- 1 -主文 処分行政庁が,原告に対し,平成17年3月28日付けでした平成14年度の労働保険料の認定決定処分(第XXX-XX号)のうち,納付すべき保険料額が474万9962円を超える部分及び追徴金を1227万2100円とする部分を取り消す。 処分行政庁が,原告に対し,平成17年3月28日付けでした平成15年度の労働保険料の認定決定処分(第YYY-YY号)のうち,納付すべき保険料額が772万9203円を超える部分及び追徴金を1588万1900円とする部分を取り消す。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求(第1事件)処分行政庁が,原告に対し,平成17年3月28日付けでした平成14年度の労働保険料の認定決定処分(第XXX-XX号)を取り消す。 (第2事件)処分行政庁が,原告に対し,平成17年3月28日付けでした平成15年度の労働保険料の認定決定処分(第YYY-YY号)を取り消す。 第2事案の概要本件は,建売住宅の分譲等の事業を営む原告が,建築主として注文し,他の業者に請け負わせた建売住宅の建築工事の事業について,原告は,労働保険料の納付義務を負う事業主に当たらないとして,平成14年度及び平成15年度の当該事業に係る労働保険料を申告しなかったところ,処分行政庁が,原告は,当該事業について施工管理を行っており,労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下「徴収法」という)8条1項が事業主として取り扱うこととしている「元請。 - 2 -負人」に当たるとして,平成14年度及び平成15年度の当該事業に係る保険料を含めて原告が納付すべき保険料の額を決定するとともに,追徴金を徴収する旨の決定をしたことから,原告が,これらの処分の取消しを求めた事案である。 法 14年度及び平成15年度の当該事業に係る保険料を含めて原告が納付すべき保険料の額を決定するとともに,追徴金を徴収する旨の決定をしたことから,原告が,これらの処分の取消しを求めた事案である。 法令の定め(1)労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という)6条は「保険関。 ,係の成立及び消滅については,徴収法の定めるところによる」と定めてい。 るところ,徴収法3条は,労災保険法3条1項の適用事業の事業主については,その事業が開始された日に,その事業につき労災保険に係る労働保険の保険関係が成立する旨定めている。 (2)徴収法8条1項は「厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって,行なわれる場合には,この法律の規定の適用については,その事業を一の事業とみなし,元請負人のみを当該事業の事業主とする」と定めており,こ。 れを受けた同法施行規則(以下「徴収規則」という)7条は,徴収法8条。 1項の厚生労働省令で定める事業は「労災保険に係る保険関係が成立して,いる事業のうち建設の事業」とする旨定めている。 (3)徴収法19条1項は,事業主は,保険年度ごとに労働保険料の額その他厚生労働省令で定める事項を記載した申告書を提出しなければならない旨定めており,同条4項は,政府は,事業主が申告書を提出しないとき,又はその申告書の記載に誤りがあると認めるときは,労働保険料の額を決定し,これを事業主に通知する旨定めている。 (4)徴収法21条1項本文は,政府は,同法19条4項の通知を受けた事業主が,同条5項の規定による労働保険料又はその不足額を納付しなければならない場合には,その納付すべき額に百分の十を乗じて得た額の追徴金を徴収する旨定めており,同項ただし書は,事業主が天災その他やむを得ない理由により,労働保険料又はその不足額を納付しなければ ければならない場合には,その納付すべき額に百分の十を乗じて得た額の追徴金を徴収する旨定めており,同項ただし書は,事業主が天災その他やむを得ない理由により,労働保険料又はその不足額を納付しなければならなくなった場合は,この限りでない旨定めている。 - 3 - 争いのない事実。 (1)原告は,建築工事設計施工,不動産の売買等を業とする株式会社である(2)原告は,平成15年5月13日,処分行政庁に対し,徴収法19条1項に基づき,平成14年度(平成14年4月1日から平成15年3月31日まで)の労災保険に係る確定保険料(徴収法19条1項若しくは2項の労働保険料又は同条4項の規定により政府が決定した労働保険料をいう。徴収規則11条3号。以下同じ)を474万9962円とする申告書を提出した。 (3)原告は,平成16年5月6日,処分行政庁に対し,徴収法19条1項に基づき,平成15年度(平成15年4月1日から平成16年3月31日まで)の労災保険に係る確定保険料を772万9203円とする申告書を提出した。 (4)処分行政庁は,上記(2)の平成14年度申告書には,原告が,平成14年度に施工管理を実施したすべての建売住宅の建築工事に係る保険料が申告されていない誤りがあるとして,平成17年3月28日,平成14年度の労働保険料について,徴収法19条4項に基づき保険料の額を決定し(保険料額1億2747万1912円,不足額1億2272万1950円,徴収法2)1条1項に基づき追徴金(1227万2100円)を徴収する労働保険料の認定決定処分(第XXX-XX号(以下「14年度本件処分」という))。 を行い,原告にこれを通知した。 上記の14年度本件処分によって不足額とされた1億2272万1950円は,平成14年度の建売住宅事業に係る住宅の建築工事について 下「14年度本件処分」という))。 を行い,原告にこれを通知した。 上記の14年度本件処分によって不足額とされた1億2272万1950円は,平成14年度の建売住宅事業に係る住宅の建築工事について,原告が注文者(建築主)として原告以外の業者に請け負わせ,原告が施工管理を行った事業に係る労働保険料の額であった。 (5)処分行政庁は,上記(3)の平成15年度申告書には,原告が,平成15年度に施工管理を実施したすべての建売住宅の建築工事に係る保険料が申告されていない誤りがあるとして,平成17年3月28日,平成15年度の労働- 4 -保険料について,徴収法19条4項に基づき保険料の額を決定し(保険料額1億6654万8826円,不足額1億5881万9623円,徴収法2)1条1項に基づき追徴金(1588万1900円)を徴収する労働保険料の認定決定処分(第YYY-YY号(以下「15年度本件処分」という))。 を行い,原告にこれを通知した。 上記の15年度本件処分によって不足額とされた1億5881万9623円は,平成15年度の建売住宅事業に係る住宅の建築工事について,原告が注文者(建築主)として原告以外の業者に請け負わせ,原告が施工管理を行った事業に係る労働保険料の額であった。 (6)原告は,平成17年5月26日,処分行政庁に対し,14年度本件処分及び15年度本件処分の各取消しを求める異議申立てをした。これに対し,処分行政庁は,同年8月22日,原告の異議申立てを棄却する決定をした。 (7)原告は,平成17年9月22日,厚生労働大臣に対し,上記(6)の決定を不服として審査請求をしたが,厚生労働大臣は,同日から3か月を経過しても審査請求に対する裁決を行わなかった。 (8)原告は,平成18年3月20日,14年度本件処分及び15年度本件処分の各取 決定を不服として審査請求をしたが,厚生労働大臣は,同日から3か月を経過しても審査請求に対する裁決を行わなかった。 (8)原告は,平成18年3月20日,14年度本件処分及び15年度本件処分の各取消しを求めて,本件訴訟を提起した。 争点 本件の争点は,14年度本件処分及び15年度本件処分の適法性であり,具体的には,原告が建築主として注文した建売住宅の建築工事が,徴収法8条1項にいう「数次の請負」によって行われる場合に該当し,原告がその「元請負人」として保険料納付義務を負うか否か(争点1),また,14年度本件処分及び15年度本件処分が,信義則又は平等原則に違反するか否か(争点2)である。 争点に関する当事者の主張(1)争点1(原告が建築主として注文した建売住宅の建築工事が,徴収法8条1項にいう「数次の請負」によって行われる場合に該当し,原告がその- 5 -「元請負人」として保険料納付義務を負うか否か)について(被告の主張)徴収法8条1項,徴収規則7条が,建設の事業が数次の請負によって行われる場合において,請負関係を一括して元請負人のみを事業主とする規定を設けた趣旨は,建設の事業においては,工事を請け負った元請負業者が仕事の全部又は一部を下請負業者に請け負わせ,元請負業者がこれらを指揮監督し,数次の請負が有機的関連をもって行われているのが通常であり,このような場合には,資力が乏しく補償能力の十分でない下請負業者でなく元請負業者に災害補償の責任を負わせることが保険適用の確保のために相当であり,また,数次の請負それぞれについて保険料の納付義務者や保険料額を確定して保険料を徴収することが技術的に困難であって,元請負業者に一括して保険料を負担させることにより事務処理の簡素化が図られることから,数次の請負を一つの事業として把握して, 付義務者や保険料額を確定して保険料を徴収することが技術的に困難であって,元請負業者に一括して保険料を負担させることにより事務処理の簡素化が図られることから,数次の請負を一つの事業として把握して,元請負業者から労働保険料を徴収することとしたものである。 そうすると,このような趣旨に基づく徴収法8条1項の「元請負人」の意義については,他の者から工事を請け負っているか否か等の形式面のみに着目するのではなく,有機的関連をもって行われる一体の工事を統括して施工管理する立場にあるか否かという実質面に着目してこれを解釈し,そのような立場にあると認められる者は,たとえ法形式的には請負人ではなく注文者であったとしても,同条項の「元請負人」に当たると解すべきである。また,同条項にいう「数次の請負」とは,建築業者が建築主として注文者となる建売住宅の場合でも,注文者から請け負った請負業者がさらに下請負契約をすれば,そこに「数次の請負」が生じ,仮に注文者から請け負った者が下請けに出さずに自ら工事を完成させたとしても,上記のとおりその注文者が「元請負人」に当たると解される以上「数次の請負」があるといえる。 ,そして,原告は,建売住宅の建築工事を多数の業者に注文して請け負わせ,- 6 -これらの工事を統括して施工管理しており,有機的関連をもって行われる一体の工事を統括して施工管理する立場にあったから,原告は,徴収法8条1項にいう「数次の請負」の「元請負人」に当たり,当該工事に係る事業の事業主として保険料の納付義務を負う。 (原告の主張)徴収法8条1項は,建設の事業が「数次の請負」によって行われる場合に,その「元請負人」を保険料を負担する事業主とする旨定めているところ,原告が建築主として建売住宅の建築を注文する場合には,原告は注文者であって請負人ではないこと 「数次の請負」によって行われる場合に,その「元請負人」を保険料を負担する事業主とする旨定めているところ,原告が建築主として建売住宅の建築を注文する場合には,原告は注文者であって請負人ではないことは明らかであるから,原告から請け負った者が「元請負人」になることはあっても,原告が「元請負人」になることはあり得ない。 また,原告から請け負った者は自分で仕事を完成しても構わないのであるから,そこに「数次の請負」関係があるとはいえない。そうすると,被告の主張するような解釈はその文言の解釈として不可能であり,法的安定性,予測可能性を著しく害するものであって許されない。また,労働者を使用する事業主にとって,労災保険は自動的強制的に加入させられ,労働保険料は,国税徴収の例により徴収される(徴収法29条)から,租税における課税要件明確の原則(憲法84条)と同様に,徴収法の解釈においても明確性が重視されなければならず「注文者」も「請負人」に含まれるとする被告の解釈,は,文言解釈の限界を大きく超えるものであって,許されるものではない。 したがって,原告が,建売住宅の建築工事の注文者であるものについても徴収法8条1項の「元請負人」に当たるとして行われた14年度本件処分及び15年度本件処分は,誤った判断を前提とするものであって違法である。 (2)争点2(14年度本件処分及び15年度本件処分が,信義則又は平等原則に違反するか否か)について(被告の主張)厚生労働省は,従前から施工管理の実態に即して徴収法8条1項の「元請- 7 -負人」に該当するか否かを判断すべき旨の通達を発しており,また,原告の従業員に対し,建売業者が工事の施工管理をしている場合には「元請負人」に該当する旨教示しているから,信義則に反さず,また,他の労働局と異なる徴収実務によって処分が行わ 通達を発しており,また,原告の従業員に対し,建売業者が工事の施工管理をしている場合には「元請負人」に該当する旨教示しているから,信義則に反さず,また,他の労働局と異なる徴収実務によって処分が行われた事実もないから,平等原則にも反しない。 (原告の主張)原告は,労働基準監督署の労災保険担当者との間で,建売業者である原告は,あくまで注文者であり,徴収法8条1項の「元請負人」としての責任を負う者ではない旨確認しており,それにもかかわらず,原告が同条項の「元請負人」に該当するものと取り扱うことは,労働基準監督署による指導に対する原告の信頼を裏切るものであって,信義則に反し違法であり,また,処分行政庁(東京労働局)の徴収法8条1項の解釈運用は,他の労働局の徴収実務に反しているから,平等原則(憲法14条1項)にも反し違法である。 第3当裁判所の判断 争点(1)(原告が建築主として注文した建売住宅の建築工事が,徴収法8条1項にいう「数次の請負」によって行われる場合に該当し,原告がその「元請負人」として保険料納付義務を負うか否か)について(1)徴収法8条1項の解釈についてア徴収法8条1項は「厚生労働省令で定める事業が数次の請負によって,行なわれる場合には,この法律の規定の適用については,その事業を一の事業とみなし,元請負人のみを当該事業の事業主とする」と定める。そ。 して,ここにいう厚生労働省令である徴収規則の7条は,徴収法8条1項の厚生労働省令で定める事業は「労災保険に係る保険関係が成立してい,る事業のうち建設の事業」とする旨定めている。そうすると,これらの定めにより,建設の事業が「数次の請負」によって行われる場合には,本来,それぞれの請負ごとに1つの事業であるにもかかわらず「数次の請負」,を1つの事業とみなして,その「元請負人 うすると,これらの定めにより,建設の事業が「数次の請負」によって行われる場合には,本来,それぞれの請負ごとに1つの事業であるにもかかわらず「数次の請負」,を1つの事業とみなして,その「元請負人」のみが事業主として徴収法上- 8 -の義務を負うことになる。 イそこで,同条項にいう「数次の請負」及び「元請負人」の意味について検討するに,原告は,労災保険は,労働者を使用する事業主が自動的強制的に加入させられるものであり,労働保険料は,国税徴収の例により徴収される(徴収法29条)のであるから,徴収法の文言の解釈については,租税における課税要件明確の原則(憲法84条)と同様に,文言に従って厳格に解釈されるべきであると主張する。 たしかに,国又は公共団体が,課税権に基づき,その経費に充てるための資金を調達する目的をもって,特別の給付に対する反対給付としてでなく,一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は,その形式いかんにかかわらず,憲法84条に規定する租税に当たるというべきであるが,労災保険に係る労働保険料は,一定の事由が生じた労働者が保険給付を受け取ることの反対給付として徴収されるものであるから,憲法84条の規定が直接に適用されることはないというべきである。 しかしながら,憲法84条は,課税要件及び租税の賦課徴収の手続が法律で明確に定められるべきことを規定するものであり,直接的には,租税について法律による規律の在り方を定めるものであるが,同条は,国民に対して義務を課し又は権利を制限するには法律の根拠を要するという法原則を租税について厳格化した形で明文化したものというべきであるから,租税以外の公課であっても,その性質に応じて,法律によって適切な規律がされるべきものと解すべきであり,賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類 厳格化した形で明文化したものというべきであるから,租税以外の公課であっても,その性質に応じて,法律によって適切な規律がされるべきものと解すべきであり,賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては,同条の趣旨が及ぶと解すべきである(最高裁判所大法廷平成18年3月1日判決・民集60巻。 2号587頁参照)。 そして,労働保険料については,適用事業の事業主に対しては,保険関係が法律上当然に成立することとされ,強制的に保険に加入させられるも- 9 -のであり(徴収法3条,また,その徴収は,国税徴収の例により徴収す)るとされ,納付しないときは強制徴収されるものである(徴収法29条,国税徴収法47条以下参照)ことに鑑みると,賦課徴収の強制の度合いにおいては,租税に類似した性格を有しているということができる。そうすると,労働保険料の負担に関しては,憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであり,徴収法8条1項の規定を解釈するに当たっても,租税法規の解釈と同様に,法的安定性及び予測可能性を害しないように明確性を重視する必要があり,原則として規定の文言に即して解釈されるべきである。 ウそこで,このような観点から,徴収法8条1項の「数次の請負」及び「元請負人」の意義について検討する。 まず「数次の請負」についてであるが,ここにいう「請負」について,は,民法632条以下に定める「請負」のいわゆる借用概念であり,徴収法8条1項にいう「請負」を民法632条以下の「請負」と別異に解釈すべきであることを窺わせる規定は,徴収法上,何ら存在しないのであって,民法にいう「請負」と同義であると解するのが相当である。そして,その文言からするならば「数次の請負」とは,請負契約が,元請けから下請,け,下請けから孫請けというように,複数の段階 ないのであって,民法にいう「請負」と同義であると解するのが相当である。そして,その文言からするならば「数次の請負」とは,請負契約が,元請けから下請,け,下請けから孫請けというように,複数の段階を経て行われているものをいうと解するのが相当であり,また「元請負人」とは,そのような複,数の段階を経て請負契約がされた場合における最先次の請負契約の請負人のことをいうと解するのが相当である。 そして,徴収法8条1項及びその委任を受けた徴収規則7条の趣旨は,本件のような建物の建築工事を含む徴収規則7条の「建設の事業」においては,建築工事を請け負った元請負業者が仕事の全部又は一部を下請負業者に請け負わせることが一般的であるという立法事実に基づき,保険料の徴収の確保及び徴収事務の簡素化を図る目的で,複数の段階の請負それぞれについて各事業主から保険料を徴収するのではなく,元請負業者に一括- 10 -して保険料を負担させることにしたものであると解され,徴収法8条1項の「数次の請負」及び「元請負人」をその文言に従って上記のような意味であると解釈することは,このような立法趣旨に合致するものである。 さらに,証拠(甲13)によれば,厚生労働省労働基準局労働保険徴収課編著「改訂版労働保険徴収法(平成16年3月5日発行)は,徴収」法8条1項の解説として「数次の請負によって行なわれる場合」とは,,「例えば,ビル建築工事のように,工作物等の完成について注文者から直接に仕事を請負った請負人(元請負人)が,その仕事の全部又は一部をさらに第三者(下請負人)に請け負わせることにより,その請負関係が数段階に及ぶ場合をいう」と説明し「元請負人のみを当該事業の事業主と。 ,する」とは「…元請負人は,その請負に係る事業については,下請負を,させた部分を含め,そのすべ ことにより,その請負関係が数段階に及ぶ場合をいう」と説明し「元請負人のみを当該事業の事業主と。 ,する」とは「…元請負人は,その請負に係る事業については,下請負を,させた部分を含め,そのすべてについて事業主として保険料の納付等の義務を負わなければならないという意味である」と説明していることが認。 められ,徴収法の所管庁である厚生労働省の担当部署が編著者とされる解説書もまた,上記のような解釈に合致する説明をしているところである。 エこれに対し,被告は,徴収法8条1項にいう「元請負人」は,他の者から建築工事を請け負っているという形式面のみに着目するのではなく,有機的関連をもって行われる一体の工事を統括して施工管理する立場にあるか否かという実質面に着目してこれを解釈し,そのような立場にあると認められる者は,たとえ法形式的には請負人ではなくても,徴収法8条1項の「元請負人」に当たると解すべきであると主張する。 しかしながら,建売住宅の販売業者のように,自ら建築主として建物の建築を請負業者に注文する者は,およそ民法上の請負契約関係において,あくまで注文者であって請負人に当たらないことは明らかであり,このような請負契約において請負人の相手方である注文者を「請負人」であると解することは,前記のように租税法規の解釈と同様に法的安定性及び予測- 11 -可能性を重視して行うべき文言の解釈としては,困難であると言わざるを得ない。 また,被告は,同条項にいう「数次の請負」に関して,建築業者が注文者となる場合であっても,注文者からの請負人がさらに下請負契約をすれば,そこに「数次の請負」が生じる旨主張するが,そのような場合には,数次の請負の「元請負人」は,あくまで注文者である建築業者から最初に請け負った請負人であって,注文者が「元請負人」となるわけで すれば,そこに「数次の請負」が生じる旨主張するが,そのような場合には,数次の請負の「元請負人」は,あくまで注文者である建築業者から最初に請け負った請負人であって,注文者が「元請負人」となるわけではないことはいうまでもない。 さらに,被告は,仮に注文者から請け負った者が下請けに出さずに自ら工事を完成させたとしても,注文者が徴収法8条1項の「元請負人」に当たると解される以上「数次の請負」関係があるといえる旨主張するが,,そのような場合には請負は「数次」にわたっておらず,また,前記のとおり注文者は「元請負人」とならないから,被告のこの主張は失当であると言わざるを得ない。 そして,被告は「元請負人」に当たるか否かは,有機的関連をもって,行われる一体の工事を統括して施工管理する立場にあるか否かという点により決すべきであると主張するが,事業が有機的関連をもって行われる一体の工事といえるか否か,あるいは,いかなる実態があれば工事を統括して施工管理を行う立場にあるといえるのかについては,いずれも客観的に判断することが困難な場合が少なくないのであって,このような明確とは言い難い基準により,当該事業についての保険料の納付義務の有無を判断することになれば,徴収法上,保険料の申告を義務付けられ,その申告した保険料の額に不足があれば,追徴金を課せられることになりかねない適用事業の事業主の立場を,著しく不安定なものにし,労働保険料の納付に関する事業主の予測可能性を著しく損なうものであるから,実質的な見地から見ても,このような被告の主張する解釈を採用することはできない。 - 12 -オなお,たしかに,被告が主張するように,建売住宅業者の場合でも,その業者から一括して保険料を徴収できるならば,保険料の徴収の確保及び徴収事務の簡素化を図るという趣旨を実現す ない。 - 12 -オなお,たしかに,被告が主張するように,建売住宅業者の場合でも,その業者から一括して保険料を徴収できるならば,保険料の徴収の確保及び徴収事務の簡素化を図るという趣旨を実現するためには望ましいことは容易に推察されるところであるが,徴収法の解釈としてこれを行うことは上記のとおり困難であると言わざるを得ないのであって,仮に被告の主張するような趣旨を実現する必要があるというのであれば,別途立法措置を講ずることによってその目的を達成すべきことになろう。 (2)14年度本件処分及び15年度本件処分の適法性についてア前記争いのない事実に加えて証拠(甲18,証人A)及び弁論の全趣旨を総合すれば,原告は,顧客から注文を受けてそれに応じた建物を建築して引き渡すいわゆる注文住宅事業と,原告が建築主となって注文し,請負業者に建物を建築させてその建物を販売するいわゆる建売住宅事業を行っているところ,注文住宅事業に係る建物については,顧客である建築主を注文者,原告を請負人として請負契約を締結し,原告はさらに複数の業者との間で下請負契約を締結して建物を完成させて顧客に引き渡しており,他方,建売住宅事業に係る建物については,原告が注文者(建築主)となり,請負業者と基本契約を締結した上で,物件ごとに複数の業者との間で個別に請負契約を締結して,完成した建物の引渡しを受けて顧客に販売していることがそれぞれ認められる。 そうすると,原告は,原告が請負人となって行う注文住宅事業に係る建物の建築工事については,徴収法8条1項にいう「数次の請負」によって行われる場合の「元請負人」に該当し「数次の請負」全体の事業主とし,て労働保険料を納付しなければならないことになるが,建売住宅事業に係る建物の建築工事については,原告は請負契約の注文者であって,同条項 れる場合の「元請負人」に該当し「数次の請負」全体の事業主とし,て労働保険料を納付しなければならないことになるが,建売住宅事業に係る建物の建築工事については,原告は請負契約の注文者であって,同条項にいう「数次の請負」の「元請負人」には該当しないから,徴収法8条1項の適用はなく「数次の請負」の事業主として労働保険料を納付すべき,- 13 -ことにはならないというべきことになる。 イそして,前記争いのない事実によれば,原告は,平成14年度の労働保険料に関し,注文住宅事業に係る建物の建築工事については,自らが事業主であるとして,労働保険料の額を474万9962円とする申告書を提出したが,これに対し,処分行政庁が,原告の建売住宅事業に係る建物の建築工事についても原告が事業主に当たるとして,保険料額を1億2747万1912円と認定したものであるところ,その差額分である1億2272万1950円は,処分行政庁が,原告の建売住宅事業に係る建物の建築工事について原告が徴収法8条1項の「元請負人」に該当するという誤った解釈,判断に基づいて認定したものであるから,14年度本件処分のうち,保険料額を原告の申告額に相当する474万9962円とした部分は適法であるが,これを超える部分(不足額である1億2272万1950円に相当)の決定及びこれに対する追徴金(徴収法21条1項)を定めた決定は,違法である。 また,前記争いのない事実によれば,原告は,15年度の労働保険料に関し,注文住宅事業に係る建物の建築工事については,自らが事業主であるとして,労働保険料の額を772万9203円とする申告書を提出したが,これに対し,処分行政庁が,原告の建売住宅事業に係る建物の建築工事についても原告が事業主に当たるとして,保険料額を1億6654万8826円と認定したものであ 2万9203円とする申告書を提出したが,これに対し,処分行政庁が,原告の建売住宅事業に係る建物の建築工事についても原告が事業主に当たるとして,保険料額を1億6654万8826円と認定したものであるところ,その差額分である1億5881万9623円は,14年度本件処分と同様に,処分行政庁が,原告の建売住宅事業に係る建物の建築工事について原告を徴収法8条1項の「元請負人」に該当するという誤った解釈,判断に基づいて認定したものであるから,15年度本件処分のうち,保険料額を原告の申告額に相当する772万9203円とした部分は適法であるが,これを超える部分(不足額である1億5881万9623円に相当)の決定及びこれに対する追徴金(徴- 14 -収法21条1項)を定めた決定は,違法である。 そうすると,争点2について判断するまでもなく(争点2も,上記各限度において違法であることを争うものである,14年度本件処分及び15年度。)本件処分は,上記の各限度において違法である。 第4結論したがって,原告の各請求は,主文掲記の限度で理由があるからいずれも認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,64条ただし書を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官定塚誠裁判官工藤哲郎裁判官古田孝夫は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官定塚誠- 15 -
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