主文 被告人株式会社Aを罰金1億円に,被告人Bを懲役2年に,被告人C及び同Dを懲役1年6か月に,それぞれ処する。 この裁判が確定した日から,被告人Bに対し5年間,被告人C及び同Dに対し4年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人株式会社A(以下「被告会社」ともいう)は,東京都千代田区大手町a丁目b番c号に本店を置き,漁業,水産物の売買等を目的とする株式会社であり,被告人Bは,平成7年4月1日から平成11年3月31日までの間,被告会社水産第2部副部長兼同部水産第2課長として,同年4月1日以降は被告会社水産第2部長として,被告人Cは,平成6年4月1日から平成10年3月31日までの間,被告会社水産第2部副参事として,同年4月1日から平成11年3月31日までの間,同部参事として,同年4月1日以降は同部水産第2課長として,被告人Dは,平成4年4月1日から平成11年3月31日までの間,被告会社ラスパルマス駐在員事務所長として,同年4月1日以降は被告会社水産第2部参事として,それぞれ被告会社における水産物の輸入業務等に従事していたものであるが,被告人B,同C及び同Dは,被告会社が西アフリカ諸国原産の冷凍たこを本邦に輸入するにあたり,経済が開発途上にある一定の国(以下「特別特恵受益国」という)を原産地とする物品については,法定の除外事由がない限り,税関長に当該物品が特別特恵受益国原産品であることを証明機関が証明した書類(以下「原産地証明書」という)を提出することを条件に関税が無税とされている制度(以下「特恵関税制度」という)を利用し,証明機関印が押捺された白紙の原産地証明書用紙に,冷凍たこの原産地が特別特恵受益国である旨等を権限なく記入した原産地証明書を使用して輸入申告することにより不正に関税を免れようと企て,共謀の を利用し,証明機関印が押捺された白紙の原産地証明書用紙に,冷凍たこの原産地が特別特恵受益国である旨等を権限なく記入した原産地証明書を使用して輸入申告することにより不正に関税を免れようと企て,共謀の上,被告会社の業務について,法定の除外事由がないのに,別紙犯罪事実一覧表記載のとおり,平成8年6月18日から平成11年12月22日までの間,合計281回にわたり,冷凍たこを輸入するに際し,東京都大田区東海d丁目e番f号東京税関大井出張所ほか4か所において,情を知らない通関業者の従業員を介し,東京税関長らに対し,これらの輸入貨物にかかる関税額が合計4億187万1200円であるにもかかわらず,輸入貨物の原産地がいずれも特別特恵受益国であるガンビア共和国ないしはモーリタニア・イスラム共和国であり,これを証明する真正な原産地証明書が存在するので特恵関税制度の適用を受け関税が無税である旨の内容虚偽の輸入申告を行い,その都度,上記各輸入貨物につき,不正に輸入許可を受け,いずれも,そのころ,保税地域からこれらを引き取り,もって,不正の行為により,関税合計4億187万1200円を免れたものである。 (量刑の理由) 1 本件は,被告会社が西アフリカ諸国原産の冷凍たこを輸入するにあたり,虚偽の原産地証明書を使用して輸入申告し,関税を免れた事案である。 本件に係るほ脱額は合計約4億円余りにのぼる高額で,ほ脱率も100%であり,犯行期間も3年6か月と長期にわたるもので,本件は規模が大きく,結果も重大である。 本件犯行の態様は,特別特恵受益国を原産地とする冷凍たこを輸入する場合に原産地証明書を付す等して輸入申告すれば関税が課されない特恵関税制度を利用し,スペイン領カナリア諸島ラスパルマス所在の被告会社駐在員事務所において,あらかじめ,特別特恵受益国である を輸入する場合に原産地証明書を付す等して輸入申告すれば関税が課されない特恵関税制度を利用し,スペイン領カナリア諸島ラスパルマス所在の被告会社駐在員事務所において,あらかじめ,特別特恵受益国であるガンビア共和国又はモーリタニア・イスラム共和国の証明機関の原産地証明書用紙を大量に購入・準備し,輸入の都度多数回にわたり,虚偽の原産地証明書を作成した上,東京の本社において,これを付して我が国の税関に輸入申告を行い,本来支払うべき関税を免れたというものである。このように,犯行の手口は,専門的なノウハウを基に,東京本社とラスパルマス駐在員事務所が緊密な連絡をとって,事前準備から関税を免れるまでの一連の行為を統一的に実行したものであって,組織的かつ計画的な犯行である。また,犯行期間が長期間で,合計281回にも及ぶ多数回にわたって反復累行されたことに照らすと,常習性も顕著である。 本件犯行は,以上のように,開発途上国の経済を発展促進させるための特恵関税制度を被告会社の私益のために悪用したもので,強い非難に値する。加えて,本件が国内のみならず国際的に及ぼした悪影響も看過できない。 2 被告会社は,我が国有数の水産事業会社であることに照らすと,本来十全な管理体制をとって合法的な輸入を推進すべき立場にありながら,十分な監督責任を尽くさなかったため,結果として長期間にわたり本件を容認することになったもので,本件の与えた社会的な悪影響も考慮すると,その刑事責任は重大である。 被告人Bは,本件当時,被告会社水産第2部の幹部で本件冷凍たこを輸入する業務の責任者の立場にあり,部下である他の共犯者らに対して原産地証明書用紙の購入や虚偽の同証明書の作成を直接指示したり,これを利用した本件各輸入申告を指示したもので,本件の主犯である。 同被告人は,虚 者の立場にあり,部下である他の共犯者らに対して原産地証明書用紙の購入や虚偽の同証明書の作成を直接指示したり,これを利用した本件各輸入申告を指示したもので,本件の主犯である。 同被告人は,虚偽の原産地証明書の作成が発覚しないようにラスパルマス駐在員事務所でこれを作成させたり,本件途中で他の共犯者から本件の続行に対する反対意見が出たにもかかわらずこれを押し切って本件を継続させるなどしており,法を遵守する意思の欠如がうかがわれる。また,大手企業が偽造原産地証明書を利用して不正に冷凍たこを輸入している旨の記事が業界紙に載るや,本件の発覚を防ぐため,共犯者や部下に対して本件犯行に係る取引書類等の廃棄などの証拠隠滅工作を行っており,犯行後の情状も芳しくない。以上の諸点に照らすと,被告人Bの刑事責任は重い。 被告人Cは,本件において,被告人Bに次ぐ地位にあり,その指示に従い,部下らに本件輸入申告を行わせたり,通関には使用しなかった正規の原産地証明書を廃棄させるなどしており,被告人Cの果たした役割は重要であり,犯情は悪質である。また,同被告人は,前記業界紙の報道後,被告人Bの指示を受け,部下らに本件に関する書類等の処分を指示するなどしており,これらの諸点に照らすと,被告人Cの刑事責任は軽くない。 被告人Dは,ラスパルマス駐在員事務所の所長の立場にあったときに,部下らに指示して虚偽の原産地証明書を現実に作成させるなどしており,その果たした役割は重要である。また,同被告人が,同事務所の前所長から内容虚偽の原産地証明書を使用しないよう注意を受けていたにもかかわらず本件に及んだことは犯情として芳しくない。なお,同被告人も,前記業界紙の報道後,被告人Bの指示を受けて証拠隠滅工作を行っており,これら諸事情に照らすと,被告人Dの刑事責任も軽視 けていたにもかかわらず本件に及んだことは犯情として芳しくない。なお,同被告人も,前記業界紙の報道後,被告人Bの指示を受けて証拠隠滅工作を行っており,これら諸事情に照らすと,被告人Dの刑事責任も軽視できない。 3 しかしながら,他方で,被告会社については,既に,本件ほ脱に係る関税については,各本税の全額とこれらに対する過少申告加算税等の附帯税を完納していること,被告会社は,東京税関による本件調査等に対し全面的に協力した上,本件発覚後,コンプライアンス委員会の設置,監査部による社内監査の強化等,法令違反の再発の防止に努めていることなどの斟酌すべき事情が認められる。 被告人3名についても,いずれも,本件ほ脱に関して個人としては金銭的利得を得ていないこと,それぞれ,捜査段階から一貫して本件事実関係を認め,当公判廷でも深い反省の態度を示していること,これまで被告会社に真面目に勤務してきたこと,本件逮捕により被告会社から休職処分を受け,保釈後は謹慎していることなどの斟酌すべき共通の事情が認められる。 さらに,個別情状として,被告人Bについては,前科前歴がないこと,扶養を必要とする妻と娘1人がいること,被告人Cについては,被告人Bの指示命令に従って本件犯行を行ったとみられること,交通関係を除き前科前歴がないこと,扶養を必要とする妻と2人の娘がいること,被告人Dについても,被告人Bの指示命令に従って本件犯行を行ったとみられること,日本における前科前歴がないこと,扶養を必要とする妻と子供2人がいることなど,各被告人のために斟酌すべき事情も認められる。 4 そこで,これらの事情を総合考慮し,主文のとおり刑を量定し,被告人3名についてはその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑-被告会社につ る。 4 そこで,これらの事情を総合考慮し,主文のとおり刑を量定し,被告人3名についてはその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑-被告会社につき罰金1億2000万円,被告人Bにつき懲役2年,被告人C及び同Dにつきいずれも懲役1年6か月)平成14年1月16日東京地方裁判所刑事第8部裁判長裁判官池田耕平裁判官佐藤基裁判官富張邦夫
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