昭和38(う)117 傷害道路交通法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和38年6月7日 仙台高等裁判所 破棄差戻
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      本件を仙台地方裁判所古川支部に差し戻す。          理    由  本件控訴趣意は、弁護人瀬上卓男名義の控訴趣意書に記載するとおりであるか

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判決文本文1,955 文字)

主文 原判決を破棄する。 本件を仙台地方裁判所古川支部に差し戻す。 理由 本件控訴趣意は、弁護人瀬上卓男名義の控訴趣意書に記載するとおりであるから、これを引用する。 控訴趣意第一点ならびに第二点(事実誤認、審理不尽、理由不備、理由のくいちがい)に対する判断<要旨>原判示第一の事実は、要するに、被告人が昭和三七年八月二二日夜ひどくめいていして普通乗用自動車を連</要旨>転中、同夜一〇時一〇分頃古川市内でAの普通乗用自動車に接触する事故を起し、このとき、Aからも、酔つていて危険だから運転をやめるように注意をされたし、自分自身でも、このまま運転を続ければ、どこかで事故を起して、他人に傷害を負わせる危険のあることを認識しながら、あえて、時速約四〇キロートルで運転を続けた結果、それから約二〇分後には、同市内の路上で、進路の前方右側に停車中の普通乗用自動車に正面衝突し、同車の運転者等に傷害を負わせるに至つたというにある。この事実によれば、原判決は、被告人には、各被害者に対する暴行のいわゆる未必的故意があるとした趣旨と解されるが、刑法にいわゆる故意とは具体的な犯罪事実の認識(予見)をいうのであるから、被告人が、単に、どこかで事故を起す危険のあることを自覚しながら運転を継続したというだけでは、衡突の相手方を認識したわけでもなく、具体的事実を対象としない抽象的な事故発生の危険意識に過ぎないのであるから、また、傷害罪の成立に必要な暴行の故意があるということはできない。その後、現実に被害者が乗車している自動車を発見した際に、これと衡突の危険のあることを認識しながら、あえて、これを容認して進行したという場合であつてこそ、初めて、暴行の未必的故意があるといい得るのである。ところが、以上に掲記した原判示第 車を発見した際に、これと衡突の危険のあることを認識しながら、あえて、これを容認して進行したという場合であつてこそ、初めて、暴行の未必的故意があるといい得るのである。ところが、以上に掲記した原判示第一の事実は、右いずれの点を採り上げて、被告人に暴行の未必的故意があるとしたかは文義上必ずしも明確ではないのであるから、同事実だけでは、被告人の所為が傷害罪を構成するか否かも不明なことになり、この点で、原判決には理由不備の誤りがあるといわなければならない。 のみならず、記録によれば、被告人は、古川市a字bcのd番地先路上で、進路前方右側に停車中の普通乗用自動車(運転者B)を約三〇メートル手前で発見したときには、めいていのため、同車が停車中であることにも、また、自車が道路の右側を進行していることにも、全く気がつかず、相手の車が交通規則に違反して、道路の右側を対面進行して来るものと錯覚したが、すくに、ブレーキをかけるなどして(衝突地点まで全長約二八・一〇メートルのブレーキ痕がある)、衝突を回避すべく努力したことが認められるから、故意に衝突したものとは必ずしも認め難いのである(被告人の捜査官に対する各供述調書と司法警察員作成の実況見分調書参照)。もつとも、被告人は、原審第一回公判においては、傷害の公訴事実はそのとおり相違ない旨陳述しており、原判決もこの供述を証拠に引用したが、同公訴事実は、原判示第一の事実と全く同様で、故意の存否の点で重大な疑問があるのであるから、この事実を自白したからといつて、被告人の暴行の故意を認定するに足る証拠とはならないのである。その他、記録を精査しても、被告人が過失によつて本件の事故を起して、各被害者に傷害を負わせたと疑うべき資料ならばともかく、(業務上過失傷害罪で処罰するためには訴因の変更が必要)、故意に傷害したと認める の他、記録を精査しても、被告人が過失によつて本件の事故を起して、各被害者に傷害を負わせたと疑うべき資料ならばともかく、(業務上過失傷害罪で処罰するためには訴因の変更が必要)、故意に傷害したと認めるに足る証拠は存しないことになるから、原判決が、その挙示する証拠によつて、原判示第一の事実を認定したことは、審理不尽のそしりを免れないとともに、判決の理由にくいちがいのある場合に該当し、この点でも、また、破棄を免れない。 論旨は理由がある。 なお、原判決は、原判示第一と第二の事実を併合罪として処断し、一個の刑を科しているのであるから、原判決は、結局全部破棄を免れない。 よつて、その余の控訴趣意に対する判断は省略し、刑訴法三九七条一項、三七八条四号によつて、原判決を破棄し、同法四〇〇条本文に従つて、本件を原裁判所である仙台地方裁判所古川支部に差し戻すこととして、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官斎藤寿郎裁判官斎藤勝雄裁判官杉本正雄)

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