまいで(同本人調書4、8頁、13頁以下)、どのような暴行を受けて、どのような体勢で転倒等したのか明確に供述できないのであり、本当に真実の体験に基づくものか疑問がある。(イ)また、本件事件当日作成の甲6には、上記(c)の供述に出て 以下)、どのような暴行を受けて、どのような体勢で転倒等したのか明確に供述できないのであり、本当に真実の体験に基づくものか疑問がある。(イ)また、本件事件当日作成の甲6には、上記(c)の供述に出てくる「被告Fから左肩辺りにされた暴行」や、「背中から転倒したこと」によって当然生じるはずの当該部位の受傷に関しなんら記載がないし、約2か月後に作成された甲11には左肩・頚部挫傷の記載が現れるが、これも原告Eの上記供述と本当に一致するか疑問があるうえ、なぜ事件直後に同部に関する訴えがなかったのか合理的な説明もない。(ウ)更に、甲6、甲11によれば、原告Dは左膝前部に受傷が認められるが(甲11裏面参照)、これがいかなる経過で生じたのか原告側の供述等からは直ちに理解できないところ、同部分の打撲や甲6記載の両前腕の打撲は、一般に前方に倒れる際に床で打ったり身体を庇って生じることが少なくない傷害だと考えられる。(エ)そのほか、甲20を精査しても、被告Fが原告Dの転倒直後に同原告を嘲笑等する発言をしたとは聞き取ることができず、下記(オ)の事情も考慮すれば、被告Fの嘲笑等は、前示1(13)認定のとおり、その後に原告Eに向けてなされたものだと認めるのが相当である。 したがって、以上のほかに、(オ)被告Fが原告Dの転倒直後これに対する暴行を否定する発言をしていること(前示1(12)末尾参照。なお、原告Dに対する暴行を認めるかのような乙2の記載は、同発言に照らし誤記と認められる。また、被告Fは、原告Cに関しては、後示(6)第3段のとおり直後に暴行を認める趣旨の発言をしている)も考え併せると、原告らに有利な前示証拠を直ちに全面的に採用するのは困難であって、原告Dの転倒は、前示1(12)認定のとおり、本件要求書を破った被告Fに詰め寄った原告側メンバーに押されたことに いる)も考え併せると、原告らに有利な前示証拠を直ちに全面的に採用するのは困難であって、原告Dの転倒は、前示1(12)認定のとおり、本件要求書を破った被告Fに詰め寄った原告側メンバーに押されたことによる可能性があり、同原告の傷害も、このとき前方に倒れた際に生じたものである疑いが排除できないというべきである。 そうすると、被告Fの原告Dに対する暴行については、結局、証明がないというに帰するから、この点に関し、不法行為の成立を認めることはできない。 ② 次に、原告E及びIについてみるに、甲7、甲8、甲12、甲13、甲19、甲21、甲22、甲26、原告E本人の供述中には、原告らの主張に沿う部分があり、同原告は、(ア)被告本部8階で被告Fは、肘でIの左肩にぶつかり、更に原告Dへの暴行の後、自分の左肩に当たってきた旨供述し、(イ)本件ビル前の暴行につき、要旨、「なにが気に食わなかったのか知らないが、被告従業員Aが横から手を出してきたので、ウェイビングして顔を殴られるのをかわしたところ、更に一歩踏み込んできたのに倒された。同人に胸倉をつかまれたと思う。」旨の供述をしている。また、上記(イ)の暴行で原告Eが転倒した際の写真として甲18⑪が提出されている。 そこで、まず上記(イ)の点からみるに、甲18⑪には被告側従業員の暴行は直接撮影されていないし、実際に同号証に写っている現場の状況は、前示1(15)(a)から(c)認定のとおりであって、暴行直後とはいえ、問題の被告側従業員Aには上記(イ)にかかる暴力等を振るった形跡が窺えず、原告側メンバーにも仲間への暴行に対する応戦等の体勢はまったく見られないうえ、同従業員が、原告Eとの間にいる原告側メンバーをかわして上記暴行に出られるものかかなり疑問であって、このような状況で、原告Eのみが仰向けに倒れて、上記被告側従 る応戦等の体勢はまったく見られないうえ、同従業員が、原告Eとの間にいる原告側メンバーをかわして上記暴行に出られるものかかなり疑問であって、このような状況で、原告Eのみが仰向けに倒れて、上記被告側従業員の方を指さしているのは極めて不自然というべきである。 また、本件ビル8階で原告EやIが被告Fに吹き飛ばされたりしたという当時の状況をみても、その後原告Eが反復して行なった暴行の事実を訴える趣旨の発言が、明らかに緊張感を欠く不自然なものだったことは、前示(3)(e)に判示したとおりである。 したがって、そのほか、前示1(10)(15)認定の原告EやIの挑発的言動や、前示(3)認定の本件事件当日の経過なども勘案すると、同原告は、被告Fや被告側従業員との揉合いを利用するなどして、わざと倒れたり受傷のふりをした可能性があるというべきであって、原告ら主張の前示暴行は、いずれもその事実を認めることができないというのが相当である。 ③ 更に、原告Cに対する「くそばばあ」との発言の有無について検討するに、甲20からは、問題の時点でそのような発言があったことを聞き取ることができず、この点に関する原告らの主張も直ちに採用できない。 なお、そのほか甲22・2頁50行目には、Iの発言として、「あっ、痛て、痛て、痛て、おい。」と暴行の被害を訴えるかのような記載がなされているが、同じく甲20を再生した限りでは聞き取ることが困難である。 更に、甲27の1・2と原告E本人の供述中には、被告Fが本件ビル1階内でも原告Cに暴力を振るった旨の部分があるが、甲25・2頁によれば被害者たる原告Cも、その事実を記憶していないというのであって、容易に採用できず、上記証拠は信用性に問題があるというべきである。 ④ そして、以上の各点に関する原告らに有利な前示各証拠は、全体としても容易に採用 Cも、その事実を記憶していないというのであって、容易に採用できず、上記証拠は信用性に問題があるというべきである。 ④ そして、以上の各点に関する原告らに有利な前示各証拠は、全体としても容易に採用できず、他に前示(2)掲記の不法行為を認めるだけの証拠はない。 (5) また、前示(3)の認定に対し、甲20のテープの反訳書とされる甲22には、(ア)前示1(10)(a)冒頭の原告Eの発言の前に、Hが「てめえらか、ふーん。」と発言した旨の記載が、(イ)前示1(10)(b)冒頭の原告Eの発言の前には、Hが「殴られてえか。」と発言した旨の記載があり、(ウ)甲21・2頁目には、上記(ア)と同一の場面で、(Hではなく)細身の男性社員と被告側従業員Aから、「お前ら、ただで帰れると思うなよ。」「ただじゃ帰さねえぞ!」との発言があった旨の記載がある。 しかしながら、甲20を再生して精査しても、これらの被告側の発言を聞き取ることはできず、少なくとも通常の再生方法で聞き取り可能な録音状態のテープが提出される等しないかぎり、Hなどが当該発言をしたとは認定することができない(この点は、甲22・6頁には、被告側従業員Aがしたという、「ああ臭え。くせえ。 お前ら、本当、浮浪者みてえに見えるな。ああ臭え」との発言の記載等についても同様である)。更に、上記(ア)と(ウ)は、いずれも同一時同一場面のものでありながら、発言者や発言内容がまったく異なっており、この点からも上記証拠部分は信用性に乏しいというべきである。 結局、本件事件当日の全体的な経過は、前示(3)認定のとおりであって、原告側メンバーは、みずからの挑発的言動によって相手方が暴行等の行動に出ることを予期して一連の行為に及んだものであり、たとえば、前示1(10)(a)ないし(c)認定のとおり、直前にHら被告側において、ほと ンバーは、みずからの挑発的言動によって相手方が暴行等の行動に出ることを予期して一連の行為に及んだものであり、たとえば、前示1(10)(a)ないし(c)認定のとおり、直前にHら被告側において、ほとんど格別の言動に出ていないか(同(a)(b))、あるいは特に重大な発言をしたわけでもないのに(同(c))、原告側メンバーにおいて、怒号、罵声等の挑発的行為に出て、その場の緊張を盛り上げようとしていたものであり、これが本件不法行為の一因をなしていると認めるのが相当である。 (6) 他方、被告らは、本件要求書の奪取や、原告B及び原告Cに対する暴行を否定し、乙2、乙3、証人Hの証言、被告F本人の供述中には、被告らの主張に沿う部分がある。 しかしながら、まず本件要求書の奪取の点についてみるに、乙2や被告F本人の供述中には、当時は、たまたまトイレに行きたくなったこともあって出ていったもので、それほど怒ってはおらず、原告Bが本件要求書を突き付けてきたため、受け取って破り捨てただけであるとの趣旨の部分があるが、被告本部受付カウンター前に出てきた被告Fの態度が、偶然の尿意もあって現場に出てきたなどというものでないことは、前示1(12)認定の被告Fの激高ぶりやその発言内容をみれば明らかであって、直ちに信用性がない。 また、本件事件当時、被告F自身が原告Cへの暴行を認めていたことは、甲22・10頁46行目などの発言から明白である。 更に、原告Bと揉合いになった被告側従業員は、前示1(14)第3段認定のとおり、当初いた受付内から8階階段辺りまで、同原告に付いていっているのであって、同従業員の行動が単に原告Bの写真撮影を阻止しようとしただけであったとは容易に考え難い。 以上によれば、被告らに有利な前示各証拠は、容易に採用できず、後示(7)(8)の点は別として、他に前示 って、同従業員の行動が単に原告Bの写真撮影を阻止しようとしただけであったとは容易に考え難い。 以上によれば、被告らに有利な前示各証拠は、容易に採用できず、後示(7)(8)の点は別として、他に前示(1)の事実認定を左右するだけの証拠はない。 (7) 更に、被告らは、本件要求書や本件ビラの奪取は正当防衛ないし緊急避難に該当する旨主張している。 そこで、まず本件要求書の奪取に関してみるに、前示1(2)ないし(7)認定のとおり、(ア)もともと被告各社は、被告知究舎が藤が丘ゼミナールから営業譲渡を受けただけの関係で、Gらと間には雇用関係があったわけではなく、また同人らの採用に当たり、同(3)(b)以下の条件を付けていた経緯があって、(イ)他方、原告組合らが、同(4)(b)の時点以降、対外的には本件営業譲渡の白紙撤回を要求して、同(5)以下の闘争戦術に出ており、かつ同(6)(7)のとおり、代理人を通じた交渉を一切拒否し、労働委員会や裁判所へ申立その他の法的措置を取ろうとしないなど、主として原告組合側の対応のために、両者の見解の相違が、いわば膠着状態になっていた本件事件当時の状況においては、被告Fが藤ヶ丘ゼミナールの従業員の雇用について同(2)第3段の説明をしていた点を考慮しても、被告各社が当然に原告組合との団交義務を負うものでないことは見易い道理というべきであるが、他方、被告Fによる本件要求書奪取の態様は、前示1(12)認定のとおりであって、原告側メンバーがすでに同要求書を読み終わり、被告側に交付しようとしていた段階で、自身が格別の説明や説得等をすることなく一方的に奪取行為に出た同被告の行為に、正当防衛の必要性や相当性を認めることはできず、同時に緊急避難の成立も認め難い。 次に、被告側従業員の本件ビラ奪取についてみるに、本件ビラの内容は、別紙2の く一方的に奪取行為に出た同被告の行為に、正当防衛の必要性や相当性を認めることはできず、同時に緊急避難の成立も認め難い。 次に、被告側従業員の本件ビラ奪取についてみるに、本件ビラの内容は、別紙2のとおりであって、本件ビル付近での同文書の配布は、少なくとも本件仮処分決定に違反する可能性が高いというべきであるが(同決定掲記の禁止事項が例示列挙であることは、その体裁・内容から明らかである。またその解釈に当たって、前示第2、2(1)⑥イのような要件を付加すべきだとも解し難い)、一方、その奪取の態様は、前示1(15)認定のようなものであって、被告Fから原告Cへの暴行も行なわれている当時の状況のもとで、対象となる文書の内容の確認や原告側への説得等を経ることなく、これを奪取した行為に正当防衛や緊急避難の成立を認めることができないのは、前同様である。 (8) そのほか、被告らは、原告Bはみずから招いた騒擾行為により、また原告Cも揉合いの中で偶発的に負傷したものであるから、被告らに責任はない旨主張しているが、前示(1)のとおり、被告Fによる本件要求書の奪取が不法行為として成立する以上、これを掲記とする原告Bの写真撮影を法の保護の外に置くことは適当ではないし、また被告Fの原告Cに対する暴行は、意図的な平手打ちであって、これを偶発的な負傷ということもできない。 (9) 以上によれば、本件不法行為の成立は、前示(1)認定の範囲においてのみ認められ、被告らには、連帯して当該行為の相手方の損害を賠償する義務があるが、これ以外の行為に関する原告らの請求は、その余の点について検討するまでもなく理由がない。 3 原告側の損害(1) 原告B及び原告Cの治療費甲5、甲9、甲10、甲14の1ないし4、甲17によれば、前示不法行為によって、原告Bは左中指・環指捻挫、原告Cは顔 討するまでもなく理由がない。 3 原告側の損害(1) 原告B及び原告Cの治療費甲5、甲9、甲10、甲14の1ないし4、甲17によれば、前示不法行為によって、原告Bは左中指・環指捻挫、原告Cは顔面打撲の障害を負い、それぞれ実日数4日間と1日間の通院をし、その治療費・文書代として、1万1550円と4390円を要したと認められる。 (2) 原告組合、原告B及び原告Cの慰謝料前示不法行為の態様・結果のほか、前示2(3)(5)に認定した事情も考慮すれば、本件の慰謝料としては、上記原告らについて、それぞれ各2万円ずつが相当である。 (3) 原告組合の弁護士費用本件事案の性質・内容、審理期間、認容額等を考慮すれば、前示認定の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の金額は、5万円が妥当である。 (4) 謝罪文交付の当否そのほか、原告Cは被告Fに謝罪文の交付を求めているが、前示認定の暴行等の態様によれば、その必要性を認めることはできない。 (5) 小計原告組合につき7万円原告Bにつき3万1550円原告Cにつき2万4390円 4 結論以上の次第で、原告組合、原告B及び原告Cの各請求は、被告らに対し、連帯して、それぞれ原告組合が7万円、原告Bが3万1550円、原告Cが2万4390円及びこれらに対する不法行為の当日である平成11年4月16日から各支払済まで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告D及び原告Eの請求は、いずれもすべて理由がない。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判官夏目明徳(別紙省略)

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