- 1 -主文 本件訴えのうち,国土交通大臣が平成18年1月24日付けで原告に対して次の(1)及び(2)を内容とする処分を行ったとして,その無効確認又は取消しを求める部分をいずれも却下する。 (1)免許取消しの日から起算して4年を経過するまで免許を与えないこと。 (2)処分通知を受けた日から10日以内に一級建築士の免許証を関東地方整備局長あてに返納すること。 原告のその余の訴えに係る請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 国土交通大臣が平成18年1月24日付けで原告に対してした一級建築士の免許取消処分につき,(1)これが無効であることを確認する。 (2)これを取り消す。 国土交通大臣が平成18年1月24日付けで原告に対してした,免許取消しの日から起算して4年を経過するまで免許を与えないこととする処分につき,(1)これが無効であることを確認する。 (2)これを取り消す。 国土交通大臣が平成18年1月24日付けで原告に対してした,処分通知を受けた日から10日以内に一級建築士の免許証を関東地方整備局長あてに返納することとする処分につき,(1)これが無効であることを確認する。 (2)これを取り消す。 第2事案の概要本件は,一級建築士であった原告が,自ら設計及び工事監理を行う意思がな- 2 -い建築物の建築確認申請書の設計者欄及び工事監理者欄並びに設計図書に自己の建築士としての名義を記載することを承諾した(いわゆる名義貸し)との理由で,国土交通大臣から,一級建築士の免許取消処分等を受けたが,これらに,,は重大かつ明白な瑕疵があり仮にそうでないとしても瑕疵があると主張してその無効確認及び取消しを請求する事案である。 これに対し,被告は,上記免許取消処分 士の免許取消処分等を受けたが,これらに,,は重大かつ明白な瑕疵があり仮にそうでないとしても瑕疵があると主張してその無効確認及び取消しを請求する事案である。 これに対し,被告は,上記免許取消処分は適法に行われたと主張してその無効確認及び取消しの請求いずれについても請求棄却を求め,本件訴えのその余の部分については,いずれも行政処分に当たらず抗告訴訟の対象にならないと主張して訴えの却下を求めている。 関係法令の定め(「」(1)平成18年法律第92号による改正前の建築士法以下単に建築士法という)は,一級建築士の免許及びその業務につき,以下のとおり定めて。 いた。 ア一級建築士になろうとする者は,国土交通大臣の行う一級建築士試験に合格し,同大臣の免許を受けなければならない(4条1項。 )一級建築士の免許は,一級建築士名簿に登録することによって行う(5条1項。国土交通大臣は,一級建築士の免許を与えたときは,一級建築)士免許証を交付する(同条2項。 )イ建築士法10条1項の規定により免許を取り消され,その取消しの日から起算して2年を経過しない者には,一級建築士の免許を与えない(7条3号。 )以上に該当する者を除き,同法10条1項の規定により免許を取り消され,その取消しの日から起算して5年を経過しない者には,一級建築士の免許を与えないことがある(8条3号。 ),,ウ一級建築士が次のいずれかに該当する場合においては国土交通大臣は当該一級建築士に対し,戒告を与え,1年以内の期間を定めて業務の停止- 3 -を命じ,又は免許を取り消すことができる(10条1項。 )(ア)禁錮以上の刑に処せられたとき(同項1号。 )(イ)建築士法若しくは建築物の建築に関する他の法律又はこれらに基づく命令若しくは条例の規定に違反したと 取り消すことができる(10条1項。 )(ア)禁錮以上の刑に処せられたとき(同項1号。 )(イ)建築士法若しくは建築物の建築に関する他の法律又はこれらに基づく命令若しくは条例の規定に違反したとき(同項2号。 )(ウ)業務に関して不誠実な行為をしたとき(同項3号。 )国土交通大臣は,この規定により業務の停止又は免許の取消しをしようとするときは,中央建築士審査会の同意を得なければならない(同条4項。 )エ建築士は,その業務を誠実に行い,建築物の質の向上に努めなければならない(18条1項。 )一級建築士,二級建築士又は木造建築士は,設計を行った場合においては,その設計図書に一級建築士,二級建築士又は木造建築士たる表示をして記名及びなつ印をしなければならない。設計図書の一部を変更した場合も同様とする(20条1項)。 (2)建築士法施行規則(以下単に「施行規則」という)には,以下の定め。 がある。 ア建築士法4条1項によって一級建築士の免許を受けようとする者は,所定の免許申請書に,戸籍謄本又は戸籍抄本及び同法7条2号(成年被後見人又は被保佐人であること)に該当しない旨の登記事項証明書を添え,これを国土交通大臣に提出しなければならない(1条1項。 )イ国土交通大臣は,施行規則1条の規定による申請があった場合においては,免許申請書の記載事項を審査し,申請者が一級建築士となる資格を有,,,すると認めたときは建築士法5条1項の一級建築士名簿に登録しかつ申請者に所定の一級建築士免許証を交付する(2条1項。この場合にお)いて,申請者が一級建築士となる資格を有しないと認めたときは,理由を付し,免許申請書を申請者に返却する(同条2項。 )- 4 -ウ一級建築士が建築士法10条1項の規定によって免許を取り消された場合においては 一級建築士となる資格を有しないと認めたときは,理由を付し,免許申請書を申請者に返却する(同条2項。 )- 4 -ウ一級建築士が建築士法10条1項の規定によって免許を取り消された場合においては,取消しの通知を受けた日から10日以内に,免許証を国土交通大臣に返納しなければならない(6条4項。この規定により受納を)する国土交通大臣の権限は,地方整備局長及び北海道開発局長に委任される(25条9号。 ) 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告の資格及び就労状況(甲13,原告本人)原告は,昭和57年12月17日に一級建築士試験に合格し,昭和58年2月7日付けで一級建築士の免許を受けた。 原告は,平成14年10月28日に株式会社A(後に「株式会社B」へと商号変更。以下「本件会社」という)に就職し,平成15年4月1日から。 は,同社が「株式会社AC支店一級建築士事務所」の名称で東京都港区内に設置した建築士事務所(後に「株式会社BC支店一級建築士事務所」へと名称変更)の管理建築士(建築士法24条)として登録され,同事務所に勤務していた。 (2)名義貸し(甲1,6ないし11,13,乙3,原告本人)別紙「建築物目録」1ないし13記載の各建築物(以下「本件各建築物」といい,個々に特定するときは「本件建築物1」など同目録の番号で特定する)は,原告が本件会社に就職した後に同社が発注し,平成15年8月こ。 ろから平成17年8月ころまでの間にD株式会社(以下「D」という)又。 は株式会社E(以下「E」という)が建設工事を行った鉄筋コンクリート。 造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物であり,いずれも一級建築士でなければその設計及び工事監理を行うことができないものである。 原告は,本件会 以下「E」という)が建設工事を行った鉄筋コンクリート。 造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物であり,いずれも一級建築士でなければその設計及び工事監理を行うことができないものである。 原告は,本件会社の営業上の理由から,本件各建築物につき,自らは全く設計をせず,工事監理を行う意思もなかったにもかかわらず,その建築確認- 5 -申請書に,設計者及び工事監理者として一級建築士としての自己の名義を記載することを承諾し,その設計図書にも,設計者として自己の名義を記載することを承諾した(以下「本件名義貸し」といい,このように自己の建築士としての名義を他人が上記各書面に記載することを承諾する行為一般を「名義貸し」という。 。)本件建築物1ないし5は,別紙建築物目録の「建築基準法20条違反の有無」欄記載のとおり,同条に違反し,耐震強度が不足しており,本来有すべき耐震強度の26パーセント(本件建築物2)ないし78パーセント(本件建築物4)しか有しない違法建築物である。これは,平成17年11月ころからいわゆる「耐震強度偽装事件」として大きく報道され社会的に反響を呼んだ事件(ある一級建築士が法令違反の構造計算書をあたかも正当なものであるかのように装って作成し,これを見逃して建築確認が行われたために,耐震強度に欠けるマンション,ホテル等が多数建築されていたことが発覚したもの)を受けて行われた調査の結果判明した。 (3)名義貸しの発覚及び聴聞手続(甲1,2,3の1・2,乙1ないし7)国土交通省関東地方整備局長(以下「関東地方整備局長」という)は,。 ,,本件建築物1ないし4の設計者の名義が原告であったことから原告につき建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行いそれにより耐震性等の不足する構造上危険な建築物を現出させた責任を問うための建築士法 件建築物1ないし4の設計者の名義が原告であったことから原告につき建築基準法令に定める構造基準に適合しない設計を行いそれにより耐震性等の不足する構造上危険な建築物を現出させた責任を問うための建築士法10条1項に基づく懲戒処分の前提となる聴聞の実施を決定し,平成17年12月12日付けで原告に通知した上,同月27日に聴聞を実施した。 聴聞の期日において,原告が,自分は上記各建築物の設計及び工事監理を,,,行っていないなどと申し立てたため関東地方整備局長は改めて調査をしその結果,原告につき,本件名義貸しの責任を問うための同法10条1項に基づく懲戒処分の前提となる聴聞の実施を決定し,平成18年1月11日付けで原告に通知した。 - 6 -原告は,同月18日の聴聞の期日に出頭せず,代わりに原告の代理人が聴聞主宰者あての陳述書を提出した。同陳述書の内容は,原告が本件名義貸しをしたことを認めた上で,自ら違法建築物の設計をした建築士との相違等を理由に寛大な処分を求めるとともに,この陳述書をもって弁明とするので聴聞を再度開催する必要はないと述べるものであった。関東地方整備局長はこ。 ,,,れをもって聴聞手続を終了したなお原告の代理人は同月18日付けで同局長にあてて上記陳述書と同じ内容の意見書を作成して送付し,これは翌19日同局長に到達した。 (4)免許取消処分(甲4,乙8,9)国土交通大臣は,平成18年1月24日,中央建築士審査会に対し,原告の一級建築士の免許取消処分について同意を求め,同審査会は同日これに同意した。 同大臣は,これを受けて,同日,建築士法10条1項2号に基づき,原告の一級建築士免許を取り消す処分をし(以下「本件取消処分」という,。)その処分通知書は,同月26日,原告に到達した。 同処分通知書における人定事項の次の 同日,建築士法10条1項2号に基づき,原告の一級建築士免許を取り消す処分をし(以下「本件取消処分」という,。)その処分通知書は,同月26日,原告に到達した。 同処分通知書における人定事項の次の本文冒頭から日付の前までの記載は3つの段落からなり,第1段落には本件取消処分が記載されており,第2,第3段落は下記のとおりであった(以下,第2段落を「本件告知1,第3」段落を「本件告知2」という。 。)記(第2段落)また,建築士法第8条第3号の規定に基づき,免許取消しの日から起算して4年を経過するまで(ただし,第8条第1号又は第2号に該当することとなった場合にはこの限りではない)は免許を与。 えないこととする。 (第3段落)- 7 -なお,建築士法施行規則(昭和25年建設省令第38号)第25条第9号及び第6条第4項の規定により,この通知を受けた日から10日以内に,一級建築士の免許証を関東地方整備局長あてに返納すること。 ()(5)名義貸しをした一級建築士に対する懲戒処分の実例乙12の1~11平成12年度から平成18年度までの間に一級建築士に対して名義貸しを理由として建築士法10条1項に基づき行われた懲戒処分の実例をみると,別紙「名義貸し』による処分実例」及び同「名義貸し』対象となった建『『築物目録」記載のとおりである。そこにあるとおり,平成12年度から平成16年度までは処分実例が全くなく,本件取消処分が行われた平成17年度は7件,その翌年度の平成18年度は4件の処分実例がある(上記各別紙の5番が原告である。処分のあった11件の内訳は,免許取消しが4件,。),,,。 業務停止10月が1件同5月が1件同3月が4件同2月が1件である名義貸しの対象となった建築物の数だけを取り出して処分内容と対照してみると下 件の内訳は,免許取消しが4件,。),,,。 業務停止10月が1件同5月が1件同3月が4件同2月が1件である名義貸しの対象となった建築物の数だけを取り出して処分内容と対照してみると下記のとおりであり,原告の13件が最高である。もっとも,原告以外で免許取消しとなった3人は,いずれも,原告とは異なり,管理建築士の名義貸し(管理建築士としての業務を行う意思がないにもかかわらず,自己の名義を設計事務所の管理建築士として使用することを承諾すること)も行ったとされている。 記〔処分内容〕〔名義貸しの対象となった建築物の数〕免許取消し 同 同 同 業務停止10月 - 8 -業務停止5月 業務停止3月 同 同 同 業務停止2月 争点 本件の争点は以下のとおりであり,摘示すべき当事者の主張は後記第3「争点に対する判断」に掲げるとおりである。原告は,無効確認の訴えと取消しの訴えを併合提起し,前者を主位的,後者を予備的と位置づけているが,両者は実体上両立し得る請求であり,しかも,取消請求が出訴期間内であるから,便宜上,取消請求の判断,すなわち,適法性の判断を先行させることとする。 (1)本件告知1及び同2は抗告訴訟の対象となる処分か。 (2)本件取消処分は適法か。 ア聴聞通知書の瑕疵の有無イ処分基準違反の有無ウその他,裁量権の範囲の逸脱又は濫用(比例原則違反,平等原則違反)の有無(3)本件取消処分には無効原因(重大かつ明白な違法性)があるか。 (4)本件告知1及び同2は適法か。 (5)本件告知1及び同2には無効原因(重大かつ明白な違法性)があるか。 第3争点に対する判断 争点(1)(本件告知1及び同2の処分性)について(1)抗告訴訟の対象となる処分抗告訴訟の対 (5)本件告知1及び同2には無効原因(重大かつ明白な違法性)があるか。 第3争点に対する判断 争点(1)(本件告知1及び同2の処分性)について(1)抗告訴訟の対象となる処分抗告訴訟の対象となる処分とは「行政庁の処分その他公権力の行使に当,たる行為」であり(行政事件訴訟法3条1項,2項,4項,これは,公権)- 9 -力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照。 )被告は,本件告知1及び同2はいずれもこの意味での処分ではないとし,本件訴えのうちこれらの無効確認又は取消しを求める部分はいずれも不適法であると主張するので,以下,検討する。 (2)本件告知1原告は,本件告知1によって,法的にみて原告が必然的に免許が取得できなくなるものではないとしつつも,現実には,4年間免許を与えないとする旨通知した国土交通大臣がその判断を覆すことはあり得ず,職業選択の自由に重大な制約をもたらすことからすれば,処分性を肯定すべきであると主張する。 これに対し,被告は,国土交通大臣が本件告知1をしたのは次の理由からであると主張する。すなわち,建築士法は,一級建築士免許が取り消された者については,取消しの日から2年を経過しない間は免許を与えないこととし(同法7条3号の絶対的欠格事由,2年を経過しても5年を経過しない)間は,免許を与えないことがあるとしている(同法8条3号の相対的欠格事)。 ,,,由そのため取消処分を受けた者は取消しの日から2年が経過しても5年が経過するまでの間は,申請をしてみなければ免許を受けられるか否かがわからないという不安定な立場に 対的欠格事)。 ,,,由そのため取消処分を受けた者は取消しの日から2年が経過しても5年が経過するまでの間は,申請をしてみなければ免許を受けられるか否かがわからないという不安定な立場に置かれる。そこで,同大臣は,本件取消処分の時点においてこの点についての意向を伝えることにより原告の立場の不安定さを一定限度で解消することとし,本件取消処分に併せて本件告知1をしたというものである。したがって,本件告知1は純然たる事実行為であり,これにより,新たな免許の申請すらない本件取消処分の時点において,本件取消処分の効力発生日から4年間原告が一級建築士免許を受けることが- 10 -できないなどの法的効果を生じさせるものではないとする。 建築士法の定める一級建築士の免許の仕組みは,前記「関係法令の定め」に記載したとおりであり,免許を受けようとする者は国土交通大臣に対して申請をし,同大臣が審査をした上でその申請の許否を判断するものとされている。そして,同法10条1項に基づき免許が取り消された場合,免許取消しの日から起算して2年を経過しない者には一級建築士の免許を与えず(同法7条3号,また,免許取消しの日から起算して5年を経過しない者には)一級建築士の免許を与えないことがある(同法8条3号)とされる。同法8条3号は,その与えない場合について具体的な要件を定めていないから,この場合に免許を与えるか否かは,免許権者である同大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解される。そうすると,取消しの日から2年を経過し5年を経過するまでの者が免許の申請をした場合,その申請に基づき免許が与えられるか否かは,あくまでもその時点における同大臣の裁量判断によって決まることとなる。 以上の仕組みを前提にすると,本件告知1は,取消しの日から2年を経過しても4年を 合,その申請に基づき免許が与えられるか否かは,あくまでもその時点における同大臣の裁量判断によって決まることとなる。 以上の仕組みを前提にすると,本件告知1は,取消しの日から2年を経過しても4年を経過するまでは免許を与えないことになろうという本件取消処分時点での国土交通大臣の意向を示すことによって,当該免許の許否について目安となる情報を提供したものということができるが,この意向に,後に実際に免許の申請がされた際の国土交通大臣が拘束されるとする法的根拠は存在しない。そうすると,取消しの日から2年を経過し4年を経過する前に原告が一級建築士免許の申請をした場合,国土交通大臣は,本件告知1を理由に直ちにその申請を拒否することは許されず,その時点で新たに審査をし。 ,,た上で判断をする義務があるというべきであるしたがって本件告知1は原告の免許取得を4年間禁止する法的効果を生じさせるものではなく,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定するものではないといわなければならないから,これを処分ということはできない。 - 11 -原告は,最高裁昭和45年12月24日第一小法廷判決(民集24巻13号2243頁)及び最高裁平成17年7月15日第二小法廷判決(民集59巻6号1661頁)を引用し,これらの判例が本件告知1の処分性を肯定する根拠になると主張するが,いずれの事例も事案を異にするから原告の主張の根拠にはならない。 ちなみに,原告の主張が不合理であることは,本件告知1が処分であると仮定した場合の帰結を考えればより一層明白となる。仮に本件告知1が処分であるとすると,原告は,免許取消しの日から起算して2年を経過しても,4年を経過するまでは一級建築士免許を受けられないことが確定することに,。 なるがこれが法的根拠のないものであることは既に説明し であるとすると,原告は,免許取消しの日から起算して2年を経過しても,4年を経過するまでは一級建築士免許を受けられないことが確定することに,。 なるがこれが法的根拠のないものであることは既に説明したとおりであるすなわち,本件告知1は,その処分性を肯定するや否や,その内容自体違法な処分になるという矛盾した事態が生じるのである。このことからしても,本件告知1を処分と認めることはできないことが裏付けられる。 (3)本件告知2原告は,本件告知2において,現に原告の有する免許証に関して,国土交通大臣が「返納すること」を義務付けている以上,免許証を所持する権利を奪う処分というべきであると主張する。 これに対して,被告は次のように主張する。すなわち,国土交通大臣が一級建築士の免許を与えたときは,一級建築士免許証が交付されるが(建築士法5条2項,免許を取り消された場合においては,取消しの通知を受けた)日から10日以内に,その免許証を同大臣に返納しなければならないとされており(施行規則6条4項,その受納をする権限は地方整備局長に委任さ)れている(同規則25条9号。したがって,本件告知2は,本件取消処分)に伴い原告が法令上免許証を返納しなければならない義務を負うに至ったことを前提として,その手続を説明し,免許証の返納を促した純然たる事実行為にすぎず,これによって原告に免許証を返納しなければならない義務を生- 12 -じさせるものではないというものである。 被告の主張するとおり,一級建築士免許取消処分を受けた者は,上記各法令の規定上当然に免許証を地方整備局長に返納する義務を負うこととなるのであって,本件告知2によって原告に返納義務が課せられるわけではない。 したがって,本件告知2は,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから 局長に返納する義務を負うこととなるのであって,本件告知2によって原告に返納義務が課せられるわけではない。 したがって,本件告知2は,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではないから,これを処分ということはできない。 ちなみに,原告の主張が不合理であることは,ここでも,本件告知2が処分であると仮定した場合の帰結を考えればより一層明白である。仮に本件告知2が処分であるとすると,原告は,本件取消処分は争わずにその効力を確定させながら,本件告知2のみを争うことが可能となるが,そのような事態が上記各法令の規定上許されないものであることは明らかである。このこと,。 からしても本件告知2を処分と認めることはできないことが裏付けられる(4)まとめ以上のとおり,本件告知1及び同2は,いずれも抗告訴訟の対象となる処分とはいえないから,その余の点について判断するまでもなく,本件訴えのうちこれらの無効確認又は取消しを求める部分はいずれも不適法として却下を免れない。 争点(2)(本件取消処分の適法性)について(1)建築士法10条1項の懲戒処分建築士法10条1項の定める一級建築士に対する懲戒処分は,同項各号の懲戒事由がある場合に,当該一級建築士に対し,戒告,1年以内の業務停止又は免許取消しの制裁を科すことによって,設計及び工事監理の業務が適正に行われることを期するものであり,同時に,一級建築士及び一級建築士免許制度に対する国民の信頼を維持することをも目的とする。 同項の懲戒事由がある場合に,懲戒処分をすべきか否か,懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかについては,同法は具体的な基準を設け- 13 -ていないところ,そのような判断をするためには,上記懲戒処分の目的に照,,,,,,らせば懲戒事由に該当する行為の種類 処分を選択すべきかについては,同法は具体的な基準を設け- 13 -ていないところ,そのような判断をするためには,上記懲戒処分の目的に照,,,,,,らせば懲戒事由に該当する行為の種類性質違法性の程度動機目的影響のほか,当該一級建築士の処分歴など,諸般の事情を総合的に考慮することが必要である。したがって,懲戒事由がある場合に,戒告,業務停止又は免許取消しの処分をするか否か,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかは,懲戒権者であり免許権者でもある国土交通大臣の合理的な裁量にゆだねられているものと解される。それゆえ,同大臣がその裁量権の行使としてした同項の懲戒処分は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとして違法となるものと解すべきである。 本件取消処分の適法性はこの観点から検討すべきこととなるから,以下に,,(),おいてはまず原告につき懲戒事由の存否とその態様を確認し下記(2)原告の主張する手続的違法(聴聞通知書の瑕疵)があるか否かを検討した上で(下記(3) ,国土交通大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある)か否かを検討する(下記(4)及び(5) 。 )(2)原告の懲戒事由原告が本件名義貸しを行ったことは当事者間に争いがない。被告は,本件名義貸しが建築士法18条1項及び20条1項に違反し,10条1項2号の懲戒事由に該当すると主張するので,この主張の当否を検討する。 本件名義貸しに類する行為を明示的に禁じた規定は建築士法には存在しないが,同法20条1項は,設計を行った建築士は,その設計図書に一級建築士,二級建 該当すると主張するので,この主張の当否を検討する。 本件名義貸しに類する行為を明示的に禁じた規定は建築士法には存在しないが,同法20条1項は,設計を行った建築士は,その設計図書に一級建築士,二級建築士又は木造建築士たる表示をして記名及びなつ印をしなければならないと規定している。これは,資格を有する者によって設計図書が作成されたことを示して設計図書に対する信頼を確保するとともに,設計図書作- 14 -成の責任の所在を明確にすることによって設計図書の質を確保することを目的とするものと解される。 設計を行った建築士がその設計図書に自己の名義でなく他の建築士の名義を表示すれば,同法20条1項に反することはいうまでもないが,その名義を貸した建築士も,この違反行為に加担したものとして同項に反することになるものと解される。少なくとも同項の趣旨に反することは明らかである。 次に,一級建築士でない者が,一級建築士でなければ設計をすることができない建築物(同法3条)につき,一級建築士の名義を借りて設計図書を作成すれば,同条に反することはいうまでもないが,その名義を貸した一級建築士も,この違反行為に加担したものとして同条に反することになるし,そればかりでなく,設計図書に対する信頼及びその質の向上を図ることを目的とした同法20条1項の趣旨にも反することになるものと解される。また,名義を借りた者が建築士であるか否かを問わず名義貸しをした建築士はそ,,「の業務を誠実に行い,建築物の質の向上に努め」ているものとは到底評価し得ないから,同法18条1項に反することにもなる。 建築確認申請書の設計者欄及び工事監理者欄への名義貸しについては,同法20条1項に相当する規定は存在しないが,これも責任の所在を不明確にする行為であることに変わりはなく,かつ,建築物における なる。 建築確認申請書の設計者欄及び工事監理者欄への名義貸しについては,同法20条1項に相当する規定は存在しないが,これも責任の所在を不明確にする行為であることに変わりはなく,かつ,建築物における建築確認申請書の重要性は設計図書の重要性に勝るとも劣らないものといえるから,設計図書の場合と同様に,同法18条1項に反するものといえる。 以上によれば,被告の主張は正当であり,本件名義貸しは同法18条1項及び20条1項に違反し,10条1項2号の懲戒事由に該当する。 これに対し,原告は,本件名義貸しの相手は一級建築士であると主張した上,同法24条及び34条の2を引用し,これらの規定からすれば,建築士に対する名義貸しと建築士でない者に対する名義貸しとは区別され,両者の間には違法性に質的な差があると主張する。そして,本件取消処分が従うべ- 15 -き処分基準においても,名義貸しが違法とされる根拠としては上記各法条しか引用されていないから,本件名義貸しは同処分基準にいう名義貸しには当てはまらないとの趣旨の主張をする。 本件名義貸しの相手が一級建築士であったという原告主張の事実については,原告は,本人尋問においてその趣旨の供述をするが,これを裏付けるに足りる証拠は存在しないので,認めることはできない。しかし,仮に本件名義貸しの相手が一級建築士であったとしても,それを理由に本件名義貸しの違法性が弱くなるということはできないというべきである。上で説明したとおり,名義貸しは同法18条1項及び20条1項に違反するものであり,その根拠は,設計図書の作成者としての責任の所在,あるいは,建築確認申請書における設計者又は工事監理者としての責任の所在を不明確にするところにある。そうであるとすれば,名義を偽る行為に加担することこそが,名義貸しが違法とされる理由というべき 在,あるいは,建築確認申請書における設計者又は工事監理者としての責任の所在を不明確にするところにある。そうであるとすれば,名義を偽る行為に加担することこそが,名義貸しが違法とされる理由というべきであり,名義貸しの相手が建築士であるか否かによって違法性が左右されることはない。相手が建築士でない者であれば,その情状が一層重くなるにすぎないと解される。したがって,違法性の点において,建築士に対する名義貸しと建築士でない者に対する名義貸しとを区別することはできないのであり,原告の上記主張は採用することができない。また,本件取消処分に適用される処分基準において,名義貸しが違法であることの根拠として引用されている関係条文が同法24条及び34条の2のみであることは原告の主張するとおりであるが(別紙「別表第1処分等の基準」の「表2ランク表」参照,そうであるからといって,本件)名義貸しのような態様の名義貸しが同法18条1項及び20条1項に違反するとの上記の解釈が否定されるものではない。したがって原告の主張には理由がない。 (3)聴聞通知書の瑕疵の有無原告は,関東地方整備局長が平成18年1月11日付けで原告に対して行- 16 -った聴聞の通知は,通知書に記載された根拠となる法令の条項(行政手続法15条1項1号)が不明確であるから瑕疵があると主張する。 証拠(乙4)によれば,上記聴聞通知書には,根拠となる法令の条項として「建築士法第10条第1項」と記載されているのみで,同項の何号に該当するのかが明記されていないことが認められる。 しかし,他方で,上記聴聞通知書には「予定される不利益処分の内容」,として「免許取消又は業務停止」と記載され「不利益処分の原因となる事,実」として,本件名義貸し行為が逐一記載されている。これらの記載を読めば,本件名 聞通知書には「予定される不利益処分の内容」,として「免許取消又は業務停止」と記載され「不利益処分の原因となる事,実」として,本件名義貸し行為が逐一記載されている。これらの記載を読めば,本件名義貸しが建築士法10条1項の懲戒事由に当たるとされていること,それを理由に免許取消し又は業務停止の処分が予定されていることは一目瞭然であり,これを前提として原告が聴聞手続における防御の準備を行うことは十分可能である。確かに,原告の主張するとおり,根拠となる法令の条項としては,単に同法10条1項を挙げるだけでなく,同項2号に該当するものであることを明記することが望ましいとまではいえるが,上記のとおり,本件においては,原告の防御の準備に支障が生じるものとは考えられないから,上記聴聞通知書に瑕疵があるということはできない。 原告は,また,本件名義貸しが重大な違反であり本件取消処分は正当であるとする本件訴訟における被告の主張を前提にすれば,予定された不利益処分は「免許取消し」以外あり得なかったのであり,そうである以上,関東地方整備局長は,上記聴聞通知書に「業務停止」を記載してはならなかったとも主張する。しかし,聴聞を行う前に,聴聞を踏まえて決定すべき(行政手続法26条)具体的な不利益処分の内容が既に決まっていることが,上記主張の前提となっているが,そもそもそのようなことはあってはならないことであるから,主張の立論自体が問題であるし,本件においても,国土交通大臣ないし関東地方整備局長がそのようにして手続を進めていたことをうかがわせるに足りる証拠すら存在しないのであるから,原告の上記主張は採用す- 17 -ることができない。 以上のとおり,本件取消処分の前提となった聴聞に関する聴聞通知書に瑕疵はないから,これに瑕疵があり,それゆえに本件取消処分が違法で であるから,原告の上記主張は採用す- 17 -ることができない。 以上のとおり,本件取消処分の前提となった聴聞に関する聴聞通知書に瑕疵はないから,これに瑕疵があり,それゆえに本件取消処分が違法であるとする原告の主張は理由がない。 (4)本件取消処分は処分基準に違反するかア建築士法10条1項に基づく建築士に対する懲戒処分に関しては,行政手続法2条8号ハに規定する処分基準が定められており,本件取消処分当時のそれは平成11年12月28日付け建設省住指発第784号「建築士の処分等について(通知」であった(以下単に「処分基準」という。 )。)別紙「別表第1処分等の基準」は,その内容を抜粋したものである。 本件取消処分は処分基準に従って行われるべきものであるが,原告は,本件取消処分は処分基準に違反すると主張するので,以下検討する。 イ本件名義貸しに対する処分基準の適用に関する被告の主張は,次のとおりである。 (ア)本件取消処分の理由となった懲戒事由は建築士法10条1項2号であるから,処分基準別表第1処分等の基準(2)により「表2の懲戒事由に記載した行為に対応する処分ランクを基本に,表3に規定する情状に応じた加減を行ってランクを決定し,表4に従い処分内容を決定する」こととなる。 懲戒事由に該当する行為が複数ある場合には,処分基準別表第1の表4に続く欄の1(2)で「二以上の処分等すべき行為について併せて処,分等を行うときは,最も処分等の重い行為のランクに適宜加重したランクとする」とされている「適宜加重」の考え方については,従来よ。 。 り,最も処分等の重い行為のランクに,ランクの最低単位である1ランクを行為の件数に応じて加重することを基本としている。 (イ)本件名義貸しは,13棟の建築物について,それぞれ,当該建築物- 18 - 最も処分等の重い行為のランクに,ランクの最低単位である1ランクを行為の件数に応じて加重することを基本としている。 (イ)本件名義貸しは,13棟の建築物について,それぞれ,当該建築物- 18 -の設計及び工事監理を行う意思がないにもかかわらず,各建築確認申請書の設計者欄及び工事監理者欄並びに設計図書に自己の建築士としての名義を記載することを承諾したというものであり,それぞれの行為は,いずれも,上記表2の懲戒事由のうち「名義貸し」に該当する(処分基準別表第1備考3懲戒事由の説明(1)において名義貸しは建「」,「」,「築士が,業務を行う意思がないにもかかわらず,自己の建築士としての名義を,建築確認申請書等における申請代理者,設計者,工事監理者等として記載すること・・・を許すような場合」と定義されている。 。)なお,この違反行為は「重大な違反」であり,,建築関係法令違反の中でもより重い処分が行われるべきものとされている(上記表2(注)1。 )次に,本件名義貸しは13件の名義貸しであるから,そのうちの1件分の6ランクを「最も処分等の重い行為のランク」とし,これを除いた他の12件分の名義貸し行為について,それぞれ1ランクの加重をすることとした。さらに,これらの行為は2年を超える長期にわたって行われていたものであるから,処分の加減事由を定めた処分基準別表第1の表3にある「行為の態様」のうち「法違反の状態が長期にわたる場合」に該当し,3ランクの加重をすることとした。 (ウ)処分基準では,最も重い処分である免許取消処分のランクは16ランクであり,上記表3の(注)2において「情状等を加味した結果,16ランクを超える場合は16ランクとする」とされているところ,上。 記(イ)のとおり,原告については21ランクとなることから, 16ランクであり,上記表3の(注)2において「情状等を加味した結果,16ランクを超える場合は16ランクとする」とされているところ,上。 記(イ)のとおり,原告については21ランクとなることから,免許取消処分が相当ということになる。 (エ)したがって,本件取消処分は,処分基準に従って適切に判断されたものである。 ウこれに対し原告は次のとおり主張する。 - 19 -(ア)本件名義貸しは,D又はEの一級建築士に対して名義貸しをしたもので,実際にも一級建築士が設計及び工事監理を行った。原告は,それぞれに対し,自己の名義を使用することを包括的に承諾していたのであるから,行為は2個である。そして,D及びEが実際に建築した各建築物は,いずれも時期的場所的に極めて近接した時期及び場所において建築されているから,本件名義貸しは,少なくとも各施工業者ごとに一つの行為とみることができ,したがって,そのようなものとしてランキングすべきである(処分基準別表第1の表4に続く欄の1(2) 。 )原告には名義貸しの故意はあっても,その内容において悪質な故意ではない。建築物は倒壊,破損しておらず,人も死傷していない。それどころか,本件会社は,耐震強度偽装事件発覚後,会社の存続をかけて多,,。 額の借金をした上で迅速に建築物の買取り移転補償補強工事をした(イ)上記(ア)の事実関係により,処分基準を適用すると次のとおりになる。 D又はEに対する各名義貸し行為が処分ランク6に当たり,名義貸し行為が1個であることから慣習に従って処分ランク1が「適宜加重」される。原告の承諾行為は当初の各1回であることから「常習的に行っ,ている場合」には当たらず,これに当たるとしての加算は許されない。 また「その他どうしても加味しなければならない情状等」には当たら,ない。 の承諾行為は当初の各1回であることから「常習的に行っ,ている場合」には当たらず,これに当たるとしての加算は許されない。 また「その他どうしても加味しなければならない情状等」には当たら,ない。 さらに,本件会社は,会社として,物件の買取り,入居者への補償,解体工事等の対応をしているが,原告はこれら本件会社の対応に自ら積極的にかつ精力的にかかわってきた。したがって「積極的かつ速やか,に是正(損害填補)に対応」していたこと(処分基準別表第1の表3の「是正等の対応」欄参照)により1ランク減軽される。 そうすると,原告の行為についての処分ランクは,少なくとも15以- 20 -下であり,業務停止が行われるべきであって,免許取消しをもって臨むことは処分基準に違反する。 なお,本件における処分基準の適用は,処分内容を決定する計算が著しい丼勘定であるばかりでなく,結論先にありきで計算がされ,都合のよい悪情状のみを考慮しているというべきである。 エ前記イにおける処分基準の適用に関する被告の説明は,本件名義貸しに対する処分基準の適用として誤りがあるとは解されず,したがって,本件取消処分は処分基準に従い正当に行われたものと判断することができる。 以下,上記ウの原告の主張を検討する形で,その理由を述べる。 (ア)原告は,名義貸しの数は,建築物の数によって決めるのではなく,名義貸し行為そのものの数によって決めるべきであり,一人の相手に対して包括的に名義の使用を承諾したときは,名義貸しの数は1個であると主張する。 しかし,名義貸しが建築士法違反とされるのは,前記(2)において説明したとおり,個々の建築物の設計図書又は建築確認申請書における責任の所在を不明確にするところにあるのであるから,同法違反としての名義貸しの数は,当然,建築物の数によって決めるべきこと )において説明したとおり,個々の建築物の設計図書又は建築確認申請書における責任の所在を不明確にするところにあるのであるから,同法違反としての名義貸しの数は,当然,建築物の数によって決めるべきことになる。原告は,包括的に名義の使用を承諾する行為は行為態様として一つであると主張するが,名義貸しは,個々の建築物について設計図書又は建築確認申請書が作成,提出されることによって初めて同法違反として規制の対象となり得るのであって,このような一連の過程を踏まえれば,たとえ承諾行為が包括的なものであったとしても,複数の建築物について設計図書等が作成された場合,同法違反の行為態様としてそれを一つとみることはできない。原告の主張は同法の解釈として採り得ない。したがって,本件名義貸しにつき,本件各建築物の数に従って名義貸しの数を数えることは,処分基準の適用として正当である。なお,念のため付け- 21 -加えるが,原告は,本人尋問においても,名義貸しをした相手を個々に,,特定する供述すらせずほかにこれを特定するに足りる証拠もないから名義貸しの相手が,Dの設計担当者及びEの設計担当者それぞれ1名ずつ,合計2名に限られるとする原告の主張事実自体,そもそも認めるに足りない。原告の主張はこの点からしても理由がない。 また,本件各建築物は,場所も建築時期も異なる別個の建築物であるから,本件名義貸しを全体として一の行為とみる余地もない(処分基準別表第1の表4の欄に続く1(2)参照。 )(イ)次に,原告は,上記(ア)の主張を前提として,原告の承諾行為は2個だけであるから「法違反の状態が長期にわたる場合」には該当しな,いとも主張する。 しかし,上記(ア)のとおり,本件名義貸しは,建築士法違反の行為として2個ではなく13個であり,その建築状況によれば,本件名義 から「法違反の状態が長期にわたる場合」には該当しな,いとも主張する。 しかし,上記(ア)のとおり,本件名義貸しは,建築士法違反の行為として2個ではなく13個であり,その建築状況によれば,本件名義貸しは約2年の長期間にわたって行われたことになる。したがって「法違,」,反の状態が長期にわたる場合として処分ランクを加重することもまた処分基準の適用として正当である。 ,,(ウ)原告は耐震強度偽装事件が発覚した後の本件会社の対応を理由に原告の処分ランクは減軽されるべきであるとも主張する。 しかし,名義貸しが建築士法違反とされる理由は責任の所在を不明確にするところにあるから,いったん設計図書に記名及びなつ印をしてこれを利用に供し,あるいは,建築確認申請書に記名をしてこれを提出した以上,同法違反の行為としては完結しているのであり,さらに,その建築物が建物として完成すれば,もはや回復するすべはない状況にあるというほかない。別の言い方をすれば,名義貸しの行われた建築物に瑕疵がない場合であっても,名義貸しが行われたことによって,設計図書及び建築確認申請書,ひいては建築物に対する信頼は既に害されている- 22 -といわざるを得ないのである。したがって,本件会社が事後的にいかなる対応をし,これに原告がいかなる関与をしたかにかかわらず,そのような事情は,原告に対する処分ランクを減軽する理由にはなり得ない。 以上のとおり,処分基準の適用に誤りがあるとする原告の主張はいずれ,。 も理由がなく本件取消処分は処分基準に従い正当に行われたものであるそして,処分基準自体に裁量権の範囲の逸脱又は濫用を導くような違法があるとの主張はなく,実際にも処分基準にそのような違法があるとは認められないから,結局,本件取消処分に裁量権の範囲の逸脱又は濫用はないというこ 基準自体に裁量権の範囲の逸脱又は濫用を導くような違法があるとの主張はなく,実際にも処分基準にそのような違法があるとは認められないから,結局,本件取消処分に裁量権の範囲の逸脱又は濫用はないということができる。 (5)裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無に関するその他の主張の検討原告は,処分基準の適用に誤りがあるとの主張に加えて,本件取消処分には,比例原則違反及び平等原則違反があり,その結果,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるとも主張するので,検討する。 ア比例原則違反について原告は,耐震強度の不足する本件建築物1ないし5の設計図書の作成に自分は全くかかわっていないのであるから,名義貸しにつき何らかの責任,,,が問われるとしても自らが意匠設計をし工事監理をした者と比べればその質において軽度な違反であり,免許取消処分という原告の建築士人生を否定するに等しい重大な処分をするのは比例原則に反すると主張する。 しかし,上記(4)において検討したとおり,本件取消処分は,名義貸しという建築士法違反の行為をとらえて行われたものであり,耐震強度の不足する建築物を現出させたことを問題にしているのではないから,原告の主張は見当違いである。 原告は,また,少なくとも耐震強度偽装事件発覚前においては,本件名義貸しと同様,他の一級建築士に設計を委託する形態の名義貸しは建築業界において一般に行われていたのであり,一級建築士あるいは建築士でな- 23 -い者に設計をさせる目的で名義の使用を許諾する形態の名義貸しと比べて質的に軽微であることは明らかであるから,本件取消処分はこの意味においても比例原則に反すると主張する。 この点については,既に繰り返し論じてきたとおり,名義貸しが建築士法違反とされるのは,責任の所在を不明確にするところにあり,一級建築士に対する名義 はこの意味においても比例原則に反すると主張する。 この点については,既に繰り返し論じてきたとおり,名義貸しが建築士法違反とされるのは,責任の所在を不明確にするところにあり,一級建築士に対する名義貸しとそうでない者に対する名義貸しとの間に,違法性において区別はない。確かに,建築士でない者に対する名義貸しがより悪質性の強いものであるということはできるかもしれないが,それは,処分ランクの加重理由として考慮すべきものであり,一級建築士に対する名義貸しであることを処分ランクの減軽理由とすべきであるとする原告の主張を採用することはできない。なお,本件名義貸しの相手が一級建築士であるとする原告の主張事実自体を認めることができないことも既に述べた。 また,平成12年度から平成18年度までの間の一級建築士に対する名義貸しを理由とする懲戒処分の実例をみると,平成12年度から平成16年度までは懲戒処分が全く行われていないのは確かであるが,そうであるからといって名義貸しが容認されていたということにはならない。常識的に考えても,名義を偽る行為に加担することが不誠実かつ不適当なものであることは明らかであるし,実際にも,建築士の名義貸しに対する社会的な非難が従前から存在していたことを否定することはできない。たまたま過去において懲戒処分例がなかったからといって,これを理由とする懲戒処分が許されないということにはならないし,事案の内容によっては,最も重い処分である免許取消処分をもって臨むことも許されるものと解される。 原告は,本件各建築物の購入者等の被害者に対する本件会社の事後的な対応や原告のそれへの寄与を挙げ,これらは原告の責任を減軽する理由になるとも主張するが,上記(4)において説明したとおり,たとえそのよう- 24 -な事情があったとしても,原告の責任を減 事後的な対応や原告のそれへの寄与を挙げ,これらは原告の責任を減軽する理由になるとも主張するが,上記(4)において説明したとおり,たとえそのよう- 24 -な事情があったとしても,原告の責任を減軽する情状として考慮することはできない。 原告は,本件取消処分は,本件建築物1ないし5が耐震強度に欠ける違法建築物となったのは本件名義貸しが原因であるという事実誤認に基づいて行われたなどとも主張するが,本件取消処分がそのような理由に基づいて行われたものでないことは既に説明したとおりであり,この原告の主張も理由がない。 以上のとおり,原告の主張するところを逐一検討しても,本件取消処分が比例原則に違反し,それゆえ裁量権の範囲の逸脱又は濫用になるとする原告の主張には理由がない。 イ平等原則違反について原告は,少なくとも従前においては,他の一級建築士に設計を委託する形態の名義貸しは建築業界において一般的に行われていたが,これについて処分がされた事例は存在しないか,存在したとしてもごく少数であると思われるから,本件取消処分は平等原則に反すると主張する。 本件名義貸しの相手が一級建築士であるとする原告の主張する事実を認定することができないことは既に述べたところである。仮にこれが認定できたとしても,それをもって原告の責任を減軽する理由として考慮することができないことも,既に述べたとおりである。 そして,他の処分例と比較してみても,平成17年度及び平成18年度においては,原告を含め合計4名の一級建築士に対して名義貸しを理由とする免許取消処分が行われているのであるし,本件名義貸しは,名義貸しの対象となった建築物の数においてこの4件の中で最も多いのであるから,このことからしても,本件取消処分が他の例と比較して重すぎるということはできない。 したがって,本件取 ,本件名義貸しは,名義貸しの対象となった建築物の数においてこの4件の中で最も多いのであるから,このことからしても,本件取消処分が他の例と比較して重すぎるということはできない。 したがって,本件取消処分が平等原則に違反し,それゆえ裁量権の範囲- 25 -の逸脱又は濫用になるとする原告の主張にも理由がない。 (6)まとめ以上の検討によれば,本件取消処分は,正当な懲戒事由に基づくもので,,,。 手続的な瑕疵もなく裁量権の範囲の逸脱又は濫用もないから適法であるこれが違法あるいは無効であるとする原告の主張はいずれも理由がない。 結論 争点(1)において判断したとおり,本件訴えのうち本件告知1及び同2の無効確認又は取消しを求める部分はいずれも不適法であり,却下を免れない。争点(2)において判断したとおり,本件取消処分の無効確認又は取消しを求める請求はいずれも理由がなく,棄却を免れない。その余の争点については判断する必要がない。よって,主文のとおり判断する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官大門匡裁判官倉地康弘裁判官小島清二
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