令和6年6月13日東京地方裁判所刑事第4部宣告令和6年特第276号、第480号入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(以下「官製談合防止法」という。)違反被告事件 主文 被告人を懲役1年6月に処する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)第1(令和6年2月14日付け起訴状に係る事実)被告人は、千代田区議会事務局長を務めていたものであるが、同区議会議員を務めていたAと共謀の上、 1 千代田区が令和2年5月20日に執行予定であった区立B小学校・幼稚園改築空調設備工事の制限付き一般競争入札に関し、⑴ 同区政策経営部契約課契約係長(当時)として同区が発注する公共工事の入札及び契約等に関する事務を処理する職務に従事していたCと共謀の上、同人において前記職務に従事するものとして適正に入札等に関する職務を行う義務があるのにその職務に反し、Aが、同年4月3日、東京都千代田区(住所省略)A方において、同入札に参加することを予定していたD株式会社の取締役Eに対し、Cから被告人を介して入手していた同入札の最低制限価格を推知させる金額等が記載された最低制限価格算出表を、浜松市(住所省略)前記D本社東館(当時)にファクシミリ送信して前記最低制限価格を推知させる情報を教示し、⑵ 千代田区政策経営部契約課長(当時)として同区が発注する公共工事の入札及び契約等に関する事務を指揮監督する職務に従事していたFと共謀の上、同人において前記職務に従事するものとして適正に入札等に関する職務 を行う義務があるのにその職務に反し、Aが、同月10日、前記A方又はその周辺において、同 職務に従事していたFと共謀の上、同人において前記職務に従事するものとして適正に入札等に関する職務 を行う義務があるのにその職務に反し、Aが、同月10日、前記A方又はその周辺において、同入札に参加していた前記DのEに対し、Fから被告人を介して入手していた同入札の参加業者数等の情報を記載した電子メールを送信して同参加業者数等の情報を教示し、 2 千代田区が同年5月20日に執行予定であった区立B小学校・幼稚園改築給排水衛生設備工事の制限付き一般競争入札に関し、前記職務に従事していたFと共謀の上、同人において前記職務に従事するものとして適正に入札等に関する職務を行う義務があるのにその職務に反し、Aが、同年4月17日、東京都内又はその周辺において、同入札に参加していたG株式会社H支店営業部営業課長Iに対し、電話で、Fから被告人を介して入手していた同入札の参加業者数等の情報を教示し、もって入札等に関する秘密を教示することにより、入札等の公正を害すべき行為を行った。 第2(令和6年3月6日付け追起訴状に係る事実)被告人は、千代田区議会事務局長を務めていたものであるが、同区議会議員を務めていたA、同区政策経営部契約課長(当時)として同区が発注する公共工事の入札及び契約等に関する事務を指揮監督する職務に従事していたFらと共謀の上、別表(添付省略)記載のとおり、令和2年6月23日に執行予定であった区立J児童館給排水設備他改修工事の総合評価方式による制限付き一般競争入札ほか2件の入札に関し、Fらにおいて前記職務に従事するものとして適正に入札等に関する職務を行う義務があるのにその職務に反し、Aが、同月12日頃から同年7月20日頃までの間、3回にわたり、東京都内又はその周辺において、K会会長として同会員企業間の千代田区発注の管工 正に入札等に関する職務を行う義務があるのにその職務に反し、Aが、同月12日頃から同年7月20日頃までの間、3回にわたり、東京都内又はその周辺において、K会会長として同会員企業間の千代田区発注の管工事案件に関する受注調整等を行っていたD株式会社の取締役Eに対し、Fらから被告人を介して入手していた各入札の参加業者名等の情報を教示し、もって入札等に関する秘密を教示することにより、入札等の公正を害すべき行為を行った。 (量刑の理由)当時千代田区議会事務局長だった被告人は、同区の区議や部下などの共犯者らと共謀して、千代田区内の小学校、幼稚園や児童館等の合計5つの工事の一般入札に関し、最低制限価格を推知させる情報や参加業者数、参加業者名等の情報など、本来厳格に管理されるべき秘密情報を業者側に漏示している。本件犯行は、入札の公正を害し、入札行政に対する区民の信頼を損なうものといえ、実際、秘密情報が漏示されたことで入札の公正を害する結果も生じさせている。 被告人は、上司からの指示・命令や共犯者である区議からの依頼があって、断りづらい状況にはあったとはいえ、自己保身を優先する気持ちもある中で、本件犯行に加担しており、その経緯・動機に大きく酌量すべき事情はない。被告人が、自身の部下であった者も巻き込む形で秘密情報を得て、共犯者の区議に提供するなど、本件犯行において秘密情報の入手、提供の軸となる重要な役割を果たした点は厳しい非難に値する。 他方、被告人は、退職後に、別の区で同種事件が発覚したのを契機に、警察に情報提供することを決意し、本件の発覚と解明の糸口を与えた上、自己の犯行を認め、反省、謝罪の態度を示している。また、被告人の妻も被告人のために出廷しており、被告人に前科前歴はない。 そこで、主文の刑に処し、その刑の執行を猶予して社会内 解明の糸口を与えた上、自己の犯行を認め、反省、謝罪の態度を示している。また、被告人の妻も被告人のために出廷しており、被告人に前科前歴はない。 そこで、主文の刑に処し、その刑の執行を猶予して社会内で更生する機会を与えるのが相当と判断した。 (求刑懲役1年6月)令和6年6月13日東京地方裁判所刑事第4部 裁判官中村光一
▼ クリックして全文を表示