主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは,大阪府に対し,連帯して51億4012万8000円及びこれに対する平成11年7月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,財団法人国際見本市協会(以下「協会」という。)が大阪府から建物所有目的で土地を賃借し,同土地上に建築した建物においてホテルを営んでいたところ,大阪府と協会との間で平成11年3月19日に同建物及びこれに付随する同土地の借地権について立退補償契約(以下「本件立退補償契約」という。)が締結され,同年7月9日までに補償金合計51億4012万8000円の支出(以下「本件各支出」という。)がされたのは違法であるとして,大阪府の住民である原告らが,平成14年法律第4号による改正前の地方自治法242条の2第1項4号に基づき,大阪府に代位して,本件立退補償契約の締結及び本件各支出に関与した被告らに対し,連帯して大阪府に上記補償金相当額の損害金及びこれに対する本件各支出の終わった日の翌日である平成11年7月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求めている事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠〔書証番号は特記しない限り枝番を含む。以下同じ。〕等により容易に認められる事実)(1) 被告らア被告aは,本件立退補償契約の締結当時,大阪府副知事及び協会常務理事の役職に在った者である。 イ被告bは,本件立退補償契約の締結当時,大阪府知事及び協会会長の役職に在った者である。 ウ被告cは,本件立退補償契約の締結及び本件各支出の当時,大阪府出納 った者である。 イ被告bは,本件立退補償契約の締結当時,大阪府知事及び協会会長の役職に在った者である。 ウ被告cは,本件立退補償契約の締結及び本件各支出の当時,大阪府出納長及び協会監事の役職に在った者である。 エ被告dは,本件立退補償契約の締結当時,大阪府商工部長及び協会常務理事の役職に在った者である。 オ被告eは,本件立退補償契約の締結当時,大阪府商工部理事(ただし,大阪府平成13年条例第71号による改正前の職員の分限に関する条例2条1項1号の規定に基づき,休職中であった〔丙44,弁論の全趣旨〕。)及び協会常務理事の役職に在った者である。 カ被告fは,本件立退補償契約の締結当時,大阪府商工部新産業振興課長の役職に在った者である。 (2) 協会の事業の経緯ア協会は,大阪府,大阪市及び地元財界等の出捐により,昭和24年12月23日,通商産業大臣の許可を得て設立された財団法人である(甲5,丙1)。 協会においては,歴代,大阪府知事が会長に,同副知事及び商工部長が常務理事に,同副知事又は出納長が監事に,同議会正副議長並びに総務常任委員会及び商工農林常任委員会の各正副委員長が理事にそれぞれ就任していた。なお,大阪市長及び大阪商工会議所会頭が副会長に歴代就任するなど,大阪市及び大阪商工会議所の関係者らも上記同様に協会の役員に就くのが慣例となっていた(甲6,丙1)。 また,大阪府は,協会の設立に際して8500万円を出捐した(丙1)ほか,その存続期間中,6回にわたり,合計15億0400万円の貸付けを行うとともに,平成6年度から平成10年度にかけて,大阪府から協会に派遣していた職員の人件費相当額の補助金を支出していた(弁論の全趣旨 ,その存続期間中,6回にわたり,合計15億0400万円の貸付けを行うとともに,平成6年度から平成10年度にかけて,大阪府から協会に派遣していた職員の人件費相当額の補助金を支出していた(弁論の全趣旨)。 イ昭和26年,協会は,大阪府の所有する別紙物件目録記載1の土地のうち別紙図面1において1号物件と記載された部分(地積5991.78平方メートル。以下「本件土地A」という。)上にα会館を建設し,同会館において,見本市事業及びα会館ホテルの営業を開始した(丙1)。 ウ協会は,昭和28年1月21日,大阪府との間で,大阪府の所有するα会館敷地2647.39坪の従前の無償使用について追認を受けるとともに,同日から昭和30年3月31日までの期間,上記敷地を無償で借り受ける旨の契約を締結し,その後も大阪府との間で同様の契約を締結して,同契約に基づき,上記敷地を使用していた(甲7)。 エ昭和33年,α会館は,本件土地Aの北側の大阪府が所有する別紙物件目録記載1及び2の各土地のうち別紙図面1において2号物件と記載された部分(地積2407.22平方メートル。以下「本件土地B」という。)上に増築され,昭和45年には新館棟の増築が行われ,同会館の建物は区分所有建物となり,そのうち本件土地B上に増築された部分は,大阪府が区分所有することとなった。 なお,α会館ホテルは,昭和34年にはβホテルと,昭和43年にはγホテルとそれぞれ改称された(甲4,丙1,19)。 オ昭和45年4月1日,大阪府は,協会との間で,α会館敷地9274. 85平方メートル及び同会館のうち上記大阪府区分所有部分(延床面積7886. 18平方メートル)の各物件を,土地使用目的を同会館敷地,貸付期間を同日から昭和50年3月31日までとするなどの約定で, . 85平方メートル及び同会館のうち上記大阪府区分所有部分(延床面積7886. 18平方メートル)の各物件を,土地使用目的を同会館敷地,貸付期間を同日から昭和50年3月31日までとするなどの約定で,有償で貸し付ける旨の府有財産貸付契約を締結した。協会は,その後も5年ごとに大阪府と上記同様の契約を締結し,同契約に基づき,上記各物件を使用していた(甲8)。 カ α会館の老朽化に伴い,同会館の建て替えによる新ホテル建設事業について検討していた協会は,住友生命保険相互会社(以下「住友生命」という。),株式会社大和銀行(以下「大和銀行」という。)並びに協会及び大和銀行が出資して設立した大阪コクサイホテル企画株式会社との間において,平成9年2月26日付けで,同事業の基本となる事項について協定を締結し,同年7月ころから平成10年3月ころにかけて,同会館のうち上記協定に基づく建て替え後の新ホテル建設予定地であった本件土地B上にある部分につき,解体工事を行った。その結果,同会館は,協会所有部分を別紙物件目録記載3のとおりとする区分所有建物(以下,この協会所有部分を「本件建物」という。)となった(甲4,丙1,6,19)。 キ大阪府は,平成10年4月1日,協会との間で,次の約定により,本件土地Aを協会に賃貸する旨の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結した(甲9)。 (ア) 使用目的 γホテルの敷地(イ) 賃貸借期間平成10年4月1日から平成15年3月31日まで(ウ) 賃貸料等次の貸付料及び負担金の合計額a 本件土地Aのうち3591.03平方メートル部分についての貸付料(年額)(a) 平成11年3月31日まで 1億1 次の貸付料及び負担金の合計額a 本件土地Aのうち3591.03平方メートル部分についての貸付料(年額)(a) 平成11年3月31日まで 1億1708万3300円(b) 平成12年3月31日まで 1億1122万9200円(c) 平成13年3月31日まで 1億0566万7800円(d) 平成14年3月31日まで 1億0038万4500円(e) 平成15年3月31日まで 9536万5300円b 本件土地Aのうち2400.75平方メートル部分についての負担金国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律に基づき大阪府が当該年度に大阪市に交付する国有資産等所在市町村交付金に相当する額ク γホテルの経営は,バブル経済の崩壊後,長引く景気低迷による法人需要の低下やホテルの開業ラッシュに伴う競争激化などの影響を受け,平成5年度以降連続して経常赤字となり,平成9年度決算における当期損失額は6億0776万4859円,累積欠損金は16億5722万5064円,銀行等からの短期借入金は27億2000万円に達していた。そのため,大阪府の主導の下,前記の新ホテル建設事業スキームの見直し等の協議が行われ,協会も,平成10年9月,平成11年度に収支均衡を図ることを目標とする経営健全化計画を策定したが,同月以降も売上げ及び収益が予測を下回り,住友生命及び大和銀行も同事業からの撤退を表明したため,同年11月,同事業は最終的に断念されるに至った(丙1,8,29ないし33)。 ケ同月,協会は,平成10年度限りでγホテルの営業を終了して清算手続 行も同事業からの撤退を表明したため,同年11月,同事業は最終的に断念されるに至った(丙1,8,29ないし33)。 ケ同月,協会は,平成10年度限りでγホテルの営業を終了して清算手続に移行することとし,平成11年1月19日に開かれた協会の理事会において,協会の事業を平成10年度内で終了し,解散に向けて準備作業に入る旨の方針が決定され,平成11年4月30日,協会は,通商産業大臣から解散の許可を受けた。その後,清算手続が行われ,協会は,平成12年4月7日,通商産業大臣から残余財産の処分の許可を受け,同月10日,残余財産3億5695万7867円を協会と類似の目的を有する財団法人大阪中小企業振興センターに寄付し,清算を結了した。なお,協会の平成10年度決算における協会の当期損失額は18億0060万5174円,累積欠損金は34億5783万0238円であった(甲5,丙1,7ないし9,12,13)。 (3) 本件立退補償契約の締結ア平成11年1月19日の協会理事会において権限の委任を受けた被告eは,同月20日,大阪府に対し,協会を代表して,協会が本件賃貸借契約に基づき大阪府から借り受けている本件土地Aの上に存する借地権(以下「本件借地権」という。)付きの本件建物を,協会から買い取るよう求める旨の申入れ(以下「本件買取申入れ」という)をした(甲15,丙9)。 イ同年2月19日,大阪府議会平成11年2月定例会において,平成10年度不動産調達特別会計歳出予算のうち(款)不動産調達費-(項)公共用地先行取得費-(目)公共用地先行取得費-(節)補償,補填及び賠償金の支出科目への51億4012万8000円の都心型新産業育成拠点整備関連事業費の追加計上を含む補正予算(以下「本件補正予算」という。)が提出された(甲1 公共用地先行取得費-(節)補償,補填及び賠償金の支出科目への51億4012万8000円の都心型新産業育成拠点整備関連事業費の追加計上を含む補正予算(以下「本件補正予算」という。)が提出された(甲13)。 ウ本件補正予算は,平成11年3月12日の大阪府議会本会議において可決され,大阪府議会の議決を経た。 エ被告aは,同月19日,平成11年訓令第19号による改正前の大阪府事務決裁規程3条19号に基づいて,本件立退補償契約の締結を専決し,大阪府は,同日,協会との間で,次の約定により,本件立退補償契約を締結した(甲14,29,丙22,45)。 (ア) 本件賃貸借契約を同月31日をもって解約する。 (イ) 大阪府は,(ア)の解約に伴い,協会が本件土地Aから立ち退き,本件土地Aを大阪府に返還するに当たり,本件建物及びこれに付随する本件借地権の補償金として,51億4012万8000円を協会に支払う。 (ウ) 協会は,(ア)の解約日までに,本件土地Aからの立退き及びその返還を行い,大阪府は,協会から,本件建物を含む現有有姿(「現状有姿」の趣旨かと思われるが,契約書の文言を用いる。)により,本件土地Aの返還を受ける。 (エ) 協会は,(ウ)の返還に当たっては,本件建物に所有権の行使を妨げる権利が存在するときは,これを消滅させ,かつ,その権利に係る登記があるときは,これを抹消しなければならない。 (オ) 大阪府は,契約締結後,協会からの請求に基づき,速やかに,上記補償金の一部として,35億9800万円を協会に支払い,本件土地Aの返還を受けた後,協会からの請求に基づき,残額を支払う。 (カ) 本件建物の所有権は,(ウ)の返還を完了した時をもって, 償金の一部として,35億9800万円を協会に支払い,本件土地Aの返還を受けた後,協会からの請求に基づき,残額を支払う。 (カ) 本件建物の所有権は,(ウ)の返還を完了した時をもって,大阪府に移転する。 (キ) 大阪府は,本件建物の所有権移転後,直ちに本件建物の所有権移転登記を嘱託する。 オ現在に至るまで,大阪府議会において,本件立退補償契約につき,本件補正予算とは別個の独立した議案としての議決はされてはいない(弁論の全趣旨)。 (4) 本件各支出ア協会は,大阪府に対し,平成11年3月19日付け請求書で,本件立退補償契約に基づき,補償金の一部として,35億9800万円を請求した(甲19)。 イ大阪府副出納長gは,同月26日,同年4月28日改正前の大阪府会計事務決裁規程8条1項に基づき,本件立退補償契約に基づく補償金の一部である35億9800万円の前金払の方法による支出(以下「本件前金払」という。)を代決し,大阪府は,同年3月26日,協会に対し,本件立退補償契約に基づく補償金の一部として,本件前金払をした(甲19,乙1,丙45)。 ウ同月31日,協会は,大阪府に対し,本件建物内のテナントに明渡しをまだ承諾していないものがあるため,本件立退補償契約に基づく同日までの本件土地Aからの立退き及びその返還が困難な状況となったとの理由で,上記立退き及び返還の期限を3か月程度猶予するよう申し入れた(甲21)。 エ被告aは,同日,前記大阪府事務決裁規程3条19号に基づいて,協会に対し上記立退き及び返還の期限を同年6月30日まで猶予することを専決し,大阪府と協会は,同年3月31日,その旨の協議書を作成した(甲20,21,23,30)。 オ 9号に基づいて,協会に対し上記立退き及び返還の期限を同年6月30日まで猶予することを専決し,大阪府と協会は,同年3月31日,その旨の協議書を作成した(甲20,21,23,30)。 オ協会は,同年6月30日までに,本件立退補償契約に基づき,本件土地Aからの立退き及び大阪府への本件土地Aの返還を完了した(甲26)。 カ大阪府は,同日,大阪法務局に対し,登記原因を「平成11年6月30日売買」として,本件建物の所有権移転登記の嘱託(同法務局同日受付第18184号)をした(甲4,24,25)。 キ協会は,大阪府に対し,同年7月1日付け請求書で,本件立退補償契約に基づき,補償金の残額15億4212万8000円を請求した(甲28)。 ク gは,同年7月9日,同年4月28日改正後の大阪府会計事務決裁規程8条1項に基づき,本件立退補償契約に基づく補償金の残額15億4212万8000円の支出を代決し,大阪府は,同年7月9日,協会に対し,上記支出をした(甲27,乙2)。 (5) 本件売買契約平成13年5月17日,大阪府は,大阪府市町村職員共済組合(以下「共済組合」という。)との間で,本件土地A及び本件土地Bとほぼ同一の土地である別紙物件目録記載4及び5の各土地(別紙図面2記載の土地。以下「本件土地C」という。)を,売買代金36億6864万5000円で共済組合に売却する旨の府有財産売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した(甲35)。 (6) 監査請求等ア原告ら外33名は,本件立退補償契約の締結及び本件各支出は違法・不当である旨主張して,平成12年3月16日,大阪府監査委員に対し,住民監査請求をした(甲1,2)。 イ大阪府監査委員は,上記原告ら 3名は,本件立退補償契約の締結及び本件各支出は違法・不当である旨主張して,平成12年3月16日,大阪府監査委員に対し,住民監査請求をした(甲1,2)。 イ大阪府監査委員は,上記原告ら外33名に対し,同年5月11日付けで原告らの上記主張は認められない旨の監査結果を通知した(甲3)。 ウ原告らは,同年6月1日,本件訴えを提起した。 2 争点及び当事者の主張(1) 本件立退補償契約の締結及び本件各支出の違法性の有無ア必要性の有無について(原告らの主張)(ア) 協会は,事業収益が年々減少し,平成9年度決算において16億円を超える損失を出し,13億円の債務超過状態となった。破たんを回避する方策としてのγホテルの建て替えも,住友生命及び大和銀行が事業から撤退することで頓挫した。しかし,大阪府は,協会にα会館敷地を無償貸与したり,相場より安い賃料で貸与し,また協会への補助金,人的派遣,γホテルの積極的利用による事業収益への貢献などによって,協会を支援してきたといえるから,協会の破たんに対して責任を負わなければならない理由はなかった。 (イ) また,本件立退補償契約及び本件各支出は,清算を前提とした協会からの本件買取申入れを受けてされたものであるところ,本件建物は,住友生命や大和銀行なども手を出さない譲渡性の薄いものであり,建て替えなければならないほど価値の低いものであったのだから,協会としては,速やかに本件賃貸借契約を解約して本件建物を明け渡す必要があった。仮に協会が本件建物に譲渡価値があると思っていたのであれば,大阪府としては,協会から賃料を受領し,本件建物の譲渡について承諾するか否かの判断をするだけでよかったのであり,本件建物を積極的に買い取る 仮に協会が本件建物に譲渡価値があると思っていたのであれば,大阪府としては,協会から賃料を受領し,本件建物の譲渡について承諾するか否かの判断をするだけでよかったのであり,本件建物を積極的に買い取る必要はなかった。 (ウ) さらに,仮に本件立退補償契約が締結されなかった場合,協会の退職金債務や借入金債務が支払不能となり,本件建物に設定された抵当権が実行されることとなったと考えられるが,協会の清算手続においては任意売却の可能性も残されていたし,競売となったとしても大阪府が落札することはできた上,第三者が落札しても大阪府と協会との特殊な賃貸借契約は落札者を拘束するし,引き続き賃料も支払われることとなっていたのであるから,大阪府にとって何ら不都合はなかった。 (エ) 被告ら及び参加人は,δ地区をマイドームおおさか,大阪商工会議所及びγホテルによる三位一体のコンベンションゾーンとして位置づける旨の都心型新産業育成拠点整備構想(以下「整備構想」という。)を本件立退補償契約の締結及び本件各支出の大義名分として主張する。しかし,大阪商工会議所は大阪市内の商工業者の団体であって,そのために大阪府が巨額の公金を支出する必要はない。また,三位一体のコンベンションゾーンとは,企業の会合に便利なように会議場と宿泊施設の接近を図るというものであるところ,δ地区に限って会議場と宿泊施設を接近させる必要はないし,仮にその必要があるとしても,マイドームおおさか近辺には幅広い料金価格のホテルが幾多も存在している。このように,整備構想は,大阪府において安易に巨額の公金を支出する必要のあるようなものとは考えられない。 (オ) したがって,本件立退補償契約の締結及び本件各支出は,全く不必要なものであり,地方自治法(平成11年法律第 て安易に巨額の公金を支出する必要のあるようなものとは考えられない。 (オ) したがって,本件立退補償契約の締結及び本件各支出は,全く不必要なものであり,地方自治法(平成11年法律第87号による改正前のもの。以下,同改正前の地方自治法を「法」という。)2条12項,地方財政法2条,4条に反し,違法である。 (被告ら及び参加人の主張)(ア) 大阪府は,協会から本件買取申入れを受けたものの,本件建物のホテル用建物という特殊性とその老朽化の点から,何らかの公用又は公共の用に供するあてもその他の利用に供するあてもなかったため,不要な公有財産の取得となる買取りに応じることはできなかった。 しかし,γホテルの建替計画が断念された後においても,δ地区の産業振興機能を維持充実させていくためには,同地区に新しいホテルが是非とも必要であった。そこで,被告らは,大阪府以外の事業者の手による整備構想の実質的な実現を図るため,売却の際に支障となる協会の借地権をあらかじめ消滅させ,本件土地Aの売却も含めた多様な手法による土地の活用が図れるよう,公共事業における損失補償に準じて,本件土地Aの明渡しに対する適正な補償を行ったものである。 (イ) なお,仮に,大阪府が本件買取申入れに応じなければ,協会としては,資産である本件建物を第三者に譲渡して換価することになり,大阪府が譲渡の承諾を拒否した場合には,協会は,平成3年法律第90号による廃止前の借地法(以下「旧借地法」という。)9条ノ2の規定に基づき,裁判所に対して,大阪府の承諾に代わる許可を求めることになったと考えられる。しかし,裁判所の許可を得て第三者が本件土地Aの借地権付きの本件建物を取得した場合,当該第三者の手により,老朽化した本 き,裁判所に対して,大阪府の承諾に代わる許可を求めることになったと考えられる。しかし,裁判所の許可を得て第三者が本件土地Aの借地権付きの本件建物を取得した場合,当該第三者の手により,老朽化した本件建物の建て替えが行われるかどうか,マイドームおおさか等に対する宿泊,宴会,レストランなどの十分な支援ができるホテル機能が維持されるかどうかは不確実であり,整備構想の実現が阻害されるおそれがあった。 (ウ) このように,本件立退補償契約の締結及び本件各支出は,整備構想の実現という公益目的の達成のために必要かつ適切な施策判断によるものであり,何ら違法な点はない。 イ補償金額が適正か否かについて(原告らの主張)本件立退補償契約における補償金額51億4012万8000円は,本件借地権価格と本件建物価格の合計額であるところ,それぞれについて,鑑定評価に付された公正な価格との体裁がとられているが,その根拠は薄弱というほかなく,価格を不当に高く設定するものであるから,違法である。 (ア) 本件借地権価格について本件訴訟において提出されている株式会社谷澤総合鑑定所(以下「谷澤総合鑑定所」という。)及び大和不動産鑑定株式会社(以下「大和不動産」という。)の各鑑定評価書等は,いずれも本件借地権価格を算出するに当たり,本件土地Aの更地価格として正常価格を算出している。しかし,正常価格とは,市場性を有する不動産について,合理的な市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいうところ,本件の場合には,協会は,γホテルを閉鎖し,清算することになっていたのであるし,大阪府とは別個独立の法人格を有していたものの,設立及びその後の運営において,大阪府から人的にも物的 な価格をいうところ,本件の場合には,協会は,γホテルを閉鎖し,清算することになっていたのであるし,大阪府とは別個独立の法人格を有していたものの,設立及びその後の運営において,大阪府から人的にも物的にも大きな支援を受け,実質的には大阪府が運営を行ってきたのであり,このような両者の関係によれば,立退補償の価格として正常価格を求めることは適切ではなく,限定価格が求められるべきであった。 そして,谷澤総合鑑定所及び大和不動産が平成13年4月19日付けで作成した各鑑定評価書によれば,本件土地Aないし本件土地Cの更地価格が平成11年1月時点から平成13年4月時点にかけて急激に下落していることを考慮すると,平成11年1月時点の上記更地価格は,正常価格としても高すぎるのであり,本件当事者間の特殊性を考慮した限定的な価格を算出すれば,更に低額なものとなっていたといえる。 また,本件賃貸借契約が,当初は無償の貸与であり,その後賃貸借になっても,地代は低額に抑えられ,保証金等は差し入れられていなかったという事情を考慮すれば,借地権割合は上記各鑑定評価よりも低く算出されるべきである。 (イ) 本件建物の価格について本件建物は取り壊されることを前提とされていたにもかかわらず,価値のあるものと評価され,本件立退補償契約における補償金額に含められているのは不当である。百歩譲って,大阪府の好意による本件借地権及び本件建物の立退補償を認めるとしても,本件建物を取り壊すことを前提とする以上,本件借地権価格から本件建物撤去費用を差し引いた価格を補償金額とすべきであった。 (被告ら及び参加人の主張)(ア) 本件立退補償契約における補償金額は,本件賃貸借契約を合意解約 価格から本件建物撤去費用を差し引いた価格を補償金額とすべきであった。 (被告ら及び参加人の主張)(ア) 本件立退補償契約における補償金額は,本件賃貸借契約を合意解約するに際して,協会が本件土地Aを明け渡すことに対し,適正な額を補償したものであり,その内容は,本件借地権価格と本件建物価格を合算したものである。 本件借地権価格の算定に当たっては,大阪府が公共事業における損失補償の際に行う一般的な手法に則り,不動産鑑定会社2社から鑑定評価を取り,その中間額を,大阪府附属機関条例1条の規定により設置され,庁外の有識者等によって構成される大阪府財産評価審査会に諮問して,その答申を受けているところ,上記各鑑定評価は,地価公示価格や付近取引事例を基に本件土地A上に標準画地を設定して更地価格を査定し,それに借地権割合を乗じる割合方式や,賃料を資本還元して価格を求める賃料差額還元法などの手法により行われている。 また,本件建物価格の算定については,上記不動産鑑定会社1社から鑑定評価を取り,これを時点修正した評価価格を大阪府財産評価審査会に諮問して,適正価格として答申を受けているところ,上記鑑定評価は,本件建物の再調達原価に経年及び観察の減価修正を施す手法により正常価格を求めている。 なお,本件の場合,価格の上限ないし下限について評価する必要がある売却や購入の場合と異なり,協会の資産に対する適正な補償価格を求めるために,大阪府財産評価審査会に諮問し,答申を得たものであり,上記補償金額は,適正な手続に基づく適正な額である。 (イ) 原告らは,本件土地Aの借地権価格を算定するに際しては,その正常価格ではなく限定価格を求めるべきである旨主張する。しかし, 上記補償金額は,適正な手続に基づく適正な額である。 (イ) 原告らは,本件土地Aの借地権価格を算定するに際しては,その正常価格ではなく限定価格を求めるべきである旨主張する。しかし,本件立退補償契約は,上記のとおり,δ地区における産業振興機能の維持・充実を目的として,γホテルに代わる新たなホテル機能の確保を図るべく,協会が有する本件借地権を消滅させるために,公共事業における補償に準じて締結したものであるところ,補償における適正価格は,相手方の有する資産に対する適正な対価によるべきものであり,適正な対価とは,合理的な市場で形成されるであろう市場価値にほかならないのであって,その価格の算定に当たっては,相手方を大阪府に限定して考えるべきものではない。求めるべき価格は限定価格ではなく,正常価格である。 ウ本件立退補償契約の締結について大阪府議会の議決を経ていないことについて(原告らの主張)(ア) 大阪府議会の議決を要する契約,財産の取得及び処分並びに重要な公の施設に関する条例(以下「議決条例」という。)2条に規定する不動産の「買入れ若しくは売払い」とは,民法555条に定める売買の実質を持つものをいうと解される。そして,本件立退補償契約においては,協会が大阪府に対し本件建物所有権の移転義務を負っている上,51億4012万8000円という補償金額は本件借地権価格と本件建物価格との合算額であり,本件建物の対価を含んでいることが明らかである。したがって,本件立退補償契約は,その名称及び契約書中の文言こそ「立退補償」とされているが,実質的には売買の性質を含むものというべきであり,その締結は,議決条例2条に規定する不動産の「買入れ」に該当する。よって,本件立退補償契約の締結には,法96条1項 言こそ「立退補償」とされているが,実質的には売買の性質を含むものというべきであり,その締結は,議決条例2条に規定する不動産の「買入れ」に該当する。よって,本件立退補償契約の締結には,法96条1項8号,議決条例2条により,大阪府議会の議決が必要である。 (イ) 法2条15項,16項によれば,法96条1項で要求された議会の議決を経ない地方公共団体の長の行為は無効である(最高裁判所昭和35年7月1日第二小法廷判決・民集14巻9号1615頁)。したがって,大阪府議会の議決を経ていない本件立退補償契約は無効であり,本件立退補償契約の締結及びこれに基づく本件各支出は違法である。 参加人は,本件補正予算の議決によって本件立退補償契約の締結に必要な議決もされていると解すべきである旨主張するが,本件補正予算の議決において,本件建物の所有権が大阪府に移転することが独立して審議の対象とされていたわけではなく,かかる本件補正予算の議決をもって,法96条1項に規定する議決の不存在という瑕疵を治癒することはできない。 (被告らの主張)(ア) 法96条1項8号,地方自治法施行令(平成12年政令第55号による改正前のもの。以下,同改正前の地方自治法施行令を「令」という。)121条の2第2項,同別表第二の定めを受けた議決条例2条は,不動産の「買入れ」を大阪府議会の議決事項としているが,取引の安全を重視する観点及び重要事項について団体意思の完成に議会の議決を要求しつつ制限列挙主義を採用する法96条1項の趣旨によれば,上記各規定の文言は文理的に解釈されるべきであるから,議決条例2条に規定する不動産の「買入れ」とは売買をいうものと解すべきであって,安易に拡張的に解釈することはできない。 よれば,上記各規定の文言は文理的に解釈されるべきであるから,議決条例2条に規定する不動産の「買入れ」とは売買をいうものと解すべきであって,安易に拡張的に解釈することはできない。 また,仮に「買入れ」は売買と実質的に同視されるものを含むとの拡張解釈を容れる余地があるとしても,それは,地方公共団体の長及びその直接の取引の相手方が議会の議決を潜脱するために売買と実質的に同視されるものをあえて「買入れ」と異なる形式とした場合などに限定されるべきである。本件買取申入れに対して大阪府が立退補償で応じたのは,本件借地権の消滅が目的であったにすぎず,本件補正予算について大阪府議会の議決を経ていることからしても,議会の議決を潜脱することを目的としていたのでないことは明らかである。 したがって,本件立退補償契約の締結は「買入れ」に当たらない。 (イ) また,法96条1項本文に規定する議会の議決を欠いた行為の私法上の効力については,原則は無効であるが,善意の第三者との関係においては有効と解される(最高裁判所昭和35年7月1日第二小法廷判決・民集14巻9号1615頁)。そして,仮に本件立退補償契約が「買入れ」に該当し,大阪府議会の議決を経ていないために原則として無効となるとしても,協会は本件立退補償契約の締結に議会の議決を要することについて善意であり,かつ,そのことについて過失もないことは明らかであるから,本件立退補償契約は,協会との関係において有効である。 (参加人の主張)(ア) 法96条1項8号が想定する議会の議決を要する公有財産の取得とは,当該地方公共団体において,行政財産又は普通財産として,行政活動に資することを前提に管理運用することを予定して取得することであり, ) 法96条1項8号が想定する議会の議決を要する公有財産の取得とは,当該地方公共団体において,行政財産又は普通財産として,行政活動に資することを前提に管理運用することを予定して取得することであり,使用する目的のない取り壊し予定の建物の一時的な所有権移転は,これに当たらない。そして,本件立退補償契約は,公共事業における損失補償基準に準じて,本件借地権の消滅及び本件土地Aの明渡しに対する適正な補償を行ったものであって,本件借地権付きの本件建物を公有財産とする目的で買い取ったものではないから,議決条例2条にいう不動産の「買入れ」には当たらず,議会の議決を要しない。また,本件立退補償契約による本件建物の所有権の移転が不動産の「買入れ」に当たると解することは,本件買取申入れへの対応についての大阪府の意思形成過程における検討経過や,本件補正予算に対する議会の審議結果を無視するものであり,契約当事者の意思をも無視するもので契約自由の原則からも許されない。 (イ) また,本件立退補償契約による本件建物所有権の移転について,仮に議会の議決が必要であるとしても,本件においては,実質的に議会の議決がされているといえる。 すなわち,法96条1項8号,議決条例2条の各規定による議会の議決は,不動産の買入れに要する予算の議決とは別に不動産の買入れに係る議案を議会に提出して議決を得ることが通常必要である。しかしながら,個別の不動産取得の議案に対する議決がされていなくとも,議会において取得の必要性及び妥当性について十分審議され,取得に必要な歳入歳出項目を含む予算に対して議決がされておれば,公有財産の取得に必要な議決がされたものと解すべきである。そして,本件では,平成11年2月定例府議会に本件補正予算が上程され,同年2月23日から な歳入歳出項目を含む予算に対して議決がされておれば,公有財産の取得に必要な議決がされたものと解すべきである。そして,本件では,平成11年2月定例府議会に本件補正予算が上程され,同年2月23日から24日までの本会議及び同年3月3日から9日までの商工農林常任委員会における審議の中では,立退補償の結果として本件建物所有権が大阪府に移転すること及び本件建物をγホテル跡地の購入者において撤去してもらうという取扱いの説明がされ,また,補償金額における本件借地権価格相当額が約33億7000万円,本件建物価格相当額が約17億7000万円であることも明らかにされており,大阪府議会もこれを認識・理解し,本件立退補償契約締結の必要性及び妥当性について十分な審議をした上で本件補正予算を議決している。したがって,本件補正予算の議決により,本件建物の取得に必要な議決もされている。 エ本件前金払について(原告らの主張)本件前金払は,前金払が許される場合に該当しない点においても違法である。すなわち,法232条の5第2項,令163条に前金払が許される場合についての定めがあるが,本件の場合,本件立退補償契約は請負ではなく,協会が本件建物を他に移転するわけでもない。本件前金払は,本件建物の価格の約2倍に当たる金額を支払うものであるから,移転料に該当せず,前金払のできる経費にも該当しない。被告ら及び参加人は,本件立退補償契約が立退補償であることを前提に,本件前金払の必要性を主張するが,法律に適合した前金払でなかったことは明らかである。 (被告ら及び参加人の主張)(ア) 地方公共団体における前金払については,法232条の5第2項の規定を受けて,令163条1号から7号までに具体的に前金払できる経費 。 (被告ら及び参加人の主張)(ア) 地方公共団体における前金払については,法232条の5第2項の規定を受けて,令163条1号から7号までに具体的に前金払できる経費が定められ,8号において「前各号に掲げるもののほか,経費の性質上前金をもって支払をしなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で普通地方公共団体の規則で定めるもの」と定めている。上記規定を受けて,大阪府においては,大阪府財務規則46条において,土地又は家屋の買入れ又は借入れに要する経費(1号),府営住宅の建て替え等により,家屋又は物件の除去又は移転を必要とする場合における借家人補償費,造作等除去補償費等の経費(2号)が前金払のできる経費として定められている。ところで,上記各規定は,令163条列挙の経費以外に,前金払できるすべての経費を限定的に列挙したものではなく,通常前金払が必要とされている経費を定めているものと解すべきである。すなわち,令及び大阪府財務規則に列挙されていない経費であって,事務の性質上前金払でなければ処理できない経費について,一切前金払が許されないとするならば,地方公共団体の事務処理に著しい支障を来すこととなるからである。したがって,令及び大阪府財務規則に列挙された経費以外の経費であっても,地方公共団体の事務処理において,事務の性質上前金払でなければ処理し難い場合は,法及び令の趣旨を逸脱しない範囲内において,当該地方公共団体の規則に定める手続に則り,例外的に前金払を定めて処理することができるものと解すべきであり,大阪府財務規則179条においても,「会計事務について,この規則の定めにより難いときは,知事が別に定めることができる」と定められている。 (イ) 本件立退補償契約において,協会は,平成11年3月31日ま 条においても,「会計事務について,この規則の定めにより難いときは,知事が別に定めることができる」と定められている。 (イ) 本件立退補償契約において,協会は,平成11年3月31日までに,本件建物に所有権の行使を妨げる権利が存在するときは,これを消滅させ,かつ,その権利に係る登記があるときはこれを抹消して,本件土地Aからの立退き及び本件土地Aの返還を行い,本件建物を現有有姿のまま大阪府に引き渡さなければならなかったところ,大阪府が協会から本件土地Aの明渡しを円滑に受けるためには,①協会が,本件建物に根抵当権を有していた大和銀行等からの借入金を同日までに返済して,当該根抵当権設定登記を抹消しておかなければならず,②本件建物内のテナント5店舗に支払う立退補償金が必要であり,③解雇される従業員に対する退職金の支給原資を確保し,その支給時期を明確にする必要があった。このように,本件立退補償契約の締結及びその円滑な履行のためには,大阪府において協会が必要とする金額の前金払をする必要があった。そして,前記のとおり,本件立退補償契約は,公共事業による補償に準じ,協会の本件土地Aからの立退きに対して,その資産である借地権の価値に対する補償を行うものであるところ,令163条4号は「土地又は家屋の買収又は収用によりその移転を必要とすることとなった家屋又は物件の移転料」について前金払を認めており,また,大阪府財務規則46条2号も,府営住宅における明渡し補償について前金払を認めており,本件前金払に係る補償金は,上記両規定における経費と同一の性格の経費であることから,同規則179条の規定に基づき,同規則46条の規定の特例を定めて本件前金払が行われた。 (ウ) したがって,本件前金払は,法,令及び大阪府財務規則に定められた前金払の あることから,同規則179条の規定に基づき,同規則46条の規定の特例を定めて本件前金払が行われた。 (ウ) したがって,本件前金払は,法,令及び大阪府財務規則に定められた前金払の規定に反するものでも,前金払制度の趣旨を逸脱したものでもなく,適法かつ適正な前金払である。 (2) 被告らの責任(原告らの主張)ア当該職員としての責任被告a,同b及び同cは,次のとおり,当該職員としての責任を負う。 (ア) 被告aは,大阪府副知事及び協会常務理事の役職に在ったのであるから,利益相反取引ともいうべき本件立退補償契約の締結に際し,その必要性及び適法性について慎重な吟味を行うべき注意義務があったのに,弁護士等の専門家の指導・助言を受けるなどして慎重な吟味を行った形跡は見当たらず,被告aには著しい注意義務違反がある。被告aは,違法な本件立退補償契約の締結を専決したのであるから,当該職員としての責任を負う。 (イ) 被告bは,大阪府知事及び協会会長の役職に在ったのであるから,利益相反取引ともいうべき本件立退補償契約の締結に際し,その必要性及び適法性について慎重な吟味を行い,副知事以下の大阪府職員の行為について監督すべき注意義務があったのに,弁護士等の専門家の指導・助言を受けるなどして慎重な吟味を行った形跡は見当たらず,被告bには著しい注意義務違反がある。被告bは,本件立退補償契約の締結について本来的に決裁権限を有する者であるから,当該職員としての責任を負う。 (ウ) 被告cは,大阪府出納長及び協会監事の役職に在ったのであるから,利益相反取引ともいうべき本件立退補償契約の締結及びこれに基づく本件各支出の必要性及び適法性について慎重な吟味を行い (ウ) 被告cは,大阪府出納長及び協会監事の役職に在ったのであるから,利益相反取引ともいうべき本件立退補償契約の締結及びこれに基づく本件各支出の必要性及び適法性について慎重な吟味を行い,gによる本件各支出の代決を差し止めるべき注意義務があったのに,弁護士等の専門家の指導・助言を受けるなどして慎重な吟味を行った形跡は見当たらず,被告cには著しい注意義務違反がある。被告cは,本件各支出について本来的に権限を有する者であるから,当該職員としての責任を負う。 イ怠る事実の相手方としての責任被告らは,次のとおり,違法な本件立退補償契約の締結及びこれに基づく本件各支出に共同して関与し,過失により大阪府に対し後記の損害を与えたのであるから,大阪府は,被告らに対し,共同不法行為に基づく損害賠償請求権を有しているところ,参加人は上記損害賠償請求権の行使を違法に怠っており,被告らは怠る事実の相手方としての責任を負う。 (ア) 被告aは,大阪府副知事及び協会常務理事として,平成11年1月19日に大阪府に対し本件買取申入れを行うこと等を決めた協会理事会の決議に参加し,「(財)協会との立退補償契約の締結及び補償金の支出について(伺い)」と題する文書及び「立退補償契約に基づく協議書の締結について(伺い)」と題する文書を決裁するなどした。 前記のとおり,被告aには上記各行為について著しい注意義務違反がある。 (イ) 被告bは,大阪府知事及び協会会長として,協会理事会の上記決議に参加し,本件立退補償契約の締結について,大阪府議会本会議及び同商工農林常任委員会における答弁を行った。 前記のとおり,被告bには上記各行為について著しい注意義務違反がある。 参加し,本件立退補償契約の締結について,大阪府議会本会議及び同商工農林常任委員会における答弁を行った。 前記のとおり,被告bには上記各行為について著しい注意義務違反がある。 (ウ) 被告cは,大阪府出納長として,本件立退補償契約の締結が議会の議決を経ていないことを知りながら,「(財)国際見本市協会との立退補償契約の締結及び補償金の支出について(伺い)」と題する文書を決裁した。 前記のとおり,被告cには上記各行為について著しい注意義務違反がある。 (エ) 被告dは,大阪府商工部長及び協会常務理事として,協会理事会の上記決議に参加し,「(財)国際見本市協会との立退補償契約の締結及び補償金の支出について(伺い)」と題する文書及び「立退補償契約に基づく協議書の締結について(伺い)」と題する文書を決裁したほか,「(財)国際見本市協会関係参考資料の送付について」と題する同月21日付けの大阪府議会議員あて文書を作成し,本件立退補償契約の締結について,大阪府議会商工農林常任委員会における答弁などを行った。 被告dは,上記各役職に在ったのであるから,上記各行為に際し,利益相反取引ともいうべき本件立退補償契約の必要性及び適法性について慎重な吟味を行うべき注意義務があったのに,弁護士等の専門家の指導・助言を受けるなどして慎重な吟味を行った形跡は見当たらず,むしろ,法的問題点について十分な検討をしないまま積極的に上記各行為により本件立退補償契約の締結を進めてしまっている。したがって,被告dには著しい注意義務違反がある。 (オ) 被告eは,大阪府理事及び協会常務理事として,協会を代表して本件買取申入れ及び同年3月31日付け協議書の締結などを行った。 たがって,被告dには著しい注意義務違反がある。 (オ) 被告eは,大阪府理事及び協会常務理事として,協会を代表して本件買取申入れ及び同年3月31日付け協議書の締結などを行った。 被告eは,上記各役職に在ったのであるから,上記各行為に際し,利益相反取引ともいうべき本件立退補償契約の必要性及び適法性について慎重な吟味を行うべき注意義務があったのに,弁護士等の専門家の指導・助言を受けるなどして慎重な吟味を行った形跡は見当たらない。したがって,被告eには著しい注意義務違反がある。 (カ) 被告fは,大阪府商工部新産業課長として,「(財)国際見本市協会関係参考資料の送付について」と題する同年1月21日付けの大阪府議会議員宛て文書の作成に関与し,本件立退補償契約の締結についての大阪府議会商工農林常任委員会における答弁,「登記嘱託書の作成について(伺い)」と題する文書の決裁などを行った。 被告fは,上記役職に在ったのであるから,上記各行為に際し,利益相反取引ともいうべき本件立退補償契約の必要性及び適法性について慎重な吟味を行うべき注意義務があったのに,弁護士等の専門家の指導・助言を受けるなどして慎重な吟味を行った形跡は見当たらず,むしろ,法的問題点について十分な検討をしないまま積極的に上記各行為により本件立退補償契約の締結を進めてしまっている。したがって,被告fには著しい注意義務違反がある。 (被告らの主張)ア被告aは,本件買取申入れに対し,売買契約の形式で応じるか,立退補償の形式で応じるかについて内部で慎重な検討を重ねた末に後者の選択をするに至ったものであり,本件補正予算について大阪府議会の議決を経ていることにかんがみても,上記選択のプロセスに何らの るか,立退補償の形式で応じるかについて内部で慎重な検討を重ねた末に後者の選択をするに至ったものであり,本件補正予算について大阪府議会の議決を経ていることにかんがみても,上記選択のプロセスに何らの注意義務違反はない。 イ被告bの責任は,指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により被告aによる本件立退補償契約の締結の専決を阻止しなかった場合にのみ生じるにすぎないところ,被告aの上記判断はおよそ一見して不合理とは考えられず,同被告に対して行うべき何らの監督・指導は想定できないから,被告bに注意義務違反はない。 ウ被告cは,指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失によりgによる本件各支出の代決を阻止しなかった場合にのみ責任を負うにすぎないところ,本件補正予算について大阪府議会の議決を経ている以上,上記の指揮監督上の義務に違反してgによる本件各支出の代決を阻止しなかったという意味での故意又は過失は存在しない。 エその余の被告らの責任に関する原告らの主張は争う。 (3) 損害(原告らの主張)被告らの違法な財務会計行為又は不法行為がなければ,本件立退補償契約に基づく51億4012万8000円もの本件各支出はあり得なかったであろうから,本件における大阪府の損害額は,51億4012万8000円となるというべきである。 なお,仮に本件立退補償契約を締結する必要が認められ,それ自体が違法といえないとしても,前記のとおり,本件立退補償契約の締結に際しては大阪府議会の議決という必要な手続を欠いていることが明らかであるから,少なくとも本件建物価格相当分の17億6924万9000円が大阪府の損害となる。 (被告らの主張)前記のとおり,本件立退補償契約は な手続を欠いていることが明らかであるから,少なくとも本件建物価格相当分の17億6924万9000円が大阪府の損害となる。 (被告らの主張)前記のとおり,本件立退補償契約は有効で,かつ,補償金額は正当であり,それが不当に低廉であるなどの事情は一切ないから,本件では大阪府に何らの損害も生じていない。 第3 当裁判所の判断 1 本件立退補償契約の締結及び本件各支出の違法性の有無(争点(1))について(1) 認定事実前記前提事実に加え,証拠(後掲)及び弁論の全趣旨によれば,本件立退補償契約の締結に至る経緯について,次の各事実が認められる。 ア大阪府商工部新産業振興課は,昭和62年ころ,γホテルの北東側隣接地に大規模な展示場,会議室等を備えた,中小企業の振興等を目的とする施設であるマイドームおおさかが建設され,同ホテル,マイドームおおさか及びこれらに隣接する大阪商工会議所が通路により連結されて以来,マイドームおおさか及び大阪商工会議所の展示,会議等を伴う催事を開く機能と,同ホテルの有する催事の参加者に対し宿泊,宴会,飲食等を提供する機能とが三位一体の関係にあるとして,上記3施設の所在するδ地区を「都心型新産業育成拠点区域」と捉え,同ホテルとこれに隣接する大阪府商工会館の建て替えを機に,同地区においてデザイン等の新たな産業の育成拠点を整備し,大阪府下の産業振興の拠点を形成する旨の整備構想を有していた。大阪府の上記整備構想の一環としての新ホテル整備構想を踏まえ,平成4年10月には,協会,大阪府が中心となり住友生命,大和銀行の参画の下,産業支援型ホテル整備推進協議会が設置され,平成5年5月には,新ホテル建設の基本計画策定や事業手法の検討等を行うため,協会と大和銀行の出資に係る大阪コクサ が中心となり住友生命,大和銀行の参画の下,産業支援型ホテル整備推進協議会が設置され,平成5年5月には,新ホテル建設の基本計画策定や事業手法の検討等を行うため,協会と大和銀行の出資に係る大阪コクサイホテル企画株式会社が設立された。 大阪府商工部新産業振興課においても,平成8年7月ころには,前記整備構想に基づき,①老朽化が進んでいた同ホテル建物を建て替え,同ホテル敷地の高度・最適利用を図り,マイドームおおさか等と一体性のある利便性の高い施設として新ホテルを建設すること,②都市型展示場,ホール,中小会議施設,研修施設等の諸設備及びビジネス情報等の経営資源を蓄積する機能を有する産業振興センター(仮称)を整備することについて調査検討を行っていた(甲32,丙1,2,4,40)。 イ上記新ホテル建設事業について検討していた協会は,住友生命,大和銀行及び大阪コクサイホテル企画株式会社との間において,平成9年2月26日付けで,同事業の基本となる事項について協定を締結した(丙1,6)。 ウ平成10年4月1日,協会は,大阪府との間で,本件賃貸借契約を締結した。 エ γホテルの経営は,バブル経済の崩壊後,長引く景気低迷による法人需要の低下やホテルの開業ラッシュに伴う競争激化などの影響を受け,平成5年度以降連続して経常赤字となり,平成9年度決算における当期損失額は6億0776万4859円,累積欠損金は16億5722万5064円,銀行等からの短期借入金は27億2000万円に達していた。そのため,整備構想の実現を目指す大阪府の主導の下,平成10年4月ころ,前記新ホテル建設事業のスキームの見直し等の協議が行われ,協会も,同年9月,平成11年度に収支均衡を図ることを目標とする経営健全化計画を策定したが,平成10年 大阪府の主導の下,平成10年4月ころ,前記新ホテル建設事業のスキームの見直し等の協議が行われ,協会も,同年9月,平成11年度に収支均衡を図ることを目標とする経営健全化計画を策定したが,平成10年9月以降も売上げ及び収益が予測を下回り,同年6月に住友生命が同事業からの撤退を表明したのに続き,同年11月,大和銀行も同事業からの撤退を表明したため,同月,大阪府及び協会において,同事業は最終的に断念されるに至った(甲32,丙1,8,29ないし33)。 オ大阪府は,前記γホテルの建て替えによる新ホテル建設事業のスキームの見直しと並行して,協会の財務状況を見極めつつ,γホテルを閉鎖して協会を解散させる場合もあることも想定し,そのような場合であっても,δ地区が有する産業振興機能を支援する新たなホテル機能が必要であり,また,協会従業員の労働債権を確保するため,協会の破産は避ける必要があるとの方針の下,対応策を検討していたが,上記のとおり,同月,同事業が最終的に断念されたため,協会に対し本件借地権及び本件建物の対価を支払って本件借地権を消滅させ,γホテル敷地の完全な所有権を回復し,同敷地において新たなホテル機能の確保を図るという方針が決定された。そして,被告fは,大阪府公有財産規則11条の規定に基づき,大阪府財産評価審査会の意見を聴取するため,平成11年1月6日付けで,同審査会に対し,①本件借地権の価格を谷澤総合鑑定所及び大和不動産による後記の各鑑定評価額の中間値である1平方メートル当たり56万2584円と評価すること及び②本件建物の価格を谷澤総合鑑定所の後記鑑定評価額に時点修正を加えた参考価格である17億6924万9000円と評価することについて諮問をした(甲18,丙14,39,被告f本人)。 カ協会は,前記新ホテル建設事 合鑑定所の後記鑑定評価額に時点修正を加えた参考価格である17億6924万9000円と評価することについて諮問をした(甲18,丙14,39,被告f本人)。 カ協会は,前記新ホテル建設事業の断念を踏まえ,協会の経営状況が非常に厳しく,新ホテル建設の見通しがないまま,これ以上経営を継続することは困難になったことなどを理由に,γホテルの営業等の協会の事業を平成10年度内で終了し,解散に向け準備作業に入ることとし,平成11年1月19日,協会理事会において,上記方針を正式に決定した上,大阪府知事であった被告bを除く理事らにおいて,協会の有する資産を換価するため,大阪府に対し本件借地権付きの本件建物の買取りの申入れをすること及び大阪府の承諾が得られた場合には本件建物を第三者に譲渡することを承認し,上記申入れ等に係る契約に関する一切の権限を常務理事である被告eに委譲すること等を決定した(丙9)。 キ被告eは,同月20日,協会を代表して,大阪府に対し,本件建物を借地権付き建物として買い取るよう求める旨の本件買取申入れをした(甲15)。 ク大阪府財産評価審査会は,同日までに,本件借地権及び本件建物の価格をいずれも前記諮問のとおりと評価する旨の答申をした(甲18)。 ケ被告dは,同月21日付けで,各大阪府議会議員に対し,本件買取申入れへの対応に関する参考資料として,本件借地権に関する大阪府の考え方を問答形式で記載した書面を送付した(甲33)。 コ同年2月19日,大阪府議会平成11年2月定例会において,本件補正予算が提出された(甲13)。 サ同月23日及び24日,大阪府議会本会議において行われた代表質問において,本件補正予算において51億4012万8000円の都心型新産業育成拠点整 件補正予算が提出された(甲13)。 サ同月23日及び24日,大阪府議会本会議において行われた代表質問において,本件補正予算において51億4012万8000円の都心型新産業育成拠点整備関連事業費が計上されていることに関し,3会派の議員から,γホテル敷地の売却交渉,協会従業員に対する退職金の支払及び再就職先の確保,立退補償契約を締結する必要性及びリスクの有無等についての質問があった。被告d及び同bは,これらの質問について,整備構想は凍結中であるが,民間企業等の手によってγホテル敷地にマイドームおおさか及び大阪商工会議所と共に中小企業の支援機能を担うホテル等の施設が建設されることが望ましいと考えており,そのため複数の企業グループと同敷地の売却交渉中であること,大阪府には本件買取申入れに応じる義務はないが,「今回の処理は,協会が解散に先立ちその資産を処分するため,大阪府に借地権付き建物の買取りを申し入れてきていることに対し,適正な価格をもって補償で応ずるものであり,このことにより従業員の退職金の確保も可能となるとともに,協会の借地権を消滅させ,隣接地を含めた府有地の一体的活用が図られることから,最良の選択であると考えて」いること,大阪府としても協会従業員の雇用対策について重要な課題として取り組んでいく必要があると認識していることなどを述べ,答弁を行った(丙20)。 シ同年3月3日,本件補正予算等の議案が大阪府議会商工農林常任委員会に付議され,同日及び同月5日の質疑において,本件補正予算において51億4012万8000円の都心型新産業育成拠点整備関連事業費が計上されていることに関し,5名の委員から,上記サと同趣旨の質問に加え,協会による同月末日までの本件土地Aからの立退きの見込み,協会の有する資産及び負債の内容,本件 心型新産業育成拠点整備関連事業費が計上されていることに関し,5名の委員から,上記サと同趣旨の質問に加え,協会による同月末日までの本件土地Aからの立退きの見込み,協会の有する資産及び負債の内容,本件建物の解体費用の負担,上記都心型新産業育成拠点整備関連事業費の金額と協会の退職金債務及び借入金債務等の弁済費用がほぼ一致している理由,協会の経営についての大阪府の責任の有無,本件建物の大阪府における再利用計画の有無等について質問があり,被告f及び同dは,これらの質問について答弁を行った。また,同委員会において同月9日に行われた質疑には,被告bが出席し,本件補正予算への上記都心型新産業育成拠点整備関連事業費の計上に関し,4名の委員からの上記と同趣旨の質問に対し,答弁を行ったところ,同答弁は,同被告の本会議における前記答弁と同様の答弁内容を含むものであった。 なお,上記各委員のうち1名は,同月3日及び9日,立退補償契約の締結による処理策に反対する立場から,上記都心型新産業育成拠点整備関連事業費の内訳として,本件借地権に対する部分が約33億7000万円,本件建物に対する部分約17億7000万円であることを明示した上で,その支出の必要性がないこと,補償金額が高すぎること,協会は本件賃貸借契約上,本件借地権を譲渡することができないはずであることなど,自己の見解を述べつつ,上記被告らに対する質問を行った。これに対し,上記被告らは,上記サと同趣旨の答弁に加え,立退補償による本件借地権の消滅により,本件土地Aとこれに隣接する本件土地Bとを一体的に見れば,それらの資産価値が高揚すると考えていること,協会は,大阪府が承諾しない場合には,その承諾に代わる裁判所の許可を得て本件借地権を第三者へ譲渡することができ,その場合,大阪府がその譲渡を阻止した れば,それらの資産価値が高揚すると考えていること,協会は,大阪府が承諾しない場合には,その承諾に代わる裁判所の許可を得て本件借地権を第三者へ譲渡することができ,その場合,大阪府がその譲渡を阻止したければ,自ら本件借地権付きの本件建物を買い受ける必要があり,今の時点で処理する方が政策的に得策だと考えていること,仮に将来的にも大阪府が本件借地権付きの本件建物を買い取らないとすれば,大阪府の望まない相手にも譲渡されることになること,γホテル敷地の売却価格については,本件借地権の評価における同敷地の価格約75億円から,本件建物の撤去費用を差し引いた形で交渉することになるため,上記価格を下回る可能性が高いこと,売却交渉中の1つの企業グループについては,売却価格の交渉は「ストライクゾーンに入っている」ことなどを述べ,答弁を行った。 同月11日,同委員会において本件補正予算が可決された(甲31,丙21)。 ス同月12日,本件補正予算は大阪府議会本会議において可決され,大阪府議会の議決を経た。 セ同月19日,大阪府は,協会との間で,本件立退補償契約を締結した(甲29)。 ソ本件立退補償契約及び本件売買契約の締結に先立ち,谷澤総合鑑定所が大阪府の依頼を受けて提出した鑑定評価書等に記載されている不動産鑑定評価額は,それぞれ次のとおりであった(丙39,証人h,被告f本人)。 (ア) 平成10年1月7日付け鑑定評価書(丙43の1)(同月1日時点における本件借地権の正常価格)40億4670万円,1平方メートル当たり67万5375円(同日時点における本件土地Bの正常価格)25億2760万円,1平方メートル当た 40億4670万円,1平方メートル当たり67万5375円(同日時点における本件土地Bの正常価格)25億2760万円,1平方メートル当たり105万円(イ) 同年9月4日付け鑑定評価書(丙19)(同月1日時点における本件建物の正常価格)18億2072万7000円(ウ) 平成11年1月6日付け鑑定評価書(丙15。以下「本件谷澤鑑定書」という。)(同月1日時点における本件土地A及び本件土地Bの正常価格)75億1710万円,1平方メートル当たり89万5000円(同日時点における本件借地権の正常価格)34億3430万円,1平方メートル当たり57万3168円(エ) 同月11日付け意見書(丙18。以下「本件谷澤意見書」という。)(平成10年9月1日から平成11年1月1日までの期間における本件建物の正常価格の時点修正率)マイナス2.8パーセント(参考価格17億6924万9000円)(オ) 平成13年4月19日付け鑑定評価書(丙35の2)(同月1日時点における本件土地Cの正常価格)42億8760万円,1平方メートル当たり52万1000円タ本件立退補償契約及び本件売買契約の締結に先立ち,大和不動産が大阪府の依頼を受けて提出した鑑定評価書等に記載されている不動産鑑定評価額は,それぞれ次のとおりであった(丙39,証人i,被告f本人)。 (ア) 平成10年1月7日付け不動産鑑定評価書(丙43の2) けて提出した鑑定評価書等に記載されている不動産鑑定評価額は,それぞれ次のとおりであった(丙39,証人i,被告f本人)。 (ア) 平成10年1月7日付け不動産鑑定評価書(丙43の2)(同月1日時点における本件借地権の正常価格)40億4000万円,1平方メートル当たり67万4257円(同日時点における本件土地Bの正常価格)25億3000万円,1平方メートル当たり105万円(イ) 平成11年1月5日付け鑑定評価書(丙16。以下「本件大和鑑定書」という。)(同月1日時点における本件土地A及び本件土地Bの正常価格)75億9000万円,1平方メートル当たり90万4000円(同日時点における本件借地権の正常価格)33億1000万円,1平方メートル当たり55万2000円(ウ) 平成13年4月19日付け不動産鑑定評価書(丙35の1)(同月1日時点における本件土地Cの正常価格)43億2000万円,1平方メートル当たり52万5000円チ平成10年11月ころ以降,大阪府に対しては,数社から,γホテルの敷地を購入して開発を行いたい旨の問い合わせ等が寄せられた。大阪府は,本件立退補償契約の締結当時,複数の業者等との間で,同敷地にホテル機能を有する施設を整備することを条件に,同敷地の売却交渉を行っていたところ,その中の1企業グループは,大阪府が算定していた同敷地の評価額約75億円を大きく下回る代金額では同敷地を買収できないことを前提に,これに近い代金額で買収した場合,再開発により収益を上げること ころ,その中の1企業グループは,大阪府が算定していた同敷地の評価額約75億円を大きく下回る代金額では同敷地を買収できないことを前提に,これに近い代金額で買収した場合,再開発により収益を上げることができるか否かを検討している状況にあった。なお,平成11年4月ころ,同企業グループから,大阪府に対し,本件建物の撤去費用を同企業グループが負担することを前提に,同敷地の代金額を約66億円としたい旨の提示があったが,その後,同企業グループが委託する予定であったホテル業者との調整がつかなかったため,最終的には,大阪府と同企業グループとの交渉はまとまらなかった(甲31,丙21,39,被告f本人)。 ツ同年1月1日当時,協会には193名の従業員がいた(丙11)。 (2) 必要性の有無(争点(1)ア)についてア前記認定事実によれば,本件立退補償契約は,本件建物等の所在するδ地区に,マイドームおおさか及び大阪商工会議所における展示,会議等を伴う催事の参加者に対し,宿泊,宴会,飲食等を提供する機能を有する,γホテルに代わる新たなホテル施設が,大阪府の産業振興施策上必要であるとの判断に基づき,大阪府所有の本件土地Aの完全な所有権を速やかに確保するために締結されたものであることが認められる。この点,証拠(丙1,28,40ないし42)によれば,γホテルは,その閉鎖に至るまで,中小企業の振興等を目的とするマイドームおおさか等における催事に関し,宿泊,宴会,飲食等を提供する機能を積極的に果たしていたことが認められる。また,前記認定のとおり,大阪府は,本件立退補償契約の締結当時,複数の業者等との間で,γホテル敷地にホテル機能を有する施設を整備することを条件に,同敷地の売却交渉を行っていたところ,その中の1企業グループは,大阪府が算定し 阪府は,本件立退補償契約の締結当時,複数の業者等との間で,γホテル敷地にホテル機能を有する施設を整備することを条件に,同敷地の売却交渉を行っていたところ,その中の1企業グループは,大阪府が算定していた同敷地の評価額約75億円を大きく下回る代金額では同敷地を買収できないことを前提に,これに近い代金額で買収した場合,再開発により収益を上げることができるか否かを検討している状況にあったのであり,現に,本件立退補償契約の締結直後である平成11年4月ころには,同企業グループから,大阪府に対し,本件建物の撤去費用を同企業グループが負担することを前提に,同敷地の代金額を約66億円としたい旨の提示があったというのであるから,本件立退補償契約の締結当時,同敷地上にホテル機能を有する設備の設置が実現できる可能性は少なくなかったものということができる。そうすると,同ホテルに代わる新ホテル施設の設置が必要であり,本件立退補償契約を締結して速やかに本件土地Aからの立退き及びその返還を受けることによってその実現が可能であるとの上記政策判断には,一定の合理性があったということができる。 また,大阪府が協会からの本件買取申入れを拒否して何らの措置を講じなかった場合,協会は,漫然と本件賃貸借契約を継続して賃貸料等を支払い続ける意味はなく,他方で賃貸料等の不払により本件賃貸借契約を解除されれば,最大の資産である本件建物及び本件借地権を対価なしに喪失してしまうことになるのであるから,その清算に伴い,本件借地権を第三者に譲渡するなどして換価する必要があったと考えられるところ,仮にこれを大阪府が承諾しなかったとしても,協会は,本件借地権が昭和45年4月1日の府有財産貸付契約に基づくものであるとすれば旧借地法9条ノ2の規定により,本件賃貸借契約に基づくものであ れるところ,仮にこれを大阪府が承諾しなかったとしても,協会は,本件借地権が昭和45年4月1日の府有財産貸付契約に基づくものであるとすれば旧借地法9条ノ2の規定により,本件賃貸借契約に基づくものであるとすれば借地借家法19条の規定に基づき,大阪府の承諾に代わる裁判所の許可を得てこれを行うことも可能であったものと解される。このようにして本件借地権が第三者に譲渡される場合,協会としては,できるだけ高い対価でこれを譲渡する必要があるのであるから,当該第三者が,本件土地Aの使用収益方法として,必ずしも大阪府の期待するようなホテル機能を有する施設を建設するとは限らない状況となっていた可能性は否定できない。そうすると,大阪府にとって,その産業振興施策の一環としてのホテル機能を有する施設の設置を確実かつ主導的に実現するためには,本件借地権を消滅させて本件土地Aの完全な所有権を回復しておく必要があったということができる。 なお,前記認定のとおり,本件立退補償契約の締結当時,協会には193名の従業員がいたところ,協会の設立に始まる大阪府との関係,協会が大阪府の産業・貿易振興に果たしてきた役割等にかんがみれば,大阪府として,本件立退補償契約の締結に当たって,協会に補償金を支払うことにより,上記従業員の退職金債権の支払が事実上確保されることを副次的に考慮することも,およそ許されないものというわけではないと考えられる。 したがって,本件立退補償契約がおよそ必要性を欠くものであったとは認められず,本件立退補償契約の締結及びこれに基づく本件各支出が法2条12項,地方財政法2条,4条に違反するものということはできない。 イこれに対し,原告らは,仮に任意売却又は競売により第三者に本件借地権が譲渡されても,大阪府と協会との 件各支出が法2条12項,地方財政法2条,4条に違反するものということはできない。 イこれに対し,原告らは,仮に任意売却又は競売により第三者に本件借地権が譲渡されても,大阪府と協会との間の特殊な本件賃貸借契約は当該第三者を拘束するのであるから,大阪府にとって何ら不都合はなかった旨主張する。確かに,前記認定のとおり,本件賃貸借契約においては,本件土地Aの使用目的として,「γホテル敷地」以外の目的に使用してはならないとされていた。しかし,これは,法238条の5第5項に規定するように,本件土地Aの用途を協会によるγホテルの営業用建物の敷地と指定し,一定期間内にはその用途の廃止を一切禁止するという趣旨のものとまでは解されないから,強行法規である旧借地法9条ノ2又は借地借家法19条の規定の適用が排除されるものではないというべきであり(旧借地法11条又は借地借家法21条),本件借地権の第三者への譲渡について大阪府の承諾に代わる裁判所の許可がされた場合,本件賃貸借契約に基づいて本件土地Aが必ずホテルの敷地として使用収益される保証はなく,大阪府の前記政策目的の達成にとって不都合が生じ得たものと考えられる。したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 (3) 補償金額が適正か否か(争点(1)イ)についてア前記認定事実によれば,本件立退補償契約における補償金額51億4012万8000円は,本件借地権に対する補償金額33億7087万9000円と本件建物に対する補償金額17億6924万9000円とを合算した金額であったことが認められる。そして,前記のとおり,本件立退補償契約は,大阪府の産業振興施策の一環として,本件借地権を消滅させて本件建物跡地としての本件土地Aの完全な所有権を回復し,本件土地A及び本件土地B上に, が認められる。そして,前記のとおり,本件立退補償契約は,大阪府の産業振興施策の一環として,本件借地権を消滅させて本件建物跡地としての本件土地Aの完全な所有権を回復し,本件土地A及び本件土地B上に,マイドームおおさか及び大阪商工会議所における展示,会議等を伴う催事の参加者に対し宿泊,宴会,飲食等を提供する機能を有する新たなホテル施設を設置するという公益目的に基づいて締結されたものと認められる。かかる公益目的に基づく本件建物及び本件土地Aの立退補償契約における補償金額の算定に当たっては,公共事業に伴い借地権付き建物の存する土地につき借地権又は土地所有権を取得する場合における借地権付き建物所有者に対する損失補償と同様に,公共用地の取得に伴う損失補償基準に準じて,本件借地権だけでなく,大阪府における利用予定の有無にかかわらず,本件建物を補償の対象とすることにも,一定の合理性があるということができる。したがって,本件立退補償契約において,大阪府が,取壊し予定の本件建物をも補償の対象としている点をもって,直ちに本件立退補償契約の締結が違法ということはできない。 イまた,公共用地の取得に伴う損失補償の場合においては,当該公共用地上の建物の解体は,当該公共用地の取得を行う起業者等が,その負担においてこれを行うべきものであるから,前記のような公益目的を有する本件立退補償契約における補償金額の算定に当たって,本件建物の解体費用相当額が補償金額から差し引かれていないことが,合理性を欠くものということはできないし,完全な所有権を回復した後に新ホテル建設のために本件土地Aを購入する主体において本件建物解体費用を負担したり,工事の施工方法いかんによっては解体費用が圧縮されることもあり得るのであり,この点をもって,本件立退補償契約の締結を違法とするこ のために本件土地Aを購入する主体において本件建物解体費用を負担したり,工事の施工方法いかんによっては解体費用が圧縮されることもあり得るのであり,この点をもって,本件立退補償契約の締結を違法とすることはできない。 ウさらに,本件借地権及び本件建物に対する補償金額は,次のとおり,不当に高額なものとは認められず,これらを合算した本件立退補償契約における補償金額が不適正で違法なものということもできない。 (ア) 本件借地権について前記認定事実によれば,本件借地権に対する補償金額は,本件谷澤鑑定書及び本件大和鑑定書に記載された,本件借地権の平成11年1月1日時点における正常価格の概ね中間値であることが認められる。そして,証拠(丙15,16,証人h,同i)によれば,本件谷澤鑑定書及び本件大和鑑定書における不動産鑑定評価の過程に特に不合理な点を認めることはできない。 原告らは,大阪府と協会との密接な関係によれば,本件立退補償契約における補償金額の算定においては,本件借地権の正常価格ではなく,限定価格を求めるべきである旨主張する。しかしながら,証拠(丙36,37)によれば,正常価格とは,市場性を有する不動産について,合理的な市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいい,限定価格とは,市場性を有する不動産について,不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき合理的な市場で形成されるであろう市場価値と乖離することにより,市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいうものと認められるところ,本件借地権及び本件建物の取得に前記のような限定要因はなく,また,本件立退補償契約が,前記の公益目 場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいうものと認められるところ,本件借地権及び本件建物の取得に前記のような限定要因はなく,また,本件立退補償契約が,前記の公益目的に基づいて,本件借地権及び本件建物の客観的な市場価値を補償するものである以上,大阪府と協会との特殊な関係を考慮する必要はないのであるから,本件借地権の正常価格をもって本件借地権に対する補償金額を算定するのが相当である。原告らの上記主張を採用することはできない。 また,原告らは,本件立退補償契約における補償金額は,正常価格としても高すぎる旨主張するところ,前記のとおり,谷澤総合鑑定所の平成13年4月19日付け鑑定評価書及び大和不動産の同日付け不動産鑑定評価書には,同月1日時点における本件土地Cの正常価格を1平方メートル当たり52万1000円ないし52万5000円と鑑定評価する旨の記載があり,これらの価格は,本件谷澤鑑定書及び本件大和鑑定書に記載された平成11年1月1日時点における本件土地A及び本件土地Bの正常価格89万5000円ないし90万4000円と比較して,それらの約58パーセントにまで下落していることが認められる。しかし,証拠(証人i)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地A及び本件土地Bないし本件土地Cの所在する地域の地価は,平成11年度から平成12年度にかけて,毎年約20パーセント程度下落していることが認められるから,平成11年1月1日時点から平成13年4月1日時点までの2年3か月間に上記の程度の価格下落があったとしても不自然ではない。前記のとおり,本件谷澤鑑定書及び本件大和鑑定書における不動産鑑定評価の過程に特に不合理な点を認めることはできないのであって,原告らの上記主張を採用することはできない。 自然ではない。前記のとおり,本件谷澤鑑定書及び本件大和鑑定書における不動産鑑定評価の過程に特に不合理な点を認めることはできないのであって,原告らの上記主張を採用することはできない。 (イ) 本件建物について前記認定事実によれば,本件建物に対する補償金額は,谷澤総合鑑定所の平成10年9月4日付け鑑定評価書に記載された本件建物の平成10年9月1日時点における正常価格に,本件谷澤意見書に記載された同日から平成11年1月1日までの期間における本件建物の正常価格の時点修正率を乗じて算出された参考価格17億6924万9000円であることが認められる。そして,証拠(丙18,19,証人h)によれば,上記鑑定評価書及び本件谷澤意見書における不動産鑑定評価の過程に特に不合理な点を認めることはできない。 エ以上によれば,本件立退補償契約における補償金額が不当に高額であって,その締結及びこれに基づく本件各支出が違法である旨の原告らの主張を採用することはできない。 (4) 本件立退補償契約の締結について大阪府議会の議決を経ていないこと(争点(1)ウ)についてア法96条1項は,柱書において普通地方公共団体の議会は,次に掲げる事件を議決しなければならないとした上,8号において,「前二号に定めるものを除くほか,その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分をすること。」を掲げている。上記基準について,令121条の2第2項,同別表第二は,財産の取得又は処分の種類については,「不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については,その面積が都道府県にあっては1件2万平方メートル以上〔中略〕のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払い」と 不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については,その面積が都道府県にあっては1件2万平方メートル以上〔中略〕のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払い」とし,その金額については,都道府県にあっては,7000万円を下らないこととする旨規定している。これらの規定を受けた議決条例2条は,法96条1項8号の規定による議会の議決を要する財産の取得又は処分について,「不動産(土地については,その面積が1件2万平方メートル以上のものに限る。)若しくは動産の買入れ若しくは売払い又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払いでその予定価格が1億円以上のもの」と規定している。 イ本件立退補償契約に法96条1項8号,議決条例2条の規定に基づく議会の議決を要するか否かについては,本件立退補償契約が建物の売払い,土地,動産又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払いに該当しないことは明らかであるから,これが予定価格が1億円以上の建物の「買入れ」に該当するか否かの問題である。 (ア) この点,議決条例2条に規定する「買入れ」とは,令121条の2第2項,同別表第二上欄に規定する「買入れ」と同義のものであり,普通地方公共団体が買主となって締結する売買契約がこれに該当することは,その文言上明らかである。 しかし,逆に,普通地方公共団体が締結する契約の名称ないし形式が売買とされていないからといって,およそ「買入れ」に当たらないということはできない。すなわち,本来,財産の取得又は処分は,予算の執行行為であり,当該普通地方公共団体の執行機関である長の権限に属するものであるが,法96条1項8号及び令の前記各規定は,そのうち,特に重要な種類及び金額のものについては,当該普通地方公共団体 算の執行行為であり,当該普通地方公共団体の執行機関である長の権限に属するものであるが,法96条1項8号及び令の前記各規定は,そのうち,特に重要な種類及び金額のものについては,当該普通地方公共団体の財産の保有状況に大きな変動をもたらすことから,その適否を議会の判断に係らしめ,議会の議決をもって当該普通地方公共団体における意思決定とするという趣旨のものと解される。したがって,普通地方公共団体の締結する契約が令及び議決条例の上記各規定にいう「買入れ」に該当するか否かは,単に当該契約の当事者が選択した契約の名称ないし形式が売買とされているか否かのみによって決定されるべきものではなく,当該契約が,その具体的合意内容に照らし,①相手方が当該普通地方公共団体へある財産権を移転すること及び②その対価として当該普通地方公共団体が相手方へ一定額の金員を支払うことの合意という売買の要素(民法555条)を備えているか否かによってこれを決するのが相当である。 これを本件についてみると,本件立退補償契約は,本件土地Aを目的とする本件賃貸借契約の合意解除に当たっての立退補償契約という名称及び形式を採っている。しかし,前記前提事実及び認定事実によれば,本件立退補償契約においては,①協会は,本件賃貸借契約の解約日までに,本件建物を現有有姿のまま,本件土地Aから立退き及びその返還を行い,上記返還に当たっては,本件建物に所有権の行使を妨げる権利が存在するときは,これを消滅させ,かつ,その権利に係る登記があるときはこれを抹消しなければならず,本件建物の所有権は,上記返還を完了した時をもって,大阪府に移転し,大阪府は,上記所有権の移転後,直ちに本件建物の所有権移転登記を嘱託することとされ,かつ,②大阪府が協会に対し本件建物及びその従たる権利(民法87条 ,上記返還を完了した時をもって,大阪府に移転し,大阪府は,上記所有権の移転後,直ちに本件建物の所有権移転登記を嘱託することとされ,かつ,②大阪府が協会に対し本件建物及びその従たる権利(民法87条2項参照)である本件借地権の補償金として,51億4012万8000円を協会に支払うこととされており,上記補償金額は,本件建物に対する補償金額17億6924万9000円と,本件借地権に対する補償金額33億7087万9000円とを合算した金額であることが認められる。そうすると,本件立退補償契約上,①協会が大阪府へ本件建物の所有権及びこれに随伴する本件借地権を移転すること及び②その対価として大阪府が協会へ補償金を支払うことの合意があるということができるから,本件立退補償契約は,本件借地権付きの本件建物の売買の要素を含むものであって,「買入れ」に該当するというべきである。 そして,本件立退補償契約における上記補償金額によれば,本件立退補償契約の予定価格は1億円以上ということができるから,本件立退補償契約の締結には,法96条1項8号の規定に基づき,大阪府議会の議決を要するというべきである。 (イ) この点,被告らは,取引の安全や法96条1項が制限列挙主義を採っていることを根拠に,「買入れ」は文理的に解釈されるべきであり,拡張解釈は許されないとか,仮にそうでないとしても,普通地方公共団体の長及びその取引の相手方が議会の議決を潜脱するために売買と実質的に同視されるものをあえて売買と異なる形式とした場合に限定されるべきであるなどと主張する。しかし,売買の要素を含む契約が「買入れ」に該当するとの前記解釈は,必ずしもその文理に反するものではなく,取引の安全を害するとはいえない上,ある契約が「買入れ」に該当し,議会の議決を要す 主張する。しかし,売買の要素を含む契約が「買入れ」に該当するとの前記解釈は,必ずしもその文理に反するものではなく,取引の安全を害するとはいえない上,ある契約が「買入れ」に該当し,議会の議決を要するか否かは,客観的な契約内容によって決定されるべき問題であり,契約担当者の主観的意図によって左右されるものではない(そのように解すれば,かえって法的安定性を損ない,取引の安全を害するというべきである。)。被告らの上記主張は失当である。 また,参加人は,法96条1項8号が想定する公有財産の取得とは,当該地方公共団体において行政活動に資することを前提に管理運用することを予定して取得することをいい,使用目的のない取壊し予定の建物の一時的な所有権移転は,これに当たらない旨主張する。しかしながら,法において「財産」とは,公有財産,物品及び債権並びに基金をいう(法237条1項)ところ,不動産である建物は,「公有財産」に含まれるのであり(法238条1項1号),当該普通地方公共団体において行政活動に資することを前提に管理運用することを予定されているか否かにかかわらず,「財産」に該当するというべきである。また,実質的にみても,使用目的のない取壊し予定の建物に対価を支払って一時的に所有権の移転を受けることは,使用目的のある建物における場合よりも,当該普通地方公共団体の財務に及ぼす影響ははるかに大きいのであるから,法96条1項8号の前記趣旨に照らし,議会の議決による団体意思の決定の必要性は一層高いものと考えられる。参加人の上記主張は失当である。 さらに,参加人は,本件立退補償契約が「買入れ」に当たると解することは大阪府における意思形成過程等を無視するものであるとか,契約当事者の意思ないし契約自由の原則に反するなどとも主張す さらに,参加人は,本件立退補償契約が「買入れ」に当たると解することは大阪府における意思形成過程等を無視するものであるとか,契約当事者の意思ないし契約自由の原則に反するなどとも主張するが,本件立退補償契約の締結に際して被告らが採っていたと思われる参加人主張に係る解釈は,上記のとおり,誤りであったというほかないし,契約当事者の意思によって議決の要否が定まることが不当であることは前記のとおりであり,契約の具体的合意内容に従って判断すべきものとする上記説示が契約自由の原則に反するものでないことは明らかであるから,上記主張もまた失当である。 なお,参加人は,本件立退補償契約が,公共事業における損失補償基準に準じて,本件借地権の消滅及び本件土地Aの明渡しに対する適正な補償を行ったものであることを指摘しているところ,確かに,例えば,土地収用法の規定により,特定の公共事業の用に供するために土地を収用する場合には,同法の規定に基づく特別な手続により,当該収用の適否についての審査がされ,法律上当然に起業者が当該土地の所有権を原始取得することが予定されているといえるから,法96条1項8号の規定に基づく議会の議決を要しないものと考えられる。しかし,特定の公共事業の用に供するために土地を取得する必要がある場合であっても,土地収用法の規定に基づく収用に至るまでもなく,起業者である普通地方公共団体と当該土地所有者等との間で,任意に当該土地の売買契約が締結されることはしばしば行われているところであるが,そのような場合には,同法の規定に基づく特別の手続によって当該売買契約の適否の審査がされているということはできず,私法上の契約の効果として所有権の移転が生じるにすぎないから,法96条1項8号に規定する種類及び金額の財産の取得に該当す く特別の手続によって当該売買契約の適否の審査がされているということはできず,私法上の契約の効果として所有権の移転が生じるにすぎないから,法96条1項8号に規定する種類及び金額の財産の取得に該当する限り,議会の議決が必要となるものと解さざるを得ない。本件立退補償契約も,土地収用法等の法令の定めに基づくものではなく,大阪府及び協会が任意に締結した私法上の契約にすぎないのであるから,これが公共事業における任意の用地取得に類似していることをもって,議会の議決を不要とすることはできない。 ウ前記のとおり,法96条1項8号の趣旨が,普通地方公共団体の財産の取得又は処分のうち,一定の重要な種類及び金額のものについては,当該普通地方公共団体の財産の保有状況に大きな変動をもたらすことから,その適否を議会の判断に係らしめ,議会の議決をもって当該普通公共団体における意思決定とするという点にあるものと解されるから,同号の規定に基づく議会の議決を要するにもかかわらず,これを欠いたまま行われた財産の取得又は処分は違法であり,かつ,その瑕疵の重大性にかんがみ,無権限の行為として無効となるものと解される(最高裁判所昭和35年7月1日第二小法廷判決・民集14巻9号1615頁参照)。 そこで,本件立退補償契約について議会の議決があるといえるか否かについて検討するに,そもそも,財産の取得又は処分が,その性質としては予算の執行行為であるにもかかわらず,同項1号に規定する予算の議決とは別に,同項8号において,議会の議決を要する事件として掲げられていることからすれば,法は,本来,同項8号の規定に基づく議決は,予算の議決とは別個の議案について行われることを予定しているものと解され,そのような形で議決が行われることが望ましいということができる。ところ からすれば,法は,本来,同項8号の規定に基づく議決は,予算の議決とは別個の議案について行われることを予定しているものと解され,そのような形で議決が行われることが望ましいということができる。ところが,本件においては,前記前提事実のとおり,大阪府議会において,本件立退補償契約に基づく本件各支出を盛り込んだ本件補正予算についての議決はされているものの,本件立退補償契約の締結に先立ち,本件補正予算とは別個に,独立した議案が提出・議決されたことはなく,その後も,現在に至るまで,同議案は大阪府議会に提出・議決されていない。このような事態は,法が本来理念的に予定するところには必ずしも沿わないものといわざるを得ない。 しかしながら,独立した議案が提出・議決されない場合であっても,当該財産の取得等に係る歳出項目等が計上された予算(補正予算を含む。)の審議において,当該財産の取得等の適否につき議決すべきことが認識され,その必要性・妥当性についての審査を経て議決がされるならば,前記法96条1項8号の趣旨は満たされるものということができる。 これを本件についてみるに,前記認定のとおり,大阪府議会平成11年2月定例会では,本会議及び商工農林常任委員会において,本件補正予算に51億4012万8000円の都心型新産業育成拠点整備関連事業費が計上されていることに関し,合計5日間にわたり,延べ12名の議員又は委員から質疑がされていた。特に,同委員会においては,1名の委員が,立退補償契約の締結による処理策に反対する立場から,補償金の額・内訳等の予定されていた立退補償契約の内容に触れつつ,これを締結する必要性及び補償金額の妥当性が認められない旨の自己の見解を述べて質問を行っており,これに対しては,被告f,同d及び同bが,答弁において,立 予定されていた立退補償契約の内容に触れつつ,これを締結する必要性及び補償金額の妥当性が認められない旨の自己の見解を述べて質問を行っており,これに対しては,被告f,同d及び同bが,答弁において,立退補償契約を締結する必要性及び補償金額の妥当性について大阪府側の見解を述べていたのであり,このような審議を経た上で,本件補正予算は,同委員会及び本会議において可決され,大阪府議会の議決を経ている。そうすると,上記のような本件事実関係の下では,本件補正予算の審議過程において,大阪府議会の各議員及び委員は,本件補正予算の議決がされれば,本件立退補償契約が締結されることが確実であることを認識した上で,その必要性及び補償金額の妥当性についての審査を行い,それについての賛否の意思表示をしたものと評価することができる。 したがって,本件立退補償契約を締結することの適否については,本件補正予算についての大阪府議会の議決により,実質的に大阪府議会の判断を経ているものということができ,大阪府としての団体意思の決定がそこで行われていると認められるから,本件立退補償契約の締結について,本件補正予算とは別個に大阪府議会の議決を経ていないことが,直ちに法96条1項8号の規定に反し,違法であると断ずるのは相当でない。また,そうすると,本件立退補償契約の私法上の効力も否定されないから,本件立退補償契約に基づく本件各支出を違法とすることもできない。 エ以上によれば,本件立退補償契約の締結及びこれに基づく本件各支出は,本件補正予算とは別個に大阪府議会の議決を経ていないことに関しても,法96条1項8号の規定に反する違法なものということはできない。 (5) 本件前金払の違法性の有無(争点(1)エ)についてア法232条の5第2項は 決を経ていないことに関しても,法96条1項8号の規定に反する違法なものということはできない。 (5) 本件前金払の違法性の有無(争点(1)エ)についてア法232条の5第2項は,普通地方公共団体の支出は,政令の定めるところにより,資金前渡,概算払,前金払,繰替払,隔地払又は口座振替の方法によってこれをすることができると規定し,これを受けた令163条は,前金払をすることができる経費として,「前金で支払をしなければ契約しがたい請負,買入れ又は借入れに要する経費」(3号)などを掲げている。 イ前記前提事実のとおり,本件前金払は,本件立退補償契約における補償金51億4012万8000円のうち35億9800万円を,協会に対し,協会による本件立退補償契約に基づく本件土地Aからの立退き及び本件土地Aの返還に先立って支払ったものである。 前記前提事実及び証拠(甲4,15,丙22,39,被告f本人)によれば,協会は,本件立退補償契約上,本件土地Aの返還に当たって,本件建物に所有権の行使を妨げる権利が存在するときはこれを消滅させ,かつ,その権利に係る登記があるときはこれを抹消しなければならないとされていたところ,①本件立退補償契約が締結された当時,合計約24億9000万円の借入金があったが,そのうちの大部分について,本件建物に根抵当権が設定され,その旨の登記がされていたため,それらの根抵当権を消滅させ,根抵当権設定登記を抹消するためには,上記借入金の返済資金が必要であったこと,また,②本件建物を明け渡して本件土地Aを大阪府に返還するためには,本件建物内のテナント5店舗に対する立退補償金を支払う必要があったこと,③協会が従業員に対して支払うべき退職金は合計約12億円であったところ,本件建物の円滑な明渡しを行 Aを大阪府に返還するためには,本件建物内のテナント5店舗に対する立退補償金を支払う必要があったこと,③協会が従業員に対して支払うべき退職金は合計約12億円であったところ,本件建物の円滑な明渡しを行うためには,その支払資金を確保し,支給時期を明確にする必要があったこと,④協会は,その当時の財務状況から,新たに金融機関から借入をするなどして,上記の各支払資金を調達することはもはや困難であったことが認められる。 そして,前記のとおり,本件立退補償契約は,本件借地権付き本件建物の買入れという要素を含むものであるところ,上記認定事実によれば,上記各支払資金に相当する金額が大阪府から協会に前金払されるのでなければ,本件立退補償契約を締結し,これに基づく本件建物及び本件土地Aの明渡しを受けることは困難であったことが認められる。そうすると,上記各支払資金合計約36億9000万円については,令163条3号に規定する前金で支払をしなければ契約し難い買入れに要する経費に当たるというべきである。 ウしたがって,上記各支払資金の範囲内である本件前金払による支出は,被告ら及び参加人が主張するように令163条8号に該当するものか否かを検討するまでもなく,法232条の5第2項,令163条3号の規定により前金払の方法によることが許されるものであって,適法である。 エなお,仮に本件前金払に何らかの問題があるとしても,本件前金払と原告らが主張する大阪府の損害との間に因果関係が認められないことは明らかである。 (6) 小括以上によれば,本件立退補償契約の締結及びこれに基づく本件各支出が違法なものとは解されず,この点に関する原告らの主張はいずれも採用することができない。 2 結論よって,その余の 以上によれば,本件立退補償契約の締結及びこれに基づく本件各支出が違法なものとは解されず,この点に関する原告らの主張はいずれも採用することができない。 2 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官川神裕 裁判官山田明 裁判官一原友彦
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