平成28年12月26日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第1105号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成28年10月12日判決主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して103万8752円及びこれに対する平成26年2月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを4分し,その1を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して141万2370円及びこれに対する平成26年2月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,ドッグラン内で飼い犬を遊ばせていた原告が,ドッグラン内で転倒し受傷したこと(以下「本件事故」という。)につき,その原因は被告らの飼い犬が連なって原告に向かって突進し,衝突したことにあるとして,民法718条1項に基づき,被告らに対し,損害賠償金141万2370円とこれに対する不法行為日である平成26年2月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)本件事故の発生 ア日時平成26年2月11日午後1時10分ころイ場所神戸市a区b町cd丁目所在の甲ドッグラン(以下「本件施設」という。)ウ飼い犬原告ミニチュアダックスフント3歳オス(以下「原告犬」という。)被告A ゴールデンレトリバー4歳オス(以下「被告A犬」という。) 。)ウ飼い犬原告ミニチュアダックスフント3歳オス(以下「原告犬」という。)被告A ゴールデンレトリバー4歳オス(以下「被告A犬」という。)被告B ラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーの交雑2歳メス(以下「被告B犬」といい,被告A犬と併せて「被告ら犬」という。)エ事故態様原告が本件施設内で原告犬を遊ばせていたが,被告ら犬が接近してきた際,その場に転倒した(後記2のとおり,事故態様の詳細については争いがある。)。 本件施設ア本件施設は,甲地域振興会が運営するドッグランであり(その後,運営主体は変更されている。),利用登録した者が利用時間内(午前7時から日没まで)に無料で自由に利用することができる(甲8)。 イ本件事故当時,警備員は配置されていなかった(甲9)。 ウ本件施設の利用規約には,次のような規定が置かれている(甲8)。 利用者の方々が仲良く譲り合い,自らの責任において利用してください。ドッグラン内で生じた愛犬,飼い主の事故,怪我,その他のトラブルなどは,当事者間で直接解決してください。 飼い主は愛犬をドッグランの雰囲気に慣らしてからリードを外すようにしてください。 飼い主は愛犬から目を離さないように注意し,他の犬や飼い主の迷惑にならないようにしてください。 「こわがりさん専用エリア」には大型犬は入れないでください。共有エリアに小型犬を入れる場合は飼い主のご判断にお任せします。 原告は,本件事故により受傷し,平成26年2月11日午後1時59分ころ,神戸市立医療センター中央市民病院に救急搬送され,頚椎捻挫であると診断された(甲2の1,乙4)。 2 争点及びこれに関する当事者の主張本件事故態様(原告) 月11日午後1時59分ころ,神戸市立医療センター中央市民病院に救急搬送され,頚椎捻挫であると診断された(甲2の1,乙4)。 2 争点及びこれに関する当事者の主張本件事故態様(原告)原告は,夫や子ども2名(小学生・当時9歳と7歳)と共に本件施設を訪れ,別紙図面表示のA地点付近で原告犬と子どもらを遊ばせていた。 他方,被告ら犬は,当初,別紙図面表示①の地点で軽く走り回りながら遊んでおり,その状態は数分程度続いた。この間,原告は,原告犬や家族のほうを見るなどして被告ら犬から目を離すことはあったが,それ以外は被告ら犬がいずれも大型犬であったことから自然とそちらに目が行くようになり,継続して観察していた。そうした中,被告ら犬は徐々に興奮を増し,別紙図面表示②の範囲で速度を上げて走り回るようになり,その状態は1分ほど継続した。この段階で,原告は,被告ら犬に危険を感じるようになり,原告の子どもらに本件施設の北西角付近に移動するよう促し,被告ら犬の様子を注視するようになった。その後,被告ら犬は,ひどく興奮し,別紙図面表示③のとおり本件施設を全速力で東西に一,二往復した後,別紙図面表示④の位置から矢印の軌道に沿って走り,南西角を曲がって原告(別紙図面表示「原告」の位置にいた。)に突進してきた。被告ら犬は,被告A犬が先を走り,被告B犬がその後を追って原告に向かって突進し,被告A犬又は被告ら犬が原告の右方向から原告の右膝辺りに衝突した。原告は,その衝撃によって足をすくわれたような形になって後方に転倒し,後頭部を強く打って一時意識を失ったも のである。 (被告ら)被告ら犬が別紙図面表示①付近でじゃれ合っていたこと,その後,被告ら犬が先後して本件施設の入口付近に走って行ったこと,被告ら犬が入口付近で佇立する原告の横をす のである。 (被告ら)被告ら犬が別紙図面表示①付近でじゃれ合っていたこと,その後,被告ら犬が先後して本件施設の入口付近に走って行ったこと,被告ら犬が入口付近で佇立する原告の横をすり抜ける際に原告が転倒したことは事実であるが,被告ら犬がひどく興奮していたことや別紙図面表示④の地点から長距離を走って原告に向かって突進したことはない。 相当の注意(被告ら)民法718条1項ただし書にいう「相当の注意」とは,通常払うべき程度の注意義務を意味し,異常な事態に対応できる程度の注意義務まで課したものではない。本件事故は,犬がリード(引き綱)から解き放たれ自由に走り回ることが許され,現に自由に走り回っているドッグランのフリー広場で発生したものであるから,被告らが犬の占有者として通常払うべき注意義務はリードを外すと制御が利かなくなるとか,リードを外す前に被告らの飼い犬が興奮しているなどの特段の事情がなければ,リードを外し犬が自由に走り回ることができる状態におけるものであることを前提としなければならない。 被告ら犬はいずれも温厚ないし友好的で優しい性格であり,これまで多数回にわたり本件施設に遊びに来るなどその利用に慣れており,過去にドッグランで他の犬や飼い主とトラブルになったこともない。本件事故当日,被告らは,被告ら犬を本件施設に馴染ませてからリードを外し,その後も被告ら犬が遊んでいる近くに立ちその動向を監視していた。本件事故が発生するまでの間,被告ら犬は互いにじゃれ合ったり,追いかけ合ったりしていたが,興奮するなど特別変わった様子はみられなかった。このような事情からすれば,被告らは「相当の注意」をもって飼い 犬を管理しており,危険を予見ないし回避すべき行動をとるべき状況にはなかったというべきである。 はみられなかった。このような事情からすれば,被告らは「相当の注意」をもって飼い 犬を管理しており,危険を予見ないし回避すべき行動をとるべき状況にはなかったというべきである。 したがって,被告らは,民法718条1項ただし書により,本件事故につき賠償責任を負わない。 (原告)被告Aは,被告A犬が走り出したらこれを止められないと認識しながら,被告ら犬が原告のほうへ走り出して危害を加えるということを考えもせず,原告と被告ら犬との間に立って,被告ら犬の突然の行動に備えるなどの予防措置をとらなかった。そればかりでなく,被告Aは,被告ら犬がじゃれ合い,追いかけ合いを1分間も続けるなど,その興奮が増しているにもかかわらず,漫然とその様子を眺めるのみで,声をかけるなど何らの制御行動もとろうとはしなかった。また,被告Bは,被告B犬が他の犬とじゃれ合っているときに走り出すことがあると認識しながら,同行していた従兄弟との会話に興じて飼い犬の監視を十分に行わなかった。また,被告B犬が興奮状態にあり,原告に向かって走り出したにもかかわらず,声をかけるなどして適時にこれを制止することを怠った。 これらからすれば,被告らが相当の注意を尽くしていなかったことは明らかであり,民法718条1項ただし書により免責されることはない。 過失相殺(被告ら)本件事故はドッグラン内におけるものであるところ,ドッグランに自らの意思で立ち入る者は,複数の犬がリードから解き放たれ,自由に走り回ることを前提に行動すべきである。原告においても,過去20回ほど本件施設を利用しており,ドッグランの特徴を十分把握していたはずである。本件事故当日,原告は,被告ら犬がじゃれ合っていたことや本 件施設内を東西に一,二往復していたことを目撃していた 件施設を利用しており,ドッグランの特徴を十分把握していたはずである。本件事故当日,原告は,被告ら犬がじゃれ合っていたことや本 件施設内を東西に一,二往復していたことを目撃していたというのであるから,予め危険を予測して一旦フリースペース(共有エリア)の外に出るなり,「こわがりさん専用エリア」に移動するなり回避措置をとることが可能であったにもかかわらず,そのような対応を取ることなく漫然とフリースペースに居続けたものである。また,原告は,被告ら犬が自分のほうに向かってきたことを認識し,衝突の危険を感じたというのであるから,逃げたり身構えるなどの防衛措置を講じることができたにもかかわらず,漫然とその場に佇立し続けていた。加えて,原告は,本件事故当日,犬を運動させたり,機敏な行動をするのに適していないブーツを履いていたものである。以上の事情からすれば,本件事故発生について原告に過失があることは明らかであり,その過失割合は8割を下回らないというべきである。 (原告)争う。 本件施設内で原告がいた位置は,被告らが被告ら犬に対する監視義務等を尽くしていれば,危険が生じることのない場所である。「こわがりさん専用エリア」は大型犬に恐怖を覚える小型犬であっても利用可能なように設けられたスペースであり,利用者の安全を確保するためのものではない。また,被告らが主張するように,自己に向かって走ってくる被告ら犬から俊敏に逃げるなど,通常人である原告に期待することには無理がある。これらからすれば,予め避難措置を講じることができなかったことや被告ら犬との衝突を回避できなかったことをもって,原告の過失ということはできないというべきである。 損害(原告)ア治療費 6万1000円 ら犬との衝突を回避できなかったことをもって,原告の過失ということはできないというべきである。 損害(原告)ア治療費 6万1000円 原告は,本件事故により頚椎捻挫,頭部打撲,頚椎症性神経根症,右前腕部筋筋膜炎の傷害を負い,次のとおり通院治療を余儀なくされた。原告は,平成27年1月までは治療によって症状が改善し,その後も更なる改善を期待できるかどうか見極めるために3か月間治療を継続したものであり,その症状固定日は平成27年4月11日というべきである(甲1)。 神戸市立医療センター中央市民病院 1万4700円平成26年2月11日~同年3月13日(通院・実日数4日)神戸低侵襲がん医療センター 7050円平成26年3月5日(MRI検査)医療法人社団り整形外科クリニック 3万9250円平成26年2月25日~平成27年3月27日(通院・実日数94日)イ文書料 3240円ウ薬剤費 6540円エ通院交通費 1万1590円オ通院慰謝料 120万0000円カ小計 128万2370円キ弁護士費用 13万0000円ク合計 141万2370円(被告ら)争う。 原告の主訴である右前腕部痛は客観的所見の乏しい神経症状であり,その症状は平成26年3月10日のリハビリ開始時から有意な変化はない。とすると,その症状固定時期は受傷から6か月後の同年8月ころであるとみるのが相当である。仮にその時期に固定するに至 経症状であり,その症状は平成26年3月10日のリハビリ開始時から有意な変化はない。とすると,その症状固定時期は受傷から6か月後の同年8月ころであるとみるのが相当である。仮にその時期に固定するに至っていなかったとしても,遅くとも医師が原告に症状固定の時期であると説明した同 年11月28日には固定していたというべきである。 第3 当裁判所の判断 本件事故態様)について前提となる事実に証拠(甲1,2の1,8,12,乙4~6,原告,被告A,被告B)及び弁論の全趣旨を総合すれば,① 本件施設は,東西の長さ約64m,南北の長さ約40mのドッグランであるが,周囲にはフェンスが張りめぐらされており,その西側に出入口が設けられていること,② 本件施設の北東角には小型犬専用エリアがあること,③ 出入口付近のフェンスには,飼い主は飼い犬をドッグランの雰囲気に慣らしてからリードを外すこと,飼い主は飼い犬から目を離さないように注意し,他の犬や飼い主の迷惑にならないようにすること,小型犬専用エリアには大型犬を入れてはならず,共有エリアに小型犬を入れる場合は飼い主の判断に任せることなどとする規約が記載された看板が設置されていたこと,④ 原告は,平成26年2月11日午前11時ころ,原告犬を連れて,夫及び2人の子どもと共に本件施設を訪れたが,当日は祝日の昼間であったことから,10頭近い飼い犬とその飼い主らが場内で遊んでいたこと,⑤ 原告は,本件施設に入場し,一旦リードをしたまま原告犬の様子を見ていたが,しばらくして原告犬がその場の雰囲気に馴染んできたことから徐々に本件施設の西側中央部付近に移動していったこと,⑥ 被告A犬は当時4歳(オス),被告B犬は当時2歳(メス)のいずれも大型犬であり,体重は約27㎏あったこと,⑦ 被告らは既に被 染んできたことから徐々に本件施設の西側中央部付近に移動していったこと,⑥ 被告A犬は当時4歳(オス),被告B犬は当時2歳(メス)のいずれも大型犬であり,体重は約27㎏あったこと,⑦ 被告らは既に被告ら犬を連れて本件施設に入場していたが,被告ら犬は原告の上記位置よりも本件施設の中央寄りでじゃれ合ったり,追いかけ合うなどしていたこと,⑧ 被告ら犬は,じゃれ合ったり追いかけ合ったりしながら,徐々にその行動範囲を広げ,走る速度も上がっていったこと,⑨ 原告は,被告ら犬のこのような様子を見て,興奮してきていると感じたことから,子どもらに対して出入口付近に移動するように促したこと,⑩ そうした中,被告ら犬は, 場内の人垣を縫うような形で出入口付近に向けて駆け出し,本件施設の西側中央部から出入口付近にいた原告のいる方向に向けて,互いに追いかけ合うような形で走って行ったこと,⑪ 原告は上記地点から本件施設の中央部(東側)を向いて立っていたところ,被告ら犬がその右側から接近し,相前後して原告の右膝付近に衝突したこと,原告はその衝撃によりその場に転倒し,頭部を打撲するなどして受傷したこと,以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば,被告ら犬は,じゃれ合ったり追いかけ合うなどしているうちに,次第に興奮の度合いを高め,走る速度を上げながら,その行動範囲を広げる中,原告のいる方向に向けて互いに追いかけ合うように駆けて行き,原告に衝突するに至ったものと認めることができる。 これに対し,被告らは,被告ら犬が興奮していたことや原告に向かって突進したことはないなどと主張し,その本人尋問においても,被告ら犬から目を離したことはないなどとして,おおむねこれに沿う供述をする。しかし,被告Aは,被告ら犬が原告のいる出入口方向に向かって駆け出し 進したことはないなどと主張し,その本人尋問においても,被告ら犬から目を離したことはないなどとして,おおむねこれに沿う供述をする。しかし,被告Aは,被告ら犬が原告のいる出入口方向に向かって駆け出して行ったこと自体は認める旨の供述をしている上,被告らはいずれも,結局のところ,被告ら犬が原告に衝突したところは見ていなかったというのであり,終始その飼い犬の動向を注視していたというにも疑問が残る。したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 また,被告Bは,原告が滑りやすい靴を履いていたために,滑って転倒した旨の供述をする。しかし,被告Bは他方で,原告が倒れた瞬間はなぜ倒れたかわからなかった旨を供述していること,同被告の供述する事故態様は,原告や被告Aが供述する事故態様と大きく違っており,その供述の信用性については慎重に吟味する必要があること,原告は,本件事故当日は靴底がゴム素材のムートンブーツを履いており,走ることに支障はなかった旨を供述していること,本件事故発生当時,原告においてスリップする可能性のある動きをしたとはうかがわれないことなど からすると,被告Bの上記供述をそのまま採用することはできない。 前記認定のとおり,原告は被告ら犬に衝突されて転倒し,受傷したというのであるから,被告ら犬の飼い主である被告らは,動物の占有者として,動物の種類及び性質に従い相当の注意をもって管理したことを証明しない限り,被告ら犬が原告に加えた損害を賠償する責任を免責されないこととなる(民法718条1項)。 これに対し,被告らは,被告ら犬はいずれも温厚ないし友好的で優しい性格であり,これまで多数回にわたり本件施設に遊びに来るなどその利用に慣れており,過去にドッグランで他の犬や飼い主とトラブルになったことも 対し,被告らは,被告ら犬はいずれも温厚ないし友好的で優しい性格であり,これまで多数回にわたり本件施設に遊びに来るなどその利用に慣れており,過去にドッグランで他の犬や飼い主とトラブルになったこともない,本件事故当日,被告らは,被告ら犬を本件施設に馴染ませてからリードを外し,その後も被告ら犬が遊んでいる近くに立ちその動向を監視していた,本件事故が発生するまでの間,被告ら犬は互いにじゃれ合ったり,追いかけ合ったりしていたが,興奮するなど特別変わった様子はみられなかったなどとし,かかる事情に照らせば,被告らは相当の注意を尽くした旨を主張する。 本件施設はドッグランであり,犬をリードから外して自由に遊ばせるための施設である(甲8,13)。しかしながら,犬をリードから外して自由に走り回らせることができるといっても,飼い主としては,飼い犬が不測の行動に出ることも十分あり得ることを前提にこれを監視し,四囲の状況をみて適時適切に制御することができることを前提とするものである。現に本件施設の利用規約においても,飼い主は飼い犬をドッグランの雰囲気に慣らした上でリードを外すこと,飼い主は飼い犬から目を離さないように注意し,他の犬や飼い主の迷惑にならないようにすることなどが規定されている。一般的な文献においても,ドッグランを利用するに当たっては,呼び戻しができることが鉄則とされている(甲14。ちなみに,ドッグランの中には,常に 飼い主の命令が聞ける犬以外はリードを放してはいけない旨の利用規定が置かれている例もある〔甲13〕。)。そして,犬が一度走り出せば人間が追い付くことはできないのであるから,トラブルが発生する前に犬のそばから離れずに監視し,興奮するような兆候があればこれを制御することが必要であり(被告ら犬のように体重が約27㎏ 一度走り出せば人間が追い付くことはできないのであるから,トラブルが発生する前に犬のそばから離れずに監視し,興奮するような兆候があればこれを制御することが必要であり(被告ら犬のように体重が約27㎏もあるような大型犬の場合には,なおさらその必要性が高いといえる。なお,甲11には,ゴールデンレトリバーにつき,「大型で力が強いので,人に飛びついたり,リードを引っ張ったりしないように訓練しましょう。犬に悪気がなくても,思わぬ事故につながる恐れがあります。」との記載がされている。),犬の興奮が増してきたと感じたときには「待て」と声を掛けたり,一度リードを付けて休ませるなどして落ち着かせることが必要であるとされている(甲15)。 このような観点から本件をみるに,先に検討したとおり,被告らにあっては,被告ら犬の動向を十分監視していたというには疑問がある上,被告ら犬が原告に衝突するまでの間,被告ら犬に声を掛けたり,これを制止するなど一切していないことからすると(被告Aにあっては,呼び戻しのしつけすらしたことがない旨を供述している。),その管理につき相当の注意を尽くしたものとは到底認めることができない。他方,原告において,本件施設においてことさらに危険な状況を作出したなどの事情はうかがわれない。そうすると,被告らは,被告ら犬の飼い主として,民法718条1項本文に基づき,本件事故により原告に生じた損害につき,これを賠償すべき責任がある。 前記2で検討したとおり,被告らは,本件事故発生当時,被告ら犬の動向を十分監視していたとは認め難く,被告ら犬に声を掛けたり,これを制止するなど一切しなかったというのであるから,その過失は重いといわざるを得ない。 他方,前記認定によれば,原告においても,被告ら犬がじゃれ合い追いかけ合うなどの様子を見て,興奮 を掛けたり,これを制止するなど一切しなかったというのであるから,その過失は重いといわざるを得ない。 他方,前記認定によれば,原告においても,被告ら犬がじゃれ合い追いかけ合うなどの様子を見て,興奮していると感じ,子どもらに対して避難を促すな どしていること,原告は夫と共に本件ドッグランに入場しており,子どもらを同伴していたことを考慮しても,避難するに当たっては夫の助力を期待することもできたこと,本件施設はドッグランであり,犬をリードから外して自由に遊ばせるための施設であるところ,飼い主が飼い犬の行動につき第一次的な責任を負うべきではあるものの,他の利用者においても犬がリードを外された状態で自由に走り回るなどしていることを前提に,動物である以上不測の事態が生じ得ることを念頭に行動すべき面があることは否定できないことなどからすると(なお,本件ドッグランには小型犬専用エリアが設けられているが,原告の位置は同エリアから離れていた上,同エリアは飼い主の退避スペースとして設けられたものでもないから,同エリアに避難しなかったからといって,これを原告の落ち度と認めることはできない。),本件事故の発生については,原告においても一定の不注意があったといわざるを得ず,損害の公平な分担の観点から,原告に生じた損害額につき2割の過失相殺をするのが相当である。 症状固定時期について前提となる事実に証拠(甲1,2の1~6の11,12,乙3,4,原告)及び弁論の全趣旨を総合すれば,① 原告は,本件事故当日,神戸市立医療センター中央市民病院に救急搬送されたが,外傷痕や画像所見(頭部及び頚椎のCT検査や腰部のレントゲン検査)上の問題は認められず,頚椎捻挫と診断されたこと,② 原告は平成26年3月13日まで主に右上肢のしびれを訴え,同 に救急搬送されたが,外傷痕や画像所見(頭部及び頚椎のCT検査や腰部のレントゲン検査)上の問題は認められず,頚椎捻挫と診断されたこと,② 原告は平成26年3月13日まで主に右上肢のしびれを訴え,同病院に通院したが,この間,神戸低侵襲がん医療センターにおいて,頚椎症性神経根症の病名で頚椎MRI検査を受けたこと,③ 同年2月25日,近医である医療法人社団り整形外科クリニックを受診し,頚椎捻挫,頭部打撲,頚椎症性神経根症及び右前腕部筋筋膜炎との診断を受け,以後同クリニックで通院治療を受けることになったこと,④ 同年3月15日,頚椎MRIの結果,C5・ 6・7椎間板の膨隆が認められたが,外傷に伴う所見は認められなかったこと,⑤ 原告は主として右前腕部のしびれや痛みを訴え,リハビリを受け続けていたが,同年11月28日の診療録には,「時期としては,症状固定の時期ではある。」との記載があること,⑥ 原告は同クリニックでの治療を継続したが,平成27年の年明けころまでは症状が改善しているとの実感があったこと,⑦ 同クリニックの乙医師は,同年1月7日,調査会社の担当者と面談した際,原告の病状について症状固定時期であるとの所見を示したこと,⑧ その後も原告は通院を継続し,従前同様の治療を受けたが,その症状に著変はみられなかったこと,⑨ 乙医師は,同年4月11日付けで,原告の症状につき,同日時点で症状固定時期であると判断する旨の診断書を作成したこと,以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば,平成26年11月28日には担当医が症状固定時期であるとの見方を示していることは確かであるが,その後も原告は平成27年初頭まではリハビリを含む治療を受けることにより症状が改善しているとの実感を受けていたこと,担当医においても,同年1月7日の時点 であるとの見方を示していることは確かであるが,その後も原告は平成27年初頭まではリハビリを含む治療を受けることにより症状が改善しているとの実感を受けていたこと,担当医においても,同年1月7日の時点で,調査会社の担当者に対し,症状固定時期であるとの所見を示していること,その後も原告は従前と同様の治療を継続したものの,症状に著変は認められなかったことなどを踏まえると,原告は同年1月7日をもって症状固定したと認めるのが相当である。これに対し,被告らは,原告の主訴である右前腕部痛は客観的所見の乏しい神経症状であることなどを根拠に,その症状固定時期は受傷から6か月後の平成26年8月ころである旨を主張するが,上記認定の治療経過等に照らせば,その主張する症状固定時期は早きに失し,採用することはできない。 損害額ア治療費 5万8320円神戸市立医療センター中央市民病院 1万4700円 (甲2の1~3) 神戸低侵襲がん医療センター 7050円(甲3の1・2)医療法人社団り整形外科クリニック 3万6570円前示のとおり,原告の症状固定日は平成27年1月7日と認めるのが相当であるから,治療費は,同日までに要した上記金額をもって本件事故と相当因果関係のある損害と認める(甲4の1~22)。 イ文書料 3240円(甲5の5)ウ薬剤費 6540円(甲6の1~11)エ通院交通費 1万1590円(甲7)オ通院慰謝料 110万000 剤費 6540円(甲6の1~11)エ通院交通費 1万1590円(甲7)オ通院慰謝料 110万0000円原告の通院期間,受傷内容及び治療経過のほか,原告の症状が他覚的所見のない神経症状であること等に照らせば,通院慰謝料は,上記金額をもって相当と認める。 カ過失相殺後の金額 94万3752円前記3のとおり,原告について生じた損害については,2割の過失相殺をするのが相当である。 キ弁護士費用 9万5000円本件事案の内容,認容額及び審理経過等を総合すれば,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は上記金額をもって相当と認める。 ク合計 103万8752円 5 以上によれば,原告の請求は主文1項に限り理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部 裁判官奥野寿則
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