- 1 -H13. 2.21 横浜地裁平成11(行ウ)55公文書非公開決定処分取消請求事件◆主文 被告が原告に対して別紙1の一覧表最下段記載のとおり平成11年8月20日付け財用調第155号をもってした公文書一部非公開決定のうちの非公開部分(ただし,平成11年10月26日付け財用調第265号をもってされた公開決定後になお非公開の横浜市財産評価審議会の評価額に係る部分)を取り消す。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用はこれを4分し,その3を原告の負担とし,その1を被告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告が原告に対してした別紙1の一覧表の「公開・非公開決定」欄記載の各一部非公開決定のうちの各非公開部分(ただし,いずれも平成11年10月26日付けの公開決定後になお非公開の部分)を取り消す。 第2事案の概要本件は,横浜市が横浜市土地開発公社をして取得させ又は自ら取得した土地の取得に先立って作成された関係資料について,原告が,文書公開請求をしたところ,被告による一部非公開決定を受けたので,その取消しを求めた事案である。 第3前提となる事実 原告の公文書公開請求と一部非公開決定原告は,横浜市内に住所を有する者であるが「横浜市公文書の公開等に関,する条例(昭和62年横浜市条例52号。平成12年横浜市条例1号により」廃止。以下「旧条例」という)に基づき,被告に対し,別紙1の一覧表左欄。 の「請求文書(以下まとめて「本件文書」という)について,被告に対し」。 - 2 -て,公文書公開請求をしたところ,被告は,同表右欄のとおり,平成11年8月12日,同年7月8日及び同年8月20日付けで,通知番号単位で3つ(通知書単位で5つ)の一部非公開決定を行い,さらにそれぞれの非公開部分の一部につき同年10月26日付けで 欄のとおり,平成11年8月12日,同年7月8日及び同年8月20日付けで,通知番号単位で3つ(通知書単位で5つ)の一部非公開決定を行い,さらにそれぞれの非公開部分の一部につき同年10月26日付けで一部公開の決定(以下これらの全体をまとめて「本件決定」という)をした。 。 なお,原告が公開請求をした文書中には,本訴の対象ではないもの,又は事後的に本訴の対象ではなくなったものがある(これらについては,一覧表における記載を省略する。 。) 旧条例の定め旧条例9条1項は,次のように定められている(以下,条項を省略して,号だけで表示することがある。 。)「実施機関は,請求に係る公文書に次のいずれかに該当する情報が記録されているときは,当該公文書の公開をしないことができる。 2号法人(国及び地方公共団体を除く)その他の団体(以下「法人等」と。 。),いうに関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって公開することにより,当該法人等又は当該個人に明らかに不利益を与えると認められるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア事業活動によって生ずる危害から人の生命,身体又は健康を保護するため,公開することが必要と認められる情報イ法人等又は事業を営む個人の違法又は著しく不当な事業活動によって生ずる支障から市民の生活を保護するため,公開することが公益上必要と認められる情報5号市の内部機関若しくは機関相互又は市の機関と国等の機関との間における審議,検討,調査研究等に関する情報であって,公開することにより,当該審議,検討,調査研究等に支障が生ずると認められるもの6号市又は国等が行う監査,検査,契約,交渉,争訟,試験,職員の身分取- 3 -扱いその他の事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業の目的が損な 障が生ずると認められるもの6号市又は国等が行う監査,検査,契約,交渉,争訟,試験,職員の身分取- 3 -扱いその他の事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業の目的が損なわれると認められるもの,特定のものに明らかに利益若しくは不利益を与えると認められるもの,関係当事者間の信頼関係が損なわれると認められるもの又は当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずると認められるもの7号法令等の定めるところにより,公開することができないと認められる情報」 本件文書の性質と作成経緯(1)市による本件土地の購入ア横浜市(以下「市」ということがある)は,横浜市土地開発公社(以。 下「公社」という)に対し,いすゞ自動車株式会社(以下「いすゞ自動。 車」という)所有の横浜市α所在の土地の取得方を依頼し,公社は,平。 成7年9月7日付けでいすゞ自動車所有の下記の土地(平成7年8月18日分合筆後のもの。以下「A土地」という)を取得した。 。 記横浜市α705番1宅地2万2180.86平方メートルイまた,横浜市は,平成8年3月6日付けで,いすゞ自動車所有の下記の土地(平成7年8月18日分合筆後のもの。以下「B土地」という)を。 取得した。 記同所α705番4宅地1万9000.43平方メートルウなお,当初の予定では,公社取得分は約2万平方メートル,市取得分は約2万1000平方メートルであったが,最終的には公社取得分が約2200平方メートル増えてA土地となり,市取得分がそれだけ減少してB土地となった(弁論の全趣旨。以下,公社の先行取得予定地で約2200平方メートル増える前の土地を「A´土地,市の直接取得予定地で約22」- 4 -00平方メートル減少する前の土地を「B´土地 B土地となった(弁論の全趣旨。以下,公社の先行取得予定地で約2200平方メートル増える前の土地を「A´土地,市の直接取得予定地で約22」- 4 -00平方メートル減少する前の土地を「B´土地」ということがある。 。)(2)市における土地の取得手続横浜市が代金2億円以上の財産を取得することは被告市長の決裁事項とされている(横浜市事務決裁規程3条及び別表1。公社に対して土地の取得)を依頼することは市による財産の取得そのものではないが,先行取得を依頼する旨の方針決定は財産の取得に準ずるものとされている。A土地及びB土地(以下まとめて「本件土地」という)の購入は,これに該当する。 。 また,市では,重要な土地を取得するには,市長決裁に先立ち,横浜市土地利用調整会議(以下「調整会議」という)の審議に付されることとされ。 ている。調整会議は,横浜市土地利用調整会議規程に基づき設置され,市における土地利用に関する基本的事項等を協議・審議することを目的とし,被告の決定を適正にするための補助機関であって,企画局長,財政局長,市民局長,都市計画局長及び建築局長の5委員から構成される。 ,,さらに公有財産の取得の場合における当該財産の価格の決定に際してはあらかじめ横浜市財産評価審議会(以下「評価審議会」という)に諮問す。 るものとされる(横浜市公有財産規則15条。なお,同審議会の会議及び)議事内容は公開しない(横浜市財産評価審議会条例11条1項)とされている。 (3)本件文書の内容・性質,「」(),ア本件文書のうち別紙1の一覧表の請求文書欄の1 の文書は市がA´土地を取得することの方針決定をするのに先立ち,その取得の可否を審議するために平成6年10月6日に開かれた第26回調整会議の審(。 「」。)。 議 の請求文書欄の1 の文書は市がA´土地を取得することの方針決定をするのに先立ち,その取得の可否を審議するために平成6年10月6日に開かれた第26回調整会議の審(。 「」。)。 議資料甲12以下第26回調整会議資料のようにいうであるイ同1(2)の文書は,市が公社からA土地を取得後のことを審議するために平成7年10月4日に開催された調整会議の審議資料(甲13。第35回調整会議資料)である。 - 5 -ウ同1(3)の文書は,A土地及びB土地を合わせた本件土地全体の具体的な利用計画を審議するために平成8年1月24日に開催された調整会議の審議資料(甲14。第37回調整会議資料)である。 (),,エ同21の文書は平成7年4月13日付け被告の決裁文書であるがこれは,いすゞ自動車からA´土地を取得することについての被告の方針(。 「」。)決定に関するもの甲15の4以下A´土地取得方針決裁書というである。 オ同2(2)の文書は,市がB土地を購入することについてされた平成8年3月5日付け被告決裁文書の別紙のうちの用地取得関係内訳書(甲16の2。以下「内訳書」という)並びに同決裁文書添付書類のうちの買取。 価格説明書(甲16の6。以下「買取価格説明書」という)及び評価回。 答書(甲16の7。以下「評価回答書」という)である。 。 本件非公開部分と非公開事由(1)本件非公開部分本件決定における非公開部分(ただし,平成11年10月26日付けの公開決定により一部新たに公開された後になお非公開の部分。以下「本件非公開部分」という)は,大別すると,第26回調整会議資料及びA´土地取。 得方針決裁書中に記載されている「所有者の意向,第35回及び第37回」調整会議資料中に記載されている「未だ検討中の事業内 非公開部分」という)は,大別すると,第26回調整会議資料及びA´土地取。 得方針決裁書中に記載されている「所有者の意向,第35回及び第37回」調整会議資料中に記載されている「未だ検討中の事業内容を記載した部分」並びに内訳書,買取価格説明書及び評価回答書中に記載されている「評価額(単価・総額」の3種類である。 )なお,本件文書と本件非公開部分等の具体的な関係は,被告の平成12年5月24日付け準備書面三添付の書面のとおりである。 (2)本件非公開部分の記載事項及び非公開事由ア「所有者の意向」「所有者の意向」は,本件土地の売主であるいすゞ自動車の意向につい- 6 -ての情報であり,本件決定において,旧条例9条1項2号(法人の財産情報)及び6号(関係当事者間の信頼関係が損なわれる情報)所定の非公開事由に該当するとして,非公開とされた。 イ「未だ検討中の事業内容を記載した部分」「未だ検討中の事業内容を記載した部分」は,市が市民に未だ公表できる段階に至っていない施策や事業についての情報であり,本件決定において,旧条例9条1項5号(審議等に支障を生ずる情報)及び6号に該当するとして,非公開とされた。 ウ「評価額(単価・総額」)「評価額(単価・総額」は,評価審議会による評価額(以下「本件答)申価格」ということがある)であり,本件決定において,旧条例9条1。 (),。 項2号法人に関する情報及び6号に該当するとして非公開とされた 主な争点(1)「所有者の意向」の非公開情報該当性の有無(2)「未だ検討中の事業内容を記載した部分」の非公開情報該当性の有無(3)「評価額(単価・総額(本件答申価格)の非公開情報該当性の有)」無第4争点についての当事者の主張 「所有者の意向」の非公開情報該当性の有無(被告の主 分」の非公開情報該当性の有無(3)「評価額(単価・総額(本件答申価格)の非公開情報該当性の有)」無第4争点についての当事者の主張 「所有者の意向」の非公開情報該当性の有無(被告の主張)(1)2号情報該当性第26回調整会議資料及びA´土地取得方針決裁書に記載された「所有者の意向」は,いずれも土地所有者のいすゞ自動車が調整会議資料等の作成時に市に示した自社の財産に関する考え方を示すものであり,他に知られたくない自社の私的経済活動に伴う財産に関する情報である。いすゞ自動車が本件土地に関して市に示した意向は,市以外の者に示した意向とは- 7 -必ずしも一致しない。特に係争情報は,いすゞ自動車と市以外第三者との間における従前の経緯が当該第三者の実名入りで記載されたものであるから,なおさらである。したがって,いすゞ自動車の意向を被告が公開すると,同社の意に反して同社を対外的に苦しい弁明をしなければならない状況に陥らせ,同社に不利益を与えるおそれがある。よって,係争情報は,2号情報に該当する。 (2)6号情報該当性(1)記載の事情があるので,このような情報を公開することは,いすゞ自動車との信頼関係を損なうおそれがある。 また,成約価格,取引経過に加えて所有者の意向までもが公開されるとなると,買収に応ずる地権者はかなり限定的になる。そのため,将来の同種の事務事業の円滑な執行に支障を及ぼす。 よって,係争情報は6号情報に該当する。 (3)解釈の指針なお,2号は,不利益を与えるおそれ,あるいはその可能性があることが経験則上容易に予想されることを要件としている。また,6号の「支障を及ぼすおそれ」も,経験則上それが容易に予想できればよく,客観的具体的に支障を及ぼすおそれがあることまでを要件とはしていない。この点は,5号該当情報の れることを要件としている。また,6号の「支障を及ぼすおそれ」も,経験則上それが容易に予想できればよく,客観的具体的に支障を及ぼすおそれがあることまでを要件とはしていない。この点は,5号該当情報の解釈及び後記2,3の場面における5,6号の解釈についても同様であり,そこでの記載は省略する。 (4)旧条例7条5項との関係原告は,旧条例7条5項によりいすゞ自動車の意見を徴するべきであった旨を述べるが,同規定は,することができると規定するだけで,義務を定めたものではない。 (原告の主張)(1)2号情報非該当性- 8 -「所有者の意向」欄に記載されるのは,所有者に売却する意思があるこ。 ,と及びその条件以外には考えられないそのようなことが世に知られても売主のいすゞ自動車に明らかに不利益を与えるものではない。被告の主張は,公開すると当該法人に明らかに不利益を与える旨を具体的に説明するものではない。また,被告の主張は法人にプライバシーがあるとの前提に立つが,それは誤りである。地方公共団体と取引をするのは民間人と取引をするのとは異なる。デメリット(複雑な手続を経て,時間を要する。金額設定の柔軟性に欠ける)もあるが,メリット(支払が確実。税制上の。 優遇措置がある)もある。情報公開されることは,相手方にとって容認。 すべき要素である。 よって,係争情報は,2号情報に該当しない。 (2)6号情報非該当性法人にはプライバシーはないと解するべきである。被告は,係争情報の公開は信頼関係を破壊する旨を述べるが,具体的根拠を欠く飛躍した抽象論であり,いすゞ自動車との信頼関係を損なうものではない。第三者についての記載があるならそこだけを黒塗りすればよく,全体を非公開とする理由にはならない。また,被告は,地権者が情報公開を恐れて売却に応じないという事態 動車との信頼関係を損なうものではない。第三者についての記載があるならそこだけを黒塗りすればよく,全体を非公開とする理由にはならない。また,被告は,地権者が情報公開を恐れて売却に応じないという事態が発生するおそれがある旨を主張するが,全くの抽象論である。 よって,係争情報は,6号情報ではない。 (3)解釈の指針2号及び6号に該当するというためには,具体的客観的に主張立証すべきである。ところが,被告の主張は抽象的である。この点は,5号情報の,,,解釈及び後記23の場面における56号の解釈についても同様でありそこでの記載は省略する。 (4)係争情報に第三者に関する情報が記録されているときは,あらかじ- 9 -め当該第三者の意見を聴くことができると規定されている(旧条例7条5項。ところが,被告は,所有者であるいすゞ自動車の意見を徴すること)なく本件決定をしている。これは,係争情報がいすゞ自動車にとってそれほど不利益ではないことを裏付けるものである。 「未だ検討中の事業内容を記載した部分」の非公開情報該当性の有無(被告の主張)(1)6号情報該当性土地の取得・利用についての審議を行う調整会議における審議の結果,保留,不可とされた案件,可とされたが条件の付いた案件は,当初の計画案どおりに事業が進行するものではなく,案としては未成熟な検討段階にある。これに対し,調整会議の委員の意見が方向性について一致し,利用,。 等を可としたものは市民に公表可能な素案となったということができるこの点を第35回調整会議における土地利用に関する審議結果について見ると,同結果は「保留。隣接地を含めた全体の土地利用計画を策定す,ること」となっている。 また,第37回調整会議における土地利用に関する審議結果は「土地,利用については,今後実施する について見ると,同結果は「保留。隣接地を含めた全体の土地利用計画を策定す,ること」となっている。 また,第37回調整会議における土地利用に関する審議結果は「土地,利用については,今後実施する調査や地元協議等の結果を踏まえ対応すること」となっている。このように利用計画につき「可」とする審議結果とはなっておらず,引き続き調査,検討中である。 したがって,調整会議資料の「未だ検討中の事業内容を記載した部分」に該当する記載は,公表できる素案の段階にまで至っていない未成熟な検討段階の情報である。これが公開されると,市民に誤解を与え,無用の混乱を招くおそれが極めて強く,また事業の利害得失にからむ意見調整に支障を来すおそれも無視できないし,周辺土地の先行的売買等の事態を惹起し,特定の者に利益を与える可能性が高く,当該事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障を生ずる。よって,6号に該当する。 - 10 -(2)5号情報該当性第35回及び第37回調整会議における審議,検討は,土地取得後の具体的な利用計画のための審議である。そして,審議の結果,利用計画の素案が作成されず,現在も,審議は引き続き行われている。 よって,上記の情報は,5号情報にも該当する。 (3)原告の主張に対する反論ア原告は,事業が未確定であることを知った市民に要望や意見を述べさせることが民主主義社会における正常な姿である旨主張するが,意思決定がきちんとされていない段階では対応が不適切不統一となり,無用な誤解と混乱を引き起こすおそれがある。 イ原告は,5号の「当該審議,検討」は,本件土地の取得に向けてのものであるところ,本件土地取得後には審議,検討すべきものはない旨を主張する。 しかし,第35回及び第37回調整会議における審議,検討は,土地取得後の具体的な利用計画のための審 土地の取得に向けてのものであるところ,本件土地取得後には審議,検討すべきものはない旨を主張する。 しかし,第35回及び第37回調整会議における審議,検討は,土地取得後の具体的な利用計画のための審議である。 ウまた,原告は,本件土地の取得目的が不確定であり,取得目的不確定の土地の取得と塩漬け度の関係がある旨,係争情報の公開の必要性が高い旨を主張する。 市及び公社が公有地拡大法により土地を取得する場合には,公共施設の用に供するためという程度の取得目的では不十分であるところ,本件土地については,公園等の市民利用施設の用地として,また周辺地域の住環境整備改善や街づくり推進という具体的な取得目的が示されている。したがって,既に明らかになっている範囲内で可能な限り具体的に取得目的を明示するという要請(同法6条,乙4)を満たしている。 未だ検討中の事業内容情報の公開の可否と取得土地の塩漬け化とは関係がない。 - 11 -(原告の主張)(1)6号情報非該当性係争情報は,次のとおり6号情報に該当しない。 ア被告は,係争情報を公開すると,本件土地を利用して行う事業の内容が未だ確定的ではないのに,それをあたかも確定したかのように市民を誤解させる旨を主張する。 しかし,通常人はそれが未確定か確定かは分かる。それを分からせるようにして公開する方法もある。したがって,上記の被告主張事由は,6号情報に該当することの理由とはならない。 イ被告は,係争情報を公開すると,先行的な売買が横行し特定の者に利益若しくは不利益を与えるので,係争情報は6号該当情報であると主張する。その趣旨が,当該情報へのアクセスの遅速をもって利益不利益と考えるというなら、積極的に広報活動をして情報の遅速を生じないようにすればよく,情報を秘匿する理由にはならない。また,被告のいう素案 する。その趣旨が,当該情報へのアクセスの遅速をもって利益不利益と考えるというなら、積極的に広報活動をして情報の遅速を生じないようにすればよく,情報を秘匿する理由にはならない。また,被告のいう素案になってからでも状況は同様であり,取扱いを異にする理由とはならない。したがって,係争情報は6号情報ではない。 ウ本来,民主主義社会では多様な意見が出ることはそれ自体として正常である。市民の要望は・意見等は,市当局の意見が統一される前に聴取されてこそ意味があり,意見調整過程は市民に公開されるべきである。 取得目的の不確定な公共公益的施設用地,代替用地として取得された土地は,その後利用されずに放置される割合(塩漬け度)が高い。このような放漫な土地の取得は,公社による公有地拡大法17条1項1号イ及び同法5条に基づく取得であるが,取得目的の不確定(事業目的の未成熟)なままの土地の先行取得について,そうすべき事情があったかどうかを客観的に判断するためにも,検討中の事業内容を公開すべきである。非公開処分はこのような公益を奪うものであり,違法である。 - 12 -したがって,係争情報が6号情報に該当するとの主張は理由がない。 ,,「」なお市による本件土地の買取目的は公共公益的施設等用地の取得といった程度である。 (2)5号情報非該当性被告は,5号情報に該当する旨を主張するが,本件土地の取得が終了した後は,本件土地の取得に向けての審議,検討に当たるものは残っていないので,5号該当の主張は失当である。また,利用目的が未だ検討中ということは,取得目的を非公開とする理由とはならない。 「評価額(単価・総額」の非公開情報該当性の有無)(被告の主張)(1)6号情報該当性以下のとおり「評価額(単価・総額(本件答申価格)は,6号情報,)」に該 とする理由とはならない。 「評価額(単価・総額」の非公開情報該当性の有無)(被告の主張)(1)6号情報該当性以下のとおり「評価額(単価・総額(本件答申価格)は,6号情報,)」に該当するア評価審議会は,地方自治法202条の3により設置された市の付属機関であり,被告の諮問に応じて地方自治法238条に規定する公有財産の取得,交換,貸付等の場合における価格を評定することを所掌する。 (「」。),諮問に応じて評価審議会が行う評価額以下答申価格というは実際の売買の上限を画すものであり,答申価格と成約価格との間には乖離があり得る。したがって,答申価格を公開すると,成約価格が低廉であった場合にはそのことを売主が知ることになり,売主(本件ではいすゞ自動車)との信頼関係が損なわれる。 イまた,公開すると,答申価格と成約価格との間に乖離があり得ることを知った地権者が,売却価格のつり上げを企図して答申価格の公開を求めることになる。したがって,市としては常に上限を画する価格を示さなければならず,価格交渉に著しい支障を来す。その結果用地取得交渉が著しく難航し,円滑な取得事務の執行に重大な支障が生じる。 - 13 -ウ答申価格は成約価格を決めるためのよりどころとなる価格であり,成約価格が適正かどうかは成約価格を検証することにより可能であるから,答申価格まで公開する必要はない。成約価格の公開についてさえ不満を抱いている地権者は多い。これに加えて答申価格まで公開されると地権者との間の信頼関係が損なわれる。 (2)7号情報該当性評価審議会の会議及び議事内容は公開しないこととされている(評価審議会条例11条1項。したがって,係争情報は,7号情報に該当する。 )(3)原告の主張に対する反論答申価格は,市議会の議決に付すべき財 審議会の会議及び議事内容は公開しないこととされている(評価審議会条例11条1項。したがって,係争情報は,7号情報に該当する。 )(3)原告の主張に対する反論答申価格は,市議会の議決に付すべき財産(2万平方メートル以上かつ),。 1億円以上の土地の取得の審議に際しても審議に提供されてはいないしたがって,議会の審議の場を通じて答申価格が開示されるということはない。この点についての原告の主張は失当である。 (原告の主張)(1)6号情報非該当性以下のとおり,係争情報は,6号情報に該当しない。 ア被告は,答申価格と成約価格との間に乖離があるとの情報が事務の支障となる旨を主張する。 しかし,乖離を秘匿する利益は本来保護の対象とはならない。また土地の価格は法人の情報ではない。仮に該当するとしても,その公開が法人の競争上の地位その他正当な利益を客観的かつ明白に害するおそれがあるということはあり得ない。 イ被告は,成約価格が答申価格より低廉であることが売主に分かると市との信頼関係が損なわれる旨を主張する。 しかし,いすゞ自動車程の企業は被告の提示価格の言いなりになることはない。成約価格が低かったことが判明しても信頼関係は損なわれな- 14 -い。 ウ被告は,一般的に他の地権者から答申価格の公開を迫られることの支障がある旨を主張する。 しかし,保護に値する客観的な具体的な信頼関係が損なわれるかが要件であると解すべきところ,そのような意味での信頼関係の破壊のおそれはない。 エまた,被告は,交渉中に答申価格を公開することを迫られ,答申価格での契約(上限での契約)をせざるを得なくなり,最小経費で最大効果をあげることを定める地方財政法の趣旨に反すると主張する。しかし,答申価格について事後に公開しても,事前公開をしなければ事務の支障は生じない (上限での契約)をせざるを得なくなり,最小経費で最大効果をあげることを定める地方財政法の趣旨に反すると主張する。しかし,答申価格について事後に公開しても,事前公開をしなければ事務の支障は生じない。そもそも上限価格と成約価格との乖離があるということ自体及びこれにより交渉が長期化すること自体が経費の無駄を招く。 (2)7号情報非該当性被告は,評価審議会による評価額(本件答申価格)が同審議会条例11条1項を理由に非公開と主張するが,審議会の会議及び議事内容は非公開とすると規定しているのであり,審議会の答申をこれを根拠に非公開とすることはできない。 ,,,なお本件答申価格は公開された見込価格から判明するのであるから本件答申価格を非公開とする実益はない。 (3)本件答申価格の公開の必要性アまた,2万平方メートル以上の土地を取得する場合には議会の議決を要するから,このような規模の土地の答申価格については議会の議決を通じて公開される性質がある。したがって,それ以下の広さの土地の取得についても公開されるべきである。 イ新条例においては,公益性との比較衡量において非公開事由を判定すべき旨が定められているから,旧条例においても同様な手法で解釈すべ- 15 -きであり,それによれば,公益性の高度に高い係争情報の公開が認められるべきである。 第5争点についての当裁判所の判断(証拠等により直接認められる事実については,主な証拠等を当該事実の前後に記載する。争いのない事実及び一度認定した事実は,原則として,その旨を断らない。書証の成立は弁論の全趣旨により認められる)。 「所有者の意向」の非公開情報該当性の有無(1)係争情報の趣旨,性質ア「所有者の意向」は,第26回調整会議資料及びA´土地取得方針決裁書に記載された情報である。 イ り認められる)。 「所有者の意向」の非公開情報該当性の有無(1)係争情報の趣旨,性質ア「所有者の意向」は,第26回調整会議資料及びA´土地取得方針決裁書に記載された情報である。 イまず,調整会議であるが,これは,横浜市土地利用調整会議規程に基づき設置され,市における土地利用に関する基本的事項等を協議・審議することを目的とする会議体で,市が重要な土地を取得する際に被告(市長)決裁に先立ち,その決定を適正にするための審議をする。5局長の委員から構成される。 第26回調整会議は,市が公社にA´土地の取得依頼をするとの方針決定をするのに先立ち,その取得の可否を審議するために平成6年10月6日に開かれた会議である。 第26回調整会議の審議資料(甲12)には「1事業名」欄に「公,共公益的施設等用地の取得(いすゞ自動車(株)パーツセンター敷地」)と「5所有者とその意向等」欄に「東京都品川区南大井6丁目26番,地1号いすゞ自動車株式会社」とあり,その後の記載部分が公開決定文書(甲12)においてはマスキングされている。係争情報は,この本件非公開部分に記載の情報であり,内容的には,いすゞ自動車と市以外の第三者との間における従前の経緯が当該第三者の実名入りで記載されている(被告主張)とのことである。 - 16 -ウ次に,A´土地取得方針決裁書(甲15の4)であるが,これは,平成7年4月13日付け被告の決裁文書であり,いすゞ自動車からA´土地を取得することについての被告の方針決定に関するものである。 決裁文書の標題は「α所在土地の公共公益的施設等用地としての取得,について「特記事項方針決定」とされ「4その他(2)取得面」,積の考え方」欄に「当初は約半分を取得することで土地利用調整会議(第26回平成6年10月6日開催 益的施設等用地としての取得,について「特記事項方針決定」とされ「4その他(2)取得面」,積の考え方」欄に「当初は約半分を取得することで土地利用調整会議(第26回平成6年10月6日開催)に付議したところ,残地の取得についても検討するよう条件が付されました。いすゞ自動単側も……との内諾を得ています」とあり,上記点線部分が公開決定文書においてはマスキングされている(甲15の4。係争情報は,同マスキング部分の情報であり,)そこには,いすゞ自動車の第三者(実名)に対する土地売却に関する検討経過と起案時点でのいすゞ自動車の土地に関する意向が記載されている(被告の主張)とのことである。 (2)2号及び6号の趣旨係争情報が非公開情報に該当するかどうかの前提問題として,旧条例9条1項の規定に関し,被告は,その2号については,不利益を与えるおそれ,あるいはその可能性があることが経験則上容易に予想されることを要件としているものであり,同6号の「支障を及ぼすおそれ」も,経験則上それが容易に予想できればよい旨を主張する。これに対し,原告は,客観的具体的に支障を及ぼすおそれがあることを要する旨を主張する。 該当する規定文言は「公開することにより,当該法人等に…明らかに不,利益を与えると認められるもの(2号)及び「公開することにより,…,」特定のものに明らかに利益若しくは不利益を与えると認められるもの(6」号)とされており「明らかに」という文言が付加されていること等に照ら,し,主観的に不利益が生ずるということでは足りず,客観的に不利益を生ずる場合でなければならないと解される。 - 17 -なお,以上の趣旨は「明らかに」という文言がない5号及び6号の「支,障が生ずると認められるもの」の解釈並びに後記2以下で問題となる場合においても同様 合でなければならないと解される。 - 17 -なお,以上の趣旨は「明らかに」という文言がない5号及び6号の「支,障が生ずると認められるもの」の解釈並びに後記2以下で問題となる場合においても同様であると解される。 (3)係争情報の2号情報該当性の有無「所有者の意向」情報の内容は(1)のとおりである。このように自社,所有地を市に売却する際の資料中に,従前自社が第三者と当該土地の売買についての交渉があり,その経緯となることが当該第三者の実名入りで記載されている場合において,当該情報が文書公開請求により請求者に開示されることは,一般的には,売主にとって極めて迷惑なことであると解される。企業活動にもみだりに公にされたくなく,かつそれが社会通念上是認されるという情報もあり,それは,2号にいう「不利益を与えると認められるもの」に該当すると解される。 (4)係争情報の6号情報該当性の有無そして(3)のような不利益をもたらす係争情報が公開されると,いす,ゞ自動車が第三者との関係において不都合が生ずることもあり,それらのことからいすゞ自動車と被告との信頼関係が損なわれると認められるということができる。 また,売買に関する情報として,成約価格等の客観的事項とは別に所有者の意向という主観的要素が公開されるとなると,地権者の中には,そのことを嫌い,場合によっては,買収自体に消極的になることすらあるかもしれない。とりわけ,本件係争情報のように実名入りの第三者との交渉に関する情報の公開となると,買収への協力度合いが低下する懸念も相当程度あると考えられる。そのため,係争情報(第三者の実名入り交渉経緯を含む所有者の意向)を公開すると,将来の同種の事務事業の円滑な執行に支障を及ぼす。 ,,。 以上の点から係争情報は6号情報に該当するといわなければならない ため,係争情報(第三者の実名入り交渉経緯を含む所有者の意向)を公開すると,将来の同種の事務事業の円滑な執行に支障を及ぼす。 ,,。 以上の点から係争情報は6号情報に該当するといわなければならない(5)原告の主張について- 18 -ア原告は「売主の意向としては,売却意思と売却条件以外には考えられ,ないので,係争情報は同社に明らかに不利益を与えるものではなく,被告の主張は不利益を与える旨を具体的に説明するものではない。法人にはプライバシーはない。第三者についての記載があるならそこだけを黒塗りすればよい」等と主張する。 。 しかし,係争情報は,公開することが通常反対又は懸念される事項である。また,第三者の実名だけをマスキングしても,交渉内容の記載部分から第三者が判明することが懸念されるし,交渉内容自体も公にされたくないもので,かつ,そのことが社会通念上是認される。よって,原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,係争情報に第三者に関する情報が記録されているときは,あらかじめ当該第三者の意見を聴くことができると規定されているにもかかわらず,被告は,A´土地の所有者であるいすゞ自動車の意見を徴していない旨を指摘する。 ,,しかしそのようにいすゞ自動車から意見を徴していないことをもって係争情報がそれほどいすゞ自動車に不利益でないということはできない。 上記意見を徴していないことは,係争情報の非公開情報該当の判断を左右するものではない。 「未だ検討中の事業内容を記載した部分」の非公開情報該当性の有無(1)係争情報の趣旨,性質ア「未だ検討中の事業内容を記載した部分」は,第35回及び第37回調整会議資料に記載された情報である。 第35回調整会議資料(甲13)は,市が公社からA土地を取得した後の具体的利用計画につき審議 ア「未だ検討中の事業内容を記載した部分」は,第35回及び第37回調整会議資料に記載された情報である。 第35回調整会議資料(甲13)は,市が公社からA土地を取得した後の具体的利用計画につき審議するために平成7年10月4日に開催された調整会議の審議資料である。同資料の内容は,被告作成の別紙2のとおり,。 ,であり一部にマスキング箇所があるそのマスキング箇所の記載事項は- 19 -別紙2にそれぞれ記載のとおりである。結局,いずれも検討中の事業の内容又はそれをうかがわせる情報である。 ところで,調整会議は,提出された計画案について行うかどうかの決定をするのではなく,5つの局の所管事業について事前調整を行うことを目的としている。第35回調整会議の結果は「保留。隣接地を含めた全体,の土地利用計画を策定すること」となった。したがって,上記資料(マスキング部分のないもの)は,利用計画案として同審議会に提出されたものの,調整済みにまで至らなかったばかりか,やり直しに近いことを求められたのである(乙7,証人a)。 イ次に,第37回調整会議資料(甲14)は,本件土地全体の具体的な利用計画を審議するために平成8年1月24日に開催された調整会議の審議資料である。同資料の内容は,被告作成の別紙3のとおりであり,一部にマスキング箇所がある。そのマスキング箇所の記載事項は,別紙3にそれぞれ記載のとおりである。いずれも検討中の事業の内容又はそれをうかがわせる情報である。 そして,第37回調整会議における土地利用に関する審議結果は「土,地利用については,今後実施する調査や地元協議等の結果を踏まえ対応すること」となった。したがって,調査及び地元との協議を待たなければ何とも言えないという結果であり,その後調整会議には新たな提案はなく,全体利用計画のため 実施する調査や地元協議等の結果を踏まえ対応すること」となった。したがって,調査及び地元との協議を待たなければ何とも言えないという結果であり,その後調整会議には新たな提案はなく,全体利用計画のための策定案準備中という状態にある(乙7,証人a)。 (2)係争情報の5号及び6号情報該当性の有無係争情報は(1)のとおり,調整会議に提出された土地利用についての,計画案ではあるが,同計画案について,およそ調整をする段階に至らず,白紙に近い状態にあるから,これが留保なしに公開されると,その情報の扱いが正確でないと混乱を来す可能性が高い。もちろん,未調整の計画案として公開されれば,少しは,誤解も少なくなるであろうが,それでも,いずれ計- 20 -画案のとおりに承認されると理解する者も少なからずあろう。計画案が変更されない可能性の程度が客観的にどの位あるか不明な上,その可能性の程度の理解の仕方が千差万別となると予想される。詳細な説明や質疑応答の機会でもない限り,情報を多数の人に正確に捉えることは不可能に近いと思われる。 そうすると,このような性質の情報を公開することには,慎重とならざるを得ない。すなわち,係争情報を公開することにより,当該事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずると認められる(6号)というのが相当である。また,公開することにより,当該審議,検討,調査研究等に支障が生ずると認められる(5号)というべきである。 (3)原告の主張についてア原告は,係争情報が未確定か確定かは通常人において判断することができる旨,またそれを分からせるようにして公開する方法もある旨を主張する。 しかし(1)のとおり,係争情報は,客観的には極めて成熟度の低い,情報である。したがって,文書公開請求による方法であっても,それを公開すること自体 せるようにして公開する方法もある旨を主張する。 しかし(1)のとおり,係争情報は,客観的には極めて成熟度の低い,情報である。したがって,文書公開請求による方法であっても,それを公開すること自体で誤解を招く危険を多分にはらむ。係争情報の不確定性及びその扱いについての注意を詳しく付しても,その方法に限界があるし,情報の一人歩きの危険は常に伴う。すなわち,全く計画案どおりにならない可能性の高い情報であることを留保しても,その可能性に自分なりの理解を加え,特に約4万1000平方メートルの規模の敷地における事業がどのように展開されるかということになると,種々の利害見込みから,種々の行動に出る通常人が少なからずあると予想される。したがって,係争情報の扱いがもたらす誤解を防ぐことには限界があるといわざるを得ない。原告の主張は採用できない。 イ原告は,係争情報を積極的に広報活動をして情報の遅速を生じないよう- 21 -にすればよい旨も主張する。しかし,実質的な内容のない情報を広く公示すれば,情報がもたらす混乱の程度が高まるだけであり,これにより係争情報の6号情報該当性を防ぐことはできない。 ウ原告は,本来,民主主義社会では市民の要望・意見等は,市当局の意見が統一される前に聴取されてこそ意味があり,意見調整過程は市民に公開されるべきである旨,取得目的の不確定(事業目的の未成熟)なままの土地の先行取得については,そうすべき事情があったかどうかを客観的に判断するためにも,検討中の事業内容を公開すべきである旨を主張する。 もちろん情報公開により得た情報を利用して原告主張のような目的の実現を図ることができる場合もあろう。しかし,情報公開制度は,文書に記載された情報だけを請求という方法により一方的に取得するものであり,情報の十分な理解を得にくいという限 して原告主張のような目的の実現を図ることができる場合もあろう。しかし,情報公開制度は,文書に記載された情報だけを請求という方法により一方的に取得するものであり,情報の十分な理解を得にくいという限界があるから,原告主張の目的を実現するための手段としては適切でない点もある。のみならず,本件における係争情報を公開することにより(2)のとおりの弊害も生ずる。原告主張の目的は,意見交換をし,その場で分からないことを問い質したり,誤解を解くための説明を加えたりする方法を用いることのできる別途の場において実現するのが適当である。そのため非公開事由がある場合には,情報公開制度によっては原告主張の成果が得られなくなるが,それはやむを得ないことである。そのことをもって,非公開情報の解釈を誤ったということはできない。 本件答申価格の非公開情報該当性の有無(1)係争情報の趣旨,性質本件答申価格は,内訳書,買取価格説明書及び評価回答書中に記載されている情報である。そして,内訳書,買取価格説明書及び評価回答書は,市がB土地を購入することについてされた平成8年3月5日付け被告決裁文書の別紙のうちの文書の一部及びその添付書類の一部である(甲16の1から- 22 -8。 ),,元来公有財産を取得する場合における当該財産の価格の決定に際してはあらかじめ評価審議会に諮問するものとされる(横浜市公有財産規則15条。評価審議会は,諮問に応じて購入すべき財産の価格を評価して答申す)る。本件答申価格は,このようにして答申された価格であり,決裁文書(甲16の1から8)には,本件答申価格がいくつかの別紙文書あるいは添付書類中の箇所に記載され,その部分がマスキングされている。 ところで,被告によるB土地を含む本件土地の購入は本件決定時には終了しているから,係争情報 には,本件答申価格がいくつかの別紙文書あるいは添付書類中の箇所に記載され,その部分がマスキングされている。 ところで,被告によるB土地を含む本件土地の購入は本件決定時には終了しているから,係争情報はB土地の購入価格の算出基礎となった過去の金額である。したがって,係争情報が(6)号情報に該当するかどうかという争点は,係争情報の事後開示が非公開事由となるかという問題である。 (2)係争情報の6号情報該当性の有無ア価格の乖離の公開による事務の支障の有無(ア)被告は,答申価格の事後の公開により,答申価格と成約価格との乖離があったことが売主に知られるところとなり,売主との信頼関係を損なう旨を主張する。もともと市は答申価格以上の価格で買い取ること,(,ができないので答申価格は契約代金の上限を画す役割を果たす乙8証人b。そこで,成約価格が上限価格より低廉であった場合には,売)主が,低廉に売らされた旨を事後に知って,市に対し不信感を抱くというのが上記被告の主張の趣旨である。 ,,しかし成約価格が答申価格より低廉となり得ることを知っていれば結果的に成約価格が低くても,可能性が現実化しただけで,売主は別に不信感を持つとは思えない。反対に,もし,成約価格が答申価格より低廉であり得ることを地権者が知らなかった場合において,現実の成約価格が答申価格より低廉であったことを知ったときは,地権者は市に対して不信感を抱く可能性がある。特に,売主が駆け引きや交渉が下手で,- 23 -市がいう価格だから適正なのであろうと信じて,あるいはそもそも市の申出価格に交渉の余地があるなどとは考えもせずに,申出価格どおりに売却した場合において,事後に答申価格まで成約価格を上げる交渉をする余地があったことを初めて知らされれば,市の担当者に対する不信感には大きいも 交渉の余地があるなどとは考えもせずに,申出価格どおりに売却した場合において,事後に答申価格まで成約価格を上げる交渉をする余地があったことを初めて知らされれば,市の担当者に対する不信感には大きいものがあり得る。 (イ)本件土地の売主であるいすゞ自動車は,著名な営利法人であり,約4万1000平方メートルの広さの本件土地を高額で売却するというのであるから,税務知識はもとより答申価格と成約価格との関係についても掌握した上で価格交渉をしたものと経験則上認められる。そうとすれば,本件答申価格が事後に公開され,成約価格が本件答申価格より低廉であったことがいすゞ自動車に判明したとしても,市の担当者が虚偽の事実に基づく交渉をしていたといったことでもない限り,いすゞ自動車は,市に対して不信感を抱くことはないであろう。 (ウ)そうすると,事後公開による信頼関係の喪失が問題となり得るのは,B土地の売主のいすゞ自動車ではなく,将来の売主となる一般的な地権者との関係である。すなわち,上記両価格に乖離があり得ることを知らない地権者が将来自身の土地を売却した場合において,事後的に答申価格を文書公開により知って,成約価格が答申価格より低廉であると気付いたときには,市に対して不信感を抱くことになる。そこで,被告は,このような事態を防がないと買受事務に支障を来すこととなると主張する。 この議論は,両価格に乖離があり得るという事実を知らない売主について,その知らない状態のままにしておくというものである。しかし,まず,それが果たして正当な態度として是認されるか自体に問題を感じる。すなわち,両価格に乖離があり得ることが知られると,買受事務の実施が困難かというと,そうとも断言できないように思われる(イ)。 - 24 -の例のようにむしろ知って貰えば,もともとあり得た乖離 る。すなわち,両価格に乖離があり得ることが知られると,買受事務の実施が困難かというと,そうとも断言できないように思われる(イ)。 - 24 -の例のようにむしろ知って貰えば,もともとあり得た乖離が顕在化しただけであるから,不信感を抱くことにはならないからである。反対に,乖離があり得ることを知らない者をその状態のままにしておくことは,何も知らずに市からの申出価格どおりで成約する地権者と市との交渉をねばり強く行い答申価格一杯で成約する地権者との2類型の売主を是認することであるが,その両者の成約価格に差が生じることには,いささか問題もあるのではないかと思われる。被告の担当者の中には,答申価格が公開されない方が,買受事務の支障が生じないと感じている者があ,,るかもしれないがそのような事務支障のおそれは主観的なものであり保護に値する支障とは認められない。そうすると,土地の買受事務に極めて多くの困難が伴うであろうことを考慮しても,本件答申価格を文書公開請求に伴い事後的に公開することにより,市の買受事務に新たな客観的な支障が加わるとはいえない。 イ答申価格の事前公開へのこだわりによる事務の支障の有無被告は,答申価格を公開すると,将来地権者が自己の土地についての答申価格の公開を求め,答申価格一杯での買受けにしか応じないとの態度をとるようになり,事務の支障が生じる旨を主張する。 しかし,公開を認めることになっても,それは答申価格の事後公開であって,事前公開ではない。そこで,上記のような態度をとる地権者に対しては,答申価格の事前公開は認められない旨を述べて断固これを拒絶することその他の方法を被告において工夫すればよい。もともと土地の買受事務には困難があろうが,答申価格の事後公開により新たな事務の支障が加わるというものではないと解される。 ウ べて断固これを拒絶することその他の方法を被告において工夫すればよい。もともと土地の買受事務には困難があろうが,答申価格の事後公開により新たな事務の支障が加わるというものではないと解される。 ウ答申価格の事後公開の恐れによる信頼関係喪失の有無被告は,成約価格の公開についてさえ不満を抱いている地権者は多いので,これに加えて答申価格まで公開されると地権者との間に信頼関係が損- 25 -なわれる旨を主張する。 一般に地権者が買収に応じるかどうかを決定する要素として重要なものは,当該土地保有への強いこだわりの事情があるかどうか,買収価格が高額かどうかであると考えられる。そして,租税特別措置が施され,売却に伴う譲渡所得税について特別控除があるためその税負担が低く,私人に売却する場合と異なり,仲介手数料及び不動産登記手数料の負担の心配もないので,市からの買収に応ずることは,売主にとっては価格面で多少は有利であるといえる。したがって,買収価格や答申価格が公開されないことを条件に地権者が買収に応ずるものとは考えられず,答申価格の事後公開により地権者との信頼関係が損なわれるわけではないと解される。 エしたがって,係争情報は,6号情報とは認められない。 (3)係争情報の7号情報該当性の有無被告は評価審議会の会議及び議事内容は公開しないこととされている横,(浜市財産評価審議会条例11条1項)から,係争情報は,7号情報に該当する旨を主張する。 しかし,上記規定の趣旨は,自由闊達な審議を担保する趣旨から設けられたもので,会議中の審議過程を逐一公開しないとする趣旨と解される。このような趣旨からも「会議結果」を公開しないとの文言が使用されていない,ことからも,会議の結果あるいは結論についてまで,非公開とする旨を定めたものとは解されない。元来,評価審議 趣旨と解される。このような趣旨からも「会議結果」を公開しないとの文言が使用されていない,ことからも,会議の結果あるいは結論についてまで,非公開とする旨を定めたものとは解されない。元来,評価審議会は,被告の諮問に応じて地方自治法238条に規定する公有財産の取得,交換,貸付等の場合における価格を評定することを目的とする会議体である(乙5の2条)から,その目的の実現となる答申価格については,明示の除外規定でもない限り,安易にこれを非公開とする旨の解釈をすべきではない。 したがって,係争情報は,7号情報とは認められない。 結論 - 26 -よって,本件決定のうち,本件答申価格を非公開とした部分は理由がないから,これを取消し「所有者の意向」及び「未だ検討中の事業内容を記載した,」,。 部分の非公開決定部分は理由があるのでその取消請求は棄却すべきであるよって,原告の請求を上記の限度で認容し,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官岡光民雄裁判官窪木稔裁判官家原尚秀
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