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(原審・東京地方裁判所平成7年(ワ)第15435号(原審言渡日平成10年3月23日)) 主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。事実及び理由 第一控訴の趣旨一原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。二被控訴人らの請求をいずれも棄却する。第二事案の概要一事案の骨子本件は、控訴人の開設する東邦大学医学部付属大橋病院(以下「控訴人病院」という。)の新生児室内のコット(新生児用ベッド)に出生から3日後にうつ伏せ寝で寝かせられていた際に、呼吸停止、心停止状態に陥り、低酸素脳症となって重度の脳性麻痺の障害を後遺し、約7か月後、この障害の下で死亡したCの両親である被控訴人らが、控訴人に対し、Cが呼吸停止、心停止状態に陥り、結局死亡したのは、控訴人及び控訴人病院新生児室付き助産婦の注意義務違反が原因であると主張して、不法行為又は債務不履行を理由に損害賠償を請求する事案である。二基礎的事実関係(証拠を掲げていない事実は争いがない。) 1 被控訴人Aは、Cの父であり、被控訴人Bは、Cの母である。2 控訴人は、総合病院である控訴人病院を開設しており、被控訴人らは、平成6年8月15日、控訴人との間において、被控訴人Bが控訴人病院で出産をすることについて診療契約を締結した(弁論の全趣旨)。3 Cは、平成7年1月5日午前5時43分(以下、年月日の記載については、「平成7年」の記載を省略することがある。)、控訴人病院の産婦人科において、被控訴人A及び被控訴人Bの二男として出生した。出生時に、Cに異常はみられず、出産自体も順調であった。また、Cの出生後の成育状況は良好で、ミルクをよく飲み、排便もスムーズで、泣き声も大きかった。4 事故の発生(一) 控訴人病院新生児室付きの助 に、Cに異常はみられず、出産自体も順調であった。また、Cの出生後の成育状況は良好で、ミルクをよく飲み、排便もスムーズで、泣き声も大きかった。 産婦人科において、被控訴人A及び被控訴人Bの二男として出生した。出生時に、Cに異常はみられず、出産自体も順調であった。また、Cの出生後の成育状況は良好で、ミルクをよく飲み、排便もスムーズで、泣き声も大きかった。4 事故の発生(一) 控訴人病院新生児室付きの助 に、Cに異常はみられず、出産自体も順調であった。また、Cの出生後の成育状況は良好で、ミルクをよく飲み、排便もスムーズで、泣き声も大きかった。4 事故の発生(一) 控訴人病院新生児室付きの助産婦である看護婦のE(以下「E 助産婦」という。)は、平成7年1月8日午前5時40分ころ (甲第9、第25)、Cに腹満を認め、授乳室に隣接する新生児室内のコット(新生児用ベッド)の中にCをうつ伏せ寝で寝かせた。(二) 被控訴人Bが、同日午前6時25分ころ、Cに授乳するために新生児室に赴いたところ、Cは、コット内において、呼吸停止、 心停止状態となっていた(以下「本件事故」という。)ため、控訴人病院の医師らにより蘇生措置が施され、Cの心臓機能、呼吸機能が回復した。(三) Cは、蘇生措置により一命を取り留めたものの、低酸素脳症となり、重度の脳性麻痺の障害を後遺し(甲第2、第3、第9、第 24)、平成7年8月9日午前8時24分、気道分泌物による窒息により、控訴人病院において死亡した(甲第1、第32、弁論の全趣旨)。5 Cの財産権は、被控訴人らが2分の1ずつ相続した(甲第1、弁論の全趣旨)。二争点及び争点についての当事者の主張【争点1】Cが平成7年1月8日に呼吸停止、心停止状態となったのは、窒息したためか、それとも未然型乳幼児突然死症候群(abortive SIDS)ないし乳幼児突発性危急事態(ALTE)によるものか。(一) 被控訴人らの主張(1) Cは、控訴人病院におけるうつ伏せ寝の際の枕等による鼻口部圧迫による酸素欠乏状態と、これにより惹起された吐乳、吐乳誤嚥という一連の機序により窒息し又はうつ伏せ寝の際の枕等による鼻口部圧迫ないし閉塞により吐乳誤嚥前に既に窒息し、これらの結果、呼吸停止、心停止状態となっ 素欠乏状態と、これにより惹起された吐乳、吐乳誤嚥という一連の機序により窒息し又はうつ伏せ寝の際の枕等による鼻口部圧迫ないし閉塞により吐乳誤嚥前に既に窒息し、これらの結果、呼吸停止、心停止状態となった。上記機序については、甲第12(M教授の研究結果を転載した文献)のほか、甲第23、第32、第58、第60、第74、第76、第78等の数多くの証拠によって裏付けられている。 果、呼吸停止、心停止状態となっ 素欠乏状態と、これにより惹起された吐乳、吐乳誤嚥という一連の機序により窒息し又はうつ伏せ寝の際の枕等による鼻口部圧迫ないし閉塞により吐乳誤嚥前に既に窒息し、これらの結果、呼吸停止、心停止状態となった。上記機序については、甲第12(M教授の研究結果を転載した文献)のほか、甲第23、第32、第58、第60、第74、第76、第78等の数多くの証拠によって裏付けられている。(2) 乳幼児突然死症候群の定義は、甲第61、乙第9記載のとおり、厚生省心身障害研究乳幼児突然死症候群研究班によって平成6年に変更され、「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況および剖検によってもその原因が不詳である乳幼児に突然の死をもたらした症候群」と定義されており、未然型乳幼児突然死症候群という診断名は廃止されている。控訴人の主張する乳幼児突然死症候群及び未然型乳幼児突然死症候群は、そもそもその定義自体からして誤りである。本件では、発見時の状況によっても、また、解剖結果によっても、不適当な条件下でのうつ伏せ寝が心肺停止に寄与していることが明らかであるから、この寄与が明確に否定されない限り、乳幼児突然死症候群等の診断名を付することはできない。(3) 乙第25の1(N教授の鑑定書)は、要するに、新生児は窒息を回避する能力があるので窒息しないというものにすぎず、前記甲号各証に照らし、重視されるべきものではない。(4) 当審における鑑定人Oの鑑定(以下「本件鑑定」という。)の結果については、前提事実の把握について誤認や根拠に基づかない断定があり、それらに基づいて推論したものにすぎないから、重視されるべきものではない。(二) 控訴人の主張(1) E助産婦は、証人Eの証言のとおり、1月8日午前5時40分ころにはCに授乳していない。同助 、それらに基づいて推論したものにすぎないから、重視されるべきものではない。(二) 控訴人の主張(1) E助産婦は、証人Eの証言のとおり、1月8日午前5時40分ころにはCに授乳していない。同助産婦がCをうつ伏せ寝にしたのは、直前の授乳から約1時間40分後においても、授乳時に認めた腹満が変わらなかったため、ミルク嘔吐の可能性を否定できず、その誤嚥の危険もあり得ないわけではないと考えたからである。証人Fの証言や甲第27によっては、証人Eの上記証言を排斥することはできない。 い。(二) 控訴人の主張(1) E助産婦は、証人Eの証言のとおり、1月8日午前5時40分ころにはCに授乳していない。同助産婦がCをうつ伏せ寝にしたのは、直前の授乳から約1時間40分後においても、授乳時に認めた腹満が変わらなかったため、ミルク嘔吐の可能性を否定できず、その誤嚥の危険もあり得ないわけではないと考えたからである。証人Fの証言や甲第27によっては、証人Eの上記証言を排斥することはできない。また、哺乳記録(甲第8の3)に午前5時40分ころの授乳の記録がないのは後に記載する予定であったという原判決の認定は、何の証拠もない原判決の創作である上、看護記録(甲第25の89丁裏)及び診療録(甲第9の4丁裏)に、午前4時にミルクを与えた旨が記載されているのに、午前5時40分には腹臥位との記載があるのみであることからすれば、午前5時40分には授乳していないことが明らかである。(2) E助産婦が本件事故を発見した際、バスタオル及び毛布は、Cの肩にまでしか掛けられていなかったし、Cの顔はやや曲がった状態で、鼻や口は横を向いていたので、窒息の危険性はなかった。(3) 次のとおり、Cには、吐乳の事実はないので、うつ伏せ寝が呼吸停止、心停止の原因であるとは認められない。(ア) 新生児が吐乳した場合には、溢乳し、新生児の口鼻周辺や枕辺りにミルクの付着が認められるのが通常である。このことは、うつ伏せ寝であればなおさらのことである。しかし、Cが心肺停止の状態で発見された際、コット内やCの口鼻周辺はもとより口腔内にも、ミルクの付着等、嘔吐の形跡は認められなかった。(イ) うつ伏せ寝の場合、吐物は、下に位置する口から出るはずで、位置的に上方になる気管に入ることはまずない Cの口鼻周辺はもとより口腔内にも、ミルクの付着等、嘔吐の形跡は認められなかった。(イ) うつ伏せ寝の場合、吐物は、下に位置する口から出るはずで、位置的に上方になる気管に入ることはまずない。(ウ) 甲第21、第65、第72、乙第19、第23等によれば、新生児でも、手を動かしたり、頭を上げたり、顔の向きを変えたりする能力を有しているので、仮に鼻口部が圧迫、閉塞されれば、自分で手を動かしたり、頭を支えたり、頭の位置を変えたり、顔を横向きにするなどして、窒息を回避することができる。したがって、窒息と判断するには、なぜCがこのような窒息の回避行動をとらなかったかを明らかにする必要がある。 い。(ウ) 甲第21、第65、第72、乙第19、第23等によれば、新生児でも、手を動かしたり、頭を上げたり、顔の向きを変えたりする能力を有しているので、仮に鼻口部が圧迫、閉塞されれば、自分で手を動かしたり、頭を支えたり、頭の位置を変えたり、顔を横向きにするなどして、窒息を回避することができる。したがって、窒息と判断するには、なぜCがこのような窒息の回避行動をとらなかったかを明らかにする必要がある。(エ) Cのような新生児であっても、吐物を誤嚥しそうになれば、防御機構が働き、反射的にこれを止めようとする(咳き込むなどにより、気管内に入らないようにする。)ため、誤嚥の可能性自体低いし、窒息するほどの大量の気管内吸引は通常起こらない(これは、睡眠中でも同じである。なお、窒息するほどの吐物誤嚥が起こり得るのは、深麻酔下や意識障害時などの中枢神経抑制状態にある場合などである。)。しかも、窒息するほどの気管内吸引があったのであれば、Cは暴れたりするなどの不穏な体動を示し、新生児集中治療室(以下「NICU室」という。)にいたE助産婦がこれに気付くはずであるし、新生児であっても、身体の位置が移動したり、掛けられた布団にその痕跡が残ったりするであろうし、着衣にも異常が認められるはずである。ところが、本件においては、 E助産婦は、そのような異常を全く認めていない。(オ) 気管内挿管終了後、直ちにCの胸腹部のレントゲン写真が撮影されているが、このレントゲン写真及びその後に撮影されたレントゲン写真によっても、Cにミルク誤嚥による窒息状態を窺 めていない。(オ) 気管内挿管終了後、直ちにCの胸腹部のレントゲン写真が撮影されているが、このレントゲン写真及びその後に撮影されたレントゲン写真によっても、Cにミルク誤嚥による窒息状態を窺わせる所見は認められない。ミルク誤嚥による窒息というのは一種の溺死状態なのであるから、気管内挿管後の吸引で両肺野に貯まったミルクを吸引することは不可能であり、したがって、上記レントゲン写真は、Cの死因がミルク誤嚥による窒息でないことを示すものである。(カ) E助産婦が酸素マスクによる酸素投与をした時点では、口腔内に吐物は認められていない。控訴人病院の医師F(以下「F医師」という。)が到着し、心臓マッサージを施行した際に、Cの口からミルク残滓を含む液体が溢れてきたのである。 るから、気管内挿管後の吸引で両肺野に貯まったミルクを吸引することは不可能であり、したがって、上記レントゲン写真は、Cの死因がミルク誤嚥による窒息でないことを示すものである。(カ) E助産婦が酸素マスクによる酸素投与をした時点では、口腔内に吐物は認められていない。控訴人病院の医師F(以下「F医師」という。)が到着し、心臓マッサージを施行した際に、Cの口からミルク残滓を含む液体が溢れてきたのである。したがって、この時の吸引は、心臓マッサージにより口腔内に貯留した液体を吸引したものである。気管内挿管後に、挿管チューブを通して乳白色の粘性の低い液体が気管ないし気管支から引けているが、この液体は、E助産婦がCの異常を発見した後、Cの身体の移動や蘇生処置(心臓マッサージ、バギング)によって気管内に移動したものである。なお、気管支からの吸引量は、5ccないし10ccであっても「多量」と記載されるところ、5ccないし10cc程度の液体の移動は十分あり得る。(キ) Cがミルク誤嚥により窒息したのであれば、バギングが行われていることも考え併せると、気管やその末梢に広範囲に多量のミルクが存在しているはずであるが、そのような多量のミルクが存在していたという所見はない。(ク) 嘔吐したミルクを誤嚥して窒息したのであれば、鼻口から細小泡沫を洩出する。なぜならば、気管及び気管支が吸入したミルクで刺激されて咳き込むとともに、粘液が分泌され、呑み込んだミルクは呼気と吸気で攪拌され、ミ ミルクを誤嚥して窒息したのであれば、鼻口から細小泡沫を洩出する。なぜならば、気管及び気管支が吸入したミルクで刺激されて咳き込むとともに、粘液が分泌され、呑み込んだミルクは呼気と吸気で攪拌され、ミルクと混和した粘液は細かい気泡を形成するからである。この気泡を細小泡沫というが、本件で吸引された液体は、いずれも粘調性の低いさらさらしたものであり、細小泡沫は全く認められていない。細小泡沫の存在については被控訴人らに立証責任があるところ、原判決は、細小泡沫が存在した可能性があるとするだけで控訴人の主張を排斥しており、立証責任の負担のさせ方を誤っている。(4) 原判決は、本件事故の際に用いられていた寝具がうつ伏せ寝に適さないと判断しているが、原審は、本件事故の際にどのような形状、材質の寝具が用いられていたか審理しておらず、上記事実を認めるに足りる証拠は何もない。 られていない。細小泡沫の存在については被控訴人らに立証責任があるところ、原判決は、細小泡沫が存在した可能性があるとするだけで控訴人の主張を排斥しており、立証責任の負担のさせ方を誤っている。(4) 原判決は、本件事故の際に用いられていた寝具がうつ伏せ寝に適さないと判断しているが、原審は、本件事故の際にどのような形状、材質の寝具が用いられていたか審理しておらず、上記事実を認めるに足りる証拠は何もない。かえって、本件事故当時使用されていた寝具は、乙第16、第17で明らかなとおり、Cの顔が下向きになったとき敷布団に潜るような状況になるものではないこと、仮に毛布やタオルがCの頭部にまで掛けられていたとしても、その重量は児の頭部のみに集中的に掛かるものではないこと、新生児が窒息するような事態に至るのは、タオルや毛布程度の重量では足りず、児を敷布団に押し付けるようなことをした場合に限られることからすれば、上記寝具がうつ伏せ寝に適さないということはできない。(5) 本件事故は、次のとおり、未然型乳幼児突然死症候群(abort-iveSIDS)ないし乳幼児突発性危急事態(ALTE)によるものと考えられる(死亡の結果に着目すれば、乳幼児突然死症候群(SID-S)ということになる。)。厚生省心身障害研究乳幼児突然死症候群研究班によれば、乳幼児突然死症候群(SIDS)は、「それまでの健 と考えられる(死亡の結果に着目すれば、乳幼児突然死症候群(SID-S)ということになる。)。厚生省心身障害研究乳幼児突然死症候群研究班によれば、乳幼児突然死症候群(SIDS)は、「それまでの健康状態及び既往歴からその死亡が予測できなかった乳幼児に突然の死をもたらした症候群」と定義され、また未然型乳幼児突然死症候群(abortive SIDS)は、「それまでの健康状態及び既往歴から、その発生が予測できなかった乳幼児が、突然の死亡をもたらしうるような徐脈、不整脈、無呼吸、チアノーゼなどの状態で発見され、死に至らなかった症例」と定義されている。未然型乳幼児突然死症候群は、近時は乳幼児突発性危急事態(ALTE)とも呼ばれる。これらの発生頻度は次第に多くなってきているといわれるが、現在においても原因は解明されていない。そして、新生児にも乳幼児突然死症候群、未然型乳幼児突然死症候群が起こることが認められている。このように、乳幼児突然死症候群及び未然型乳幼児突然死症候群は、疫学的に一定の割合で発症することが知られており、本件では前記のとおり窒息であるとは考えられず、また突然の心肺停止を来す病態を窺わせる他の疾患が特に認められないことからすると、未然型乳幼児突然死症候群と診断すべきである。 ても原因は解明されていない。そして、新生児にも乳幼児突然死症候群、未然型乳幼児突然死症候群が起こることが認められている。このように、乳幼児突然死症候群及び未然型乳幼児突然死症候群は、疫学的に一定の割合で発症することが知られており、本件では前記のとおり窒息であるとは考えられず、また突然の心肺停止を来す病態を窺わせる他の疾患が特に認められないことからすると、未然型乳幼児突然死症候群と診断すべきである。原判決は、控訴人の未然型乳幼児突然死症候群についての主張を、Cに未然型乳幼児突然死症候群であることを窺わせる何らかの徴候があったという主張、立証をするものではないとして排斥しているが、未然型乳幼児突然死症候群では、これを窺わせる何らかの徴候など存在しないことは、その定義からも当然の帰結であり、そのようなものとしての未然型乳幼児突然死症候群が医学界において現実に存在する疾患として認知されているのであるから、原判決の認定判断は、独善的で不十分な理解に基づいたも 定義からも当然の帰結であり、そのようなものとしての未然型乳幼児突然死症候群が医学界において現実に存在する疾患として認知されているのであるから、原判決の認定判断は、独善的で不十分な理解に基づいたものであって、誤りである。なお、未然型乳幼児突然死症候群であるとするために、訴訟上、控訴人が他の原因がないことを立証する必要があるわけではなく、本件では、窒息といえるかどうかがまず問題なのであるから、控訴人がこれについて反証し、窒息であると認められないとすれば、結局、未然型乳幼児突然死症候群であることが証明されたことになるものである。(6) 原判決の認定したうつ伏せ寝にした場合の吐乳吸引による窒息という本件事故の発生機序は、全く証拠に基づかない論理性に欠けた恣意的な事実認定であって、何ら医学的検討をせず、極めて安易に、拙速主義に基づいて認定判断されたものである。すなわち、被控訴人ら主張の機序によって乳幼児の窒息ないし心肺停止が生ずるかどうか自体も、専門家によって見解を異にしているところ、原審では、本件の具体的症例が医学的にどのように評価されるべきかについて何ら証拠調べが行われておらず、仮に原判決の認定した事実経過を前提としても、それらの事実から本件事故が被控訴人ら主張の機序により生じたものであることを推認することは到底できない。また、うつ伏せ寝の際の枕等による鼻口部閉塞により吐乳誤嚥前に既に窒息したとの被控訴人らの主張も、これを裏付ける証拠が全くない。 て見解を異にしているところ、原審では、本件の具体的症例が医学的にどのように評価されるべきかについて何ら証拠調べが行われておらず、仮に原判決の認定した事実経過を前提としても、それらの事実から本件事故が被控訴人ら主張の機序により生じたものであることを推認することは到底できない。また、うつ伏せ寝の際の枕等による鼻口部閉塞により吐乳誤嚥前に既に窒息したとの被控訴人らの主張も、これを裏付ける証拠が全くない。むしろ、逆に、① 被控訴人らが提出した専門家の見解であるP教授の死体検案書(甲第32)、鑑定書(甲第62)及び刑事事件の尋問調書(甲第74)は、Cの死亡原因として、吐物誤嚥を挙げておらず、「鼻口部圧迫・窒息」という結論につては、解剖所見に基づくものではなく、動脈血のPHの低下(アシド- 定書(甲第62)及び刑事事件の尋問調書(甲第74)は、Cの死亡原因として、吐物誤嚥を挙げておらず、「鼻口部圧迫・窒息」という結論につては、解剖所見に基づくものではなく、動脈血のPHの低下(アシド-シス)という根拠については、誤りであったことが自認されており、そのほか、カルテの記載を除き、具体的根拠を何も示していないこと、② 同じくQ教授の意見書(甲第60)にも、被控訴人ら主張の機序による心肺停止が起こったと認められる旨の記載はなく、心肺停止の原因について触れるところがなく、かえって、乳幼児突然死症候群の可能性を認めているものであること、③ 窒息と診断するためには、そうするに足りるだけの根拠が必要であって、原因が分からないまま窒息とするのでは、乳幼児突然死症候群という概念を否定するものであること、④ 小児科の専門家であるN教授の鑑定書(乙第25の1)によれば、Cの死因がうつ伏せ寝による窒息死であるとは考えられないとされていること、⑤ 本件鑑定の結果によれば、本件事故当時、新生児をうつ伏せ寝にさせることが新生児にとって危険であるから避けるべきであるなどという一般的知見は、一般臨床の場では存在せず、Cの心肺停止の原因は不明であり、枕等による鼻口部圧迫による酸素欠乏状態と、これにより惹起された吐乳、吐乳誤嚥という一連の機序により呼吸停止、心停止状態となった可能性は極めて少ないとされていることによれば、本件事故が被控訴人ら主張の機序によって発生したことは、証拠上、積極的に否定されているというべきである。 新生児にとって危険であるから避けるべきであるなどという一般的知見は、一般臨床の場では存在せず、Cの心肺停止の原因は不明であり、枕等による鼻口部圧迫による酸素欠乏状態と、これにより惹起された吐乳、吐乳誤嚥という一連の機序により呼吸停止、心停止状態となった可能性は極めて少ないとされていることによれば、本件事故が被控訴人ら主張の機序によって発生したことは、証拠上、積極的に否定されているというべきである。【争点2】Cの死亡についての控訴人及びE助産婦の注意義務違反と因果関係(一) 被控訴人らの主張(1) 不法行為責任について(ア) 本件事故以前、遅くとも昭和62年ころから、一般育児書、女性誌等においても、新生児をうつ伏せ寝にする際に 婦の注意義務違反と因果関係(一) 被控訴人らの主張(1) 不法行為責任について(ア) 本件事故以前、遅くとも昭和62年ころから、一般育児書、女性誌等においても、新生児をうつ伏せ寝にする際には、固い敷布団(アイロン台の固さが目安とされている。)を使用すること、枕は使わず、顔のまわりをすっきりさせること、こまめに様子を見、吐乳したら、直ちに顔をふいたり、シーツを替えたりしなければならないことなどが指摘され、また、医療専門誌においても、うつ伏せ寝にする場合の危険性が議論されていた。控訴人病院も、平成4年ないし6年ころ、産婦に配る「産後の摂生と育児」という小冊子(甲第11、第67)の記載内容を変更し、「「(うつぶせ寝は)乳児突然死症候群(SIDS)、吐物吸引による窒息死を起こす割合が多く危険」とする考え方と、「頭の形が良くなる、首の座りが早い、よく寝るなど、メリットが多い」とする考え方とあり、医療関係者の間でも賛否両論です。大切な事は、細やかな気配りと充分な注意を忘れずに育児に携わるという心構えです。もし、うつぶせ寝にするなら、①固い布団を使う ②枕は使わない ③シーツをピンと張る ④ベッドの中にぬいぐるみを置いたり、タオルを敷いたりしない ⑤半袖またはピッタリした袖の服を着せるなど最低の条件は守りましょう。」と、以前にはなかった記載をあえて加えている。(イ) したがって、控訴人は、開設する大学付属の総合病院である控訴人病院において、少なくとも上記小冊子の記載変更後は、新生児の看護に当たる看護婦に対し、うつ伏せ寝にするなら、必ず固い布団を使い、枕は外し、掛け布団を頭上まで掛けないなどの細心の処置を施すとともに、常にも増して新生児の動静を注視すべきように、適切な指導・監督をすべき注意義務を負っていた。 。」と、以前にはなかった記載をあえて加えている。(イ) したがって、控訴人は、開設する大学付属の総合病院である控訴人病院において、少なくとも上記小冊子の記載変更後は、新生児の看護に当たる看護婦に対し、うつ伏せ寝にするなら、必ず固い布団を使い、枕は外し、掛け布団を頭上まで掛けないなどの細心の処置を施すとともに、常にも増して新生児の動静を注視すべきように、適切な指導・監督をすべき注意義務を負っていた。しかるに、控 必ず固い布団を使い、枕は外し、掛け布団を頭上まで掛けないなどの細心の処置を施すとともに、常にも増して新生児の動静を注視すべきように、適切な指導・監督をすべき注意義務を負っていた。しかるに、控訴人は、上記のような指導・監督を怠った。(ウ) E助産婦は、平成7年1月8日午前5時40分ころ、通常の授乳時間外にCにおやつとしてミルクを与えた。その際、Cは腹部が張っており、ミルクを吐いたため、E助産婦は、Cが再度ミルクを吐くことを予想していた。(エ) したがって、E助産婦としては、Cをうつ伏せ寝にするに際し、固い布団を使い、枕は外し、布団を頭上まで掛けないなどの細心の処置を施すとともに、常にも増して注意深くCの動静を注視すべき注意義務を負っていた。仮に、E助産婦が、1月8日午前5時40分ころCにミルクを与えていなかったとしても、前記注意義務は、一般に、うつ伏せ寝にさせる場合には必ず守るべき条件であった。しかるに、E助産婦は、枕は外し、ベッドの中にタオルを敷いたりしないという前記条件を守っていないことが明らかであり、また、布団やシーツについても、仰向け寝にさせる場合と同じものが使用されたのであって、固い布団に替えたり、シーツを直したなどの事情は窺えず、Cの動静の注視も怠っている。したがって、E助産婦は、控訴人自身が産婦に対して指導しているうつ伏せ寝にさせるための基本的な条件さえほとんど守っていないことになり、注意義務を全く尽くさなかったというべきである。(オ) Cは、控訴人が、新生児の看護に当たる看護婦に対しうつ伏せ寝にする際の条件等に関して適切な指導・監督をすべき注意義務を怠り、E助産婦も、うつ伏せ寝にする際の注意義務を守らなかったために、うつ伏せ寝の際の枕等による鼻口部圧迫による酸素欠乏状態による吐乳及び吐乳誤嚥又は枕 件等に関して適切な指導・監督をすべき注意義務を怠り、E助産婦も、うつ伏せ寝にする際の注意義務を守らなかったために、うつ伏せ寝の際の枕等による鼻口部圧迫による酸素欠乏状態による吐乳及び吐乳誤嚥又は枕等による鼻口部圧迫ないし閉塞により、窒息し、そのため呼吸停止、心停止状態になり、回復後も低酸素脳症となって重度の脳性麻痺の障害を後遺し、それが原因で窒息死したのであるから、控訴人は、自らの注意義務違反により、また、E助産婦の使用者として、Cの死亡について、不法行為責任を負う。 寝にする際の注意義務を守らなかったために、うつ伏せ寝の際の枕等による鼻口部圧迫による酸素欠乏状態による吐乳及び吐乳誤嚥又は枕等による鼻口部圧迫ないし閉塞により、窒息し、そのため呼吸停止、心停止状態になり、回復後も低酸素脳症となって重度の脳性麻痺の障害を後遺し、それが原因で窒息死したのであるから、控訴人は、自らの注意義務違反により、また、E助産婦の使用者として、Cの死亡について、不法行為責任を負う。(2) 債務不履行責任について被控訴人らは、平成6年8月15日、控訴人との間において、被控訴人Bが子供を出産することについて、当時の医学水準において実務上必要とされる最善の注意をもって適切な診療を行う旨の診療契約を締結した。この契約は、生まれてくる子供を受益者とする第三者のためにする契約であり、Cは出産と共に両親である被控訴人らに代理され、診療を受けることにより受益の意思表示をした。したがって、控訴人は、Cに対し、適切な診療、看護を行うべき注意義務を負っていた。しかるに、前記不法行為責任について述べたとおり、控訴人自らの過失及び控訴人の履行補助者であるE助産婦の過失により、Cが死亡するに至ったのであるから、控訴人は、被控訴人らに対し、Cの死亡について債務不履行責任を負う。(二) 控訴人の主張(1) 不法行為責任について(ア) 前記のとおり、Cの心肺停止の原因は、窒息ではなく、未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態によるものであるから、控訴人が不法行為責任を負うことはない。(イ) 原判決は、Cを継続的に観察すべき注意義務があるとするが、うつ伏せ寝にした場合、どの程度の頻度で何分おきに乳児を観察すべきなのか何ら具体 るから、控訴人が不法行為責任を負うことはない。(イ) 原判決は、Cを継続的に観察すべき注意義務があるとするが、うつ伏せ寝にした場合、どの程度の頻度で何分おきに乳児を観察すべきなのか何ら具体的に示していない上、そのようにすべき医学的根拠を何ら具体的に述べていない。(2) 債務不履行責任について被控訴人らと控訴人との間の診療契約は、出産に関するものである。Cの死亡は出産後の出来事であるから、上記診療契約の債務不履行にはならない。【争点3】Cの死亡によって被控訴人らが控訴人に請求することができる損害賠償の額(一) 被控訴人らの主張(1) Cの被った損害(ア) 逸失利益 2487万5300円平成5年の賃金センサスにより、男子労働者学歴計の年収549万1600円を基に、就労可能年齢を18歳から67歳までとし、ライプニッツ方式により中間利息を控除し、更に生活費として40パーセントを控除すると、逸失利益は、次のとおり2487万5300円になる。 死亡によって被控訴人らが控訴人に請求することができる損害賠償の額(一) 被控訴人らの主張(1) Cの被った損害(ア) 逸失利益 2487万5300円平成5年の賃金センサスにより、男子労働者学歴計の年収549万1600円を基に、就労可能年齢を18歳から67歳までとし、ライプニッツ方式により中間利息を控除し、更に生活費として40パーセントを控除すると、逸失利益は、次のとおり2487万5300円になる。5,491,600円×(19.2390(67年のライプニッツ係数)-11.6895(18年のライプニッツ係数))×(1-0.4(生活費))=24,875,300円(イ) 慰藉料 2600万円(ウ) 葬儀費用 120万円Cの葬儀は、平成7年8月11日に行われた。(エ) 入院雑費(母乳バッグ・乳児服等) 27万8200円Cは、平成7年1月8日の本件事故後同年8月9日に死亡するまでの214日間入院を余儀なくされた。入院雑費は、 1日1300円が相当である。(オ) 近親者の通院交通費 25万0880円被控訴人らがCの介護・入浴あるいは搾乳を届けるためなどに要し 日間入院を余儀なくされた。入院雑費は、 1日1300円が相当である。(オ) 近親者の通院交通費 25万0880円被控訴人らがCの介護・入浴あるいは搾乳を届けるためなどに要した交通費(カ) 診断書料(2通) 6180円(キ) 合計 5261万0560円被控訴人らは、Cの上記損害につき、2分の1(2630万5280円)ずつその賠償請求権を相続により取得した。(2) 被控訴人ら固有の損害(ア) 慰藉料被控訴人らそれぞれにつき500万円被控訴人らは、順調な出産による喜びを味わったのもつかの間、健康なはずの我が子を重度の身体障害者にされてしまった。事故発生からC死亡までの約7か月間、小さな体に繰り返される検査、自らミルクを飲むこともできない姿、頻繁な痰の吸引などを眼前にした両親の苦痛は、Cの慰藉料とは別途に考慮されるべきである。(イ) 弁護士費用被控訴人らそれぞれにつき310万円被控訴人らは弁護士に委任して本件訴訟を提起しており、その報酬620万円を被控訴人らが2分の1ずつ負担するので、これを損害として請求する。(3) 被控訴人らの請求額上記(1)、(2)を合計すると、被控訴人らそれぞれについて3440万5280円となるので、被控訴人らは、控訴人に対し、上記金員及びこれに対する不法行為又は債務不履行の日である平成7年1月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(ただし、被控訴人らは、控訴又は付帯控訴を提起していないので、当審における審理の範囲は、原判決の認容した金額の限度に画されている。 人らの請求額上記(1)、(2)を合計すると、被控訴人らそれぞれについて3440万5280円となるので、被控訴人らは、控訴人に対し、上記金員及びこれに対する不法行為又は債務不履行の日である平成7年1月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(ただし、被控訴人らは、控訴又は付帯控訴を提起していないので、当審における審理の範囲は、原判決の認容した金額の限度に画されている。)。(二) 控訴人の主張被控訴人らの主張は争う。第三当裁判所の判断一当裁判所は、被控訴人 ないので、当審における審理の範囲は、原判決の認容した金額の限度に画されている。)。(二) 控訴人の主張被控訴人らの主張は争う。第三当裁判所の判断一当裁判所は、被控訴人らの請求のうち、原判決の認容した部分は、すべて理由があるものと判断する。その理由は、以下のとおりである。二認定事実第二、二記載の基礎的事実関係に、甲第1ないし第19(以下、枝番のあるものについて枝番の特定がない場合には、すべての枝番を含む。)、第21ないし第27、第29、第31、第32、第57ないし第65、第67ないし第79、乙第1ないし第3、第5ないし第9、第16、第26、第29、第34、第35、原審における証人E、同F、同G、同Iの各証言及び被控訴人B本人尋問の結果(以下、人証については、いずれも「原審における」の記載及び名又は氏の記載を省略する。)並びに弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。1 Cの心肺停止に至る経緯とうつ伏せ寝にする際の条件等について(一) 被控訴人Bは、当初、自宅から控訴人病院まで1時間半以上の時間をかけて通院していたが、出産予定日(平成7年1月21日)が近づいた平成6年12月末ころからは、同病院から車で15分位のところにある被控訴人Aの実家において出産に備えるようになった。(二) 被控訴人Bは、平成7年1月5日午前3時ころ、陣痛が始まったことから、タクシーで控訴人病院に赴き、そのまま入院し、同日午前5時43分、Cを正常分娩で出産した。出産は、順調であった。Cの出生時の体重は3460グラム、身長は51センチメートルであり、心拍数や呼吸等に異常は見られなかった。その後本件事故までのCの成育状況は、良好であった。(三) 1月5日午後2時から同月8日午前2時30分までのCに対する授乳等は、次のと 成7年1月5日午前3時ころ、陣痛が始まったことから、タクシーで控訴人病院に赴き、そのまま入院し、同日午前5時43分、Cを正常分娩で出産した。出産は、順調であった。Cの出生時の体重は3460グラム、身長は51センチメートルであり、心拍数や呼吸等に異常は見られなかった。その後本件事故までのCの成育状況は、良好であった。(三) 1月5日午後2時から同月8日午前2時30分までのCに対する授乳等は、次のと 1センチメートルであり、心拍数や呼吸等に異常は見られなかった。その後本件事故までのCの成育状況は、良好であった。(三) 1月5日午後2時から同月8日午前2時30分までのCに対する授乳等は、次のとおりであった(甲第8の3)。① 1月5日午後2時00分糖水10cc 合計10cc午後3時30分ミルク20cc 合計20cc午後6時30分直母乳2cc、ミルク20cc 合計22cc午後10時30分直母乳2cc、ミルク30cc 合計32cc② 1月6日午前2時30分ミルク30cc 合計30cc午前6時30分直母乳2cc、ミルク20cc 合計22cc午前9時30分ミルク30cc 合計30cc午後0時30分ミルク30cc 合計30cc午後3時30分ミルク30cc 合計30cc午後6時30分ミルク40cc 合計40cc午後10時30分直母乳2cc、ミルク50cc 合計52cc③ 1月7日午前2時00分ミルク40cc 合計40cc午前3時30分ミルク20cc 合計20cc午前5時00分ミルク20cc 合計20cc午前6時30分直母乳6cc、ミルク60cc 合計66cc午前7時30分ミルク30cc 合計30cc午後0時30分直母乳4cc、ミルク60cc 合計64cc 分直母乳6cc、ミルク60cc 合計66cc午前7時30分ミルク30cc 合計30cc午後0時30分直母乳4cc、ミルク60cc 合計64cc午後4時30分直母乳4cc、ミルク50cc 合計54cc午後6時30分直母乳8cc、ミルク30cc 合計38cc午後10時30分搾母乳20cc、 ミルク40cc 合計60cc午後11時30分ミルク10cc 合計10cc④ 1月8日午前2時30分搾母乳30cc、ミルク40cc 合計70cc(四) 被控訴人Bは、1月8日午前3時過ぎころ、乳房が張り、痛みがあったこと及びCが泣いていたことから、控訴人病院の看護婦の同意を得た上、同病院産婦人科授乳室において、Cに若干量の授乳を行い、新生児室内のコットにCを仰向け寝で寝かせた。 分搾母乳20cc、 ミルク40cc 合計60cc午後11時30分ミルク10cc 合計10cc④ 1月8日午前2時30分搾母乳30cc、ミルク40cc 合計70cc(四) 被控訴人Bは、1月8日午前3時過ぎころ、乳房が張り、痛みがあったこと及びCが泣いていたことから、控訴人病院の看護婦の同意を得た上、同病院産婦人科授乳室において、Cに若干量の授乳を行い、新生児室内のコットにCを仰向け寝で寝かせた。(五) 1月8日午前4時ころ、Cがかん高く泣いたため、E助産婦は、30ccのミルクを授乳し、それまでと同じように、コットに仰向け寝で寝かせた。(六) E助産婦は、1月8日午前5時40分ころ、さらに、Cが泣いたため、同人におやつとしてミルクを与えた。その時、Cに排気させたが、ミルクを吐き、腹満もあったことから、再度吐く可能性があることを考え、Cをうつ伏せ寝で寝かせた(甲第5、第9、第25、第27、被控訴人Bの供述)。その当時、Cは、まだうつ伏せ寝に慣れていなかった。(七) 本件事故以前の遅くとも昭和62年ころから平成6年ころまでの間に、妊産婦向けの書籍、雑誌等には、うつ伏せ寝にする場合の注意事項等として、「うつぶせ寝ルール集・・・フカフカ敷ぶとんと枕は絶対タブー! 顔のまわりにガーゼやタオルなど物を置くのはタブー!に、妊産婦向けの書籍、雑誌等には、うつ伏せ寝にする場合の注意事項等として、「うつぶせ寝ルール集・・・フカフカ敷ぶとんと枕は絶対タブー! 顔のまわりにガーゼやタオルなど物を置くのはタブー! ルール1 敷ぶとんは固くて薄い、吸湿性の高いものを。・・・顔がもぐらないよう、アイロン台の固さを目安に。・・・ルール2 枕は絶対使わないこと・・・ルール3 顔のまわりを常にすっきりさせて、物を置かないこと。・・・ルール4 最初の1週間は目を離さない。・・・」(甲第68。大関早苗著「うつぶせ寝育児法」。同書はうつ伏せ寝を推奨するものである。)、「うつぶせ育児の注意点・・・必ず、かたいマットレスを用意しましょう。シーツにシワが寄らないようピンとのばし、マットレスの下側へ深く折り込みます。・・・ベッド上にタオル類やぬいぐるみを置かないこと。赤ちゃんの顔にかかるのを避けます。タオルを折ってまくらがわりにするのもやめましょう。」(甲第69。杉山四郎著「いい妊娠いいお産」。同人は新生児期からのうつ伏せ寝を推奨し、実践している医師である。 ある。)、「うつぶせ育児の注意点・・・必ず、かたいマットレスを用意しましょう。シーツにシワが寄らないようピンとのばし、マットレスの下側へ深く折り込みます。・・・ベッド上にタオル類やぬいぐるみを置かないこと。赤ちゃんの顔にかかるのを避けます。タオルを折ってまくらがわりにするのもやめましょう。」(甲第69。杉山四郎著「いい妊娠いいお産」。同人は新生児期からのうつ伏せ寝を推奨し、実践している医師である。)、 「うつぶせ寝の商品の特徴は、・・・寝具はアイロン台くらいの硬さです・・・うちの病院のように赤ちゃんから目を離さなければ、大丈夫ですよ。うちは・・・事故は1例もありません。・・・私は、うつぶせ寝が悪いとはいえません。ただ、うつぶせ寝をさせる場合は、こういう事故が起こることもあることを頭に入れておいて、厳重な指導をしていただきたいと思います。・・・こまめに様子をみて、お乳を吐いたら、すぐ顔をふいてやったり、シーツを替えてやらなければならない。敷布団には硬い布団を使う。シーツはピンとたるみがないように張る。掛け布団は薄手のものを。」(甲第70。女性セブン平成3年11月21日号。同記事は医師の指導のないうつ を替えてやらなければならない。敷布団には硬い布団を使う。シーツはピンとたるみがないように張る。掛け布団は薄手のものを。」(甲第70。女性セブン平成3年11月21日号。同記事は医師の指導のないうつ伏せ寝の危険性を報道するものであり、寝具メーカーや医師、学者の発言等が転載されている。)などの記載がある。控訴人病院が本件事故当時妊産婦に配っていた「産後の摂生と育児」という小冊子(甲第11)にも、うつ伏せ寝について、「「乳児突然死症候群(SIDS)、吐物吸引による窒息死を起こす割合が多く危険」とする考え方と、「頭の形が良くなる、首の座りが早い、よく寝るなど、メリットが多い」とする考え方とあり、医療関係者の間でも賛否両論です。大切な事は、細やかな気配りと充分な注意を忘れずに育児に携わるという心構えです。もし、うつぶせ寝にするなら、①固い布団を使う ②枕は使わない ③シーツをピンと張る ④ベッドの中にぬいぐるみを置いたり、タオルを敷いたりしない ⑤半袖またはピッタリした袖の服を着せる、など最低の条件は守りましょう。」との注意事項が記載されていた。(八) ところが、E助産婦が1月8日午前5時40分ころにCをうつ伏せ寝で寝かせた際のCの寝具は、控訴人病院において通常に使用されているものであって、新生児を仰向け寝で寝かせる際に使用されるものと同一であり、① 枕として、二つ折りにされたハンドタオルが用いられ、② 敷布団として、下から順に厚さ約5センチメートルのマットレス、厚さ約2センチメートル程度のベッドパット、三つ折りにされたバスタオル及び防水用ラミネートシートを木綿のシーツでくるんだものが重ねられ、③掛布団として、下から順に二つ折りのバスタオルと二つ折りの毛布が用いられていた。 であって、新生児を仰向け寝で寝かせる際に使用されるものと同一であり、① 枕として、二つ折りにされたハンドタオルが用いられ、② 敷布団として、下から順に厚さ約5センチメートルのマットレス、厚さ約2センチメートル程度のベッドパット、三つ折りにされたバスタオル及び防水用ラミネートシートを木綿のシーツでくるんだものが重ねられ、③掛布団として、下から順に二つ折りのバスタオルと二つ折りの毛布が用いられていた。新生児室には、うつ伏せ寝専用の寝具は用意されていなかった。なお ネートシートを木綿のシーツでくるんだものが重ねられ、③掛布団として、下から順に二つ折りのバスタオルと二つ折りの毛布が用いられていた。新生児室には、うつ伏せ寝専用の寝具は用意されていなかった。なお、上記マットレスの素材は、ソフランエーテルフォームと呼ばれるウレタンフォームのうちの一般フォームの一種であって、一般フォームの中では硬いものであるが、汎用クッション材であり、耐久特性に優れた高硬度クッション材である高硬度フォームではなかった(乙第16)。(九) 1月8日の本件事故当時、控訴人病院の産婦人科では、新生児室、NICU室(新生児集中治療室)及びクリーンルームのそれぞれの入り口となる部屋(以下「中間の部屋」という。)をはさんで右側に、コット(新生児用ベッド)の置かれた新生児室が、左側にNICU室が、中間の部屋の奥にクリーンルームがあり、新生児室には、6、7人の新生児がおり、中間の部屋には、新生児はおらず、NICU室には、3、4人の新生児がいて、NICU室の新生児の中には、小児科の医師が担当する必要のある重症児もいた(甲第6、証人Fの証言)。そして、同日の深夜帯(午前0時から午前8時30分まで)における新生児室担当看護婦は、E助産婦一人であり、同助産婦が新生児室及びNICU室の新生児の看護を一人で担当していた。(一〇) このような状況の中で、E助産婦は、1月8日午前5時40分ころ、新生児室で、Cをうつ伏せ寝で寝かせた後、新生児らの黄疸測定、状態の観察等必要な処置を行い、同日午前6時少し前、新生児室を出てNICU室に行き、記録をつけたりしていた。中間の部屋が介在することと、窓の位置等により、NICU室から新生児室内のコットを見ることは不可能であり、同助産婦は、朝の授乳開始のために午前6時25分ころに新生児室に赴くまで、約30分間 中で、E助産婦は、1月8日午前5時40分ころ、新生児室で、Cをうつ伏せ寝で寝かせた後、新生児らの黄疸測定、状態の観察等必要な処置を行い、同日午前6時少し前、新生児室を出てNICU室に行き、記録をつけたりしていた。中間の部屋が介在することと、窓の位置等により、NICU室から新生児室内のコットを見ることは不可能であり、同助産婦は、朝の授乳開始のために午前6時25分ころに新生児室に赴くまで、約30分間 していた。中間の部屋が介在することと、窓の位置等により、NICU室から新生児室内のコットを見ることは不可能であり、同助産婦は、朝の授乳開始のために午前6時25分ころに新生児室に赴くまで、約30分間、うつぶせ寝となったCの動静を観察することはできなかった。(一一) 控訴人病院の産婦人科病棟及び産婦人科看護婦を管理、監督する管理・監督者(氏名を特定することはできないが、存在することは明らかである。)は、新生児室担当の看護婦に対し、本件事故当時、生後間もない新生児や吐く可能性のある新生児、うつ伏せ寝に慣れていない新生児等をうつ伏せ寝にする場合に、うつ伏せ寝用の特別な寝具を使用し、寝かせた後も、肉眼又は機器により継続的に観察すべき旨看護婦に指導することはしていなかった。(一二) E助産婦は、1月8日午前6時25分ころ、朝の授乳開始のため、NICU室から新生児室に赴き、授乳に来ていた被控訴人BにCを渡そうと同人を抱き上げたところ、同人の顔面はチアノーゼ様で、呼吸は停止しており、肌着をはだけて確認したところ、チアノーゼは全身に及んでいた。E助産婦が抱き上げる前のCは、顔を真下に向けた状態でうつ伏せ寝で寝ており、バスタオル及び毛布が頭の一部が見える程度に掛かっていた。Cが使用していた枕代わりの白色のタオルの中央に黄色みを帯びた直径6、7センチメートルのしみがあった(甲第5、第27、乙第29、被控訴人Bの供述)。2 本件事故発見後の事実経過について(一) E助産婦は、Cの呼吸停止に対する処置を行うべく、被控訴人Bに対して吸引してくるからと告げ、Cを抱えてNICU室に走り込み、インファントウォーマーに仰向け寝で寝かせ、直ちに控訴人病院の産婦人科当直のF医師を呼び出した。E助産婦は、同医師到着まで、Cに酸素マスクによる酸素投与とタッピング(児を てNICU室に走り込み、インファントウォーマーに仰向け寝で寝かせ、直ちに控訴人病院の産婦人科当直のF医師を呼び出した。 、Cの呼吸停止に対する処置を行うべく、被控訴人Bに対して吸引してくるからと告げ、Cを抱えてNICU室に走り込み、インファントウォーマーに仰向け寝で寝かせ、直ちに控訴人病院の産婦人科当直のF医師を呼び出した。E助産婦は、同医師到着まで、Cに酸素マスクによる酸素投与とタッピング(児を てNICU室に走り込み、インファントウォーマーに仰向け寝で寝かせ、直ちに控訴人病院の産婦人科当直のF医師を呼び出した。E助産婦は、同医師到着まで、Cに酸素マスクによる酸素投与とタッピング(児を横向きにして背中を叩くこと)による皮膚刺激を行ったが、Cに反応は現われなかった。(二) 1月8日午前6時30分ころ、F医師が到着し、Cを診察したが、心肺機能停止状態であったため、直ちに体外心臓マッサージとバギング(酸素マスクを使用し、圧をかけて酸素を投与する。)を開始した。さらに、気道確保のために気管内挿管を試み、口頭展開を行い、声門を確認することまではできたが、挿管はできなかった。そのため、F医師は、E助産婦に対し、小児科当直医を呼ぶことを指示し、同助産婦は、控訴人病院小児科のI医師に、直ちにNICU室に来るよう要請した。その後、I医師が到着するまでの間、Cに対する心臓マッサージとバギングが継続されたが、心臓マッサージ施行中に、Cの口からミルク残滓を含む液体が噴き出したため、気管内より多量のミルクを吸引し、更に心臓マッサージを続けた。(三) 1月8日午前6時35分ころ、I医師がNICU室に到着し、気管内挿管を試みたが挿管できず、その後、要請を受けて到着した控訴人病院小児科のG医師(当時の姓・H)(以下「G医師」という。)により、同日午前6時40分ころ、挿管が完了した。挿管後、挿管による吸引により多量の乳白色の液体が吸引された。同液体の粘調性、量については、診療録に後記の記載がされている。なお、挿管後、ポータブル撮影機により、Cの胸腹部のレントゲン写真が撮影されているが、この撮影は、前記挿管吸引後にされたものであった(証人F、同Iの各証言)。記① 被控訴人Bの産婦人科入院診療録(甲第10)7丁裏 ゲン写真が撮影されているが、この撮影は、前記挿管吸引後にされたものであった(証人F、同Iの各証言)。記① 被控訴人Bの産婦人科入院診療録(甲第10)7丁裏記載者・F医師Tapping 、吸引にて気管内よりmilk多量にひける② Cの小児科入院診療録(甲9)10丁表記載者・I医師挿管よりmilk残渣多量に吸引できる③ 同診療録(甲9)12丁裏記載者・G医師チューブより粘調なmilkかすのようなもの多量にひけ、吸引性肺炎を想定し、早目にアミノベンジルペニシリン抗生剤使用としました(四) 前記挿管による吸引後、間もなく、Cの心拍音を聴取できるようになり、時々ではあるが自発呼吸も出現した。 引にて気管内よりmilk多量にひける② Cの小児科入院診療録(甲9)10丁表記載者・I医師挿管よりmilk残渣多量に吸引できる③ 同診療録(甲9)12丁裏記載者・G医師チューブより粘調なmilkかすのようなもの多量にひけ、吸引性肺炎を想定し、早目にアミノベンジルペニシリン抗生剤使用としました(四) 前記挿管による吸引後、間もなく、Cの心拍音を聴取できるようになり、時々ではあるが自発呼吸も出現した。そして、1月8日午前6時53分になって自発呼吸が認められたが、未だ弱めであり、不規則なため、バギングが継続された。(五) 1月8日午前7時10分ころ、Cの口腔内から唾液様の液体が多量に吸引され、また、挿管チューブからごく少量の淡々黄色の液体が引けた。(六) 1月8日午前7時35分ころ、Cの自発呼吸及び心拍が安定してきたため、バギングが中止され、同日午前7時45分、同人はクベース(保育器)に収容され、器内の酸素は30パーセントに維持された。(七) E助産婦は、Cの蘇生措置が終わった後も、枕代わりのタオルに触ったり、これを検査したりなどはしなかった。3 控訴人病院医師らによる診療録への記載、説明等について(一) F医師は、1月8日午前8時30分ころ、被控訴人らに対し、本件事故の原因について、Cが、戻したミルクを再度飲み込み、それが肺に入ったために本件事故が生じた旨の説明を行った。(二) 控訴人病院小児科のJ医師、同科のG医師、 時30分ころ、被控訴人らに対し、本件事故の原因について、Cが、戻したミルクを再度飲み込み、それが肺に入ったために本件事故が生じた旨の説明を行った。(二) 控訴人病院小児科のJ医師、同科のG医師、同科のI医師、同病院産婦人科のF医師、同科のK医師は、1月8日午前10時30分ころ、被控訴人らに対し、① 本件事故の原因としてミルクの誤嚥が考えられる、② 挿管チューブより粘調なミルクかすのようなものが多量に引けた、③ 肺炎を想定し、早期に抗生剤を使用することにした旨の説明を行った。(三) 1月9日午後2時30分ころ、被控訴人ら及び被控訴人Aの母Dと、控訴人病院産婦人科部長のL教授、K医師、J医師、I医師との間で会談が行われたが、L教授からは、① 肺からミルクが相当吸引できたこと、② 嘔吐してそこでうつ伏せになっていたこと、③ 再び吸い込んだ嚥下性のものであって、これに付随して心停止が起きたのではないかと思われること、④ 嘔吐の事故であることなどが説明された。 の説明を行った。(三) 1月9日午後2時30分ころ、被控訴人ら及び被控訴人Aの母Dと、控訴人病院産婦人科部長のL教授、K医師、J医師、I医師との間で会談が行われたが、L教授からは、① 肺からミルクが相当吸引できたこと、② 嘔吐してそこでうつ伏せになっていたこと、③ 再び吸い込んだ嚥下性のものであって、これに付随して心停止が起きたのではないかと思われること、④ 嘔吐の事故であることなどが説明された。しかし、本件事故の原因が未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態であることを示唆する説明は全くされなかった。(四) その後も、控訴人病院の関係者等からは、被控訴人らに対し、訴訟が予想される事態となるまでは、本件事故ないしCの死亡の原因が未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態である旨の説明は一度もされず、特に、Cの蘇生措置や治療に携わった医師たちからは、本件訴訟の審理が進むまで、本件事故ないしCの死亡の原因が未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態である旨の説明はされなかった。(五) Cの心肺停止に関しては、診療録に次の記載がされている。① Cの小児科入院診療録(甲第9)10丁表記載日平成7年1月8日記載者 I医師 明はされなかった。(五) Cの心肺停止に関しては、診療録に次の記載がされている。① Cの小児科入院診療録(甲第9)10丁表記載日平成7年1月8日記載者 I医師記載内容 milk誤嚥による窒息→呼吸停止→心臓停止の可能性大。誤嚥の原因は不明② 同診療録170丁表記載日平成7年3月15日記載者 I医師、風間医師記載内容平成7年1月5日に、正常分娩にて35w5d、3460gで生まれた男児です。生後3日目の1月8日の早朝、うつぶせ寝状態にて、milk誤飲による窒息及び心停止状態で発見されました。直ちに蘇生しましたが、低酸素状態にしばらくさらされており、その後の頭部CTにてSAH、brainatrophyが認められました。現在は、roomair 自発呼吸しております。4 うつ伏せ寝の適否と本件事故の原因について(一) 本件事故以前の遅くとも昭和62年ころから平成6年ころまでの間に、乳幼児のうつ伏せ寝の適否自体については、乳幼児の成育に良い効果があるとしてこれを積極的に評価する論者や、その危険性に着目してこれを消極的に評価する論者など、専門家の間でも意見が分かれていた。 AH、brainatrophyが認められました。現在は、roomair 自発呼吸しております。4 うつ伏せ寝の適否と本件事故の原因について(一) 本件事故以前の遅くとも昭和62年ころから平成6年ころまでの間に、乳幼児のうつ伏せ寝の適否自体については、乳幼児の成育に良い効果があるとしてこれを積極的に評価する論者や、その危険性に着目してこれを消極的に評価する論者など、専門家の間でも意見が分かれていた。しかし、当時既に、①海外の調査例では、統計上、うつ伏せ寝の普及につれて乳幼児の突然の死亡事例が増加し、逆にうつ伏せ寝の減少につれて乳幼児の突然の死亡事例も減少したことが報告されており、② 国内でも、うつ伏せ寝の乳児の吐乳吸引による多数の窒息死の例の報告や、③ 乳幼児の窒息による死亡例を調査すると吐物吸引によるものが多く、かつ、吐物吸引による死亡例の大半がうつ伏せ寝であったことの報告、④ 乳幼児の吐物吸引による窒息は、うつ伏せ寝による鼻口部圧迫による酸素欠乏状態と、これにより を調査すると吐物吸引によるものが多く、かつ、吐物吸引による死亡例の大半がうつ伏せ寝であったことの報告、④ 乳幼児の吐物吸引による窒息は、うつ伏せ寝による鼻口部圧迫による酸素欠乏状態と、これにより惹起された吐物、更に吐物の吸引という一連の機序により発生したものとみることができる場合があるとの見解、⑤ 乳児の吐乳吸引の可能性という点からはうつ伏せ寝は好ましくないという見解、⑥ 医師、看護婦等の適切な指導のないうつ伏せ寝は危険であるという見解、⑦ 寝具等に関するルールを守れば、うつ伏せ寝でも窒息の心配はないという見解などが医学文献や妊産婦向け文献、一般文献、新聞等で明らかにされていた(甲第11ないし第18、第22、第23、第58、第63、第71ないし第73、第79等)。(二) Cの死亡後、Cを解剖して死体検案及び鑑定をした東京女子医科大学のP医師は、法医学や乳幼児突然死症候群の専門的研究者であるが、① 死体検案書(甲第32)に、死亡の直接原因(気道分泌物による窒息)の原因として、死亡の7か月前の「低酸素性脳症」を挙げ、さらにその原因として死亡の7か月前の「鼻口部圧迫・閉塞」を挙げており、② 鑑定書(甲第57、第62)でも、死因は、「鼻口部圧迫・閉塞に起因した低酸素性脳症に基づく窒息」としており、③ 刑事事件における尋問調書(甲第7 4)でも、腹臥位にすると、生後3日で頭が重いので、その重みで鼻口部が圧迫されやすくなり、40分間に遷延性の窒息状態になって、低酸素症が徐々に起こっていったと考えたこと、本件事故の際に使用されていたものと同種の寝具を観察し、手で押してみた結果によれば、この寝具でうつ伏せ寝にすれば、鼻口部が圧迫あるいは閉塞されて、低酸素性脳症になる可能性があること、生後3日では瞬間的にあごを少し上げることはできるが、顔が下に 腹臥位にすると、生後3日で頭が重いので、その重みで鼻口部が圧迫されやすくなり、40分間に遷延性の窒息状態になって、低酸素症が徐々に起こっていったと考えたこと、本件事故の際に使用されていたものと同種の寝具を観察し、手で押してみた結果によれば、この寝具でうつ伏せ寝にすれば、鼻口部が圧迫あるいは閉塞されて、低酸素性脳症になる可能性があること、生後3日では瞬間的にあごを少し上げることはできるが、顔が下に 観察し、手で押してみた結果によれば、この寝具でうつ伏せ寝にすれば、鼻口部が圧迫あるいは閉塞されて、低酸素性脳症になる可能性があること、生後3日では瞬間的にあごを少し上げることはできるが、顔が下に向けられた状態を自分で排除するのは困難であることなどを供述しており、④ これらに、未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態を疑わせる記載及び供述は存しない。(三) 酸素欠乏症及び乳幼児突然死症候群についての研究者であるR医学博士は、別な乳幼児の死亡事故に関する意見書及び本件についての検察官に対する供述調書(甲第58、第76)において、うつ伏せ寝による酸素欠乏症の誘発について研究した結果、うつ伏せ寝において柔らかい布団に顔を埋めた場合の窒息死は事故例として多いものであること、乳幼児は成人に比べて酸素欠乏による脳障害の進行が早く、その初期の段階では、嘔吐を引き起こすこと、乳児のうつ伏せ寝では胸腹部圧迫も加わって吐乳が起こりやすいこと、その気管内吸引が窒息を引き起こすこと、本件事故の際に使用されていたものと同種の寝具を観察し、手で押してみた結果によると、その敷布団の柔らかさであれば、顔が下向きになった場合、鼻口部が閉塞され、布団内の空気を繰り返し呼吸することになって、窒息に陥ることになり、低酸素の状態が更に進むことにより嘔吐しやすい状態になることも考えられることなどを指摘している。(四) うつ伏せ寝を推奨したこともある研究者であるQ教授は、被控訴人ら代理人から提供されたCの診療録を含む原審における主な甲号証や文献等を前提として検討した結果、① Cに突然の異常事態を予測させるハイリスク因子はなく、② 心肺停止の発見が遅れたのは状態の観察に不適切な状況にあったからであり、③ 1990年代に入ると、医療従事者においては、うつ伏せ寝にする ① Cに突然の異常事態を予測させるハイリスク因子はなく、② 心肺停止の発見が遅れたのは状態の観察に不適切な状況にあったからであり、③ 1990年代に入ると、医療従事者においては、うつ伏せ寝にする場合は、着衣や寝具などに注意を払うことは極めて一般的な知識となっており、E助産婦はコットを見やすい位置に移動させるとか、枕としていた二つ折りのタオルや掛ける寝具にも配慮を払うなどしてしかるべきであったと判断され、④ うつ伏せ寝にしたことが何らかの機序で、Cの心肺停止の重大な誘因となったことが考えられ、何らかの機序とは、嘔吐物の誤嚥による窒息、鼻孔閉鎖による窒息及び乳幼児突然死症候群などであり、⑤ 新生児が誤嚥で心肺停止することは例外的であるが、その例外が、うつ伏せ寝の際に嘔吐して、体外に出たミルクを鼻孔から再度吸入して誤嚥した場合であり、⑥ 本件では、ミルクの誤嚥があったことは十分推測されるが、その時期は明言することができず、⑦ 乳幼児突然死症候群は他の疾患がすべて否定されることが最低の条件であり、本件では、乳幼児突然死症候群の診断はすることができず、外因による窒息事故の可能性が最も考えられるなどの意見を述べている(甲第60)。 あるが、その例外が、うつ伏せ寝の際に嘔吐して、体外に出たミルクを鼻孔から再度吸入して誤嚥した場合であり、⑥ 本件では、ミルクの誤嚥があったことは十分推測されるが、その時期は明言することができず、⑦ 乳幼児突然死症候群は他の疾患がすべて否定されることが最低の条件であり、本件では、乳幼児突然死症候群の診断はすることができず、外因による窒息事故の可能性が最も考えられるなどの意見を述べている(甲第60)。(五) うつ伏せ寝の危険性についても主張している研究者であるM教授は、その意見書(甲第78)において、① 乳幼児の突然死の死因の判断には、寝具、寝かせ方、発見時の状況が最重要であること、② 本件事故の際に使用されていた寝具は、マットレスの上に敷かれた敷き物が多く、顔面部に二つ折りのタオルが敷かれていたことからみて、鼻口部が埋もれる可能性が高く、うつ伏せ寝にするには、不適切な寝具であること、③ 掛け布団のタオル及び毛布も不適切であること、④ 生後1週間以内の新生児の運動能力には個体差が大きく、寝具によっても大きく が埋もれる可能性が高く、うつ伏せ寝にするには、不適切な寝具であること、③ 掛け布団のタオル及び毛布も不適切であること、④ 生後1週間以内の新生児の運動能力には個体差が大きく、寝具によっても大きく影響されること、⑤ 普段うつ伏せ寝の習慣のない新生児がうつ伏せ寝にされた場合には、十分な窒息回避能力を発揮することができないこと、⑥ 吐物吸引による窒息と診断できる臨床例がほとんどなく、それが存在するにしても極めてまれな現象であろうとする意見は、実態を知らないものであること、⑦ 本件事故で低酸素脳症が生じた経過を呼吸停止先行型の生体反応ととらえ、鼻口部圧迫による窒息と推定する考えは評価することができることなどを指摘している。三以上の認定と異なる控訴人の主張について 1 1月8日午前5時40分ころの授乳の有無について控訴人は、E助産婦は、上記時点におけるCへの授乳は行っておらず、これを証する証拠もない旨主張し、証人Eも、上記時点におけるCへの授乳は行っておらず、同日午前4時の時点でも腹満が認められたが授乳直後であり吐く危険があったことから、うつ伏せ寝にはせず、同日午前5時40分の時点では、授乳後時間が経過しており、吐く危険が少なくなっていたのでうつ伏せ寝にした旨供述している。 5時40分ころの授乳の有無について控訴人は、E助産婦は、上記時点におけるCへの授乳は行っておらず、これを証する証拠もない旨主張し、証人Eも、上記時点におけるCへの授乳は行っておらず、同日午前4時の時点でも腹満が認められたが授乳直後であり吐く危険があったことから、うつ伏せ寝にはせず、同日午前5時40分の時点では、授乳後時間が経過しており、吐く危険が少なくなっていたのでうつ伏せ寝にした旨供述している。しかし、E助産婦は、F医師に対しては、Cをうつ伏せ寝にしたことにつき、腹満が認められ、吐乳する可能性があったことを理由として報告している(証人Fの証言。乙第38(E助産婦の刑事事件における供述調書)も同旨である。)のであって、同日午前5時40分ころの行動に関するE助産婦の供述には、変遷があり、信用することができない。他方、甲第5(被控訴人A作成の報告書)、第27(L教授との会談を録音したテープの反訳書)、第32(死体検案書)及び被控訴人Bの供述によれば、 産婦の供述には、変遷があり、信用することができない。他方、甲第5(被控訴人A作成の報告書)、第27(L教授との会談を録音したテープの反訳書)、第32(死体検案書)及び被控訴人Bの供述によれば、控訴人病院の関係医師は、外部の者に対し、本件事故から間もないころには、授乳後うつ伏せ寝にした旨説明していたことが認められる。また、乙第38及び証人Eの証言によれば、本件事故が起きるまで、E助産婦は、うつ伏せ寝を危険とする意見があること自体は知っていたが、同助産婦としては、危険とは考えず、むしろ、吐くおそれがある場合には、うつ伏せ寝の方が適すると考えていたものと認めることができる。以上によれば、E助産婦は、午前4時の授乳に続けて午前5時40分ころにも授乳し、当時は、うつ伏せ寝を危険とは考えていなかったため、その際に、吐くおそれを認識しながらうつ伏せ寝にしたものと認めるのが相当である。なお、控訴人は、午前5時40分ころの授乳について、哺乳記録(ミルク板)(甲第8の3)、看護記録(甲第25の89丁裏)及び診療録(甲第9の4丁裏)に記入がされていないことを問題視するが、哺乳記録については、午前4時の授乳についても記載がないことからすると、E助産婦は、午前5時40分ころの授乳については、午前4時の授乳とともに、後に記載する予定であったものと考えることもできる。 と認めるのが相当である。なお、控訴人は、午前5時40分ころの授乳について、哺乳記録(ミルク板)(甲第8の3)、看護記録(甲第25の89丁裏)及び診療録(甲第9の4丁裏)に記入がされていないことを問題視するが、哺乳記録については、午前4時の授乳についても記載がないことからすると、E助産婦は、午前5時40分ころの授乳については、午前4時の授乳とともに、後に記載する予定であったものと考えることもできる。また、看護記録及び診療録については、1月8日午前4時の授乳の記載があるものの、同日午前2時30分及び3時過ぎころの授乳の記載はなく、すべての授乳を記載しているのか疑問がある上、哺乳記録を含め、午前5時40分の授乳はおやつとしての若干量の授乳であったので、記入しなかった可能性もあるといわざるを得ない。そうすると、前記のとおり、他に、午前5時40分の授乳の証拠が存する本件においては、上記各記録への 0分の授乳はおやつとしての若干量の授乳であったので、記入しなかった可能性もあるといわざるを得ない。そうすると、前記のとおり、他に、午前5時40分の授乳の証拠が存する本件においては、上記各記録への記載の欠如をもって、前記認定を覆すことはできない。さらに、控訴人は、証人Fの証言や甲第27によっては、控訴人の主張を排斥することができないなどと縷々主張するが、独自の見解であって採用することができない。以上によれば、控訴人の前記主張は、採用することができない。なお、付言するに、前記認定のとおり、1月8日午前5時40分ころ、Cに吐乳、腹満があった事実及びE助産婦がこれらによりCが再度吐く可能性があることを認識していたことが認められ、この点が、後述するように、うつ伏せ寝にする際の注意義務違反を判断するために一定の重要性を有するのであって、同時刻の授乳の有無自体は、そもそも本訴の結論を左右するほどのものではない。2 Cが心肺停止の状態で発見されたときの寝具の掛かり方及び頭の位置について控訴人は、本件事故の際、バスタオル及び毛布は、肩にまでしか掛けられていなかったし、Cの顔はやや曲がった状態で、鼻や口は横を向いていたので、窒息の危険性はなかった旨主張し、乙第5(E助産婦作成の陳述書)、第38(同助産婦の刑事事件における供述調書)、甲第80(同供述調書)及び証人Eの証言中にも同旨の部分(以下「発見時の状況に関するE供述」という。 態で発見されたときの寝具の掛かり方及び頭の位置について控訴人は、本件事故の際、バスタオル及び毛布は、肩にまでしか掛けられていなかったし、Cの顔はやや曲がった状態で、鼻や口は横を向いていたので、窒息の危険性はなかった旨主張し、乙第5(E助産婦作成の陳述書)、第38(同助産婦の刑事事件における供述調書)、甲第80(同供述調書)及び証人Eの証言中にも同旨の部分(以下「発見時の状況に関するE供述」という。)がある。しかし、被控訴人Bは、バスタオル及び毛布は子供の頭が一部しか見えない程度に目深に掛けられており、Cの顔は下を向いていた旨、一貫して具体的に供述又は陳述しており(甲第5(被控訴人A作成の報告書)、第31(被控訴人Bの陳述書)、乙第29(同被控訴人の刑事事件における尋問調書)、同被控訴人の供述)、これを疑 向いていた旨、一貫して具体的に供述又は陳述しており(甲第5(被控訴人A作成の報告書)、第31(被控訴人Bの陳述書)、乙第29(同被控訴人の刑事事件における尋問調書)、同被控訴人の供述)、これを疑うべき根拠もない。他方、発見時の状況に関するE供述には、一部変遷したり、あいまいな点があり、Cの顔が横を向いていた理由であるという耳の見え方に関する供述は不自然であることを勘案すると、発見時の状況に関するE供述は採用することができない。また、控訴人は、E助産婦と被控訴人Bの立っていた位置関係からすれば、コットのすぐ真横で見ていたE助産婦の観察の方が正確であり、被控訴人Bはコットの斜め後方の離れた位置にいたので、毛布等が目深に掛かっていたように誤って見えたものであるなどと主張するが、両者がCを見た位置関係は、控訴人主張のように明確なものと認めることはできない上、当時の状況からすると、主張に係る位置に両者が終始立ち止まったままCを見ていたとは限らないので、控訴人の上記主張は、失当である。以上によれば、控訴人の前記主張は、採用することができない。3 Cが心肺停止の状態で発見されたときの嘔吐の痕跡について控訴人は、Cが心肺停止の状態で発見された際、コット内には、ミルクの付着等、嘔吐の形跡は認められなかった旨主張し、乙第38(E助産婦の刑事事件における供述調書)、証人E及び同Gの各証言は、これに沿うものである。しかし、被控訴人Bは、E助産婦がCを抱き起こした後、Cが使用していた枕代わりの白色のタオルの中央に黄色みを帯びた直径6、7センチメートルのしみがあるのを確認した旨供述している(乙第29(同被控訴人の刑事事件における尋問調書)も同旨。 際、コット内には、ミルクの付着等、嘔吐の形跡は認められなかった旨主張し、乙第38(E助産婦の刑事事件における供述調書)、証人E及び同Gの各証言は、これに沿うものである。しかし、被控訴人Bは、E助産婦がCを抱き起こした後、Cが使用していた枕代わりの白色のタオルの中央に黄色みを帯びた直径6、7センチメートルのしみがあるのを確認した旨供述している(乙第29(同被控訴人の刑事事件における尋問調書)も同旨。)。同供述は、一貫したものであって、気管内からミルクの残滓が引けた事実や、Cの緊急治療に当たったF のしみがあるのを確認した旨供述している(乙第29(同被控訴人の刑事事件における尋問調書)も同旨。)。同供述は、一貫したものであって、気管内からミルクの残滓が引けた事実や、Cの緊急治療に当たったF医師や婦人科を統括するL教授が、訴訟が予想される事態となる前には、本件事故につき、戻したミルクの誤嚥と考えられるとか、嘔吐してそこでうつ伏せになっていた旨被控訴人らに説明するなどしていた事実とも符合し、他にこれを疑うべき客観的根拠はない。また、甲第5(被控訴人A作成の報告書)及び第27(L教授との会談を録音したテープの反訳書)に上記のしみについての記載がないのは、両文書の目的、性質上、不自然ではなく、甲第31(被控訴人Bの陳述書)に上記のしみについての記載がない点も、同陳述書は必ずしも詳細・網羅的なものではない上、毛布等の掛かり方について陳述する部分があるものの、そもそもコット内の他の寝具の状況や嘔吐の有無等についての記載が何もないのであるから、枕にしみがあったという記載がないことを重視するのは相当ではない。これに対し、E助産婦は、抱き上げたCがチアノーゼ様を呈し、呼吸停止に陥っている状態にあることを発見し、動揺しながら少しでも早く蘇生措置を執らなければならないと感じて、別室へ走ったのであるから、その際、コット内に嘔吐の痕跡があることを確認し得なかったとしても、何ら不自然ではない(なお、E助産婦は、Cの蘇生措置が終わった後も、枕を触ったり、検査したりなどしていない。)。また、G医師は、その陳述書(乙第8)においても、「新生児室のC君が寝ていたコット内には、嘔吐の痕跡はなかったと記憶しています。」と記述しているが、同医師は、新生児室を通らずにCが運び込まれたNICU室へ出入りしており、コット内の嘔吐の痕跡の有無を確認し得る状況にはなかったとい たとしても、何ら不自然ではない(なお、E助産婦は、Cの蘇生措置が終わった後も、枕を触ったり、検査したりなどしていない。)。また、G医師は、その陳述書(乙第8)においても、「新生児室のC君が寝ていたコット内には、嘔吐の痕跡はなかったと記憶しています。」と記述しているが、同医師は、新生児室を通らずにCが運び込まれたNICU室へ出入りしており、コット内の嘔吐の痕跡の有無を確認し得る状況にはなかったとい 内には、嘔吐の痕跡はなかったと記憶しています。」と記述しているが、同医師は、新生児室を通らずにCが運び込まれたNICU室へ出入りしており、コット内の嘔吐の痕跡の有無を確認し得る状況にはなかったといわざるを得ない。以上によれば、前記被控訴人Bの供述により、コット内には、ミルクの嘔吐の形跡があったと認めるのが相当であり、控訴人の前記主張は、採用することができない。四争点1(Cの心肺停止の原因は窒息か、未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態か)について 1 前記認定事実によれば、① 被控訴人Bの出産は順調であって、Cは、出生時に異常はみられず、出生後の成育状況も良好で、泣き声も大きかった、②Cは、本件事故当時生後間もない新生児であって、まだうつ伏せ寝には慣れていなかった、③ 本件事故以前の遅くとも昭和62年ころから平成6年ころまでの間、乳幼児のうつ伏せ寝の適否自体については、専門家の間でも意見が分かれていたが、海外やあるいは国内でも、うつ伏せ寝にした場合に乳幼児の突然の死亡例の増加や、吐物吸引による乳幼児の窒息死の可能性があることが指摘されており、そのため、うつ伏せ寝にする場合には、アイロン台ぐらいの固さを目安とした固くて薄い敷布団を使うこと、枕や枕代わりのタオル等を使わないこと、細やかな気配りと十分な注意を忘れず、特に最初のうちは目を離さないなどの注意事項を必ず守るべきことが一般的に提唱されていた、④ ところが、本件事故当時のCの寝具は、控訴人病院において通常に使用されているものであって、新生児を仰向け寝で寝かせる際に使用されるものと同一であり、枕として、二つ折りにされたハンドタオルが用いられ、敷布団として、厚さ約5センチメートルのマットレス(汎用クッション材用の一般フォーム使用)のほかに、厚さ約2センチメートルのベ るものと同一であり、枕として、二つ折りにされたハンドタオルが用いられ、敷布団として、厚さ約5センチメートルのマットレス(汎用クッション材用の一般フォーム使用)のほかに、厚さ約2センチメートルのベッドパッド、三つ折りにされたバスタオル及び防水用ラミネートシートまで用いられており、さらに、コット内のCの上には、二つ折りのバスタオルと二つ折りの毛布が頭の一部が出る程度に掛けられており、うつ伏せ寝の際の寝具及びその用い方としては、不適切であり、危険性があった、⑤ E助産婦は、Cをうつ伏せ寝にした後、その動静に注意することをせず、Cを観察することのできないNICU室で勤務していたため、うつ伏せ寝及び上記寝具による危険性が更に増していた、⑥ うつ伏せ寝にした場合、寝具が適切でないときや乳児がうつ伏せ寝に慣れていないときなどに、顔が下を向いたまま、布団や枕等で鼻口部が圧迫され、低酸素状態となり、嘔吐を引き起こし、その結果吐物を吸引するなどして、窒息にまで至ることがあり得る、⑦ Cは、前記うつ伏せ寝にされた夜は、合計100ccの授乳のほか2回の授乳(量不明)という、これまでで最も量の多い授乳を受けており、うつ伏せ寝にする直前にも、吐乳や腹満が認められた、⑧ Cは心肺停止状態で発見され、E助産婦も直ちに吸引が必要と判断し、医師も挿管吸引をした、⑨ 本件事故後、気管内挿管前の吸引及び気管内挿管による吸引のいずれの際にも、Cの気管内からミルク残滓が多量に吸引された、⑩ 上記ミルク残滓の吸引後間もなく、Cの呼吸が十分ではないが復活した、⑪ Cが使用していた枕代わりのタオルの中央に黄色みを帯びた直径6、7センチメートルのしみがあり、吐乳の跡と推測することができる、⑫ 本件事故当時に緊急治療に当たった控訴人病院小児科のI医師等の記載した診療録には、記憶が新し 、気管内挿管前の吸引及び気管内挿管による吸引のいずれの際にも、Cの気管内からミルク残滓が多量に吸引された、⑩ 上記ミルク残滓の吸引後間もなく、Cの呼吸が十分ではないが復活した、⑪ Cが使用していた枕代わりのタオルの中央に黄色みを帯びた直径6、7センチメートルのしみがあり、吐乳の跡と推測することができる、⑫ 本件事故当時に緊急治療に当たった控訴人病院小児科のI医師等の記載した診療録には、記憶が新し のタオルの中央に黄色みを帯びた直径6、7センチメートルのしみがあり、吐乳の跡と推測することができる、⑫ 本件事故当時に緊急治療に当たった控訴人病院小児科のI医師等の記載した診療録には、記憶が新しいと考えられる本件事故の翌日分には、「milk誤嚥による窒息→呼吸停止→心臓停止の可能性大」と記載され、その後、検査、検討期間を置いた3月15日の分にも、「milk誤飲による窒息及び心停止状態で発見されました。」と記載されている、⑬ 本件事故当時の当直医であって、最初にCの治療に当たったF医師は、その約2時間後に、被控訴人らに対し、Cが、戻したミルクを再度飲み込み、それが肺に入ったために本件事故が生じた旨の説明を行っており、その更に約2時間後、緊急治療に当たった控訴人病院の医師5人が被控訴人らに対し説明した際も、本件事故の原因としてミルクの誤嚥が考えられる旨の説明を行っており、翌日行われた控訴人産婦人科部長のL教授の説明も、嘔吐の事故であるというものであって、訴訟が予想される事態となるまでは、控訴人病院の関係者等から、Cの本件事故ないし死亡が未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態による旨の説明はされていないということができる。以上によれば、Cの本件事故時の心肺停止の原因については、うつ伏せ寝にされた後、頭の重み及び枕代わりのタオル等で鼻口部が圧迫され、生後間もなく、うつ伏せ寝に慣れていなかったためや、敷布団、枕代わりのタオル及び掛け布団代わりのバスタオルと毛布に妨げられて、適切な窒息の回避行動をすることもできず、徐々に低酸素状態に陥り、吐乳や吐物の誤嚥も生じ、だれも観察している者がいなかったため、結局、窒息にまで至ったことによるものと推認するのが相当である。なお、低酸素状態及び吐物誤嚥のいずれが窒息の直接の原因であるかという点 吐乳や吐物の誤嚥も生じ、だれも観察している者がいなかったため、結局、窒息にまで至ったことによるものと推認するのが相当である。 布に妨げられて、適切な窒息の回避行動をすることもできず、徐々に低酸素状態に陥り、吐乳や吐物の誤嚥も生じ、だれも観察している者がいなかったため、結局、窒息にまで至ったことによるものと推認するのが相当である。なお、低酸素状態及び吐物誤嚥のいずれが窒息の直接の原因であるかという点 吐乳や吐物の誤嚥も生じ、だれも観察している者がいなかったため、結局、窒息にまで至ったことによるものと推認するのが相当である。なお、低酸素状態及び吐物誤嚥のいずれが窒息の直接の原因であるかという点については、気管内からのミルク残滓の吸引や本件事故に直面しその後のCの治療に当たった医師たちの当時の記録、発言等に照らし、吐物誤嚥が直接の原因である可能性が高いと考えられるが、断定することまではできない。しかし、いずれにせよ、吐物誤嚥やその重大化にも低酸素状態が影響しており、その両方が窒息の原因になったものと考えられるので、上記断定ができない点は本訴の結論に影響するものではない(後記注意義務違反の判断は、低酸素状態及び吐物誤嚥のいずれが窒息の直接の原因であるかによって左右されるものではない。)。2 上記認定に反する控訴人の主張は、要するに、医学的証明が完全ではないことを理由とするものか(民事上の不法行為責任を認定判断するには、このような証明は不要である。)、又は単に通常起こりにくい事故であることを強調するものか、あるいは、的確な証拠に基づかない独自の議論を展開するものにすぎず、次のとおり、いずれも採用することができない。(一) 控訴人は、新生児が吐乳した場合には溢乳し、新生児の口鼻周辺や枕辺りにはミルクの付着が認められるのが通常であるが、本件ではこのような付着は認められない旨主張するが、付着が認められることは、既に判示したとおりである。なお、口腔内にミルクの付着があったことを示す証拠はないが、他の間接事実や証拠を考え合わせれば、この点は、本件の結論を左右するものではない。(二) 控訴人は、うつ伏せ寝の場合、吐物は下に位置する口から出るはずで、位置的に上方になる気管に入ることはほとんどない旨主張する。しかし、前記認定のとおり、うつ 論を左右するものではない。(二) 控訴人は、うつ伏せ寝の場合、吐物は下に位置する口から出るはずで、位置的に上方になる気管に入ることはほとんどない旨主張する。しかし、前記認定のとおり、うつ伏せ寝の場合の窒息の危険性や吐物吸引の危険性を指摘する調査結果や文献があり、現に、乳児の吐物吸引による死亡事例にはうつ伏せ寝が多いという調査報告もある上、上記主張とは逆に、うつ伏せ寝にした場合には、かえって咽喉頭部に溜まった吐物を吸引しやすくなるなどの指摘もあることが認められる(甲第22)。 る口から出るはずで、位置的に上方になる気管に入ることはほとんどない旨主張する。しかし、前記認定のとおり、うつ伏せ寝の場合の窒息の危険性や吐物吸引の危険性を指摘する調査結果や文献があり、現に、乳児の吐物吸引による死亡事例にはうつ伏せ寝が多いという調査報告もある上、上記主張とは逆に、うつ伏せ寝にした場合には、かえって咽喉頭部に溜まった吐物を吸引しやすくなるなどの指摘もあることが認められる(甲第22)。したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。(三) 控訴人は、新生児でも、鼻口部が圧迫、閉塞されれば、自分で手を動かしたり、頭を支えたり、頭の位置を変えたり、顔を横向きにするなどして、窒息を回避することができる旨主張する。しかし、生後3日の新生児の運動能力が活発ではあるとしても、強いものではないことは公知の事実であり、Q教授(甲第60。同教授の意見書)、P教授(甲第74。同教授の刑事事件における尋問調書)及びR医学博士(乙第34。同博士の刑事事件における尋問調書)も、控訴人主張のような窒息の回避能力を否定しており、甲第79(ニュージーランドにおける調査結果に関する文献)もこれを裏付けるものである。控訴人の援用する甲第21、第65、第72、乙第19、第23については、新生児が色々な運動をしようとすることや、生後余り間を置かないころでも一瞬頭を持ち上げようとすることがあるという限度では採用することができるが、上記各証によっては、遷延性の酸素欠乏症やこれによる吐物誤嚥に至った生後3日の新生児であるCが、酸素欠乏状態の下、本件事故時に使用されていた寝具の中で、単に体位を変えようと試みるのではなく、実際に手を動かしたり、頭を上げたりすること 症やこれによる吐物誤嚥に至った生後3日の新生児であるCが、酸素欠乏状態の下、本件事故時に使用されていた寝具の中で、単に体位を変えようと試みるのではなく、実際に手を動かしたり、頭を上げたりすることにより、顔の向きを変えることができるはずであったという事実を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。(四) 控訴人は、① Cのような新生児であっても、吐物を誤嚥しそうになれば、防御機構が働き、反射的にこれを止めようとするため、誤嚥の可能性自体低いし、窒息するほどの大量の気管内吸引は通常起こらず、② しかも、窒息するほどの気管内吸引があったのであれば、Cは暴れたりするなどの不穏な体動を示し、NICU室にいるE助産婦がこれに気付くはずであるが、同助産婦は気付いておらず、③ また、身体の位置が移動したり、掛けられた布団にその痕跡が残ったり、着衣の異常が認められるはずであるが、E助産婦がCを抱き上げた時点で、そのような異常は全く認められなかった旨主張する。 るほどの大量の気管内吸引は通常起こらず、② しかも、窒息するほどの気管内吸引があったのであれば、Cは暴れたりするなどの不穏な体動を示し、NICU室にいるE助産婦がこれに気付くはずであるが、同助産婦は気付いておらず、③ また、身体の位置が移動したり、掛けられた布団にその痕跡が残ったり、着衣の異常が認められるはずであるが、E助産婦がCを抱き上げた時点で、そのような異常は全く認められなかった旨主張する。しかし、①の主張については、通常起こりにくい事故であるということをいうのであれば、通常起こりやすければ大問題なのであって、そのようなことは本訴訟の論点ではなく、また、一般的に起こり得ないということをいうのであれば、うつ伏せ寝の場合に、吐物誤嚥や窒息するほどの大量の気管内吸引が起こる可能性があることは、学説上も、また実際の報告例からも明らかであり、採用することができず、さらに、生後3日の乳児が本件事故時に使用されていた寝具の中でうつ伏せ寝にされた場合に、吐物誤嚥や窒息するほどの大量の気管内吸引が起こり得ないと主張するのであれば、このような事実を認めるに足りる的確な証拠はない。②の主張については、新生児室 寝具の中でうつ伏せ寝にされた場合に、吐物誤嚥や窒息するほどの大量の気管内吸引が起こり得ないと主張するのであれば、このような事実を認めるに足りる的確な証拠はない。②の主張については、新生児室とE助産婦が詰めていたNICU室との位置関係からして、同助産婦がCの異常に気付かなかったことは当然であるから、同主張を採用することはできない。③の主張についても、生後3日の乳幼児が、本件事故時に使用されていた寝具の中で窒息し、ないしは窒息するほどの吐物の気管内吸引があった場合に、身体の位置が移動したり、掛けられた布団にその痕跡が残ったり、着衣の異常が認められるか否か自体、そもそも明確ではない上、E助産婦が混乱した状況の中で急いでCを抱き上げた時点で、寝具の乱れ等をどの程度認識、記憶していたか明らかでないこと、生後3日の乳幼児の運動は活発ではあるとしても、強いものではなく、もちろん首も据わっていないこと(公知の事実である。)、Cは二つ折りのバスタオル及び二つ折りの毛布を頭が一部出る程度に掛けられた状態で発見されたことに照らせば、E助産婦が、寝具等に不穏な体動による移動等の痕跡があることに気付かず、あるいは実際にこのような痕跡がなかったとしても特に不自然ではないから、同主張も採用することはできない。 こと、生後3日の乳幼児の運動は活発ではあるとしても、強いものではなく、もちろん首も据わっていないこと(公知の事実である。)、Cは二つ折りのバスタオル及び二つ折りの毛布を頭が一部出る程度に掛けられた状態で発見されたことに照らせば、E助産婦が、寝具等に不穏な体動による移動等の痕跡があることに気付かず、あるいは実際にこのような痕跡がなかったとしても特に不自然ではないから、同主張も採用することはできない。(五) 控訴人は、Cの胸腹部のレントゲン写真によっても、Cにミルク誤嚥による窒息状態を窺わせる所見は認められず、吸引で両肺野に貯まったミルクを吸引することは不可能であるから、上記レントゲン写真は、Cの死因がミルク誤嚥による窒息ではないことを示すものである旨主張する。しかし、前記認定のとおり、ポータブル撮影機によるレントゲン写真の撮影は、気管内挿管後の吸引により、ミルクを含む液体が多量に吸引された後に行われており、ポータブル撮影機によ である旨主張する。しかし、前記認定のとおり、ポータブル撮影機によるレントゲン写真の撮影は、気管内挿管後の吸引により、ミルクを含む液体が多量に吸引された後に行われており、ポータブル撮影機によるレントゲン写真及びその後に撮影されたとするレントゲン写真上にミルク誤嚥の著明な状況が撮影されていなくても不自然ではない。ミルク誤嚥による窒息が一種の溺死状態であって、気管内挿管後の吸引で両肺野に貯まったミルクを吸引することは不可能であるという控訴人の主張は、新生児のミルク誤嚥と溺死との間の程度の違い及びレントゲン写真の判読可能性の問題を無視した議論であり、他の事実関係と総合考慮すれば、上記レントゲン写真は、Cがミルク誤嚥をしたという事実認定を覆すものではないというべきである。したがって、控訴人の上記主張は、採用することができない。(六) 控訴人は、最初の吸引は、心臓マッサージにより口腔内にあふれてきた液体を吸引したものであり、気管挿管後に、挿管チューブを通して気管支から引けた乳白色の粘性の低い液体も、心臓マッサージ、バギングの蘇生措置等によって気管への移動が生じたものである旨主張する。しかし、前記認定事実によれば、Cは、既に呼吸停止の状態で発見され、吐乳の跡もあって、E助産婦も直ちに吸引が必要と判断しており、また、F医師は、I医師がNICU室に到着するまでの間に行った心臓マッサージ中にCの口から吹き出したミルク残滓を含む液体を気管内から多量に吸引し、その後に心臓マッサージを再開継続させ、更にその後にG医師が挿管吸引した際に再び乳白色の液体が多量に吸引され、その後呼吸が再開したというのである。 定事実によれば、Cは、既に呼吸停止の状態で発見され、吐乳の跡もあって、E助産婦も直ちに吸引が必要と判断しており、また、F医師は、I医師がNICU室に到着するまでの間に行った心臓マッサージ中にCの口から吹き出したミルク残滓を含む液体を気管内から多量に吸引し、その後に心臓マッサージを再開継続させ、更にその後にG医師が挿管吸引した際に再び乳白色の液体が多量に吸引され、その後呼吸が再開したというのである。したがって、最初に吸引された液体についても、心臓マッサージ等によって胃から嘔吐されたものであってミルクの誤嚥によるものではない 白色の液体が多量に吸引され、その後呼吸が再開したというのである。したがって、最初に吸引された液体についても、心臓マッサージ等によって胃から嘔吐されたものであってミルクの誤嚥によるものではないと断ずることはできない上、仮に、最初に吸引された液体が心臓マッサージ等によって胃から嘔吐されたものであるとしても、これが多量と認識されることになる程度に気管等に移動し、その移動した液体が貯留して、後に挿管吸引されたものであると認めることはできない。なお、控訴人は、吸引量が5ccないし10ccにすぎない旨主張するが、吸引したのが控訴人の雇用する医師であって、診療録に「多量」と記載されていることからすると、これが5ccないし10ccであったことを認めるに足りる的確な証拠を控訴人が提出しない限り、前記認定に係る「多量」という評価を覆すことはできないというべきであるところ、そのような証拠は提出されていない。したがって、控訴人の前記主張は、いずれも採用することができない。(七) 控訴人は、Cがミルク誤嚥により窒息したのであれば、バギングが行われていることも考え併せると、気管やその末梢に広範囲に多量のミルクが存在しているはずであるが、そのような多量のミルクが存在していたという所見はない旨主張する。しかし、レントゲン写真の問題については、既に判示したとおりであり、ミルク残滓の吸引を含む前記認定事実を総合すれば、ミルクの誤嚥を認定するに十分である。控訴人の上記主張は、採用することができない。(八) 控訴人は、嘔吐したミルクを誤嚥して窒息したのであれば、挿管チューブから引けた液体に細小泡沫が存在したはずであるが、本件で吸引された液体は、いずれも粘調性の低いさらさらしたものであって細小泡沫は認められていない旨主張し、吸引を行ったG医師も、そ 示したとおりであり、ミルク残滓の吸引を含む前記認定事実を総合すれば、ミルクの誤嚥を認定するに十分である。控訴人の上記主張は、採用することができない。(八) 控訴人は、嘔吐したミルクを誤嚥して窒息したのであれば、挿管チューブから引けた液体に細小泡沫が存在したはずであるが、本件で吸引された液体は、いずれも粘調性の低いさらさらしたものであって細小泡沫は認められていない旨主張し、吸引を行ったG医師も、そ れば、挿管チューブから引けた液体に細小泡沫が存在したはずであるが、本件で吸引された液体は、いずれも粘調性の低いさらさらしたものであって細小泡沫は認められていない旨主張し、吸引を行ったG医師も、その陳述書(乙第8)において、吸引されたミルク様のものはさらさらしており固まりや気泡は認めなかったと、上記主張に沿う記述をしている。しかし、G医師は、上記陳述書の記載にもかかわらず、Cの小児科入院診療録(甲第9)においては、「粘調なmilkかすのようなもの多量にひけ」と記載しており(12丁裏)、同記載の方が担当の医師によりその当時の印象に残ったことを端的に表現したものとして信用性が高いと評価すべきところ、同診療録の記載においては、「さらさら」との文言は使用されておらず、逆に「粘調」という文言が使用されていることからみて、吸引された液体の粘調度は高かったものと認めるのが相当である。さらに、証人Gの証言によっても、引けた液体は、チューブの中を、最初は1センチぐらいの量がずずずずずっと行って、その後細かい途切れ途切れの白い物質がずずずずずっと引けてきたということであり、細小泡沫が存在した可能性もあると考えられる。そうすると、細小泡沫の存在の確認は、控訴人が主張するように、ミルク誤嚥の事実を確認する有力な方法となるとしても、唯一の方法とは認められない上、吸引したのは控訴人病院の勤務医師であって、その液体を控訴人病院が保管も検査もしていないこと(甲第9、弁論の全趣旨)からすれば、本件においては、細小泡沫の存在につき医学的証明が尽くされていないことをもって、ミルク誤嚥の事実を覆すことはできない。したがって、控訴人の前記主張は、採用することができない。(九) 控訴人は、原判決は、本件事故の際に用いられていた寝具がうつ伏せ寝に適さないと判断している ミルク誤嚥の事実を覆すことはできない。したがって、控訴人の前記主張は、採用することができない。 (甲第9、弁論の全趣旨)からすれば、本件においては、細小泡沫の存在につき医学的証明が尽くされていないことをもって、ミルク誤嚥の事実を覆すことはできない。したがって、控訴人の前記主張は、採用することができない。(九) 控訴人は、原判決は、本件事故の際に用いられていた寝具がうつ伏せ寝に適さないと判断している ミルク誤嚥の事実を覆すことはできない。したがって、控訴人の前記主張は、採用することができない。(九) 控訴人は、原判決は、本件事故の際に用いられていた寝具がうつ伏せ寝に適さないと判断しているが、原審は、本件事故の際にどのような形状、材質の寝具が用いられていたかを審理しておらず、上記事実を認めるに足りる証拠は何もなく、かえって、本件事故当時使用されていた寝具は、Cの顔が下向きになったとき敷布団に潜るような状況になるものではなく、また、新生児が窒息するような事態に至るのは、タオルや毛布程度の重量では足りず、新生児を敷布団に押し付けるようなことをした場合に限られるなどと主張し、乙第25の1(N教授の鑑定書)も同旨である。しかし、本件事故の際に用いられていた寝具が、仰向け寝の際に用いられていたものと同一であって、うつ伏せ寝には不適切であることは、前記認定から明らかであり、甲第6の3(写真の番号15、21、22)、第11、第21、第60(Q教授作成の意見書)、第68ないし第70、第74(P教授の刑事事件における尋問調書)、第76(R医学博士の検察官に対する供述調書)、第78(M教授作成の意見書)、乙第26(P教授の刑事事件における尋問調書)、第34(R医学博士の刑事事件における尋問調書)等に照らしても、控訴人の上記主張は、採用することができない。控訴人の主張及び乙第25の1は、要するにうつ伏せ寝による窒息死があり得ないこと及び生後3日の新生児に遷延性の窒息の回避能力があることを前提とするものであるところ、このような前提を採ることができないことは、既に判示したとおりである。また、遷延性の酸素欠乏症が起きるには、顔が敷布団に深く潜るような状況になることまでも必要なわけではない。なお、控訴人の援用する乙第16及び第17 とができないことは、既に判示したとおりである。また、遷延性の酸素欠乏症が起きるには、顔が敷布団に深く潜るような状況になることまでも必要なわけではない。なお、控訴人の援用する乙第16及び第17については、乙第16は、マットレスのみに関するものであって、本件事故当時には、ベッドパッドやタオル、防水用ラミネートシート等が重ねられていたこと、マットレスも、汎用クッション材用の一般フォームであって、高硬度フォームではない上、使用の経年変化により硬度がどう変わるのかという検討はされていないこと、乙第17は、底部の平たい箱を載せて凹み方を調べたものにすぎず、人間の顔を載せた場合の状況や遷延性の酸素欠乏症の可能性を検証するものではないことからすると、上記各証によって、寝具の適否に関する前記認定判断を覆すことはできない。 等が重ねられていたこと、マットレスも、汎用クッション材用の一般フォームであって、高硬度フォームではない上、使用の経年変化により硬度がどう変わるのかという検討はされていないこと、乙第17は、底部の平たい箱を載せて凹み方を調べたものにすぎず、人間の顔を載せた場合の状況や遷延性の酸素欠乏症の可能性を検証するものではないことからすると、上記各証によって、寝具の適否に関する前記認定判断を覆すことはできない。したがって、控訴人の前記主張は、採用することができない。(一〇) 控訴人は、Cの心肺停止の原因は未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態である旨主張する。しかし、前記認定事実によれば、Cの死亡原因については、別の発生機序が認められ、しかも、本件では、Cにつき未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態を疑わせるような何らかの負因や兆候が窺われるものではない上、本件事故及びCの状態を最もよく知っていたはずの控訴人病院の担当医師たちも、本件訴訟の審理が進行するまでは、いずれも、本件事故が未然型乳幼児突然死症候群ないし乳幼児突発性危急事態によるものであるとの診療録への記載や被控訴人らへの説明を一切していなかったというのであるから、控訴人の上記主張は、採用することができない。(一一) 控訴人は、原判決の認定したうつ伏せ寝にした場合の吐乳吸引による窒息という本件事故の発生機序は、全く証拠に基づかない かったというのであるから、控訴人の上記主張は、採用することができない。(一一) 控訴人は、原判決の認定したうつ伏せ寝にした場合の吐乳吸引による窒息という本件事故の発生機序は、全く証拠に基づかない論理性に欠けた恣意的な事実認定であって、何ら医学的検討をせず、極めて安易に拙速主義に基づいて、認定判断されたものであり、被控訴人らが依拠する甲第32、第60、第62、第74、第76、第78、乙第26、第34及び第35にも、被控訴人ら主張の機序による心肺停止が起こったと認められる旨の記載はないなどと主張する。しかし、前記認定に係る酸素欠乏状態及び吐乳誤嚥による窒息という本件事故の発生機序を裏付ける証拠は、前掲の甲第12を始めとして、甲第23、第32、第58、第60、第62、第63、第74、第76、乙第34等が存在し、かつ、前記認定に係る種々の間接事実があるのであって、上記発生機序を認めることが証拠に基づかない論理性に欠けた事実認定であるということはできない。 たと認められる旨の記載はないなどと主張する。しかし、前記認定に係る酸素欠乏状態及び吐乳誤嚥による窒息という本件事故の発生機序を裏付ける証拠は、前掲の甲第12を始めとして、甲第23、第32、第58、第60、第62、第63、第74、第76、乙第34等が存在し、かつ、前記認定に係る種々の間接事実があるのであって、上記発生機序を認めることが証拠に基づかない論理性に欠けた事実認定であるということはできない。控訴人の上記主張は、関係証拠を真摯に検討することを怠り、あるいは、うつ伏せ寝に慣れていない生後間もない新生児の病院における事故という本件事案の特質を捨象して、無理にうつ伏せ寝一般の当否を論ずるものであって、到底採用することができない。なお、控訴人は、臨床医以外の研究者や法医学者は実際の乳幼児の突然死の状況や、乳児の運動能力等を知らないので、本件事故の原因を判断することのできる専門家とはいえない旨主張するが、独自の議論であって採用することができない(控訴人は、甲第74(P教授の刑事事件における尋問調書)について縷々批判するが、同教授が動脈血のPHの低下(アシド-シス)という立論の根拠が誤りであることを自認しているので立論が成り立たない旨の批判は、曲解であって、採用することができず、他 尋問調書)について縷々批判するが、同教授が動脈血のPHの低下(アシド-シス)という立論の根拠が誤りであることを自認しているので立論が成り立たない旨の批判は、曲解であって、採用することができず、他の点も、本判決の採用しない事実を前提としたり、いたずらに厳密な医学的立証を求めるものであって、採用することができない。また、控訴人は、乙第34(R医学博士の刑事事件における尋問調書)についても科学的・合理的根拠がない旨縷々批判するが、いずれも、厳密な医学的立証を求めたり、本判決の採用しない事実を前提に独自の議論を展開するものであって、採用することができない。甲第78(M教授作成の意見書)に対する批判も、的を射ない議論や、本件事故の際の寝具の状況とCが生後3日であってうつ伏せ寝に慣れていなかったことを正当に勘案しない議論、あるいは証拠の独自の評価をいうものにすぎず、採用することができない。)。(一二) 控訴人は、小児科の専門家であるN教授の鑑定書(乙第 25の1)によれば、Cの死因がうつ伏せ寝による窒息死であるとは考えられない旨主張する。 ができない。甲第78(M教授作成の意見書)に対する批判も、的を射ない議論や、本件事故の際の寝具の状況とCが生後3日であってうつ伏せ寝に慣れていなかったことを正当に勘案しない議論、あるいは証拠の独自の評価をいうものにすぎず、採用することができない。)。(一二) 控訴人は、小児科の専門家であるN教授の鑑定書(乙第 25の1)によれば、Cの死因がうつ伏せ寝による窒息死であるとは考えられない旨主張する。しかし、同鑑定書のような考え方では、現に乳児のうつ伏せ寝による窒息死や吐物誤嚥による死亡事故が相当数報告されていることと矛盾する上、同鑑定書は、既に判示した、うつ伏せ寝が条件次第では危険性を有すること、生後3日目の新生児の遷延性の窒息の回避能力が十分ではないこと、本件事故当時使用されてい寝具がうつ伏せ寝に適切なものではないことなど、重要な前提事実につき、前記認定判断とは全く異なる前提を基に論じているものであるから、これを採用することができない。(一三) 控訴人は、本件鑑定の結果が、① 本件事故当時、新生児をうつ伏せ寝にさせることが新生児にとって危険であるから避けるべきであるなどという一般的知見は るから、これを採用することができない。(一三) 控訴人は、本件鑑定の結果が、① 本件事故当時、新生児をうつ伏せ寝にさせることが新生児にとって危険であるから避けるべきであるなどという一般的知見は、一般臨床の場では存在せず、 ② Cの心肺停止の原因は不明であり、③ 枕等による鼻口部圧迫による酸素欠乏状態と、これにより惹起された吐乳、吐乳吸引という一連の機序により呼吸停止、心停止状態となった可能性は極めて少ないなどとしている点を有利に援用している。しかし、本件鑑定の結果は、長期間の検討時間があったにもかかわらず、そもそも相当に簡易な内容のものである上、うつ伏せ寝にした措置が適切であって、ミルクの誤嚥及びこれによる窒息の可能性が極めて少ないとしている部分は、① Cが嘔吐しやすい児である事実、② 口や顔の周りに吐物がなかった事実、③ 早期新生児及び嘔吐の見られる児にはうつ伏せ寝が適するという見解、④ うつ伏せ寝の方が吐物の誤嚥は少ないので、吐く可能性があるときはうつ伏せ寝にすべきであるという見解、⑤ 枕代わりのタオルの使用は差し支えないという見解、⑥ 病的新生児を年間200人から300人みており、そのほとんどをうつ伏せ寝で管理してきたが、うつ伏せ寝で口が塞がって窒息しそうになっていたということを一度も経験したことがないという事実を前提とするものである。 る児にはうつ伏せ寝が適するという見解、④ うつ伏せ寝の方が吐物の誤嚥は少ないので、吐く可能性があるときはうつ伏せ寝にすべきであるという見解、⑤ 枕代わりのタオルの使用は差し支えないという見解、⑥ 病的新生児を年間200人から300人みており、そのほとんどをうつ伏せ寝で管理してきたが、うつ伏せ寝で口が塞がって窒息しそうになっていたということを一度も経験したことがないという事実を前提とするものである。しかし、①及び②は本判決の認定するところではなく、殊に、本件における重要な事実である嘔吐の跡及びミルク残滓の吸引に関する詳細な検討を欠いている点で、本件鑑定の結果は、既に採用することのできないものである。また、③ の見解及び⑥の事実については、鑑定人は、Cが嘔吐しやすい病児であることと、呼吸心拍モニター装着という条件下でのうつ伏せ寝を前提に論じており、本件のように、健常児 のできないものである。また、③ の見解及び⑥の事実については、鑑定人は、Cが嘔吐しやすい病児であることと、呼吸心拍モニター装着という条件下でのうつ伏せ寝を前提に論じており、本件のように、健常児であって、呼吸心拍モニターはもちろん肉眼による観察さえされていない事案に即した議論ではない。④及び⑤については、前記認定のとおり、 これと異なる見解が文献等で公表されており、鑑定人の見解のみによって、本件の結論を左右することはできない。さらに、本件鑑定の結果は、控訴人病院で使用されている寝具全体の状況及びうつ伏せ寝にさせた以降の継続的観察の懈怠という本件で最も重要な点について、実質的検討をせず、殊に継続的観察の懈怠については無視して判断している。したがって、本件鑑定の結果は、本件の結論に影響するものではないというべきである。また、乙第33(O医師の刑事事件における尋問調書)も、本件鑑定の結果と同結論ではあるが、同証によれば、同医師は、さらに、① 本件事故の際に使用されていたものと同種の寝具は、 一般の病院で通常使われているものと同様であって、不適切なものではないこと、② Cの気管から吸引されたミルクは蘇生措置中に胃から気管に移動したものであること、③ 生後3日の新生児でも、顔を左右に動かすことができ、下を向けて寝せても自分で横を向くこと、④ 本件事故は、内因的な病気による可能性が高いことを証言している。しかし、これらは、必ずしも本件鑑定の結果においては言及されていないものである上、①については、顔が埋まってしまうほど柔らかい布団や羊毛がふさふさしているもののみが不適切であるという同医師の見解を前提としているところ、前記認定事実に照らし、このような見解を採用することはできない。 動かすことができ、下を向けて寝せても自分で横を向くこと、④ 本件事故は、内因的な病気による可能性が高いことを証言している。しかし、これらは、必ずしも本件鑑定の結果においては言及されていないものである上、①については、顔が埋まってしまうほど柔らかい布団や羊毛がふさふさしているもののみが不適切であるという同医師の見解を前提としているところ、前記認定事実に照らし、このような見解を採用することはできない。②についても、実際の蘇生措置の経過と呼吸の や羊毛がふさふさしているもののみが不適切であるという同医師の見解を前提としているところ、前記認定事実に照らし、このような見解を採用することはできない。②についても、実際の蘇生措置の経過と呼吸の再開時期等を厳密に検証しないまま、蘇生措置中の移動であると断定するものであり、既に判示したとおり、このような見解は採用することができない。③に関する証言は、生後3日の新生児に関する点は推測に基づくと考えられる部分が多い上、酸素が足りなくなった場合の回避行動自体は見た経験がないというのであるから、これを採用することはできない。④も、具体性に乏しく採用することができない。なお、本件の訴訟経緯に照らし若干付言するに、当裁判所に顕著な事実、乙第33、甲第81、第82及び第84によれば、本件鑑定に当たっては、控訴人訴訟代理人から中立的な者を選ぶべきであるとの意見が出されて、鑑定人が推薦されたものであるが、実際には、鑑定人は、元々乳幼児のうつ伏せ寝の実行者であって、一部の控訴人訴訟代理人の知人であったことが認められるので、この点からも、本件鑑定の結果の証明力は、高くないものといわざるを得ない。五争点2(控訴人の責任)について1(一) 前記のとおり、本件事故当時、新生児をうつ伏せ寝にする場合には、アイロン台ぐらいの固さを目安とした固くて薄い敷布団を使い、枕や枕代わりのタオル等を使わず、細やかな気配りと十分な注意を忘れず、特に最初のうちは目を離さないなどの注意事項を必ず守るべきことが提唱されており、控訴人病院自身も同様な趣旨を記載した小冊子(甲第11)を産婦に配っていたのであるから、総合病院である控訴人病院の産婦人科病棟及び産婦人科看護婦を管理、監督する管理・監督者(本訴において氏名を特定することはできないが、存在することは明らかであり、 1)を産婦に配っていたのであるから、総合病院である控訴人病院の産婦人科病棟及び産婦人科看護婦を管理、監督する管理・監督者(本訴において氏名を特定することはできないが、存在することは明らかであり、以下「本件管理・監督者」という。 のであるから、総合病院である控訴人病院の産婦人科病棟及び産婦人科看護婦を管理、監督する管理・監督者(本訴において氏名を特定することはできないが、存在することは明らかであり、 1)を産婦に配っていたのであるから、総合病院である控訴人病院の産婦人科病棟及び産婦人科看護婦を管理、監督する管理・監督者(本訴において氏名を特定することはできないが、存在することは明らかであり、以下「本件管理・監督者」という。)並びに同科新生児室担当の看護婦であるE助産婦は、少なくとも生後間もない新生児をうつ伏せ寝にする場合には、上記のような注意をすべきであることを知っていたか、又は容易に知り得たものと認められる。(二) したがって、総合病院にあって産婦人科の専門的医療を提供すべき本件管理・監督者は、少なくとも生後間もない新生児をうつ伏せ寝にする場合には、それに適した寝具、すなわち当該新生児が低酸素状態となったり、それにより嘔吐し、吐乳を吸引したりすることのないように、薄く、材質の硬い敷布団を使用し、軽い上掛け、タオルケット等の掛け布団を準備して、これを浅く掛けるか、又は何も掛けず、枕や枕代わりのタオルを使用しないこととした上、新生児室担当の看護婦に対し、生後間もない新生児をうつ伏せ寝にする場合にはそのような寝具を用い、これがなければ、うつ伏せ寝にしてはならないことを徹底させると同時に、寝かせた後も、当該新生児に異常が生じていないかどうかという点(すなわち、鼻口が圧迫、閉塞された状態となっていないか、吐物による気道閉塞が生じていないか、あるいは呼吸及び心拍の異常がないかなどという点)を肉眼又は機器を使用して継続的に観察又は監視するように指導する注意義務があるものというべきである。(三) また、同じく、総合病院である本件病院の産婦人科新生児室の担当看護婦も、生後間もない新生児をうつ伏せ寝にする場合には、前記のようなうつ伏せ寝に適した寝具を使用し、寝かせた後も肉眼又は機器により継続的に観察又は監視すべき注意義務があるとい 人科新生児室の担当看護婦も、生後間もない新生児をうつ伏せ寝にする場合には、前記のようなうつ伏せ寝に適した寝具を使用し、寝かせた後も肉眼又は機器により継続的に観察又は監視すべき注意義務があるということができる。特に本件では、Cは生後3日であって、うつ伏せ寝に慣れておらず、E助産婦は、前記認定のとおり、Cに対し、1月8日午前2時30分以降、これまでで最も量の多いミルクを与え、午前5時40分ころにもミルクを与えたが、ミルクを吐き、腹満もあったことから、再度吐く可能性があることを認識していたというのであるから、新生児の看護の専門家としては、このように嘔吐する可能性が高く、かつ、うつ伏せ寝に慣れていない新生児をうつ伏せ寝で寝かせる場合には、寝具に十分な注意を払うとともに、寝かせた後、当該新生児に異常が生じていないかどうかという点を肉眼又は機器を使用して慎重に継続的に観察又は監視すべき注意義務があるものというべきである。 を吐き、腹満もあったことから、再度吐く可能性があることを認識していたというのであるから、新生児の看護の専門家としては、このように嘔吐する可能性が高く、かつ、うつ伏せ寝に慣れていない新生児をうつ伏せ寝で寝かせる場合には、寝具に十分な注意を払うとともに、寝かせた後、当該新生児に異常が生じていないかどうかという点を肉眼又は機器を使用して慎重に継続的に観察又は監視すべき注意義務があるものというべきである。2(一) しかし、本件管理・監督者は、新生児室担当の看護婦に対し、 生後間もない新生児をうつ伏せ寝にする場合に前記のような寝具を使用することを徹底させることを怠っていたのみならず、当該新生児に異常が生じていないかどうかという点を肉眼又は機器を使用して継続的に観察又は監視するように指導することを怠っていたものというべきであり、民事上の不法行為の原因となる注意義務違反と過失が認められる。(二) そして、E助産婦も、前記注意義務を怠り、前記認定のとおり、新生児を仰向け寝で寝かせる場合に使用する寝具と同じ敷布団等を用い、枕としてハンドタオルを二つ折りにしたものを使用し、二つ折りのバスタオル及び二つ折りの毛布を掛け、午前6時少し前に新生児室を離れた後は、継続的にNICU室に詰めて、Cのいる新生児室に入らず、さらに、NICU室か タオルを二つ折りにしたものを使用し、二つ折りのバスタオル及び二つ折りの毛布を掛け、午前6時少し前に新生児室を離れた後は、継続的にNICU室に詰めて、Cのいる新生児室に入らず、さらに、NICU室からでもCが見える位置に同人のコットを移動させたり、監視するために機器を使用するなどの措置も執らず、結局、呼吸停止状態のCを被控訴人Bと共に発見するまで、短く見積もっても約30分間一度もCの状態を観察又は監視していなかったのであり、以上の点において、民事上の不法行為の原因となる注意義務違反と過失が認められる。なお、本件管理・監督者は、前記注意義務違反において、単に指導を怠るのみならず、そもそも前記のような生後間もない新生児のうつ伏せ寝に適する寝具を準備せず、NICU室に詰めている場合には同室を出なければ新生児室内のコットを観察することができないような病棟の構造としながら、本件事故当日、NICU室に重症の新生児がおり、新生児室にも相当数の新生児がいるのに、両室を併せて担当する一人の当直看護婦しか配置していなかったのであるから、その責任は重大であり、その反面、本件事故の責任のうちE助産婦の負うべき部分は相対的には小さく、同助産婦には非難し難い点もあるということができる。 ている場合には同室を出なければ新生児室内のコットを観察することができないような病棟の構造としながら、本件事故当日、NICU室に重症の新生児がおり、新生児室にも相当数の新生児がいるのに、両室を併せて担当する一人の当直看護婦しか配置していなかったのであるから、その責任は重大であり、その反面、本件事故の責任のうちE助産婦の負うべき部分は相対的には小さく、同助産婦には非難し難い点もあるということができる。しかしながら、総合病院の産婦人科に勤務し、新生児の看護の専門家であって、当時ただ一人の新生児室担当看護婦であったE助産婦としては、前記のような生後間もない新生児のうつ伏せ寝に適する寝具が手近にないならば、前示のとおり、嘔吐する可能性が高く、うつ伏せ寝に慣れていない生後3日の新生児であったCをうつ伏せ寝にすべきではないのであり、また、新生児室とNICU室の両方に用務があるのであれば、両室を巡回するとか、あるいは、それが事実上困難であるとすれば、呼吸心拍モニター等の機器を使用するとか Cをうつ伏せ寝にすべきではないのであり、また、新生児室とNICU室の両方に用務があるのであれば、両室を巡回するとか、あるいは、それが事実上困難であるとすれば、呼吸心拍モニター等の機器を使用するとか、上司若しくは当直医に相談するなど何らかの適切な措置を執る義務があるといわざるを得ないのであるから、法的には、前示のとおり、注意義務違反と過失が認められるといわざるを得ず、この注意義務違反と本件管理・監督者の前記注意義務違反とは、共同不法行為の関係にあるというべきである。(三) 控訴人は、原判決は、継続的に観察すべき注意義務があるとするが、うつ伏せ寝にした場合、どの程度の頻度で何分おきに乳児を観察すべきなのか何ら具体的に示していない上、そのようにすべき医学的根拠を何ら具体的に述べていない旨主張する。しかし、本件のような状況でうつ伏せ寝に慣れていない生後3日の新生児をうつ伏せ寝にした場合には、総合病院において新生児を担当する看護婦としては、肉眼又は機器により当該新生児の状態を慎重に継続的に観察すべき注意義務があるということは、既に判示したところから明らかである。また、慎重に継続的というのは、このような新生児の深刻な事故を見逃さない程度に目を離さないという意味に解すべきである。目を離し得る具体的な時間については、甲第74(P教授の刑事事件における尋問調書)、第76(R医学博士の検察官に対する供述調書)、乙第34(同博士の刑事事件における尋問調書)等によれば、おおむね10分前後が目を離すことのできる最大限度ではないかと推測されるが、窒息に至る可能性のある時間は寝具の状況や新生児の個人差にも左右されるであろうから、これを明確に認定することは困難である。 意味に解すべきである。目を離し得る具体的な時間については、甲第74(P教授の刑事事件における尋問調書)、第76(R医学博士の検察官に対する供述調書)、乙第34(同博士の刑事事件における尋問調書)等によれば、おおむね10分前後が目を離すことのできる最大限度ではないかと推測されるが、窒息に至る可能性のある時間は寝具の状況や新生児の個人差にも左右されるであろうから、これを明確に認定することは困難である。しかし、本件では、E助産婦は短く見積もっても約30分間、Cの状態を観察しておらず、しかも、 性のある時間は寝具の状況や新生児の個人差にも左右されるであろうから、これを明確に認定することは困難である。しかし、本件では、E助産婦は短く見積もっても約30分間、Cの状態を観察しておらず、しかも、現に深刻な事故を生ずるほどの間新生児室から離れていたことになるのであるから、これが長すぎる間隔であって、慎重な継続的観察ないし監視という注意義務に違反することは明らかである。したがって、本訴においては、目を離し得る時間の限界を認定する必要はない。以上のとおり、控訴人の前記主張は、採用することができない。3 本件管理・監督者及びE助産婦が前記各注意義務を果たしていれば、Cは前記認定の機序により心肺停止に至ることはなかったか、あるいは、短時間の心肺停止により発見され、重度の脳性麻痺の障害を後遺することがなかったものであるが、本件管理・監督者及びE助産婦が前記各注意義務を怠った結果、Cは、蘇生措置により一命を取り留めたものの、低酸素脳症となり重度の脳性麻痺の障害を後遺し、その脳性麻痺により気道分泌物の排泄に支障が生じ、気道分泌物が気道に貯留しやすくなっていたため、気道分泌物による窒息により死亡したものである(甲第2、第3、第9、第24、第25、第32、弁論の全趣旨)。したがって、本件管理・監督者及びE助産婦は、Cの死亡につき、共同不法行為責任を負うというべきである。4 そして、本件管理・監督者及びE助産婦は控訴人の被用者であることが明らかであって、いずれも控訴人病院の業務に関して前記各注意義務に違反したのであるから、控訴人は、Cの死亡について、民法第715条の使用者責任を負うものというべきである。なお、被控訴人らは、同条の使用者責任のほか、同法第709条による控訴人自身の不法行為責任を主張するが、後者の主張は、事実の問題としては、本件管理・ いうべきである。4 そして、本件管理・監督者及びE助産婦は控訴人の被用者であることが明らかであって、いずれも控訴人病院の業務に関して前記各注意義務に違反したのであるから、控訴人は、Cの死亡について、民法第715条の使用者責任を負うものというべきである。なお、被控訴人らは、同条の使用者責任のほか、同法第709条による控訴人自身の不法行為責任を主張するが、後者の主張は、事実の問題としては、本件管理・ 715条の使用者責任を負うものというべきである。なお、被控訴人らは、同条の使用者責任のほか、同法第709条による控訴人自身の不法行為責任を主張するが、後者の主張は、事実の問題としては、本件管理・監督者の指導監督義務違反をいうものであって、具体的な論点も同一で控訴人に対する不意打ちのおそれもないので、当裁判所は、これを本件管理・監督者の指導監督義務違反につき同法第715条の使用者責任を問うものと法律構成して判断するものである。六争点3(損害賠償金の額)について 1 Cの被った損害について(一) 逸失利益被控訴人ら主張のとおりの理由により、Cの逸失利益を2487万5300円と認めるのが相当である。(二) 慰藉料前記認定のCの死亡に至る経緯、逸失利益の額等を考慮すると、Cの慰謝料としては1500万円が相当である。(三) 葬儀費用100万円を相当因果関係のある損害と認める。(四) 入院雑費被控訴人ら主張のとおりの理由により、入院雑費を27万8200円と認める。(五) 近親者の通院交通費及び診断書料これらは、Cの損害といえるか疑問がある上、具体的な金額についての立証がないので、これを認めることができない。(六) 合計上記(一)から(四)までの損害金の合計は4115万3500円となり、被控訴人らは、相続により、その2分の1である2057万6750円ずつCの損害賠償請求権を取得したものと認められる。2 被控訴人ら固有の損害について(一) 慰藉料本件事故の態様、Cの死亡に至る経緯その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、被控訴人ら固有の慰藉料を、それぞれ250万円と認めるのが相当である。(二) 弁護士費用本件訴訟の内容、訴訟追行の態様、訴訟の経 死亡に至る経緯その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、被控訴人ら固有の慰藉料を、それぞれ250万円と認めるのが相当である。(二) 弁護士費用本件訴訟の内容、訴訟追行の態様、訴訟の経緯、認容額等を考慮すると、被控訴人らが、本件不法行為による損害として賠償を求め得る弁護士費用は、被控訴人らそれぞれにつき少なくとも120万円以上であると認めることができる。 費用本件訴訟の内容、訴訟追行の態様、訴訟の経 死亡に至る経緯その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、被控訴人ら固有の慰藉料を、それぞれ250万円と認めるのが相当である。(二) 弁護士費用本件訴訟の内容、訴訟追行の態様、訴訟の経緯、認容額等を考慮すると、被控訴人らが、本件不法行為による損害として賠償を求め得る弁護士費用は、被控訴人らそれぞれにつき少なくとも120万円以上であると認めることができる。七結論以上によれば、被控訴人らの本訴請求のうち、控訴人に対し、それぞれ金2427万6750円及びこれに対する不法行為の日である平成7年1月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は、理由がある。よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第67条第1項、第61条を適用して、主文のとおり判決する。東京高等裁判所第5民事部裁判長裁判官飯田敏彦裁判官持本健司裁判官菅野博之
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