令和4(わ)3256 加重収賄

裁判年月日・裁判所
令和6年12月10日 大阪地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-93667.txt

判決文本文36,183 文字)

主文 被告人を懲役4年に処する。 未決勾留日数中300日をその刑に算入する。 大阪地方検察庁で保管中の現金2300万円(領置番号省略)を没収する。 被告人から5200万円を追徴する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 【罪となるべき事実】被告人は、A市議会議員として、同市議会で議決すべき議案の質疑、討論、表決等の職務権限を有していたものであるが、A市が発注し、同市議会の議決を要するA市新火葬場整備事業建設工事(以下「本件工事」という。)の請負契約締結に関して、土木・建築工事の請負等を目的とするB社を代表企業とする特定建設工事共同企業体(以下「B社JV」ともいう。)がその優先交渉権者に選定されるに当たり、B社代表取締役C、D社代表取締役Eらの間で、D社を代表企業とする特定建設工事共同企業体が本件工事の事業者選定手続を途中辞退するなどの方法により本件工事をB社JVに受注させることがあらかじめ合意されていたことを認識しながら、令和2年7月9日、A市役所同市議会議場において、令和2年A市議会6月定例会の開会中、同定例会に付議されたB社JVとの間の本件工事請負契約締結に係る議案を可決することについて、あえて異議を唱えることなく賛成する職務上不正な行為をした上、これに対する謝礼等の趣旨の下に供与されるものであろうことを知りながら、 1 令和3年6月21日頃、F事務所において、B社取締役Gから、現金3000万円の供与を受け、 2 同年12月22日頃、同所において、Cから、現金4500万円(主文掲記の2300万円はその一部)の供与を受け、 もって自己の職務上不正な行為をしたことに関し、賄賂を収受した。 【証拠の標目】(略)【事実認定の補足説明】第1 争点及びそれに対する判断の 00万円はその一部)の供与を受け、 もって自己の職務上不正な行為をしたことに関し、賄賂を収受した。 【証拠の標目】(略)【事実認定の補足説明】第1 争点及びそれに対する判断の概要本件の主たる争点は、⑴被告人が職務上不正な行為を行ったか、すなわち、被告人が、CとEらとの間でB社JVに本件工事を受注させることがあらかじめ合意されていたこと(「受注調整」は多義的ではあるが、審理経過にかんがみ、ここでいう合意がされていたことを限定して指すものとして、以下「本件受注調整」という。)を認識しながら、本件工事請負契約締結に係る議案を可決することにつき賛成したか(争点①)、⑵被告人がこれに関して賄賂を収受したといえるか(その金額はいくらか)、被告人がそのことを認識していたか(争点②)である。なお、公訴権濫用に当たるかも争われている(争点③)。 主たる争点について、検察官は、⑴被告人は、本件受注調整に自ら関与し、それを認識しながら、本件工事請負契約締結に係る議案につき、何ら異議を唱えることなく賛成の表決をしたのであるから、職務上不正な行為をした、⑵被告人は、判示のとおり2回にわたり現金合計7500万円を受け取っており、その趣旨は、本件工事の受注に向けて、被告人が、本件受注調整、本件工事の発注方式や公募型プロポーザル参加要件の変更、市議会での契約締結に係る議案への賛成表決などといった一連の便宜を図ったことに対する謝礼としての賄賂であって、市議会議員としての不正な職務行為との対価性がある、被告人もそうした趣旨を認識していた旨主張する。これに対し、弁護人は、⑴被告人は、本件受注調整に関与しておらず、それを知らずに、本件工事請負契約締結に係る議案に賛成したのであるから、職務上不正な行為をしたとはいえない、⑵被告人は、2回にわたりい これに対し、弁護人は、⑴被告人は、本件受注調整に関与しておらず、それを知らずに、本件工事請負契約締結に係る議案に賛成したのであるから、職務上不正な行為をしたとはいえない、⑵被告人は、2回にわたりいずれもCから各3000万円を受け取ったが、その趣旨は、1回目は貸金、2回目は選挙資金の贈与であり、賄賂ではないし、被告人にはそうした認識はなかった旨主張する。 当裁判所は、⑴被告人は、本件受注調整(CとEらとの間の合意)を仲介している上、それ以前にもB社とD社との間で受注調整がなされていたことを認識していたこと、本件受注調整を前提にこれを後押しする行動をしていたこと、要件変更に関して関係者から働きかけを受けることなどにより、本件受注調整の存在を認識しながら、本件工事請負契約締結に係る議案に賛成しており、職務上不正な行為を行ったと認められる、⑵被告人は、判示のとおり2回にわたりG又はCから現金合計7500万円を受け取っており、その趣旨は、本件工事をB社JVが受注するに際し、被告人がCの依頼等を受けて本件受注調整の仲介をしたり発注方式についての説明会の設定等をしたりするなど一定の関与をした上、参加要件の変更に関しCらからの働きかけを受けるなどして本件工事をB社JVが受注するべく事態が推移していることを把握する中で、本件受注調整を認識しながら、市議会での契約締結に係る議案に異議をとどめずに賛成表決をしたことなどの一連の便宜を図ったことについての謝礼の趣旨、すなわち、市議会議員としての職務に関する対価であるとともに、職務上不正な行為に対する対価をも含む賄賂の趣旨であり、被告人はそうした趣旨が含まれているであろうことを認識していたと認められ、したがって、判示のとおり加重収賄罪が成立すると判断した。以下、説明する。 第2 前提事実関係各 含む賄賂の趣旨であり、被告人はそうした趣旨が含まれているであろうことを認識していたと認められ、したがって、判示のとおり加重収賄罪が成立すると判断した。以下、説明する。 第2 前提事実関係各証拠(()内は主な証拠)によれば、以下の事実が容易に認められる。 1 被告人の経歴、市議会議員としての職務権限等⑴ 被告人は、平成6年4月にA市議会議員に当選し、以後、7回にわたって同市議会議員に当選し、その間、市議会議長、議会運営委員会委員長、総務委員会委員長、予算特別委員会委員長などの役職を歴任しており、本件当時も市議会議員であった(甲1)。 被告人は、本件当時、A市議会議員として、同市議会において議決すべき議案に対し、質疑、討論、表決等を行う職務権限を有していた。1億5000万円以上の工事の請負契約の締結となる本件工事の請負契約締結は、この議決すべき議案に含 まれる。(関係法令、甲7)⑵ 被告人は、20歳頃から、家業である建設業のF組で稼働し、30歳頃にF組の跡を継ぎ、その後、土木・建築業等の株式会社F建設(その後株式会社Z建設に商号変更)を設立し、主にA市の公共事業などを請け負っていた(甲37)。同社の代表取締役は、被告人のおばや、平成23年以降は被告人の内妻が務めている(甲36、37、被告人12回13頁)。 被告人の後援会事務所であるF事務所は、同社と同じ建物の2階に所在する(甲37)。 2 B社及びD社について⑴ B社は、A市に本店を置き、土木・建築工事の請負等を目的として昭和41年9月に設立され、遅くとも平成26年9月から令和4年7月までCが代表取締役を務めるとともに、遅くとも平成26年9月から取締役であったGも令和3年9月から令和4年7月まで代表取締役を務めていた(甲11)。 ⑵ D社は、A 平成26年9月から令和4年7月までCが代表取締役を務めるとともに、遅くとも平成26年9月から取締役であったGも令和3年9月から令和4年7月まで代表取締役を務めていた(甲11)。 ⑵ D社は、A市に本店を置き、総合建設の設計、施工等を目的として昭和35年12月に設立され、その後、大阪市に本店を移転し、A市に支店(社内では「奈良本社」と呼んでいる。)を置くようになり、遅くとも平成29年6月以降、Eが代表取締役を務めていた(甲12)。 3 本件工事の受注状況等⑴ 平成28年頃、A市新火葬場整備事業(本件工事)が本格化し、その後、その基本計画が策定されたが、当初は設計・施工の分離発注方式であった。 しかし、平成31年4月頃、その発注方式が設計・施工一括発注のDB(デザインビルド)方式に変更され、新しい方式を導入するのに伴いA市側において必要となった本件工事の発注者支援業務について、令和元年7月22日、H社が落札した(甲158)。 ⑵ 令和2年1月31日、本件工事の公募型プロポーザルへの参加資格要件等を含む募集要項が公表された。その応募者は、設計企業、建設企業、工事監理企業及 び火葬炉企業で構成する異業種特定JV(特定建設工事共同企業体)である必要があった(甲14、158)。 ⑶ 令和2年2月25日、B社を代表企業とするJVは、Iグループの名称で、本件工事の公募型プロポーザルへの参加申請を行った。Iグループは、建設企業のB社、設計・工事監理企業のJ社、火葬炉企業のK社で構成されていた(甲15、20、158)。 ⑷ 令和2年2月28日、D社を代表企業とするJVは、本件工事の公募型プロポーザルへの参加申請を行ったが、同年4月14日、参加辞退届を提出して参加を辞退した(甲16、17、158)。 ⑸ 令和2年5月18 年2月28日、D社を代表企業とするJVは、本件工事の公募型プロポーザルへの参加申請を行ったが、同年4月14日、参加辞退届を提出して参加を辞退した(甲16、17、158)。 ⑸ 令和2年5月18日、Iグループは、プロポーザル審査の結果、優先交渉権者に選定され、同年6月24日、A市は、Iグループとの間で、本件工事の請負仮契約(以下「本件仮契約」という。)を税込24億6600万円で締結した(甲15、18ないし20、158)。 ⑹ 令和2年7月9日、被告人も出席する令和2年A市議会6月定例会において、本件仮契約が議会の議決に付され、被告人を含む誰からも質疑等のないまま異議なく可決され、本契約としての効力を生じた(甲7、20、158)。 ⑺ 本件工事の請負代金等は、出来高払金や中間前払金として、令和3年4月9日に8338万7700円、同年5月10日に1億4500万円、同年12月17日に7200万円、令和4年4月15日及び28日に1億938万5900円及び8億420万円が、Iグループに対して支払われた(甲158)。 4 D社受注の工事に関するB社の関与等⑴ 令和2年5月25日、A市発注の(仮称)A市防災市民センター建設事業(以下「防災市民センター工事」という。)の募集要項が公表され、D社を代表企業とするJVが、同年7月8日、公募型プロポーザルへの参加申請を行い、優先交渉権者に選定され、令和3年3月12日、A市との間で請負仮契約を税込約29億9500万円で締結し、同月25日、A市議会において、同請負仮契約が可決され た(甲29、30、33ないし35、158)。 ⑵ 令和2年7月7日、B社を代表企業とするJVは、防災市民センター工事の公募型プロポーザルへの参加申請を行ったが、同年9月1日、応募辞退届を提出して応募を辞退し 0、33ないし35、158)。 ⑵ 令和2年7月7日、B社を代表企業とするJVは、防災市民センター工事の公募型プロポーザルへの参加申請を行ったが、同年9月1日、応募辞退届を提出して応募を辞退した(甲31、32、158)。 5 本件工事までのA市等発注建築工事の入札等の状況平成26年3月から令和2年5月までの間にB社又はD社が入札に参加したA市等発注建築工事45件のうち、B社又はD社が落札した工事は37件であるところ、その落札率(予定価格に対する落札価格〔公募型プロポーザル方式では提案価格〕の割合)は、91.5%1件及び97~98%台2件を除いては、本件工事を含め全て99%以上となっていた(甲13)。また、前記45件のうち、B社又はD社、若しくは両者を代表企業とするJV以外の企業が入札に参加したのは、5件にとどまっている(甲13)。 なお、前記45件の落札価格(提案価格)は、本件工事を除けば、高額なものでも4億5000万円程度であった。(甲13) 6 本件の関係者についてIグループは、建築業者B社のC及びG、火葬炉企業K社大阪支店長L及び同顧問M、設計業者J社奈良事務所長Nらにおいて、Oの紹介により、一緒にJVを組んで本件工事の受注を目指し、発注者支援業務を受注したコンサルタントのH社大阪支店長Pと連携して、A市側の情報を入手しつつ、本件工事の受注に至った。 C、G、L、M、N、O及びPは、本件工事に関する公契約関係競売入札妨害被疑事件等の被疑者として、Eも同罪名の被疑事件の被疑者として、いずれも取調べを受けたが、贈賄罪で起訴されたC及びGを除き起訴されたものはいない。 第3 職務上不正な行為の有無(争点①)まず、被告人が、本件受注調整について認識していたかを検討した上で、職務上不正な行為を行ったといえるか で起訴されたC及びGを除き起訴されたものはいない。 第3 職務上不正な行為の有無(争点①)まず、被告人が、本件受注調整について認識していたかを検討した上で、職務上不正な行為を行ったといえるかを検討する。 1 本件受注調整の存在及びそれに向けた被告人の関与⑴ B社とD社が、本件工事についてB社JVが受注することを前提に、事前に相談をして、談合を疑われないようにするためにD社が本件工事のプロポーザルに参加してすぐ辞退するなどしたこと、代わりにD社が受注した防災市民センターの工事のプロポーザルにB社が参加してすぐ辞退したことは、前提事実や関係者の証言から明らかである。 ⑵ C、E及びQの証言概要そして、本件工事についてB社JVが受注することをあらかじめ合意をしていたかという本件受注調整に関し、以下のとおり、Cは被告人に依頼した旨、Eは被告人から提案を受けた旨、QはそれをEから聞いた旨を証言する。 ア Cは、本件工事をB社のJVが受注するため、被告人に、ライバル企業となり得るD社の代表取締役であるEと受注調整について話をしてもらいたいと考え、平成31年2月8日、一人でF事務所に行き、被告人に対し、「火葬場の整備事業については、是非ともB社で受注をさせてほしい。」「D社さんには、次に予定されております防災市民センターのほうの受注をしてもらうようにしてもらえないか。」と言うと、被告人は納得して、「それで行こう。」と言った旨証言する。 イ Eは、平成31年4月3日、被告人が、事前連絡の上でD社の奈良本社に来社し、「火葬場建設工事についてはB社、防災市民センターについてはEと思うけれども、いかがですか。」という話があった、本件工事はB社が受注し、防災市民センター工事はD社が受注することでよいかという趣旨と理解し、E 建設工事についてはB社、防災市民センターについてはEと思うけれども、いかがですか。」という話があった、本件工事はB社が受注し、防災市民センター工事はD社が受注することでよいかという趣旨と理解し、Eの意向と同じであったので、「それでいい。」と答えると、被告人は、「それで行こう。」と言った、その後、D社従業員のQに、本件工事はB社、防災市民センター工事はD社で受注するという提案を受けてこれに応じたことを伝えた旨証言する。 ウ Qは、同年4月3日、Eから、被告人と話をして、本件工事に関してはB社、防災市民センター工事はD社が受注を目指すというすみ分けをしたと聞き、聞いた内容を手帳に記録した旨証言する。 ⑶ C、Eらの証言の信用性アまず、Eの証言の信用性からみる。Qが使用していた平成31年・令和元年の手帳には、「4/3社長」「市民会館防災センター 35°→20° Ⓓ」「火葬場 11° Ⓑ」などとD社を表すⒹ、B社を表すⒷと表記した記載がある上、この「Ⓓ」「Ⓑ」に矢印が引かれ、その矢印始点に「先生の想い」との記載もある(甲152別添5。なお、Qの証言によれば、ここでいう「先生」とは、被告人を指す。)。これらの記載は、平成31年4月3日に、Qが、社長であるEから、被告人が、市民会館の跡地に建てられる防災センターについてはEが、火葬場についてはB社が受注するという希望をもっている趣旨の話を聞いたということを意味すると理解でき、Qの上記証言を強く裏付けるとともに、被告人からの提案をQに伝えた旨のEの上記証言も裏付けるものとなっている。また、Eが使用していた2019年の手帳の4月3日の欄に「10:00 F氏来社」との記載があること(甲152別添44)は、被告人が同日、事前連絡の上、D社の奈良本社を訪れ、Eに話をしたというEの証言 た、Eが使用していた2019年の手帳の4月3日の欄に「10:00 F氏来社」との記載があること(甲152別添44)は、被告人が同日、事前連絡の上、D社の奈良本社を訪れ、Eに話をしたというEの証言と整合する。さらに、Qは、令和2年4月8日、本件工事のプロポーザル参加を辞退する予定であることを被告人に伝えてほしい旨を被告人の親族であるRに伝えた旨証言し、これは同日のQの手帳の記載(甲152別添5)に裏付けられているところ、Qが被告人に辞退予定を伝えようとしたこと(実際に伝わったとは認められない。)は、E側が被告人から本件工事はB社と言われていたことを前提とするものであり、Eの証言を支えるものといえる。 Eは、捜査経緯に照らして本件受注調整に対する自己の関与を矮小化して証言する動機があるといえ、その証言の信用性は慎重に検討する必要がある(なお、この点は、第2の6記載の他の関係者も同様である。)。しかし、Eにおいて、その当時に、被告人が本件工事や防災市民センター工事を誰が受注するかについて、どのように話していたかに関して、あえて被告人の関与をうかがわせるような虚偽の事実をQに伝える動機があったとは認められないし、ましてQにおいて、Eから聞いた内容とは異なる虚偽の事実を手帳に記載したとも考えられない。以上によれば、E の上記⑵イの証言の信用性は高い。 イ次に、Cの証言の信用性についてみる。Cが使用していた平成30年12月令和元年12月と書かれたスケジュール帳の2月8日の欄に「F事ム所 1:30」との記載がある(甲150別添1)ところ、同記載は、Cが同日、一人でF事務所に行き、被告人と話をしたとのCの証言を裏付けている。そして、被告人が、B社が本件工事を受注したいとの意向をもっていることを知る機会はCから聞く以外には考え難いこと 記載は、Cが同日、一人でF事務所に行き、被告人と話をしたとのCの証言を裏付けている。そして、被告人が、B社が本件工事を受注したいとの意向をもっていることを知る機会はCから聞く以外には考え難いことからすると、Cの上記証言は、被告人がEに対し「火葬場建設工事についてはB社」と言ったとの上記のとおり信用性の高いEの証言とも整合的である。よって、Cの上記⑵アの証言の信用性も高い。 ウそして、これらとG及びQの証言との整合性についてもみる。Gは、Cから被告人にお願いしてきたと聞いた後にQと話した際、本件工事をB社が受注させてもらいたいと言ったところ、Qから、その代わり、防災市民センターについてはD社が受注させてほしいと言われ、その後、Qにお付き合い参加(参加申請だけして辞退すること)を依頼した旨証言する。また、Qも、Eから話を聞いた後、Gから、B社が本件工事を受注したい、その代わり、防災市民センター工事はEが頑張ってくださいと言われ、その後、Gから参加申請をして入札前に辞退してほしいと依頼された旨証言する。 GとQの上記証言は、前記1⑴の状況とよく整合するものであって、信用できる。 そして、GとQが上記のとおり本件工事や防災市民センター工事をどちらが受注するかについて話した事実は、Cが被告人に本件工事をB社が受注できるようにしてほしいと頼み、被告人がそのようにEと話をし、これにEが応じてその旨Qに伝えたという上記⑵のC、E及びQの証言と一連の流れとして整合しており、これらの証言の信用性を支えるものである。 ⑷ 被告人の供述についてア被告人の供述概要平成31年2月8日頃に、CがF事務所を訪ねてきて、今度A市で大きな公共事 業が出るといって、防災市民センターと火葬場の話を出し、防災市民センターはD社が行くだろう、自分 告人の供述概要平成31年2月8日頃に、CがF事務所を訪ねてきて、今度A市で大きな公共事 業が出るといって、防災市民センターと火葬場の話を出し、防災市民センターはD社が行くだろう、自分は火葬場へ行きたいと話した。D社が建設した市民会館の用地の建て替えが防災市民センターだから、その工事はD社が欲しいだろうし、本件工事の現場はB社本社の近くなので、うまくこういう調整、話合いができたらいいのにと思った。Cから、Eに本件工事について話してほしいなどと言われていない。 同月後半か3月初めに、D社奈良本社を訪れた際、D社のSに、Cの上記趣旨の発言を伝えたところ、D社は防災センターを取りにいくのではないかと言われ、Cが思っているように、D社は本件工事をB社に譲ると思った。 同年4月3日、事前にアポをとった上で、D社奈良本社を訪れたが、これは、Eに同月7日の県議会議員選挙の応援をお願いするためであり、防災市民センターにつき頑張ってくださいと話したかもしれないが、B社とD社との間で受注調整をしたことはない。 イ被告人の供述の信用性同年2月8日時点において、Cは、D社が防災市民センター工事を受注したいとの意向をもっていることを知らなかったと考えられるところ、被告人の供述を前提にすると、Cは、F事務所に出向いて、本件工事を受注したいという希望と防災市民センター工事はD社が受注を目指すであろうという憶測のみを被告人に話して帰ったことになる。しかし、その頃までには既にJVの構成員を固めるなどして本件工事の受注を目指して行動していたCが(この点は関係者の証言から明らかである。)、頻繁に訪れているわけでもないF事務所にわざわざ出向いて、被告人にそのような希望や憶測だけを伝えて帰ったというのは不自然である。 確かに、被告人は、親しい関係 は関係者の証言から明らかである。)、頻繁に訪れているわけでもないF事務所にわざわざ出向いて、被告人にそのような希望や憶測だけを伝えて帰ったというのは不自然である。 確かに、被告人は、親しい関係にあるSに会うため、D社奈良本社を頻繁に訪れていたことからすると、Sらから、防災市民センター工事について、D社が受注する意向がある旨聞いていた可能性はある。しかし、4月3日の件については、Eとはそれほど親しい間柄でもないのに、D社が防災市民センター工事の受注を目指していることを前提に「頑張ってくださいよ」などと激励するためだけに、奈良本社 に週1時間以内しかいないEに、事前に日時を約束してまで会いに行くとは考え難い。この点、被告人は、Eに選挙の応援のお願いに行ったと供述するが、Eは、Sとは異なり被告人の政治活動には何ら関与していなかったのであるから、そのためだけにわざわざ会いに行くということもやはり考え難い。 以上によれば、被告人の上記供述は信用できず、C、E及びQの上記証言の信用性を揺るがすものではない。 ⑸ 弁護人の主張について弁護人は、同年4月3日に被告人から受注調整の要請を受けたというのは、2月、3月のIグループの動きに照らして遅すぎ、Eの前記証言は信用できない旨主張する。しかし、後述のとおり、本件工事を受注するにあたりDB方式に変更した方がよいと考えたCらは、同年3月27日に、被告人に対してDB方式の説明を行っていることからすれば、その1週間後に、被告人が、事前約束をした上で、親しい間柄でもないEを訪れてあえて話をする内容としては、本件工事や防災市民センター工事をどちらが受注するかについてという方がむしろ自然であって、遅すぎるとはいえず、弁護人の上記主張は採用できない。 ⑹ 検討以上のとおり信用できるC、 としては、本件工事や防災市民センター工事をどちらが受注するかについてという方がむしろ自然であって、遅すぎるとはいえず、弁護人の上記主張は採用できない。 ⑹ 検討以上のとおり信用できるC、E及びQ証言によれば、本件工事を受注したいと考えたCが、被告人に対して、本件工事をB社が受注し、D社は防災市民センター工事を受注するようにしてもらいたい旨依頼し、それを受けて被告人が、D社奈良本社を訪れ、Eに対し、本件工事はB社が受注し、防災市民センター工事はD社が受注するということでどうかと提案し、Eがこれに応じたこと、そして、CやEから指示を受けた実務担当者であるGとQとの間で、本件工事をB社が受注することが確認され、それに向けた具体的な段取りを決めたことが認定できる。そうすると、本件受注調整の存在、すなわち、CとEらとの間で本件工事をB社に受注させるという合意がなされたと認められ、それに際し、被告人は、Eに対して、Cの要望どおり口利きをして、その合意に向けた仲介をしたといえるのであるから、本件受注 調整を認識していたことが強く推認できる。 2 本件以前のB社とD社の受注調整状況⑴ C、Qの証言概要Cは、本件以前のB社とD社との間の受注調整(ここでは、どちらが受注するかについての合意の意)について、平成26年3月に入札が執行されたA市ごみ中間処理施設新設工事に関して、被告人からD社とJVを組むように言われたが、これまでのD社とB社の受注総額に差があることを説明をして、その依頼を断った、結局B社が受注できず、被告人からD社と仲良くやっていくようと言われたこともあって受注調整をするようになった、B社ではG、D社ではQ等が受注調整の担当をしていたが、A市総合運動公園管理事務所及び観覧エリア改修工事(平成30年8月入札・甲1 くやっていくようと言われたこともあって受注調整をするようになった、B社ではG、D社ではQ等が受注調整の担当をしていたが、A市総合運動公園管理事務所及び観覧エリア改修工事(平成30年8月入札・甲13)は、B社とD社がいずれも受注の意向で調整がつかず、被告人に仲裁してもらい、同工事はB社が受注し、D社はホール改修工事(令和元年12月入札・甲13)を受注することになった旨証言する。 また、Qも、本件以前からGを窓口に受注調整をしており、A市市民会館解体工事(平成29年12月入札・甲13)に関して、D社もB社も受注したいということで折り合いがつかず、被告人に相談に行き、裁定を仰ぐ形でD社が受注したことがあった旨証言する。 ⑵ C、Qの証言の信用性Cの平成26年3月の件に関する証言は、Cが使用していた平成25年7月から平成26年12月と書かれた手帳の「1/30 F氏」との記載の下に、「D社」「B社」と項目が分けられて、両社が受注した工事名やその受注額、両社の合計受注額の差額が記載されていることとよく整合しており(甲150別添1)、信用できる(なお、被告人は、CにD社とJVを組んで参加するように言ったことはない旨供述するが、Cの手帳の記載と整合せず、信用できない。)。また、B社とD社との間で受注調整をしてきたとのC及びQの上記証言は、前記第2の5のA市等発注建築工事の入札状況等と合致しているし、両社の受注調整に被告人が関与すること があった旨のC及びQの上記証言は、相互に整合しており、それらの証言は信用できる。 ⑶ 検討以上のとおり信用できるC及びQの証言によれば、本件以前から、被告人は、A市等の公共工事に関して、B社とD社のどちらが受注するかにつき、提案したり相談を受けたり承認したりしていたと認められ、両社の間で受 のとおり信用できるC及びQの証言によれば、本件以前から、被告人は、A市等の公共工事に関して、B社とD社のどちらが受注するかにつき、提案したり相談を受けたり承認したりしていたと認められ、両社の間で受注調整がなされていることを認識していたといえる(なお、被告人の供述も、この点の認識を否定するものとは理解されない。)。そして、このことは、被告人が、本件工事についてのB社とD社との間の本件受注調整の存在を認識していたことを推認させる。 なお、CやQの証言によっても、被告人が行ったという「仲裁」「裁定」の具体的内容が明らかではなく、Cも、被告人が「それでええんちゃうか」と言っていたと証言するだけで、被告人の提案を断っても嫌がらせを受けるなどしたことはないとも証言していることをなどを踏まえると、被告人が、B社とD社の間で受注調整ができない場合に、両社のどちらが受注するかを決めて、これに従わせていたとの検察官が主張するような事実までは認められない。 3 本件工事の分離発注方式からDB方式への変更⑴ 検察官は、平成31年4月頃の本件工事の発注方式の変更に関し、被告人は、Iグループの意向を受けて、その意向に沿うように、本件工事の発注方式をDB方式に変更させており、このことは、被告人が本件受注調整の存在を認識し、自ら調整に関与していたことを裏付けると主張するのに対し、弁護人は、DB方式への変更は市側の意向である旨主張するので、以下検討する。 ⑵ 平成31年3月27日のF事務所での説明について本件工事の発注方式につき市側に働きかけてDB方式へ変更することを目指していたIグループのC、P及びLが、平成31年3月27日、F事務所を訪問し、被告人に対し、「A市新火葬場整備事業のデザインビルド(DB)方式について」と題する書面(甲148別添4 更することを目指していたIグループのC、P及びLが、平成31年3月27日、F事務所を訪問し、被告人に対し、「A市新火葬場整備事業のデザインビルド(DB)方式について」と題する書面(甲148別添4。工期短縮やコスト減等のメリットをまとめたもの) に基づきDB方式の説明を行い、被告人がA市側にも伝えておくから、PらがA市側の担当者に説明に行くように言ったことは、Cのスケジュール帳の3月27日の欄の記載(甲150別添1)やPの運転日報の記載(P別紙1)といった裏付けのあるCやPの証言から認められ、被告人もそのこと自体は認めている。なお、Cは、同年2月8日、前記第3の1⑵アのとおり被告人に本件受注調整に関する依頼に行った際、DB方式の一括発注でお願いしたいと依頼した旨も証言するが、このことは、前記Qの手帳の4月3日の欄(甲152別添5)に「DB」の記載があることとも整合し、信用できる。 ⑶ 平成31年4月17日のA市役所における説明会についてア同年4月17日、A市役所において、A市役所の関係各課に対するDB方式に関する説明会(以下「本件説明会」という。)が開かれ、PらH社の担当者からDB方式についての説明がされたこと自体は、関係証拠(P10頁、甲152別添28等)から明らかである。 イ本件説明会についてのPらの証言概要そして、本件説明会を設定したのが誰かについて、Pは、3月27日の後、被告人から、A市役所の関係各課に説明の機会を設けるとして日時場所の連絡があった、本件説明会の冒頭で、被告人は、本件工事に関してDB方式は非常にメリットも大きいので庁内で再検討してはどうかという趣旨の発言をした旨証言する。 また、A市産業建設部参事であったTは、同年4月に、A市副市長であったUから参加を指示され本件説明会に参加したと にメリットも大きいので庁内で再検討してはどうかという趣旨の発言をした旨証言する。 また、A市産業建設部参事であったTは、同年4月に、A市副市長であったUから参加を指示され本件説明会に参加したところ、その冒頭、被告人が「しっかりとDB方式を勉強しろや」と言っており、その後、H社の職員からDB方式によるメリット等が説明された旨証言する。さらに、Uは、被告人から、H社がDB方式を説明する説明会が行われるので参加するようにと言われ、担当職員にその旨伝え、自身も参加した旨証言する。 ウ Pらの証言の信用性被告人から連絡が入ったとのPの上記証言は、Pが同年4月12日にH社従業員 に送ったメール中の「A市のF先生から連絡が入り、所定のとおり、市長、担当部長クラスへのDBの説明会(勉強会)が設定されました。」、日時については31年4月17日13時から、場所はA市との記載に基づくものである(P証言別紙3)。 Pの証言の信用性については慎重に検討する必要があることを踏まえても、Pが、同メールを送信した時点において、誰が本件説明会の日時場所を設定したのかについて、H社の同僚に対してあえて虚偽の事実を記載する動機は想定し難く、被告人から何も連絡が入っていないのに、Pがメールにわざと、被告人から本件説明会の日時場所についての連絡が入ったとの虚偽の事実を記載しているとは考えられない。 Uも本件説明会が開催されることについて被告人から聞いたとPの証言に沿う証言をしている。 そうすると、被告人から本件説明会の開催の連絡が入った旨のPの供述は、信用できる(これに反する被告人の供述は、信用できない。)。 弁護人は、市議会議員である被告人が、部長級が参加する日程の調整を市の担当者を介さずに独自に設定できるはずはない旨主張するが、被告人が市の職員等に依頼 これに反する被告人の供述は、信用できない。)。 弁護人は、市議会議員である被告人が、部長級が参加する日程の調整を市の担当者を介さずに独自に設定できるはずはない旨主張するが、被告人が市の職員等に依頼して、本件説明会の日時場所を設定、準備させれば足りるのであるから、不自然とまではいえず、Pの上記証言の信用性は揺らがない。 なお、本件説明会の冒頭で、被告人が具体的に何と言ったかについては、P及びTの証言に食い違いがあるものの、DB方式の検討をするようにといった趣旨の発言をした限度では一致しており、その限度で信用できる。 エ以上Pらの信用できる上記証言部分によれば、被告人は、本件説明会の日時場所を設定した上でPに連絡し、本件説明会の冒頭に、DB方式の検討をするようにといった趣旨の発言をしたことが認められる。 ⑷ 本件説明会後のDB方式の変更の経緯についてTは、本件説明会の数日後に、UからDB方式でいくとの指示があり、被告人から言われているのかなと思ったと証言し、Uは、DB方式を採用せよとの被告人からの示唆であると思い、本件説明会からあまり日を置かずにDB方式に変更するよ うに指示した旨証言する。 しかし、他方で、Uは、本件工事がDB方式に変更される前に、Pが何度かDB方式への変更についての営業に来ていたとも証言している。本件説明会から数日でDB方式に変更する方針となったことを前提にすると、本件説明会以前から、PがUらA市関係者に対しDB方式への変更についての営業を行っていたと考えられる。 このことは、Pが、本件説明会の2日前である令和元年4月15日、K社のLやH社の同僚に送ったメールの中に、「設計施工の分離発注からDB方式一括発注への営業的な動きが先行していた」との記載がある(P証言)ことに沿うものとみることも可能 である令和元年4月15日、K社のLやH社の同僚に送ったメールの中に、「設計施工の分離発注からDB方式一括発注への営業的な動きが先行していた」との記載がある(P証言)ことに沿うものとみることも可能である。 そうすると、Pの営業を受けて、UらA市関係者が、工期の短縮やコスト減などの理由から、従来の分離発注方式からDB方式への変更を決めた可能性は否定しきれない。このことは、A市産業建設部事業推進課新火葬場整備係長であったVが、当時、一部事業に遅れがみられており、DB方式を採用することによって事業スケジュールが間に合うのではないかと思った旨証言していることにも裏付けられる(なお、Vは、上司であるTの指示を受けて本件工事にかかる事務を業務として担当していた者であって、虚偽供述の動機はなく、その証言は全体として信用できる。)。 ⑸ 検討以上を踏まえて検討すると、被告人が、CからDB方式でお願いしたいなどと言われ、PからDB方式についての説明を受け、これをUに伝え、本件説明会の日時場所を設定した上、これをPに伝え、実際本件説明会の冒頭に出席してDB方式に前向きな発言をしていたとの事実が認められる。そうすると、被告人は、B社が本件工事を受注することを前提にこれを後押しする行動をしているといえるのであって、このことは、被告人が本件受注調整の存在を認識していたことに沿う事情といえる。 もっとも、それを超えて、検察官主張のとおり、被告人が、Iグループの意向に 沿うように、市職員に指示して本件工事の発注方式をDB方式に変更させたことまで認めるには疑いが残る。すなわち、CもPも、被告人に対して、IグループがなぜDB方式への変更を目指しているのかについて工期の短縮や費用の削減といった説明に終始し、本当の理由(IグループとしてはH社が発注 るには疑いが残る。すなわち、CもPも、被告人に対して、IグループがなぜDB方式への変更を目指しているのかについて工期の短縮や費用の削減といった説明に終始し、本当の理由(IグループとしてはH社が発注者支援業務を受注することで市側の内部情報を得やすくすることなど。各企業にとって様々な理由がある。)については明らかにしていない。そうすると、被告人が供述するように、Pらから説明を受けて、DB方式がA市にとってメリットの大きい方式であると感じ、本件説明会を設定しただけであり、その変更はPから営業を受けていたUら市職員の意向が反映されたものである可能性を否定できない。また、そもそも、TもUも、DB方式への変更が被告人の意向であると思ったと証言するのみで、DB方式への変更について、被告人による何らか具体的な言動があったと証言しているわけでもない。したがって、被告人が、Iグループに受注させるために、DB方式へ変更させたとまで認めることはできない。 4 本件工事のプロポーザルの参加要件の変更⑴ 本件工事のプロポーザルの参加要件の変更内容令和2年1月31日に公表された募集要項のうち、本件工事の公募型プロポーザルへの参加資格要件は、応募者となる設計企業、建設企業、工事監理企業及び火葬炉企業で構成する異業種特定JVについて、ⓐ建設業務にあたる者は単独又は複数の構成員で構成すること、ⓑそのうち1者以上を市内業者(市内に本店として登録を有する者)又は準市内業者(市内に支店・営業所等の社屋があり、本店機能に相当すると判断できる程度の営業能力・規模を有する者)とすること、ⓒ火葬炉企業は、2以上の応募者の構成員として参加することを条件付きで認めることなどとされていた(甲14、158)。 令和元年11月の時点におけるA市側の検討では、これらの要件は、ⓐⓑ すること、ⓒ火葬炉企業は、2以上の応募者の構成員として参加することを条件付きで認めることなどとされていた(甲14、158)。 令和元年11月の時点におけるA市側の検討では、これらの要件は、ⓐⓑについては、建設企業は単独では足りず、2ないし3者で構成する必要があり、しかも、代表となる建設企業は、市内業者・準市内業者に限らず、県内に営業所がある業者 も含まれていたほか、代表以外の建設企業は「土木一式」の登録をしている業者でなければならなかったこと(B社は建築一式の登録のみ)、ⓒについては、火葬炉企業を含めて、2以上の応募者の構成員として参加することはできないこととされていた(甲150別添3)。 そして、令和2年1月17日の第1回事業者選定委員会(以下「本件事業者選定委員会」という。)の前までに、上記「土木一式」の要件が「建築一式又は土木一式」に変更され、さらに、本件事業者選定委員会後まもなくの時期に、それ以外の3点の要件(ⓐ建設企業の単独参加、ⓑ代表企業の県内本店への限定、ⓒ火葬炉企業の重複参加)が変更された(V証言等)。 ⑵ 当事者の主張(被告人が上記ⓐ~ⓒの3点を変更させたのかについて)検察官は、被告人は、本件工事の公募型プロポーザルへの参加要件に関し、Cから依頼を受け、Iグループの意向であることを認識しながら、Tに対し、上記ⓐからⓒの3点の要件変更を指示しており、このことは、被告人が本件受注調整の存在を認識し、自ら調整に関与していたことを裏付けると主張するのに対し、弁護人は、被告人が、Tに対し、県内業者に限ったらどうかと述べたことはあったが、Iグループの意を受けた提案をしたことはなく、上記ⓐ~ⓒの3点の変更を求めたことはないと主張する(被告人は依頼を受けたこともないと旨供述する。)。 ⑶ Cが被告人に上記 と述べたことはあったが、Iグループの意を受けた提案をしたことはなく、上記ⓐ~ⓒの3点の変更を求めたことはないと主張する(被告人は依頼を受けたこともないと旨供述する。)。 ⑶ Cが被告人に上記ⓐ~ⓒの3点の変更を依頼したかア Cの証言概要令和元年11月以降、Pが入手した本件工事のプロポーザルの参加要件に関する資料(甲150別添3・「参加要件(JV構成員)の検討について(案)」と題する書面や「募集要項(たたき台)」と題する書面)を見て、建設業者1者で受注したいのに、ⓐ建設企業として建築工事業者と土木工事業者の2者が必要とされている点や、ⓑ代表企業が県内に営業所がある建設企業も参加できるとされている点が問題であったほか、参加して辞退してもらう予定のD社とJVを組む火葬炉企業がなかったことから、ⓒ火葬炉企業の重複参加が禁止されている点が問題となった。 令和元年12月26日、Pとともに、F事務所に行き、被告人に対し、Pがⓐ建設企業の単独参加とⓒ火葬炉企業の重複参加につき記載された「参加資格要件における追加事項」と題する書面(甲150別添3)を示してこの2点につき、説明し、Cがその2点の変更をお願いした。 令和2年1月17日、それでも参加要件が変更されていないことから、Pからメールで上記ⓐⓒの2点を被告人への「擦り込み」を依頼され、被告人に、電話で、上記ⓐⓒとともに、ⓑ代表企業を県内に本店がある企業に限ることも加えて3点の変更をお願いしたところ、被告人は了解してくれた。 イ Pの証言概要Pは、概要、上記ⓑの変更依頼の点以外は、Cと同旨の証言をする。すなわち、本件工事の参加要件について、B社が一社で参加できるように、建設企業の単独参加を可能にし、K社が異なるJVに参加できるように、火葬炉企業の重複参加を可能に 点以外は、Cと同旨の証言をする。すなわち、本件工事の参加要件について、B社が一社で参加できるように、建設企業の単独参加を可能にし、K社が異なるJVに参加できるように、火葬炉企業の重複参加を可能にしたかったことから、被告人から市の担当者に要件の見直しを強く主張してもらおうと考え、令和元年12月26日、CとF事務所に行き、被告人に、前記「参加資格要件における追加事項」と題する書面を示して説明し、Cが2点の要件の変更をお願いしたが、本件事業者選定委員会でも参加要件の変更がなされていなかったため、Iグループにメールを送信し、Cから被告人に再度「擦り込み」をお願いした。 ウ C、Pの証言の信用性令和元年12月26日にCとPが被告人を訪ねた旨の両名の証言は、Cが使用していた手帳の令和元年12月26日の欄に「F事ム所 10:00」との記載があること(甲150別添1)に裏付けられているし、令和元年12月25日、PがIグループに送信したメール(甲150別添15)に記載された「1)F先生より、市側に追加事項について再検討する様指示→コンサルに再相談する様に示唆して貰う。」「2)市側から、当社に相談(参加要請書の再検討依頼を指示頂く)」「3)当社から追加事項を盛り込んだ参加資格要件書を提出します。」という「今後の段取 り」ともよく整合している。そして、同月26日に被告人に上記ⓐⓒの2点の要件変更を依頼した旨のP及びCの証言は、O、N及びLも、本件工事の参加要件について、Iグループとしては、ⓐ建設企業の単独参加とⓒ火葬炉企業の重複参加を可能にしたいと考えていた旨の証言をしていることや、Pが、令和2年1月17日、Cらに「参加要件に盛り込む①火葬炉企業重複参加、②建設企業の単独参加の内容は反映されていません。」「C社長可能であれば、上記の2点 と考えていた旨の証言をしていることや、Pが、令和2年1月17日、Cらに「参加要件に盛り込む①火葬炉企業重複参加、②建設企業の単独参加の内容は反映されていません。」「C社長可能であれば、上記の2点、改めて先生に擦り込みをお願いします」とのメールを送信していること(甲150別添5)ともよく整合しており、信用性できる。また、Pから要件変更について被告人への擦り込みを依頼されたCが、被告人に電話をするという経過は自然であって、被告人に電話をかけて、参加要件の変更をお願いしたとのCの証言は、上記2点の依頼をいうに限っては、信用できる。 ただし、Cがⓑ県内本店に限る点も依頼した旨を証言する部分は、検討を要する。 P、O、N及びLのみならず、B社のGも、本件工事の参加要件について問題となっていたのは、ⓐⓒの2点であって、ⓑ代表企業に県内営業所が含まれている点がIグループやB社にとって問題になっていたとは証言していない。また、前記12月26日のPの被告人に対する説明書面や、PがIグループに送信した前記「擦り込み」依頼のメールにも、2点の参加要件の問題を指摘するのみで、ⓑ県内営業所の点には何ら言及されていない。Cの証言は、県内営業所が含まれていることの問題にいつ気付いたのか、なぜPらと問題意識を共有しなかったのか、どのように対応しようとしたのかなどの点においてあいまいである。そうすると、この点のCの証言は信用性に疑問が残るといわざるを得ない。 エ検討以上のとおりP及びCの信用できる証言部分によれば、令和元年12月16日、CとPが、被告人に対し、上記ⓐⓒの2点の要件の変更について説明して依頼し、令和2年1月17日以降に、Cが電話でその2点について再度依頼した事実が認められる。 ⑷ 被告人がTに対し上記ⓐ~ⓒの3点の変更を指示し 記ⓐⓒの2点の要件の変更について説明して依頼し、令和2年1月17日以降に、Cが電話でその2点について再度依頼した事実が認められる。 ⑷ 被告人がTに対し上記ⓐ~ⓒの3点の変更を指示したかア Tの証言要旨令和2年1月20日頃、本件事業者選定委員会の後、事業を円滑に図るため、被告人に募集要項等の説明に行った。書面(甲152別添53の4枚目の手書き部分がないもの)を示しながら、被告人に説明した。ⓑ代表者である建設企業の項目につき「県内営業所または県内本店で」という記載を説明すると、被告人から「県内だけでやれ」と県内にある本店に限定するようにとの趣旨のことを言われたほか、ⓐの構成員となる建設企業の項目につき「代表者及び構成員①のJV数は2~4JVまでとする」との説明には、「単独じゃあかんのか」と建設企業を単独でも参加できるようにしろという趣旨のことを言われ、さらにⓒ「火葬炉企業」について「複数でできないのか」と同じ火葬炉メーカーが複数のJVに参加できないのかとも言われた。Tが説明をしても被告人は同じことを繰り返し、最終的に被告人から「コンサルに相談せえ」と言われた。そして、県内営業所を県内本店にするのは、県内業者の育成にもつながり、それなりの理由があると考え、Vに変更の指示をしたが、残りの2点の要件の変更には理由がつかないと思い、Pに電話で相談したところ、Pが変更に関する理由を記載した「参加資格要件における追加事項」と題する書面(甲152別添46)を持ってきてくれ、これで理由がつくと思い変更を指示した。 イ検討Tの証言は、ⓐ~ⓒの3点の変更を被告人に依頼した旨のCの上記証言や、Tからⓐⓒの2点の変更につき相談を受けた旨のPの証言と整合的であるし、Tから、同月20日にⓑ県内営業所を削除する変更について、同月2 証言は、ⓐ~ⓒの3点の変更を被告人に依頼した旨のCの上記証言や、Tからⓐⓒの2点の変更につき相談を受けた旨のPの証言と整合的であるし、Tから、同月20日にⓑ県内営業所を削除する変更について、同月22日か23日に上記ⓐⓒの2点の要件変更について、被告人の意向であるとして変更を指示されたとのVの証言(V証言が信用できることは前記のとおり)とも整合していることからすれば、信用してよいようにも思われる。 しかし、次のとおり、関係証拠やVの証言等を踏まえて検討すると、ⓑ県内本店 への限定への変更は、被告人からの提案があったと認められるが、上記ⓐⓒの2点の変更については、Tに提案していないとの被告人の供述を排斥できない。 Tは、被告人との面談の後、Vに対し、被告人から言われたⓑ代表企業の県内営業所を外す件はそのまま指示したが、ⓐ建設企業の単独参加、ⓒ火葬炉企業の重複参加の件は、理由がつくかPに電話で対応を求め、Vにはⓐⓒの2点について被告人からあったことやH社に確認中であることを含めて何も伝えていないと証言している(Vも同旨の証言をしている。)。 まず、上記ⓑに関し、前記のとおり信用性が高いVの証言によれば、Vは、令和2年1月20日、PらH社関係者に、「①参加要件の妥当性について代表者を「県内本店」までとすることが考えられます。」「御社からの視点として今回のJV構成が妥当であると整理いただけますでしょうか。」とのメールを送信しており(甲152別添2)、これはTから県内営業所を外すよう指示された当日であるという。同月17日の本件事業者選定委員会において決定された要件をわずか3日で変更を検討するような事情は、その間に特段うかがわれないのであるから、同月20日、Tが、被告人に対し、本件事業者選定委員会の結果や今後の方針などにつ 業者選定委員会において決定された要件をわずか3日で変更を検討するような事情は、その間に特段うかがわれないのであるから、同月20日、Tが、被告人に対し、本件事業者選定委員会の結果や今後の方針などについての説明を行った際に、その場で被告人からTに対して、代表企業を県内本店に限る(県内営業所を削除する)ことについて提案ないし示唆があったと考えるのが自然である。 そうすると、Tが、同年1月20日に、被告人からの提案を受けて、県内営業所を削除することをVに指示したという証言部分については、信用できる(被告人も、地元の業者、市内の業者が有利になるよう求めた旨供述しており、Tの証言部分と大きく異なる供述をするものではない。)。 次に上記ⓐⓒの2点の要件変更についてみる。Vは、上記のとおり、ⓑに関しTから代表企業の県内営業所を削除するように指示された後、その日のうちにPらH社関係者にメールで「至急のお願い」としてその検討を求めている。それにもかかわらず、被告人から同じタイミングで指示を受けたという上記2点の要件変更 について、募集要項の公表が迫る中で、最終的には被告人に従うしかないと考えていたというTが、実務担当者であるVにそのことを何ら伝えず、直接Pと電話でやり取りをしていたというのは不自然さを否めない。 この点、Tは、捜査段階において、被告人とは別に、副市長のUからも、これらの要件変更ができないかという話があったかもしれない旨の供述をしていたことがうかがわれる(T証言)。また、Pは、令和2年1月22日、Iグループに対し、「あの後、市側(部長、参事)と協議を行い追加要件(①建設企業の単独参加、②火葬炉企業の重複参加)の盛り込みについては、上層部には、概ね納得は頂きました。その後、原課(事業推進課)へ参事から話を落とすとのことで 側(部長、参事)と協議を行い追加要件(①建設企業の単独参加、②火葬炉企業の重複参加)の盛り込みについては、上層部には、概ね納得は頂きました。その後、原課(事業推進課)へ参事から話を落とすとのことで、了解が取れれば明日、朝一番に、原課(多分、V係長)から私に宛に連絡が入るとのことでした。」とのメールを送信している(L証言・別紙10に基づくもの)。 これらは、上記2点の要件変更について、本件事業者選定委員会後に、PがTやUらA市側と協議を行っており、その結果として、UからTに同要件を変更できないかとの提案があり、TあるいはUの判断で変更が決定され、Tから事業推進課のVに指示がなされた可能性をうかがわせる事情である。むしろ、このように、上記2点の要件変更は同月20日の被告人とTの面談で被告人が言い出したものではないと考える方が、Tが被告人との面談後に、同要件変更を求められたことをVに何ら伝えていないことを合理的に説明できる。 したがって、被告人から同要件の変更を求められたとのTの証言部分に基づく認定はできず、被告人は上記ⓐⓒの2点の要件変更について何らの提案をしていない可能性を排斥できない。 ⑸ 以上によれば、令和元年12月から翌1月にかけての要件の変更に関する被告人の関与についてみると、Iグループがⓐ建設企業の単独参加、ⓒ火葬炉企業の重複参加の要件の変更を目指し、CやPが被告人にこの2点の変更について説明して依頼したことがあると認められるが、これを受けて、被告人が、Tにそれらの変更を指示したと認めるには疑いが残る。また、被告人が、Tに対し、代表企業を県 内本店に限定した方がいいのではないかとの趣旨の発言をし、これを受けてTがその要件変更を指示した事実は認められるが、Cから依頼を受けたと認めるには疑いが残り、被告人自身の「 、代表企業を県 内本店に限定した方がいいのではないかとの趣旨の発言をし、これを受けてTがその要件変更を指示した事実は認められるが、Cから依頼を受けたと認めるには疑いが残り、被告人自身の「地元の業者が有利なように」との思いから疑問を呈した可能性を否定できず、この発言をもって、被告人がIグループの意向であると認識しながらⓑの要件の変更を指示したとは認められない。 ⑹ 土木一式要件の変更について令和元年11月下旬以降問題となっていた土木一式の要件の変更についてみる。 ア Tの証言概要及びその信用性Tは、令和元年11月6日の副市長であるUへの説明の後、Uから、何で土木一式の業者が入ってるんやというふうに被告人から言われたので、入っている理由を被告人に説明しに行ってくれと言われ、Vらと構成員たる建設企業に土木一式が必要な理由を説明したが、納得を得られず、その後、Pも入れて再度被告人に説明をしたが、やはり納得を得られず、Pとの協議の結果、「土木一式」を必須とせず、「建築一式又は土木一式」と要件を変更した旨証言する。なお、U、P及びVも同旨の証言をする。 Tの上記証言は、前記4⑴のとおり、実際当該要件が変更されていることのほか、令和元年11月19日から22日にかけて、VがPに、なぜ土木一式を入れるのかの説明を求めるとともに、Pから被告人に同月26日に直接説明をするよう依頼するメールを送っていること(甲152別添2)に裏付けられているほか、U、P及びVの証言と互いに信用性を支えあっており、信用できる。 イ被告人の供述を踏まえた検討この点、被告人は、本件工事の参加要件に「土木一式」と書かれているのを見て、本件工事にゼネコンが参加してきて、地元の業者が外されてしまうのではないかと不安に思い、Uに確認し、その後Tらから 検討この点、被告人は、本件工事の参加要件に「土木一式」と書かれているのを見て、本件工事にゼネコンが参加してきて、地元の業者が外されてしまうのではないかと不安に思い、Uに確認し、その後Tらから説明を受けた旨供述する。 前記のとおり、B社らIグループは当初から、建設業務にあたる者が複数(2から4者)でなければならないという要件を問題視していたのであるから、代表企業 以外の構成員の登録業種に関心をもっていたとは考えられないし、O及びLは、Iグループが問題視していた参加要件として土木一式の要件については何も証言していない。 そうすると、同要件の変更は、被告人が、Cからの依頼を受けてUに話を向けたことによってされたものではなく、被告人自身の疑問や問題意識をUやTらに伝えた結果、Tが変更を決めたと考えるのが自然である。 5 被告人の本件受注調整に対する認識前記第3の1⑹のとおり、被告人は、Cの依頼を受け、本件工事はB社が受注することなどをEに提案し、これに応じるとのEの返答を聞き、本件受注調整を仲介したといえるのであって、Eの返答がCに伝わったかは確認していないものの、前記同2⑶のとおり、本件工事以前にも、B社とD社の間で受注調整がなされていたことを認識していたことからすれば、自らが仲介したとおり本件受注調整がなされることを認識していたものと認められる。前記同3⑸のとおり、被告人が、DB方式への要件変更に際し、本件工事をB社が受注することを前提にこれを後押しする行動をしていたことは、それに沿う事情といえる。前記同4⑸のとおり、B社らIグループの意向に従ってプロポーザルの参加要件を変更するなどはしたとは認められないものの、Cから同要件の変更の依頼を受ける中で、自らが仲介したとおり本件工事をB社JVが受注するべく事態が推 B社らIグループの意向に従ってプロポーザルの参加要件を変更するなどはしたとは認められないものの、Cから同要件の変更の依頼を受ける中で、自らが仲介したとおり本件工事をB社JVが受注するべく事態が推移していることは把握していたと考えられる。そうすると、令和2年7月9日の表決の時点において、被告人は、本件受注調整の存在を認識していたと認められる。もっとも、D社が参加してすぐに辞退するなどといった具体的な方法についての認識は未必的なものにとどまると考えられる。 この点、弁護人は、B社が本件工事を受注したのは、本件受注調整の結果ではなく、B社とD社それぞれの思惑が一致したにすぎない旨主張する。前記のとおり、D社を頻繁に訪れていた被告人が、Sらから、D社は防災市民センター工事の受注を目指していると聞いていた可能性は排斥できず、Eと話をした平成31年4月3 日時点では、B社及びD社両社の意向どおりの受注がされると認識していたとも考えられる。しかし、前記のとおり、被告人がわざわざEのところに赴いて、Eに対し、B社は本件工事、D社は防災市民センター工事という話をするということは、あえてそのことを明確にする趣旨以外に考えられないのであるから、たとえそれが両社の意向に沿うものであったとしても、まさに事前の合意(本件受注調整)を仲介したというべきである。上記弁護人主張や被告人の認識は、本件受注調整の存在及びその認識を否定する事情ではない。 したがって、被告人は、本件受注調整の存在を認識していたと認められる。 6 職務上不正な行為の存在前記のとおり、A市議会議員であった被告人は、同市議会において議決すべき本件工事の請負契約締結の議案に対し、質疑、討論、表決等を行う職務権限を有していた。 そして、A市が策定した「談合情報対応マニュアル おり、A市議会議員であった被告人は、同市議会において議決すべき本件工事の請負契約締結の議案に対し、質疑、討論、表決等を行う職務権限を有していた。 そして、A市が策定した「談合情報対応マニュアル」によると、「談合」とは、公共工事の入札(公募型プロポーザルによる随意契約を含む。)において、事前に業者が価格や落札者を話し合って決めることをいい、「談合」があった場合には、入札の中止や無効、契約の取消しや解除といった措置がとられる(Y証言。なお、同人の証言は、企画政策部長という立場から、関係法令等にも基づき一般論を述べるもので信用性に疑いはない。)。本件受注調整は、ここにいう「談合」に当たることからすると、A市の締結する契約が適正妥当なものかチェックすべき職責を負う同市議会議員としては、本件受注調整の存在を認識していたのであれば、そのことを議会において質疑等を通じて明らかにするとともに、B社と市との請負契約締結に係る議案に反対する表決を行う職責を負うと解するべきである。 そうすると、前記のとおり、被告人は本件受注調整の存在を認識していたにもかかわらず、令和2年7月9日の令和2年A市議会6月定例会に出席しながら、その職責に反し、本件仮契約の締結に関し、何ら質疑等を行わず、あえて異議を唱えずに賛成の表決をしたものであり、被告人は職務上不正な行為を行ったといえる。 第4 職務上不正な行為等に関する賄賂の収受の有無、その認識の有無等(争点②) 1 Iグループによる被告人への謝礼の決定⑴ C、Gの証言概要Cは、本件工事の受注に対して、被告人に謝礼を支払うことを受注前から考えており、Gにはその話をしていた、謝礼金の額は受注金額の3%にしようと考えており、受注後の令和2年7月にはGにその旨伝え、手帳にもその額などを記載した、受注 被告人に謝礼を支払うことを受注前から考えており、Gにはその話をしていた、謝礼金の額は受注金額の3%にしようと考えており、受注後の令和2年7月にはGにその旨伝え、手帳にもその額などを記載した、受注金額の3%は7398万円であったが、Gと話し合って7500万円とした旨証言する。また、Gは、Cと相談し、本件工事の受注に対して、被告人に謝礼を支払うこととなり、その金額については、Cから請負金額の3%と言われたが、最終的には切り上げて7500万円となった、被告人への謝礼はIグループ3社で分担することにし、令和2年7月頃、Nに対し、Oの報酬1%と被告人への謝礼3%の分担を伝え、その後、分担を明らかにする「IグループJV共通費」との書面を作成し、LとNにメールで送信した旨証言する。 ⑵ C、Gの証言の信用性Cが使用していた手帳の「7/22」と書かれた下の部分に、「火葬場」として24億6600万円と書かれ、その下に「(83.5)B社」「(6.1)J社」「(10.4)K社」とそれぞれ書かれた横に24億6600万円を括弧内の%で割り付けた金額が記載され、さらにその下に「③」と書かれ、それぞれの金額の3%に当たる金額の合計額「73,980」(単位は千円と考えられる。)との記載がある(甲150別添1)。また、Gが、令和3年4月16日、N及びLに、「A市新火葬場整備事業 IグループJV共通費」と題する書面(甲150別添20)をメールで送信しており、そこに項目として「技術提案支援料 3%」、金額として「79,320,000」(なお、金額については「73,980,000」と修正されている書面〔甲150別添4〕が発見されている。)、備考欄に「F氏」、その下にIグループのそれぞれの負担率及び負担額が記載されており、「F氏」は被告人を指すと考えられる(G、N ,000」と修正されている書面〔甲150別添4〕が発見されている。)、備考欄に「F氏」、その下にIグループのそれぞれの負担率及び負担額が記載されており、「F氏」は被告人を指すと考えられる(G、N及びLが同旨の証言をしている。)。これらの記 載は、Iグループが本件工事の受注額の3%を被告人に支払う必要があることを示すものであるから、この支払うべき金銭は、本件工事の受注に関して被告人がしたことへの対価とみるのが合理的である。そうすると、これらの記載は、C及びGの上記証言を強く裏付けるものといえる。また、N及びLも、本件工事について、Gから受注金額の3%を報酬として被告人に支払う旨聞いたという趣旨の証言をしていることは、上記⑴のC及びGの証言の信用性を支える事情である。そうすると、C及びGの上記証言は信用できる。 ⑶ 以上信用できるC及びGの上記⑴の証言によれば、C及びGは、Iグループとして、被告人に対し、遅くとも令和2年7月頃には、本件工事の受注に関して、受注金額24億6600万円の3%(最終的には切り上げて7500万円)を謝礼として支払うことを考えていたと認められる。 2 1回目(令和3年6月21日頃)の被告人に対する現金供与状況⑴ Cの証言概要及びその信用性Cは、令和3年5月14日、被告人が甥のRとB社に来たので、Gと応対したところ、被告人から3000万円貸してもらえないかと言われた、返済期限や利息、担保といった話はなく、この時期に本件工事の請負代金の一部が入金されたことから、謝礼金の催促だと思い、その一部として3000万円を渡すことにした、それから1か月ほどして被告人に電話をかけ、現金を渡す日時を決めたが、同年6月20日から23日まで家族旅行の予定があったため、Gに受け渡しを指示した、Gが被告人に3000万 0万円を渡すことにした、それから1か月ほどして被告人に電話をかけ、現金を渡す日時を決めたが、同年6月20日から23日まで家族旅行の予定があったため、Gに受け渡しを指示した、Gが被告人に3000万円を渡したのは同月21日、22日、23日のいずれかであり、同月24日にGから3000万円を渡したとの報告を受けた、その際、被告人の名刺の裏に3000万円を借用した旨が手書きされたものを受け取った旨証言する。 Cの上記証言は、C使用のスケジュール帳の5月14日の欄に「F氏来社9:00」と記載されていること(甲150別添1)やC使用の携帯電話に、同年6月18日午後0時23分、被告人の携帯電話に発信し、2分間通話している記録が残っていること(甲27)、Cが使用していた令和2年12月から令和3年12 月までの手帳の6月20日の欄に「仙台行」との記載があり、6月23日の欄に「帰宅」との記載があること(甲150別添1)とよく整合している。また、本件工事の請負代金等の一部として、同年4月9日に8338万7700円、同年5月10日に1億4500万円が支払われたことや、前記のとおりIグループにおいて、本件工事の受注に関する謝礼として被告人に7500万円を支払うことが遅くとも令和2年7月には決められていたこととも整合する。後述するGの証言とも合致しており、Cの上記証言は信用できる。 ⑵ア Gの証言概要令和3年5月14日、被告人とRがB社に来て、Cと応対したところ、被告人から、Rに3000万円を貸してほしいとの依頼があり、Cが承諾したが、返済期限や利息、担保といった話はなかった。その発言を聞いて、本件事業の謝礼の要求だと思った。 同年6月18日、Rから被告人が近々入院するので、それまでにお願いしたいと連絡があり、Cに電話をしたところ、すぐ 息、担保といった話はなかった。その発言を聞いて、本件事業の謝礼の要求だと思った。 同年6月18日、Rから被告人が近々入院するので、それまでにお願いしたいと連絡があり、Cに電話をしたところ、すぐに出られない旨定型のショートメールが送られてきた。数時間後に、Cから電話があり、Rからの電話の内容を伝えたところ、その数時間後に再度Cから電話があり、被告人とCのスケジュールが合わないので、代わりにF事務所に謝礼金を持っていくように頼まれた。その日時もCから指定されたが、Rからの電話から2、3日以内の平日であり、同年6月21日か22日であったと思う。 謝礼金受け渡しの当日、現金1000万円の固まりを2つ縦に入れ、その上に1000万円を乗せて入れた銀行の封筒を手提げの紙袋に詰め、これを持って車でF事務所に向かった。到着するとRに案内され、事務所の応接室に入ると、被告人がいた。女性の事務員に見られないように、取りあえずは持ってきた紙袋を自分の足元に置き、女性の事務員がお茶かコーヒーを出してくれた後、被告人の話が途切れたところで、持ってきた紙袋をテーブルの上に置いて、「これ、預かってきました。」と言って、テーブルを挟んで左斜め前に座っていた被告人に差し出した。すると、 被告人は、「おおきに、おおきに」と言って、紙袋を自分の足元に下ろし、自分の名刺の裏に3000万円借用した旨を書き、差し出してきたのでこれを受け取った。 後日、Cに報告し、受け取った名刺も渡した。 イ Gの証言の信用性Gの上記証言は、G使用の手帳の5月14日の欄に「F9-」との記載があること(甲150別添27)や同年6月18日午前9時27分に、CからGに、ショートメールで「ただ今電話に出ることができません。改めてこちらからご連絡差し上げます。」とのメッセージが送られて 記載があること(甲150別添27)や同年6月18日午前9時27分に、CからGに、ショートメールで「ただ今電話に出ることができません。改めてこちらからご連絡差し上げます。」とのメッセージが送られていること(甲150別添8)、C使用の携帯電話に、同年6月18日午後0時23分、被告人の携帯電話に発信し、2分間通話している記録が残っていることに裏付けられているし、Cの証言とも合致する。また、現金受け渡し当日についての証言は、まさに体験していたからこそできるといえるほど具体的であるし、迫真性に富む内容である。仮に被告人が供述するとおりGではなくCが3000万円を被告人に渡したというのであれば、Gにおいて、3000万円もの金額を供与した贈賄罪に自らが問われるにもかかわらず、あえて虚偽を述べる動機は見当たらない。そうすると、Gの上記アの証言は信用できる。 ⑶ア被告人の供述概要被告人は、令和3年6月21日頃、F事務所でGから3000万円を受け取ったことはない、同年5月後半に、B社において、Cから3000万円を受け取ったことはあるが、これはCから借り受けたものである、Cには、かつて被告人が所属していた暴力団の組事務所であった大阪市内の土地建物(以下「大阪物件」という。)を、被告人の内妻の資金で、暴力団員であるWが購入し、暴力団事務所として使用していたが、暴力団対策法による使用禁止命令が出て、Wから返還してもらうという話が出て、同年4月に名義をWから内妻に変更したので、立ち退き料という形でWに金を渡したいと説明して貸してもらうことになった旨供述する。 イ被告人の供述の信用性現金授受の状況について、被告人は、同年4月頃、B社でCに上記の説明を行い、 同年5月後半のある日、午前9時半か10時前にCから現金が用意できたと連絡があり イ被告人の供述の信用性現金授受の状況について、被告人は、同年4月頃、B社でCに上記の説明を行い、 同年5月後半のある日、午前9時半か10時前にCから現金が用意できたと連絡があり、すぐに行くと言って、Rと車でB社に行き、Cから3000万円を受領した旨供述する。しかし、C使用のスケジュール帳の5月14日の欄に「F氏来社9:00」との記載があることからすると、被告人がCから3000万円を受け取った日は同年5月14日になると考えられるが、電話をかけ被告人から「すぐに伺わしてもらいます」と言われたCが、わざわざ同日のスケジュール欄に被告人がB社に来ることをメモするとは考えにくいし、被告人が来社する時間も午前9時とは考えられないことからすると、被告人の供述はCの手帳の記載と整合しない。また、Gの手帳の同日の欄にも「F9-」との記載があり、B社で応対したのはCのみであるとの被告人供述はこの記載とも整合しない。 被告人は、大阪物件は内妻に黙って内妻の資金でWのために購入したものであるから、立ち退き料をWに支払うことを内妻に言えず、Cに頼むことにしたと供述するが、大阪物件には平成16年10月受付の債務者W、権利者を内妻とする抵当権設定仮登記が設定されており(甲159、160)、内妻の資金でWが大阪物件を取得したことを内妻が知らなかったとは考え難く、不自然である。 この点、Xは、Rから、お金は被告人から出るので、Xの義理の兄であるWとその家族が住む家を3000万ほどで買うように言われ、令和3年7月頃に神戸市内の物件を2500万円で購入し、代金はRが支払い、Rから残りの439万円ほどを受け取った旨証言する。しかし、被告人によれば、Wに対する立ち退き料として不動産取得等の費用を用意しようと考えていたというのに、契約書や登記などの名 し、代金はRが支払い、Rから残りの439万円ほどを受け取った旨証言する。しかし、被告人によれば、Wに対する立ち退き料として不動産取得等の費用を用意しようと考えていたというのに、契約書や登記などの名義人がすべてXになっている(弁1)のは不自然であるし、Wもその家族も一度も当該物件に住んだことはないというのも不自然である。被告人がWのためにCから借り受けてまで用意した3000万のうちの残りを、余ったからというだけの理由で、RがXに贈与するということも考え難い。そうすると、Xの証言は信用できず、被告人の供述の信用性を支えるものとはなり得ない。 そもそも、3000万円もの大金を返済期限も利息も担保も定めず、金銭消費貸 借契約書も作成せずに貸すなどということは通常考えられないし、本件までにCが被告人に金銭を貸したことは一度もなかったことからすると一層考え難い。これについて、被告人は、Cの妻の父や兄が被告人と同門の暴力団員であったことから、理解してくれると思った旨供述するが、C自身は暴力団員ではなく、暴力団と関わりのあったCの妻の父も兄も令和3年の時点ですでに死亡していたことからすると、このことが、C自身にとって何の関係もない物件の立ち退き料を払うために、3000万円もの大金を被告人に貸し付ける動機になるとは考えられない。 以上によれば、3000万円を受領した趣旨に関する被告人の供述は、信用できず、C及びGの上記証言の信用性は揺らがない。 ⑷ 以上信用できるG及びCの証言によれば、令和3年6月21日頃、GがF事務所で3000万円を被告人に供与した事実が認められ、その趣旨は、Iグループで決められていた本件工事の受注に関する謝礼7500万円の一部であることも認められる。 前記のとおり、Iグループが本件工事の受注額の3%を被告人に に供与した事実が認められ、その趣旨は、Iグループで決められていた本件工事の受注に関する謝礼7500万円の一部であることも認められる。 前記のとおり、Iグループが本件工事の受注額の3%を被告人に支払うことにした経緯からすれば、C及びGにおいて、その趣旨は、A市議会の議案に係る公共工事である本件工事の受注に関して被告人がしたことに対する対価としての謝礼である。そうすると、この3000万円の供与は、前記第3のとおり、市議会議員の立場にある被告人が、Cの依頼を受けてEに対し働きかけて本件受注調整の仲介をしたこと、Cの依頼等を受けて市の職員にも指示等してDB方式についての本件説明会を設定等したことのほか、プロポーザルの参加要件の変更に関しCらからの働きかけを受けるなどして本件工事をB社JVが受注するべく事態が推移していることを把握する中で、本件受注調整を認識しながら、市議会での契約締結に係る議案につき異議を唱えることなく賛成の表決をしたことなどといった一連の便宜を図ったことに対する謝礼の趣旨、すなわち、被告人の市議会議員としての職務に関する対価であるとともに、職務上不正な行為に対する対価をも含む賄賂の趣旨でなされたものと認められる。 3 2回目(令和3年12月22日頃)の被告人に対する現金供与状況⑴ C、Gの証言概要Cは、令和3年12月22日、被告人に対する謝礼金の残額である4500万円をB社のCの部屋でGから受け取った、南都銀行の封筒に入れられ、その封筒は茶色の紙袋に入れられており、中身の現金は白い帯に巻き変えられていた、金額までは数えていないが、その大きさや重さから4500万円あると思った、同日午前10時頃、一人でF事務所に行くと、長いソファーに腰かけ左側に紙袋を置いた、その後、被告人が入室し、左斜め前の一人掛け 額までは数えていないが、その大きさや重さから4500万円あると思った、同日午前10時頃、一人でF事務所に行くと、長いソファーに腰かけ左側に紙袋を置いた、その後、被告人が入室し、左斜め前の一人掛けソファーに座ったところで、「これ残りのお金です。」と言って、紙袋を被告人の右側に置き、Gから受け取っていた3000万円を借用する旨記載された名刺を紙袋に入れた、被告人はありがとうという感じで紙袋をその左足に置き換えた旨証言する。 Gは、同年11月頃、Cから被告人に対する残りの謝礼金は年内に済ませたいと言われ、複数回に分けて、4500万円の帯封(1000万円分の帯封4つ、100万円分の帯封45個)を作成して付け替える作業をした、Cから被告人に渡す日を言われ、その前日に2000万円と2500万円に分けて2つの銀行の封筒に入れ、当日にその封筒を少し丈夫な手提げの紙袋に入れ、置いときますと言ってCの机の横に置いた、その後、Cから、被告人に謝礼金を持って行ったことや3000万円の借用する旨記載された名刺を返したことを聞いた旨証言する。 ⑵ C、Gの証言の信用性これらの証言は、Iグループにおいて、本件工事の受注に関する謝礼として被告人に7500万円を支払うことが決められており、すでに令和3年6月21日に被告人に3000万円が支払われていることと整合するし、Cが使用する令和2年12月から令和3年12月までの手帳の12月22日の欄に「F氏 10:00」との記載がある(甲150別添1)ことや被告人方1階金庫内から発見された現金2300万に付けられた白い帯封からGの指紋が検出されていること(甲26)からも裏付けられる。また、これらの証言は、まさに体験していなければ証言できない といえるほど具体的であるし、迫真性に富む内容である。 ⑶ 被告人 らGの指紋が検出されていること(甲26)からも裏付けられる。また、これらの証言は、まさに体験していなければ証言できない といえるほど具体的であるし、迫真性に富む内容である。 ⑶ 被告人の供述概要及びその信用性これに対し、被告人は、令和3年12月の年末頃、CがF事務所に来て、紙袋に入った現金を受け取ったことはあるが、その金額は4500万円ではなく3000万円であった、「こんなんは受け取れません」「持って帰ってくださいよ」と言ったが、Cから令和4年4月に予定されていた市議会選挙で使ってくださいよと言われて受け取った旨供述する。 これまでCは、被告人に対して当選祝いの酒類やゴルフコンペの商品を提供する程度であったにもかかわらず、突然3000万円を超えるような大金を選挙資金として提供するとはおよそ考えられず、Cが選挙資金として被告人に現金を供与したとは考え難い。被告人の供述を前提とすれば、3000万円の借金の返済もしていないのに、更に3000万円の選挙資金の提供を受けたというのであって、一層考え難い。また、CはF事務所に現金を持参する前に、封筒の中身の現金がいくらであるかを確認していないが、Gは4500万円分帯封を付け替え封筒に入れて、それを令和3年12月22日の受け渡し当日まで施錠された金庫若しくは机の引き出しに入れて保管していたというのであるから、Cが被告人に渡した封筒の中身も4500万円であることが強く推認される。 弁護人は、Gが4500万円を用意した客観的な裏付けはないし、用意していたとしてもCが裏金を私的に流用した可能性は否定できず、受け取ったのが3000万円であるとの被告人の供述を排斥できない旨主張する。しかし、C及びGには自己の責任を矮小化するため賄賂の額を少なく供述する動機はあっても、あえて賄賂の額を実 性は否定できず、受け取ったのが3000万円であるとの被告人の供述を排斥できない旨主張する。しかし、C及びGには自己の責任を矮小化するため賄賂の額を少なく供述する動機はあっても、あえて賄賂の額を実際より多額に虚偽の供述をする動機があるとは考え難い。加えて、本件工事の受注に関する謝礼として、受注金額の1%を支払うとされていたOが実際に1%に当たる2466万円全額をCから受け取っていること(同旨のO証言は裏付け資料に基づくもので信用できる。)からすると、Gにおいて、被告人に対してのみ従前から決まっていた謝礼(受注金額の3%)のうち一部しか用意しないという ことは考え難いし、Cが用意されたものの一部しか渡さないということも考え難い。 以上によれば、被告人の供述は信用できず、C及びGの上記証言の信用性を揺るがすものではない。 ⑷ 以上のとおりG及びCの証言は信用でき、これによれば、令和3年12月22日、CがF事務所で4500万円を被告人に供与した事実が認められ、その趣旨は、Iグループで決められていた本件工事の受注に関する謝礼7500万円の残額であり、前述したのと同様、被告人の市議会議員としての職務上不正な行為に対する対価も含む賄賂の趣旨でなされたものと認められる。 4 被告人の現金供与に対する認識C及びGは、上記2回の被告人に対する現金の供与に際し、各現金をいかなる趣旨でいくら支払うのか被告人に明示的には伝えていない。 しかし、前記のとおりC及びGが貸金や政治資金として合計7500万円もの大金を供与するとは考えられないし、そのこと自体は被告人も認識していたと考えられる。そのほかにCらが被告人に7500万円もの大金を供与する理由は、本件工事の受注に関する謝礼を除き、証拠上うかがわれない(なお、被告人自身も、2回目の現金供 と自体は被告人も認識していたと考えられる。そのほかにCらが被告人に7500万円もの大金を供与する理由は、本件工事の受注に関する謝礼を除き、証拠上うかがわれない(なお、被告人自身も、2回目の現金供与の趣旨について、Cが被告人に対して、B社が本件工事の受注に対してお世話になったと考えて現金を渡してきたのではないかと思い、何ら手伝いができていないのにと思った旨供述している。)。そして、前記のとおり、被告人は、本件工事のB社の受注について、Cの依頼等を受けて、自身が本件受注調整の仲介をしたり本件説明会の設定や冒頭の出席をしたりするなど一定の関与をした上、参加要件の変更に関しCらからの働きかけを受けるなどして本件工事をB社JVが受注するべく事態が推移していることを把握する中で、本件受注調整を認識しながら、市議会での契約締結に係る議案につき異議を唱えることなく賛成の表決をするなどして便宜を図ったのであるから、Cらが合計7500万円もの大金を被告人に供与した趣旨は、このような本件工事の受注に関する被告人による一連の便宜に対する謝礼の趣旨であり、その中には職務上不正な行為に対する謝礼の趣旨も含まれてい るであろうと認識していたと強く推認できる。7500万円の供与の時期は、被告人が便宜を図ってから約1年から1年半後ではあるが、本件工事が平成26年以降のA市発注の公共工事と比べてかなり規模が大きく、公共工事をよく知る被告人が想定できるであろう代金の支払時期を踏まえれば、この点は推認を妨げない。 以上によれば、被告人は、Cらによる現金7500万円の供与は、市議会議員である被告人の職務に関する賄賂であり、本件受注調整を認識しながら本件工事請負契約締結に係る議案に異議を唱えず賛成する職務上不正な行為をしたことに対する謝礼の趣旨が含まれているであろう 、市議会議員である被告人の職務に関する賄賂であり、本件受注調整を認識しながら本件工事請負契約締結に係る議案に異議を唱えず賛成する職務上不正な行為をしたことに対する謝礼の趣旨が含まれているであろうことを認識しながら、現金7500万円を受け取ったと認められる。1回目の3000万円について、被告人がCに貸してほしいなどと言い、2回目の4500万円について、仮にCが被告人に市議会選挙に使ってほしいなどと言っていたことがあったとしても、上記認定は左右されない。 第5 公訴権濫用(争点③)について本件において違法・不当な捜査に基づいて関係者の供述が作り上げられたなどといった弁護人が主張するような事情は証拠上うかがわれず、公訴権濫用の主張は採用できない。 第6 結論以上によれば、被告人には判示のとおりの加重収賄罪が成立するといえる。 【法令の適用】(略)【量刑の理由】本件は、A市議会議員であった被告人が、同市が発注し、同市議会の議決を要する新火葬場整備事業建設工事に関して、地元の建設業者間でどちらが受注するかにつき事前に合意がされていることを認識しながら、同市議会において、その合意された業者との工事請負契約締結に係る議案の可決につき、異議を唱えずに賛成する職務上不正な行為をし、その謝礼等の趣旨で、現金を収受した事案である。 被告人が得た賄賂は総額7500万円と同種事案の中でも特に高額であり、市議 会議員としての職務の公正さに対する社会の信頼を大きく失墜させるものとして、それ自体厳しい非難に値する。 被告人は、前記認定のとおり、建設業者からの依頼を受け、本件受注調整の仲介や市職員への説明会の設定等をしたほか、その後の業者の働きかけ等からも本件受注調整を認識しながら、市議会において、契約締結に係る議案に異議を唱 定のとおり、建設業者からの依頼を受け、本件受注調整の仲介や市職員への説明会の設定等をしたほか、その後の業者の働きかけ等からも本件受注調整を認識しながら、市議会において、契約締結に係る議案に異議を唱えることなく賛成する不正行為を行い、この不正行為も含めた一連の便宜に対する謝礼として現金を受領した。市議会議員としての職務の公正さ、ひいては市発注の公共事業の公正さやそれらに対する社会の信頼をも害する態様の犯行であって、現に当該業者の受注によりその公正さが害されたことも見過ごせない。もっとも、不正行為は、市議会において異議を唱えず賛成したことにとどまり、契約締結に係る議案を可決するために積極的に発言した事実はなく、それに至る一連の便宜も、業者からの積極的な働きかけを受けてこれに応じる形で行われたもので、これを主導したとか、賄賂の約束の下で行ったなどの事実もない。このことは、不正行為の態様の悪質さという点では、他の加重収賄の事案ほどではないといえる。 被告人は、これまで市発注の公共事業に関して地元業者が談合を繰り返していることを把握し時に自らも関与していたのに、市議会議員の立場にあるにもかかわらず、特定の業者の利益を図ることの問題性や公正な競争により得られる市民全体の利益を図ることの重要性等を意識せずに本件犯行に及んでおり、その経緯に酌むべき点はない。 以上によれば、被告人の刑事責任は重いというほかなく、高齢で体調に優れない面があることなど、被告人のために酌むべき事情も考慮し、主文の刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑―懲役7年、主文同旨の没収及び追徴)令和6年12月12日大阪地方裁判所第14刑事部 裁判長裁判官大森直子 裁判官倉成章 裁判官 同旨の没収及び追徴) 令和6年12月12日 大阪地方裁判所第14刑事部 裁判長 裁判官 大森直子 裁判官 倉成章 裁判官 尾藤淳哉

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る