平成28(行ウ)489 遺族厚生年金不支給決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成31年2月14日 東京地方裁判所
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判決文本文28,141 文字)

平成31年2月14日判決言渡平成28年(行ウ)第489号遺族厚生年金不支給決定取消請求事件主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求厚生労働大臣が平成27年2月2日付けで亡Aに対してした遺族厚生年金を支給しない旨の処分を取り消す。 第2 事案の概要 本件は,厚生年金保険の被保険者であり平成26年▲月▲日に死亡した亡Bの妻であった亡A(本件訴え提起後の平成29年▲月▲日に死亡)が,厚生労働大臣に対し,遺族厚生年金の給付を請求したところ,厚生年金保険法(以下「厚年法」という。)59条1項所定の「被保険者の配偶者であって,被保険者の死亡の当時,その者によって生計を維持したもの」に該当しないとの理由 で,遺族厚生年金を支給しない旨の処分(以下「本件不支給処分」という。)を受けたことから,Aの長男である原告(Aの死亡後に訴訟承継の申立てをした。)が,本件不支給処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め別紙2のとおり。なお,別紙2-3の「生計維持関係等の認定基準及び認定 の取扱いについて」(乙4)について,以下「認定基準」という。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) A(昭和2年▲月▲日生)は,昭和33年▲月▲日,B(昭和11年▲月▲日生)と婚姻した。 (2) 原告(昭和34年▲月▲日生)は,BとAの長男である(甲1の1~3)。 (3) Bは,昭和52年頃までに,被告補助参加人(昭和27年▲月▲日生。以下「参加人」という。)と交際するようになった(争いがない。)。 (4) Bは,昭和55年▲月頃,東京家庭裁 。 (3) Bは,昭和52年頃までに,被告補助参加人(昭和27年▲月▲日生。以下「参加人」という。)と交際するようになった(争いがない。)。 (4) Bは,昭和55年▲月頃,東京家庭裁判所に,Aを相手方として家事調停(夫婦関係調整調停)の申立てをし,Aとの離婚を求めたが,Aが調停期日に出頭しなかったため,同調停は同年▲月▲日に不成立により終了した(乙 13)。 (5) Bは,遅くとも昭和57年5月頃までにAと別居し,以後死亡するまで参加人と同居していた(なお,BとAが別居した時期については,後述のとおり争いがある。)。 (6) Bは,平成26年▲月▲日,死亡した(乙8)。 (7) 本件訴訟に至る経緯等ア Aは,平成26年▲月▲日,厚生労働大臣に対し,厚生年金保険の被保険者であるBの配偶者であるとして,遺族厚生年金の給付を請求した(乙1)。 厚生労働大臣は,平成27年2月2日付けで,Aに対し,厚年法59条 1項所定の「被保険者の配偶者であって,被保険者の死亡の当時,その者によって生計を維持したもの」には該当しないとの理由により,遺族厚生年金を支給しない旨の処分(本件不支給処分)をした(甲2)。 イ参加人は,平成26年▲月▲日,自らがBの配偶者であるとして,遺族厚生年金の給付の請求をしたところ,厚生労働大臣から,平成27年2月 12日付けで,遺族厚生年金を支給する旨の処分を受けた。 ウ Aは,平成27年3月19日,本件不支給処分を不服として,社会保険審査官に対して審査請求をしたが,審査請求をした日から60日以内に決定がなかったことから,厚年法90条2項(平成24年法律第63号による改正前のもの)の規定に基づき,同審査官が棄却したものとみなされる して審査請求をしたが,審査請求をした日から60日以内に決定がなかったことから,厚年法90条2項(平成24年法律第63号による改正前のもの)の規定に基づき,同審査官が棄却したものとみなされる として,平成27年5月28日,社会保険審査会に対し,再審査請求をし た(乙2,3)。 エ関東信越厚生局社会保険審査官は,平成27年7月3日付けで,Aの審査請求を棄却する旨の決定をし,社会保険審査会は,平成28年4月27日付けで,Aの再審査請求を棄却する旨の裁決をした(甲3,4)。 オ Aは,平成28年10月20日,本件訴えを提起した。 (8) Aの死亡Aは,本件訴えの係属中である平成29年▲月▲日に死亡し,原告が本件訴えに係る訴訟承継を申し立てた(訴訟承継に関する判断は後述のとおりである。)。 3 争点 本件の争点は,本件不支給処分の適法性であり,具体的には,Aが,①Bの「配偶者」に当たるか(配偶者要件の充足性),及び,②Bの死亡当時,同人によって「生計を維持したもの」に当たるか(生計維持要件の充足性)である。 4 争点に関する当事者の主張の要旨争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙3「当事者の主張の要旨」記載の とおりである(同別紙で使用した略語は本文においても用いる。)。 第3 当裁判所の判断当裁判所は,Aは遺族厚生年金の受給権者となるための要件(配偶者要件)を欠くから,同人に対し遺族厚生年金を支給しないとした本件不支給処分は適法であり,原告の請求は棄却すべきものと判断する。その理由の詳細は,以下 のとおりである。 1 訴訟承継について(1) Aは,本件訴えを提起した後,訴訟係属中の平成29年▲月▲日に死亡したところ,Aの長男であり,Aの死亡当時,同 る。その理由の詳細は,以下 のとおりである。 1 訴訟承継について(1) Aは,本件訴えを提起した後,訴訟係属中の平成29年▲月▲日に死亡したところ,Aの長男であり,Aの死亡当時,同人と生計を同じくしていたとする原告より,同年12月19日,訴訟承継の申立てがされた。 (2) 保険給付の受給権者が死亡した場合において,厚年法37条1項所定の親 族(配偶者,子,父母等)であって,受給権者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたもの(以下「所定の遺族」という。)は,自己の名で,未支給の保険給付の支給を請求することができるほか,受給権者が死亡前にその保険給付を請求していなかったときは,自己の名で,その保険給付を請求することができる(同項,同条3項)。これらの定めは,受給権者の収入に依 拠していた遺族の生活保障を目的として,民法上の相続とは別の立場から,所定の遺族に死亡した受給権者が有していた請求権を承継的に取得させるとしたものと解され,所定の遺族がその権利を行使するためには,自ら厚生労働大臣に対する請求をし,支給の決定を受けることを要するものと解される。 ところで,保険給付の受給権者であるとして保険給付を請求した者が,厚 生労働大臣から受給権者の要件を満たさないとの理由で不支給処分を受けた後,その取消しを求める訴訟の係属中に死亡した場合,その者との関係で所定の遺族に該当する者が自ら厚生労働大臣に対し保険給付の支給を請求したとしても,上記不支給処分が取り消されない限り,保険給付の支給を受ける余地はないものと解される。そうすると,このように死亡した保険給付請求 者との関係で所定の遺族に該当する者は,上記訴訟において不支給処分が取り消されて受給権があるとされた場合に,その死亡した受給権者の所定の遺 される。そうすると,このように死亡した保険給付請求 者との関係で所定の遺族に該当する者は,上記訴訟において不支給処分が取り消されて受給権があるとされた場合に,その死亡した受給権者の所定の遺族として自ら保険給付の支給を請求することのできる立場にある者にほかならず,上記不支給処分の取消しを求めることにより保険給付の支給を受け得る地位を回復する利益を承継するものといえるから,これをもって,上記不 支給処分の取消しを求める原告適格を基礎付ける法律上の利益の承継ということができる。 (3) これを本件についてみると,Bを被保険者とする遺族厚生年金の受給権者であるとして保険給付を請求していたAは,厚生労働大臣から受給権者の要件を満たさないとして本件不支給決定を受けた後,その取消しを求める本件 訴えの係属中に死亡したところ,Aの長男でありその所定の遺族に当たる原 告は,本件不支給処分の取消しを求める法律上の利益を承継するものといえるから,原告に対し,本件訴えに係る訴訟承継を認めるのが相当である。 2 本件不支給処分の適法性について厚年法59条1項は,遺族厚生年金を受けることができる遺族に該当するためには「配偶者」であることを要するものとするところ,同法3条2項は,同 法における「配偶者」には,婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものと定めている。 もっとも,ある者と法律上の婚姻関係にある被保険者が,重ねて他の者と事実上婚姻関係と同様の事情にある,いわゆる重婚的内縁関係にある場合には,我が国において法律婚主義がとられていることに鑑み,原則として,法律上の 婚姻関係にある者が遺族厚生年金の支給を受けるべき「配偶者」に該当すると解されるが,例外として,法律上の婚姻関係が実体を 我が国において法律婚主義がとられていることに鑑み,原則として,法律上の 婚姻関係にある者が遺族厚生年金の支給を受けるべき「配偶者」に該当すると解されるが,例外として,法律上の婚姻関係が実体を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないとき,すなわち事実上の離婚状態にある場合には,法律上の婚姻関係にある者であっても遺族厚生年金の支給を受けるべき「配偶者」に該当しないものというべきである(昭和5 8年最高裁判決,最高裁平成16年(行ヒ)第332号同17年4月21日第一小法廷判決・裁判集民事216号597頁参照)。 そして,法律上の婚姻関係にある者同士が上記のような事実上の離婚状態にあるか否かについては,別居の経緯,別居期間,婚姻関係を維持又は修復するための努力の有無,別居後における経済的な依存関係,音信や訪問等の交流状 況等を総合的に考慮して判断するのが相当である。 3 認定事実前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) BとAが別居するに至った経緯等 ア B(昭和11年▲月▲日生)とA(昭和2年▲月▲日生)は,昭和33 年▲月▲日に婚姻し,昭和34年▲月▲日,両名の間に長男である原告が出生した。BとA及び原告は,千葉県(以下省略)の自宅で生活していた。 イ Bは株式会社C(以下「C」という。)において勤務していたが,昭和42年頃から,工場やプラントなどの工事現場の総括責任者として,海外出張を含む長期の出張の多い業務を担当するようになった(丙11,弁論 の全趣旨)。 ウ Aは,昭和42年頃から,喫茶店の経営等の事業を複数試みるも,ことごとく失敗し,昭和60年末頃からは極度に運転資金に窮するようになったため 当するようになった(丙11,弁論 の全趣旨)。 ウ Aは,昭和42年頃から,喫茶店の経営等の事業を複数試みるも,ことごとく失敗し,昭和60年末頃からは極度に運転資金に窮するようになったため,金融機関以外にも友人や知人から運転資金を借り入れるようになり,さらに,高利による資金の借入れもするようになった。また,Aは, 昭和59年から昭和61年にかけて,Bを連帯保証人とし,あるいはB名義により,事業のための借入れを重ねた。このため,Bの給与は,Aの借金の返済に充てられる状況となっていった。(乙11)エ参加人は,昭和51年7月頃,Cに就職し,Bと知り合った(丙11)。 オ Bは,昭和52年頃から参加人と交際するようになり,出張の合間にも 自宅に帰宅しない日が徐々に増え,遅くとも昭和55年頃には,参加人が居住していた川崎市内のアパート(以下「参加人方」という。)で主に生活するようになり,Bが自宅に帰るのは月1,2回程度となっていた。そして,同年4月頃,Aは,自宅に帰ったBのスーツのポケットから,参加人方の住所が記載されたBの定期券を見つけたことから,原告とともに参 加人方を訪れ,Bと話し合いをした。しかし,Bは自宅に戻ることなく参加人方での生活を継続し,この頃以降,BとAは完全に別居状態となった。 (原告本人,参加人)カ Bは,昭和55年▲月頃,東京家庭裁判所にAとの離婚を求める家事調停を申し立てたが,調停期日にAが出頭しなかったため,同年▲月▲日, 調停は不成立により終了した。なお,同日付けの期日調書には,Bの住所 地は参加人方と記載されていた。(乙13)キ昭和61年頃,Bの勤務していたCが倒産し,Bは昭和62年1月頃から株式会社D(以下「D」という。)に勤務するようになった。また,Aの借 所 地は参加人方と記載されていた。(乙13)キ昭和61年頃,Bの勤務していたCが倒産し,Bは昭和62年1月頃から株式会社D(以下「D」という。)に勤務するようになった。また,Aの借金の返済が困難となったことから,Aは昭和61年9月頃に破産の申立てをし,同年10月に破産宣告を受け,Bも同年12月頃に破産宣告を 受けた。その後,Bは,平成3年頃に免責許可決定を受けた。(乙10,11)ク Bは,平成元年11月になって住民票上の住所を参加人方とする届出をした。その後,Bと参加人は,平成2年3月30日,川崎市から横浜市に転居し,平成6年7月には,同市内に共有名義(Bが10分の6,参加人 が10分の4)でマンションを購入し,以後,同所で生活していた。(乙5,6,11,丙5)(2) Bの送金及び原告又はAの経済状況等ア Bは,昭和62年12月頃から原告口座にほぼ毎月送金をするようになり,この送金は,Bが死亡する平成26年▲月▲日の直前である同年▲月 まで継続された。送金額は,当初,おおむね月額5万円であったが,平成5年4月から平成22年3月までは月額7万円に増額され,平成22年4月からは月額3万円に減額されて,平成26年8月まで継続された。(乙16の1~5,17,参加人)このほか,Bは,平成6年2月3日に100万円,平成9年6月19日 に100万円を原告口座に送金した(丙8の1及び2)。 以上の送金は,いずれも,Bの給与収入を含めた預金の管理を行っていた参加人が,Bの依頼を受けて振込手続を行っていたものであった(参加人)。 イ昭和54年に成人した原告は,昭和52年に日本料理店に就職し,昭和 62年に調理師免許を取得し,以後は調理師として稼働している。原告の 給与収入額は,平成5 あった(参加人)。 イ昭和54年に成人した原告は,昭和52年に日本料理店に就職し,昭和 62年に調理師免許を取得し,以後は調理師として稼働している。原告の 給与収入額は,平成5年から平成7年までは年間600万円を超え,平成19年から平成26年までは年間500万円を超えていた(甲9~12,13の1~8)。 ウ原告は,平成7年に土地を購入して自宅建物を新築した。平成9年▲月に婚姻し,平成11年に長男が,平成13年に二男が出生した。同年,上 記土地及び建物に債権額を1960万円,債務者を原告とする抵当権が設定された(甲1の3,丙10の1~3)。 Aは,Bとの別居後,昭和61年から昭和63年までの間を除き,原告との同居を継続していた。Aは稼働していなかったため,食費等を含む同人の生活費は原告の収入で賄われていた(原告本人)。 原告は,A,妻,長男及び二男を扶養家族として申告していた(甲13の1~8)。 エ原告口座の残高は,昭和62年12月以降マイナス(貸越)の状態が続き,平成5年頃には100万円のマイナスに達した。その後平成26年8月までの間も,マイナスの状態で推移している。また,原告口座の履歴に よれば,同口座からは原告の生命保険料の支払のほか,原告の電話代,電気代,ガス代等の支払がされ,さらには原告の定期預金への振替がされるなどしていた。(乙16の1~5,17)オ Aは,60歳となった昭和62年から年18万円程度の年金を受給するようになり,平成2年からは年26万円程度の,65歳となった平成4年 からは年47万円程度の,平成8年からは年73万円程度の年金収入を得ていた。なお,Aに対する年金支給は,A名義の口座に送金されていた。 (乙20,27)カ一方,Aは,平成23年1月から平成 からは年47万円程度の,平成8年からは年73万円程度の年金収入を得ていた。なお,Aに対する年金支給は,A名義の口座に送金されていた。 (乙20,27)カ一方,Aは,平成23年1月から平成26年4月まで入院・外来診療費として約15万円,平成25年11月から同年12月まで診療費として約 9万円,平成26年2月から同年5月まで診療費として約23万円の支出 をしている(甲15,16の1及び2)。 (3) BとAの交流の状況等原告の婚姻に際し,平成9年▲月頃に結納が,同年▲月頃に結婚披露宴が行われ,BとAはこれらに出席した(甲6,弁論の全趣旨)。 また,Aは,平成15年7月頃に結腸癌の診断を受け,手術のために配偶 者の同意が必要となったことから,同月14日,Bが医師から手術の説明を受けるとともに,手術の同意書に署名した(甲7)。 (4) Bと参加人の内縁関係及びBの死亡後の状況等ア参加人は,昭和55年頃にCを退職し,その後,Bと同居していた間はほぼ無職であった。Bが昭和62年にDに就職した頃からは,参加人がB の給与収入を管理して生活費等のやり繰りをしていた。(参加人)イ Bは,平成20年8月22日,一切の財産を内縁の妻である参加人に包括して遺贈する旨が記載された公正証書遺言を作成した(乙15)。 ウ参加人は,知人に対し,「E」としてBの姓を名乗り,Bと連名で年賀状のやり取りをしていた(乙23)。また,Bの妻としてDの社員旅行に 同行するなどしたほか,BのきょうだいとともにBの母親の介護を担当していた(参加人)。 エ Bは,平成26年▲月▲日,入院中の病院で死亡した(甲1の1)。Bの葬儀は,参加人がBの妻として「E」名により,喪主となって執り行った。葬儀には原告のほか,Bの親族も出席して いた(参加人)。 エ Bは,平成26年▲月▲日,入院中の病院で死亡した(甲1の1)。Bの葬儀は,参加人がBの妻として「E」名により,喪主となって執り行った。葬儀には原告のほか,Bの親族も出席していたが,参加人が喪主であ ることについて疑義を述べる者はいなかった。(乙9,22,参加人) 4 事実認定の補足説明以上の認定に対し,原告は,BとAが別居したのは昭和57年5月頃からである旨を主張し,これに沿う供述をする。しかしながら,原告がそのように主張する根拠については,その供述によっても明らかではない。むしろ,認定事 実(1)カのとおり,Bが,昭和55年▲月にAを相手方として申し立てた家事調 停において,自己の住所を参加人方としていたことや,同オのとおり,昭和55年4月頃に参加人方の住所が記載されたBの定期券が発見されたことにより,Aが原告とともに参加人方を訪れBと話し合いをしたことなどに照らすと,Bは,遅くともこの頃までに生活の本拠を参加人方としていたものと認められ,上記の話し合いを機に,Aと完全に別居するに至ったと認めるのが相当である (なお,原告は,上記の話し合い以降もBが月に1,2回程度は自宅に帰宅していたと供述するが,同供述は合理的な根拠に基づくものではなく,採用することができない。)。 5 検討(1) 別居の経緯及び別居期間 ア Bは昭和42年頃から海外出張を含む長期の出張の多い業務を担当するようになり,Aと暮らす自宅に帰宅する機会が減少していたところ,Aはこの頃から事業をいくつか試みるも失敗し,連帯保証人になるなどしていたBの給与を自身の借金の返済に充てるような状況にあった(認定事実(1)イ,ウ)。一方,Bは,昭和52年頃から参加人と交際を始め,出張 の合間 くつか試みるも失敗し,連帯保証人になるなどしていたBの給与を自身の借金の返済に充てるような状況にあった(認定事実(1)イ,ウ)。一方,Bは,昭和52年頃から参加人と交際を始め,出張 の合間には主に参加人方で生活するようになって,自宅には月1,2回程度しか帰宅しなくなり,昭和55年4月頃以降はAと完全な別居状態に至った(認定事実(1)オ)。その後,Bが死亡する平成26年までの約34年間,この別居状態が解消されることはなかった。 これらによると,BとAが別居に至った背景には,Bが参加人との交際 を開始したことのほか,Aが事業のためにした借入れの返済のためBにおいても経済的な犠牲を強いられていたことなどが大きく影響していたものと認められる。その結果,別居期間は約34年間に及び,BとAが同居していた約22年間を大きく上回る長さとなっている。 イこれに対し,原告は,Aが資金繰りを悪化させたのは昭和58年頃であ り,BとAの別居の原因はBと参加人の交際にあることから,参加人との 交際が解消されれば別居状態も解消されたものである旨を主張する。しかし,認定事実(1)ウによれば,Aは昭和59年頃には極度に資金繰りを悪化させて金融機関以外の友人や知人からも借入れをせざるを得ない状況となり,またB名義でも借入れを行っていたというのであるから,この頃よりも相当程度前から,Aの借金の返済は困難な状況に陥っていたものと 推認することができる。また,Bと参加人の交際が別居に至る原因の一つであったとしても,Bは主に参加人方で生活するようになってからも,当面の間は月1,2回程度は自宅に帰っていたのに,昭和55年4月頃以降はそれすらなくなり,完全な別居状態に至っているのであるから,B自身の意思でAと共に生活すること 方で生活するようになってからも,当面の間は月1,2回程度は自宅に帰っていたのに,昭和55年4月頃以降はそれすらなくなり,完全な別居状態に至っているのであるから,B自身の意思でAと共に生活することを拒絶したものと認められ,参加人との交 際が解消されたならばAとの別居状態が解消されたという関係にあったということはできない。 (2) 婚姻関係を維持又は修復するための努力の有無ア Bは,昭和55年▲月頃にはAを相手に離婚を求める家事調停を申し立てるなど,Aとの離婚の意思を明確にしていたものと認められる(認定事 実(1)カ)。また,BがAとの婚姻関係の修復に向けて何らかの努力を講じた様子はうかがわれず,むしろ,平成6年には,参加人との共有名義でマンションを購入し,生活の拠点を固定させていること(認定事実(1)ク)や,平成20年には,内縁の妻である参加人に対し一切の財産を包括的に遺贈する旨が記載された公正証書遺言を作成していること(認定事実(4) イ)などを併せると,Bは,Aと完全な別居状態に至った後は,専ら参加人のみを妻として扱おうとしてきたことがうかがえるのであり,Aとの婚姻関係を維持又は修復する意思は一貫して有していなかったものと認められる。 イ一方,Aにおいても,別居状態の解消に向けて何らかの措置を講じたと の事情は認められない。原告は,原告の結婚披露宴の際,AがBに復縁を 持ちかけたと主張するが,披露宴の席上で新郎の母であるAがそのような働きかけをしたとはにわかに認め難い上,仮にこの席上で何らかの働きかけがあったとしても,その後,別居状態の解消に向けた話し合いの場さえ設けられていないことからすると,その場限りの発言にすぎない程度のものであったというほかなく,かかる働きかけの存 上で何らかの働きかけがあったとしても,その後,別居状態の解消に向けた話し合いの場さえ設けられていないことからすると,その場限りの発言にすぎない程度のものであったというほかなく,かかる働きかけの存在をもって,Aにおいて, 婚姻関係の維持又は修復に向けた具体的な行動をとっていたものと評価することは困難である。 (3) 別居後の経済的依存の状況ア Bは,昭和62年12月頃から死亡する直前の平成26年8月までの間,継続的に月額3~7万円の送金をしているところ,これらの送金は,いず れもA名義の口座ではなく原告口座に対してされたものである(認定事実(2)ア)。また,原告口座の履歴によれば,同口座からは原告の生命保険料や電話代等の支払がされ,さらには原告の定期預金への振替がされるなどしており(認定事実(2)エ),Bからの送金の相当部分は,原告による上記の支払等に充てられていたものと認められる。 イこの送金の趣旨について,原告は,昭和57年5月頃にAとBが別居状態となったことから,原告が間に入って婚姻費用の支払の取り決めをし,当初はBがAに直接手渡しで金員を交付していたが,破産の手続を契機に,原告口座に送金することとなったものである旨の主張をし,これに沿う供述をする。しかしながら,BとAとの間で合意がされたとする婚姻費 用の支払について,原告は,自身が間に立って取り決めをしたと供述しながら,その取り決めがされた経緯や時期については曖昧な供述に終始した上,「父と母が決めたことだと思う」など自らの主張を否定するような供述をするなど,その供述内容は一貫していない。また,そもそも,上記4のとおり,BとAが完全な別居状態となったのは昭和55年4月頃以降で あると認められる上,原告口座への送金が開始され ような供述をするなど,その供述内容は一貫していない。また,そもそも,上記4のとおり,BとAが完全な別居状態となったのは昭和55年4月頃以降で あると認められる上,原告口座への送金が開始された昭和62年12月以 前にBからAに直接の金員交付がされていたことを認め得る客観的な証拠もないことに照らせば,別居を契機に婚姻費用の取り決めをしたこと自体が直ちに認め難い。 また,原告は,Bから送金された金員は原告口座から引き出してAに渡していたと供述するが,上記アのとおり,Bからの送金の相当部分は,原 告の生命保険料・電話代等の支払や定期預金への振替等に充てられており,取引履歴を通覧しても,その送金額について,送金の都度引き出しが行われていたものとは認められないから,原告の上記供述は原告口座の客観的な取引状況と矛盾するものである。この点について,原告は,被告及び参加人からの指摘を受け,Aに渡す金員を別の口座から引き出すことも あったと述べるなど,その供述内容を変遷させているところ,別の口座から金員を引き出してAに渡していたことを示す客観的な証拠は提出されていない。むしろ,原告口座の残高は常に貸越の状態で推移しており(認定事実(2)エ),原告の経済状況が安定していたとはいえないことなどに照らせば,Bの原告口座への送金は,原告に対する経済的援助としてされ たものであったと認めるのが合理的である。 さらに,原告は,平成6年及び平成9年にBがした原告口座への各100万円の送金についても,Aに宛てた送金であったと供述する一方,原告がこれをAに渡したか否かについては覚えていないと述べるにとどまっている。むしろ,これらの送金がされた平成6年は原告が土地を購入して 自宅建物を新築した前年であり,平成9年は原告が婚姻をし 告がこれをAに渡したか否かについては覚えていないと述べるにとどまっている。むしろ,これらの送金がされた平成6年は原告が土地を購入して 自宅建物を新築した前年であり,平成9年は原告が婚姻をした年である(認定事実(2)ウ)ことからすると,これらの出費に係る原告への援助であった可能性が高いといえる。 ウなお,Aは原告との同居を継続し,その生活費は原告の収入により賄われていたこと(認定事実(2)ウ)から,Aを扶養する原告への経済的援助 により,間接的にAの生活の維持に寄与する面があったとみる余地も否定 できないが,A自身は昭和62年から年金を受給していたものであり(認定事実(2)オ),日常の生活費のほか医療費等の支出(認定事実(2)カ)を考慮しても,自身の年金収入及び原告の収入によりこれらの費用を賄うことができたということができ,Bからの送金がなければAの生計の維持が困難であったとは認められない。他方,Bから原告口座への送金額の推移 をみると,その増減はAの収入・支出の増減との関連性を有するものではなく(認定事実(2)ア,オ,カ),むしろ,これらの収入・支出の状況とは無関係に送金額が定められていたものと認められる。これらに照らすと,仮に,Bの送金によりAの生活の維持に間接的に寄与することがあったとしても,このような間接的な寄与をもって婚姻費用の支払と同視する ことはできず,Aについて,上記アのような別居の状態が長期間継続していることなどを踏まえてもなお事実上の離婚状態に至らないと評価し得るほどのBに対する経済的な依存状況にあったとは認めることができないものというべきである。 (4) BとAとの音信・訪問等の状況 別居後,BとAが直接会ったのは,平成9年に行われた原告の結納及び 経済的な依存状況にあったとは認めることができないものというべきである。 (4) BとAとの音信・訪問等の状況 別居後,BとAが直接会ったのは,平成9年に行われた原告の結納及び結婚披露宴のほか,平成15年にBがAの手術の際に同意書を作成した際の合計3回にすぎない。そのほかに,BとAの間に音信等があったことを認めるに足りる証拠はなく,これらによれば,別居の後,両者の交流はほとんどなかったものというべきである。 (5) Bと参加人との関係について認定事実(1)及び(4)のとおり,参加人はBとAが完全な別居状態となった昭和55年4月以降,約34年にわたりBと同居し,その間,専業主婦としてBの給与を管理するなど,生計を一にして生活をしていた。また,Bは,平成6年には参加人との共有名義でマンションを購入し,参加人との生活の 本拠を固定させ,平成20年には参加人に対し遺産を包括的に遺贈する旨の 公正証書遺言を作成した。参加人は,対外的には「梅田」の姓を名乗り,Bの親戚や勤務先の者からもBの妻として認識されており,Bの葬儀も自ら喪主となって執り行った。これらの事情によれば,Bと参加人との内縁関係は,相当期間にわたって継続し,かつ強固なものとして,対外的にも認識されていたものと認められる。 (6) 小括ア以上のとおり,Bは,Aの借金についてその返済の負担を負ったことなどを契機にAと別居するに至り,その別居期間は約34年の長期に及び(上記(1)),その間,両者の間にはほとんど交渉がなく,両者ともに婚姻関係の維持又は修復に向けた措置をとることもなかったのであり(上記(2), (4)),BがAに対し婚姻費用の支払をすることもなく,Bが長男である原告への経済的援助として原告 く,両者ともに婚姻関係の維持又は修復に向けた措置をとることもなかったのであり(上記(2), (4)),BがAに対し婚姻費用の支払をすることもなく,Bが長男である原告への経済的援助として原告口座への送金をしていたことにより,間接的にAの生活の維持に寄与した可能性があるという程度のものにとどまっていた(上記(3))。一方で,参加人は,Bと約34年にわたり同居し,生計を一にしていたばかりでなく,両者の共有名義で自宅を取得し,対外的に も夫婦として認識されるなど,その内縁関係は強固なものとなっていた(上記(5))と認められる。 このような事情を総合すると,BとAとの婚姻関係は実体を失って修復の余地がないまでに形骸化していたものというべきであるから,Aは,遺族厚生年金の支給を受けるべき「配偶者」に当たるということはできない。 イこれに対し,原告は,BとAとの間に離婚の合意がないことを問題とするが,上記2のとおり,遺族厚生年金の受給権者の認定は,誰が法律上の婚姻関係にある配偶者であるかという観点からではなく,誰が遺族厚生年金の支給を受けるべき「配偶者」であるかという観点から判断されるべきものであるから,婚姻関係を解消することの合意が成立していることが要 件となるものではなく,少なくとも夫婦間に婚姻関係を維持継続する意思 ないし婚姻関係を修復する意思がなく,その関係が形骸化していると認めるべき事実があるときには,具体的な離婚の合意が成立したという事実がなくても,遺族厚生年金の支給を受けるべき「配偶者」には当たらないというべきである。 ウしたがって,Aは遺族厚生年金の受給権者となるための要件(配偶者要 件)を欠くから,その余の争点について判断するまでもなく,Aに対し遺族厚生年金 主文 ウしたがって、Aは遺族厚生年金の受給権者となるための要件(配偶者要件)を欠くから、その余の争点について判断するまでもなく、Aに対し遺族厚生年金を支給しないとした本件不支給処分は適法である。 第4 結論以上によれば、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官 清水知恵子 裁判官 進藤壮一郎 裁判官 池田美樹子(別紙1省略) (別紙2-1) ○ 厚生年金保険法 (用語の定義) 第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一~四(省略) この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。 (未支給の保険給付) 第三十七条 保険給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、 亡した者に支給すべき保険給付でまだその者に支給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であつて、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の保険給付の支給を請求することができる。 前項の場合において、死亡した者が遺族厚生年金の受給権者である妻であつたときは、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた被保険者又は被保険者であつた者の子であつて、その者の死亡によつて遺族厚生年金の支給の停止が解除されたものは、同項に規定する子とみなす。 第一項の場合において、死亡した受給権者が死亡前にその保険給付を請求していなかつたときは、同項に規定する者は、自己の名で、その保険給付を請求することができる。 未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、政令で定める。 未支給の保険給付を受けるべき きる。 未支給の保険給付を受けるべき者の順位は、政令で定める。 未支給の保険給付を受けるべき同順位者が二人以上あるときは、その一人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。 (受給権者) 第五十八条 遺族厚生年金は、被保険者又は被保険者であつた者が次の各号のいずれかに該当する場合に、その者の遺族に支給する。 ただし、第一号又は第二号に該当する場合にあつては、死亡した者につき、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があり、かつ、当該被保険者期間に係る保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が当該被保険者期間の三分の二に満たないときは、この限りでない。 一 被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であつた者であつて、行方不明となつた当時被保険者であつたものを含む。 )が、死亡し 宣告を受けた被保険者であつた者であつて、行方不明となつた当時被保険者であつたものを含む。 )が、死亡したとき。 二 被保険者であつた者が、被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であつた間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して五年を経過する日前に死亡したとき。 三 障害等級の一級又は二級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき。 四 老齢厚生年金の受給権者(保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が二十五年以上である者に限る。 )又は保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が二十五年以上である者が、死亡したとき。 前項の場合において、死亡した被保険者又は被保険者であつた者が同項第一号から第三号までのいずれかに該当し、かつ、同項第四号にも該当するときは、その遺族が遺族厚生年金を請求したときに別段の申出を(別紙2-1) した場合を除き、同項第一号 ときは、その遺族が遺族厚生年金を請求したときに別段の申出を(別紙2-1) した場合を除き、同項第一号から第三号までのいずれかのみに該当し、同項第四号には該当しないものとみなす。 (遺族) 第五十九条 遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母(以下単に「配偶者」、「子」、「父母」、「孫」又は「祖父母」という。 )であつて、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時(失踪そうの宣告を受けた被保険者であつた者にあつては、行方不明となつた当時。 以下この条において同じ。 )その者によつて生計を維持したものとする。 ただし、妻以外の者にあつては、次に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。 一 夫、父母又は祖父母については、五十五歳以上であること。 二 子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか、又は二十歳未 と。 二 子又は孫については、十八歳に達する日以後の最初の三月三十一日までの間にあるか、又は二十歳未満で障害等級の一級若しくは二級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。 前項の規定にかかわらず、父母は、配偶者又は子が、孫は、配偶者、子又は父母が、祖父母は、配偶者、子、父母又は孫が遺族厚生年金の受給権を取得したときは、それぞれ遺族厚生年金を受けることができる遺族としない。 被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時胎児であつた子が出生したときは、第一項の規定の適用については、将来に向つて、その子は、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた子とみなす。 第一項の規定の適用上、被保険者又は被保険者であつた者によつて生計を維持していたことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。 (別紙2-2) ○ 厚生年金保険法施行令 (遺族厚 たことの認定に関し必要な事項は、政令で定める。 (別紙2-2) ○ 厚生年金保険法施行令 (遺族厚生年金の生計維持の認定) 第三条の十 法第五十九条第一項に規定する被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していた配偶者、子、父母、孫又は祖父母は、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者と生計を同じくしていた者であつて厚生労働大臣の定める金額以上の収入を将来にわたつて有すると認められる者以外のものその他これに準ずる者として厚生労働大臣の定める者とする。 (別紙2-3)生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて(平成23年年発0323第1号厚生労働省年金局長通知。乙4) 1 総論 (1) 生計維持認定対象者次に掲げる者(以下「生計維持認定対象者」という。)に係る生計維持関係の認定については,2の生計維持関係等の認定日において,3の生計同一要件及び4の収入要件を満たす場合(中略)に受給権者又は死亡した被保険者若しくは被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定するものとする。 ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたも 略)に受給権者又は死亡した被保険者若しくは被保険者であった者と生計維持関係があるものと認定するものとする。 ただし,これにより生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には,この限りでない。 ①~⑦(略)⑧ 遺族厚生年金(昭和60年法改正法による改正後の厚生年金保険法による特 例遺族年金を含む。)の受給権者⑨(略)(2)(略)2(略) 3 生計同一に関する認定要件 (1) 認定の要件生計維持認定対象者(中略)に係る生計同一関係の認定に当たっては,次に該当する者は生計を同じくしていた者又は生計を同じくする者に該当するものとする。 ① 生計維持認定対象者(中略)が配偶者又は子である場合 ア住民票上同一世帯に属しているとき イ住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるときウ住所が住民票上異なっているが,次のいずれかに該当するとき(ア) 現に起居を共にし,かつ,消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき(イ) 単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民 票上異なっているが,次のような事実が認められ,その事情が消滅したときは,起居を共にし,消費生活上の家計を一つにすると認められるとき(ア) 生活費,療養費等の経済的な援助が行われていること(イ) 定期的に音信,訪問が行われていること②(略) (2)(略)4~5(略) 6 重婚的内縁関係(1) 認定の要件届出による婚姻関係にある者が重ねて他の者と内縁関係にある場合の取扱い については,婚姻の成立が届出により法律上の効力を生ずることとされ ) 6 重婚的内縁関係(1) 認定の要件届出による婚姻関係にある者が重ねて他の者と内縁関係にある場合の取扱い については,婚姻の成立が届出により法律上の効力を生ずることとされていることからして,届出による婚姻関係を優先すべきことは当然であり,従って,届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているときに限り,内縁関係にある者を事実婚関係にある者として認定するものとすること。 なお,内縁関係が重複している場合については,先行する内縁関係がその実体 を全く失ったものとなっているときを除き,先行する内縁関係における配偶者を事実婚関係にある者とすること。 ① 「届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているとき」には,次のいずれかに該当する場合等が該当するものとして取扱うこととすること。 ア当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると 認められるが戸籍上離婚の届出をしていないとき イ一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって,その状態が長期間(おおむね10年程度以上)継続し,当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められるとき② 「夫婦としての共同生活の状態にない」といい得るためには,次に掲げるすべての要件に該当することを要するものとすること。 ア当事者が住居を異にすること。 イ当事者間に経済的な依存関係が反復して存在していないこと。 ウ当事者間の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在していないこと。 (2)(略) 以上 (別紙3)当事者の主張の要旨 1 原告の主張の要旨(1) 重婚的内 通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在していないこと。 (2)(略) 以上 (別紙3)当事者の主張の要旨 1 原告の主張の要旨(1) 重婚的内縁関係の事案において,最高裁昭和58年4月14日第一小法廷判決・民集37巻3号270頁(以下「昭和58年最高裁判決」という。)は, 遺族年金の受給権者たる「配偶者」は,原則として戸籍上婚姻の届出を行った者をいうが,そのような者であっても,その婚姻関係が実態を失って形骸化し,かつ,その状態が固定して近い将来解消される見込みのないときは,「配偶者」に該当しないとする。このように,重婚的内縁関係の事案においては,法律婚の形骸化の固定化が認められるか否かが最初に考えられなければならない問 題である。 そして,昭和58年最高裁判決においては,①被保険者と法律婚配偶者との間には離婚をする合意があったこと,②法律婚配偶者は第三者から共同生活の回復を勧められたにもかかわらず,これを自発的に拒否していることが認められており,離婚に合意している者同士の籍だけが残っていることが前提となっ ていた。 我が国は法律婚制度を採用し,これを保護する法制度が整備されていることなどからも,事実上の離婚状態にあると認定するためには,慎重な判断が求められ,法律婚当事者双方の積極的な意思が合致して,事実上の離婚状態を作り上げているといえなければならない。 (2) 配偶者要件についてア BとAには積極的な離婚意思の合致がないこと本件においては,BとAとの間では,離婚の合意も,法律婚配偶者たるAによる復縁拒否も存しない。 すなわち,Bは,昭和55年に夫婦関係調整調停の申立てを行っていると ころ,結局,当該調停は不調となっている。Bにお Aとの間では,離婚の合意も,法律婚配偶者たるAによる復縁拒否も存しない。 すなわち,Bは,昭和55年に夫婦関係調整調停の申立てを行っていると ころ,結局,当該調停は不調となっている。Bにおいて,真にAと離婚した いという意向があるのであれば,離婚訴訟を提起するなどの行動をとることは可能であったはずであるところ,その死亡に至るまでAとの離婚に向けた具体的な行動をとっていないことは,婚姻関係を解消するという離婚意思がなかったことの証左である。 被告は,Bの公正証書遺言の記載をもって,Aとの婚姻関係の解消が前提 とされているかのような主張をしているが,これは,Bが財産を与えようと考えた相手が参加人であったということであり,必ずしもAとの婚姻関係の解消や積極的な離婚意思の存在が前提とされているものではない。 そして,Aにおいては,平成9年の原告の結婚式の際にも,Bに復縁を持ちかけており,Bとの婚姻関係を継続する意思があった。 以上より,B及びAにおいて積極的な離婚意思はなく,その合致自体も存しない。 イ BとAの別居は,Bと参加人の交際が発展した結果であることBは,参加人と昭和52年頃に交際を開始し,昭和57年5月頃にはAと別居状態となった。被告は,Aや参加人の提出資料をもって縷々主張するが, B自身は「昭和59年頃より右川崎市の住所(引用者注:当時の参加人の住居地である。)に住んでいた」と述べている(乙11)。 Bは,海外出張に行くことも多く,数週間から数か月不在にすることもあったため,参加人と交際が始まる前から単身赴任生活を送っていたが,それが別居と評価されるようなものではないことは明らかである。 なお,Aの事業に関し資金繰りが悪化したのはBと参加 ることもあったため,参加人と交際が始まる前から単身赴任生活を送っていたが,それが別居と評価されるようなものではないことは明らかである。 なお,Aの事業に関し資金繰りが悪化したのはBと参加人との同居開始より後の昭和58年頃であるから,このことが別居の原因になったものとはいえない。AとBの別居は参加人とBとの交際を原因とするものであり,これが解消されれば,別居も解消されたはずのものである。 ウ Bからの送金はAに対する経済的援助であったこと Bから原告名義の預金口座(以下「原告口座」という。)へAに対する婚 姻費用の送金がされていた。 すなわち,Bは,Aとの婚姻を放棄する確定的な意図までは有しておらず,Aの生活の面倒をみることも当然のこととしていた。そのため,昭和57年,両者の間で婚姻費用が月額5万円と取り決められ,それ以降,月1回の頻度で婚姻費用が支払われ,昭和62年頃からは,原告口座に宛てて婚姻費用の 送金が開始された。婚姻費用の送金は,金額の増減はあったものの,Bが亡くなる直前の平成26年8月まで継続された。 Aは,昭和末期頃から人ごみなどで緊張が高まったとき,あるいは階段の昇降などのごく軽い運動などで,胸が苦しくなり,日常生活に不安を生ずる状況となり,「不安定狭心症」と診断された。その後,Aは,平成1 7年には脳梗塞を発病し,平成19年にはメニエール病を発症し,平成20年からは心臓ペースメーカーを移植して第1種身体障害者1級の認定を受け,老年期認知症による妄想状態となり,平成25年には左腎細胞癌により手術を受け,平成26年2月には介護保険要介護5の認定を受けるなど,立て続けに体調を悪化させている。 Aと同居する原告は,昭和末期頃からAの健康状態が完全ではないため,Bと 腎細胞癌により手術を受け,平成26年2月には介護保険要介護5の認定を受けるなど,立て続けに体調を悪化させている。 Aと同居する原告は,昭和末期頃からAの健康状態が完全ではないため,Bとのやりとりや婚姻費用の受領などについて協力せざるを得なかったのであり,原告は,Bとの間で婚姻費用の取り決めを行い,振込送金によって受領した金額と同額をAに交付していたものである。さらに,平成5年4月には,原告がAとBとの間に入って,婚姻費用を月額7万円とする合 意をとりつけ,平成19年には,Bから,稼働を終了するため婚姻費用を3万円としたい旨要請を受け,不承不承という側面はあったものの,減額された婚姻費用を受領していた。 なお,昭和61年頃,Aは破産手続を行うこととなったことから,極力,同人名義の預金口座に動きがない方が良いと考え,Bからの送金について は,原告名義の口座に行うこととしたものである。また,Bとしては,参 加人に対し送金の手続を依頼するに当たり,Aへの経済的援助であることを知られないようにするという理由もあったと推察される。 一方で,原告は,昭和52年から料理人としてのキャリアを積み,昭和54年には成人して相当額の収入を得ていたものであり,Bから扶養を受ける立場になかったことは明らかである。 そして,Aは,昭和末期頃から稼働できない状況となり,平成22年から平成26年までの所得は毎年73万円程度であった一方,療養費等の支出もあることから,Aの所得のみで生活費を賄うことができなかったことは明らかである。 このような状況に照らせば,Bからの原告口座への送金は,Aのための婚 姻費用の送金にほかならない。 エ AとBとの間には定期的な音信や訪問があったこと平成9年の原告の婚姻にあた このような状況に照らせば,Bからの原告口座への送金は,Aのための婚 姻費用の送金にほかならない。 エ AとBとの間には定期的な音信や訪問があったこと平成9年の原告の婚姻にあたって開催された披露宴には,Bも出席し,Aと談笑することがあった。平成15年7月には,Aの手術のために配偶者の同意が必要であるという状況となった際,Bは,積極的にこれに協力した。 A自身は,平成19年にメニエール病を発症するなど,症状が軽快した様子もなく,Bに会いに行くことは困難であった。このような状況であっても,AとBは原告を通じてやりとりをしていたのであり,直接の訪問等がないことをもって両者の関係が極めて疎遠だったと即断することはできない。 オ Bと参加人との重婚的内縁関係は重視すべきではないこと Aの配偶者要件の認定において、Bと参加人との重婚的内縁関係の密接性を重視すべきではない。重婚的婚姻関係を継続する者は,複数の婚姻的な関係が存在することを前提として行動しているのであり,一方との関係が密接であるからといって,他方との婚姻関係が必ずしも形骸化するわけではない。 カ以上のような事情を踏まえれば,AとBは,参加人とBの交際によって別 居を開始することになったものであり,参加人との交際が解消されれば,別 居も解消されたものといえ,継続的かつ定期的な生活費の援助があり,ある程度の音信も認められるところであるから,法律婚配偶者との間に婚姻関係を維持継続する意思ないし婚姻関係を回復する意思がないと認めるべき事情はなく,AとBとの関係は,婚姻関係が実態を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化しているとはいえない。 したがって,Aは,配偶者要件を充たす。 (3) 生計維持要件について 情はなく,AとBとの関係は,婚姻関係が実態を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化しているとはいえない。 したがって,Aは,配偶者要件を充たす。 (3) 生計維持要件についてア上記(2)のとおり,AとBは,Bと参加人との交際が原因となって別居をし,Bが死亡した際には住民票上の住所が異なっていたものの,Bと参加人との交際が解消した際には,AとBが起居を共にし,消費生活上の家計を一つに するといえる。また,Bは,原告を介してAに生活費の援助を行っていたし,BとAとは,直接に又は原告を介して音信,訪問を行っていた。 したがって,Aは,認定基準(別紙2-3)3(1)①ウ(イ)の生計維持要件を充足する。 イまた,認定基準1(1)ただし書においては、認定基準に規定されている生 計同一要件により生計維持関係の認定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当性を欠くこととなる場合には、この限りでないと規定されている(以下,当該ただし書の規定を「例外規定」という。)。この例外規定は、生計同一に関する認定要件に該当するといえない場合であっても,被保険者の死亡当時,被保険者に経済的に依存しなければ 生計維持に支障を来たしていたであろうという関係が認められるような事案において適用されることが予定されている。 Aは,Bからの婚姻費用の支払がなければ生活が成り立たなかったことは明らかであり,本件については,仮に,認定基準「3 生計同一に関する認定要件」を充足しなかったとしても,生計同一要件により生計維持関係の認 定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当 性を欠くこととなる場合に当たるというべきである。 2 被告及び参加人の主張の 要件により生計維持関係の認 定を行うことが実態と著しく懸け離れたものとなり,かつ,社会通念上妥当 性を欠くこととなる場合に当たるというべきである。 2 被告及び参加人の主張の要旨(1) 重婚的内縁関係の場合であっても,婚姻関係がその実体を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化して,近い将来解消される見込みがなく,事実上の離婚状態にあると認められる場合には,法律上の婚姻関係にある者の受給権が否 定され,「婚姻の届出をしていないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者」(厚年法3条2項)が「配偶者」として取り扱われるものと解される(昭和58年最高裁判決)。 そして,法律上の婚姻関係が事実上の離婚状態にあるか否かの判断は,別居の経緯,別居期間,婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無,別居後 における経済的依存の状況,別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状況,重婚的内縁関係の固定性等を総合的に考慮して判断すべきである。 厚年法に基づく遺族厚生年金の受給権者の認定は,誰が民法上の配偶者であるかという観点からではなく,誰が遺族厚生年金の受給権者である厚年法3条2項の「配偶者」に当たるかという観点から判断されるべきであり,事実上の 離婚状態にあるか否かの判断に当たって,離婚意思の合意は必須の要素ではなく,かかる合意が存在しなければ事実上の離婚状態と認められないものではない。 (2) Aが配偶者要件を満たさないことア AとBが別居に至った経緯 Bは,遅くとも昭和52年頃にはAと別居し,また,参加人との交際を開始して,当時参加人が居住していた川崎市内のアパートにて,参加人と同居するようになった。Bは,Aが昭和42年頃から始めた喫茶店の経営等に失敗したため,Bの給料のほ と別居し,また,参加人との交際を開始して,当時参加人が居住していた川崎市内のアパートにて,参加人と同居するようになった。Bは,Aが昭和42年頃から始めた喫茶店の経営等に失敗したため,Bの給料のほぼ全額がAの借金に充てられてしまう状態にあったことなどから,Aに対する愛情を喪失するに至り,海外出張等の合間の時 期においても自宅に帰らず,会社の寮等で寝泊まりするようになって別居に 至ったものであり,AとBの別居は,AがBに負わせた金銭的な苦労や重圧に起因した夫婦関係の破綻を原因とするもので,Bは,自らの確定的意思でAと別居するに至ったというべきである。 イ AとBとの別居状態が長期間にわたり継続していたことAとBとは,遅くとも昭和52年頃には別居に至り,平成26年▲月▲日 にBが死亡するまでの約37年間という長期間にわたって,別居を継続していたのであり,これは,BとAとの同居期間である約19年間よりも倍近くの長期間に及ぶものとなっている。 なお,原告は,AとBとの別居状態が生じたのは,昭和57年5月頃からであったと主張するが,Bが昭和55年に東京家庭裁判所に申し立てた家事 調停事件の期日調書には,Bの住所として,既に「川崎市(住所省略) 参加人方」と記載されていることからすると,原告の上記主張は理由がない。 かえって,A作成の「生計維持関係に関する申立書(追加記載)」(乙9)には,Bに関して「成人前の息子(引用者注:原告のこと。昭和54年▲月▲日をもって成人。)のために離婚を避けたいという気持ちは持っていたと 思います(以下略)」との記載があり,A自身も昭和54年以前にBとの別居が開始されたことを自認していることに加え,参加人は,Bが数え年で42歳(昭和52年)に厄除けのお参りに行った ていたと 思います(以下略)」との記載があり,A自身も昭和54年以前にBとの別居が開始されたことを自認していることに加え,参加人は,Bが数え年で42歳(昭和52年)に厄除けのお参りに行った時には同居していたと述べていることに照らしても,Bは,遅くとも昭和52年頃には,Aと別居していたと認められる。 ウ B及びAには婚姻関係を維持する意思がなく婚姻関係を修復するための努力もなかったことBは,Aと別居後の昭和55年,東京家庭裁判所に対し,Aとの離婚を求める家事調停の申立てを行っていたのであるから,同時点で既に,婚姻関係を維持する意思を喪失していたと見るべきである。さらに,Bは,婚姻関係 を修復するための努力もせず,上記家事調停から5,6年後にも離婚を求め る家事調停の申立てをしている上,平成20年8月22日,「一切の財産を遺言者の内縁の妻参加人(中略)に包括して遺贈する」ことなどを内容とする公正証書遺言を作成していた。かかる公正証書遺言の作成は,Bにおいて,Aとの婚姻関係の解消を前提として,Bと事実上の婚姻関係にあった参加人の権利関係を保護する意思であったことを顕著に示す事情である。 他方,AとBとの直接的な音信の機会は,平成9年に行われた原告の結納及び結婚式を含め3回程度であったことからすると,Aにおいても,Bとの婚姻関係を継続するための積極的な意思ないし努力があったとは認め難い。 Aは上記原告の結婚式の際にBに対して復縁を持ち掛けてみたものの,拒絶されたというのであって,これ以降にAがBに対して復縁を再度求めたこと をうかがわせる証拠は一切ない。 以上によれば,B及びAには,それぞれ,婚姻関係を維持する意思がなく,婚姻関係を修復するための努力もなかったというべきである。 対して復縁を再度求めたこと をうかがわせる証拠は一切ない。 以上によれば,B及びAには,それぞれ,婚姻関係を維持する意思がなく,婚姻関係を修復するための努力もなかったというべきである。 エ Bからの送金はAに対する経済的援助ではなかったこと原告は,AとBの別居当初から,毎月5万円程度をBがAの経営していた 料亭に持参していた旨を述べるものの,これを示す客観的な証拠はない。 そして,原告は,Aの破産を機に昭和61~63年までの間はAと別居していたと述べるところ,B名義による原告口座への送金は,原告とAとが別居している昭和62年から開始しているものであることを踏まえると,当該送金は,Aに対するものではなく,原告に対する資金援助の趣旨であったこ とが強くうかがわれる。 原告口座を通覧すると,Bからの送金開始時期当初から大半の時期においては口座残高がマイナスで借入れがされている状態であり,平成5年頃には,借入額は100万円を超えており,Bからの入金後ただちに借入返済がされていることがうかがえる。その後も,原告は,平成13年9月には債権 額1960万円として不動産に抵当権を設定していたものであり,Bからの 送金が終了した平成26年8月まで,原告口座の借入額はほぼマイナスで推移してきたことからすると,Bからの送金は,原告に対する経済的援助の趣旨であったとみるのが自然である。また,Bは,平成9年に100万円という大金を原告口座に送金しているところ,原告が同年に入籍していることにかんがみると,当該金銭についても,原告への支援であったと認めるのが自 然である。 一方で,Bからの送金について,原告がAのためにその都度出金するなどAの生活費として金銭管理されていたことをうかがわせる出 ,当該金銭についても,原告への支援であったと認めるのが自 然である。 一方で,Bからの送金について,原告がAのためにその都度出金するなどAの生活費として金銭管理されていたことをうかがわせる出金履歴はなく,原告は,この点を指摘されると,自身の別の給与口座から渡していた旨述べるなど,Bから入金された金員を引き下ろしてはAに交付していた旨の従前 の説明内容を合理的理由もなく変遷させている。 そして,BからAへの経済的援助としての送金を原告口座宛てに行うこととしたことを裏付けるべき客観的証拠は一切存在せず,Aが平成9年の原告の結婚式に出席していることからしても,原告口座への送金開始当時のAの体調が,およそ出金手続が出来なくなるほど重篤な状態であったとまでは認 め難い。かえって,Aは,昭和62年▲月▲日以降に発生した自らの老齢基礎年金及び老齢厚生年金に関しては,その受取口座としてA自身の口座を指定してその受給を受けており,昭和62年当時,Bからの経済的援助の受取口座を原告口座とする必然性は認められない。Aは60歳となった昭和62年から年金を受給し,原告から援助を受けることによって生計を維持するこ とができたのであり,Bから原告への送金をAの婚姻費用と同視すべき事情は認められない。 オ BとAとの間には,夫婦間の意思の疎通を表すような定期的な音信ないし訪問はなかったこと原告主張の事実関係のうち客観的証拠によって確認できるものとしては, 原告の平成9年▲月の結納や同年▲月の結婚披露宴にBとAが出席したこ と,及び,平成15年7月のAの手術に係る同意書にBが署名したことに限られる。 その上,原告の結納や結婚披露宴への出席については,そもそも原告に係る事柄であって,Bが 席したこ と,及び,平成15年7月のAの手術に係る同意書にBが署名したことに限られる。 その上,原告の結納や結婚披露宴への出席については,そもそも原告に係る事柄であって,Bが原告に対する父親としての配慮から出席したものと見るべきものである。また,手術同意書への署名についても,Bが同意書に署 名するに至った具体的な経緯や状況については明らかではなく,上記手術の前後にBがAの見舞いをしたことなどを裏付ける証拠はない上,Aが平成20年7月にペースメーカー植え込み術をした際には,Bが医師の説明に立ち会ったとする主張や証拠は一切存在しないのであるから,Bが上記同意書に署名したことがあったからといって,AとBとの間に定期的な音信があった ということもできない。 したがって,客観的証拠から認められる上記の各事実をもって,BがAとの間で定期的な音信・訪問を継続していたとまで認めることはできない。 カ Bと参加人との間の重婚的内縁関係が固定化していたことBと参加人は,昭和52年頃には川崎市のアパートにて同居するようにな り,その後の平成2年3月30日には,横浜市のアパートに転居し,同所に平成6年7月頃まで一緒に居住した。さらに,平成6年7月,参加人の現住所であるマンションの居室を共有で取得して同所に転居し,以後,Bは,平成26年▲月に死亡するまでの20年以上にわたり,上記マンションにて参加人と同居していた。 そして,その同居生活の間,参加人はほぼ無職で,参加人とBの生計は,Bの給与収入から,住宅費(家賃ないし住宅ローンの支払),光熱費,食費等を支出するなどしていたものであり,またその管理は参加人が行っていたものであった。 また,参加人は,Bの実母の介護をBの姉ら 給与収入から,住宅費(家賃ないし住宅ローンの支払),光熱費,食費等を支出するなどしていたものであり,またその管理は参加人が行っていたものであった。 また,参加人は,Bの実母の介護をBの姉らとともに分担して行い,Bの かつての稼働先においてもBの配偶者として遇され,「E」としてBと連名 で年賀状を受信していたことなどに照らせば,Bと参加人との関係は,社会的に夫婦として認知されていたものである。 さらに,参加人は,Bが入院した際にはBを看護し,Bの死亡後は,同人の葬儀を,Bの妻として「E」の名と負担により行っていた。 以上のように,Bと参加人との間の重婚的内縁関係は固定化していたと認 められる。 キ以上からすれば,AとBとの婚姻関係は,その実態を失って形骸化し,かつ,その状態が固定して回復の見込みのない状態になっていたものといえるのであって,Aを厚年法59条1項にいう「配偶者」とすることはできない。 (3) 生計維持要件 Aが被保険者たるBの死亡により遺族厚生年金の受給権を取得するためには,Bの死亡当時,生計維持要件を満たす必要がある。 しかしながら,以下のとおり,Aは,認定基準の3(1)①ア~ウの要件のいずれにも該当せず,生計維持要件を満たすとはいえない。 ア BとAは,遅くとも昭和52年から約37年にわたり別居しており,Bの 死亡当時には婚姻関係が完全に破綻し,Aとは住民票上の世帯も住所も異にしていた。 したがって,Aは,認定基準の3(1)①アの「住民票上同一世帯に属しているとき」及び同イの「住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるとき」のいずれにも該当せず,「現に起居を共にし,かつ,消費生 活上の家計を一つにしていたとき」,同ウ(イ)所定の「単 るとき」及び同イの「住民票上世帯を異にしているが,住所が住民票上同一であるとき」のいずれにも該当せず,「現に起居を共にし,かつ,消費生 活上の家計を一つにしていたとき」,同ウ(イ)所定の「単身赴任,就学又は病気療養等の止むを得ない事情により住所が住民票上異なっている」ものにも該当しない。 イそして,上記(2)で述べたとおり,Aは,Bとの関係において,認定基準の3(1)①ウ(イ)所定の「(ア)生活費,療養費等の経済的な援助が行われて いること」に該当せず,また,「(イ)定期的に音信,訪問が行われているこ と」にも該当しない。 また,上記(2)で述べた状況からすれば,本件においてAとBの生計維持関係を否定したとしても,そのことがBの意思や生活実態とかけ離れた結果となるものとはいえず,Aの意思や生活実態に照らしても直ちに社会通念上妥当性を欠く結果となるものとはいえないから,認定基準の例外規定にも該 当しない。 以上

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