平成24(行ウ)183 更正すべき理由がない旨の通知処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年2月20日 大阪地方裁判所 租税
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判決文本文15,609 文字)

平成26年2月20日判決言渡平成24年(行ウ)第183号更正すべき理由がない旨の通知処分取消請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求八尾税務署長が,原告らに対して平成23年1月7日付けでした,平成6年▲ 月 ▲ 日相続開始に係る相続税の各更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の各通知処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,亡父A(以下「被相続人」という。)の子である原告ら及びBの間で,Bが被相続人の全財産を相続し,その代償として原告らに対して各5000万円を支払う旨の遺産分割協議がされ,これに従って相続税の申告をした原告らが,Bが代償債務を履行しなかったため,当初の遺産分割協議を解除した上で,原告らは相続財産を取得しない旨の再度の遺産分割協議がされ,原告らは相続財産を取得しないことになったとして,相続税の更正の請求(以下「本件各更正請求」という。)をしたのに対し,八尾税務署長が,更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)をしたことから,原告らが本件各通知処分の取消しを求めた事案である。 1 法令等の定め(1) 国税通則法(ただし,平成23年12月2日法律第114号による改正前のもの。以下「通則法」という。)等の定めア通則法23条1項1号は,納税申告書を提出した者は,当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより,当該申告書の 提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には,当該更正後の税額)が過大で が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより,当該申告書の 提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には,当該更正後の税額)が過大である場合には,当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り,税務署長に対し,その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができると規定する。 イ通則法23条2項3号は,納税申告書を提出した者は,当該国税の法定申告期限後に生じた同項1号及び2号に類する政令で定めるやむを得ない理由がある場合には,同条1項の規定にかかわらず,当該理由が生じた日の翌日から起算して2月以内の期間(同期間の満了する日が前同項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)において,その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができると規定する。 ウ国税通則法施行令(ただし,平成23年12月2日政令第382号による改正前のもの。以下「通則法施行令」という。)6条1項2号は,通則法23条2項3号に規定する政令で定めるやむを得ない理由として,その申告,更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に係る契約が,解除権の行使によって解除され,若しくは当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され,又は取り消されたことを規定する。 ⑵ 相続税法の定めア相続税法32条1項1号(ただし,平成23年12月2日法律第114号による改正前のもの。)は,相続税について申告書を提出した者は,同法55条の規定により分割されていない財産について民法(904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていた場合において,その後当該財 て申告書を提出した者は,同法55条の規定により分割されていない財産について民法(904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていた場合において,その後当該財産の分割が行われ,共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったとの事由により当該申告に係る 課税価格及び相続税額が過大となったときは,同事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り,納税地の所轄税務署長に対し,その課税価格及び相続税額につき通則法23条1項の規定による更正の請求をすることができると規定する。 イ相続税法34条1項(ただし,平成15年3月31日法律第8号による改正前のもの。)は,同一の被相続人から相続により財産を取得したすべての者は,その相続により取得した財産に係る相続税について,当該相続により受けた利益の価額に相当する金額を限度として,互いに連帯納付の責めに任ずると規定する。 ウ相続税法55条(ただし,平成23年12月2日法律第114号による改正前のもの。)本文は,相続により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合において,当該相続により取得した財産の全部又は一部が共同相続人によってまだ分割されていないときは,その分割されていない財産については,各共同相続人が民法(904条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとすると規定する。相続税法55条ただし書は,その後において当該財産の分割があり,当該共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分に従って計算された課税価格と異なることとなった場合においては,当該分割により取得した財産に係る 後において当該財産の分割があり,当該共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分に従って計算された課税価格と異なることとなった場合においては,当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として,納税義務者において申告書を提出し,若しくは同法32条1項の更正の請求をし,又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げないと規定する。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,各項掲記の証拠(以下,証拠番号は枝番の存するものは特記なき限り全枝番を含む。)により容易に認められる事実等)(1) 当事者等 ア被相続人は,平成6年 ▲ 月 ▲ 日に死亡し,相続が開始した(以下「本件相続」という。)。 イ被相続人の長女である原告C,二女である原告D,長男であるBの3名が共同相続人となった。 ウ Bは,平成24年 ▲ 月 ▲ 日,死亡した。 ⑵ 平成6年遺産分割協議ア原告ら及びBは,平成6年5月24日付けで,Bが本件相続に係る相続財産である不動産全てを相続し,その代償として,Bが原告らに対し各5000万円を支払う旨の遺産分割協議を成立させた(以下「平成6年遺産分割協議」といい,Bの原告らに対する各代償債務を「本件各代償債務」という。)。平成6年遺産分割協議では,本件各代償債務の弁済期及び弁済方法につき,① 堺市αに所在する「Eゴルフセンター」(以下「本件ゴルフセンター」という。)の売却時,又は② 本件相続に係る相続税の納付時,のいずれか早く到来した時に,Bが原告らに対し一括して支払うこととされた。 イ原告ら及びBは,平成6年12月12日,八尾税務署長に対し,平成6年遺産分割協議に基づき,別表「課税処分等の経緯」の「申告」欄のとおり,本件相続に係る相続税の申告をした(以下「本件申告」とい イ原告ら及びBは,平成6年12月12日,八尾税務署長に対し,平成6年遺産分割協議に基づき,別表「課税処分等の経緯」の「申告」欄のとおり,本件相続に係る相続税の申告をした(以下「本件申告」という。)。 同表における原告らの「取得財産の価額」欄記載の金額は,本件各代償債務の金額であり,B(同別表の「他の相続人」)の「取得財産の価額」欄記載の金額は,被相続人の全相続財産の価額から本件各代償債務の金額計1億円を控除した金額である。 ウ本件申告に基づき,原告ら及びBが納付すべき相続税の税額は,原告らはそれぞれ1815万4500円,Bは3億5835万5800円と確定した。原告らは,同相続税をそれぞれ納付した。 ⑶ 本件ゴルフセンターの売却等 Bは,平成16年9月頃,本件ゴルフセンターを4億7000万円で売却した。同売却代金の大部分は金融機関への債務の返済に充てられたほか,大阪国税局にも1600万円が支払われたが,原告らに対する本件各代償債務の支払はされなかった。(甲6,乙3の1)⑷ 嘆願書の提出ア平成19年に入り,大阪国税局から原告らに対し,Bの相続税に係る連帯納付義務の履行を求める書面が送付された(甲6,乙3)。 イ原告らは,平成19年6月19日付けで,大阪国税局長に対し,① Bが平成16年に本件ゴルフセンターを売却した際,その代金全額をBの債務の弁済及び税金の納付等に充当し,原告らは,本件各代償債務の履行を全く受けていないこと,② 原告らは,本件相続により何ら財産を取得していないことなどを理由として,連帯納付義務について寛大な処置を求める旨の嘆願書を提出した。 ウ原告らは,大阪国税局長に対し,上記イと同様に,本件相続に係るBの相続税の連帯納付義務について寛大な処置を求める旨の平成20年5月30日 務について寛大な処置を求める旨の嘆願書を提出した。 ウ原告らは,大阪国税局長に対し,上記イと同様に,本件相続に係るBの相続税の連帯納付義務について寛大な処置を求める旨の平成20年5月30日付け嘆願書及び平成21年4月14日付け嘆願書を提出した。 ⑸ 平成6年遺産分割協議の解消原告らは,平成22年9月1日,Bに対し,それぞれ,本件各代償債務が履行されていないこと,それにもかかわらずBが負っている相続税に係る連帯納付義務まで課されることになったことを理由として,債務不履行に基づき平成6年遺産分割協議を解除する旨の「解除権行使の通知書」と題する書面を送付し,同書面は,同月2日,それぞれBに到達した(乙4,5)。 ⑹ 平成22年遺産分割協議原告ら及びBは,平成22年9月9日付けで,平成6年遺産分割協議がBの債務不履行を理由に解除されたことを確認するとともに,「被相続人の遺産は再び未分割の状態に復することとなったため,改めて共同相続人全員で 遺産の分割協議を行った」ことを明らかにした上で,Bが被相続人の財産及び債務の全てを相続し,原告らは何も相続しない旨の遺産分割協議書を作成した(以下「平成22年遺産分割協議」という。)。 ⑺ 本件各通知処分ア原告らは,平成22年10月12日,八尾税務署長に対し,更正の請求をするに至った事情の詳細につき,「平成6年5月24日の遺産分割協議により取得した代償債権5000万円は,債務者所有不動産の売却により履行される予定であったが,予期せぬ不動産価格の下落により見込みどおりの価格で売却することができず履行不能と判明したため」,更正の請求をする理由につき,「相続財産を取得しないこととなったため」とそれぞれ記載した更正の請求書を提出し,本件申告に係る相続税の更正の請求をした(本 却することができず履行不能と判明したため」,更正の請求をする理由につき,「相続財産を取得しないこととなったため」とそれぞれ記載した更正の請求書を提出し,本件申告に係る相続税の更正の請求をした(本件各更正請求。甲1)。 イ八尾税務署長は,平成23年1月7日付けで,原告らに対し,「平成6年5月24日の遺産分割協議により取得した代償債権5000万円の履行が受けられず,再度,平成22年9月9日に遺産分割協議を行ったとしても,このことは,更正の請求ができる場合に該当しないため。」との理由により,更正をすべき理由がない旨を通知した(本件各通知処分)。 ⑻ 本件訴訟提起に至る経緯ア原告らは,平成23年3月1日,本件各通知処分を不服として,それらの取消しを求めて異議申立てをしたが,八尾税務署長は同年4月26日付けで,原告らの異議申立てを棄却する旨の異議決定をした。 イ原告らは,平成23年5月26日,上記アの異議決定を不服として,審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成24年3月8日付けで,原告らの審査請求を棄却した。 ウ原告らは,平成24年9月6日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張 本件の争点は,原告ら及びBが平成6年遺産分割協議を解消し,改めて平成22年遺産分割協議をしたことの通則法23条2項3号該当性(争点1)ないし相続税法32条1項1号該当性(争点2)である。 各争点に対する当事者の主張は以下のとおりである。 (1) 通則法23条2項3号該当性(争点1)について(原告らの主張)ア平成6年遺産分割協議を法定解除したこと(ア) 平成6年遺産分割協議は,Bの債務不履行を原因として,法定解除権の行使により解除されたものであるから, て(原告らの主張)ア平成6年遺産分割協議を法定解除したこと(ア) 平成6年遺産分割協議は,Bの債務不履行を原因として,法定解除権の行使により解除されたものであるから,通則法施行令6条1項2号に該当し,ひいては通則法23条2項3号の「やむを得ない理由」が認められる。 (イ) 被告は,遺産分割協議を法定解除することはできないと主張するが,代償債務は遺産分割によって発生する債務と異なり,現実に履行されることが強く要請されており,その履行がない場合には重大な瑕疵があるとして遺産分割そのものが否定される余地があること,本件では原告らとBのほかに相続人はいないから法定解除を認めても相続人間の法的安定性に不当な影響を与えることはないこと,本件各代償債務の不履行の程度が大きいことからすると,本件においては,法定解除を認めるべきである。 イ平成6年遺産分割協議を合意解除したこと(ア) 仮に,本件において平成6年遺産分割協議の法定解除が認められないとしても,原告らとBとの間で平成22年遺産分割協議をしたことによって平成6年遺産分割協議は合意解除されたものと評価できる。 (イ) 原告らは,Bから本件各代償債務の履行を受けることを前提に相続税の申告をしたところ,不動産の値下がり等の影響から当初10億円で売却できるはずであった本件ゴルフセンターが半分程度の値段でしか売 却できず,結果,Bは原告らに対する本件各代償債務だけでなく,自らの相続税の支払もできない状態となったため,原告らは,Bが,本件各代償債務に優先させて自らの相続税を納税していくことを容認せざるを得なかった。かかる事情からすれば,原告らには本件相続により「受けた利益」(相続税法34条1項)は存在しないし,また,上記のとおり原告らも容認してB せて自らの相続税を納税していくことを容認せざるを得なかった。かかる事情からすれば,原告らには本件相続により「受けた利益」(相続税法34条1項)は存在しないし,また,上記のとおり原告らも容認してBが本件各代償債務に優先させて自らの相続税を納税し続けたことは,原告らが本件各代償債務の分を事実上Bの納税分として納税したものであって,すでに原告らは連帯納付義務を果たしたといえる。それにもかかわらず,大阪国税局は,平成19年に原告らに対し,連帯納付義務を追及してきたのであるから,かかる連帯納付義務の追及は相続税法34条1項に反する違法不当なものである。したがって,これを免れるために行われた平成6年遺産分割協議の解除及び平成22年遺産分割協議には,「やむを得ない理由」(通則法23条2項3号)が認められる。 ウなお,本件は平成22年遺産分割協議の結果,税額が減少することになったものであるが,上記ア,イのとおり平成6年遺産分割協議を解消することにつきやむを得ない理由(通則法23条2項3号)があり,それに基づいて直ちに平成22年遺産分割協議が成立したのであるから,このように第2次遺産分割協議の成立が解除に伴う一回的なやむを得ない理由による是正であり,かかる是正を認めても,納税者間の公平を害し,申告制度の趣旨・構造及び租税法上の信義則に反するおそれがない特段の事情のある場合においては,通則法23条2項3号のやむを得ない理由があり,平成22年遺産分割協議の内容に従って更正をなし得ると解すべきである(東京地方裁判所平成21年2月27日判決・判例タイムズ1355号123頁参照)。 仮に,平成6年遺産分割協議の解除と平成22年遺産分割協議の成立が 一連のものでないとしても,上記イ(イ)の事情からすれば,平成22年の再分割協議そ 1355号123頁参照)。 仮に,平成6年遺産分割協議の解除と平成22年遺産分割協議の成立が 一連のものでないとしても,上記イ(イ)の事情からすれば,平成22年の再分割協議そのものが,通則法23条2項3号の「やむを得ない理由」に該当する。 エ以上より,本件各更正請求は通則法23条2項3号に該当する。 (被告の主張)ア平成6年遺産分割協議を法定解除することはできないこと共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に,相続人の一人が他の相続人に対して遺産分割協議において負担した債務を履行しないときであっても,他の相続人は民法541条によってその遺産分割協議を解除することはできない。 イ平成6年遺産分割協議が解除されても,原告らの相続税額は減額しないこと平成6年遺産分割協議が法定解除ないし合意解除されても,遺産は未分割状態になり,原告らは法定相続分である3分の1ずつの割合で被相続人の遺産を共有することとなり,その結果,原告らが納付すべき相続税額は増額する。したがって,通則法23条2項により準用される同条1項1号にいう「当該申告書の提出により納付すべき税額・・・が過大であるとき」に該当しないから,原告らは更正の請求をすることができない。 ウ平成22年遺産分割協議により原告らが遺産を取得しなくなったことは,通則法施行令6条1項2号に当たらないこと本件で原告らが被相続人の遺産を取得しないことになったのは,平成6年遺産分割協議を解除したからではなく,これに続いて平成22年遺産分割協議をしたからであり,かかる場合には,通則法施行令6条1項2号に規定する「契約の・・・解除」には該当せず,また,平成22年遺産分割協議は通則法施行令6条1項に定めるほかの事 いて平成22年遺産分割協議をしたからであり,かかる場合には,通則法施行令6条1項2号に規定する「契約の・・・解除」には該当せず,また,平成22年遺産分割協議は通則法施行令6条1項に定めるほかの事由にもあたらない。 なお,原告らは,東京地方裁判所平成21年2月27日判決の判示を引 用した上で,平成6年遺産分割協議を解除し,平成22年遺産分割を成立させたことが,やむを得ない一回的な是正であると認められる場合には,通則法23条2項3号に該当するやむを得ない理由があり,平成22年遺産分割協議の内容に従って減額更正をなし得ると解すべきと主張するが,上記判決は,原始的事由である錯誤無効が問題とされ,通則法23条1項1号に基づく更正の請求を認めた事案であるし,錯誤無効の主張ができないことを原則としつつ,更正請求期間内に課税庁の指摘等を受ける前に自ら誤信に気付いて更正の請求をした等の厳格な要件の下に例外を認めたものであるから,同判決をもって原告らが主張するところの規範が成り立ち得ないことは明らかである。 エ平成6年遺産分割協議の解除と平成22年遺産分割協議を一個の法律行為と捉えたとしても,本件では更正すべき理由がないこと平成6年遺産分割協議の合意解除が成立したか否かは,平成22年遺産分割協議がされた経緯等を踏まえて実質的に判断しなければならないところ,平成22年遺産分割協議は遺産の再分割の名の下に原告らが連帯納付義務を免れる為にBに対する債権を放棄したに過ぎず,平成6年遺産分割協議の合意解除が成立したということはできず,通則法23条2項各号のいずれにも該当しない。 ⑵ 相続税法32条1項1号該当性(争点2)について(原告らの主張)相続税法32条1項1号は,相続税の申告期限までに遺産 できず,通則法23条2項各号のいずれにも該当しない。 ⑵ 相続税法32条1項1号該当性(争点2)について(原告らの主張)相続税法32条1項1号は,相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立するとは限らず,時として長期に及ぶ場合もあることから通則法の更正の請求期限を延長して遺産分割が成立してから4か月以内であれば更正の請求を可能にしたものである。かかる趣旨に鑑みれば,同号が更正請求のなし得る要件として求めているのは,① 相続税の申告書を提出した者または決定を受けた者であること,② その後の遺産分割協議の成立により取得した財産 の価額に変更が生じたことと解すべきである。そうすると,本件も平成6年遺産分割協議が解除された結果,未分割状況となり,その後,平成22年遺産分割協議により再度遺産分割をしたことにより,課税価格が異なることとなったのであるから,同号により更正の請求ができると解すべきである。 なお,被告は,同号の適用を受けるためには遺産が未分割状況での申告が必要であると主張するが,被告の主張は殊更要件を加重するものであり,同条の上記趣旨に適合しない。 (被告の主張)相続税法32条1項1号による更正の請求が認められるためには,未分割の遺産につき,いったん同法55条の規定による法定相続分の割合に従って課税価格が計算された申告が行われている必要があるところ,原告らは,平成6年遺産分割協議の内容に基づく本件申告を行っているのであるから,平成22年遺産分割協議をもって同法32条1項1号の更正の請求を認める余地はない。 第3 争点に対する判断 1 通則法23条2項3号該当性(争点1)について⑴ア原告らは,Bが原告らに対する本件各代償債務を履行しないことから,債務不履行を原因と を認める余地はない。 第3 争点に対する判断 1 通則法23条2項3号該当性(争点1)について⑴ア原告らは,Bが原告らに対する本件各代償債務を履行しないことから,債務不履行を原因として平成6年遺産分割協議を法定解除した旨主張するため,平成6年遺産分割協議が「解除権の行使によって解除され」たものといえるか(通則法施行令6条1項2号),以下検討する。 イ前記前提事実⑸のとおり,原告らは,平成22年9月1日,Bに対し,それぞれ債務不履行に基づき平成6年遺産分割協議を解除する旨の「解除権行使の通知書」と題する書面を送付し,同書面は,同月2日,それぞれBに到達している。しかしながら,共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に,相続人の一人が他の相続人に対して当該協議において負担した債務を履行しないときであっても,他の相続人は民法541条によ って当該遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当であるから(最高裁判所昭和59年(オ)第717号平成元年2月9日第一小法廷判決・民集43巻2号1頁参照),本件においても,原告らが債務不履行を原因として民法541条に基づき平成6年遺産分割協議を解除することはできないというべきである。 ウこれに対し,原告らは,代償債務は遺産分割協議によって発生するその他の債務と異なること,本件では原告らとBのほかに相続人がいないため,法定解除を認めても相続人間の法的安定性に不当な影響を与えないことを主張する。 しかしながら,遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し,その後は当該協議において債務を負担した相続人とそれに対応する債権を取得した相続人間の債権債務関係に係る履行問題が残されるのみと解すべきであるから(上記イの最高裁判例参照),当該遺産に属す 終了し,その後は当該協議において債務を負担した相続人とそれに対応する債権を取得した相続人間の債権債務関係に係る履行問題が残されるのみと解すべきであるから(上記イの最高裁判例参照),当該遺産に属する財産の引渡等の不履行があっても,協議全体を民法541条によって解除することはできず,当該相続人間でのみ解決すべきものというべきところ,このことは,本件のように代償分割の場合における代償債務の場合と,現物分割の場合における財産の引渡債務や,遺産に属さない債務(たとえば,ある相続人が法定相続分と異なる割合で遺産の分割を受けた際にその条件とされた母の面倒をみるべき債務等)の場合とで別異に解する理由はない。また,相続人全員が当事者となる場合であっても,遺産分割協議は共有物の分割協議と異なり,多種多様の財産の集合体からなる遺産の分割を行うものであるため,遺産分割協議の法定解除が認められると,遺産分割の繰り返しを余儀なくされ,その結果,法律関係も複雑になり,法的安全性を害することになるのであるから,遺産分割協議の法定解除は許されないと解すべきである。 エしたがって,Bによる本件各代償債務の債務不履行を原因として平成6 年遺産分割協議を解除することは許されないため,平成6年遺産分割協議が「解除権の行使によって解除され」た(通則法施行令6条1項2号)ということはできない。 ⑵ア原告らは,平成6年遺産分割協議の法定解除が認められないとしても,平成22年遺産分割協議を締結したことによって平成6年遺産分割協議は合意解除された旨主張するため,平成6年遺産分割協議が「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」たものといえるか(通則法施行令6条1項2号),以下検討する。 イ(ア) 遺産分割協議の法定解除が認められない 平成6年遺産分割協議が「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」たものといえるか(通則法施行令6条1項2号),以下検討する。 イ(ア) 遺産分割協議の法定解除が認められないことは上記⑴のとおりであるが,これとは異なり,共同相続人の全員が,既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上,改めて遺産分割協議をすることは,法律上,当然には妨げられるものではない(最高裁判所昭和63年(オ)第115号平成2年9月27日第一小法廷判決・民集44巻6号995頁参照)。本件では,原告らが,平成22年9月1日にBに対し,債務不履行に基づき平成6年遺産分割協議を解除する旨の「解除権行使の通知書」と題する書面を送付した上で,原告らとBとの間で,同月9日付けで,平成6年遺産分割協議がBの債務不履行を理由に解除されたことを確認するとともに,再度の遺産分割協議(平成22年遺産分割協議)を行っている(前記前提事実⑸及び⑹)。これらからすると,平成6年遺産分割協議について原告らとBとの間で明示的な解除の合意があったとは認められないものの,上記のとおり,原告ら及びBは平成6年遺産分割協議が解除されたことを確認し,それを前提として平成22年遺産分割協議をしているのであるから,少なくとも原告らとBとの間には平成6年遺産分割協議を解除することにつき黙示的な合意がされたものと認めるのが相当である。したがって,平成6年遺産分割協議は「解除され」た(通則法施行令6条1項2号)というべきである。 (イ) 被告は,平成22年遺産分割協議は原告らが連帯納付義務を免れるために,遺産の再分割の名の下にBに対する各代償債権を放棄したにすぎず,平成6年遺産分割協議の合意解除が成立したということはできない旨主張する。 この点, 産分割協議は原告らが連帯納付義務を免れるために,遺産の再分割の名の下にBに対する各代償債権を放棄したにすぎず,平成6年遺産分割協議の合意解除が成立したということはできない旨主張する。 この点,前記前提事実⑶ないし⑸のとおり,本件ゴルフセンターが売却されたものの,原告らへの本件各代償債務の支払はなかったこと,その後,大阪国税局から原告らに対しBの相続税に係る連帯納付義務の履行を求める書面が送付され,原告らは,大阪国税局長に対し,Bの相続税に係る連帯納付義務につき寛大な処置を求める嘆願書を複数回提出していること,原告らがBに対して送付した「解除権行使の通知書」には,Bが原告らに対して本件各代償債務を履行していないにもかかわらず,原告らがBの相続税の連帯納付義務まで課されることになったことを理由として平成6年遺産分割協議を解除する旨が記載されていることに照らせば,原告らが平成6年遺産分割協議の結果に基づく連帯納付義務を免れることを企図していたことは明らかであるが,原告ら及びBは,かかる原告らの連帯納付義務を回避するために,平成6年遺産分割協議を解消して,新たに遺産分割協議をやり直すこととしたものと認めるのが相当である。したがって,原告らが再度の遺産分割協議の名の下に原告らのBに対する債権を放棄したにすぎず,平成6年遺産分割協議の合意解除は成立していないとする被告の主張は採り得ない。 ウ(ア) そこで,本件の平成6年遺産分割協議の合意解除につき「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情」(通則法施行令6条1項2号)が認められるかにつき検討するに,上記「やむを得ない事情」とは,法定の解除事由がある場合,事情の変更により契約内容に拘束力を認めるのが不当な場合,その他これに類する客観的な理由のある場合をいうものと解すべきところ,原告ら するに,上記「やむを得ない事情」とは,法定の解除事由がある場合,事情の変更により契約内容に拘束力を認めるのが不当な場合,その他これに類する客観的な理由のある場合をいうものと解すべきところ,原告らが平成6年遺産分割協議を解消し,平成22年 遺産分割協議を行った目的は,平成6年遺産分割協議の結果に基づく連帯納付義務を回避するためであったことは上記イ(イ)のとおりであり,原告らもこれを争わない。 そうであるところ,平成6年遺産分割協議によってBが原告らに対して負った本件各代償債務につき,原告らとBとの間では,Bが平成6年遺産分割協議によって相続した本件ゴルフセンターの売却代金をもってその弁済に充てることを予定しており,平成6年遺産分割協議でもその旨合意されていたのに対し(前記前提事実⑵ア,甲6),その後,なかなか本件ゴルフセンターが売却できず,ようやく平成16年になって売却できたものの,大幅な地価の下落により平成6年当時想定していた価値の約半値での売却となったため,同売却代金はBの金融機関に対する債務の返済やBの相続税の支払のために費消され,原告らは本件各代償債務の履行を受けることができなかったこと(前記前提事実⑶,甲6)の各事情が認められ,かかる本件ゴルフセンターの売却等の事情は平成6年遺産分割協議の成立後に生じた事情にあたるものといえる。 しかしながら,不動産の価格は経済事情の変動や不動産市場の状況等により変動し得るものであるから,平成6年遺産分割協議の当時も,本件ゴルフセンターの価格が変動し得ることは認識できたというべきであるし,約1万平方メートルに及ぶ土地とその上に存する約500平方メートル弱の床面積を有する店舗・ゴルフ練習場としての建物(いずれも平成16年売却時の売買契約書添付の「不動産の表示」に記載 うべきであるし,約1万平方メートルに及ぶ土地とその上に存する約500平方メートル弱の床面積を有する店舗・ゴルフ練習場としての建物(いずれも平成16年売却時の売買契約書添付の「不動産の表示」に記載された登記簿面積による。乙3の1)からなり,平成16年当時は10億円の価値を有すると想定されていた本件ゴルフセンターの規模等に照らすと,これが速やかに売却できるかどうかも多分に不確かなものであったと考えられることに照らせば,遺産分割協議をするにあたってもこれら諸事情を念頭において分割の内容や方法,時期を決めることも十分可能であ ったといえる。また,平成6年遺産分割協議において,本件各代償債務の支払時期につき,本件ゴルフセンターの売却時か本件相続に係る相続税の納付時のいずれか早く到来した時にBが原告らに対し一括で支払う旨合意されており,原告らは,本件相続に係る相続税の納付期が到来すれば,本件ゴルフセンターが売却されていなくてもBに対して本件各代償債務の履行を求めることが可能であった(前記前提事実⑵ア)。これらからすれば,平成6年遺産分割協議から約16年が経過した後に,Bからの本件各代償債務の履行が望めないとして,平成6年遺産分割協議に基づく連帯納付義務を免れるために,平成6年遺産分割協議を合意解除することは,上記通則法施行令6条1項2号にいう「やむを得ない事情」には該当しないというべきである。 (イ) なお,原告らは,Bに対して本件各代償債務の履行に優先させてB自身の相続税を納付することを容認していたこと等から,原告らに対して連帯納付義務を追及することは,相続により受けた利益の限度でのみ連帯納付義務を負担することを定めた相続税法34条1項に違反し,かかる違法な連帯納付義務の追及を回避するために行われた平成6年遺産分割協 帯納付義務を追及することは,相続により受けた利益の限度でのみ連帯納付義務を負担することを定めた相続税法34条1項に違反し,かかる違法な連帯納付義務の追及を回避するために行われた平成6年遺産分割協議の合意解除は何ら不当な租税回避行為ではなく,「やむを得ない理由」(通則法23条2項3号)が認められると主張する。 しかしながら,相続により取得した財産の価額は取得時すなわち相続開始時の時価により評価され,これを前提として各相続人の相続税の納税義務も確定されること(相続税法22条)や相続人間の公平の見地に照らすと,連帯納付義務の責任の限度である「相続・・・により受けた利益の価額」も相続開始時を基準として算定されるべきものと解するのが相当であるところ,原告らは平成6年遺産分割協議によってBに対する各5000万円の代償債権を取得している以上,その後,原告ら主張の事情によってBから本件各代償債務の履行を受けることが困難になっ たとしても,原告らには「相続・・・により受けた利益の価額」が存しないということはできない。また,原告ら主張のとおり,Bが本件各代償債務の履行に優先して自身の相続税の納付を行っていたという事情があったとしても,納付書に記載された納税名義人でない相続税の連帯納付義務者が自らの責任を履行したというためには,連帯納付義務者が納税のため自らの原資を提供し,かつ,自らの連帯納付義務を履行することを国税の収納を行う税務署の職員に明らかにしていることを要するものと解すべきところ,原告ら主張によれば,Bが自身の名義で自身の相続税を納付していたのであるから,これをもって原告らによる連帯納付義務の履行と認めることはできない。 以上より,上記原告らの主張には理由がない。 エしたがって,平成6年遺産分割協議が「当該契約の成立後生 いたのであるから,これをもって原告らによる連帯納付義務の履行と認めることはできない。 以上より,上記原告らの主張には理由がない。 エしたがって,平成6年遺産分割協議が「当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によって解除され」た(通則法施行令6条1項2号)ということはできない。 ⑶ 以上によれば,原告ら及びBが平成6年遺産分割協議を解除したことについて,通則法施行令6条1項2号に該当するものとは認められず,その他,通則法施行令6条1項各号に該当するものと認めるに足りる事情はないから,当初の遺産分割協議を解除し,再度遺産分割協議をした場合に,再度の遺産分割協議の内容に基づいて通則法23条2項3号による更正の請求ができるか否かにつき判断するまでもなく,同号に該当することを理由とする原告らの請求には理由がない。 なお,原告らは,平成22年遺産分割協議そのものが通則法23条2項3号所定の「やむを得ない理由」に該当する旨主張するが,平成22年遺産分割協議が通則法施行令6条1項各号に該当すると解すべきような事情は認められないから原告らの主張は採り得ない。 2 相続税法32条1項1号該当性(争点2)について ⑴ 相続税法32条1項1号は,同法55条の規定により分割されていない財産について民法の規定による相続分の割合に従って課税価格が計算されていた場合に,その後,遺産分割が行われた結果,当初計算されていた課税価格が共同相続人の課税価格と異なることとなり,当初の申告に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは更正の請求ができる旨定めた規定であるところ,本件において,原告らは平成6年遺産分割協議の内容に基づいて本件申告を行っているのであり(前記前提事実⑵イ),民法の規定による相続分の割合に従った相続税の申告をしてい きる旨定めた規定であるところ,本件において,原告らは平成6年遺産分割協議の内容に基づいて本件申告を行っているのであり(前記前提事実⑵イ),民法の規定による相続分の割合に従った相続税の申告をしていないのであるから,相続税法32条1項1号を適用する前提要件を欠き,原告らの同号に該当することを理由とする請求には理由がない。 ⑵ 原告らは,相続税法32条の趣旨に鑑みれば,同条1項1号が要求している要件は,① 相続税の申告書を提出した者または決定を受けた者であること,② その後の遺産分割協議の成立により取得した財産の価額に変更が生じたことの2点である旨主張するが,かかる解釈は同号の文言と明らかに乖離しており採り得ない。 3 結論よって,本件各通知処分は適法であり,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官田中健治 裁判官三 宅 知三郎 裁判官木村朱子

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