平成19(あ)364 殺人被告事件

裁判年月日・裁判所
平成19年11月5日 最高裁判所第三小法廷 決定 棄却 東京高等裁判所
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判決文本文1,160 文字)

- 1 -主文本件上告を棄却する。 当審における未決勾留日数中160日を本刑に算入する。 理由 弁護人吉岡毅の上告趣意は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。 よって,同法414条,386条1項3号,刑法21条により,裁判官田原睦夫の補足意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 裁判官田原睦夫の補足意見は,次のとおりである。 私は,本件は法廷意見どおり上告棄却すべきものと考えるが,弁護人の所論にかんがみ若干の補足意見を述べる。 まず,正当防衛の主張の点であるが,所論のとおり,被告人の,Aに対する胸部刺突行為から,Aの「もういい」との発言により我に返ってAに対する攻撃を止めるまでの行為は,ごく短時間のうちに行われた一連のものであり,また,記録をみても,その間,Aが被告人に対する攻撃行為を中止した状態が存したことを認めるに足りる証拠は存しない。しかし,被告人の本件一連の行為を全体としてとらえれば,被告人の行為は正当防衛として許容される範囲を超えるものと評さざるを得ないから,結論において,過剰防衛の成立を認めた原判決の判断は是認することができる。 次に,量刑不当の主張の点であるが,原判決挙示の情状事実のほか,被告人とAとの間には,被告人が,荒れた生活を続けているAの立ち直りを手伝ってやろうとする単なる友人関係を超えた親密な関係が存したことが認められること,本件犯行- 2 -に先立ち,Aは被告人に対していわれのない激しい暴行を加えたのに引き続いて本件包丁を被告人に突きつけ,これに端を発して被告人が本件犯行に至ったものであり,被告人において,Aが包丁で被告人を害しかねない態度に出ることは全く予測できない事柄であったこと等,被告人に有利な諸事実に 包丁を被告人に突きつけ,これに端を発して被告人が本件犯行に至ったものであり,被告人において,Aが包丁で被告人を害しかねない態度に出ることは全く予測できない事柄であったこと等,被告人に有利な諸事実にかんがみると,懲役4年に処した原判決の量刑は,いささか重きにすぎるのではないかとも考えられる。しかしながら,防衛のためにしたものとはいえ,相当性を超えて,確定的殺意に基づきAの頸部を上記包丁の刃で多数回にわたり刺切するなどしたという本件行為態様及びその結果に照らすと,当然に執行猶予を付すべき事案であるとまで評することはできないのであって,原判決の刑の量定につき,刑訴法411条に定める,甚だしく不当であってこれを破棄しなければ著しく正義に反する,とまではいうことができない。 (裁判長裁判官田原睦夫裁判官藤田宙靖裁判官堀籠幸男裁判官那須弘平裁判官近藤崇晴)

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