平成18(ネ)3454 地位確認等請求控訴事件(通称 中野区非常勤保育士再任用拒否)

裁判年月日・裁判所
平成19年11月28日 東京高等裁判所 その他 東京地方裁判所 平成16(ワ)5565
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判決文本文26,597 文字)

- 1 -H19.11.28東京高等裁判所平成18年(ネ)第3454号地位確認等請求控訴事件原審・東京地方裁判所平成16年(ワ)第5565号地位確認等請求事件(言渡日平成18年3月30日)主文 一審原告らの控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。 (1)一審被告は,一審原告A及び同Bに対し,各220万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。 (2)一審被告は,一審原告Cに対し,200万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3)一審被告は,一審原告Dに対し,110万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4)一審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 一審被告の控訴をいずれも棄却する。 訴訟費用は,一,二審を通じてこれを2分し,その1を一審原告らの,その余を一審被告の各負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 一審原告ら(1)原判決中,一審原告らの敗訴部分を取り消す。 (2)一審原告らが一審被告の非常勤職員たる地位を有することを確認する。 (3)一審被告は,一審原告A,同B及び同Dに対し,それぞれ平成16年4月1日以降毎月15日限り16万3520円を支払え。 (4)一審被告は,一審原告Cに対し,平成16年4月1日以降毎月15日限り14万5040円を支払え。 (5)一審被告は,一審原告らに対し,各275万円及びこれに対する平成1- 2 -6年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え(原審認容額を含む。)。 (6)訴訟費用は,一,二審とも一審被告の負担とする。 一審被告(1)原判決中,一審被告の敗訴部分を取り消す。 から支払済みまで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え(原審認容額を含む。)。 (6)訴訟費用は,一,二審とも一審被告の負担とする。 一審被告(1)原判決中,一審被告の敗訴部分を取り消す。 (2)上記取消し部分に係る一審原告らの請求をいずれも棄却する。 (3)訴訟費用は,一,二審とも一審原告らの負担とする。 第2事案の概要 本件は,一審原告らが,平成16年3月31日まで,一審被告の非常勤保育士(平成11年4月1日付けで「保育園保母補助員」から名称を変更。以下,名称変更の前後を問わず「非常勤保育士」という。)の業務に長年にわたり従事していたところ,一審被告において平成16年4月1日に一審原告らの再任用拒否(解雇)をしたことは,解雇権濫用法理の類推適用あるいは不当労働行為により正当な理由がなく無効であるなどとして,一審被告に対し,①非常勤職員としての地位の確認と各賃金の支払請求,②再任用に対する期待権侵害を理由として,国家賠償法1条1項に基づき,各100万円の損害賠償を請求した事案である。 原審は,一審原告らが,新たな任用行為がない限り任期が終了する公法上の任用関係にあったとして,平成16年3月31日をもって一審被告の非常勤職員の地位を失っているから,①についてはいずれも理由がないとし,②については,一審原告らの再任用されるとの期待は法的保護に値し,その期待権侵害による慰謝料として各40万円の限度で認めた。これを不服として,一審原告らは,①と②の敗訴部分の取消しと取消し部分にかかる各請求の認容を求めて控訴するとともに,当審において上記②の請求額各100万円を,上記第1の1(5)のとおり,各275万円(慰謝料額250万円と弁護士費用25万円の合計額)に拡張し,一審被告は,②の敗訴部分の取消しと取消し部分にかかる- 3 -一 記②の請求額各100万円を,上記第1の1(5)のとおり,各275万円(慰謝料額250万円と弁護士費用25万円の合計額)に拡張し,一審被告は,②の敗訴部分の取消しと取消し部分にかかる- 3 -一審原告らの各請求の棄却を求めて控訴した。 前提事実(各項記載の証拠により容易に認定できる事実及び争いがない事実)(1)一審原告らは,いずれも,平成4年7月1日から平成7年2月1日にかけて,任用期間を任用日が属する年度の末日までとする非常勤保育士として一審被告に任用され,以後,平成15年度まで,毎年,任用期間を4月1日から翌年3月31日までの1年間として再任用されていたものであり,一審被告に勤務する非常勤職員が加入しているE労働組合中野支部(以下「E労組中野支部」という。)の組合員である。最初の任用日は,一審原告A及び一審原告Cが平成4年7月1日,一審原告Bが平成5年8月1日,一審原告Dが平成7年2月1日であり,一審原告A及び同Cは11回,同Bは10回,同Dは9回にわたり,再任用されていた(以下,一審原告らと一審被告との間の勤務関係を「本件勤務関係」という。)。 なお,一審原告らのうち,一審原告Cは保育士資格を有していないが,その他の一審原告は,いずれも保育士資格を有していた。 (2)一審被告が非常勤保育士の制度を導入した契機は,平成4年に地方公務員に完全週休2日制が導入され,正規職員の休暇日に職務に従事する保育士が必要となったことにあった。 非常勤保育士は,地方公務員法(以下「地公法」という。)3条3項3号に定められた特別職の非常勤職員であり,一審被告の「中野区保育園非常勤保育士設置要綱」(1992年6月30日要綱第127号)において,非常勤保育士の任用手続や勤務条件について,「非常勤保育士は,保育士資格保持者又は育児経験者のうちから 一審被告の「中野区保育園非常勤保育士設置要綱」(1992年6月30日要綱第127号)において,非常勤保育士の任用手続や勤務条件について,「非常勤保育士は,保育士資格保持者又は育児経験者のうちから地域センター部保育課長が任用する。」(3条),「非常勤職員保育士の勤務条件については,この要綱に定めるもののほか,中野区に勤務する非常勤職員の勤務条件等に関する要綱の定めるところによる。」(5条)と定めている。そして,同「中野区に勤務する非常勤- 4 -職員の勤務条件等に関する要綱」(1999年3月29日要綱第34号)(以下「非常勤職員勤務条件要綱」という。)において,非常勤職員の任期や再任用について,「非常勤職員の任期は,任用された日が属する年度の範囲内において,所属長が定める。」(5条1項),「区長は,次の各号のいずれかに該当する場合を除き,任期の満了した非常勤職員を再任用することができる。」(5条2項)とし,同条は,再任用できない場合として,①病気休暇及び欠勤の日数が任期中に勤務すべき日数の2分の1以上である場合,②満65歳に達した場合,③自己の都合により退職を申し出たとき,④非常勤職員としてふさわしくない行為があったとき,⑤心身の故障のため職務の遂行に支障がある,又はこれにたえられないとき,⑥その職に必要とされる適性を欠いたとき,⑦その他,区長が必要と認めたときと定めている。 (3)非常勤保育士の勤務日は,原則として,月,金,土曜日を中心とする月14日(平成13年3月までは月15日),勤務時間は,1日8時間労働(午前8時30分から午後5時15分。ただし,過去においては,午前7時から午後6時までの間で8時間とされていた。),報酬は,第1種報酬(その職に応じて定められるもの)及び第2種報酬(通勤の事情により定められるもの)が支給され 15分。ただし,過去においては,午前7時から午後6時までの間で8時間とされていた。),報酬は,第1種報酬(その職に応じて定められるもの)及び第2種報酬(通勤の事情により定められるもの)が支給され,平成16年3月当時,第1種報酬は,保育士資格がある場合は月16万3520円,ない場合は14万5040円とされていた。 (乙15)(4)一審被告は,平成13年3月,中野区行財政5か年計画を策定し,区立保育園37園のうち5園を民間社会福祉法人等の運営に転換することを示し,平成15年2月には,中野区経営改革指針を策定し,平成15年度及び16年度に,施設の民営化や委託化によって配置職員数を削減することを示し,平成15年3月26日及び31日に開催した政策会議(区政の基本方針の審議機関であり,区長,助役,区長室長,総務部長で構成する。)において,非常勤職員による業務のうち,民間活力の活用による執行方法の変更等によ- 5 -り事業成果の向上が図れるものについて,非常勤職員の職を廃止することを決定し,同年4月9日,E労組中野支部に対し,平成16年3月末をもって非常勤保育士等の職を廃止することを提案した。 (5)一審被告は,地方自治法の一部を改正する法律(平成15年6月13日法律第81号)により,指定管理者制度(公の施設の管理運営を営利法人に行わせることができることとした制度)が導入されたのに伴い,平成15年11月6日及び7日に開催した政策会議において,区立F保育園及びG保育園の2園を平成16年度から指定管理者制度の対象とすることを決定するとともに,非常勤保育士を廃止することを正式に決定した。(乙17ないし19,37,証人H)(6)一審被告は,平成16年2月24日,一審原告らに対し,「中野区保育園非常勤保育士設置要綱第5条に基づき,あなたは平成16 士を廃止することを正式に決定した。(乙17ないし19,37,証人H)(6)一審被告は,平成16年2月24日,一審原告らに対し,「中野区保育園非常勤保育士設置要綱第5条に基づき,あなたは平成16年(2004年)3月31日をもって任期満了となりますので,ここにお知らせします。 なお,中野区保育園非常勤保育士の職については,平成15年度(2003年度)末をもって廃止となります。」と通知し(以下「本件通知」という。),平成16年4月1日以降,一審原告らを再任用しなかった(以下「本件再任用拒否」という。)。(乙2) 争点 (1)一審原告らの期限付き任用の法的性質(2)本件再任用拒否が,解雇法理ないし解雇権濫用法理の類推適用により無効となるか。 (3)本件再任用拒否により一審原告らの再任用されるとの期待権を違法に侵害したか。 争点に関する当事者の主張(1)争点(1)について(一審原告ら)- 6 -ア特別職非常勤職員の勤務関係については,一般職の公務員とは異なり地公法4条2項で同法の適用が排除される結果,地方公務員の任用が行政処分であるとの根拠とされている同法49条から51条の2が適用除外とされていること,一般職職員の任用の際に用いられる成績主義,能力実証主義という基本原則(同法15条)の適用がないこと,地公法上,雇用契約の締結は禁止されていないこと(国家公務員法2条6項との対比)から,私法上の雇用契約にほかならない。したがって,一審原告ら勤労者である特別職非常勤職員は,労働条件の個別的決定及び集団的決定の余地があることを前提とする労働基準法が全面適用され(同法2条,18条の2,89条から93条等),かつ,労働組合法,労働関係調整法等が適用される。 イ仮に特別職非常勤職員の任用が行政処分であり,勤務関係が公法上の関係で する労働基準法が全面適用され(同法2条,18条の2,89条から93条等),かつ,労働組合法,労働関係調整法等が適用される。 イ仮に特別職非常勤職員の任用が行政処分であり,勤務関係が公法上の関係であるとしても,実質的な法的性質が雇用契約であるから,その実態に応じた当事者の合理的な意思解釈により,雇用契約であると解すべきである。地公法には,3条3項3号に特別職非常勤職員の範囲が定められているが,同号の職員の任用期限については何らの定めもなく,勤務関係は更新を前提とする任用であり,かつ,労働基準法112条によれば,適用除外にするとの明文の規定がない限り,同法等が全面適用されるべきである。 (一審被告)ア一審原告ら非常勤保育士は,地公法3条3項3号の特別職たる非常勤職員として期限付きで任用されていた。その勤務関係を規律する法令は,憲法15条1項,2項,地方自治法172条,203条,204条の2,206条,地公法1条ないし3条,地方自治法附則9条に基づく地方自治法施行規程38条(ただし,現行は15条)などの公法であり,しかも,地公法は,地方公共団体が私法上の雇用契約を締結することにより勤務者を採用することを禁じていることからすると,一審原告ら非常勤保育士の任用は,行政処分の性質を有し,その勤務関係は公法関係であったというべ- 7 -きである。 イ一審原告ら非常勤保育士は,始期を平成15年4月1日,終期を平成16年3月31日と任用期間を定めて任用されたもので,行政処分の画一性・形式性から,上記任用期間の満了(行政処分の附款たる終期の到来)により当然に任用の効力が失効し,一審被告の非常勤職員たる地位を失ったものである。地方公務員の期限付き任用は,必要とする特段の事由が存し,かつ,それが地公法の前記趣旨(職員の身分を保障し,職員を安んじて自 当然に任用の効力が失効し,一審被告の非常勤職員たる地位を失ったものである。地方公務員の期限付き任用は,必要とする特段の事由が存し,かつ,それが地公法の前記趣旨(職員の身分を保障し,職員を安んじて自己の職務に専念させる趣旨)に反しない場合においては,特に法律にこれを認める旨の明文がなくても許されると解するのが相当である(最高裁昭和38年4月2日第三小法廷判決・民集17巻3号435頁参照)。そして,年度を超えて地方公務員を任用するためには義務費負担の観点から条例で定数を定めなければならないことからしても(地方自治法172条3項),非常勤職員は任期満了とともに当然に任用の効力が失効する。 ウしたがって,特別職非常勤職員については,公務員制度と矛盾しない限りにおいて,労働基準法が適用されるべきである。 (2)争点(2)について(一審原告ら)ア反復更新された雇用契約の帰趨に関しては,最高裁が「臨時工の短期雇用契約が反復更新されて期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には,雇止めの効力を判断するに当たっては,解雇に関する法理を類推すべきである」(最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決・民集28巻5号927頁参照,以下「東芝柳町工場事件判決」という。),「有期契約が期間の定めのない雇用契約と実質的に同視できない場合でも,雇用契約に対する労働者の期待利益に合理性がある場合は,解雇権濫用法理が類推される」(最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決・判例時報1221号134頁参照,以下「日立メディコ事件判決」と- 8 -いう。)との判断を示している。本件勤務関係が雇用契約である場合には,労働基準法18条の2の「解雇権濫用禁止」の規定が適用されるとともに,一審原告らの任用が更新を予定されていた期限であり,その更新が多数回に の判断を示している。本件勤務関係が雇用契約である場合には,労働基準法18条の2の「解雇権濫用禁止」の規定が適用されるとともに,一審原告らの任用が更新を予定されていた期限であり,その更新が多数回に及び任用期間が長期となっていること,保育士としての職務内容が常勤保育士と同じであり,専門性を有し継続性が求められる恒常的なものであること,加えて,本件再任用拒否後,一審被告において不足した労働力の補充として通年パート,保育補助,育休代替任期付公務員等を採用している等の本件の実態を上記判例に照らすと,解雇に関する法理,あるいは解雇権濫用法理が類推適用されるべきであり,一審原告らの契約の更新が擬制される。 イ一審原告らの任用が行政処分であるとしても,非常勤職員勤務条件要綱(労働基準法89条にいう就業規則と解される。)には,正当事由がある場合にのみ再任用をしないとあり,非常勤職員の再任用を原則としている。 本件の事実経過を見る限り,一審原告ら非常勤保育士の任用は,上記アと同様,更新を前提とした任用であり,期限の到来によって当然には任用行為の効力が失効するのではなく,任用権者の任用拒否があって初めて効力を失うというべきである。そして,その職務内容,募集内容,再任用の経過等に照らすと,再任用に対する期待に合理性があること,一審被告が設置運営する保育園2園の民間委託実施が職の廃止の理由であったとしても,一審原告らは民間委託が予定されていた園に勤務していたわけではないし,臨時職員を新たに採用しなければ保育士は不足する状況にあったから非常勤保育士の職を廃止する理由はなく,本件再任用拒否の必要性がないこと,任用しない代替措置として,退職予定者を募集したり,一審原告らを学童保育など他職種へ配置する検討等をしておらず本件再任用拒否を回避する努力をしなかったこと はなく,本件再任用拒否の必要性がないこと,任用しない代替措置として,退職予定者を募集したり,一審原告らを学童保育など他職種へ配置する検討等をしておらず本件再任用拒否を回避する努力をしなかったこと,さらに,一審被告は,E労組中野支部と実質的な協議を行わないまま,一方的に,保育士の職の廃止による本件再任用拒否- 9 -を通知したのであり,加えて再就職のあっせんもまったく行おうとしないなど本件再任用拒否についての協議が不誠実であったこと,以上の点からしても,前記解雇権濫用法理が類推適用されるべきである。本件再任用拒否には,正当な理由がない。 また,行政処分であっても,行政の全くの自由裁量ではなく,一定の限界があり,信義誠実の原則は適用されるべきであるところ,一審被告は,非常勤保育士を特別職非常勤職員として任用し,正規職員である一般職が行うべき職務を行わせ,更新を繰り返した状況を作り出したにもかかわらず,保育士が地公法3条3項3号の特別職に予定された職務ではないために,職を廃止するとの理由で任用しないのは信義誠実の原則に反する。したがって,本件再任用拒否は,重大かつ明白な瑕疵があり,違法無効である。 ウ本件再任用拒否(解雇)は,労働組合法7条1号の不当労働行為に該当するので,無効である。 一審被告は,E労組中野支部が結成された当初から,職を失った非常勤職員の雇用対策について,所属組合員を不利益に取り扱うなどして不当労働行為を行ってきたところ,一審被告は本件再任用拒否に当たっても,E労組中野支部に所属しない図書館や学校栄養士の非常勤職員に対しては,あらかじめ,あるいは,既存のNPO法人に雇用をつないだ上でNPO法人を設立させて,これを受け皿として,実質的に雇用を継続させる方策を採ったにもかかわらず,一審原告らには,そのような配慮をするこ ,あらかじめ,あるいは,既存のNPO法人に雇用をつないだ上でNPO法人を設立させて,これを受け皿として,実質的に雇用を継続させる方策を採ったにもかかわらず,一審原告らには,そのような配慮をすることのないまま,一律に非常勤保育士を不再任用とし,明白な不利益取扱いをした。 これは,一審被告が,非常勤職員の地位向上にめざましい成果を上げていたE労組中野支部を嫌悪し,同労組の組合員を一掃することを意図していたからに他ならず,労働組合法7条1号の不当労働行為に該当する。 (一審被告)- 10 -ア本件は,民間の雇用契約が反復更新された場合における雇用契約の帰趨に関し,解雇に関する法理,あるいは解雇権濫用法理が類推適用されるとの上記最高裁の各判例の射程外であり,解雇権濫用法理を類推適用する余地はない。 仮に一審原告ら非常勤保育士の任用が期間の定めのない任用と実質的に異ならないと評価されるとすると,結局,地方公共団体が,実質的に競争試験等の能力実証を経ることなく,期間の定めのない任用(正規職員の任用)を認めることにほかならず,厳格な能力主義・成績主義(地公法15条,17条,18条等)という基本原則を定めた地公法の趣旨に明らかに反する行為であって,許されるはずがない。また,仮に,労働者の期待利益に合理性がある場合には,当該不再任用に合理性がない限り,一審原告ら非常勤保育士は当然に再任用されるとの結論が採られるとすると,結局,法になんら規定がないにもかかわらず,行政処分としての任用行為を要求する権利を付与することとなるのみならず,任命権者の任用行為が存在しないにもかかわらず,実質的に任期の定めのない非常勤職員を生み出す結果をもたらし,円滑な行政の実施を阻害するおそれを生じさせるのであって,法解釈の限界を超えるものというほかない。 イ一審被告が しないにもかかわらず,実質的に任期の定めのない非常勤職員を生み出す結果をもたらし,円滑な行政の実施を阻害するおそれを生じさせるのであって,法解釈の限界を超えるものというほかない。 イ一審被告が非常勤保育士の職を廃止し再任用しないとしたのは,人員削減という行財政改革を行いつつ保育サービスの拡充を図るという合理的な理由に基づくもので,正当理由がある。非常勤保育士の職の廃止に伴う事実経過として,一審被告にとって行財政改革が不可欠の経済的に逼迫している事情(平成12年行財政改革の基本方針決定),一審被告において非常勤保育士の職が廃止されることに伴う一審原告ら本人の意向確認の機会及び説明会を持ち,雇用確保のための施策を採るなどしたこと,その他,一審被告は,非常勤保育士以外の職員数の削減等の措置,平成17年度の一審被告の財政状況,保育サービス分野の評価等について説明している。 - 11 -これらの事実関係をもとに,整理解雇の4要件(人員整理の必要性,解雇回避努力義務,被解雇者の選定の妥当性,手続の妥当性)に照らし合わせても,非常勤保育士の職の廃止には合理性がある。 ウ本件再任用拒否は一審原告らがE労組中野支部組合員であるかどうかに関係なく,非常勤保育士の職自体の廃止を理由として一律に行われたものであり,不当労働行為ではない。 (3)争点(3)について(一審原告ら)ア一審原告らは,いずれも,任用の際,一審被告から長期間稼働できるとの説明を受けており,再任用の手続も形式的なものであったため,任用期間の満了とともに自動的に職を失う立場にあると認識していなかったし,このような認識のもと,長期間にわたり再任用を受け,その間,正規の常勤職員と同等の職務に従事していたのであるから,一審原告らの任用継続に対する期待権は法的保護に値するというべきであ ていなかったし,このような認識のもと,長期間にわたり再任用を受け,その間,正規の常勤職員と同等の職務に従事していたのであるから,一審原告らの任用継続に対する期待権は法的保護に値するというべきである。上記(2)(一審原告ら)ア及びイで主張したとおり,一審被告に任用に関し裁量権があるとしても,本件再任用拒否には,合理性がなくその裁量権を濫用しているので,その行為は違法である。一審被告は,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償義務を負う。なお,後記一審被告が引用する最高裁平成6年7月14日第一小法廷判決(以下,「最高裁平成6年判決」という。判例タイムズ871号144頁参照)も「任命権者が,日々雇用職員に対して,任用予定期間満了後も任用を続けることを確約ないし保障するなど,右期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合には,職員がそのような誤った期待を抱いたことによる損害につき,国家賠償法に基づく賠償を認める余地があり得る。」と判示している。 イ一審原告らは,いずれも65歳まで稼働できることとした生活設計を立- 12 -てていたが,一審被告に裏切られて著しい生活不安にさらされ,上記期待権を侵害されて精神的苦痛を被ったものである。この損害は,本件訴訟提起から3年以上が経過しても未だ解決されていない事情からさらに増大しており,各自の被った各損害額としては慰謝料250万円,弁護士費用25万円の合計275万円が相当である(一審原告らは,当審において請求を拡張した。)。 (一審被告)ア本件再任用拒否は,一審被告の中野区長の不作為にすぎず,公務員の権限の不行使という不作為が国家賠償法上の違法となるためには,公務員に権限を行使すべき作為義務が認められ,その義務に違反することが必要で 件再任用拒否は,一審被告の中野区長の不作為にすぎず,公務員の権限の不行使という不作為が国家賠償法上の違法となるためには,公務員に権限を行使すべき作為義務が認められ,その義務に違反することが必要であるところ,中野区長に一審原告らを再び任用すべき義務はなく,また,本件再任用拒否は,合理的な理由に基づく適法なものであるから,いずれにしても違法と評価する余地がない。したがって,一審被告が,同法1条1項でいうところの損害賠償義務を負うことはない。 イ一審原告らは,任期満了により当然に非常勤職員の地位が消滅するのであり,再び任用するかどうかは任命権者の裁量に属するから,一審原告らの非常勤保育士として任用期間満了後もその地位にとどまることができるという期待は,事実上のものにすぎず法的に保護されたものではない。この期待権を認めることは,最高裁平成6年判決が「上告人が,任期予定期間の満了後に再び任用される権利若しくは任用を要求する権利又は再び任用されることを期待する法的利益を有するものと認めることはできないから,…再び任用しなかったとしても,その権利ないし法的利益が侵害されたものと解する余地はない。」と判示した判例法理に明らかに反するものである。 ウ一審原告らは,本件通知の記載,非常勤職員勤務条件要綱5条,本件通知交付の際の園長の発言,中野区行財政5か年計画発表時の受止め方,任- 13 -用更新がないことを認識していた等により,再任用されるとは限らないことを認識していた事情がある。仮に,任命権者(中野区長)において,任命の際に,「1日でも長く働いて下さい。辞めないで下さい。」などの長期間の稼働に対する期待を抱かせるかの説明がされ,その後の再任用手続も本人の意思を明示的に確認しないで再任用が常態化していたことや,平成15年度の任期が満了する直前 い。辞めないで下さい。」などの長期間の稼働に対する期待を抱かせるかの説明がされ,その後の再任用手続も本人の意思を明示的に確認しないで再任用が常態化していたことや,平成15年度の任期が満了する直前の平成16年2月24日まで,非常勤保育士の職を廃止することを一審原告らに伝えていなかったことが事実であるとしても,一審被告が,一審原告らに平成16年度以降の再任用を確約したこともないし,非常勤保育士の職務が客観的に補助的・代替的であるからその職の廃止については合理性があり,民間の労働契約におけるいわゆる整理解雇の4要件に照らし合わせてみても合理的である。したがって,一審原告らの期待権の侵害を法的に保護しなければならないとの事情はない。 第3当裁判所の判断 事実関係前記前提事実に加えて,後記各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次のとおりの事実を認めることができ,その事実を左右するに足りる証拠はない。 (1)一審被告は,平成4年に地方公務員に完全週休2日制が導入されたことから,正規の常勤保育士の休暇日(主として土曜日等)に勤務する保育士を確保する必要が生じたため,非常勤保育士の制度を導入し,乳幼児に対する保育業務に従事させることとした。一審被告の中野区長(実際の担当は福祉部福祉課長,後の地域センター部保育課長)は,一審原告Aが新聞の折り込み広告による募集要項を見て,同Cが保育園に掲示されていた募集の貼り紙を見て(なお,上記募集要項等には,保育園非常勤職員募集とあるが,勤務期間が明示されていない。),同Bが調理パートで勤務していた中野区立保育園の園長に勧められて,同Dが常勤保育士から転換して,それぞれ非常勤- 14 -保育士に応募してきたので,書類選考及び面接を経た上で,地方自治法172条2項,地公法3条3項3号,中野区保育園非常勤保育士設 に勧められて,同Dが常勤保育士から転換して,それぞれ非常勤- 14 -保育士に応募してきたので,書類選考及び面接を経た上で,地方自治法172条2項,地公法3条3項3号,中野区保育園非常勤保育士設置要綱に基づき,任用期間を任用日が属する年度の末日までとする非常勤保育士として,一審原告A及び同Cを平成4年7月1日に,同Bを平成5年8月1日,同Dを平成7年2月1日に,それぞれ任用し,その際,発令権者名を中野区長とする発令通知書を一審原告らに対しそれぞれ交付した。その発令通知書には,所属を福祉部福祉課,職名を非常勤保育士,任用期間を当該年度の4月1日から翌年3月31日までとし,そのほか勤務内容を保育に関する職務,勤務態様を月15日,1日8時間,午前8時30分より午後5時15分まで,勤務日を原則として,月,金,土曜日(週3~4日),報酬を第1種と第2種の内訳を記した具体的金額,勤務場所を具体的な保育園名とし,さらに有給休暇,無給休暇,健康診断と記載されており(勤務態様については,午前7時30分より午後6時までの間で1日8時間,あるいは,月14日とする記載もあった。),具体的な勤務条件が明示されていた。 以後,一審被告は,平成15年まで毎年4月1日に,任用期間を翌年の3月31日までと定めて,一審原告A及び同Cを11回にわたり,同Bを10回にわたり,同Dを9回にわたり,非常勤保育士として再任用を繰り返し,その都度,上記と同様の内容(所属がその後地域センター部保育課となり,勤務態様の勤務日又は勤務時間にも内容に若干の変化がある。)を明示した発令通知書を一審原告らに対しそれぞれ交付した。 (乙8の①ないし⑩,9の①,②,13の①,②,14,50ないし54)(2)非常勤保育士は,一審被告において正規の常勤保育士の完全週休2日制導入から採用された保育 審原告らに対しそれぞれ交付した。 (乙8の①ないし⑩,9の①,②,13の①,②,14,50ないし54)(2)非常勤保育士は,一審被告において正規の常勤保育士の完全週休2日制導入から採用された保育士であること,勤務時間等につき,常勤保育士が,午前7時15分から午後7時30分までの間の8時間勤務での週5日とされていたことに対し,非常勤保育士は,原則として,午前8時30分から午後5時15分までの間で8時間,月,金,土曜日を中心とする月14日(平成- 15 -13年3月までは月15日)と定められていたこと等との違いはあるが,その職務内容自体は,専門性を有する上に,乳幼児に対する保育に従事するものであるなど本来一般職である常勤の保育士が担当するべき職務に従事していたほか,一審被告の非常勤保育士の地位や労働条件に関しては,一審被告が定めた中野区保育園非常勤保育士設置要綱及び非常勤職員勤務条件要綱において規定され,また,その報酬は中野区非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例に基づいて支給されているほか,非常勤職員勤務条件要綱に関しては,一審被告において,詳細な解釈運用基準が定められていた。 (甲7,12,18,53,乙3,15,23,24)(3)ところで,一審被告は,非常勤保育士の制度導入にあたり,乳幼児に対する保育業務に従事する非常勤保育士を相当数確保しなければならない状態であった。そのため,一審原告A及び同Cが任用時に参加した一審被告の平成4年7月1日の説明会では,「定年はない。」,「1日でも長く働いてください。辞めないでください。」,「正規と同じように非常勤も異動するので大丈夫ですよ。」などとの説明がされただけで,非常勤保育士の任用期間は1年間であり,1年後に再任用されるとは限らず,仮に1年後に再任用されても,その後も再任用が継続さ 同じように非常勤も異動するので大丈夫ですよ。」などとの説明がされただけで,非常勤保育士の任用期間は1年間であり,1年後に再任用されるとは限らず,仮に1年後に再任用されても,その後も再任用が継続されるとは限らないことについての説明は一切なされていない。さらに,一審原告らの再任用手続は,一審原告A及び同Cが,園長から口頭で,「来年もやってくれるわよね。」などと尋ねられたことがそれぞれ1,2回程度あるのみで,それ以外の再任用の際には,口頭での希望確認がされておらず,再任用に先立って毎年行われていた職務意向調査は,次年度の配置換えの希望や,次々年度までの退職予定の有無を確認するものに過ぎないいまま,再任用が繰り返された。 (乙28ないし32の各①ないし③,⑦,⑧,50ないし54,一審原告A,同C,同B,同D)(4)一審被告は,平成13年3月に策定した中野区行財政5か年計画におい- 16 -て,区立保育園37園のうち5園を民間社会福祉法人等の運営に転換すること,平成15年2月には,中野区経営改革指針を策定し,平成15年度及び16年度に,施設の民営化や委託化によって配置職員数を削減することをそれぞれ示したが,この中で,非常勤保育士の廃止について直接的に言及した部分はなかった。その後,一審被告は,平成15年3月26日及び31日に開催した政策会議において,非常勤職員による業務のうち,民間活力の活用による執行方法の変更等により事業成果の向上が図れるものについて,非常勤職員の職を廃止することを決定し,同年4月9日,E労組中野支部に対し,平成16年3月末をもって非常勤保育士等の職を廃止することを提案したが,なお,非常勤保育士の職の廃止が正式には決定していなかった。 そして,一審被告は,指定管理者制度の導入に伴い,平成15年11月6日及び7日に開催し もって非常勤保育士等の職を廃止することを提案したが,なお,非常勤保育士の職の廃止が正式には決定していなかった。 そして,一審被告は,指定管理者制度の導入に伴い,平成15年11月6日及び7日に開催した政策会議において,区立F保育園及びG保育園の2園を平成16年度から指定管理者制度の対象とすることを決定するとともに,非常勤保育士を廃止することを正式に決定した。 (乙17ないし19,37,証人H)(5)一審被告は,平成15年12月26日,一審原告らに対し,「職の廃止に伴う意向の確認について」と題する書面を送付し,廃止後の進路に関する意向や保育課長との面談希望を調査し,さらに,平成16年2月10日,一審原告らに対して,説明会を開催して一審被告の正式な方針を伝え,同月20日付けで再度「職の廃止に伴う意向の確認について」と題する面談希望調査の書面を送付して進路の相談に乗る旨の姿勢を示したが,これに対し一審原告らは特に希望しなかったところ,同月24日,本件通知により,一審原告らに対し本件再任用拒否をした。しかし,採用を希望する非常勤保育士全員について,臨時職員(保育補助)の任用等による雇用の確保を図るまでは至っていない。なお,一審原告Dは,同年4月1日から,I保育園で一審被告の臨時職員(保育補助)として従事し,平成17年4月1日以降,指定管- 17 -理者制度が導入された同園で非常勤の保育士として採用され勤務している。 (乙20ないし22,64) 争点(1)(一審原告らの期限付き任用の法的性質)について(1)一審原告らは,特別職非常勤職員の勤務関係の法的根拠は,一般職の公務員とは異なり地公法4条2項で同法の適用が排除される結果等から,私法上の雇用契約にほかならず,本件勤務関係も私法上の雇用契約であり,一審原告らには,労働基準法が全面適用さ の法的根拠は,一般職の公務員とは異なり地公法4条2項で同法の適用が排除される結果等から,私法上の雇用契約にほかならず,本件勤務関係も私法上の雇用契約であり,一審原告らには,労働基準法が全面適用され,かつ,労働組合法,労働関係調整法,最低賃金法が適用されると主張する。 (2)まず,本件勤務関係を規律する根拠法令について検討する。 ア地方自治法172条には,1項で「普通地方公共団体に吏員その他の職員を置く。」,2項で「前項の職員は,普通地方公共団体の長がこれを任免する。」,3項で「第1項の職員の定数は,条例でこれを定める。但し,臨時又は非常勤の職については,この限りでない。」,4項で「第1項の職員に関する任用,職階制,給与,勤務時間その他の勤務条件…(略)…その他身分取扱に関しては,この法律に定めるものを除く外,地公法の定めるところによる。」と規定され,同項の「この法律に定めるもの」とは,同法8章の「給与その他の給付」の規定,203条の普通地方公共団体の職員に対する報酬の額及び支給方法は条例で定めなければならない旨の規定があり(なお,上記のとおり,一審被告は「中野区非常勤職員の報酬及び費用弁償に関する条例」に基づき非常勤保育士に対して報酬を支給している。),身分取扱に関しては,地方自治法附則5条,9条及びこれに基づく地方自治法施行規程(昭和22年政令第19号)16条から59条までの規定がある(なお,平成18年11月22日政令第361号により改正されている。)。地公法制定前の地方自治法172条は,本来的な公務員である吏員についてのみ規定を置いていたが,地公法が「地方公共団体のすべての公務員」を地方公務員と定義し,地方公共団体のすべての公務- 18 -員を一律に扱うこととしたため,地公法の制定に伴う関係法律の整理に関する法律(昭和2 ていたが,地公法が「地方公共団体のすべての公務員」を地方公務員と定義し,地方公共団体のすべての公務- 18 -員を一律に扱うこととしたため,地公法の制定に伴う関係法律の整理に関する法律(昭和26年法律第203号)は,地方自治法172条全体を改正し,吏員に加えて「その他の職員」についても規定し,その対象とすることとした経緯があり,地方自治法では地方公務員について一般職と特別職との区別をしていないから,同法172条の「吏員その他の職員」については,地公法が定める特別職に属する職員も含まれることが明らかである。なお,このことは,同条3項では上記のとおり定められており,同項ただし書にいう「非常勤の職」が同項本文にいう「第1項の職員」の中に含まれているから,文理上も明らかである。したがって,これらの職員にかかる任免権の根拠も同条2項に求められ,また,4項中の「任用」は,職員の任用に関する根本基準を定めるべき旨規定したものであるといえ,同条1項の「吏員その他の職員」の任免権の根拠及びその帰属は,地方自治法等で定めるもののほか,地公法が一般的に適用されることを明らかにしたものというべきである。結局,地方公務員についていかなる者が任命権者であるかということは地方自治法などによって明らかにされているものであり,同法172条1項の「吏員その他の職員」の身分取扱のすべてについて地公法が定める旨を規定したものではない。 イ地公法4条2項について地公法4条2項では「この法律の規定は,法律に特別の定がある場合を除く外,特別職に属する地方公務員には適用しない。」と定められているが,これは,地公法2条で「地方公共団体のすべての公務員」を地方公務員と定義し,同法3条も「普通地方公共団体及び特定地方独立行政法人…のすべての公務員」を地方公務員と定義している結果 定められているが,これは,地公法2条で「地方公共団体のすべての公務員」を地方公務員と定義し,同法3条も「普通地方公共団体及び特定地方独立行政法人…のすべての公務員」を地方公務員と定義している結果,同法の地方公務員の範囲は極めて広いものとなっているため,特別職の任用及び職務の特殊性が一般的に地公法の各規定に馴染まないと考えられることにより,同法4条2項の規定としたものである。その結果,特別職の地方公務員につい- 19 -ては,地公法が原則として適用されないが,上記の地方自治法附則5条,9条及びこれに基づく地方自治法施行規程の関係規定は,引き続き適用があり,特別区の長の補助機関たる特別職の服務についても,同様である。 ただし,地公法1条ないし3条は,特別職に属する地方公務員を含むすべての地方公務員を対象とする規定である。 ウしたがって,地公法3条3項3号の特別職たる非常勤職員であっても,上記関係規定の適用を受けるのであるから,地公法4条2項で同法の適用が排除される結果等により当然に私法上の契約であると評価することはできないものというべきである。 エ他方,労働基準法112条は,「この法律及びこの法律に基づいて発する命令は,国,都道府県,市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。」と規定しており,同法は原則として地方公務員にも適用があることを定めている。しかしながら,上記説示のとおり,地方自治法等の中には地方公共団体の非常勤職員に対しても適用される規定があることや,地公法4条2項及び2条の規定の趣旨からすれば,労働基準法については,公務員制度と矛盾しない限りにおいて適用されるというべきである。 (3)上記1の認定事実によると,一審被告は,地方公共団体であり,地方自治法,地公法及び中野区保育園非常勤保育士設置要綱に基 いては,公務員制度と矛盾しない限りにおいて適用されるというべきである。 (3)上記1の認定事実によると,一審被告は,地方公共団体であり,地方自治法,地公法及び中野区保育園非常勤保育士設置要綱に基づき,一審原告らを地公法3条3項3号の特別職たる非常勤職員として雇用期間を定めて任用していたこと,一審被告から一審原告らに対し,任用時及び再任用時の都度,発令通知書が交付されるなどの任用行為が行われていたものであるから,一審原告ら非常勤保育士の任用関係等については,上記関係法規により規律されるとともに,その具体的内容は,中野区長の任用行為の具体的内容によって決定されるなどの行政処分であり,これに基づく本件勤務関係は公法上の任用関係であると認められる。 - 20 -なお,一審原告らは,国家公務員法2条6項の雇用契約の締結を禁止する旨の規定が,地公法上,存在しないことからも,本件勤務関係が私法上の雇用契約にほかならないと主張するが,上記説示のとおり,一審原告らは地方自治法172条2項に基づき中野区長から任命されたものであり,一審原告らと一審被告との関係は公法上の任用関係であるから,その主張も採用し難い。また,一審原告らは,各地の地方公共団体で地公法3条3項3号に該当する特別職非常勤職員の地位について「雇用」と明記し,要綱や規程で労働条件を定めて就業規則として届け出ている例が多数存在していることが,雇用契約であることを裏付けていると主張し,それに沿う証拠(甲63ないし67,68の①,②,69,70の①,②,84,85,88,89の①ないし⑬)を提出するが,他の地方公共団体がそうであるからといって,一審被告が上記のように明記し,あるいは届け出をしていない以上,同様に解することはできない。 以上のとおり,一審被告の非常勤保育士の任用が私法上の雇用契 が,他の地方公共団体がそうであるからといって,一審被告が上記のように明記し,あるいは届け出をしていない以上,同様に解することはできない。 以上のとおり,一審被告の非常勤保育士の任用が私法上の雇用契約であるとする一審原告らの主張は採用し難い。 (4)また,一審原告らは,仮に特別職非常勤職員の任用が行政処分であり,勤務関係が公法関係であるとしても,実質的な法的性質が雇用契約であるから,勤務関係の実態に応じた当事者の合理的な意思解釈により,雇用契約であると解すべきであると主張する。 しかしながら,上記1の認定事実のとおり,一審原告らは,その担当職務の内容,任用された際の事情,再任用が繰り返されてきた状況により,継続的に勤務していたとの実態が認められるものではあるが,一審被告の任用権者や採用担当者が自由な判断をして労働条件を決定することはできないし,非常勤保育士への採用を希望する者が一審被告の任用権者や採用担当者と交渉をして労働条件を決定するような余地もなく,一審原告らと一審被告との間で雇用契約の締結に該当するような事実はみられない。また,一審原告ら- 21 -は,非常勤職員勤務条件要綱は就業規則と解すべきであると主張する。しかし,就業規則であれば,その定める基準を上回る労働条件で雇用契約を締結することも可能であるが,本件勤務関係においては,上記要綱の定める基準を上回る労働条件で非常勤保育士となる余地はないと解されるから,上記要綱を就業規則と全く同様のものと解することはできない。したがって,一審原告らの任用は,その行政処分の画一性・形式性からすると期間を1年として任用され,その期間の満了により任用の効力が失効したものといわざるを得ず,上記勤務実態があったり,労働基準法が適用されることがあるからといって公法上の任用関係が合理的な意思解釈に と期間を1年として任用され,その期間の満了により任用の効力が失効したものといわざるを得ず,上記勤務実態があったり,労働基準法が適用されることがあるからといって公法上の任用関係が合理的な意思解釈により私法上の雇用契約関係と同質になると解することはできない。一審原告らの提出する意見書(甲81)をもってしても,上記判断を左右しない。 一審原告らのこの点の主張も理由がない。 (5)そうすると,一審原告らは,平成15年度に,任用期間を同年4月1日から平成16年3月31日までの1年間として再任用されたものであり,平成16年度において新たな再任用行為がなかった以上,争点(2)で検討する解雇権濫用の法理が類推適用されない限り,上記任期終了と同時に,当然に公務員としての地位を失うというほかない。一審原告らの地位は任用行為の内容によってのみ決定されるのであるから,期間を1年間として任用されている以上,一審原告らが再任用を請求する権利を有することはない。 争点(2)(本件再任用拒否が,解雇法理ないし解雇権濫用法理の類推適用により無効となるか)について(1)一審原告らは,一審原告らの非常勤保育士の任用が行政処分であるとしても,本件の事実経過を見る限り,更新を前提とした任用であり,職務内容,募集内容,再任用の経過等に照らしても,本件再任用拒否には解雇権濫用法理が類推適用されるべきであると主張する。 (2)ところで,私法上の雇用契約においては,期間の定めのある雇用契約が- 22 -多数回にわたって反復更新された場合,あるいは,期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合,雇用の継続が期待され,かつその期待が合理的であると認められるときには,解雇権濫用の法理が類推適用される余地があると解されている(前記最高裁の東芝柳町工場事件判決及び日立 ならない状態となった場合,雇用の継続が期待され,かつその期待が合理的であると認められるときには,解雇権濫用の法理が類推適用される余地があると解されている(前記最高裁の東芝柳町工場事件判決及び日立メディコ事件判決)。 確かに,本件においても,前記1で認定したところからすると,一審原告らの職務内容が常勤保育士と変わらず継続性が求められる恒常的な職務であること,任用回数はそれぞれ9回から11回といずれも多数回となり,結果的に職務の継続が長期間に及んでいたこと,再任用が形式的でしかなく,実質的には当然のようになされていたこと,一審原告らに対する一審被告の採用担当者の言動が長期にわたる職務の継続を期待させるものであったこと等の実態がある。さらに,証拠(甲28,52の①,59の①ないし⑬,71の①ないし⑮,86の①,②,87の①ないし⑤,88,乙4,59,64,80ないし94)及び弁論の全趣旨によれば,一審原告らが再任用されなかった後,一審被告は,中野区立保育園において慢性的な人手不足状態にあり,その不足した労働力の補充を通年パート保育士,保育補助,育児休業代替任期付職員など多数を募集して採用していること,一審被告が非常勤保育士の職の廃止に至る根拠として挙げていた中野区行財政5か年計画で示された財政危機が実態としては根拠に乏しいものであり,実際には平成11年度以降急激に財政状況が好転し,平成16年3月末には非常勤保育士の職の廃止をする必要性がなかった可能性が高いこと,そもそも非常勤保育士の職の廃止による経済効果は小さく,財政の視点からは平成16年3月末時点で,本件再任用拒否の必要性,合理性に疑問があること,加えて,一審被告は非正規職員を恒常的に採用しており,その新規募集採用を抑制したり,合わせて非常勤保育士を適切に配置転換し,勤務日,勤務時間 時点で,本件再任用拒否の必要性,合理性に疑問があること,加えて,一審被告は非正規職員を恒常的に採用しており,その新規募集採用を抑制したり,合わせて非常勤保育士を適切に配置転換し,勤務日,勤務時間等の変更等を行うなどの再任用拒否(非常勤保育士の職の廃止)を回避するための努力がなされた形- 23 -跡が見受けられないこと,一審被告は一審原告らに対して,「職の廃止に伴う意向の確認について」と題する書面を送付したものの,一審原告らがこれに応じなかったのでその意思確認ができなかったが,一審原告らの所属するE労組中野支部が一審被告との交渉を希望していたところ,同組合に対して一審原告らの地位や再就職の問題について,具体的な提案をするなどの対応は取っておらず,再就職先の確保に関しても情報の提供のみに止まり斡旋といえるものではないなど再任用拒否についての協議の不誠実性などの事情も認められる。これらの事情を総合すると,一審原告らと一審被告との間の勤務関係においては,上記解雇権濫用法理を類推適用される実態と同様の状態が生じていたと認められ,一審原告らの職務の継続確保が考慮されてしかるべき事態であったとはいえる。 (3)そこで,任期を1年として多数回にわたり任命された地方公共団体における非常勤職員について,解雇権濫用の法理の類推適用が可能かどうかを検討する。 その前提として,私法上の期間雇用の場合には期間終了とともに雇用契約が終了しているはずであるのに,なぜ,判例は雇用の継続があったものと認めているのかを検討すると,東芝柳町工場事件判決では,最高裁判所は,原審が「実質において,当事者双方とも,期間は一応2か月と定められてはいるが,いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり,したがって 審が「実質において,当事者双方とも,期間は一応2か月と定められてはいるが,いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり,したがって,本件各労働契約は,期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた」と認定したこと,すなわち,期間の定めの条項の存在にかかわらず,当事者の合理的な意思解釈としては実質的に期間の定めのない契約を締結していたと認定したことを是認した上で,雇止めの意思表示は実質的に解雇の意思表示に当たるから解雇権濫用の法理の類推適用が可能であるとしており,雇用の継続の根拠を当事者双方の- 24 -意思に求めている。他方,日立メディコ事件判決では,最高裁判所は,「5回にわたる契約の更新によって,本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり,あるいは上告人と被上告人との間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない」場合であっても,原審が,雇用関係はある程度の継続が期待されていた等の事情があるときは,期間満了による雇止めの際に解雇に関する法理が類推されるとし,「解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば,期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと」解したことを是認している。このように,日立メディコ事件判決では,従前の労働契約の更新に根拠を求めているものの,契約更新の理由について説明をしているわけではないが,この点は,民法629条1項を根拠とするものと解されよう(すなわち,同項は,期間満了後においても労働者が就労している場合において,使用者がこれを知りながら異議を述べない 明をしているわけではないが,この点は,民法629条1項を根拠とするものと解されよう(すなわち,同項は,期間満了後においても労働者が就労している場合において,使用者がこれを知りながら異議を述べないときは,従前と同一条件での雇用が推定されているところ,使用者が解雇無効とされるような事実関係の下に雇止めする等,雇用の継続に異議を述べたときは,その異議は権利濫用のため無効となり,法的には異議がなかったこととなるから,同項に定める法律上の推定が働き,雇用が継続されると考えられる。)。 そこで,地方公共団体における非常勤職員について見ると,まず,反復継続して任命されてきた非常勤職員の側では,上記のような期間の定めのない就労の意思があったとしても,任命する地方公共団体の側では,非常勤職員については条例による定数化がされないため(地方自治法172条3項),報酬等に関する予算措置もあって任期を1年と限っているのであるから,上記のような期間の定めのない任命の意思を考えることができない。また,任命行為は行政行為であって,当事者間の諾成契約のように契約当事者の明示又は黙示の意思表示の合致のみによっては任命の効力は生ぜず,任命権者に- 25 -よる告知によって効力を生ずるものであるから,期間の定めのない任命行為を認定することも,当事者双方の意思を推定する規定である民法629条1項を類推適用することも困難であり,任期を1年として任命された地方公共団体における非常勤職員については,東芝柳町工場事件判決や日立メディコ事件判決の法理を適用することができないものといわざるを得ない。 (4)本件においては,一審原告らの主張するように私法上の雇用契約の場合と,公法上の任用関係である場合とで,その実質面においては,多数回の更新の事実や,雇用継続の期待という点で差異がない 得ない。 (4)本件においては,一審原告らの主張するように私法上の雇用契約の場合と,公法上の任用関係である場合とで,その実質面においては,多数回の更新の事実や,雇用継続の期待という点で差異がないにもかかわらず,労働者の側にとってその法的な扱いについて差が生じ,公法上の任用関係である場合の労働者が私法上の雇用契約に比して不利となることは確かに不合理であるといえる。しかし,行政処分の画一性・形式性を定めた現在の関係法令を適用する限りは,当事者双方の合理的意思解釈によってその内容を定めることが許されない行政処分にこの考え方を当てはめるのは無理があると考えられ,現行法上は,解雇権濫用法理を類推して,再任用を擬制する余地はないというほかはない。また,仮に,労働者の期待利益に合理性がある場合には,当該不再任用に合理性がない限り,一審原告ら非常勤保育士は当然に再任用されるとの結論が採られるとすると,結局,法になんら規定がないにもかかわらず,行政処分としての任用行為を要求する権利を付与することとなるのみならず,任命権者の任用行為が存在しないにもかかわらず,実質的に任期の定めのない非常勤職員を生み出したり,従前と同一条件による任命がされたのと同様の法律関係を創り出す結果をもたらすこととなる。しかしながら,三権分立の建前から,裁判所は,行政庁に代わって行政行為をすることができず,義務付けの訴えにおいて,行政庁に対して,ある行政行為をなすべきことを命ずることができるにとどまる(行政事件訴訟法3条6項等)のであり,任命権者の任命行為がないにもかかわらず,裁判所の判決により実質的に任命がされたのと同様の法律関係を創り出すことは,法解釈の限界を超え- 26 -るものというほかない。反復継続して任命されてきた非常勤職員に関する公法上の任用関係においても,実 判決により実質的に任命がされたのと同様の法律関係を創り出すことは,法解釈の限界を超え- 26 -るものというほかない。反復継続して任命されてきた非常勤職員に関する公法上の任用関係においても,実質面に即応した法の整備が必要とされるところである。 (5)さらに,一審原告らは,非常勤職員勤務条件要綱5条は,非常勤職員の再任用を原則としているから,一審被告が再任用を拒否できるのは正当な理由がある場合のみであると主張する。しかし,同条は,「区長は,次の各号のいずれかに該当する場合を除き,任期の満了した非常勤職員を再任用することができる。」と定めているに過ぎず(第2の2(2)),その文言上,非常勤職員について,第2の2(2)記載の同条列挙の事由がない場合の再任用を一審被告に義務づける内容のものと解することはできないから,一審原告らの主張は理由がない。 (6)以上によれば,一審原告らは,いずれも平成16年3月31日をもって,一審被告の非常勤職員としての地位を失っているから,その地位確認及び平成16年4月以降の報酬の支払を求める一審原告らの請求は理由がない。 争点(3)(本件再任用拒否により一審原告らの再任用されるとの期待権を違法に侵害したか)について(1)一審原告らは,任用継続に対する期待権は法的保護に値するというべきであり,本件再任用拒否には合理性がなく違法な行為であると主張する。 最高裁平成6年判決においては,任用予定期間満了により既に退職した非常勤職員には,再び任用される権利あるいは再任用を要求する権利は認められず,不再任用という任命権者の不作為それ自体を理由とする損害賠償請求を認めることはできないところであるが,任命権者が同職員に対して,任用の継続を確約ないし保障するなど,任用予定期間満了後も任用が継続されると期待することが無 の不作為それ自体を理由とする損害賠償請求を認めることはできないところであるが,任命権者が同職員に対して,任用の継続を確約ないし保障するなど,任用予定期間満了後も任用が継続されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情があり,任用の継続が保障されているとの誤った期待を抱かせた行為により生じた損害については,不法行為が成立する余地もあると判断されてい- 27 -るので,本件について検討する。 (2)前記1の認定事実によれば,一審被告は,一審原告らが非常勤保育士の任用を希望した際や,任用された際に,前記のとおり,一審原告らの非常勤保育士としての任用は公法上の任用関係であり,期間が厳格に定められていて当然に再任用を請求する権利が発生する余地はなかったのであるから,将来,疑義を生じることのないようにそのことを説明すべき必要性が高い事情にあったにもかかわらず,一審原告らがその説明を受けていなかったものであり,却って,一審被告にとり保育士を確保する必要性があったことから,採用担当者において,長期の職務従事の継続を期待するような言動を示していたこと,一審原告らの職務内容が常勤保育士と変わらず継続性が求められる恒常的な職務であること,それぞれ9回から11回と多数回に及ぶ再任用がされ結果的に職務の継続が10年前後という長期間に及んだが,再任用が形式的でしかなく,実質的には当然のように継続していたことに照らすと,一審原告らが再任用を期待することが無理からぬものとみられる行為を一審被告においてしたという特別の事情があったものと認められる。したがって,前記の一審原告らの任用継続に対する期待は法的保護に値するものと評価できるものと解する。 そして,このように,一審原告らの任用の際には,長期間の職務従事に対する期待を抱かせる められる。したがって,前記の一審原告らの任用継続に対する期待は法的保護に値するものと評価できるものと解する。 そして,このように,一審原告らの任用の際には,長期間の職務従事に対する期待を抱かせるかのような説明がされ,その後の再任用手続も,本人の意思を明示的に確認しないで再任用が常態化していたことに照らせば,その任用に制度上は期間の限定があるとされていることを認識していたとしても,自ら退職希望を出さない限り,当然に再任用されるとの期待を一審原告らが抱くのはごく自然なことである。しかも,一審被告が本件再任用拒否をした後,パートの保育士を採用して,非常勤保育士に代わるものとして保育業務を継続していることにより,その継続性に対する期待が客観的であることが裏付けられている。 - 28 -(3)以上のとおり,一審原告らが再任用されるとの期待は,法的保護に値するというべきであるところ,一審被告は一審原告らを再任用せず,一審原告らの上記期待権を侵害したのであるから,一審被告は,一審原告らに対して,その期待権を侵害したことによる損害を賠償する義務を負うべきである。 (4)期待権侵害により一審原告らが被った損害について検討すると,この期待権が一審原告らの生活基盤に直接かつ密接に関連するものであり,一審被告が一審原告らを再任用しないことが一審原告らの生活設計に与えた影響は大きいと考えられるところである。特に,本件では,3(2)において摘示したとおり,一審被告は,再任用拒否を回避したり,一審原告らの再就職確保のための努力を怠ったのみならず,再任用拒否についての協議について不誠実であり,また,平成16年3月末日の間近である同年2月24日に再任用拒否の告知をする等しているのであって,一審原告らは非常勤職員であり,任用期間の経過とともに当然に一審被告と縁が 協議について不誠実であり,また,平成16年3月末日の間近である同年2月24日に再任用拒否の告知をする等しているのであって,一審原告らは非常勤職員であり,任用期間の経過とともに当然に一審被告と縁が切れるから放置すればよいとの認識であったと認める余地すら存在するのである。このように,実質的にみると雇止めに対する解雇権濫用法理を類推適用すべき程度にまで違法性が強い事情の下に,一審被告は,上記認定のとおり一審原告らの期待権を侵害したこと,しかるに,私法上の契約と異なることから,一審原告らはその地位の確認を求めることはできないこと,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると,一審原告らそれぞれにつき,報酬の1年間分に相当する程度の慰謝料額を認めるのが相当であり(なお,一審原告Dに関しては平成16年4月1日以降,一審被告の臨時職員として1年間従事した事情も考慮することとする。),また,弁護士費用もその1割程度を相当因果関係ある損害として認めるのが相当である。したがって,その額は,一審原告A及び同Bがそれぞれ慰謝料200万円及び弁護士費用相当額20万円,同Cが慰謝料180万円及び弁護士費用相当額20万円,同Dが慰謝料100万円及び弁護士費用相当額10万円であり,附帯請求の起算日は,平成16年4月1日であ- 29 -ると認められる。 第4 結論 よって,一審原告らの控訴に基づき原判決を主文1項のとおり変更して,一審被告に対し,一審原告A及び同Bへ各220万円及びこれに対する平成16年4月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金,同Cへ200万円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金,同Dへ110万円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金をそれぞれ支払うことを命じ,その余の一審原告らの請求をいずれも棄 びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金,同Dへ110万円及びこれに対する同日から支払済みまで同割合による遅延損害金をそれぞれ支払うことを命じ,その余の一審原告らの請求をいずれも棄却することとし,また,一審被告の控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第17民事部裁判長裁判官南敏文裁判官安藤裕子裁判官小林宏司

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