平成19(わ)125 ストーカー行為等の規制等に関する法律違反,住居侵入

裁判年月日・裁判所
平成19年7月3日 神戸地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-35286.txt

判決文本文4,343 文字)

- 1 -平成19年7月3日判決平成19年(わ)第125号ストーカー行為等の規制等に関する法律違反,住居侵入被告事件主文被告人を懲役9月に処する。 未決勾留日数中50日を刑に算入する。 理由 (犯罪事実)被告人は,元妻のA(当時30歳)に対する恋愛感情を充足する目的で 平成18年11月1日午前9時ころ,神戸市B区Ca丁目b番c号Dマンションd号室の同女方に押し掛けた上,その玄関先において,同女に対し「お前,,7時40分に帰ってきたやろ。帰ってくるのを待っとったんや。頼むから話をしてくれ」などと同女の行動を監視していると思わせるような事項を告げるとと。 もに,同女に義務のないことを行うことを要求し 同日午前10時10分ころ,正当な理由がないのに,上記Dマンションd号室の同女方ベランダに,外から柵を乗り越えて侵入し,同女方に押し掛け 同月2日午前零時45分ころ,同女の勤務先であるスナックラウンジ「E」付近のB区Fe丁目f番g号先路上に停車中の自動車内において,同女の見張りをし 同日午前1時10分ころ,同女方付近のB区Ch丁目i番j号先路上に停車中の自動車内において,同女の見張りをしもって,同女に対し,その身体の安全,住居等の平穏及び行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法によるつきまとい等を反復継続して行い,ストーカー行為をした。 (証拠(括弧内の甲乙の表示及び番号は,証拠等関係カードの甲乙の符号及び番)号を示す。他の欄においても同じ)。 省略- 2 -(事実認定の補足説明) 被告人が犯罪事実欄1から4の行為(以下「本件各行為」という)に及んだ。 ことは証拠上明らかであるところ,弁護人は,被告人が本件各行為に及んだ目的は,恋愛感情を充足する目的ではなく,子供やその母親(被告人の元妻)の生活状 4の行為(以下「本件各行為」という)に及んだ。 ことは証拠上明らかであるところ,弁護人は,被告人が本件各行為に及んだ目的は,恋愛感情を充足する目的ではなく,子供やその母親(被告人の元妻)の生活状況などが気がかりで元妻から実情を聴く目的であったから,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反の罪は成立せず,住居侵入の点も可罰的違法性がないから住居侵入罪は成立しない旨主張し,被告人も本件各行為の目的につき弁護人の主張に沿う供述をしている。しかしながら,当裁判所は,本件各行為の目的は元妻に対する恋愛感情を充足する目的であったと認められ,犯罪事実欄記載のと,。 おりの犯罪が成立すると判断したので以下その理由について補足して説明する 被告人の元妻は「平成18年11月1日午前9時ころ自宅玄関内に被告人が,いきなり入ってきて話をしようと言うので,近くの喫茶店で30分という約束で話をすることになった。喫茶店内では,被告人は『朝帰りは男とおったんか。 ,彼氏出来たんか。もう一回一緒になってくれ』などと,子供の話ではなく,私。 に彼氏がいると思って嫉妬し復縁を迫ってくる話に終始した。同日午前10時10分ころ自宅ベランダ内に被告人がいるのを見つけたところ,被告人は『ママ,のこと考えたら,こないせなしょうがなかったんや。自分でもコントロール出来んのや』と言っていた」旨供述している。元妻の供述は具体的で証拠上不自然。 。 な点は見当たらないばかりか,元妻の母親Gや妹Hの供述調書によれば,上記喫茶店内や自宅ベランダ内における被告人の発言内容に関する元妻の供述は直後から一貫した内容であると認められることからすると,高度の信用性を認めることができる。 加えて,元妻の父親Iは「平成18年8月から同年11月ころの間,被告人,に対し他にいい女を探して元妻につきま から一貫した内容であると認められることからすると,高度の信用性を認めることができる。 加えて,元妻の父親Iは「平成18年8月から同年11月ころの間,被告人,に対し他にいい女を探して元妻につきまとわないように注意したのに対し,被告人は子供の生活状況が気になっているなどと説明することはなく,交際相手として元妻以外の女性を探す気にならないという趣旨のことを言っていた。同年12- 3 -月20日ころにも元妻のことが今でも好きであると言っていた」旨供述してい。 る。同人は,元妻の父親ではあるものの,同人の検察官調書(甲45)における「」,被告人のことがかわいいというか心配で仕方がないなどという趣旨の供述や同人は元妻よりも被告人の肩を持つという元妻の母親の供述(甲49)などに照らすと,Iが被告人を陥れるために殊更虚偽の供述をしているとは考えられず,上記の同人の供述は十分信用できるものと認められる。 これに対し,被告人は「平成18年8月26日に元妻との間で今後同女に接,触しないことなどを内容とする合意書を作成した後は,他に好きな女性もできていたので,元妻に対する恋愛感情はなくなっていた。同年11月1日午前9時ころに元妻方に押し掛けたのは,その日元妻が朝帰りをしたのを見て,子供の面倒をきちんとみるよう注意しようと思ったからであり,喫茶店内において元妻と話した際には,復縁話はしていない。同日午前10時10分ころベランダ内に入ったのは,喫茶店内で十分話ができなかったので,元妻と子供のことで話をしたかったからで,元妻が供述するような言葉は自分は言っていない。同月2日の深夜に元妻を2回見張ったのは,また朝帰りをして子供をほったらかしにするかもしれないと不安になり,まっすぐ家に戻るか気になったからである」旨供述して。 いる。この被告人の供述は,① ない。同月2日の深夜に元妻を2回見張ったのは,また朝帰りをして子供をほったらかしにするかもしれないと不安になり,まっすぐ家に戻るか気になったからである」旨供述して。 いる。この被告人の供述は,①上記のとおり信用できる元妻及びIの各供述に反すること,②別の女性と恋愛関係になったのは平成18年12月2日以降であると検察官調書(乙15)において供述していることなどに照らすと,信用することはできない。 以上を前提に本件各行為の目的について検討すると,①本件各行為の時間的接着性に加え,②平成18年11月1日の元妻に対する被告人の発言内容は,被告人が元妻に対し恋愛感情を有していることを前提にしてはじめてよく理解できるものであること,③本件各行為の前後においても被告人はIに元妻に対し恋愛感情があると解される趣旨の発言をしていることを考え合わせると,本件各行為の目的はいずれも元妻に対する恋愛感情を充足する目的であったと推認することが- 4 -できる。 なお,被告人の手帳の記載(甲42添付のもの)などによれば,元妻の子供の様子を気にかけていた面があることは否定し難いが,それは元妻に対し恋愛感情を有していることと両立し得る事情と解される上,平成18年11月1日の元妻に対する被告人の発言内容には子供の養育や生活状況に関するものはなかったと認められることに照らすと,上記推認は何ら揺るがないというべきである。 以上のとおりであり,本件住居侵入行為も,違法なストーカー行為の一環として敢行されたものであると認められるから,可罰的違法性を欠くなどと考える余地はなく,弁護人の主張は採用できない。 (法令の適用)省略(ストーカー行為等の規制等に関する法律違反の罪と住居侵入罪が併合罪の関係にあると判断したことについての補足説明)ストーカー行為等の規制等に関する法 護人の主張は採用できない。 (法令の適用)省略(ストーカー行為等の規制等に関する法律違反の罪と住居侵入罪が併合罪の関係にあると判断したことについての補足説明)ストーカー行為等の規制等に関する法律にいう「ストーカー行為」は,同法2条2項の文言から明らかなように,つきまとい等の反復すなわち時間的継続を本質的に備えるものであると解される一方,本件住居侵入行為は,被告人によるつきまとい等の反復中における一時点一場所における行為であると認められることからすると,本件ストーカー行為と本件住居侵入行為とは社会通念上別個の行為と評価できるので,併合罪の関係にあると判断した(最高裁昭和49年5月29日大法廷判決・刑集28巻4号114頁,最高裁平成17年8月1日第一小法廷決定・刑集59巻6号676頁参照。 )(量刑の理由)本件は,被告人が,平成18年11月1日午前9時ころ,元妻である当時30歳の女性に対し,同女方に押し掛けて同女の行動を監視していると思わせるような事,,,項を告げるとともに同女に義務のないことを要求し同日午前10時10分ころ同女方のベランダに侵入して同女方に押し掛け,翌日午前零時45分ころ及び午前- 5 -1時10分ころの2回にわたり同女の見張りをしたというストーカー行為等の規制等に関する法律違反及び住居侵入の事案である。 警察署で被害者に接近しない旨誓約したり,平成18年8月には,押し掛け行為を繰り返せば警察官によりストーカー事案として検挙されることもある旨の警告を受けたり,被害者との間で同女に接触しないことなどを内容とする合意書を作成したことがありながら,本件に及んだものであって,執ようで,被害者の心情を考えない誠に自己中心的かつ身勝手な犯行というほかない。また,被害者に本件の如き被害に遭わなければならないような落ち度は 作成したことがありながら,本件に及んだものであって,執ようで,被害者の心情を考えない誠に自己中心的かつ身勝手な犯行というほかない。また,被害者に本件の如き被害に遭わなければならないような落ち度はなく,被害者の精神的苦痛も大きかったと認められるところ,被告人から慰藉の措置は何ら講じられておらず,処罰感情に厳しいものがあるのももっともである。加えて,被告人は,平成16年2月に懲役2年・執行猶予4年(付保護観察)の裁判を受け,厳に身を慎むべきその執行猶予期間中に本件に及んでいることも考え合わせると,規範意識は鈍麻しているといわざるを得ない。以上によれば,被告人の刑事責任を軽くみることはできない。 しかし他方,被告人は,目的については不合理な弁解をしているものの,本件の外形的事実は認め,間違った行動をとった旨述べていること,上記の執行猶予が取り消されることが見込まれることなど被告人のために酌むべき事情も認められるので,それらの事情を考慮し,主文の刑が相当であると判断した。 平成19年7月3日神戸地方裁判所第1刑事部裁判官西野吾一

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る