令和6(行ヒ)170 生活保護基準引下げ処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年6月27日 最高裁判所第三小法廷 判決 その他 名古屋高等裁判所 令和2(行コ)31
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判決文本文17,255 文字)

- 1 - 主文 1 原判決主文第1項及び第3項から第5項までのうち、上告人国に関する部分を破棄し、同部分につき、別紙被上告人目録1記載の被上告人らの控訴を棄却する。 2 上告人各市の被上告人承継人を除く別紙被上告人目録1記載の被上告人らに対する上告を棄却する。 3 第1項に関する控訴費用及び上告費用は別紙被上告人目録1記載の被上告人らの負担とし、前項に関する上告費用は上告人各市の負担とする。 4 本件訴訟のうち別紙被上告人目録2記載の被上告人の上告人名古屋市に対する請求に関する部分は、令和7年1月23日同被上告人の死亡により終了した。 理由 上告代理人春名茂ほかの上告受理申立て理由について 1 愛知県内に居住して生活保護法に基づく生活扶助を受給していた被上告人承継人を除く被上告人らは、平成25年から平成27年にかけて行われた、厚生労働大臣による「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号。 以下「保護基準」という。)中の生活扶助基準(別表第1)の改定(以下「本件改定」という。)を理由として、所轄の福祉事務所長らから、それぞれ、生活扶助の支給額を変更する旨の保護変更決定を受けた。 本件は、被上告人らが、本件改定は違法であるなどと主張して、上告人各市を相手に、上記の保護変更決定の取消しを求めるとともに、上告人国に対し、国家賠償令和6年(行ヒ)第170号生活保護基準引下げ処分取消等請求事件令和7年6月27日第三小法廷判決- 2 - 法1条1項に基づく損害賠償を求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 ⑴ア生活扶助基準は、基準生活費( - 2 - 法1条1項に基づく損害賠償を求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 ⑴ア生活扶助基準は、基準生活費(第1章)と加算(第2章)とに大別されている。居宅で生活する者の基準生活費は、市町村別に1級地-1から3級地-2まで六つに区分して定められる級地(別表第9)及び年齢別に定められる第1類と、級地等及び世帯人員別に定められる第2類とに分けられ、原則として世帯ごとに、当該世帯を構成する個人ごとに算出される第1類の額(以下「第1類費」という。)を合算したものに世帯人員別の所定の逓減率を乗じたものと第2類の額(以下「第2類費」という。)とを合計して算出される。第1類費は、食費、被服費等の個人単位の経費に、第2類費は、光熱水費、家具什器費等の世帯単位の経費にそれぞれ対応するものとされている。 イ厚生労働大臣は、基準生活費について、標準世帯(昭和61年度からは、1級地-1における夫33歳、妻29歳及び子4歳の3人世帯)の最低生活に要する費用を、標準世帯の生活扶助基準額として具体的に設定した上で、これを第1類費と第2類費とに分解し、それぞれ、年齢別、世帯人員別、級地別に所要の指数を乗ずることによって定めている(以下、このように、年齢、世帯人員、級地に応じた基準生活費の額を定めるために標準世帯の生活扶助基準額を基軸として所要の指数を乗ずることを「展開」といい、当該指数を「展開のための指数」という。)。 ⑵ 生活扶助基準の改定方式として、昭和25年の生活保護法施行当初は、マーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)が採用されていたが、その後、エンゲル方式(栄養 、マーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物や衣類、家具什器、入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)が採用されていたが、その後、エンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)及び格差縮小方式(一般国民の消費水準の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ、結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を縮小- 3 - させようとする方式)が順次採用された。 ⑶ア厚生省(当時)の審議会である中央社会福祉審議会は、昭和58年12月、「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(以下「昭和58年意見具申」という。)を公表した。昭和58年意見具申のうち、生活扶助基準に関する部分の概要は、以下のとおりであった。 ① 現在の生活扶助基準は一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た。しかしながら、生活保護世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握し、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。 ② 生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費水準との調整が図られるよう適切な措置をとることが必要である。また、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。なお、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないの 要である。また、当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。なお、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。 イ昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年度以降、生活扶助基準の改定方式として、水準均衡方式(当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当であるとの評価を踏まえ、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る方式)が採用されている。 ⑷ア厚生労働省の審議会である社会保障審議会の福祉部会内に設置された生活保護制度の在り方に関する専門委員会は、平成15年12月に「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(以下「平成15年中間取りまとめ」という。)を公表した。平成15年中間取りまとめのうち、生活扶助基準に関する部分の概要は、以下のとおりであった。 - 4 - ① 水準均衡方式はおおむね妥当であると認められてきたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なることから、例えば5年に1度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。 ② 上記の定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる被保護世帯への影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が必要である。この場合、国民にとって分かりやすいものとすることが必要であるので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。 イ上記専門委員会が平成16年 合、国民にとって分かりやすいものとすることが必要であるので、例えば、年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。 イ上記専門委員会が平成16年12月に公表した報告書(以下「平成16年報告書」という。)は、勤労3人世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったとしつつ、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全国消費実態調査等を基に5年に1度の頻度で検証を行う必要があるとした。 ウ平成16年報告書を踏まえ、平成19年10月、厚生労働省社会・援護局長の下に、生活扶助基準について専門的な分析、検討を行うことを目的として、学識経験者等から成る生活扶助基準に関する検討会が設置された。 上記検討会は、同年11月、報告書(以下「平成19年報告書」という。)を公表したところ、そのうち、生活扶助基準に関する部分の概要は、以下のとおりであった。 ① 夫婦子1人(有業者あり)の一般低所得世帯における生活扶助相当支出額(消費支出額から家賃、医療等の生活扶助に相当しないものを除いたもの。以下同じ。)は、世帯当たり14万8781円であったのに対して、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めとなっている。 - 5 - ② 単身世帯(60歳以上の場合)の一般低所得世帯における生活扶助相当支出額は、世帯当たり6万2831円であったのに対して、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっている。 ⑸ 厚生労働大臣は、平成20年度の生活扶助基準について、原油価格の高騰が ったのに対して、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は、世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっている。 ⑸ 厚生労働大臣は、平成20年度の生活扶助基準について、原油価格の高騰が消費に与える影響等の社会経済情勢を見極める必要性があるなどとして、水準均衡方式による改定をせず、生活扶助基準は据え置かれた。 さらに、平成20年9月のリーマンショックに端を発する世界的な金融危機が我が国の実体経済に大きな影響を及ぼし、同年頃から平成23年頃にかけて、物価、賃金、家計消費がいずれも下落した。厚生労働大臣は、上記金融危機の影響等を踏まえて、平成21年度から平成24年度までについても、水準均衡方式による改定をせず、この間も生活扶助基準は据え置かれた。 ⑹ 社会保障審議会は、平成23年2月、生活扶助基準について専門的かつ客観的に評価、検証を行うため、生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)を設置した。 基準部会は、生活扶助基準の展開部分についての検証(以下「平成25年検証」という。)を行い、平成25年1月に報告書(以下「平成25年報告書」という。)を公表したところ、その概要は、以下のとおりであった。 ① 平成25年検証は、平成21年に実施された全国消費実態調査のデータに基づき、年齢別、世帯人員別、級地別に一般低所得世帯間における消費支出の較差を分析し、これと生活扶助基準における展開のための指数とのかい離を評価、検証したものであり、その結果、年齢別、世帯人員別、級地別のいずれにおいても、生活扶助基準における展開のための指数と一般低所得世帯間における消費支出の較差を示す指数との間にかい離が認められた。この結果を踏まえ、年齢別、世帯人員別、級地別の指数を生活扶助基準に反映した場合の影響は、以下のようになった。 例えば、現行の基準額 帯間における消費支出の較差を示す指数との間にかい離が認められた。この結果を踏まえ、年齢別、世帯人員別、級地別の指数を生活扶助基準に反映した場合の影響は、以下のようになった。 例えば、現行の基準額(第1類費、第2類費のほか、冬季加算、児童養育加算、- 6 - 母子加算を含む。)とこれに検証結果をそのまま反映した場合の平均値とを個々の世帯構成ごとにみると、夫婦と18歳未満の子1人世帯では、年齢、世帯人員、地域による各影響の合計は8.5%減となり、夫婦と18歳未満の子2人世帯では、上記各影響の合計は14.2%減となった。また、母親と18歳未満の子1人の母子世帯では上記各影響の合計は5.2%減となった。他方で、60歳以上の単身世帯では上記各影響の合計は4.5%増、共に60歳以上の高齢夫婦世帯では上記各影響の合計は1.6%増、20~50代の若年単身世帯では上記各影響の合計は1.7%減となった。 ② 厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、平成25年報告書の評価及び検証の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい。なお、その際には見直しが現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯に及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。 ③ 平成25年検証により、個々の生活保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細かな検証が行われたことになる。しかし、消費に影響を及ぼす要因は多様であるところ、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があること ころ、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素については分析、説明に至らなかった。 ④ 平成25年検証の手法は透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証方法との継続性、整合性にも配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもなく、将来の検証手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、平成25年検証の結果を考慮しつつも、同時に検証手法について一定の限界があることに留意する必要がある。 - 7 - ⑤ 今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。 ⑺ア厚生労働大臣は、平成25年厚生労働省告示第174号、平成26年厚生労働省告示第136号及び平成27年厚生労働省告示第227号により、生活扶助基準を順次改定した(本件改定)。本件改定は、主に、平成25年検証の結果を生活扶助基準に反映するとともに、物価変動率を指標として基準生活費を変更することを内容とするものであり(以下、前者を「ゆがみ調整」といい、後者を「デフレ調整」という。)、それぞれの概要は、次のイ及びウのとおりである。 なお、本件改定は、ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の改定を3年間かけて段階的に実施するものであり、また、ゆがみ調整及びデフレ調整を行うことによる減額幅の上限を10%としている。 イゆがみ調整は、平成25年報告書により、年齢別、世帯人員別、級地別のいずれにおい けて段階的に実施するものであり、また、ゆがみ調整及びデフレ調整を行うことによる減額幅の上限を10%としている。 イゆがみ調整は、平成25年報告書により、年齢別、世帯人員別、級地別のいずれにおいても、生活扶助基準における展開のための指数と一般低所得世帯間における消費支出の較差を示す指数との間にかい離があるとされたことを踏まえ、当該かい離を解消し、生活保護受給世帯間の公平を図るため、生活扶助基準における展開のための指数を適正化することを目的とするものである。具体的には、平成25年検証の結果に基づき、一般低所得世帯間における消費支出の較差を生活扶助基準の展開部分に反映させるものであり、①第1類費について、各年齢区分間の基準額の差を小さくする、②第1類費に係る逓減率について、世帯人員の増加に応じた逓減割合を大きくするとともに、第2類費について、世帯人員の増加に応じた世帯人員別の基準額の増額の幅を大きくする、③第1類費及び第2類費について、それぞれ級地区分間の基準額の差を小さくすることを内容とする。ただし、ゆがみ調整は、平成25年検証の結果をそのまま生活扶助基準の改定に反映させるのではなく、その2分の1のみを反映させるものである(以下、これを「2分の1処理」という。)。 - 8 - なお、厚生労働大臣は、2分の1処理をすることにつき、基準部会やその委員等の専門家から意見を聴取するなどしなかった。 ウデフレ調整は、本件改定前の基準生活費を一律に4.78%減ずるものである。これは、総務省から公表されている消費者物価指数を基に、その算出の基礎とされている消費品目から、生活扶助以外の扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療費等)と生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関係費等)を除いた上で、特定の方式により算出し されている消費品目から、生活扶助以外の扶助で賄われる品目(家賃、教育費、医療費等)と生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目(自動車関係費等)を除いた上で、特定の方式により算出し直した指数(以下「生活扶助相当CPI」という。)の平成20年から平成23年までの下落率が4.78%であることから、これを生活扶助基準額に反映させるものである。 ⑻ 所轄の福祉事務所長らは、原判決別紙1処分一覧表記載のとおり、被上告人承継人を除く被上告人らに対し、本件改定を理由として、生活扶助の支給額を変更する旨の保護変更決定をした。 ⑼ その後、基準部会は、平成26年に実施された全国消費実態調査のデータに基づく生活扶助基準の検証(以下「平成29年検証」という。)等を行い、平成29年12月、夫婦子1人世帯について、本件改定後の生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活扶助相当支出額はおおむね均衡しているなどとする報告書(以下「平成29年報告書」という。)を公表した。 3 原審は、上記事実関係等の下において、要旨次のとおり判断し、被上告人らの各請求を、いずれも認容した。 ⑴アゆがみ調整において、減額率のみならず、増額率についてまで、平成25年検証の結果を2分の1の限度で反映することは、不公平を残存させる結果となるものであり、ゆがみ調整の本質的な部分を半減させるものである。そうすると、2分の1処理に係る厚生労働大臣の判断は、少なくとも増額率について、平成25年検証の結果を2分の1の限度で反映した点で、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く。 イ上告人らは、デフレ調整の必要性ないし目的について、平成23年時点で、- 9 - 物価下落により生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加し、生活扶助基準の引上げがされてい 合性を欠く。 イ上告人らは、デフレ調整の必要性ないし目的について、平成23年時点で、- 9 - 物価下落により生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加し、生活扶助基準の引上げがされているのと同視し得る状態で、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との間の不均衡が顕著なものとなり、生活扶助基準の引下げによる是正を相当とする程度のものとなっていた旨主張する。しかし、生活保護受給世帯における支出割合が高い食料費や光熱水費は平成23年時点で平成19年時点より上昇していたことなどを勘案すれば、本件改定当時、上告人らが主張するような状態にあったと評価することはできず、少なくとも、生活保護受給世帯一般について当てはまる状況でなかったことは明らかである。また、本件改定においては、ゆがみ調整がされることを考慮した上で、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るために、更に生活扶助基準を引き下げる必要性があるか否か、仮にその必要性があるとしても、世帯類型ごとにどの程度引き下げるのが相当かなどの点について、専門技術的な見地からの十分な検討を要するほか、一律に基準生活費を減ずることが平成25年検証の結果との整合性を欠くことにならないかなどの検討を要すると解される。しかし、厚生労働大臣がこのような検討を行ったことはうかがわれず、上告人らの主張によっても、同大臣のデフレ調整に係る判断の過程の全体が具体的に説明されているとはいえない。したがって、デフレ調整の必要性等に係る厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く。 さらに、デフレ調整の内容に係る厚生労働大臣の判断も、物価変動率を指標とする独自の生活扶助相当CPIを用いるなどした点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く。 らに、デフレ調整の内容に係る厚生労働大臣の判断も、物価変動率を指標とする独自の生活扶助相当CPIを用いるなどした点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く。 ウ以上によれば、本件改定に係る厚生労働大臣の判断には、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、本件改定は、生活保護法3条、8条2項に違反する。 ⑵ 2分の1処理が、基準部会に問うことなく、国民に対する説明もないまま、生活保護受給世帯間の不公平をあえて残存させたものであること、デフレ調整が、合理的な根拠もなく、独自の指数を用いるなどして基準生活費を大きく減ずるものであることなどからすると、本件改定には国家賠償法1条1項にいう違法がある。 - 10 - 4 しかしながら、原審の上記判断のうち、保護変更決定の取消請求に関する部分は結論において是認することができるが、損害賠償請求に関する部分は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 ⑴ 生活保護法3条によれば、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ、同法8条2項によれば、保護基準は、要保護者(同法による保護を必要とする者をいう。)の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、同条1項の委任を受けた厚生労働大臣がこれを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を含めた多方面にわた 的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり、同条1項の委任を受けた厚生労働大臣がこれを保護基準において具体化するに当たっては、国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである。 そうすると、厚生労働大臣は、生活扶助基準を改定するに当たり、それにより基準生活費を減額されることとなる被保護者の期待的利益についての配慮の要否等を含め、上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているものというべきであり、本件改定は、その判断に上記見地からの裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある場合に、生活保護法3条、8条2項に違反して違法となるものと解される。そして、生活扶助基準の改定の要否の判断の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価や被保護者の期待的利益についての配慮は、上記のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であるところ、これまでも生活扶助基準の改定に際しては、専門家により構成される合議制の機関等により、各種の統計や資料等に基づく専門技術的な検討がされてきたところである。これらの経緯等に鑑みると、厚生労働大臣の上記の裁量判断の適否に係る裁判所の審理においては、主として本件改定に至る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるか否か等の観点から、統計等の- 11 - 客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等について審査されるべきものと解される(以上につき、最高裁平成22年(行ツ)第392号、同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 ⑵ そこで、まず、ゆがみ調整に係る 同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁、最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 ⑵ そこで、まず、ゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断についてみると、本件において、平成25年検証の結果に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるというべき事情は見当たらない。そして、上記事実関係等によれば、平成25年報告書においては、平成25年検証の結果をそのまま生活扶助基準に反映させると、児童のいる世帯への減額の影響が大きくなることが見込まれており、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には児童のいる世帯への影響に配慮する必要があるともされていたというのであるから、このような観点から、その反映に当たり減額率を限定することには合理性があるということができる。また、ゆがみ調整が、生活保護受給世帯間の公平を図るため、生活扶助基準における展開のための指数を適正化することを目的とするものであることに照らせば、減額率に合わせて増額率を限定することにも一定の合理性があるということができる。そして、平成25年報告書において、平成25年検証の手法に係る統計上の限界も指摘されていたほか、生活扶助基準については基準部会による5年ごとの検証が行われるため、改定による影響については、将来的に検証することが可能であったといえることなども踏まえると、ゆがみ調整における改定率を平成25年検証の結果をそのまま生活扶助基準に反映する場合の2分の1に限定したことが不合理であるともいえない。 なお、厚生労働大臣は、基準部会やその委員等の専門家から意見を聴取するなどせずに2分の1処理をしたものである。しかし、生活保護法その他の法令において、厚生労働大臣が保護基準を改定する もいえない。 なお、厚生労働大臣は、基準部会やその委員等の専門家から意見を聴取するなどせずに2分の1処理をしたものである。しかし、生活保護法その他の法令において、厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり基準部会の審議検討等を経なければならないとされているものではないし、これを経た場合であっても、その意見等- 12 - は同大臣を法的に拘束するものではなく、その考慮要素として位置付けられるべきものである(前掲最高裁平成24年4月2日第二小法廷判決参照)。そうである以上、上記の事情や、本件改定当時、2分の1処理がされたことが一般国民に知らされていなかったなどの事情をもって、2分の1処理に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があったものということはできない。 以上によれば、2分の1処理を含むゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断に、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるということはできない。 ⑶ 次に、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断についてみる。 ア上告人らは、厚生労働大臣がデフレ調整をすることとした理由について、平成20年以降の経済情勢により生じた生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間の不均衡を是正することとしたものである旨説明するところ、上記事実関係等によれば、平成19年報告書において、生活扶助基準額が一般低所得世帯における生活扶助相当支出額より高い状態にある旨の指摘があったほか、平成20年頃から平成23年頃にかけて、リーマンショックに端を発する世界的な金融危機が我が国の実体経済に大きな影響を及ぼし、物価が下落していただけでなく、賃金、家計消費がいずれも下落していたというのである。そのような中で、平成20年度から平成24年度までの生活扶助基準について水準均衡方式によ 体経済に大きな影響を及ぼし、物価が下落していただけでなく、賃金、家計消費がいずれも下落していたというのである。そのような中で、平成20年度から平成24年度までの生活扶助基準について水準均衡方式による改定が行われなかったことからすると、厚生労働大臣が、本件改定当時、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に不均衡が生じていると判断したことにつき、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるとはいい難い。 イ上告人らは、現時点において、厚生労働大臣が物価変動率のみを直接の指標として基準生活費を一律に減ずることとした理由について、平成15年中間取りまとめにおいて消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることも考えられるとされていたこと等を踏まえ、消費そのものではなく、物価変動率を指標とし- 13 - て用いた旨説明しているところ、生活扶助基準の改定方式につき、生活保護法その他の法令には何らの定めもなく、同大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められることからすれば、生活扶助基準の改定の際にどのような指標を用いるかについても、同大臣の裁量判断に委ねられているものということができる。 もっとも、生活保護法8条2項は、保護基準は、保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすものとすべき旨を規定しているところ、ここにいう「最低限度の生活の需要を満たす」とは、生活扶助については、最低限度の消費水準を保障することを意味するものとして理解されてきたものである。昭和58年意見具申を踏まえて昭和59年度以降採用されてきた水準均衡方式も、当時の生活扶助基準が、一般国民の消費実態との均衡上、最低限度の消費水準を保障するものとしてほぼ妥当なものとなったとの評価を前提として、一 具申を踏まえて昭和59年度以降採用されてきた水準均衡方式も、当時の生活扶助基準が、一般国民の消費実態との均衡上、最低限度の消費水準を保障するものとしてほぼ妥当なものとなったとの評価を前提として、一般国民の消費動向を踏まえると同時に、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る方式により生活扶助基準を改定していくことによって、一般国民の消費実態との関係において妥当な生活扶助の水準を維持しようとするものである。 これに対し、物価は、これが変動すれば消費者の消費行動に一定の影響が及ぶとは考えられるものの、飽くまで消費と関連付けられる諸要素の一つにすぎず、物価変動が直ちに同程度の消費水準の変動をもたらすものとはいえない。この点は、昭和58年意見具申においても、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、参考資料にとどめるべきものとされているところである。平成15年中間取りまとめでは、生活扶助基準の改定方式の在り方に関し、改定の指標についても検討が必要であるとされ、例えば、消費者物価指数の伸びを改定の指標の一つとして用いることも考えられるとされているが、これも、物価変動率を考え得る指標の一つとして例示し、その検討の必要性に言及したにすぎないものと解される。 平成25年報告書にも、平成25年検証の結果を踏まえて生活扶助基準の見直しを検討する際に、他に合理的説明が可能な経済指標を総合的に勘案する場合があり得ることを前提とする記載があるところ、ここにいう経済指標に物価変動率が含まれ- 14 - るとしても、それは総合的に勘案する指標の一つに位置付けられているにすぎないし、平成25年報告書も、これを勘案する場合にはその根拠を明確に示すべきことを求めている。現に、本件改定前において、物価変動率のみを直接の指標として生活扶助基準の改定が 位置付けられているにすぎないし、平成25年報告書も、これを勘案する場合にはその根拠を明確に示すべきことを求めている。現に、本件改定前において、物価変動率のみを直接の指標として生活扶助基準の改定がされたことはなかったものである。 以上に述べたところによれば、物価変動率は、生活扶助基準の改定の際の指標の一つとして勘案することが直ちに許容されないものとはいえないとしても、それだけでは消費実態を把握するためのものとして限界のある指標であるといわざるを得ない。そうすると、上記アの不均衡を是正するために物価変動率のみを直接の指標として基準生活費の改定率を定めることが、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を有するものというためには、上記限界を踏まえてもなお物価変動率のみを直接の指標とすることが合理的であることにつき、物価と最低限度の消費水準との関係や、従来の水準均衡方式による改定との連続性、整合性の観点を含め、専門的知見に基づいた十分な説明がされる必要があるというべきである。 しかるに、上告人らは、平成15年中間取りまとめにおいて、消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることも考えられるとされていたこと等を挙げて、物価変動率のみを直接の指標として用いても専門的知見と整合しないものではないなどと説明するにすぎず、上記不均衡を是正するために物価変動率のみを直接の指標として用いることが合理的であることについて、専門的知見に基づいた十分な説明がされているということはできない。上記のとおり、平成15年中間取りまとめは、消費者物価指数の伸びを指標とすることについての検討の必要性に言及したものにすぎないし、平成25年報告書にも、厚生労働省において他に合理的説明が可能な経済指標を総合的に勘案する場合もあり得ることを前提とする記 指数の伸びを指標とすることについての検討の必要性に言及したものにすぎないし、平成25年報告書にも、厚生労働省において他に合理的説明が可能な経済指標を総合的に勘案する場合もあり得ることを前提とする記載があるにすぎない。そして、物価変動率を指標とすることが、一般論としては専門的知見と整合しないものではないからといって、それまで水準均衡方式によって改定されてきた生活扶助基準を、物価変動率のみを直接の指標として改定することが直ちに- 15 - 合理性を有するものということにはならないところ、上記不均衡を是正するために物価変動率のみを直接の指標として用いることについて、基準部会等による審議検討が経られていないなど、その合理性を基礎付けるに足りる専門的知見があるとは認められない。 そうすると、デフレ調整における改定率の設定については、上記不均衡を是正するために物価変動率のみを直接の指標として用いたことに、専門的知見との整合性を欠くところがあり、この点において、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤、欠落があったものというべきである。 なお、上記事実関係等によれば、平成29年報告書において、本件改定後の夫婦子1人世帯における生活扶助基準額が一般低所得世帯の生活扶助相当支出額とおおむね均衡することが確認されたと評価されているが、デフレ調整において物価変動率のみを直接の指標として用いた厚生労働大臣の判断には、従来の水準均衡方式における改定との連続性等の点において専門的知見との整合性を欠くところがあったというべきことは上記のとおりであって、デフレ調整が基準生活費を一律に4.78%も減ずるものであり、生活扶助を受給していた者の生活に大きな影響を及ぼすものであることも考慮すると、本件改定後に行われた平成29年検証の結果によって、デ て、デフレ調整が基準生活費を一律に4.78%も減ずるものであり、生活扶助を受給していた者の生活に大きな影響を及ぼすものであることも考慮すると、本件改定後に行われた平成29年検証の結果によって、デフレ調整に係る同大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があったとの上記評価が左右されることはないものというべきである。 ⑷ 以上によれば、本件改定は、物価変動率のみを直接の指標としてデフレ調整をすることとした点において、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反して違法というべきである。 ⑸ 以上のとおり、本件改定は、生活保護法3条、8条2項に違反して違法であるが、そのことから直ちに本件改定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、厚生労働大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件改定をしたと認め得るような事情がある場合に限り、上記評価を受けるものと解するのが相当である(最高裁平成元年(オ)第930号、- 16 - 第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁、最高裁平成17年(受)第1977号同19年11月1日第一小法廷判決・民集61巻8号2733頁参照)。 上記⑴のとおり、保護基準は、最低限度の生活の需要を超えないものでなければならないのであり、仮に本件改定前の生活扶助基準が上記需要を超えたものとなっていたというのであれば、これを引き下げることは、生活保護法8条2項の規定に沿うところであるということができる(前掲最高裁平成24年2月28日第三小法廷判決、前掲最高裁平成24年4月2日第二小法廷判決参照)。そして、上記⑶アに説示したとおり、厚生労働大臣が、本件改定当時、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に不 24年2月28日第三小法廷判決、前掲最高裁平成24年4月2日第二小法廷判決参照)。そして、上記⑶アに説示したとおり、厚生労働大臣が、本件改定当時、生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に不均衡が生じていると判断したことにつき、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるとはいい難く、平成24年8月に施行された社会保障制度改革推進法附則2条1号においても、政府は、生活保護制度に関し、生活扶助の給付水準の適正化その他の必要な見直しを早急に行うものとする旨が規定されていたものである。加えて、上記⑶イに説示したとおり、生活扶助基準の改定に当たり物価変動率を指標とすること自体が直ちに許容されないものとはいえず、平成15年中間取りまとめにおいては、生活扶助基準の改定の指標の在り方について検討の必要性が指摘され、消費者物価指数の伸びを上記指標とすることも考えられるとされていたところである。 これらに照らせば、厚生労働大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とデフレ調整に係る判断をしたと認め得るような事情があったとまでは認められず、他に、同大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件改定をしたと認め得るような事情があったというべき根拠は見当たらない。 したがって、本件改定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできない。 5 以上によれば、被上告人承継人を除く別紙被上告人目録1記載の被上告人らに対してされた上記保護変更決定は違法というべきであり、その取消請求を認容し- 17 - た原審の判断は、結論において是認することができる。上告人各市の論旨は採用することができない。 他方、損害賠償請求を認容した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違 17 - た原審の判断は、結論において是認することができる。上告人各市の論旨は採用することができない。 他方、損害賠償請求を認容した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。上告人国の論旨は以上の趣旨をいうものとして理由があり、原判決のうち上記請求に関する部分は破棄を免れない。そして、既に説示したところによれば、上記請求を棄却した第1審判決は結論において正当であるから、同部分につき別紙被上告人目録1記載の被上告人らの控訴を棄却すべきである。 6 なお、記録によれば、別紙被上告人目録2記載の被上告人は、令和7年1月23日に死亡していることが明らかであるところ、本件訴訟のうち同被上告人の上告人名古屋市に対する請求に関する部分については、その死亡と同時に終了したものと解すべきである(最高裁昭和39年(行ツ)第14号同42年5月24日大法廷判決・民集21巻5号1043頁参照)。 したがって、本件訴訟のうち上記請求に関する部分は、同被上告人の死亡により終了したことを宣言することとする。 よって、裁判官宇賀克也の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官林道晴の補足意見がある。 裁判官林道晴の補足意見は、次のとおりである。 多数意見においてデフレ調整と2分の1処理で反対の結論となった点等についての私の意見は、最高裁令和5年(行ヒ)第397号、第398号同7年6月27日第三小法廷判決における私の補足意見で述べたとおりである。 裁判官宇賀克也の反対意見は、次のとおりである。 私は、デフレ調整に違法があるとする多数意見の結論及び理由に賛成するが、多数意見のうち、2分の1処理に違法はないとする部分及び本件改定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったとはいえないとする部分については、 調整に違法があるとする多数意見の結論及び理由に賛成するが、多数意見のうち、2分の1処理に違法はないとする部分及び本件改定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったとはいえないとする部分については、意見を異にし、上告人国の上告も棄却すべきと考える。その理由は、最高裁令和5年(行ヒ)第397号、第398号同7年6月27日第三小法廷判決における私の反対意見で- 18 - 述べたのと同様である。 (裁判長裁判官宇賀克也裁判官林道晴裁判官渡辺惠理子裁判官石兼公博裁判官平木正洋)

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