令和6年7月29日宣告令和5年(わ)第131号、第136号、第150号、第171号、第216号、令和6年(わ)第16号強盗致傷、詐欺、強盗、監禁、強盗殺人、窃盗、道路交通法違反、公務執行妨害被告事件 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中240日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 Aを殺害して金品を強奪しようと考え、令和5年8月14日午前11時4分頃から同月15日午前9時35分頃までの間に、岩手県滝沢市(省略)同人方において、同人(当時72歳)に対し、殺意をもって、その脇腹等を複数回蹴り、その頭部・顔面等を複数回殴るなどした上、その頸部にタオル様の索条物を巻き付けて絞め付け、よって、その頃、同所において、同人を窒息により死亡させて殺害するとともに、同人所有の預金通帳1通及び印鑑1本等を強奪した、第2 B(当時81歳)から同人所有の自動車を強奪しようと考え、同日午後4時30分頃、盛岡市(省略)C公園内において、同人に対し、「家まで乗せていってくれないか」などと言って、同車の後部座席に乗車し、同人に同車を運転させ、岩手県岩手郡(省略)所在のD神社敷地内まで移動し、同日午後6時頃から同日午後6時30分頃までの間に、同所に駐車中の同車内において、運転席に座っていた同人に対し、「実は、俺、強盗殺人だよ」などと言って、同人の頸部にタオル状の物をかけて同人の後方に引っ張り、同人から抵抗されるや、同車から降車し、その頃、同所又はその付近の草地において、地面に仰向けに 倒れた同人の上に馬乗りになり、その頸部を手で絞め、その顔面を拳で多数回殴る暴行を加え、その反抗を抑圧した上、同車(時価約30万円相当)を強奪し、 付近の草地において、地面に仰向けに 倒れた同人の上に馬乗りになり、その頸部を手で絞め、その顔面を拳で多数回殴る暴行を加え、その反抗を抑圧した上、同車(時価約30万円相当)を強奪し、その際、前記一連の暴行により、同人に全治まで約2週間を要する鼻根部腫脹の傷害を負わせた、第3 同月17日頃、秋田県鹿角市(省略)有限会社E倉庫敷地内において、同所に駐車中の自動車から、同社取締役F管理のナンバープレート2枚を窃取した、第4 同日頃、青森市(省略)G株式会社駐車場において、同所に駐車中の自動車2台から、同社代表取締役H管理のナンバープレート合計3枚を窃取した、第5 借用名目で自動車をだまし取ろうと考え、同月18日午前9時20分頃、青森県西津軽郡(省略)所在の自動車整備工場Iにおいて、経営者のJ(当時77歳)に対し、真実は、借り受けた自動車を返還する意思がないのに、これがあるように装い、現金を引き出すためにATMに行く旨のうそを言って自動車の借用を申し込み、同人に借用後は短時間で確実に自動車の返還を受けられるものと誤信させ、よって、その頃、同所において、同人から自動車1台(時価約30万円相当)の交付を受け、もって人を欺いて財物を交付させた、第6 通行中の自動車を停止させて運転手から現金及び自動車を強奪しようと考え、同月21日午前9時40分頃、同県上北郡(省略)付近路上において、K(当時47歳)が運転する自動車を停止させ、同人に対し、「仕事で来てる会社が近くにあるから乗せてってほしい」などと言って、同車の後部座席に乗り込んで同人に同車を運転させ、同郡(省略)所在の有限会社L北東約900メートル付近路上まで移動させ、同日午前10時頃、同所に停止中の同車内において、後部座席からいきなり同人の頸部付近にあらかじめ準備していたロー 同車を運転させ、同郡(省略)所在の有限会社L北東約900メートル付近路上まで移動させ、同日午前10時頃、同所に停止中の同車内において、後部座席からいきなり同人の頸部付近にあらかじめ準備していたロープをかけるなどしてその頸部を絞め付けようとし、同人に抵抗されるや、同人に対し、「そっち行け」などと告げて同人を助手席に移動させるとともに自らは運転席に移動し、前記Kにあらかじめ準備していたドライバー様の工具を示し、「変なことをしたら刺す」と言うなどの暴行・脅迫を加え、その反抗を抑圧した上、 「いくらお金持ってる」「全部よこせ」などと言って、同人所有の現金約3万2000円を強奪し、さらに、同人管理の同車(時価約30万円相当)を発進させてこれを強奪した、第7 その頃、前記暴行・脅迫によって畏怖した同人を乗せたまま同車を同所から発進させ、その頃から同日午後3時36分頃、同県十和田市(省略)付近路上において、同人が同車から脱出して警察官に保護されるまでの間、同車を青森市内、同県黒石市内、同県十和田市内等約227.9キロメートル疾走させるなどして前記Kを自己の支配下におき、前記Kが同車内及びその付近から脱出することを著しく困難にし、もって人を不法に監禁した、第8 公安委員会の運転免許を受けないで、同日午後4時33分頃、青森市(省略)付近道路において、普通乗用自動車を運転した、第9 前記車両を運転中、前記第7の事件等の犯人として手配され、警察車両による追跡を受けて逃走していたものであるが、前記第8記載の日時及び場所において、被告人運転車両を停止させるため、青森県青森南警察署刑事生活安全課所属の巡査Mおよび同課所属の警部補Nらが、交通取締用車両1台及び捜査用車両1台を被告人の進路前方に横並びに配置し、前記Mが前記交通取締用車両の助 を停止させるため、青森県青森南警察署刑事生活安全課所属の巡査Mおよび同課所属の警部補Nらが、交通取締用車両1台及び捜査用車両1台を被告人の進路前方に横並びに配置し、前記Mが前記交通取締用車両の助手席に乗車し、前記Nが前記車両2台の後方に佇立して検問に従事していた際、同人が両車両付近に佇立していることなどを認識しながら、両車両に自己の運転車両をそれぞれ衝突させる暴行を加え、もって前記Mらの職務の執行を妨害したものである。 (証拠の標目)省略(累犯前科)省略(法令の適用) 省略(量刑の理由)被告人は、前刑での服役を終えて、令和5年2月7日、出所した。出所後は、生活保護を受給しながら、盛岡市内のアパートで単身生活を送っていた。同年8月8日、判示第1の被害者と知り合った。同日から、被害者が単身居住するアパートの部屋で寝泊まりするようになった。同月10日頃には被害者が年金を受給していることを知り、その後、同月15日に同人の口座に2か月分の年金が振込入金されることを知った。被告人は、前刑での服役前に、遊興費に充てるためにいわゆる町金融から借金をしており、その金額が約300万円にまで膨れ上がっていた。その督促状が実家に送り付けられてきたことから、いずれ自宅にも取立てに来ると思い、行方をくらまそうと考えた。睡眠導入剤で被害者を眠らせて通帳や印鑑を奪い、振込入金された年金を引き出して逃走資金を手に入れることにした。あらかじめ睡眠導入剤を入手した上で、年金が支給される前夜に、ひそかに被害者に睡眠導入剤を飲ませてみた。しかし、十分な効果が得られず、被害者が眠り込むようなことはなかった。年金支給日当日に被害者が引き出してしまう前に、何としても通帳や印鑑を奪い取って年金を引き出さなければならないと思った。不意 みた。しかし、十分な効果が得られず、被害者が眠り込むようなことはなかった。年金支給日当日に被害者が引き出してしまう前に、何としても通帳や印鑑を奪い取って年金を引き出さなければならないと思った。不意を突いて被害者を転倒させると、その脇腹等を複数回足で蹴ったり、頭部や顔面等を拳で複数回殴ったりした。被害者が弱って抵抗できなくなると、馬乗りになって、その首を両手で絞めた。素手の感触を不快に感じると、タオル様の索条物を持ち出して被害者の首に巻き付け、力強く引っ張って首を絞め、被害者を窒息死させた。このように、被告人は、年金を引き出すまでの十分な時間を稼ぐ必要があった上、あたかもとどめを刺すかのように被害者の首をタオル様の索条物で絞めているのであって、被告人が通帳等を奪うために被害者を殺害しようと考え、確定的な殺意をもって、その首を絞めたことは明らかである。そして、被告人は、被害者が死亡したことを確認すると、通帳と印鑑等を奪い、銀行に向かった。しかし、名義人本人の意思確認を求められたため、年金を引き出すことができなかった(以上、判示第1の犯行)。 このように現金の奪取に失敗すると、被告人は、自動車を手に入れて逃走しようと考えた。同月15日、C公園の駐車場に行き、自動車に乗り込もうとしていた高齢男性に声を掛け、熱中症を装い、自宅まで乗せていってくれるよう頼んだ。被害者は、被告人の体調を気遣い、後部座席に乗車させた。被告人は、被害者に指示して自動車を走行させ、人気のない神社に至ると、そこに停車させた。そして、被害者に対し、「実は、俺、強盗殺人だよ」と言うと、後部座席から、運転席に座っていた被害者の首にタオル状の物をかけて後方に引っ張った。抵抗されると、車外に出て被害者を地面に押し倒し、仰向けの状態の被害者の上に馬乗りになって、その 人だよ」と言うと、後部座席から、運転席に座っていた被害者の首にタオル状の物をかけて後方に引っ張った。抵抗されると、車外に出て被害者を地面に押し倒し、仰向けの状態の被害者の上に馬乗りになって、その顔面を拳で多数回殴ったり、その首を手で絞めたりした。被害者が意識を失うと、死亡したと思い込み、被害者の自動車を運転して現場から走り去って奪った(判示第2の犯行)。 その後、奪った自動車で秋田県方面に逃走中、同車のナンバーが手配されると考え、同月17日頃、同県鹿角市の倉庫敷地内に駐車中の自動車からナンバープレート2枚を取り外して盗み、これらを付け替えた(判示第3の犯行)。さらに、青森県方面に逃走中、付け替えたナンバーでは車種が相違することに気がつき、青森市の駐車場に駐車中の自動車2台からナンバープレート合計3枚を取り外して盗み、そのうち2枚を付け替えた(判示第4の犯行)。 同月18日、奪った自動車で青森県内を逃走中、同車の調子が悪くなったことから、同県西津軽郡(省略)の自動車整備工場に持ち込んだ。同車を点検した経営者から修理が必要である旨を告げられると、逃走を続けるために代車をだまし取ろうと考えた。ATMまで現金を引き出しに行くなどとうそを言って同人を欺き、自動車をだまし取ってそのまま乗り逃げした(判示第5の犯行)。 同月21日、だまし取った自動車で青森県内を逃走中、タイヤがパンクして走行不能となったことから、新たな逃走用の自動車を手に入れようと考えた。同県上北郡(省略)の路上で通りがかりの自動車を停止させると、運転していた被害者に、近くまで乗せていってくれるよう頼んだ。被害者は、気の毒に思い、被告人を後部 座席に乗車させた。被告人は、被害者に指示して自動車を走行させ、人気のない場所まで移動すると、そこに停車させた。そして せていってくれるよう頼んだ。被害者は、気の毒に思い、被告人を後部 座席に乗車させた。被告人は、被害者に指示して自動車を走行させ、人気のない場所まで移動すると、そこに停車させた。そして、あらかじめ準備していたロープを被害者の首にかけて絞め付けようとした。抵抗されると、被害者を助手席に移動させ、自らは運転席に移動し、被害者にドライバー様の工具を示し、「刺す」などと言って脅迫した。現金を要求して財布内の現金約3万2000円を奪い取り、さらに、そのまま同車を発進させてこれを奪った(判示第6の犯行)。被害者に財布内のキャッシュカードで現金を引き出させようと考え、被害者を乗せたまま同車を疾走させ、同車内に監禁した。事件を察知した警察車両の追跡を受けて逃走する途中、被害者に降車の準備をするよう指示して減速した。被害者は同車から飛び降りて脱出し、警察官に保護された(判示第7の犯行)。 その後も、被告人は、警察車両の追跡を受けながら逃走を続けた。他方、警察官らは、被告人運転車両を停止させるため、先回りして警察車両2台で道路を塞いで検問を実施していた。被告人は、進路前方の道路を警察車両が塞いでおり、その近くには警察官がいることを認識しながら、そのまま検問に突っ込み、警察車両に被告人運転車両を衝突させて警察官の職務の執行を妨害した(判示第9の犯行)。その際、被告人は、運転免許を有していなかった(判示第8の犯行)。 以上のとおり、被告人は、身勝手な動機から強盗殺人という重大かつ凶悪な犯罪を行ったばかりか、その後も、捜査の手から逃れるために、無関係の第三者を巻き込みながら、強盗致傷や強盗、監禁という重大犯罪を含む多数の犯罪行為を繰り返した末に、追い詰められ、ついには警察の検問バリケードに自動車で突入するという無謀な犯行に至っているのであって、 三者を巻き込みながら、強盗致傷や強盗、監禁という重大犯罪を含む多数の犯罪行為を繰り返した末に、追い詰められ、ついには警察の検問バリケードに自動車で突入するという無謀な犯行に至っているのであって、本件一連の犯行の動機や経緯に酌むべき事情は存しない。個別の犯情を見ても、判示第1の犯行においては、被告人は、睡眠導入剤を準備するなどして昏酔強盗を計画し、それが奏功しないとみるや、ためらうことなく被害者を殺害してまで当初の目論見どおり通帳等を奪っているのであって、財物奪取の意思や殺意が非常に強固であり、その人命軽視の態度には甚だしいものがある。犯行態様を見ても、被害者に対し、いきなり殴る蹴るなどの強度の暴 行を加え、抵抗する力を奪った上で、タオル様の索条物で首を絞めてとどめを刺すという誠に残忍なものである。判示第2の犯行においては、被害者の善意に付け込んで人気のない場所まで移動させると、強盗殺人を犯したことを誇るかのような言葉で脅迫するとともに、いきなりタオル状の物を被害者の首にかけて絞めようとし、さらに、被害者が意識を失うまで、その顔面を拳で多数回殴ったり、その首を手で絞めたりしている。犯行の手口は卑劣なものであり、暴行・脅迫の程度も非常に強度である。判示第6及び第7の各犯行においては、あらかじめ凶器を準備した上で、被害者の善意に付け込んで人気のない場所まで移動させると、いきなり被害者の首にロープをかけて絞めようとするなどして、抵抗する気力をそいだ上で、現金や自動車を奪い、さらに、キャッシュカードから現金を奪う目的で、約5時間半にわたって走行中の自動車内等に監禁している。被害者は、長時間にわたり、いつ殺されるかもしれないという緊張感を強いられ、多大な恐怖感を味わわされている。暴行・脅迫の程度が強度で、身体拘束の程度も甚だしい卑 て走行中の自動車内等に監禁している。被害者は、長時間にわたり、いつ殺されるかもしれないという緊張感を強いられ、多大な恐怖感を味わわされている。暴行・脅迫の程度が強度で、身体拘束の程度も甚だしい卑劣で悪質な犯行というべきである。 以上によれば、本件の犯情は総じて悪質というほかない。加えて、被告人には多数の前科があり、その中には、本件と同態様の犯行により長期間の服役を余儀なくされたものもある。そうすると、被告人の本件刑事責任は極めて重大であり、刃物等の殺傷能力の高い凶器を使用していないこと、判示第1の犯行においては、被害者の年金を奪取するという目的を遂げることはできておらず、財産的利得が乏しいこと、その後の犯行は、いずれも場当たり的なものであること、判示第6及び第7の各犯行においては、被害者に殴る蹴るといった直接的な有形力を行使する暴行を加えていないこと、被害者を解放せずに道連れにすることも可能であったのに、運転車両を減速して被害者の脱出を容易にしていることなどの被告人に有利に斟酌すべき事情を最大限考慮しても、被害者1名の強盗殺人罪を含む事案の量刑傾向に照らして、無期懲役刑から酌量減軽すべき事由を見いだすことはできない。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑・無期懲役)令和6年7月31日盛岡地方裁判所刑事部 裁判長裁判官中島真一郎 裁判官佐々木耕 裁判官上野友輔 友輔
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