平成25(行ウ)104 処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年12月17日 大阪地方裁判所
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判決文本文25,315 文字)

主文 1 大阪市交通局が,原告に対し,平成24年12月11日付けでした自動車部運輸課勤務を命じる処分を取り消す。 2 被告は,原告に対し,110万円及びこれに対する平成24年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 5 この判決は,2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求1(1) 主位的請求主文同旨(2) 予備的請求原告が被告交通局自動車部運輸課に勤務する義務のないことを確認する。 2 被告は,原告に対し,440万円及びこれに対する平成24年12月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告交通局自動車部a営業所に所属し,バスの運転業務に従事していた原告が,被告が職員に対して組合・政治活動及び入れ墨に関する各アンケート調査を実施したことが違憲・違法であるとして,原告が入れ墨に関するアンケート調査への回答を拒否したことを理由とする戒告処分の取消し及び慰謝料の支払を求めて提訴したが,Aから同訴訟の取下げを要求され,これを拒否したところ自動車部運輸課に転任を命じられたとして,ⅰ(ア)主位的に,同転任が裁量権の逸脱・濫用がある違法な処分であるとして,行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)30条に基づき,その取消しを求め(以 下「本件取消請求」という。),(イ)予備的に,上記転任命令が行政処分でないとしても,違法な転任であり,確認の利益も認められるとして,行訴法4条に基づき,自動車部運輸課に勤務する義務のないことの 下「本件取消請求」という。),(イ)予備的に,上記転任命令が行政処分でないとしても,違法な転任であり,確認の利益も認められるとして,行訴法4条に基づき,自動車部運輸課に勤務する義務のないことの確認を求める(以下「本件無効確認請求」という。)とともに,ⅱ違法な転任命令により精神的損害を被ったとして,国家賠償法に基づき,損害賠償を求める事案である。 (以下,特記しない限り,日時は平成24年を指し,課や営業所は上記自動車部に所属するものを指す。) 1 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により容易に認めることができる。)(1) 当事者ア被告被告は,地方公共団体であり,地方公営企業法に基づき,被告及びその周辺地域にわたり交通の便益を提供するため高速鉄道事業,自動車運送事業及び中量軌道事業を設置している。被告は,同法7条に基づき上記3事業を通じた管理者として交通局長を置き,管理者の権限に属する事務を処理させるため交通局(以下,単に「交通局」という。)を置いた。 交通局のうち自動車部には,業務課,運輸課,整備課,自動車車両管理事務所,営業所(5か所)がある(甲35)。 イ原告原告は,平成3年4月1日,交通局に入局し,職員部研修所で研修を受けた後,各営業所においてバスの運転業務に従事した。 原告の経歴の詳細は以下のとおりである。 平成 3年4月 1日交通局入局業務課業務係に配属職員部研修所入所平成 3年5月21日 b営業所自動車運転手 平成 7年4月 1日 c営業所に配属平成14年1月27日 d営業所に配属平成17年4月 平成 3年5月21日 b営業所自動車運転手 平成 7年4月 1日 c営業所に配属平成14年1月27日 d営業所に配属平成17年4月 1日 e営業所に配属平成22年3月28日 a営業所に配属(2) 組合活動等に関するアンケート調査ア被告の市長は,平成24年2月9日付けで,各所属長に対し,「アンケート調査の実施について」と題する文書を送付し,職員の政治活動及び組合活動に関するアンケート調査(以下「組合アンケート調査」という。)を実施するよう指示した。 同文書には,ⅰ各所属長が,Bからの指示に基づき,アンケート調査票の配付・回収を行うこと,ⅱアンケート調査は任意の調査ではなく,市長の業務命令として真実を正確に回答することを求めるものであって,正確な回答がなされない場合には処分の対象となり得ることを含め,職員に周知徹底すること,ⅲアンケート調査票の内容を,記載した職員以外の職員がみることは厳禁であることなどが記載されていた。 (以上,甲10)イ Cは,2月10日付けで,交通局の職員に対し,「労使関係に関する職員のアンケート調査について」と題する文書を送付して,組合アンケート調査を実施した。 同文書には,ⅰアンケート調査は任意の調査ではなく,交通局長の業務命令として真実を正確に回答することを求めるものであり,正確な回答がなされない場合には処分の対象となり得ること,ⅱ記載したアンケートの内容は,Bが指名した特別チームだけが見ることができ,上司,交通局その他市役所職員の目に触れることは決してなく,真実を記載することで,職場内でトラブルが生じたり,人事上の不利益を受けることはないこと,ⅲ自らの違法行為について真実を報告した場合,懲戒処分 の 他市役所職員の目に触れることは決してなく,真実を記載することで,職場内でトラブルが生じたり,人事上の不利益を受けることはないこと,ⅲ自らの違法行為について真実を報告した場合,懲戒処分 の標準的な量定を軽減し,特に悪質な事案を除いて免職とすることはないことなどが記載されていた。 (以上,甲14)ウ被告の職員らが所属する労働組合は,大阪府労働委員会(以下「府労委」という。)に対し,組合アンケート調査が組合に対する支配介入に該当するとして救済命令の申立てを行った。 府労委は,平成25年3月25日,組合アンケート調査は,被告による組合に対する支配介入に該当するとして,被告に対し,組合アンケート調査が不当労働行為であることを認定し,今後このような行為を繰り返さないようにすること等を記載した文書を手交するよう命じた。 (以上,甲16)(3) 入れ墨アンケート調査ア平成24年2月28日,D新聞は,「施設職員が虐待児を恫喝入れ墨見せ暴言繰り返す大阪市処分せず賞与査定は大甘」と題する記事を掲載した。 同記事では,被告の児童福祉施設に勤務する30代の男性職員が,子供たちに入れ墨を見せたり,暴言を吐いたりしたことが調査で判明したにもかかわらず,被告が処分せず,公表も見送っていたこと,平成23年12月のボーナスの査定では「良好」以上と判定されており,被告の大甘裁定が問題となりそうであることなどが報じられていた。 (以上,甲17)イ被告の服務規律刷新プロジェクトチームは,職員に対し,入れ墨に関する調査を行うこととし,Aは,5月2日付けで,交通局の職員に対し,「入れ墨に関する調査」と題する文書を送付し,入れ墨の有無等に関するアンケート調査(以下「入れ墨アンケート調査」という。)に回答するよう求めた。 ,Aは,5月2日付けで,交通局の職員に対し,「入れ墨に関する調査」と題する文書を送付し,入れ墨の有無等に関するアンケート調査(以下「入れ墨アンケート調査」という。)に回答するよう求めた。 同文書には,大阪市職員倫理規則では「勤務時間中は,常に清潔な身だしなみを心がけ,市民が不快感を覚えることがないようにする」ことを定めていること,入れ墨が見えるような服装で業務を行うことが不適切であることはいうまでもないこと,勤務中に入れ墨が市民,利用者の目に触れることになれば,不安感や威圧感を持ち,市の信用を失墜させることにつながること,このような事態が生じないように,市民,利用者の目に触れる可能性のある部分(肩から手の指先まで,首から上,膝から足の指先まで)に入れ墨があるかどうか実態を把握した上で,人事配置上の配慮を行う必要があることから,記名式の調査を実施することなどが記載されていた。 (以上,甲19)ウ原告が回答期限が経過しても入れ墨アンケート調査に回答しなかったため,Aは,7月13日付けで,原告に対し,同月27日までに入れ墨アンケート調査に回答するよう職務命令(以下「本件職務命令」という。)を発した(甲20)。 エ原告は,Aに対し,本件職務命令は思想及び良心の自由,沈黙の自由を侵すものであり回答を拒否する,入れ墨の有無について所属の所長及び係長の現認を受けていることなどを記載した書面を送付した(甲21)。 オ Aは,7月30日付けで,原告に対し,入れ墨アンケートに回答しない原告の行為は,地方公務員法(以下「地公法」という。)32条が規定する義務に違反するものであり,同法29条1項1号が規定する懲戒事由に該当するとして,直ちに入れ墨アンケート調査に回答するよう警告する文書を交付した(甲22)。 カ 」という。)32条が規定する義務に違反するものであり,同法29条1項1号が規定する懲戒事由に該当するとして,直ちに入れ墨アンケート調査に回答するよう警告する文書を交付した(甲22)。 カ被告は,8月28日,原告に対し,本件職務命令に従わなかったことが地公法29条1項各号の懲戒事由に該当するとして,戒告処分を行った(以下「本件戒告」という。甲23,24)。 (4) 原告による別件訴訟の提起原告は,10月15日,組合アンケート及び入れ墨アンケート各調査の実施は違憲・違法であり,入れ墨アンケート調査が適法であることを前提とする本件職務命令及び本件戒告も違憲・違法であるとして,本件戒告の取消し及び慰謝料の支払を求めて,当庁に訴えを提起したうえ(以下「別件訴訟」という。),Eにおいて記者会見を行った。 (5) 原告とAの面談Aは,10月17日午前中,原告と面談を行った(以下「本件面談」という。)。 (6) 運輸課への転任ア Fは,10月22日,原告に対し,市内出張として,運輸課(所在地:大阪市f区gh丁目i番j号)での勤務を指示し(以下「本件出張命令」という。),原告は,翌23日以降は,a営業所ではなく,運輸課で勤務した。 イ原告は,12月11日付けで,運輸課勤務を命ずる旨の辞令を受けた(以下「本件転任命令」という。甲7)。 ウ運輸課は,大阪市バス事業の統括・連絡調整,市バスの運行管理,運転事故の処理等,市バスの運行に係る業務全般を担当する課である。 (乙16) 2 争点本件の主な争点は,ⅰ本件転任命令に処分性があるか(争点1),ⅱ本件取消請求に訴えの利益があるか(争点2),ⅲ本件転任命令に裁量権の逸脱・濫用があるか(争点3),ⅳ本件無効確認請求に訴えの利益があるか(争点4)及びⅴ 本件転任命令に処分性があるか(争点1),ⅱ本件取消請求に訴えの利益があるか(争点2),ⅲ本件転任命令に裁量権の逸脱・濫用があるか(争点3),ⅳ本件無効確認請求に訴えの利益があるか(争点4)及びⅴ損害賠償請求権の存否(争点5)である。 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件転任命令に処分性があるか)について (原告の主張)ア本件転任命令により原告に運輸課に勤務する義務が発生した。また,原告は,客観的かつ実際的見地からみて,本件転任命令による勤務場所及び勤務内容の変更によって,運転手として稼働する機会を剥奪され,自動車運転手としての専門的技能が低下するなど運転業務を次に行う際に支障が出,公休出勤等の時間外勤務が全くなくなったため賃金額が月10万円程度減少し実質的に減給となるという不利益を,事実上の不利益としてではなく,法律上直接的に被った。 このように,本件転任命令は,直接原告の権利義務を形成し,またその範囲を確定するものであるから,処分性を有していることは明らかである。 イ最高裁昭和61年10月23日第一小法廷判決(裁判集民事149号59頁。以下「最高裁昭和61年判決」という。)は「転任処分」との用語を用いており,同判決も,転任に処分性があることを,当然の前提としている。 (被告の主張)本件転任命令は,地公法17条1項に基づき,任命権者である交通局長に付与された権限の行使として,自動車運転手としての職種のまま本局で勤務するよう命じたものであって,本件転任命令によって原告の身分,職種,給与に何らの変動を生じず,何ら不利益を伴うものではない。また,時間外勤務手当等についても,業務の必要性に応じて発生するにすぎないから,実質的にみても特段の不利益はない。 したがって,本件転 ,給与に何らの変動を生じず,何ら不利益を伴うものではない。また,時間外勤務手当等についても,業務の必要性に応じて発生するにすぎないから,実質的にみても特段の不利益はない。 したがって,本件転任命令は,原告の権利義務に直接の影響を及ぼすものではなく,処分性は否定されるべきである。 (2) 争点2(本件取消請求に訴えの利益があるか)について(原告の主張) ア地公法49条1項は,任命権者は,職員に対し,懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分を行う場合には,処分の事由を記載した説明書を交付しなければならないと定めており,同法49条の2は,同法49条1項が定める不利益処分を受けた場合に限り,職員は,行政不服審査法による不服申立てをすることができると定めている。原告は,地方公営企業法39条1項により地公法49条の適用が除外されている地方公営企業である交通局の企業職員であるから,本件は,地公法49条が定める不利益な処分に対する審査を前置して行われるものではない。 したがって,本件転任命令が原告にとって「不利益」でないとしても,それが違法であれば取り消されねばならない。 イ仮に,転任について取消訴訟を提起できるのは,当該転任が不利益な処分である場合に限られるとしても,原告は,以下のとおり,本件転任命令により,元の職に戻ることによって回復すべき法律上の利益を侵害されており,本件転任命令は不利益な処分に当たる。 (1) 原告は,本件転任命令により,運転手であれば不可避的に発生する公休出勤等の時間外勤務が全くなくなり,月10万円程度の賃金が減額となった。 (2) 20年以上にわたり市バスの運転手として稼働してきたにもかかわらず,本件転任命令により自動車の運転とは全く関係のない業務を命じられ,しかも,命じられる業務は 円程度の賃金が減額となった。 (2) 20年以上にわたり市バスの運転手として稼働してきたにもかかわらず,本件転任命令により自動車の運転とは全く関係のない業務を命じられ,しかも,命じられる業務は十分な量ではなく,原告は,大半の勤務時間につき,自席にじっと座っていなければならない状態を強いられている。原告は,運転手として稼働する機会を剥奪され,技能の低下という大きな不利益を被った。 (3) 原告は,本件転任命令により,その所属する労働組合であるGの組合員からも隔離され,同組合員による原告支援及び原告の組合員としての活動を妨害されているという特段の事情もある。 (4) 原告が運転手として稼働できない状態が続けば,自動車運転手としての専門的技能が低下するばかりか,交通局では,3か月以上自動車運転業務に就かなければ,期間に応じた数日間の研修を受けることを義務付けており,本件転任命令により,原告がそのような研修を受講することを余儀なくされることは原告にとって不利益といえる。 (被告の主張)ア行訴法9条は,「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは,当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り,提起することができる」旨規定し,かかる法律上の利益を欠く場合には訴えの利益を欠き,却下される。本件転任命令は身分・俸給等に異動を生ぜしめるものではなく,勤務場所についても,従前と同じ大阪市内で勤務するものであり,その勤務内容も特段の不利益は生じないから,本件転任命令によって原告に直接の法律上の効果として何らかの不利益を伴うものではない。 よって,本件転任命令は不利益処分に当たらないから,本件取消請求は,取消しを求める法律上の利益を欠き,不適法である。 イ原告は,地方公営企業の企業職員には地公法49 利益を伴うものではない。 よって,本件転任命令は不利益処分に当たらないから,本件取消請求は,取消しを求める法律上の利益を欠き,不適法である。 イ原告は,地方公営企業の企業職員には地公法49条が適用されないから,本件転任命令が不利益か否かにかかわらず,訴えの利益が認められる旨主張するが,転任の不利益性は,同条の解釈としてではなく,行訴法9条が訴訟要件としている「法律上の利益」を認めるために要求されるものであるから,原告の主張は失当である。 ウまた,原告は,時間外勤務がなくなったため賃金が実質減額となったこと,自動車運転手として稼働する機会を剥奪されたこと,組合活動を妨害されたこと及び自動車運転手としての技能が低下し,かつ,自動車運転手として復帰する際には研修を受講することを余儀なくされることを理由として,本件転任命令が不利益な処分であると主張するが,以下 のとおり,失当である。 (ア) 時間外勤務は,上司が業務上の必要に基づき時間外勤務を命ずることによって,職員に時間外勤務を行う義務が生じるところ,時間外勤務手当はかような時間外勤務に対する対価であって,業務内容の繁閑や特殊性等によって,事実上,時間外勤務手当の受給額に増減が生じることがあったとしても,原告が現に就労していない時間外勤務について,これを受給すべき法的地位あるいは法的利益なるものを観念する余地はなく,これを本件転任命令による法的効果であるとか,法的保護に値する利益と評価することはできない。 (イ) 原告に担当させるべき職務に法的制約はなく,運転手としての職務につくべき法的地位は認められないし,しかも,運輸課での業務内容は,原告のバス運転手としての経験・能力を十分活用し得るものであり,また,自転車運転手という職種において,運転手以外の職務経験を有 務につくべき法的地位は認められないし,しかも,運輸課での業務内容は,原告のバス運転手としての経験・能力を十分活用し得るものであり,また,自転車運転手という職種において,運転手以外の職務経験を有することは何ら不利益となるものではないことは,局内応募において総務部総務課での交通局PR情報誌の企画調整業務に自ら応募した経験を有する原告自身が何よりも理解しているはずである。 (ウ) 原告が配属されている運輸課の職員も大部分は原告と同じGに属する組合員であって,原告とは単に同一組合内での所属部門が異なるにすぎず,本件転任命令により原告の組合員としての活動を阻害するなどという効果はいささかも認められないし,かような組合内部事情を指摘したところで,業務上の必要性に基づく本件転任命令の取消しを基礎付ける法的利益とは認められないことは明らかである。 (エ) 研修については,原告が再度,運転業務に配置されることになった際,その専門技能を確保・研さんするために研修を受ける機会が付与されることは,むしろ原告の利益となるべきものであって,実質的にみても何ら不利益と評価されるべきものではない。 (3) 争点3(本件転任命令に裁量権の逸脱・濫用があるか)について(原告の主張)ア本件転任命令は,Aと原告との本件面談の内容及びその後の経過によれば,原告が別件訴訟を提起したことに対する報復措置である。 すなわち,Aは,原告に対し,辞職勧告まで示唆した上で,別件訴訟を取り下げるか(その場合は引き続き運転業務に従事),別件訴訟を取り下げない(その場合は本局への転任)の二つの選択肢を提示し,いずれかを選ぶように求め,その選択の結果を,翌日にはHに伝えるよう述べており,このAの発言から,被告は,原告が別件訴訟を取り下げるかど り下げない(その場合は本局への転任)の二つの選択肢を提示し,いずれかを選ぶように求め,その選択の結果を,翌日にはHに伝えるよう述べており,このAの発言から,被告は,原告が別件訴訟を取り下げるかどうかの選択結果を待って,転任させるか否かを決定することとしていたことは明らかである。 また,Aは,本件面談の際,「社長」を訴える以上,不利益処分を覚悟しろ,それが嫌なら取り下げろとあからさまに原告に迫っている。さらに,Aは,本件訴訟を提起した当日,マスコミの取材に対して,「裁判をしている人が運転している,というのは嫌。そういう人に安全を任せるのは,私(の立場)を疑われる」と述べている。いずれも,本件転任命令が,原告が別件訴訟を取り下げなかったことに対する報復としてなされたことを端的に示す事実である。 本件転任命令は,原告が別件訴訟を提起したことに対する報復としてなされたものであって,不当な目的による処分であり,原告の裁判を受ける権利を侵害するものであるから,違法である。 被告は,本件転任命令は別件訴訟の追行により想定される心理的影響を考慮したからであると主張しているが,その判断をするに当たり,診断書等を徴求しなかったことを認めている。また,交通局の管理職は,原告に対し,本件戒告から本件転任命令の間,健康状態について尋ねることすらしていない。これらの事実からすれば,被告は,原告の心理状 態に関し具体的に検討する材料を持ち合わせていなかったはずである。 そうだとすると,被告は,原告が別件訴訟を提起したことのみを理由として本件転任命令を行ったものというほかない。 よって,本件転任命令は不当な目的及び動機により裁量権を逸脱・濫用して行われたものであるから違法である。 イ地公法15条は,「職員の任用は,この法律の定めるところにより, たものというほかない。 よって,本件転任命令は不当な目的及び動機により裁量権を逸脱・濫用して行われたものであるから違法である。 イ地公法15条は,「職員の任用は,この法律の定めるところにより,受験成績,勤務成績その他の能力の実証に基づいて行なわなければならない」としている。 被告は,本件転任命令が別件訴訟の提起を契機として行われたことを認めているが,裁判を提訴したことは,原告の勤務成績や能力とは何の関係もない。また,Iは,職務命令に従わないので乗務はさせないなどと述べており,被告の主張とも異なる事情を考慮している。他方で,被告は,本件転任命令が原告の裁判を受ける権利を著しく侵害することを全く考慮していない。 このように,本件転任命令は,考慮すべき事項を考慮せず,考慮すべきでない事項を考慮したものであり,この点からも裁量権を逸脱・濫用したものであって違法である。 ウ裁判を受ける権利は,他の権利を実現可能にするために必要不可欠な権利である。本件転任命令はこれを著しく侵害するものであり,また,前述のとおり,原告は本件転任命令により様々な不利益を受けている。 よって,本件転任命令は,許容されうる限度を著しく超えており,この点からも違法である。 エ(ア) 地公法15条は,いわゆる成績主義と言われる任用の基本原則を定め,交通局長は,同原則に基づく任用を実施するため,「大阪市交通局に勤務する職員の名称及び職種に関する規程」(以下「名称・職種規程」という。)及び「大阪市交通局職員転職規程」(以下「転職規程」 という。)を定めている。そして,名称・職種規程は,2条及び別表において職種ごとの職務内容を定め(職種が「自動車運転手」の職員の職務内容は「営業自動車の運転手」と定められている。),さらに,転職規程は,職員の職種を他の職 そして,名称・職種規程は,2条及び別表において職種ごとの職務内容を定め(職種が「自動車運転手」の職員の職務内容は「営業自動車の運転手」と定められている。),さらに,転職規程は,職員の職種を他の職員の職種に変更する転職は選考によることとして,選考の手続を定めている(同規程2条,3条)。 原告の職種は,本件転任命令の前後を通じ,「自動車運転手」とされており,転職のための手続は取られていない。しかし,原告が配属された交通局運輸課では,原告以外には,人事委員会が採用した「事務職」と交通局に「自動車運転手」として採用され,選考を経て転職した「運輸職員」しか存在しない。原告に割り当てられた職務内容も,「運輸職員」の職務内容(運輸関係職員の指導及び教習員並びに運転操車関係業務従業員)である。交通局は,本来であれば適正な選考手続を経た上で転職させなければならないところ,規定上の手続を何ら経ることなく,実質的な転職をさせた。 よって,本件転任命令は,地公法15条,名称・職種規程2条,転職規程3条に違反し,この点からも取消しを免れない。 (イ) 被告は,自動車運転手の職務が営業用自動車の運転に限定されるとすると,心身の状況等により一時的にも運転手業務に従事しえない場合に,いわゆる下車勤務を命じることは許容されず,必ず業務員等へ転職させるか,休職・免職等の手続を取らざるを得ないし,局内公募のように,職員のキャリア形成の能力・活用を企図した人事政策も認められないこととなり,被告の円滑な組織運営を害する上,職員にとっても極めて大きな不利益を課すことになるなどと主張する。 しかし,転職規程3条ただし書は,「乗務員が運転事故等により業務員に転職する場合」には選考によらない転職を認めている。このような場合には,交通局長の裁量により,転職を命じること るなどと主張する。 しかし,転職規程3条ただし書は,「乗務員が運転事故等により業務員に転職する場合」には選考によらない転職を認めている。このような場合には,交通局長の裁量により,転職を命じることは容易である。 仮に,運転手業務に従事できない運転士に対し,短期的に限って下車勤務を命じることが許容される場合があるとしても,下車勤務が長期にわたる場合には,やはり転職の手続をとる必要があり,この場合につき規定するのがまさに転職規程3条ただし書なのである。さらに,人事政策上必要であれば,規定に定める手続により,その都度転職させればよいだけの話である。 オ以上によれば,本件転任命令が違法であることは明らかである。 (被告の主張)ア業務上の必要性(ア) 交通事業において,市民・利用者の安全・信頼の確保は,絶対的な使命であり,何よりも優先すべき問題である。被告においては,かような観点より,本件のみならず,これまでも,バス運転手につき,心身の故障の場合のみならず,把握できた情報等に基づき,重大事故や不祥事案等,諸般の事情により乗務が相当でないと判断した場合は,運転業務は行わせず,別の業務に従事させている。 (イ) 平成24年8月28日,原告に対し,本件戒告を発令した際,原告から,本件戒告につき「提訴の意思がある」旨の発言があった。同年10月15日,原告が別件訴訟を提起した旨の報道に接した自動車部Iから,転任についての権限を有するJに対し,原告について転任させてはどうかとの相談があり,協議の結果,当該職員を運輸課に配置転換させることとし,同月16日,K・Jからその旨をAに報告したものである。このように,市民の安全確保を至上命題とする被告として,報告を受けた原告の状況及び別件訴訟追行により想定される心 輸課に配置転換させることとし,同月16日,K・Jからその旨をAに報告したものである。このように,市民の安全確保を至上命題とする被告として,報告を受けた原告の状況及び別件訴訟追行により想定される心理的影響,かかる影響下において事故を起こした場合の市民への説明責任等を踏まえ,当面の間,業務上の配慮として,運転業務から外すべきとの判断に至ったものである。 したがって,原告を運輸課に配置することにつき,業務上の必要性を欠くところはない。 イ転任に伴う不利益がないこと本件転任命令は,原告の職種を変更するものではなく,原告に給与や身分上の不利益は何ら生じていない。 原告の運輸課における業務は,原告のみではなく複数の職員が担当しており,到底30分程度で終了するようなものではなく,出張も度々あるし,担当業務の起案に当たっては,原告も起案担当者として押印している。座席配置についても,平成25年4月からは担当業務に合わせて,運輸課職員と同じ島内に席を配置しているし,本件転任命令当初は年度途中等の事情もあり現在とは異なる配置であったが,特段問題視されるような状況にはなく,原告の主張は大げさにすぎる。他の職員同様,運輸課としての担当業務を割り当てられこれを遂行しているし,原告席には,主たる担当業務である臨時便の受付専用電話も設置されている。 むしろ,原告は,運輸課での忘年会や歓迎会等の職務外の懇親会にも運輸課の一員として参加しているのであって,原告が運輸課において業務上孤立させられているとか,差別的取扱いを強いられているなどという実態はなく,何ら差別的取扱いであるとか,精神的苦痛を被るようなものでもない。 ウ不当な動機又は目的がないこと(ア) 上記のとおり,本件転任命令には業務上の必要性があり,他方,転任に伴う特段の 態はなく,何ら差別的取扱いであるとか,精神的苦痛を被るようなものでもない。 ウ不当な動機又は目的がないこと(ア) 上記のとおり,本件転任命令には業務上の必要性があり,他方,転任に伴う特段の不利益性はない以上,本件転任命令を裁量権の逸脱・濫用と評価するためには,別途,各別に不当な動機又は目的に出たものであることが必要となるが,前述のとおり,本件転任命令の目的は,前記アのとおりであり,これは,市民や利用者の安全確 保の観点に立つもので,別件訴訟の提起に対する報復であるとか,嫌がらせではない。 (イ) 原告は,本件面談におけるAの発言等から,本件転任命令の目的が別件訴訟の提起に対する報復であったことは明らかであるなどと主張している。 しかし,本来,転任は,職員の個別の同意を得ることなしに職務命令として当然に行い得るところ,本件面談以前に本件転任命令の方針は決定していたし,Aは,本件面談に先立って担当者から報告を受け,本件転任命令の方針につき理解を示した上で,原告との信頼関係を確保するため,原告本人から直接,その真意について話を聞きたいという真摯な思いから,本件面談を行ったものであり,それ以上の意図はない。本件面談は,本件転任命令を背景に,別件訴訟を取り下げさせることを目的に行ったものではないから,本件転任命令が,本件面談での別件訴訟の取下げの要求を原告が拒否したことの報復・嫌がらせであったという指摘は当たらない。 エ本件転任命令の法令上の制約はないこと(ア) 本件転任命令は地公法17条1項に基づくものであり,「職員の職に欠員を生じた場合」であることが前提とされているが, 交通局においては,課ごとに定数を定める旨の規定はないが,運輸課の在籍人員は平成23年度が25人,平成24年度が19人,平成25年度が17人 職に欠員を生じた場合」であることが前提とされているが, 交通局においては,課ごとに定数を定める旨の規定はないが,運輸課の在籍人員は平成23年度が25人,平成24年度が19人,平成25年度が17人であり,慢性的に具体的な人員が不足している状態にあり,「欠員」がある場合に該当する。 (イ) 原告は,本件転任命令が,名称・職種規程2条が定めた職種を転職規程3条の定める方法によることなく転職させたものであるから,地公法15条,名称・職種規程2条及び転職規程3条に反し,違法であると主張する。 しかし,名称・職種規程はわずか2条の規程であり,条文の在り方からして,当該規程が,職務内容に応じた職種を定めるとの趣旨を超え,任命権者の任命権ないし職務命令の権限の範囲に関して,当該職種に該当する職員の職務内容をこれに限定し,当該規程に定める職務内容以外の職務を命じることを一切禁止する旨の制約を課す規程とは到底解し得ない。 仮に,原告が主張するような制約(自動車運転手について営業自動車の運転以外の職務を行わせてはならないこと)があれば,自動車運転手として採用された職員は,運転業務への支障が一時的にでも生じた場合,転職規程に基づき転職するか,休職・免職にしなければならないこととなるが,かような結論は被告の円滑かつ効率的な組織運営を妨げ,不当であることは明らかであって,実際にもそのような人事運用は行われていない。 転職は,職員の職種・給料等の変動を伴う手続であるから,かような手続は職員に与える影響が大きく,慎重に行うべきものである。したがって,心身の事故で一時的に運転業務を外す場合や,局内公募等,短期的な必要に基づき職務内容を変更する場合には,都度,転職手続を取ることは想定されていない。 転職規程もかような 。したがって,心身の事故で一時的に運転業務を外す場合や,局内公募等,短期的な必要に基づき職務内容を変更する場合には,都度,転職手続を取ることは想定されていない。 転職規程もかような理解を前提に,原則として,キャリアアップのように,将来にわたって身分を変動させる場合を想定して,一定の資格を有する者に限り,選考に基づき行う旨規定している。 乗務員を業務員に転職させることは,給料表上,大幅な給料ダウンを伴うことになるのであって,被告としても,職員の不利益に配慮し,その適用には慎重な手続をとっており,乗務員に運転事故等があったとしても,即座に業務員に転職はさせず,かかる支障が一時的なものであれば,いわゆる下車勤務として,運転手の身分を維持することに している。 (4) 争点4(本件無効確認請求に訴えの利益があるか)について(原告の主張)ア本件においては,原告が運輸課に勤務する義務の有無につき争いとなっているのであり,仮に本件取消請求が認められない場合には,本件無効確認請求が有効かつ適切な手段であり,確認の利益は優に認められる。 イ仮に,被告が主張するように,不利益処分を受けてから事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあるなどの特段の事情がある場合に限り,訴えの利益が認められるとしても,本件転任命令を拒否すれば懲戒免職処分とされる可能性もあり,これを事後的に争ったのでは,回復し難い重大な損害を被るおそれも存在する。特に,交通局は,現在被告議会において民営化に向けての議論がされており,事後的に懲戒免職処分を争い勝訴した場合にも,戻る職場がないということにもなりかねない。 したがって,本件では,訴えの利益を認めるべき特段の事情も存在する。 に向けての議論がされており,事後的に懲戒免職処分を争い勝訴した場合にも,戻る職場がないということにもなりかねない。 したがって,本件では,訴えの利益を認めるべき特段の事情も存在する。 (被告の主張)本件無効確認請求は,公法上の権利関係に関する確認訴訟と考えられるところ,これには,義務違反の結果として不利益処分を受けてから事後的に義務の存否を争ったのでは回復し難い重大な損害を被るおそれがあるなどの特段の事情がある場合に限り,訴えの利益が認められるべきである。 本件転任命令に関しては,権利の性質や事後の損害回復困難性において特段の事情は認められず,また,民営化については,現時点では現実化していない抽象的な危険にすぎないから,確認の利益は認められない。 (5)争点5(損害賠償請求権の存否)について(原告の主張) ア本件面談における原告に対する別件訴訟取下げの強要,本件出張命令及び本件転任命令は,いずれも地方公共団体の公権力の行使にあたる公務員であるAが,その職務上行った行為であるが,前述のとおり,本件転任命令は違法であり,また,上記取下げの強要及び本件出張命令も,本件転任命令と同様に,原告に別件訴訟を取り下げさせるための一連の行為であり,原告の裁判を受ける権利を著しく侵害する違法な行為である。 Aは,自らの交通局長という立場を理解しつつ,原告を呼び出して別件訴訟を取り下げるよう圧力をかけ,原告が取り下げなかったために乗務から降ろし,出張及び転任を命じたのであるから,故意又は少なくとも過失が存在することは明白である。 イ原告は上記各違法行為により,裁判を受ける権利を直接侵害されるとともに,運転手として稼働する機会の剥奪,これに伴う運転技術の低下,組合活動上の不利益といった様々な不利益を受け, は明白である。 イ原告は上記各違法行為により,裁判を受ける権利を直接侵害されるとともに,運転手として稼働する機会の剥奪,これに伴う運転技術の低下,組合活動上の不利益といった様々な不利益を受け,精神的損害を被った。 また,原告が運輸課での勤務を開始してから本件転任命令を出されるまでの間,原告の仕事内容は極めて限られたものであり,アルバイトの女性が担当していたパソコン入力や書類のコピー等の雑用であり午前と午後各1時間あれば終わる業務内容であり,原告は,それ以外の時間は机の前に座り,業務用のパソコンを見るくらいしかすることがなかった。その後,原告の業務は徐々に増やされたが,やることがなく手持ちぶさたな時間が多いことに変わりはなく,現在に至るまで仕事上の差別を受け,精神的な苦痛を受け続けている。 原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料は,300万円を下らない。 ウさらに,交通局では,バスの運転手につき,予め「公休出勤数」が設定され,時間外勤務が通常の勤務としてシフトの中に組み込まれており,時間外勤務手当は,原告が運転手としてバスに乗務する限り必然的に発生する賃金であり,平成24年1月ないし10月の原告の時間外勤務手当は, 平均8万6922円であった。 原告は,本件転任命令後,交通局事務課より時間外勤務を禁じられ,平成24年12月ないし平成26年1月の間の13か月間,時間外手当を一切支給されていない。本件転任命令前の平均時間外勤務手当額8万6922円に13か月を乗ずると114万7627円であるから,本件転任命令に伴う時間外勤務手当の不支給により原告が被った損害は,110万円を下らない。 エ被告の違法な行為により原告は本件訴訟の提起を余儀なくされ,これに弁護士費用として30万円を要することとなった。 オ以上の損害額 当の不支給により原告が被った損害は,110万円を下らない。 エ被告の違法な行為により原告は本件訴訟の提起を余儀なくされ,これに弁護士費用として30万円を要することとなった。 オ以上の損害額を合計すれば,440万円となるから,原告は,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,440万円の損害賠償請求権を有する。 (被告の主張)ア前述のとおり,現に就労していない時間外勤務について時間外勤務手当を受給すべき法的地位あるいは法的利益なるものを観念する余地はなく,ましてや,本件転任命令による時間外勤務が減少したことに伴い,時間外勤務手当分が減給になったからといって,それを損害とは評価できない。 イ前述のとおり,本件転任命令の目的は,別件訴訟の提起・追行による原告に対する心理的影響,他の職員への影響,かかる影響下において事故等を起こした場合の市民への説明責任等を勘案し,当面の間,業務上の配慮として,運転業務から外すべきとの判断に至ったものであり,業務上の必要性自体は認められる。 他方,本件転任命令等により原告に不利益は生じていないことは前述のとおりであり,また,本件転任命令により遠隔地での就業を余儀なくされるなど別件訴訟の追行に現実の支障を来す事情はないし,実際に原告が特段の苦痛を覚えたとも考えられない。 本件面談は,別件訴訟の提起・追行が原告の権利であることを前提に, 被告の判断についての理解を求めたものであり,何ら不当な目的ではなく,Aによる面談の態様についても,何ら強要や威迫と評価すべきものではないし,原告も終始穏やかにこれに応じていた。 これらの事情を踏まえれば,原告に金銭をもって慰謝すべき程度の精神的苦痛は生じていない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実のほか,証拠(甲30,31 これに応じていた。 これらの事情を踏まえれば,原告に金銭をもって慰謝すべき程度の精神的苦痛は生じていない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実のほか,証拠(甲30,31,乙14,15,証人J,同I,原告本人,A)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。なお,役職は当時のものである。 (1) Iは,平成24年8月28日,Jに対し,Hが原告に本件戒告処分を通告した際に,原告が同処分を不服として提訴する意思を示した旨連絡した。 (2) Iは,10月15日,原告が別件訴訟を提起したことを新聞報道で認識したことから,Jに連絡をとり,原告について相談した。 (3)ア Jは,10月16日,Kとともに,Aに面談し,原告について報告した。 イ A,同日,人事室から制止されたが,自らの意向で,原告と面談することとした。 ウ Fは,同日,原告に対し,同月17日午前中にAとの面談があること,面談時間については研修扱いになることを伝えた。 (4)ア Aは,本件面談において,「通常,訴えたさかいというて局長は呼ばへんわ。それで,昨日も人事室に,私が直接本人と会うと言うとけと言ったら,人事室からストップがかかったわ。誰が言うこと聞くかと私は思てんねん,私は交通事業管理者やし。だから,僕は,これは社長と社員のあれで言うと,社員が社長を訴えるときというのは,やっぱり腹く くらなあかんやん」,「そやけども,できたら,僕はもう原告には全部水に流して,明日からしっかりドライバーしいやと,もう。だから,提訴も取り下げて」,「社長を訴えるということはどういうことか,腹くくりあるやろう」,「そんなもん,わし,認めるわけにいかんもん」,「一番は,もう明日からきれいさっぱり,私と話をしたことを受けて,がたがた言う げて」,「社長を訴えるということはどういうことか,腹くくりあるやろう」,「そんなもん,わし,認めるわけにいかんもん」,「一番は,もう明日からきれいさっぱり,私と話をしたことを受けて,がたがた言うのはやめまっせと,しっかりバス回らせてもらいますよというのが私は最善やと思うし。ほんで,やっぱりそれこそ皆さんがちゃがちゃ言う者があって,それでもがたがたということやったら,1回,本局へ来たらどうやと。別のとこから職場をずっと見たげて,これどうやというのが二つ目。(中略)その二つぐらいで,一両日考えて。それはHに,僕はHに何も言うてないけど,そういう話ししたということは,ほんだら,わしがHに伝えるわ」,「だから,もうHに俺どうするって,明日ぐらいに返事しといえてくれ」,「ほんで,どっちでもええ。それであれや。Hから返事もろたら,頑張れよと言うか,こっち来いと言うか,どっちかや。それでよろしいか」などと発言した。 その際,Aは,原告に対し,別件訴訟提起後の精神状態を含む体調やバス乗務への影響を尋ねることはなく,産業医等の健康診断を勧めることもしなかった。 イ原告は,10月17日,Hに対し,別件訴訟を取り下げる意向がないことを伝えた。 (5) Fは,10月22日,原告に対し,本件出張命令を出し,原告は,翌日以降,運輸課で勤務した。 (6) 12月3日,別件訴訟の訴状が交通局に送達された。 (7) L及びMは,12月7日,原告に対し,同月10日に転任の内示があり,同月11日に辞令交付予定であることを伝えた。 (8) 原告は,運輸課において,当初は,ポスターの配送,赤バスの廃止に 関する利用者からの問合せへの対応,時刻表の送付など他の職員と一緒に取り組む職務に従事していたが,その後,現場確認,営業所巡視時の路線 課において,当初は,ポスターの配送,赤バスの廃止に 関する利用者からの問合せへの対応,時刻表の送付など他の職員と一緒に取り組む職務に従事していたが,その後,現場確認,営業所巡視時の路線巡視車運転業務,学校の遠足等に対応するための続行便,混乗便等の受付,営業所への施令,臨時便の受付対応,道路工事業者等との調整等の業務に従事するようになった。(甲37,乙3の1ないし4,4の1ないし3,5,6,16,証人N,弁論の全趣旨)(9) 本件出張命令以降,原告が営業車両に乗務したのは,11月11日に開催された大阪市営交通フェスティバルの際に回送車両の運転をした1回のみである。(弁論の全趣旨)(10) 原告は,10月23日に運輸課で勤務するようになる前は,毎月超過勤務手当として平成23年11月から平成24年10月までを平均すると8万9464円の金員の支給を受けていたが,それ以降である同年11月から平成26年8月まで(ただし,平成25年3月と4月を除く)に受けた金額を平均すると7826円と支給額が減少した(甲36の1ないし6,49の1・2,50の1ないし8,51の1ないし16)。 2 争点1(本件転任命令に処分性があるか)について行訴法3条2項に基づき取消しを求めることができる行政庁の処分とは,公権力の主体たる国又は地方公共団体が法令の規定に基づき行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最高裁昭和30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁参照)。 地方公務員について,転任とは,任命権者を同じくするか否かを問わず職員を昇任又は降任以外の方法で他の職員の職に任命することをいうところ,転任は,地公法17条1項に基づき任命権者に付与された権限に 地方公務員について,転任とは,任命権者を同じくするか否かを問わず職員を昇任又は降任以外の方法で他の職員の職に任命することをいうところ,転任は,地公法17条1項に基づき任命権者に付与された権限により行われたものであり,かつ,同規定は,職員の職に欠員を生じていること以外の要件を定めていないから,任命権者は人事行政上の必要性に基づいて,対象と なる職員の同意等を得ることなく,一方的に転任を命ずることができるものと解される。他方,転任を命じられた者は,たとえ職員としての身分及び俸給等に異動が生じなくとも,職務内容,勤務地等の服務関係上の地位に変動が生じるのであるから,転任命令は,権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為であるということができる。公務員関係の成立及び消滅の任免権者の側からみた行為形式が行政処分であることからも,転任命令は,行政庁の処分に当たると解するのが相当である。 3 争点2(本件取消請求に訴えの利益があるか)について(1) 行政処分の取消訴訟は,違法な行政処分の法的効果により自己の権利・利益を侵害されている者が,その法的効果を除去することによって,その法的利益を回復することを目的とするものであるから,同訴訟を提起するには,当該行政処分が有効なものとして存在することから生じている法的効果を除去することにより回復すべき法律上の利益があることが必要であり,そのような法律上の利益がない場合には訴えの利益がないものとして不適法な訴えとなる(行訴法9条1項)。 転任命令は,昇任又は降任以外の方法で他の職員の職に充てる水平異動であって,必然的に職員に不利益を課する処分ではないから,転任命令の取消しを求める法律上の利益があるか否かは,当該転任の直接の法的効果として,処分の取消しにより回復されるべき不利益を伴うもの 平異動であって,必然的に職員に不利益を課する処分ではないから,転任命令の取消しを求める法律上の利益があるか否かは,当該転任の直接の法的効果として,処分の取消しにより回復されるべき不利益を伴うものか否かによって判断するのが相当である(最高裁昭和61年判決参照)。 (2) 本件転任命令は,原告を自動車運転手の職種のままa営業所から運輸課に転任させたものであり,原告の身分及び俸給を変動させるものではなく,勤務場所もいずれも大阪市内であるから,通勤に伴う負担が特段増加したとも認められない。 しかし,本件転任命令後の運輸課での主たる業務は,ポスターの配布,顧客からの問合せ対応,時刻表の送付,臨時便の受付対応,道路工事業者 等との調整,工事情報の自動車運転手に対する通知などの事務作業が中心であり,営業所巡視時の路線巡視車運転業務も職務に含まれてはいるが,営業車両に乗務したのは11月11日に開催された大阪市営交通フェスティバルの際に回送車両を運転した1回のみである。原告の職種は「自動車運転手」であり,職種規程2条及び別表は,職種が「自動車運転手」の職員の職務内容を「営業自動車の運転手」と定めているが,本件転任命令後の原告の従事している職務内容は,全くこれと異なっており,本来であれば,職種を変更すべき職務内容の変更を伴うものである。そして,原告は,平成3年に交通局に入所し,研修所に入所して以降,いずれも各営業所において,20年以上バスの運転手として勤務していたのであり,運輸課での職務は,自動車運転手としての職務経験を生かして能力を発揮するに適した職務であるとは言い難く,むしろ,不慣れな事務作業を一から覚えなければならないのであるから,本件転任命令は,処分の取消しにより回復される不利益を伴うものと認めるのが相当である。 よって,本 適した職務であるとは言い難く,むしろ,不慣れな事務作業を一から覚えなければならないのであるから,本件転任命令は,処分の取消しにより回復される不利益を伴うものと認めるのが相当である。 よって,本件転任命令の取消しを求めるにつき法律上の利益があるから,本件取消請求には訴えの利益がある。 4 争点3(本件転任命令に裁量権の逸脱・濫用があるか)について(1) 原告は,10月23日以降,市内出張扱いとして運輸課で勤務しており,本件転任命令は12月11日付けで行われたものであるところ,そのいずれの時点も年度途中であること,原告の異動先が,前任者がいたポストではなく新設されたポストであること(原告本人尋問調書29頁)などからすれば,本件転任命令が定期異動によるものではないことは明らかである。 (2) Aの原告との本件面談の際の発言内容(認定事実(4)ア)やその前後の一連のやりとりに照らせば,Aは,原告が別件訴訟を提起したことを受けて,ⅰ同訴訟を取り下げれば,従前どおりバスの運転業務に従事させる, ⅱ同訴訟を取り下げなければ,バスの運転業務から外れて交通局の本局で勤務することになるという選択肢を提示し,原告にそのいずれかを選択することを求めたものであることが明らかである。 また,Iは,別件訴訟が係属する限りは原告が運輸課で勤務することになり,バスの運転業務に従事させることはない旨証言しており(証人I尋問調書13頁),Jは,同訴訟提起中は運転業務から離れてもらうことはやむを得ないと考えた旨証言しており(証人J尋問調書12頁),Nは,原告が運輸課に転任することになった理由は同訴訟を提起したことにあり,訴訟の一定の整理がつくまで運輸課での勤務が続くと感じている旨証言している(証人N尋問調書12頁)ところ,これらの被告の職員の ,原告が運輸課に転任することになった理由は同訴訟を提起したことにあり,訴訟の一定の整理がつくまで運輸課での勤務が続くと感じている旨証言している(証人N尋問調書12頁)ところ,これらの被告の職員の各証言は,本件転任命令は原告が同訴訟を提起したことに起因しており,同訴訟が係属している限りは,原告をバスの運転業務に従事させる意思がないことを認めているものと評価することができる。 (3) この点,被告は,原告が別件訴訟を提起したことなどによる心理的影響や,そのような影響下で事故等を起こした場合の市民への説明責任等を踏まえ,市民や利用者の安全確保の観点から原告に対し,本件転任命令をしたものである旨主張する。 確かに,公共交通機関を運行する交通局が,市民や利用者の安全確保に配慮すべきは当然のことであり,また,実際に事故が起きてから対処していたのでは遅いのであって,事故が起きる前に事故が起きないように対処するのも当然であるから,バスの運転手の心身の状態が万全でないことを把握した場合に,当該運転手をバスの運転業務から外すことは正当な理由に基づく措置であるといえる。 もし,本件転任命令の目的が被告が主張するとおりであれば,Aにおいて原告と本件面談を行った際,原告に対し,別件訴訟の取下げを強く促す前に,同訴訟を提起したことによる心理的影響やそれによりバス乗務に支 障が生じているか否かをまず確認してしかるべきであるし,仮にその点を危惧したというのであれば,原告に対し,健康診断の受診を命じるなどの措置をとってしかるべきである。 しかるに,Aは,本件面談の際に上記事項について何ら確認せず,上記指示等をもしないまま,別件訴訟の取下げを一貫して強く促しているのは,前記(2)で述べたその発言内容をも併せ考慮すると,自己が行った原告に対する本件戒 件面談の際に上記事項について何ら確認せず,上記指示等をもしないまま,別件訴訟の取下げを一貫して強く促しているのは,前記(2)で述べたその発言内容をも併せ考慮すると,自己が行った原告に対する本件戒告の取消しを原告が求めて別件訴訟を提起したことを嫌悪したことによるものと推認できる。 しかも,本件において,原告が,別件訴訟の提起直前,あるいは提起時から本件転任命令までの間に,バスの運転業務に従事している際に,あわや交通事故を起こしそうになったり,乗客とのやりとりにおいて不適切な言動があったり,その他,原告のバスの運転手としての勤務態度等について市民や利用者から苦情が寄せられるといったような,バスの運転手として心身の状態が万全でないことをうかがわせる事実があったことはもちろん,原告が,私生活上においても,自動車を運転している際に交通事故を起こしそうになったり,交通トラブルを起こしたというような,職業運転手としてふさわしくない事情があったことも認めるに足りる証拠はない。 したがって,上司においても,原告から体調が悪い旨の申告を受けたことはないため,原告に対し,健康状態を確認した上,産業医等への受診を勧めたり,健康診断を命じたこともないし,原告の主治医の意見を聴取したこともないのである(証人I尋問調書7,8,10頁,同J尋問調書15ないし18頁)。 そうすると,本件において,原告が別件訴訟を提起したことは認められるものの,そのことが原因となって,原告がバスの運転業務に従事するに適さない心身の状態にあったと判断するに足りる事情はなかったというほかないから,本件転任命令が,市民や利用者の安全確保の観点に基づくも のであるとする被告の主張は採用できない。 (4) 以上を総合考慮すると,本件転任命令は,原告が別件訴訟を提起したことを から,本件転任命令が,市民や利用者の安全確保の観点に基づくも のであるとする被告の主張は採用できない。 (4) 以上を総合考慮すると,本件転任命令は,原告が別件訴訟を提起したことを受けて,原告に対し,同訴訟を取り下げることを求めたが,原告が求めに応じなかったことを理由とするものであるというほかない。 しかし,公務員が,自らが所属する行政機関から処分を受けたが,当該処分が不当であると考えた場合に,その処分の当否はさておき,当該処分の取消しを求めて提訴すること自体は憲法上保障された権利である。そうすると,本件転任命令は,原告が別件訴訟の提起・追行という憲法上保障された権利を行使したことを受けて,同訴訟を取り下げることを求めたが,原告がその求めに応じなかったことから,同訴訟を取り下げるまでは従前の業務に従事させないという,原告が同訴訟を提起したことの対抗措置としてとられたものであると評価するほかないが,そのような転任命令は,公務遂行上の必要性が全くなく,原告の裁判を受ける権利を侵害する不当な意図・目的によるものというほかない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件転任命令には裁量権の逸脱・濫用があると認められ,違法であるから,本件取消請求は理由がある。 5 争点4(本件無効確認請求に訴えの利益があるか)について前記1及び2で認定説示したとおり,本件取消請求は適法であるので,争点4については判断を要しない。 6 争点5(損害賠償請求権の存否)について(1) Aの行為の違法性・過失について前記4で認定・説示したとおり,本件転任命令が,原告が別件訴訟の提起・追行という憲法上保障された権利を行使したことに起因して,公務遂行上の必要性が全くないにもかかわらず,対抗措置として不当な意図・目的に基 認定・説示したとおり,本件転任命令が,原告が別件訴訟の提起・追行という憲法上保障された権利を行使したことに起因して,公務遂行上の必要性が全くないにもかかわらず,対抗措置として不当な意図・目的に基づき行われたものであるところ,そのような転任処分は,公務員の 職務上の義務に違反して行われたものであるから,本件転任命令は,国家賠償法上,違法な行為となる。 また,本件転任命令に先立って行われた本件出張命令も,同様の不当な意図・目的でなされたものであるから,本件転任命令同様,国家賠償法上,違法な行為となる。 さらに,Aによる別件訴訟の取下げ要求についても,単に,取下げを求めて説得したというにとどまらず,その要求に応じなければ,バスの運転業務から外し,運輸課に転任させることになるという対抗措置を提示して同訴訟の取下げを求めており,国家賠償法上,違法な行為であることは明らかである。 上記行為を行ったAに少なくとも過失があることも明らかであって,被告には,上記行為によって原告が被った損害を賠償すべき責任があるというべきである。 (2) 原告の損害についてアそこで,原告の損害について検討すると,本件転任命令が,別件訴訟の提起・追行という裁判を受ける権利を行使したことに対する対抗措置として,公務遂行上の必要性も全く認められないにもかかわらず行われたものであること,原告が従事する職務内容等に大きな変化が生じ,原告が長年一貫して従事してきた自動車運転手の職務から外され,全く不慣れな事務方の業務に就くことになったこと,結果的に本件転任命令後は,超過勤務が減少したことにより超過勤務手当が平均すると月8万円余り減少していること(認定事実(10))など,これまで認定説示してきた本件に表れた一切の事情を総合考慮すれば,本件転 本件転任命令後は,超過勤務が減少したことにより超過勤務手当が平均すると月8万円余り減少していること(認定事実(10))など,これまで認定説示してきた本件に表れた一切の事情を総合考慮すれば,本件転任命令により原告が受けた精神的苦痛を慰謝するための慰謝料の額は100万円と認めるのが相当である。 また,上記慰謝料額や本件事案の内容に照らすと,被告の行為と相当 因果関係のある弁護士費用は10万円と認めるのが相当である。 イなお,原告は,慰謝料の要素として,組合活動上の不利益をも主張する。 しかし,組合活動は,休暇を取得して行うか,勤務時間外に行うものであること,原告の勤務地が本件転任命令の前後を通じて大阪市内であること,本件転任命令後の職場である運輸課の職員も原告と同じ組合に所属していること(ただし,組合内部での所属部門は異なる。弁論の全趣旨)からすれば,原告は,同じ組合に所属している組合員あるいは同じ組合の同じ部門に所属する組合員と連絡をとったり会合を持つことも容易であるといえる。 そうすると,本件転任命令によって原告の組合活動あるいは原告が所属する組合の活動に支障が生じたとは認められないことからすれば,金銭をもって賠償すべき精神的苦痛が生じたと評価することはできない。 ウまた,原告は,本件転任命令による損害として,超過勤務手当の不支給による損害110万円を請求している。 しかし,超過勤務手当は,超過勤務命令に応じて所定勤務時間を超えて超過勤務を行った場合にその対価として支給される手当であり,また,超過勤務を請求する権利はないから,原告が,本件転任命令後に,超過勤務手当を受給していないことをもって,本件転任命令により被った損害と評価することはできない(もっとも,前記アで述べたとおり,本件転任命令により発生した事情 ないから,原告が,本件転任命令後に,超過勤務手当を受給していないことをもって,本件転任命令により被った損害と評価することはできない(もっとも,前記アで述べたとおり,本件転任命令により発生した事情として,慰謝料額の一つの算定要素して考慮することにする。)。 第4 結論以上の次第で,原告の請求は,主文掲記の限度で理由があるからその限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行訴法7条,民事訴訟法61条,64条本文を,仮執行の宣言につき同法 259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官中垣内健治 裁判官中島崇 裁判官佐 々 木隆憲

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