【DRY-RUN】○ 主文 原判決を取消す。 被控訴人らの請求を棄却する。 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人らの負担とする。 ○ 事実 控訴人は、主文同旨の判決を求め、被控訴人らは、控訴棄却の判決を求めた。 当事者
○ 主文原判決を取消す。 被控訴人らの請求を棄却する。 訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人らの負担とする。 ○ 事実控訴人は、主文同旨の判決を求め、被控訴人らは、控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の主張及び証拠関係は、次に附加訂正するほか、原判決事実摘示のとおりである(ただし、原判決四枚目表四行目の「二〇日」を「三〇日」と、五枚目表二行目の「平隠」を「平穏」と改め、九行目の次に「控訴人は、甲第一ないし第一四号証、第一五号証の一、二、第一六ないし二二号証を提出し、証人A、B、Cの各証言、被控訴人D、E、F各本人尋問の結果を援用し、乙第二号証の成立は知らない、その余の乙号各証の成立は認める、とのべ、控訴人は、乙第一、二号証、第三号証の一、二、第四号証を提出し、証人Gの証言(原審)及び控訴人本人尋問の結果を援用し、甲第四号証のうち書入部分の成立は知らないがその余の部分の成立は認める、甲第一一号証のうち鉛筆書の部分の成立は知らないが、その余の部分の成立は認める、その余の甲号各証の成立は認める、とのべた。」を加え、一一枚目表七行目の「二八畝一八歩」を「二反八畝一八歩」と改める。)から、これを引用する。 (被控訴人らの主張)一 Hが本件各農地以外に財産を有していなかつたことは認めるが、同人が本件各農地をIに対し遺贈したこと、Iが本件各農地の売渡しを受けたことは否認する。 包括遺贈について県知事の許可を必要としないこと、本件各農地が自己の所有であると信じることについてIが無過失であつたことは争う。 二本件各農地がIに対し売渡された事実はないから、同人に対し経由された売渡しを原因とする所有権移転登記は無効であり、したがつて、同登記は対抗力を有しない。 (控訴人の主張)一 Hは本件各農地について売渡しによる登記を経由する以前に死亡したので本件各農 し経由された売渡しを原因とする所有権移転登記は無効であり、したがつて、同登記は対抗力を有しない。 (控訴人の主張)一 Hは本件各農地について売渡しによる登記を経由する以前に死亡したので本件各農地は改めてIに対し売渡されたのである。 二仮に、Iか本件各農地の売渡しを受けた事実がないとしても、Hは昭和二四年一〇月三日本件各農地をIに対し遺贈し、Hは他に財産を有していなかつたから、右遺贈は包括遺贈に当る。そして、農地の包括遺贈については県知事の許可を必要としないと解すべきであるから、Iは、Hが昭和二六年四月三〇日死亡したことによつて、本件各農地の所有権を取得した。 三本件各農地については、昭和二七年五月二九日Iのため売渡しの登記が経由されたから、たとい、被控訴人主張のように、本件各農地がHに対し売渡されたものであるとしても、Hの相続人である被控訴人らは、本件各農地の所有権を相続により取得したことをもつて、I及びその相続人である控訴人に対抗することができない。 四 Iは、前述のように、本件各農地について売渡しの登記をうけたのであるから、本件各農地が自己の所有であると信じるについて過失がなかつたというべきである。 (証拠関係)(省略)○ 理由一本件各農地はHに対し売渡されたのであり、Iに対し売渡されたものでないこと、したがつて、本件各農地の所有権は、右売渡しにより、Hに移転したものであることについては、当裁判所の判断も原判決と同様であるから、原判決の説示(原判決五枚目表末行から七枚目裏一行目まで、ただし、五枚目裏三行目の「同日」を削る。)を引用する。 二控訴人は、本件各農地について、昭和二四年一〇月三日HからIに対しこれを遺贈する旨の遺言がされたと主張するので、判断する。 成立に争いのない甲第九号“証、証人B、G(当審及び原審)の各証 用する。 二控訴人は、本件各農地について、昭和二四年一〇月三日HからIに対しこれを遺贈する旨の遺言がされたと主張するので、判断する。 成立に争いのない甲第九号“証、証人B、G(当審及び原審)の各証言及び弁論の全趣旨によれば、Hは自分達夫婦の借金を家督相続人であるIに引受けてもらう代りに本件各農地を同人に対して遺贈することにし、昭和二四年一〇月三日宇都宮地方法務局所属公証人Jに対しその旨の公正証書の作成を嘱託し、その結果その旨の遺言公正証書が作成されたことが認められる。この認定に反する証拠はない。 そして、Hが本件各農地のほかに財産を有していなかつたことは当事者間に争いがないから、右遺贈は包括遺贈に当るものというべきであり、包括遺贈は相続と同視すべきであるから、農地の所有権を包括遺贈により取得するについては県知事の許可を必要としないと解するのが相当である。そして、Hが昭和二六年四月三〇日死亡したことは前述のとおりであるから、ここに右遺贈はその効力を生じ、Iは右遺贈により本件各農地の所有権を取得したものというべきである。 とすれば、被控訴人らがHの死亡により相続人として本件各農地について被控訴人ら主張の所有権持分を取得したことを前提とする被控訴人らの本訴各請求は、その他の点について判断するまでもなく、失当であるといわざるをえない。 よつて、被控訴人らの請求を認容した原判決を取消し、同請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九六条、第八九条、第九三条第一項本文を各適用し、主文のとおり判決する。 (裁判官枡田文郎福間佐昭古館清吾)(原裁判等の表示)○ 主文被告は原告らのそれぞれに対し別紙物件目録記載の各農地につき真正なる登記名義の回復を原因とする各一〇分の一の所有権持分の移転登記手続をせよ。 訴訟費用は被告の負担とする。 (原裁判等の表示)○ 主文被告は原告らのそれぞれに対し別紙物件目録記載の各農地につき真正なる登記名義の回復を原因とする各一〇分の一の所有権持分の移転登記手続をせよ。 訴訟費用は被告の負担とする。 ○ 事実原告ら訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として一別紙物件目録記載の各農地(以下本件各農地という)は、もと訴外亡Kの所有であつたが、昭和二二年一二月二日自作農創設特別措置法三条に基づき栃木県知事により買収処分に付され、次いで同日、同知事は同法一六条に基づき本件各農地につき売渡の相手方を訴外Hと定めた売渡通知書を同訴外人に交付して売り渡し、この結果本件各農地は同訴外人の所有に帰した。 二そうして右Hは昭和二六年四月三〇日死亡し、同訴外人の子である原告L、同E、同D、訴外I、同M、同N、同O、ならびに孫である原告F(亡Hの長女亡Kの養子)、訴外P(Hの四男亡Qの子)、同R(Hの五男亡Sの子)、同T(同上)のため遺産相続開始し、これにより本件各農地につき、それぞれ相続分に応じて、原告L、同E、同D、同F、訴外I、同M、同N、同Oおよび同Pは各持分一〇分の一、訴外Rおよび同Tは各持分二〇分の一の所有権持分を取得した。 三しかるに本件各農地について前記訴外Iのため昭和二七年五月二九日宇都宮地方法務局受付第三三八八号をもつて昭和二二年一二月二日自創法に基づく売渡処分を原因とする所有権移転登記がなされ、次いで右Iが昭和三二年一二月二六日死亡し、妻である被告が相続したため、昭和三八年二月二〇日同地方法務局受付第三三七五号をもつて被告名義に右相続による所有権移転登記がなされている。 四よつて原告らは被告に対し本件各農地につき真正なる登記名義の回復を原因として各一〇分の一の所有権持分の移転登記手続を求める。 と述べ、被告主張の抗弁事実を 相続による所有権移転登記がなされている。 四よつて原告らは被告に対し本件各農地につき真正なる登記名義の回復を原因として各一〇分の一の所有権持分の移転登記手続を求める。 と述べ、被告主張の抗弁事実を否認し、なお被告主張の遺贈は県知事の許可を受けていないから無効であると述べた。 被告訴訟代理人は「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」との判決を求め、答弁および抗弁として一請求原因一の事実中、本件各農地がもと訴外亡Kの所有であつたところ、原告ら主張のように買収処分に付され、次いで訴外Hに対し売渡通知がされたことは認めるが、その余の事実は争う。 同二の事実中、Hの死亡の事実および相続関係は認めるが、その余の事実は否認する。 同三の事実は認める。 同四の事実は争う。 二前記のように本件各農地についてはいつたんHにあてて売渡通知がされたのであるが、元来自創法に基づく売渡処分はその登記をもつて完結すべきところ、右売渡登記がされて売渡処分が完結する以前、昭和二六年四月二〇日Hが死亡したため、自創法施行令一七条の二に基づき、同訴外人の相続人のうち、長男であつて、自作農として農業に精進する見込のある訴外Iのために売渡の嘱託登記手続がされ、その旨の登記を了したものである。したがつて右売渡処分はIに対してなされたものであり、これにより同訴外人が本件各農地の所有権を取得した。 三仮に本件各農地がHに対し売り渡されたものであつたとしても、Hは、右売渡通知後の昭和二四年一〇月三日、宇都宮地方法務局所属公証人Jに対し、本件各農地をIに遺贈する旨の遺言を口授し、その旨の遺言公正証書が作成された。 そしてHは昭和二六年四月三〇日死亡したので、右遺言によりIが本件各農地の所有権を取得するに至つたものである。このため売渡登記は、便宜、Hを省略して、当時の 授し、その旨の遺言公正証書が作成された。 そしてHは昭和二六年四月三〇日死亡したので、右遺言によりIが本件各農地の所有権を取得するに至つたものである。このため売渡登記は、便宜、Hを省略して、当時の所有者であつたIに対し直接なされたものである。 しかしてIは昭和三二年一二月二六日死亡し、本件各農地は妻である被告が相続してその所有に帰した。 四仮に右主張が理由ないとしても、Iは、本件各農地につき、自己名義に登記を受けた日である昭和二七年五月二九日以降所有の意思をもつて平隠かつ公然に占有を継続し、しかも占有のはじめ善意、無過失であつた。そして前記のようにIの死亡により被告が相続し、本件各農地の占有を承継し、昭和三七年五月二九日取得時効が完成し、これにより本件各農地は被告の所有に帰した。 と述べ、なお前記遺贈については県知事の許可を受けていない、と付陳した。 ○ 理由一本件各農地がもと訴外Kの所有であつたところ、昭和二二年一二月二日栃木県知事より自創法三条に基づく買収処分に付されたことは当事者間に争いがない。 しかして同日同知事が同法一六条に基づき本件各農地につき売渡の相手方を訴外Hと定めた売渡通知書を同訴外人に交付したこと、その後Hに対する右売渡による所有権移転登記を経由する以前、昭和二六年四月三〇日Hが死亡したこと、そこで同訴外人の相続人の一人である訴外Iのため本件各農地につき昭和二七年五月二九日宇都宮地方法務局受付第三、三八八号をもつて昭和二二年一二月二日自創法に基づく売渡処分を原因とする所有権移転登記がされ、次いでIが昭和三二年一二月二六日死亡し、妻である被告名義に昭和三八年二月二〇日同地方法務局受付第三、三七五号をもつて相続による所有権移転登記がされたこともまた当事者間に争いがない。 ところで自創法一六条に基づく売渡処分は売渡の相手 亡し、妻である被告名義に昭和三八年二月二〇日同地方法務局受付第三、三七五号をもつて相続による所有権移転登記がされたこともまた当事者間に争いがない。 ところで自創法一六条に基づく売渡処分は売渡の相手方に対し売渡通知書を交付することによつてされ、かつ右売渡通知書の交付によつて行政処分としての売渡処分は効力を生じて完結し、当該農地の所有権は右売渡通知書に記載された時期にその売渡の相手方に移転する(同法二〇、二一条)。そうすると本件においては前記のようにHに対する売渡通知によつて、本件各農地の売渡処分は同訴外人に対してされたものであり、これによつて、右売渡処分が無効である等別段の事由がない限り、同訴外人が本件各農地の所有権を取得したものといわねばならない。 そうしてその登記は右売渡処分によつて既に生じている権利の変動を公示する対抗要件であるに過ぎず、右売渡処分とその登記との関係は売買等私法上の法律行為に基づく権利変動とその登記との関係と同様であり、ただその登記手続は、大量的になされた農地改革を実現するためその簡易迅速化を図る必要上、不動産登記法の特例として、自創法四四条、自作農創設特別措置登記令三条に従い、都道府県知事が職権でこれを嘱託することができるものとされているのである(なお自創法および右登記令廃止後も農地法三条に基づき従前の例による)。したがつて本件のようにHに対する売渡通知後、同訴外人が死亡し、その相続人の一人であるI名義に売渡登記がされたからといつて、このことからIに対し売渡処分がされたものということはできない。また被告が援用する自創法施行令一七条および同条の二は自創法一六条所定の農地売渡の相手方の適格者すなわち売渡処分の相手方となり得べき者の資格を定めた規定であつて、しかも右条項にいう相続人とは同条所定の時期において既に相続して 令一七条および同条の二は自創法一六条所定の農地売渡の相手方の適格者すなわち売渡処分の相手方となり得べき者の資格を定めた規定であつて、しかも右条項にいう相続人とは同条所定の時期において既に相続している者を指し、相続すべき地位にある者を包含しないものと解すべく、いわんや売渡処分に基づく権利の承継を定めたものではないから、同条項によつてIが本件各農地の所有権を取得したとすることはできない。 二次に被告の被相続人であるIがHより本件各農地を遺贈されたとの主張について検討する。 成立に争いのない甲第九号証、証人Gおよび同Bの各証言によると、Hは昭和二四年一〇月三日宇都宮地方法務局所属公証人Jに対し本件各農地をIに遺贈する旨の遺言を口授し、その旨の遺言公正証書が作成されたことが認められる。そしてHが昭和二六年四月三〇日死亡したことは前記のとおりである。 しかし当時の農地調整法四条、同法施行令二条によると、当事者の処分行為に基づく農地の所有権移転には当事者において都道府県知事の許可を受けることを要し、また昭和二七年七月一五日同法廃止後は、農地法三条により同様に知事等の許可を受けなければこれをなすことができず、右許可を受けないでした行為はその効力を生じない旨規定され、そして右許可を要する当事者の処分行為には単独行為たる特定遺贈をも含むと解すべきところ、前認定の本件遺贈について右許可を受けていないことは被告の自認するところであるから、本件遺贈はIに対し所有権移転の効力を生ぜず、したがつて被告もまた相続によりIから本件各農地の所有権を取得することができないといわざるを得ない。 被告の前記抗弁は採用しない。 三次に被告の取得時効の主張について判断する。 前記当事者間に争いのない事実に、証人Gの証言ならびに原告D、同E、同Fおよび被告各本人尋問の結果によると ざるを得ない。 被告の前記抗弁は採用しない。 三次に被告の取得時効の主張について判断する。 前記当事者間に争いのない事実に、証人Gの証言ならびに原告D、同E、同Fおよび被告各本人尋問の結果によると、本件各農地はHの生前中は同訴外人が占有耕作し、またIはHとは別居して世帯をもち、精米業を営んでいたが、Hが昭和二六年四月三〇日死亡するや、Iは前認定の遺贈によつて本件各農地の所有権を取得したと主張して、爾来同訴外人が本件各農地を耕作するようになつて占有を継続し、昭和二七年五月二九日には前記のように同訴外人名義に売渡処分による所有権移転登記を受け、そして昭和三二年一二月二六日間訴外人死亡後は妻である被告が相続により右占有を承継して耕作してきたことが認められ、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。 右認定の事実によれば、Iは前認定の遺贈に基づいて本件各農地の占有を開始したものであるが、しかし右遺贈については前記認定のように所定の県知事の許可を得ていないため所有権移転の効力を生じない。ところで農地の移転に関する前記法令上の制約は、農地についての権利移転を統制することによつて、自作農の維持を図り、安定した農業経営を営ましめ、もつて農業生産力の増進を実現するという公益的目的をもつた強行規定であり、その違反に対しては罰則をもつて臨んでいることに思いをいたすと、もちろん右のような公益性の要請から一般的に都道府県知事の許可を受けない処分行為に基づく占有について民法取得時効の成立を認めないということはできず、取得時効の要件を備える占有がある限りこれを認むべきものであるが、しかし本件において仮令Iが県知事の許可を得ていない前記遺贈により本件各農地の所有権を取得したと信じてその占有を開始したものであつたとしても、さらに格別の事情がない以上、同訴外人が右のよう あるが、しかし本件において仮令Iが県知事の許可を得ていない前記遺贈により本件各農地の所有権を取得したと信じてその占有を開始したものであつたとしても、さらに格別の事情がない以上、同訴外人が右のように信ずるについて無過失であるとはいえないと解する。前記のようにIがその名義に売渡による所有権移転登記を受けていても、この一事をもつて前記判断をくつがえすことはできない。 そうすると被告が援用する民法一六二条二項の定める一〇年の取得時効の成立は認められず、したがつて被告はこれにより本件各農地の所有権を取得することはできない。 被告の前記抗弁は採用しない。 四以上のとおりであるから本件各農地はHに対する前記売渡処分によつて同訴外人が取得し、次いでHの死亡によつて、その相続人であることが当事者間に争いのない原告L、同E、同D、訴外I、同M、同N、同O、原告F、訴外P(以上各相続分一〇分の一)、ならびに訴外Rおよび同T(各相続分二〇分の一)が相続によりそれぞれ右相続分に応じて本件各農地の所有権持分を取得したものである。 そうすると被告は、本件各農地につき、登記簿上の記載を実体上の権利関係に符号せしめるため、真正なる登記名義の回復を原因として、原告らのそれぞれに対し各持分一〇分の一の所有権移転登記手続をなすべき義務があるから、被告に対し右義務の履行を求める原告らの本訴請求はいずれも理由があるから認容し、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。 (別紙省略)
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