平成13(行ウ)359 所得税更正処分等取消

裁判年月日・裁判所
平成16年11月24日 東京地方裁判所
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判決文本文33,204 文字)

平成16年11月24日判決言渡し同日原本領収裁判所書記官平成13年(行ウ)第359号所得税更正処分等取消請求事件口頭弁論終結日平成16年9月1日判決原告訴訟代理人及び被告指定代理人は別紙代理人目録のとおり 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が平成12年3月10日付けでした原告の平成4年分所得税の更正処分のうち総所得金額398万6000円,納付すべき税額1400円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 2 被告が平成12年3月10日付けでした原告の平成5年分所得税の更正処分のうち総所得金額390万6150円,納付すべき税額6000円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 3 被告が平成12年3月10日付けでした原告の平成6年分所得税の更正処分のうち総所得金額410万9750円,還付金額に相当する税額7250円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 4 被告が平成12年3月10日付けでした原告の平成7年分所得税の更正処分のうち総所得金額439万8000円,納付すべき税額4万2900円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,在日アメリカ合衆国大使館に勤務する原告が,平成4年分ないし平成7年分の各所得税の確定申告にあたり,各申告書に同大使館から支給された給与金額を過少に記載して申告を行ったことが国税通則法70条5項所定の 日アメリカ合衆国大使館に勤務する原告が,平成4年分ないし平成7年分の各所得税の確定申告にあたり,各申告書に同大使館から支給された給与金額を過少に記載して申告を行ったことが国税通則法70条5項所定の「偽りその他不正の行為」に該当するとして,被告から,平成12年3月10日付けで,同条1項所定の期限を経過し,同条5項所定の期限内にあるこれら各年分の所得税について,各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため,これらの処分の取消しを求めている事案である。 1 法令の定め国税の更正の期間制限について,国税通則法70条は,次のとおり定めている。 (1) 次の各号に掲げる更正又は賦課決定は,当該各号に掲げる期限又は日から3年を経過した日(同日前に期限後申告書の提出があった場合には,同日とその提出があった日から2年を経過した日とのいずれか遅い日)以後においては,することができない。 一更正(第3項の規定に該当するものを除く。)その更正に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る当該更正については,当該申告書を提出した日)二課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があったものに係る賦課決定当該申告書の提出期限(同条1項)(2) 第25条(決定)の規定による決定又はその決定後にする更正は,その決定又は更正に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書の提出がない場合にする当該決定又は更正については,政令で定める日)から5年を経過した日以後においては,することができない。 (同条3項)(3) 偽り 又は更正については,政令で定める日)から5年を経過した日以後においては,することができない。 (同条3項)(3) 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ,若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等又は偽りその他不正の行為により当該課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるものとする納税申告書を提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等の金額(当該金額に関し更正があった場合には,当該更正後の金額)についての更正は,前各項の規定にかかわらず,次の各号に掲げる更正決定等の区分に応じ,当該各号に掲げる期限又は日から7年を経過する日まで,することができる。 一更正又は決定その更正又は決定に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る更正については,当該申告書を提出した日)二課税標準申告書の提出を要する国税に係る賦課決定当該申告書の提出期限三課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定その納税義務の成立の日(同条5項) 2 前提となる事実(当事者間に争いがない。)(1) 原告は,昭和63年5月から在日アメリカ合衆国大使館(以下「米国大使館」という。)に勤務する者である。 (2)ア原告は,2週間に1度,米国大使館から給与を支給されており,給与受領の都度,「INDIVIDUALEARNINGSSTATEMENT」(個人給与明細書)を,平成7 者である。 (2)ア原告は,2週間に1度,米国大使館から給与を支給されており,給与受領の都度,「INDIVIDUALEARNINGSSTATEMENT」(個人給与明細書)を,平成7年以降は「EARNINGSANDLEAVESTATEMENT」(給与及び休暇の明細書,乙9の77の体裁のもの)を受け取っていた。 イ原告は,米国大使館から,昇給の都度,昇給前後の年俸額等が記載された「NOTIFICATIONOFPERSONNELACTION」(人事異動通知書,乙7の1及び2の体裁のもの)や「PAYCHANGESLIP」(給与変更明細表,乙8の1ないし3の体裁のもの)を受け取っていた。 (3) 原告は,平成4年分ないし7年分(以下「本件各係争年分」という。)に係る所得税について,いずれも法定申告期限内に,別紙1ないし4の「課税処分等の経緯」の「確定申告」欄記載のとおり申告した(以下,本件各係争年分に係る確定申告を「本件各申告」という。)。 (4)ア被告は,平成12年3月10日付けで,原告に対し,本件各係争年分の所得税につき,それぞれ更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各処分」という。)を行った。 イ原告は,同年4月26日,被告に対し,本件各処分を不服としてそれぞれ異議申立てを行ったが,被告は,同年7月24日,上記異議申立てをいずれも棄却した。 ウ原告は,同年8月22日,国税不服審判所長に対し,本件各処分について審査請求を行ったが,同所長は,平成13年8月23日,上記審査請求をいずれも棄却する旨裁決した。 エ被告の本件各処分及びこれに対する原告の不 ,国税不服審判所長に対し,本件各処分について審査請求を行ったが,同所長は,平成13年8月23日,上記審査請求をいずれも棄却する旨裁決した。 エ被告の本件各処分及びこれに対する原告の不服申立て等の経緯については,別紙1ないし4の「課税処分等の経緯」記載のとおりである。 3 本件各処分の根拠及び適法性について(被告の主張)(1) 本件各更正処分の根拠について被告が本訴において主張する原告の本件各係争年分の所得税額等は,次のとおりである。 (平成4年分)ア総所得金額 727万0700円上記金額は,次のa及びbの金額の合計額である。 a 給与所得の金額 699万7700円上記金額は,原告が,米国大使館等から平成4年中に支払を受けた給与等の収入金額((a)ないし(c))の合計額899万1889円から,所得税法(平成6年法律109号による改正前のものであり,以下,平成6年分までについて同じ。)28条3項に規定する給与所得控除額を同条2項の規定に基づいて控除した後の金額である。 (a) 米国大使館 708万3889円(b) 有限会社エムエフシー(以下「エムエフシー」という。) 165万円(c) ソニー企業株式会社(以下「ソニー企業」という。) 25万8000円b 配当所得の金額 27万3000円上記金額は,原告が平成4年分の所得税の確定申告書(以下「平成4年分確定申告書」といい,以下,他の年分の確定申告書につい 額 27万3000円上記金額は,原告が平成4年分の所得税の確定申告書(以下「平成4年分確定申告書」といい,以下,他の年分の確定申告書についても同様の例による。)に記載した配当所得の金額と同額である。 イ所得控除の額の合計額 171万7704円上記金額は,原告が平成4年分確定申告書に記載した所得控除の額の合計額と同額である。 ウ課税総所得金額 555万2000円上記金額は,前記アの総所得金額727万0700円から前記イの所得控除の額の合計額171万7704円を控除した後の金額(ただし国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。以下同じ。)である。 エ納付すべき税額 58万5000円上記金額は,次のaの金額からb及びcの金額の合計額を差し引いた後の金額(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のものであり,以下同じ。)である。 a 課税総所得金額に対する税額 81万0400円上記金額は,前記ウの課税総所得金額555万2000円に所得税法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。 b 配当控除額 2万7300円上記金額は,原告が平成4年分確定申告書に記載した配当控除の金額と同額である。 c 源泉徴収税額 19万8057円 0円上記金額は,原告が平成4年分確定申告書に記載した配当控除の金額と同額である。 c 源泉徴収税額 19万8057円上記金額は,原告が平成4年分確定申告書に記載した源泉徴収税額と同額である。 (平成5年分)ア総所得金額 770万4810円上記金額は,次のa及びbの金額の合計額である。 a 給与所得の金額 747万0060円上記金額は,原告が,米国大使館等から平成5年中に支払を受けた給与等の収入金額((a)ないし(c))の合計額951万6734円から,所得税法28条3項に規定する給与所得控除額を同条2項の規定に基づいて控除した後の金額である。 (a) 米国大使館 771万0284円(b) エムエフシー 180万円(c) ソニー企業 6450円b 配当所得の金額 23万4750円上記金額は,原告が平成5年分確定申告書に記載した配当所得の金額と同額である。 イ所得控除の額の合計額 176万8767円上記金額は,原告が平成5年分確定申告書に記載した所得控除の額の合計額と同額である。 ウ課税総所得金額 593万6000円 上記金額は,原告が平成5年分確定申告書に記載した所得控除の額の合計額と同額である。 ウ課税総所得金額 593万6000円上記金額は,前記アの総所得金額770万4810円から前記イの所得控除の額の合計額176万8767円を控除した後の金額である。 エ納付すべき税額 67万9500円上記金額は,次のaの金額からb及びcの金額の合計額を差し引いた後の金額である。 a 課税総所得金額に対する税額 88万7200円上記金額は,前記ウの課税総所得金額593万6000円に所得税法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。 b 配当控除額 2万3475円上記金額は,原告が平成5年分確定申告書に記載した配当控除の金額と同額である。 c 源泉徴収税額 18万4201円上記金額は,原告が平成5年分確定申告書に記載した源泉徴収税額と同額である。 (平成6年分)ア総所得金額 801万3129円上記金額は,次のa及びbの金額の合計額である。 a 給与所得の金額 780万8379円上記金額は,原告が,米国大使館等から平成6年中に支払を受けた給与等の収入金額((a)及び(b))の合計額989万2644円から,所得税法28条3項に規定する給与所得控除額を同条 上記金額は,原告が,米国大使館等から平成6年中に支払を受けた給与等の収入金額((a)及び(b))の合計額989万2644円から,所得税法28条3項に規定する給与所得控除額を同条2項の規定に基づいて控除した後の金額である。 (a) 米国大使館 809万2644円(b) エムエフシー 180万円b 配当所得の金額 20万4750円上記金額は,原告が平成6年分確定申告書に記載した配当所得の金額と同額である。 イ所得控除の額の合計額 177万3676円上記金額は,原告が平成6年分確定申告書に記載した所得控除の額の合計額と同額である。 ウ課税総所得金額 623万9000円上記金額は,前記アの総所得金額801万3129円から前記イの所得控除の額の合計額177万3676円を控除した後の金額である。 エ納付すべき税額 58万3200円上記金額は,次のaの金額からbないしdの金額の合計額を差し引いた後の金額である。 a 課税総所得金額に対する税額 97万1700円上記金額は,前記ウの課税総所得金額623万9000円に所得税法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。 b 配当控除額 2万0475円上記金額 3万9000円に所得税法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。 b 配当控除額 2万0475円上記金額は,原告が平成6年分確定申告書に記載した配当控除の金額と同額である。 c 特別減税額 19万0245円上記金額は,平成6年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条の規定に基づいて計算した金額である。 d 源泉徴収税額 17万7750円上記金額は原告が平成6年分確定申告書に記載した源泉徴収税額と同額である。 (平成7年分)ア総所得金額 794万8759円上記金額は,次のa及びbの金額の合計額である。 a 給与所得の金額 785万8759円上記金額は,原告が,米国大使館等から平成7年中に支払を受けた給与等の収入金額((a)及び(b))の合計額1006万1852円から,所得税法(平成6年法律109号による改正後のものであり,以下,平成7年分について同じ。)28条3項に規定する給与所得控除額を同条2項の規定に基づいて控除した後の金額である。 (a) 米国大使館 826万1852円(b) エムエフシー 180万円b 配当所得の金額 9万円上記金額は,原告が平成7 エムエフシー 180万円b 配当所得の金額 9万円上記金額は,原告が平成7年分確定申告書に記載した配当所得の金額と同額である。 イ所得控除の額の合計額 198万0878円上記金額は,原告が平成7年分確定申告書に記載した所得控除の額の合計額と同額である。 ウ課税総所得金額 596万7000円上記金額は,前記アの総所得金額794万8759円から前記イの所得控除の額の合計額198万0878円を控除した後の金額である。 エ納付すべき税額 64万9600円上記金額は,次のaの金額からbないしdの金額の合計額を差し引いた後の金額である。 a 課税総所得金額に対する税額 86万3400円上記金額は,前記ウの課税総所得金額596万7000円に所得税法89条1項に規定する税率を乗じて算出した金額である。 b 配当控除額 9000円上記金額は,原告が平成7年分確定申告書に記載した配当控除の金額と同額である。 c 特別減税額 5万円上記金額は,平成7年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条の規定に基づいて計算した金額である。 d 源泉徴収税額 15万4800円 上記金額は,平成7年分所得税の特別減税のための臨時措置法4条の規定に基づいて計算した金額である。 d 源泉徴収税額 15万4800円上記金額は,原告が平成7年分確定申告書に記載した源泉徴収税額と同額である。 (2) 本件各更正処分の適法性について被告が本訴において主張する原告の本件各係争年分の納付すべき税額は,上記(1)のとおり,それぞれ58万5000円(平成4年分),67万9500円(平成5年分),58万3200円(平成6年分),64万9600円(平成7年分)であるところ,本件各更正処分における納付すべき税額は,別紙1ないし4の「課税処分等の経緯」の「更正処分」欄中の「納付すべき税額」欄に記載のとおり,いずれの年分も被告が本訴で主張する上記金額と同額であるから,本件各更正処分はいずれも適法である。 なお,原告は,本件各係争年分の所得税の確定申告に当たり,後記のとおり,それぞれ国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」によりその全部又は一部の税額を免れたことが認められるから,更正をすることができる期間は,同項1号に規定する法定申告期限から7年を経過する日であり,平成4年分については平成12年3月15日,平成5年分については平成13年3月15日,平成6年分については平成14年3月15日,平成7年分については平成15年3月15日までとなり,本件各更正処分は,いずれも上記更正をすることができる期間内に行われたものである。 (3) 本件各賦課決定処分の根拠及び適法性について原告は,本件各係争年分の所得税について,納付すべき税額をいずれも過少に記載した確定申告書を被告に提出していたところ,上記納付すべき (3) 本件各賦課決定処分の根拠及び適法性について原告は,本件各係争年分の所得税について,納付すべき税額をいずれも過少に記載した確定申告書を被告に提出していたところ,上記納付すべき税額が過少であったことについて,国税通則法65条4項に規定する正当な理由があったとは認められないため,被告は,本件各更正処分において新たに納付すべきこととなった税額を基礎として次のとおり計算した過少申告加算税をそれぞれ賦課決定したものであるから,本件各賦課決定処分はいずれも適法である。 ア平成4年分 6万2000円上記金額は,原告が平成4年分所得税の更正処分により新たに納付すべきこととなった税額58万円(国税通則法118条3項により1万円未満の端数を切り捨てた後の金額。以下同じ。)に同法65条1項の規定に基づき100分の10を乗じて算出した金額5万8000円に,同条2項の規定に基づき上記新たに納付すべきこととなった税額58万円のうち50万円を超える部分に相当する金額8万円に100分の5の割合を乗じて算出した金額4000円を加算した金額である。 イ平成5年分 7万5500円上記金額は,原告が平成5年分所得税の更正処分により新たに納付すべきこととなった税額67万円に同法65条1項の規定に基づき100分の10を乗じて算出した金額6万7000円に,同条2項の規定に基づき上記新たに納付すべきこととなった税額67万円のうち50万円を超える部分に相当する金額17万円に100分の5の割合を乗じて算出した金額8500円を加算した金額である。 ウ平成6年分 6万3500円上記 える部分に相当する金額17万円に100分の5の割合を乗じて算出した金額8500円を加算した金額である。 ウ平成6年分 6万3500円上記金額は,原告が平成6年分所得税の更正処分により新たに納付すべきこととなった税額59万円に同法65条1項の規定に基づき100分の10を乗じて算出した金額5万9000円に,同条2項の規定に基づき上記新たに納付すべきこととなった税額59万円のうち50万円を超える部分に相当する金額9万円に100分の5の割合を乗じて算出した金額4500円を加算した金額である。 エ平成7年分 6万5000円上記金額は,原告が平成7年分所得税の更正処分により新たに納付すべきこととなった税額60万円に同法65条1項の規定に基づき100分の10を乗じて算出した金額6万円に,同条2項の規定に基づき上記新たに納付すべきこととなった税額60万円のうち50万円を超える部分に相当する金額10万円に100分の5の割合を乗じて算出した金額5000円を加算した金額である。 4 当事者の主張(原告の主張)(1) フリンジ・ベネフィット部分及び国民年金基金負担部分は非課税であることア米国政府と我が国の国税当局の間の取り決めの存在(フリンジ・ベネフィット部分について)a 米国大使館に勤務する日本人職員の特殊な状況米国大使館に勤務する日本人職員は,日本の企業に雇用された労働者と違い,雇用先である米国大使館から社宅の使用,交通費の全額負担,企業年金等,日本の税法では非課税扱いとなる直接的な経済的利益を受けておらず,その代わりに現金支給を受けていた。 b 米国政 ,雇用先である米国大使館から社宅の使用,交通費の全額負担,企業年金等,日本の税法では非課税扱いとなる直接的な経済的利益を受けておらず,その代わりに現金支給を受けていた。 b 米国政府と我が国の国税当局間の本件取り決めの成立上記状況にかんがみ,米国大使館当局が,昭和30年ころ,我が国の国税当局との間で,米国大使館に勤務する日本人職員の給与課税について話し合った結果,日本人職員の所得税確定申告は,フリンジ・ベネフィット(付加給付又は経済的利益の給付)に該当する部分(以下「フリンジ・ベネフィット部分」という。)を除いた基本給部分(給与収入金額の約60パーセント)を基準として申告すればよい旨の取り決め(以下「本件取り決め」という。)が交わされた。また,このほかに課税対象とならない経済的利益があれば,その分も控除できることとなった。 その数日後,日本人側の代表(現地職員組合である葵会会長ら)が集会を開き,本件取り決めの内容を日本人職員に伝え,それ以降,日本人職員については,基本給(給与収入金額の約60パーセント)を中心として所得税を申告する旨の考え方が定着した。 c 本件取り決めの存在を裏付ける事実(a) 通達の存在昭和30年当時の国税庁長官は,同年12月14日付けで,本件取り決めの内容に沿った各国税局長あて通達(以下「本件通達」といい,これを英訳したものが甲1である。)を発出した。 (b) 日本人職員の給与等支払に関するマニュアルの存在アメリカ合衆国国務省(以下「米国国務省」という。)は,各駐在国大使館等に勤務する現地職員に対する給与等の支払に関するマニュアル(甲2。以下「本件マニ 関するマニュアルの存在アメリカ合衆国国務省(以下「米国国務省」という。)は,各駐在国大使館等に勤務する現地職員に対する給与等の支払に関するマニュアル(甲2。以下「本件マニュアル」という。)を作成し,(米国大使館を含む)駐在国当局に対し,駐在国(受入国)によって現地職員の給与のうち非課税部分まで課税されないよう確認したうえで,上記駐在国に給与関係資料を提出するように指示しているところ,米国大使館も国税当局に対して,日本人職員の給与に係る非課税部分の範囲を確認したものと考えられる。また,本件マニュアルの存在自体が,本件取り決めの存在を前提としている。 (c) 退職給与基準の存在米国大使館から支給される給与は,基本給とフリンジ・ベネフィット部分から成り立っているところ,「駐日米国大使館現地職員退職(離職)給与基準」(甲3。以下「本件退職給与基準」という。)には,フリンジ・ベネフィット部分の割合は一般的には40パーセントであって,基本給のみを退職給与の基準とする旨記載されており,これは,日本人職員の給与のうち課税対象は基本給部分のみである旨の本件取り決めの存在を前提としている。 (d) フォーリー作成の書簡の存在フォーリー駐日アメリカ合衆国大使(以下「駐日米国大使」という。)は,平成12年2月24日付けで,国税庁長官あてに書簡(甲4。以下「フォーリー書簡」という。)を送付し,同書簡において,米国大使館の日本人職員の過去の所得に対する課税処分に当たり,前記a及びbの事情が十分考慮されるよう希望していた。このように,フォーリー書簡も本件取り決めの存在を前提としている。 なお,フォーリー書簡は,フォーリーが米国 分に当たり,前記a及びbの事情が十分考慮されるよう希望していた。このように,フォーリー書簡も本件取り決めの存在を前提としている。 なお,フォーリー書簡は,フォーリーが米国大使という公的立場において作成したものであり,その信ぴょう性は高い。 (e) クァーの陳述の存在クァー米国大使館総務部長は,平成12年2月8日,東京国税局において,「1950年代に国税庁と大使館の間の協議により,大使館職員の勤務条件の特殊性を考慮し,6割程度の申告が容認されたと聞いています。」旨述べている(甲12添付書面参照)。これも,本件取り決めの存在を前提とするものである。 なお,上記陳述も,クァーが米国大使館の責任者という公的立場において述べたものであり,その信ぴょう性は高い。 イ個人給与明細書の記載(フリンジ・ベネフィット部分について)米国大使館から日本人職員に対して交付される個人給与明細書においても,基本給の部分については課税所得(TAXABLEEARNINGS)と表示されているが,フリンジ・ベネフィット部分についてはその旨の表示はなく,これは,フリンジ・ベネフィット部分が非課税であることを示している。 ウ 「日本人職員勤務規定摘要」の定め(フリンジ・ベネフィット部分及び国民年金基金負担部分について)米国大使館においては,原告を含む日本人職員に対する給与に関する基準として「日本人職員勤務規定摘要」(甲8)を定めており,上記摘要には,①日本の会社が支給している付加給付(フリンジ・ベネフィット)で,法律・規則上,米国政府が支給できないものについては,その相当額を各人の俸給に織り込む旨,②雇用主としての米国政 ており,上記摘要には,①日本の会社が支給している付加給付(フリンジ・ベネフィット)で,法律・規則上,米国政府が支給できないものについては,その相当額を各人の俸給に織り込む旨,②雇用主としての米国政府は,日本の国民健康保険掛金を職員に代わって支払うことはできないので,各職員が直接当該掛金を納入できるよう,掛金相当額を各自の俸給に組み入れる旨,それぞれ記載されている。そうすると,米国大使館からの給与のうちフリンジ・ベネフィット部分及び国民健康保険掛金と同様の性質を有する国民年金基金の掛金に係る米国政府の負担部分(以下「国民年金基金負担部分」という。)は,本来,雇用主である米国政府において負担,処理すべきものを原告に現金の形で給付しているにすぎないから,これらを給与所得に含めて課税対象とすることは許されないというべきである。 エ以上のとおり,米国大使館からの給与のうち,フリンジ・ベネフィット部分及び国民年金基金負担部分は非課税であり,原告の給与収入について,通勤手当分だけを控除し,フリンジ・ベネフィット部分(通勤手当以外の部分)及び国民年金基金負担部分を含めて課税対象とすることは誤りである。 (2) 本件において,国税通則法70条5項にいう「偽りその他不正の行為」が存在しないことア 「偽りその他不正の行為」の意義福岡高裁昭和51年6月30日判決(行裁集27巻6号975頁)は,国税通則法70条5項(当時は同条2項4号)にいう「偽りその他不正の行為」に該当する過少申告行為については,「税額を免れる意図のもとに」されたこと,すなわち,「納税者が真実の所得を秘匿し,それが課税の対象となることを回避するため」にされたことが要件となる旨判示しており,この判示からすれば,単なる過少申告行為は「偽りその他不 もとに」されたこと,すなわち,「納税者が真実の所得を秘匿し,それが課税の対象となることを回避するため」にされたことが要件となる旨判示しており,この判示からすれば,単なる過少申告行為は「偽りその他不正の行為」に該当しないものと解される。 仮に,(認識ある)過少申告行為がすべて「偽りその他不正の行為」に該当するものと解すると,過少申告行為における更正期間は常に7年となってしまい,更正の期間制限につき原則3年とする同法70条1項の趣旨に反する結果となる。また,かかる解釈は,同法68条の「隠ぺい又は仮装の行為」と同法70条5項の「偽りその他不正の行為」とをほぼ同義に捉え,重加算税事件の場合には更正期間7年,過少申告加算税事件の場合には更正期間3年として取り扱っている実務の運用にも反する結果となり,妥当ではない。 さらに,同法70条5項の除斥期間につき従前の5年から7年に延長する内容を含む「脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律案」について,昭和56年5月15日に開かれた参議院大蔵委員会において,「脱税の調査に当たっては,法令の理解度,脱税の意思の程度等の相違に配慮し,納税者の立場をも十分に尊重して対処すること。」「今回の改正により延長された更正・決定等の制限期間にかかる調査に当たっては,原則として高額,悪質な脱税者に限り,いたずらに調査対象,範囲を拡大するなど,中小企業者等に無用の混乱を生ずることのないよう特段の配慮をすること。」等を内容とする附帯決議(以下「本件附帯決議」という。)が行われていること(甲5。なお,同年4月24日の衆議院大蔵委員会においても同趣旨の決議が行われている。)に照らしても,「偽りその他不正の行為」の認定は厳格に行われるべきである。本件のような過少申告加算税が いること(甲5。なお,同年4月24日の衆議院大蔵委員会においても同趣旨の決議が行われている。)に照らしても,「偽りその他不正の行為」の認定は厳格に行われるべきである。本件のような過少申告加算税が賦課されたにすぎない事案において,7年に遡及して更正処分を行うことは,上記立法趣旨に反する。 イ原告の本件各申告が本件取り決めに基づいていること原告は,本件取り決めに基づいて本件各申告を行ったものであり,これらは適正な申告である。 ウ原告には過少申告の認識がないこと仮に,本件取り決めが存しないとしても,原告は,以下のとおり,本件各申告時において,真実の所得金額よりも過少な金額を確定申告書に記載したという認識がなかったものである。 a 人事課職員等による説明原告は,米国大使館の人事課職員や先任者等(以下「人事課職員等」という。)から,数十年前に米国大使館と国税当局との間で話合いが行われた結果,日本人職員は,非課税となる現金支給額(フリンジ・ベネフィット部分等)を控除し,基本給(米国大使館からの給与収入金額の約60パーセント)を基準として申告すればよいことになった旨説明され,それに従って確定申告をしてきた。 なお,原告を含む米国大使館の日本人職員の申告割合が一定でないのは,当初の説明が,米国大使館の各部署ごとに,長年にわたって言い伝えられてきた結果である。 米国大使館人事課職員であったAやBらは,上記説明の存在を否定しているが,他の信頼できる供述(別訴の原告であるCやDの供述)と矛盾しており,その信用性は極めて低い。 b 米国大使館の職場としての特殊性等米国大使館は, 否定しているが,他の信頼できる供述(別訴の原告であるCやDの供述)と矛盾しており,その信用性は極めて低い。 b 米国大使館の職場としての特殊性等米国大使館は,他の日本企業の職場と違い,雇用者である米国政府には源泉徴収義務がなく,日本の国税当局の質問検査権も及ばない。 また,原告は,米国大使館に実際に勤務してみて,米国大使館の日本人職員は,日本の企業で働く労働者と異なり,社宅の使用,交通費の全額負担,企業年金等,日本の税法では非課税となる給付を受けていないことに気付いた。 原告は,米国大使館は上記のように他の日本企業と異なるから,人事課職員等の説明内容に従って申告すればよいと信じていた。 また,一般に給与所得については,給与収入を計上し,そこから経費に該当する給与所得控除を差し引くが,本件での非課税部分は経費ではなく,この方法を採ることができないため,原告は,非課税部分については最初から給与収入に計上していない。 c 原告は支払を受けた給与を秘匿したことがないこと米国大使館からの給与は,金融機関への振込み又は小切手により支給されるため,原告がこれを秘匿する余地はなく,その意思もなかった。 d 確定申告及び税務調査における原告の態度等原告は,本件各申告時において,税務署職員と面談の際,担当職員から源泉徴収票等の提出を求められたことがあったが,米国大使館では発行していない旨答えると,給与額を記載すれば足りる旨教示されたため,それに従って申告していた。また,原告は,本件各申告及び税務調査の際に,被告の担当職員に対して虚偽の陳述をしたこともなかった。 なお ,給与額を記載すれば足りる旨教示されたため,それに従って申告していた。また,原告は,本件各申告及び税務調査の際に,被告の担当職員に対して虚偽の陳述をしたこともなかった。 なお,原告が本件各申告時に個人給与明細書を添付しなかったのは,税務署職員による上記教示に加え,同明細書の末尾に,米国法により「許可された人にのみ開示すべきである」旨の警告があったからにすぎない。 e 国税当局による申告指導がない状態が継続したこと原告は,平成11年に税務調査を受けるまで,確定申告に関して国税当局から指導を受けたことはなかったため,米国大使館は特殊であり,上記のとおりの申告方法でよいと信じていた。 f 法律の錯誤の問題ではないこと原告は,フリンジ・ベネフィット部分等に関する事実関係を主張するものであり,これは法律の錯誤の問題ではない。 エ以上のとおり,原告は,本件取り決めに基づいて本件各申告を行ったものであり,仮に本件取り決めが存在しなかったとしても,原告に過少申告を行う旨の認識はなかったものであり,本件において「偽りその他不正の行為」は存在しないから,国税通則法70条5項の適用があるとの前提に立って,同条1項の期間を超えてされた本件各処分は違法である。 (被告の主張)(1) フリンジ・ベネフィット部分及び国民年金基金負担部分も課税所得であることア所得税法は,所得についていわゆる包括的所得概念を採用し,人の担税力を増加させる利得はすべて所得を構成するものとし,これを課税対象としており,立法政策上,課税対象とすることが適切でないと認められるものに限り,例外的に非課税所得としている(同法9条,11条等参照)。 すべて所得を構成するものとし,これを課税対象としており,立法政策上,課税対象とすることが適切でないと認められるものに限り,例外的に非課税所得としている(同法9条,11条等参照)。 したがって,フリンジ・ベネフィット部分が直ちに非課税所得となるものではなく,所得税法等で非課税所得として定められているものに限り非課税となるにすぎない。 また,国民年金基金負担部分については所得税法で非課税所得とされていない以上,課税所得として扱われることとなる。そもそも,国民年金基金の掛金は,その全額が社会保険料控除の対象となるため,本件で,国民年金基金負担部分につき原告の給与収入に含めないと,当該部分につき二重に控除することになり,妥当でない。 イ本件において,原告は,フリンジ・ベネフィット部分である旨主張するもののうち,通勤手当を除き,どの項目に該当する支給がいくらあるのかを具体的に特定していないところ,給与支給の都度,米国大使館から交付される「給与及び休暇の明細書」に照らしても,通勤手当を除いては非課税所得に該当する部分は認められず,また,上記のとおり,国民年金基金負担部分について非課税とすべき事情もない。そして,被告は,本件各更正処分において,非課税となるべき通勤手当を控除している以上,原告の主張は理由がない。 ウ原告は,本件取り決めの存在及びこれに基づきフリンジ・ベネフィット部分が非課税となった旨主張し,その根拠として,①本件通達,②本件マニュアル,③本件退職給与基準,④フォーリー書簡,⑤クァーの陳述の存在等を指摘するが,そもそも本件取り決めが交わされた事実はないのであって,上記①ないし⑤についても,いずれも原告の主張に沿う内容のものではなく,本件取り決めの存在を基礎付けるものではない。 存在等を指摘するが,そもそも本件取り決めが交わされた事実はないのであって,上記①ないし⑤についても,いずれも原告の主張に沿う内容のものではなく,本件取り決めの存在を基礎付けるものではない。 逆に,館内通知(乙25),本件通達(甲1)及び「日本人職員勤務規定摘要」(甲8)を併せて読めば,昭和30年ころ,国税当局と米国大使館の間で,米国大使館に勤務する日本人職員の所得税申告に関して交渉があったものの,両者は,日本人職員の所得の一部を非課税とする旨の合意(本件取り決め)に達することなく,単に,昭和29年分の所得税の確定申告に関する申告期限の延長が認められたにすぎないことが明らかである。 (2) 「偽りその他不正の行為」の意義ア国税通則法70条の趣旨更正の期間制限の制度(国税通則法70条)の趣旨は,租税法律関係の早期安定という観点から,本来納付すべき税額の徴収を制限するものであるところ,「偽りその他不正の行為」によりその全部又は一部の税額を免れた国税についての更正まで短期間(3年間)の制限期間内に行わしめるものとすることは,実質的な租税負担の公平の観点から適当ではない。そこで,国税通則法70条5項は,上記のような国税に係る更正については,7年という長い制限期間を定めたものであり,同項による制限期間の延長は,納税者が本来納付すべきであった正当税額の納付を求めるものであって,納税者に対して特段の負担を新たに発生させるものではない。 イ 「偽りその他不正の行為」の意義上記趣旨に照らし,「納税者が真実の所得を秘匿し,それが課税の対象となることを回避するため,所得の金額をことさらに過少にした内容虚偽の所得税確定申告書を提出し,正当な納税義務を過少にしてその不足税額を免 趣旨に照らし,「納税者が真実の所得を秘匿し,それが課税の対象となることを回避するため,所得の金額をことさらに過少にした内容虚偽の所得税確定申告書を提出し,正当な納税義務を過少にしてその不足税額を免れる行為,いわゆる過少申告行為も,それ自体単なる不申告の不作為にとどまるものではなく,偽りの工作的不正行為といえるから,上記『偽りその他不正の行為』に該当するもの」と解される(前記福岡高裁昭和51年6月30日判決参照)。 そして,上記「所得の金額をことさらに過少に記載した内容虚偽の所得税確定申告書を税務署長に提出する行為」とは故意による過少申告を意味するにすぎず,それ以上に事前の所得秘匿工作等の積極的な行為は必要とされないというべきである。 また,過少申告行為の認識についても,本人が真実の所得と異なる金額を申告するとの認識を有している以上,その結果,差額分につき税額を免れることの認識を併せ持つことは通常であるから,そこに不正行為(違法性)が存在することは明らかであって,納税者が真実の所得を正確に認識していなくても,申告額を超える所得が存在するという認識,すなわち概括的認識があれば足りるというべきである。 (3) 本件において「偽りその他不正の行為」が存在することア原告の過少申告行為の存在原告は,本件各係争年分につき,以下のとおり収入金額(及び所得金額)及び税額をことさら過少に記載した内容虚偽の所得税確定申告書を税務署長に提出する「過少申告行為」を行い,正当な税額の全部ないし一部を免れていた。 a 平成4年分について(本来の給与金額等)給与等の収入金額 899万1889円(うち,米国大使館分708万3889円)納付す れていた。 a 平成4年分について(本来の給与金額等)給与等の収入金額 899万1889円(うち,米国大使館分708万3889円)納付すべき税額 58万5000円(確定申告書における記載内容)「給与所得の収入金額」欄526万1832円(うち,米国大使館分335万3832円)「納付すべき税額」欄 1400円b 平成5年分について(本来の給与金額等)給与等の収入金額 951万6734円(うち,米国大使館分771万0284円)納付すべき税額 67万9500円(確定申告書における記載内容)「給与所得の収入金額」欄521万0184円(うち,米国大使館分340万3734円)「納付すべき税額」欄 6000円c 平成6年分について(本来の給与金額等)給与等の収入金額 989万2644円(うち,米国大使館分809万2644円)納付すべき税額 58万3200円(確定申告書における記載内容)「給与所得の収入金額」欄550万0897円(うち,米国大使館分370万0897円)「納付すべき税額」欄マイナス7250円d 平成7年分について(本来の給与 50万0897円(うち,米国大使館分370万0897円)「納付すべき税額」欄マイナス7250円d 平成7年分について(本来の給与金額等)給与等の収入金額  1006万1852円(うち,米国大使館分826万1852円)納付すべき税額 64万9600円(確定申告書における記載内容)「給与所得の収入金額」欄606万3840円(うち,米国大使館分426万3840円)「納付すべき税額」欄 4万2900円イ原告の過少申告の認識a 原告は,人事異動通知書,給与変更明細表及び個人給与明細書等により,米国大使館から受領した基本給及び諸手当の年間累計額がいくらであったのか,退職年金掛金として控除された年間累計額がいくらであったのか,そして,給与の年間支払額がいくらであったかなどを認識,把握していたにもかかわらず,収入金額(及び所得金額)をことさら過少に記載した内容虚偽の所得税確定申告書を税務署長に提出していたものであり,原告が「申告書に添付された所得の内訳書に記載した収入金額(及び所得金額)」が「真実の収入金額(及び所得金額)」より過少であり,その結果,その差額分が「課税対象となることを回避される」ことを意図していたのは明らかである。 b 人事課職員等による説明がなかったこと原告は,人事課職員等から,日本人職員に関しては基本給(米国大使館からの給与収入金額の約60パーセント)を基準として所得税を申告すればよいとの説明を受けた旨主張するが,上記主張には何ら根拠がない。 は,人事課職員等から,日本人職員に関しては基本給(米国大使館からの給与収入金額の約60パーセント)を基準として所得税を申告すればよいとの説明を受けた旨主張するが,上記主張には何ら根拠がない。 (a) 人事課職員等の説明の存在自体及びその説明内容が疑わしいこと前述のとおり,上記説明内容に沿う本件取り決めが存在しない以上,人事課職員等が日本人職員に対し,基本給(給与収入金額の約60パーセント)の申告でよい旨の説明をすることはあり得ない。 現に,長年,米国大使館の人事課職員であったAやBも,そのような説明をしたことを否定しており,彼らにあえて虚偽の供述をする動機はなく,その供述の信用性は高い。 他方で,原告は,上記説明を,いつ,どこで,だれから,どのように聞いたかなどについて具体的に明らかにしていないことに照らせば,その信ぴょう性は乏しいというべきである。 また,「基本給(給与収入金額の約60パーセント)を基準として申告する」などというあいまいで恣意的な基準は,税法の規定からみておよそ常識外れであって,納税者としては,通常,そのような基準の存在を疑い,税務署等に問い合わせ,上記基準が存在しないことを容易に知り得るはずである。 そもそも,原告が非課税と主張する支給額(給与収入金額の約40パーセント)の中には,明らかに課税所得であるボーナスが含まれており,かつ,「フリンジ・ベネフィット部分」をどれほど大きく見積もっても給与収入金額の4割に及ぶことはあり得ず,これらの事実からしても上記説明内容は不合理である。 (b) 原告らの申告内容が人事課職員等からの説明内容と相違すること っても給与収入金額の4割に及ぶことはあり得ず,これらの事実からしても上記説明内容は不合理である。 (b) 原告らの申告内容が人事課職員等からの説明内容と相違すること原告が本件各係争年分の確定申告書に記載した給与収入金額(米国大使館からのもの)は,実際の各年分の給与収入金額(米国大使館からのもの)の44・1パーセントないし51・6パーセントであって,原告が人事課職員等から教えられたとする申告割合(50パーセントないし60パーセント)と異なり,かつ,その申告割合が変動していることに照らせば,原告が,自己の判断に基づき,真実の給与等の収入金額をことさら過少にした申告を行っていたと考えるのが合理的である。 なお,原告を含む米国大使館の日本人職員らが,何割での申告が税法上正しい申告かという認識において一致しておらず,かつ実際の申告額の給与収入金額(米国大使館に係る部分)に対する割合も一致していないことも,人事課職員等による統一的な説明などなかったことを示している。 c 原告は,過少申告を行っても発覚しにくい状況を利用していたこと(a) 原告の実際の給与収入金額を把握するのは困難であったこと米国大使館の日本人職員への給与の決済方法が現金支給ではなく,小切手及び金融機関振込での支給であったとしても,それによって,被告が原告の真実の収入金額について把握できるものではなく,また,各小切手の支払及び金融機関振込金額が原告の米国大使館からの給与等の収入金額のすべてを示すものであるともいえない。そして,各小切手の振出銀行や小切手交換時の取扱銀行及び給与の振込先銀行を原告又は給与の支払者から聴取しなければ,その支給額すら把握することは の給与等の収入金額のすべてを示すものであるともいえない。そして,各小切手の振出銀行や小切手交換時の取扱銀行及び給与の振込先銀行を原告又は給与の支払者から聴取しなければ,その支給額すら把握することは困難であるところ,本件では,被告の質問検査権が給与の支払者(米国政府)には及ばないことからしても,その支給額を把握するのは容易ではなかったというべきである。 (b) 積極的な虚偽陳述等がなくても,過少申告の認識が認められること原告が,確定申告や税務調査の際に積極的に虚偽の陳述等を行っていないとしても,原告が米国大使館から個人給与明細書等を受領していながら,これを税務署職員に提示したり,確定申告書に添付せず,独自の判断で給与収入金額から直接フリンジ・ベネフィット部分を除外して申告していたことに照らせば,原告が過少申告の認識を有していたことは明らかである。 なお,個人給与明細書に記載された注意書は,日本人職員に対するものではなく,発行者である米国大使館に対するものにすぎない。 (c) 原告は,国税当局による指導がない状況を利用していたこと平成11年の税務調査まで国税当局からは何の指導もなかったとしても,原告は,何らの税務相談もせずに,個人給与明細書等により認識していた給与収入金額を大幅に下回る額を給与収入金額として申告していたのであり,このことからすると,原告は,税務当局からの指導や調査がない状況を利用して,故意に過少な申告を継続して行っていたといわざるを得ない。 d 法律の錯誤仮に原告が,基本給(給与収入金額の約60パーセント)を中心にして申告すればよいと誤信していたとしても,原告は,自己の真実の といわざるを得ない。 d 法律の錯誤仮に原告が,基本給(給与収入金額の約60パーセント)を中心にして申告すればよいと誤信していたとしても,原告は,自己の真実の給与所得金額の認識や実際の給与所得金額より少なく申告している旨の認識に欠けるところはないのであり,これは単に,原告が税法の解釈を誤ったものにすぎない。原告の上記主張は,刑事法における法律の錯誤に類する主張にすぎず,これは原告の「偽りその他不正の行為」の故意を阻却するものではない。 ウ原告の「偽りその他不正の行為」について給与所得者が確定申告を行う必要がある場合には,所得税確定申告書に源泉徴収票を添付又は提示しなければならず(所得税法120条3項3号),当該源泉徴収票によって,当該申告者の真実の給与収入金額が明らかになる。 しかし,本件においては,①給与の支払者である米国政府には源泉徴収義務がないため,原告には,源泉徴収票等の真実の給与収入金額を明らかにした資料を添付する義務がないこと,②米国大使館に対しては,日本の国税当局の質問検査権(いわゆる反面調査,所得税法234条1項)が及ばないため,税務署が過少申告の事実を把握することが困難であること等の事情があり,原告にとって過少申告は極めて容易であった。 申告納税制度の下では,納税者は,税法の定めるところに従い正しい所得金額や税額を申告すべき義務を負うとともに,税務調査に対しては,所得金額の計算の基礎となる経済取引の実態を最もよく知る者として,申告に係る所得金額が正しいことの資料を提示するなどして説明する義務を負うところ,原告は,「申告書に添付された所得の内訳書に記載した収入金額(及び所得金額)」が「真実の収入金額(及び所得金額)」より 申告に係る所得金額が正しいことの資料を提示するなどして説明する義務を負うところ,原告は,「申告書に添付された所得の内訳書に記載した収入金額(及び所得金額)」が「真実の収入金額(及び所得金額)」より過少であり,その結果,その差額分が「課税対象となることを回避する」ことを意図して収入金額(及び所得金額)をことさら過少に記載した内容虚偽の所得税確定申告書を税務署長に提出したのであって,その行為自体が「偽りの工作的不正行為」であり,国税通則法70条5項にいう「偽りその他不正の行為」に該当するのであるから,原告がそれ以外に「偽りの工作的不正行為」をしたか否かにかかわらず,本件では国税通則法70条5項が適用される。 エまとめ以上のとおり,原告の本件での過少申告行為が国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当することは明らかであるから,同項の定める期間の制限内にされた本件各処分には更正等を行い得る期間の点においても違法はない。 5 争点したがって,本件の争点は以下のとおりである。 (1) 米国政府と我が国の国税当局との間に,米国大使館に勤務する日本人職員の給与については,そのフリンジ・ベネフィット部分及び国民年金基金負担部分は非課税とする取り決めが存在するか。 (2) 原告は,国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」を行ったものといえるか。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(米国政府と我が国の国税当局との間に,米国大使館に勤務する日本人職員の給与については,そのフリンジ・ベネフィット部分及び国民年金基金負担部分は非課税とする取り決めが存在するか)について(1) 本件取り決めの存否についてア原告は,米国政府と我が国の国税当局との間には リンジ・ベネフィット部分及び国民年金基金負担部分は非課税とする取り決めが存在するか)について(1) 本件取り決めの存否についてア原告は,米国政府と我が国の国税当局との間には,米国大使館の日本人職員の所得税確定申告は,フリンジ・ベネフィット部分及び国民年金負担部分を除いた基本給部分(給与収入金額の約60パーセント)を基準として申告すればよい旨の取り決めが存在すると主張する。 イ各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a 昭和30年ころ,日本政府から米国大使館に対し,同大使館の日本人職員の所得税徴収額決定について,より明確な根拠を得るため,日本人職員の前年度給料総額を1年ごとに国税庁に対して報告することを要請していたところ,米国大使館からは,日本人職員の給料の一定額を免税とし,当該部分については国税庁に報告する必要がないようにすることを要望し,国税当局と米国大使館当局との間で話合いがもたれた。 その結果,米国大使館は,日本人職員に支払った給与等の額についての報告書を提出する代わりに,日本人職員に対して,確定申告書を提出して所得税を納付するように改めて指導することによって,国税庁に協力することになった。 (甲1,乙1,25)b 米国大使館と国税当局との上記話合いを受けて発された国税庁長官名義の昭和30年12月14日付け通達(本件通達)には,米国大使館の日本人職員の給与のうち一定額を非課税とする取扱いに合意する内容の記載や基本給(給与収入金額の約6割)での申告を容認する趣旨の記載はなく,単に,昭和29年分の所得税の確定申告に関し,日本人職員が昭和31年1月31日ま ち一定額を非課税とする取扱いに合意する内容の記載や基本給(給与収入金額の約6割)での申告を容認する趣旨の記載はなく,単に,昭和29年分の所得税の確定申告に関し,日本人職員が昭和31年1月31日までに確定申告書を提出すれば,これを期限内申告と同様に取り扱う旨が記載されているだけである。 (甲1,乙1)c 米国大使館作成に係る日本人職員勤務規定摘要(昭和40年5月改正後のもの)には,日本人職員の所得税の確定申告に関し,基本給(給与収入金額の約6割)での申告で足りる旨の記載はなく,「(日本人職員が)法律を尊重する国民として各自が納税申告書を提出し,日本の法律で義務付けられている各種の税金を納めることを大使館は望んでいる」旨記載されている。 (甲8)d 米国国務省等が平成7年1月1日付けで発した通達(本件マニュアル)は,米国国務省等が受入国にいる担当官(高官)に対し,受入国に現地職員の給与を報告する旨決定した場合には,非課税給付としての報酬が所得税の対象となる給与として報告されないように,現地給与表が基礎としている給与データを調べるように指示するものである。 (甲2,乙3)e 「駐日米国大使館現地職員退職(離職)給与基準」(本件退職給与基準,昭和43年7月1日付けで改訂施行されたもの)には,日本人職員の退職金は,退職時の基本給をもとに計算され,基本給は,共同現地給与表に記載された総収入からフリンジ・ベネフィット部分(定率及び定額の調整金)を控除したものであり,当時,日本における平 は,日本人職員の退職金は,退職時の基本給をもとに計算され,基本給は,共同現地給与表に記載された総収入からフリンジ・ベネフィット部分(定率及び定額の調整金)を控除したものであり,当時,日本における平均調整金は40パーセントである旨の記載がある。 しかし,これは退職手当に関する規定にすぎず,課税対象となる給付の範囲について一般的に規定したものではない。 (甲3)f 米国大使館のコーネリス・M・クァー総務部長は,平成12年2月8日,東京国税局で陳述を行い,その中で,「1950年代に,国税庁と米国大使館の間の協議により大使館職員の勤務条件の特殊性を考慮し,6割程度の申告が容認されたと聞いている」旨述べる一方,「税務調査の結果,現在では,我々も大使館職員も,上記のような日本の税法の解釈の仕方は誤っているということを理解している」旨述べている。 (甲12)g フォーリー駐日米国大使が,平成12年2月24日付けで,国税庁長官にあてて作成した書簡(フォーリー書簡)には,「現地職員の納税に関して,最近疑問が提起されましたが,日本の税法について大使館職員による誤解を大変遺憾に思います。」「数十年前の税務当局との話合いを受けての当初の説明以後,大使館職員はこうした現金での支払が,日本の企業がその従業員に提供する給付と同じように非課税であり,この部分を課税収入から控除できると信じてきました。」旨の記載がある。 (甲4)h フォーリー書簡を受けて,国税庁課税部長が,平成1 除できると信じてきました。」旨の記載がある。 (甲4)h フォーリー書簡を受けて,国税庁課税部長が,平成12年2月25日付けで,当時の米国大使館のラフレアー公使あてに送った書簡によれば,国税庁課税部長は,フォーリー書簡の中で言及された「数十年前の税務当局との話合いを受けての当初の説明(ここでは,「最初の指導」と訳されている)」に関して,「特定の納税者について他の納税者と異なる特別な取扱いをすることはできず,また,特別な取扱いをすることはあり得ない。」旨述べている。 (乙4)ウ以上の事実に加えて,本件取り決めに沿う内容の通達等の存在も認められないし,米国大使館において,米国大使館の日本人職員に対して本件取り決めがされたことやその内容を周知徹底させたような通知の存在も認められないことからすれば,昭和30年ころ,国税当局と米国大使館当局との間で,米国大使館に勤務する日本人職員に関する所得税課税の取扱いについて交渉が行われたことは認められるものの,原告主張のような内容の合意が成立したと認めることは困難であって,単に,米国大使館が,日本人職員に支払った給与等の額についての報告書を国税当局に提出する代わりに,日本人職員に対し,確定申告書を提出して所得税を納付するよう指導する旨の処理をすることになったにすぎないというべきである。 なお,前記のクァー陳述及びフォーリー書簡も,その内容は,客観的資料等を示してされたものではなく,伝聞又は推測の域を出るものではないというべきであるから,これらから,本件取り決めの存在を認めることは困難であり,他に本件取り決めが成立し 書簡も,その内容は,客観的資料等を示してされたものではなく,伝聞又は推測の域を出るものではないというべきであるから,これらから,本件取り決めの存在を認めることは困難であり,他に本件取り決めが成立したことを認めるに足る証拠はない。 したがって,米国大使館と国税当局との間に本件取り決めが成立したものと認めることはできない。 (2) そこで,その他に,フリンジ・ベネフィット部分及び国民年金基金負担部分が非課税であると解すべき根拠があるか否かについて検討する。 アフリンジ・ベネフィット部分についてa 所得税法は,所得についていわゆる包括的所得概念を採用し,人の担税力を増加させる経済的利得はすべて所得を構成することとし,社会政策上,課税の対象とすることが適当でないと認められる場合に,例外的に非課税所得としている(同法9条,11条等参照)。 また,給与については,必ずしも金銭の形を取る必要はなく,金銭以外の資産ないし経済的利益も,勤務の対価としての性質を持っている限り,職務の遂行に直接必要な給付と認められるものを除き,広く給与所得に含まれるものと解されている。 そして,米国大使館から日本人職員に対して現金で支給された「給与及び休暇の明細書」(乙9の77の体裁のもの)中の「FRINGEBENEFITS」「BONUSALLOWANCE」「TRANSPORTATIONALLOWANCE」欄に記載された各金額の合計からなるフリンジ・ベネフィット部分は,その性質に照らして給与所得に該当するので,これが非課税である旨の所得税法等の規定がない限り,課税所得として扱われるべきものである。 b 原告は,フリンジ・ベネフィット部分のうち,通勤手当を除いては て給与所得に該当するので,これが非課税である旨の所得税法等の規定がない限り,課税所得として扱われるべきものである。 b 原告は,フリンジ・ベネフィット部分のうち,通勤手当を除いては,いずれの項目が非課税所得に該当するのか具体的な主張をしないため,非課税所得に該当する支払項目及びその金額を特定できず,また,原告に給与支給の都度交付される「給与及び休暇の明細書」(乙9の77参照)に照らしても,通勤手当を除いては,非課税所得に該当する部分の特定は困難である。したがって,通勤手当を除いた原告主張のフリンジ・ベネフィット部分に関しては,それが非課税に当たると認めることはできない。 ちなみに,所得税法9条1項5号及びこれを受けた同法施行令20条の2によれば,通勤手当については一定の範囲内で非課税とされるところ,被告は,本件各処分に当たり,原告の「給与及び休暇の明細書」の「TRANSPORTATION ALLOWANCE」欄の記載を前提として計算した金額を通勤手当として給与所得から控除しており(当事者間に争いがない。),その計算過程等につき不合理な点も見受けられないことに照らせば,通勤手当相当額については,非課税として取り扱われているものと認められる。 c なお,原告は,個人給与明細書には,基本給に該当する部分につき「TAXABLEEARNINGS」(課税所得)との記載がある一方で,フリンジ・ベネフィット部分にはそのような記載がないことを根拠として,フリンジ・ベネフィット部分は非課税となる旨主張するが,証拠(乙14,15)によれば,上記「TAXABLEEARNINGS」との記載が,所得税法上の課税所得を意味するものとして用いられているものかどうかには疑問があるうえ,このような記載の存在が,我が国の (乙14,15)によれば,上記「TAXABLEEARNINGS」との記載が,所得税法上の課税所得を意味するものとして用いられているものかどうかには疑問があるうえ,このような記載の存在が,我が国の所得税法上の取扱いに影響を与える理由はなく,原告の上記主張は採用できない。 イ国民年金基金負担部分について所得税法74条は社会保険料の控除を定める規定であるところ,同条2項5号において,国民年金法の規定により被保険者として負担する国民年金の保険料及び国民年金基金の加入員として負担する掛金を,所得控除の対象としている。 他方,使用者が,所得税法74条2項に規定する社会保険料等,役員又は使用人が負担すべき保険料又は掛金を負担する場合には,当該金額は,当該役員又は使用人に対する給与等に該当する旨解されている(所得税基本通達36-31の8)。 そうであるとすれば,使用者が,労働者の国民年金基金の掛金の全部又は一部を負担した場合,当該使用者負担部分は給与所得に該当し,これを非課税とする規定はないから,課税所得に該当する。 ウしたがって,原告主張のフリンジ・ベネフィット部分(通勤手当分を除く。)及び国民年金基金負担部分について,本件取り決め以外について検討してみても,これを非課税とすべき根拠は認められないというべきである。 2 争点(2)(本件において,国税通則法70条5項に規定する「偽りその他不正の行為」が存在するか)について(1) 「偽りその他不正の行為」の意義について前記「法令の定め」記載のとおり,国税通則法70条は,①更正(同条3項の規定に該当するものを除く。)は,その更正に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る当該更正については,当該申 前記「法令の定め」記載のとおり,国税通則法70条は,①更正(同条3項の規定に該当するものを除く。)は,その更正に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る当該更正については,当該申告書を提出した日)から,②課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があったものに係る賦課決定は,当該申告書の提出期限から,それぞれ3年を経過した日(同日前に期限後申告書の提出があった場合には,同日とその提出があった日から2年を経過した日とのいずれか遅い日)以後においては,することができない旨,また,③決定又はその決定後にする更正は,その決定又は更正に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書の提出がない場合にする当該決定又は更正については,政令で定める日)から5年を経過した日以後においては,することができない旨をそれぞれ定めている(同条1項,3項)。 そのうえで,同条は,偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等は,上記の規定にかかわらず,①更正又は決定は,その更正又は決定に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る更正については,当該申告書を提出した日)から,②課税標準申告書の提出を要する国税に係る賦課決定は,当該申告書の提出期限から,③課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定は,その納税義務の成立の日から,それぞれ7年を経過する日まで,することができる旨を定めている(同条5項)。 上記のように,偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた場合等について,更正等を行い得る期間を,その更正等に係る国税の法定申告期限等から7年を経過する日までと定めた趣旨は,このような偽りその他不正の行 他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた場合等について,更正等を行い得る期間を,その更正等に係る国税の法定申告期限等から7年を経過する日までと定めた趣旨は,このような偽りその他不正の行為を行った者についてまで,租税法律関係の早期安定という点に配慮して定められた同条1項所定の短期の除斥期間を適用することは,実質的な租税負担の公平の観点から相当ではないという考慮に基づくものと解される。 そうであるとすれば,納税者が過少申告を行った場合にはそれが発覚し難い客観的状況が存在する場合において,納税者がそのような事情の存在を認識しながらあえて過少申告に及んだ場合には,当該申告行為自体が,上記の偽りその他不正の行為に当たると解するのが相当である。 なお,被告は,当該申告が過少であることを認識しながら申告を行った場合には,すべて「偽りその他不正の行為」に当たると主張するが,同条5項は,あくまで同条1項の定める原則の例外を定めた規定であると解され,「過少申告が故意によるものか否か」などの主観的要素は,同条1項及び同条5項のいずれにおいても,その要件とされていないこと,また,申告義務があることを知りながら故意に納税申告そのものを怠った者については,そのこと自体をとらえて「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた」として同条5項の規定を適用することは困難であるところ,これと比べて,申告を行った場合には過少申告の認識があればそれだけで当然に5項の適用があるとすることは明らかに均衡を失することからすると,被告の上記主張のように専ら主観的要素によって除斥期間に差異が生ずると解することは相当でないというべきである。 ちなみに,昭和56年にされた国税通則法70条5項の改正にあたっての衆参両議院 の上記主張のように専ら主観的要素によって除斥期間に差異が生ずると解することは相当でないというべきである。 ちなみに,昭和56年にされた国税通則法70条5項の改正にあたっての衆参両議院の大蔵委員会における各附帯決議も,被告の主張するような解釈を前提としていないことは明らかである。 (2) 過少申告行為の存在等について各項末尾に掲記の証拠等によれば,ア及びイ記載の事実を認めることができる。 ア平成4年分ないし平成10年分に係る,原告が米国大使館から実際に支給されていた給与金額,原告が確定申告書に記載した(米国大使館からの)給与金額,確定申告額の実際の給与金額に対する割合(申告割合)は,以下のとおりである。 (平成4年分)実際の給与金額 708万3889円確定申告額 335万3832円申告割合47・3パーセント(平成5年分)実際の給与金額 771万0284円確定申告額 340万3734円申告割合 44・1パーセント(平成6年分)実際の給与金額 809万2644円確定申告額370万0897円申告割合 45・7パーセント(平成7年分)実際の給与金額 826万 370万0897円申告割合 45・7パーセント(平成7年分)実際の給与金額 826万1852円確定申告額426万3840円申告割合 51・6パーセント(平成8年分)実際の給与金額 850万0505円確定申告額479万4480円申告割合 56・4パーセント(平成9年分)実際の給与金額 888万2136円確定申告額483万2640円申告割合 54・4パーセント(平成10年分)実際の給与金額 900万2836円確定申告額 545万3845円申告割合60・6パーセント(乙6,弁論の全趣旨)イ原告が,平成4年分ないし平成10年分の確定申告に際し,実際に納付すべき税額(本件各係争年分は本件各更正処分における納付すべき税額,平成8年分ないし平成10年分は各修正申告に係る納付すべき税額),原告が確定申告書に記載した納付すべき税額,確定申告書上の納付すべき税額の実際に納付すべき税額に対する割合(申告割合)は以下のとおりである。 成10年分は各修正申告に係る納付すべき税額),原告が確定申告書に記載した納付すべき税額,確定申告書上の納付すべき税額の実際に納付すべき税額に対する割合(申告割合)は以下のとおりである。 (平成4年分)実際に納付すべき税額 58万5000円確定申告書に記載された納付すべき税額 1400円申告割合0・2パーセント(平成5年分)実際に納付すべき税額 67万9500円確定申告書に記載された納付すべき税額 6000円申告割合 0・9パーセント(平成6年分)実際に納付すべき税額 58万3200円確定申告書に記載された納付すべき税額マイナス7250円申告割合0パーセント(平成7年分)実際に納付すべき税額 64万9600円確定申告書に記載された納付すべき税額 4万2900円申告割合6・6パーセント(平成8年分)実際に納付すべき税額 69万0200円確定申告書に記載された納付すべき税額 4万5700円申告割合6・6パーセント(平成9年分)実際に納付すべき税額 86万9400円確定申告書に記載された納付すべき税額 6・6パーセント(平成9年分)実際に納付すべき税額 86万9400円確定申告書に記載された納付すべき税額 13万0600円申告割合15・0パーセント(平成10年分)実際に納付すべき税額 76万円確定申告書に記載された納付すべき税額 11万0200円申告割合14・5パーセント(乙6,弁論の全趣旨)ウ以上のとおり,原告は,本件各係争年分を含め,平成4年分から平成10年分の所得税確定申告の際に,米国大使館から実際に支給を受けていた給与金額を大幅に下回る金額を,米国大使館からの給与総額であるかのように申告し(過少申告行為の存在),その結果,多額の税金の支払を免れていたことが認められる。 (3) 本件における「偽りその他不正の行為」の有無次に,本件各係争年分における原告の過少申告行為が「偽りその他不正の行為」に該当するかにつき検討する。 ア原告は,本件取り決めに基づいて申告したにすぎず,本件各申告は適正なものであると主張するが,既に検討したとおり,本件取り決めが存在したものとは認められないから,この点に関する原告の主張は理由がない。 イまた,原告は,仮に本件取り決めが存在しないとしても,原告には過少申告の認識はなかった旨主張するので,この点につき以下検討する。 a 米国大使館での所得税申告に関する慣行証拠(乙5の1ないし9,26 ないとしても,原告には過少申告の認識はなかった旨主張するので,この点につき以下検討する。 a 米国大使館での所得税申告に関する慣行証拠(乙5の1ないし9,26)及び弁論の全趣旨によれば,①米国大使館に勤務していた日本人職員のうち,給与収入金額等が判明した者(平成4年分は157名,平成5年分は175名,平成6年分は194名,平成7年分は204名)が,本件各係争年分に関して申告した給与金額(米国大使館に係る部分)の,現実の給与金額(米国大使館に係る部分)に対する割合は,別紙5の1ないし4のとおりであり,平均すると100パーセントを大きく下回っていたが,特に60パーセントに集中するわけでもなく,0パーセントから100パーセントまで広く分散していること,②米国大使館に勤務する日本人職員のうち約250名が,平成4年分から平成10年分の所得につき過少申告したものとして税務調査を受けたこと,③米国大使館の日本人職員は,上記税務調査を受けるまで,長年,米国大使館からの給与に関する過少申告について税務調査等を受けることはなかったことがそれぞれ認められる。 ところで,仮に,原告ら米国大使館の日本人職員が,「基本給(給与収入金額の約60パーセント)」を基準として申告する方法が正しい申告であると信じていたならば,給与収入金額の約60パーセントで申告する者が圧倒的に多くなると考えられるところ,実際には,上記のように,そのような傾向は認められず,申告割合は0~100パーセントに幅広く分散していることからすれば,原告ら日本人職員は,自らの判断で恣意的に申告割合を決定し,申告をしていたことがうかがわれる。 これらの事実からすれば,原告ら米国大使館の日本人職員らが,基本給(給与収入金額の約60パ 日本人職員は,自らの判断で恣意的に申告割合を決定し,申告をしていたことがうかがわれる。 これらの事実からすれば,原告ら米国大使館の日本人職員らが,基本給(給与収入金額の約60パーセント)を基準とする申告方法が正しいと信じていたものとは認められず,むしろ,多くの日本人職員が,長年にわたり,給与総額を相当下回る金額で申告をしても,そのことが税務当局に発覚しなかったことから,かなりの日本人職員の間には,給与総額を相当下回る金額で申告しても,税務当局にそれが発覚することはないとの認識が存在し,多くの日本人職員が給与総額を下回る申告を行っていたものと認めるのが相当である。 b 原告の行った所得税申告方法が,所得税法の定める申告方法とかけ離れていること我が国の所得税法は,納税者が,所得税法9条等に定める非課税所得を除きすべての所得を申告するという原則をとっているところ,原告は,上記原則に従わず,当初から,自らが決定した金額(米国大使館からの給与総額の約半分)を給与総額から減じ,その残額を給与総額として申告したものであり,このような申告方法は,所得税法が全く予定しないものであるといわざるを得ない。 c 原告が,上記申告方法が正しいものと信じたとは考えられないこと原告は,先任者らから,米国大使館での給与につき,給与総額の約半分程度を申告すればよい旨の説明を受けたが,後に同僚の話によって給与総額の6割程度を申告するようになった旨述べている(甲6,乙6)。 しかしながら,前記(2)アで認定したとおり,原告の各年分の申告割合(米国大使館からの給与に関し,原告が申告した給与金額の,実際の給与総額に対する割合)は,本件各係争年分で47・3,44・1, しかしながら,前記(2)アで認定したとおり,原告の各年分の申告割合(米国大使館からの給与に関し,原告が申告した給与金額の,実際の給与総額に対する割合)は,本件各係争年分で47・3,44・1,45・7,51・6パーセント,平成8年分から平成10年分は56・4,54・4,60・6パーセントであり,これは,原告が先任者らから受けたと主張する上記説明内容と完全には一致していない。 そして,原告が,交際費等の控除を特段行っていないと述べている(甲11)ことからすると,米国大使館から支給を受けた給与に関する申告割合は一定であるべきところ,前記のとおり,原告の各年分の申告割合は,44・1パーセントから60・6パーセントの間で変動しており,この申告割合の変動について,原告は何ら合理的説明を行っていない(原告は,米国大使館の職場としての特殊性等を強調するが,これは申告割合の変動を合理的に説明するものとは認められない。)。 そして,これらの過少申告の結果,原告は,前記(2)イで認定したとおり,正規の税額の0ないし6・6パーセント(本件各係争年分),6・6ないし15・0パーセント(平成8年分から平成10年分)しか納付していなかったものである。 これらの事実からすると,原告は,本件各係争年分の給与収入金額につき,自らの判断に基づき,恣意的に申告割合を変動させて確定申告を行っていたものと認められ,原告が,このような申告方法を正しいものと信じていたとは到底認められない。 ウ米国大使館の日本人職員が過少申告を行うのは容易であり,原告がそのような状況を利用して過少申告を行っていたことa 証拠(甲8,乙5の2・3・5)及び弁論の全趣旨によれば,米国政府には源泉徴収の義務がなく が過少申告を行うのは容易であり,原告がそのような状況を利用して過少申告を行っていたことa 証拠(甲8,乙5の2・3・5)及び弁論の全趣旨によれば,米国政府には源泉徴収の義務がなく,米国大使館は,日本人職員に対し,源泉徴収票を交付していないため,原告は,確定申告を行う際に,源泉徴収票を提出していないこと,米国大使館については,日本の課税当局による質問検査権(所得税法234条1項参照)は及ばないこと,原告は,これらの事情を認識していたこと,これらの事情から,我が国の課税当局が,米国大使館が日本人職員である原告に支給していた給与総額を把握するのは困難であったこと,これらの状況下において,原告は,平成4年から平成6年までは個人給与明細書,平成7年以降は「給与及び休暇の明細書」の交付を受けることにより,米国大使館から支給を受けた給与総額を認識しながら,本件各申告を行う際,原告自身が「フリンジ・ベネフィット部分」等であると主張する部分につき全く確定申告書に記載せず,あたかも上記フリンジ・ベネフィット部分等を除いた金額が,原告が米国大使館から受け取った給与総額であるかのような記載を行い,「個人給与明細書」や「給与及び休暇の明細書」を確定申告書に添付することもなかったことが,それぞれ認められる。 ちなみに,個人給与明細書の欄外には,「WARNING / DISCLOSETOAUTHORIZEDPERSONSONLY / ContainsInformationProtectedByTHEPRIVACYACTOF 1974」との記載があるが,上記プライバシー法は米国の連邦行政機関に適用されるものであり,当該明細書の交付を受けた個々の日本人職員がこれを税務署等に開示することが禁じられているわけではない OF 1974」との記載があるが,上記プライバシー法は米国の連邦行政機関に適用されるものであり,当該明細書の交付を受けた個々の日本人職員がこれを税務署等に開示することが禁じられているわけではない。 b 以上認定した事実からすると,本件においては,原告が確定申告の際に源泉徴収票を提出せず,日本の課税当局が米国大使館に対しては反面調査を行うことができないため,課税当局が原告の真実の所得金額を把握するのは容易ではないなど,原告の過少申告行為(具体的には,恣意的な申告割合での所得税の申告)を容易ならしめる客観的状況が存在し,原告はそれを認識しつつ,あえて過少申告を行ったものであるというべきである。 エ以上のとおり,本件では,納税者である原告が過少申告を行った場合にはそれが発覚し難い客観的状況が存在する場合において,納税者がそのような事情の存在を認識しながらあえて過少申告に及んだものであり,このような原告の本件各係争年分に係る過少申告行為は,国税通則法70条5項にいう「偽りその他不正の行為」に該当するものと認められる。 したがって,本件各更正処分は,各更正期間の点においても違法な点はないというべきである。 3 以上のとおりであり,本件各更正処分における税額の計算の基礎となるべき金額及び計算方法については争いがないから,本件各更正処分は適法であると認められ,また,これらの処分を前提とする本件各賦課決定処分についても,適法なものと認められる。 第4 結論以上のとおり,原告の本訴請求は理由がないから,これらをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 ,これらをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官市村陽典裁判官石井浩裁判官矢口俊哉 (別紙)代理人目録(原告訴訟代理人弁護士)廣江運弘鎌田泰輝 (被告指定代理人)植田浩行櫻井保晴岩﨑 廣海花田孝幸中尾守隆木上律子

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