○ 主文一、原告の被告岡山県知事に対する怠つた事実の違法確認の請求の訴えを却下する。二、原告の被告岡山県知事に対するその余の請求ならびに原告の被告A、被告株式会社クラレおよび被告三菱重工業株式会社に対する各請求をいずれも棄却する。三、訴訟費用は原告の負担とする。○ 事実第一当事者の求めた裁判一原告 1 被告岡山県知事が(1) 昭和三五年七月三〇日岡山県と株式会社クラレとの間で締結された別紙物件目録記載の土地の売買契約につき、岡山県のために、株式会社クラレに対し、解除又は取消の意思表示をなして右土地を取戻すべきであつたのにこれを怠つたこと(2) 昭和四四年二月頃前記土地が株式会社クラレから三菱重工株式会社に転売され、同年九月所有権移転登記がなされたため、岡山県が同土地を取戻し得なくなつた結果被つた損害につき、A、株式会社クラレおよび三菱重工株式会社に対し損害賠償請求権を行使すべきであるのにこれを怠つていることがいずれも違法であることを確認する。2 被告A、同株式会社クラレおよび同三菱重工株式会社は各自岡山県に対し二二億三三九四万九六〇〇円ならびにこれに対する被告Aおよび同株式会社クラレは昭和四四年八月二三日から、被告三菱重工業株式会社は同月二四日からいずれも完済まで年五分の割合による金員を支払え。3 訴訟費用は被告らの負担とする。との判決ならびに2項につき仮執行宣言。二被告ら(本案前の申立) 1 本件訴を却下する。2 訴訟費用は原告の負担とする。との判決。(本案に対する申立) 1 原告の請求を棄却する。2 訴訟費用は原告の負担とする。との判決。第二当事者の主張別紙(「当事者の主張」)記載のとおり。第三証拠関係(省略)○ 理由第一本件各訴の適法性について一 1原告が岡山県の住民であることは全当事者 告の負担とする。との判決。第二当事者の主張別紙(「当事者の主張」)記載のとおり。 の申立) 1 本件訴を却下する。2 訴訟費用は原告の負担とする。との判決。(本案に対する申立) 1 原告の請求を棄却する。2 訴訟費用は原告の負担とする。との判決。第二当事者の主張別紙(「当事者の主張」)記載のとおり。第三証拠関係(省略)○ 理由第一本件各訴の適法性について一 1原告が岡山県の住民であることは全当事者 告の負担とする。との判決。第二当事者の主張別紙(「当事者の主張」)記載のとおり。第三証拠関係(省略)○ 理由第一本件各訴の適法性について一 1原告が岡山県の住民であることは全当事者間に争いがない。2 真正に作成されたことに争いのない乙第一号証によれば次の事実が認められる。(一) 昭和四四年五月二日、原告は岡山県監査委員(以下単に「県監査委員」という。)に対して、後述する岡山県と被告株式会社クラレ(被告株式会社クラレは商号変更前倉敷レイヨン株式会社と称していた。以下「被告クラレ」という。)との間に、昭和三五年七月三〇日締結された別紙物件目録記載の土地(以下一括して「本件土地」という。)を目的とする売買契約に関して(1)右売買契約においては、本件土地を工場敷地として使用するという一定の用途と、その用途に供しなければならない期日が定められていたにも拘らず被告クラレは指定期日が経過してもなお工場を建設しなかつたのであるから、被告岡山県知事(以下「被告県知事」という。)は地方自治法(以下単に「法」という。)第二三八条の五第五項、第四項に基いて、右売買契約を解除すべきであるのに、これをしないことは、違法に財産の管理を怠る事実に該当する、(2)昭和四〇年二月一二日、被告県知事が被告クラレに対する本件土地所有権移転の登記手続をしたことは、違法若しくは不当な財産の管理・処分、契約の履行のいずれかに該当する、(3)被告県知事は、被告クラレが岡山県に一億円を寄付するのみで、時価(昭和四四年当時)二〇数億円の本件土地を、被告三菱重工業株式会社(以下「被告三菱重工」という。)に一六億余円で転売することを、積極的に仲介しようとしているが、契約解除権の行使によつて被告クラレから岡山県に取戻すべき本件土地を、被告クラレをして右のように転売させるこ 「被告三菱重工」という。)に一六億余円で転売することを、積極的に仲介しようとしているが、契約解除権の行使によつて被告クラレから岡山県に取戻すべき本件土地を、被告クラレをして右のように転売させることは、被告クラレに一二億円、被告三菱重工に一〇億円の不当な利得をさせ、岡山県に右と同額の損害を与えることになる、として監査を求め、右(1)の怠る事実を改めるための措置および右(2)の行為の是正並びに右(1)(2)(3)によつて岡山県が被つた損害を補填するための措置を講ずることを請求した(以下右監査請求を「本件監査請求」という。 から岡山県に取戻すべき本件土地を、被告クラレをして右のように転売させることは、被告クラレに一二億円、被告三菱重工に一〇億円の不当な利得をさせ、岡山県に右と同額の損害を与えることになる、として監査を求め、右(1)の怠る事実を改めるための措置および右(2)の行為の是正並びに右(1)(2)(3)によつて岡山県が被つた損害を補填するための措置を講ずることを請求した(以下右監査請求を「本件監査請求」という。)。(二) 本件監査請求に対して県監査委員は、前項(1)の点については、岡山県と被告クラレ間の本件土地の売買契約は、法第二三八条の五第五項、第四項が施行される前に締結されたものであるところ、同条項をその施行前に締結された売買契約にも適用する旨の経過措置の規定がないので、被告県知事は、同条項に規定されている解除権を有しない、前項(2)の点については、本件監査請求は法第二四二条第二項本文に規定する監査請求期間経過後になされたものであり、且つ、同項但書きによつて、請求期間経過後の請求が適法なものとされる正当な理由も認められない、前項(3)の点については、被告県知事が、その行政判断に基いて、県経済の発展を図り、ひいては県民の福祉向上を目的とした妥当な措置である、として、本件監査請求には理由がないものと認めた。二原告の請求の趣旨1(1)について原告は、被告県知事が解除権または取消権を行使しなかつたことを「怠つた事実」として、その違法確認を請求しているのであるが、法二四二条の二第一項第三号は違法確認の対象を「怠る事実」と規定しているのであるから、違法確認の対象に「怠つた事実」も含まれると解するのは文理に沿わないのみならず、右条項 認を請求しているのであるが、法二四二条の二第一項第三号は違法確認の対象を「怠る事実」と規定しているのであるから、違法確認の対象に「怠つた事実」も含まれると解するのは文理に沿わないのみならず、右条項の立法趣旨が、地方公共団体の執行機関または職員の職務懈怠の責任を追及することを目的としたものではなく、職務懈怠の違法を確認することによつて、その違法状態を除去させ(法第二四二条の二第六項、行政事件訴訟法第四三条第三項、同法第四一条第一項、同法第三三条参照。)、もつて地方公共団体の財務会計上の公益(住民一般の利益)を擁護することを目的としたものであると考えられるところ、執行機関または職員に、過去に職務懈怠があつたとしても、もはやその不作為の違法状態を除去するための作為義務を履行する余地がなくなつた場合に、単に過去の職務懈怠の違法を確認しても、右の目的を達することはできないのであるから、法第二四二条の二第一項第三号にいう「怠る事実」 には「怠つた事実」も含まれると解することは相当でない。 公益(住民一般の利益)を擁護することを目的としたものであると考えられるところ、執行機関または職員に、過去に職務懈怠があつたとしても、もはやその不作為の違法状態を除去するための作為義務を履行する余地がなくなつた場合に、単に過去の職務懈怠の違法を確認しても、右の目的を達することはできないのであるから、法第二四二条の二第一項第三号にいう「怠る事実」 には「怠つた事実」も含まれると解することは相当でない。そして、右の点は、訴の提起当時においては作為義務を履行することが可能であつたが、その後、その履行の余地がなくなつた場合(本件訴が提起された昭和四四年七月二九日より後である同年九月四日に、被告クラレから被告三菱重工に対する本件土地所有権移転登記が行われたことによつて、岡山県と被告クラレ間の本件土地の売買契約を解除又は取消す余地がなくなつた)においても、別異に解すべき理由はないものと考える。したがつて、原告の請求の趣旨1(1)の訴は、被告らの他の点についての主張について判断するまでもなく、不適法な訴であるといわなければならない。三被告三菱重工の、原告の請求の趣旨1(2)、2はいずれも監査請求を経ていない訴であるから、不適法であるとの主張について 1 原告は、本件監 するまでもなく、不適法な訴であるといわなければならない。三被告三菱重工の、原告の請求の趣旨1(2)、2はいずれも監査請求を経ていない訴であるから、不適法であるとの主張について 1 原告は、本件監査請求において前記一2(一)の(1)(2)(3)の各事項について監査を求めたものであり、原告の請求の趣旨1(2)の、被告県知事の損害賠償請求権の不行使が、怠る事実に該当する旨の主張およびその是正の請求はしていない。しかしながら、本件監査請求において原告が監査を求めた、被告県知事が岡山県と被告クラレ間の本件土地の売買契約の解除権の行使を怠つているということ、被告県知事が本件土地についての岡山県から被告クラレに対する所有権移転登記を行つたということ、被告県知事が被告クラレから被告三菱重工に対する本件土地の転売を仲介しようとしているということからすれば、被告クラレが被告三菱重工に対して本件土地を転売した場合においても、右の転売によつて岡山県が損害を被つたとして、被告県知事が被告クラレ、被告三菱重工に対して右損害の賠償請求を行うことはない、ということは当然予測されることであるということができるうえ、本件監査請求について県監査委員は、被告県知事が被告クラレから被告三菱重工に対する本件土地の転売を仲介することは、被告県知事の行政判断に基く妥当な措置と認める旨の判断を示したのであり、右判断は、実質的には、被告クラレから被告三菱重工に対して本件土地が転売された場合に、被告県知事が右被告らに対して岡山県の損害の賠償請求を行わないとしても、それは被告県知事の違法な不作為(怠る事実)にはならない、との判断を含んでいるということができる。 、被告県知事が被告クラレから被告三菱重工に対する本件土地の転売を仲介することは、被告県知事の行政判断に基く妥当な措置と認める旨の判断を示したのであり、右判断は、実質的には、被告クラレから被告三菱重工に対して本件土地が転売された場合に、被告県知事が右被告らに対して岡山県の損害の賠償請求を行わないとしても、それは被告県知事の違法な不作為(怠る事実)にはならない、との判断を含んでいるということができる。2 ところで、住民訴訟は、監査委員の監査の結果そのものの当否を争うための訴訟ではなく、地方公共団体の財務会計上の違法状態を除去し、 (怠る事実)にはならない、との判断を含んでいるということができる。2 ところで、住民訴訟は、監査委員の監査の結果そのものの当否を争うための訴訟ではなく、地方公共団体の財務会計上の違法状態を除去し、もつて地方公共団体が損害を被ることを防止し若しくは被つた損害を回復させることを目的とするものであることから考えると、住民訴訟の対象となる行為または事実は、監査請求に係る行為または事実と同一のものに限定されることを要せず、これから派生し、またはこれを前提として後続することが当然に予測される行為または事実を含むものと解するのが相当である。右のように解することは、まず地方公共団体の内部機関である監査委員に監査の機会を与えることによつて、できる限り、地方公共団体に自主的に違法状態を除去させようとする監査請求前置主義の建前から形式的にははずれることになるが、さりとて、住民訴訟の対象となる行為又は事実は、監査請求の対象とされたものと同一であることを要すると解することは、差止請求、怠る事実の違法確認請求等の訴えが提起された後、訴訟係属中に違法な後続行為がなされ、または事実が発生した場合に、住民訴訟を提起した住民に、再度監査請求から出直すべきことを要求することになつて、多大の犠牲を強い、住民の正当な出訴権の行使を事実上制限する結果となるおそれがあり、また実質的には同一内容の監査請求の繰り返えしを要することになるので、妥当でないと考える。してみると、原告の請求の趣旨1(2)の訴については、本件監査請求のほかにあらためて監査請求を経ることを要しないものというべきである。3 したがつて、被告三菱重工の、原告の請求の趣旨1(2)およびその代位請求である同2の各訴は、監査請求を経ていないから不適法であるという主張は採用できない。 結果となるおそれがあり、また実質的には同一内容の監査請求の繰り返えしを要することになるので、妥当でないと考える。してみると、原告の請求の趣旨1(2)の訴については、本件監査請求のほかにあらためて監査請求を経ることを要しないものというべきである。3 したがつて、被告三菱重工の、原告の請求の趣旨1(2)およびその代位請求である同2の各訴は、監査請求を経ていないから不適法であるという主張は採用できない。四被告Aの、同被告は法第二四二条の 3 したがつて、被告三菱重工の、原告の請求の趣旨1(2)およびその代位請求である同2の各訴は、監査請求を経ていないから不適法であるという主張は採用できない。四被告Aの、同被告は法第二四二条の二第一項第四号にいう職員に含まれないから、原告の被告Aに対する訴は不適法である、との主張、被告三菱重工の、同被告は被告県知事が怠つたとされる解除若しくは取消の意思表示の相手方となるべき者ではないから、法第二四二条の二第一項第四号に基く訴の被告としての適格を欠く旨の主張について法第二四二条の二第一項第四号によるいわゆる代位請求訴訟は、法第二四二条第一項所定の地方公共団体の執行機関又は職員による同項所定の一定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実によつて、地方公共団体が被り、又は被るおそれのある損害の回復又は予防を目的とするものであり、地方公共団体が実体法上有する請求権を住民が地方公共団体に代位して訴訟上行使することを認めたものである。右のような代位請求訴訟の目的および構造に照らして考えると、条文の文言に拘泥して、法第二四二条の二第一項第四号の「当該職員」が、法第二四二条の二第一項第一号、第三号にいう職員たる地位にあり、またはあつた個人のみを指し、執行機関たる地位にあり、またはあつた個人は排除する趣旨であると解するのは相当でなく、執行機関たる地位にあり、またはあつた個人を含むと解すべきであり、また、地方公共団体が前記違法な行為または怠る事実に基づいて取得した実体法上の請求権の相手方である以上、違法な行為または怠る事実の直接の相手方でなくても代位請求訴訟の被告適格を有すると解するのが相当である。したがつて、被告Aおよび同三菱重工の前記主張はいずれも採用できない。五被告クラレ、同三菱重工の、法第二四二条の二第一項第四号前段の当該職員に対する請求と 被告適格を有すると解するのが相当である。 、また、地方公共団体が前記違法な行為または怠る事実に基づいて取得した実体法上の請求権の相手方である以上、違法な行為または怠る事実の直接の相手方でなくても代位請求訴訟の被告適格を有すると解するのが相当である。したがつて、被告Aおよび同三菱重工の前記主張はいずれも採用できない。五被告クラレ、同三菱重工の、法第二四二条の二第一項第四号前段の当該職員に対する請求と 被告適格を有すると解するのが相当である。したがつて、被告Aおよび同三菱重工の前記主張はいずれも採用できない。五被告クラレ、同三菱重工の、法第二四二条の二第一項第四号前段の当該職員に対する請求と後段の当該行為または怠る事実に係る相手方に対する請求とは異質なものであるから、被告A、同クラレおよび同三菱重工による共同不法行為を理由とする損害賠償請求を右条項によつてすることはできず、従つて原告の被告クラレ、同三菱重工に対する訴は不適法である、との主張について法第二四二条の二第一項第四号の代位請求訴訟のうちの損害賠償請求、不当利得返還請求の訴訟について、当該職員に対するものと当該行為または怠る事実に係る相手方に対する請求とで性質を異にすると考えるべき理由はないから、被告クラレ、同三菱重工業の前記の主張は採用できない。第二本案について一原告と被告県知事、同Aおよび同クラレとの間では真正に作成されたことに争いがなく、原告と被告三菱重工との間では証人Bの証言によつて真正に作成されたと認められる甲第一号証、原告と被告県知事、同Aおよび同クラレとの間では真正に作成されたことに争いがなく、原告と被告三菱重工との間では証人Cの証言によつて真正に作成されたと認められる甲第二号証、原告と被告県知事、同Aおよび同クラレとの間では真正に作成されたことに争いがなく、原告と被告三菱重工との間ではその記載形式、内容によつて真正に作成されたと認められる甲第八号証、原告と被告県知事、同Aおよび同クラレとの間では真正に作成されたことに争いがなく、原告と被告三菱重工との間ではその方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第一〇号証、原告と被告県知事および同Aとの間では原本が存在し、右原本が真正に作成されたことに争いがなく、 の方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき甲第一〇号証、原告と被告県知事および同Aとの間では原本が存在し、右原本が真正に作成されたことに争いがなく、原告と被告クラレおよび同三菱重工との間では証人Cの証言によつて原本が存在し、右原本が真正に作成されたと認められる甲第一七号証、いずれも真正に作成されたことに争いのない乙第三号証、同第六号証の一、同第九号証、丁第一号証の一、その記載の形式、内容によつて真正に作成されたと認められる丁第一号証の四、証人D、同C、同E、同F、同G、同H、同I、同B、同Jの各証言、被告A本人尋問の結果および弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。 重工との間では証人Cの証言によつて原本が存在し、右原本が真正に作成されたと認められる甲第一七号証、いずれも真正に作成されたことに争いのない乙第三号証、同第六号証の一、同第九号証、丁第一号証の一、その記載の形式、内容によつて真正に作成されたと認められる丁第一号証の四、証人D、同C、同E、同F、同G、同H、同I、同B、同Jの各証言、被告A本人尋問の結果および弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。1 昭和二七年九月一五日、岡山県は企業を誘致して工場用地とするという名目で国から本件土地の払下げを受けた。2 昭和三三年頃、当時の岡山県知事Kは県勢振興計画なるものを提唱し、岡山県の産業構造を高度化して農業県から重化学工業中心の工業県へ脱皮させることおよび昭和四〇年を目標として県民の所得を倍増することを唱えた。岡山県は、右の計画を具体的に実施する事業資金を調達するために、民間資金の導入が可能な組織を設置する必要にせまられ、昭和三五年三月、従来からあつた基本金の額二九五万円の財団法人岡山県住宅公社を改組して、財団法人岡山県開発公社(以下「開発公社」という。)とし、開発公社が工場用地造成事業、都市郊外再開発整備事業、観光施設整備事業、都市再開発建築環境整備事業、住宅建設事業を行うこととしたが、右事業の遂行には年間一〇数億円の事業資金の必要が見込まれたので、岡山県は開発公社の基本金として新たに三億円を出資することになつた。3 昭和三四年四月、被告クラレは会社内部に企画室を新設したが、右企画室ではプラント輸出、ポリエステル系合 の必要が見込まれたので、岡山県は開発公社の基本金として新たに三億円を出資することになつた。3 昭和三四年四月、被告クラレは会社内部に企画室を新設したが、右企画室ではプラント輸出、ポリエステル系合成繊維の企業化、石油化学部門への進出の三つを柱として新規事業の企画立案をしてゆくこととなつた。被告クラレが企てていた石油化学事業というのは、石油からアセチレンを製造するというものであつて、昭和三四年頃、ほぼその基礎的な実験は完了していたのであるが、石油からアセチレンを製造するのみではコストが高くつくという問題点が残つており、右の方法を企業化してゆくためには、計画を拡充して、より総合的な石油化学事業にする必要があつた。そこで被告クラレは、水島において、三菱石油株式会社(以下「三菱石油」という。 告クラレが企てていた石油化学事業というのは、石油からアセチレンを製造するというものであつて、昭和三四年頃、ほぼその基礎的な実験は完了していたのであるが、石油からアセチレンを製造するのみではコストが高くつくという問題点が残つており、右の方法を企業化してゆくためには、計画を拡充して、より総合的な石油化学事業にする必要があつた。そこで被告クラレは、水島において、三菱石油株式会社(以下「三菱石油」という。)と連携して石油コンビナートを形成して石油化学事業を行うとともに、合成繊維の製造も行なおうと構想を練つていた。そして、被告クラレは、水島に進出する場合には位置的にも(三菱石油に近接している。)面積的にも本件土地が好適であると考えていた。4 K知事は、前記のような財団法人岡山県住宅公社の開発公社への改組計画によつて岡山県の出資が必要とされる基本金を捻出するため、水島港周辺の工業開発推進論者であつた被告クラレの当時の社長Lに対して、本件土地を被告クラレが買受けるよう申入れ、Lもこれを了承した。被告クラレは、右申入れを受けた当時、前記のような構想を有していたが、未だ具体的な計画はできておらず、本件土地の取得を急がなければならない状態にはなかつた。5 岡山県と被告クラレとが本件土地の売買契約を締結するに先立ち、倉敷市をも加え、右三者の間で、昭和三五年二月二四日、協定が結ばれたが、右協定書(甲第二号証)の前文には「倉敷レイヨン株式会社(以下「甲」という。)は、倉敷 とが本件土地の売買契約を締結するに先立ち、倉敷市をも加え、右三者の間で、昭和三五年二月二四日、協定が結ばれたが、右協定書(甲第二号証)の前文には「倉敷レイヨン株式会社(以下「甲」という。)は、倉敷市水島地内において、石油化学関連工場(以下「工場」という。)の建設を計画し、岡山県(以下「乙」という。)及び倉敷市(以下「丙」という。)は、右工場の建設及び操業に協力するものとし、三者間において次のとおり協定する。」と、更に第一条には「甲は、別紙の工場設立計画書に基づき工場を建設するものとする。」(右の「別紙の工場設立計画書」の内容については後述する。)と、第二条には「乙は、甲の工場の敷地として別図の土地を譲渡し又はあつ旋するものとする。2乙は、前項の土地のうち乙の所有にかかる土地(約一二万坪)を別に定めるところにより甲に有償で譲渡するものとする。 び操業に協力するものとし、三者間において次のとおり協定する。」と、更に第一条には「甲は、別紙の工場設立計画書に基づき工場を建設するものとする。」(右の「別紙の工場設立計画書」の内容については後述する。)と、第二条には「乙は、甲の工場の敷地として別図の土地を譲渡し又はあつ旋するものとする。2乙は、前項の土地のうち乙の所有にかかる土地(約一二万坪)を別に定めるところにより甲に有償で譲渡するものとする。3乙は、第一項の土地のうち国有地(約五千坪)を甲が買収できるようあつ旋するものとする。」(右2の、乙の所有にかかる土地とは本件土地のことを指していると解される。)と記載されている。そして、右協定書の調印に至るまでの岡山県と被告クラレとの交渉過程において、被告クラレは岡山県から、協定書に工場の建設計画書を添付するようにしたいとの申入れを受けたのに対して、被告クラレの水島における事業は未だ構想段階で、具体的計画は定まつていないので、計画書の提出は不可能である旨を回答したところ、岡山県は、計画書の添付は不要とする方向で検討するが、少なくとも事業内容を協定書に明記したい旨の意向を示したけれども、数日後、岡山県から被告クラレに対して、協定書の形式を整えるため、現在の構想をもとにしたものでよいから計画書を提出して欲しいとの要望があつた。そこで被告クラレは、企画室勤務のGが別紙記載のとおりの内容の工場建設計画書 告クラレに対して、協定書の形式を整えるため、現在の構想をもとにしたものでよいから計画書を提出して欲しいとの要望があつた。そこで被告クラレは、企画室勤務のGが別紙記載のとおりの内容の工場建設計画書を作成して、これを協定書添付用のものとして岡山県に提出した。右計画書は、Gが、合成繊維製造の方が早く企業化を達成できる、石油化学事業の開始は遅れるが、これも将来水島で行なうことになるとの見通しを立て、これに基いて作成したものである。岡山県は、前記のような右計画書提出の経緯から、右計画書の内容について、被告クラレの社内事情および経済情勢の変動等によつて、工場建設時期、事業内容、事業規模等に変更が生じることがあることを承認していた。6 昭和三五年七月三〇日、岡山県と被告クラレとの間で、本件土地を、代金は三億二二五六万五〇〇〇円とし、そのうち一億円は同日、その余は翌三六年三月三一日支払う、本件土地所有権は、代金完済と同時に被告クラレに移転する、所有権移転登記は、被告クラレが請求した時に岡山県が嘱託する等の定めで、被告クラレに譲渡するという売買契約(以下「本件売買契約」という。 業規模等に変更が生じることがあることを承認していた。6 昭和三五年七月三〇日、岡山県と被告クラレとの間で、本件土地を、代金は三億二二五六万五〇〇〇円とし、そのうち一億円は同日、その余は翌三六年三月三一日支払う、本件土地所有権は、代金完済と同時に被告クラレに移転する、所有権移転登記は、被告クラレが請求した時に岡山県が嘱託する等の定めで、被告クラレに譲渡するという売買契約(以下「本件売買契約」という。)が結ばれた(昭和三五年七月三〇日、被告クラレが岡山県から本件土地を代金一二億二二五六万五〇〇〇円で買受けたことについては全当事者間に争いがない。)。本件売買契約の契約書(甲第一号証)には、冒頭に「昭和三五年二月二四日付協定書及び細目協定書に基づき、県有土地を売買するにつき、売払人(以下「甲」という。)は、買受人倉敷レイヨン株式会社(以下「乙」という。)と次の条項により売買契約を締結する。」との記載がある(右の細目協定書がどのようなものであるかを認めるべき証拠はない。)。本件売買契約に基づいて、売買代金が被告クラレから岡山県に対して所定の期日に支払われた。一方、昭和三五年三 る。」との記載がある(右の細目協定書がどのようなものであるかを認めるべき証拠はない。)。本件売買契約に基づいて、売買代金が被告クラレから岡山県に対して所定の期日に支払われた。一方、昭和三五年三月二三日から開発公社が発足し、これに対して、岡山県から合計三億円が三回に分けて出資された。7 被告クラレは、本件売買契約締結当時、本件土地に合成繊維の製造と石油化学事業を行うための工場を建設する構想を有していたが、昭和三六年六月になつて川崎製鉄株式会社(以下「川崎製鉄」という。)が本件土地の西隣りに進出することが決まつた。当時、被告クラレはポリエステル系合成繊維の企業化を目指してモンサント社(米国)から技術導入をするための準備をしていたが、調査の結果、繊維工場を製鉄所に近接して立地することは好ましくないということ(製鉄所から排出される鉄粉や粉塵が合成繊維の生産工程に混入すると、繊維製品の品質に悪影響を及ぼすが、その混入を防止することが至難である。)がわかり、本件土地に繊維工場を建設することを断念せざるを得なくなつた。そこで被告クラレは、ポリエステル工場を本件土地ではなく玉島(岡山県)に建設することになり、昭和三九年四月から同地においてポリエステルの生産を開始した。 接して立地することは好ましくないということ(製鉄所から排出される鉄粉や粉塵が合成繊維の生産工程に混入すると、繊維製品の品質に悪影響を及ぼすが、その混入を防止することが至難である。)がわかり、本件土地に繊維工場を建設することを断念せざるを得なくなつた。そこで被告クラレは、ポリエステル工場を本件土地ではなく玉島(岡山県)に建設することになり、昭和三九年四月から同地においてポリエステルの生産を開始した。前記3のとおり、石油化学事業については、これを企業化するためには、石油からアセチレンを製造するのみでは無駄が多く、更に進んでアセチレン製造の際出てくる廃ガスからエチレンをとり出してこれから誘導品の生産をしなければ採算に合わないことが判明した。ところで被告クラレは、アセチレンからボバールを製造する技術は開発していたが、エチレンから塩化ビニールを製造する技術は未開発であつた。そこで被告クラレは、エチレンから塩化ビニールを製造する技術を開発するため、他社との間に提携交渉を進めていたのであ する技術は開発していたが、エチレンから塩化ビニールを製造する技術は未開発であつた。そこで被告クラレは、エチレンから塩化ビニールを製造する技術を開発するため、他社との間に提携交渉を進めていたのであるが、相手方会社の業績不振等により実現しなかつた。更にこれに加えて昭和三九年頃から、通産省は、国内産業の国際競争力を強化するという見地から、生産能力が年産三〇万トン以下の規模のエチレン製造工場の建設は認可しないという行政指導を打出し、昭和四一年にはこれを明文で定めるに至つた。以上のような、他社との提携交渉の不奏功、通産省の行政指導等の事情により、被告クラレは石油化学事業についても当初計画していたような総合的な石油化学事業は断念せざるを得なくなり、アセチレンとかエチレンを自社で生産するのではなく、他社から購入し、これからボバールを製造して最終製品をつくるという方向に転換を余儀なくされた。8 昭和四〇年一月六日、被告クラレは岡山県に対して、本件土地について被告クラレに対する所有権移転登記手続をすることを請求し、これに基づき、昭和四〇年二月一二日、岡山県は登記を嘱託した(昭和四〇年二月一二日、本件土地につき岡山県から被告クラレに対する所有権移転登記がなされたことは原告と被告県知事、同Aおよび同クラレとの間では争いがない。 ールを製造して最終製品をつくるという方向に転換を余儀なくされた。8 昭和四〇年一月六日、被告クラレは岡山県に対して、本件土地について被告クラレに対する所有権移転登記手続をすることを請求し、これに基づき、昭和四〇年二月一二日、岡山県は登記を嘱託した(昭和四〇年二月一二日、本件土地につき岡山県から被告クラレに対する所有権移転登記がなされたことは原告と被告県知事、同Aおよび同クラレとの間では争いがない。)。9 (一)被告クラレは、昭和四二年、バイエル社(西独)から技術導入によつてエチレンからボバールを製造することが可能となり、ボバール工場を建設することになつたが、四日市の方がエチレンを安価に入手することができるという理由で、同地に工場を建設すべきであるとの意見も会社内部では有力に主張されていた。一方、岡山県は被告クラレに対してボバール工場を県内に建設することを強く要請していた。被告クラレがボバール工場を本件土地に建設すべきか四 建設すべきであるとの意見も会社内部では有力に主張されていた。一方、岡山県は被告クラレに対してボバール工場を県内に建設することを強く要請していた。被告クラレがボバール工場を本件土地に建設すべきか四日市に建設すべきか検討していた矢先、昭和四二年秋頃、本件土地に隣接して自動車製造工場を有していた被告三菱重工から製造能力増加のために本件土地を譲受けたい旨の申し入れを受けた(被告クラレは、岡山県の了解を得たうえで、昭和四一年九月頃から被告三菱重工に対して、本件土地のうち三万坪を製品(自動車)置場として、被告クラレが工場建設に着手するばあいには返還するという約束で賃貸していた。)。被告クラレは、被告三菱重工からの申入れについて検討を重ねた結果、被告三菱重工とは従来から取引があつたことも考慮して、本件土地を譲渡することとし、一方、ボバール工場については岡山県の要請に従い岡山県内に建設することに決定した。そして、被告三菱重工は昭和四二年一一月二日に、被告クラレは同月一〇日に、それぞれ岡山県に対して本件土地の譲渡につき正式に了承を求めた。これに対して、岡山県は、同年一二月末頃、被告クラレが本件土地を被告三菱重工に譲渡することを一応了承する旨の回答をした。その後、被告クラレは、岡山市内にボバール工場を建設し、昭和四三年一〇月から生産を開始した。被告クラレと被告三菱重工は、岡山県から前記の回答を得た後、主として売買代金額の点について岡山県から示唆・助言を受けながら、交渉を重ねた結果、昭和四三年一二月三日、本件土地を代金一六億九八九〇万円(後に減額されて一六億九五三〇万円になつた。 ラレが本件土地を被告三菱重工に譲渡することを一応了承する旨の回答をした。その後、被告クラレは、岡山市内にボバール工場を建設し、昭和四三年一〇月から生産を開始した。被告クラレと被告三菱重工は、岡山県から前記の回答を得た後、主として売買代金額の点について岡山県から示唆・助言を受けながら、交渉を重ねた結果、昭和四三年一二月三日、本件土地を代金一六億九八九〇万円(後に減額されて一六億九五三〇万円になつた。)で被告三菱重工に売渡す旨の売買契約が成立した(被告三菱重工が被告クラレから本件土地を代金一六億九五三〇万円で買受けたことについては全当事者間に争いがない。)。右売買契約に基づ 三〇万円になつた。)で被告三菱重工に売渡す旨の売買契約が成立した(被告三菱重工が被告クラレから本件土地を代金一六億九五三〇万円で買受けたことについては全当事者間に争いがない。)。右売買契約に基づき、昭和四四年九月四日、本件土地につき被告クラレから被告三菱重工に対する所有権移転登記がなされた(この点については、原告と被告クラレおよび同三菱重工との間には争いがない。)。(二) 被告クラレが、本件土地を被告三菱重工に売渡すにつき、岡山県に対して了承を求めたのは、本件土地は工場建設用地として岡山県から買受けたものであるということに照らして、岡山県の了承を得ることが道義的に好ましいという考に基づくものであり、被告三菱重工が岡山県に対して、本件土地の買受けについて了承を求めたのは、本件土地が水島を中心とする岡山県の新産業都市計画の中核に位置し、且つ将来被告三菱重工が本件土地に工場を建設する場合に、岡山県に対して工業用水の供給等種々の協力を求めなければならなくなるという考に基づくものであつた。10 被告Aは、昭和三九年一一月から同四七年一一月まで岡山県知事の職にあつた(この点については原告と被告県知事および同Aとの間に争いがない。)。以上のように認められ、以上の認定事実を覆すに足りる証拠はない。二 1原告は、本件売買契約においては、工場建設という一定の用途とその用途に供しなければならない期日とが定められているにかかわらず、被告クラレは指定期日までに工場を建設しなかつたのであるから、被告県知事は法第二三八条の五第五項(第四項)所定の法定解除権を行使することができたと主張する。しかしながら同条は昭和三九年四月一日から施行された(昭和三八年法律第九九号地方自治法改正附則第一条)ものであること、右改正附則第一〇条第二項で「新法第二三八条の五第二項から 用途とその用途に供しなければならない期日とが定められているにかかわらず、被告クラレは指定期日までに工場を建設しなかつたのであるから、被告県知事は法第二三八条の五第五項(第四項)所定の法定解除権を行使することができたと主張する。しかしながら同条は昭和三九年四月一日から施行された(昭和三八年法律第九九号地方自治法改正附則第一条)ものであること、右改正附則第一〇条第二項で「新法第二三八条の五第二項から とができたと主張する。しかしながら同条は昭和三九年四月一日から施行された(昭和三八年法律第九九号地方自治法改正附則第一条)ものであること、右改正附則第一〇条第二項で「新法第二三八条の五第二項から第五項までの規定は、この法律の施行の際現に貸し付け、又は貸付以外の方法により使用させている新法第二三八条第三項に規定する普通財産についても適用する。」と規定しているが、昭和三九年四月一日より前に売り払いまたは譲与された普通財産については、右のような規定がないことからすれば、昭和三五年七月三〇日に締結された本件売買契約については、法第二三八条の五第五項(第四項)は適用されないものというべきであるから、原告の右主張は、他の点について判断するまでもなく、採用できない。2 原告は、被告県知事は被告クラレの本件売買契約上の工場建設債務の不履行を理由として本件売買契約を解除することができたものである、と主張するのでこの点について検討する。(一) 前記一56認定事実によると、本件売買契約は、被告クラレが本件土地に工場を建設することを目的として結ばれたものであり、被告クラレが本件土地を工場敷地とし使用するということは、同被告の本件売買契約上の要素たる債務とされたものというべきであるが、前記一5認定の、別紙工場設立計画書が作成され、協定書に添付されるに至つた経緯からすれば、被告クラレが右債務の履行として本件土地に建設すべき工場の種類、規模および右債務の履行期については、いずれも確定的な定めはなかつたものと解するのが相当である。前記一24認定のとおり、岡山県にとつて、開発公社の基本金として出資すべき三億円の金員を入手することが、本件売買契約を結ぶ目的の一つであつたということ、前記一5認定のとおり、昭和三五年二月二四日に結ばれた協定が、岡山県と被告クラレのみで 開発公社の基本金として出資すべき三億円の金員を入手することが、本件売買契約を結ぶ目的の一つであつたということ、前記一5認定のとおり、昭和三五年二月二四日に結ばれた協定が、岡山県と被告クラレのみでなく、倉敷市も当事者として加わつているものであり、かつ岡山県、倉敷市が被告クラレのためになすべき事項をも定めているということは、いずれも右のように解することを妨げるに足りない。 が、岡山県と被告クラレのみで 開発公社の基本金として出資すべき三億円の金員を入手することが、本件売買契約を結ぶ目的の一つであつたということ、前記一5認定のとおり、昭和三五年二月二四日に結ばれた協定が、岡山県と被告クラレのみでなく、倉敷市も当事者として加わつているものであり、かつ岡山県、倉敷市が被告クラレのためになすべき事項をも定めているということは、いずれも右のように解することを妨げるに足りない。(二) 前記一9(一)認定事実によると、遅くとも昭和四二年一一月上旬には、被告クラレが本件土地に工場を建設することを断念して、本件土地を被告三菱重工に売渡す方針を確定したことによつて、本件土地を工場敷地として使用するという被告クラレの本件売買契約上の債務は、履行不能となつたものということができ、したがつて、これによつて岡山県に本件売買契約の解除権が生じたということができる。3 原告は、被告クラレは本件土地に工場を建設する意思、能力がないのに、工場を建設すると称して岡山県を欺罔して本件売買契約を結んだのであるから、被告県知事は本件売買契約を取消すことができた、と主張するが、本件売買契約が原告の右主張のような被告クラレの詐欺に因つて結ばれたものであることを認めるに足りる証拠はないから、原告の右主張は採用できない。三被告県知事が右二2の本件売買契約の解除権を行使しなかつたことが違法な怠る事実に当るか否かについて検討する。法第二三八条の五第五項、第四項が直接本件売買契約に適用されないものであることは前記のとおりであるが、右法条は、普通地方公共団体の普通財産の売払い、譲与についてなされた用途指定等が履行されなかつた場合に、一般の契約法上の契約解除権の発生の有無とは別に、右法条による特別の契約解除権を当該普通地方公共団体の長に認めたものであるけれども、右法条の文理上、地方公共 された用途指定等が履行されなかつた場合に、一般の契約法上の契約解除権の発生の有無とは別に、右法条による特別の契約解除権を当該普通地方公共団体の長に認めたものであるけれども、右法条の文理上、地方公共団体の長は右解除権を行使すべく羈束されるものではなく、右解除権を行使するか否かについて、長に裁量権が与えられているものと解されることも考え合わせると、前記二2の本件売買契約の解除権についても、被告県知事はこれを行使すべく羈束されていたものではなく、右解除権の行使によつて岡山県について生じる法律上のみでなく経済上その他諸般の利害得失を総合判断して、右解除権を行使するか否かを決する裁量権を有していたものと解するのが相当である。 べく羈束されるものではなく、右解除権を行使するか否かについて、長に裁量権が与えられているものと解されることも考え合わせると、前記二2の本件売買契約の解除権についても、被告県知事はこれを行使すべく羈束されていたものではなく、右解除権の行使によつて岡山県について生じる法律上のみでなく経済上その他諸般の利害得失を総合判断して、右解除権を行使するか否かを決する裁量権を有していたものと解するのが相当である。してみると、被告県知事が右解除権を行使しなかつたことは、右の裁量権の行使としての当、不当が問題となり得るけれども、岡山県からの受任者としての善管義務を怠つた違法な不作為であるということはできない。四したがつて、原告の、岡山県が法第二三八条の五第五項(第四項)に基く本件売買契約の解除権、被告クラレの詐欺を理由とする本件売買契約の取消権を有していたこと、岡山県知事の職に在つた被告Aが、被告クラレの債務不履行に基く岡山県の本件売買契約の解除権を行使しなかつたことが、違法な不作為であることを前提として、被告県知事が被告A、同クラレおよび同三菱重工に対して損害賠償請求権を行使すべきであるのにこれを怠つていることの違法の確認を求める請求、並びに岡山県に代位して被告A、同クラレおよび同三菱重工に対して損害賠償を求める請求は、他の点について判断するまでもなく、全部失当であるといわなければならない。第三結論以上のとおりで、原告の、被告県知事が本件売買契約の解除権又は取消権の行使を怠つたことの違法確認を求める訴は不適法であるから、これ するまでもなく、全部失当であるといわなければならない。第三結論以上のとおりで、原告の、被告県知事が本件売買契約の解除権又は取消権の行使を怠つたことの違法確認を求める訴は不適法であるから、これを却下することとし、原告の、被告県知事に対するその余の請求および被告A、同クラレ、同三菱重工に対する請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判官寺井忠竹原俊一高山浩平)別紙(省略)
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