平成27(ワ)9476 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年10月29日 東京地方裁判所
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判決文本文11,545 文字)

平成27年10月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第9476号損害賠償請求事件口頭弁論の終結の日平成27年9月11日判決相模原市<以下略>原告 A東京都日野市<以下略>原告補助参加人株式会社サンワード上記2名訴訟代理人弁護士笠原克美東京都武蔵村山市<以下略>被告キイワ産業株式会社(以下「被告キイワ」という。)熊本市<以下略>被告株式会社サンワード(以下「被告サンワード」という。)被告ら訴訟代理人弁護士下山和也同岡井将洋同福井春菜 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用のうち,補助参加によって生じた費用は原告補助参加人の負担とし,その余は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告キイワは,原告に対し,205万円及びこれに対する平成27年4月23日(被告キイワに対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割 合による金員を(下記2記載の金員の限度で被告サンワードと連帯して)支払え。 2 被告サンワードは,原告に対し,被告キイワと連帯して,205万円及びこれに対する平成27年4月24日(被告サンワードに対する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,被告らに対し,①被告キイワが,被告サンワードから発注を受けて別紙商標目録1,2記載の各登録商標(以下,順次「本件商標1」,「本件商標2」といい,これらを併せて「本件各商標」という 本件は,原告が,被告らに対し,①被告キイワが,被告サンワードから発注を受けて別紙商標目録1,2記載の各登録商標(以下,順次「本件商標1」,「本件商標2」といい,これらを併せて「本件各商標」という。また,本件各商標に係る商標権を「本件各商標権」という。)を付した洗剤を製造し,被告サンワードに販売する行為,及び②被告サンワードが,被告キイワに発注して製造させた本件各商標を付した洗剤を代理店や一般消費者に販売する行為が,いずれも原告の本件各商標権を侵害すると主張して,民法709条に基づき,損害賠償金205万円及びこれに対する訴状送達の日の各翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げた事実以外は,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告補助参加人(昭和49年4月10日設立,資本金4000万円。以下「参加人」という。)は,家庭用,業務用洗剤の製造及び販売等を目的とする株式会社であり,その代表取締役は,B(以下「B」という。)である。 原告は,Bの長女である。(弁論の全趣旨)イ被告キイワ(昭和62年11月30日設立,資本金1300万円)は,合成洗剤及び繊維仕上剤の製造販売等を目的とする株式会社であり,被告サンワード(平成19年4月3日設立,資本金1000万円)は,洗剤の製造・販売及びその輸出入業等を目的とする株式会社である。(弁論の全趣旨) ⑵ 参加人は,平成19年8月31日当時,本件各商標権を有していた。 ⑶ 参加人及び被告サンワードは,平成19年8月31日,譲渡実行日を同年9月1日として,本件各商標権を含む参加人の営業全部を被告サンワードに譲渡する旨の営業譲渡契約(以下「本件営業譲渡契約」といい,本件営業譲渡契約に係る営業譲渡を「本 9年8月31日,譲渡実行日を同年9月1日として,本件各商標権を含む参加人の営業全部を被告サンワードに譲渡する旨の営業譲渡契約(以下「本件営業譲渡契約」といい,本件営業譲渡契約に係る営業譲渡を「本件営業譲渡」という。)を締結した。(なお,原告及び参加人の主張には,本件営業譲渡契約の成立を争うのか不明確な部分もあるが(例えば,原告準備書面(2)の4頁),いずれにしても上記成立が認められることは後記判断記載のとおりである。)(4) 被告サンワードは,本件営業譲渡後,本件各商標権の移転登録を経ないまま,本件各商標を付したドライクリーニング溶剤配合の洗剤(以下「本件洗剤」という。)の製造を被告キイワに発注し,被告キイワから納品された本件洗剤を自己の代理店及び一般消費者に販売している。他方,被告キイワは,被告サンワードの発注に応じて本件洗剤を製造し,被告サンワードに卸販売している。 (5) 原告は,平成24年2月15日,参加人から,本件各商標権を譲り受け,その旨の各登録(同日受付,受付番号002172及び002173。以下「本件各移転登録」という。)をした。(甲1の1・2,弁論の全趣旨)(6) 被告サンワードは,平成24年4月27日,原告及び参加人を被告として,原告に対し,真正な登録名義の回復請求権に基づく本件各商標権の移転登録手続等を,また,参加人に対し,本件営業譲渡契約に基づく本件各商標権とは別の3件の商標権の移転登録手続等を,それぞれ求める訴えを熊本地方裁判所に提起した(同裁判所平成24年(ワ)第430号。以下「別件訴訟」という。)。同裁判所は,平成25年10月9日,原告に対し,本件各商標権の被告サンワードへの移転登録手続等を,また,参加人に対し,本件各商標権以外の3件の商標権の被告サンワードへの移転登録手続を,それぞれ命ず 同裁判所は,平成25年10月9日,原告に対し,本件各商標権の被告サンワードへの移転登録手続等を,また,参加人に対し,本件各商標権以外の3件の商標権の被告サンワードへの移転登録手続を,それぞれ命ずる判決(以下「別件第一審判決」という。)を言い渡した。 原告及び参加人は,同日,別件第一審判決を不服として福岡高等裁判所に控訴し,被告サンワードも附帯控訴したところ(同裁判所平成25年(ネ)第998号,平成26年(ネ)第293号),同裁判所は,平成26年11月5日,別件第一審判決のうち,原告に本件各商標権の移転登録手続等を命じた部分を取り消し,被告サンワードの原告に対する請求を棄却する旨の判決(以下「別件控訴審判決」という。)を言い渡した。なお,別件控訴審判決は,本件営業譲渡契約が有効に存在していることを前提としつつ,原告に対する請求について,商標権は移転登録を経なければ権利移転の効果が生じないこと等を理由として,これを棄却したものである。 被告サンワードは,別件控訴審判決を不服として最高裁判所に上告受理申立てをしたが(同裁判所平成27年(受)第273号),同裁判所は,平成27年3月26日,被告サンワードの上告受理申立てを受理しない旨の決定をし,別件控訴審判決が確定した。 (以上,乙2~6)⑺ 被告サンワードは,平成25年2月18日,特許庁に対し,本件各商標ほか1件の登録商標について,商標法50条1項に基づく各商標登録の取消審判を請求し,特許庁は,同年12月27日,本件各商標ほか1件の各商標登録をいずれも取り消す旨の各審決をした。原告は本件各商標の登録取消審決をいずれも不服とし,また,参加人は本件各商標以外の商標1件の登録取消審決を不服として,それぞれ,知的財産高等裁判所に対し,審決取消しの各訴えを提起し(同裁判所平成26年 は本件各商標の登録取消審決をいずれも不服とし,また,参加人は本件各商標以外の商標1件の登録取消審決を不服として,それぞれ,知的財産高等裁判所に対し,審決取消しの各訴えを提起し(同裁判所平成26年(行ケ)第10036号,同第10037号,同第10038号),同裁判所は,平成26年7月17日,上記各審決をいずれも取り消す旨の各判決(以下「別件各知財高裁判決」という。)を言い渡した。 被告サンワードは,別件各知財高裁判決をいずれも不服として最高裁判所に上告したが(同裁判所平成26年(行ヒ)第434号,同第435号, 同第436号),同裁判所は,被告サンワードの上告受理申立てをいずれも受理しない旨の決定をし,別件各知財高裁判決がいずれも確定した。 (以上,乙4~6) 2 争点(1) 本件請求が権利濫用として許されないか否か(争点1)(2) 損害の有無及び額(争点2) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(本件請求が権利濫用として許されないか否か)について[被告らの主張]ア被告サンワードは,平成19年8月31日,参加人との間で,本件営業譲渡契約を締結し,一部の金融機関に対する負債を除く本件譲渡対象事業全てを譲り受け,それまで参加人が行ってきた本件洗剤の販売等の事業を引き継いで,現在まで「ハイ・ベック」等と名のつく商品の販売を行ってきた。本件各商標権は,本件営業譲渡により参加人から被告サンワードに譲渡されたが,本件営業譲渡後も本件各商標権の名義移転登録がされないままとなっていた。ところが,Bは,平成23年2月頃から,本件営業譲渡契約により被告サンワードに譲渡した本件洗剤の販売等の事業を,再び参加人において行いたい旨表明するようになり,本件営業譲渡契約が無効であるとか解除されたなどと主張するようになった。 ら,本件営業譲渡契約により被告サンワードに譲渡した本件洗剤の販売等の事業を,再び参加人において行いたい旨表明するようになり,本件営業譲渡契約が無効であるとか解除されたなどと主張するようになった。これに伴い,参加人及びBは,本件洗剤の販売等に関する事業の権利者が参加人であると主張し,被告サンワードの事業を妨害する行為を再三に渡り行うようになった。 なお,現在,これらの営業妨害行為に対しては,その差止め等を求める複数の訴訟が係属中である。 イこのような背景がある中,参加人は,平成24年2月15日,本件営業譲渡後も移転登録がされていなかった本件各商標権の名義をBの長女である原告に移転してその旨の本件各移転登録を行い,その結果,原告が本件 各商標権の権利者となった。原告は,何ら本件各商標権の使用目的がないにもかかわらず,参加人から対価なく本件各商標権を取得し,参加人及びBの意のままに本件各移転登録を行い,本件訴訟を提起している。すなわち,原告は,参加人及びBと一体となって,被告らが「トリートメントドライ」及び「ハイ・ベックドライ」という名称を付した商品を製造・販売できないよう妨害するための手段として,本件各商標権の移転登録が未了であることを奇貨としてその移転登録を受けた者に過ぎない。さらに,平成26年9月には,Bの長男であるCの名義で「ハイ・ベックS」等の商標も出願されている。 ウ上記ア,イの経緯,殊に,Bの子である原告やCによる本件各商標の移転登録申請及び類似商標出願の時期,その後の参加人による競業行為の開始,Bによる被告サンワードに対する執拗な営業妨害行為などに鑑みれば,本件訴えはBの被告らに対する営業妨害の一貫であることが明らかである。 したがって,形式的には原告が本件各商標権の権利者であるとしても,原告が被告ら ドに対する執拗な営業妨害行為などに鑑みれば,本件訴えはBの被告らに対する営業妨害の一貫であることが明らかである。 したがって,形式的には原告が本件各商標権の権利者であるとしても,原告が被告らに対して損害賠償を請求することは実質的に正当化されるものではなく,原告の請求が権利濫用であることは明らかである。 エなお,本件営業譲渡契約が有効に存続していることについては,別件第一審判決,別件控訴審判決及び別件各知財高裁判決の判決理由中において,いずれも認められている。したがって,本件営業譲渡契約の成立及び有効性はいずれも明らかである。 オまた,本件営業譲渡契約には解除事由がない。すなわち,被告サンワードが参加人との間で別途締結したコンサルタント業務契約(以下「本件コンサルタント契約」という。)は解除されたところ,別件第一審判決は,「仮に,原告及び被告会社が,平成23年12月,本件コンサルタント契約を合意解約したとしても,これをもって本件営業譲渡契約まで合意解約がされたと認めることはできない」と,また,別件控訴審判決は,「本件コンサ ルタント契約が解除されたとしても本件営業譲渡契約上の債務不履行にはならず,解除事由には当たらない」と,それぞれ判断している。原告及び参加人が主張している内容は,これらの各判決の判断に反し,いずれも失当である。 [原告及び参加人の主張]ア否認ないし争う。権利濫用の主張は,本件営業譲渡契約が有効に成立し存続していることが前提となっているところ,以下のとおり,本件営業譲渡契約は不成立ないし無効であるし,仮に有効であるとしても解除されている。 イすなわち,本件営業譲渡契約に係る契約書(以下「本件契約書」という。)には,参加人代表者(B)による法的に有効な記名・押印がされていない。 本件契約書は 仮に有効であるとしても解除されている。 イすなわち,本件営業譲渡契約に係る契約書(以下「本件契約書」という。)には,参加人代表者(B)による法的に有効な記名・押印がされていない。 本件契約書は,Bから参加人の印章及び記名印の管理を委託されていた被告サンワード代表者の母であるD(以下「D」という。)が,これらを勝手に使用して作成した偽造文書である。したがって,本件営業譲渡契約は不成立である。 仮に形式的に本件営業譲渡契約の成立が認められたとしても,参加人及び被告サンワードは,いずれも本件営業譲渡に係る株主総会での同意決議(本件契約書5条)を欠いている。したがって,本件営業譲渡契約は,会社法467条1項1号により無効である。 ウ本件営業譲渡契約は既に解除されている。 すなわち,本件営業譲渡契約により,参加人の積極財産のみならず,消極財産であるさわやか信用金庫及び三菱東京UFJ銀行に対する合計8307万3476円の支払債務(以下「本件負債」という。)も被告サンワードに承継されたから,本件営業譲渡後は,被告サンワードにおいて本件負債を返済する義務がある。なお,被告らは,本件負債を本件営業譲渡の対象としなかったと主張し,その根拠として,参加人作成に係る平成19年 9月25日付けの覚書(以下「本件覚書」という。)の存在を指摘するが,本件覚書は偽造文書である。 被告サンワードは,本件負債を返済する方法として,参加人との間で別途締結した本件コンサルタント契約に基づいて参加人に支払うべきコンサルタント業務報酬の名目で,本件負債の返済原資を参加人に送金し,参加人が,被告サンワードに代わって本件負債を返済していた。 ところが,被告サンワードは,平成23年12月21日付けで本件コンサルタント契約を解除し,以後はコンサルタント業務 原資を参加人に送金し,参加人が,被告サンワードに代わって本件負債を返済していた。 ところが,被告サンワードは,平成23年12月21日付けで本件コンサルタント契約を解除し,以後はコンサルタント業務報酬の支払を停止しており,これは,本件営業譲渡契約によって被告サンワードが承継した本件負債の返済義務の不履行に当たる。したがって,参加人は,被告サンワードの債務不履行を理由に本件営業譲渡契約を解除した。 (2) 争点2(損害の有無及び額)について[原告及び参加人の主張]本件商標1に係るトリートメントドライの年間販売実績は,被告サンワードの資料によれば,純売上数7032,純売上高1280万8752円,粗利益512万7516円である。また,本件商標2に係るハイベック・ドライの年間販売実績は,同じく,純売上数1572,純売上額333万2880円,粗利益185万6448円である。 したがって,本件各商標の通常使用料相当額は,平成24年3月7日から平成27年3月6日までの3年分の粗利益(トリートメントドライについては約1500万円,ハイベック・ドライについては約555万円)のそれぞれ約1割とみて,本件商標1につき150万円,本件商標2につき55万円の合計205万円となる。 [被告らの主張]争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に,当事者間に争いのない事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を併せれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件営業譲渡契約の締結に至る経緯(甲18の1,2,甲19の1,2,乙2,乙3,乙7の13,14)ア被告サンワード代表者の母であるDは,昭和63年から熊本市内において参加人の加盟店として営業活動をしていたが,平成9年3月から参加人の専務取締役に就任してその経営に携わり, 乙7の13,14)ア被告サンワード代表者の母であるDは,昭和63年から熊本市内において参加人の加盟店として営業活動をしていたが,平成9年3月から参加人の専務取締役に就任してその経営に携わり,経理や資金繰りを担当するようになった。参加人の代表取締役であるBは,同年ころから参加人の実印の管理をDに委ねていた。 イ参加人は,平成8年ころには既に債務超過の状態にあり,平成18年から19年ころにかけても同様に債務超過の状態にあったところ,平成18年2月にはBが2度目の脳梗塞を発症し,参加人の事業継続は困難となった。Bは,そのころ,参加人の事業についてDと協議し,新会社を設立して参加人の営業を同社に譲渡し,本件洗剤等に関する事業を再建することとした。 ウ上記イの協議に基づき,平成19年4月3日に被告サンワードが設立され,同年8月31日,参加人と被告サンワードとの間で本件営業譲渡契約が締結された。なお,本件営業譲渡について,契約締結日には契約書は作成されなかった。 (2) 本件契約書及び本件覚書の作成並びに本件コンサルタント契約の締結等(甲18の1,2,甲19の1,2,乙1の1,2,乙2,乙3,乙7の8~14)ア Dは,平成19年9月末ころ,Bに対し,本件営業譲渡についての契約書を取り交わすことを求め,被告サンワードの事務所において,本件契約書(乙1の1,2)が取り交わされた。また,同時期ころ,参加人及びB は,本件負債(さわやか信用金庫及び三菱東京UFJ銀行に対する合計8307万3476円の支払債務)について参加人が負担すること及び連帯保証人であるBが債権者と協議して責任を持って支払うことを約する旨の本件覚書(乙7の8)を作成した。 〔なお,原告及び参加人は,本件契約書及び本件覚書がいずれも偽造文書であると主張す こと及び連帯保証人であるBが債権者と協議して責任を持って支払うことを約する旨の本件覚書(乙7の8)を作成した。 〔なお,原告及び参加人は,本件契約書及び本件覚書がいずれも偽造文書であると主張する。しかしながら,Dは別件訴訟の証人尋問において,Bが本件契約書及び本件覚書に自ら押印した旨供述している(甲18の2)ところ,同供述に不自然な点は見当たらない上,①参加人がDに対し,本件営業譲渡契約の成立を前提に参加人と被告サンワードとの紛争解決の仲介を求める旨の手紙を送っていること(乙7の13)や②参加人が本件営業譲渡後も引き続き本件負債の返済を継続していたこと(甲7の4~6,甲8の3,4,甲19の2)など上記供述と符合する客観的事実にも鑑みると,本件契約書及び本件覚書はいずれも真正に作成されたものと認められる。この点,原告及び参加人は,本件営業譲渡から約1か月後に本件契約書及び本件覚書が作成されたのが不自然であるとも主張するが,Dの陳述書(甲18の1,乙7の14)及び別件訴訟における証人尋問調書(甲18の2)によれば,本件営業譲渡後に取引先金融機関から本件営業譲渡に係る契約書の提示を求められたため,本件契約書を作成することとし,これと併せて後日の紛争を避けるために本件覚書を作成することとしたというのであって,その作成経緯に不自然な点があるとはいえないから,原告及び参加人の主張を採用することはできない。〕イ参加人は,本件営業譲渡後の平成20年3月1日,参加人の本件負債の返済原資及びBの生活費等に充てる資金をねん出するため,被告サンワードとの間で,「参加人が被告サンワードと加盟店とのコミュニケーション等について助言,指導を行い,被告サンワードが参加人に報酬を支払う」旨の本件コンサルタント契約を締結し,同日付けのコンサルタント業務契約 間で,「参加人が被告サンワードと加盟店とのコミュニケーション等について助言,指導を行い,被告サンワードが参加人に報酬を支払う」旨の本件コンサルタント契約を締結し,同日付けのコンサルタント業務契約 書及びコンサルタント業務契約に関する覚書を取り交わした。本件コンサルタント契約の契約期間は平成20年4月1日から1年間であったが,平成21年3月1日及び平成22年3月1日にほぼ同様の契約書及び覚書が取り交わされた。なお,平成22年3月1日付けの覚書においては,原告が被告サンワードの業務に支障をきたす行為を一切してはならない旨が明記された(乙7の12の2の第3項)。 (3) 本件訴訟に至る経緯等(甲18の1,2,甲19の1,2,乙2,乙3,乙7の13,14)ア被告サンワードによる本件洗剤等の販売事業は,平成23年2月ころから回復の兆しがみられるようになった。参加人は,本件営業譲渡後,洗剤の販売等の事業を行っていなかったが,そのころ,本件洗剤等の販売事業を参加人において行いたい旨を被告サンワードに申し入れるなどした。 イ被告サンワードは,上記アのような事情を踏まえ,平成23年4月1日以降は本件コンサルタント契約と同趣旨の契約を締結せずに,従前のコンサルタント業務報酬に相当する送金を継続していたが,参加人と被告サンワードとの関係はさらに悪化し,修復できない状態となった。そのため,被告サンワードは,平成24年1月,参加人への送金を停止した。 ウ参加人は,平成24年2月15日,Bの長女である原告に本件各商標権を無償で譲り渡し,本件各移転登録を経由した。本件各移転登録は参加人及びBの意思によるものであり,原告は,本件各商標権を自ら使用する意思を有しておらず,また,参加人の事業にも一切関わっていない。 エ Bは,同月22日,被 移転登録を経由した。本件各移転登録は参加人及びBの意思によるものであり,原告は,本件各商標権を自ら使用する意思を有しておらず,また,参加人の事業にも一切関わっていない。 エ Bは,同月22日,被告サンワードに対し,本件商標権等の使用中止を求める通告文を送付した。また,参加人は,平成26年10月ころから「ハイ・ベック」という文字を含む名称の洗剤の販売等を開始した。 2 争点1(本件請求が権利濫用として許されないか否か)について (1) 前記第2,1の前提事実及び上記1の認定事実に加えて,Bが,別件訴訟の当事者尋問において,「原告に対して本件各商標を売買したわけではなく,名義を変えただけである,原告は参加人の仕事には携わっていないが,娘である原告から使用権を認めてもらえば参加人が本件各商標を使用することができる」旨を述べていること(甲19の2の21頁)も併せれば,①参加人は被告サンワードに本件各商標権を譲渡する旨の契約を締結したにもかかわらず,被告サンワードの営業が軌道に乗り始めるや,自ら本件各商標を使用した営業を再開したいと表明するに至ったこと,②参加人は,本件各商標の被告サンワードへの移転登録が未了であったことを奇貨として,Bの娘である原告に対し,無償で本件各商標権を譲渡し移転登録をしたこと,③本件各商標権の譲渡及び本件各移転登録は参加人及びBが主導したものであり,原告は参加人の営業に一切携わっておらず,本件商標権を使用する意思もないこと等が認められる(なお,原告が別件訴訟等の当事者となっていることやBの手紙(乙7の13)の記載等に照らすと,原告はこれらの各事情について十分知悉しているものと推認できる。)のであるから,これらの事情を総合すると,本件請求は,実質的には参加人及びBが主導する本件各商標権の行使に名を借り 記載等に照らすと,原告はこれらの各事情について十分知悉しているものと推認できる。)のであるから,これらの事情を総合すると,本件請求は,実質的には参加人及びBが主導する本件各商標権の行使に名を借りた不当な請求とみるほかなく,権利濫用として許されないというべきである。 (2) これに対し,原告及び参加人は,権利濫用が成立しない理由として,まず,本件営業譲渡契約の成立及び有効性を争うが,いずれも採用できない。 すなわち,まず,原告及び参加人は,本件契約書について,DがBから管理を委託された参加人の印章及び記名印を勝手に使用して作成した偽造文書である旨主張するが,上記1(2)アのとおり,Bが本件契約書に自ら押印したものと認められるし,仮に本件契約書が偽造されたものとしても,参加人は,本件営業譲渡契約を追認したのであるから(乙4~6),本件営業譲渡契約は契約時にさかのぼって成立したこととなる。 次に,原告及び参加人は,本件営業譲渡契約の当事者である参加人及び被告サンワードにおいて特別決議を経ていない旨主張するが,これをうかがわせる証拠は全くない。かえって,参加人及びBが,被告サンワードやDに対し,本件営業譲渡契約の有効性を認めたとしか解釈できない書面を送付していること(甲16の1,乙7の13),別件訴訟において,原告及び参加人が,本件営業譲渡契約についての特別決議の欠缺を理由とする無効主張をした形跡が見当たらないこと,他に本件営業譲渡契約の有効性を疑わせる事情が存しないこと等に鑑みると,本件営業譲渡契約は有効であると認められる。 (3) さらに,原告及び参加人は,権利濫用が成立しない理由として,本件営業譲渡契約が既に解除された旨主張するが,これも採用できない。 すなわち,前記1(2)アのとおり,参加人と被告サンワードの間で (3) さらに,原告及び参加人は,権利濫用が成立しない理由として,本件営業譲渡契約が既に解除された旨主張するが,これも採用できない。 すなわち,前記1(2)アのとおり,参加人と被告サンワードの間で本件負債を本件営業譲渡の対象から除外する旨の合意が成立したことが認められるから,被告サンワードは,参加人との関係で,本件負債を債権者に返済する義務を負っていない。そうすると,本件負債の返済に関して,被告サンワードについて,本件営業譲渡契約の債務不履行があるとはいえず,参加人による本件営業譲渡契約の解除は認められない。 なお,原告及び参加人は,本件コンサルタント契約は,被告サンワードが負担する本件負債の支払手段であり,その不履行は,本件営業譲渡契約の不履行に当たると主張するが,上記のとおり,そもそも被告サンワードは本件負債を支払う義務を負っていないのであるから,原告及び参加人の主張は失当というほかない。 3 結論以上によれば,争点2について検討するまでもなく,原告の被告らに対する請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官廣瀬達人 (別紙)商標目録 1 登録番号 第4019311号出願年月日 平成7年9月20日登録年月日 平成9年6月27日登録商標 (標準文字)トリートメントドライ商品及び役務の区分 第3類指定商品 せっけん類,洗濯用でん粉のり, 洗濯用ふのり,家庭用帯電防止剤, 家庭用 トメントドライ商品及び役務の区分 第3類指定商品 せっけん類,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤 2 登録番号 第4063731号出願年月日 平成8年3月14日登録年月日 平成9年10月3日登録商標 (標準文字)ハイ・ベックドライ商品及び役務の区分 第3類指定商品 せっけん類,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,洗濯用助剤以上

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