平成20(行コ)22 違法確認請求住民訴訟控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成19年(行ウ)第35号)

裁判年月日・裁判所
平成21年2月4日 福岡高等裁判所 住民訴訟
ファイル
hanrei-pdf-37958.txt

判決文本文5,167 文字)

- 1 -主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人が,aに対し,原判決別紙実測図中の点1,点16,点17,点P1,点1の各点を順次直線で結ぶ線(以下「点1-16-17-P1-1線」という。以下,原判決別紙実測図中の地点や直線については同様に表記する。)で囲まれた土地(以下「本件土地」という。)に存する工作物を収去させて同土地の明渡しを求めることを怠ることが,違法であることを確認する。 第2事案の概要 本件は,控訴人が,福岡市とaの間でされた市道とaの所有地との境界の確認協議は対側地所有者の同意,承諾を欠き無効であり,aによる上記協議に基づく境界と本来あるべき境界との間の土地の占有は市道の不法占有となるにもかかわらず,被控訴人がaに対し同土地上の工作物の収去及び同土地の明渡請求を怠っていることは違法であるとして,その違法の確認を求めた住民訴訟の事案である。 原審は,控訴人の訴えを却下したところ,控訴人がこれを不服として控訴した。 前提事実並びに争点及びこれに関する当事者の主張は,原判決2頁13行目及び16行目の各「福岡市道路等境界確認協議事務の手引」をいずれも「福岡市道路等境界確認協議事務の手引き」に,同3頁7行目の「bら」を「c及びd(以下『cら』という。)」にそれぞれ改め,同頁9行目の「8」の後に「,11」を加え,同頁13行目の「b」を「b」に,同頁21行目の「同年」を「平成17年」に,同6頁9行目の「b」を「cら」にそれぞれ改め,後記3- 2 -のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における当事者の主張 - 2 -のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 当審における当事者の主張(1)控訴人ア本件境界確認協議の私法上の効果について原判決は,福岡市公有財産規則の規定内容及び国有財産法31条の3ないし5の規定に基づく国有財産に関する境界確定協議が一般に私法上の契約の性質を有するとされていることを根拠として,本件境界確認協議が私法上の契約の性質を有し,財務会計上の行為に当たるとしているが,公有地である道路と民有地である隣地との境界が法律上の根拠を有しない協議によって確定するものではない。福岡市公有財産規則は,公有財産の取扱いに関する事務に関する福岡市の内部規定にすぎず,福岡市公有財産規則を根拠として,本件境界確認協議に法律上の効果を付与したり,同協議が私法上の契約の性質を有するとすることはできない。 イ地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」について本件確認書は,福岡市がaとの間で作成し,同人に交付したものであるが,平成18年1月5日に本件確認書が作成され,aに交付されたことを控訴人が知ったのは,本件住民監査請求に対する却下通知によってであり,控訴人が本件住民監査請求を行うにあたっては,本件確認書が平成18年1月5日に作成,交付されたことを知る機会はなかったものであるから,控訴人が期間を徒過したことについて,地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」が存する。 そして,原判決は,平成18年1月5日を財務会計行為の終わった日として同日を起算点とするものであるから,「正当な理由」の存否も起算点に係る事実について知る機会があったか否かで判断されねばならない。 - 3 -(2)被控訴人ア本件境界確認協議の 終わった日として同日を起算点とするものであるから,「正当な理由」の存否も起算点に係る事実について知る機会があったか否かで判断されねばならない。 - 3 -(2)被控訴人ア本件境界確認協議の私法上の効果について控訴人は,国有財産法のような法律によらなければ,境界確定協議に私法上の契約の性質も認められないとするが,国有財産法は,国有財産の管理を各行政機関に配分し,その管理・処分に係る各行政機関における一般通則を定めるため,法律という形式を採用しているのであって,同法を根拠に境界確認協議による所有権の範囲の確定という効果が生じるものではない。 公有財産については,地方自治法238条ないし238条の7において全自治体における通則が規定され,各自治体において,当該自治体が有する公有財産の管理・処分に関する規定として公有財産管理規定を定めているところ,福岡市では,福岡市公有財産規則を定めているのである。 したがって,国有財産法と福岡市公有財産規則について,それぞれの財産の管理・処分に関する法的効果については,管理主体が異なることを除き,何ら変わるところがないのであって,国有財産であっても公有財産であっても,相隣接する土地所有権の範囲の確定は,所有権者としての当然の権能により隣接地所有者との間で協議を行い,意思の合致を見た効果なのである。 イ地方自治法242条2項ただし書の「正当な理由」について(ア)普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に財務会計上の行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在 きなかった場合には,地方自治法242条2項ただし書にいう正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,当該普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきである。 - 4 -(イ)福岡市は,平成17年8月6日に,福岡市の担当課職員,a及びeの立会,同意の上で境界を確認し,同日,境界柱を埋設しているところ,平成18年1月5日以前であっても,控訴人において相当の注意力をもって調査すれば,客観的にみて当該行為の存在を知ることができたのである。 (ウ)また,控訴人は,cらとaとの間の紛争において,cらの代理人として,平成17年10月7日のcらと福岡市との間の「道路等に係る境界確認協議申請書」の提出を始め,同月12日ないし14日においては,福岡市とaとの間でなされた境界確認に対する苦情申立てのため福岡市α維持管理課を訪れているのであって,控訴人の主観的な認識状況においても,本件境界確認協議の存在を知ることは十分に可能であった。 (エ)さらに,控訴人は,平成18年1月29日に,「福岡市コンクリート杭」の位置を含む関係地点の測量を行っており,遅くとも同時点で本件境界確認協議の存在を明らかに認識しているのである。 第3当裁判所の判断 当裁判所も,控訴人の本件訴えは不適法なものと判断する。その理由は,次のとおり修正するほかは,原判決の「事実及び理由」の「第3争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1)原判決8頁13行目の「調った」を「ととのつた」に,同頁17,18行目の「土地境界確定申請書に添付書類を添付させて申請させなければならない。」を「土地境界確定申請書(様式第5号)に次の る。 (1)原判決8頁13行目の「調った」を「ととのつた」に,同頁17,18行目の「土地境界確定申請書に添付書類を添付させて申請させなければならない。」を「土地境界確定申請書(様式第5号)に次の各号に掲げる書類を添付して申請させなければならない。(後略)」にそれぞれ改める。 (2)同9頁9,10行目の「同法31条の4第1項,」を「同法31条の4第1・2項」に改める。 (3)同頁15行目の後に行を改め,次のとおり加える。 「これに対し,控訴人は,国有財産の場合には,国有財産法により境界確- 5 -認協議に私法上の効果が生ずるが,公有財産においては,国有財産における国有財産法に該当する法律がないから,本件境界確認協議に私法上の効果は生じない旨主張する。 しかしながら,国有財産法に基づく境界確定協議は,行政庁と隣接地所有者とが対等の立場で協議することが予定されているもので,私法上の契約の性質を有するものであり,行政庁の優越的地位に基づいてなされるものではないと解されるところ,法律によらなければその効果が付与されない性質のものとは解されず,国有財産の場合と公有財産の場合とで,法律の有無によって,その法的性質が異なるものとは認められない。そして,福岡市においては,国有財産法31条の3ないし5に類似した規定を福岡市公有財産規則として規定しているのであるから,同規則に基づいてなされた本件境界確認協議は,私法上の契約の性質を有するものと解するのが相当であり,控訴人の上記主張は採用できない。」(4)同頁19行目の「財務会計行為」を「財務会計法規」に改める。 (5)同10頁20行目の「(なお,」から同頁21,22行目の「認められない。)」までを削り,行を改めて次のとおり加える。 「(5)地方自治法242条2項ただし書の『正当な理由』について める。 (5)同10頁20行目の「(なお,」から同頁21,22行目の「認められない。)」までを削り,行を改めて次のとおり加える。 「(5)地方自治法242条2項ただし書の『正当な理由』について控訴人は,本件確認書が平成18年1月5日に作成,交付されたことを知る機会はなかったので,控訴人が期間を徒過したことについて,地方自治法242条2項ただし書の『正当な理由』が存する旨主張する。 ところで,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合には,上記正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうか- 6 -によって判断すべきものと解される(最高裁平成14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁参照)。 これを本件について見るに,証拠(事実ごとに末尾に掲記する。)によれば,平成17年8月6日,福岡市コンクリート杭が点1及び点16に埋設されたこと(甲7,8,乙2),同年12月ころ,aが,点1-16線の北側に接する部分に土留めブロックを築いたこと(甲7,8),平成18年1月29日,控訴人は,本件境界についての実測図を作成するために,本件境界付近の実測を行い,点1及び点16に埋設された福岡市コンクリート杭についても,その位置を実測図面に記載していること(甲4)が認められ,遅くとも,同日までには,控訴人は,本件境界確認協議の存在を相当の注意力をもって調査すれば知ることができたものと認められるから,本件確認書が平成18年1月5日に作成,交付されたことを知らなかったとし くとも,同日までには,控訴人は,本件境界確認協議の存在を相当の注意力をもって調査すれば知ることができたものと認められるから,本件確認書が平成18年1月5日に作成,交付されたことを知らなかったとしても,遅くとも同月29日から相当な期間内に監査請求がなされるべきであったが,本件住民監査請求は平成18年1月29日から1年以上を経過した平成19年6月1日になされたもので,相当な期間内に監査請求がなされたとはいえず,不適法といわざるを得ない。 これに対し,控訴人は,平成18年1月5日を財務会計行為の終わった日として同日を起算点とするのであれば,『正当な理由』の存否も起算点に係る事実について知る機会があったか否かで判断されねばならない旨主張するが,財務会計行為の終わった日は,監査請求期間の起算点であるにすぎず,『正当な理由』の有無の判断においては,財務会計行為自体を知ることができたかどうかを問題とし,当該会計行為の終わった時期を問題とするものではないから,控訴人の上記主張は採用できない。」 以上によれば,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり- 7 -判決する。 福岡高等裁判所第2民事部裁判長裁判官石井宏治裁判官澤田正彦裁判官瀬戸さやか

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る