平成20(行ウ)19 政務調査費返還履行等代位請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年6月19日 横浜地方裁判所
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判決文本文57,035 文字)

 平成25年6月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成20年(行ウ)第19号政務調査費返還履行等代位請求事件口頭弁論の終結の日平成25年4月22日判決当事者等の表示別紙1当事者目録記載のとおり主文 1 被告は,被告補助参加人自由民主党神奈川県議会議員団に対し,1億1349万1734円及びうち3575万3548円に対する平成16年6月1日から,うち3929万9370円に対する平成17年6月1日から,うち3843万8816円に対する平成18年6月1日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員を請求せよ。 2 被告は,被告補助参加人「民主党・かながわクラブ」神奈川県議会議員団に対し,8617万2764円及びうち2177万2624円に対する平成16年6月1日から,うち3132万3460円に対する平成17年6月1日から,うち3307万6680円に対する平成18年6月1日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員を請求せよ。 3 被告は,被告補助参加人公明党神奈川県議会議員団に対し,1961万4105円及びうち591万3836円に対する平成16年6月1日から,うち640万6175円に対する平成17年6月1日から,うち729万4094円に対する平成18年6月1日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員を請求せよ。 4 被告は,被告補助参加人県政会神奈川県議会議員団に対し,1792万0331円及びうち304万8959円に対する平成16年6月1日から,うち501万5780円に対する平成17年6月1日から,うち985万5592円に対する平成18年6月1日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員を請求せよ。  5 原告ら ,うち501万5780円に対する平成17年6月1日から,うち985万5592円に対する平成18年6月1日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員を請求せよ。  5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用は,補助参加によって生じた費用を含め,各原告に生じた費用の各2分の1を被告及び被告補助参加人らの負担とし,その余を各被告補助参加人を含む各自の負担とする。事実及び理由第1 請求 1 被告は,被告補助参加人自由民主党神奈川県議会議員団(以下「参加人自民」という。)に対し,2億1158万3444円及びうち5919万2721円に対する神奈川県議会政務調査費の交付等に関する条例(甲3の1。平成13年神奈川県条例第33号。平成20年神奈川県条例第3号による改正前のもの。 現在の題名は「神奈川県議会政務活動費の交付等に関する条例」である。以下「本件条例」という。)上の平成15年度の返還すべき期日(以下,単に「平成15年度期日」などという。)から,うち6454万9574円に対する平成16年度期日から,うち6333万0267円に対する平成17年度期日から,うち2451万0882円に対する平成18年度期日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員を請求せよ。 2 被告は,被告補助参加人「民主党・かながわクラブ」神奈川県議会議員団(旧名称は「民主党・刷新の会県議会議員団」。以下「参加人民主」という。)に対し,1億5824万4999円及びうち3644万1677円に対する平成15年度期日から,うち5014万2690円に対する平成16年度期日から,うち5267万6470円に対する平成17年度期日から,うち1898万4162円に対する平成18年度期日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金 014万2690円に対する平成16年度期日から,うち5267万6470円に対する平成17年度期日から,うち1898万4162円に対する平成18年度期日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員を請求せよ。 3 被告は,被告補助参加人公明党神奈川県議会議員団(以下「参加人公明」という。)に対し,4447万6538円及びうち1226万1350円に対する平成15年度期日から,うち1348万0453円に対する平成16年度期 日から,うち1329万9682円に対する平成17年度期日から,うち543万5053円に対する平成18年度期日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員を請求せよ。 4 被告は,被告補助参加人県政会神奈川県議会議員団(旧名称は「県政会・大志会神奈川県議会議員団」,そのさらに前の名称は「県政21・県民の会神奈川県議会議員団」。以下「参加人県政」という。)に対し,5611万7461円及びうち1358万8613円に対する平成15年度期日から,うち1823万4081円に対する平成16年度期日から,うち1725万6978円に対する平成17年度期日から,うち703万7789円に対する平成18年度期日からいずれも支払済みまで年5%の割合による金員を請求せよ。第2 事案の概要本件は,神奈川県(以下「県」という。)の住民である原告らが,県議会の会派である参加人らは本件条例に基づき平成15年度から平成18年度までの間に交付された政務調査費の一部を使途基準に違反して目的外支出したため県に対し同額の不当利得返還義務を負ったと主張して,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの。以下「自治法」という。)242条の2第1項4号に基づき,被告に対し,上記目的外支出額の返還と各年度の返還すべき期日から支払済み たと主張して,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの。以下「自治法」という。)242条の2第1項4号に基づき,被告に対し,上記目的外支出額の返還と各年度の返還すべき期日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金を参加人らに請求するよう求める住民訴訟の事案である。 1 関係法令等の定め県議会の平成15年度から平成18年度までの政務調査費に関する法令等は,自治法,本件条例及び神奈川県議会政務調査費の交付等に関する条例施行規程(甲3の2。平成13年神奈川県議会議長告示第1号。平成20年神奈川県議会議長告示第1号による改正前のもの。現在の題名は「神奈川県議会政務活動費の交付等に関する条例施行規程」である。以下「本件規程」という。)であり,本件に関係する規定は別紙2「法令等の定め」記載のとおりである。  2 前提事実(括弧内掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。 なお,の事実は当裁判所に顕著である。) 当事者等(甲5)原告らは,県内における政務調査費の使途に関わる不正を監視,是正すること等を目的として「政務調査費改革かながわ見張番」という名称の団体を構成し,活動している者である。参加人らは,いずれも県議会の議員によって結成された会派であり,いわゆる権利能力のない社団である。 政務調査費の交付と収支報告(甲4)参加人らは平成15年度から平成18年度まで(平成15年5月から平成19年3月まで)次のとおり被告から次の各「受領額」欄記載の政務調査費の交付を受けた。そして,各年度の収支について各「収支報告日」欄記載の日に県議会議長に収支報告書を提出し,県に返還すべき政務調査費はないと報告した。ア参加人自民 平成15年度受領額 2億53 ,各年度の収支について各「収支報告日」欄記載の日に県議会議長に収支報告書を提出し,県に返還すべき政務調査費はないと報告した。ア参加人自民 平成15年度受領額 2億5334万円収支報告日平成16年5月14日 平成16年度受領額 2億7295万円収支報告日平成17年5月13日 平成17年度受領額 2億6924万円収支報告日平成18年5月15日 平成18年度受領額 2億6553万円収支報告日平成19年5月15日イ参加人民主 平成15年度受領額 1億2561万円収支報告日平成16年4月27日 平成16年度受領額 1億7384万円 収支報告日平成17年5月6日 平成17年度受領額 1億8391万円収支報告日平成18年5月15日 平成18年度受領額 1億7967万円収支報告日平成19年5月15日ウ参加人公明 平成15年度受領額 6413万円収支報告日平成16年5月14日 平成16年度受領額 6996万円収支報告日平成17年5月13日 平成17年度受領額 6996万円収支報告日平成18年5月15日 平成18年度受領額 支報告日平成17年5月13日 平成17年度受領額 6996万円収支報告日平成18年5月15日 平成18年度受領額 6996万円収支報告日平成19年5月14日エ参加人県政 平成15年度受領額 6413万円収支報告日平成16年5月14日 平成16年度受領額 8162万円収支報告日平成17年5月13日 平成17年度受領額 8268万円収支報告日平成18年5月10日 平成18年度受領額 8268万円収支報告日平成19年5月10日 住民監査請求の経緯(甲1,2)ア原告らは他の住民とともに,平成20年1月8日付けで県の監査委員に対し住民監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。本件監査請 求は,平成15年度から平成18年度までに県議会の各会派と議員に交付された政務調査費の額と支出額(ただし,平成15年度については4月分を除く。以下同じ。)を掲げ,他の自治体で,法令・条例・使途基準に反する違法不当な支出があったことが報道され,あるいは違法な支出を肯定する裁判例があることを指摘した上で,収支報告書に示された政務調査費の使途について,法令・条例・裁判例や他の事例における住民監査請求の監査結果等を根拠に検討したところ,県議会の全会派及び議員の政務調査費中,4年間で総額8億1114万7545円の目的外支出が存在し,県に返還すべき金額が7億7265万7986円になるとして,被告に対し各会派へ返還請求 討したところ,県議会の全会派及び議員の政務調査費中,4年間で総額8億1114万7545円の目的外支出が存在し,県に返還すべき金額が7億7265万7986円になるとして,被告に対し各会派へ返還請求するよう勧告することを求めるものであった(このように本件監査請求においては参加人らに限らず他の会派や議員に交付された政務調査費も問題とされていたが,以下においては,本件訴訟の対象である参加人らに交付された政務調査費のみに言及することとする。)。原告らは,新聞購読料,議員連盟費,電話機等の設備工事費及び街宣車リース料(以下「新聞購読料等」という。)については,項目を特定して目的外支出であると主張したが,それ以外の支出については,これを個別に特定することなく,「政策検討を対象とした調査研究に資する支出以外に,通常の議員活動,政治活動・後援会活動等に関わる支出が含まれていると見られる。適切に按分すべきであるが,少なくとも3/10は使途基準に反する目的外支出である」と主張した。少なくとも10分の3とした理由について,原告らは,対象となる政務調査費の支出を伴う活動には政務調査活動と通常の議員活動や政治活動,後援会活動とが混在することを考えれば,これを適正に按分すべきであるが,支出内容が明確に把握できないこと及び今後の議員活動への影響に配慮し,また,原告らが本件とは別に川崎市議会の政務調査費について同市の監査委員に住民監査請求をした事案における外部監査結果に示された基準を参考にしたなどとしていた。 イ原告らは,本件監査請求において,自治法252条の43第1項により監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めたが,県の監査委員はこれに応じず,自ら監査を行い,平成20年3月7日付けで監査結果(以下「本件監 自治法252条の43第1項により監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めたが,県の監査委員はこれに応じず,自ら監査を行い,平成20年3月7日付けで監査結果(以下「本件監査結果」という。)を取りまとめ,これを原告らに通知した。本件監査結果の結論は下記のとおりである。記地方自治法第242条第4項の規定に基づき,次のとおり勧告する。平成15年5月から平成19年3月までの政務調査費に係る請求について,一部管理を怠る事実が認められたことから,知事は,別表1及び別表2〔本判決には添付しない。ただし,参加人らに関する内容は後記a及びbのとおりである。〕に記載した返還所要額について,政務調査費の交付対象とした会派及び議員に対し返還請求を行うなど必要な措置を,平成20年6月30日までに講じられたい。なお,今後,合理的な事情により,会派及び議員から証拠書類等の追加提出等があった場合は,別表3の監査基準〔本判決には添付しない。ただし,内容は後記のとおりであり,本判決別紙3と同じである。〕を参考に審査を行い,監査委員に通知の上,返還所要額の減額等を行われたい。上の結論に至った監査委員の意見の概要は次のとおりである。 監査対象事項原告らは大阪府議会や川崎市議会の個別外部監査の結果等から,県議会の政務調査費についても違法支出の可能性があるとしているにすぎず,また,原告らから提出された書面も政務調査費に関する他の地方公共団体に対する住民監査請求の結果及び裁判例等のみであり,さらに,違法支出額も川崎市個別外部監査の判断基準の目的外支出の割合である3割を用いて算出しているにすぎない。新聞購読料等については,個別的,具体的に摘示されているように見えるが,当 らに,違法支出額も川崎市個別外部監査の判断基準の目的外支出の割合である3割を用いて算出しているにすぎない。新聞購読料等については,個別的,具体的に摘示されているように見えるが,当然に違法な政務調査費の目的外支出としているのみで,なぜ違法又は不当な支出があるかの説明はない。すなわち,原告らは,政務調査費の目的外支出を特定し,個別的,具体的に摘示しているとは認め難い。しかし,県議会の政務調査費については,収支報告書の閲覧は可能であるものの,政務調査費の支出に係る証拠書類等の閲覧は認められておらず,政務調査費の目的外支出を特定し個別的,具体的に示していないことも,一定程度やむを得ないものと認められることから,項目が示されている新聞購読料等の支出に限り,個別的,具体的に摘示しているものと認めた。また,政務調査費に関する県民の関心は非常に高いものと推察されるので,これに加えて,特に直近の1年である平成18年度に限り,政務調査費の全ての支出についても監査対象事項とする。 監査基準具体的な支出について政務調査費の目的外支出であったかどうかを判断するためには判断基準が必要であるが,県議会においては政務調査費の使途基準は定められていない(本件規程5条2項,別表の定めるとおり,使途基準自体は存在する。ここで監査委員が指摘しているのは,この使途基準を踏まえて県議会においてさらに細かい基準を定めてはいないということであると解される。)。そのため,全国都道府県議会議長会が平成13年10月16日付けで示した「政務調査費の使途の基本的な考え方について」(甲22,丙D45。以下「議長会報告」という。)を基本とし,裁判例及び他の地方公共団体の政務調査費に係る監査結果並びに学識経験者からの意見を参考として 「政務調査費の使途の基本的な考え方について」(甲22,丙D45。以下「議長会報告」という。)を基本とし,裁判例及び他の地方公共団体の政務調査費に係る監査結果並びに学識経験者からの意見を参考として,別紙3「監査委員の監査基準」(以下「本件監査基準」という。)のとおり,本件監査請求に限っ た判断基準を作成し,これにより監査を実施する。本件監査基準の考え方は次のとおりである。a 各費目共通① 実費弁償の原則政務調査費は実費弁償を原則とする。② 会派等の説明責任政務調査費に関する説明責任は会派等にある。③ 事務委託会派から議員へ事務委託がある場合には,議員の政務調査活動に関わる支出についても会派の政務調査活動と認める。④ 証拠書類等の取扱い領収書等の証拠書類の整備及び保管が義務付けられており,また政務調査費は公金であることに鑑み,証拠書類等の添付がない場合は政務調査費の目的外支出とした。b 個別事項① 食糧費原則として政務調査費の目的外支出としたが,会議における弁当代や政務調査活動と密接不可分のものについては,社会通念上許容される範囲内に限り認めることとした。② 交通費反復かつ継続的に利用され,同時に政務調査活動とその他の活動による利用が渾然一体となっており,具体的に区別すること及び会派等による立証が困難であることから,一定額を設定し当該金額の範囲を超えるものは目的外支出とした。③ 資料作成費,広報費成果品を確認し,政務調査活動と認められるものは政務調査費として認めることとした。④ 事務所費会派等が全額政務調査活動に使用していると主張した場合でも,一定割合で按分し, ,広報費成果品を確認し,政務調査活動と認められるものは政務調査費として認めることとした。④ 事務所費会派等が全額政務調査活動に使用していると主張した場合でも,一定割合で按分し,一部を目的外支出とした。また,生計を一にする親族名義の自宅に賃料を支払っている場合は,政務調査費の目的外支出とした。なお,議員が自ら後援会等の利用があるために按分し,按分後の金額を政務調査費として計上している場  合,その按分方法が不合理でないときは,その金額を認めることとした。⑤ 人件費源泉徴収等による支払などが確認できることを要件とした。なお,生計を一にする親族の人件費は政務調査費の目的外支出とした。 判断会派等から提出された証拠書類等の調査,関係人からの事実関係の聴取を行った結果等を基に,本件監査基準を適用して判断した結果は,次のとおりである。a 平成15年度から平成17年度まで(平成15年5月から平成18年3月まで)の新聞購読料等については,返還所要額(政務調査費の目的外支出と認められる額)は,参加人自民が485万2794円(平成15年度192万8300円,平成16年度130万1844円,平成17年度162万2650円)参加人民主が37万5000円(平成15年度12万7760円,平成16年度8万1770円,平成17年度16万5470円)参加人公明が33万2540円(平成15年度15万5940円,平成16年度9万2060円,平成17年度8万4540円)参加人県政が253万5849円(平成15年度125万8349円,平成16年度62万3120円,平成17年度65万4380円)である。その内訳は次のとおりで 万4540円)参加人県政が253万5849円(平成15年度125万8349円,平成16年度62万3120円,平成17年度65万4380円)である。その内訳は次のとおりである(単位・円)。〔新聞購読料〕 〔議員連盟費〕 〔設備工事費〕 〔街宣車リース料〕参加人自民 56,835 1,457,000 3,338,959 0参加人民主 117,200 0 257,800 0 参加人公明 197,840 0 88,200 46,500参加人県政 39.120 1,372,000 1,124,729 0b 平成18年度の政務調査費(新聞購読料等を含む。)については,返還所要額は,参加人自民が3948万1265円参加人民主が1894万9484円参加人公明が760万0082円参加人県政が691万7730円であり,その算出方法は次のとおりである(単位・円)。すなわち,監査対象支出額は交付確定額に自己負担額を加えた金額であり,目的外支出額から自己負担額を差し引いた金額が返還所要額である。〔監査対象支出額〕 〔交付確定額〕 〔自己負担額〕 〔目的外支出額〕参加人自民 265,606,204 265, 〔監査対象支出額〕 〔交付確定額〕 〔自己負担額〕 〔目的外支出額〕参加人自民 265,606,204 265,530,000 76,204 39,557,469参加人民主 198,413,708 179,670,000 18,743,708 37,693,192参加人公明 70,262,887 69,960,000 302,887 7,902,969参加人県政 87,547,194 82,680,000 4,867,194 11,784,924c 平成15年度から平成17年度まで(平成15年5月から平成18年3月まで)の政務調査費については,新聞購読料等を除き監査を行っていないが,当該各年度についても,平成18年度の監査結果から,新聞購読料等以外に目的外支出があると推測される。したがって,各会派において,本件監査基準を参考に,今後当該各年度の政務調査費に係る支出を精査し,目的外支出が認められたときは自主的に返還することを要望する。 参加人らによる政務調査費の一部の返還(甲14)参加人らは,本件監査結果を受け,平成20年3月31日までに,政務調査費収支報告書を修正した上,政務調査費として支出したものの中に目的外 支出があったとしてこれを県に返還した。監査委員は,同年6月30日付けで,原告らを含む請求人に対し,本件監査結果の措置状況としてこれを通知した。参加人らが返還した金額は次のとおりであり,本件監査結果において監査委員が目的外支出であると判断した金額(平成15年度から平成17年度までの新聞購読料等の返還所要額と平成 てこれを通知した。参加人らが返還した金額は次のとおりであり,本件監査結果において監査委員が目的外支出であると判断した金額(平成15年度から平成17年度までの新聞購読料等の返還所要額と平成18年度の返還所要額の合計額)と同じである。参加人自民 4433万4059円参加人民主 1932万4484円参加人公明 793万2622円参加人県政 945万3579円 本件訴えの提起原告らは平成20年4月4日,本件監査結果を不服として本件訴えを提起した。原告らの主張の要旨は,被告は参加人らに対し,不当利得返還請求権に基づき,原告らの主張する目的外支出額とその遅延損害金を請求すべきであるというものである。 3 争点及び当事者の主張本件の主な争点は次のとおりであり,当事者の主張は,ここに掲げるほか,後記第3において必要に応じて摘示する。 適法な住民監査請求前置の有無(被告の主張)本件監査請求のうち平成15年度から平成17年度までの政務調査費に関する部分については,監査委員は,新聞購読料等についてのみ,個別的,具体的に目的外支出を特定しているとして監査の対象とし,それ以外は監査の対象としなかった。この新聞購読料等は全て返還済みであり,本件訴えの対象となっていない。したがって,本件訴えのうち平成15年度から平成17 年度までの政務調査費に関する部分は,適法な住民監査請求を経ていないから,不適法である。(参加人民主及び同県政の主張)本件監査結果において,監査委員は,新聞購読料等についてのみ監査対象が特定されており,それ以外は監査対象が特定されていないとしており,その判断は正当である。要するに,本件監査請求は,新聞購 本件監査結果において,監査委員は,新聞購読料等についてのみ監査対象が特定されており,それ以外は監査対象が特定されていないとしており,その判断は正当である。要するに,本件監査請求は,新聞購読料等を除いては,過去4年度にわたって政務調査費に関するあらゆる事項につき各会派に違法支出がないかをチェックせよという全般的,抽象的な請求であり,請求が特定しないのは当然のことである。そして,新聞購読料等は全て返還済みであり,本件訴えの対象となっていない。したがって,被告の指摘する平成15年度から平成17年度までの政務調査費に関する部分にとどまらず,平成18年度の政務調査費に関する部分も含めて,本件訴えは全て適法な住民監査請求の前置を欠き不適法である。(原告らの主張)会計帳簿や領収書等を直接確認することができない原告らが参加人らの違法支出を個別的に摘示することは不可能である。政務調査費の支出のように複数件数の支出が明らかである場合,支出全体を一体として本件条例で定める使途基準等に基づき支出の適否の判断をすることになるから,全支出を1件1件他の行為と区別し特定して認識できるよう個別・具体的に提示することまでは求められていないと解すべきである。原告らは,本件監査請求において,各会派の支出をそれぞれ一体としてその違法支出の存在を問うたのであるし,収支報告書の中から抽出できたものについては使途基準に反する個別的支出の存在を明らかにするなど,参加人らの各年度の違法支出につき可能な限りの特定を行った。だからこそ監査委員は平成18年度分に限ってではあるが全面的な監査を行わざるを得なかったと考えられる。したがって,平成18年度の政務調査費についてはもとよ り,平成15年度から平成17年度までの政務調査費についても, に限ってではあるが全面的な監査を行わざるを得なかったと考えられる。したがって,平成18年度の政務調査費についてはもとよ り,平成15年度から平成17年度までの政務調査費についても,新聞購読料等に関する部分に限らず,その全体について監査対象の特定に欠けるところはなかったというべきであり,本件監査請求は適法である。 本件訴えの請求の特定性(参加人民主及び同県政の主張)原告らの請求は,訴訟上の請求として特定していない。平成18年度の政務調査費に関する請求についてこの主張が採用されないとしても,平成15年度から平成17年度までの政務調査費に関する請求については明らかに特定を欠くというべきである。すなわち,原告らは,平成15年度から平成17年度までの政務調査費(新聞購読料等を除く。)につき,個々の支出を一つ一つ摘示して不当利得となる理由を示すことをせず,請求の項目ごとに目的外支出の金額を示すのみであり,かつ,これらについては監査委員による監査の対象ともされていないのであるから,実質的な当事者である参加人らにおいて何が問題となっているか分からず,有効な反論を行うことも困難であるから,特定性を認める余地はないのである。したがって,原告らの請求は特定されていないから,本件訴えは不適法である。 目的外支出の範囲(平成18年度)(原告らの主張)参加人らの平成18年度の政務調査費のうち監査委員が本件監査基準に従い目的外支出と判断したものについては,原告らはその目的外支出との判断を援用し,全額目的外支出であると主張する。もっとも,これについては既に参加人らは県に返還済みであり,本件訴えの対象となっていない。これに対し,監査委員が本件監査基準に従い,按分を要する支出とした上で,支出額 支出であると主張する。もっとも,これについては既に参加人らは県に返還済みであり,本件訴えの対象となっていない。これに対し,監査委員が本件監査基準に従い,按分を要する支出とした上で,支出額の10分の1の範囲で目的外支出と判断したもの,具体的には, ①自動車リース料,②ホームページ作成・保守費,③政務調査活動の割合が明らかでない事務所費,事務費等(家賃,駐車場代,光熱水費,テレビ受信料,通信費〔電話料金,ファックス料金,インターネット通信料等〕,事務機器のリース料等),④人件費(本件監査基準の第1の6,第2の6,第2の7,第2の8,第2の9参照)については,按分割合を10分の1とした根拠が明らかでないのでこれを採用せず,議長会報告,裁判例,他の地方公共団体の住民監査請求において示された監査基準,さらには公金支出についての社会通念や社会規範をベースにして,10分の3という按分割合を採用し,支出額の少なくとも10分の3は目的外支出であると主張する。したがって,10分の3に相当する額と10分の1に相当する額の差額を参加人らは県に返還すべきであり,原告らは本件訴えにおいて被告がこれを参加人らに請求することを求める。原告らの主張する金額をまとめたものが別紙4「平成18年度按分対象支出原告ら返還請求額」である。本件監査結果において監査委員が10分の1の割合で按分する必要があると認めた支出の合計額が同表の「A 按分対象支出額」であり,このうち監査委員が目的外支出と判断したものが「B/10按分額」であるが,原告らは,「C 3/10按分額」が目的外支出であると主張し,その差額である「D 返還請求額(B-C)」を本件訴えの対象とする。(参加人自民の主張)本件監査基準の設定した10分の1 らは,「C 3/10按分額」が目的外支出であると主張し,その差額である「D 返還請求額(B-C)」を本件訴えの対象とする。(参加人自民の主張)本件監査基準の設定した10分の1という基準には次のとおりそれ自体問題があり,これを超える目的外支出があるとする原告らの主張には理由がない。ア議員の政治活動は,個人の政治活動のほか政治団体を通じて行われるものがあり,政治団体の支出である経常経費や政治活動費は政治団体が寄附や事業などで得る収入で賄われているのであって,これは政治資金規正法 によって制度的に担保されている。したがって,届出されている政治団体の経費に政務調査費を流用するということは一般に考えられず,政務調査活動と政治団体活動の按分という議論はそもそも成り立たない。イホームページ作成・保守費については,個人の利用実態を考慮せずに一律10分の1を目的外とすることは相当でない。ウ事務所費・事務費・人件費については,県議会議員の活動のうち後援会活動や政党活動の占める割合は極めて低く,政務調査活動の割合が10分の9を超えないという見解は相当でない。事務所を賃借している議員については,政党活動及び後援会活動の事務所使用の比率は極めて低く,政務調査活動のための使用がそのほとんどを占め,10分の9以上を占めるのが実際というべきであるし,政治団体等が使用する場合は使用割合によって事務所費等の負担割合を計算している。その場合,家賃については政務調査費に全て計上する一方,人件費や光熱水費,事務所諸経費等を政治団体等が負担するなどして全体で按分負担するという方法もある。そもそも,後援会活動や政党活動が行われる場合,その経費及び政治活動費は政治団体が独自に集めた会費や寄附金などの政治資金か 諸経費等を政治団体等が負担するなどして全体で按分負担するという方法もある。そもそも,後援会活動や政党活動が行われる場合,その経費及び政治活動費は政治団体が独自に集めた会費や寄附金などの政治資金から支出しており,政務調査費を充てることはない。(参加人民主の主張)10分の1の範囲を超えて目的外支出があるとする原告らの主張には次のとおり理由がない。ア事務所費,事務費及び人件費について政務調査費からの支出を計上している事務所は,政務調査のために設置され,政務調査活動のために使用される。後援会活動は年数回の催しが主なもので,事務所,事務員等を使用して行われるのはその参加確認,参加申込みへの対応等に限られる。後援会の会合はホテル,集会場等で行われ,上記事務所内で行われることはほとんどない。したがって,政務調査費と  して支出した事務所費,事務費に占める後援会活動の割合は無視できる程度のものである。選挙活動は選挙期間に限られ,運動期間は9日に限られる上,選挙事務所を別途賃借するのが通例で,政務調査費からの支出を計上している事務所で選挙活動を行い,あるいは事務員を使うことはほとんどない。政党活動は政党支部事務所を拠点として行われ,議員の事務所とは完全に区分されており,議員の事務所で政党活動が行われることはない。 以上によれば,事務所費,事務費,人件費については全額が政務調査費として認められるべきであり,按分割合を設定すること自体妥当といえず,少なくとも本件監査結果に示された10分の1を超えた範囲が目的外支出とされることはない。イ自動車リース料について各議員は,政党活動のためには政党支部の自動車,選挙活動のためには選挙用の自動車を利用しており,後援会活動のために議員の自動車 外支出とされることはない。イ自動車リース料について各議員は,政党活動のためには政党支部の自動車,選挙活動のためには選挙用の自動車を利用しており,後援会活動のために議員の自動車を利用することも考えられない。政務調査活動のためにリースした自動車を政務調査活動以外に使用することは,政務調査活動の帰りに葬儀がある場合に式場に出向くなどのことに限られ,極めてまれなことであり,私的利用として按分の対象とするのは妥当とはいい難い。したがって,本件監査結果が示した10分の1という按分割合を超えた範囲が目的外支出となることはない。(参加人公明の主張)参加人公明は,次の範囲で本件監査結果を争い,これをもって原告らの主張に対する反論とする。ア事務所費及び事務費について参加人公明の議員は後援会活動を行っておらず(後援会組織が存在しても,実態としては後援会活動を行っていない。),後援会活動のために事務所を使用することは一切ない。また,政党活動及び政治活動は公明党神 奈川県本部の事務所を使用しており,議員の個人事務所を使用していない。 したがって,議員の個人事務所は政務調査活動のためにしか使用しておらず,事務所費及び事務費につき政務調査費の目的外支出はない。イ人件費について人件費の支出は,全て,政務調査活動の補助業務を行うために雇用している者又は業務委託している者に対する支払であり,政務調査費の目的外支出はない。ウ自動車リース料について自動車リース料として支出したものは,具体的には広報用自動車使用料であり,このリース自動車は後援会活動にも政党活動にも使用しておらず,全て政務調査活動に使用しているから,政務調査費の目的外支出はない。( 料として支出したものは,具体的には広報用自動車使用料であり,このリース自動車は後援会活動にも政党活動にも使用しておらず,全て政務調査活動に使用しているから,政務調査費の目的外支出はない。(参加人県政の主張)参加人県政は,次の範囲で本件監査基準及び本件監査結果を争い,これをもって原告らの主張に対する反論とする。ア監査の誤り,単純ミス丙1議員の県議会レポートの印刷代とポスティング費用(人件費)については,これを併せて按分しているのに(人件費はそのまま計上したが,印刷代は計上額を低額としている),本件監査結果では按分していない人件費として処理された。また,8万0315円の人件費を誤って80万0315円として処理された。イ本件監査結果について(総論)議員の活動を大きく分けると,議員活動・議会活動,政治活動,政党活動,政務調査活動に分けられる。議員活動・議会活動は議員固有の活動で,議員本人が動くことなので,人件費,事務所費は不要である。そもそも議員活動・議会活動は政務調査活動と強く結び付いており,分割できず按分できない。政治活動は後援会活動,選挙運動が主なものであり,その収支  は政治資金規正法,公職選挙法に基づき県の選挙管理委員会へ収支報告書を提出しており,政務調査費は一切充当されていない。政党活動は,参加人県政は無所属の県議会議員で構成されている会派なので,全く存在しない。したがって,政務調査費として支出したものの全額が政務調査活動に要した支出である。ウ本件監査結果について(各論)自動車リース料,ホームページ作成・保守費,人件費,事務所費及び事務費は,その全額を政務調査費として認めるべきである。なお,各議員において既に自主的に按分して報告したも 果について(各論)自動車リース料,ホームページ作成・保守費,人件費,事務所費及び事務費は,その全額を政務調査費として認めるべきである。なお,各議員において既に自主的に按分して報告したものがあり,これを更に按分することは不当である。宿泊代も,やむを得ないものとして全額を政務調査費として認めるべきものがある。 目的外支出の範囲(平成15年度から平成17年度まで)(原告らの主張)平成15年度から平成17年度までの政務調査費のうち新聞購読料等以外については,監査委員の監査が行われておらず,明細が分からないが,平成18年度と同様,按分すべきものが按分されずに全額政務調査費として計上されていると推定されるので,原告らは,平成18年度の実績をベースにして次のとおり主張する。すなわち,平成18年度の政務調査費につき,監査委員の監査の対象となった支出額と原告らの主張する目的外支出額(監査委員が目的外支出と認めた額すなわち参加人らが返還した額に,原告らが上記において主張する目的外支出額を加えたもの)はそれぞれ次の「監査対象支出額」,「目的外支出額」のとおりであり(単位・円),監査対象支出額のうちに目的外支出額が占める割合は「目的外支出割合」のとおりである。〔監査対象支出額〕 〔目的外支出額〕 〔目的外支出割合〕参加人自民 265,606,204 64,068,351 0.24121556参加人民主 198,413,708 56,677,354 0.28565241  参加人公明 70,262,887 13,338,022 0.18983025参加人県 ,354 0.28565241  参加人公明 70,262,887 13,338,022 0.18983025参加人県政 87,547,194 18,822,713 0.21500075そこで,参加人らの平成15年度から平成17年度までの政務調査費につき,収支報告書に記載された支出額に上記「目的外支出割合」を乗じて各年度において推定される目的外支出額を算出し,この額から,監査委員の勧告に従い既に県に返還された新聞購読料等の額を差し引くと,参加人らが県に返還すべきであるのに返還していない目的外支出額が導かれる。原告らは,本件訴えにおいて,被告が参加人らに対しこの額を請求することを求める。これを表の形式で示したのが別紙5「平成15年度~平成17年度原告ら返還請求額」であり,被告が参加人らに請求すべき金額は次のとおりである(単位・円)。〔平成15年度〕 〔平成16年度〕 〔平成17年度〕参加人自民 59,192,721 64,549,574 63,330,267参加人民主 36,441,677 50,142,690 52,676,470参加人公明 12,261,350 13,480,453 13,299,682参加人県政 13,588,613 18,234,081 17,256,978(参加人らの主張)参加人らは,平成18年度の政務調査費に関する参加人らの主張と同じく,本件監査基準及び本件監査結果を争い,平成15年度から平 17,256,978(参加人らの主張)参加人らは,平成18年度の政務調査費に関する参加人らの主張と同じく,本件監査基準及び本件監査結果を争い,平成15年度から平成17年度までの政務調査費に目的外支出が存在することを否定する。(参加人自民の追加の主張)県議会議員にとって,飲食を伴う会合や会費を徴収する会合も貴重な意見交換や情報収集の場であり,このような場にこまめに顔を出すことこそ政務調査活動の本旨といえる。何をもって常識的な金額の範囲内とするかについては事情をよく知る議員や会派の判断を尊重すべきであり,飲食を伴うから全て目的外とする見解や,会費の実態を考慮することなく業界団体会議参加 費について一律に5000円という上限額を設けた本件監査基準は,相当とはいえない。(参加人県政の追加の主張)本件監査基準が食糧費について1500円を超える部分を目的外支出としたことは不当であり,月額1万円を超える茶菓代を目的外支出としたことも不当である。また,新聞購読料については全額を政務調査費として認めるべきである。 違法に財産の管理を怠る事実の有無(原告らの主張)参加人らは,平成15年度から平成18年度までの政務調査費の一部を違法に支出し,これにより県に対し不当利得返還義務を負ったにもかかわらず,被告はその不当利得返還請求権の行使を違法に怠っている。本件条例に被告の調査権を認める定めがなくても,被告には財政支出の一環である政務調査費について調査すべき権限と義務がある(自治法148条,149条2号,5号,6号)。政務調査費の不正流用が問題となった他の地方公共団体の例に鑑みても,被告は参加人らの政務調査費の支出についてその内容の正当性, 査すべき権限と義務がある(自治法148条,149条2号,5号,6号)。政務調査費の不正流用が問題となった他の地方公共団体の例に鑑みても,被告は参加人らの政務調査費の支出についてその内容の正当性,適法性を疑い,具体的な調査を開始すべき職務上の義務があった。本件監査結果において監査委員が目的外支出と認定した平成18年度の政務調査費の一部と平成15年度から平成17年度までの新聞購読料等については,被告が参加人らに対する返還請求を怠っていた事実は既に監査委員が認定しているところである(ただし,これらは全て返還済みである。)。また,平成15年度から平成17年度までの政務調査費についても,監査委員は新聞購読料等以外にも目的外支出があると推測し,各会派がこれを自主的に返還することを要望するとしているのであり,少なくとも本件監査結果を受けて被告は直ちに調査権を行使する義務があった。 (被告の主張)本件条例において,被告の役割は,県議会議長から送付された各会派の政務調査費の収支報告書の写しを確認することにあり,会計帳簿を検査する等の権限はないから,収支報告書に明らかに計算違いや目的外の支出と認められる記載がある場合はともかく,そうでない場合,政務調査費の収支は適正であると判断せざるを得ない。参加人らの平成15年度から平成18年度までの政務調査費収支報告書を見ても,上記のような記載はなく,参加人らの政務調査費の収支が適正であると被告が判断したことに何の違法もないから,不当利得返還請求権等の行使を違法に怠った事実はない。また,原告らのいうように政務調査活動の割合が明らかでない事務所費,事務費等についての按分の割合まで被告が調査し,適正な範囲を超える支出について返還を請求すべきであるとなると,被告は,議員 また,原告らのいうように政務調査活動の割合が明らかでない事務所費,事務費等についての按分の割合まで被告が調査し,適正な範囲を超える支出について返還を請求すべきであるとなると,被告は,議員の政務調査活動のみならず,議会活動,政党活動,私生活に要する経費といった議員の生活全般を調査する権限を有することになる。しかし,執行機関から議会への監視・関与についてはできる限り抑制的でなければならず,過剰な干渉は排除すべきであるという政務調査費制度の要請を踏まえれば,そのような調査権限まで被告が持たないことは明らかである。 附帯請求の可否(原告らの主張)本件条例13条1項によれば,参加人らは交付を受けた政務調査費のうち目的外支出をした部分に相当する額を各年度の翌年度の5月31日までに返還しなければならないのであり,これに従い遅延損害金を支払う義務を負う。(参加人らの主張)仮に参加人らに不当利得返還義務が認められるとしても,これは期限の定めのない債務であり,参加人らは県から履行請求をされたことはないから遅滞に陥っておらず,遅延損害金を支払う義務はない。 第3 争点に対する判断 1 認定事実証拠等(括弧内掲記のもの)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 川崎市議会の政務調査費に関する住民監査請求とその帰趨(甲40,41,当裁判所に顕著な事実)川崎市の住民である原告甲1及び同甲2は,本件監査請求に先立ち,川崎市議会の会派等の平成15年度から平成18年度までの政務調査費の支出に目的外支出があるとして,他の川崎市住民とともに平成19年8月29日付けで川崎市の監査委員に対し本件監査請求と同様の住民監査請求をした。川崎市の監査委員は,この請求に応じ,監査委員の 費の支出に目的外支出があるとして,他の川崎市住民とともに平成19年8月29日付けで川崎市の監査委員に対し本件監査請求と同様の住民監査請求をした。川崎市の監査委員は,この請求に応じ,監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを決定し,当該契約を締結した者(個別外部監査人)は,監査を行ってその結果を監査委員に提出した。これによると,川崎市議会の次の4つの会派が平成15年度から平成18年度までに支出した政務調査費にはそれぞれ合計で次のとおりの目的外支出があったと認定されていた(甲40の別表B)。自由民主党川崎市議会議員団 1億2105万4961円民主党川崎市議会議員団 5642万1415円公明党川崎市議会議員団 5581万3146円日本共産党川崎市議会議員団 875万6265円〔年度ごとの内訳〕自由民主党川崎市議会議員団平成15年度 2928万2877円平成16年度 2811万9415円平成17年度 3327万3146円平成18年度 3037万9523円 民主党川崎市議会議員団平成15年度 1340万7754円平成16年度 1412万3003円平成17年度 1504万5096円平成18年度 1384万5562円公明党川崎市議会議員団平成15年度 1522万6331円平成16年度 1724万2397円平成17年度 1716万5218円平成18年度 617万9200円日本共産党川崎市議会議員団平成15年度 171万6277円平成16 6年度 1724万2397円平成17年度 1716万5218円平成18年度 617万9200円日本共産党川崎市議会議員団平成15年度 171万6277円平成16年度 251万2376円平成17年度 219万0938円平成18年度 233万6674円個別外部監査人は,上記の監査をするに当たり判断基準を設定し,その中で,「按分について」として,「ある一つの活動に,市政の調査研究活動とそれ以外の活動とが混在する場合には,実績等が明らかな場合には当該実績に基づいて按分割合を定め,その限度で認め,その余を目的外支出とする。 実績等が明らかでない場合には,社会通念や条理に基づいて按分割合を定める」とした(甲40の23頁)。そして,個々の項目についてもこの判断基準に従って検討を加え,政務調査活動とその他の活動が混在し,かつ,実績等が明らかでない場合は,事情に応じ,支出額の10分の3,10分の1といった割合に相当する額を目的外支出とした。監査委員は,平成19年11月27日付けで監査結果を取りまとめ,個別外部監査人による上記監査結果を是認した。そして,平成17年度分及び平 成18年度分については上記4会派にその返還を求めるなどの措置を採るよう川崎市長に勧告したが,平成15年度分及び平成16年度分については,市政全般を勘案の上で市長がその返還請求を行わないことは自治法242条1項にいう「怠る事実」に当たらないとして,勧告を行わなかった。これを受け,日本共産党川崎市議会議員団は,目的外支出と認定された平成15年度から平成18年度までの政務調査費全額を川崎市に返還したが,自由民主党川崎市議会議員団,民主党川崎市議会議員団及び公明党川崎市議会議員団は,平成17年度分及び平成18 外支出と認定された平成15年度から平成18年度までの政務調査費全額を川崎市に返還したが,自由民主党川崎市議会議員団,民主党川崎市議会議員団及び公明党川崎市議会議員団は,平成17年度分及び平成18年度分については返還したものの,平成15年度分及び平成16年度分は返還しなかった。原告甲1及び同甲2らは監査委員の上記監査結果を不服として横浜地方裁判所に自治法242条の2第1項4号の住民訴訟を提起した(当庁平成19年(行ウ)第105号)。同裁判所は,平成24年1月18日,個別外部監査人の目的外支出の認定を正当とするとともに,平成15年度分及び平成16年度分の目的外支出相当額について返還の勧告をしなかった監査委員の判断を不当とし,川崎市長に対し,自由民主党川崎市議会議員団,民主党川崎市議会議員団及び公明党川崎市議会議員団にこれらの返還を請求するよう求める判決を言い渡した。監査結果よりも高額の目的外支出があるとして請求を立てていた原告甲1及び同甲2らはその請求の全部が認容されなかったことを不服として東京高等裁判所に控訴したが,その後控訴を取り下げ,横浜地方裁判所の上記判決は確定した。 本件監査請求とこれに対する監査委員の対応(甲1,2,7,8の1~3,9)本件監査請求をするに当たり,原告らは,自治法242条1項にいう「財産の管理を怠る事実」を証する書面として,参加人らの平成15年度から平成18年度までの政務調査費収支報告書のほか,議長会報告,他の地方公共団体の政務調査費に関する裁判例,さらに上記の川崎市議会の政務調査費 に関する個別外部監査人による監査結果等を監査請求書に添付した。監査委員は,平成20年1月22日に原告らの陳述を聴いたほか,監査対象箇所として県の議会局総務課の調査を実施し,さらに,県議会の に関する個別外部監査人による監査結果等を監査請求書に添付した。監査委員は,平成20年1月22日に原告らの陳述を聴いたほか,監査対象箇所として県の議会局総務課の調査を実施し,さらに,県議会の会派の団長及び政務調査費経理責任者等に対し関係人調査を実施した。また,学識経験者として公認会計士及び大学准教授各1名から政務調査費の使途基準について意見を聴取した。監査委員は,本件監査結果において,関係人調査につき,「政務調査費監査責任者は,会派に交付する政務調査費の収入及び支出について監査を行わなければならないが,関係人から状況を聴取したところ,会派によっては政務調査費監査責任者の監査は形式的な審理にとどまっていた」,「政務調査費条例〔本件条例〕で会計帳簿の様式が定められていないこともあり,多くの会派で政務調査費の交付対象となる9項目ごとの経費の整理,分類にとどまり,政務調査費条例の趣旨に則った会計帳簿は提出されなかった」と述べている。このような状況であったものの,監査の過程で,監査委員は,参加人ら及びその所属議員による政務調査費の支出を個別に特定し,領収書による裏付けがあるか否か,その支出がいかなる性格のものか等を具体的に審査し,本件監査基準に従って目的外支出か否かを判断した。 政務調査費の按分の考え方ア県議会の「政務調査費事務処理の手引き」(甲24) 本件で問題とされている年度より後のことであるが,平成20年神奈川県条例第3号により本件条例が改正され,平成20年度からは,政務調査費の収支報告書とともに当該収支報告書に記載された政務調査費による支出に係る領収書その他の証拠書類の写しを県議会の議長に提出するものとされている。県議会は,これに伴い,経理を明確にし,適正な取扱いを期するとして,「政務調査 収支報告書に記載された政務調査費による支出に係る領収書その他の証拠書類の写しを県議会の議長に提出するものとされている。県議会は,これに伴い,経理を明確にし,適正な取扱いを期するとして,「政務調査費事務処理の手引き」(以下「手引き」という。)を作成し,平成20年4月1日から適用している。   手引きは,「政務調査費充当の基本的考え方」を示しており,その部分を抜粋すると下記のとおりである。記 1 執行にあたっての原則政務調査費の執行にあたっては,県政等に関する調査研究,情報収集等に要した経費の実費に充当するものであり,次に掲げる項目に留意のうえ,会派(議員)の責任において適切に処理するものとする。〈政務調査費の執行にかかる留意点〉① 県政に関する課題や問題点に関する活動であること② 調査研究活動の必然性があり,その方法や経費に妥当性があること③ 適正な執行手続きがされていること④ 支出を証明する証拠書類等が整備,保管されていること 2 実費弁償の原則政務調査費は,法律及び条例の規定に基づき,会派又は議員に対して調査研究に要する経費として交付されるものであることから,実費弁償を原則とする。 3 政務調査活動と他の議員活動等が混在する場合の按分指針会派及び議員の活動は,議会活動,政党活動,選挙活動等と多彩であり,1つの活動が政務調査活動と他の議員活動等の両面を有し,渾然一体となっていることが多く,明確に区分することが困難であると考えられる。このことから,活動に要した費用の全額に政務調査費を充当することが不適当であることが明らかな場合は,時間割合やその他合理的な方法で按分するものとする。 この場合,按分を要する項目 のことから,活動に要した費用の全額に政務調査費を充当することが不適当であることが明らかな場合は,時間割合やその他合理的な方法で按分するものとする。 この場合,按分を要する項目等の按分割合は,会派又は議員の活動実態によって異なることから,一律に比率を示すことが困難であり,政務調査費の交付を受けた会派又は議員のそれぞれの責任において,当該会派(議員)の政務調査活動の実態に応じ,次の按分方法〈例〉を参考にしながら,合理的に説明できる比率を定めて用いるものとする。按分方法〈例〉調査研究活動(A)調査研究活動(A)+その他の議員活動〈後援会・政党活動等〉(B) 手引きは,上記の「基本的考え方」を踏まえて「経費別の支出にあたっての運用指針」を示し,各経費の支出に当たり,その内容が政党活動や後援会活動などと混在する場合については,上記の按分指針に基づき按分するものとしている。イ議長会報告(甲22,丙D45)議長会報告は,政務調査費に関する自治法の規定が平成13年4月1日に施行されたことを踏まえ,全国都道府県議会議長会が政務調査費の具体的な使途について内部で検討を加えた上で,全国一律の基準を設定することには無理があるが,具体的問題事例についての基本的な考え方を示し,各県議会における運用に際しての一つの判断材料を提供するとして,同年10月16日付けでその検討結果を示したものである。議長会報告においては,政務調査費の使途基準をどのように運用すべきかが検討されており,議員に交付される政務調査費のうち事務所費,事務費,人件費等について,按分の考え方が明瞭に示されている。その内容は次のとおりである。 総論(他の活動と どのように運用すべきかが検討されており,議員に交付される政務調査費のうち事務所費,事務費,人件費等について,按分の考え方が明瞭に示されている。その内容は次のとおりである。 総論(他の活動との峻別)調査研究活動と他の議員活動は理論的には区別できるが,実際の活動  においては一つの活動が調査研究活動と他の議員活動の両面を有し渾然一体となっていることが多く,また,1回の出張の中で二つの活動が行われる場合などもあり,これらを整然と峻別することが困難であることが多いと考えられる。このような場合における政務調査費の事務所費,事務費,人件費等への充当については,実績を考慮して按分すべきものと考える。 調査研究費(交通費・自動車)議員活動は多面性を有するので,交通費を按分して支出せざるをえない。按分率は個人により異なるので,全国一律の割合を示すことは不可能である。個々の議員が数か月の活動実績に応じて適切な按分比率を見いだしていく方がより実態に適うものであると考える。 事務所費(按分)議員活動は多面性を有するので,按分して支出せざるをえない。按分率は個人により異なるので,全国的な一律の割合を示すことは不可能である。個々の議員が数か月分の活動実績に応じて適切な按分比率を見いだしていく方がより実態に適うものであると考える。後援会事務所と共用の場合は,可能な限り事務所の賃貸契約,電話,ガス,水道等の契約を分離することが望ましいが,手続的に困難な場合は,現に調査研究活動に当てられている実態に応じて按分することになろう。 事務費(按分)議員活動は多面性を有するので,按分して支出せざるをえない。按分率は個人により異なる。考え方は,事務所費の按分の際と同じである。 人件費(一般)専ら政務 う。 事務費(按分)議員活動は多面性を有するので,按分して支出せざるをえない。按分率は個人により異なる。考え方は,事務所費の按分の際と同じである。 人件費(一般)専ら政務調査活動に従事しているのであれば全額支給できると考えるが,常時雇用において他の用務にも従事している場合は按分すべきものと考える。   人件費(按分)議員活動は多面性を有するので,按分して支出せざるをえない。按分率は個人により異なる。考え方は,事務所費の按分の際と同じである。 2 争点(住民監査請求前置) 住民監査請求における請求の対象の特定の有無についての判断基準判例(最三小判平成2年6月5日・民集44巻4号719頁,最一小判平成16年11月25日・民集58巻8号2297頁,最三小判平成18年4月25日・民集60巻4号1841頁)によれば,住民監査請求における請求の対象の特定の有無についての判断基準は次のとおりである。住民監査請求においては,その対象が特定されていること,すなわち,対象とする財務会計上の行為又は怠る事実(以下「当該行為」という。)が他の事項から区別し特定して認識することができるように個別的,具体的に摘示されていることを要する。しかし,その特定の程度としては,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等を総合して,住民監査請求の対象が特定の当該行為であることを監査委員が認識することができる程度に摘示されているのであれば,これをもって足り,上記の程度を超えてまで当該行為を個別的,具体的に摘示することを要するものではない。また,対象となる当該行為が複数であるが,当該行為の性質,目的等に照らしこれらを一体とみてその違 て足り,上記の程度を超えてまで当該行為を個別的,具体的に摘示することを要するものではない。また,対象となる当該行為が複数であるが,当該行為の性質,目的等に照らしこれらを一体とみてその違法性又は不当性を判断するのを相当とする場合には,対象となる当該行為とそうでない行為との識別が可能である限り,個別の当該行為を逐一摘示して特定することまでが常に要求されるものではない。なお,前掲最三小判平成2年6月5日は次のように判示しており,これからすると,「個別的,具体的」に摘示されていることを要するという場合の個別性,具体性はかなり程度の高いものが想定されているようにもみられな いではない。「〔自治法242条1項の〕規定は,住民に対し,当該普通地方公共団体の執行機関又は職員による一定の具体的な財務会計上の行為又は怠る事実(以下,財務会計上の行為又は怠る事実を「当該行為等」という。)に限って,その監査と非違の防止,是正の措置とを監査委員に請求する権能を認めたものであって,それ以上に,一定の期間にわたる当該行為等を包括して,これを具体的に特定することなく,監査委員に監査を求めるなどの権能までを認めたものではないと解するのが相当である。けだし,〔自治〕法が,直接請求の一つとして事務の監査請求の制度を設け,選挙権を有する者は,その総数の50分の1以上の者の連署をもって,監査委員に対し,当該普通地方公共団体の事務等の執行に関し監査の請求をすることができる旨規定している(75条)ことと対比してみても,また,住民監査請求が,具体的な違法行為等についてその防止,是正を請求する制度である住民訴訟の前置手続として位置付けられ,不当な当該行為等をも対象とすることができるものとされているほかは,規定上その対象となる当該行為等について な違法行為等についてその防止,是正を請求する制度である住民訴訟の前置手続として位置付けられ,不当な当該行為等をも対象とすることができるものとされているほかは,規定上その対象となる当該行為等について住民訴訟との間に区別が設けられていないことからみても,住民監査請求は住民一人からでもすることができるとされている反面,その対象は一定の具体的な当該行為等に限定されていると解するのが,法の趣旨に沿うものといわなければならない。さらに,〔自治〕法242条1項が,監査請求は,違法又は不当な当該行為等があることを証する書面を添えてすべきものと規定し,同条2項が,監査請求は,当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは,正当な理由があるときを除き,これをすることができないと規定しているのは,住民監査請求の対象となる当該行為等が具体的に特定されることを前提としているものとして理解されるのである」。しかし,この判示は,上記の判断基準を導き出すための前提として住民監査請求の制度趣旨を説明した部分であって,判断基準自体を示したものではない。そして,判例における判断基準の中核は,「住民監査請求の対象が特定の当該行為(財 務会計上の行為又は怠る事実)であることを監査委員が認識することができる程度に摘示されているか否か」にあり,前掲最三小判平成2年6月5日の判示がこれと異なる趣旨をいうものでないことは,前掲最一小判平成16年11月25日及び最三小判平成16年12月7日・裁判集民215号869頁において繰り返し説示されているとおりである。以下,この判断基準に照らして検討する。 不当利得返還請求権の発生原因原告らは,本件監査請求において,平成15年度から平成18年度までに参加人らに交付された政務調査費のうち原 以下,この判断基準に照らして検討する。 不当利得返還請求権の発生原因原告らは,本件監査請求において,平成15年度から平成18年度までに参加人らに交付された政務調査費のうち原告らが目的外支出であると主張する金額に相当する額につき被告が参加人らに対して返還請求をしていないことを問題とし,被告に対し参加人らへ返還請求することを勧告するよう監査委員に求めていた。本件訴訟における原告らの法的主張を併せて考慮すると,原告らは,本件監査請求において,上記の目的外支出相当額につき,被告が参加人らに対して有する不当利得返還請求権の行使を怠っていること,すなわち不当利得返還請求権という財産の管理を「怠る事実」(自治法242条1項)を,監査の対象としていたのであると解することができる。さらにその不当利得返還請求権の発生原因に関する主張をみると,原告らは,本件監査請求において,新聞購読料等についてはその個々の項目を具体的に示してこれが目的外支出であると主張したが,それ以外の経費については,包括的に少なくともその10分の3が目的外支出であると主張するにとどまっていた。原告らのこの主張について検討するに先立ち,本件条例の下でいかなる場合に政務調査費に関する不当利得返還請求権が発生するのかをみる。本件条例9条及び本件規程5条によれば,政務調査費の交付の対象となる経費は,①調査研究費,②研修費,③会議費,④資料作成費,⑤資料購入費,⑥広報費,⑦事務所費,⑧事務費,⑨人件費の9種類とされており,本件規 程別表がこれらの経費ごとにその具体的な使途を定めている。また,本件条例13条1項によれば,政務調査費の交付を受けた会派は,当該年度におけるその総額から,当該年度において行った政務調査費による支出( 程別表がこれらの経費ごとにその具体的な使途を定めている。また,本件条例13条1項によれば,政務調査費の交付を受けた会派は,当該年度におけるその総額から,当該年度において行った政務調査費による支出(上記各経費に係る支出)の総額を控除して残余がある場合には,当該残額に相当する額を翌年度の5月31日までに返還しなければならないとされている。これらの規定によると,政務調査費による支出の対象は本件規程別表に具体的に定められた使途に限定されているというべきである。政務調査費の交付を受けた会派及びこれに所属する議員は,本件規程別表に定められた使途以外の目的のためにその政務調査費を支出をすることは許されず,万一そのような支出すなわち目的外支出をした場合,その支出は本件条例13条1項にいう「政務調査費による支出」に当たらないと解される。その場合,当該会派は,同項により,目的外支出に相当する額を当然に不当利得として当該年度の翌年度の5月31日までに県に返還する義務を負うといわなければならない。このことを前提として,以下,原告らが本件監査請求において主張した「怠る事実」の根拠となる不当利得返還請求権の発生原因(ただし,新聞購読料等を除く。)について検討を進める。 支出額の10分の3を違法とする主張の趣旨と住民監査請求の対象の特定性の有無ア本件監査請求において,原告らは,参加人らに交付された平成15年度から平成18年度までの政務調査費のうち新聞購読料等以外の経費として支出されたものについては,これを包括的に捉えて目的外支出がその少なくとも10分の3以上であると主張した。これはすなわち,支出額の10分の3の範囲で不当利得返還請求権が成立するとの主張である。そこでまず,このように支出額のうちの一定割合につ がその少なくとも10分の3以上であると主張した。これはすなわち,支出額の10分の3の範囲で不当利得返還請求権が成立するとの主張である。そこでまず,このように支出額のうちの一定割合についてのみ不当利得返還請求権が成立するとの主張の当否が問題となる。 上記において検討したとおり,本件条例の下においては,本件規程別表に定められた使途以外のために政務調査費の支出をした場合,その金額の範囲において当然に県に対する不当利得返還義務が発生する。そして,経費の中には,その性格からして,本件規程別表に定められた使途のための支出であるとともに他の使途のための支出であるといわざるを得ないものが存在する。その代表例が議長会報告で取り上げられている交通費,事務所費,事務費及び人件費である。例えば,政務調査活動を行うために事務所を賃借したが,その事務所を議員の政務調査活動以外の活動のためにも使用したという場合,事務所の賃料は,事務所の使用の対価であるから,政務調査費としての支出であるとともにその他の活動に対する支出でもある。このような場合,その経費の中に政務調査費として支出することが許される部分が存在することは明らかであるが,その経費全体を政務調査費として支出するならば,その中に目的外支出が含まれることとなってしまう。この目的外支出については,本件条例13条1項により,やはり不当利得返還義務が発生するといわなければならない。したがって,このような場合は,経費を実態に応じて按分し,政務調査活動に対応する一定割合についてのみ政務調査費としての支出を許すべきである。もっとも,政務調査活動と他の活動が混在する活動に対して支出された経費の全てについて,その実態を容易に明らかにすることができるとは限らな てのみ政務調査費としての支出を許すべきである。もっとも,政務調査活動と他の活動が混在する活動に対して支出された経費の全てについて,その実態を容易に明らかにすることができるとは限らない。政務調査費の交付を受けた会派や議員が,実態に応じた正確な按分割合をもって政務調査費としての支出をするためには,関係する活動全体について正確な記録を残さなければならず,多大な労力を費やすことを要求される。また,そのような記録に基づいて政務調査費の使途を県の監査委員を含めた執行機関に説明しなければならないことがあるとすると,会派や議員の活動の全貌が執行機関に知られることになりかねず,その結果,会派及び議員の活動に対する執行機関や他の会派等からの干渉を招き かねない危険があるというべきである(最一小判平成21年12月17日・裁判集民232号649頁参照)。このような事情を考慮すると,政務調査活動と他の活動との按分割合をどのように定めるべきかについては,その実態を容易に明らかにすることができる場合はその実態に従うべきであるが,そうでない場合は,その活動の性格,経費の性格,当該議員の活動全般の状況,議員一般の活動の実態等を総合的に考慮し,実態を適切に反映すると考えられる割合を推定してこれによることとせざるを得ないと解される。議長会報告も,県において平成20年4月から適用されている手引きも,これと同じ見地から按分の考え方を示しているとみることができる。以上のとおり,ある経費について適切な按分をして政務調査費としての支出が許される部分を定めるべきであると判断される場合,その経費のうち政務調査費としての支出が許されない一定割合について不当利得返還請求権が発生することになる。本件監査請求における原告らの主張はこの 支出が許される部分を定めるべきであると判断される場合,その経費のうち政務調査費としての支出が許されない一定割合について不当利得返還請求権が発生することになる。本件監査請求における原告らの主張はこの趣旨をいうものとして正当である。イ以上を前提に,本件監査請求のうち新聞購読料等以外の経費に関するもの(以下「本件監査請求(按分部分)」という。)における請求の対象の特定性について判断する。本件監査請求(按分部分)における原告らの主張を表面的にみると,新聞購読料等以外の各経費のそれぞれ10分の3について不当利得返還請求権が成立するとして,その部分のみを住民監査請求の対象としているようにも考えられる。しかし,政務調査費として支出された経費のうちに目的外支出が含まれているか否か,含まれているとしてそれが全体の10分の3以上であるか否かは,結局はその支出の全体について監査しなければ明らかにならないことであるから,本件監査請求(按分部分)は,参加人らに交付された政務調査費のうち新聞購読料等以外の経費の全体の支出を包 括して住民監査請求の対象としているというべきである。その意味において原告らは住民監査請求の対象を特定しているといえる。そして,不当利得返還請求権の発生原因事実は当該支出を構成する個々の項目の支出ごとに捉えるべきものであるからおのずから多数存在するが,原告らはその全てについて本来按分すべき経費が按分されていないと主張しているのであるから,当該支出全体を一体とみてその違法性又は不当性を判断するのを相当とする場合に当たる。いい換えれば,住民は,理論的には,個々の項目の支出ごとにその10分の3について不当利得返還請求権が発生すると主張して監査請求をすることが可能であるが(実際には,本件で問題となる平成1 合に当たる。いい換えれば,住民は,理論的には,個々の項目の支出ごとにその10分の3について不当利得返還請求権が発生すると主張して監査請求をすることが可能であるが(実際には,本件で問題となる平成15年度から平成18年度までの政務調査費については,政務調査費の収支報告書を見ただけでは個々の項目を知ることはできず,他にこれを知り得る手段も存在しなかったから,住民が個々の項目を特定することはできなかった。),そのように個々の項目に分解したとしても,監査委員がすべきことは,結局は,主張されている全体の支出を対象として10分の3という按分割合が妥当であるか否かを判断し,不当利得返還請求権の発生の有無を判断することであり,本件監査請求(按分部分)において求められている監査の内容と変わりないのである(本件監査請求に対する監査の過程で作成された個々の支出についての資料を踏まえて原告らが主張を整理した原告らの平成25年3月19日付け準備書面(14)を参照)。 一方,監査委員の側からみても,本件監査請求(按分部分)が,政務調査費として支出されたもののうち新聞購読料等以外の経費の全体の支出を対象としていることを認識することができ,これを対象外の支出と容易に識別することができる。そうすると,原告らは,不当利得返還請求権の発生原因となる個々の項目の支出を逐一摘示して特定することを要求されるものではなく,本件監査請求(按分部分)は,請求の対象の特定に欠けるところはないというべきである。本件監査結果における監査委員の判断は,  上記と異なり請求の対象が特定されていないとしたが,相当でないというべきである。 住民監査請求の制度趣旨からの検討本件監査請求(按分部分)は以上のとおり請求の対象の特定に欠けるところがないが,このように包括 れていないとしたが,相当でないというべきである。 住民監査請求の制度趣旨からの検討本件監査請求(按分部分)は以上のとおり請求の対象の特定に欠けるところがないが,このように包括的な住民監査請求であっても請求の対象の特定に欠けるところはないものとされると,住民としては一定の範囲における財務会計上の行為又は怠る事実の全体を指摘してこれが違法又は不当であると主張すれば足りる一方,監査委員は監査のための過大な負担を負わされることになりかねないから,このような住民監査請求は住民監査請求の制度趣旨を逸脱しこれを濫用するものとして許されないという見解もあり得ると考えられる。そこで,このような見解を考慮してさらに検討を加える。仮設例として,政務調査費の交付を受けたある会派が県議会の議長に提出した当該年度の政務調査費の収支報告書に記載された政務調査費の使途のうち,いくつかの科目自体が本件規程別表に定められた使途以外のものであったという事例を想定する。この場合,前記において検討したところによれば,その科目の支出全額が目的外支出ということになるから,その全額について不当利得返還請求権が成立する。したがって,住民は,当該会派が交付を受けた政務調査費のうち当該科目の全額が目的外支出であることを前提に,当該科目の個々の支出を逐一特定しなくても,不当利得返還請求権の行使を怠る事実があると主張して住民監査請求をすることができるといわなければならない。この住民監査請求における請求の対象は当該年度において当該会派に交付された政務調査費のうち当該科目全額であるが,地方公共団体の住民の手によって地方自治運営の腐敗を防止矯正しその公正を確保するために認められた住民監査請求及び住民訴訟の制度趣旨に照らし,このような住民監査請求が許されることは 科目全額であるが,地方公共団体の住民の手によって地方自治運営の腐敗を防止矯正しその公正を確保するために認められた住民監査請求及び住民訴訟の制度趣旨に照らし,このような住民監査請求が許されることは明らかである。そうすると,少なくとも県議会における政務調査費に目的外支出があることを理由とする住民監査請求につい ては,その請求の対象の範囲が広く包括的であるからといって,それだけでその請求が住民監査請求の制度趣旨を逸脱し濫用したものになるということはできない。たとえ対象の範囲が広く包括的であるとしても,請求の対象が特定しており,かつ,そこにおいて主張される違法性又は不当性を基礎付ける事由が相応の根拠を有するものであって,監査請求書及びこれに添付された事実を証する書面の各記載,監査請求人が提出したその他の資料等によってそれが裏付けられていると認められる限り,その住民監査請求は自治法242条1項の要件を満たす適法なものと解される。これを本件についてみると,本件監査請求(按分部分)において原告らは,参加人ら又はこれに所属する議員が政務調査費として支出した経費の中には,「通常の議員活動,政治活動・後援会活動等に関わる支出が含まれている」ので,その経費は各活動に応じて適切に按分すべきものであり,少なくとも10分の3は政務調査活動以外の活動のために支出された目的外支出であると主張していた。経費を按分して政務調査費として支出することができる金額を確定するという考え方は県議会が作成した手引きに明記されているが,この手引きが作成され適用されたのは平成20年になってからであり,県議会においてそれ以前は政務調査費に関する指針は存在しなかった。このことからすると,平成20年度より前の年度において,県議会の会派及び議員は,必ずしもこの按 れたのは平成20年になってからであり,県議会においてそれ以前は政務調査費に関する指針は存在しなかった。このことからすると,平成20年度より前の年度において,県議会の会派及び議員は,必ずしもこの按分の考え方に従って政務調査費の支出をしておらず,本来按分すべき経費の全額について政務調査費としての支出をしていたと推測することには相応の理由がある。一方,繰り返し指摘するとおり,本件条例の下においては,本件規程別表に定められた使途以外の目的のために会派又は議員が政務調査費からの支出をすれば,それだけで直ちに不当利得返還義務が発生するのであるから,手引きが適用される以前においても,按分すべき経費について按分せずにその全額を政務調査費として支出していたのであれば,当該経費の一定の割合において目的外支出がされたことになり,その限度で  不当利得返還義務が発生する。そして,按分の考え方自体は,自治法の改正によって政務調査費の制度が導入された平成13年4月1日から間もない同年10月に示された議長会報告において明瞭に打ち出されていたのであるから,原告らが問題とした年度のうち最も早い平成15年度において既に,県議会の議員はこれを承知すべきであったといえるのであり,按分の考え方を示す手引き等の指針が存在していなかったとしても,按分すべき経費については本来按分すべきであったことに変わりはない。そうすると,本件監査請求(按分部分)における原告らの主張は,10分の3という按分割合が適切といえるかどうかはともかくとして,平成15年度から平成18年度までに参加人らが政務調査費として支出した経費について按分が行われておらず,その一定の割合において目的外支出が存在し不当利得返還義務が発生していると主張する限りにおいて,相応の根拠を有するものであったといえる 人らが政務調査費として支出した経費について按分が行われておらず,その一定の割合において目的外支出が存在し不当利得返還義務が発生していると主張する限りにおいて,相応の根拠を有するものであったといえる。実際,県の監査委員は,以上と同様に考えたからこそ,最低限平成18年度の政務調査費については本件監査請求(按分部分)に応じて監査を行う必要があると判断し,監査を行ったのであると認められる。そして,本件監査結果において,平成18年度につき,本来按分すべき経費について適切な按分が行われずに政務調査費が支出されていた事例が少なくないことが明らかにされたことは,原告らの主張が正当であったことを示すものである。さらに,本件監査請求に当たっては,川崎市議会の平成15年度から平成18年度までの政務調査費に関し原告甲1及び同甲2らが本件監査請求に先立って平成19年8月に川崎市の監査委員に対して行った住民監査請求に対する個別外部監査人による監査結果が,怠る事実を証する書面として監査請求書に添付されていた。この個別外部監査において,川崎市と契約した個別外部監査人は,按分の考え方を含んだ判断基準を採用し,これに基づき多額の目的外支出を認定しており,川崎市の監査委員はこの監査結果を是認した監査結果を同年11月に取りまとめている。川崎市内の選挙区から選出され  ている県議会の議員と川崎市議会の議員とは,その活動範囲や活動方法等において共通する面を有すると考えられる。川崎市が当時は県内の二つの政令指定都市のうちの一つであり人口も100万人を大きく超える大規模な都市であることからすると,川崎市内の選挙区から選出されている県議会の議員の数は県議会の議員全体の中において相当程度の割合を占め,県議会における影響力は決して小さくないとみられる きく超える大規模な都市であることからすると,川崎市内の選挙区から選出されている県議会の議員の数は県議会の議員全体の中において相当程度の割合を占め,県議会における影響力は決して小さくないとみられる。そうすると,川崎市議会における平成15年度から平成18年度までの政務調査費について,按分の考え方を含む判断基準に従った監査により多額の目的外支出が認められたという事実は,県議会における同じ時期の政務調査費についても同様の判断基準に従った監査をすれば同様に多額の目的外支出が認められるであろうことを一定程度推測させるものとみても,不合理ではない。要するに,平成15年度から平成18年度までに参加人らに交付された政務調査費について,本来按分すべき経費が按分されず,その全額が政務調査費として支出された結果,一定の割合の限度において参加人らの県に対する不当利得返還義務が発生していると考えることには相応の理由があり,この考え方に基づく本件監査請求(按分部分)における原告らの主張には相応の根拠があった。しかも,これは,監査請求書に添付して提出された川崎市議会の政務調査費に関する個別外部監査結果によっても一定程度裏付けられていたといえる。実際に本件監査結果においてもこの原告らの主張に理があったことは明らかにされている。加えて,本件で,監査委員が原告らの監査請求を上記趣旨に沿って監査することで多大な負担を負うこととなる事情は,見いだし難い。以上の事情を総合的に考慮すると,本件監査請求(按分部分)は,請求の対象を広く包括的に捉えたものであるとはいえ,住民監査請求の制度趣旨を逸脱しこれを濫用するものとはいえず,自治法242条1項の要件を満たす適法なものというべきである。  まとめ本件監査請求(按分部 はいえ,住民監査請求の制度趣旨を逸脱しこれを濫用するものとはいえず,自治法242条1項の要件を満たす適法なものというべきである。  まとめ本件監査請求(按分部分)は,平成15年度から平成18年度までの政務調査費の全てについて,請求の対象の特定に欠けるところはなく,本件訴えは適法な住民監査請求を経たものである。 3 争点(本件訴えの請求の特定性)参加人民主及び同県政は,本件監査請求(按分部分)が請求の対象の特定を欠いているにとどまらず,本件訴えにおける原告らの請求もその特定を欠いていると主張する。原告らは,本件訴えにおいて,自治法242条の2第1項4号に基づき,被告が参加人らに対し一定の金額の不当利得返還請求権を有すると主張してこれに沿った訴訟上の請求をしている。したがって,請求額が特定していることは明らかであり,問題は,その根拠となる不当利得の発生原因が特定しているか否かである。そこでまず平成18年度について検討すると,原告らは,その不当利得返還請求権の発生原因として,本件監査請求(按分部分)におけるのと同様の主張をしている。すなわち,原告らは,本件監査結果における監査委員の判断のうち,参加人らに対して交付された政務調査費の一部につきその10分の1が目的外支出であるとした判断を不当とし,10分の3が目的外支出であると主張している。本件監査結果において,監査委員は,平成18年度分の政務調査費につき参加人らに対する不当利得返還請求権が成立すると判断しており,その不当利得返還請求権は,その金額とこれを監査委員が目的外支出と認定した理由とによって特定されていると認められる。特定しているからこそ,不当利得が成立すると監査委員が判断した金額を参加人らが県に返還することができた 求権は,その金額とこれを監査委員が目的外支出と認定した理由とによって特定されていると認められる。特定しているからこそ,不当利得が成立すると監査委員が判断した金額を参加人らが県に返還することができたのである。原告らは,同じ経費につき按分割合として10分の1ではなく10分の3を採用すべきであると主張しているにすぎないから,この主張を根拠とする本件訴えにおける請求が特定していることもまた肯定することができる。 次に平成15年度から平成17年度までについて検討すると,原告らは,各年度に参加人らに交付された政務調査費全額を基準として,その一定割合,すなわち原告らの主張する平成18年度における参加人らの目的外支出額がその交付額に占める割合と同じ割合の範囲において,上記各年度においても不当利得が成立すると主張しており,これが包括的な請求であるのは確かである。しかし,各年度において参加人らに交付された政務調査費はおのずから特定されているから,仮にその全額につき不当利得が成立するとの主張であったとした場合,その不当利得返還請求権は他の債権から区別して識別することができる程度に特定されていることは明らかである。そうであれば,そのうちの一定割合についてのみ不当利得が成立することを前提とする原告らの請求が特定されていることもまた肯定されるというべきである。参加人民主及び同県政は,特に平成15年度から平成17年度までについて,このような請求では被告及び参加人らの防御に支障が生じると主張する。しかし,原告らの主張全体を考慮すると,平成15年度から平成17年度までの政務調査費に関する原告らの請求は,結局のところ本件監査基準を根拠とするものであり,ただ,按分をすべき支出については平成18年度と同様に10分の1ではなく10分の3という基準を採用 成17年度までの政務調査費に関する原告らの請求は,結局のところ本件監査基準を根拠とするものであり,ただ,按分をすべき支出については平成18年度と同様に10分の1ではなく10分の3という基準を採用すべきであるとしているにすぎない。 したがって,被告及び参加人らとしては,本件監査基準の基準としての相当性を争うことによって,また,本件監査基準の平成18年度の政務調査費に対する当てはめを争うことによって,本件訴訟における防御活動を行うことが可能である。平成18年度の政務調査費に関する原告らの主張が採用できないのであれば,それを根拠とする平成15年度から平成17年度までの政務調査費に関する原告らの主張も当然に採用できないこととなるからである。そして,参加人らは実際にそのような訴訟活動を展開している。したがって,参加人民主及び同県政の上記主張を採用することはできない。上記2における判断と以上の検討によれば,本件監査請求についても,また 本件訴えにおける請求についても,特定に欠けるところはないと認められる。 ほかに本件訴えを不適法とする事情も見当たらない。したがって,本件訴えはその全部が適法である。新聞購読料等以外の部分又はこれと平成18年度の政務調査費に関する部分以外の部分は不適法であり訴えを却下すべきであるとの被告及び参加人らの主張は,採用することができない。 4 争点(平成18年度の目的外支出) 判断の対象平成18年度の政務調査費のうち本件訴えの対象となっているものは,本件監査結果において,監査委員が本件監査基準に従い按分を要する支出であると判断とした上でその支出額の10分の1の範囲で目的外支出と判断したもの,具体的には,①自動車リース料(各費目共通),②ホームページ作成・保守費(広報費),③事務所の賃 に従い按分を要する支出であると判断とした上でその支出額の10分の1の範囲で目的外支出と判断したもの,具体的には,①自動車リース料(各費目共通),②ホームページ作成・保守費(広報費),③事務所の賃借料(事務所費),④事務所の光熱水費・テレビ受信料(事務所費),⑤通信費・事務機器のリース料(事務費),⑥人件費である。本件監査基準の次の部分がこれに当たる。① 各費目共通として,交通費及び自動車に係る経費のうち自動車リース料につき,政務調査活動以外にも使い得ることを考慮し10分の1を目的外としたとする部分(本件監査基準の第1の6)② 広報費のうちホームページ作成・保守費につき,ホームページの内容が政務調査活動の広報と認められる割合により按分すべきであり10分の1を目的外としたとする部分(本件監査基準第2の6)③ 事務所費のうち賃借料(駐車場代を含む。)につき,政務調査活動の割合が明らかでない場合は10分の1を目的外としたとする部分(本件監査基準の第2の7ア)④ 事務所費のうち光熱水費,テレビ受信料(ケーブルテレビを含む。)につき,事務所を賃借しており,かつ,政務調査活動の割合が明らかでない場合は10分の1を目的外としたとする部分(本件監査基準の第2 の7イa)⑤ 事務費のうち通信費(電話料金,ファックス料金,インターネットに要する通信費等),事務機器のリース料につき,政務調査活動の割合が明らかでない場合は10分の1を目的外としたとする部分(本件監査基準の第2の8イ)⑥ 人件費につき,政務調査活動の割合(従事時間等)が明らかでない場合は10分の1を目的外としたとする部分(本件監査基準の第2の9イ)これらにつき,原告らは,10分の1という按分 ⑥ 人件費につき,政務調査活動の割合(従事時間等)が明らかでない場合は10分の1を目的外としたとする部分(本件監査基準の第2の9イ)これらにつき,原告らは,10分の1という按分割合は妥当でなく,10分の3という按分割合を採用すべきであると主張している。これに対し参加人らは10分の1という按分割合の妥当性を争い,目的外支出とされるべき金額は存在しないか少なくとも監査委員が目的外支出と判断したものを下回ると主張している。しかし,監査委員が目的外支出であると判断したものについては参加人らは既にその全額を県に返還しているため,本件訴えの対象となっていないのであるから,参加人らの上記主張の当否は当裁判所の判断の対象にならない(もっとも,平成15年度から平成17年度までの政務調査費との関係では判断の対象になり得るが,これについては後記5で取り上げる。)。したがって,平成18年度の政務調査費については,監査委員の採用した10分の1という按分割合が低すぎるとする原告らの主張の当否のみを判断すれば足りる。 判断の枠組み監査委員は,普通地方公共団体の長が,議会の同意を得て,人格が高潔で,普通地方公共団体の財務管理,事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者及び議員のうちから選任するものであり(自治法196条1項),任期が定められ(同法197条),罷免には制限がある(同法197条の2)。監査委員は,その職務を遂行するに当たっては,常に公正不偏の 態度を保持して監査をしなければならず,職務上知り得た秘密を漏らしてはならない(同法198条の3)。また,監査の慎重を期するため,監査及び勧告についての決定は,監査委員の合議により行われる(住民監査請求につき同法242条8項)。このように, 密を漏らしてはならない(同法198条の3)。また,監査の慎重を期するため,監査及び勧告についての決定は,監査委員の合議により行われる(住民監査請求につき同法242条8項)。このように,監査委員は,職務の専門性及び独立性が確保され,監査を行うための法令上の手段が与えられているとともに,その権限を慎重に行使すべきものとされている。前記認定事実のとおり,本件において,監査委員は,原告らの陳述を聴いたほか,県の議会局総務課の調査を実施し,さらに各会派の団長及び政務調査費経理責任者等に対し関係人調査を実施した上で,公認会計士及び大学准教授各1名から政務調査費の使途基準について意見を聴取したというのであり,また,多くの会派から本件条例の趣旨に則った会計帳簿が提出されなかったという状況の下においても,参加人ら及びその所属議員による政務調査費の支出を個別に特定し,領収書による裏付けがあるか否か,その支出がいかなる性格のものか等を具体的に審査し,本件監査基準に従って目的外支出か否かを判断したというのである。監査委員の地位,権限や本件における以上のような監査の実情に鑑みると,本件監査結果における目的外支出か否かの判断は,一般的にいって尊重に値すべきものである。したがって,本件訴訟においては,目的外支出か否かに関する監査委員の判断をまずは尊重し,これと異なる判断をするのは,本件監査基準自体が合理性を欠くと認められる場合か,本件監査基準の個別の支出に対する当てはめが妥当性を欠くと認められる場合に限るものと解するのが相当である。原告らは,前記のとおり,本件監査基準における10分の1という基準を否定し,主に社会通念や条理を根拠に,10分の3という基準を採用すべきであると主張している。これは上記の前者の場合に当たり,本件監 原告らは,前記のとおり,本件監査基準における10分の1という基準を否定し,主に社会通念や条理を根拠に,10分の3という基準を採用すべきであると主張している。これは上記の前者の場合に当たり,本件監査基準の 合理性を原告らの主張する限度において否定していると理解することができる。そこで,この観点から原告らの主張の当否を検討することとする。なお,原告らは,10分の1という基準が不適切であり10分の3という基準が適切であることを立証するためとして,参加人らの代表者等が所持する会計帳簿,領収書等について文書提出命令を申し立てていた(原告らの平成20年9月3日付け文書提出命令申立書)。しかし,この申立てによって原告らが求める文書が提出されたとしても,それによって適切な按分割合を見いだすことができるか否かは定かでない。また,上記の判断枠組みに従い,原告らの求める文書の取り調べを行うことなく本件監査基準の合理性を検討することは可能である。そこで,当裁判所は平成25年2月6日の本件口頭弁論期日において上記文書提出命令の申立ては必要性が認められないとして却下した。 検討本件監査基準のうち10分の1という基準を採用しているものは,前記のとおり,①自動車リース料(各費目共通),②ホームページ作成・保守費(広報費),③事務所の賃借料(事務所費),④事務所の光熱水費・テレビ受信料(事務所費),⑤通信費・事務機器のリース料(事務費),⑥人件費である。以下,順に検討する。ア自動車リース料政務調査活動のためにリースした自動車であっても,使用されないままでおかれたり,政務調査活動以外のために使用されたりした場合,そのリース料の全額を政務調査費によって負担すべきではない。すなわち,そのリース料のうちのどの程度を た自動車であっても,使用されないままでおかれたり,政務調査活動以外のために使用されたりした場合,そのリース料の全額を政務調査費によって負担すべきではない。すなわち,そのリース料のうちのどの程度を政務調査費によって負担すべきかは,その自動車の使用実態に応じて定まるべきものである。本件監査基準は,前記のとおり,関係人の調査等を踏まえて10分の1という基準を設定しており,10分の1という水準には根拠があると考えられるし,この水準自体,社  会通念に照らしても一概に否定することができるものではない。したがって,10分の1という基準が合理性を欠くとはいえない。原告らは10分の3という基準を採用すべきであると主張するが,その根拠となるリース自動車の使用実態を主張立証しない。他の地方公共団体において10分の3という基準が採用されたことがあるとも主張するが,リース自動車の使用実態は,地方公共団体によっても,さらに個々の議員によっても異なると考えられるし,また,当該事案における監査の在り方も本件における監査の在り方とは異なっていたと考えられるから,10分の3という基準が採用された例があるからといって,それが県議会の平成18年度の政務調査費についても採用されるべきであるとはいえない。原告らの主張を採用することはできない。イホームページ作成・保守費会派及び議員が行う議会活動及び県政に関する政策等の広報活動を行うために開設されたインターネットのホームページは,政務調査活動の成果等を広報するものとして議員の調査研究に資するものといえるが,ホームページは,その性格からして,その内容にかかわりなく会派及び議員に対する有権者の関心を引き付ける手段となり得るものであるし,その内容に政務調査活動に該当しないものが含まれる るものといえるが,ホームページは,その性格からして,その内容にかかわりなく会派及び議員に対する有権者の関心を引き付ける手段となり得るものであるし,その内容に政務調査活動に該当しないものが含まれることもあり得る。たとえある時点での内容が政務調査活動に関するものに限られていたとしても,容易に他の内容を加えることができるのであるから,そのホームページの内容が政務調査活動に関するもののみであると断定することはできない。本件監査基準は,このような観点から,ホームページの効果が全部政務調査活動に帰属すると解するのは妥当ではないとし,関係人の調査等も踏まえて,その作成・保守費の10分の1を目的外支出としたものと解される。したがって,10分の1という水準には根拠があると考えられるし,この水準自体,社会通念に照らしても一概に否定することができるものではなく, 合理性を欠くとはいえない。原告らは10分の3という基準を採用すべきであると主張するが,その根拠となるホームページの実態について具体的に主張立証するものではないから,ここでも原告らの主張を採用することはできない。ウ事務所の賃借料,光熱水費・テレビ受信料本件監査基準は,事務所費のうち賃借料(駐車場代を含む。)については,政務調査活動に要した使用領域(面積等),使用時間等により按分するが,政務調査活動の割合が明らかでない場合は,10分の1を目的外支出とした。事務所を賃借している場合の事務所費のうち光熱水費・テレビ受信料についても,同様の基準で按分するが,政務調査活動の割合が明らかでない場合は,10分の1を目的外支出とした(これに対し,自宅の場合は3分の2を目的外支出とした。)。事務所の賃借料についても,事務所の光熱水費・テレビ受信料について 活動の割合が明らかでない場合は,10分の1を目的外支出とした(これに対し,自宅の場合は3分の2を目的外支出とした。)。事務所の賃借料についても,事務所の光熱水費・テレビ受信料についても,自動車リース料と同様,政務調査費による支出は使用実態に応じて定まるべきものである。本件監査基準は,使用実態によって按分するとの立場をとりながら,政務調査活動が明らかでない場合につき10分の1という基準を採用している。光熱水費・テレビ受信料については,事務所を賃借している場合と自宅の場合とで異なる按分の比率を採用している。これは,関係人の調査等を踏まえてきめ細かい認定基準を設定したものと認められ,かつ,10分の1という基準は,政務調査活動の割合が明らかでない場合にのみ適用されるものである。この水準にも根拠があると考えられるし,この水準自体,社会通念に照らしても一概に否定することができるものではないから,その合理性を否定することはできない。原告らは,ここでも,10分の3というその主張の根拠となる使用実態を主張立証しない。他の地方公共団体で10分の3という基準が採用されたことがあっても,それが県議会に妥当するとはいえないことは,上記ア  と同様である。したがって,原告らの主張を採用することはできない。エ通信費・事務機器のリース料本件監査基準は,通信費・事務機器のリース料については,携帯電話通話料は一人当たり1回線のみを認めるとした上で,政務調査活動に要した使用頻度,使用時間等により按分するが,政務調査活動の割合が明らかでない場合は,10分の1を目的外支出とした。通信費・事務機器のリース料も,政務調査費による支出は使用実態に応じて定まるべきものである。本件監査基準は,使用実態によって按分する 合が明らかでない場合は,10分の1を目的外支出とした。通信費・事務機器のリース料も,政務調査費による支出は使用実態に応じて定まるべきものである。本件監査基準は,使用実態によって按分するとの立場に立ちながら,携帯電話通話料は一人当たり1回線に限定し,さらに,政務調査活動が明らかでない場合につき10分の1という基準を採用している。これも,関係人の調査等を踏まえて基準を設定したものであって,10分の1という基準も,政務調査活動の割合が明らかでない場合にのみ適用されるものである。したがって,10分の1という水準には根拠があると考えられるし,この水準自体,社会通念に照らしても一概に否定することができるものではないから,その合理性を否定することはできない。原告らは,ここでも,10分の3というその主張の根拠となる使用実態を主張立証しない。他の地方公共団体で10分の3という基準が採用されたことがあっても,それが県議会に妥当するとはいえないことは,上記アと同様である。したがって,原告らの主張を採用することはできない。オ人件費本件監査基準は,人件費については,政務調査費として支出するには人件費を支払われる者が政務調査活動に従事している実態があることを要することを前提とし,さらに,生計を一にする親族の雇用経費は目的外支出(ただし,源泉徴収等税法上の措置を行っているものは除く。)とした上で,政務調査活動の業務に従事した時間,日数等により按分するが(政務  調査活動に専念していることが明らかである場合は除く。),政務調査活動の割合(従事時間等)が明らかでない場合は,10分の1を目的外支出とした。政務調査活動に従事させるために雇用等をした者が,実際には何の活動もせず,又は政務調査活動以外の ),政務調査活動の割合(従事時間等)が明らかでない場合は,10分の1を目的外支出とした。政務調査活動に従事させるために雇用等をした者が,実際には何の活動もせず,又は政務調査活動以外の活動を行った場合,その人件費の全額を政務調査費によって負担すべきではない。ここでも,人件費のうちのどの程度を政務調査費によって負担すべきかは,その従事者の活動実態によって定まるべきものである。本件監査基準は,関係人の調査等を踏まえて上記のとおりきめ細かい認定基準を設定しており,ここでの10分の1という基準も,生計を一にする親族以外の場合で,かつ政務調査活動の割合が明らかでない場合にのみ適用されるものである。したがって,この水準にも根拠があると考えられるし,この水準自体,社会通念に照らしても一概に否定することができるものではないから,その合理性を否定することはできない。原告らは,ここでも,10分の3というその主張の根拠となる活動実態を主張立証しない。他の地方公共団体で10分の3という基準が採用されたことがあっても,それが県議会に妥当するとはいえないことは,上記アと同様である。したがって,原告らの主張を採用することはできない。 まとめ以上のとおり,本件監査基準のうち10分の1という按分割合を採用した部分には合理性が認められ,これを超える基準を採用すべきであるとする原告らの主張を採用することはできない。したがって,平成18年度の政務調査費につき,本件監査結果を超える金額の目的外支出があったと認めることはできないから,同年度に関する原告らの請求はいずれも理由がない。 5 争点(平成15年度から平成17年度までの目的外支出)  本件監査結果のうち平成18年度に関する部分からの推定 年度に関する原告らの請求はいずれも理由がない。 5 争点(平成15年度から平成17年度までの目的外支出)  本件監査結果のうち平成18年度に関する部分からの推定本件監査請求(按分部分)のうち平成15年度から平成17年度までの部分について,監査委員は,請求の対象が特定されていないと判断し,監査を行わなかった。この監査委員の判断を是認することができないことは前記2のとおりであるが,監査が行われていないため,平成18年度の場合と異なり,本件訴訟において監査委員の判断を直接の対象とした検討を行うことはできず,他の方法によって目的外支出の有無とこれがある場合の金額を認定しなければならない。前記前提事実のとおり,本件監査結果において,監査委員は,平成15年度から平成17年度までの政務調査費についても,平成18年度の監査結果から,新聞購読料等以外に目的外支出があると推測されると述べていた。監査委員のこの推測は,平成18年度とそれより前の年度との間で政務調査費の支出に関し異なった事情があるとは認められないことを根拠としていると解される。実際,本件全証拠によっても,平成18年度とそれより前の年度との間に異なる事情があるとは認められないので,この推測には十分な根拠があるといえる。また,前記認定事実によれば,これはさらに次の点からも裏付けられる。第1に,監査委員は,監査を行った平成15年度から平成17年度までの新聞購読料等及び平成18年度の政務調査費について必要な調査を行ったが,この調査に関し,本件監査結果において,会派によっては政務調査費監査責任者の監査は形式的な審理にとどまっていた,多くの会派から本件条例の趣旨に則った会計帳簿は提出されなかったなどと述べていた。 このことからすると,平成15年度から いて,会派によっては政務調査費監査責任者の監査は形式的な審理にとどまっていた,多くの会派から本件条例の趣旨に則った会計帳簿は提出されなかったなどと述べていた。 このことからすると,平成15年度から平成17年度までにおいても領収書の不備などの不適切な会計処理が行われていたことは十分に想定することができる。第2に,平成20年度に手引きが作成されるまで,県議会の会派及び議員は,必ずしも按分の考え方に従って政務調査費の支出をしていなかったと考えられるので,平成15年度から平成17年度までについても,平成 18年度と同様,適切な按分がされずに目的外支出がされていたと想定することができる。以上によれば,監査委員の述べるとおり,平成15年度から平成17年度までにおいても平成18年度と同様に目的外支出があったと推測することができるので,次に,その金額をどのようにして導き出すべきかが問題となる。 これについては原告らの主張の基礎にある考え方を採用するのが妥当である。 すなわち,平成18年度の政務調査費についての監査結果から,同年度における各参加人の目的外支出の額が明らかになるので,その額が各参加人の同年度の政務調査費全体の額に占める割合を算定することができる。そこで,この割合が平成15年度から平成17年度までにも妥当するとみて,各年度の政務調査費全体の額にこの割合を乗じることによって,各年度の目的外支出の額を推定することができるのである。この考え方は,本件監査結果のうち平成18年度の政務調査費に関する部分が正しい判断であることを前提としている。そして,参加人らが監査委員によって目的外支出と判断された金額を全額県に返還していることは監査委員の判断が説得的であることを裏付けているということができる。この点につ とを前提としている。そして,参加人らが監査委員によって目的外支出と判断された金額を全額県に返還していることは監査委員の判断が説得的であることを裏付けているということができる。この点につき参加人らは,平成18年度の政務調査費のうち目的外支出と判断されたものを県に返還したのは諸般の事情を総合的に考慮した結果であり,必ずしも監査委員の判断の正当性を受け入れたわけではないと主張する。 しかし,前記前提事実のとおり,本件監査結果が取りまとめられたのは平成20年3月7日であり,監査委員は,被告に対し,平成18年度の政務調査費につき参加人らに対する返還請求を行うなど必要な措置を同年6月30日までに講じられたいと勧告したのに対し,参加人らは遅くとも同年3月31日までに収支報告書を修正し,監査委員が目的外支出と判断した全額を県に返還している。もし参加人らが本件監査結果に不服を有したのであれば,約3か月間の猶予期間があったのであるから,その間に慎重な検討を行い,必 要な反論を行うことができたのに,参加人らはそのようなことをせず,本件監査結果が取りまとめられてからわずか3週間程度の間に,最高約4400万円(参加人自民),最低でも約790万円(参加人公明)という多額の金銭を全額県に返還しているのである。この参加人らの態度に鑑みると,参加人らの上記の主張を勘案しても,目的外支出と判断された金額を参加人らが返還した事実は,参加人らも監査委員の判断に対しては不満は残るにしても受け入れざるを得ないものとみたものとして,その合理性を基礎付けるとする考え方を直ちに否定することはできないというべきである(ただし,本件監査結果のうち平成18年度の政務調査費に関する部分が正当でないとする参加人らの個別の主張については,後記,において改めて取り上 考え方を直ちに否定することはできないというべきである(ただし,本件監査結果のうち平成18年度の政務調査費に関する部分が正当でないとする参加人らの個別の主張については,後記,において改めて取り上げる。)。また,前記認定事実のとおり,川崎市議会における平成15年度から平成18年度までの政務調査費については個別外部監査人が目的外支出を認定している(前記1)。県議会と川崎市議会とでは事情が異なるとはいえ,川崎市における政務調査費の動向が県にとっても参考になるといえることは前記のとおりであり,川崎市の上記の結果からも,平成18年度の目的外支出から平成15年度から平成17年度までの各年度の目的外支出を推定することの合理性が裏付けられる。したがって,上記の推定によって平成15年度から平成17年度までの目的外支出の額を算定することができるというべきである。なお,原告らは,前記のとおり,参加人らの代表者等が所持する会計帳簿,領収書等について文書提出命令を申し立てていたが,以上の考え方によれば,そのような文書の取り調べを行うことなく平成15年度から平成17年度までの政務調査費の目的外支出の有無と額を認定することができるから,当裁判所は前記のとおりこの申立てを却下した。 本件監査基準を不当とする参加人らの反論について上記の推定はあくまでも事実上の推定であるから,被告及び参加人らが その主張立証によってこの推定を覆すことができるのはもちろんである。参加人らは,平成15年度から平成17年度までの政務調査費の個別の支出について主張立証を行わず,本件監査基準自体が不当であるというか,あるいは本件監査結果のうち平成18年度の政務調査費に関する部分が不当であるとしてその主張立証をしているが,それはこ 査費の個別の支出について主張立証を行わず,本件監査基準自体が不当であるというか,あるいは本件監査結果のうち平成18年度の政務調査費に関する部分が不当であるとしてその主張立証をしているが,それはこの観点から理解することができる。平成18年度の政務調査費に関する監査委員の判断が正当といえないのであれば,それを基にして平成15年度から平成17年度までの各年度の目的外支出額を推定することも合理的とは認められないことになるからである。 そして,前記4での検討を踏まえれば,その正当性の争い方には二つの方法があり,第1に,本件監査基準の合理性自体を争うことができ,第2に,平成18年度の政務調査費の個々の支出についての本件監査基準の当てはめを争うことができる。参加人らの主張はそれぞれの争い方に対応するものとして分類整理することができる。以下,第1の点すなわち本件監査基準を不当とする参加人らの主張についてここで検討し,次いで,後記において,その当てはめを不当とする参加人らの主張について検討することとする。ア参加人自民は,本件監査基準のうち,飲食を主目的とする新年会・忘年会・懇談会(出版記念・受勲記念祝賀パーティー等)への出席に係る経費の支出を目的外とした部分(本件監査基準の第1の4)及び業界団体会議(商店街,労働組合等の新年会,懇親会を含む。)参加費のうち5000円を超える額を目的外とした部分(この基準は本件監査基準の中には明記されておらず,監査の過程で採用されたものであるが〔本件監査基準の第1の4の注を参照〕,本件監査基準と一体を成すものとして扱うこととする。)が不当であると主張する。このような会合は貴重な意見交換や情報収集の場であり,これに参加することは政務調査活動の本旨であるから,飲食を伴うからといってその出席に係る経費を目的外 て扱うこととする。)が不当であると主張する。このような会合は貴重な意見交換や情報収集の場であり,これに参加することは政務調査活動の本旨であるから,飲食を伴うからといってその出席に係る経費を目的外支出とはいえず,また,実態を考慮することなく一律に5000円という上限額を設けること も相当でないというのである。しかし,本件監査基準の第1の4は,飲食を伴う会合への出席全てを取り上げているのではなく,飲食を主目的とする新年会・忘年会・懇談会への出席を問題としているのであって,その対象は限定されているから,参加人自民の上記の主張は必ずしも的を射ていない。飲食を伴う会合への出席が政務調査活動に当たり得ることは本件監査基準も認めているというべきである。これに対し飲食を主目的とする新年会・忘年会・懇談会への出席は,飲食を「主目的」としている点で政務調査活動とは目的を異にしているから,その出席に係る経費をもって「議員の調査研究に資するため必要な経費」(自治法100条13項)と認めることは困難である。また,業界団体会議への参加も政務調査活動に当たり得るが,これらの会議の性格は多様であり,政務調査活動以外の活動に関係することも少なくないと考えられる。したがって,これらの会議への参加費について政務調査費としての支出が許される部分は一定の範囲に限るべきであると考え,一律の上限を設けることは合理性を有するというべきであり,このように上限を設けないと,会議参加費の名目で多額の不透明な支出が生じることにもなりかねない。そして,5000円を上限と設定したことは,一般的な社会通念に照らして不合理とはいえない。したがって,参加人自民の主張を勘案しても,本件監査基準のうちの上記の部分が合理性を欠くとはいえない。イ参加人県政は, 上限と設定したことは,一般的な社会通念に照らして不合理とはいえない。したがって,参加人自民の主張を勘案しても,本件監査基準のうちの上記の部分が合理性を欠くとはいえない。イ参加人県政は,本件監査基準のうち,会議参加のための弁当代のうち1500円を超える部分を目的外とした部分(本件監査基準の第1の5),事務所における茶菓代のうち一人当たり月額1万円を超える部分を目的外とした部分(同),新聞購読料のうち各1部を超えた部分及びスポーツ新聞の購読料を目的外とした部分(本件監査基準の第2の5)が不当であると主張する。会議参加のための弁当代は,相当額の範囲では会議参加に必要な経費と みることができ,その限りで政務調査費としての支出が許されるといえるが,相当額を超える部分は会議参加に必要な費用ということはできない。 したがって,政務調査費としての支出が許される部分は一定の範囲に限るべきであると考え,一律の上限を設けることは合理性を有するというべきであり,このように上限を設けないと,弁当代の名目で多額の不透明な支出が生じることにもなりかねない。そして,1500円を上限と設定したことは,一般的な社会通念に照らして不合理とはいえない。事務所における茶菓代についても同様の考え方が妥当する。スポーツ新聞は一般に娯楽を目的とするものであり,その購読を特に必要とする理由がないかぎり,その購読料をもって「議員の調査研究に資するため必要な経費」と認めることは困難である。これに対し,一般の新聞の購読料を政務調査費として支出することには問題がないが,1部を超える部数を購読する必要は通常は認め難い。したがって,これらの購読料については,特に必要があれば政務調査費としての支出を認めることができるが,一般的な基準とし 支出することには問題がないが,1部を超える部数を購読する必要は通常は認め難い。したがって,これらの購読料については,特に必要があれば政務調査費としての支出を認めることができるが,一般的な基準としては政務調査費としての支出が許されないとすることに不合理があるとはいえない。そして,参加人県政は,特にこれを必要とする理由を主張立証しない。以上によれば,参加人県政の主張を勘案しても,本件監査基準のうちの上記の部分が合理性を欠くとはいえない。ウ参加人らは,本件監査基準において10分の1という基準が採用された部分,すなわち,①自動車リース料,②ホームページ作成・保守費,③事務所の賃借料,④事務所の光熱水費・テレビ受信料,⑤通信費・事務機器のリース料,⑥人件費について,そもそも按分することが不当であって全額が政務調査費として認められるべきであり,そうでないとしても目的外支出とされる金額は支出額の10分の1には達しないと主張する。参加人らは,これらの経費について按分を否定する理由としておおむね  次のように主張する。会派及び議員の活動には,政務調査活動のほか,議会活動,政党活動,選挙活動,後援会活動等があるが,各活動の経費は明確に区分されており,政務調査費として支出をした事務所費,事務費,人件費等はあくまでも政務調査活動に対応したものであるし,また,例えば政務調査活動のために賃借した事務所を政務調査活動以外に使用することはまずないから,これを按分する必要はないというのである。しかし,10分の1という基準を採用した本件監査基準に合理性があることは前記4で検討したとおりである。議員の活動はその活動ごとに経費が明確に区分されているという参加人らの主張は,理想を述べるものではあるが,それが実 という基準を採用した本件監査基準に合理性があることは前記4で検討したとおりである。議員の活動はその活動ごとに経費が明確に区分されているという参加人らの主張は,理想を述べるものではあるが,それが実態に即していることについては的確な立証がない。また,上記①から⑥までの経費は,いずれも汎用性のあるものの使用等の対価であることに注目すべきである。リースした自動車や事務機器はいかなる用途にも使用することができる。賃借した事務所も同様である。ホームページにはいかなる内容も掲げることができるし,通信の内容も多種多様であり得る。雇用した人や事務委託をした人は,いかなる作業にも従事させることができる。これらの経費について,その実態に照らして政務調査費としての支出が許されるものを正確に導出しようとするならば,多大な労力を費やすことになる一方,その結果,会派や議員の活動の全貌が執行機関に知られることになりかねず,執行機関や他の会派等からの干渉を招きかねない危険があることは前記のとおりである。したがって,10分の1といった一定の割合で区切って政務調査費としての支出が許されるか否かの判断をすることは,参加人らにとってもメリットがあることといえる。さらに,証拠(甲42の1~4,44の1~3,証人丙2,同丙3)によれば,平成20年度の政務調査費につき,丙2議員は,事務所の家賃,駐車場代,電気代,水道料金及び人件費のいずれについてもこれを按分して10分の9のみを政務調査費として計上しており,丙3議員も,同じく,家 賃及び駐車場代は10分の9のみを,人件費は2分の1のみを政務調査費として計上していることが認められるから,これらの議員は,本件監査結果が出た後,本件監査基準あるいはそれよりも厳しい基準に従って経費を按分し,政務調査費を計上しているので は2分の1のみを政務調査費として計上していることが認められるから,これらの議員は,本件監査結果が出た後,本件監査基準あるいはそれよりも厳しい基準に従って経費を按分し,政務調査費を計上しているのである。そして,丙2議員や丙3議員が特殊な例であることをうかがわせる事情は存在しない。これらの事情を総合的に考慮すると,参加人らの主張を勘案しても,本件監査基準が按分の考え方を採用し,その上で10分の1という基準を採用したことには根拠があり,この基準が不当に高すぎる基準であるとして合理性を否定されるものではないというべきである。したがって,按分を否定し,あるいは10分の1という基準を否定する参加人らの主張を採用することはできない。エ以上によれば,本件監査基準が合理性を欠くということはできない。 平成18年度の政務調査費についての本件監査基準の当てはめを不当とする参加人らの主張についてア参加人自民は,政務調査費で家賃を支払っている事務所を政治団体等が使用している場合,人件費や光熱水費,事務所諸経費等を政治団体等が負担するなどして経費全体を按分負担しているから,政務調査費として支出された家賃をさらに按分する必要はないと主張し,証人丙2はこれに沿った証言をする(同人の陳述書〔丙A3〕も同様)。しかし,本件規程別表に定められた政務調査費の使途は,個々の経費ごとにその該当性を判断すべきものであると解される。したがって,上記のような場合,政治団体等が事務所を使用している以上,家賃全額を政務調査費として支出することは許されず,本件監査基準に従って按分すべきである。参加人自民の上記主張を採用することはできない。次に,参加人自民の提出する丙4議員の陳述書(丙A4)には,政務調査費から家賃を支 ることは許されず,本件監査基準に従って按分すべきである。参加人自民の上記主張を採用することはできない。次に,参加人自民の提出する丙4議員の陳述書(丙A4)には,政務調査費から家賃を支出している事務所は政務調査活動のみに使用していると  の記述があるが,この陳述を裏付ける的確な証拠がないので,これを直ちに採用することはできない。イ参加人民主は,本件監査結果において10分の1の範囲で目的外支出とされた自動車リース料,事務所費(賃借料及び光熱水費・テレビ受信料),事務費(通信費・事務機器のリース料)及び人件費について,その実態に照らせば全額が政務調査費として認められるべきであると主張し,その根拠として議員の陳述書及び「質問票」(アンケート結果)(丙B2の1~4,5の1~15)を提出し,証人丙3はこれに沿った証言をする(丙5議員,丙6議員,丙7議員,丙8議員,丙3議員,丙9議員,丙10議員,丙11議員,丙12議員,丙13議員,丙14議員,丙15議員,丙16議員,丙17議員,丙18議員,丙19議員,丙20議員,丙21議員)。しかし,これらの陳述(丙3議員についてはその証言)を裏付ける的確な証拠がないので,これを直ちに採用することはできない。ウ参加人公明は,自動車リース料,事務所費(賃借料及び光熱水費・テレビ受信料),事務費(通信費・事務機器のリース料)及び人件費について,全額を政務調査活動のために使用しているから目的外支出はないと主張し,その根拠として丙22議員の陳述書(丙C6)を提出するとともに,自動車リース料の裏付けとなる写真(丙C4)並びに人件費の裏付けとなる業務日報及び契約書(丙C3の1~15)を提出する。しかし,自動車リース料については,その写真を見ても,政党 ともに,自動車リース料の裏付けとなる写真(丙C4)並びに人件費の裏付けとなる業務日報及び契約書(丙C3の1~15)を提出する。しかし,自動車リース料については,その写真を見ても,政党名やスローガンが表示されたワンボックスタイプの街宣車であり,これが政務調査活動のみに使用されていたと認めることはできない。事務所費及び事務費については,上記の主張を裏付ける的確な証拠がない。人件費については一定の裏付けがあるといえるが,形式的なものであってやはり的確な証拠とはいい難い。何より証拠(丙C1,2の1~11)によれば,監査委員は,参加人公明の上記の立場の説明を受けたにもかかわらず,本件監査結  果どおりの判断をしたことが認められるから,本件監査結果は参加人公明の主張を踏まえたものというべきである。この監査委員の判断を覆す立証がされているとはいい難い。エ参加人県政は,第1に,丙1議員の県議会レポートのポスティング費用(人件費)についての本件監査結果には二つの誤りがあると主張する。一つは,丙1議員は,県議会レポートの印刷代と人件費を併せた全体を按分することとし,政務調査費として印刷代は低額を計上する一方,人件費は按分しないで計上したが,この人件費について按分をされてしまったというのである。もう一つは,8万0315円として計上した上記人件費の一部について,80万0315円と認定され,その上でその10分の1を目的外支出と判断されてしまったというのである。一つ目の点は,証人丙1のこれに沿った証言(同人の陳述書〔丙D25〕も同様)があり,これを裏付ける証拠(丙D10,11の1・2,12から24まで)も提出されている。しかし,前記アにおいて判断したとおり,このような費目をまたがっての経費の按分は許されない 丙D25〕も同様)があり,これを裏付ける証拠(丙D10,11の1・2,12から24まで)も提出されている。しかし,前記アにおいて判断したとおり,このような費目をまたがっての経費の按分は許されないと解されるから,人件費について按分をした監査委員の判断が不当であるとはいえない。二つ目の点は,証人丙1のこれに沿った証言(同人の陳述書〔丙D25〕も同様)があり,これを裏付ける証拠(丙D21)も提出されているので,そのとおりであると認めることができる。したがって,目的外支出と判断されるべき金額は本来8031円だったが,本件監査結果においては8万0031円が目的外支出と判断されており,目的外支出の金額が7万2000円過大に認定されていると認められる。参加人県政は,第2に,自動車リース料,事務所費(賃借料及び光熱水費・テレビ受信料),事務費(通信費・事務機器のリース料)及び人件費について,全額を政務調査活動のために使用しているから目的外支出はないと主張し,その根拠として議員の陳述書(丙D9,26から28まで, 30から35まで,39,40,46),契約書(丙D36)を提出する(丙23議員,丙24議員,丙25議員,丙26議員,丙27議員,丙28議員,丙29議員,丙30議員,丙31議員,丙32議員,丙33議員,丙34議員)。しかし,これらの陳述を裏付ける的確な証拠はないので,これを直ちに採用することはできない。なお,丙31議員は,本件監査基準の第2の9に基づき,人件費のうち生計を一にする親族の雇用経費について,税法上の措置を採っているから目的外支出と認定されるべきではないとするようである(丙D46)。しかし,同議員自身が認めているとおり,税法上の措置を採ったのは本件監査結果が出た後であるから について,税法上の措置を採っているから目的外支出と認定されるべきではないとするようである(丙D46)。しかし,同議員自身が認めているとおり,税法上の措置を採ったのは本件監査結果が出た後であるから(丙D47の1,48の1・2・7,49の1・2・7,50の1),この措置が採られていないものとして目的外支出と判断した本件監査結果の正当性が否定されることはない。参加人県政は,第3に,前記の丙1議員のほかにも,議員が自主的に経費を按分して収支報告書を提出したものがあり,これについてさらに按分をするのは不当であると主張し,その根拠として議員の陳述書を提出する(丙D9,27,30,33)(丙23議員,丙25議員,丙27議員,丙30議員)。しかし,ここでいう按分も,前記の丙1議員と同様,費目をまたがったものか,あるいは,人件費につきある期間は政務調査費から支出したが他の期間は支出しなかったなどというものである。前記の丙1議員と同様,このような按分の処理は許されないというべきである。参加人県政は,第4に,本件監査基準のうち,調査研究費に関し,会議延長に伴う宿泊費については2分の1を目的外としたとする部分(本件監査基準の第2の1)を丙1議員にそのまま適用したのは不当であると主張する。その理由として,丙1議員は県庁の周辺に宿泊することがあるが, それは,自宅が県庁から遠く離れた場所にあり交通の便も悪いので,交通費の負担と仕事の効率を考慮したためであり,宿泊代を負担する代わりに交通費(タクシー代等)を負担しなくてすむのであるから,実質的には既に経費の按分をしており,これを更に按分するのは不当であるというのである。しかし,ここで主張されている按分とは,支出された宿泊代と支出されていな しなくてすむのであるから,実質的には既に経費の按分をしており,これを更に按分するのは不当であるというのである。しかし,ここで主張されている按分とは,支出された宿泊代と支出されていない交通費を比較することであり,議長会報告や手引きで説明されている按分とは異なるものである。また,費目をまたがった按分であり,そのような按分が許されないことは繰り返し指摘してきたとおりである。したがって,この点に関する参加人県政の主張を採用することはできない。 まとめ以上の検討によれば,本件監査基準を不当とする参加人らの主張はいずれも採用することができず,平成18年度の政務調査費についての本件監査基準の当てはめを不当とする参加人らの主張は,参加人県政が目的外支出として7万2000円を過大に認定されたとする部分を除いてはいずれも採用することができない。これを前提に,前記の考え方に基づく推定計算を行ったのが別紙6「平成15年度~平成17年度判決認定額」である。その表の見方は次のとおりである。前記前提事実及び上記の検討結果によれば,平成18年度の政務調査費につき,監査対象支出額と目的外支出額は次のとおりであり(参加人県政の目的外支出は,本件監査結果から7万2000円を差し引いたもの),目的外支出割合すなわち監査対象支出額に占める目的外支出の割合をここから導き出すことができる。別紙6で「平成18年度の目的外支出割合」(C)とされているものがこれである。〔監査対象支出額〕〔目的外支出額〕〔目的外支出割合〕参加人自民 265,606,204 39,557,469 0.1489 参加人民主 198,413,708 37, 〕参加人自民 265,606,204 39,557,469 0.1489 参加人民主 198,413,708 37,693,192 0.1899参加人公明 70,262,887 7,902,969 0.1124参加人県政 87,547,194 11,712,924 0.1337平成15年度から平成17年度までの各年度の収支報告書の支出合計額(B)に上記の目的外支出割合(C)を乗じることにより,各年度の目的外支出額の総額が算定される。ここから差し引くべきものとして,自己負担額(収支報告書支出合計額(B)から政務調査費交付額(A)を差し引いた金額)と返還済額(新聞購読料等)(D)がある。この差引計算を行った結果が返還所要額であり,参加人らは各年度のこの金額について県に対し不当利得返還義務を負う。 6 争点(怠る事実)被告は,参加人らの政務調査費の収支報告書を見ても明らかに目的外支出と認められる記載はないから,参加人らの政務調査費の収支が適正であると被告が判断したことに何の違法もなく,被告は不当利得返還請求権の行使を違法に怠ってはいないと主張する。ここまでの検討によれば,平成15年度から平成17年度までの政務調査費のうち当裁判所が目的外支出と認定したものについて,被告が参加人らに対する不当利得返還請求権の行使を怠っているか否かが問題となる。本件監査結果において,監査委員は,平成15年度から平成17年度までの政務調査費については新聞購読料等を除き監査を行っていないが,これらの年度についても,平成18年度の監査結果 問題となる。本件監査結果において,監査委員は,平成15年度から平成17年度までの政務調査費については新聞購読料等を除き監査を行っていないが,これらの年度についても,平成18年度の監査結果からすれば,新聞購読料以外にも目的外支出があると推測されるとし,参加人らにおいて,本件監査基準を参考にして政務調査費に係る支出を精査し,目的外支出が認められたときは自主的に返還することを要望するとしていた。したがって,被告は,本件監査結果を知った平成20年3月の時点において,平成15年度から平成17年度までに参加人らに交付された政務調査費のうち新聞購読料等以外のものについて目的外支 出があると推測されることを承知したのである。そうである以上,被告は遅くともその時点において,平成15年度から平成17年度までの政務調査費につき速やかに適切な調査を行った上で,目的外支出と認められるものについて参加人らに対し不当利得返還請求をすべきであった。ところが被告はその後5年以上にもわたって何の措置も採っていないのであるから,その不当利得返還請求権という財産の管理を違法に怠っていることは明らかである。 7 争点(遅延損害金)本件条例13条1項によれば,会派は,当該年度において交付を受けた政務調査費の総額から,当該年度において行った政務調査費による支出の総額を控除して残余がある場合には,当該残額に相当する額を翌年度の5月31日までに返還しなければならない。そして,既に検討したとおり(前記2参照),当該年度において目的外支出が行われた場合,その金額は,同項に従い,翌年度の5月31日までに返還すべきものである。したがって,平成15年度から平成17年度までの政務調査費につき参加人らが県に対して負う不当利得返還義務は,条例によっ その金額は,同項に従い,翌年度の5月31日までに返還すべきものである。したがって,平成15年度から平成17年度までの政務調査費につき参加人らが県に対して負う不当利得返還義務は,条例によって債務の履行につき確定期限が定められたものであって,その期限は,平成15年度分については平成16年5月31日,平成16年度分については平成17年5月31日,平成17年度分については平成18年5月31日である。参加人らはそれぞれその翌日から遅滞の責任を負う。 8 結論以上によれば,平成18年度の政務調査費に関する原告らの請求はいずれも理由がないが,平成15年度から平成17年度までの政務調査費に関する原告らの請求は主文第1項から第4項までの限度で理由がある。よって,この限度で原告らの請求を認容し,その余は棄却することとして,主文のとおり判決する。横浜地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官佐村浩之裁判官倉地康弘裁判官石井奈沙

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