平成19(ワ)545 損害賠償請求事件(通称 宮崎信用金庫損害賠償)

裁判年月日・裁判所
平成21年9月28日 宮崎地方裁判所
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判決文本文28,203 文字)

主文 1 被告は,原告P1に対し,10 万7991 円及びこれに対する平成17 年10 月20日から支払済みまで年5 分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告P2に対し,101 万0194 円及びこれに対する平成17 年10 月2 0 日から支払済みまで年5 分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 5 この判決は,第1,2 項に限りこれを仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告P1に対し,3235 万4241 円及びこれに対する平成10 年4 月1 0 日から支払済みまで年5 分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告P2に対し,3904 万0011 円及びこれに対する平成10 年4 月1 0 日から支払済みまで年5 分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告に懲戒解雇されたものの,解雇無効が確定して復職した原告らが,被告に対し,原告らを解雇したこと及び原告らの社会保険資格等の回復措置ないし適切な説明を怠ったことが債務不履行ないし不法行為を構成すると主張して,債務不履行ないし不法行為に基づき,損害賠償金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いがないか後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 被告は,信用金庫法に基づいて設立された信用金庫である。 原告P2は昭和44 年4 月に,原告P1は昭和50 年9 月に,それぞれ被告と雇用契約を締結して,被告において勤務していた。 (2) 被告の平成14 年当時の就業規則(以下「本件就業規則」という。)の主 な内容は,次のとおりである(乙33)。 (懲戒の事由) 75 条1項次の各号の一に該 していた。 (2) 被告の平成14 年当時の就業規則(以下「本件就業規則」という。)の主 な内容は,次のとおりである(乙33)。 (懲戒の事由) 75 条1項次の各号の一に該当するときは,出勤停止又は減給に処する。 ただし,情状により譴責に留めることがある。 (8) 許可を得ないで金庫の施設,什器備品,車両等を業務以外の目的で使用したとき(9) 正当な理由なく金庫の金品を持ち出し,又は私用に供したとき2項次の各号の一に該当するときは,懲戒解雇に処する。 ただし,情状により論旨退職,停職又は降職(格)とすることがある。 (4) 職場内外において窃盗,横領,傷害等刑事犯又は,これに類する行為のあったとき(8) 業務上の重要な機密を他に漏らしたとき,又は漏らそうとしたとき(11) その他職務の内外を問わず,金庫の名誉と信用を著しく失墜し,若しくは取引関係に悪影響を与える行為があったとき(懲戒の手続) 78 条懲戒処分を行うに当たり,必要に応じて別に定める懲戒委員会に諮問する。 (3) 被告は,原告らに対し,平成10 年4 月10 日,原告らが被告の重要機密書類を外部に流出させるなどした行為は本件就業規則75 条2 項4 号,8 号及び 11 号に該当するとして,懲戒解雇する旨の意思表示をした(以下「本件各懲戒解雇」という。)。 そこで,原告らは,被告に対し,同年5 月26 日,当庁に対し,本件各懲戒解雇の無効確認及び解雇後の未払賃金の支払を求める訴訟を提起したところ (平成10 年(ワ)第252 号解雇無効確認等請求事件),原告らの請求はいずれも棄却されたが,控訴審である福岡高等裁判所宮崎支部(平成12 年(ネ)第1 92 号解雇無効確認等請求控訴 ころ (平成10 年(ワ)第252 号解雇無効確認等請求事件),原告らの請求はいずれも棄却されたが,控訴審である福岡高等裁判所宮崎支部(平成12 年(ネ)第1 92 号解雇無効確認等請求控訴事件)において,平成14 年7 月2 日,原告らの請求が認容され(原判決取消し),被告が上告した最高裁判所において,上告が棄却され(平成14 年(オ)第1415 号,同(受)第1445 号),上記判決が確定した(以下この一連の訴訟を「別件解雇訴訟」という。)。 (甲1 ないし3,79 の1,乙1)(4) 被告職員が加入員となる全国信用金庫厚生年金基金(以下「本件基金」という。)において,加入員が受給できる年金には,①基本年金,②DB(DefindBenefit)加算年金,③CB(CashBalance)加算年金がある(甲50,52)。 2 原告らの主張の骨子(1) 本件各懲戒解雇が債務不履行ないし不法行為を構成すること被告の原告らに対する本件各懲戒解雇は,次のとおり,その内容,手続及び目的に照らし,原告らに対する債務不履行ないし不法行為を構成する。 ア著しく相当性を欠く処分であること(ア) 原告らは,平成7 年ころから,組合活動の一環として被告の種々の不正疑惑を追及し,平成8 年以降,被告の不正疑惑を解明するため,被告の顧客の信用情報にアクセスして顧客の信用情報を取得し(以下「本件情報収集行為」という。),これを外部に提供するなどして(以下「本件情報提供行為」という。),被告の不正疑惑を解明していた(以下「本件追及行為」という。)のであるから,本件情報収集行為及び本件情報提供行為は,その目的に照らし違法性が大きく減殺されるべきであって,違法性の程度の高い行為で ,被告の不正疑惑を解明していた(以下「本件追及行為」という。)のであるから,本件情報収集行為及び本件情報提供行為は,その目的に照らし違法性が大きく減殺されるべきであって,違法性の程度の高い行為であることを前提とする本件就業規則75 条2 項4 号所定の懲戒解雇事由に該当しない。 (イ) また,原告らは,本件情報収集行為により得られた資料を内部告発以外の目的で第三者に交付したことはないから,原告らには本件就業規則7 条2 項8 号所定の懲戒解雇事由に該当する行為はない。 (ウ) そうすると,原告らの行為は,本件就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するどころか,本件就業規則75 条1 項の規定に照らし,出勤停止にとどまる行為にすぎない上,被告においては,名義貸し融資や迂回融資等の金融機関として許されない行為に対してさえ懲戒解雇処分がされていないところである。にもかかわらず,原告らに対しては,懲戒解雇が選択されているのであるから,本件各懲戒解雇が著しく相当性を欠く処分であることは明らかである。 イ著しい適正手続違反があること被告は,原告らに対して,本件各懲戒解雇をするに当たり,解雇事由について弁明の機会を与えていない上,懲戒委員会の諮問も行っていない。 そうすると,本件各懲戒解雇は,著しく適正手続に反するものというべきである。 ウ違法な目的に基づく処分であること原告らの本件追及行為により苦境に立たされた被告は,不正の発覚を防止するため,原告らを被告外に追放することを企図し,原告らの行為が懲戒解雇に相当する行為でないことを知りながら,あえて本件各懲戒解雇を行った。 このような違法な目的に基づく本件各懲戒解雇が原告らに対する不法行為を構成することは明らかである。 (2) 被告が原告らの年金資格を遡及回復 いことを知りながら,あえて本件各懲戒解雇を行った。 このような違法な目的に基づく本件各懲戒解雇が原告らに対する不法行為を構成することは明らかである。 (2) 被告が原告らの年金資格を遡及回復させなかったこと等が債務不履行ないし不法行為を構成すること適用事業所及び厚生年金基金の設立事務所に使用される労働者は,厚生年金保険及び厚生年金基金(以下「厚生年金等」という。)に強制加入するものとされ(厚生年金保険法9 条,122 条),また,年金受給額については,原則として被保険者期間又は加入者期間(以下「被保険者期間等」という。) に応じて定まるとされる(厚生年金保険法43 条,132 条)。 そうすると,使用者は,労働者に対する解雇の無効が確定した場合,雇用契約に基づき,厚生年金の被保険者資格及び厚生年金基金の加入者資格(以下「被保険者資格等」という。)を解雇時に遡って回復させる義務を負っていたというべきであり,また,被告は,被保険者資格等の回復方法及びその利害得失等について,十分に説明する義務を負っていたというべきである。 にもかかわらず,被告は,原告らに対する本件各懲戒解雇の無効確定後,上記義務の履行を怠り,原告らの年金受給額を減少させたというのであるから,被告の上記行為は,原告らに対する債務不履行ないし不法行為を構成する。 なお,原告らは復職時に厚生年金等に再加入することを選択しているが,原告らの上記選択は,被告が原告らに対して厚生年金等の資格回復方法について解雇時に遡って回復することはできないなどと虚偽の説明をしたことによるものであって,このような虚偽の説明をして解雇時に遡って加入することを断念させること自体,原告らに対する債務不履行ないし不法行為を構成するというべきである。 (3) 原告P1の損害原 よるものであって,このような虚偽の説明をして解雇時に遡って加入することを断念させること自体,原告らに対する債務不履行ないし不法行為を構成するというべきである。 (3) 原告P1の損害原告P1は,被告の上記債務不履行ないし不法行為によって,次のとおり合計3070 万0810 円の損害を被った(なお,同損害額は請求の趣旨記載の金額とは異なるが,原告P1の最終的な主張においては,上記損害額となっている。)。 ア昇給していた場合との賃金差額分 1336 万8823 円原告P1は,被告に解雇されていなければ,遅くとも復職時までに現在の係長(資格等級5 等級)から支店長・課長(資格等級8 等級)に昇格し,月額42 万6273 円の賃金(通勤手当を含む。)を取得することができた。 しかし,原告P1の基準内給与は,被告の不当解雇により,係長に対応 する月額31 万4400 円(通勤手当を除く。)にとどまっており,その差額は月額11 万1873 円となっている。 したがって,原告P1の解雇時(平成10 年4 月)から退職時(平成21年8 月)までの賃金差額分は,次のとおり,1336 万8823 円となる。 (111,873×115×0.5)+(111,873×62)=13,368,823イ年金の差額分 65 万4855 円原告P1が解雇時に遡って被保険者資格等を回復していた場合に受給できた年金額と実際に支給される年金額との差額から,新ホフマン方式により中間利息を控除した上で,年金保険料を控除すると,原告P1の年金の損害額は,65 万4855 円となる(なお,中間利息控除の起算点については不法行為時である平成17 年とする。)。 ウ退職金の差額分 202 万8200 円原告P 告P1の年金の損害額は,65 万4855 円となる(なお,中間利息控除の起算点については不法行為時である平成17 年とする。)。 ウ退職金の差額分 202 万8200 円原告P1は,被告に解雇されていなければ,遅くとも復職時までに現在の係長(資格等級5 等級)から支店長・課長(資格等級8 等級)に昇格し,その場合,少なくとも1107 万9166 円の退職金を取得できたが,実際の退職金は,被告の解雇のため,905 万0966 円にとどまっている。 したがって,原告P1の退職金の損害額は,その差額の202 万8200 円となる。 エ自宅売却実費分 72 万5675 円オ慰謝料 300 万円カ弁護士費用 1092 万3257 円(4) 原告P2の損害原告P2は,被告の上記債務不履行ないし不法行為によって,次のとおり合計3384 万0883 円の損害を被った(なお,同損害額は請求の趣旨記載の金額とは異なるが,原告P2の最終的な主張においては,上記損害額となっている。)。 ア昇格していた場合との賃金差額 1526 万8795 円原告P2は,被告に解雇されていなければ,遅くとも復職時までに現在の代理(資格等級6 等級)から支店長・課長(資格等級8 等級)に昇格し,月額42 万6273 円の賃金(通勤手当を含む。)を取得することができた。 しかし,原告P2の基準内給与は,被告の不当解雇により,代理に対応する月額31 万1900 円(通勤手当を除く。)にとどまっており,その差額は月額11 万4373 円となっている。 したがって,原告P2の解雇時(平成10 年4 月)から退職時(平成22年8 月)までの賃金差額分は,次のとおり,1526 万8795 円となる。 その差額は月額11 万4373 円となっている。 したがって,原告P2の解雇時(平成10 年4 月)から退職時(平成22年8 月)までの賃金差額分は,次のとおり,1526 万8795 円となる。 (114,373×115×0.5)+(114,373×76)=15,268,795イ年金の差額分 330 万1896 円原告P2が解雇時に遡って被保険者資格等を回復していた場合に受給できた年金額と実際に支給される年金額との差額から,新ホフマン係数により中間利息を控除した上で,保険料及び既受領分の一時金を控除すると,原告P2の年金の損害額は,330 万1896 円となる(なお,中間利息控除の起算点については不法行為時である平成17 年とする。)。 ウ退職金の差額分 173 万3242 円原告P2は,被告に解雇されていなければ,遅くとも復職時までに現在の代理(資格等級6 等級)から本店部長(資格等級10 等級)に昇格し,その場合,少なくとも1348 万円の退職金を取得できたが,被告の解雇により,実際の退職金は1166 万0140 円にとどまっている。 上記差額(181 万9860 円)から新ホフマン係数(0.9524)により中間利息を控除すると,原告P2の退職金の損害額は,173 万3242 円となる。 エ慰謝料 300 万円オ弁護士費用 1053 万6950 円(5) まとめ よって,原告P1は,被告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づき,損害賠償金3070 万0810 円及びこれに対する不法行為日である平成10 年4月10 日から支払済みまで民法所定の年5 分の割合による金員の支払を求め,また,原告P2は,被告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づき 万0810 円及びこれに対する不法行為日である平成10 年4月10 日から支払済みまで民法所定の年5 分の割合による金員の支払を求め,また,原告P2は,被告に対し,債務不履行ないし不法行為に基づき,損害賠償金3384 万0883 円及びこれに対する不法行為日である平成10 年4 月10日から支払済みまで民法所定の年5 分の割合による金員の支払を求める。 3 被告の主張の骨子(1) 本件各懲戒解雇が不法行為ないし債務不履行を構成しないことについて本件各懲戒解雇が相当性を欠くものとして無効であるとしても,本件各懲戒解雇は,次のとおり,その内容,手続及び目的に照らして,原告らに対する債務不履行ないし不法行為を構成するものではない。 ア相当性を著しく欠く処分ではないこと原告らは,権限なく,被告の機密情報にアクセスすることにより,被告の不正疑惑とは関係のない多数の被告の機密情報が印刷された文書を窃取していた(本件情報収集行為)。その上,原告らは,上記の情報及び被告の信用を低下させる文書等を第三者にも提供したことから(本件情報提供行為),被告は当該第三者から不当な要求を繰り返し受けるに至っていた。 そうすると,原告らの上記行為は,本件就業規則75 条2 項4 号,8 号及び11 号に該当する行為であるといわざるを得ないのであって,本件各懲戒解雇が著しく相当性を欠く解雇であるということはできない。 イ適正手続に沿った処分であること被告は,本件各懲戒解雇に先立ち,調査委員会を設置して多数人に調査を行い,原告らに対しても弁明の機会を与えるなどした上,本件各懲戒解雇を行った。 したがって,本件各懲戒解雇は,適正手続に沿った処分である。 ウ不当な目的に基づく処分ではないこと 本件各懲 原告らに対しても弁明の機会を与えるなどした上,本件各懲戒解雇を行った。 したがって,本件各懲戒解雇は,適正手続に沿った処分である。 ウ不当な目的に基づく処分ではないこと 本件各懲戒解雇は,本件情報収集行為及び本件情報提供の悪質性に照らし,被告の秩序維持違反に対する制裁としてされたものであって,何ら不当な目的はない。 (2) 原告らの被保険者資格等の回復措置について,被告に債務不履行ないし不法行為はないこと被告は,原告らの被保険者資格等について,解雇時に遡って回復する措置を取っていない。 しかし,これは,被告が原告らに対し資格の回復方法について被保険者資格等を解雇時に遡って回復する方法も説明したにもかかわらず,原告らが自らの意思で復職時に被保険者資格等を回復することを選択したことによるものである。 したがって,被告には,原告らの主張するような義務違反行為はない。 (3) 原告らの損害についての主張が不当であることア昇格していた場合との賃金及び退職金の差額分の請求について原告らは,原告らが支店長・課長級(本部長級)にまで昇格していたことを前提に,これとの比較で賃金及び退職金の損害が生じていると主張する。 しかし,昇格の可否及び程度は,個人の能力,業績及び資格等の諸要素によって左右されるものであるところ,原告らは昇格に必要な人事考課及び資格等を取得しておらず,支店長・課長級に昇格できない以上,原告らの上記主張は,その前提を欠くものであって,失当である。このことは,①被告においては,原告らと同様の年齢・勤続年数の者でも支店長に昇格していない者が存すること,②原告らには懲戒事由に相当する行為があった上,原告P1には逮捕歴もあること等,昇格を果たした者との差異が大きいこと ては,原告らと同様の年齢・勤続年数の者でも支店長に昇格していない者が存すること,②原告らには懲戒事由に相当する行為があった上,原告P1には逮捕歴もあること等,昇格を果たした者との差異が大きいことからも明らかである。 なお,仮に原告らが昇格していたとしても,被告においては,原告らの 解雇後に残業の制限及び賞与の減額が行われているところ,原告らは,解雇により上記制限を受けなかったため,結果的に昇格を果たした者以上の賃金を取得していたのであるから,昇格していた場合との差額そのものが存しないというべきである。 イ年金部分の損害について(ア) 原告らは,中間利息の控除について,新ホフマン方式を採用しているが,ライプニッツ方式を採用すべきである。 (イ) 原告P2のDB 加算年金の損害については,原告P2が一時金を受領しなかったことを前提として,解雇時に遡って資格を回復した場合のDB 加算年金から復職時に再加入した場合のDB 加算年金を控除することによって算出すべきところ,この場合,原告P2は復職時に再加入した方が多額となり,損害どころか,むしろ利益があるのであるから,これを損益相殺すべきである。また,その余の部分についても,原告らは,解雇により利益を受けている部分が存在するから,同部分について損益相殺すべきである。 ウ慰謝料及び弁護士費用等について否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,証拠(甲1,29,32,33,37 ないし44,49,67,68,78,79,乙1,19,24 ないし26,30,31,34 ないし37,39,43,50 ないし56〔以上につき枝番号のあるものは枝番号を含む。以下同じ。〕,証人P3,原告P1本人,原告P2本人)及び弁論の全趣旨を総 9,24 ないし26,30,31,34 ないし37,39,43,50 ないし56〔以上につき枝番号のあるものは枝番号を含む。以下同じ。〕,証人P3,原告P1本人,原告P2本人)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 (1) 原告らの被告に対する不正追及活動と被告の機密情報の外部流出ア原告P1は,平成7 年8 月に,その所属する被告職員組合(以下「本件組合」という。)の執行副委員長に選任されたことを機に,団体交渉等を 通じて被告の不正疑惑を追及するようになり,平成8 年2 月7 日以降は,権限なく被告管理に係るホストコンピューターにアクセスして顧客の融資取引現況表及び稟議書等の信用情報を印刷し,これらが記載された文書を入手していた(本件情報収集行為の一部であり,原告P1が入手した信用情報を,以下「本件信用情報1」という。)。なお,原告P1が入手した本件信用情報1 の中には,被告の不正疑惑とは関係のない顧客の信用情報も一定数含まれていた。 また,原告P1は,同年3 月以降,権限なく,被告が管理する宮崎手形交換所の取引停止報告書を複写し,その写しを入手していた(本件情報収集行為の一部であり,原告P1が入手した被告の管理文書を,以下「本件管理文書1」という。)。 (甲1,32,38,乙25,26,34,43,51)イ原告P2は,平成8 年2 月23 日,目的を明らかにしないまま部下から借りたオペレーターカードを利用するなどして,被告の顧客の融資取引現況表等の信用情報が記載された文書を入手し(以下原告P2が入手した信用情報を「本件信用情報2」といい,本件信用情報1 と併せて「本件各信用情報」という。),また,同年3 月以降,権限なく,被告が管理する顧客の信用情報が記載された稟議箋を複写して,その写しを した信用情報を「本件信用情報2」といい,本件信用情報1 と併せて「本件各信用情報」という。),また,同年3 月以降,権限なく,被告が管理する顧客の信用情報が記載された稟議箋を複写して,その写しを入手するなどしていた(以下原告P2が入手した被告の管理文書を「本件管理文書2」といい,本件管理文書1 と併せて「本件各管理文書」という。)。 (甲1,33,乙25,34,43,53)ウそして,原告らは,原告P2が本件組合の執行副委員長に選任された平成8 年8 月を機に,共に上記文書を用いて被告の不正疑惑を追及するようになった。なお,原告らは,各人が入手した文書を更に複写して,本件組合関係者に交付するなどしていた。 (甲1,32,33,38,39,乙51,53) エ原告P2は,被告総務部長に対し,差出人名を記載しないまま,平成8年3 月5 日ころ,被告の人事及び役員の報酬体系の是正等を求める文書を,同年4 月22 日ころにも,同様の文書をそれぞれ送付した(以下,原告P2が送付した文書2 通を「本件各要求文書」といい,本件各要求文書が送付された出来事を「本件怪文書事件」という。)。なお,本件各要求文書は,被告の人事に対する不満が大部分を占めているほか,被告の役員,人事担当者及び昇格者について,揶揄したり,批判したりする表現が相当数含まれている。 (甲1,32,乙34,50,52,53)オ原告P1は,衆議院議員の秘書である実弟のP4,宮崎県警及び大蔵省に対し,平成8 年5 月から7 月ころにかけて,原告らが収集ないし作成した文書の一部(顧客の信用情報を含むもの)を提供した。なお,原告P1は,上記文書提供行為について,原告P2に事前ないし事後に相談・報告していた。 (甲1,乙50,51,53) した文書の一部(顧客の信用情報を含むもの)を提供した。なお,原告P1は,上記文書提供行為について,原告P2に事前ないし事後に相談・報告していた。 (甲1,乙50,51,53)カ原告らは,平成9 年8 月ころ選出された本件組合の新執行部が従前と異なる活動方針をとるようになったことから,組合執行部と距離を置くようになったが,その後も継続的に被告内の業務について調査活動を行った。 (甲1,38,39,49,乙39)(2) 原告らの内部告発活動に対する被告の対応と被告への不当要求の存在ア被告は,本件組合の追及や本件各要求文書を受けて内部調査を実施した結果,被告職員の不正行為が判明するなどしたことから,平成8 年2 月13日から平成9 年10 月27 日まで,被告理事長を含む多数の職員に対して懲戒処分等を行っていた。なお,原告らの内部告発文書を受けて被告に捜査が入った結果,本件各懲戒解雇までに被告の元理事を含む複数の被告関係者が逮捕されるなどし,このことは報道機関により大きく報道されていた。 (甲1,32,40 ないし44,乙35,37)イ株式会社P5代表取締役P6は,平成8 年11 月14 日,当時の被告会長に対し,本件各要求文書,本件各信用情報,本件各管理文書及びこれらを基礎に作成された文書の一部(乙34 の文書。以下「本件持込文書」という。)を示して被告の内部資料が外部に流出していることを告げるとともに,本件持込文書が別のところに持ち込まれた場合には被告の存続が危ぶまれるなどと述べ,それ以降,被告に対して,再三にわたり,当座預金口座を開設するよう求めるようになった。 (甲1,37,40,乙26,34,43,51,53 ないし56)ウ被告は,同社 まれるなどと述べ,それ以降,被告に対して,再三にわたり,当座預金口座を開設するよう求めるようになった。 (甲1,37,40,乙26,34,43,51,53 ないし56)ウ被告は,同社が平成4 年に銀行取引停止処分を受けていたことなどを踏まえ,P6の要求を拒絶する一方で,P6から持ち込まれた本件持込文書の中に本件各信用情報の一部が含まれていること及び当該信用情報は原告らによりオンライン端末機から取得されたものであることが判明したこと,P6から文書提供者が不安に感じているとして調査を止めるよう求められたことから,原告らがP6に対して本件持込文書を提供したのではないかとの疑いを抱き,P6から持ち込まれた本件持込文書が広く出回り,外部から様々な働きかけがあることを懸念し,機密情報の流出の件については刑事事件として対処すべき案件であると判断して,平成9 年2 月6 日,顧客信用情報にアクセスして印刷した文書を外部に持ち出した行為について被告訴人氏名不詳のまま告訴した。 (甲1,37,40,乙26)(3) 原告らに対する本件各懲戒解雇ア被告は,その後の警察からの要請により,平成9 年12 月4 日,上記告訴を取り下げたものの,これを踏まえて,平成10 年3 月26 日,流出文書調査委員会(以下「本件委員会」という,)を発足させ,P6への情報流出についての調査を開始し,関係職員に対する事情聴取を行うなどしていた。 そして,本件委員会は,原告P1に対し,同年4 月7 日に約1 時間にわたって本件持込文書の流出等について事情聴取を行ったところ,原告P1から,本件持込文書については自分が収集したものもあれば見覚えのないものもある,文書の漏洩に関与したことはないなどと回答を受けた。 本件委員会は,同月8 日,本件 聴取を行ったところ,原告P1から,本件持込文書については自分が収集したものもあれば見覚えのないものもある,文書の漏洩に関与したことはないなどと回答を受けた。 本件委員会は,同月8 日,本件組合元執行委員長P7に対して事情聴取を行い,引き続き,原告P2の事情聴取の機会を設けたところ,原告P2は,P7から,本件委員会の質問に対する回答の前に本件組合の要求に対する回答を求め,調査対象者が不明であるため調査には応じない旨述べて退出したとの経過を聞いていたことから,本件委員会に対し,自分も考え方はP7と同様であるなどと発言し,本件委員会の聴取に対しては,本件怪文書事件については何も知らない,本件委員会に話すことができることはない旨を回答して約2 分で退出した。 (甲1,32,33,37,40,79,乙24 ないし26,40,50,51,53)イ被告は,本件委員会から調査結果の報告及び意見を受け,平成10 年4月10 日,本件持込文書の外部流出については原告らの関与が明らかであるなどとして,原告らを懲戒解雇とすることを決議し,原告らに対し,本件各懲戒解雇をした。そして,被告は,本件各懲戒解雇に伴い,社会保険事務所に対して原告らが社会保険資格を喪失したことを届け出るとともに,本件基金に対して原告らが加入員資格を喪失したことを届け出た。 (乙25)(4) 原告らの復職と被告の原告らに対する社会保険等についての説明等ア原告らは,別件解雇訴訟が確定したことから,平成17 年8 月1 日付けで被告に復職した。 被告は,原告らの復職に伴い,宮崎社会保険事務所から,社会保険の加入方法について,復職時から2 年分のみ遡って加入する方法と復職時から再加入する方法がある旨の説明を受けて,原告らに対し,同年9 月ころ, 告らの復職に伴い,宮崎社会保険事務所から,社会保険の加入方法について,復職時から2 年分のみ遡って加入する方法と復職時から再加入する方法がある旨の説明を受けて,原告らに対し,同年9 月ころ, 厚生年金保険を含む社会保険の加入方法について,原告P1には2 年分遡って加入する方法をとった場合の試算表(甲29)を示すなどして,上記と同様の説明を行い,いずれかを選択するよう促すとともに,本件基金の加入方法については,遡って加入することはできないため,復職時からの再加入となる旨を説明した。 (甲29,67,78,乙19,31,証人P3,原告P1本人)イ被告は,平成17 年10 月6 日,宮崎社会保険事務所から,以前の説明には誤りがあったとして,社会保険の加入方法については,以前説明した二つの方法のほかに解雇時に遡って加入する方法があり,従業員に対する解雇の無効が確定した場合には,解雇時に遡って社会保険に加入することが原則となる旨の説明を受けた。これに対し,被告は,宮崎社会保険事務所に対し,既に原告らに対して二つの方法を説明しているため,今になって前回と異なる説明をされることは,混乱を招くものであり,問題があるとして抗議するなどしていた。 そして,被告は,原告らに対し,同月7 日,社会保険資格の回復方法について,従前と同様,復職時から2 年分のみ遡って加入する方法と復職時から再加入する方法の二つの方法を説明した上,いずれかを選択するよう促した。 原告らは,被告から上記説明を受けた後,社会保険事務所に赴き,厚生年金保険に2 年分遡及加入した場合に受給できる年金額及びその場合の損益分岐点等について相談したところ,2 年分遡及加入したとしても損益分岐点を超えるのは75 歳となる旨の説明を受けた。なお,原告らは,上記相談の際, 及加入した場合に受給できる年金額及びその場合の損益分岐点等について相談したところ,2 年分遡及加入したとしても損益分岐点を超えるのは75 歳となる旨の説明を受けた。なお,原告らは,上記相談の際,解雇時に遡って厚生年金保険に加入することの可否やその場合に受給できる年金額及び損益分岐点等については相談しておらず,また,本件基金には全く相談していない。 そして,原告らは,上記相談の結果,同月20 日,被告に対し,復職時か ら厚生年金等に加入する旨を伝えた。そこで,被告は,原告らについて復職時から厚生年金等に加入する手続をとった。 なお,被告は,原告らが復職時から社会保険及び本件基金に加入したことにより,本件各懲戒解雇時から復職時までに対応する使用者負担部分の負担を免れている。 (甲67,乙30,31,証人P3,原告P1本人,原告P2本人)ウ原告らは,原告らが無断で持ち出した被告の機密資料について,未だに被告に返還することなく,自宅で保管するなどしている(乙53,原告P1本人,原告P2本人)。 2 本件各懲戒解雇が債務不履行ないし不法行為を構成するかについて(1) 本件各懲戒解雇につき故意又は過失があるかについてア上記1 認定事実によれば,原告らは,平成8 年2 月以降,業務外の目的のため,部下から目的を明らかにしないままオペレーターカードを借りるなどして権限なく被告の機密情報(本件各信用情報及び本件各管理文書)を入手し,これを外部に持ち出したものである(ちなみに,原告P1が取得した情報には,不正疑惑とは関係のない顧客の信用情報も一定数含まれている。)。原告らの上記行為は,本件就業規則75 条2 項4 号(職場内外において窃盗又はこれに類する行為のあったとき)の懲戒解雇事由に該当し得るもの 惑とは関係のない顧客の信用情報も一定数含まれている。)。原告らの上記行為は,本件就業規則75 条2 項4 号(職場内外において窃盗又はこれに類する行為のあったとき)の懲戒解雇事由に該当し得るものであって,顧客の情報を保護すべき金融機関の職員としての職責に著しく反するのみならず,金融機関である被告の企業秩序に著しく反するものであるといわざるを得ない。なお,原告らにおいて,被告の不正を是正するにあたり,担当職員に対し不正疑惑の調査を行うなど適法に情報収集した上で捜査機関等に告発することが困難であったと認めるに足りる証拠はない。 次に,被告は,被告の不正疑惑に関する本件組合の追及を受けて,平成 8 年2 月以降,関係職員の処分を行うなどして内部浄化に努めていたとい うのであるから,原告P1においては,直ちに被告の機密情報を外部に提供するのではなく,被告内部における改善努力を尽くすことが求められていたというべきである。しかるに,原告P1は,上記のような内部改善努力を尽くすことなく,外部者のP4に対し,同年5 月から同年7 月ころにかけて,被告の機密情報を提供したものであるから,これは,本件就業規則75 条2 項8 号(業務上の重要な機密を他に漏らしたとき)の懲戒解雇事由に該当し得るものであって,不当に顧客のプライバシーを侵害する行為であるのみならず,金融機関としての被告の信用性を著しく損なう行為であるといわざるを得ない。 また,被告は,原告らが自ら収集ないし作成した文書について適切な管理を怠ったため,本件持込文書を入手したP6から不当要求を繰り返し受けていたものである(なお,上記1 認定事実のとおり,被告がP6への流出について調査を開始した後,P6が被告に対して情報提供者が調査に不安を感じているとして調査を中止するよう ら不当要求を繰り返し受けていたものである(なお,上記1 認定事実のとおり,被告がP6への流出について調査を開始した後,P6が被告に対して情報提供者が調査に不安を感じているとして調査を中止するよう求めていたことからすれば,原告らとP6の間には何らかの関係があることがうかがわれるものの,P6への流出については,原告ら以外の組合員がP6に上記文書を提供した可能性も否定できないのであって,上記事実をもって原告らがP6に被告の機密情報を提供したとまで認めることはできない。)。そして,本件持込文書には顧客の信用情報に関するものが少なくなく,このような情報が不当要求を行う者に流出することは,顧客の信用情報を扱う金融機関にとって大きな信用低下と取引関係に対する悪影響をもたらすものといわざるを得ないから,原告らの上記行為は,本件就業規則75 条2 項11 号(その他職務の内外を問わず,金庫の名誉と信用を著しく失墜し,若しくは取引関係に悪影響を与える行為があったとき)に該当し得るものである。 そして,被告は,本件各懲戒解雇に至るまでに,本件委員会を立ち上げて多数の職員に対する事情調査を行うなどして相当程度の調査を行った上, 原告らに対しても機密情報の流出等について事情聴取の機会を設けるなどして相当程度の手続を履践していたが,本件各懲戒解雇の時点では,本件各要求文書の送付やP6への本件持込文書の流出等,被告の人事に不満を有する者の関与が疑われる出来事が続いており,かつ,原告らから本件情報収集行為等の目的について回答を得られなかったことから,原告らの情報収集行為等の目的が被告の人事に対する不満解消にあるのか,被告の不正の是正にあるのか判明しなかったというのである。 そうすると,被告が,原告らの上記行為をもって,本件就業規則75 条2項 情報収集行為等の目的が被告の人事に対する不満解消にあるのか,被告の不正の是正にあるのか判明しなかったというのである。 そうすると,被告が,原告らの上記行為をもって,本件就業規則75 条2項4 号,同8 号及び同11 号に該当するとして本件各懲戒解雇をしたことについて,著しく不相当なものであるとか,不当な目的に基づくものであるとして,故意又は過失があるということは困難である。 したがって,本件各懲戒解雇が原告らに対する債務不履行ないし不法行為を構成するものと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 以上によれば,本件各懲戒解雇が債務不履行ないし不法行為に当たることを前提とする原告らの請求は,前提を欠くものであって,いずれも理由がない。 なお,本件各懲戒解雇後,別件解雇訴訟における原告らの訴訟活動を通じて本件情報収集行為等の目的が被告の不正疑惑の解明にあることが明らかとなり,これにより原告らの行為の違法性が減少することとなったとしても,前示のとおり,被告としては,事実関係の調査を進めていたものの,本件各懲戒解雇の時点では,原告らの本件情報収集行為等の目的が判明しなかったというのであるから,これをもって本件各懲戒解雇を選択した被告の当時の判断が著しく不相当であったということはできない。 イ原告らの主張について(ア) まず,原告らは,本件各懲戒解雇が被告の処分例に照らして著しく 不相当であると主張する。 しかしながら,原告らの指摘する処分例は,名義貸し融資,迂回融資及び顧客資金の一部流用等であって(甲42 ないし44),原告らの本件情報収集行為及び第三者への過失による流出行為とはその性質を異にするものである上,上記処分例のうち被告における規律違反の程度の高い顧客資金の一部流用及 等であって(甲42 ないし44),原告らの本件情報収集行為及び第三者への過失による流出行為とはその性質を異にするものである上,上記処分例のうち被告における規律違反の程度の高い顧客資金の一部流用及び浮き貸し行為については,事実を認めて反省している者であっても諭旨解雇処分が採られているのであるから(甲44),原告らの指摘する上記処分例をもって原告らに対する本件各懲戒解雇処分が著しく不相当であったということはできない。 したがって,この点に関する原告らの主張は,採用することができない。 (イ) 次に,原告らは,本件各懲戒解雇には不当な目的があると主張する。 しかしながら,上記1 認定事実によれば,被告は,原告らの追及や本件各要求文書を受けて内部調査を実施し,その結果,被告職員の不正が発覚したとして,平成8 年2 月から平成9 年10 月までに,被告理事長を含む多数の関係職員に対して処分を行っていたものである。そして,被告は,遅くとも平成8 年11 月までに,原告らが被告の機密情報の流出に関与したことを把握していたにもかかわらず,これを被告内部の問題として処理することは相当ではないとして,平成9 年2 月には,原告らの内部告発活動が公になる危険を犯してまで機密情報の持ち出し行為について刑事告訴していた上,本件各懲戒解雇までに,原告らの内部告発に係る被告の不正融資疑惑等は報道機関により報道されるに至っていたというのである。 以上のような原告らの情報持ち出し後の被告の対応及び被告の不正疑惑の顕在化に照らすと,被告が不正行為を行った職員等の処分の終了した平成10 年4 月10 日の時点で原告らの内部告発活動を阻止するために 本件各懲戒解雇をしたと認めることは困難である。 したがって,この点に関する原告らの主張は,採用 員等の処分の終了した平成10 年4 月10 日の時点で原告らの内部告発活動を阻止するために 本件各懲戒解雇をしたと認めることは困難である。 したがって,この点に関する原告らの主張は,採用することができない。 (ウ) また,原告らは,本件各懲戒解雇については,本件就業規則で要求されている懲戒委員会の諮問がされておらず,著しい適正手続違反があると主張する。 しかしながら,上記認定事実によれば,懲戒委員会への諮問は任意的なものとされている上,被告は,原告らに対する本件各懲戒解雇に先立ち本件委員会を設置し,本件委員会の報告・意見を受けて本件各懲戒解雇を行っていたというのであるから,懲戒委員会という名称の委員会への諮問がされていないことのみをもって本件各懲戒解雇手続に著しい適正手続違反があるということはできない。仮に本件委員会が諮問機関としての役割を果たしていなかったとしても,前示のとおり,本件では原告らに対する弁明の機会が付与されていた以上,これのみをもって本件各懲戒解雇手続に著しい適正手続違反があるとまでいうことはできない。 したがって,この点に関する原告らの主張は,採用することができない。 (2) なお,仮に本件各懲戒解雇が債務不履行ないし不法行為を構成するとしても,原告らの主張する損害は,次のとおり,そもそも損害自体が認められないか,損害自体は認められるとしても,本件各懲戒解雇と損害との間に相当因果関係が認められないものであるから,いずれにしても,本件各懲戒解雇を理由とする原告らの損害賠償請求は理由がないというべきである。 アすなわち,昇格を前提とする賃金及び退職金の差額分の損害については,本件各懲戒解雇がなければ原告らが昇格に必要な人事評価及び資格を取得することにより昇格したと認めるに足りる証拠はない である。 アすなわち,昇格を前提とする賃金及び退職金の差額分の損害については,本件各懲戒解雇がなければ原告らが昇格に必要な人事評価及び資格を取得することにより昇格したと認めるに足りる証拠はないから,上記損害につ いては,これを認めることができない。このことは,①被告においては,昇格には所定の人事評価及び資格の取得が必要とされているところ,原告らは昇格に必要な人事評価及び資格を取得していないこと(乙44 ないし47,証人P3及び弁論の全趣旨),②被告においては,原告らと同等の勤続年数の者であっても,原告らと同等ないしそれ以下の役職にとどまっている者がいるなど,同期一律昇格等の労使慣行はないこと(乙13,14,証人P3),③原告らの機密情報の持ち出し行為及び機密情報の過失による外部流出行為は,懲戒解雇までは不相当であるとしても,相当程度の懲戒処分に該当するものであり,このことは,原告らの人事考課上,不利益に考慮されるものであるところ,このような非違行為のない者と原告らとを同等に扱うことはできないこと,④原告らは,被告から持ち出した機密情報を更に複写して複数人に交付していた上,これらを未だに返還することなく自宅に保管するなどしており(上記1 認定事実),原告らには顧客の信用情報を取り扱う金融機関の職員として適性に欠ける面があることからも明らかである。 イまた,慰謝料については,原告らは,別件解雇訴訟後,解雇期間中の賃金の支払を受けた上,職場復帰を果たしており(争いがない),不当解雇による精神的苦痛は,通常これにより慰謝されるものであるところ,原告らの行為は懲戒解雇事由に該当し得る行為であること,被告が本件各懲戒解雇時に原告らの情報収集行為の目的を把握できなかったのは,原告らが被告の事情聴取に誠実に応じなかったことが ものであるところ,原告らの行為は懲戒解雇事由に該当し得る行為であること,被告が本件各懲戒解雇時に原告らの情報収集行為の目的を把握できなかったのは,原告らが被告の事情聴取に誠実に応じなかったことが原因であること等に照らすと,解雇をめぐる紛争が長期化していたこと等を考慮しても,解雇期間中の賃金支払に加えて原告らに金銭をもって慰謝しなければならないほどの精神的損害が生じたと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。 ウさらに,年金の差額分及び原告P1の自宅売却による実費の損害につい ては,本件各懲戒解雇と上記損害との間に相当因果関係があると認めることはできない。 エ以上のとおりであり,弁護士費用を除く損害については,損害がないか,本件各懲戒解雇との間に相当因果関係が認められないものであるから,結局,原告らの弁護士費用についても,本件各懲戒解雇との間に相当因果関係のある損害と認めることはできない。 したがって,本件各懲戒解雇を理由とする原告らの損害賠償請求は,いずれにしても理由がない。 3 被告が原告らの年金資格を遡及回復させなかったこと等が原告らに対する債務不履行ないし不法行為を構成するかについて(1)ア厚生年金保険法は,同法所定の強制適用事業所及び厚生年金基金の設立事務所の労働者は厚生年金保険及び厚生年金基金に加入するものとし(同法9 条,122 条),また,被保険者資格等は,使用者との間の使用関係が消滅するなどの事情のない限り存続するものとした上で,使用者が虚偽の資格喪失届出をすること等について罰則を設けている(同法13 条,14 条, 102 条,123 条,124 条,187 条)。そして,社会保険事務所においても,解雇の無効が確定した場合には,厚生年金保険について,原則として,被保険者の 設けている(同法13 条,14 条, 102 条,123 条,124 条,187 条)。そして,社会保険事務所においても,解雇の無効が確定した場合には,厚生年金保険について,原則として,被保険者の資格喪失の処理を取り消し,解雇時から継続して加入していたものとする扱いがとられている(甲78,乙18,30,弁論の全趣旨)。このような被保険者資格等に関する規定及び運用に照らすと,労働者は,使用者との雇用関係が消滅するなどの特段の事情のない限り,被保険者資格等が存続するものと考え,また,加入期間に対応する年金を受給し得ると期待するのが通常である。 以上のような厚生年金保険法の規定及び労働者の年金受給に対する期待等に加え,年金が労働者の老後の生活保障に重要な役割を担うことを併せ考慮すると,労働者に対する解雇の無効が確定した場合には,使用者は, 労働者の年金受給額についての期待を保護すべく,解雇時点に遡って当該労働者の被保険者資格等を回復させることが望ましいのであって,年金資格の回復方法について労働者の選択に委ねる余地があるとしても,使用者は,雇用契約に付随する義務として,当該労働者に対し,労働者が資格の回復方法について合理的に選択できるよう,被保険者資格等の回復に必要な費用及び回復により得られる年金額等,各加入方法の利害得失について具体的に説明する義務を負うものと解するのが相当である。 イしかも,上記1 認定事実によれば,被告は,原告らに対し,当初,被保険者資格について,復職時から2 年分のみ遡って加入する方法と復職時から再加入する方法の二つの方法のみを説明したが,その後,社会保険事務所から,解雇時に遡って社会保険に加入することが原則となる旨の連絡を受けたのであるから,上記の各加入方法の利害得失についての説明に加えて,被保険 法の二つの方法のみを説明したが,その後,社会保険事務所から,解雇時に遡って社会保険に加入することが原則となる旨の連絡を受けたのであるから,上記の各加入方法の利害得失についての説明に加えて,被保険者資格の回復方法のうち解雇時に遡っての加入が原則とされる趣旨についても十分に説明する義務を負っていたというべきである。 しかるに,被告は,原告らに対し,被保険者資格については解雇時に遡って加入する方法を除く2 つの方法及び2 年分遡及加入した場合に必要となる費用のみを説明し,加入者資格については復職時から再加入する方法のみを説明するにとどまっているのであるから,被告には,上記各説明義務を怠った過失があるといわざるを得ない。 したがって,被告は,原告らに対し,債務不履行ないし不法行為に基づき,原告らの被った損害を賠償する義務を負うというべきである。 なお,上記1 認定事実によれば,原告らは平成17 年10 月20 日に復職時から各年金に再加入することを選択しているが,これは,被告の不十分な説明に基づくものであって,このような説明自体,原告らに対する債務不履行ないし不法行為を構成するものであるから,このことは,上記認定判断を左右するものではない。 (2) これに対し,被告は,原告らに対し,被保険者資格等の回復方法について,解雇時に遡った回復方法も説明しており,被告に説明義務違反はない旨を主張し,被告総務部長P3(以下「P3部長」という。)作成のメモ(乙17,20),P3部長の陳述書(乙31)及び証言中にはこれに沿う部分がある。 しかしながら,社会保険(厚生年金保険)に関する上記メモの記載は,「社会保険料納付3 形態を打診」(乙20),「社会保険加入について3 形態のうち17 年7 月1 日からの加入を選択した」(乙1 しかしながら,社会保険(厚生年金保険)に関する上記メモの記載は,「社会保険料納付3 形態を打診」(乙20),「社会保険加入について3 形態のうち17 年7 月1 日からの加入を選択した」(乙17)などと被告の認識を記載するのみで,その具体的内容を示すものではないこと,原告らは,同年10月7 日,被告から社会保険資格の回復方法についての説明を受けた後,社会保険事務所において,2 年遡及加入をした場合の厚生年金の損益分岐点等の説明のみを受け,解雇時に遡って加入した場合の損益分岐点等については説明を受けていないこと(上記1 認定事実)を併せ考慮すると,上記メモ,ひいてはP3部長の証言等(被保険者資格等の回復に必要な金額及び回復により得られる年金額等,各加入方法の利害得失について具体的に説明を行っていたとは認められない。)をもってしても,被告の原告らに対する上記説明義務が果たされたものと認めることはできない。 また,本件基金を含む被保険者資格等の回復方法について,事前に回復方法を調査した上,解雇時に遡った加入方法を含む説明を行ったとする上記のP3部長の陳述書及び証言部分についても,①厚生年金について遡及加入の場合の損益分岐点等の相談を行った原告らが,被告から,本件基金について遡及加入が可能であるとの説明を受けながら,本件基金について全く相談を行わないことは考え難いこと,②被告が本件基金の資格回復方法について問い合わせを行ったのは,本件訴訟提起後の平成20 年1 月10 日であって(乙 19 の1),それ以前に本件基金に対して資格回復方法を問い合わせていたとは認められないこと,③P3部長は厚生年金と企業年金を混同しており(証人P3130・131 項),P3部長自身,本件基金の資格回復方法については説 明していないとも証言している わせていたとは認められないこと,③P3部長は厚生年金と企業年金を混同しており(証人P3130・131 項),P3部長自身,本件基金の資格回復方法については説 明していないとも証言している(証人P3107・108 項)こと等を考慮すると,直ちにこれを採用することはできない。 そして,他に被告が原告らに対して上記の説明義務を果たしたと認めるに足りる証拠はないから,この点に関する被告の主張は,採用することができない。 4 原告P1の損害額について(1) 年金についての損害額前示のとおり,原告P1は,被告から被保険者資格等の回復方法について誤った説明を受けたことにより,復職時から厚生年金等に再加入することを余儀なくされたものである。そして,原告P1は,適切な説明を受けていれば解雇時に遡って被保険者資格等を回復していたというのであるから,解雇時に遡って加入していた場合に得られた年金額と復職時に再加入したことにより得られた年金額との差額分の損害を被ったということができる。 そして,その差額分の損害は,次のとおり,合計9 万7991 円となる。 ア各損害額について(ア) 老齢基礎年金についての損害 27 万6650 円本件において,原告P1が解雇時に遡って厚生年金の被保険者資格を回復していた場合の老齢基礎年金の受給見込額は年額67 万1600 円となること,これに対し,復職時に被保険者資格を再取得した原告P1の老齢基礎年金の受給見込額は年額63 万2000 円となることについては,当事者間に争いがない。 そして,1 年当たりの差額である3 万9600 円(671,600-632,000)を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原 当事者間に争いがない。 そして,1 年当たりの差額である3 万9600 円(671,600-632,000)を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原告P1の老齢基礎年金についての損害額を算出すると,次の計算式のとおり,27 万 6650 円となる(なお,ライプニッツ係数については,不法行為時である平成17 年における平均余命の25.36 年に対応するライプニッツ係数〔1 4.0939〕から年金の支給開始までの9 年に対応するライプニッツ係数〔7.1078〕を控除したものを用いるものとする。以下,老齢厚生年金も同じ。)。 39,600×(14.0939-7.1078)=276,650(イ) 特別支給の老齢厚生年金についての損害 2850 円本件において,原告P1が解雇時に遡って厚生年金の被保険者資格を回復していた場合の特別支給の老齢厚生年金の受給見込額は年額14 万4 900 円となること,これに対し,復職時に被保険者資格を再取得した原告P1の特別支給の老齢厚生年金の受給見込額は年額14 万4100 円となることについては,当事者間に争いがない。 そして,1 年当たりの差額である800 円(144,900-144,100)を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原告P1の特別支給の老齢厚生年金についての損害額を算出すると,次の計算式のとおり,2 850 円となる(なお,ライプニッツ係数については,不法行為時である平成17 年から受給終了時までの9 年に対応するライプニッツ係数〔7.1078〕から年金の支給開始までの4 年に対応するライプニッツ係数〔3.5459〕を控除したものを用いるものとする。)。 平成17 年から受給終了時までの9 年に対応するライプニッツ係数〔7.1078〕から年金の支給開始までの4 年に対応するライプニッツ係数〔3.5459〕を控除したものを用いるものとする。)。 800×(7.1078-3.5459)=2850(ウ) 老齢厚生年金についての損害 6287 円本件において,原告P1が解雇時に遡って厚生年金の被保険者資格を回復していた場合の老齢厚生年金の受給見込額は年額14 万5200 円となること,これに対し,復職時に被保険者資格を再取得した原告P1の特別支給の老齢厚生年金の受給見込額は年額14 万4300 円となることについては,当事者間に争いがない。 そして,1 年当たりの差額である900 円(145,200-144,300)を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原告P1の老齢厚生年金についての損害額を算出すると,次の計算式のとおり,6287 円とな る。 900×(14.0939-7.1078)=6287(エ) 本件基金年金についての損害 393 万1313 円本件において,原告P1が解雇時に遡って本件基金の加入者資格を回復していた場合,基本年金の受給見込額は年額85 万6200 円となり,DB 加算年金の受給見込額は年額46 万7640 円となり,CB 加算年金(支給期間15 年)の受給見込額は年額46 万4400 円となること,これに対し,復職時に加入者資格を再取得した原告P1においては,基本年金の受給見込額は年額77 万2080 円となり,DB 加算年金の受給見込額は年額51万2760 円となり,CB 加算年金(支給期間15 年)の受給見込額は年額5万2200 円となることにつ 基本年金の受給見込額は年額77 万2080 円となり,DB 加算年金の受給見込額は年額51万2760 円となり,CB 加算年金(支給期間15 年)の受給見込額は年額5万2200 円となることについては,当事者間に争いがない。 そして,各年金の1 年当たりの差額を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原告P1の本件基金年金についての損害額を算出すると,次の計算式のとおり,393 万1313 円となる(なお,ライプニッツ係数については,不法行為時である平成17 年から受給終了時までの年数〔基本年金及びDB 加算年金については平均余命まで,CB 加算年金については75 歳まで〕に対応するライプニッツ係数から本件基金年金の支給開始までの4 年に対応するライプニッツ係数〔3.5459〕を控除したものを用いるものとする。)。 (84,120×〔14.0939-3.5459〕)+(412,200×〔12.0853-3.5459〕)-(45,120×〔14.0939-3.5459〕=3,931,313イ年金保険料について原告P1が解雇時に遡って厚生年金等に加入していた場合,原告P1が負担すべきであった保険料が411 万9108 円であり,これを年金の損害額から控除することについては,当事者間に争いがない。 ウ小活 上記アの年金差額部分の損害合計421 万7099 円から保険料411 万9108円を控除すると,原告P1の年金の損害額は,9 万7991 円となる。 (2) 弁護士費用 1 万円本件の事案の性質,審理の経過及び認容額等を総合考慮すると,不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,1 万円と認めるのが相当である。 なお,その余の原告P1の主張する 用 1 万円本件の事案の性質,審理の経過及び認容額等を総合考慮すると,不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,1 万円と認めるのが相当である。 なお,その余の原告P1の主張する損害は,そもそも損害自体が認められないものか,被保険者資格等の回復措置に関する不法行為と相当因果関係の認められないものであるから,この点に関する原告P1の主張は,採用することができない。 (3) まとめ上記認定の損害を合計すると,原告P1の損害額は10 万7991 円となる。 5 原告P2の損害額について(1) 年金についての損害額前示のとおり,原告P2は,被告から被保険者資格等の回復方法について誤った説明を受けたことにより,復職時から厚生年金等に再加入することを余儀なくされたのであるから,解雇時に遡って加入していた場合に得られた年金額と復職時に再加入したことにより得られた年金額との差額分の損害を被ったということができる。 そして,その差額分の損害は,次のとおり,合計92 万0194 円となる。 ア各損害(利益)額について(ア) 老齢基礎年金についての損害 63 万6730 円証拠(甲60,乙29)及び弁論の全趣旨によれば,原告P2が解雇時に遡って厚生年金の被保険者資格を回復していた場合,老齢基礎年金の受給見込額は年額79 万2100 円となること,これに対し,原告P2が国民年金保険料を滞納せず,復職時に被保険者資格を再取得していた場合,老齢基礎年金の受給見込額は年額69 万6400 円となることが認められる。 そして,1 年当たりの差額である9 万5700 円(792,100-696,400)を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原告P 0 円となることが認められる。 そして,1 年当たりの差額である9 万5700 円(792,100-696,400)を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原告P2の老齢基礎年金についての損害額を算出すると,次の計算式のとおり,63 万 6730 円となる(なお,ライプニッツ係数については,不法行為時である平成17 年における平均余命の26.21 年に対応するライプニッツ係数〔14.3751〕から年金の支給開始までの10 年に対応するライプニッツ係数〔7.7217〕を控除したものを用いるものとする。以下,老齢厚生年金も同じ。)。 95,700×(14.3751-7.7217)=636,730(イ) 特別支給の老齢厚生年金についての損害 2714 円本件において,原告P2が解雇時に遡って厚生年金の被保険者資格を回復していた場合の特別支給の老齢厚生年金の受給見込額は年額22 万5 300 円となること,これに対し,復職時に被保険者資格を再取得した原告P2の特別支給の老齢厚生年金の受給見込額は年額22 万4500 円となることについては,当事者間に争いがない。 そして,1 年当たりの差額である800 円(225,300-224,500)を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原告P2の特別支給の老齢厚生年金についての損害額を算出すると,次の計算式のとおり,2 714 円となる(なお,ライプニッツ係数については,不法行為時である平成17 年から受給終了時までの10 年に対応するライプニッツ係数〔7.7217〕から年金の支給開始までの5 年に対応するライプニッツ係数〔4.3294〕を控除したものを用いるものとする。)。 800×(7.7 までの10 年に対応するライプニッツ係数〔7.7217〕から年金の支給開始までの5 年に対応するライプニッツ係数〔4.3294〕を控除したものを用いるものとする。)。 800×(7.7217-4.3294)=2714(ウ) 老齢厚生年金についての利益 17 万0327 円本件において,原告P2が解雇時に遡って厚生年金の被保険者資格を回復していた場合の老齢厚生年金の受給見込額は年額22 万5600 円となること,これに対し,復職時に被保険者資格を再取得した原告P2の特 別支給の老齢厚生年金の受給見込額は年額25 万1200 円となることについては,当事者間に争いがない。 そして,1 年当たりの差額である2 万5600 円(225,600-251,200)を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原告P2の老齢厚生年金についての利益を算出すると,次の計算式のとおり,17 万0 327 円となる。 25,600×(14.3751-7.7217)=170,327(エ) 本件基金年金についての損害 406 万7898 円本件において,原告P2が解雇時に遡って本件基金の加入者資格を回復していた場合,基本年金の受給見込額は年額87 万8160 円となり,CB加算年金(支給期間15 年)の受給見込額は年額50 万7480 円となること,これに対し,復職時に加入者資格を再取得した原告P2においては,基本年金の受給見込額は年額83 万1120 円となり,CB 加算年金(支給期間15 年)の受給見込額は年額6 万5400 円となることについては,当事者間に争いがない。 そして,各年金の1 年当たりの差額を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息 B 加算年金(支給期間15 年)の受給見込額は年額6 万5400 円となることについては,当事者間に争いがない。 そして,各年金の1 年当たりの差額を基礎として,ライプニッツ方式により中間利息を控除して原告P2の本件基金年金についての損害額を算出すると,次の計算式のとおり,406 万7898 円となる(なお,ライプニッツ係数については,不法行為時である平成17 年から受給終了時までの年数〔基本年金については平均余命まで,CB 加算年金については75歳まで〕に対応するライプニッツ係数から本件基金年金の支給開始までの5 年に対応するライプニッツ係数〔4.3294〕を控除したものを用いるものとする。)。 (47,040×〔14.3751-4.3294〕)+(442,080×〔12.4622-4.3294〕)=4,067,898これに対し,原告P2は,被告入社時から退社時までの加入者期間に 対応するDB 加算年金を受給できることを前提として,DB 加算年金について損害がある旨を主張するが,原告P2は,DB 加算年金について,説明義務違反に係る不法行為の前である平成12 年11 月16 日に一時金2 79 万6180 円を受給しており(甲12,乙23,弁論の全趣旨),原告P2は上記の加入者期間に対応するDB 加算年金を受給することはできないのであるから(甲52 の附則23 条4 項参照),原告P2の上記主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。また,被告は,原告P2が入社時から退社時までの加入者期間に対応するDB 加算年金を受給できることを前提として,原告P2にDB 加算年金について利益がある旨を主張するが,上記のとおり,原告P2は上記の加入者期間に対応するDB 加算年金を受給することはできないので DB 加算年金を受給できることを前提として,原告P2にDB 加算年金について利益がある旨を主張するが,上記のとおり,原告P2は上記の加入者期間に対応するDB 加算年金を受給することはできないのであるから,被告の主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。 イ年金保険料について原告P2が解雇時に遡って厚生年金等に加入していた場合,原告P2が負担すべきであった保険料が361 万6821 円であり,これを年金の損害額から控除することについては,当事者間に争いがない。 ウ小活上記アの年金差額部分の損害合計453 万7015 円から保険料361 万6821円を控除すると,原告P2の年金についての損害額は,92 万0194 円となる。 (2) 弁護士費用 9 万円本件の事案の性質,審理の経過及び認容額等を総合考慮すると,不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,9 万円と認めるのが相当である。 なお,その余の原告P2の主張する損害は,そもそも損害自体が認められないものか,年金の資格回復に関する不法行為と相当因果関係のある損害とは認められないものであるから,この点に関する原告P2の主張は,採用す ることができない。 (3) まとめ上記認定の損害を合計すると,原告P2の損害額は101 万0194 円となる。 6 結論以上によれば,原告P1の請求は,被告に対し,不法行為に基づき,10 万7 991 円及びこれに対する不法行為日である平成17 年10 月20 日から支払済みまで民法所定の年5 分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきであり,また,原告P2の請求は,被告に対し,不法行為に基づき,101 万0194 円及びこれ 民法所定の年5 分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきであり,また,原告P2の請求は,被告に対し,不法行為に基づき,101 万0194 円及びこれに対する不法行為日である平成17 年10 月20 日から支払済みまで民法所定の年5 分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから棄却すべきである。 なお,原告らの請求を債務不履行に基づくものと構成したとしても,上記認容額を上回ることはない。 よって,訴訟費用の負担について民事訴訟法64 条ただし書,61 条を適用することとし,主文のとおり判決する。 宮崎地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官足立正佳 裁判官宮武芳 裁判官大原哲治

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