主文 1 本件訴えのうち,厚生労働大臣が,原告a3(申請疾病が心筋梗塞の部分に限る。),原告a4,原告a7,原告a8,原告a11,原告a14,a16,原告a17,原告a18,原告a19,原告a21及び原告a22に対し,別紙「被爆実態一覧」記載の各原告の「原処分」欄記載の日付でした原子爆弾被 爆者に対する援護に関する法律11条1項の認定申請に対する各却下処分の取消しを求める部分をいずれも却下する。 2 上記原告らのその余の請求及びその余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 厚生労働大臣が,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づき,別紙「被爆実態一覧」記載の各原告(ただし,原告b1及び原告b2を除く。)及び亡a1の原爆症認定申請に対して行った「原処分」欄記載の各却下処分をいずれも取り消す。 2 被告は,原告らに対し,各金300万円(ただし,原告bらについては各150万円)及びこれに対する各原告につき当該原告の別紙「原告経過一覧」記載の各訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)1条に該当する者として被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者である原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1(同人は,訴訟係属中に死亡し,原告bらがその地位を承継した。)が,厚生労働大臣に対し,同法11条1項に 基づき,同項に規定する認定(以下「原爆症認定」という。)の申請(以下「本 件申請」という。)をしたところ,厚生労働大臣から各却下処分を受けたため(以下「本件各却下処分」と 法11条1項に 基づき,同項に規定する認定(以下「原爆症認定」という。)の申請(以下「本 件申請」という。)をしたところ,厚生労働大臣から各却下処分を受けたため(以下「本件各却下処分」という。),原告らがその取消しを求めるとともに(以下「本件取消請求」という。),被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,慰謝料等として各300万円(ただし,原告bらについては各150万円)及びこれに対する各訴状送達の日の翌日以降の民法所定の年 5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「本件国賠請求」という。)事案である。 2 関係法令の定め別紙「関係法令の定め」記載のとおりである。 3 前提事実(末尾に掲げた証拠のほかは,当事者間に争いがないか弁論の全趣 旨により認められる。)原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1の生年月日,性別,認定申請日,申請疾病名,被爆時年齢,被爆地,原処分及び異議申立日は,別紙「被爆実態一覧」記載の各原告(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1の各欄記載のとおりである(第1事件(以下,特に断らない場合は同事件を指す。)乙 C1の1,8,10,17,乙C2の1,10,12,乙C3の1,7,9,乙C4の1,7,乙C8の1,5,7,乙C9の1,7,9,乙C10の1,7,9,乙C11の1,7,9,乙C14の1,5,7,11,乙C15の1,5,7,11,12,18,20,乙C18の1,4,5,8,乙C20の1,4,6,9,第2事件乙C1の1,5,7,11,12,16,18, 同事件乙C2の1,6,8,14,同事件乙C3の1,6,8,15,同事件乙C4の1,6,8,14,同事件乙C5の1,6,7,12,同事件乙C6の1,4,5,8,同事件乙C7の1,4,5,第3 同事件乙C2の1,6,8,14,同事件乙C3の1,6,8,15,同事件乙C4の1,6,8,14,同事件乙C5の1,6,7,12,同事件乙C6の1,4,5,8,同事件乙C7の1,4,5,第3事件乙C1の1,4,6,10,同事件乙C2の1,6,8,14,第4事件乙C19の1,4,5,同事件乙C21の1,6,7,12,第5事件乙C1,2)。 原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1は,別紙「原告経過一覧」 の訴えの提起日欄記載の年月日に当裁判所に本件訴訟を提起した。なお,同人らは,本件各却下処分があったこと,又は,異議申立てを行っている場合は,異議申立棄却決定があったことを知った日から6か月を経過する前,あるいは,異議申立中に,本訴を提起したものである(弁論の全趣旨)。 亡a1は,平成26年12月30日死亡した。亡a1の子である原告bら がそれぞれ2分の1の割合で相続して,本件訴訟を承継した。 別紙「原告経過一覧」の申請疾病欄記載の疾病のうち,太字ゴシックで記載された疾病については,本訴提起後,厚生労働大臣により原処分が取り消され,原爆症認定がなされている(乙C3の13,乙C4の14,乙C10の14,乙C11の12,乙C18の15,乙C19の23,乙C20の1 2,乙C21の16,第2事件乙C1の34,同事件乙C2の21,同事件乙C4の16,同事件乙C6の13)。 4 争点本件取消請求についてア原処分が取り消された後にも訴えの利益が認められるか。 イ各原告(ただし,既に申請疾病を原爆症であると認定された原告の部分を除く。)及び亡a1につき,被爆者援護法11条1項の要件の該当性が認められるか。 具体的には,①原子爆弾の放射線に起因する負傷又は疾病が存在すること(以下「 を原爆症であると認定された原告の部分を除く。)及び亡a1につき,被爆者援護法11条1項の要件の該当性が認められるか。 具体的には,①原子爆弾の放射線に起因する負傷又は疾病が存在すること(以下「放射線起因性」という。),②現に医療を要する状態にあること (以下「要医療性」という。)が認められるか。 ウ行政手続法8条の要求する理由の提示を行っているか。 本件国賠請求についてア厚生労働大臣に課されるべき職務上の義務に違反があると認められるか。 イ原告らに生じた損害額はいくらか。 5 争点に対する当事者の主張 本件取消請求の訴えの利益について(原告a3(申請疾病が心筋梗塞の部分に限る。),同a4,同a7,同a8,同a11,同a14,同a16,同a17,同a18,同a19,同a21及び同a22の主張)訴えの利益がある。 (被告の主張)厚生労働大臣は,別紙「認定済み原告ら一覧表」の「取消・認定日」欄記載の日付で,同別紙「原告名」欄記載の各原告ら(以下「認定済み原告ら」という。)に対し,「認定疾病」欄記載の疾病に関する本件各却下処分(原告a3については,同原告に対する却下処分の一部。その余の認定済み原告ら については,同原告らに対する各却下処分の全部。)を取り消して,同疾病を認定疾病とする原爆症認定をした。 認定済み原告らに対する前記認定疾病に関する本件各却下処分については,それらが職権により取り消され,同疾病について新たに原爆症認定の処分がなされたことによって,訴訟上取り消すべき行政処分がなくなっており,ま た,被爆者援護法24条1項の規定に基づく医療特別手当は,その申請の日の属する月の翌月分から遡って支給されることとなり(同条4項),原爆症認定の日に左右さ すべき行政処分がなくなっており,ま た,被爆者援護法24条1項の規定に基づく医療特別手当は,その申請の日の属する月の翌月分から遡って支給されることとなり(同条4項),原爆症認定の日に左右されないから,この点において認定済み原告らに不利益は残らず,他に上記各却下処分を訴訟において取り消すことによって回復される法律上の利益も認められない。 よって,認定済み原告らの各訴えのうち,上記各却下処分の取消しを求める訴え(原告a3については,却下処分の取消しの訴えの一部。その余の認定済み原告らについては,各却下処分の取消しの訴えの全部。)は,いずれも訴えの利益がないものとして不適法であり,却下を免れない。 亡a1について ア本件申請時において,甲状腺機能低下症に罹患していたものと認められ るか。 (原告bらの主張)亡a1が,本件申請時において,甲状腺機能低下症に罹患していたことは,c1医師の平成17年3月10日付け意見書により明らかである。 (被告の主張) 甲状腺機能低下症の場合,血液中のTSHが上昇し,FT4が低下する。 そのため,甲状腺機能低下症であるか否かは,血液検査において血液中のTSHの上昇及びFT4の低下が認められるか否かによって判断される。 亡a1について,本件申請時の関係書類として添付されたc1医師の意見書によれば「平成3年に放射線影響研究所にて甲状腺異常を指摘され平 成4年に当クリニックに来院されました。」とあるものの,放射線影響研究所(以下「放影研」という。)で認められた甲状腺異常がどのような異常なのかは明らかではない。このため,甲状腺機能低下症の発症時期は同意見書からは明らかではないが,上記意見書には,「甲状腺機能は他院でいつも採血されており,平成16年12月13日に初 がどのような異常なのかは明らかではない。このため,甲状腺機能低下症の発症時期は同意見書からは明らかではないが,上記意見書には,「甲状腺機能は他院でいつも採血されており,平成16年12月13日に初めて当クリニックで行った ところ,チラーヂン(以下「チラージン」ともいう。)S50μg/日服用中にもかかわらず,TSH2.91(0.5-2.5)とやや低下気味でした。」との記載があり,c1医師は上記検査値をもって甲状腺機能低下症と考えたものと考えられる。しかしながら,c1医師が引用する検査値を子細にみると,健康診断個人票によれば,平成16年12月13日の甲状 腺機能検査のデータは「FT3 2.86(基準値2.4-3.9),FT 4 1.47(1.2-1.7),TSH 2.91(0.5-2.5)」とあり,Free(遊離)T4の値及びFree(遊離)T3の値は正常範囲内である上,TSHについてもc1医師が基準値としている数字の上限値を軽度上回っているのみであるため,チラーヂンS50μg/日を投与 されていることを考慮しても,これらの所見のみをもって亡a1が甲状腺 機能低下症を有しているとは断定できなかった。なお,c1医師は,平成16年のTSHの基準値の上限を2.5としているが,「病気がみえるVol.3代謝・内分泌疾患」175頁の「甲状腺機能検査」によれば,血中のTSHの正常値は,「0.34~3.5μU/ml」,東京大学医学部附属病院検査部における「血液検査の参考基準値表」によれば,その基準範 囲は「0.38~4.31μU/ml」とされているほか,c1医師が上記診断をした平成16年頃に編集されたと考えられる「今日の臨床検査2005-2006」においては,TSHの基準値についてECLIA法を用いた場合では0.500~5.00 されているほか,c1医師が上記診断をした平成16年頃に編集されたと考えられる「今日の臨床検査2005-2006」においては,TSHの基準値についてECLIA法を用いた場合では0.500~5.00μIU/ml,CLIA法を用いた場合では0.38~3.64μIU/mlとされており,c1医師の記載 する基準値よりも幅の広いものとなっている。これらの基準値によれば,亡a1の平成16年12月13日のTSH値2.91は正常範囲内である。 一般的に医学的な検査の基準値は,健康人の95%がその範囲内に収まる値として設定されるものであり,利用した検査機器や試薬等の違いによって値が変わることを否定するものではないが,平成17年頃の代表的な基 準値として示された値とかけ離れた値が,検査された検査施設の名称(通常の医療機関は検査報告書を保存しており,その報告書に検査施設の名称も明らかにされている。)も明らかにされないまま提出されても,その値を基準値としてそのまま信用することは難しいといわざるを得ない。 以上のような検討を踏まえ,被告の事務局は,亡a1の甲状腺機能低下 症の有無を確認するには治療開始前の甲状腺ホルモン検査結果が必要と考え,平成17年11月2日付けで広島市を介して資料を要請した。これに対し,c1医師からは,平成4年6月15日の検査結果として「FT3 4. 36(基準値3.05-5.35),FT4 1.78(基準値0.71-1.85),TSH 2.73(基準値0.46-3.7)」と,甲状腺ホル モン検査結果は全て正常範囲内(基準値の範囲内)の値であったという報 告内容となっており,亡a1が甲状腺機能低下症を有していることをますます確認することができず,諮問を受けた疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会(以下「医療分 範囲内)の値であったという報 告内容となっており,亡a1が甲状腺機能低下症を有していることをますます確認することができず,諮問を受けた疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会(以下「医療分科会」という。)の答申も,申請書類を整備した上で,改めて審査を行うべきものとして処分を保留とするものであった。そこで,被告の事務局は,医療分科会の上記答申を受け,平成18 年1月20日付けで,①平成3年に放影研で甲状腺機能異常を指摘された際の甲状腺ホルモン等検査結果の写し,②d1病院で受診した際の甲状腺ホルモン検査結果の写し及び投薬状況がわかる資料,③広島鉄道病院で受診した際の甲状腺ホルモン検査結果の写し及び投薬状況が分かる資料を広島市を介して要請した。これに対し,c1医師からは,d1病院の情報と して「チラーヂンS50μg/日投薬」「TSH1.79,FreeT33.1,FreeT4 1.8(1997年(平成9年)12月10日)」との検査結果が報告された。これらもカルテの写しや検査報告書といった原本ではないため,投与の時期や検査がなされた施設,基準値等が明らかでないものの,一般的なTSHの基準値に照らせば全て正常範囲内の値で あり,亡a1の甲状腺機能低下症の存在を認める根拠とすることはできなかった。また,治療前の検査データとして送付された甲状腺ホルモン検査については,1987年(昭和62年)8月12日付けのT3,T4,TSHの値及び1989年(平成元年)7月26日付けT3,T4,TSHの値について「いずれも正常範囲内」との記載があり,追加提出された治 療前の検査データによっても亡a1の甲状腺機能低下症を確認することができなかった。 以上のとおり,亡a1の甲状腺機能低下症については2度にわたる追加資料の要請によ があり,追加提出された治 療前の検査データによっても亡a1の甲状腺機能低下症を確認することができなかった。 以上のとおり,亡a1の甲状腺機能低下症については2度にわたる追加資料の要請によっても明らかな疾病の存在を確認することができなかった。 (原告bらの反論) c1医師は,チラージンの投与にもかかわらず,甲状腺ホルモンの改善 (増加)が十分ではないことを「やや低下気味」という記載をしたものである。仮に,亡a1の甲状腺機能がもともと正常であったのであれば,平成9年のd1病院でのチラージンの投与を受けていれば,平成16年時点では医原性甲状腺機能亢進症になってしまうはずである。ところがそのような症状にはなっていないのである。 臨床の現場においては,検査結果を記載した「検査結果箋」そのものは,数値をカルテに記載した後に必ずしも保管されていない場合もあることからすると,検査施設の名称が明らかではないからといって,基準値が信用できない理由にならない。なお,被告は,放影研の資料については,基準値範囲が示されていないにもかかわらず,そのまま信用しているのである。 c1医師が示した基準値(0.5-2.5)については,被告が示している代表的基準値の範囲(最小値0.34,最大値5.0)と比べれば範囲内に含まれている。 被告が2度にわたって確認した対象は,平成4年6月15日の検査結果であるが,c1医師は,この時点の数値を持って甲状腺機能低下症と診断 していない。また,d1病院の資料の数値は,チラージン服用中の数値であって,正常化しているのは当然である。被告は,確認の対象を誤っている。 (被告の反論)甲状腺機能低下症に対しては,一般的に甲状腺ホルモン(T4)製剤で あるチラーヂンSが投与され,これにより ,正常化しているのは当然である。被告は,確認の対象を誤っている。 (被告の反論)甲状腺機能低下症に対しては,一般的に甲状腺ホルモン(T4)製剤で あるチラーヂンSが投与され,これによりTSH及びFT4は正常値となる。他方で,チラーヂンSは,あくまで甲状腺ホルモン(T4)を補充するのみであり,甲状腺機能の治療薬ではないから,仮に,甲状腺機能低下症の罹患者がチラーヂンSの投与を止めた場合,再び,TSHは異常値(高値)を示し,FT4も異常値(低値)を示すこととなる。そうであるとこ ろ,亡a1は,平成23年7月11日,同日まで1か月間,甲状腺ホルモ ン(T4)製剤であるチラーヂンSを飲んでいなかったにもかかわらず,そのTSH及びFT4は正常値を示していた。また,その後,チラーヂンSを再び投与したところ,同年9月9日の検査においては,TSHは異常に低値を示し,FT4は異常に高値を示した。これらのことから,少なくとも同日時点で亡a1の甲状腺は正常に機能していたというべきであり, 同人は,甲状腺機能低下症に罹患していなかったことは明らかである。一般的に甲状腺機能低下症の症状は,加齢に伴って増悪する。また,チラーヂンSには,甲状腺機能の治療効果はない。そのため,同日時点で亡a1の甲状腺が正常に機能していたことからすると,それ以前の平成17年3月11日(本件申請)時点において,亡a1が甲状腺機能低下症に罹患し ていたものとは通常考え難い。 (原告bらの再反論)被告は,カルテに,「チラ1Mのんでいない」との記載を,「1か月間」チラージンを全く飲んでいないことを前提に論を進めている。しかし,このカルテの作成者であるc1医師によれば,この文言は,チラージンを「1 か月間全く飲んでいない」のか「指示どおり飲んでいない チラージンを全く飲んでいないことを前提に論を進めている。しかし,このカルテの作成者であるc1医師によれば,この文言は,チラージンを「1 か月間全く飲んでいない」のか「指示どおり飲んでいない」のかはっきりしないというのである。そして,平成23年7月11日の検査数値は,TSHは,基準値より高め,FT4は基準値より低めであるが,検査数値は,同一日の採血時間によっても変わるため,亡a1のようにそれまで甲状腺機能低下症として治療を受けている人について,1回の検査から甲状腺機 能低下症ではないと判断することはないのである。このことは,臨床医であるe1医師も述べているところである。 同年9月9日については,c1医師は,TSHの検査数値が低下しているため,チラージンの服用量を減少させるために飲み方を変えたのである。 その後の同年11月4日の検査数値は,正常値となっているのである。こ のようにc1医師は,亡a1の担当医として,チラージンの服用量の増減 をして甲状腺ホルモンの最適化をしていたのである。また,e2医師は,チラージンを「がんの再発予防のため」などと邪推しているが,亡a1については,悪性腫瘍ではないためそのようなことはないのである。 本件申請に当たって作成された平成17年3月10日付け意見書には,検査数値が記載されており,作成者であるc1医師によれば,慢性甲状腺 炎が証明されたというのである。さらに「健康診断個人票(精密検査用)」には,平成16年12月13日の検査データの記載があるが,その数値は,「他院にてチラージン50μg/日を服用中」にもかかわらず,TSHは,軽度上昇している。これは,甲状腺機能低下症の治療中にしばしばみられる現象である。 イ甲状腺機能低下症に,放射線起因性及び要医療性が認められるか。 /日を服用中」にもかかわらず,TSHは,軽度上昇している。これは,甲状腺機能低下症の治療中にしばしばみられる現象である。 イ甲状腺機能低下症に,放射線起因性及び要医療性が認められるか。 (原告bらの主張)亡a1の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状,被爆後の症状及び喫煙,飲酒歴については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりである。亡a1の爆心地から1.2kmという至 近距離での被爆状況及びその後の下痢,脱毛という急性症状からすると,16歳という若年において相当量の放射線の被曝を受けていることが推認される。これらからすると甲状腺機能低下症に放射線起因性及び要医療性が認められる。 (被告の主張) 放射線起因性の具体的な判断方法としては,当該被爆者の放射線への被曝の程度(考慮要素①)と,統計学的・疫学的知見等に基づく申請疾病等と放射線被曝との関連性の有無及び程度(考慮要素②)とを中心的な考慮要素としつつ,これに当該疾病等の具体的症状やその症状の推移,その他の疾病に係る病歴(既往歴),当該疾病等に係る他の原因(危険因子)の有 無及び程度(考慮要素③)等を総合的に考慮して,原子爆弾の放射線への 被曝の事実が当該申請に係る疾病若しくは負傷又は治癒能力の低下を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性が認められるか否かを経験則に照らして判断するのが相当である。 亡a1(昭和4年○月○日生・女・被爆当時16歳)は,被爆状況について,昭和20年8月6日,広島市上流川町において被爆したと主張して いるところ,訴状,原爆症認定申請,特別被爆者健康手帳交付台帳によれば,同所の爆心地からの距離は約1.2kmである。DS02による被曝線量推計計算によれば,亡a1の初期放射線による被曝線量 て いるところ,訴状,原爆症認定申請,特別被爆者健康手帳交付台帳によれば,同所の爆心地からの距離は約1.2kmである。DS02による被曝線量推計計算によれば,亡a1の初期放射線による被曝線量は,約1.88グレイであるが,亡a1は木造一部鉄骨3階建ての建物内における被爆としているためこれに遮蔽係数(0.7とする。)を乗じた約1.316グ レイとなる。 亡a1は,本件申請に係る認定申請書において,被爆後の行動として,浅野泉邸に行き,猿喉川河岸で火事を避け,夕方に救助船で対岸に渡った後,東練兵場を通り,夕方遅くに大河町の自宅に帰ったと主張している。 この点については,亡a1の手記である「生かされた命を大切に」にもほ ぼ同様の記載があり,亡a1は,上記の行動に伴って誘導放射線による外部被曝及び内部被曝をしたと主張するものと考えられる。 しかしながら,広島・長崎の原爆に関する誘導放射線による被曝については,極めて低線量であって,一般的な科学的知見に照らせば,人体への健康被害の観点からみて有意な被曝とはいえない。すなわち,DS02に 基づく最新の分析においては,爆発直後に爆心地から1.2km地点に移動し,そのまま無限時間同じところにとどまっていたというあり得ない仮定に基づいて算出された誘導放射線量(積算線量)でさえ,約0.001グレイ(0.1センチグレイ)を下回る程度であり,さらに亡a1は,爆心地から約1.2kmの距離で被爆した後,爆心地から離れるように移動 したというのであるから,滞在時間も爆心地から1.2kmの距離に無限 時間とどまっていた場合に比較すればはるかに少ないといえる。そうすると,たとえ亡a1の被爆後の行動が,同人の主張どおりであったとしても,誘導放射線によって,健康被害の観点からみて有意な被曝を 限 時間とどまっていた場合に比較すればはるかに少ないといえる。そうすると,たとえ亡a1の被爆後の行動が,同人の主張どおりであったとしても,誘導放射線によって,健康被害の観点からみて有意な被曝をしたとはいい難い。また,内部被曝については,原爆投下当日に広島で8時間の片付け作業に従事したとして内部被曝を評価した分析においても,0.06μシ ーベルトという値であり,外部被曝に比べて無視できるレベルであるといえる。 亡a1の推定被曝線量は,亡a1に最大限有利に見積もっても,初期放射線による被曝線量約1.316グレイに誘導放射線による被曝線量0. 001グレイを足した1.317グレイとなる。 以上によれば,亡a1の被曝線量は,広い意味での健康影響という観点からは人体に影響が生じ得る線量の被曝をしているということは被告としてもことさら否定するものではないが,ICRP(国際放射線防護委員会。 以下同じ。)の報告における甲状腺機能低下症が発症したとされる線量(4グレイ)よりも低線量である上,亡a1の甲状腺機能低下症は,そもそも 疾病の存在が確認できないのであるから,その疾病に放射線起因性があるとはいえない。 ウ甲状腺腫瘤に,放射線起因性及び要医療性が認められるか。 (原告bらの主張)イのとおりであり,相当量の放射線の被曝を受けていることが推認され る。これらからすると甲状腺腫瘤に放射線起因性及び要医療性が認められる。 (被告の主張)亡a1は,「甲状腺腫瘤(多発性)」を申請疾病としているが,多結節性甲状腺腫をいうものと解される。甲状腺腫結節・腫瘍は,健康人の10人 に3人もの高頻度で認められる所見である。また,過去の疫学調査におい て,甲状腺腫を有する人は1000人中15ないし84人存在し,そのうち結 解される。甲状腺腫結節・腫瘍は,健康人の10人 に3人もの高頻度で認められる所見である。また,過去の疫学調査におい て,甲状腺腫を有する人は1000人中15ないし84人存在し,そのうち結節性甲状腺腫は7ないし26人存在するとするものがある。さらに,最近の精密な調査結果では,40歳以上の健康成人の17%に何らかの甲状腺疾患を認め,4.5%に結節性甲状腺腫を認めたとの報告もされている。そして,結節性甲状腺腫は,しばしば多発し,多結節性甲状腺腫とな るともされている。このように,亡a1の甲状腺腫瘤(多結節性甲状腺腫)は,健康人にも一般的に一定の割合でみられる疾患である。なお,その原因には炎症,過形成,良性腫瘍,悪性腫瘍が挙げられる。亡a1のカルテ上,何ら悪性所見が認められたとの記載はないから,悪性腫瘍以外によるものと解される。そして,これらの原因と,放射線被曝との関連性は何ら 明らかでない。 よって,その余の点について検討するまでもなく,亡a1の甲状腺腫瘤(多結節性甲状腺腫)に放射線起因性は認められないというべきである。 また,良性の多結節性甲状腺腫については,1ないし数年に1回の超音波検査と甲状腺関連血液検査で経過観察をすれば足りるものとされている。 このような積極的な治療を伴わない経過観察を受けているにすぎない場合,要医療性が認められない。 原告a2についてア甲状腺機能低下症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a2の主張) 原告a2の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状,被爆後の症状,喫煙歴及びその他については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりである。原告a2は,2歳時に爆心地から2. 7kmにあった木造の自宅において被爆した。爆風により,数m飛ばされ 状,喫煙歴及びその他については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりである。原告a2は,2歳時に爆心地から2. 7kmにあった木造の自宅において被爆した。爆風により,数m飛ばされて,右耳下に切り傷を負った。原告a2の母親は原告a2を連れて一時自 宅敷地内の簡易防空壕に避難したが,しばらくして自宅に戻った。以後自 宅において,両親らが被爆者の救護をしたが,原告a2はそれを見ている状態だった。同日の夕方から翌日にかけて灰のようなものが落下するようになり,原告a2はこれを浴びた。被爆翌日である昭和20年8月7日あるいは8日から数日間,原告a2は,母親に連れられて,連絡の取れない親戚や知人を捜すため,広島駅や松原町一帯を歩き回った。居住は,それ までの自宅に,昭和30年頃まで住み続けた。母親によると,原告a2は,被爆後,2,3日して微熱が出るとともに,下痢をするようになった。それらの症状は,10日程度続いた。原告a2は,昭和20年頃から,目やにが出るようになるとともに日光がまぶしくて開眼していることができないような状態となり,医者に行った。このような状況は,7,8年続いた。 20歳になってからも,胃腸虚弱,風邪を引きやすい,肩こり,腰痛,不整脈などに悩まされた。平成10年からは,不整脈が発生するため治療のための投薬治療を受けている。同15年c1クリニックにおいて甲状腺機能の低下が確認され,治療が開始されチラージンの服用を開始した。同18年頃からは,慢性胃炎となり,経過観察中で,1年に1度は胃内視鏡検 査を受けている。その他に,肩こりや腰痛に悩まされている。以上によれば,甲状腺機能低下症に放射線起因性が認められることは明らかである。 現在の知見によれば,放射線の作用によって甲状腺機能低下症が起こり 受けている。その他に,肩こりや腰痛に悩まされている。以上によれば,甲状腺機能低下症に放射線起因性が認められることは明らかである。 現在の知見によれば,放射線の作用によって甲状腺機能低下症が起こり始める線量についてはいまだ確実な知見はないものの,低線量被曝により甲状腺機能低下症の発症リスクが高まることも指摘されている。原告a2 は,2歳時に爆心地から2.7kmという距離にあった自宅において被爆したこと,被爆翌日の昭和20年8月7日あるいは8日から数日間は,母親とともに広島駅や松原町一帯を歩き回ったこと,発熱や下痢という急性症状が発症していること,居住は昭和30年頃まで,自宅であったことなどからすると,原告a2は相当量の放射線の被曝をしたものと推認される こと,甲状腺機能低下症の発症が,61歳と比較的若年であることからす ると,原告a2の甲状腺機能低下症は,原爆の放射線に起因するものと認められる。 (被告の主張)原告a2は爆心地から約2.7km地点にある自宅内で被爆しており,初期放射線による被曝線量は相当低いものというべきである。また,原告 a2の主張するような入市の事実及び白っぽい灰状のものが身体に付着したとの事実は認められないのであって,仮に,原告a2の母が被爆者を救護したとの事実を前提とし,また,原告a2が自宅で生活を続けたことを考慮しても,残留放射線による被曝線量も相当低いものというべきである。 そして,原告a2には,放射線被曝による急性症状が発現したものとは認 められないから,被爆後の身体症状等を踏まえても,高線量の放射線被曝をしたとは考え難いというべきである。このように,原告a2の被曝線量は,全体としても相当低いものというべきであり,およそ0.1グレイを上回るほどの放射線に被曝したものとは考え難 ,高線量の放射線被曝をしたとは考え難いというべきである。このように,原告a2の被曝線量は,全体としても相当低いものというべきであり,およそ0.1グレイを上回るほどの放射線に被曝したものとは考え難い。そうであるところ,ごく低線量の放射線被曝と甲状腺機能低下症との間には関連性が認められて いない。また,万一,両者の間に一定の関連性が認められるとの前提に立ったとしても,原告a2のような自己免疫性の甲状腺機能低下症と放射線被曝との間に一定の統計学的に有意な関連性を認めたのは,長瀧重信,柴田義貞ほかの報告「長崎原爆被爆者における甲状腺疾患」のみであることに照らせば,両者の関連性の程度が強いとはいえないというべきである。 そして,ごく低線量の放射線被曝から推定される甲状腺機能低下症の発症リスクは相当低いものというべきである。 これに対し,原告a2は,男性であり,59歳という比較的高齢になってから慢性甲状腺炎が増悪し,自己免疫性の甲状腺機能低下症を発症したものであるところ,甲状腺機能低下症は,男性でも60歳を超えると約8% は罹患するものとされているし,その原因としては慢性甲状腺炎が最も多 いとされているのである。このように,原告a2の甲状腺機能低下症が発症するまでの経過は,放射線に被曝していない者が甲状腺機能低下症を発症するまでの経過と何ら相違ないものである。上記を総合考慮すると,原告a2の甲状腺機能低下症が放射線被曝によって発症した可能性は極めて低く,反対に,加齢に伴い慢性甲状腺炎を発症し,その後,これが増悪し, 甲状腺機能低下症を発症するに至ったと考えても,医学的にみて何ら不自然不合理な経過ではないというべきである。 したがって,原告a2の申請疾病である甲状腺機能低下症の放射線起因性について,通常人が疑いを差し 能低下症を発症するに至ったと考えても,医学的にみて何ら不自然不合理な経過ではないというべきである。 したがって,原告a2の申請疾病である甲状腺機能低下症の放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められ ないというべきである。 イ甲状腺機能低下症に要医療性が認められるか。 (原告a2の主張)原告a2は,現在もc1クリニックを継続的に受診し,甲状腺ホルモン剤を服用しており,要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告a3についてア高脂血症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a3の主張) 原告a3の被爆地点,被爆時の状況,被爆直後から約1週間の行動,被爆後半年間の症状,被爆後の健康状態,喫煙歴等及びその他については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりであり,高脂血症に放射線起因性が認められる。 (被告の主張) 高脂血症は,血液中のコレステロール又は中性脂肪のいずれか,又は両 方が標準以上に増加した状態をいう。高脂血症の発症要因は多様であるが,大きく分けて,原発性(遺伝的要因が基盤となり欧米では家族性と呼ばれることが多い。)と,二次性(諸疾患や薬物,食事性要因等によるもの。)とに分けられている。高脂血症の発症には,遺伝的な素因に加えて,過食,摂食パターンの異常といった不適切な食生活,運動不足,アルコールの飲 み過ぎ,ストレス過多などが重要な役割を果たしている場合が多くあり,これらの生活習慣が深く関わっていることが多いため,高脂血症は,食生活や運動不足などの日常の生活習慣の積み重ねに起因する生活習慣病として広く知られている。このように,高脂血症 ている場合が多くあり,これらの生活習慣が深く関わっていることが多いため,高脂血症は,食生活や運動不足などの日常の生活習慣の積み重ねに起因する生活習慣病として広く知られている。このように,高脂血症が,日常の生活習慣による影響を強く受けるものであることが判明しているが,一方で,高脂血症と放 射線との関連性を認めた医学的知見は存在しない。原告a3は,審査資料を見る限りにおいても,平成15年6月の心筋梗塞の治療の際に高脂血症が認められ,投薬が開始されたと認められるところ,当時原告a3は63歳であり,原爆投下から既に約58年が経過している。 したがって,原告a3は,平成15年6月に高脂血症が認められるまで の間に,日常の生活習慣の積み重ねにより既に高脂血症に至っていた可能性が極めて高いと考えられるのであるから,同原告の高脂血症は生活習慣等の他原因によるものと考えるのが自然であり,かつ,医学的知見に合致するというべきである。 以上によれば,原告a3の高脂血症について,放射線起因性を認めるこ とはできない。 イ高脂血症に要医療性が認められるか。 (原告a3の主張)要医療性が認められる。 (被告の主張) 否認ないし争う。 原告a5についてア甲状腺機能低下症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a5の主張)原告a5の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状及び被爆後の症状については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記 載のとおりである。原告a5は,13歳時に爆心地から2.5kmという近距離で自宅前において,遮蔽のない場所で被爆し,右半身に熱線を受け,水ぶくれ状態となった。昭和20年8月15日,16日頃まで自宅で生活をしていた。終戦後は,松山市に避難することとなった。途中 いう近距離で自宅前において,遮蔽のない場所で被爆し,右半身に熱線を受け,水ぶくれ状態となった。昭和20年8月15日,16日頃まで自宅で生活をしていた。終戦後は,松山市に避難することとなった。途中旅館に泊まったところ,発熱,下痢及び血便が出る状態となった。加えて脱毛も始ま った。原告a5は,上記の症状について赤痢と間違われて隔離病棟に収容された後,同年9月中旬過ぎに広島に帰った。原告a5は,昭和26年(19歳時)頃に,肝臓病と診断され,その後,同36年卵巣腫瘍,同39年頃身体がだるくなったが原因不明,同40年頃ウイルス性肝炎,平成9年腹部大動脈瘤手術等,平成10年甲状腺機能低下症の診断,同14年両膝 変形性関節症,変形性脊椎症,頚椎骨軟化症,同22年白内障手術という状態である。以上によれば,甲状腺機能低下症に放射線起因性が認められることは明らかである。 現在までの知見によれば,放射線の作用によって甲状腺機能低下症が起こり始める線量についてはいまだ確実な知見はないものの,低線量被曝と 甲状腺機能低下症の発症との関連性が指摘されており,低線量被曝によって甲状腺機能低下症の発症リスクが高まることも指摘されているのである。 原告a5の被爆状況及びその後の発熱,下痢,脱毛という急性症状からすると13歳という若年において相当量の放射線の被曝を受けていることが推認されること,被爆後の健康状態,これに,原告a5の甲状腺機能低下 症の発症が66歳というさほど高齢でない年齢であることを勘案すれば, 原告a5の甲状腺機能低下症は,放射線に起因するものと認められる。 (被告の主張)原告a5は爆心地から約2.5kmの地点において被爆しており,初期放射線による被曝線量は相当低いものというべきである。また,仮に,原告a5が原爆投下 に起因するものと認められる。 (被告の主張)原告a5は爆心地から約2.5kmの地点において被爆しており,初期放射線による被曝線量は相当低いものというべきである。また,仮に,原告a5が原爆投下の10日又は11日後に爆心地から約1.3km地点に 入市していたとしても,残留放射線による被曝線量も相当低いものと考えられる。そして,原告a5には,放射線被曝に起因する身体症状が発現したものとは認められないから,被爆後の身体症状等を踏まえても,高線量の放射線被曝をしたとは考え難い。このように,原告a5の被曝線量は,全体としても相当低いものというべきであり,およそ0.1グレイを上回 るほどの放射線に被曝したものとは考え難い。そうであるところ,ごく低線量の放射線被曝と甲状腺機能低下症との間には関連性が認められておらず,また,放射線被曝と甲状腺機能低下症との関連性の程度は強いとはいえないし,仮に,ごく低線量の放射線被曝と甲状腺機能低下症との間にも一定の関連性が認められるとの前提に立ったとしても,ごく低線量の放射 線被曝による甲状腺機能低下症の発症リスクはごく僅かであると考えられる。これに対し,原告a5は,女性であり,66歳という比較的高齢になってから甲状腺機能低下症を発症したとしている。甲状腺機能低下症は,女性に多く,60歳を超えると女性の約16%は罹患するとされていることに鑑みれば,原告a5が,放射線に被曝していない女性と同様,加齢に より甲状腺機能低下症に罹患したと考えても,医学的にみて不自然不合理な点は見当たらない。 したがって,原告a5の申請疾病である甲状腺機能低下症の放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められ って,原告a5の申請疾病である甲状腺機能低下症の放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められ ないというべきである。 イ甲状腺機能低下症に,要医療性が認められるか。 (原告a5の主張)原告a5は,甲状腺機能低下症と診断されて以来,現在に至るまでチラージン投与による薬物治療を継続しており,要医療性があることは明らかである。 (被告の主張)否認ないし争う。 ウ狭心症に,放射線起因性が認められか。 (原告a5の主張)アと同じ。 (被告の主張)狭心症は,虚血性疾患のうち,虚血が一過性で心筋の障害が一時的であり,器質的傷害を残さない可逆的虚血の場合をいい,動脈硬化を主因とする生活習慣病であるとされている。動脈硬化の発症機序や危険因子等については,1秒たりとも休まず働くという動脈の特性上,動脈の血管は継時 的に徐々に傷害され,粥状動脈硬化の初期病変は既に小児期から発生し始め,加齢と共に進行する。さらに,加齢に加え,持続的に傷害し続ける因子(酸化LDL,血流等)が存在することで,動脈硬化の進行が促進されていくとされる。このような病変(粥状動脈硬化)の形成を促進させる4大危険因子としては,喫煙,高血圧,高脂血症及び糖尿病が挙げられてい る。以上の危険因子は多くなればなるほど有病率は加速度的に増加するとされている。 原告a5(昭和7年○月○日生まれ・女)の本件申請に係る審査時の意見書によれば,原告a5は,平成9年の心臓カテーテル検査で前下行枝(心臓の冠動脈の枝の一つ。)に狭窄を認めたとのことであるから,原告a5の 狭心症は,平成9年頃,すなわち原告a5が65歳の頃に発症したものと 5は,平成9年の心臓カテーテル検査で前下行枝(心臓の冠動脈の枝の一つ。)に狭窄を認めたとのことであるから,原告a5の 狭心症は,平成9年頃,すなわち原告a5が65歳の頃に発症したものと 推測される。心筋梗塞は,加齢に伴い進行する動脈硬化を主たる病態とする生活習慣病であるところ,狭心症も動脈硬化がベースとなる病態であることから,加齢が発症に大きく関わるものであり,原告a5が審査資料上65歳での発症と推測されることからすれば,加齢による動脈硬化が生じていたものと考えられる。また,原告a5には,狭心症にかかる重要な危 険因子の一つである高血圧があったことは明らかであり,高脂血症という危険因子も認められる。 以上のとおり,原告a5は,加齢,高血圧及び高脂血症といった狭心症の危険因子を重複的に有している。狭心症は,危険因子が重なるにつれ有病率が加速度的に増加するといわれていることを踏まえると,原告a5が 発症した狭心症は,原爆放射線の被曝によってしか説明のつかないものとは到底いえず,むしろ,上記複数の危険因子の作用により発症したものと考えるのが自然である。 心筋梗塞及び狭心症の放射線関連性については,UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会。以下同じ。)の2006年度のレポ ートにおいても,1ないし2グレイ以下の被曝については,「現在ある科学的データには一貫性のある疫学的データやもっともな生物学的メカニズムの説明がかけており,電離放射線と心血管疾患の因果関係を立証するには十分でない」と結論付けているところであり,放射線起因性を肯定することは不相当である。 原告a5の推定被曝線量は,可能な限り同原告に有利に見積もっても,0.0165グレイ以下と,先のUNSCEARレポートで「電離的放射線と心 り,放射線起因性を肯定することは不相当である。 原告a5の推定被曝線量は,可能な限り同原告に有利に見積もっても,0.0165グレイ以下と,先のUNSCEARレポートで「電離的放射線と心血管疾患の因果関係を立証するには十分でない」とされた1ないし2グレイ以下に比べてもはるかに低線量であるから,同原告の申請疾病である狭心症との間に放射線起因性を認めることはできない。 エ狭心症に,要医療性が認められるか。 (原告a5の主張)狭心症に,要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 オ高血圧に,放射線起因性が認められるか。 (原告a5の主張)アと同じ。 (被告の主張)高血圧は,日本における有病者が,治療を受けていない者まで含めれば約4000万人いるといわれているほどに非常に患者数の多い疾病である。 高血圧には,本態性高血圧と二次性高血圧があり,二次性高血圧とは腎・副腎・神経系の疾患など明らかな原因となる疾患が存在しているものであり,本態性高血圧とは,それ以外の全ての高血圧をいう。高血圧の90%以上は,本態性高血圧が占めているところ,遺伝的な因子及び生活習慣などの環境因子が関与していると解されている。殊に環境因子は,高血圧が 生活習慣病の一つとされていることからも明らかなように,過剰な塩分摂取,肥満,飲酒,精神的ストレス,自立神経の調節異常,肉体労働の過剰,蛋白質・脂質の不適切な摂取及び喫煙が挙げられている。高血圧の患者数は,年齢層が上がるほどに増加傾向にあり,60歳以上の女性の約50%以上が高血圧とされている。このように,高血圧は,環境因子や加齢の影 響を強く受けることが判明しているが,一方で,高血圧と放射線との関連性を認めた医学的知見は存在しない。 原告a5 約50%以上が高血圧とされている。このように,高血圧は,環境因子や加齢の影 響を強く受けることが判明しているが,一方で,高血圧と放射線との関連性を認めた医学的知見は存在しない。 原告a5が高血圧の診断を受けたのは,65歳頃のことであり,放射線による影響の有無に関わらず高血圧を発症し得る年齢であったといえる。 このことに加え,原爆投下から発症までに約52年が経過しており,その 間に上記のような環境因子による影響を受けた可能性が高いといえること から,原告a5の高血圧は,環境因子に起因するものであり,少なくとも放射線以外の原因によるものと考えるのが自然であり,かつ,医学的知見にも合致するというべきである。 以上によれば,原告a5の高血圧について放射線起因性を認めることはできない。 カ高血圧に,要医療性が認められるか。 (原告a5の主張)高血圧に,要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告a6についてア甲状腺機能低下症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a6の主張)原告a6の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状及び被爆後の症状については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記 載のとおりである。原告a6は,4歳時に,爆心地から2.5kmにある自宅近くの遮蔽のない畑において被爆し,爆風により飛ばされた。原告a6は,母親に連れられて近くの修道中学のグラウンドに避難した。被爆翌日である昭和20年8月7日,原告a6は,父母に連れられて,帰宅しない姉を捜すために当時の広島電鉄本社,日本赤十字病院をまわった。この 道筋は,地図を参照すれば,爆心地から2km以内に入ったことが確実である。同月8日には,朝から夕方まで紙屋町,八丁堀まで歩いているので ために当時の広島電鉄本社,日本赤十字病院をまわった。この 道筋は,地図を参照すれば,爆心地から2km以内に入ったことが確実である。同月8日には,朝から夕方まで紙屋町,八丁堀まで歩いているので,爆心地から500m以内にまで入ったことになる。その後も,同月15日まで父と広島市内を回っている。この頃までは,修道中学のグラウンドで野宿をした。脱毛や嘔吐については記憶にないものの,下痢,発熱があり, 被爆前は,元気な子といわれていたが,被爆後は,顔色も青白く元気がな くなった。昭和22年(6歳時)に小児喘息となり,平成12年(59歳時)に脳梗塞で入院し,現在も5週間おきに通院中である。同13年(60歳時)に左膝血管内上皮腫により入院手術し,同17年(64歳時)に喘息が発症し,現在も同薬治療中である。同20年(67歳時)に倦怠感による血液検査で甲状腺機能低下症と診断された。 以上によれば,甲状腺機能低下症に放射線起因性が認められることは明らかである。現在までの知見によれば,放射線の作用によって甲状腺機能低下症が起こり始める線量についてはいまだ確実な知見はないものの,低線量被曝と甲状腺機能低下症の発症との関連性が指摘されており,低線量被曝によって甲状腺機能低下症の発症リスクが高まることも指摘されてい る。原告a6の被爆状況及びその後の下痢,発熱という急性症状からすると,4歳という若年において相当量の放射線の被曝を受けていることが推認されること,被爆後の健康状態に加え,原告a6の甲状腺機能低下症の発症が67歳というさほど高齢でない年齢であることを勘案すれば,原告a6の甲状腺機能低下症は,放射線に起因するものと認められる。 (被告の主張)原告a6は爆心地から約2.5kmと比較的遠距離で被爆しており,初期放射線 い年齢であることを勘案すれば,原告a6の甲状腺機能低下症は,放射線に起因するものと認められる。 (被告の主張)原告a6は爆心地から約2.5kmと比較的遠距離で被爆しており,初期放射線による被曝の程度は相当低いと考えられる。また,その後の入市状況や,急性期に原爆放射線に起因する身体症状が現れたものと認められないこと等に鑑みれば,その被曝線量の程度は,全体としても相当低いも のというべきである。低線量の放射線被曝と甲状腺機能低下症との間には一般的な関連性が認められないというべきであるし,この点をおくとしても,被曝線量が小さくなればなるほど,甲状腺機能低下症の発症リスクは低減するというべきである。このような科学的知見に照らせば,原告a6の上記の程度の放射線被曝では,甲状腺機能低下症は発症しないというべ きであるし,少なくとも発症する可能性は極めて小さいものというべきで ある。よって,原告a6の甲状腺機能低下症については,その余の考慮要素について言及するまでもなく,その放射線起因性は認め難いというべきである。 これに対し,原告a6の甲状腺機能低下症は,当該疾病に診断されたとされている時期,その後の検査所見等の臨床経過に鑑みれば,原爆放射線 被曝とは無関係に発症したものと考えて,医学的にみて何ら不自然不合理はないというべきであり,その発症原因をあえて原爆放射線被曝に求める合理性は認め難いというべきである。なお,甲状腺機能低下症はかなりの頻度で認められる一般的な疾病であり,原爆放射線被曝に特異的な疾病ではない。それゆえ,そのことのみから当然に他原因により生じた合理的可 能性が問題となる。そうであるところ,原告a6の甲状腺機能低下症の発症については,その臨床経過が原爆放射線とは無関係に発症した一般的な甲状 ,そのことのみから当然に他原因により生じた合理的可 能性が問題となる。そうであるところ,原告a6の甲状腺機能低下症の発症については,その臨床経過が原爆放射線とは無関係に発症した一般的な甲状腺機能低下症の臨床経過と比較して特異な点がないことからすれば,その発症は専ら他原因によるのではないかと疑わせるに十分というべきである。 以上を総合考慮すると,原告a6の申請疾病である甲状腺機能低下症の放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められないというべきである。 イ甲状腺機能低下症に,要医療性が認められるか。 (原告a6の主張)原告a6は,平成19年9月頃に甲状腺機能低下症を発症し定期的に検査を受けながら現在に至るまでチラージンの投与を受けて治療を継続しているのであるから,要医療性がある。 (被告の主張) 否認ないし争う。 ウ脳梗塞後遺症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a6の主張)原告a6の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状及び被爆後の症状については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりであり,放射線起因性が認められる。 (被告の主張)原告a6は爆心地から約2.5km地点において被曝しており,初期放射線による被曝線量は相当低いものと考えられる。また,仮に,原告a6が原爆投下の翌日である昭和20年8月7日,爆心地から約1.6km地点まで入市し,同月8日に爆心地から約0.4km地点まで入市していた としても,残留放射線による被曝の程度も相当低いものと考えられる。原告a6には,放射線被曝に起因する身体症状が発現したとは認められないから,被爆後の 心地から約0.4km地点まで入市していた としても,残留放射線による被曝の程度も相当低いものと考えられる。原告a6には,放射線被曝に起因する身体症状が発現したとは認められないから,被爆後の身体症状を踏まえても,高線量の放射線被曝をしたとは考え難い。このように,原告a6の被曝線量は,全体として相当低いものというべきであり,0.1グレイを大幅に下回る程度であったと考えるのが 相当である。そもそも脳梗塞については,放射線被曝との間で関連性が認められていない。かかる事情は,放射線起因性を検討する上では,極めて大きな消極事情として位置付けることができる。それゆえ,放射線被曝の未解明性を考慮し,また,放射線防護の観点から「循環器疾患のしきい吸収線量は,心臓や脳に対しては,0.5グレイ程度まで低いかもしれない」 としたICRPステートメントをも考慮に入れて,脳梗塞と放射線被曝との関連性を検討する余地があると解したとしても,相当慎重に検討する必要があるというべきである。とりわけ低線量とみられる場合にはしきい値(ある作用が生体に反応を引き起こすか起こさないかの限界のことを「しきい」と呼び,その時の作用因の大きさ,つまり作用因の有効な最小値を, しきい値という。生理学でよく用いられ,有効な作用量の最小値と無効な 作用量の最大値との平均をしきい値とすることが多い。放射線影響の場合,生体反応を引き起こす限界線量として「しきい線量」が用いられる。)を考慮すべきであるから,放射線被曝との関連性については,より一層慎重に検討する必要があるというべきである。原告a6の被曝線量は,相当低線量であると合理的に考えられるのであるから,これらの事情のみから考え ても,そもそも,原告a6の脳梗塞が放射線被曝に起因して発症したものであるなどと うべきである。原告a6の被曝線量は,相当低線量であると合理的に考えられるのであるから,これらの事情のみから考え ても,そもそも,原告a6の脳梗塞が放射線被曝に起因して発症したものであるなどとは考え難いというべきである。その上,原告a6が脳梗塞を発症したのは58歳当時であり,原爆放射線に被曝したか否かに関わらず,一般に脳梗塞を発症したとしても何ら不自然ではない年齢である。脳梗塞については,喫煙,高血圧及び脂質異常症等が危険因子として挙げられて いるところ,原告a6は,20歳頃から1日20ないし40本喫煙しており,長期にわたる喫煙歴が認められ,また,脳梗塞発症の約2年前から高血圧症や脂質異常症に罹患していたものと認められる上,脳梗塞発症当時の両疾病の状態も悪かったものである。高血圧や脂質異常症については,これらが2個重積するだけで脳卒中のリスクは約2.5倍高くなるとされ ている。 以上によれば,原告a6は,脳梗塞発症当時,上記各危険因子のみで優に脳梗塞を発症し得たのであって,上記各危険因子によって当該脳梗塞が発症したものとして,医学的に優に合理的に説明することができる。 したがって,原告a6の申請疾病である脳梗塞後遺症の放射線起因性に ついては,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる程度の高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められない。 エ脳梗塞後遺症に,要医療性が認められるか。 (原告a6の主張) 原告a6の脳梗塞後遺症に,要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告a9についてア甲状腺機能低下症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a9の主張) 原告a9の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状,被爆後の )否認ないし争う。 原告a9についてア甲状腺機能低下症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a9の主張) 原告a9の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状,被爆後の症状及びその他については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりである。原告a9は,爆心地から約2.8kmの距離で被爆した。原告a9は,被爆時,タンスの下敷きになり,いったん意識を消失するなど,放射線はもとより爆風等による原子爆弾の殺傷威力を強 度に受けたものである。また,原告a9は,被爆当日,兄を捜すため裸足で東雲町の自宅から富士見町まで行き,同所付近で兄を捜した後,稲荷橋を渡って的場町経由で自宅に戻っている。したがって,原告a9は,被爆直後,爆心地から1.5km以内の地点に長時間滞在していたものである。 この間,原告a9は,皮膚(傷口)や呼吸を通じて放射線物質を体内に取 り込んだものである。原告a9は,被爆当日,富士見町付近で被爆し被爆翌日に死亡したことから大量の放射線被曝をしたと考えられる兄と接触し,その後も,避難先のブドウ畑で多くの被爆者と至近距離で接したことで,誘導放射化された人体等からの放射線により被曝したものである。原告a9は,被爆当日,ブドウ畑のブドウを食べ,昭和20年8月10日に食料 の配給があるまでは,屋外にあった水槽等の水を飲んでいた。その結果,放射線に曝露した食物等を摂取し,内部被曝したものである。原告a9は,被爆翌日から1週間程度,被爆者の遺体の火葬を手伝っている。このとき,原告a9は,誘導放射化された人体等から直接に,又は放射性物質を呼吸で体内に取り込むことなどにより内部被曝したものである。原告a9は, 爆心地から2.0km以内にあり,火災により損壊した母方の伯父の自宅 導放射化された人体等から直接に,又は放射性物質を呼吸で体内に取り込むことなどにより内部被曝したものである。原告a9は, 爆心地から2.0km以内にあり,火災により損壊した母方の伯父の自宅 の片付け作業を,1か月程度かけて行っている。この作業の間,誘導放射化された家屋の残骸等から出る放射線により被曝したり,放射線物質を呼吸の際に取り込むなどしたりして内部被曝をしたものである。原告a9には,発熱と脱毛という急性症状があった。特に脱毛は,被爆10日後頃から始まり,完全脱毛であった。このことは,原告a9の放射線被曝による 障害の程度の高さを示すものである。その後も,原告a9は,中学生のときに白血球の数値の異常を指摘されたり,貧血や倦怠感に悩まされてきたりした。これらの症状も,放射線被曝に起因しているものである。易疲労性,環境不堪性(気候のちょっとした変化に極めて弱いこと),罹患傾向などが少なからずの被爆者に認められたことは,被爆者の精神神経学的検討 からつとに知られた病態であった。 以上から,原告a9が相当量の原爆放射線に被曝していることが明らかである。放射線被曝が甲状腺機能低下症の原因となることは被告も認めている。原告a9が相当量の原爆放射線に被曝したことは明らかであって,原告a9の甲状腺機能低下症について放射線起因性を優に認めることがで きる。 (被告の主張)原告a9は爆心地から約2.8ないし3.0kmと遠距離で被爆しており,初期放射線による被曝の程度は相当低いと考えられる。また,その後,入市した等の事情は認められず,むしろ,原爆投下後,昭和20年8月1 6日までは爆心地から遠く離れた安芸郡熊野町で生活をしていたものと認められるのであるから,残留放射線による被曝の程度は考慮する必要がないというべき れず,むしろ,原爆投下後,昭和20年8月1 6日までは爆心地から遠く離れた安芸郡熊野町で生活をしていたものと認められるのであるから,残留放射線による被曝の程度は考慮する必要がないというべきである。さらに,原告a9には,原爆被爆後,急性期に原爆放射線に起因する身体症状が現れた等の事情も認められない。したがって,その被曝線量の程度は,全体としても相当低いものというべきである。低 線量の放射線被曝と甲状腺機能低下症との間には一般的な関連性が認めら れないというべきであるし,この点をおくとしても,被曝線量が小さくなればなるほど,甲状腺機能低下症の発症リスクは低減するというべきである。このような科学的知見に照らせば,原告a9の上記の程度の放射線被曝では,甲状腺機能低下症は発症しないというべきであるし,少なくとも発症する可能性は極めて小さいものというべきである。 よって,原告a9の甲状腺機能低下症については,その余の考慮要素について言及するまでもなく,その放射線起因性は認め難いというべきである。また,原告a9の甲状腺機能低下症は,潜在性甲状腺機能低下症の可能性があり,潜在性甲状腺機能低下症から顕性甲状腺機能低下症への進展については,最新の知見によれば,放射線起因性は否定されているといえ る。これに対し,原告a9は,甲状腺機能亢進症の治療のため,放射性ヨード131の投与を受けており,その結果,放射性ヨードが原告a9の甲状腺に取り込まれ,甲状腺組織を破壊し,甲状腺機能低下症に至ったと考えて,医学的に不自然不合理ではなく,その発症原因を原爆放射線被曝に求める合理性も認め難いというべきである。 以上を総合考慮すると,原告a9の申請疾病である甲状腺機能低下症の放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実 原因を原爆放射線被曝に求める合理性も認め難いというべきである。 以上を総合考慮すると,原告a9の申請疾病である甲状腺機能低下症の放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められないというべきである。 イ甲状腺機能低下症に,要医療性が認められるか。 (原告a9の主張)原告a9は,現在も,d2クリニックを継続的に受診し,チラージンを服用しており,要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告a10について ア高血圧症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a10の主張)原告a10の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状及び被爆後の症状については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりであり,放射線起因性が認められる。 (被告の主張)原告a10の本件申請に係る平成18年11月9日付けの認定申請書には「昭和60年身体の不調を感じて,広島大学附属病院で診察を受け,高血圧と診断されました。」との記載があり,添付された広島大学病院のc2医師の意見書には「昭和63年以来,薬剤抵抗性高血圧症」との記載があ ることからすれば,原告a10は,昭和60年ないし昭和63年頃(44歳時)には高血圧症と診断されていたものといえる(なお,上記認定申請書には,「昭和37年就職試験のときの健康診断で高血圧と診断されました。」との記載もみられる。)。また,広島大学附属病院のc3医師は,上記の申請に関する照会に対する回答書において,原告a10の高血圧症の原 因として原発性アルドステロン症の可能性を疑い,平成17年(2005年)1月27日に副腎サンプリング検査を行 3医師は,上記の申請に関する照会に対する回答書において,原告a10の高血圧症の原 因として原発性アルドステロン症の可能性を疑い,平成17年(2005年)1月27日に副腎サンプリング検査を行った旨回答しているものの,上記回答書では,最終的に確定診断まで至ったかどうかは明らかにされていない。もっとも,本件申請に係る平成20年12月25日付けの認定申請書の添付資料には,同年1月に,広島大学附属病院において,「アルデン トストロン症と診断された。」旨の記載がある。また,原発性アルドステロン症は治療抵抗性高血圧の場合は特に発症頻度が高いとされているところ,上記c2医師の意見書には「薬剤抵抗性高血圧症」との記載がある。 以上の各事実に照らせば,原告a10はおそらく平成20年1月頃に原発性アルドステロン症の確定診断を受けているものと思われる。このよう に,原告a10については,内分泌疾患である原発性アルドステロン症に よる二次性高血圧症の可能性が高いといえるが,環境因子や加齢に起因する本態性高血圧症の可能性も考えられるところ,高血圧症についても,原発性アルドステロン症についても,いずれも放射線被曝との関連性を明確に関連づける医学的知見はなく,むしろ放射線以外の原因によるものと考えるのが自然かつ合理的であり,かつ,医学的知見にも合致するというべ きである。 以上によれば,原告a10の申請疾病のうち高血圧症については,放射線起因性の要件を満たすとはいえない。 イ高血圧症に,要医療性が認められるか。 (原告a10の主張) 原告a10は,通院加療しているのであるから,要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 ウ脳内出血後遺症及び脳梗塞に,放射線起因性が認められるか。 (原告a10の主張) 原告a10は,通院加療しているのであるから,要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 ウ脳内出血後遺症及び脳梗塞に,放射線起因性が認められるか。 (原告a10の主張) 原告a10の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状及び被爆後の症状については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりであり,放射線起因性が認められる。 (被告の主張)原告a10は爆心地から約2.3km地点において被爆しており,初期 放射線による被曝線量は相当低いものと考えられる。また,原告a10は,被爆後,しばらくの間同所で生活していたと考えられるところ,かつ,その間,「黒い雨」に遭うなどの事実も認められず,残留放射線による被曝の程度も相当低いものと考えられる。原告a10には,放射線被曝に起因する身体症状が発現したとは認められないから,被爆後の身体症状を踏まえ ても,高線量の放射線被曝をしたとは考え難い。このように,原告a10 の被曝線量は,全体として相当低いものというべきであり,0.1グレイを大幅に下回る程度であったと考えるのが相当である。そもそも脳梗塞については,放射線被曝との間で関連性が認められていない。かかる事情は,放射線起因性を検討する上では,極めて大きな消極事情として位置付けることができる。また,脳出血については,一定の関連性は認められ得るも のの,1.3グレイ未満の放射線被曝との関連性は認められていない。それゆえ,上記各疾病につき,放射線被曝の未解明性を考慮し,また,放射線防護の観点から「循環器疾患のしきい吸収線量は,心臓や脳に対しては,0.5グレイ程度まで低いかもしれない」としたICRPステートメントをも考慮に入れて,放射線被曝との関連性を検討する余地があると解した 点から「循環器疾患のしきい吸収線量は,心臓や脳に対しては,0.5グレイ程度まで低いかもしれない」としたICRPステートメントをも考慮に入れて,放射線被曝との関連性を検討する余地があると解した としても,相当慎重に検討する必要があるというべきである。とりわけ低線量とみられる場合にはしきい値を考慮すべきであるから,放射線被曝との関連性については,より一層慎重に検討する必要があるというべきである。原告a10の被曝線量は,相当低線量であると合理的に考えられるのであるから,これらの事情のみから考えても,そもそも,原告a10の脳 出血及び脳梗塞が放射線被曝に起因して発症したものであるなどとは考え難いというべきである。その上,原告a10が脳出血及び脳梗塞を発症したのは,原爆放射線に被曝したか否かに関わらず,一般に脳梗塞を発症したとしても何ら不自然ではない年齢である。また,いずれの疾病も高血圧を最大の危険因子であるとするところ,原告a10は,昭和49年頃から 高血圧を指摘されており,特に,昭和63年から平成6年までの間は,高血圧加療目的で入退院を繰り返しており,その後も高血圧のコントロールは不良であったのであるから,重度の高血圧症であったと考えられる。それゆえ,上記各疾病が上記重度の高血圧症によって引き起こされたと考えて何ら不自然不合理ではない。加えて,原告a10は,脳梗塞が確認され る以前から,脂質異常症及びCKD(慢性腎臓病)に罹患していたと考え られるのであって,これらも脳梗塞発症に寄与したと合理的に考えることができる。 以上によれば,原告a10は,脳出血及び脳梗塞発症当時,上記各危険因子のみによって上記各疾病を発症したものとして,医学的に優に合理的に説明することができる。 したがって,原告a10の申請疾 以上によれば,原告a10は,脳出血及び脳梗塞発症当時,上記各危険因子のみによって上記各疾病を発症したものとして,医学的に優に合理的に説明することができる。 したがって,原告a10の申請疾病である脳出血及び脳梗塞の放射線起因性については,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められない。 エ脳内出血後遺症及び脳梗塞に,要医療性が認められるか。 (原告a10の主張)通院加療をしているのであるから,要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 オ本件申請時において,貧血であったと認められるか。 (原告a10の主張)認定申請書のとおり貧血であると認められる。 (被告の主張)否認する。平成18年11月9日付けの本件申請に係る貧血の診断根拠となる追加資料の提出の求めに対して広島大学病院から唯一追加提出され た血液検査の結果をみても,ヘモグロビンの値は12.3g/dlという正常範囲内に収まっており,原告a10が貧血状態であることすら確認できなかった。 カ貧血に,放射線起因性が認められるか。 (原告a10の主張) 原告a10の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状及び被 爆後の症状については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりであり,放射線起因性が認められる。 (被告の主張)原告a10には,本件申請に係る平成18年11月9日付けの認定申請書において,昭和34年頃,貧血でよく倒れていた,昭和60年に高血圧 で入院した際に,貧血もあるといわれ,血液検査の結果,造血機能障害と診断されて投薬治療を続けることになり,貧血と高血圧のために入退院を6回くらい繰り返したと よく倒れていた,昭和60年に高血圧 で入院した際に,貧血もあるといわれ,血液検査の結果,造血機能障害と診断されて投薬治療を続けることになり,貧血と高血圧のために入退院を6回くらい繰り返したと主張している。また,上記申請書に添付された広島大学病院のc2医師の意見書には,「昭和63年初診時頃から,軽度の貧血を認めていたが,平成4年7月Hgb7.7g/dl,Hct24.5% と低下を認めたため,入院により鉄剤投与を行った。それによりHgb10g/dl前後まで改善したが,以後も少なくとも平成6年までは鉄剤の内服を継続した。現在はHgb11.6g/dlと軽度低値であるが,錠剤内服なしに維持出来ている」との記載がある。原告a10の貧血の原因についても,c2医師は,意見書において,「被爆との因果関係については 否定しえない。(中略)被爆は,半径2.3kmで被爆後も被爆地にとどまっており,被爆の身体に及ぼす影響は大と考える。」と記載していることからすれば,医学的知見というよりは,単に原告a10の被爆状況のみを根拠として因果関係を否定できないとしているにすぎない。仮に,原告a10が貧血状態にあったとすると,鉄剤投与で改善した旨の上記のc2医師 の意見書の記載を前提とすれば,その貧血は鉄欠乏性貧血の可能性が高いと考えられる。原告a10が主張するように,昭和34年(15歳時)頃や,昭和60年ないし昭和63年頃以降に,貧血状態にあったことが事実であるとしても,被爆後長期間経過後のものであって,被曝による骨髄障害であるとは考え難く,先進国の若年から成人女性の約半数が鉄欠乏性貧 血であるとの国際的知見(WHOの調査結果)があること,鉄剤投与で改 善したとの意見があることなどに照らせば,原告a10の場合も,若年・成人女性に一般的 年から成人女性の約半数が鉄欠乏性貧 血であるとの国際的知見(WHOの調査結果)があること,鉄剤投与で改 善したとの意見があることなどに照らせば,原告a10の場合も,若年・成人女性に一般的にみられる鉄欠乏性貧血にすぎないとみるのが自然かつ合理的である。 以上のとおり,原告a10の貧血については,現状では,そもそも貧血状態であることですら確認できない状況である上,仮に,貧血状態であっ たとしても,①原告a10の被曝線量の程度は,非常に低線量であり,誤差等を考慮したとしても,リンパ球数の低下をもたらすとされる0.5グレイにも,リンパ球以外の白血球,血小板,赤血球数の減少をもたらすとされる1グレイにも到底及ばない程度のものであること,②原告a10の貧血状態は,原告a10の主張を前提としても,被爆から14年経過した 昭和34年頃又は被爆から長期間経過した後に生じており,また,c2医師の意見書によれば,昭和63年頃から平成6年頃まで6年間にもわたって服薬が必要な貧血状態が継続していたこと,③原告a10の貧血状態が事実であるとしても,若年・成人女性に一般的にみられる鉄欠乏性貧血であると考えられること,④原告a10については,貧血やリンパ球減少を 生じさせる原因となる,原爆放射線被曝による晩発障害である白血病等の血液腫瘍系の疾患に罹患している旨の診断もされておらず,また,医師がそれを疑っている形跡もうかがわれないことなどからすると,原告a10の申請疾病である貧血が原爆放射線により発症したことについて,いまだ通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得る程度に高度の 蓋然性があることが証明されているとはいえないことは明らかである。 よって,原告a10の申請疾病である貧血については,放射線起因性の要件を満たす ない程度に真実性の確信を持ち得る程度に高度の 蓋然性があることが証明されているとはいえないことは明らかである。 よって,原告a10の申請疾病である貧血については,放射線起因性の要件を満たすとはいえない。 キ貧血に,要医療性が認められるか。 (原告a10の主張) 要医療性が認められる。 (被告の主張)本件申請に係る平成18年11月9日付けの認定申請書に添付されたc2医師の意見書(同年10月25日作成)及び健康診断個人票によれば,原告a10は,少なくとも平成6年までは鉄剤を内服していたものの,現在は,無投薬のまま経過観察しており,上記の申請をした平成18年時点 では,鉄剤内服なしにヘモグロビン11.6g/dl(成年女性であれば正常範囲内)を維持できており,c3医師から提出された上記の申請に係る追加資料をみても,平成18年(2006年)4月24日の検査値はヘモグロビン12.3g/dl(男性の基準でも正常範囲内)であって,もはや貧血状態すら存在していないことが認められる。 以上によれば,原告a10の申請疾病である貧血については,要医療性の要件も満たすとはいえない。 ク甲状腺機能低下症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a10の主張)原告a10の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状及び被 爆後の症状については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりである。原告a10は,爆心地から約2.3kmに所在する平屋建ての木造家屋内において被爆した。家屋の倒壊は免れたものの窓ガラスが粉々に壊れて散乱した被爆後も,母親が,毎日近くの川に洗濯に行く際に背中に負われていた。このように原告a10は,日々屋外に出てお り,「黒い雨」に遭ったこともあった。原告a10は,被 ガラスが粉々に壊れて散乱した被爆後も,母親が,毎日近くの川に洗濯に行く際に背中に負われていた。このように原告a10は,日々屋外に出てお り,「黒い雨」に遭ったこともあった。原告a10は,被爆後から下痢や発熱,脱毛の症状を呈した。1歳余り頃に,頭髪がなかった。原告a10は,昭和34年頃は,貧血でしばしば倒れたことがあった。また,昭和37年に就職試験の健康診断において,高血圧と診断された。昭和60年には高血圧により2か月入院し,また,貧血の診断を受けた。退院後も入退院を 6回程度繰り返している。昭和63年頃には胆石となり胆嚢全摘出となっ ている。平成10年には脳卒中(視床部脳内出血)となり,同18年7月には,腎臓の萎縮が判明し,同年8月には脳梗塞を発症している。同19年に甲状腺機能低下症の診断を受け,同20年1月には,腸に水が貯留していることが判明し,腸閉塞,腎臓病も悪化し,同21年10月には大腸全摘出となっている。甲状腺機能低下症は,積極認定の対象疾病である上, 放射線被曝との関連性については,低線量域を含めて一般的に肯定することができるというべきである。また,原告a10は,被爆当時1歳であり,放射線被曝の影響が極めて高い若年被爆であること,さらに,貧血,高血圧症,脳内出血及び脳梗塞等,放射線被曝との関連性を有する多数の疾病に罹患していること等も併せ考えると,原告a10の甲状腺機能低下症に 放射線起因性が認められるというべきである。 (被告の主張)原告a10は爆心地から約2.3kmと比較的遠距離で被曝しており,初期放射線による被曝の程度は相当低いと考えられる。また,その後に入市した事実は認められず,急性期に原爆放射線に起因する身体症状が現れ たものと認められないこと等に鑑みれば,その被曝線量の程度 初期放射線による被曝の程度は相当低いと考えられる。また,その後に入市した事実は認められず,急性期に原爆放射線に起因する身体症状が現れ たものと認められないこと等に鑑みれば,その被曝線量の程度は,全体としても相当低いものというべきである。低線量の放射線被曝と甲状腺機能低下症との間には一般的な関連性が認められないというべきであるし,この点をおくとしても,被曝線量が小さくなればなるほど,甲状腺機能低下症の発症リスクは低減するというべきである。このような科学的知見に照 らせば,原告a10の上記の程度の放射線被曝では,甲状腺機能低下症は発症しないというべきであるし,少なくとも甲状腺機能低下症が発症する可能性は極めて小さいものというべきである。 よって,原告a10の甲状腺機能低下症については,その余の考慮要素について言及するまでもなく,その放射線起因性は認め難いというべきで ある。これに対し,原告a10は,女性であり,かつ,63歳という高齢 で(潜在性)甲状腺機能低下症に罹患していることからすれば,原爆放射線被曝とは無関係に発症したものと考えて,医学的にみて何ら不自然不合理はないというべきであり,その発症原因をあえて原爆放射線被曝に求める合理性は認め難いというべきである。なお,甲状腺機能低下症はかなりの頻度で認められる一般的な疾病であり,原爆放射線被曝に特異的な疾病 ではない。それゆえ,そのことのみから当然に他原因により生じた合理的可能性が問題となるところ,原告a10の甲状腺機能低下症の発症については,原告a10が甲状腺機能低下症を発症しやすい女性であることや,その臨床経過が原爆放射線とは無関係に発症した一般的な甲状腺機能低下症の臨床経過と比較して特異な点がないことからすれば,その発症は専ら 他原因によるのでは 下症を発症しやすい女性であることや,その臨床経過が原爆放射線とは無関係に発症した一般的な甲状腺機能低下症の臨床経過と比較して特異な点がないことからすれば,その発症は専ら 他原因によるのではないかと疑わせるに十分というべきである。 以上を総合考慮すると,原告a10の申請疾病である甲状腺機能低下症の放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められないというべきである。 ケ甲状腺機能低下症に,要医療性が認められるか。 (原告a10の主張)通院加療しているのであるから要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告a12についてア心筋梗塞に,放射線起因性が認められるか。 (原告a12の主張)原告a12の原爆投下時の状況,被爆の状況,急性症状及びその他の健康状態については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載の とおりである。原告a12は,原爆投下地点から約150時間後に,爆心 地から1.8kmの地点(自宅)に立ち入り,以降,自宅を中心として生活をし,そこに17日間滞在し続けた。この間,原告a12は,昭和20年8月13日から,自宅と爆心地付近の地点までの往復を繰り返し,また,自宅付近を歩き回るなどし,それにより,誘導放射化した粉塵や放射性降下物の微粒子を相当量含む粉塵等の多量の放射性物質が衣服,髪,皮膚等 に付着し,又はこれらが呼吸により体内に取り込まれ,さらに,原告a12は,放射性物質を含む水や食物を飲食し,放射性物質を体内に取り込む生活を続け,残留放射線被曝や内部被曝をした。原告a12は,発熱,下痢という典型的な急性症状を呈している。 以上から,原告a12 2は,放射性物質を含む水や食物を飲食し,放射性物質を体内に取り込む生活を続け,残留放射線被曝や内部被曝をした。原告a12は,発熱,下痢という典型的な急性症状を呈している。 以上から,原告a12が健康に影響を及ぼす相当量の被曝をしているこ とは明らかである。心筋梗塞については,低線量域においても関連性が認められ,あるいはしきい値がゼロとされている。仮に,他の因子が発症に寄与したとしても,その程度は極めて小さいと解されること,原告a12は当時7歳という若年であり,放射線の影響を受けやすかったこと,原告a12の家系には心筋梗塞に罹患した者が見当たらないこと等からして, 原告a12の急性心筋梗塞が,原爆放射線に起因することは明らかである。 (被告の主張)原告a12は,原爆投下当時,爆心地から20km離れた地点にいたため,初期放射線による影響は受けていない。また,入市に伴う誘導放射線による放射線被曝を考慮しても,その程度はごく僅かであったというべき である。それゆえ,原告a12の被曝の程度は,およそ人体に健康影響が及ばない程度のものであったというべきである。現在,0.5グレイを下回るような放射線被曝と心筋梗塞発症との間には関連性が認められていないというのが国際的な共通認識であって,このような科学的知見に照らせば,原告a12の上記の程度の放射線被曝が心筋梗塞を引き起こしたとは 認め難いというべきである。これに加え,原告a12の心筋梗塞は,長期 にわたる喫煙歴,脂質異常症(高LDLコレステロール血症等)及び加齢(55歳時に発症。)といった危険因子が相まって発症したと考えて,医学的に何ら不自然不合理ではないのであるから,その発症原因を上記各疾病の発症から45年以上も前の原爆放射線被曝に求める合理性は認め難い。 以 に発症。)といった危険因子が相まって発症したと考えて,医学的に何ら不自然不合理ではないのであるから,その発症原因を上記各疾病の発症から45年以上も前の原爆放射線被曝に求める合理性は認め難い。 以上を総合考慮すると,原告a12の申請疾病である心筋梗塞及び狭心 症の放射線起因性については,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められない。 イ心筋梗塞に,要医療性が認められるか。 (原告a12の主張) 治療のために通院していることから明らかである。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告a13についてア心筋梗塞に,放射線起因性が認められるか。 (原告a13の主張)原告a13の原爆投下時の状況,その後の入市被爆状況,急性症状及びその後の健康状態については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりである。原告a13は,昭和20年8月6日,直爆を受け,その後,避難しながら自宅に帰るまでに,市内の爆心地近くを歩き 続け,誘導放射化した建物,土壌,遺体等の残留放射線に曝露し,さらに放射性降下物を含んだ粉塵,黒い雨を浴びるなど,多量の放射性物質が衣服,髪,皮膚等に付着した状態に身を置き続け,また呼吸を通じてこれらを体内に取り込むなどした。また,トラックや列車の長時間の乗車の間も,原告a13は同様の被曝状態,曝露環境(外部被曝,内部被曝)にあった。 同月8日及び9日,原告a13は,市内に入って,伯父ら家族の捜索活動 をした際にも,同様に残留放射線への曝露,放射性物質の体表等へ付着,体内へ取り込みなどがなされた。さらに,同月10日から18日までの黒い雨が激しく降った旭山での作業も相当な残留放射線の 捜索活動 をした際にも,同様に残留放射線への曝露,放射性物質の体表等へ付着,体内へ取り込みなどがなされた。さらに,同月10日から18日までの黒い雨が激しく降った旭山での作業も相当な残留放射線の曝露環境の下でなされた。原告a13は,原爆投下時から同月下旬まで,かなりの量の初期放射線被曝,残留放射線被曝,内部被曝を継続して受けた。また,原告a 13は,発熱,下痢,歯茎からの出血,斑点等の典型的な急性症状,さらに,放射線性慢性疲労も呈していた。 以上から,原告a13が健康に影響を及ぼす相当量の被曝をしていることは明らかである。心筋梗塞については,低線量域においても関連性が認められ,あるいは,しきい値がゼロとされている。他の因子の影響は極め て小さく,原告a13の家系には心筋梗塞に罹患した者が見当たらないこと等からして,原告a13の急性心筋梗塞が,原爆放射線に起因することは明らかである。 (被告の主張)原告a13は,爆心地から約4.1kmと非常に遠距離で被爆しており, 初期放射線による被曝の程度はごく僅かであったと考えるのが相当である。 また,その後,己斐地区を通過したとの事情等を考慮しても,全体として被曝の程度は低線量であったというべきである。現在,0.5グレイを下回るような放射線被曝と心筋梗塞発症との間には関連性が認められていないというのが国際的な共通認識であって,このような科学的知見に照らせ ば,原告a13の上記の程度の放射線被曝と心筋梗塞との関連性を認めることは困難であるというべきであるし,少なくとも,放射線被曝が心筋梗塞発症に寄与した可能性は極めて小さいというべきである。 よって,その余の考慮要素について言及するまでもなく,原告a13の心筋梗塞の放射線起因性は認め難いというべきである。これ ,放射線被曝が心筋梗塞発症に寄与した可能性は極めて小さいというべきである。 よって,その余の考慮要素について言及するまでもなく,原告a13の心筋梗塞の放射線起因性は認め難いというべきである。これに対し,原告 a13は,79歳という高齢になってから心筋梗塞を発症したものであり, それのみでも心筋梗塞を発症して不自然ではないというべきであるし,これに加えて,長年脂質異常症に罹患しており,また,長年にわたる喫煙歴も有していたのであるから,これらの危険因子が相まって心筋梗塞が発症したものと考えて,医学的に何ら不自然不合理ではない。それゆえ,その発症原因を上記各疾病の発症から60年以上も前の原爆放射線被曝に求め る合理性は認め難い。 以上を総合考慮すると,原告a13の申請疾病である心筋梗塞の放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められない。 イ心筋梗塞に,要医療性が認められるか。 (原告a13の主張)要医療性が認められることは明らかである。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告a15についてア心筋梗塞及び白内障に,放射線起因性が認められるか。 (原告a15の主張)原告a15の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状及びその後の健康状態については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」 欄記載のとおりである。原告a15は,原爆投下時,爆心地より3.5kmの地点で直接被爆した。昭和20年8月8日早朝,父の消息を確かめるため,父が原爆投下当時いたとされる天神町(現・中島町。爆心地から至近距離。)に向かい,爆心地やその付近を夕方まで父を捜しながら歩き回っ 点で直接被爆した。昭和20年8月8日早朝,父の消息を確かめるため,父が原爆投下当時いたとされる天神町(現・中島町。爆心地から至近距離。)に向かい,爆心地やその付近を夕方まで父を捜しながら歩き回った。翌日の同月9日から12日まで,同様に天神町に入って父親捜しを続 けており,その間,誘導放射化した粉塵や放射性降下物の微粒子を相当量 含む粉塵等に接触することにより,多量の放射性物質が衣服,髪,皮膚等に付着し,又は呼吸を通じてこれらを体内に取り込むなどしており,残留放射線被曝や内部被曝をした。また,原告a15は,歯茎からの出血,脱毛等,典型的な急性症状を呈している。 以上から,原告a15が健康に影響を及ぼす相当量の被曝をしているこ とは明らかである。心筋梗塞については,低線量域においても関連性が認められ,あるいはしきい値がゼロとされている。原告a15の他の因子を過大視することはできず,原告a15が当時5歳という若年であり放射線の影響を受けやすかったこと等からして,原告a15の急性心筋梗塞及び白内障が,原爆放射線に起因することは明らかである。 (被告の主張)原告a15は,爆心地から約3.5kmと遠距離で被曝しており,初期放射線による被曝の程度はごく僅かであったと考えるのが相当である。また,その後,爆心地付近に入市したのは原爆投下の4日後のことというべきであり,どんなに早くとも原爆投下の2日後のことであって,残留放射 線による被曝線量を考慮しても,全体として被曝の程度は低線量であったというべきである。心筋梗塞についても,白内障についても,現在0.5グレイを下回るような放射線被曝との間には関連性が認められていないというのが国際的な共通認識であって,このような科学的な知見に照らせば,原告a15の上記の程度の放射線 ,白内障についても,現在0.5グレイを下回るような放射線被曝との間には関連性が認められていないというのが国際的な共通認識であって,このような科学的な知見に照らせば,原告a15の上記の程度の放射線被曝と心筋梗塞及び白内障との関連性を 認めることは困難であるというべきであるし,少なくとも,放射線被曝が心筋梗塞及び白内障に寄与した可能性は極めて小さいというべきである。 よって,その余の考慮要素について言及するまでもなく,原告a15の心筋梗塞及び白内障の放射線起因性は認め難いというべきである。 これに対し,原告a15は,心筋梗塞発症に至るまで喫煙歴が認められ, 長年にわたり重度の高血圧に罹患しており,これに加え,高脂血症,肥満 といった危険因子も有していたのであり,かつ,その発症年齢も,58歳という一般的にも心筋梗塞を十分発症し得る年齢であったのであるから,これらの危険因子が相まって心筋梗塞が発症したと考えて,医学的に何ら不自然不合理ではない。また,原告a15が白内障を発症したのは,一般的に66%以上の割合で白内障が認められる60歳代であり,かつ,その 所見は老人性白内障に多く認められる核混濁であったことからすれば,当該白内障は,加齢によって発症した老人性白内障であると考えるのが相当である。それゆえ,上記心筋梗塞及び白内障は,いずれもその発症原因を上記各疾病の発症から50年以上も前の原爆放射線被曝に求める合理性は認め難い。 以上を総合考慮すると,原告a15の申請疾病である心筋梗塞及び白内障の各放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められない。 イ心筋梗塞に,要医療性が認められるか。 (原告a15の主張 が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められない。 イ心筋梗塞に,要医療性が認められるか。 (原告a15の主張)主治医であるc13総合病院のc4医師は,必要な医療の内容として,内服加療が必要であり,その期間については,半永久的に通院が必要であると意見しており,現に医療を要する状態にあることは明らかである。 (被告の主張) 否認ないし争う。 ウ白内障に,要医療性が認められるか。 (原告a15の主張)要医療性が認められる。 (被告の主張) 被爆者援護法のいう「現に医療を要する」とは,原爆症認定申請時にお いて,積極的な治療(医学的に有効適切なもの)を要する状態にあることをいう。 白内障の治療方法は,手術のみであって,手術を行えば白内障(混濁)自体は治癒する反面,これを行わなければ,白内障(混濁)が治癒することはないとされている。それゆえ,白内障について要医療性が認められる ためには,当該白内障が手術を要する状態にあることが必要であるというべきである。白内障の手術適応については,視力低下の程度や混濁の程度のみで決まるものではなく,患者自体が,白内障のために日常生活が不自由になった時点とされている。 原告a15については,平成16年6月17日に,両眼にごく軽度の核 混濁(Emery-Little分類におけるグレード1)が認められており,その後,原告a15は,平成20年9月2日,当該白内障を申請疾病として本件申請をしているところ,その直前である同年8月26日に眼科を受診した際の原告a15の視力は,裸眼で右眼0.6,左眼0.5は維持されており,両眼の核混濁の程度も軽度であって,医師からは 疾病として本件申請をしているところ,その直前である同年8月26日に眼科を受診した際の原告a15の視力は,裸眼で右眼0.6,左眼0.5は維持されており,両眼の核混濁の程度も軽度であって,医師からは,治療 の必要はないものと診断されている。原告a15は,本件申請後の平成22年4月5日及び同年7月26日に眼科を受診した際,自動車を運転して来院していたものとされており,日常生活に支障が生じていたとも解されない。その後,平成24年5月15日に眼科を受診した際には,右眼裸眼視力は0.7(矯正視力1.0),左眼裸眼視力は0.4(矯正視力0.7) であり,右眼の裸眼視力が回復している上,両眼とも矯正可能とされており,核混濁の程度は軽度で平成20年8月26日時点と変わっておらず,医師も治療の必要はないものと診断している。この間,原告a15には,ヒアレインやコンドロンといった点眼薬が処方されているものの,ヒアレインはヒアルロン酸を含有したドライアイ等の角結膜上皮障害に対する治 療薬であり,コンドロンはコンドロイチンを含有した角膜表層を保護する ための点眼薬であり,いずれも本来的に白内障の治療薬ではなく,白内障の治療薬として処方されたものとは解されない。その他,白内障手術について検討された様子も見当たらない。原告a15の白内障に対しては,本件申請時以降の臨床経過を踏まえても,本件申請時点において,視力は一定程度維持されており,水晶体混濁の程度は軽微であって,日常生活に支 障はなく,治療の必要も認められていないのであって,およそ手術適応も認められないものと解される。 以上からすると,要医療性の要件を満たすものではない。 原告a20についてア本件申請時において,甲状腺機能低下症に罹患していたものと認められ るか。 認められないものと解される。 以上からすると,要医療性の要件を満たすものではない。 原告a20についてア本件申請時において,甲状腺機能低下症に罹患していたものと認められ るか。 (原告a20の主張)原告a20が甲状腺機能低下症を発症したのは昭和46年であり,以後,現在まで40年余りにわたり,チラージンの投薬治療を受けている。通院が長期間にわたる場合,病院を変わらなければならない事情もあるし,カ ルテ等の保管期間もあるため,その発症を根拠付ける検査結果等がなくなってしまうことは通常あり得ることであり,このことに関し,原告a20には何らの落ち度もない。他方で,甲状腺機能低下症でもないのに,チラージンの服用を続けた場合,当然,チラージンは甲状腺機能低下症に対し処方されるものであることから,甲状腺機能の検査結果において何らかの 異常が出るはずであり,医師が処方を継続することはないといえる。このことからすれば,原告a20は,c5クリニックにおいて1年以上もチラージンを継続して処方されているのであるから,「チラージンの投与で甲状腺ホルモンは正常値」とc5医師がいうように,甲状腺機能低下症であることに疑いはない。また,d3クリニックにおいても,平成3年4月26 日の初診時の甲状腺機能検査の数値は正常値であるも,チラージンを処方 されており,少なくとも,平成3年4月26日時点において甲状腺機能低下症を発症していたといえる。原告a20において,c5クリニックには,本件申請をするより前の平成21年から通院し,昭和46年,d4内科で甲状腺機能低下症と診断され,薬を投与されている旨c5医師に申告しているものと考えられることからすれば,その申告は信用できるというべき である。 以上のことからすれば,原告a 6年,d4内科で甲状腺機能低下症と診断され,薬を投与されている旨c5医師に申告しているものと考えられることからすれば,その申告は信用できるというべき である。 以上のことからすれば,原告a20は,遅くとも昭和46年頃には,甲状腺機能低下症を発症していたといえる。 (被告の主張)原告a20は,遅くとも,平成3年4月26日以降,少なくとも,本件 申請時である平成22年3月2日の後である平成25年9月24日までの間,継続して1日50μgのチラーヂンSを服用しているところ,上記期間内のTSHのほとんどが異常値(低値)を示しており,その大部分は測定可能な範囲(感度)以下を示している。このことは,原告a20に対し,甲状腺ホルモン(T4)製剤であるチラーヂンSが必要以上に投与されて いることを意味するものである。チラーヂンSの投与量として,1日50μgは,比較的少量である。また,人体は,生体の恒常性を維持する機能が備わっているため,仮に,健常者に,多少の甲状腺ホルモン製剤を投与したとしても,当然にTSHが基準値以下に低下するものではない。そうであるにもかかわらず,原告a20の場合,少量のチラーヂンSの投与に より,TSHの大部分が感度以下にまで低下しているのである。このことからすれば,原告a20が,本件申請時点において,甲状腺機能が正常であった可能性が十分に認められるというべきである。このような場合,真に甲状腺機能低下状態にあるか否かを鑑別するためには,チラーヂンSの投与を中止し,その上で,TSH及びFT4を測定し,甲状腺機能が正常 か否かを確認する必要があるが,原告a20については,このような検査 がされていない。 よって,少なくとも,原告a20が,本件申請時点において,甲状腺機能低下症に罹患していた 機能が正常 か否かを確認する必要があるが,原告a20については,このような検査 がされていない。 よって,少なくとも,原告a20が,本件申請時点において,甲状腺機能低下症に罹患していたものと積極的に認定することはできず,この点につき,合理的疑いが残るといわざるを得ない。 イ甲状腺機能低下症に,放射線起因性が認められるか。 (原告a20の主張)原告a20の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状,被爆後の症状及び喫煙歴については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりである。原告a20は,爆心地より2.5kmの地点で被爆し,その後も広島市内を長時間歩き,その間,水を飲み,数日後 から何度か天満町の電車の停留所付近まで友達を捜しに行き,昭和20年8月6日から同月末頃までの間,避難者100人くらいと同じ建物内で寝泊まりをしていることから,相当程度の原爆放射線を浴び,放射性物質を体内に取り込んだといえ,原爆放射線に相当程度被曝したものであり,被爆からしばらくして体調不良となり,脱毛や下血・下痢,皮膚の乖離等の 急性症状が出,遅くとも昭和46年には甲状腺機能低下症を発症したものであること,被爆時の年齢が14歳と若年であり,また,女性であることからすれば,原告a20の甲状腺機能低下症は放射線に起因するものであると解される。 (被告の主張) 原告a20は爆心地から約2.5kmと比較的遠距離で被爆しており,初期放射線による被曝の程度は相当低いと考えられる。また,その後爆心地付近に入市した等の事情は認められず,急性期に原爆放射線に起因する身体症状が現れたものとも認められないから,その被曝線量の程度は,全体として相当低いというべきである。低線量の放射線被曝と甲状腺機能低 近に入市した等の事情は認められず,急性期に原爆放射線に起因する身体症状が現れたものとも認められないから,その被曝線量の程度は,全体として相当低いというべきである。低線量の放射線被曝と甲状腺機能低 下症との間には一般的な関連性が認められないというべきである。また, この点をおくとしても,被曝線量が小さくなればなるほど,甲状腺機能低下症の発症リスクは低減するというべきである。このような科学的知見に照らせば,原告a20の上記の程度の放射線被曝では,甲状腺機能低下症は発症しないというべきであるし,少なくとも発症する可能性は極めて小さいものというべきである。 よって,万が一,原告a20が甲状腺機能低下症に罹患しているものと仮定しても,その余の考慮要素について言及するまでもなく,その放射線起因性は認め難いというべきである。これに対し,原告a20の甲状腺機能低下症は,当該疾病が発症したと主張及び供述している時期や,原告a20が女性であることからすれば,原爆放射線被曝とは無関係に発症した ものと考えて,医学的にみて何ら不自然不合理はないというべきであり,その発症原因をあえて原爆放射線被曝に求める合理性も認め難いというべきである。 以上を総合考慮すると,原告a20の申請疾病である甲状腺機能低下症については,万が一,同人が同疾病に罹患していることを前提としたとし ても,その放射線起因性については,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められないというべきである。 ウ甲状腺機能低下症に,要医療性が認められるか。 (原告a20の主張) 要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告a23について ある。 ウ甲状腺機能低下症に,要医療性が認められるか。 (原告a20の主張) 要医療性が認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 原告a23についてア心筋梗塞及び白内障に,放射線起因性が認められるか。 (原告a23の主張) 原告a23の被爆地点,被爆時の状況,被爆後の行動,急性症状及び被爆後の症状については,別紙「被爆実態一覧」の同人の「被爆の実態」欄記載のとおりである。原告a23は,爆心地より約3kmの地点にあった自宅で被爆し,原爆により自宅が消失したことから,同じ地番にあった伯父の家(爆心地より同じく約3km)で,被爆し避難して来た親族ら10 名くらいと共同して生活しており,その親族らは,その後,がん,白血病,心筋梗塞及び白内障を発症している。親族らの各被爆地点の爆心地からの距離は様々であるが,とりわけ,原告a23の従兄弟であるf1(被爆時6歳)は,原告a23と同じく,爆心地より3km離れた自宅で被爆し,23歳の若さで白血病を発症し,死亡しているのであり,原告a23も, 同じくらいの距離で被爆し,被爆後も当分の間共同生活をしていたことからすれば,白血病を発症しても不思議ではない程度の放射線による外部被曝及び内部被曝をしたというべきである。原爆放射線は,血圧の上昇や血栓・凝固に関する脂質(コレステロール高値)に影響することが分かっている。原告a23の脳出血などの疾病は原爆放射線に影響して発症した動 脈硬化によるのであり,それは正に被曝により発症した動脈硬化が心筋梗塞をはじめ脳出血などの疾病を引き起こしたということが十分に認められるのである。また,長期間経過後に,白内障(後嚢下混濁,前嚢下混濁,皮質混濁)を発症し,これらの混濁と放射線との関係に疫学的な 筋梗塞をはじめ脳出血などの疾病を引き起こしたということが十分に認められるのである。また,長期間経過後に,白内障(後嚢下混濁,前嚢下混濁,皮質混濁)を発症し,これらの混濁と放射線との関係に疫学的な因果関係は認められるとする知見があること等からすれば,原告a23の白内障に 放射線起因性は認められるというべきである。 (被告の主張)原告a23は,爆心地から約3km地点と比較的遠距離で被爆しており,初期放射線による被曝線量はごく僅かであったと考えるのが相当である。 また,原告a23の主張するような被爆後の行動等の事実を前提としたと しても,残留放射線による被曝線量もごく僅かであったというべきである。 そのため,原告a23の被曝線量は,全体としてもごく僅かであったというべきである。心筋梗塞についても,白内障についても,現在0.5グレイを下回るような放射線被曝との間には関連性が認められていないというのが国際的な共通認識であって,このような科学的知見に照らせば,原告a23の上記の程度の放射線被曝と心筋梗塞及び白内障との関連性を認める ことは困難であるというべきであるし,少なくとも,放射線被曝が心筋梗塞及び白内障に寄与した可能性は極めて小さいというべきである。よって,その余の考慮要素について言及するまでもなく,原告a23の心筋梗塞及び白内障の放射線起因性は認め難いというべきである。 これに対し,原告a23は,心筋梗塞発症に至るまで,長年にわたり, 脂質異常症に罹患し,また,糖尿病ないし高血糖の状態が断続的に続いていたといえ,これに加え,肥満,高血圧,喫煙歴といった危険因子も有していたのであり,かつ,その発症年齢も,67歳という一般的にも心筋梗塞を十分発症し得る年齢であったのであるから,これらの危険因子が相まって え,これに加え,肥満,高血圧,喫煙歴といった危険因子も有していたのであり,かつ,その発症年齢も,67歳という一般的にも心筋梗塞を十分発症し得る年齢であったのであるから,これらの危険因子が相まって心筋梗塞が発症したと考えて,医学的に何ら不自然不合理ではない。 さらに,原告a23が白内障を発症したのは,一般的に66%以上の割合で白内障が認められる60歳代であり,かつ,その所見は両眼前嚢下混濁及び左眼後嚢下の軽度混濁であり,いずれも老人性白内障においてしばしばみられる所見であること,加えて,後嚢下混濁は糖尿病によって発症した白内障に特徴的な所見であるところ,原告a23は,後嚢下混濁が認め られる相当以前から,糖尿病ないし高血糖の状態であったことからすると,原告a23の白内障は,加齢又は糖尿病によって発症したものと考えるのが相当である。それゆえ,上記心筋梗塞及び白内障は,いずれもその発症原因を上記各疾病の発症から60年以上も前の原爆放射線被曝に求める合理性は認め難い。 以上を総合考慮すると,原告a23の申請疾病である心筋梗塞及び白内 障の各放射線起因性について,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るに足りる高度の蓋然性の証明があるとはいえず,放射線起因性は認められない。 イ心筋梗塞に,要医療性が認められるか。 (原告a23の主張) 原告a23は,医師の指示に従い,通院し,診察を受け,検査をし,投薬を受けているのであって,要医療性は認められる。 (被告の主張)否認ないし争う。 ウ白内障に,要医療性が認められるか。 (原告a23の主張)原告a23(両眼白内障を申請疾病としていたが,左眼については,平成24年に手術を施行されている。)は,医師の診断によ ウ白内障に,要医療性が認められるか。 (原告a23の主張)原告a23(両眼白内障を申請疾病としていたが,左眼については,平成24年に手術を施行されている。)は,医師の診断により,カリーユニ点眼薬の処方を受けながら経過観察を指示されている。 したがって,原告a23の白内障については,いずれも要医療性が認め られる。 (被告の主張)被爆者援護法のいう「現に医療を要する」とは,原爆症認定申請時において,積極的な治療(医学的に有効適切なもの。)を要する状態にあることをいい,白内障の有効適切な治療法は,手術のみであるから,白内障につ いて要医療性が認められるためには,原爆症認定申請時において,当該白内障につき,手術を要する状態にあることが必要である。 原告a23の右白内障については,正確にいつ頃から発症したかは定かではないが,平成22年5月6日時点で,両眼に前嚢下混濁があるものとされている。原告a23は平成24年6月21日に白内障を申請疾病の一 つとする本件申請を行っているところ,同年5月8日,左白内障について は手術が行われたのに対し,右白内障については,広島市民病院眼科のc6医師から,「みぎの白内障は軽いので手術をせずに様子を見ましょう」と伝えられており,実際,同月9日時点における原告a23の右眼の矯正視力は「0.9」とかなり良好であった。このような右白内障の臨床経過からみれば,本件申請時点において,右白内障については,いまだ手術適応 はなかったというべきである。実際も,その後,原告a23の右白内障について,白内障手術が行われたとの主張はない。よって,原告a23の右白内障については,被爆者援護法10条1項の要医療性は認められないというべきである。 原告a24(白内障に要医療性が認 白内障について,白内障手術が行われたとの主張はない。よって,原告a23の右白内障については,被爆者援護法10条1項の要医療性は認められないというべきである。 原告a24(白内障に要医療性が認められるか)について (原告a24の主張)白内障治療に関し,眼内レンズの挿入の手術が原爆被爆者においてもなされているが,その際,医師と患者は,後嚢下混濁のためとか,皮質混濁のためとか,混濁の箇所を選んで手術を行っているわけではない。 つまり,原爆被爆者が白内障手術を受けるのは,それまでの点眼治療にも かかわらず,視力の低下が一層進んだため,混濁の部位を区別せず,また,それが老人性白内障なのか,放射線白内障であるのかを問わず,やむを得ず,自分の水晶体を摘出するという方法(眼内レンズ挿入)を選んでいるのである。 患者が被爆者かどうかにかかわらず,白内障患者に対し,医師は手術を勧 める場合もあれば,必ずしも手術を勧めず,経過観察とする場合もある。手術が一つの選択肢として考えられる場合(基本的には,白内障による患者の日常生活への支障の内容,その程度による。)にあっても,個人の諸事情,都合がある。また,手術に関して躊躇し決断するに至らないという患者の心構えの問題から,手術に至らない場合もある。 他方で,白内障の手術とはいえ,手術である以上,手術自体に伴うリスク は一定程度あり,一定の疾患を伴っている場合は,そのリスクはさらに増加する。 そして,手術の効果の面でも,白内障の手術により眼内レンズを挿入した場合であっても,必ずしも視力の回復が思うようにならない場合も少なからずある。医師としては,手術の安全性を伝えることはできても,効果のほど は100%ではないことを伝えざるを得ない。 白内障の 場合であっても,必ずしも視力の回復が思うようにならない場合も少なからずある。医師としては,手術の安全性を伝えることはできても,効果のほど は100%ではないことを伝えざるを得ない。 白内障の手術であっても,以上のような種々の状況を踏まえ,手術が選択される場合もあれば,選択されない場合もあるのが現状である。つまり,「患者さんが望むときが,最適な手術の時期」なのである。 このような結果として,手術が選択されない患者や,あるいは,手術に至 るまでの期間にある患者に対し,医師は,主として点眼液(カリーユニ点眼薬等)を投与することになる。このような状態は,白内障患者にとっては,定期的な「通院治療」であり,ある程度の間隔で定期的な診察をし,検査が行われる「経過観察」である。医師は,白内障患者に対し,常に手術をして混濁を除去することを第一に勧めるのではなく,その原因が何かを基本的に は問題とすることなく,白内障の当該患者の日常生活に与える影響を見ながら,その進行の程度や患者の意思を尊重しながら,手術を勧めるのか,単なる経過観察にとどめるのか,それとも点眼薬を処方しながらの経過観察とするのか,という治療方法を適宜選択しているのである。 これらは,いずれも,白内障の治療であり,患者の白内障の状態を見なが ら,医師が通院する必要はないと判断する場合以外は,老人性白内障であれ,放射線白内障であれ,医療を要する状態にあるといえる。 (被告の主張)被爆者援護法10条1項における「現に医療を要する状態」というのは,被爆者が,原爆症認定申請時において,申請疾病に対する「医療」を必要と する状態にあることを意味するものであるが,ここでいう「医療」の内容は, ①申請疾病に対する純然たる治療行為を中心に,当該治療目的でこれに 定申請時において,申請疾病に対する「医療」を必要と する状態にあることを意味するものであるが,ここでいう「医療」の内容は, ①申請疾病に対する純然たる治療行為を中心に,当該治療目的でこれに付随し,又は直接ないし間接的な治療効果を期待して行われる一連の医療サービスを意味するものであって,②申請疾病の治療として医学的に必要と認められるものであり,かつ,方法として有効適切なものでなければならない。 この点,白内障に対して有効適切な治療方法は手術のみであり,そのため, 当該白内障について,原爆症認定申請時点において,具体的に手術を予定していないような場合には,「医療を要する状態」にあるとはいえない。そして,原告a24の右白内障については,いまだ手術を要する状態にはない。 したがって,原告a24の申請疾病である右白内障については,被爆者援護法10条にいう「医療を要する状態」にあったとは認められず,要医療性 は認められない。 (原告a24の反論)原告a24は,平成27年11月より,視力低下がみられるようになったことから,白内障が多少進行傾向にあると認められ,その進行を抑止するためにピレノキシン点眼薬を処方されている。 したがって,この意味でも,要医療性が認められる。 (被告の反論)原告a24が本件申請をした平成26年9月18日より1年以上も後の事情をもって,要医療性が認められるとする原告a24の主張は,医療特別手当が申請時点から支給されることとされていることから,明らかに不当であ る。 行政手続法8条違反が認められるか。 (原告らの主張)行政手続法8条は,拒否処分につき理由の提示を求めているが,原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1に対する却下処分に付されている「理由」 続法8条違反が認められるか。 (原告らの主張)行政手続法8条は,拒否処分につき理由の提示を求めているが,原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1に対する却下処分に付されている「理由」 らしきものは,到底具体的な説明となるような理由とはいえないものである。 (被告の主張)最高裁判例によれば,「一般に,法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものである」「どの程度の記載をなすべきかは,処分の性質と理由附記を 命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである」とされており(最高裁昭和38年5月31日第二小法廷判決),行政手続法8条1項も同趣旨と解されている。したがって,同法8条1項により求められる提示すべき理由の内容及び程度は,処分の根拠事実及び法規を,処分の相手方においてその記載自体から了知し得るものでなければならず,かつ,それで 足りると解される。 そして,被爆者援護法11条1項の規定は,申請者の申請に基づき,その申請に係る疾病が,同法10条1項所定の放射線起因性及び要医療性を有するか否かを,医学・放射線防護学等の科学的知見を踏まえて判断するものであるから,厚生労働大臣が認定申請の却下処分をするに当たり提示すべき理 由の程度は,申請手続に関する手続的要件を欠くか,上記の実体的要件(①放射線起因性,②要医療性)を欠くことについて,その根拠事実及び法規が記載されていることを要し,かつ,それで足りるというべきである。 原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1に対する却下処分についてみると,被爆者援護法の求める疾病・障害認定審査会(以下「審査 記載されていることを要し,かつ,それで足りるというべきである。 原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1に対する却下処分についてみると,被爆者援護法の求める疾病・障害認定審査会(以下「審査会」とい う。)への諮問がされていること,審査会では,申請書類に記載された被爆時の状況,被爆後申請時に至るまでの健康状況及び申請された疾病の治療状況等に関する情報を基に,これまでに得られている医学的知見や経験則等に照らして総合的に検討されていること,審査会において,そうした事実関係や専門的知見に照らし判断した結果,放射線起因性又は要医療性が認められな いと判断されたことといった内容が記載されている。こうした記載からすれ ば,原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1に対する却下処分が,申請疾病について,被爆者援護法10条1項所定の実体的要件が認められないという理由でされたことは明白であり,処分の根拠事実及び法規の記載として欠けるところはないから,提示されるべき理由として何ら違法な点はないというべきである。 本件国賠請求につき厚生労働大臣の義務違反の有無について(原告らの主張)処分行政庁において,合理的な審査基準が定められ,これに基づいて証拠資料が精査され,拒否処分がなされる場合にはその理由の通知を受けることが処分を受ける国民の権利である。このいずれかを欠き,行政庁が誤った処 分を行った場合,国賠法1条1項の規定の適用上,違法の評価を受けるものというべきである。 厚生労働大臣は,被爆者援護法の立法趣旨に従い,同法11条1項を適正に運用しなければならなかった。ところが,厚生労働大臣は,従来からの非科学的で不合理な基準に従い,同条項の運用を行い,原告ら(ただし,原告 bらを除く。)及び亡a1 従い,同法11条1項を適正に運用しなければならなかった。ところが,厚生労働大臣は,従来からの非科学的で不合理な基準に従い,同条項の運用を行い,原告ら(ただし,原告 bらを除く。)及び亡a1の審査において,非科学的で不合理な基準を機械的にあてはめ,証拠資料を精査することなく,具体的な理由を示さずに本件各却下処分をした。厚生労働大臣の判断には,重大な過失,あるいは少なくとも過失が存在する。 また,厚生労働大臣は,長崎原爆松谷訴訟の最高裁判決(平成12年7月 18日判決)及び京都原爆訴訟の大阪高裁判決(平成14年12月5日判決)の被爆者勝訴確定によって,原爆症認定の基準を直ちに見直し,あるべき認定基準に改めるべきであった。 ところが,厚生労働大臣は,平成13年5月,自ら敗訴した上記2名の被爆者さえ,原爆症と認定し得ないような原因確率論という旧審査の方法を導 入した。その後,平成15年4月に提起されたいわゆる原爆症認定集団訴訟 の判決の影響を受けたためか定かではないが,平成20年3月17日新審査の方針を策定した。それらにより,原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1の本件申請をいずれも却下しているが,これら本件各却下処分は,被爆者援護法に反する違法行為と評価し得るものである。 以上によれば,被告の公権力の行使に当たる公務員である厚生労働大臣が, 原爆症認定という職務を行うについて,故意又は重大な過失によって,原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1に与えた損害は,国賠法1条1項により,被告が賠償しなければならない。 (被告の主張)国賠法1条1項は,「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別 の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに, ればならない。 (被告の主張)国賠法1条1項は,「国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別 の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するもの」(最高裁平成17年9月14日大法廷判決)であり,原告らの国家賠償請求が認容されるためには,厚生労働大臣に上記の職務上の義務違反が認められることが前提となる。また,その場合であっても,法律上保護された利益の 侵害がなければ,国賠法1条1項に基づく損害賠償を請求することはできない(最高裁昭和43年7月9日第三小法廷判決,最高裁昭和63年6月1日大法廷判決も,「法律上の利益ないし権利」,「法的利益」の侵害がなければ,国賠法に基づく損害賠償請求をすることはできないことを当然の前提としているものである。)。本件各却下処分は,厚生労働大臣が,医療分科会の答申, 又は医療分科会等の委員の意見を聴いた上で,放射線起因性が認められないとしてされたものであり,十分な科学的根拠に基づいてされたものであって,厚生労働大臣が職務上の法的義務に違反して本件各却下処分をしたものではないことは明らかである。 なお念のため付言するに,厚生労働大臣は,審査会長からの答申に基づき, 本件訴訟が提起された後,認定済み原告らの申請疾病の一部については,本 件各却下処分を撤回し,原爆症認定をしている。しかしながら,厚生労働大臣は,上記撤回した却下処分についても,当該処分当時において科学的な合理性を有する審査の方針を踏まえ,科学的,医学的,法的専門的知見を備えた専門家から構成される医療分科会等の委員の意見を聴いた上で,上記審査の方針に照らし,当時の審査資料をもってしては,原爆症認定の要件該当性 を 方針を踏まえ,科学的,医学的,法的専門的知見を備えた専門家から構成される医療分科会等の委員の意見を聴いた上で,上記審査の方針に照らし,当時の審査資料をもってしては,原爆症認定の要件該当性 を肯定するまでには至らないものと判断したものである(この点は,却下処分に対する異議申立てを棄却した手続についても,同様である。)。しかるに,本件訴訟において,当該原告らから新たに提出された医療記録や,本人尋問の結果等,本件訴訟に現れた諸事情を総合的に考慮し,その当時における最新の審査の方針に照らし,改めて原爆症認定の要件該当性が認められる余地 があるものと判断し,被爆者援護の観点から上記処分の撤回及び原爆症認定をするに至ったものである。このように,厚生労働大臣は,上記却下処分時には必ずしも明らかではなかった事情が判明したことから,改めて医療分科会等の委員の意見を聴いた上で,上記撤回及び認定をするに至ったものである。このような経過に鑑みれば,結果として当初の却下処分が撤回され,原 爆症認定に至ったからといって,これが当初の却下処分当時における厚生労働大臣の職務上の法的義務違反を基礎づけるものではないことは明らかである。 本件国賠請求につき原告らの損害額について(原告らの主張) 厚生労働大臣の違法な本件各却下処分により,原告ら(ただし,原告bらを除く。)及び亡a1が被った精神的苦痛を慰謝するには,被爆者の置かれた悲惨な状況を考えれば,200万円をもってするのが相当である。 上記原告らは,厚生労働大臣の違法行為により,本件訴訟を余儀なくされた。厚生労働大臣による本件各却下処分の取消訴訟及び被告に対する損害賠 償請求訴訟の提起を強いられた上記原告らが,代理人に支払うことを約した 着手金及び報酬のうち,100 訴訟を余儀なくされた。厚生労働大臣による本件各却下処分の取消訴訟及び被告に対する損害賠 償請求訴訟の提起を強いられた上記原告らが,代理人に支払うことを約した 着手金及び報酬のうち,100万円を下らない部分は被告が負担すべきである。なお,原告bらについては,亡a1の有する300万円の損害賠償請求権の各2分の1を相続した。 (被告の主張)争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(訴えの利益)について認定済み原告らについては,その請求に係る取り消すべき行政処分である本件各却下処分が撤回され,新たに原爆症の認定処分がされたことによって,訴訟上取り消すべき行政処分がなくなった(ただし,原告a3については,申請 疾病が心筋梗塞の部分に限る。)。そして,被爆者援護法24条1項の規定に基づく医療特別手当及び同法25条1項の規定に基づく特別手当は,認定申請の日の属する月の翌月から支給され(同法24条4項,25条4項),この点について認定済み原告らに不利益は残らず,その他当初の却下処分を本件訴訟において取り消すことによって得る法的利益を肯定する根拠は見当たらない。 したがって,認定済み原告らに係る本件請求のうち,原爆症認定申請に対する却下処分の取消しを求める部分に係る訴えは,取消しを求める法律上の利益がないものとして不適法であり,却下を免れない。 2 争点(亡a1)について 争点 ア(甲状腺機能低下症の罹患の有無)について ア末尾に掲げた証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 甲状腺機能低下症は,甲状腺ホルモンの欠乏又は甲状腺ホルモンの作用不足により,「元気がなくなる」「疲れやすい」「脱力感」「記憶力低下」などの症状を示す病態を指す(乙B88・90頁)。甲 甲状腺機能低下症は,甲状腺ホルモンの欠乏又は甲状腺ホルモンの作用不足により,「元気がなくなる」「疲れやすい」「脱力感」「記憶力低下」などの症状を示す病態を指す(乙B88・90頁)。甲状腺機能低下症には,甲状腺自体に原因がある原発性とそうではない二次性等があり,原 発性甲状腺機能低下症の場合,血中のFT4,FT3値は正常値より低 下し,TSH値は上昇する(乙B179,証人e2)。 亡a1について,本件申請時の関係書類として添付されたc1医師の意見書には,「平成3年に放射線影響研究所にて甲状腺異常を指摘され平成4年に当クリニックに来院されました。」「甲状腺機能は他院でいつも採血されており,平成16年12月13日に初めて当クリニックで行っ たところ,チラーヂンS50μg/日服用中にもかかわらず,TSH2. 91(0.5-2.5)とやや低下気味でした。」と記載がある(乙C1の1・20頁)。 c1医師が引用する検査値を記した健康診断個人票の平成16年12月13日の甲状腺機能検査データでは,FT3,FT4の値は正常値で あった(乙C1の1・21頁)。 甲状腺機能検査におけるTSHの基準値については,正常値を「0. 34~3.5μU/ml」(「病気がみえるVol.3代謝・内分泌疾患」による),「0.38~4.31μU/ml」東京大学医学部附属病院検査部における「血液検査の参考基準値表」による),「0.500~5. 00μIU/ml」「0.38~3.64μIU/ml」(「今日の臨床検査2005-2006」による)とするものがあるが,c1医師が引用する基準値は確認できない(乙B91・175頁,乙B101・420頁,乙B102)。 亡a1の平成4年6月15日の甲状腺機能検査の検査 2006」による)とするものがあるが,c1医師が引用する基準値は確認できない(乙B91・175頁,乙B101・420頁,乙B102)。 亡a1の平成4年6月15日の甲状腺機能検査の検査結果は,正常範 囲内であった(乙C1の1・27頁)。 亡a1の平成9年12月10日の甲状腺機能検査の検査結果(d1病院)は,正常範囲内であった(乙C1の4・29,31頁)。 亡a1の昭和62年8月12日付け,平成元年7月26日付けの甲状腺機能検査の検査結果は,正常範囲内であった(乙C1の4・30頁)。 亡a1の平成23年7月11日の甲状腺機能検査の検査結果は,正常 値であった。なお,同受診時のカルテには,「チラ1M飲んでいない」との記載があり,1か月間チラージンを服用していない可能性がある。(乙B179,証人e2) 甲状腺がんの治療としてTSHを0.5mU/Lまで抑制するためは,かなり多量の甲状腺ホルモン(T4)製剤を服用しない限りはTSHが 低下せず,50μg/日程度の甲状腺ホルモン(T4)製剤の投与量では,TSHが抑制される人はほとんどいないとの報告結果及び意見がある(乙B179,証人e2)。 イアの各事実によれば,亡a1は,甲状腺機能低下症と認められる要件のうち,FT4,FT3の低値を満たしておらず,満たしたとされるTSH の値についても基準値の根拠が明らかではないものといわざるを得ない。 また,その他のTSHの値は正常値であったところ,チラージンの服用をしない場合においても正常値であった可能性が残るから,甲状腺機能低下症であったとは認め難い。 ウこれに対し,原告bらは,亡a1が甲状腺機能低下症であったと主張し, これに沿う証拠としてc7医師の意見 いても正常値であった可能性が残るから,甲状腺機能低下症であったとは認め難い。 ウこれに対し,原告bらは,亡a1が甲状腺機能低下症であったと主張し, これに沿う証拠としてc7医師の意見書(甲B9)及びe1医師の意見書(甲B48,甲C1の3)がある。 その要旨は,臨床医は正常者に甲状腺ホルモン製剤を投与することはまずないというものであるが,甲状腺機能低下症の罹患の有無が主要事実であり,その要件である「血中のFT4,FT3値が正常値より低下し,T SH値が上昇すること」を診断医が示せない以上,甲状腺機能低下症であったとは認め難い。 エ以上によれば,争点イ(甲状腺機能低下症の放射線起因性及び要医療性の有無)の判断を要しない。 争点 ウ(甲状腺腫瘤の放射線起因性及び要医療性の有無)について ア放射線起因性の立証の程度について 被爆者援護法が原爆症認定のための要件として定める放射線起因性については,放射線と負傷又は疾病ないしは治癒能力低下との間に通常の因果関係があることを要件として定めたものと解すべきである。このことは,被爆者援護法の根底に国家補償法的配慮があるとしても異なるところではない。さらに,行政処分の要件として因果関係の存在が必要と される場合に,その拒否処分の取消訴訟において被処分者がすべき因果関係の立証の程度は,特別の定めがない限り,通常の民事訴訟における場合と異なるものではない。そして,訴訟上の因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではないが,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し 得る高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであるこ て全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し 得る高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とすると解すべきであるから,被爆者援護法11条1項の認定の要件とされている同法10条1項の放射線起因性についても,要証事実につき「相当程度の蓋然性」さえ立証すれば足りるとすることはできない。なお, 放射線に起因するものではない負傷又は疾病については,その者の治癒能力が放射線の影響を受けているために医療を要する状態にあることを要するところ,この「影響」を受けていることについても高度の蓋然性を証明することが必要であることはいうまでもない(被爆者援護法の前身である原子爆弾被爆者の医療等に関する法律7条1項の原爆症認定の 要件である放射線起因性の意義及びその立証の程度について判示したものとして,最高裁平成10年(行ツ)第43号原爆被爆者医療給付認定申請却下処分取消請求事件同12年7月18日第三小法廷判決・裁判集民事198号529頁参照。以下「最高裁平成12年判決」という。)。 これに対し,原告らは,これまでの裁判例を挙げて,国家補償法とし ての側面を有するものとの立法趣旨を理解すれば,立証の程度が実質的 に軽減される旨の主張をするが,最高裁平成12年判決は,「訴訟法上の問題である因果関係の立証の程度につき,実体法の目的等を根拠として右の原則と異なる判断をしたものであるとするなら,法(原子爆弾被爆者の医療等に関する法律を指す。)及び民訴法の解釈を誤るものといわざるを得ない。」と続けて指摘しているとおりであり,に反するものとし て採用できない。 原告らは,原爆被害の実態を踏まえれば,被爆者が,放射線の影響があ )及び民訴法の解釈を誤るものといわざるを得ない。」と続けて指摘しているとおりであり,に反するものとし て採用できない。 原告らは,原爆被害の実態を踏まえれば,被爆者が,放射線の影響があることを否定し得ない負傷又は疾病にかかった場合には,放射線起因性が推定される旨の主張や,関連性が小さくても放射線起因性が認められる旨の主張をするが,に反するものとして採用できない。 原告らは,被告が用いる審査の方針において,積極認定対象であることが立証されれば,放射線起因性が推定されると主張する。 審査の方針に関して,末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 医療分科会は,平成13年5月25日に「原爆症認定に関する審査の 方針」(以下「従前の審査の方針」という。)を制定した(乙A2)。 医療分科会は,平成20年3月17日,「新しい審査の方針」を策定した。この新しい審査の方針では,被爆者の救済を可及的に行うべきとの観点から,①被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者,②原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2km以内に入市した者,③ 原爆投下より約100時間経過後から,原爆投下より約2週間以内の期間に,爆心地から約2km以内の地点に1週間程度以上滞在した者のうち,①悪性腫瘍(固形がんなど),②白血病,③副甲状腺機能亢進症,④放射線白内障(加齢性白内障を除く。),⑤放射線起因性が認められる心筋梗塞については,格段に反対すべき事由がない限り,当該申請疾病と 被曝した放射線との関係を積極的に認定することとされた。(乙A1) 医療分科会は,平成21年6月22日,積極認定対象とする疾病として,⑥放射線起因性のある甲状腺機能低下症及び⑦放射線起因性のある慢性肝炎・肝硬変を加える旨の改定を行った(以下 れた。(乙A1) 医療分科会は,平成21年6月22日,積極認定対象とする疾病として,⑥放射線起因性のある甲状腺機能低下症及び⑦放射線起因性のある慢性肝炎・肝硬変を加える旨の改定を行った(以下,「新しい審査の方針」と併せて「従前の新方針」という。)(乙A13)。 平成21年12月9日,「原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題の解決 のための基金に対する補助に関する法律」(平成21年12月9日法律第99号。以下「基金法」という。)が制定され,その附則2条において,「政府は,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第11条の認定等に係る制度の在り方について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされた。 これを受け,平成22年12月,厚生労働大臣の下,学識経験者及び関係団体等の有識者を参集した「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」が設置され,この検討会の3年間にわたる検討の最終的な結果として,平成25年12月4日,「原爆症認定制度の在り方に関する検討会報告書」が取りまとめられた(乙A20,21)。 医療分科会は,基金法附則2条の「必要な措置」として,原爆症認定に関する審査の方針を改正した(以下「平成25年新方針」という。)(乙A22)。 平成25年新方針では,「第1 放射線起因性の判断」の冒頭で,「放射線起因性の要件該当性の判断は,科学的知見を基本としながら,総合 的に実施するものである。特に,被爆者救済及び審査の迅速化の見地から,現在の科学的知見として放射線被曝による健康影響を肯定できる範囲に加え,放射線被曝による健康影響が必ずしも明らかでない範囲を含め,次のように『積極的に認定する範囲』を設定する。」という頭書が加えられた。 続いて,「1 積極的に認定する範囲」 きる範囲に加え,放射線被曝による健康影響が必ずしも明らかでない範囲を含め,次のように『積極的に認定する範囲』を設定する。」という頭書が加えられた。 続いて,「1 積極的に認定する範囲」として,疾病を「悪性腫瘍(固 形がんなど),白血病,副甲状腺機能亢進症」「心筋梗塞,甲状腺機能低下症,慢性肝炎・肝硬変」「放射線白内障(加齢性白内障を除く)」という7種類のカテゴリに分けた上で,上記の各疾病のカテゴリに該当するものについては,「ア被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者,イ原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2km以内 に入市した者,ウ原爆投下より約100時間経過後から,原爆投下より約2週間以内の間に,爆心地から約2km以内の地点に1週間程度以上滞在した者のいずれかに該当する者から申請がある場合については,格段に反対すべき事由がない限り,当該申請疾病と被曝した放射線との関係を原則的に認定するものとする。」とされた。 また,上記の各疾病のカテゴリに該当するものについては,「ア被爆地点が爆心地より約2.0km以内である者,イ原爆投下より翌日までに爆心地から約1.0km以内に入市した者のいずれかに該当する者から申請がある場合については,格段に反対すべき事由がない限り,当該申請疾病と被曝した放射線との関係を積極的に認定するものとす る。」とされた。 さらに,上記の疾病のカテゴリに該当するものについては,「被爆地点が爆心地より約1.5km以内である者から申請がある場合については,格段に反対すべき事由がない限り,当該申請疾病と被曝した放射線との関係を積極的に認定するものとする。」とされた。 加えて,「2 1に該当する場合以外の申請について」は,このような申請についても,「 対すべき事由がない限り,当該申請疾病と被曝した放射線との関係を積極的に認定するものとする。」とされた。 加えて,「2 1に該当する場合以外の申請について」は,このような申請についても,「申請者に係る被曝線量,既往歴,環境因子,生活歴等を総合的に勘案して,個別にその起因性を総合的に判断するものとする。」とされた。 そして,「第2 要医療性の判断」として,「要医療性については,当 該疾病等の状況に基づき,個別に判断するものとする。」とされた。 の経過に鑑みると,審査の方針は,被害者救済及び審査の迅速化の見地から定められた基準という性格を有するものと理解するのが相当であるから,積極認定対象であることにより,放射線起因性が,事実上,推定されるということはできない。 イ一般的な放射線被曝線量の知見について 末尾に掲げた証拠及び弁論の全趣旨によれば次の各事実が認められる。 原爆に関する被曝としては,外部被曝に着目すれば,①初期放射線による被曝,②初期放射線の中性子によって誘導放射化された物質による被曝及び放射線降下物による被曝が,内部被曝に着目すれば,③誘導放射線による被曝及び放射性降下物による被曝があると解される。 初期放射線の線量評価については,線量評価に関し設置された日米合同の委員会が昭和61年3月に承認した原爆放射線の線量評価システムであるDS86が存在し,世界中において優良性を備えた体系的線量評価システムとして取り扱われてきたところ,これを更新する最新の知見として,DS02が得られている。(乙B3ないし9) 誘導放射線量について,グリッツナーらは,DS86によって原爆の初期放射線の被曝線量評価が策定された際に,広島・長崎の実際の土壌中の元素の種類,含有量及びこれらの元素の放 乙B3ないし9) 誘導放射線量について,グリッツナーらは,DS86によって原爆の初期放射線の被曝線量評価が策定された際に,広島・長崎の実際の土壌中の元素の種類,含有量及びこれらの元素の放射化断面積を基に生成された放射能量を計算したが,その結果,爆発後1時間における誘導放射線量と爆心地からの距離との関係について,広島では爆心地から700 mの地点に至ると,1時間当たりの誘導放射線量は,ほぼ0.001グレイにまで低減するとしている(乙B3・349頁,乙B29)。 また,誘導放射線の評価については,今中哲二が,DS02が策定された後である平成16年,「DS02に基づく誘導放射線量の評価」において,グリッツナーらの計算結果(乙B29)をDS02に応用するこ とにより,誘導放射線による地上1mでの外部被曝(空気中組織カーマ) について算出した,爆発直後から無限時間同じところに居続けたと仮定したときの放射線量(積算線量)は,爆心地においては広島120センチグレイ(1.2グレイ),爆心から1000mでは広島0.39センチグレイ(0.0039グレイ),爆心から1500mでは広島0.01センチグレイ(0.0001グレイ)となり,「これ以上の距離での誘導放 射線被曝は無視して構わない」と結論付けられている(乙B7・152頁)(以下,この今中哲二らの論文を「今中論文」という。)。 放射線降下物については,DS86報告第6章を取りまとめた岡島らは,様々な調査研究を総括し,放射性降下物による「(高度)1mにおける累積的被曝の推定の大部分は,よく一致している。(長崎の)西山地区 における放射性降下物の累積的被曝への寄与は,恐らく20ないし40R(レントゲン)の範囲であり,(広島の)己斐-高須地区では,それは恐らく1ないし3 は,よく一致している。(長崎の)西山地区 における放射性降下物の累積的被曝への寄与は,恐らく20ないし40R(レントゲン)の範囲であり,(広島の)己斐-高須地区では,それは恐らく1ないし3R(レントゲン)の範囲である」とし,これを組織吸収線量に換算すると,「長崎については12ないし24ラド」「広島については0.6ないし2ラド」(0.006ないし0.02グレイ)になる と結論付けた(乙B13・218,228頁)。 内部被曝の評価については,今中論文では,DS02に基づき,原爆投下当日に広島で焼け跡につき8時間の片付けに従事した人々の塵埃吸入を想定して,内部被曝による線量評価を試みたところ,その結果,0. 06μSV(0,00000006シーベルト)にすぎず,外部被曝に 比べ無視できるレベルであったと結論付けている(乙B7・153,154頁)。 広島原爆の投下の翌日である昭和20年8月7日に爆心地から約250mないし1kmの場所に入り,同月13日まで負傷者の救護や死体の処理に当たった賀北部隊工月中隊員の被曝線量を推定した場合,放影研 の加藤寛夫ほかの論文によれば,最大が11.8ラド(0.118グレ イ),「原爆放射線の人体影響1992」解説によれば,最大が13.5ラド(0.135グレイ)とされている(乙B115・228頁,乙B118・239頁)。 IAEA及びWHOは,急性放射線症候群についての知見を取りまとめて平成10年に公表している。その内容はおおむね次のとおりである。 被曝による急性症状は,前駆症状,無症状の潜伏期を経て,多様な主症状を呈するとされる。前駆症状の特徴としては,概要最低1グレイ以上の被曝をすると,数時間以内に,前駆症状として食欲低下,おう吐,発熱(発熱は2グレイ以上の被曝)といっ 症状の潜伏期を経て,多様な主症状を呈するとされる。前駆症状の特徴としては,概要最低1グレイ以上の被曝をすると,数時間以内に,前駆症状として食欲低下,おう吐,発熱(発熱は2グレイ以上の被曝)といった症状が出現する。この前駆症状は線量に依存し,被曝線量が高くなれば出現までの時間が早くなる ことはあっても遅くなることはない。前駆期を過ぎると,一時的にみられた症状は消え,無症状の時期(潜伏期)に入る。潜伏期後には,多様な主症状が出現する。被曝による急性症状としての皮下出血は,2グレイ程度以上被曝した場合に骨髄が障害され血小板が一時的に減少することによって生じる症状である。被曝による急性症状としての脱毛は,3 グレイ程度以上被曝した場合に毛髪の元となる毛母細胞が放射線により障害され,毛髪として成長しないために既存の毛髪が支えられなくなって生じる症状である。潜伏期を経た後に発症する主症状としての下痢は,腸管細胞が死滅して組織が欠落し,しかも再生できないことから血管がむき出しになる一方,被曝による骨髄抑制で血小板がなくなることから, 腸管内の血管が破綻し,大量出血を招くものである。 (乙B1,20の1,乙B24,32の1,乙B50,150,第2事件乙B131・77頁)ICRPは,同委員会の公式文書であるICRP刊行物59において,肺や皮膚の発がんリスクは均一な被曝よりも非常に不均一な被曝の方がずっと高いという考え方が「ホットパーティクル仮説」として知られて きたが,その考え方が支持されないことを明らかにしている(乙B46 の1,2)。 これらに対し,原告らは,DS02は,重大な欠陥を有するDS86の欠陥を全く改善しておらず,放射線起因性判断に使用することができないと主張する。 しかしながら,原告らの種々の指摘 の1,2)。 これらに対し,原告らは,DS02は,重大な欠陥を有するDS86の欠陥を全く改善しておらず,放射線起因性判断に使用することができないと主張する。 しかしながら,原告らの種々の指摘によっても,別件訴訟におけるe 3証人による相当の反論や説明(乙B5の2)が存在している。また,最高裁平成12年判決においても,原審が適法に確定した事実として,「原子爆弾による放射線の線量評価システムであるDS86は,線量評価に関し設置された日米合同の委員会が1986年(昭和61年)3月に承認し,世界中において優良性を備えた体系的線量評価システムとし て取り扱われてきた」ことが挙げられている。 したがって,原告らが主張するように,DS02が重大な欠陥を有しており,放射線起因性判断に使用することができないとまでは認められない。 そして,DS02は,平成15年3月以降放影研が実施する被爆者生 存者追跡調査で用いる新たな線量推定方式として承認されていることが認められ,他方,これに代わるより高次の合理性を備えた線量評価システムが他に存在することを認めるに足りる証拠はない。 したがって,相当程度の科学的合理性を有するものということができるので,この点に関する原告らの主張は採用できない。 原告らは,誘導放射線について,過小評価していると主張して,初期放射線を浴びていない被爆者が短命のうちに死亡した調査結果「三次高等女学校の入市被爆者についての調査報告書」(甲A120,甲B26)や,入市被爆者にも急性症状の発症例が多数みられたなどの証拠(「日米合同調査団の報告に関する資料」(甲A110),「原子爆弾災害調査報告 集」(甲A111),於保源作医師の論文「原爆残留放射能障碍の統計的 観察」(以下「於保論文」という。)( 証拠(「日米合同調査団の報告に関する資料」(甲A110),「原子爆弾災害調査報告 集」(甲A111),於保源作医師の論文「原爆残留放射能障碍の統計的 観察」(以下「於保論文」という。)(甲A112),g1の意見書(甲A56),「原爆被爆者における脱毛と爆心地からの距離との関係」(甲A113),広島原爆戦災誌(甲A118),c7医師による「入市被爆者の脱毛について」(甲B8の1),g2の意見書(甲B6の1),NHK広島局による「ヒロシマ・残留放射能の四十二年」(甲B11の38),g3 の意見書(甲A116),「原子爆弾災害調査報告集」のうち「原子爆弾症(長崎)の病理学的研究報告」(甲A142・資料1)」等を挙げる。 原告らが挙げる調査結果を評価するについては,その死亡原因や発症が放射線の影響によるものか否かを判断することが不可欠である。この点,放射線以外の精神的な原因等ではないか,また,そのような原因に よって説明が可能ではないかということについて,「同様の症状は,放射線以外の栄養障害,種々のストレスによってもおこると考えられる」とする論文(加藤寛夫ほか「賀北部隊工月中隊の疫学的調査」(第2事件乙B135・230,231頁))があるほか,有力な反対の証拠(g4の意見書(乙B50),同人の証人調書(乙B32の1,2),q9の意見 書(乙B51))が存在するのであり,原告らの主張する急性症状が全て放射線の影響であることに関しては,これらが信頼できる調査結果として一般的に科学的な知見として評価されているものとまでは認められない。 他方,今中哲二の誘導放射線の評価については,グリッツナーらの線 量評価をDS02に応用したものであって不合理とはいい難く,これを超える合理的な推定計算資料は見当たらないから,原告 ない。 他方,今中哲二の誘導放射線の評価については,グリッツナーらの線 量評価をDS02に応用したものであって不合理とはいい難く,これを超える合理的な推定計算資料は見当たらないから,原告らの指摘を考慮しても,一般的に信用できないというものではなく,合理性を有するものということができる。 原告らは,内部被曝は,集中的,継続的に被曝するのでより高い線量 の被曝が生じる旨の主張をし,その主張に沿う証拠(g5の意見書(甲 A57),同人の証人調書(甲A61),g6の意見書(甲A58),g1の証人調書(甲A59),g7の意見書(甲A60),g8の意見書(甲A62),同人の証人調書(甲A81),肥田舜太郎ほかの書籍「内部被曝の脅威」(甲A63)等)を挙げる。 しかしながら,のとおり,「ホットパーティクル仮説」については疑 問が呈されている上,原告らの主張に対して有力な反対証拠(第2事件乙B79)があるほか,指摘の証拠によっても,原告らの主張が,いまだ一般的な科学的知見に至っているとはいい難く,極めて自然な考えなどということもできない。 原告らは,放射線降下物の存在を無視していると主張する。 しかしながら,放射線降下物の存在については,のとおりの科学的知見が一般であり,これに代わる一般的なものは見当たらないから,無視しているとの主張は当たらない。 ウ亡a1の放射線被曝量と甲状腺腫瘤の放射線起因性及び要医療性の有無について 末尾に掲げた証拠によれば次の各事実が認められる。 ① 亡a1は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,広島市上流川町の木造一部鉄骨3階建ての建物内(爆心地からの距離約1.2km)にいた。当時,亡a1は16歳であった。(甲C1,乙C1の1) ② 年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,広島市上流川町の木造一部鉄骨3階建ての建物内(爆心地からの距離約1.2km)にいた。当時,亡a1は16歳であった。(甲C1,乙C1の1) ② 爆心地から約1.2km地点で直接被爆をした場合のDS02に基づく推定被曝線量に遮蔽係数0.7を乗じた値は約1.316グレイとなる(乙C1の18)。 ③ 原告bらが主張する亡a1の被爆後の行動を前提として,爆心地から1.2kmの地点に移動し,無限時間その場所にとどまっていたと した場合の仮定被曝線量は,0.001グレイとなる(乙C1の18)。 ④ 腫瘤とは,腫瘍等を含め,生体内にできた腫物を一般的に表現したものである(乙B217)。 ⑤ 亡a1のカルテには,亡a1の甲状腺に結節が認められているので,甲状腺腫瘤(多発性)とは,多結節性甲状腺腫と解される(乙C1の19・14頁)。 ⑥ 甲状腺腫瘍には,結節性甲状腺腫があり,結節性甲状腺腫は,しばしば多発し多結節性甲状腺腫となるとされる(乙B218)。 ⑦ 甲状腺結節,腫瘍については,東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科のウェブサイトに,「健康な人でも詳しく調べれば10人中約3人の割合で甲状腺内の『シコリ』が見つかります。その多くは『腺腫 様甲状腺腫』という良性のものです。」「大部分は心配いりません」とある(乙B103)。 ⑧ 結節性甲状腺腫は,腫瘍ないし局所の炎症とされるが,その大部分は腫瘍であり,過形成,良性腫瘍,悪性腫瘍があるとされている(乙B219)。 を前提に,亡a1のカルテには悪性所見であるとの記載が見当たらないことや,甲状腺結節ないし腫瘍が一般的に発生するものであることからすれば,放射線に関係なく発症した疑いが残るので,放射線起因性を認め を前提に,亡a1のカルテには悪性所見であるとの記載が見当たらないことや,甲状腺結節ないし腫瘍が一般的に発生するものであることからすれば,放射線に関係なく発症した疑いが残るので,放射線起因性を認めることができない。 原告bらは,長崎の西山地区においては,結節性甲状腺腫の多発が報 告されていることから(c7医師の意見書中「原爆放射線の人体影響1992」(甲A139・資料6の116頁)),甲状腺腫瘤と放射線被曝との間に関連性がある旨の主張をする。 しかしながら,上記報告によっても,一般的な科学的知見として放射線被曝との有意な相関関係は認めるに足りないと考えられる。 仮に,放射線起因性が認められるとしても,要治療性を認めるに足り る証拠はない。 これに対し,原告bらの主張に沿う証拠として,e1医師の意見書(甲C1の3)があるが,亡a1の甲状腺腫瘤について,具体的な根拠を示して放射線起因性及び要医療性があると判断しているものではないから,採用できない。 3 争点ア(原告a2の甲状腺機能低下症の放射線起因性の有無)について 一般的な甲状腺機能低下症の知見についてア末尾に掲げた証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 甲状腺機能低下症の原因としては,①甲状腺組織そのものに障害がある場合,②視床下部や脳下垂体に異常があるためこれらからのTSH等 の分泌が障害され甲状腺に対する刺激因子が欠乏した場合に大きく分けられ,①は原発性甲状腺機能低下症,②は中枢性(二次性)甲状腺機能低下症とも呼ばれる。診断の検査所見は,①につき,遊離T4が低値及びTSHが高値であり,②につき,遊離T4が低値及びTSHが低値から正常値であるとされている(乙B88・89ないし92頁)。 他方,以上のよ る。診断の検査所見は,①につき,遊離T4が低値及びTSHが高値であり,②につき,遊離T4が低値及びTSHが低値から正常値であるとされている(乙B88・89ないし92頁)。 他方,以上のような臨床症状を欠き,検査でも,T3値,T4値ともに正常範囲内にあるが,TSHのみ上昇している状態のものもあり,これは,潜在性甲状腺機能低下症と呼ばれる(乙B88・90頁)。 甲状腺機能低下症の頻度は,型,性,年齢によって異なるが,一般論として女性に多く,年齢が高くなるほど頻度も増すとされている(乙B 88・91頁)。 甲状腺疾患の頻度は高く,6ないし10人に1人は甲状腺疾患に罹患しているといわれており,甲状腺機能低下症の頻度は,潜在性のものまで含めると,男性は0.68から3.6%,女性は2.97から5.9%であり,日本人の20ないし30人に1人がこの疾患にかかっていても おかしくないとする研究がある(乙B89・190頁)。 甲状腺機能低下症の95%は原発性であり,その原因としては,慢性甲状腺炎が最も多いが,慢性甲状腺炎の発生に最も関係の深い抗TPO抗体陽性の頻度は成人で約5%,高齢女性で15%とされている。潜在性甲状腺機能低下症の頻度もこれに近く,成人女性の約8%,男性の3. 5%といわれ,年齢とともに増加し,60歳を超えると女性の約15%, 男性の8%が潜在性甲状腺機能低下症といわれている。 (乙B88・90,91頁)甲状腺機能低下症については,40歳代から罹患者が確認されている(乙B89)。 放射線による人体影響という分野については,国際的な科学的知見を 集積する機関として,UNSCEARやICRPがあり,多数の科学者の合意を得られた,最新の科学的知見をまとめた報告書を作成している(乙B63, 影響という分野については,国際的な科学的知見を 集積する機関として,UNSCEARやICRPがあり,多数の科学者の合意を得られた,最新の科学的知見をまとめた報告書を作成している(乙B63,64)。 ICRPでは,甲状腺機能低下症を起こす線量は甲状腺の線量として25ないし30グレイ程度(分割照射)であると推定しており,核実験 の際にはこれより低い線量を甲状腺に浴びた場合に甲状腺機能低下症が生じた例も報告されているところ,7ないし14グレイ又は約4グレイとなっている(乙B90)。 イこれに対し,原告a2は,アのとおりICRPの指摘する線量以下の放射線被曝であっても,甲状腺機能低下症と放射線被曝との間には有意な 相関関係があると主張し,その旨を記載したものとして,「原爆被爆者の甲状腺機能低下症についての意見書」(甲B4)中の複数の報告等(横田素一郎ほか「原爆被爆者にみられた甲状腺障碍について」(甲B4・文献4),伊藤千賀子の報告「原爆被爆者の甲状腺機能に関する検討」(甲B4・文献5),同人の論文(甲B4・文献6),井上修二,長瀧重信ほかの報告「長 崎原爆被爆者における甲状腺疾患の調査(第3報)」(甲B4・文献7),「原 爆放射線の人体影響1992」(甲B4・文献1),ワン・レニーほかの論文「成人健康調査第7報原爆被爆者における癌以外の疾患の発生率,1958-86年」(甲B4・文献9),山田美智子ほかの論文「原爆被爆者におけるがん以外の疾患の発生率,1958-1998年」(甲B4・文献12),長瀧重信,柴田義貞ほかの報告「長崎原爆被爆者における甲状腺疾患」 (甲B4・文献3),今泉美彩ほかの論文「被爆55-58年後の広島・長崎原爆被爆者における甲状腺結節と自己免疫性甲状腺疾患の線量反応関係」(甲B4 かの報告「長崎原爆被爆者における甲状腺疾患」 (甲B4・文献3),今泉美彩ほかの論文「被爆55-58年後の広島・長崎原爆被爆者における甲状腺結節と自己免疫性甲状腺疾患の線量反応関係」(甲B4・文献13),永山雄二ほかのマウス実験に関する報告(甲B5),q1医師の意見書(甲B43))等を挙げる。 しかしながら,これらについては,同じ執筆者である長瀧重信,井上修 二,鈴木元及び伊藤千賀子による反対意見書(乙B151)が存在し,その内容に照らすと,甲状腺機能低下症と放射線被曝との間の有意な相関関係を認めるについては,いまだ疑義が残るほか,いずれの意見書等の内容によっても,一般的な科学的知見としては,アのICRPの指摘に優る信頼性を有するものは認められない。 原告a2の放射線被曝量と甲状腺機能低下症の発症因子についてア末尾に掲げた証拠によれば次の各事実が認められる。 原告a2は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,爆心地から約2.7kmの地点にある広島市南蟹屋町の自宅内にいた。 原告a2は当時2歳であった。もっとも,同人の被爆者健康手帳交付申 請書には,原告a2が現在主張している広島駅や松原町一帯を歩き回った旨の記載はない。(乙C2の1・75頁,乙C2の6,原告a2)原告a2に被爆当時の記憶はなく,原告a2の両親らから聞いた話として供述しているものである(原告a2)。 原告a2の母の被爆者健康手帳交付申請書には,子供3人がかなりひ どい傷を負ったので,隣組の病人らと共に温品の避病院へ避難させ,す ぐに引き返したこと,叔父が帰らないと叔母が泣いて来たので松原町から段原方面を捜しに出たこと,6日(被爆当日)の夜,主人と私が避病院に行ったが,そのとき灰のようなものが降ってくるので万 させ,す ぐに引き返したこと,叔父が帰らないと叔母が泣いて来たので松原町から段原方面を捜しに出たこと,6日(被爆当日)の夜,主人と私が避病院に行ったが,そのとき灰のようなものが降ってくるので万一を思い夏布団をかぶったことの各記載がある(甲C2の5)。 原告a2のABCCによる調査結果には,原告a2が現在主張してい る発熱,下痢について「ない」旨の記載がある(乙C2の16・1枚目)。 原告a2は,平成18年9月4日,本件申請を行うに際し,初めて,入市に関する記載をしたが,その内容は,「広島駅前,松原町(2km地点)一帯を歩く」というものであった(乙C2の1・71頁)。 原告a2は,平成22年4月6日付け異議申立書において,「国鉄広島 駅,松原町(爆心から1.8km)一帯を歩いた」と記載した(乙C2の12・3枚目)。 爆心地から2.7kmの木造家屋内で被爆をした場合のDS02に基づく推定被曝線量は,約0.004375グレイと推定される(乙C2の14)。 原告a2は,昭和60年(42歳時)頃,慢性甲状腺炎に罹患し,平成15年7月(60歳時)頃に甲状腺機能低下症と診断された(原告a2)。 甲状腺機能低下症が自己免疫性であるかどうか判定するための簡単な方法として検査キットによる抗Tg抗体及び抗TPO抗体を検査する方 法があるが,原告a2に係る平成20年5月29日,平成22年8月31日,平成23年5月31日の検査結果は,いずれも陰性となっている(乙B179,乙C2の17,証人e2)。 e2医師は,自己抗体の測定は検査キットにより差異があるとの例が報告されていると意見書に記載し,その報告に沿う文献が存在する(乙 B179)。 原告a2の甲状腺機能低下症について,加齢を原因とする一般の 体の測定は検査キットにより差異があるとの例が報告されていると意見書に記載し,その報告に沿う文献が存在する(乙 B179)。 原告a2の甲状腺機能低下症について,加齢を原因とする一般の症例と比較して特異な点がない(乙B179,証人e2)。 イアの事情を前提に原告a2の供述の信用性を吟味すると,原告a2については,被爆当時,爆心地から約2.7km離れた自宅にいたことや外傷を負ったことは認められるものの,その後,母とともに入市したことや急 性症状があったことは認め難いといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告a2は,被爆翌日(昭和20年8月7日),叔母夫妻の安否を確認するため,両親と一緒に入市して,広島駅付近を捜し歩いたと主張し,その旨の供述をする(甲C2,2の2,2の3,原告a2)。 しかしながら,同供述は,被爆者健康手帳交付申請に関する書類には記 載がなく,かつ,平成18年9月4日の本件申請に際して,初めて主張されたものであること,原告a2の母の被爆者健康手帳交付申請書の記載からは,原告a2を避難させ,これとは別に捜しに行ったことが推測されることから,信用するに足りないといわざるを得ない。 エ原告a2は,原爆投下の2,3日後から,微熱と下痢が10日間くらい 継続した旨の主張し,その旨の供述をする(甲C2,2の2,2の3,原告a2)。 しかしながら,同供述は,ABCCによる調査結果と相違するところ,原告a2について虚偽の回答をしなければならなかった事情が具体的に明らかではないので信用することができない。 オア及びイを前提にすれば,原告a2については,理論上,4グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,外傷の存在などを踏まえても,具体的にもそれを認めるに足りないといわ オア及びイを前提にすれば,原告a2については,理論上,4グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,外傷の存在などを踏まえても,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 カ仮に,4グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは, しきい値がなかったとしても,自己免疫性であるかどうかに関わらず甲状腺機能低下症は被曝によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a2の甲状腺機能低下症の発症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるとはいえないため,原告a2の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a2の被爆後の症状を考慮して も,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 キこれに対し,原告a2が相当量の原爆放射線に被曝したこと,被爆時2 歳で放射線感受性が高かったことからすると,原告a2の甲状腺機能低下症について放射線起因性を優に認めることができる旨の主張をし,その主張に沿うe1医師の意見書(甲B48,甲C2の4)及び証人e1の証言がある。 しかしながら,放射線被曝の程度については,オのとおりであり,原告 a2の主張の前提を採用することができない。 原告a2が提出するe1医師の意見書(甲B48,甲C2の4)及び証人e1の証言も,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので採用することができない。 ク原告a2は,疾病の発症においては,一般に,複数の要素が複合的に関 与す 及び証人e1の証言も,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので採用することができない。 ク原告a2は,疾病の発症においては,一般に,複数の要素が複合的に関 与するから,他の発症原因と共同関係にあったとしても,特段の事情がなければ,放射線起因性は否定されることはなく,原爆の放射線によって疾病の発症が促進されたと判断される場合にも放射線起因性を肯定するのが相当であると主張する。 しかしながら,原告a2については,他の発症原因と共同関係にあるこ とも,促進されたと判断することも困難であるので,放射線が発症原因と は認められないと判断したものであり,原告a2の主張は採用できない。 ケ原告a2は,疾病と因果関係が推定された要因を共通にする集団に属する限り,特定の個人について,その要因が疾病の原因である可能性を肯定できても,その要因が発生に関与していないとして関連を否定することはできず,リスクの大きさに関わらず,リスクがあるのであって,リスクが 小さいから要因との関係を否定するということは誤りであると主張する。 しかしながら,原告a2において,因果関係が推定された要因を共通にする集団に属するとは認められず,また,リスクがあれば因果関係を肯定するという主張は,既に述べた因果関係の理解と整合しないので採用できない。 コ以上によれば,争点イ(原告a2の甲状腺機能低下症の要医療性の有無)の判断を要しない。 4 争点ア(原告a3の高脂血症の放射線起因性の有無)について末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 ア原告a3は,昭和20年8月6日原爆が広島市に投下された当時,爆心 地から約1.5kmの地点にある広島市千田町の木造二階建ての自宅の縁側にいた。当時,原 よれば,次の各事実が認められる。 ア原告a3は,昭和20年8月6日原爆が広島市に投下された当時,爆心 地から約1.5kmの地点にある広島市千田町の木造二階建ての自宅の縁側にいた。当時,原告a3は5歳であった。(甲C3の1)イ爆心地から約1.5km地点で直接被爆をした場合のDS02に基づく推定被曝線量に遮蔽係数0.7を乗じた値は約0.3752グレイとなる(乙C3の10・2枚目)。 ウ原告a3の主張を前提として,爆心地から1.5kmの場所に,原爆投下直後に入市し,そのまま同じ場所に無限時間滞在した場合の仮定被曝線量は,0.0001グレイとなる(乙B7・152頁)。 エ原告a3の主張を前提として,原爆投下翌日に,爆心地から約1.3kmの地点に入市し,無限時間その場所にとどまっていたとする仮定被曝線 量は,0.00008グレイとなる(乙C3の10・4枚目)。 オ高脂血症は,血液中のコレステロール又は中性脂肪のいずれか,又は両方が標準以上に増加した状態をいう。高脂血症の発症要因は多様であるが,大きく分けて,原発性(遺伝的要因が基盤となり欧米では家族性と呼ばれることが多い。)と,二次性(諸疾患や薬物,食事性要因等によるもの。)とに分けられている。(乙C3の11・410ないし415頁) カ高脂血症の発症には,遺伝的な素因に加えて,過食,摂食パターンの異常といった不適切な食生活,運動不足,アルコールの飲み過ぎ,ストレス過多などが重要な役割を果たしている場合が多くあり,これらの生活習慣が深く関わっていることが多いため,高脂血症は,食生活や運動不足などの日常の生活習慣の積み重ねに起因する生活習慣病として広く知られてい る(乙C3の12)。 キ原告a3は,平成15年6月(63歳時)には,高脂血症が いため,高脂血症は,食生活や運動不足などの日常の生活習慣の積み重ねに起因する生活習慣病として広く知られてい る(乙C3の12)。 キ原告a3は,平成15年6月(63歳時)には,高脂血症が認められた(乙C3の1・337頁)。 ク総コレステロール値(TC)の正常値は,130ないし220mg/dlとされている(乙B242)。 原告a3は,高脂血症と放射線量との間に有意な相関関係があると主張し,その旨の証拠としてc8医師の証人調書(甲B13),ワン・レニーほかの論文(第2事件乙B107の1,2)を挙げる。 しかしながら,根拠として挙げる証拠は,一般的な科学的知見として高脂血症と放射線量との間に有意な相関関係の存在を認めるに足りるものではな い。また,上記ワンほかの論文においても,最もコレステロール差が大きかった年代において,女性につき最大1グレイ当たり2.5mg/dl,男性につき最大1グレイ当たり1.6mg/dlのコレステロール値の上昇がみられると指摘されているにとどまっている。 及びの事情を前提にすれば,一般的な科学的知見として,高脂血症と 放射線との間に有意な相関関係があることを認めるに足りる証拠はない上, 他方で,原告a3の生活習慣を原因として発症したのではないかとの疑いが残るといわざるを得ない。 その他,原告a3の高脂血症の発症の原因につき,放射線被曝によることを認めるに足りる証拠はない。 したがって,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は 認められない。 以上によれば,争点イ(原告a3の高脂血症の要医療性の有無)について判断を要しない。 5 争点(原告a5)について 争点 ア(甲状腺機能低下症の放射線起因性の有無)について ア末尾に掲げた証 ,争点イ(原告a3の高脂血症の要医療性の有無)について判断を要しない。 5 争点(原告a5)について 争点 ア(甲状腺機能低下症の放射線起因性の有無)について ア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a5は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,爆心地から約2.5kmの地点にある広島市舟入南町の自宅前の路上にいた。当時,原告a5は,13歳であった。(甲C8,乙C8の1・482,483頁,原告a5) 原告a5は,昭和20年8月16日以降,四国の松山市に避難する途中において,赤痢にかかっているとして隔離された(甲C8,原告a5)。 原告a5は,昭和30年6月3日に行われたABCCの被爆状況調査に対しては,下痢はあったと回答しているが,発熱及び脱毛はなかったと回答していた(乙C8の9・2枚目)。 原告a5は,昭和31年4月10日に行われたABCCの被爆状況調査に対しては,発熱については(昭和20年)8月下旬にあり,脱毛については発症時期が不明であるが,10分の1以下の程度では生じていたと回答していた(乙C8の10・2枚目)。 爆心地から約2.5km地点で直接被爆した場合のDS02に基づく 推定被曝線量は約0.0126グレイとなる(乙C8の8)。 今中論文によれば,原爆投下の直後,翌日,1週間後に爆心地に入市し,以後無限時間居続けたと仮定した場合の誘導放射線による被曝線量は,それぞれ120センチグレイ(1.2グレイ),19センチグレイ(0. 19グレイ),0.94センチグレイ(0.0094グレイ)とされている(乙B7・152,153頁)。 原告a5は,平成8年,当時64歳で甲状腺機能低下症の診断がされた(原告a5)。 原告a5の甲状腺機能 94センチグレイ(0.0094グレイ)とされている(乙B7・152,153頁)。 原告a5は,平成8年,当時64歳で甲状腺機能低下症の診断がされた(原告a5)。 原告a5の甲状腺機能低下症について,加齢を原因する一般の症例と比較して特異な点がない(乙B179,証人e2)。 イアの事情を前提に原告a5の供述の信用性を吟味すると,原告a5につ いては,被爆当時,爆心地から約2.5km離れた自宅前の路上におり,昭和20年8月16日又は17日には,爆心地から約1.3kmの地点を通過したことは認められるものの,急性症状があったことは認め難いといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告a5は,昭和30年のABCC調査票の記載にかかわ らず,発熱や脱毛の事実が存在したと主張し,その旨の供述をする(甲C8,原告a5)。また,ABCCの調査に対して真実を語ることができなかったのは,同調査が怨嗟の対象であったことは,記録集(甲A3・167頁)から明らかであり,これと同様に真実を語ることに躊躇があったためであり,昭和31年の調査においては発熱や脱毛を語っている旨の主張を する。 しかしながら,原告a5の昭和30年のABCC調査においては下痢があったことを語っており,真実を語ることができなかったとの理由をにわかに信用することができない。 エ原告a5は,四国において赤痢にかかっているとして隔離されたが,真 実は,赤痢ではなく急性症状である下痢であることが判明した旨の主張を し,その旨の供述をする(甲C8,原告a5)。 しかしながら,原告a5の供述によれば,赤痢ではなかったことの根拠は,医師から説明を受けたというものではなく,事後的にそのように主観的に判断したというものであるから,真実が赤痢ではなかったとは認め難 しかしながら,原告a5の供述によれば,赤痢ではなかったことの根拠は,医師から説明を受けたというものではなく,事後的にそのように主観的に判断したというものであるから,真実が赤痢ではなかったとは認め難い。 また,原告a5は,家族が赤痢で隔離されていないことから,赤痢ではない旨の主張をし,その主張に沿う証人e1の証言がある。 しかしながら,同人の証言する理由によっても,赤痢ではなかったと認めるに足りない。 オ原告a5は,昭和20年8月16日又は17日,自宅から住吉橋(爆心 地から約1.3km)等を渡って四国へ行ったので,相当の外部被曝や内部被曝をした旨の主張し,その旨の供述をしている(甲C8,原告a5)。 しかしながら,アのとおり,今中論文によれば,誘導放射線は,原爆投下の1週間後であれば,投下直後の0.0078倍(0.94÷120)とされていることからすると相当低減すると考えられ,少なくとも誘導被 曝が高かったとは認め難い。また,内部被曝については,原爆投下当日に広島で8時間の片付け作業に従事したとして内部被曝を評価した分析においても,0.06μシーベルトという値であるとの研究(乙B7・154頁)を念頭に置くと,一般的には,相当の外部被曝や内部被曝が存在したと認めるに足りない。 原告a5の主張に沿う証人e1の証言は,いまだ一般的な科学的知見に至っていない事情をもって,原告a5に適用するものであって,直ちに信用することが困難である。 カ原告a5は,被爆後,右半身に熱傷を負ったので,相当の被曝をした旨の主張をし,その旨のe1医師の意見書(甲C8の6)及び証人e1の証 言がある。 しかしながら,「公益財団法人放射線影響研究所「要覧」」(乙B162・2頁)によれば,原爆により放出されたエネ 張をし,その旨のe1医師の意見書(甲C8の6)及び証人e1の証 言がある。 しかしながら,「公益財団法人放射線影響研究所「要覧」」(乙B162・2頁)によれば,原爆により放出されたエネルギーは,爆風として50%,熱線として35%,放射線として15%と推定されており,熱傷は爆心地から約3.5kmにまで及んだとされていることが認められるから,熱線と放射線は別のものと理解され,熱線を浴びることが放射線被曝を意味す るものではない。 したがって,上記意見書の内容を直ちに信用することができない。 キア及びイを前提にすれば,原告a5について,理論上,4グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,外傷や入市の存在を踏まえても,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 ク仮に,4グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,甲状腺機能低下症は加齢に伴い被曝によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a5の甲状腺機能低下症の発症 については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるとはいえないため,原告a5の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a5の被爆後の症状を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 ケ原告a5は,甲状腺機能低下症の発症が64歳より前であることは,平成8年8月18日の甲状腺ホルモンに関する検査結果につき,既に他院で治療中であること(乙C8の1・494頁) は認められない。 ケ原告a5は,甲状腺機能低下症の発症が64歳より前であることは,平成8年8月18日の甲状腺ホルモンに関する検査結果につき,既に他院で治療中であること(乙C8の1・494頁)から推認できること,原告a 5は放射線の影響を受けやすい13歳という若年時に爆心地から2.5k mで遮蔽のない状態で直接被爆し,右下半身に熱傷を負い昭和20年8月16日あるいは17日には,被爆中心地から1.3kmに立ち入っていること,このような状況を検討するならば,原告a5は,被爆直後の土壌,崩壊建造物(瓦礫)からの外部被曝のみならず,放射線物質を含む粉塵の吸入,傷口ややけどの皮膚からの侵入等による内部被曝も否定できないこ と,さらに,原告a5の発熱,下痢,血便,脱毛という急性症状がみられたことからすると,原告a5は健康影響を及ぼす相当量の被曝線量を受けていると解されるので,放射線起因性が認められる旨の主張をし,その主張に沿うe1医師の意見書(甲B48,甲C8の6)及び証人e1の証言がある。 しかしながら,e1医師の意見書(甲B48,甲C8の6)及び証人e1の証言は被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,直ちに信用することができない。 コ以上によれば,争点イ(甲状腺機能低下症の要医療性の有無)について判断を要しない。 争点 ウ(狭心症の放射線起因性の有無)についてア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 狭心症は,虚血性心疾患のうち,虚血が一過性で心筋の障害が一時的であり,器質的障害を残さない可逆的虚血の場合をいい,動脈硬化を主因とする生活習慣病であるとされている(乙B94・231頁)。 原告a5は,平成9年の65歳頃に狭心症に発症したものと推測さ であり,器質的障害を残さない可逆的虚血の場合をいい,動脈硬化を主因とする生活習慣病であるとされている(乙B94・231頁)。 原告a5は,平成9年の65歳頃に狭心症に発症したものと推測される(乙C8の1・487頁)。 原告a5は,高血圧であった(乙B95,乙C8の1・487,497頁)。 原告a5は,中性脂肪が高値であり,高脂血症を有していた(乙C8 の1・487,498頁)。 イ及びアを前提にすれば,原告a5について,後述するとおり,心筋梗塞で問題とされる0.5グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,外傷や入市の存在を踏まえても,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残 ることは否定し難い。 ウ仮に,0.5グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,狭心症は生活習慣により被曝によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a5の狭心症の発症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があ るともいえないため,原告a5の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a5の被爆後の症状を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 エこれに対し,原告a5は,動脈硬化,高血圧及び高脂血症と放射線量との間に有意な相関関係があると主張し,その旨の証拠としてc8医師の証人調書(甲B13)や,放射線被曝と心・血管疾患との有意な関連性を認めた疫学調査として,放影研による業績報告書である,寿命調査 量との間に有意な相関関係があると主張し,その旨の証拠としてc8医師の証人調書(甲B13)や,放射線被曝と心・血管疾患との有意な関連性を認めた疫学調査として,放影研による業績報告書である,寿命調査第11報第3部(甲B14・12頁),原爆被爆者の死亡率調査第12報第2部(甲 B15・1,8,26頁),同第13報(甲B16・3,36,40頁),「原爆被爆者におけるがん以外の疾患の発生率 1958-1998年」(甲B3の9),井上典子の「原爆被爆者と心血管疾患」とのタイトルの報告(甲B17・277頁),赤星正純の「原爆被爆者の動脈硬化・虚血性心疾患の疫学」と題する発表(甲B18・205頁),清水由紀子ほかのBM J論文(以下「清水論文」という。)(甲B19の1,2),e4の証人調書 (甲B20),e5の証人調書(甲21)を挙げる。 しかしながら,これらを根拠にしての原告a5の主張に関しては,赤星正純,清水由紀子及び井上典子らの反対意見書(乙B216)があることに加え,いずれの証拠によっても,放射線被曝と動脈硬化,高血圧及び高脂血症との間の有意な相関関係や,特に,0.5グレイ以下の低線量被曝 との間の有意な相関関係につき,一般的な科学的知見としての存在を認めるに足りるものではない。また,仮に,一般的な相関関係があるとしても,その程度は相当低いと評価できる(例えば,上記「原爆被爆者の血圧に対する加齢および放射線被曝の影響」中,1グレイの原爆放射線に被曝した男性の40歳について,それぞれ同様の条件の非被爆者より,収縮期血圧 が約1.0mmHg,拡張期血圧が約0.8mmHg高かったと報告されているにすぎない。なお,70歳男性については非被爆者の男性よりも低いとの報告もされている。(第2事件乙B108の2・8ないし10頁) 約1.0mmHg,拡張期血圧が約0.8mmHg高かったと報告されているにすぎない。なお,70歳男性については非被爆者の男性よりも低いとの報告もされている。(第2事件乙B108の2・8ないし10頁))。 さらには,上記疫学的な調査結果は,具体的に原告a5の動脈硬化,高血圧及び高脂血症につき放射線の影響を裏付けるものではない。 オ原告a5は,被告の主張する他の原因が発症に影響しているとしても,原爆放射線被曝の影響まで否定されるものではなく,むしろ,原爆放射線被曝とその他の危険因子とが相まって,疾病の発症に寄与したものと考えられる旨の主張をし,その主張に沿うe1医師の意見書(甲C8の6)及び証人e1の証言がある。 しかしながら,e1医師の意見書(甲C8の6)及び証人e1の証言は,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,採用することができない。また,原爆放射線被曝が寄与したかどうか明らかでなく,むしろ,寄与していなくとも結果が発生した可能性があると考えられるので,因果関係を認め難いのは既に説明したとおりである。 カ以上によれば,争点エ(狭心症の要医療性の有無)について判断を要 しない。 争点 オ(高血圧の放射線起因性の有無)についてア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 高血圧症とは,繰り返して測っても血圧が正常より高い場合(最高(収縮期)血圧が140mmHg以上,あるいは,最低(拡張期)血圧が9 0mmHg以上)をいい,日本における高血圧症の有病者は,治療を受けていない者まで含めれば約3970万人に上る(乙B96,97)。 高血圧症は,「本態的高血圧症」と「二次性高血圧症」に分類され,「二次性高血圧症」とは,腎・副腎・神経系の疾患など体内に血圧上昇の けていない者まで含めれば約3970万人に上る(乙B96,97)。 高血圧症は,「本態的高血圧症」と「二次性高血圧症」に分類され,「二次性高血圧症」とは,腎・副腎・神経系の疾患など体内に血圧上昇の原因となるはっきりした疾患が存在しているものをいい,本態性高血圧症 とは,二次性高血圧症以外の原因の分からないもの全てをいう。高血圧症の90%以上を占める本態性高血圧症には,遺伝的な因子及び生活習慣などの環境因子が関与していると考えられており,その原因としては,過剰な塩分摂取,肥満,飲酒,精神的ストレス,自律神経の調節異常,肉体労働の過剰,蛋白質・脂質の不適切な摂取,喫煙が挙げられている。 (乙B96,97)高血圧症の患者数は,年齢層が上がるほどに増加傾向にあり,60歳以上の女性の約50%が高血圧とされている(乙B98)。 イこれに対し,原告a5は,高血圧と放射線量との間に有意な相関関係があると主張するが,その主張が失当であることは,エで述べたとおりで ある。 ウ及びアの事情を前提にすれば,一般的な科学的知見として,高血圧と放射線との間に有意な相関関係があることを認めるに足りる証拠はない上,原告a5の生活習慣を原因として発症したのではないかとの疑いが残るといわざるを得ない。 したがって,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性 は認められない。 原告a5の主張に沿うe1医師の意見書(甲C8の6)及び証人e1の証言は,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,採用することができない。 エ以上によれば,争点カ(高血圧の要医療性の有無)について,判断を 要しない。 6 争点(原告a6)について 争点 ア(甲状腺機能低下症の放射線起因性の有無)につい ことができない。 エ以上によれば,争点カ(高血圧の要医療性の有無)について,判断を 要しない。 6 争点(原告a6)について 争点 ア(甲状腺機能低下症の放射線起因性の有無)についてア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a6は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時, 広島市南千田町の自宅の外(爆心地からの距離約2.5km)にいた。 当時,原告a6は4歳であった。(乙C9の1・117頁,原告a6)原告a6の昭和48年3月13日付け被爆者健康手帳交付申請書には,原告a6は,昭和20年8月6日に被爆した後,千田町の修道中学校のグラウンド(爆心地からの距離約2.5km)に避難し,夜を明かし, 同月7日午前8時頃から午前9時頃までの間,徒歩又は父に背負われ,南千田町(同約2.5km),広島電鉄本社前(同約2km)及び日本赤十字病院付近(同約1.6km)辺りで姉を捜し,同月8日午前8時頃から午後6時頃までの間,徒歩又は父に背負われ,南千田町,広島電鉄本社前,日本赤十字病院,鷹野橋(同約1.5km),袋町富国生命ビル 暁部隊収容所(同約0.5km),紙屋町,八丁堀(爆心地からの距離約1km),鉄砲町(同約1km)及び浅野泉庭収容所付近(同約1ないし1.5km)で姉を捜した,同月9日以降同月15日までの間,広島市内で同様に姉を捜していた,そして,「以上母マツエが教えてくれました」との記載がある(乙C9の1・123,124頁,乙C9の12の1, 2)。 原告a6の本件申請に係る平成20年3月26日付けの原爆症認定申請書においては,原爆投下当日から昭和20年8月8日までの行動内容については,おおむねの被爆者健康手帳交付申請書と同様の記載がされているものの,同 申請に係る平成20年3月26日付けの原爆症認定申請書においては,原爆投下当日から昭和20年8月8日までの行動内容については,おおむねの被爆者健康手帳交付申請書と同様の記載がされているものの,同月9日から同月14日についても,同月8日と同様の行動をした旨の記載がある(乙C9の1・117頁)。 原告a6の平成22年9月7日付け異議申立書においては,行方不明の姉を捜すため,昭和20年8月7日に,南千田町,広島電鉄本社(爆心地からの距離約1.9km),鷹野橋(同約1.2km),市役所前(同1km),袋町富国生命ビル(同約0.4km),紙屋町(同約0.4km),八丁堀(同約0.9km),縮景園(同約1.5km)まで行き,同 月8日以降同月14日までの間も同じ経路を捜して歩いた旨の記載がある(乙C9の9・2枚目)。 別紙「被爆実態一覧」の原告a6の欄及び同人の平成25年7月18日付け陳述書には,昭和20年8月7日に捜した経路については,の被爆者健康手帳交付申請書と同様の記載がある(甲C9の1)。 原告a6は,本人尋問において,姉を捜したのは,昭和20年8月7日,8日の2日間であると供述した(原告a6)。 原告a6は,本人尋問において,おう吐,脱毛があったと供述した(原告a6)。 被爆者健康手帳交付申請時に原告a6の母が記載したと思われる文書 には,「新興ゴムの工場へ勤めに出た娘h1の消息を確かめるため主人と共に電鉄本社まで行った」「8日も主人について日赤,富国ビル,浅野泉邸へ行った」と記載されている(乙C9の1・127頁)。 原告a6のの被爆者健康手帳交付申請書には,被爆したときや被爆してから6か月までの間に表れた症状として,「はらくだし」(下痢)と 発熱が挙げられている(乙C9の1・ 9の1・127頁)。 原告a6のの被爆者健康手帳交付申請書には,被爆したときや被爆してから6か月までの間に表れた症状として,「はらくだし」(下痢)と 発熱が挙げられている(乙C9の1・124頁)。 爆心地から約2.5km地点で直接被爆をした場合のDS02に基づく推定被曝線量は約0.0126グレイとなる(乙C9の10)。 原告a6は,平成19年(66歳時頃)に甲状腺機能低下症と指摘された(乙C9の11・1頁)。 原告a6の甲状腺機能低下症について,加齢を原因とする一般の症例 と比較して特異な点がない(乙B179,証人e2)。 イアの事情を前提に原告a6の供述の信用性を吟味すると,原告a6については,被爆当時,爆心地から約2.5km離れた自宅の外にいたこと,翌日には,爆心地から約1.6km辺りにまで接近したこと,翌々日には,爆心地から約0.5km辺りにまで接近したこと,下痢,発熱があったこ とは認められるものの,翌日に,爆心地から1km以内にまで接近したこと,おう吐,脱毛があったことは認め難いといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告a6は,被爆後,昭和20年8月7日,8日と市街地に入り,爆心地から0.5kmにまで立ち入っていると主張し,その旨の供述をしている(甲C9の2,3,原告a6)。 しかしながら,原告a6の現在の供述は,ア,のとおり,原告a6の被爆者健康手帳交付申請書の記載や訴訟提起後に作成された陳述書と矛盾するのみならず,同のとおり,その母の説明ともそごするので,信用することが難しいといわざるを得ない。 エ原告a6は,おう吐,脱毛があったと主張し,その旨の供述をするが, その同人の供述は,本人尋問になって初めて出たものであって,にわかに信用することができない。 ま といわざるを得ない。 エ原告a6は,おう吐,脱毛があったと主張し,その旨の供述をするが, その同人の供述は,本人尋問になって初めて出たものであって,にわかに信用することができない。 また,下痢,発熱についても,原告a6の供述によれば,下痢は,被爆後2,3日後から生じ,10日程度続いたというのであるから,放射線被曝による前駆症状とは考えにくい上,放射線被曝に特徴的なものは見当た らず,下痢,発熱自体は他原因も想定できるので,相当量の被曝線量であ ることの根拠としては認め難い。 オ原告a6は,入市により相当の被曝をした旨の主張をするが,今中論文では,昭和20年8月7日から同月13日まで爆心地から約0.5kmから1km地点において負傷者の救護や死体の処理に当たっていた賀北部隊工月中隊員でも,その被曝の程度が最大で約0.18グレイ(=19セン チグレイ-0.94センチグレイ)であると推定されていること(乙B7・152,153頁)や,DS02に基づく分析によると,袋町(爆心地から約0.5km)に原爆投下2日後以降に行った場合には約0.01グレイ以下,日本赤十字病院(爆心地から約1.5km)に原爆投下の翌日に行った場合には0.0001グレイ以下との計算結果があること(乙C9 の10)に照らすと,推定値としては0.1グレイ以上の被曝をしたとは認め難い。 カア及びイを前提にすれば,原告a6について,理論上,4グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,外傷,入市,下痢と発熱の事情を踏まえても,具体的にそれを認めるに足りないといわざるを 得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 キ仮に,4グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても を認めるに足りないといわざるを 得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 キ仮に,4グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,甲状腺機能低下症は加齢に伴い被曝によら なくとも発症するものであり,かつ,原告a6の甲状腺機能低下症の発症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるとはいえないため,原告a6の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a6の被爆後の症状を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得な い。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 クこれに対し,原告a6は,放射線の影響を受けやすい4歳時という幼少時に,爆心地から2.5kmの地点で被爆し,被爆の翌日,翌々日と市街地に入り,爆心地から0.5kmにまで立ち入っていること,被爆後2, 3日して下痢,発熱,おう吐,脱毛をしていることから,初期放射線の被曝に加え,残留放射線による外部被曝,内部被曝により相当量の被曝線量を受けていると考えられるので,放射線起因性が認められると主張し,その主張に沿うe1医師の意見書(甲B48,甲C9の4)及び証人e1の証言がある。 しかしながら,e1医師の意見書(甲B48,甲C9の4)及び証人e1の証言は被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,直ちに採用することができない。 ケ以上によれば,争点イ(甲状腺機能低下症の要医療性の有無)について,判断を要しない。 争点 ウ(脳梗塞後遺症の放射線起因性の有無)についてア末尾 ることができない。 ケ以上によれば,争点イ(甲状腺機能低下症の要医療性の有無)について,判断を要しない。 争点 ウ(脳梗塞後遺症の放射線起因性の有無)についてア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 脳梗塞は,臨床的に,①アテローム血栓性梗塞(主に太い主幹動脈のアテローム硬化を原因とするもの。),②心原性塞栓症(主に心臓由来の栓子飛来による太い主幹動脈の塞栓を原因とするもの。),③ラクナ梗塞 (主に穿通枝という微細な動脈の硬化を原因とするもの。)の病型に分けられる(乙B99)。 脳梗塞は,動脈硬化を主因とする循環器疾患の一つであるところ,心筋梗塞と同じく,加齢,喫煙,高血圧,高脂血症,糖尿病などが促進因子となり,生活習慣病の一つである(乙B79・130頁,乙B100・ 451頁)。 加齢については,厚生労働省平成26年患者調査によれば,脳梗塞の総患者数は,40歳から増加し,70歳代と80歳代が同程度でピークとなっている。同調査では,脳梗塞の全体の総患者数は,約86万人であるが,60歳代の総患者数は約14万人であり70歳代の次に多い年代であり,全体の総患者数の約6分の1に及ぶ。(乙B191) 喫煙については,我が国において,40ないし59歳の喫煙者46万1761例において脳卒中の発症を調査した結果,相対危険度は,男性では全脳卒中1.27(95%信頼区間1.05ないし1.54),脳梗塞1.66(同1.25ないし2.20)であったとする報告がある(乙B192・36頁)。 高血圧については,日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会編「脳卒中治療ガイドライン2015」には,高血圧が,脳出血と脳梗塞に共通の最大の危険因子とされ,血圧値と脳卒中発症率との関係は直線的 高血圧については,日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会編「脳卒中治療ガイドライン2015」には,高血圧が,脳出血と脳梗塞に共通の最大の危険因子とされ,血圧値と脳卒中発症率との関係は直線的な正の相関関係にあるとされている。一般的な降圧目標として140/90mmHg未満が強く推奨されており,特に糖尿病の合併がある場合に は130/80mmHg未満を目標とするのがよいとされている(乙B192・24,25頁)。もっとも,至適血圧(収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満)を超えて血圧が高くなるほど,脳卒中の罹患リスク及び死亡リスクが高くなるとされている(乙B193・7ないし11頁)。 脂質異常症(高脂血症)については,総コレステロール(TC)と脳卒中に関しては29のコホート研究を解析した結果が発表されており,総コレステロールが1mmol/L(38.7mg/dL)増えると,脳梗塞の発症が25%増加することが示されている(乙B192・29頁)。なお,総コレステロール値については,220mg/dL未満であ ることが基準値とされている(乙B194・35頁)。また,LDLコレ ステロール低下療法と脳卒中一次予防効果について報告された大規模臨床試験の結果において,LDLコレステロールが1mmol/L(38. 6mg/dL)低下すると,脳卒中発症が14ないし17%低下したとされている(乙B192・29,30頁)。なお,LDLコレステロール値については,140mg/dL未満であることが基準値とされている (乙B194・33ないし35頁)。さらに,TG(トリグリセリド。中性脂肪)についても,冠動脈疾患より弱い関連であるが,高TG血症(150mg/dL以上)が脳梗塞のリスクだとする報告も多いとされている B194・33ないし35頁)。さらに,TG(トリグリセリド。中性脂肪)についても,冠動脈疾患より弱い関連であるが,高TG血症(150mg/dL以上)が脳梗塞のリスクだとする報告も多いとされている(乙B194・33,36頁)。 肥満,高血糖,高コレステロール(脂質異常症),高血圧などのリスク が重積すると脳卒中リスクは増加し,これらが2個重積すると脳卒中リスクは約2.5倍高くなるとされている(乙B178・資料5・24頁図6)。 原告a6の脳梗塞の発症は,平成11年の58歳頃であった(乙C9の1・117,120頁)。 原告a6は,20歳頃(昭和36年頃),喫煙を開始し,その後,平成11年の脳梗塞発症まで,1日1箱から2箱のたばこを吸っていた(原告a6)。 原告a6は,平成9年頃,高血圧症と診断され,降圧薬を内服していた(乙C9の13・1頁,原告a6)。 原告a6は,平成9年9月1日及び平成10年3月9日,高脂血症と診断されていた。同人の平成9年9月1日の検査結果は,総コレステロール(TC)値は272mg/dL(基準値220mg/dL未満),中性脂肪(TG)値は471mg/dL(基準値150mg/dL未満)であり,平成10年3月9日の検査結果は,中性脂肪(TG)の値が2 28mg/dLと高値であった。(乙C9の14)。 平成11年8月9日の脳梗塞発症時の同人の血圧は,200/100mmHgであり,高血圧症と診断されていた(乙C9の13・2ないし5頁)。 UNSCEARの2006年(平成18年)度レポートには,脳梗塞と同じ動脈硬化を主因とする心筋梗塞について,1ないし2グレイ以下 の被曝線量においての致死的な心臓循環器疾患のリスクに関する明確な証拠は示されておらず,「現在ある科学的 レポートには,脳梗塞と同じ動脈硬化を主因とする心筋梗塞について,1ないし2グレイ以下 の被曝線量においての致死的な心臓循環器疾患のリスクに関する明確な証拠は示されておらず,「現在ある科学的データには一貫性のある疫学的データやもっともな生物学的メカニズムの説明がかけており,電離放射線と心血管疾患の因果関係を立証するには十分でない」,「放射線により循環器疾患が発生するリスクを評価しようとする際には,喫煙や,遺伝 子,コレステロール値をはじめとして,多数のリスク因子を考慮する必要がある」と結論付けられている(乙B86の1,2)。 平成23年4月に発表されたICRPステートメントでは「不確実性は残るものの,循環器疾患のしきい吸収線量は,心臓や脳に対しては,0.5グレイ程度まで低いかもしれないことを医療従事者は認識させら れなければならない」として,循環器疾患のしきい値が0.5グレイ程度まで低い可能性があることが指摘されている(乙B188の1,2)。 イ及びアの事情を前提にすれば,原告a6について,理論上,心筋梗塞で問題とされる0.5グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,外傷や入市,発熱や下痢の存在を踏まえても,具体的にも それを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 ウ仮に,0.5グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,脳梗塞は被曝によらなくとも生活習 慣により発症するものであり,かつ,原告a6の脳梗塞の発症については, 放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるともいえないため,原告a6の供述する別紙「被爆実態一覧」 慣により発症するものであり,かつ,原告a6の脳梗塞の発症については, 放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるともいえないため,原告a6の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a6の被爆後の症状を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性 は認められない。 エこれに対し,原告a6は,心血管疾患の発症と放射線との影響については,0.5ミリシーベルト以下の低線量でも認められる旨の主張をし,その根拠として,5エと同様の証拠を挙げる。 しかしながら,いずれもICRPのステートメントと比較すれば,信頼 性が劣るものといわざるを得ない。 オ原告a6は,加齢など被告が主張する危険因子は,種々の調査結果に織り込み済みであり,それらの危険因子によって放射線起因性は否定されない,むしろ,高血圧や高脂血症及び炎症に放射線被曝が関与している旨の主張をし,その根拠として,5エと同様の証拠を挙げる。 しかしながら,既に述べたとおりであり,原告a6の主張は採用できない。 カまた,原告a6の主張に沿うe1医師の意見書(甲C9の4)及び証人e1の証言は,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,採用することができない。 キ以上によれば,争点エ(脳梗塞後遺症の要医療性の有無)について判断を要しない。 7 争点ア(原告a9の甲状腺機能低下症の放射線起因性の有無)について末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 ア原告a9は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,爆 心地から,約2.8kmないし3.0k 射線起因性の有無)について末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 ア原告a9は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,爆 心地から,約2.8kmないし3.0kmに位置する広島市東雲町の自宅 (木造平屋建物)内にいた。原告a9は,当時10歳であった。(乙C14の1・87頁,乙C14の20,原告a9)。 イ原告a9の昭和32年6月8日付けの被爆者健康手帳交付申請書には,背部にガラス破片にて軽傷を受けた旨の記載がある(乙C14の1・92頁)。 ウ原告a9は,本件申請に係る平成19年10月30日受付の原爆症認定申請書及び平成22年4月15日付け異議申立書には,入市について記載がなかった(乙C14の1・87頁,乙C14の7)。 エ原告a9のウの原爆症認定申請書には,背中にすだれ(竹)が4,5本刺さり,完治するのに3か月程度かかった旨の記載がある(乙C14の1・ 87頁)。 オ原告a9は,昭和30年2月10日に実施されたABCCによる被爆実態調査の際,自ら発熱及び脱毛はなかった旨の回答をした(乙C14の20)。 カ原告a9は,平成14年以降平成22年までの間,被爆者健康診断の際, 脱毛及び発熱はなかった旨の回答をした(乙C14の23,24)。 キ爆心地から3.0km地点の木造建物内で被爆したことを前提として,その被曝線量をDS02を用いて推計計算した場合,約0.001596グレイとなる(乙C14の17)。 ク原告a9は,昭和58年6月25日(48歳時),広島大学病院において, 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に対する放射線治療(アイソトープ治療)として,放射性ヨード131の投与を受けている(乙B179,乙C14の18,証人e2)。 ケ甲状腺機能亢進症のアイソ 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)に対する放射線治療(アイソトープ治療)として,放射性ヨード131の投与を受けている(乙B179,乙C14の18,証人e2)。 ケ甲状腺機能亢進症のアイソトープ治療後に甲状腺機能低下症を来す発症率が,5年後には9.4%,10年後には18%,12年後には26%に なるという報告がある(乙B179,証人e2)。 コ原告a9は,64歳又は67歳頃に,甲状腺機能低下症を発症した可能性がある(乙B179,乙C14の1・87頁)。 サ原告a9の甲状腺機能低下症については,甲状腺機能亢進症のための放射線治療に続発して医原性の甲状腺機能低下症が発症したものと考えられるとする医師の意見がある(乙B179,証人e2)。 及び原告a9の供述によれば,原告a9について,被爆当時,爆心地から約2.8kmから3.0kmに位置する自宅内にいたことは認められるものの,その後,入市したことや,急性症状があったことは認められない。 これに対し,原告a9は,本件申請に係る原爆症認定申請書の記載にかかわらず,入市したと主張し,その旨の供述をする。また,同申請書に記載し なかった理由として,入市の事実が重要であるとは知らなかったためであると主張し,その旨の供述をする。(甲C14,14の2,14の3,原告a9)しかしながら,原告a9が入市の主張を始めたのは,本訴提起後の平成25年新方針が始まった後のことであって,その供述の経過に照らすと,入市に関する原告a9の供述を直ちに信用することができず,認めることができ ない。 原告a9は,ABCCによる調査の回答にかかわらず,発熱,脱毛の急性症状があった旨の主張をし,その旨の供述をする(甲C14,14の2,14の3,原告a9)。また,回答に記載しな ない。 原告a9は,ABCCによる調査の回答にかかわらず,発熱,脱毛の急性症状があった旨の主張をし,その旨の供述をする(甲C14,14の2,14の3,原告a9)。また,回答に記載しなかった理由として,真実を記載するためらいを覚えた趣旨の主張をする。 しかしながら,のとおり,急性症状に関する原告a9の供述の変遷に照らすと,信用性が低下することは免れず,信用するに足りないといわざるを得ない。 及びを前提にすれば,原告a9については,理論上,4グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,外傷の存在を踏まえて も,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 仮に,4グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,甲状腺機能低下症は被曝によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a9の甲状腺機能低下症の発症については,放 射線治療が原因とうかがわれ,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるとはいえないため,原告a9の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a9の被爆後の症状を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 原告a9は,甲状腺機能亢進症自体に,放射線の影響が考えられるため,甲状腺機能亢進症の存在をもって,放射線起因性を否定できない旨の主張をし,その主張に沿うe1医師の意見書(甲B48)を挙げる。 しかしながら,甲状腺機能亢進症と放射線被曝との関連性 るため,甲状腺機能亢進症の存在をもって,放射線起因性を否定できない旨の主張をし,その主張に沿うe1医師の意見書(甲B48)を挙げる。 しかしながら,甲状腺機能亢進症と放射線被曝との関連性が明らかではない上,原告a9の甲状腺機能亢進症自体に放射線起因性が認められないので採用できない。 また,原告a9について放射線起因性があるとするe1医師の意見書(甲C14の7)及び証人e1の証言については,被爆状況や一般的科学的知見, 因果関係の考え方の前提を異にするので,採用することができない。 以上によれば,争点イ(原告a9の甲状腺機能低下症の要医療性の有無)について判断を要しない。 8 争点(原告a10)について 争点 ア(高血圧症の放射線起因性の有無)について ア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a10は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,爆心地から約2.3kmの地点にある広島市愛宕町の同原告の母の実家にいた。当時,原告a10は1歳であった。(甲C15,原告a10)原告a10の昭和43年4月1日付け被爆者健康手帳交付申請書には,原告a10の被爆後の身体症状についての記載はない(乙C15の1・ 334頁)。 原告a10は,被爆当時の記憶はない(原告a10)。 爆心地から約2.3km地点で直接被爆をした場合のDS02に基づく推定被曝線量は約0.01778グレイとなる(乙C15の30)。 原告a10は,昭和49年頃(30歳時頃)から検診で高血圧を指摘 された(乙C15の38)。この頃の血圧は,収縮期血圧で160mmHg程度であり,Ⅱ度高血圧の状態であった(乙C15の39・1,8頁)。 原告a10は,昭和60年及び昭和63年,高血圧と診断 された(乙C15の38)。この頃の血圧は,収縮期血圧で160mmHg程度であり,Ⅱ度高血圧の状態であった(乙C15の39・1,8頁)。 原告a10は,昭和60年及び昭和63年,高血圧と診断された(乙C15の1・326,329頁)。 具体的には,昭和62年12月頃には,収縮期血圧が180ないし1 90mmHg,拡張期血圧が120ないし130mmHgであり,同月23日の血圧は,224/132mmHg,昭和63年1月4日の血圧は,208/108mmHgであった(乙C15の39・8頁)。 原告a10は,昭和63年2月5日の広島大学医学部附属病院の退院時には,退院報告で,「食塩の増減によって血圧の変動を見たところそれ ぞれ常塩→減塩→増塩にて138/93,131/80,158/98,平均血圧108,97,118となり食塩感受性のEHT(本態性高血圧)と診断いたしました」と報告された。当時の体重は,身長157cm,体重70kgであり,食塩の制限が血圧を低く保つために必要であるとされ,肥満があるため,体重を減らすことも重要であるとされてい る。その後も脳内出血発症に至るまで高血圧のコントロールは不良であ った。(乙C15の39・1,7ないし9,13頁)原告a10は,昭和63年5月頃より,血圧コントロール不良(180ないし220/100ないし140mmHg)となり,入院を勧められたが,自己都合により入院をしなかった。その後,同年12月26日,広島大学医学部附属病院に入院したが,その際,31%肥満があるため, カロリー制限及び減塩をしたところ,入院時の血圧200ないし220/110ないし140mmHgが徐々に低下し,160ないし180/100ないし110mmHgと,優位な血圧降下が認められたため,カルシウム拮 制限及び減塩をしたところ,入院時の血圧200ないし220/110ないし140mmHgが徐々に低下し,160ないし180/100ないし110mmHgと,優位な血圧降下が認められたため,カルシウム拮抗薬を投与し,さらに高血圧をコントロールし,血圧が130ないし140/90ないし100mmHgで落ち着いたため,平成元 年2月1日退院となった。(乙C15の39・24,29,31頁)原告a10は,その後も,平成元年8月,平成2年,平成4年,平成6年と高血圧の加療目的で入退院を繰り返しており,上記各入院に際しては,主に食事制限と投薬により血圧が落ち着き,退院となっている(乙C15の39・31,46,73及び85頁)。 原告a10の平成9年10月1日(当時53歳)のクレアチニン値(慢性腎臓病(CKD)の罹患の有無に利用される値で,CKDは,腎臓に何らかの異常所見が見いだされるか,糸球体濾過量(GFR)が60mL/分/1.73㎡未満の腎機能が3か月以上持続するものと定義される。)は0.75mg/dL(正常値0.46ないし0.67mg/dL) と異常値であり,総コレステロール値も253mg/dL(正常値150ないし230mg/dL)と異常値であった(乙B192・44頁,乙C15の39・107頁)。 原告a10は,平成10年4月27日,左半身麻痺で広島大学医学部附属病院に入院し,脳出血と診断された。当時の血圧は,220/11 0mmHgであった。(乙C15の38) 平成11年3月17日(当時54歳)の血液検査の結果,クレアチニン値は0.76mg/dLと異常値であった。また,同日の血圧は,176/104mmHgであり,同年11月以外は,いずれも収縮期血圧140mmHgを超えており,特に,同年4月,5月,7月,9 レアチニン値は0.76mg/dLと異常値であった。また,同日の血圧は,176/104mmHgであり,同年11月以外は,いずれも収縮期血圧140mmHgを超えており,特に,同年4月,5月,7月,9月は収縮期血圧が160mmHg以上であり,Ⅱ度高血圧の状態であった。(乙 C15の39・117ないし119頁)原告a10は,平成12年も,毎月1回,外来受診して血圧を測定していたところ,同年1月,5月,7月,10月以外は,いずれも収縮期血圧が140mmHgを超えており,このうち同年8月以外は,いずれも収縮期血圧が160mmHg以上であり,Ⅱ度高血圧の状態であった。 なお,同年10月17日には210/110mmHgであった。また,同年3月15日(当時55歳)の血液検査の結果,クレアチニン値は0. 83mg/dLと異常値であり,eGFR(推定GFRといい,日常診療では,GFRを評価するため,血清クレアチニン(Cr)と,年齢,性別により,成人では日本人のGFR推算式を用いて計算される。)は5 5.7であり,腎臓機能が軽度ないし中等度低下の状態であった。さらに,総コレステロール値(T-cho)は237mg/dL(基準値150ないし230mg/dL)と異常値であった。(乙C15の39・120ないし124頁及び弁論の全趣旨)平成15年8月27日(当時59歳)の検査の結果,原告a10のク レアチニン値は0.79mg/dLと異常値であり,eGFRは59. 2であり,腎臓機能は軽度ないし中等度低下の状態であった。その後の検査においても,平成17年1月までの検査においては,クレアチニン値は一貫して異常値を示していた。(乙C15の39・137頁)平成17年1月18日の検査の結果,原告a10のクレアチニン値は 0.79 17年1月までの検査においては,クレアチニン値は一貫して異常値を示していた。(乙C15の39・137頁)平成17年1月18日の検査の結果,原告a10のクレアチニン値は 0.79mg/dLと異常値であり,eGFRは57.3であり,腎臓 機能が軽度ないし中等度低下の状態であった。また,総コレステロール値は232mg/dLであり,異常値であった。(乙C15の39・138,139頁)原告a10は,平成18年4月21日(当時61歳),脳のMRI検査により慢性虚血が推測され,平成19年4月9日,ラクナ梗塞が認めら れた(乙C15の40)。 原発性アルドステロン症とは,副腎の腫瘍や両側の副腎全体が肥大する過形成により,ホルモンの一種であるアルドステロンが過剰に分泌され,これが腎尿細管に作用することによって高血圧を生じさせる疾患である。内分泌疾患である原発性アルドステロン症による高血圧は二次性 高血圧症と位置付けられる。(乙C15の21)原告a10は,平成17年1月頃及び平成20年1月に,原発性アルドステロン症と診断されたとの記載がある(乙C15の12・355頁,乙C15の39・138頁)。 イアの事情を前提に原告a10の供述の信用性を吟味すると,原告a10 については,被爆当時,爆心地から約2.3km離れた母の実家にいたことは認められるものの,その後,入市したことも,急性症状が生じたことも認め難いといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告a10は,被爆後に母に負われて屋外に出て,残留放射線,放射性降下物(「黒い雨」を含む。)や内部被曝の影響がある生活を していた旨の主張をし,その旨の供述をする(甲C15,原告a10)。 しかしながら,これを認めるに足りる証拠がないというほかなく,入市 下物(「黒い雨」を含む。)や内部被曝の影響がある生活を していた旨の主張をし,その旨の供述をする(甲C15,原告a10)。 しかしながら,これを認めるに足りる証拠がないというほかなく,入市の事実は認められず,自宅で生活をしていた限度でしか認定できないので,相当量の被曝の事実を認めることができない。 エ原告a10は,下痢や発熱があった旨の主張をし,その旨の供述をする が,原告a10の被爆者健康手帳交付申請書には記載がなく,かつ,原告 a10の供述も母からの伝聞にとどまるから,信用するに足りない。 オ高血圧と放射線量の関係に関する原告a10の主張が採用できないことは,5エで述べたとおりである。 カア及びオの事情を前提にすれば,原告a10の高血圧症については,二次性高血圧症であれば,内分泌疾患である原発性アルドステロン症を原因 として,又は,食塩感受性の本態性高血圧症であれば,原告a10の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a10の被爆後の症状に照らしても,生活習慣を原因として発症したのではないかとの疑いが残るといわざるを得ない。 したがって,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性 は認められない。 キこれに対し,原告a10は,被爆距離は約2.3km,被爆時に居住していた家屋は窓ガラスが散乱していたという状況に照らせば多量の放射線に被曝していることが推認され,被爆後も母に負われて屋外に出て,残留放射線,放射性降下物や内部被曝の影響がある生活をしており,下痢や発 熱といった急性症状と思われる症状を呈したことや,当時僅か1歳という放射線感受性が非常に強い年齢で被爆していることからすれば,放射線起因性が認められると主張し,その主張に沿うe1医師の意見書(甲C15の10)や証人e1の れる症状を呈したことや,当時僅か1歳という放射線感受性が非常に強い年齢で被爆していることからすれば,放射線起因性が認められると主張し,その主張に沿うe1医師の意見書(甲C15の10)や証人e1の証言がある。 しかしながら,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提 を異にするので,同人の意見書及び証言の内容を採用することができない。 ク以上によれば,争点イ(高血圧症の要医療性の有無)について,判断を要しない。 争点 ウ(脳内出血後遺症及び脳梗塞の放射線起因性の有無)について脳内出血後遺症とは,脳出血によって起こされたもろもろの後遺症状と解 されるため,以下では脳出血について検討する。 ア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 脳出血は,脳卒中の一病型であり,脳実質内で動脈が破綻して出血を来したもので,出血により形成された血腫(血の塊)が周辺組織を圧迫することにより様々な局所症状(神経症状等)がみられる(乙B99・1982頁,乙C15の25,乙C15の26・258頁)。 脳出血も脳梗塞も最大の危険因子は高血圧であることが知られている(乙C15の27・21頁)。 脳出血の背景には動脈硬化があるとされている(乙C15の26・258頁)。 脳梗塞の危険因子としては,CKD(慢性腎臓病)が挙げられる。C KDは,腎臓に何らかの異常所見が見いだされるか,糸球体濾過量(GFR。血清クレアチニンと,年齢,性別により計算される。)が60mL/分/1.73㎡未満の腎機能が3か月以上持続するものと定義されているところ,日本人の健診者9万1414例以上を10年間観察したコホート研究によれば,GFR60mL/分/1.73㎡未満の心血管疾 患のリスクはそれ以上と比較して,脳卒中で るものと定義されているところ,日本人の健診者9万1414例以上を10年間観察したコホート研究によれば,GFR60mL/分/1.73㎡未満の心血管疾 患のリスクはそれ以上と比較して,脳卒中で男性1.98倍,女性1. 85倍と報告されている。また,脳卒中病型別にCKDの寄与を検討した我が国の報告として,一般住民1万2222例を17年間追跡した検討で,CKDは男性で1.63倍,女性で1.51倍脳卒中リスクを高め,特に男性では脳出血,女性では脳梗塞の有意なリスク因子であった とするものがある。(乙B192・44頁,乙B195)原告a10は,平成9年10月1日における検査以降,クレアチニン値が異常値を示し,平成12年3月15日時点では,腎臓機能が軽度ないし中等度低下の状態であり,平成15年8月27日及び平成16年2月9日の2時点においていずれもeGFRが60を下回っていたので, CKDであったと診断できる(乙C15の39・107,120ないし 124,137頁)。 原告a10は,平成10年4月27日(当時54歳),脳出血と診断されている(乙C15の1・328頁)。 原告a10の平成18年4月21日付けの健康診断個人票には「多発性脳梗塞」の記載がある。当時,原告a10は62歳である。(乙C15 の1・330頁)原告a10の平成19年9月25日の検査データには,総コレステロールが254mg/dLと高値を示していた(乙C15の12・372頁)。 イ及びアの事情を前提にすれば,原告a10について,理論上,心筋梗 塞で問題とされる0.5グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くこと 塞で問題とされる0.5グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 ウ仮に,0.5グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,ある いは,しきい値がなかったとしても,脳出血及び脳梗塞は,加齢,高血圧,脂質異常症及びCKDにより,被曝によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a10の脳出血や脳梗塞の発症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるともいえないため,原告a10の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a10の被爆 後の症状を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 エこれに対し,原告a10は,脳出血や脳梗塞も,心筋梗塞と同様,LS S(寿命調査)第9報第2部,同第11報第3部,同第12報第2部,同 第13報,同第14報等によって,疫学的知見が集積されていることや,これらの知見を含めた各種知見を総合し,改定後の新審査の方針は,「放射線起因性が認められる心筋梗塞」を積極認定対象疾病とし,再改定後の新審査の方針も「心筋梗塞」を積極認定対象疾病としているところ,脳梗塞や脳出血は,循環器疾患であるという点において心筋梗塞と共通すること も併せ考慮すれば,脳梗塞及び脳出血は,一般的に放射線被曝との関連性が認められる疾病というべきであると主張する。 しかしながら,この点の知見については,平成23年4月に発表されたICRPステートメント(乙B188の1,2)の 脳出血は,一般的に放射線被曝との関連性が認められる疾病というべきであると主張する。 しかしながら,この点の知見については,平成23年4月に発表されたICRPステートメント(乙B188の1,2)の限度で認定できるにとどまるといわざるを得ない。 オ原告a10は,被爆者,特に若年被爆者では,脳出血や脳梗塞の「危険因子」とされる高血圧,高脂血症自体が増加するとされるのであるから,高血圧症であることは放射線起因性を否定する理由にはならず,高血圧症には本態性や様々な二次性高血圧症が含まれるところ,高血圧症の放射線起因性に関する調査検討は,特定の高血圧症を対象にしたり除外したりし てなされているものではなく,「高血圧」というくくりでなされているから,そのことによって,放射線起因性が否定されるものではないと主張する。 しかしながら,5エで述べたとおりであり,放射線と高血圧症,高脂血症との間の関連性は,いまだ一般的に認められているものとはいえない。 さらに,仮に何らかの関連性があるとしても,生活習慣や加齢と比較して 有意な関連性があるとまではいえない。 したがって,被告の反証を覆すに足りるものではない。 カ原告a10の主張に沿うe1医師の意見書(甲C15の10)及び証人e1の証言は,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,採用することができない。 キ以上によれば,争点エ(脳内出血後遺症及び脳梗塞の要医療性の有無) について,判断を要しない。 争点 オ(貧血の有無)についてア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a10の本件申請に係る平成18年11月9日付けの認定申請書に添付された広島大学病院のc2医師の意見書には,「昭和63年初診時 頃から,軽 掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a10の本件申請に係る平成18年11月9日付けの認定申請書に添付された広島大学病院のc2医師の意見書には,「昭和63年初診時 頃から,軽度の貧血を認めていたが,平成4年7月Hgb7.7g/dl,Hct24.5%と低下を認めたため,入院により鉄剤投与を行った。それによりHgb10g/dl前後まで改善したが,以後も少なくとも平成6年までは鉄剤の内服を継続した。現在は,Hgb11.6g/dlと軽度低値ではあるが,鉄剤内服なしに維持出来ている」との記 載がある(乙C15の1・329頁)。 上記診断根拠となる血液検査の結果には,ヘモグロビンの値は正常値が記載されてあった(乙C15の1・342,345頁)。 イアによれば,貧血の診断根拠は十分ではないといわざるを得ず,e1医師の意見書(甲C15の10)の記載をもっても,貧血を認めることがで きない。 ウ以上によれば,争点カ(貧血の放射線起因性の有無),同キ(貧血の要医療性の有無)について,判断を要しない。 争点 ク(甲状腺機能低下症の放射線起因性の有無)についてア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a10は,平成19年9月25日(当時63歳),広島赤十字・原爆病院において,血液検査を受けたところ,T4が低値,TSHが軽度高値と評価され,チラーヂンSの投与を開始することとされた(乙C15の12・372頁,乙C15の36)。 原告a10は,平成19年10月2日,上記病院において,血液検査 を受けたところ,TSHが軽度高値であった(乙C15の12・357 頁)。 原告a10は,チラーヂンS50μg/日の処方を受けるようになった後,平成22年3月23日,上記病院 血液検査 を受けたところ,TSHが軽度高値であった(乙C15の12・357 頁)。 原告a10は,チラーヂンS50μg/日の処方を受けるようになった後,平成22年3月23日,上記病院において,血液検査を受けたところ,TSHが異常低値であった(乙C15の12・370,371頁)。 原告a10は,平成20年12月25日,本件申請をしたが,その際 には,上記血液検査の結果から,潜在性甲状腺機能障害の状態であったとする意見がある(乙B179,証人e2)。 イ及びアを前提にすれば,原告a10について,理論上,4グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,具体的にそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 ウ仮に,4グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,甲状腺機能低下症は加齢に伴い被曝によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a10の甲状腺機能低下症の発 症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるとはいえないため,原告a10の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a10の被爆後の症状を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 エもっとも,原告a10は,潜在性甲状腺機能低下症であったことを裏付ける証拠はなく,潜在性甲状腺機能低下症であるとする証人e2の証言は信用できないと反論し,その主張に沿うe1医師の意見書(甲B48)が ある。 この点,原告a1 低下症であったことを裏付ける証拠はなく,潜在性甲状腺機能低下症であるとする証人e2の証言は信用できないと反論し,その主張に沿うe1医師の意見書(甲B48)が ある。 この点,原告a10が,潜在性甲状腺機能低下症ではなかったとしても結論は変わらない。 オ原告a10は,甲状腺機能低下症を発症しやすい女性であることや臨床経過が一般的な甲状腺機能低下症と比較して特異な点がないとしても,放射線起因性の消極的事情とはならない旨の反論をする。 しかしながら,放射線以外の原因が存在する蓋然性の有無は,相当因果関係の判断に影響を与えるものというほかなく,その意味で,放射線起因性の消極的事情といえるから,原告a10の主張は採用できない。 カまた,この点に関する原告a10の主張に沿うe1医師の意見書(甲C15の10)及び証人e1の証言は,被爆状況や一般的科学的知見,因果 関係の考え方の前提を異にするので,採用することができない。 キ以上によれば,争点ケ(甲状腺機能低下症の要医療性の有無)について,判断を要しない。 9 争点ア(原告a12の心筋梗塞の放射線起因性の有無)について一般的な心筋梗塞の知見について ア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 心筋梗塞とは,冠動脈が何らかの原因で閉塞して心筋への血液供給が阻害され,その結果,心筋細胞が酸素不足(虚血)に陥り壊死を来す疾患であり,虚血性心疾患の一つと位置付けられる。その病因の90%以上が冠動脈硬化症に起因するとされる。(乙B73,74・497頁,乙 B75・450頁)動脈硬化を促進する因子としては,高血圧症,高脂血症,糖尿病,喫煙,過剰な飲酒,脂肪分,糖分の過剰摂取,運動不足,肥満,ストレス,遺伝,加齢等が挙げられている 7頁,乙 B75・450頁)動脈硬化を促進する因子としては,高血圧症,高脂血症,糖尿病,喫煙,過剰な飲酒,脂肪分,糖分の過剰摂取,運動不足,肥満,ストレス,遺伝,加齢等が挙げられている(乙B74・497,596頁,乙B76・757頁,乙B77・215,216頁,乙B79・130,13 1頁,乙B80)。 心筋梗塞は,喫煙,高血圧症,高脂血症,糖尿病等を危険因子とし,これらの危険因子が重なるにつれてリスクの程度が増加することが明らかになっている疾病である(乙B76ないし83)。 1日の喫煙本数に応じて冠動脈疾患の危険度が高まるとする知見がある。例えば,MRFIT試験では,1日1ないし25本喫煙した場合の 相対危険率は2.1,25本以上では2.9とされている。また,日本人を対象とした研究においても,喫煙者での虚血性心疾患の相対危険率は非喫煙者に比し,男性1.73,女性1.90との結果が示されている。このほか,我が国で行われた大規模臨床介入試験であるJ-LITの一次予防コホートにおいても,喫煙習慣は有意に相対危険度が高く, 非喫煙者に比して冠動脈イベント発症リスクは1.6倍高かったとの報告がある。(乙B178・資料3・27頁)脂質異常症(高脂血症)については,最近の日本人を対象にした疫学研究CIRCSの結果によると,LDLコレステロール値80mg/dl未満の群に対し,同80ないし99mg/dlの群では冠動脈疾患の 発症が1.35倍,同100ないし119mg/dlの群では1.66倍,同120ないし139mg/dlの群では2.15倍,同140mg/dl以上の群では2.8倍となることが示されている(乙B178・資料3・12頁)。また,心筋梗塞又は狭心症を発症した時点を観察終了時点とした前向き調査では g/dlの群では2.15倍,同140mg/dl以上の群では2.8倍となることが示されている(乙B178・資料3・12頁)。また,心筋梗塞又は狭心症を発症した時点を観察終了時点とした前向き調査では,トリグリセリド値が150mg/dl以上 で3.7倍の冠動脈疾患発症がみられ,トリグリセリド値が150mg/dlを超えると冠動脈疾患発症率の急激な増加が認められた研究結果がある(乙B178・資料3・13,14頁)。 心筋梗塞の危険因子としての加齢は,男性は45歳以上とされており,急性心筋梗塞の発症は50歳代より増加がみられている。虚血性心疾患 全体では,高齢者の発症が圧倒的に多く,70歳代で発症率がピークと なっている。(乙B178・資料3・45頁,資料4)平成22年における日本人男性を世代別にみた場合の有病率の割合は,高血圧症では50歳代が57.8%,60歳代が64.4%,70歳代が80.6%であり,脂質異常症が疑われる者の割合は,50歳代が20.1%,60歳代が25.5%,70歳代が27.6%である(厚生 労働省の「平成22年国民健康・栄養調査結果の概要」(乙B237))。 肥満については,日本人のBMIに関する研究では,BMIが24ないし27.9の区分(中央値27)では,高血圧,低HDLコレステロール血症,高トリグリセリド血症に関するオッズ比が2を超えることが示されている(乙B178・資料3・23頁)。 糖尿病については,我が国で行われた前向き研究の一つである久山町研究では,糖負荷試験で耐糖能を評価した2427人を5年間追跡し,年齢と性を調整しても糖尿病患者での初回虚血性心疾患発症率は5.0/1000人年で,健常者の発症率1.6/1000人年に比し有意に高率である。また,糖尿病という診断に至る前の耐糖能 を5年間追跡し,年齢と性を調整しても糖尿病患者での初回虚血性心疾患発症率は5.0/1000人年で,健常者の発症率1.6/1000人年に比し有意に高率である。また,糖尿病という診断に至る前の耐糖能異常者について は,久山町研究では,正常耐糖能者の1.9倍と有意に高いとの報告がある。(乙B178・資料3・21,23頁)冠動脈疾患の危険因子が重積すると,死亡危険度が加速度的に高くなるとされ,肥満,高血糖,高コレステロール,高血圧などのリスクが3,4個重積すると,心筋梗塞の相対危険度はリスクのない人に比して8倍 高くなり,1,2個の重積でも約3倍高くなるという知見がある(乙B178・資料5・24頁図6,25頁)。 UNSCEARは,2006年度のレポートで,放射線とがん以外の様々な疾病の関連性を詳細に検討した結果において,低線量被曝(1ないし2グレイ以下)における電離放射線と心血管疾患の因果関係につい ては,「1-2Gy(グレイ)以下の被曝線量においての致死的な心臓循 環器疾患(心筋梗塞が該当する。)のリスクに関する明確な証拠は示されていない」「現在ある科学的データには一貫性のある疫学的データやもっともな生物学的メカニズムの説明がかけており,電離放射線と心血管疾患の因果関係を立証するには十分でないと委員会は判断している。さらに,そのような結果(心血管疾患の発症)についての適切なリスクモデ ルを構築するための疫学的データも十分でない。」「1-2Gy以下の被曝線量に関連するリスクにおいて,相対的に小さいリスクの増加があることはわかったが,死亡率のみの疫学的調査が循環器疾患と1-2Gy以下の線量の放射線被曝との関連の可能性や特性を解明するために寄与するかどうかは定かではない。」とされている(乙B86の1,2)。 ることはわかったが,死亡率のみの疫学的調査が循環器疾患と1-2Gy以下の線量の放射線被曝との関連の可能性や特性を解明するために寄与するかどうかは定かではない。」とされている(乙B86の1,2)。 UNSCEAR2010年報告書においては,「放射線被ばくに関連した致死的な心血管疾患の過剰リスクを示す唯一の明確な証拠は,心臓への線量が約1-2Gy未満では,原爆被爆者のデータから得られている。 本委員会によってレビューされたその他の研究では,もっと高い線量で心血管疾患過剰についての証拠を示している。」「本委員会のレビューは, 約1-2Gy未満の線量の被ばくと心血管疾患およびその他の非がん疾患の過剰発生との間の直接的な因果関係についての結論を下すことは出来なかった。」と結論付けられている(乙B142・16頁)。 ICRP2012年勧告(ICRP刊行物118)において,「0.5Gy(グレイ)以下の線量域における,いかなる重症度や種類の循環器 疾患リスクも,依然として不確実であることが強調されるべきである。」とされている(乙B238の1,2)。 また,これには,「本報告書の所見で,『実質的な』しきい線量という用語を,特定の観察可能な影響が放射線に被曝した個人のうち1%だけに現れるために必要な放射線の量と定義した。循環器疾患の場合は,ほ とんどの先進国における30-50%という高い自然ベースライン死亡 率であることから,その病因を放射線被曝とその他に区別するのは,困難である。さらに,それ以下なら循環器疾患のリスクが増加しないという線量が存在するかどうか,また存在する場合は,その線量はいくつなのか,という点が不明である。それでもなお,疫学的な知見に基づいて,被曝した個人のうち1%に循環器疾患を誘発した可能性の 加しないという線量が存在するかどうか,また存在する場合は,その線量はいくつなのか,という点が不明である。それでもなお,疫学的な知見に基づいて,被曝した個人のうち1%に循環器疾患を誘発した可能性のある線量の大 きさを推定することは可能である。」「全体として,ここで概説した仮説に従えば,約0.5Gyの線量により,約1%の被曝した個人に循環器疾患が発症するという結果をもたらす可能性がある。」との記載がある(乙B240)。 イこれに対し,原告a12は,0.5グレイ以下の低線量被曝においても, 放射線被曝と心筋梗塞との間で関連性が認められると主張し,その根拠として,5エで挙げた証拠のほか,LSS(寿命調査)第9報(甲B8の18),AHS(成人健康調査)第8報(乙B183),赤星正純の「長崎原爆被爆者における放射線の脂肪肝および虚血性心疾患危険因子に及ぼす影響」(乙B216・文献6),e1医師らの意見書(甲B46)を提出す る。 しかしながら,これらを根拠にした原告a12の主張に関しては,赤星正純,清水由紀子及び井上典子らの反対意見書(乙B216)があることに加え,これらの意見によっても,いまだ,0.5グレイ以下の低線量被曝において,放射線被曝と心筋梗塞との間の関連性が一般的な科学的知見 として認められているとまでは認めるに足りない。 原告a12の放射線被曝量と心筋梗塞の発症因子についてア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a12は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,爆心地から20km以上離れた広島県賀茂郡原村(以下「原村」という。) にいた。当時,原告a12は7歳であった。(第3事件甲C16の1,原 告a12)原告a12の平成元年7月14日付 爆心地から20km以上離れた広島県賀茂郡原村(以下「原村」という。) にいた。当時,原告a12は7歳であった。(第3事件甲C16の1,原 告a12)原告a12の平成元年7月14日付け被爆者健康手帳交付申請書及び同申請に関する審査資料には,原告a12は,原爆投下6日後の昭和20年8月12日,広島市内に住んでいた家族の安否等を確認するため,兄i1及び姉i2とともに,原村を出発し,徒歩で広島市内に向かい, 同日午後5時頃に同市猿猴橋町(爆心地から約1.8km地点)にある信用金庫又は銀行内で,父i3及び姉i4らと会い,その後,同市牛田町(爆心地から約2.5km地点)の知人宅に宿泊したこと,同月13日には,姉i2とともに,同人の同級生に会うため,広島市宇品町(当時)にある広島県立広島第二高等女学校(爆心地から約3.3km地点) を訪れたこと,同日夜には,銀行に泊まったこと,同月14日は,兄i1,姉i4及び姉i2とともに,疎開先に戻ったことが記載されている(第3事件乙C1の1・158,161,162,168ないし172頁)。 兄i1は,昭和32年に実施されたABCCによる被爆状況調査に際 して,原爆投下後,原告a12に発熱や下痢等の症状はなかったと回答している(乙C16の13)。 原告a12は,平成元年7月14日付け被爆者健康手帳交付申請書に,下痢や発熱といった選択肢があるにもかかわらず,「なにもなかった」を選択している(第3事件乙C1の1・159頁)。 原告a12は,本人尋問において,初めて,脱毛があった旨の供述をした(原告a12)。 爆心地から20km以遠においては,初期放射線による影響は0.005グレイを大幅に下回る(乙B200)。 原告a12は,70歳頃まで約50年間にわたり,1 った旨の供述をした(原告a12)。 爆心地から20km以遠においては,初期放射線による影響は0.005グレイを大幅に下回る(乙B200)。 原告a12は,70歳頃まで約50年間にわたり,1日20ないし3 0本の喫煙を継続していたところ,55歳のときに心筋梗塞を発症した (乙C16の11)。 原告a12は,平成5年4月21日の血液検査において,高LDLコレステロール(248mg/dl),低HDLコレステロール(32mg/dl),高中性脂肪(238mg/dl)が確認され,脂質異常症の治療のため投薬を受けるようになった(乙B178,乙C16の11・6 9,70頁,証人e6)。 原告a12は,平成5年2月27日,55歳で心筋梗塞を発症した(乙B178,乙C16の11・1,3頁,証人e6)。 原告a12の心筋梗塞については,動脈硬化との関連が強い喫煙,高LDLコレステロール血症という複数の危険因子の重積により発症した ものと考えて,医学的に何ら不自然ではないとの意見がある(乙B178,証人e6)。 イアの事情を前提に原告a12の供述の信用性を吟味すると,原告a12については,被爆当時,爆心地から20km以上離れた原村にいたこと,昭和20年8月12日に,爆心地から約1.8kmまで接近し,そこで父 と会ったこと,同月13日には,爆心地から約2.5km離れた所から約3.3km離れたところに移動したことが認められるものの,同月14日以降も,市内にとどまったことや,発熱,下痢,脱毛等の急性症状があったことは認め難いといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告a12は,被爆者健康手帳交付申請書の記載とは異な り,父と会ったのは知人のi5宅であり,夜であったと主張し,さらに,昭和20年8月14日以降も広島 といわざるを得ない。 ウこれに対し,原告a12は,被爆者健康手帳交付申請書の記載とは異な り,父と会ったのは知人のi5宅であり,夜であったと主張し,さらに,昭和20年8月14日以降も広島市内の自宅にとどまったと主張し,疎開先とは原村ではなく自宅を指すと主張し,それらの主張に沿う供述をする(第3事件甲C16の1,甲C16の2,原告a12)。 また,上記記載が異なる理由については,上記の交付申請手続は姉i2 が行っており原告a12の記憶とは異なること,父や姉i4は疎開してお らず,かつ,リヤカーを引いて原村まで20km以上引いて帰るとは考えられないなどの事情を挙げる。 しかしながら,被爆者健康手帳交付申請書の原告a12の署名(第3事件乙C1の1・150頁)は,本件申請に係る原爆症認定申請書の原告a12の署名(第3事件乙C1の1・158頁)と類似していると評価でき, 姉i2が記載したとは認められない。また,証拠(第3事件乙C1の1・171頁)によれば,姉i2は,原告a12とともにリヤカーを引いて疎開先に帰ったと供述していることが認められ,この疎開先が自宅を指すとは考え難いから,原告a12の現在の供述は信用することができない。原告a12が主張するその他の事情を考慮しても,原告a12の現在の供述 を信用することはできない。 エ原告a12は,ABCCによる被爆状況調査の内容とは異なり,発熱,下痢,耳鳴り,脱毛の急性症状が発生したと主張し,その主張に沿う供述をする(第3事件甲C16の1,原告a12)。 また,異なる理由として,回答したのは兄i1であって原告a12では なく,かつ,兄i1は,入市の事実を伏せて回答していることから,差別や偏見を恐れて事実とは相違する回答をしたと主張する。 しかしながら,証拠( して,回答したのは兄i1であって原告a12では なく,かつ,兄i1は,入市の事実を伏せて回答していることから,差別や偏見を恐れて事実とは相違する回答をしたと主張する。 しかしながら,証拠(乙C16の13)によれば,回答者が兄i1であることは認められるものの,同人は,被爆の事実を伏せていないため,差別や偏見を恐れて事実とは相違する回答をしたとは直ちには認め難い。ま た,証拠(第3事件乙C1の1・159頁)によれば,原告a12について,6か月以内に何らの症状もなかったと記載されていることとも整合しない。その他,原告a12が主張する事情を考慮しても,急性症状があったとする原告a12の供述は信用するに足りない。 及びの事情を前提に,2イ及び5アのとおり,理論的な誘導 放射線量や内部被曝放射線量が僅かになることを念頭に置けば,原告a12 について,理論上,心筋梗塞で問題とされる0.5グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,入市の存在を踏まえても,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 仮に,0.5グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,心筋梗塞は喫煙,高中性脂肪及び加齢により被曝によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a12の心筋梗塞の発症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるともいえないため,原告a12の供述する別紙「被爆実 態一覧」記載の原告a12のその後の健康状態を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうす 告a12の供述する別紙「被爆実 態一覧」記載の原告a12のその後の健康状態を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 原告a12は,喫煙の影響は,禁煙により比較的短期間に解消し,非禁煙者と同程度まで解消すると主張し,その根拠としてc8医師の証人調書(甲B13・24から27頁),「心筋梗塞患者さんのために」と題する書面(甲B22・2頁),「NIPPONDATA80・90により得られた循環器疾患に関する知見について」と題する書面(甲B23),「循環器病全般」と 題する書面(甲B24・2頁),祖父江友孝の研究(甲B25)を挙げる。 しかしながら,原告a12は,心筋梗塞発症まで禁煙していないのであり,前提が採用できない。 原告a12は,喫煙,飲酒,教育,職業,肥満,糖尿病等の交絡因子を調整しても心疾患の放射線リスクの評価にはほとんど影響を及ぼさないとする 清水論文(甲B19の1,2)があるから,上記の各因子が存在したとして も,心筋梗塞の発症は放射線の影響によるものとして因果関係を認めることが相当因果関係の考え方に合致すると主張する。 しかしながら,上記論文によっても,そもそも心筋梗塞と放射線との関係は,のとおりであって,しきい値がないとの見解が一般的な科学的知見であるとはいえない。 また,交絡因子の調整は,一般的な疫学的因果関係の判断のために行われるものであるから,これによっても,個々の具体的事例において当該疾患が他の危険因子によって発症したものとみることが否定されるものではなく,放射線起因性の証明の有無を判断するに当たっては,当該疾病等に係る他の あるから,これによっても,個々の具体的事例において当該疾患が他の危険因子によって発症したものとみることが否定されるものではなく,放射線起因性の証明の有無を判断するに当たっては,当該疾病等に係る他の原因(危険因子)の有無及び程度の検討によることとなる。 したがって,原告a12の主張する因果関係を認めることが相当因果関係の考え方に合致するとはいえない。 原告a12は,被告が心筋梗塞の原因として挙げる因子(脂質異常症,高血圧,慢性腎臓病等)は,放射線被曝から引き起こされると主張し,その根拠としてe1医師らの意見書(甲B46)を挙げる。 しかしながら,5エのとおりであり,原告a12の主張は採用できない。 原告a12は,放射線起因性が認められると主張し,その証拠としてe1医師の意見書(甲C16の3)及び証人e1の証言がある。 しかしながら,同意見書の記載内容及び証人e1の証言は,これまで述べたとおり,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にす るので,採用することができない。 以上によれば,争点イ(原告a12の心筋梗塞の要医療性の有無)について,判断を要しない。 10 争点ア(原告a13の心筋梗塞の放射線起因性の有無)について末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 ア原告a13は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時, 爆心地から約4.1kmの地点にある広島市南観音町の三菱重工内にいた。 当時,原告a13は16歳であった。(第3事件甲C17の1,同事件乙C2の1・633,644頁)。 イ原告a13は,昭和48年2月5日付け被爆者健康手帳交付申請書に,被爆の状況欄のうち屋内に丸印を付した上で,スレートと記載し,その際 けがはなかったと記載した( の1・633,644頁)。 イ原告a13は,昭和48年2月5日付け被爆者健康手帳交付申請書に,被爆の状況欄のうち屋内に丸印を付した上で,スレートと記載し,その際 けがはなかったと記載した(第3事件乙C2の1・644頁)。 ウ原告a13は,イの交付申請書には,原爆投下の当日,被爆後,旭橋(爆心地からの距離約2.5km)を通過し,己斐へと逃れ,その後,庚午辺りにてトラックに乗せてもらったとの記載がある(第3事件乙C2の1・644頁)。 エ原告a13は,平成20年10月8日,心筋梗塞の検査と治療を受けるために広島市立広島市民病院を訪れた際に作成した問診票に,「④今までに何か病気または手術をしたことがありますか。」との問いに対し,「昭和47年頃盲腸昭和47年頃より-高脂血症平成20年6月-前立腺炎」とのみ記載し,昭和47年に虚血性心疾患に罹患したとは記載していない (乙C17の17・3頁)。 オ c8内科胃腸科における平成10年8月26日の診療録においては,昭和47年に虚血性心疾患に罹患していたという記載はない(乙C17の18・18頁)。 平成20年10月8日の広島市民病院の問診票においては,虚血性心疾 患に罹患していた旨の記載はない(乙C17の17・3頁)。 カ平成20年10月頃にc8内科胃腸科のc8医師が作成した健康診断個人票には,既往症欄に,「⑤慢性虚血性心疾患」の記載がある(第3事件乙C2の1・640頁)。 平成21年2月21日付けのc8医師が作成した意見書には,既往症欄 に,「①虚血性心疾患,昭和47年頃から(旧大竹町,c8内科で治療), ②高脂血症,平成10年8月より内服治療中」の記載がある(第3事件乙C2の1・639頁)。 キ原告a13の被曝線量を,DS02を用いて推計 疾患,昭和47年頃から(旧大竹町,c8内科で治療), ②高脂血症,平成10年8月より内服治療中」の記載がある(第3事件乙C2の1・639頁)。 キ原告a13の被曝線量を,DS02を用いて推計計算した場合,約0. 0001グレイを下回る(第3事件乙C2の15)。 ク原告a13は,平成20年9月25日,79歳で心筋梗塞を発症した。 原告a13は,昭和47年頃から脂質異常症と診断され,内服治療が行われており,平成10年8月には,総コレステロール246mg/dl,中性脂肪203mg/dlと,平成12年1月には,総コレステロール231mg/dl,中性脂肪258mg/dlが測定されている。 (乙B178,乙C17の18・10頁,証人e6) ケ原告a13は,平成20年10月8日,閉塞性動脈硬化症の疑いがあるとされ,平成21年4月及び12月に実施されたABI検査(足関節上腕血圧比)は何らかの虚血があることを示す数値であった。閉塞性動脈硬化症の存在は,心臓の冠動脈の動脈硬化症の存在を疑わせる。(乙B178,乙C17の17・10,12,14,16頁,証人e6) コ原告a13は,35歳頃から約28年間,1日25本程度の喫煙をしていた(乙C17の17)。 サ原告a13の心筋梗塞については,79歳という高齢で心筋梗塞の好発年齢にあったところに,動脈硬化と関連が強い高トリグリセリド(中性脂肪)血症,喫煙という複数の危険因子の重積により発症したものと考えて, 医学的に何ら不自然ではないとの意見がある(乙B178,証人e6)。 の事情を前提に原告a13の供述の信用性を吟味すると,原告a13については,被爆当時,爆心地から約4.1kmに位置する屋内にいたこと,その後,爆心地から約2.5kmまで接近したことは認められるもの の事情を前提に原告a13の供述の信用性を吟味すると,原告a13については,被爆当時,爆心地から約4.1kmに位置する屋内にいたこと,その後,爆心地から約2.5kmまで接近したことは認められるものの,昭和20年8月8日以降に入市したこと,被爆によって負傷したこと,黒い雨 を浴びたこと,急性症状があったことは認め難いといわざるを得ない。 これに対し,原告a13は,被爆者健康手帳交付申請書の記載と異なり,屋内ではなく屋外で被爆した旨,被爆によって負傷をした旨,黒い雨を浴び,昭和20年8月8日以降,入市した旨の主張をし,その旨の供述をする(第3事件甲C17の1,甲C17の2,3,原告a13)。 しかしながら,屋外であるとする点,負傷をしたとする点は,イと整合 せず,信用するに足りない。また,黒い雨を浴び,同日以降,入市したとする点についても,被爆者健康手帳交付申請書に記載がなく,本件申請に際して初めて出た説明である上,上記のとおり整合しない供述をしていることに照らせば,にわかに信用し難い。 原告a13は,急性症状があった旨の主張をし,これに沿う供述をするが, これに沿う証拠は,本件申請以降の原告a13の供述のみであって,と同様に認めるに足りない。 原告a13は,昭和47年に虚血性心疾患に罹患していた旨の主張をし,その主張に沿う証拠として,原告a13の供述及びカの記載を挙げる。 しかしながら,同人の供述内容は,曖昧なものであるほか,c8内科胃腸 科における平成10年8月26日の診療録にも,平成20年10月8日の広島市民病院の問診票にもその記載がないため,真実,昭和47年に虚血性心疾患に罹患していたとは認めることができない。 及びの事情を前提にすれば,原告a13について,理論上,心筋梗塞で問題 の広島市民病院の問診票にもその記載がないため,真実,昭和47年に虚血性心疾患に罹患していたとは認めることができない。 及びの事情を前提にすれば,原告a13について,理論上,心筋梗塞で問題とされる0.5グレイを超える放射線量に被曝したとは認められない のみならず,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 仮に,0.5グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,心筋梗塞は加齢や高中性脂肪により被曝 によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a13の心筋梗塞の発症に ついては,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるともいえないため,原告a13の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a13のその後の健康状態を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は 認められない。 原告a13は,健康に及ぼす相当量,相当程度の放射線被曝をしていると主張し,その主張に沿うe1医師の意見書(甲C17の4)及び証人e1の証言を挙げる。 しかしながら,同意見書の記載内容は,これまで述べたとおり,被爆状況 や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,採用することができない。 原告a13は,心筋梗塞と低線量の放射線被曝との間に関連性が認められ,かつ,しきい値はゼロとされていると主張し,その主張に沿うe1医師らの意見書(甲B46)を挙げるが,同証拠に基づく主張を採用することができ ないのは,5エで述べたとおり に関連性が認められ,かつ,しきい値はゼロとされていると主張し,その主張に沿うe1医師らの意見書(甲B46)を挙げるが,同証拠に基づく主張を採用することができ ないのは,5エで述べたとおりである。 原告a13は,加齢,高脂血症,喫煙の有無は,放射線による心疾患の発症リスクにほとんど影響を及ぼさない,また,動脈硬化,高脂血症,高血圧及び糖尿病それ自体が放射線被曝による影響を受けている可能性があると示唆されていると主張し,その主張に沿うe1医師らの意見書(甲B46)を 挙げるが,同証拠に基づく主張を採用することができないのは,5エで述べたとおりである。 原告a13は,心筋梗塞を発症した平成20年10月8日当時,中性脂肪は基準値内にあり(第3事件乙C2の1・654頁),かかりつけ医のc8医師も,「平成10年8月より軽度の高脂血症がみられ,内服治療を開始した。 食事療法や運動療法もつづけられ,内服のコンプライアンスも良く経過良好 であった。したがって,高脂血症のみが,心筋梗塞につながったとは考え難く,放射線起因性を強く推量する」(第3事件乙C2の1・639頁)と述べている点を挙げる。 しかしながら,同人の意見は,既に検討したとおり,採用できない被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提に立った上で述べているも のであるほか,経過良好であったことから心筋梗塞が発症した原因を放射線被曝に求めなければ説明ができないというものではないので,放射線起因性を強く推量するとの部分は採用することができない。 原告a13は,心筋梗塞と診断された年齢が79歳であったとしても,疾病は,複数の要因が複合的に重なり合って発症するのであるから,放射線被 曝が発症の要因ではないとして放射線起因性を否定することはできない は,心筋梗塞と診断された年齢が79歳であったとしても,疾病は,複数の要因が複合的に重なり合って発症するのであるから,放射線被 曝が発症の要因ではないとして放射線起因性を否定することはできないと主張し,その主張に沿うc8医師の意見書(第3事件乙C2の1・639頁)を挙げる。 しかしながら,他原因の存在の蓋然性が,放射線起因性を否定する理由となることについては既に説明したとおりである。 原告a13は,35歳から禁煙し,その後,喫煙しておらず,かつ,日本人を対象とした調査では,虚血性心疾患の死亡リスクは,禁煙後減少し,5年以上経過すると非喫煙者と同レベルとなる傾向があるとされ,また,虚血性心疾患死亡リスクは禁煙後約10年で過去の喫煙による影響がほぼ消失したとする調査結果があると主張し,9のとおりの証拠を挙げる。 しかしながら,原告a13の喫煙歴はコのとおりである上,原告a13が証拠として挙げる祖父江友孝の研究(甲B25,第2事件乙B114・72頁)によれば,虚血性心疾患の場合には,全循環器疾患と異なり,非喫煙者の群と同程度のレベルまでリスクが消失するには20年以上を要することが記載されているので,原告a13の主張を直ちに認めることができない。 また,仮に,原告a13の主張するとおり,禁煙の効果により非喫煙者と同 レベルまで喫煙の影響が消失するとしても,原告a13の年齢やその他の危険因子の存在に照らせば,結論を左右しない。 原告a13は,健康に及ぼす相当量の被曝をしたこと,心筋梗塞については,低線量域においても関連性が認められていること,他の因子の影響は極めて小さいか,あるいは放射線起因性を否定すべき要素として考慮すべきで ないこと,原告a13の家系には心筋梗塞に罹患した者が見当たらないこと等 ても関連性が認められていること,他の因子の影響は極めて小さいか,あるいは放射線起因性を否定すべき要素として考慮すべきで ないこと,原告a13の家系には心筋梗塞に罹患した者が見当たらないこと等からして,原爆放射線に起因することは明らかであると主張し,その主張に沿うe1医師の意見書(甲C17の4)及び証人e1の証言を挙げる。 しかしながら,これまで述べたとおり,同人の意見は被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,採用できない。 以上によれば,争点イ(原告a13の心筋梗塞の要医療性の有無)について,判断を要しない。 11 争点ア(原告a15の心筋梗塞及び白内障の放射線起因性の有無)について一般的な白内障の知見について ア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 白内障には先天性と後天性があり,後天性の白内障は,原因別に,老人性,外傷性,併発性,放射線性,内分泌代謝異常性,薬物又は毒物性などがある(乙B65・178頁,乙B66)。これらの原因の中で,多いのは,加齢による老人性白内障であり,その初発年齢には個人差があ るものの,水晶体混濁の有所見率は,加齢に伴い増加し,一般に50歳以上からみられ,初期混濁を含めた有所見率でみると,50歳代で37ないし54%,60歳代で66ないし83%,70歳代で84ないし97%,80歳以上で100%であるとされている(乙B65・180頁,乙B67・7頁)。 放射線が白内障の成因の一つとなることは古くから知られており,通 常は,放射線に被曝してから数か月ないし数年以内に発症し,被曝線量が高くなるほど発症率も高く,発症時期も早くなり,重篤になる傾向があるとされている(乙B68・151ないし156頁)。 放射線の影響 は,放射線に被曝してから数か月ないし数年以内に発症し,被曝線量が高くなるほど発症率も高く,発症時期も早くなり,重篤になる傾向があるとされている(乙B68・151ないし156頁)。 放射線の影響は確定的影響であるとされており,しきい値は,2007年のICRP勧告における推定値によれば,1.5グレイとの疫学的 知見が得られている(乙B69)。 また,2012年のICRP報告書によれば,放射線白内障のしきい値は0.5グレイとされている(甲B32の1,2)。 放射線白内障は,老人性白内障と異なり,多くは進展しないという特徴がある(乙B66,乙B68・156頁)。 「原爆放射線の人体影響1992」によれば,①水晶体の後極部後嚢下にあって色閃光を呈する限局性の混濁,又は後局部後嚢下よりも前方にある点状ないし塊状混濁のいずれかの水晶体混濁が認められること,②近距離直接被曝歴があること,③併発白内障を起こす可能性のある眼疾患がないこと,④原爆以外の電離放射線の相当量を受けていないこと の4条件がそろった場合に,放射線白内障であるとの診断ができるとされている(乙B68・152,153頁)。 イこれに対し,原告a15は,放射線白内障であっても遅発性が存在し,また,老人性白内障であっても,その早発,進行と放射線量との間には相関関係があると主張し,その証拠として津田恭央ほかの論文「原爆被爆者 における眼科調査」(以下「津田論文」という。)(甲B2の4,甲B3の3),「広島・長崎の原爆災害」(甲B3の1・添付資料3,甲B3の4),c7医師の意見書(甲A3・Ⅰ[1]No.5)を挙げる。 具体的には,津田論文において,若年被爆者においては,後嚢下混濁を伴う遅発性の放射線白内障が確認されたこと,老人性白内障であっても, ),c7医師の意見書(甲A3・Ⅰ[1]No.5)を挙げる。 具体的には,津田論文において,若年被爆者においては,後嚢下混濁を伴う遅発性の放射線白内障が確認されたこと,老人性白内障であっても, 皮質混濁を特徴とする老人性白内障の早発,進行は,放射線量との有意な 線量相関があるとされたと指摘する。 しかしながら,原告a15が主張する津田論文については,遅発性の放射線白内障と早発性の老人性白内障の定義が曖昧であって,かつ,適切かどうかについて疑義があるなど,疫学的調査としての正確性,信頼性について確認されたものとはいえず,その他論文等も,仮説かいまだ今後の他 の研究による実証を待っている段階のものにとどまり,少なくとも大多数の科学者が受け入れる確立された知見には至っていないといわざるを得ない。 ウ原告a15は,放射線白内障のしきい値は存在せず,かつ,被爆が若年であればあるほど影響を受けやすいと主張し,その証拠としてc7医師の 意見書(甲A3・Ⅰ[1]No.3,5,10,23),津田論文(甲B2の4),中島栄二ほかの論文「原爆被爆者における白内障有病率の統計解析,2000-2002」(甲B3の8),皆本敦ほかの論文「原爆被爆者における白内障」(甲B27の1,2),錬石和男ほかの調査「原爆被爆者における放射線量と白内障手術の発生率,1986-2005年」(甲B31の 1,2),中島栄二ほかの調査「2000-2002年の原爆白内障データの再解析:閾値解析」(乙B112)を挙げる。 しかしながら,原告a15が主張する調査や論文は,疫学的調査としての正確性,信頼性について確認されたものとはなおいえず,仮説かいまだ今後の他の研究による実証を待っている段階のものにとどまり,少なくと も大多数の科学者が受け入れる確 論文は,疫学的調査としての正確性,信頼性について確認されたものとはなおいえず,仮説かいまだ今後の他の研究による実証を待っている段階のものにとどまり,少なくと も大多数の科学者が受け入れる確立された知見には至っていないといわざるを得ない。 エ原告a15は,近時,低線量被曝と白内障との関連性が示唆されていることをUNSCEARが認識していると主張して,そのUNSCEAR2010年報告書(甲B34・16,17頁)を挙げる。 たしかに,上記報告書には,「本委員会は,最近の研究によって白内障の 罹患の増加が,低線量放射線被ばくに関連している可能性を示唆していることも記す。」との記載があることが認められる。しかしながら,続けて「循環器疾患と同様に,本委員会はこの分野における新たな知見の監視とレビューを継続するつもりである。」とも記載されており,いまだ,しきい値がないことが一般的な科学的知見として確認されたことまでは認められない。 原告a15の放射線被曝量と心筋梗塞及び白内障の発症因子についてア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a15は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,爆心地から約3.5kmの地点にある広島市仁保町朝見原の自宅付近にいた。原告a15は当時5歳であった。(第2事件乙C3の1・1652 頁)原告a15は,ABCC調査票によると,被爆時,屋外で樹木の陰にいたと記載されている(第2事件乙C3の29・3枚目)。 原告a15の健康診断個人票(昭和36年6月5日記載)には,被爆当日(昭和20年8月6日),「丹那にて被爆,そのままそこに居住」,同 月10日,「中心地に奉仕作業に出ていた父を探しに出,1日中相生橋附近を歩く,その後中心地出ず」との記載が 載)には,被爆当日(昭和20年8月6日),「丹那にて被爆,そのままそこに居住」,同 月10日,「中心地に奉仕作業に出ていた父を探しに出,1日中相生橋附近を歩く,その後中心地出ず」との記載がある(第2事件乙C3の30・1枚目)。 原告a15の昭和40年12月6日付け被爆者健康手帳交付申請書には,原告a15は,原爆投下の翌日である昭和20年8月7日,母たち と宇品町(爆心地から約4.2km)に移動し,同月8日には,天神町に勤労奉仕に出掛けたまま帰宅しなかった父を捜すため,宇品町から,御幸橋(爆心地から約2.3km),千田町(同約1.8km),日本赤十字病院(同約1.5km),大手町,袋町を経由して,天神町に入ったが見つからず,その頃,祖父が頭痛を訴え,母が息苦しさを訴え,原告 らが空腹から泣き出したため,宇品町に帰ったこと,同月9日から同月 12日までの間には,父を捜して,爆心地を歩き回った旨の記載がある(第2事件乙C3の1・1668頁)。 原告a15の祖母は,昭和30年12月19日に実施されたABCCによる被爆状況調査の際,原爆投下後,原告a15に,歯茎出血,脱毛,下痢及び発熱等の症状はなかったと回答している(第2事件乙C3の2 9・2枚目)。 原告a15は,当時,祖母と行動を共にしていた(第2事件乙C3の1・1668頁)。 原告a15の昭和36年6月5日付けの健康診断個人票には,急性症状はなかった旨の記載として斜線がある(第2事件乙C3の30・1枚 目)。 爆心地から約3.5kmの被曝線量をDS02を用いて推計計算した場合,約0.0004グレイとなる(第2事件乙C3の16)。 原告a15は,18歳から喫煙を始め,昭和54年頃(40歳時頃)には高血圧を発症し,平成10年4月 曝線量をDS02を用いて推計計算した場合,約0.0004グレイとなる(第2事件乙C3の16)。 原告a15は,18歳から喫煙を始め,昭和54年頃(40歳時頃)には高血圧を発症し,平成10年4月17日(58歳時),心筋梗塞を発 症した。 同人の血圧は,昭和57年9月16日には156mmHg/116mmHg,昭和60年8月28日には130mmHg/70mmHg,昭和62年4月23日には202mmHg/114mmHg,昭和63年2月25日には178ないし180mmHg/108ないし110mm Hg,同年9月7日には178ないし180mmHg/108mmHg,平成3年7月15日には194mmHg/(判読不能),平成8年9月2日には166mmHg/90mmHgであった(第2事件乙C3の30・2ないし8枚目)。 原告a15は,心筋梗塞発症時において,総コレステロール233m g/dl,中性脂肪>199mg/dlで,脂質異常症であった。(乙B 178,第2事件乙C3の18・470頁,証人e6) 原告a15は,心筋梗塞を発症した平成10年4月17日,身長168cm,体重75kgで,BMI値26.6であり,その後,上昇していた(乙B178,第2事件乙C3の18・415頁)。 原告a15は,平成16年6月17日(64歳時),「眼がショボン」 とするなどと訴え,眼科を受診した。その際,両眼水晶体にはごく軽度の核混濁が認められた。原告a15には,放射線白内障の要件とされる後嚢下混濁や皮質混濁の所見は認められていない。 (第2事件乙C3の18・42,43頁)原告a15の心筋梗塞は,動脈硬化との関連が強い喫煙,肥満,高血 圧症,脂質異常症という複数の危険因子の重積により発症したものと考えて,医学的に何ら 第2事件乙C3の18・42,43頁)原告a15の心筋梗塞は,動脈硬化との関連が強い喫煙,肥満,高血 圧症,脂質異常症という複数の危険因子の重積により発症したものと考えて,医学的に何ら不自然ではないとする意見がある(乙B178,証人e6)。 イアの事情を前提に原告a15の供述の信用性を吟味すると,原告a15については,被爆当時,爆心地から約3.5km離れた自宅の樹木の陰に いたことは認められるものの,昭和20年8月10日を除いて,爆心地を歩き回ったことや,急性症状があったことは認め難いといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告a15は,昭和36年6月5日付けの健康診断個人票の記載とは異なり,昭和40年になされた被爆者健康手帳交付申請書のとおり,昭和20年8月8日から12日までの間,爆心地付近を歩き回った と主張し,その主張に沿う供述をする(第2事件甲C3の1,同事件甲C3の2,原告a15)。また,健康診断個人票の記載は,同月6日から9日の行動の記載がないだけであると主張する。 しかしながら,上記健康診断個人票には,記載がないのではなく,「そのままそこに居住」との記載があるのであって,被爆者健康手帳交付申請書 の記載とは整合しないといわざるを得ない。また,原告a15の現在の供 述内容は,ABCC調査票の記載とは異なり,樹木の陰にいたのではなく道を歩いていたと変わっており,その点でも整合しておらず信用性が低い。 エ原告a15は,ABCCに対する回答や昭和36年6月5日の健康診断個人票の記載とは異なり,急性症状があったと主張し,その主張に沿う供述をする。また,記載がない理由として,差別を恐れて事実を隠すという ことがよく行われていたと主張する。 しかしながら,原告a15の主張する急性症状に 急性症状があったと主張し,その主張に沿う供述をする。また,記載がない理由として,差別を恐れて事実を隠すという ことがよく行われていたと主張する。 しかしながら,原告a15の主張する急性症状については,昭和30年12月19日に実施されたABCCによる被爆状況調査結果だけではなく,昭和36年6月5日の健康診断個人票にも,急性症状がなかった旨の記載があり,これとも整合しない。また,このような記載となっている理由に ついては原告a15の供述はなく合理的な説明があるとはいえない。 及びの事情を前提にすれば,原告a15について,理論上,心筋梗塞及び白内障で問題とされる0.5グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,その後の入市を前提としても,具体的にそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 仮に,0.5グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,心筋梗塞は加齢,高血圧及び脂質異常症により,白内障は加齢により,被曝によらなくとも発症するものであり,か つ,原告a15の心筋梗塞や白内障の発症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるともいえないため,原告a15の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a15のその後の健康状態を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 これに対し,原告a15は,心筋梗塞については,低線量域についても,被爆と心筋梗塞の発症との間に関連性が認めら そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 これに対し,原告a15は,心筋梗塞については,低線量域についても,被爆と心筋梗塞の発症との間に関連性が認められ,しきい値はゼロとされていると主張し,その主張に沿う清水論文(甲B19の1,2)や証人e1の 証言がある。 しかしながら,5エで述べたとおりであり,採用できない。 原告a15は,他の危険因子があっても,放射線による心疾患の発症リスクにほとんど影響しないものとされ,また,危険因子自体が放射線被曝による影響を受けている可能性があると主張し,e1医師の意見書(第2事件甲 C3の3)及び証人e1の証言がある。 しかしながら,同人の意見は,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので採用することができない。 原告a15は,18歳から約40年間,1日当たり20本の喫煙をしていたが,平成10年に禁煙したので,既に喫煙による影響はほとんどない旨の 主張をし,e1医師らの意見書(甲B46)を挙げる。 問診票(第2事件乙C3の18・39頁)によれば,喫煙期間が45年とされていることが認められるため,これに反する前提は採用できない。また,原告a15の心筋梗塞発症以前での禁煙が認められないので,前提を採用することができない。 以上によれば,争点イ(原告a15の白内障の要医療性の有無)について,判断を要しない。 12 争点(原告a20)について 争点 ア(甲状腺機能低下症の罹患の有無)についてア末尾に掲げた証拠によれは,次の各事実が認められる。 原告a20の本件申請に係る原爆症認定申請書に添付された,主治医 であるc5医師の意見書には,「昭和46年,d4内科(広島市大手町)で甲状腺 げた証拠によれは,次の各事実が認められる。 原告a20の本件申請に係る原爆症認定申請書に添付された,主治医 であるc5医師の意見書には,「昭和46年,d4内科(広島市大手町)で甲状腺機能低下症と診断された。以来甲状腺薬を投与されている。」との記載がある(第2事件乙C5の1・226頁)。 c5医師の平成23年1月21日作成の「原爆症認定申請照会に対する回答事項」と題する書面には,「⑤治療を開始する前の甲状腺ホルモン 検査結果は当院にはありません。 (昭和46年d4内科で診断されたとの事です)」と記載されている(第2事件乙C5の1・235頁)。 原告a20につき,平成3年4月26日以降,平成25年9月24日までのTSHの値は,ほとんどが異常値(低値)である(乙B179,証人e2)。 原告a20は,上記の間,チラーヂンSを1日50μg服用していた(第2事件乙C5の17・2頁,原告a20)。 原告a20のTSHの値が低値であるのは,チラーヂンSの投与が過剰であったためと判断される(乙B179,証人e2)。 イアの各事実によれば,原告a20が甲状腺機能低下症であるとする根拠 となる検査値は存在せず,また,服用しているチラーヂンSの必要性を認めるに足りる証拠はないといわざるを得ない。 したがって,原告a20が甲状腺機能低下症に罹患していたとは認められない。 ウこれに対し,原告a20は,甲状腺機能低下症に罹患していたかどうか は,原告a20の供述する通院経過や治療内容から推認する以外にない旨の主張をし,その主張に沿うe1医師の意見書(甲B48)がある。 しかしながら,甲状腺機能低下症の罹患の有無の判断については,疾病の要件該当性の判断を要するので,主張は採用できない。 争点 イ(甲状 し,その主張に沿うe1医師の意見書(甲B48)がある。 しかしながら,甲状腺機能低下症の罹患の有無の判断については,疾病の要件該当性の判断を要するので,主張は採用できない。 争点 イ(甲状腺機能低下症の放射線起因性の有無)について 審理の経過に鑑み,放射線起因性についても判断する。 ア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a20は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時,爆心地から約2.5kmの地点にある広島市皆実町三丁目にある電鉄家政女学校の講堂内にいた。当時,原告a20は,14歳であった。(第2事件乙C5の1,原告a20) 原告a20は,昭和5年○月○日生まれであり,平成3年4月26日当時,60歳である(第2事件乙C5の17・1,2頁)。 原告a20は,本件申請に係る平成22年3月25日付けの原爆症認定申請書においては,脱毛及び口内炎については記載していたものの,血便,下痢及び発熱については記載していない(第2事件乙C5の1)。 原告a20は,平成23年8月21日付けの異議申立ての理由においては,血便の記載があるものの,下痢,発熱については記載していない(第2事件乙5の7)。 爆心地から約2.5km地点で直接被爆した場合のDS02に基づく推定被曝線量は約0.0126グレイとなる(乙C8の8)。 原告a20は,広島電鉄本社(爆心地から1.5km以遠)から己斐駅(爆心地から1.5km以遠)までの経路については記憶が正確ではない旨供述している(原告a20)。 己斐地区に降ったとされる放射線降下物による被曝線量は,DS86によれば,最大2ラド(0.02グレイ)とされている(第2事件乙B 17・228頁)。 DS02に基づく研究分析によれ 。 己斐地区に降ったとされる放射線降下物による被曝線量は,DS86によれば,最大2ラド(0.02グレイ)とされている(第2事件乙B 17・228頁)。 DS02に基づく研究分析によれば,原爆投下から3日後に入市した場合には,誘導放射線の積算放射線量は0.0009グレイとされている(第2事件乙C5の15)。 イアの事情を前提に原告a20の供述の信用性を吟味すると,原告a20 については,被爆当時,爆心地から約2.5km離れた講堂内にいたこと, 被爆当日,爆心地から1.5km以遠の場所を通過したことは認められるものの,それ以上に爆心地に接近したことや,その他の日に入市したこと,急性症状があったことは認め難いといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告a20は,記憶に基づき真摯に供述しているので信用できないとはいえないと主張する。 しかしながら,供述以外に裏付ける証拠はないのみならず,急性症状については変遷もあり,かつ,入市経路については原告a20自身が記憶は正確ではないと自認しているため,認めるに足りない。 エア及びイを前提にすれば,原告a20について,理論上,4グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,入市の存在を踏ま えても,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難い。 オ仮に,4グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,甲状腺機能低下症は加齢に伴い被曝によら なくとも発症するものであり,かつ,原告a20の甲状腺機能低下症の発症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるとはいえないため, 加齢に伴い被曝によら なくとも発症するものであり,かつ,原告a20の甲状腺機能低下症の発症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるとはいえないため,原告a20の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a20の被爆後の症状を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざる を得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 カこれに対し,原告a20の主張に沿う証拠として,e1医師の意見書(第2事件甲C5の3)及び証人e1の証言があるが,これらは,被爆状況や 一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,採用するこ とができない。 13 争点(原告a23)について 争点 ア(心筋梗塞及び白内障の放射線起因性の有無)についてア末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 原告a23は,昭和20年8月6日に原爆が広島市に投下された当時, 爆心地から約3kmの地点にある広島市牛田町673番地の自宅にいた。 原告a23は当時3歳であった。(第2事件甲C7の1,同事件乙C7の1,原告a23)原告a23の昭和32年3月4日作成のABCC調査票には,遮蔽の状態欄に,「日本式木造平家建内にて土壁にて遮蔽さる」との記載がある (第2事件乙C7の23・1枚目)。 原告a23のABCC調査票には,被爆時に額に1か所,外傷を負ったものとされているが,やけどはないと記載されている(第2事件乙C7の23・2枚目)。 原告a23のABCC調査票には,下痢等の急性症状はなく,現在の 容態として健康と記載されている(第2事件乙C7の23・2枚目)。 原告a23のD る(第2事件乙C7の23・2枚目)。 原告a23のABCC調査票には,下痢等の急性症状はなく,現在の 容態として健康と記載されている(第2事件乙C7の23・2枚目)。 原告a23のDS02による被曝線量推計計算に基づく初期放射線に係る推定被曝量は,0.002グレイである(第2事件乙C7の8)。 原告a23の平成15年8月28日の血液検査の結果は,総コレステロール240mg/dl,中性脂肪185mg/dlと測定されており, 脂質異常症の状態であった(乙B178,第2事件乙C7の21・4頁)。 c9クリニックの診療録の写しには,原告a23について,平成15年12月4日,心筋梗塞と,同月9日,狭心症,脂質異常症,高血圧症と,平成16年3月11日,2型糖尿病と診断され,治療を受けた旨の記載がある(第2事件乙C7の15・1,2,34頁)。 原告a23は,平成19年5月,未治療の糖尿病がある旨指摘されて いる(第2事件乙C7の13・311頁)。 原告a23は,平成21年4月当時,身長174cm,体重76kgで,25以上を肥満と定義するBMIの値は25.1であり,肥満の状態であった(乙B178,第2事件乙C7の13・409頁)。 原告a23は,20歳頃から喫煙を始め,1日25本を吸うときもあ ったが,30歳には1日20本ぐらいに減らし,その後,禁煙をした(原告a23)。 原告a23の本件申請に係る申請疾病である心筋梗塞は,平成21年4月1日発症したが,当時,原告a23は,67歳という心筋梗塞の好発年齢にあったところに,動脈硬化との関連が強い高血圧症,脂質異常 症,喫煙,耐糖能異常症(糖尿病),肥満という複数の危険因子が重積したことにより発症したものと考えて,医学的に何ら不自然ではないとの医師 たところに,動脈硬化との関連が強い高血圧症,脂質異常 症,喫煙,耐糖能異常症(糖尿病),肥満という複数の危険因子が重積したことにより発症したものと考えて,医学的に何ら不自然ではないとの医師の意見がある(乙B178,第2事件乙C7の1・1枚目,証人e6)。 原告a23は,平成17年8月26日,63歳で初めて左眼水晶体前 嚢下混濁が認められた。平成17年12月2日,白内障と診断された。 (第2事件乙C7の10・1,18頁)原告a23は,平成24年2月21日,72歳の際の白内障の所見としては,両眼前嚢下混濁及び左眼後嚢下の軽度混濁であり,「加齢性白内障」と診断された(第2事件乙C7の10・1,32頁)。 白内障には,放射線エネルギーによって生じる白内障,加齢によって生じる老人性白内障,糖尿病によって生じる白内障等がある。放射線白内障は,放射線を受けると6か月から数年を経て後嚢下に白内障をみるとされている。一方,糖尿病白内障は,老人性白内障との区別が困難であり,後嚢下白内障をみることが多い,血糖が高くその期間が長いほど 白内障になりやすいとされている。(第2事件乙B60・180ないし1 82頁,同事件乙C7の14・1頁)糖尿病の発症については,原爆放射線との関連についての指摘はされておらず,原爆被爆者における糖尿病有病率は,被爆状況と一定の関連はみられていない。糖尿病の標的臓器である脾臓は,放射線感受性の低い臓器と考えられており,放射線被曝の急性期においても数百ラド(数 百センチグレイ)の放射線被曝では組織学的にも内分泌学的にも異常は報告されていない。日本における初期の原爆による死亡者には膵ランゲルハンス島(脾臓にあるインスリンを出す細胞)の形態学的異常は証明されなかったとの報告がある。(第 は組織学的にも内分泌学的にも異常は報告されていない。日本における初期の原爆による死亡者には膵ランゲルハンス島(脾臓にあるインスリンを出す細胞)の形態学的異常は証明されなかったとの報告がある。(第2事件乙B110・1687,1691ないし1693頁,同事件乙B111・125,127ないし129 頁,同事件乙B112・114頁)イアの事情を前提に原告a23の供述の信用性を吟味すると,原告a23については,被爆当時,爆心地から約3km離れた自宅の土塀で遮蔽されたところにいたこと,外傷を負ったことは認められるが,やけどを負ったことや急性症状があったことは認め難いといわざるを得ない。 ウこれに対し,原告a23は,ABCC調査票の記載とは異なり,土壁で遮蔽されておらず,濡れ縁に出たときに被曝し,顔面にやけどを負い,急性症状として下痢が続いた旨の主張をし,その旨の供述をする(第2事件甲C7の1,同事件甲C7の12,原告a23)。 しかしながら,相違する理由を合理的に説明できないので,信用するこ とができない。 エア及びイを前提にすれば,原告a23については,心筋梗塞や白内障で問題とされる0.5グレイを超える放射線量に被曝したとは認められないのみならず,外傷の存在を踏まえても,具体的にもそれを認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって,放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残 ることは否定し難い。 オ仮に,0.5グレイを超える放射線量の被曝をしていたとしても,あるいは,しきい値がなかったとしても,心筋梗塞は加齢,高血圧症,脂質異常症,喫煙及び耐糖能異常により,また,白内障は加齢や耐糖能異常に伴い,被曝によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a23の心筋梗 塞及び白内障の発症 ても,心筋梗塞は加齢,高血圧症,脂質異常症,喫煙及び耐糖能異常により,また,白内障は加齢や耐糖能異常に伴い,被曝によらなくとも発症するものであり,かつ,原告a23の心筋梗 塞及び白内障の発症については,放射線被曝を理由としなければ,医学的にみて不自然,不合理な経過があるとはいえないため,原告a23の供述する別紙「被爆実態一覧」記載の原告a23の被爆後の症状を考慮しても,放射線被曝を原因として発症したことを認めるについては,なお,疑問が残るといわざるを得ない。 そうすると,高度の蓋然性を認めることができないので,放射線起因性は認められない。 カ原告a23は,於保論文(甲A112)によれば,「原爆直後中心地に入らなかった屋外被爆者の場合(表3)」中,被爆距離3kmにいた者について,有症率は60.8%であり,そのうち,熱火傷45.9%,外傷13. 5%,発熱35.9%,下痢22.9%,脱毛12%とされ,「原爆直後中心地に入らなかった屋内被爆者の場合(表1)」でも,発熱8.8%,下痢14.8%とされているところ,被告の主張する爆心地から3kmで被爆した場合の線量が0.5グレイを大幅に下回るような低線量であるとは考えられないと主張する。 しかしながら,於保論文でいうところの急性症状につき,放射線被曝による急性症状に関する現在の一般的な科学的知見に照らすと,全て放射線被曝によるものと確定できるか疑義があるため,爆心地から3kmで被曝した場合の線量が,一般的に0.5グレイを超えるものであったとは認められない。 キ原告a23は,自身が同居していた親族には,脳出血,脳梗塞,高血圧 などの血管系疾患,心筋梗塞,がん,白内障など原爆症とされる疾病が多々みられるところ,同人らは,外部被曝だけではなく,被爆直後 キ原告a23は,自身が同居していた親族には,脳出血,脳梗塞,高血圧 などの血管系疾患,心筋梗塞,がん,白内障など原爆症とされる疾病が多々みられるところ,同人らは,外部被曝だけではなく,被爆直後,多数被爆者との共同生活の中で放射線物質を含む粉塵の吸入などによって内部被曝したものといわざるを得ず,共同生活によって,原告a23も内部被曝したものといわざるを得ないと主張する。 しかしながら,仮に,原告a23が同居していた親族について,主張のとおり疾病が多々みられたとしても,同人らが内部被曝をしたことを認めるに足りないので,結論を左右しない。 ク原告a23は,入院前の血圧測定だけで高血圧症と断定することはできないこと,脂質異常症が心筋梗塞を惹起させたと決めつける根拠はないこ と,原告a23の心筋梗塞と喫煙とを結びつける具体的な検討結果は明らかではないから喫煙が心筋梗塞の原因であると結論することは科学的ではないこと,平成21年4月の心筋梗塞発症まで,おおむね,コレステロールが正常値であったことと心筋梗塞発症との間の関係が明らかではないこと,糖尿病と診断する検査結果が十分ではないから糖尿病と確定診断する ことができないことなどを指摘して,e6意見書(乙B178)は信用することができず,これに基づく被告の反論も失当である旨の主張をする。 しかしながら,被告の反論は,反証として他原因によるのではないかとの疑いを抱かせる程度のものとしてなされているのであり,原告a23の指摘によっても,反証として足りないとはいえない。 ケ原告a23は,禁煙により,過去の喫煙による影響がほぼ消失したとする調査結果があると主張し,9のとおりの証拠を挙げる。 しかしながら,仮に,原告a23の主張するとおり,禁煙の効果により非喫煙者 原告a23は,禁煙により,過去の喫煙による影響がほぼ消失したとする調査結果があると主張し,9のとおりの証拠を挙げる。 しかしながら,仮に,原告a23の主張するとおり,禁煙の効果により非喫煙者と同レベルまで喫煙の影響が消失するとしても,原告a23の年齢やその他の危険因子の存在に照らせば,結論を左右しない。 コ原告a23の主張に沿うe1医師の意見書(第2事件甲C7の21)及 び証人e1の証言は,被爆状況や一般的科学的知見,因果関係の考え方の前提を異にするので,採用することができない。 以上によれば,争点イ(心筋梗塞の要医療性の有無)及び同ウ(白内障の要医療性の有無)について,判断を要しない。 14 争点(原告a24の白内障の要医療性の有無)について 末尾に掲げた証拠によれば,次の各事実が認められる。 ア原告a24は,平成19年1月19日,c10医師の診断を初めて受けた。その際の診断は,白内障の程度は,両眼とも軽度から中等度で,その混濁は,核と後嚢下皮質部分にあり,他方で,黄斑変性があるとされた。 その際の視力は,右が0.1,左が0.5で,いずれも矯正不能とされた。 また,視力への影響は,白内障よりも黄斑変性のほうが高いとされた。(第5事件甲C2)イ原告a24は,平成20年6月4日,両白内障について,手術を希望したが,原告の右眼の視力は0.15であったことなどから,左白内障についてのみ手術を実施した(第5事件甲C1の1,2)。 c10医師は,原告a24の白内障の状態は,軽度から中等度であったことなどからして,年齢と黄斑変性を別とすれば,医学的には手術適応はあるといえたと陳述書において記載している(第5事件甲C2)。 原告a24の平成26年9月6日時点での左眼の視力は0.1であった( ことなどからして,年齢と黄斑変性を別とすれば,医学的には手術適応はあるといえたと陳述書において記載している(第5事件甲C2)。 原告a24の平成26年9月6日時点での左眼の視力は0.1であった(第5事件乙C1・3枚目)。 ウ原告a24の主治医であるc10医師は,平成27年2月6日付けの書面において,原告の右白内障については,手術する可能性はあるとしつつも,黄斑萎縮があるため,現在のところ,手術の予定はない旨の回答をしている(第5事件乙C3・2枚目)。 エ原告a24の右眼は,本件申請当時,加齢黄斑変性症のため,視力が相 当低下していた(第5事件乙B15・3枚目,同事件乙C1・3枚目,同 事件乙C3・3枚目)。 オ加齢黄斑変性症は加齢とともに進行するが,有効な治療方法は存在しないとされている(第5事件甲C2,同事件乙B11・11頁)。 カ白内障に対する有効適切な治療方法は,手術以外にはないとされている(第5事件乙B4・224頁)。 キ白内障の手術は,日本で最も一般的に普及している外科的手術であるとされている(第5事件乙B5・16頁)。 ク原告a24に対しては,平成27年11月30日からピレノキシン点眼薬が処方されるようになった(第5事件乙C4・3枚目)。 要医療性の要件について検討するに,被爆者援護法10条1項は,要医療 性が認められることを,必要な医療の給付を行う要件としていることからすると,当該負傷又は疾病の治療のため予定される医療行為が存在する状態をいうと解するのが相当である。 で認定したところによれば,白内障の治療のため予定される医療行為は手術であって,原告a24については,手術が予定された状態であったとは 認められないから,要医療性を認めることができない。 これに対し ところによれば,白内障の治療のため予定される医療行為は手術であって,原告a24については,手術が予定された状態であったとは 認められないから,要医療性を認めることができない。 これに対し,原告a24は,手術は予定されていたが,その手術に至るまでの診察が経過観察としての治療である旨の主張をし,診察が治療に当たると主張する。 しかしながら,のとおり,原告a24の右眼は,加齢黄斑変性症のため 白内障手術が見送られ,手術をした左眼の視力も回復しなかったというのであるから,原告a24の加齢黄斑変性症を除外しない限り,具体的な手術の可能性は認められないといわざるを得ない。 また,原告a24は,診察のみであっても医療に該当すると主張して,その根拠として,被爆者援護法10条2項が医療の給付の範囲について,手術 だけではなく,診察を規定していること,医師が白内障であると判断した後 の診察は,同法7条が規定する健康診断に該当しないこと,同法14条は,指定医療機関の診療方針及び診療報酬は,健康保険の診療方針及び診療報酬の例によるとされていることからすると,必ずしも医学的に有効でなくとも健康保険の診療方針に該当すれば足りる旨の主張をする。 しかしながら,被爆者援護法10条2項が診察を規定しているのは,要医 療性が認められた場合における医療の給付の内容を明らかにしたものであって,主治医が診察すれば,要医療性を満たすことを示したものではない。また,白内障であると判断された後の診察が健康診断に該当しないとの解釈をとった場合に,診察が治療のため予定される医療行為に該当しなければ問題が生じるともいえない。すなわち,原爆症であると認定されるかどうかにか かわらず,白内障である被爆者は,健康診断を受けることができ,かつ,同法18条 ため予定される医療行為に該当しなければ問題が生じるともいえない。すなわち,原爆症であると認定されるかどうかにか かわらず,白内障である被爆者は,健康診断を受けることができ,かつ,同法18条により一般疾病医療費の支給が可能であるから,医療行為に該当しないとしても,問題は発生しない。さらに,同法14条も,要医療性が肯定された場合の規定であって,これらの規定によって要医療性の有無が判断されるものではない。 原告a24は,平成27年11月30日からピレノキシン点眼薬が処方されたことをもって要医療性が認められる旨の主張をする。 しかしながら,要医療性の判断は,本件申請時である平成26年9月18日を基準に判断すべきであるところ,ピレノキシン点眼薬の処方の必要性が当時存在したことまでを認めるに足りる事情ではないから,原告a24の主 張する処方をもって,本件申請時の要医療性を肯定することはできない。 以上によれば,原告a24について要医療性は認められない。 15 争点(行政手続法8条違反の有無)について認定済み原告らに対する本件各却下処分(原告a3については,申請疾病が心筋梗塞の部分に限る。)については,1のとおりであり判断を要しない。 その他の原告ら及び亡a1に対する本件各却下処分について検討する。 「一般に,法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たものであるから,その記載を欠くにおいては処分自体の取消を免かれないものといわなければならない。ところで,どの程度の記載をなすべきかは,処分の性質と理由附 記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべき 載を欠くにおいては処分自体の取消を免かれないものといわなければならない。ところで,どの程度の記載をなすべきかは,処分の性質と理由附 記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである」と解される(最高裁昭和36年第84号同38年5月31日第二小法廷判決・民集17巻4号617頁参照)。 行政手続法8条1項も,同趣旨の規定であると解される。 原告ら(ただし,認定済み原告ら及び原告bらを除く。)並びに亡a1に対 する本件各却下処分は,被爆者援護法11条1項の申請に対し,厚生労働大臣が同法11条2項に基づき審査会の意見を聴いて,同法10条の要件該当性を判断して行われるものであるから,記載の程度としては,却下の理由とその根拠が記載されていれば足りると解される。 証拠(乙C1の8,乙C2の10,乙C3の7,乙C8の5,乙C9の7, 乙C14の5,乙C15の5,乙C15の18,第2事件乙C3の6,同事件乙C5の6,同事件乙C7の4,第3事件乙C1の4,同事件乙C2の6)によれば,却下の理由として,申請書類に基づき,審査会で審議されたが,放射線起因性が認められないとの判断がされた趣旨の記載があることが,証拠(第5事件乙C2)によれば,却下の理由として,申請書類に基づき,審 査会で審議されたが,「『右白内障』については,視力低下は白内障によるものではないと考えられ,認定の際に必要な条件になっている,『現に医療を要する状態にある』と認めることはできませんでした。」と記載されていることが,それぞれ認められる。 以上によれば,原告ら(ただし,認定済み原告ら及び原告bらを除く。)並 びに亡a1に対する本件各却下処分につき,却下の理由とその根拠が記載さ れているものと認められるので,行政手続法8条違 以上によれば,原告ら(ただし,認定済み原告ら及び原告bらを除く。)並 びに亡a1に対する本件各却下処分につき,却下の理由とその根拠が記載さ れているものと認められるので,行政手続法8条違反は認められない。 16 争点(厚生労働大臣の義務違反の有無)について国賠法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するもの である(最高裁平成13年(行ツ)第82号ほか同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照)。 したがって,原爆症認定の申請に対する却下処分が放射線起因性又は要医療性の要件の充足に関する判断を誤ったため違法であるとしても,そのことから直ちに国賠法1条1項にいう違法があったと評価を受けるものではなく, 原爆症認定に関する権限を有する厚生労働大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該却下処分をしたと認め得るような事情がある場合に限り,国賠法上違法の評価を受けるものと解するのが相当である(税務署長の行う所得税の更正につき,最高裁平成元年第930号,同第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。 厚生労働大臣が原爆症認定を行うに当たっては,申請疾病が原子爆弾の傷害作用に起因すること又は起因しないことが明らかである場合を除き,疾病・障害認定審査会の意見を聴かなければならないものとされている(被爆者援護法11条2項,被爆者援護法施行令9条)。これは,原爆症認定の判断が専門的分野に属するものであることから,厚生労働大臣が処分をするに当たっ ては,原則として,必要な専門的知識経験を有する諮問 護法11条2項,被爆者援護法施行令9条)。これは,原爆症認定の判断が専門的分野に属するものであることから,厚生労働大臣が処分をするに当たっ ては,原則として,必要な専門的知識経験を有する諮問機関の意見を聴くこととし,その処分の内容を適正ならしめる趣旨によるものであり,厚生労働大臣は,特段の合理的理由がない限り,その意見を尊重することが要請されていると解される。 以上によれば,厚生労働大臣が原爆症認定申請につき審査会の意見を聴き, その意見に従って却下処分を行った場合においては,その意見が関係資料に 照らして明らかに誤りであるなど,答申された意見を尊重すべきではない特段の事情が存在し,厚生労働大臣がこれを知りながら漫然とその意見に従い却下処分をしたと認め得るような場合に限り,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該却下処分をしたものとして,国賠法上違法の評価を受けると解するのが相当である。 亡a1,原告a2,原告a3(申請疾病が高脂血症の部分に限る。),原告a5,原告a6,原告a9,原告a10,原告a12,原告a13,原告a15,原告a20,原告a23及び原告a24に対する本件各却下処分については,これらの処分は適法であるから,厚生労働大臣がこれらの処分をしたことについて,国賠法上の違法性は認められない。 認定済み原告ら,すなわち,原告a3(申請疾病が心筋梗塞の部分に限る。),原告a4,原告a7,原告a8,原告a11,原告a14,a16,原告a17,原告a18,原告a19,原告a21及び原告a22に対する本件各却下処分は,その後,取り消されているけれども,これらの処分は,厚生労働大臣が審査会の意見を聴いた上で,その意見に従ってされたものであると ころ,その意見が関係資料に照らして明 に対する本件各却下処分は,その後,取り消されているけれども,これらの処分は,厚生労働大臣が審査会の意見を聴いた上で,その意見に従ってされたものであると ころ,その意見が関係資料に照らして明らかに誤りであるなど,答申された意見を尊重すべきではない特段の事情が存在したとは認められない。 したがって,これらの本件各却下処分についても,国賠法上の違法性は認められない。 認定済み原告らは,厚生労働大臣が非科学的で不合理な基準に従い,証拠 資料を精査することなく,具体的な理由を示さずに誤った却下処分をした点が違法である旨主張する。 上記原告らについては,従前の新方針に基づき,科学的,法的専門的知見を備えた専門家から構成される医療分科会等の委員の意見を聴いた上で,本件各却下処分がなされたところ,従前の新方針については,線量評価に関す るDS02等の体系及び寄与リスクに関する諸論文があり,前者については, 今もこれに優る線量評価体系が存在せず,後者については,放影研の長年にわたる研究の積み重ねの上に立脚したものであるから,直ちに違法ということはできない。また,却下処分の理由については,上記原告らの却下処分については,放射線起因性が認められないことが記載されているから,理由不備として違法ということができない。 したがって,上記原告らの主張は採用できない。 17 争点(損害の有無)について判断を要しない。 18 結論以上のとおりであり,本件訴えのうち,厚生労働大臣が,原告a3(申請 疾病が心筋梗塞の部分に限る。),原告a4,原告a7,原告a8,原告a11,原告a14,a16,原告a17,原告a18,原告a19,原告a21及び原告a22に対し,別紙「被爆実態一覧」記載の上記各原告の「原処 梗塞の部分に限る。),原告a4,原告a7,原告a8,原告a11,原告a14,a16,原告a17,原告a18,原告a19,原告a21及び原告a22に対し,別紙「被爆実態一覧」記載の上記各原告の「原処分」欄記載の日付でした被爆者援護法11条1項の認定申請に対する各却下処分の取消しを求める部分については,不適法であるのでこれを却下し,上記原 告らのその余の請求及びその余の原告らの請求はいずれも理由がないのでこれを棄却する。 広島地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官小西 洋 裁判官平井健一郎 裁判官山下智史 別紙被爆実態一覧亡a1氏名 a1生年月日昭和4年○月○日性別女性 認定申請日平成17年3月11日申請疾病名甲状腺機能低下症,甲状腺腫瘤(多発性)被爆時年齢 16歳被爆地広島原処分平成18年3月27日番号厚生労働省発健第r1号 異議申立日平成18年5月9日異議申立棄却日平成22年3月18日異議申立棄却を知った日平成22年4月6日(被爆の実態)被爆地点 広島市上流川町にあった広島女学院専門学校の木造一部鉄骨3階建校舎一階の廊下(被爆距離1.2km)被爆時の状況当日授業を受けるため登校し,講堂であった礼拝が終了し教室へ帰るために友人と校舎の廊下を歩いていたところ被爆した。被爆により左目のまぶたや手を負傷 した。 被爆後の行動倒壊した校舎の下敷きとなり,自力で這い出し幟町方面から泉邸(現在の縮景園)へ避難し,夕方になり救助の船 歩いていたところ被爆した。被爆により左目のまぶたや手を負傷 した。 被爆後の行動倒壊した校舎の下敷きとなり,自力で這い出し幟町方面から泉邸(現在の縮景園)へ避難し,夕方になり救助の船で対岸へ渡り大河町の自宅まで歩いて帰った。 急性症状 被爆後1週間位して微熱が出るとともに下痢や吐き気が続いた。2週間くらいす ると髪を梳く際に多量の毛が抜け,このような状況は数か月続いた。 被爆後の症状昭和48年には,子宮筋腫となり,子宮と卵巣を摘出。平成2年には胆石症となり胆のう摘出。平成5年には,脳梗塞を発症。平成16年慢性甲状腺炎。 喫煙,飲酒歴 なし。 原告a2氏名 a2生年月日昭和18年○月○日 性別男性認定申請日平成18年9月4日申請疾病名甲状腺機能低下症被爆時年齢 2歳被爆地広島 原処分平成22年2月23日番号厚生労働省発健r2号原処分があったことを知った日平成22年3月18日異議申立日平成22年4月6日(被爆の実態)被爆地点 爆心地から2.7km地点にあった南蟹屋町の自宅被爆時の状況木造2階建の自宅1階に,両親,養父母及び祖母と一緒にいたところ,被爆した。 「ピカッ」と青白い稲光のような閃光があり,「ドーン」という爆発音がした。原爆の衝撃波により,屋根瓦が吹き飛び,窓ガラスが割れ,屋根が傾いた。ガラス 片が壁に突き刺さり,天井の一部が崩落していた。室内にいあわせた親族全員が 衝撃で横倒しになり,原告a2は,4.5m飛ばされていた。原告a2は被爆時,右耳下に切創を負った。 被爆後の行動母親に連れられて,自宅敷地内の防空壕に1時間程度避難した。自宅が被爆者の避難経路に位置し,当時食堂を経 a2は,4.5m飛ばされていた。原告a2は被爆時,右耳下に切創を負った。 被爆後の行動母親に連れられて,自宅敷地内の防空壕に1時間程度避難した。自宅が被爆者の避難経路に位置し,当時食堂を経営していたので,水を求める被爆者に母親らが 給水をした。また,自宅前の広場が臨時の救護所のようになり,母親らが被爆者に薬を塗るなどの救護活動を行った。被爆当日の夕方頃から翌日にかけて,白っぽい灰状のものが降下し,身体に付着した。大量に降下したので,母親とシーツをかぶって移動した。被爆の翌日か翌々日から,数日間,親族等の安否を確認するため,南蟹屋町や松原町付近一帯を,母親について歩き回るなどした。被爆後 も,自宅で生活をしていた。 急性症状被爆後2,3日後から,微熱と下痢が10日間くらい継続した。 被爆後の症状昭和20年末頃,目やにが出るようになり,屋外では日光がまぶしく目を細めな ければならない状態となった。この状態が小学校を卒業する頃まで継続した。また,17,8歳頃まで両まぶたの部分が腫れていた。 20代,眼精疲労,肩こり,腰痛及び心臓不整脈等が,現在まで続く。 昭和60年頃,慢性甲状腺炎により広島市立広島市民病院に3か月程度通院し,投薬治療を受ける。 平成10年,心臓病により広島市立広島市民病院に通院,現在まで投薬治療中。 平成15年7月,甲状腺機能低下症によりc1クリニックに通院,現在まで投薬治療中。 平成18年5月,慢性胃炎及び食道静脈瘤により広島市立舟入病院に通院,以後,1年に1回,内視鏡による経過観察中。 喫煙歴 なし。 その他昭和29年頃,ABCCの調査を受けた。 原告a3 氏名 a3生年月日昭和15年○月○日性別女性認定申請日平成2 察中。 喫煙歴 なし。 その他昭和29年頃,ABCCの調査を受けた。 原告a3 氏名 a3生年月日昭和15年○月○日性別女性認定申請日平成20年3月13日申請疾病名心筋梗塞,高脂血症 被爆時年齢 5歳被爆地広島原処分平成22年3月19日番号厚生労働省発健r3号原処分があったことを知った日平成22年4月22日異議申立日平成22年6月8日 (被爆の実態)被爆地点爆心地から1.5kmの距離の広島市千田町1丁目(現在の千田町1丁目)に所在する自宅(木造2階建て)の縁側に,母と弟らと一緒にいたときに,被爆した。 被爆時の状況 爆風により家屋は全壊し,原告a3は,倒壊家屋の下敷きになった。母が原告a3を助け出したが,下敷きになった際に,原告a3は,全身に打撲や擦り傷を負い,特に左耳の後側に大きな傷を受け,現在も左耳の後はくっついたままである。 被爆直後から約1週間の行動自宅付近にも火の手があがってきたので,原告a3と弟は母に連れられて御幸橋 (2.0km)のたもとのくぼ地に避難した。付近の救護所でおむすびをもらい, その夜は御幸橋で過ごした。翌7日の朝早く,原告a3は,広島日赤病院(1. 5km)の地下に連れていかれたが,塗り薬などもなく,母は,原告a3達を連れて,広島市中広町(現在の中広3丁目)にある父の兄の家に行くことにした。 途中,原告a3達を捜していた父に偶然に会い,父と一緒に父の兄の家を訪ね,そこで1週間ほど過ごした。その後,自宅(1.5km)のあった場所(千田町) に戻り,父がバラック小屋を建て,家族はそこで生活を始めた。 被爆後半年間の症状発熱,下痢を患ったと母から聞いているが,原告a3にも記憶 た。その後,自宅(1.5km)のあった場所(千田町) に戻り,父がバラック小屋を建て,家族はそこで生活を始めた。 被爆後半年間の症状発熱,下痢を患ったと母から聞いているが,原告a3にも記憶があるのは,左耳の傷と,脱毛である。左耳の後の傷が化膿し,うみがたまるので毎日ガーゼを替えてもらっており,その際,痛くて泣き叫んでいた。また,同様に脱毛となった 母親と,脱毛を隠すため布きれで頭を覆っていた。 被爆後の健康状態小学生・中学生のとき(昭和27年から昭和30年頃),原告a3は,ABCCに検査で連れていかれた。医師から右眼に異常があると言われたものの,既にその時点では手術は不可能と言われた。現在,右眼の視力はほとんどない。 平成2年10月,右手首脂肪腫摘出手術で,県立広島病院に1週間入院。 平成13年,右膝半月板切除術で,広島日赤病院に10日間入院。 平成15年6月16日,心筋梗塞カテーテル手術で広島日赤病院に2週間入院。 現在,同病院に2か月に1回の割合で通院。 喫煙歴等 飲酒の習慣は全くなく,喫煙歴はない。 その他父は,昭和42年1月,肝硬変により死亡し,母は,平成元年5月,白血病により死亡した。 原告a4 氏名 a4生年月日大正13年○月○日性別男性認定申請日平成20年6月4日申請疾病名心筋梗塞 被爆時年齢 21歳被爆地広島原処分平成22年4月27日番号厚生労働省発健r4号原処分があったことを知った日平成22年5月20日(被爆の実態) 被爆地点爆心地から1.3km地点(横川橋を渡り西に進行中のところ。手帳の記載では中広町。)被爆時の状況その日憲兵兵長であった原告a4は15名の憲兵を引率して,山手町 の実態) 被爆地点爆心地から1.3km地点(横川橋を渡り西に進行中のところ。手帳の記載では中広町。)被爆時の状況その日憲兵兵長であった原告a4は15名の憲兵を引率して,山手町の防空壕を 目指し,猫屋町の憲兵司令部を出発し,土橋の停留所で己斐~横川行きの市内電車に乗り,寺町で下車し,横川橋を渡り西に進行中であったときに被爆した。被爆した瞬間は,溶解炉の中に投げ込まれたようで,身体に熱線を感じ軍帽が吹き飛び,後頭部,首筋に火傷に負った。 被爆後の行動 被爆後数分した後,原告a4は一緒に来た憲兵4.5人と一緒に,防空壕のあった山手町の山腹に向かった。途中,下敷きになった人を助け出し,黒い雨を浴び,火傷は水ぶくれになった。ようやく山手町の防空壕に到着したが,再び市内の現状把握のために,午前9時30分頃一人で市内へと出発した。福島町~旭橋~西大橋~観音本町を歩き,市商の校庭で消火作業を手伝った。更に南観音~昭和大 橋~舟入町~江波町~(川を渡って)~吉島町の広島監獄を視察・吉島の飛行場 ~南大橋~千田町~11時頃日赤病院到着~鷹野橋~日本銀行~袋町~紙屋町~基町~正午頃西練兵場到着~憲兵司令部(基町・西練兵場)~相生橋へ行った。 そこで負傷した韓国の李遇公殿下を発見し,船に乗せて宇品に向かった。また,その後,再び鷹野橋~明治橋~住吉橋を通り猫屋町の憲兵機動隊司令部に午後8時頃到着した。憲兵機動隊司令部は多くの被爆者であふれており,看病をした。 翌7日午前3時頃司令部の建物の廊下で仮眠をとった。その後,8月7日,8日,9日と負傷者の看病を続け,市内を歩き回った。 急性症状8月7日は,火傷がひどく,全身倦怠感があり,すぐに入院するよう告げられたが,引き続き勤務した。8月9日に,大野浦の臨時陸 月7日,8日,9日と負傷者の看病を続け,市内を歩き回った。 急性症状8月7日は,火傷がひどく,全身倦怠感があり,すぐに入院するよう告げられたが,引き続き勤務した。8月9日に,大野浦の臨時陸軍病院に入院し火傷の治療 を受け,9月15日に退院した。退院後に下痢の症状に気付いた。 被爆後の健康状態昭和29年頃から夏になると白血球が急激に増え,高熱が出て寝込むような状態となった。 平成5年頃糖尿病,糖尿病性網膜症を発症した。 平成14年2月15日,心筋梗塞を発症し,サンタクルース病院(ブラジル・サンパウロ)で手術し,3日入院,その後,日伯友好病院(ブラジル・サンパウロ)で1か月入院治療を行った。現在も抗凝固剤を内服服用している状態である。 平成14年頃,左白内障を発症した。 平成15年頃,前立腺肥大症を発症した。 原告a5氏名 a5生年月日昭和7年○月○日性別女性 認定申請日平成20年6月20日 申請疾病名甲状腺機能低下症,狭心症,高血圧被爆時年齢 13歳被爆地広島原処分平成22年7月29日番号厚生労働省発健r5号原処分があったことを知った日平成22年8月31日 異議申立日平成22年9月21日(被爆の実態)被爆地点広島市舟入南町三丁目の自宅前の路上(爆心地から2.5km)被爆時の状況 上記路上において,母が近所の人と話をしていてその傍らに原告a5がいたところ,被爆した。被爆により,右下半身に火傷を負う。 被爆後の行動家の玄関前の防空壕に入った後,近所の家の部屋で数日過ごした。そして終戦となり,米英軍が上陸してくるので,女子どもは危ないと聞かされたため,四国の 松山に渡ったが,途中の旅館に一泊した 動家の玄関前の防空壕に入った後,近所の家の部屋で数日過ごした。そして終戦となり,米英軍が上陸してくるので,女子どもは危ないと聞かされたため,四国の 松山に渡ったが,途中の旅館に一泊した際に,発熱,下痢をして血便が出たため,赤痢と間違われて隔離病棟に何日間か収容された。そこで髪の毛が抜けたことがあった。そして赤痢でないことが分かり広島に帰った。 急性症状発熱,下痢,脱毛。 被爆後の症状昭和26年及び同37年頃,肝臓病。 同35年,卵巣膿腫手術。 同40年,肝臓病。 平成9年,腹部大動脈瘤手術。 原告a6氏名 a6生年月日昭和16年○月○日性別男性認定申請日平成20年3月26日 申請疾病名甲状腺機能低下症,脳梗塞後遺症被爆時年齢 4歳被爆地広島原処分平成22年7月29日番号厚生労働省発健r5号原処分があったことを知った日平成22年9月1日 異議申立日平成22年9月7日(被爆の実態)被爆地点広島市千田町(爆心地から2.5km)被爆時の状況 広島市南千田町の自宅前の路上にいたところ被爆した。 被爆後の行動被爆後,自宅が倒壊したため,千田町の修道中学校のグラウンドに避難し他の被爆者とともに野宿した。翌7日,父が,学徒動員され舟入町の工場で働いていた姉を捜すため南千田町から広島電鉄株式会社本社付近から日本赤十字病院付近を 歩いたが,原告a6はその際背負われていた。翌8日から14日まで,父が,姉を捜すため南千田町,日本赤十字病院,鷹の橋,袋町富国生命ビルの暁部隊収容所,紙屋町,八丁堀,鉄砲町と歩き回ったが,原告a6は背負われていた。 急性症状下痢,発熱の症状があったと聞いている。 被 南千田町,日本赤十字病院,鷹の橋,袋町富国生命ビルの暁部隊収容所,紙屋町,八丁堀,鉄砲町と歩き回ったが,原告a6は背負われていた。 急性症状下痢,発熱の症状があったと聞いている。 被爆後の症状 6歳の頃には,小児ぜんそく。平成11年8月,脳梗塞。同13年2月,左膝血管内上皮腫。同17年,ぜんそく。同18年,左膝内視鏡手術。同20年,甲状腺機能低下症。 原告a7 氏名 a7生年月日昭和13年○月○日性別男性認定申請日平成20年5月20日申請疾病名陳旧性心筋梗塞 被爆時年齢 7歳被爆地広島原処分平成22年7月29日番号厚生労働省発健r5号原処分があったことを知った日平成22年9月1日異議申立日平成22年9月10日 (被爆の実態)被爆地点広島市西観音町x 丁目y-z 所在の自宅(木造2階建て)の2階の居間(被爆距離1.7km)被爆時の状況 原爆投下時点,原告a7は,軽い腹痛を起こしたため,学校を休み,上記の居間で寝ていた。自宅はかろうじて倒壊を免れたものの,階段等が壊れた。原告a7は,階下からの祖父の「飛び降りろ」との指示で,飛び降り,その際,大人数人によって受け止めてもらったため,怪我をしないですんだ。 被爆後の行動 しばらくして,家屋は全焼し,黒い雨が降ってきた。原告a7の家族は,近所に 作っていた防空壕に避難し,そこで,生活を始めた。防空壕では,備蓄していた芋等を食べ,壊れた水道管からの水を飲んで1週間程度生活した。原告a7も焼け跡の整理を手伝い,1週間後の8月13日頃,父らによって,防空壕の隣にバラック小屋が建てられ,家族は,そこに移り住んだ。 急性症状 被爆以前は,すこぶる健康であった 活した。原告a7も焼け跡の整理を手伝い,1週間後の8月13日頃,父らによって,防空壕の隣にバラック小屋が建てられ,家族は,そこに移り住んだ。 急性症状 被爆以前は,すこぶる健康であったが,被爆直後から,下痢,血便を繰り返すようになり,そのような状態は,約1年間継続した。全身の倦怠感も続いた。 被爆後の症状昭和32年,身体がだるく,体調が優れないため,c11内科を受診した。急性盲腸炎と診断され,近所のc12外科に入院し,摘出手術を受けた。 昭和60年6月,c13病院で,下壁心筋梗塞と診断され,血栓溶解療法を受け,3か月入院した。一旦退院したが,半月後に1か月再入院した。その後も,入退院を繰り返し,昭和61年6月に8日間,昭和63年5月に3か月,平成元年6月,平成2年6月,平成3年6月に各3か月間の入院を,平成7年5月,平成9年9月,平成10年3月,平成14年2月に,各1週間の入院をし,治療を受け, この間,平成9年9月には,冠動脈形成手術を受けた。平成17年10月,前壁心筋梗塞と診断され,16日間入院し,ステント留置。平成18年5月,11月,6日間,それぞれ入院し,ステント留置。平成2年3月,c14整形外科でヘルニアと診断され,3か月入院。平成2年9月,広島市民病院に3か月入院し,ブロック注射等の治療を受けた。 喫煙,飲酒歴平成22年3月までは,一日20本程度の喫煙をしていたが,その後は,喫煙していない。飲酒の習慣は全くない。 原告a8 氏名 a8 生年月日昭和5年○月○日性別男性認定申請日平成20年7月23日申請疾病名心筋梗塞被爆時年齢 15歳 被爆地広島原処分平成22年6月24日番号厚生労働省発健r6号原処分があったことを 性別男性認定申請日平成20年7月23日申請疾病名心筋梗塞被爆時年齢 15歳 被爆地広島原処分平成22年6月24日番号厚生労働省発健r6号原処分があったことを知った日平成22年7月23日異議申立日平成22年9月9日(被爆の実態) 被爆地点広島市吉島羽衣町(現在の羽衣町)の自宅(被爆距離1.7km)被爆時の状況ピカッと光った後,ドーンという音がして,その後暗闇となった。南向きの部屋におり,外傷はなかった。母と妹と一緒で,妹に外傷はなかったが,母は上から 落ちたものに当り怪我をした。当初,自宅は燃えていなかっが,昼頃に,延焼し,全焼した。 被爆後の行動被爆直後,斜め前の本家が燃えていたので,防空の水を汲んで消火活動をした。 その後,母と妹を連れて,吉島飛行場の防空壕に避難し,燃える広島の空を見て 夜を過ごした。8月7日は,近隣の人が梁の下敷きになって右腕の骨が剥き出しになるという外傷を負ったため,救助のため,大八車を探し,その人を乗せて,安佐南区川内の母方の祖母の家に徒歩で移動し,避難した。午後7時頃到着した。 8月10日,芸備線矢口駅から広島駅に向かい,そこから徒歩で,勤務先の広島電信局(袋町のフコク生命ビル内)に向かった。建物の中は焼けていて執務は不 可能であり,「広島中央電話局に集まる」ようにというメモ書きに従い,「広島中 央電話局」(広島市中町)に行ったが,誰にも会えず,やむなく,浅野図書館,中電ビル,日銀等を訪ねた。午後4時頃,再び広島駅に徒歩で向かい帰宅した。8月11日以後,毎日出勤し,その際,広島郵便局付近や西練兵場など爆心地付近を歩いた。9月初旬になり,白島の逓信局で無線局を開設することとなり,同局に異動した。 急性症状 向かい帰宅した。8月11日以後,毎日出勤し,その際,広島郵便局付近や西練兵場など爆心地付近を歩いた。9月初旬になり,白島の逓信局で無線局を開設することとなり,同局に異動した。 急性症状8月8日,9日に,高熱と下痢が続いた。8月中,倦怠感がひどく,よく休む日が続いた。 被爆後の症状昭和22年~23年頃,貧血気味。治療はしていない。 昭和28年,ABCCより検査の要請あり。当時在住していた東京にて検査を受け,白血球数が3700~3800である旨伝えられる。 昭和58年,胃潰瘍。マツダ病院にて通院。 平成4年3月,心筋梗塞のため,c13総合病院にて緊急入院。ICUに1週間入り,血栓溶解療法施行。1か月余り入院治療。その他,高脂血症あり。以後,外 来通院。薬物療法を受ける。 平成4年8月,c13総合病院にて再検査。再発のおそれありと指摘される。 平成6年4月~,肝機能低下。月1回,c13総合病院に通院。内服治療を行う。 平成6年12月,顔面水泡(ヘルペス)で1週間程度入院。 平成11年1月,急性腎孟炎で通院。 平成14年4月,胃潰瘍でc13総合病院に通院。 平成15年10月,胸が痛くなり,発作性心房細動で,2日間程度入院。点滴等の治療。 平成21年1月,腎不全でc13総合病院に通院。 平成22年2月~4月,人工透析でc13総合病院に入院。 喫煙,飲酒歴 なし。 原告a9氏名 a9生年月日昭和10年○月○日 性別女性認定申請日平成19年10月30日申請疾病名甲状腺機能低下症被爆時年齢 10歳被爆地広島 原処分平成22年2月23日番号厚生労働省発健r2号原処分があったことを知った日平成22年3月6日異議申立日平成22 甲状腺機能低下症被爆時年齢 10歳被爆地広島 原処分平成22年2月23日番号厚生労働省発健r2号原処分があったことを知った日平成22年3月6日異議申立日平成22年4月16日異議申立棄却日平成23年6月24日(被爆の実態) 被爆地点爆心地から3.0km地点にあった広島市東雲町の自宅被爆時の状況木造平家建の自宅8畳間で着替えをしているときに被爆した。当時,窓は開いていた。着替えのため上半身裸になっているときに,「ピカッ」と光り,「ドン」と いう音がして,意識を失った。意識を回復したとき,タンスの下敷きになっており,背中にはすだれの竹が4,5本刺さり,流血していた。 被爆後の行動胴体にシュミーズを巻いて血止めをし,母親らと一緒に裸足で大洲町のブドウ畑に避難した。食料がなかったため,ブドウ畑のブドウを食べた。その日は,大洲 町のブドウ畑で夜を明かした。鶴見橋付近で作業中に被爆した兄が8月7日に死 亡したので,同日は葬儀のため安芸郡熊野町に行き,その日のうちに自宅に戻った。食料がないので,屋外においてあった防火用のバケツにたまった水を飲んで空腹を紛らわせていた。8月7日の夕刻から,比治山国民学校の校庭の砂場で死体の焼却を1週間くらいした。8月10日に食料の配給があるまでは,屋外に設置されていた水槽の水を飲んでいた。被爆時の背中の負傷は化膿し,治癒までに 3か月くらいかかった。 急性症状被爆して10日後頃,頭部の脱毛が始まり,2,3日後には完全脱毛の状態になった。 被爆後の症状 中学2年生頃,盲腸になる。検査の結果,白血球の数値に異常が認められ,広島赤十字・原爆病院で検査を受けた上,ABCCへ行く。 31歳頃まで,倦怠感や体調不良のため, った。 被爆後の症状 中学2年生頃,盲腸になる。検査の結果,白血球の数値に異常が認められ,広島赤十字・原爆病院で検査を受けた上,ABCCへ行く。 31歳頃まで,倦怠感や体調不良のため,段原の医療機関に通院。 30代から47歳頃まで,重度の倦怠感などで医療法人c15病院に通院。 43歳頃,公立学校共済組合中国中央病院に2回入院。 47歳頃,広島大学病院に3回入院。 47歳頃から67歳頃まで,c24医院に通院。甲状腺機能の異常及び狭心症と診断される。 67歳頃から現在まで,d2クリニックに通院。甲状腺機能低下症,高血圧,狭心症,糖尿病,変形性関節症及び乾燥症候群と診断される。社会医療法人c16 又は同病院の分院であるc17脳神経外科でMRI検査中。 その他ABCCで,複数回,検査を受けた。 原告a10 氏名 a10 生年月日昭和19年○月○日性別女性認定申請日 ①平成18年11月9日②平成20年12月25日申請疾病名 ①脳内出血後遺症,脳梗塞,貧血,高血圧症 ②脳出血後遺症,脳梗塞,甲状腺機能低下症被爆時年齢 1歳被爆地広島原処分 ①平成22年2月23日番号厚生労働省発健r2号②平成22年11月26日番号厚生労働省発健r9号 原処分があったことを知った日 ①平成22年3月18日②平成22年12月23日異議申立日 ①平成22年4月26日②平成23年1月19日異議申立棄却日 ①平成23年7月29日 (被爆の実態)被爆地点広島市東区愛宕町x-y,木造建物(平家建)内(被爆距離約2.3km)被爆時の状況原告a10は,母,三女,祖父母及び従姉妹の6人で,前記被 7月29日 (被爆の実態)被爆地点広島市東区愛宕町x-y,木造建物(平家建)内(被爆距離約2.3km)被爆時の状況原告a10は,母,三女,祖父母及び従姉妹の6人で,前記被爆地点にあった母 の実家に身を寄せて生活していた。原告a10は,当時1歳であり,被爆時の状況について記憶はないが,母によれば,家屋は倒壊を免れたものの窓ガラスが粉々になって家の中に散乱していた。被爆直後,祖父を除き防空壕に避難した。 被爆後の行動結核のため寝ていた祖父は防空壕に逃れることができなかったため,原告a10 の母らは,死亡したものと思っていたが,幸い,布団を被って難を逃れることが できた。原告a10の母は,原告a10をおんぶして,同人や三女,祖父の世話をするために,防空壕と家を行ったり来たり,また,原告a10のおしめを洗濯するために,近くの川に出かけるのが日課であった。母によれば,その際に(時間は不明)「黒い雨」にあったということを後に原告a10に話している。 急性症状 原告a10は,母から,被爆後から下痢と発熱に苦しんだこと,下痢が続くのでおしめの洗濯が大変であったとよく聞かされていた。また,母から,被爆後母乳が出なくなり,原告a10は栄養不良のためか歩くことができなかったと聞いている。原告a10が中学生くらいの頃,被爆後間もない頃に撮影したと思われる写真が見つかったが,その写真は,祖母に抱かれた頭髪のない原告a10が写っ ていた。なお,同写真は,当時父母が居住していた西宮の自宅に保管されていたが,阪神大震災に被災して紛失している。 被爆後の症状昭和34年頃,貧血でよく倒れていた。 昭和37年,就職試験のときの健康診断で高血圧と診断される。 昭和60年,身体の不調を感じて広島大学附属病 災に被災して紛失している。 被爆後の症状昭和34年頃,貧血でよく倒れていた。 昭和37年,就職試験のときの健康診断で高血圧と診断される。 昭和60年,身体の不調を感じて広島大学附属病院で診察を受けたところ,高血圧と診断され,2か月入院した。その時,貧血もあると言われ,血液検査の結果,造血機能障害と診断されて投薬治療を続けることになった。その後も同病院に通院したが,貧血と高血圧のために入退院を6回くらい繰り返した。 昭和63年頃,入院中に腹痛が起こり,胆石と診断される。胆嚢が石で一杯にな り機能しなくなっていると言われ,胆嚢の全摘手術を受ける。 平成10年4月27日,朝10時30分頃に急に顔や手がしびれ出し,水を飲みに行こうとしたところ,その場で倒れて救急車で広島大学附属病院に搬送された。 当時の意識はなく,意識が回復したのは午後7時頃であった。脳卒中(視床部脳内出血)と診断され,左半身が全く動かない状態で,言語障害もあった。その時 の後遺症(視床痛)により,顔や手の痛みがあり,医師からは「一生付き合って いかないと仕方がないでしょう」と言われている。 平成18年6月頃,視床痛を和らげるために,広島赤十字病院(日赤病院)でリハビリ治療を受けるようになり,現在も通院治療中である。 平成18年7月頃,尿の排泄がしにくくなり,日赤病院の腎臓内科で検査したところ,腎臓が萎縮しており,健康体に比べると約半分になっていた。平成18年 8月頃,夜,気が付いたらトイレの床で寝ていたため,医師に話したところ,日赤病院の脳外科でMRI検査を受け,脳梗塞と診断された。その後,左半身の麻痺が強まった。医師からは,「脳出血と脳梗塞を併発した人の治療は難しく,どちらか一つに絞って治療しなければならない。脳梗塞の治療をすると,脳内出血 I検査を受け,脳梗塞と診断された。その後,左半身の麻痺が強まった。医師からは,「脳出血と脳梗塞を併発した人の治療は難しく,どちらか一つに絞って治療しなければならない。脳梗塞の治療をすると,脳内出血が再び起こる可能性がある。あなたの場合は二度目の脳内出血になるので命の保障 はないと思って下さい」と言われている。 平成19年,日赤病院で甲状腺機能低下症と診断され,現在も投薬治療中である。 平成20年1月,急に食欲がなくなり,腹部が腫れてきたので消化器科でエコー検査を受けたところ,腸に水が溜まっていることが判明した。大腸ファイバーでも検査したが原因ははっきりせず,やせるばかりとなり,体重は約20kgも減 った。1月8日に日赤病院に入院し腸閉塞と診断され,約2か月後に退院した。 医師からは「この病気はもう治らない」と言われ,現在も投薬治療を続け,薬によって大腸を動かしている状況にあるが,すぐに水が溜まり薬も排泄してしまうので,薬の量も増え,栄養も十分摂れない状態が続いている。また,腎臓病も悪化しており,すぐに脱水症状になり,その都度点滴治療を受けている。広島大学 附属病院では,アルデントストロン症と診断された。 平成21年10月7日,日赤病院で大腸全摘手術を受け,小腸と直腸を繋いでいるが,そのため水分の吸収ができず,腎臓も悪化している。現在に至るまで日赤病院に通院している。 原告a11 氏名 a11生年月日昭和18年○月○日性別男性認定申請日 ①平成20年3月28日②平成22年1月15日 申請疾病名 ①前立腺がん ②胃がん被爆時年齢 1歳8か月被爆地広島原処分 ①平成22年5月27日番号厚生労働省発健r7号②平成23年6月24日番号厚生労働 日 申請疾病名 ①前立腺がん ②胃がん被爆時年齢 1歳8か月被爆地広島原処分 ①平成22年5月27日番号厚生労働省発健r7号②平成23年6月24日番号厚生労働省発健r8号 原処分があったことを知った日 ①平成22年6月25日②平成23年7月22日異議申立日 ①平成22年7月5日②平成23年8月19日異議申立棄却日 ①平成23年10月28日 (被爆の実態)被爆地点爆心地から4.0km地点(現在・広島市南区宇品御幸5丁目y 番z 号にかつて自宅があった)被爆時の状況 当時,原告a11は1歳8か月で,同人の姉2名(j1,j2)や近所の人(j3さん)と宇品御幸5丁目の自宅(中心地点より4.0km)の前の道路で遊んでもらっていた時に被爆した。 被爆後の行動自宅は床柱がずれて,畳が陥没した状態になったが,倒壊したり,火事に遭うこ ともなかったため,居住できる状態だったので,そこに住み続けた。家の中や家 のそばで遊んでいた。8月17日に母親と一緒に,広島市南区皆実町1丁目にあった母親の叔父(j4)が住んでいた家の様子を見に行ったが,その家は火災で焼けて何もなかったと聞いている。 急性症状小さい頃(物心ついてから)には,よく下痢と鼻血をしていたことを覚えている。 被爆後の症状昭和30年頃,心臓弁膜症に罹患し,国立病院小児科に2年余り通院した。 昭和63年頃,糖尿病や高血圧症を発病して入院して治療を受け,現在も通院して治療を受けている。 平成6年頃,広島大学附属病院の整形外科で左腕に前骨間神経麻痺により2回手 術を受けた。親指の機能は回復せず,握力がなく,物をつかむことができず,つかんでもすぐ落としたり 治療を受けている。 平成6年頃,広島大学附属病院の整形外科で左腕に前骨間神経麻痺により2回手 術を受けた。親指の機能は回復せず,握力がなく,物をつかむことができず,つかんでもすぐ落としたり,日常生活での不便がある(身体障害5級)。また,広島市s1区t1のc18整形外科病院で,血行障害(レイノー病)と診断されている。 平成18年頃,白内障とc19眼科(広島s2区t2)で診断されて,定期的に 通院してきている(広島県立病院,中電病院)。 平成20年1月,広島市民病院で胃がんのがん細胞を内視鏡で切除する手術を受けた。術後の経過(検査)や治療のため,c20内科(広島市s2区t3)に通院していたが,現在は,c21内科(広島市s1区t4)及びc22クリニック(広島市s2区t5)で通院している。 平成20年2月,広島大学附属病院で前立腺がんと診断され,同病院の紹介で高密度焦点式超音波治療手術をc23病院で受け,現在は,広島県立病院で定期的に通院治療している。 平成20年8月,吉島病院で脊柱間狭窄症の手術を受けた。痛みや歩行困難は現在でも多少続いている。 原告a12氏名 a12生年月日昭和12年○月○日性別男性認定申請日平成20年4月25日 申請疾病名心筋梗塞被爆時年齢 7歳被爆地広島原処分平成22年7月29日番号厚生労働省発健r5号原処分があったことを知った日平成22年8月30日 異議申立日平成22年9月16日異議申立棄却日平成24年1月27日異議申立棄却があったことを知った日平成24年2月17日(被爆の実態)原爆投下時の状況 当時7歳(小学3年生)で,疎開先の広島県加茂郡原村(現在の広島県東広島市)で生活していた。 異議申立棄却があったことを知った日平成24年2月17日(被爆の実態)原爆投下時の状況 当時7歳(小学3年生)で,疎開先の広島県加茂郡原村(現在の広島県東広島市)で生活していた。 被爆の状況原告a12は,昭和20年8月12日,広島市内に住んでいた家族や親戚に会ったり,安否を確認するため,広島市内に向かった。原告a12は,姉らと一緒に, 早朝疎開先を出発し,国鉄の線路伝いに歩き続け,その日の午後4時か5時頃,爆心地から1.5kmの猿猴橋にある自宅付近に着いた。自宅は跡形もなく倒壊していた。付近に家族はおらず,原告a12らは,しばらく,市内中心部に向かい,歩きながら,家族を捜したが,見つからなかった。夜遅くなり,泊めてもらおうと,原告a12らは,牛田町の親戚の家を訪ねたところ,同じようにその家 を訪ねてきた父らと再会した。8月13日,原告a12らは,自宅の跡地に行き, 倒壊した自宅や近所の家屋の廃材等を集め,自宅跡地にバラック小屋を作り,そこでの生活を始めた。原告a12は,父親から,袋町の親戚の家や十日市町の親戚の家に行き,言伝をしたり,食物を届けたり,融通してもらったりするように言われ,8月13日頃から,急造のバラック小屋で生活している袋町や十日市町の親戚を毎日のように訪ねて,父の用事を手伝った。原告a12ら家族は,食料 に事欠き,破裂した水道管から漏れ出ている水を飲んだり,近辺に散らばって放置されたままとなっている保存食,乾パンなどを拾い集め,それを食べるなどして,食料を補った。原告a12は,このような生活を,夏休み一杯,家族と続けた。9月1日,疎開先の小学校に通うため,原告a12は一旦,原に戻ったが,9月中旬,自宅に帰り,元の荒神小学校に転校して,以降,バラック小屋(自宅) で家族と生 生活を,夏休み一杯,家族と続けた。9月1日,疎開先の小学校に通うため,原告a12は一旦,原に戻ったが,9月中旬,自宅に帰り,元の荒神小学校に転校して,以降,バラック小屋(自宅) で家族と生活した。 急性症状入市して,2週間位してから,発熱,下痢が始まり,2~3か月続いた。9月から耳鳴りを患い,2年間通院した。 その後の健康状態 昭和29年1月,肺浸潤で,3~4か月通院。 昭和48年5月,胃潰瘍により,約1年通院。 昭和50年8月,変形性脊椎症で,約6か月通院。 平成4年11月,変形性脊椎症で,約3か月通院。 平成5年2月,心筋梗塞で,約1か月入院。 平成16年2月,緑内障(左)手術。 平成20年1月,胆嚢全摘手術。 平成20年1月,緑内障(右)手術。 平成20年4月以降,現在まで,心筋梗塞,緑内障の治療のため,通院を続けている。 原告a13氏名 a13生年月日昭和3年○月○日性別男性認定申請日平成21年2月16日 申請疾病名心筋梗塞被爆時年齢 16歳被爆地広島原処分平成22年11月26日番号厚生労働省発健r9号原処分があったことを知った日平成22年12月10日 異議申立日平成23年2月7日異議申立棄却日平成24年2月24日異議申立棄却があったことを知った日平成24年3月6日(被爆の実態)原爆投下時の状況 原告a13は,昭和20年8月6日当時16歳(中学2年生)で,原爆投下時,爆心地から4.1kmにある広島市南観音町の三菱重工内にいた。原告a13は,上記三菱重工内の工場内で,金属パイプの加工作業に着手してしばらくして後,所用で近くの事務所に行き,所用を済ませて,事務所を出て,屋外を工場に向か ある広島市南観音町の三菱重工内にいた。原告a13は,上記三菱重工内の工場内で,金属パイプの加工作業に着手してしばらくして後,所用で近くの事務所に行き,所用を済ませて,事務所を出て,屋外を工場に向かって徒歩で帰っている途中,突然,強い閃光がしたため,両手で頭を覆って地面 に伏せていたところ,ドカーンという大爆音と,熱風を伴った爆風に見舞われた。 工場のスレートやガラスの破片が落下し,原告a13は,破片で右手首を負傷した。原告a13は,一旦近くの防空壕に避難した後,数時間後,大竹市にある自宅に帰ろうと,三菱重工を出た。原告a13は,徒歩で北上し,西大橋,旭橋を渡り,庚午あたりについた。途中,黒い雨が降り,原告a13は,20分程度, 全身に浴びた。そして庚午あたりで西方面に向かうトラックの荷台に乗せてもら い,廿日市まで行き,そこで,トラックを降りて,廿日市駅に行った。廿日市駅で汽車を待ったが,負傷者が一杯で,なかなか乗車できず,自宅にたどり着いたのは,午後7時頃であった。 その後の入市被爆状況原告a13は,8月8日,広島市楠木町に住んでいた伯父(k1)一家の安否を 確認するために,広島市内に向かった。原告a13は,自宅を出て,己斐駅で汽車を降り,旭橋,西大橋を渡って,南下し,三菱重工に行った。出勤して午前8時頃,原告a13は,伯父一家の安否を確認するために,三菱重工を出て,徒歩で,天満川沿いを北上し,観音橋を渡り,土橋,十日市を通って,横川橋を渡って,横川方面に向かった。原告a13は,途中,学校,寺社,川土手,橋の下等 に設けられていた救護所に一つ一つ立ち寄って,伯父の所在を捜しまわった。救護所には,遺体や瀕死の人が並べられており,原告a13は,名札を確認したり,伯父かどうか確かめるために,身体に触って特徴を に設けられていた救護所に一つ一つ立ち寄って,伯父の所在を捜しまわった。救護所には,遺体や瀕死の人が並べられており,原告a13は,名札を確認したり,伯父かどうか確かめるために,身体に触って特徴を確認したりした。原告a13は,横川駅付近の救護所にも立ち寄り,捜したが伯父は見つからず,午後6時過ぎ,横川駅から汽車に乗って,自宅に向かった。8月9日,原告a13は,午前 7時30分頃横川駅につき,そこから,徒歩で,伯父一家の自宅に行った。付近一帯は焼け野原で,焼け跡から何も発見できなかった。原告は,前日と同様に,近辺の救護所(広島信用金庫,三滝の竹やぶ,陸軍病院,太田川沿いの大芝公園など)を見て回ったが,伯父一家の消息は分からずじまいであった。8月10日から同月18日までは,原告a13は,毎日,午前8時から午後1時頃まで,己 斐町の旭山で,野外の木材運搬作業に従事した。 急性症状8月15日頃から,極度の全身のだるさに見舞われるようになった(この状態は,その後も,程度の変化はあるものの現在まで続いている。)。8月下旬頃から,下痢が続き,月末頃には,歯茎からの出血,身体に紫の斑点,高熱が出た。 その後の健康状態 全身の倦怠感,食欲不振,風邪を引きやすい状態は,その後も続いている。 気力を振り絞ろうと努めても,根気や集中力を維持できず,そのような状態は,重くなったり,軽くなったりしながら,続いた。 出血すると容易に止血できない症状が出るようになり,昭和39年頃,歯科で抜歯した際,止血がなかなかできなかった。 昭和40年頃,急に意識がなくなる症状が出始め,約1年間続いた。昭和47年,虚血性心疾患と診断され,その後,治療を受ける。 平成20年10月,心筋梗塞の診断を受け,入院,その後,現在まで治療を受けて 0年頃,急に意識がなくなる症状が出始め,約1年間続いた。昭和47年,虚血性心疾患と診断され,その後,治療を受ける。 平成20年10月,心筋梗塞の診断を受け,入院,その後,現在まで治療を受けている。 原告a14氏名 a14生年月日昭和12年○月○日性別女性認定申請日平成20年6月27日 申請疾病名甲状腺機能低下症被爆時年齢 8歳被爆地広島原処分平成22年8月26日番号厚生労働省発健r10号原処分があったことを知った日平成22年9月29日 異議申立日平成22年10月22日異議申立棄却日平成24年2月24日棄却異議申立棄却を知った日平成24年3月15日(書面の送付を受けて知った。)(被爆の実態)被爆地点 向洋にあった東洋工業の社宅室内において被爆(手帳距離4.1km) 被爆時の状況爆風で,全てのガラスが割れ,ガラス片が一面に散らばっていた。 被爆後の行動8月6日東洋工業の社宅には,原告a14と母,妹(当時3歳),弟(当時11か月)の4人でいた。鷹匠町(現・本川町2丁目,爆心地から0.6km)にい たはずの家族(祖母,父,兄2人)が心配だったが,市内には入ることができないとのことで,その日は,社宅に泊まった。 8月7日から11日朝早く,向洋を出て,市内に向かった。まだ,煙が出ている広島駅を通って,牛田(饒津神社の近く)の母の実家に向かったが,そこも焼けていた。焼けただれた人が転がっていて,水を下さいと声を掛けてくるが,何 もできなかった。まもなく,近くの雑木林の中に避難している祖母と会うことができ,そこを拠点に市内へ家族捜しに出かけることになった。はっきりした記憶のある行った場所は,鷹匠町の自宅,本川小学 もできなかった。まもなく,近くの雑木林の中に避難している祖母と会うことができ,そこを拠点に市内へ家族捜しに出かけることになった。はっきりした記憶のある行った場所は,鷹匠町の自宅,本川小学校,相生橋,西練兵場である。鷹匠町の自宅(0.6km)は,あとかたもなくなっていた。原告a14は,電車道のところで,妹と弟の子守をしていて,母が自宅へ家族を捜しに行った。母は, 父の使っていた鉄兜と靴を修理するのに使う金具のようなものを持ち帰った。本川小学校に,近所の人が運ばれているという話を聞いて,本川小学校にもいった(0.3km)。この時も,校庭で弟と妹の子守をし,母だけが学校の中に入っていった。西練兵場(0.5km)にも母が家族を捜しに行った。この時も,電車道のところで子守をしていた記憶である。自宅から護国神社へ行くときにいつも 通っていた相生橋が,端が落ちて狭くなっていて,通るのが恐かった記憶がある。 それから,どこの鳥居か分からないが,何もなくなっていたところに,白い鳥居だけが立っていた記憶がある。護国神社の鳥居であったのではないか。7日以降,ほぼ毎日のように市内中心部に行き,家族を捜し回ったが見つからず,11日に,向洋の社宅へ戻った。 急性症状 典型的な急性症状についての明確な記憶はないが,一緒に行動した弟に吹き出物がたくさんできて,もうだめかも知れないと思うような重篤な状態になったことは覚えている。 その後の健康状態その後,特筆すべき大病はなかったが,近年,以下のように病気が続いている。 平成13年4月,甲状腺機能低下症。現在も治療中。 平成13年5月,白内障。現在も経過観察中。 平成13年8月,大腸がん,手術後,5年経過観察し,完治とされている。 平成14年,糖尿病。 原 年4月,甲状腺機能低下症。現在も治療中。 平成13年5月,白内障。現在も経過観察中。 平成13年8月,大腸がん,手術後,5年経過観察し,完治とされている。 平成14年,糖尿病。 原告a15氏名 a15生年月日昭和14年○月○日性別男性認定申請日平成20年9月2日 申請疾病名心筋梗塞,両白内障被爆時年齢 5歳被爆地広島原処分平成22年10月25日番号厚生労働省発健r11号原処分があったことを知った日平成22年11月27日 異議申立日平成23年1月14日異議申立棄却日平成24年2月24日異議申立棄却を知った日平成24年3月14日(被爆の実態)被爆地点 自宅(広島市仁保町朝見原)付近において被爆(距離3.5km)。 被爆時の状況凄まじい閃光の後,地面を揺るがすような音と共に爆風が吹き,2m余り飛ばされた。 被爆後の行動8月6日,自宅のガラス戸は全て吹き飛ばされ,壁は落ち,散乱して家に入れる 状態ではなかった。夜は,原告a15は,母,弟と3人で,庭に蚊帳を吊って過ごした。父親は,宇品造船所に勤務していたが,当日は,勤労奉仕に出かけたまま帰宅しなかった。 8月7日,原告a15は,母,弟と共に,昼頃から宇品の祖父母に一時避難することとし,仁保町から宇品まで徒歩で移動した。その後,祖父が父の勤労奉仕先 を問い合わせ,天神町に行っていたことが分かった。その際,天神町の地図をもらった。 8月8日早朝,原告a15は,祖父母,母,弟と共に,天神町に父親を捜しに行くこととし,電車通りから御幸橋を渡り,千田町を通って,日赤病院に立ち寄った。病院には,火傷や外傷を負った人が路上にいたが,父の姿はなく,その後, 大手町,袋 弟と共に,天神町に父親を捜しに行くこととし,電車通りから御幸橋を渡り,千田町を通って,日赤病院に立ち寄った。病院には,火傷や外傷を負った人が路上にいたが,父の姿はなく,その後, 大手町,袋町を通って,天神町に着いた。辺りは一面焼け野原で,建物もなく,地図は役立たなかった。まばらに火の手が上がり,砂埃が煤煙と共に舞い上がっていた。材木町,元柳木町,中島本町,相生橋と川辺を捜して歩いた。沢山の遺体を確認したが,父は見つからなかった。川を下って元安橋まで捜した後,紙屋町,立町,八丁堀まで歩き,福屋と中国新聞の前で茫然と立ち竦んだ。日暮れ時 になって,白神社まで歩き,帰途についた。 8月9日,祖母と弟が体調を崩したため,原告a15と祖父の二人で,父親捜しに出掛けた。自宅から日赤病院に歩いていき,院内に収容されている人々の中に父親がいないか捜したが,見つからなかった。その後,千田町から小町を通って,天神町まで歩いて行き,周辺をくまなく歩いて捜した。中島本町,元柳町,中島 新町へと焼け跡を捜し回った。壊滅した町には,手掛かりは何もなく,県立病院 にも立ち寄ったが,父親はいなかった。 8月10日から同月12日まで,数回,天神町付近に立ち入った。祖父から聞いた話では,天神町に入った回数は10回以上,全体で50kmは歩いた。 急性症状被爆後半年間は,歯茎からの出血があり,口の中が真っ赤になっていることが度々 あった。1か月過ぎた頃から,脱毛があり,ほとんど抜けてしまった。 その後の健康状態平成10年4月17日,心筋梗塞でc13病院に入院。冠動脈造影検査にて,左冠動脈前下行枝SEG7に99%の狭窄を認めた。以後,カテーテル治療継続中。 平成19年6月20日には,左冠動脈前下行枝に50%狭窄,回旋枝に50%狭 13病院に入院。冠動脈造影検査にて,左冠動脈前下行枝SEG7に99%の狭窄を認めた。以後,カテーテル治療継続中。 平成19年6月20日には,左冠動脈前下行枝に50%狭窄,回旋枝に50%狭 窄。末梢に99%の狭窄を認め,平成24年4月26日,右冠動脈50%の狭窄,左前下行枝75%の狭窄,左回旋枝に50%の狭窄,末梢に90%の狭窄を認める。その他,糖尿病,高血圧,高脂血症があり,平成20年8月には,両白内障と診断され,水晶体に核混濁が認められている。 a16氏名 a16生年月日昭和9年○月○日性別男性認定申請日平成23年7月13日 申請疾病名急性心筋梗塞被爆時年齢 11歳被爆地広島原処分平成24年1月27日番号厚生労働省発健r12号原処分があったことを知った日平成24年2月21日 異議申立日平成24年3月2日 異議申立棄却日平成24年7月27日異議申立棄却を知った日平成24年8月13日(被爆の実態)被爆時点a16は,当時11歳(国民学校5年生)で,原爆投下地点,市立白島国民学校 の木造校舎2階教室内にいた(爆心地からの距離1.5km)。 被爆時の状況強烈な閃光・爆風で,校舎は瞬時に倒壊し,a16はその下敷きになった。 被爆後の行動被爆後,しばらくは意識がもうろうとしていたが,意識が回復した後,a16は, 倒壊した木材等に挟まれた身体をよじりながらその場から這い出した。校舎の一部からは,火の手が上がっており,a16は,西方向にある自宅(西白島町x 番地・1.3km)に徒歩で向かった。途中,ほとんどの家屋は倒壊しており,あちこちに火災が発生し,負傷した多くの人が避難しており,a16の自宅も全壊し延焼していた。a16は,し る自宅(西白島町x 番地・1.3km)に徒歩で向かった。途中,ほとんどの家屋は倒壊しており,あちこちに火災が発生し,負傷した多くの人が避難しており,a16の自宅も全壊し延焼していた。a16は,しばらくは,その場で,自宅にいたと思われる姉の k2,弟のk3らを捜したが,見つからず,そのうち,火勢が強くなったため,a16は,多くの避難者と一緒に北に向かい,川土手に逃れた。a16は,中三田にいる祖母(l1)の家に避難しようと,安芸矢口駅まで徒歩で行ったが,途中,牛田付近で雨が降り,しばらく全身に浴びた。a16は,負傷者・避難者で満員の汽車に乗り,午後3時頃,中三田駅を降り,近くの祖母の家に着いた。 a16は,8月7日は,中三田駅に行き,その日一日,家族を捜し待ち受けたが,家族には会えず仕舞いであった。 8月8日早朝,a16は,原爆投下時に市内にいた父(l2)や兄弟ら家族の消息を捜しに汽車で市内に向かい,安芸矢口駅で降りた後,牛田の神田橋,白島国民学校,自宅付近と歩き回った。途中,川面には,多くの遺体が流れ,川土手や 空き地には遺体が収容され,収容しきれずに,放置されたままの遺体もあちこち にあった。a16は,自宅の焼け跡でまだ熱い灰の中を,家族を捜したが,家族の遺体らしいものは見つからなかった。a16は,近所の知り合いから,k3に似た子が勧業銀行に収容されていると聞かされ,そこに行き,多くの遺体や収容されている負傷者を丹念に見て回ったが,見つからなかった。その後,a16は,収容先の中国新聞社,福屋百貨店,帝国銀行等に行き,家族を捜したが,見つけ ることはできなかった。a16は,紙屋町を通って,相生橋の東土手を北上し,夕方,白島の長寿園付近に着いた。川土手では,遺体が燃やされ,負傷者は,ゴザやムシロの上に横たわっ 族を捜したが,見つけ ることはできなかった。a16は,紙屋町を通って,相生橋の東土手を北上し,夕方,白島の長寿園付近に着いた。川土手では,遺体が燃やされ,負傷者は,ゴザやムシロの上に横たわっていた。a16は,遅くなったので,祖母宅に戻ることは諦め,この日,付近で野宿した。8月9日,a16は,まず,自宅付近に行き,さらに,市内のあちこちの収容先に行って,手掛かりを求め,捜して回った が,家族は見つからなかった。a16は,その後,祖母宅から,市内に行き,家族を捜す行動を,3日ほど続けたが,家族の行方は分からないままであった。 急性症状被爆後半年の間,a16は,下痢,嘔吐,脱毛,高熱に見舞われた。 その後の健康状態 13歳の頃(昭和22年頃)にも,高熱,関節痛にかかり,身動きができない状態が続き,三菱病院に入院した。 平成7年,近医で,高血圧と診断された。 その後,高血圧性心疾患と診断された。 平成22年12月,心筋梗塞と診断され,入院。 平成23年4月,8月,心筋梗塞で入院した。 原告a17氏名 a17生年月日昭和15年○月○日 性別女性 認定申請日平成21年12月15日申請疾病名甲状腺機能低下症,糖尿病,慢性関節リウマチ被爆時年齢 4歳被爆地広島原処分平成23年2月25日番号厚生労働省発健r13号 原処分があったことを知った日平成23年3月8日異議申立日平成23年4月18日異議申立棄却日平成24年4月27日異議申立棄却を知った日平成24年5月16日(被爆の実態) 被爆地点爆心地から4.0km地点の広島市古田町大字古江の自宅被爆時の状況屋外で妹とままごと遊びをしていたときに被爆した。 「ピカッ」と光り 平成24年5月16日(被爆の実態) 被爆地点爆心地から4.0km地点の広島市古田町大字古江の自宅被爆時の状況屋外で妹とままごと遊びをしていたときに被爆した。 「ピカッ」と光り,大きな「ドーン」という音がした。衝撃で建物が壊れるくらい揺れた。その後,母がいた畑 に妹と一緒に行き,そこで「黒い雨」を浴びた。 被爆後の行動8月6日は,自宅近くにあった防空壕に避難した。 8月7日の朝から,母親の引く荷車に乗り,親戚を捜しに舟入町の羽田別荘付近まで行った。道中,母親は,道路脇の遺体の口を開け,歯で身元の確認をしてい た。その後,舟入付近の校庭と思われるところで,安置されていた遺体の中から親戚の遺体を見つけ,荷車に乗せて夕方頃自宅に帰って火葬した。また,8月10日頃,母親に連れられて草津の学校に行った。自宅は倒壊を免れていたので,舟入で被爆した親戚が9人くらい避難してきた。全員ひどいやけどをしており,焼き場で拾った人骨を石臼で粉状にして,患部に振りかけた。また,身体から蛆 をとった。中には,全身に小豆色の斑点が出て,血を吐く者もいた。年内には, ほぼ全員が死亡した。 急性症状発熱,下痢。 被爆後の症状昭和59年頃,倦怠感によりc24小児科内科アレルギー科を受診した。血液検 査の結果,甲状腺機能低下症を指摘された。現在,c25医院で治療中である。 平成5年,子宮筋腫の手術を受けた(広島赤十字・原爆病院)。 平成6年頃,糖尿病。現在,c25医院で治療中である。 平成16年頃,慢性関節リウマチ。広島市立広島市民病院に入院した。現在,c26クリニックで治療中である。 原告a18氏名 a18生年月日昭和15年○月○日性別女性 認定申請日平成23年12 。広島市立広島市民病院に入院した。現在,c26クリニックで治療中である。 原告a18氏名 a18生年月日昭和15年○月○日性別女性 認定申請日平成23年12月20日申請疾病名甲状腺機能低下症被爆時年齢 5歳被爆地広島原処分平成24年6月29日番号厚生労働省発健r14号 原処分があったことを知った日平成24年7月14日異議申立日平成24年9月11日(被爆の実態)被爆地点爆心地から2.0km地点の広島市千田町三丁目の自宅 被爆時の状況 自宅の前のm1宅の裏庭で同人とタライに水を汲んで遊んでいるときに被爆した。 ピカッと光り,ドーンと大きな轟音がしたので,親指で耳を塞ぎ,後4本の指で目を押さえて縁側に伏せた。どのくらいの時間か分からないが,気を失っていた。 気付いたときには,家屋は倒れ,崩れ落ちた壁の下敷きになっていた。母m2が,「a18,a18」と叫びながら助け出してくれた。 被爆後の行動母と一緒に御幸橋を渡り,宇品御幸2丁目にあった宇品陸軍糧秣支廠へ避難した。 そこでは辺り一面にむしろが敷かれ,多くの被災者が寝かされ,白い粉薬を全身に塗られ横たわっていた。野宿した日以外の日は,糧秣支廠で夜を過ごしたが,朝になると被災者たちは次々と息絶えていった。その日の夕方,母と糧秣支廠を 出て,千田町の自宅まで帰る予定だったが,千田町辺りは火の手があがり,自宅に帰ることができなかった。その夜は,御幸橋のたもとで野宿をした。翌日(8月7日),自宅まで帰ることができたが,全焼していた。同日夜も,御幸橋のたもとで野宿した。仕事で呉市に行き,8月6日以降,消息不明だった父m3にも,8月8日,会うことができた。千田町の自宅は,全焼し,住む家もなく まで帰ることができたが,全焼していた。同日夜も,御幸橋のたもとで野宿した。仕事で呉市に行き,8月6日以降,消息不明だった父m3にも,8月8日,会うことができた。千田町の自宅は,全焼し,住む家もなく,被爆一 週間した頃,母の故郷である山県郡大朝町へ,父,母と3人で帰ることにした。 急性症状大朝町に避難して間もなく,髪の毛が抜け始め,ほとんど抜けて脱毛し,また,よく虫に刺され,刺されたところが,すぐ化膿しておできになった。荷車に乗せられて,大朝町の医院に通院して白い薬を塗られた。なお,母は,平成22年1 月10日,胃がんのため死亡した。 被爆後の症状12歳頃まで2~3か月に一度,急性じんましんに罹り,発熱や激しい痒みに悶々とし,いくつかの病院に行ったが,どこに行っても特効薬はなく,内服薬を服用すれば,眠気がさすので,飲むことができず,漢方薬を飲んだりした。昭和37 年夏より頻脈に悩むようになった。血圧は上が70,下が40となり,脈拍数も 200回くらいになった。立っていることもできず,静かに1~2時間くらい横たわっていると治るという状態が続いた。平成6年頃より肛門近くに腫瘍ができて,平成10年より排便の度に出血していたため,井口町の自宅近くの医院で診察をしてもらったところ良性だと診断されたので,平成12年の60歳まで我慢し放置していた。この腫瘍ががん化していたことが判明し,平成12年11月2 1日,安佐市民病院で直腸がんの手術を受けた。術後は,済生会広島病院で経過観察と大腸内視鏡検査を受けるため,5年間通院した。平成18年10月5日,頻脈不整脈のため,岡山大学病院で心臓手術をした。その際,全身のCT,MRIの検査などを受け,甲状腺異常が発見され,以後,同病院で経過観察をし,平成22年7月17日,c1クリ 平成18年10月5日,頻脈不整脈のため,岡山大学病院で心臓手術をした。その際,全身のCT,MRIの検査などを受け,甲状腺異常が発見され,以後,同病院で経過観察をし,平成22年7月17日,c1クリニックで甲状腺機能低下症の診断を受け,以後, 治療を受けてきている。甲状腺剤(チラージンS25μg)を服用しなければならない状態が続いている。人一倍疲れやすく,食欲もないが,寮母として働かなければならず,食べるよう努力する毎日が続いている。 原告a19 氏名 a19生年月日昭和18年○月○日性別女性認定申請日平成21年3月9日申請疾病名甲状腺機能低下症 被爆時年齢 1歳被爆地広島原処分平成23年1月26日番号厚生労働省発健r15号原処分があったことを知った日平成23年2月23日異議申立日平成23年3月25日 異議申立棄却日平成24年7月27日 (被爆の実態)被爆地点爆心地から3.2kmの自宅(広島市庚午北町8丁目)の庭先(屋外)被爆時の状況自宅庭先にいた時に被爆。その夜は自宅で休む。 被爆後の行動翌7日に,両親に連れられて,姉(n1)を捜すため,看護婦として働いていた相生橋近くにあった陸軍病院へ行き,その後も7日,8日,9日と行った。 急性症状下痢,発熱が,2か月続いた。 被爆後の症状幼い頃から病弱,当時のABCCの呼び出しに応じていろいろな検査を受けていた。その中で尿の異常を指摘されたこともあった。 その後の健康状態昭和61年乳がんで右乳房切除。その後も体調不良。 その後,平成17年1月頃原爆検診の際,血液検査により,甲状腺機能低下症を指摘される。 平成17年7月25日,c1クリニック初診。チ 昭和61年乳がんで右乳房切除。その後も体調不良。 その後,平成17年1月頃原爆検診の際,血液検査により,甲状腺機能低下症を指摘される。 平成17年7月25日,c1クリニック初診。チラージン服用開始。 平成18年6月16日,体調不良により広島市立舟入病院入院。退院後も平成19年6月,21年3月と体調不良により救急車で運ばれることあり。 原告a20氏名 a20生年月日昭和5年○月○日性別女性 認定申請日平成22年3月25日 申請疾病名甲状腺機能低下症被爆時年齢 14歳被爆地広島原処分平成23年7月29日番号厚生労働省発健r16号原処分があったことを知った日平成23年8月12日 異議申立日平成23年8月23日異議申立棄却日平成24年7月27日異議申立棄却を知った日平成24年8月4日(被爆の実態)被爆地点 皆実町三丁目にあった電鉄家政女学校の木造講堂内で被爆(爆心地からの距離2. 5km)被爆時の状況当時,電鉄家政女学校の学生であったが,実家は高田郡北村にあったため,同学校の敷地内にある寮に入り,そこに住んでいた。昭和20年8月6日は,午後か ら学校の実習(広島電鉄の電車の車掌としての実務実習)が予定されており,午前中は,8時半からの授業を受けることになっていた。空襲警報が出されたので,学校敷地内にあった防空壕へと避難したが,その後,警報が解除になったため,寮に戻り,支度をした。8時過ぎに寮を出て,教室に向かったが,授業の開始までの間,いつものように講堂内で友達と雑談をしていたところ,突然,薄暗い講 堂内がピカッと明るくなり,次の瞬間には,ドンとものすごい爆音がし,講堂の窓ガラスが割れて飛び散り,講堂内に の開始までの間,いつものように講堂内で友達と雑談をしていたところ,突然,薄暗い講 堂内がピカッと明るくなり,次の瞬間には,ドンとものすごい爆音がし,講堂の窓ガラスが割れて飛び散り,講堂内にあった黒板等は全て倒れた。いつも訓練で空襲等の非常時に備え,何かあれば伏せるという訓練をしていたため,何が起こったのか分からないまま,床に伏せた。講堂建物の壁や屋根は無事で倒壊・落下することはなく,また,講堂の窓は小さいものしかなかったので,講堂内にいた 人は,けがをすることはなかった。 被爆後の行動何事が起ったのか分からないまま,すぐに友達3人と一緒に講堂の外に出た。外は,埃か何かが舞っているような状態で,晴れの日だったにもかかわらず,太陽が見えなかった。周囲は,倒壊した建物もあったが,まだ火事は起きていなかった。広島市内の中心部は火で燃えているように見えた。いつの間にか近くに学校 の先生がおり,とりあえず,鈴が峰にあった実践女学校のある西方向の山の方へ避難しようと言われたため,歩いて向かうことになった。途中,燃えてしまって渡れない橋があったので,渡ることのできる橋を通り,国鉄の己斐駅に着いた。 己斐駅に着いたのは,夕方頃である。知っている場所に着き,一安心した。その後,誰ともなく,鈴が峰にあった実践女学校が避難所になっていると聞いた。己 斐駅からは,線路があったので,線路沿いに歩いて実践女学校に向かった。実践女学校に着いたときには,周囲は真っ暗になっていた。そこには,すでにたくさんの被爆者が避難してきており,火傷等がひどく,死んだように動かない人も多数運ばれてきていた。その講堂内で寝泊まりすることにした。2~3日くらいしてから,広島電鉄の人から,電車が動くようになったので,すぐに車掌として働 いてくれないかと 死んだように動かない人も多数運ばれてきていた。その講堂内で寝泊まりすることにした。2~3日くらいしてから,広島電鉄の人から,電車が動くようになったので,すぐに車掌として働 いてくれないかと言われた。そこからは,友達らと,宮島駅から己斐駅まで往復する電車の車掌として働くことになった。広電の市内線は,原爆のため,線路上で止まったままの電車があったことから,昼から仕事が休みの日等には,同級生を捜しに市内線の電車の線路をたどり,土橋あたりまで,2~3回,捜しに行ったが,誰も見つけることはできなかった。8月末までは,広電の車掌をしながら, 実践女学校の講堂で寝泊まりしていたが,口の中の粘膜が剥がれ,出血があり,食べたり飲んだりできなくなったので,車掌の仕事をやめて,実家に帰った。実家に戻ってから,すぐに頭の髪の毛がほとんど抜け落ち,顔が真っ黒になり,血便が出た。田舎で医者がいなかったので,自宅で療養した。昭和21年6月頃,家政女学校の事務所を訪ね,り災証明書をもらった。以後は,実家で農業をし, その後,結婚した。 急性症状脱毛,血便,口内の粘膜や唇の皮が剥がれた。 被爆後の症状貧血(18歳くらいから),めまい(18歳くらいから),昭和35年頃,田舎の健康診断で甲状腺が悪いと言われ,広大病院で検査(異常なし)。昭和38年頃, 健康診断で甲状腺が悪いと言われ,再度,広大病院で検査(異常なし)。昭和46年頃,大手町のd4内科で甲状腺機能低下症と診断され,通院。平成3年4月,d3クリニック病院へ通院。平成21年7月,c5内科へ通院し現在に至る。 喫煙歴なし。 原告a21氏名 a21生年月日昭和17年○月○日性別男性 認定申請日平成21年12月17日申請疾病名甲状腺 科へ通院し現在に至る。 喫煙歴なし。 原告a21氏名 a21生年月日昭和17年○月○日性別男性 認定申請日平成21年12月17日申請疾病名甲状腺機能低下症被爆時年齢 2歳9か月被爆地広島原処分平成23年6月24日番号厚生労働省発健r17号 原処分があったことを知った日平成24年8月13日異議申立日平成23年8月9日異議申立棄却日平成24年7月27日(被爆の実態)被爆地点 爆心地から3.3kmの地点にあった広島市宇品町神田5丁目の自宅屋外 被爆時の状況屋外で遊んでいた時,爆風で飛んできたガラスの破片で足にけが(傷跡あり)をしたことは記憶している。 被爆後の行動翌7日には,母に連れられて市内中心部に入った。母のいとこを捜すために,自 宅から市内中心部(小町・流川町など)を数時間歩き回った。 急性症状被爆後,当分の間,発熱と下痢が続いた。 被爆後の健康状態幼い時から病弱で,社会人になってからも,内臓疾患(肝臓,心臓機能障害,慢 性膵炎,慢性胃炎等),平衡感覚機能障害,白内障,脊椎変形狭窄など次々と発病した。 50歳過ぎより,異常に体がだるい,声が出にくくかすれる,体温調整ができないなどの体調不良が出始めた。しかし,会社の健康診断や原爆定期健診の諸検査でも原因不明であった。 原告a21は,原爆定期健診を平成8年から受診していたが,平成18年に甲状腺検査が初めてあった際,検査値が異常と指摘された。同所から,甲状腺の専門医であるc1医師の紹介を得て,同年11月に甲状腺細胞検査の結果等から,甲状腺機能低下症は放射線に起因したものと診断された。それ以降,毎日薬が手放せず,体はだるく,声もかすれて出し ら,甲状腺の専門医であるc1医師の紹介を得て,同年11月に甲状腺細胞検査の結果等から,甲状腺機能低下症は放射線に起因したものと診断された。それ以降,毎日薬が手放せず,体はだるく,声もかすれて出しづらく,手足がとても冷える等の毎日であ り,定期的な通院と検査を続けている。 喫煙,飲酒歴なし。 補足(甲状腺以外の病気について)白内障 被爆後,子ども時代から視力が弱く,ぼんやり感が常にあり,見づらく,中学か ら眼鏡をかけている。社会人時代も常に「かすみ」や「まぶしさ感」があったが,全国転勤族であったため,詳しい検査も受けず経過した。平成15年10月に専門病院で検査を受け,「白内障」であったことが判明した。しかも「後嚢下混濁」があるとのことなので,放射性白内障とも考えられる。現在も4か月に1回,通院している。 心臓社会人時代の会社健康診断で,その都度「不整脈」が指摘され,「注意するよう」指導されており,時折胸に圧迫感があり,不安を抱えている。 原告a22 氏名 a22生年月日昭和19年○月○日性別男性認定申請日平成23年5月13日申請疾病名甲状腺機能低下症 被爆時年齢満1歳7か月被爆地広島原処分平成24年1月27日番号厚生労働省発健r12号原処分があったことを知った日平成24年2月21日異議申立日平成24年3月22日 異議申立棄却日平成24年8月31日異議申立棄却を知った日平成24年9月13日(被爆の実態)被爆地点爆心地から1.4kmの地点にあった広島市草津南町x 番地の自宅の建物内 被爆時の状況 母と一緒に自宅にいた。 被爆後の行動8月7日に①南三篠のo1の安否と,②舟入川口町に住んで 爆心地から1.4kmの地点にあった広島市草津南町x 番地の自宅の建物内 被爆時の状況 母と一緒に自宅にいた。 被爆後の行動8月7日に①南三篠のo1の安否と,②舟入川口町に住んでいた義父母o2・o3の安否を尋ねるために,同日8時から15時頃,母と共に草津,古江,己斐,福島を通って,南三篠,天満町,小網町,舟入川口町(ここで祖母と会う),住吉 橋,明治橋,大手町8丁目,同日14時から17時頃まで,明治橋,観音橋,福島橋,己斐,草津南町をいずれも徒歩で,母o4を同伴者としていた。当日会った人は,o1とo5である。 急性症状母によると,私は被爆2日後の8月9日から体中に発疹ができ,発熱・下痢をし, 脱毛もあった。 被爆後の健康状態昭和50年から気管が弱く,頻繁に咽頭が赤くなり,気管支炎になった。現在もc25耳鼻咽喉科にて治療中。 平成9年7月c1クリニック(s1区t6)で甲状腺機能低下症と診断された。 現在もc13病院で治療中である。 平成13年,便の潜血反応が出たので,c26外科にて大腸内視鏡検査を受けたところ,憩室が何か所かあると言われた。 平成16年4月,腹痛が起こり,中電病院に入院。腹膜炎と診断され,緊急手術を行った。別に破れているところもあり,再手術で3か月入院した。 平成16年12月,腹痛が起き,胃カメラの検査により,胃と胆のうを切除すると言われ不安を感じ,再び胃と腸の検査を受けたところ,8㎝大の腫瘍が見つかり,胃がんと診断された。そして,広島赤十字原爆病院で平成17年2月に胃の4分の3を切除した。原告a22は,平成20年10月21日付で,「胃がん」を認定疾病名として,原爆症の認定を受けている。ただし,平成23年には,術後 5年以上の再発,転移を認めないとのことで中止 分の3を切除した。原告a22は,平成20年10月21日付で,「胃がん」を認定疾病名として,原爆症の認定を受けている。ただし,平成23年には,術後 5年以上の再発,転移を認めないとのことで中止となった。 平成11年4月,目の調子が悪いため,中区大手町c27眼科にて検査を受けたところ,白内障があると言われ,現在も診察を受けている。 家族の病気等父はリンパ腫がん,母は胆のう膵臓がんで死亡。3人の男兄弟の二男は,白血病で死亡,弟は膀胱がんで現在も治療中。父母が被爆したことに関連があると思う。 原告a23氏名 a23生年月日昭和16年○月○日性別男性 認定申請日平成24年6月21日申請疾病名白内障,急性心筋梗塞被爆時年齢 3歳被爆地広島原処分平成24年12月14日番号厚生労働省発健r18号 原処分があったことを知った日平成25年1月17日異議申立日平成25年2月18日(被爆の実態)被爆地点爆心地から2.3km地点の広島市牛田町の自宅 被爆時の状況自宅(平屋藁葺)にいて,飛行機の音がしたので,遮へい物のない濡れ縁(敷居の外側につけられた軒下の廊下)に踏み出ようとしたところで被爆(2.3km)。 鴨居に掛けてあった額縁が落下し,肩間中央に5cmほどの外傷を負い,顔面も火傷したので,油を塗り,野草による民間治療をした。13歳の姉(f2,平成 23年8月4日死亡)は,原告a23の手を引き,1歳の弟を脇に抱え裏山に避 難した。自宅家屋は消失した。 被爆後の行動その後,山から自宅に戻ると,家は全焼のため自宅の西北100mほど離れた親戚(f3)の家に身を寄せた。原告a23の父母は,当日,基町の陸軍基町倉庫(1.2km)の屋根瓦を下ろす 被爆後の行動その後,山から自宅に戻ると,家は全焼のため自宅の西北100mほど離れた親戚(f3)の家に身を寄せた。原告a23の父母は,当日,基町の陸軍基町倉庫(1.2km)の屋根瓦を下ろす作業に出掛け,作業中に被爆した。叔父(f3) が2人を捜しに行き,意識不明の父母をリヤカーに乗せ同人宅に運んだ。原告a23は,重症の父母らと叔父宅で,以後3年間,共同生活をしたが,原告a23の父は,被爆3日後の8月9日,死亡した。原告の母は,昭和39年頃,脳出血で倒れ,右半身不随となり,昭和49年4月24日,62歳で死亡した。 急性症状 下痢。 被爆後の症状平成15年8月30日,硬膜下血腫のため,c28外科病院で頭蓋骨にドリルで穴を開け,血を抜く手術を実施。 平成15年,下肢静脈瘤のため,広島逓信病院で血管40cm取り除く手術を実 施。 平成15年12月9日,不安定狭心症,広島市民病院でカテーテル手術の結果,99%狭窄のためステントを挿入。 平成17年12月2日,c29眼科医院において,両白内障と診断を受ける。 平成19年4月25日,小脳出血により,広島市民病院に入院(22日)して治 療後,中電病院に転医し40日入院。現在,広島市民病院に通院治療中。 平成21年3月31日,急性心筋梗塞のため,4月1日,広島市民病院に緊急入院し,PCI施行をしたが不成功のため,以後,内服治療中。 平成24年5月8日,白内障(両眼)により,広島市民病院で,左眼の白内障手術を行った。 原告a24氏名 a24生年月日大正15年○月○日性別男性認定申請日平成26年9月18日 申請疾病名右白内障被爆時年齢 19歳被爆地広島原処分平成27年6月15日番号厚生労働省発健r19 日大正15年○月○日性別男性認定申請日平成26年9月18日 申請疾病名右白内障被爆時年齢 19歳被爆地広島原処分平成27年6月15日番号厚生労働省発健r19号原処分があったことを知った日平成27年7月15日 (被爆の実態)被爆地点広島赤十字病院(爆心地からの距離1.5km)の北病棟の3階建物内被爆時の状況当時,19歳であった原告a24は,蓄膿症手術のため,広島赤十字病院に入院 していた。昭和20年8月6日,原告a24は,警戒警報が解除されたので,北病棟3階の病室内の北向き窓のカーテンを開け,窓辺で同室であったp1さんと立ち話をしていたところ,原子爆弾が投下された。原告a24は,原子爆弾の爆風により,8~10mくらい飛ばされ,また,その後頭部から背中,さらには足にかけて,割れた窓ガラスの破片が突き刺さり,その痛みで身動きが取れなくな った。 被爆後の行動身動きが取れなくなった原告a24は,偶然,無傷であったp1さんに背負われ,1階に下り,避難しようと建物の玄関まで行ったが,外は火の海であり,焼けただれた被爆者が,大勢病院に押しかけてきており,口々に「水をくれ」と叫んで いるような状況であったため,外へと逃げることはできなかった。原告a24は, その体の後半分のほぼ全面には割れたガラスが刺さっており,1人では歩くこともできず,1階の廊下に寝かされることになり,そこで,体力の回復を待つことにした。おびただしい数の割れたガラスが体の背面にささっていたことから,仰向けに寝転ぶことはできず,うつ伏せに伏せることしができなかった。そのため,何度か原告a24を捜しに妹が広島赤十字病院を訪れたが,お互いに気付くこと ができなかった。その後,原告a24は,広 仰向けに寝転ぶことはできず,うつ伏せに伏せることしができなかった。そのため,何度か原告a24を捜しに妹が広島赤十字病院を訪れたが,お互いに気付くこと ができなかった。その後,原告a24は,広島赤十字病院の北病棟の1階に伏せったまま,体に刺さった割れたガラスを取ってもらいながら,10月末まで過ごしたが,病院から家に帰るよう促され,ある程度動けるようになっていたことから,加計町にある自宅へ帰った。 急性症状 発熱,下痢,口内炎,斑点,歯茎からの出血。 被爆後の症状(主な病歴)実家に帰った後も,どうしようもない全身倦怠感があり,被爆後約4年間は,ほとんど何もすることができず,仕事にも就けなかった。 40代までに,全て入れ歯になった。昭和58年頃に,狭心症と診断され,カテ ーテルを挿入した。平成2年,白内障と診断,平成20年頃,脳血栓,前立腺肥大と診断され,現在も通院,治療中。糖尿病の薬の服用開始。白内障の手術(左眼)。 喫煙歴なし。 以上 別紙関係法令の定め第1 被爆者援護法前文昭和20年8月,広島市及び長崎市に投下された原子爆弾という比類のない破壊兵器は,幾多の尊い生命を一瞬にして奪ったのみならず,たとい一命をと りとめた被爆者にも,生涯いやすことのできない傷跡と後遺症を残し,不安の中での生活をもたらした。 このような原子爆弾の放射能に起因する健康被害に苦しむ被爆者の健康の保持及び増進並びに福祉を図るため,原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律を制定し,医療の給付,医療特 別手当等の支給をはじめとする各般の施策を講じてきた。また,我ら に福祉を図るため,原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律を制定し,医療の給付,医療特 別手当等の支給をはじめとする各般の施策を講じてきた。また,我らは,再びこのような惨禍が繰り返されることがないようにとの固い決意の下,世界唯一の原子爆弾の被爆国として,核兵器の究極的廃絶と世界の恒久平和の確立を全世界に訴え続けてきた。 ここに,被爆後50年のときを迎えるに当たり,我らは,核兵器の究極的廃 絶に向けての決意を新たにし,原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう,恒久の平和を念願するとともに,国の責任において,原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ,高齢化の進行している被爆者に対する保健,医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ,あわせて,国として原子爆弾による死没 者の尊い犠牲を銘記するため,この法律を制定する。 1条この法律において「被爆者」とは,次の各号のいずれかに該当する者であって,被爆者健康手帳の交付を受けたものをいう。 第1号原子爆弾が投下された際当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政 令で定めるこれらに隣接する区域内に在った者 第2号原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間内に前号に規定する区域のうちで政令で定める区域内に在った者第3号前2号に掲げる者のほか,原子爆弾が投下された際又はその後において,身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者第4号前3号に掲げる者が当該各号に規定する事由に該当した当時その者の 胎児であった者7条都道府県知事は,被爆者に対し,毎年,厚生労働省令で定めるところにより,健康診断を行うものとする 第4号前3号に掲げる者が当該各号に規定する事由に該当した当時その者の 胎児であった者7条都道府県知事は,被爆者に対し,毎年,厚生労働省令で定めるところにより,健康診断を行うものとする。 10条1項 厚生労働大臣は,原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し,又は疾病にかかり,現に医療を要する状態にある被爆者に対し,必要な医療の給付を行う。ただし,当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは,その者の治癒能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。 10条2項前項に規定する医療の給付の範囲は,次のとおりとする。 第1号診察第2号薬剤又は治療材料の支給第3号医学的処置,手術及びその他の治療並びに施術 第4号居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護第5号病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護第6号移送10条3項第1項に規定する医療の給付は,厚生労働大臣が第12条第1項の規定によ り指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)に委託して行うものとす る。 11条1項前条第1項に規定する医療の給付を受けようとする者は,あらかじめ,当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定を受けなければならない。 11条2項厚生労働大臣は,前項の認定を行うに当たっては,審議会等(国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第8条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。ただし,当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因すること又は起因しないことが明らかであるときは,この限 りでない。 14条指定医療機関の診療方 めるものの意見を聴かなければならない。ただし,当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因すること又は起因しないことが明らかであるときは,この限 りでない。 14条指定医療機関の診療方針及び診療報酬は,健康保険の診療方針及び診療報酬の例による。 18条1項本文 厚生労働大臣は,被爆者が,負傷又は疾病(第10条第1項に規定する医療の給付を受けることができる負傷又は疾病,遺伝性疾病,先天性疾病及び厚生労働大臣の定めるその他の負傷又は疾病を除く。)につき,都道府県知事が次条第1項の規定により指定する医療機関(以下「被爆者一般疾病医療機関」という。)から第10条第2項各号に掲げる医療を受け,又は緊急その他やむを得な い理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたときは,その者に対し,当該医療に要した費用の額を限度として,一般疾病医療費を支給することができる。 24条1項都道府県知事は,第11条第1項の認定を受けた者であって,当該認定に係 る負傷又は疾病の状態にあるものに対し,医療特別手当を支給する。 24条2項前項に規定する者は,医療特別手当の支給を受けようとするときは,同項に規定する要件に該当することについて,都道府県知事の認定を受けなければならない。 24条3項 医療特別手当は,月を単位として支給するものとし,その額は,1月につき,13万5400円とする。 24条4項医療特別手当の支給は,第2項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め,第1項に規定する要件に該当しなくなった日の 属する月で終わる。 25条1項都道府県知事は,第11条第1項の認定を受けた者に対し,特別手当を支給する。ただし,その者が医療特別手当の支給を受け 項に規定する要件に該当しなくなった日の 属する月で終わる。 25条1項都道府県知事は,第11条第1項の認定を受けた者に対し,特別手当を支給する。ただし,その者が医療特別手当の支給を受けている場合は,この限りでない。 25条2項前項に規定する者は,特別手当の支給を受けようとするときは,同項に規定する要件に該当することについて,都道府県知事の認定を受けなければならない。 25条4項 特別手当の支給は,第2項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め,第1項に規定する要件に該当しなくなった日の属する月で終わる。 27条都道府県知事は,被爆者であって,造血機能障害,肝臓機能障害その他の厚 生労働省令で定める障害を伴う疾病(原子爆弾の放射能の影響によるものでな いことが明らかであるものを除く。)にかかっているものに対し,健康管理手当を支給する。ただし,その者が医療特別手当,特別手当又は原子爆弾小頭症手当の支給を受けている場合は,この限りでない。 第2 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令(以下「被爆者援護法施行 令」という。)9条法第11条第2項の審議会等で政令で定めるものは,疾病・障害認定審査会とする。 17条(平成27年4月時点) 平成27年4月以降の月分の医療特別手当,特別手当,原子爆弾小頭症手当,健康管理手当及び保健手当については,法第24条第3項中「13万5400円」とあるのは「13万8380円」と,法第25条第3項中「5万円」とあるのは「5万1100円」と,法第26条第3項中「4万6600円」とあるのは「4万7630円」と,法第27条第4項中「3万3300円」とあるの は「3万4030円」と,法第28条第3項中「1 るのは「5万1100円」と,法第26条第3項中「4万6600円」とあるのは「4万7630円」と,法第27条第4項中「3万3300円」とあるの は「3万4030円」と,法第28条第3項中「1万6700円」とあるのは「1万7070円」と,「3万3300円」とあるのは「3万4030円」とそれぞれ読み替えて,法の規定を適用する。 第3 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則 9条1項法第7条に規定する健康診断は,都道府県知事が期日及び場所を指定して年2回行うもの及び被爆者の申請により,各被爆者につき年2回を限度として都道府県知事があらかじめ指定した場所において行うものの二種類とする。 9条2項 前項の健康診断は,一般検査及び精密検査によって行うものとし,精密検査 は,一般検査の結果更に精密な検査を必要とする者について行うものとする。 9条3項一般検査(次項に定めるものを除く。)においては,次に掲げる検査を行うものとする。ただし,第7号及び第8号に掲げる検査は,医師が必要と認める場合に限り行うものとする。 第1号視診,問診,聴診,打診及び触診による検査第2号 CRP検査第3号血球数計算第4号血色素検査第5号尿検査 第6号血圧測定第7号 AST検査法,ALT検査法及びγ-GTP検査法による肝臓機能検査第8号ヘモグロビンA1c検査9条4項 被爆者の申請により行う一般検査においては,各被爆者につき年一回を限度として,次に掲げる検査を行うものとする。 第1号胃がん検診のための問診及び次に掲げるいずれかの検査イ胃部エックス線検査ロ胃内視鏡検査 第2号肺がん検診のための問診,胸部エックス線検査及び喀(かく)痰(たん)細胞 第1号胃がん検診のための問診及び次に掲げるいずれかの検査イ胃部エックス線検査ロ胃内視鏡検査 第2号肺がん検診のための問診,胸部エックス線検査及び喀(かく)痰(たん)細胞診第3号乳がん検診のための問診,視診,触診及び乳房エックス線検査第4号子宮がん検診のための問診,視診,内診,子宮頸(けい)部及び子宮体部の細胞診並びにコルポスコープ検査 第5号大腸がん検診のための問診及び便潜血検査 第6号多発性骨髄腫(しゆ)検診のための問診及び血清蛋(たん)白分画検査9条5項精密検査においては,次に掲げる検査のうちで必要と認められるものを行うものとする。 第1号骨髄造血像検査等の血液の検査第2号肝臓機能検査等の内臓の検査第3号関節機能検査等の運動器の検査第4号眼底検査等の視器の検査第5号胸部エックス線撮影検査等のエックス線検査 第6号その他必要な検査29条1項法24条第2項の認定の申請は,医療特別手当認定申請書(様式第9号)に,法第11条第1項の認定に係る負傷又は疾病についての法第12条第1項の規定による指定を受けた病院又は診療所の医師の診断書(様式第10号)を添え て,これを居住地の都道府県知事に提出することによって行わなければならない。 29条2項都道府県知事は,前項の場合において,同項に規定する診断書を添えることができないことについてやむを得ない理由があると認めるときは,法第19条 第1項の規定による指定を受けた病院又は診療所の医師の診断書をもってこれに代えさせることができる。 29条3項非居住者は,第1項の規定にかかわらず,同項に規定する書類の提出に代えて,申請書に,本人であることを確認するに足りる書類及び法第11 師の診断書をもってこれに代えさせることができる。 29条3項非居住者は,第1項の規定にかかわらず,同項に規定する書類の提出に代えて,申請書に,本人であることを確認するに足りる書類及び法第11条第1項 の認定に係る負傷又は疾病についての医師の診断書を添えて,これを当該非居 住者の居住地を管轄する領事官(領事官の職務を行う大使館若しくは公使館の長又はその事務を代理する者を含む。以下同じ。)その他最寄りの領事官(領事官を経由した申請を行うことが著しく困難である地域として外務省・厚生労働省告示で定める地域にあっては,当該告示で定める者とする。以下同じ。)(以下単に「領事官」という。)を経由して提出することにより,法第24条第2項 の認定の申請を行わなければならない。 30条都道府県知事は,前条第1項又は第3項の規定による認定の申請があった場合において,法第24条第1項に規定する要件に該当する旨の認定をしたときは,当該認定を受けた者(以下「医療特別手当受給権者」という。)に,文書で その旨を通知するとともに,医療特別手当証書(様式第11号)を交付しなければならない。 51条法第27条第1項に規定する厚生労働省令で定める障害は,次に掲げる障害とする。 第1号造血機能障害第2号肝臓機能障害第3号細胞増殖機能障害第4号内分泌腺(せん)機能障害第5号脳血管障害 第6号循環器機能障害第7号腎(じん)臓機能障害第8号水晶体混濁による視機能障害第9号呼吸器機能障害第10号運動器機能障害 第11号潰(かい)瘍(よう)による消化器機能障害 号運動器機能障害 第11号潰瘍による消化器機能障害
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