平成11(行ウ)4 損害賠償代位請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年7月17日 秋田地方裁判所
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判決文本文44,689 文字)

(主文) 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 (事実及び理由)第1 請求被告は,秋田県に対し,7700万円及びこれに対する平成11年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,秋田県(以下「県」ともいう。)の住民である原告らが,被告が秋田県知事として,県が出資する第三セクターである秋田県畜産開発公社(以下「畜産公社」という。)に対して7億円を融資し,その後,同貸金債権を放棄したことにより県に損害を与えたとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下「法」という。)242条の2第1項4号の規定に基づき,県に代位して,被告に対し,貸付金7億円のうち7000万円及び利息700万円の合計7700万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成11年6月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 なお,本件においては,秋田県が,被告の補助参加人として補助参加している。 1 争いのない事実等・当事者原告らは,いずれも秋田県の住民であり,被告は,平成9年4月23日以降,秋田県知事の職にある者である。 ・畜産公社について畜産公社は,昭和40年に設立された秋田県草地開発公社を前身とし,県が中心となって,畜産振興等を目的に,昭和44年5月,県,農畜産業振興事業団,秋田県経済農業協同組合連合会,秋田県畜産農業協同組合連合会及び県内の3農協及び63市町村を会員として,民法34条の規定に基づく秋田県知事の許可により設立された公益社団法人である。 県は,畜産公社に対し,出資金総額7億8000万円の46パーセントにあたる3億5930万円を出資する最大の出資者であり,さらに, の規定に基づく秋田県知事の許可により設立された公益社団法人である。 県は,畜産公社に対し,出資金総額7億8000万円の46パーセントにあたる3億5930万円を出資する最大の出資者であり,さらに,毎年度多額の補助金等を支出してきた。また,畜産公社の歴代の理事長,常務理事,事務局長,監事等の主要な役員には,県の現職又は退職幹部職員が就任していた。 ・畜産公社の経営悪化畜産公社は,県などから各種助成,援助を受けて事業を行っていたものの,次第に経営が困難となり,平成3年度には,経営改善計画を策定するに至った。同計画は平成3年度から平成7年度までの計画であったが,思うような経営改善がみられなかったことから,平成7年度に当該計画の見直しが行われ,平成13年度までの新計画が策定された。上記2度にわたる計画策定は,県の全面的な指導の下に行われ,県はこれらの計画を支援するため,畜産公社に対する財政支援を強化していた。 ・畜産公社に対する7億円の貸付けについて畜産公社は,平成10年3月20日,秋田県知事である被告に対し,下記の内容の貸付けを求める貸付金申込書を提出した。 ア資金名畜産開発公社運営資金イ借入金額  7億円ウ利率年1パーセントエ償還方法平成11年3月31日に元利一括償還オ借入期間貸付けの日から平成11年3月31日まで被告は,平成10年4月1日,秋田県財務規則(昭和39年秋田県規則第4号。 以下「財務規則」という。)238条に基づき,畜産公社との間で,上記申込みどおりの内容による金銭消費貸借契約を締結し(以下「本件貸付け」という。),同日,県から,畜産公社に対し,貸付金として7億円が交付された。なお,本件貸付けは,財務規則3条1項1号の知事の決裁事項並びに部局長及び課長の専決事項に関する表の(十五 下「本件貸付け」という。),同日,県から,畜産公社に対し,貸付金として7億円が交付された。なお,本件貸付けは,財務規則3条1項1号の知事の決裁事項並びに部局長及び課長の専決事項に関する表の(十五)の「工事以外のものに係る支出負担行為伺(支出負担行為伺兼支出命令書により行うものを除く。)及び契約締結伺並びにこれらの変更並びに物品の購入依頼に関すること。」の知事決裁事項である1件の金額3000万円以上の事項に該当し,知事決裁事項であった。 ・畜産公社の経営破綻について同年5月に入り,畜産公社が,県の実施要領に違反して家畜導入事業を実施しているとの記事が新聞に掲載され,この新聞報道を機に,県により行われた数回にわたる調査によって,畜産公社で行われていた牛のカラ売り,補助金の不正受給,粉飾決算,牛のえさ代の不正支出等,数々の不正行為が発覚するとともに,畜産公社の平成9年度決算においては,資産が負債を2億6970万7000円上回っているとされていたところ,実際には,負債が資産を22億2721万2000円上回る巨額の債務超過状態にあったことが明らかとなり,畜産公社は事実上の経営破綻状態に陥った。 ・本件債権放棄について被告は,これに対し,公金投入によって畜産公社の破産を回避し,畜産公社の業務を大幅に縮小した上で秋田県農地管理公社と合併して存続させる方針を決めた。 畜産公社は,被告の上記方針を受けて,平成10年10月21日,秋田簡易裁判所に対し,県のほか,株式会社秋田銀行(以下「秋田銀行」という。),株式会社北都銀行(以下「北都銀行」という。)及び農林中央金庫(以下「農林中金」という。)を相手方として,本件貸付けを含む債務の減額と返済の猶予を求める民事調停を申し立てた。 被告は,平成11年2月12日,県議会に対し,畜産公社に対する本件貸 び農林中央金庫(以下「農林中金」という。)を相手方として,本件貸付けを含む債務の減額と返済の猶予を求める民事調停を申し立てた。 被告は,平成11年2月12日,県議会に対し,畜産公社に対する本件貸付けに係る貸金債権7億円及びこれに対する利息債権700万円の合計7億0700万円の債権全額を放棄する内容の議案を提出し,県議会は,同月23日,法96条1項10号に基づき,同議案を可決した。 被告は,平成11年3月9日,上記議決に従い,本件貸付けに係る畜産公社に対する債権全額(元本7億円及び利息700万円)を放棄し,同時に,秋田銀行,北都銀行及び農林中金も,それぞれの債権額のうち1億円を放棄する内容の調停を成立させ,これにより,本件貸付けに係る貸金債権7億円及び利息金700万円全額が放棄された(以下「本件債権放棄」という。)。 ・その後の経緯被告は,本件債権放棄以外にも,別途,県議会に対し,畜産公社に総額で27億7000万円の県費補助を行う旨の補正予算案を提出し,平成10年12月議会及び平成11年2月議会において可決された。その後,畜産公社は,平成12年4月1日付けで,秋田県農地開発畜産公社,秋田県家畜畜産物衛生指導協会,秋田県種苗センター,秋田県畜産会と合併して,社団法人秋田県農業公社として発足し,その後,同公社の畜産振興部が畜産公社の業務を継続している。 ・監査請求の前置原告らは,平成11年3月19日,秋田県監査委員に対し,本件貸付け及び本件債権放棄が違法であるとして,その損害の填補を求める住民監査請求を行ったところ,監査委員は,同年5月10日付けで上記監査請求を棄却した。そこで,原告らは,これを不服として,同年6月9日,当裁判所に本件訴えを提起した。 2 争点及び当事者の主張・本件貸付けの違法性についてア原告らの主張・ 10日付けで上記監査請求を棄却した。そこで,原告らは,これを不服として,同年6月9日,当裁判所に本件訴えを提起した。 2 争点及び当事者の主張・本件貸付けの違法性についてア原告らの主張・手続的違法について被告は,財務規則上,貸付けにあたり「資産内容を証する書面」の添付が要求されているのに,本件貸付けについて,これを要求することを怠っていた。また,財務規則241条は,貸付契約を締結する場合,連帯保証人の保証又は担保の提供を求めなければならないと定めており,原則として,保証を求めることとなっているが,本件では,これが全く求められていない。同条ただし書で,被告が必要ないと認めたときは,不必要となるが,これは,本来返済が確実な場合であって,本件のような返済の確実性が疑われるときは,当然,保証を求めることが必要である。 ・実体的違法についてa 返済確実性を欠く貸付けが実行されたこと地方公共団体による貸付けは,期限到来時の返済を当然の前提にする公金支出であるから,その貸付けによる公益性とともにその返済の確実性が担保されるものでなければならない。そのため,財務規則も,貸付けを受けようとする者は,貸付金申込書に「資産内容を証する書面を添えて」知事に申し込まなければならないこと(236条),知事は,同申込みがあったときは,「当該申込みに係る各事項を審査し,貸付けの決定をする」こと(237条),知事が必要がないと認めるときを除き,債務者に対し連帯保証人の保証又は債権を確実に保全し得る不動産又は有価証券による担保の提供を求めなければならないこと(241条)等を定め,いやしくも貸付けが返済されずに県の財政に重大な支障を及ぼすことがないようにしている。このような厳格な調査と手続が定められているのは,貸付金の返済が確実であることを確認しない限 41条)等を定め,いやしくも貸付けが返済されずに県の財政に重大な支障を及ぼすことがないようにしている。このような厳格な調査と手続が定められているのは,貸付金の返済が確実であることを確認しない限り,公金による貸付けを実行することは許されないという法令上の原則を示している。 また,貸付けの権限者(本件にあっては,知事である被告)は,貸付けに当たり,手続を履践することはもちろん,貸付金が返済されないおそれがないことを十分調査し,自治体に損害を与えないよう最善の措置をとる義務を負っている。 そして,無利息ないし低利の貸付けはその限りにおいて補助金の交付と同視できること,そうした借り手に有利な貸付けに公益上の必要性が要求されることに異論はないが,公益上の必要性が存在するからといって,貸付けに関する法令の要件や手続が緩和されるということにはならない。 畜産公社は,破綻前直近の決算において,資産が債務を上回っているとされていたが,実際には逆に22億円もの多額の債務超過に陥っていた。実際にいつごろから悪化し,債務超過に至ったのかを特定することは困難であるが,相当以前からであったことは容易に推測できる。 畜産公社は,県が呼びかけ,最大の出資者となって設立・運営されている法人であること,県は,毎年多額の各種補助金・貸付金を支出してきたこと,畜産公社は,経営が困難となり,過去2度にわたって経営改善計画を策定していることからすれば,県が,その経営実態について常時正確に把握していなければならないことは当然であり,知事である被告及びその職員に要請される職責である。 さらに,畜産公社は,民法に基づいて設立された公益法人であるから,被告は,同法による主務官庁として,畜産公社に対して適切な指導監督を行う責任があり,そのためにもその実態の把握は不可欠である。そこ さらに,畜産公社は,民法に基づいて設立された公益法人であるから,被告は,同法による主務官庁として,畜産公社に対して適切な指導監督を行う責任があり,そのためにもその実態の把握は不可欠である。そこで,民法は,知事に対し,法人の業務報告書等の提出(民法67条1項及び2項),職権による業務の実施状況,財産管理の状況,会計経理の状況等についての立入検査(同条3項)等の権限を付与している。 しかも,県の監査委員は,「知事の所管に属する公益法人に対する指導監督に関する事務の執行状況」に係る監査(平成4年度実施)において,「提出された各種届出,報告等については,その内容を十分に確認・検討し,特に不活発法人,赤字経営法人,収益事業実施法人については,その実態を正確に把握し,問題点の発見に努める必要がある」,「所管公益法人の実態把握と適切な指導助言を行うため,計画的な検査,調査等を行う必要がある」と述べ,当時の県知事に対し,畜産公社を含めた各公益法人の実態把握についての改善,検討を求めてさえいるのである。 また,畜産公社の経営基盤についての懸念が示されていることや,畜産公社に対する多額の資金援助(補助金及び融資金)がされていることについては,本件貸付けの数年前から県議会で再三指摘されていた。それにもかかわらず,被告が,これらの指摘を受け止めて,より慎重に畜産公社を監視,指導した形跡は,何ら窺うことができない。 さらに,本件貸付けにあたっては,予算的な裏付けが不可欠であり,その予算策定段階から,県農政部等の内部検討もされ,その段階で,各種の「調査」がされていたはずである。しかも,県は,畜産公社について,多額かつ大量の損失補償契約をしているが,そのような巨額の損失補償責任を負うに当たっても,詳細な調査検討がされて然るべきである。また,本件貸付けの申込み たはずである。しかも,県は,畜産公社について,多額かつ大量の損失補償契約をしているが,そのような巨額の損失補償責任を負うに当たっても,詳細な調査検討がされて然るべきである。また,本件貸付けの申込みをした畜産公社は,健全財政を誇っている団体ではなく,以前から,再三にわたってその財務体質を懸念されていた団体であったのであるから,なおさら,その調査は,十分にされるべきはずのものであった。 畜産公社は,秋田県に対して報告した各年度の決算書や同事業報告書等で財務内容を粉飾し,破綻を隠ぺいしようとしてきたが,畜産公社から,県当局に提出されていたこれらの書類によっても,畜産公社で不正な会計処理が行われていたことは,容易に知りうるところであった。被告補助参加人は,県農政部職員が,「会計に関する特段の知見を有していない」ことをもって,「通常要求される注意義務に違反していたとまではいえない」と主張するが,原告ら素人でさえ気付いた事情について,県職員が知り得ないはずがないし,もし,それさえも気付かなかったとしたら,それ自体,本来負うべき注意義務を怠っていたことになり,自ら特段の知見を有しない職員をこれだけ重要な職務に配置していることを自認するもので,いずれにせよ被告の責任を免れる論理とはなり得ない。 被告自身,平成10年8月31日の知事記者会見において,「昨年の夏だったですか,異常な借り入れだとかを含めて懸念がある状態だったので,事務レベルに調査をするということでヒヤリングした。」と述べ,また,同年9月11日に開催された県議会9月定例会本会議においても,畜産公社について「このような事態に立ち至るまで適切な管理・監督を怠ってきたことに対し,県民に深くお詫び申し上げる」,「これまでに見られた問題提起の遅れや対応の先送りが課題解決を困難にしてきた」と述べて 社について「このような事態に立ち至るまで適切な管理・監督を怠ってきたことに対し,県民に深くお詫び申し上げる」,「これまでに見られた問題提起の遅れや対応の先送りが課題解決を困難にしてきた」と述べており,被告が,遅くとも平成9年夏ころには,畜産公社の経営状態が劣悪であることを認識していたことは明らかである。 被告補助参加人は,「これまで一度として返済が滞ることなく,返済期日までに全額が円滑に返済されてきた」ことをもって,返済が確実であることの根拠としているが,その返済資金は,直前に金融機関から借り入れたものであり,本件貸付金も,直ちに(瞬時に),金融機関への借入金の返済に充てられているのであって,このような状況を知っていれば,畜産公社の資金繰りが極度に逼迫していることは素人でも理解でき,その返済確実性がないことは容易に知りうるところである。 以上のとおり,畜産公社は,本件貸付時に債務超過の破綻状態にあり,本件貸付金の返済が到底期待できない状況にあったのであるから,このような相手方に対する貸付けは,自治体に損失を与えるものとして,本来許されない行為であった。 ところが,被告は,既に畜産公社について破綻の懸念を認識していたにもかかわらず,かつ,畜産公社からの貸付金申込書に財務会計上添付が定められている「資産内容を証する書面」の添付がされていないという財務規則に反する手続であるにもかかわらず,畜産公社が返済できる確実性を認識することなく,漫然と本件貸付けを実行し,7億円という巨額の公金を支出させたのであって,本件貸付けが違法であることは明らかである。 b 本件貸付けが公益性を欠くこと被告は,本件貸付けは畜産公社による各種公益事業の推進を財政面から支援するためであると主張するが,そもそも畜産公社が「公益性が高い」かどうかは自明とはいえない。 b 本件貸付けが公益性を欠くこと被告は,本件貸付けは畜産公社による各種公益事業の推進を財政面から支援するためであると主張するが,そもそも畜産公社が「公益性が高い」かどうかは自明とはいえない。単に「公益法人」であれば,公益性の高い法人になるわけではない。 被告も,畜産公社が不正な事業運営をし,真実で正確な経営実態を報告する義務に違反して,不適正な会計処理に基づく業務報告書や資料を提出していたことを認めており,実際,畜産公社の職員は違法行為を行い,刑事罰を受けている。このような乱脈不正経理を繰り返し,違法行為さえ続けていた畜産公社が,公益性の高い法人ということはできない。 また,全国で,畜産公社やこれに相当する団体が存在する県は11県程にとどまり,畜産振興の必要性が,畜産公社事業の必要性に直結するものではない。被告は,畜産公社事業の「必要性」について種々の事業を挙げているが,そのうち,「繁殖牛導入事業」については,畜産公社の破綻後,秋田県経済農業協同組合連合会において実施しており,畜産公社が事業推進しなければならない強い公益性があったとは認められないし,「供卵牛事業」についても,県は,従来,畜産公社には供卵牛の飼育だけを委託し,採卵から移植は秋田県畜産試験場等が実施してきたのであって,同畜産試験場等により,十分推進しうるものである。また,畜産公社による「飼育」の現状は,供卵牛の体にふんがこびりついているような劣悪な状況であったことが県議会議員の視察で明らかとなっている。県によれば,畜産公社に受精卵の採卵や農家への販売なども任せることにし,生じた利益を取り崩して出資金の返済に充てるとのことであったが,事業にかかった経費はすべて県が補助金として支出するとしており,これは「公共事業」などといえるものではなく,県が公金を使って返済を肩代わり じた利益を取り崩して出資金の返済に充てるとのことであったが,事業にかかった経費はすべて県が補助金として支出するとしており,これは「公共事業」などといえるものではなく,県が公金を使って返済を肩代わりするに過ぎないものである。さらに,「畜産経営環境整備事業」は,畜産環境汚染防止と土壌還元が中心となるところ,このようなことは,あえて畜産公社でなければできないものではなく,仮に広域的で大規模な事業について必要があれば,県単独事業として実施すれば良いものである。畜産公社の職員はかつて70人に及んだが,本件貸付けがされた当時は27人に減少されており,新公社である秋田県農業公社では10人前後に激減している。こうした組織体制も畜産公社の公益性の程度を示している。 したがって,本件貸付けに公益上の必要性は認められない。 イ被告の主張・手続的問題について確かに,原告らが主張するように,本件貸付けの申込書には,「資産内容を証する書面」である財産目録が添付されていないが,これは,申込み時点から貸付実行日である平成10年4月1日までの間に,畜産公社が,同年3月31日現在の「財産目録」を提出することが,物理的にも,また,監事による監査を経て理事会及び総会の議決を得るという手続的にも,到底できなかったことによるものである。 貸付金申込書に資産内容を証する書面を添付することを財務規則において求めている趣旨は,貸付金の返済が滞ることがないか否かを,相手方の資産内容を証する書面に記載されている資産の状況によって審査し,貸付けをすべきか否かを判断するところにある。 県は,畜産公社の貸付金申込書には資産内容を証する書面の添付がされていないものの,上記のとおり,貸付金申込み時点において,資産内容を証する書面を添付できない特段の事情があったことから,主務官庁とし 県は,畜産公社の貸付金申込書には資産内容を証する書面の添付がされていないものの,上記のとおり,貸付金申込み時点において,資産内容を証する書面を添付できない特段の事情があったことから,主務官庁として別途提出を受けていた前々年度である平成8年度末の財産目録等を含む平成8年度の畜産公社の業務報告書に基づき,資産内容を審査したが,これらの書類からは,畜産公社の資産が負債を上回っていることが明らかであった。 また,畜産公社との随時の打ち合わせなどにおいても,畜産公社は平成7年度経営改善計画に沿って経営改善を進め,経営改善が図られつつあるとの説明を受けていたことや,県が畜産公社と進めていた牧場の返還交渉の動向などもあり,本件貸付けを実行しても,返済は確実であると判断したものであって,資産内容を証する書面の添付を求めている財務規則の趣旨を満たしていた。 また,畜産公社に対する貸付金については,財務規則241条1項ただし書の「知事が必要がないと認めるとき」に該当したため,保証人又は担保の提供は求めていない。 ・実体的問題についてa 本件貸付けの返済確実性の認識について畜産公社は,平成7年度経営改善計画において,これまで畜産公社経営の圧迫要因となっていた市町村から委託されて運営してきた牧場の地元返還を取り上げるなど,これまでにない踏み込んだ経営改善のための対策を講じることにしていた。 畜産公社の会計は,平成4年度以降,おおむね特別会計である牧場事業が赤字を計上し,その赤字を一般会計の黒字で補填し,全体としてわずかながらの黒字の収益を計上しながら推移してきており,牧場の地元返還が進めば,大きな赤字要因の一つが解消され,経営改善が大きく進むものと期待されていた。 畜産公社が市町村から委託されていた牧場のうち,平成8年度末に,大野台牧場が計画どおり てきており,牧場の地元返還が進めば,大きな赤字要因の一つが解消され,経営改善が大きく進むものと期待されていた。 畜産公社が市町村から委託されていた牧場のうち,平成8年度末に,大野台牧場が計画どおり地元に返還され,また,熊取平牧場及び仁賀保山牧場についても,返還に向けた交渉を継続しており,計画では,平成9年度末及び平成10年度末に,それぞれ地元に返還することになっており,実際に,いずれも10年度末に地元返還を果たしている。 さらに,畜産公社の損益は,業務報告書によれば,平成3年度から平成8年度までの6年間にわたり,計画よりは額が少ないものの,単年度黒字を計上していた。 こうしたことから,被告及び県は,本件貸付時点において,畜産公社は多額の累積債務を抱え,引き続き厳しい経営状態が続いており,「抜本的に経営を見直すべき法人」ではあるものの,相当の経営努力を払っており,引き続き,経営改善計画を着実に実行することにより,経営改善が達成されるであろうこと,したがって,経営が破綻するなどの状況にはないものと認識していた。 本件貸付けのような県貸付けは,畜産公社の経営改善が達成されるまでの間,主たる設立者である県において,その団体の機能を維持し,経営改善の達成を支援するために必要な財政支援措置として実行している行政施策である。経営改善計画期間中は,畜産公社が自己資金で返済する能力は事実上なく,その返済が確実にされるか否かは,畜産公社が金融機関から返済資金の融資を受けられるか否かにかかっており,金融機関も,翌年度の県予算に県貸付金が計上され,議決されていることを確認した上で,返済資金を畜産公社に融資してきた。したがって,本件貸付けを含む県貸付けの返済確実性の実質的判断は,最終的に経営改善計画に沿って畜産公社の経営改善が達成されるか否かという点に帰着するとこ 認した上で,返済資金を畜産公社に融資してきた。したがって,本件貸付けを含む県貸付けの返済確実性の実質的判断は,最終的に経営改善計画に沿って畜産公社の経営改善が達成されるか否かという点に帰着するところ,本件貸付けがされた当時の状況は,上記のとおり多額の累積債務を抱え引き続き厳しい経営状況にはあるものの,単年度黒字を計上し,また,市町村から経営を引き継いだ牧場の地元返還を進めているなどというものであり,畜産公社が多額の債務超過であることなどの事情は畜産公社の一部幹部職員による真実の経営実態の隠匿などにより,明らかではなかった。そこで,被告及び県は,畜産公社においては,経営改善計画に沿って経営改善をすすめ,現に経営改善が図られつつあり,県としても,経営改善計画期間中は貸付けを継続実施し,経営改善の達成を引き続き支援する必要があると認識していた。そして,本件貸付けを実行しても,それまでの県貸付金と同様,金融機関から融資を受けて,返済期限までに返済されることは確実であると判断し,本件貸付けを実行したのである。 原告らは,被告又はその職員が,通常の注意力をもって畜産公社の報告を受けていれば,その報告には幾多の不審点があることが明らかとなり,畜産公社が破綻状態にあることは,早期かつ容易に把握できたと主張するが,本件貸付当時においては,畜産公社の経営が破綻していたことは,「早期かつ容易に」把握することはできなかった。当時の農政部職員は,通常の法人と比較し,より慎重に畜産公社の事業実施状況や経営状況を監視,指導していたが,そうした県農政部職員による畜産公社の監視指導に関する相応の努力も,畜産公社側による真実で正確な報告,説明がなければ,成果を挙げることは難しい。畜産公社は,県とは別の法人格を有する団体として,事業実施のための独自の組織と,当該組織 社の監視指導に関する相応の努力も,畜産公社側による真実で正確な報告,説明がなければ,成果を挙げることは難しい。畜産公社は,県とは別の法人格を有する団体として,事業実施のための独自の組織と,当該組織による日常的な業務監視機能と監事による自律的な監査機能を有しており,畜産公社の適正な事業の執行の確保及び会計処理の適正な実施等に関しては,畜産公社が自らの責任により,自らの日常的な業務監視機能や自律的な監査機能を通じて確保されることになっていた。すなわち,畜産公社の各年度の経営状況は,公社組織を通じた日常的な業務監視による1年度間における日常的な会計処理の積み重ねの結果を取りまとめた損益計算書,貸借対照表,財産目録及び資産や負債の状況を明らかにした付属明細書につき,公社監事による監査や理事会及び総会の議決を経た業務報告書により,報告される仕組みとなっていたものであって,当然のことながら,その内容は正確で,かつ真実の記載をすべきことが要請されていたのである。県としては,いやしくも県内畜産関係機関の模範たるべき畜産公社においては適正に業務が執行され,財産目録の作成などの事務も誤りなく処理されているものと理解していた。 さらに,法199条7項の規定に基づき,県監査委員は,県が補助金等による財政支援を行っている法人やその出資金等の25パーセント以上を出資している法人に対して監査をすることができるとされており,畜産公社についても,毎年度,県監査委員による監査を経てきているものの,客観的な第三者の立場にある県監査委員の監査によっても,畜産公社の経営状態について破綻状態にあるとの指摘を受けたことはなかった。 このように,本件貸付けがされた当時,県が畜産公社の真の経営実態を把握できなかったことにつき,原告らがことさらに主張するような注意義務違反はなかっ て破綻状態にあるとの指摘を受けたことはなかった。 このように,本件貸付けがされた当時,県が畜産公社の真の経営実態を把握できなかったことにつき,原告らがことさらに主張するような注意義務違反はなかった。 原告らが指摘する被告の平成10年8月のいわゆる「懸念」発言の趣旨は,平成9年夏当時,畜産公社が多額の借入れをしている事実を知るに及び,畜産公社の経営実態がどうなっているのか,畜産公社を含む第三セクターの見直しを今後の県政の課題とする必要があるのではないかと感じたことを率直に述べたものであって,本件貸付後に至って初めて判明した畜産公社の経営実態を当時既に把握していたなどというものではない。また,上記発言及び同年9月11日の県議会本会議における説明も,県が呼びかけて設立した畜産公社であるにもかかわらず,多額の債務超過状態となり,その公益的機能を維持確保するために,多額の県補助金を畜産公社に交付せざるを得なくなったことを踏まえてのものである。したがって,かかる巨額の県費投入を内容とする補正予算案を提出するのやむなきに至った事情を踏まえて,それまでの畜産公社に対する県の管理・監督の状況を相対的に振り返ってみれば,結果として畜産公社の経営実態の把握ができていなかった点についてこれを懈怠と批判されてもやむを得ないと考えられる余地があることから,これが「適切な管理・監督を怠ってきた」ことに該当するとして,県民に「おわびを申し上げ」たものであって,県による畜産公社の管理・監督の個別具体的な対応状況を踏まえた上での発言でないことはもとより,本件貸付けを決裁実行するにつき,具体的な注意義務違反があったことを認めたものではない。 以上のとおり,被告ないし県職員は,本件貸付けについて,返済確実性があると判断した上で実行したものであって,その判断に原告ら 実行するにつき,具体的な注意義務違反があったことを認めたものではない。 以上のとおり,被告ないし県職員は,本件貸付けについて,返済確実性があると判断した上で実行したものであって,その判断に原告らが主張するような過失はない。 b 本件貸付けの公益性について畜産公社は,畜産行政の補完的役割を担う公益法人として,昭和44年に設立されて以来,草地造成事業や家畜導入事業のほか,市町村から委託された牧場の運営など極めて公益性の高い事業を実施し,県畜産の振興と農家の経営安定に中核的な役割を果たしてきた。 しかし,畜産公社は,時代の要請に基づくパイロット的事業や農家の立替払いを含むリスクの高い事業等を実施してきたことに加え,近年の牛肉の輸入自由化による価格低迷,ヨーネ病の発生による家畜市場への出荷自粛等の不可抗力も加わり,経営状況が悪化していた。 そして,平成3年度には,畜産公社自らが経営改善計画を策定し,平成7年度には更に見直しを行うなど,抜本的な経営改善を図ることとしたことから,県としても,畜産公社の公益的機能を維持し,秋田県畜産の牽引役を担わせるため,畜産公社に対し,運営資金として低利の短期の貸付けを行ってきたものである。 本件貸付けに係る7億円についても,今後とも本県畜産振興のために欠くことのできない畜産公社の公益的機能を引き続いて維持していくために必要な畜産公社の運営資金として貸し付けたものである。 既に事業を休止し,再開の目処が立っていないような法人に融資を行うのとは異なり,本件貸付けをした当時,畜産公社は,現に公益事業を継続しており,その業務報告書等により報告されていた経営状況は,多額の累積債務はあるものの,平成7年度経営改善計画に基づき経営改善に努めており,経営改善の内容も,牧場の地元返還を盛り込み,現に一部の牧場につ り,その業務報告書等により報告されていた経営状況は,多額の累積債務はあるものの,平成7年度経営改善計画に基づき経営改善に努めており,経営改善の内容も,牧場の地元返還を盛り込み,現に一部の牧場については地元返還が達成されるなど,その実現性の見込みは高かったのであるから,畜産公社の経営改善を下支えするために実施される本件貸付けには公益上の必要性が認められたことは明らかである。 ・まとめ以上のとおり,本件貸付けには,手続的にも,実体的にも違法な点はない。 ・本件債権放棄の違法性についてア原告らの主張・債権放棄に関する法的規制について本件貸付けに係る貸付金債権も,秋田県の「財産」であるから,適正な管理と処分を行わなければならないことはいうまでもない。法96条にいう「権利の放棄」とは,地方公共団体の有する権利を積極的に消滅させる意思表示をいうとされ,その例として,「工事遅延による違約金の免除等」が挙げられており,本件の如き貸付金債権の放棄まで念頭に置いているものではない。 そもそも,貸付金のような債権は,当然のことながら,債権回収の手続をした上で(法240条),なお回収の見込みがない場合にはじめて放棄等の措置が検討されるべきものであって,このことは,債権の放棄として,同法施行令171条以下で詳細にその手続を定めていることからも理解することができる。 したがって,本件のように,貸付けからわずかな時間,しかも期限が到来する前に,元金全額と利息全額を「放棄」するなどということは,上記各法令の規定からみても,到底,許容される余地のない行為である。 ・本件債権放棄が公益性を欠くこと被告は,本件債権放棄について,畜産公社の事業存続のため,県による公的支援の追加が避けられないと判断したからであると主張するが,上記のとおり,畜 い行為である。 ・本件債権放棄が公益性を欠くこと被告は,本件債権放棄について,畜産公社の事業存続のため,県による公的支援の追加が避けられないと判断したからであると主張するが,上記のとおり,畜産公社の事業に「公益性」は認めがたく,その事業の実態は,上記のとおり,不正と乱脈にまみれたものであり,上記主張は,スローガン的な建前論といわざるを得ない。 むしろ,被告及び県幹部の発言からは,公社事業の公益性というより,金融機関の信頼ということが強調されており,そもそも本件貸付けにかかる金員も,翌日,全額が秋田銀行と農林中金に対する債務返済に充当されているのであって,金融機関の信頼確保が事実上の目的であったと認められる。しかしながら,県と畜産公社は別個の団体であり,「金融機関の信頼」のために,損失補償契約をしていない巨額の債務を負担することは不当であり,そのような信頼確保には到底公益性を認め難い。また,畜産公社役員が連帯保証をしている借入金は,農林中金,秋田銀行,北都銀行の3行で合計10億1900万円に上るところ,被告及び県幹部の発言からは,県庁OBの畜産公社役員に10億円を超える個人保証を負担させるわけにはいかないとの本音が窺われ,こうした理由が畜産公社の存続とそのための本件債権放棄を含む県費投入を正当化する公益上の必要性に当たらないことはいうまでもない。 このように,被告が畜産公社事業の支援ないし存続を必要と判断した本音は,いずれも公益上の必要性を認めがたく失当であり,本件債権放棄は,法令に違反し,また被告の裁量権の範囲を逸脱し,これを濫用するものであって,違法である。 イ被告の主張・債権放棄の法的規制について債権の放棄に関しては,法は二つのルートを用意しているものであって,その一つは,法240条3項の委任に基づき,地方自治 るものであって,違法である。 イ被告の主張・債権放棄の法的規制について債権の放棄に関しては,法は二つのルートを用意しているものであって,その一つは,法240条3項の委任に基づき,地方自治法施行令171条の7によって行う免除であるが,もう一つは,法96条1項10号の活用によるもの,すなわち「法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがあるほか,権利を放棄すること」を議会で議決する方法による場合であり,議会の議決という手続をとるならば,例えば,第三セクターに対する貸付金返還請求権を放棄するとか,契約上の権利を放棄することも許されるのである。 この場合,法96条1項10号にいう「権利の放棄」に関し,法等の法令においては,放棄することができる権利の種類や範囲,時期等に関する要件は規定されておらず,第一義的には地方公共団体の長がその必要性等を判断し,議案として議会に提出し,その後,議会において当該権利の放棄に関する議案の審議を行い,議決承認されることにより地方公共団体の意思として決定されるものであって,権利の放棄に関する要件が定められていないからこそ,個別案件ごとに議会の議決を要することにしたものであり,本件債権放棄についても同様の手順を経て適正・適法に行われており,手続の面において,本件債権放棄に違法の点はない。 また,本件債権放棄を含む畜産公社の整理健全化に関する議案を被告が県議会に提出するに当たっては,県自ら,また県議会農林水産委員会及び総務企画委員会からの提出要請に応じて,合理的な理由を記載した資料とその根拠となる相当量の資料を提出し,その上で,各県議会開会前の政党懇談会,本会議の代表質問及び一般質問に対する答弁,各農林水産委員会,各総務企画委員会,農林水産委員協議会,決算特別委員会等の場を通じて詳細にわたり,被告(知事) 出し,その上で,各県議会開会前の政党懇談会,本会議の代表質問及び一般質問に対する答弁,各農林水産委員会,各総務企画委員会,農林水産委員協議会,決算特別委員会等の場を通じて詳細にわたり,被告(知事),副知事,出納長,農政部長以下の農政部幹部及び総務部長以下の総務部幹部が詳細に説明を行ったほか,県議会議員との真摯な質疑を経た上で,ようやく県議会は平成10年12月定例会,平成11年2月定例会において,畜産公社の整理健全化対策に係る予算を議決し,本件債権放棄についても,平成11年2月定例会に提案し,同月23日,原案どおり可決され,同年3月9日,調停が成立したものであって,実質的にも十分な審議を経てされたものである。 ・本件債権放棄の公益性について本件債権放棄は,平成10年5月以降に明らかとなった畜産公社の巨額の債務超過について,これを先送りすることなく,抜本的な対応を採るとの基本方針の下に行った政策決定に基づくものである。 この政策決定に当たっては,仮に債権放棄という手段を採らないこととした場合には,畜産公社経営が行き詰まり,既に畜産公社が手掛けていた各種事業が中止又は停滞を余儀なくされ,畜産公社が担っていた事業の新たな受け皿の確保や畜産公社が管理していた県有供卵牛の管理問題への対応等の各種の混乱,畜産農家や関係機関への不利益など秋田県畜産振興施策の停滞のほか,県民の県政に対する信頼の低下などのいずれも揺るがせにできない極めて重大な支障が生じることが予想された。 したがって,こうした支障を回避するためには,畜産公社がそれまで培ってきた経験と技術に裏付けされた公益的機能を維持し,畜産公社を存続させることが最も適当であるとの判断に立って,所要の財政措置により畜産公社の債務超過状態を解消し,その経営体質の抜本的な改善を図り,その上で,畜 と技術に裏付けされた公益的機能を維持し,畜産公社を存続させることが最も適当であるとの判断に立って,所要の財政措置により畜産公社の債務超過状態を解消し,その経営体質の抜本的な改善を図り,その上で,畜産公社を再編・整理するとの政策決定をしたものである。 被告は,この政策決定に基づき,畜産公社の整理健全化のための財政措置と併せて県議会の議決を経て貸付金債権の放棄をしたものである。 このように,本件債権放棄は,公益上の必要性からされたものである。 ・まとめ以上のとおり,本件債権放棄は,手続的にも実体的にも何ら違法な点はない。 ・損害の発生についてア原告らの主張被告の違法な本件貸付け及び本件債権放棄により,県は7億0700万円の損害を被った。 仮に,破産した場合を考えると,畜産公社の資産及び負債の状況から,44.66パーセントの配分率となることから,本件貸付けにより,55.34パーセントが回収不能見込みとなる多額の損害が発生し,また,本件債権放棄により,44. 66パーセントの回収可能額が放棄され,やはり県に損害が発生したことになる。 イ被告の主張本件貸付け及び本件債権放棄は,いずれも公益性を考慮した合理的な理由による政策判断により,適法な手続を経てされた措置であって,県に損害を与えていない。仮に本件貸付けがされた時点までに,県において,畜産公社が巨額の債務超過状態にあるなどの畜産公社の経営実態を知り得ていたとした場合であっても,県としては,県畜産行政施策を遂行する行政責任を有しているのであるから,債権回収を図ることを優先する金融機関と異なり,県畜産行政をどのような方法により遂行するのか,県議会の議決を経て,この問題に関する県としての意思を確定することが急務とされ,この問題に対する県としての意思が確定するまでは,畜産公社機 機関と異なり,県畜産行政をどのような方法により遂行するのか,県議会の議決を経て,この問題に関する県としての意思を確定することが急務とされ,この問題に対する県としての意思が確定するまでは,畜産公社機能を維持存続させる必要があった。 こうしたところ,本件貸付けを含む県貸付けは,昭和58年度から継続的に実施されており,本件貸付時点では本件貸付けと同額,同利率の平成9年度県貸付けが実行されていたことから,上記畜産公社機能の存廃に係る検討を行う間,畜産公社機能を維持存続させるため,県においては,平成9年度県貸付金につき,その返済を猶予するなどの措置を採り,本件貸付け後の県の調査により初めて判明した畜産公社の巨額の債務超過状態に照らすと,平成9年度貸付金を畜産公社が返済することは不能であり,結局は,本件貸付け後に行われた県による整理健全化対策と同じく,県が平成9年度県貸付金債権の全部を放棄するか,又は県が平成9年度県貸付金と同額の補助金を畜産公社に交付し,それにより畜産公社が平成9年度県貸付金を県に返済するなどの対応を採っていたと考えられ,これにより,県による財政負担額は変わらないことは明らかであるから,仮に畜産公社の経営実態の把握について被告に過失があったとしても,これによって県が格別に「損害」を被ったことにはならない。 ・被告の責任ア原告らの主張被告は,本件貸付けを決裁して,会計課を通じて違法な貸付金支出を行わせ,また,本件債権放棄を自ら決裁して,県の財産を違法に処分した。そして,被告は,本件貸付け及び本件債権放棄が違法であることを知り,または,これを知らなかったことに過失があったものであるから,これにより県が受けた損害金7億0700万円を賠償する責任がある。 よって,原告らは,法242条の2第1項4号に基づき,県に代位して,被告 たは,これを知らなかったことに過失があったものであるから,これにより県が受けた損害金7億0700万円を賠償する責任がある。 よって,原告らは,法242条の2第1項4号に基づき,県に代位して,被告に対し,畜産公社に係る違法な本件貸付け及び本件債権放棄による損害額のうち,その内金として貸付金債権元本の一部である7000万円及び利息相当額700万円の合計7700万円の賠償金の支払並びにこれに対する訴状送達の日の翌日である平成11年6月12日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ被告の主張本件貸付け及び本件債権放棄は,何ら問題のない合理的な裁量判断に基づく政策であることは明らかであり,いずれも違法とされる余地はなく,したがって,県には何らの損害は発生していないから,被告の賠償責任は問題とならない。 第3 当裁判所の判断 1 本件貸付けの違法性について・上記争いのない事実等並びに証拠(甲2,3,7,10,16,18,28ないし34,丙1ないし8,10,12,15,22,24,26,52,53,58,61,65,66,69,112ないし115,122,123〔枝番を含む〕,証人a,証人b)及び弁論の全趣旨によれば,本件貸付けに至る経緯等として,次の事実が認められる。 ア畜産公社設立の背景事情県は,昭和29年に制定された酪農振興法に基づいて「県畜産振興5カ年計画」や「集約酪農地域振興計画」を策定し,それに基づき各種施策を実施するなどして,畜産の振興に努めていた。 また,県は,昭和30年代以降,畜産部門を果樹・園芸部門と並ぶ「選択的拡大部門」として位置付け,その支援のための施策を展開し,昭和40年代以降は,特に大規模畜産を推進することとし,飼養頭羽数の拡大等の目標を掲げ,中山間地域の草地の 部門を果樹・園芸部門と並ぶ「選択的拡大部門」として位置付け,その支援のための施策を展開し,昭和40年代以降は,特に大規模畜産を推進することとし,飼養頭羽数の拡大等の目標を掲げ,中山間地域の草地の活用による飼料基盤の整備,大規模牧場の造成と公共牧場との機能分担,畜産団地の形成,さらには,大家畜による畜産経営をめざす農業自営青年の養成を図るため畜産青年建設隊を設置するなど,各種施策の展開を図ることとしていた。 なお,秋田県においては,その地勢的条件等から,産業に占める農業の割合が比較的高く,その中で,畜産は,米,野菜・果樹に続く第三の基幹作物として今日に至っており,秋田県における平成10年度の畜産の粗生産額は274億7000万円であり,その農業粗生産額全体に対する割合は12.3パーセントを占めていた。 イ畜産公社の設立秋田県においては,上記の畜産振興策を推進するため,草地を基盤とした畜産を確立する目的で,昭和40年に財団法人秋田県草地開発公社が設立されていたが,県は,さらに,「草地畜産の安定と規模拡大,さらには産地形成を急速に助長するため,草地基盤の整備から家畜の導入,加えて牧場の運営まで,一貫した課題を取り上げ対応しうる体制を拡充強化することとし,財団法人秋田県草地開発公社の業務も承継して,本県畜産発展の要としての機能を持つ公的機関の設立を図る」目的で,当時の秋田県知事が設立発起人となって畜産公社の設立を申請し,昭和44年5月,県,農畜産業振興事業団,秋田県経済農業協同組合連合会,秋田県畜産農業協同組合連合会及び県内の3農協及び63市町村を会員とする民法34条に基づく公益社団法人として,畜産公社の設立が許可された。 ウ畜産公社の事業畜産公社は,その定款(平成11年3月一部改正前のもの)によれば,秋田県における草地 村を会員とする民法34条に基づく公益社団法人として,畜産公社の設立が許可された。 ウ畜産公社の事業畜産公社は,その定款(平成11年3月一部改正前のもの)によれば,秋田県における草地を基盤とする畜産経営の近代化を推進し,もって農業生産力の増強と,農業者の経済的社会的地位の向上に資することを目的とし(3条),①草地及び農地等の造成並びに改良,②牧場の設置・経営,③家畜の導入及び譲渡並びに貸付け,④農畜産業の経営環境保全及び関連施設の整備,⑤草地等からの生産物の供給,⑥草地畜産推進に関する調査及び普及,⑦その他公社の目的を達成するために必要な事業を行うものとされている(4条)。 畜産公社は,多岐にわたる事業を実施していたが,その主なものは,次のとおりである。 ・草地造成事業(昭和40年から)生産性の低い山林原野を高位生産草地に造成し効率的利用を図るため,草地整備改良を行った。 ・山腹畜産推進事業(昭和40から昭和47年まで)中山間地域における夏山冬里方式の飼養体系を確立するため,男鹿市ほか8か所で草地基盤や畜舎整備を行った。 ・家畜導入事業(昭和42年から)中山間地域における複合経営の推進,畜産の規模拡大,畜産農家の経営の安定化を図る目的で,乳用牛及び肉用牛農家の経営規模拡大と優良雌牛の確保を目的として,繁殖雌牛を導入しようとする畜産農家等(以下「導入農家」という。)に対し,繁殖雌牛を貸し付け,譲渡する事業を行った。畜産公社は,導入農家の貸付申請に基づいて繁殖雌牛を購入し,導入農家と貸付契約を締結した上,購入した繁殖雌牛を導入農家に5年間貸し付け,導入農家が契約期間の5年以内に繁殖雌牛を繁殖させ,生まれた子牛を販売し,貸付契約期間満了後,導入農家は,生まれた子牛の販売代金で,畜産公社から貸付けを受けた繁殖雌牛を 牛を導入農家に5年間貸し付け,導入農家が契約期間の5年以内に繁殖雌牛を繁殖させ,生まれた子牛を販売し,貸付契約期間満了後,導入農家は,生まれた子牛の販売代金で,畜産公社から貸付けを受けた繁殖雌牛を譲り受けてきた。 ・畜産経営環境整備事業(昭和63年から)「畜産経営に起因する環境汚染の防止と畜産経営の合理化に資する」との目的に基づき,家畜排せつ物土地還元施設などを整備する事業を行った。なお,畜産公社が受託実施している事業は,「おおむね旧市町村の範囲以上の広がり」を持つ等,広域的で大規模な事業であることから,本来は,県が実施すべき「都道府県営畜産経営環境整備事業」であった。 畜産経営環境整備事業実施要領(平成5年4月1日付け5畜B第608号畜産局長通達)によれば,上記事業は,都道府県及び指定都市以外には,「都道府県若しくは指定都市が当該法人の社員若しくは寄附財産の拠出者となっている法人,又は都道府県知事若しくは指定都市の首長,若しくはその指名を受けた者が当該法人の理事となっている法人(営利を目的としない法人に限る。)」のみが事業主体となりうるものであり,秋田県においては,畜産公社が事業主体となって実施されていた。なお,事業実施に係る経費については,国及び県からの補助金の交付を受け,不足する部分について,畜産公社が金融機関から融資を受け,事業実施後に事業参加者から回収するものとされていた。 ・草地畜産活性化特別対策事業(平成9年)将来にわたり畜産生産地として発展が期待される地域において,国の畜産環境総合整備事業の一環として,草地景観を活用した都市住民との交流拠点の整備等を草地基盤の整備,生活環境の改善等と一体的に実施した。 同事業の実施に係る経費は,畜産経営環境整備事業と同様,国及び県から補助金の交付を受け,その不足額につ を活用した都市住民との交流拠点の整備等を草地基盤の整備,生活環境の改善等と一体的に実施した。 同事業の実施に係る経費は,畜産経営環境整備事業と同様,国及び県から補助金の交付を受け,その不足額について,畜産公社が金融機関から融資を受け,事業実施後に事業参加者から回収することになっていた。 ・畜産青年建設隊設置事業(昭和46年及び昭和48年から)第三次県総合開発計画に基づく大規模畜産を展開するため,仁賀保町及び由利町に近代酪農のパイロット事業として,20ヘクタールの草地とこれに付帯する畜舎等を整備し,それぞれ5戸の大規模草地型酪農に意欲のある青年を入植させた。 これは,事業費を25年の年賦払いで畜産公社に納入し,完済後に所有権を畜産公社から隊員に移転するというものであった。 ・圧縮成形乾草生産事業(昭和47年から昭和55年まで)第一次オイルショックを契機に輸入粗飼料が高騰したため,県内産良質粗飼料を安価に生産供給するため,大潟村ほか1か所に生産プラントを整備した。 ・母親牧場事業(昭和48年から昭和50年まで)農村婦人の潜在的労働力を活用して農村の活性化と肉用牛の生産振興を図るため,仁賀保町ほか4か所に母親牧場として畜舎等を整備し,肉用牛の生産振興と周年所得確保を図った。これは,畜産公社が事業主体となって国庫補助事業として実施したパイロット事業である。 ・稲わら固形飼料生産事業(昭和48年から昭和55年まで)未利用資源として焼却され,スモッグ被害を引き起こしていた稲わらを家畜飼料として活用するため,畜産公社が事業主体となって,国庫補助事業として実施し,山本町ほか5か所に稲わらを原料とする固形飼料生産プラントを整備し,固形飼料を生産供給した。 これらの事業は,そのほとんどが県が企画立案した上で,畜産公 事業主体となって,国庫補助事業として実施し,山本町ほか5か所に稲わらを原料とする固形飼料生産プラントを整備し,固形飼料を生産供給した。 これらの事業は,そのほとんどが県が企画立案した上で,畜産公社を事業主体として行われたが,国庫補助事業等であることから,畜産公社のように地方公共団体が関与している公益法人以外の者は事業主体となれないものが多いため,民間企業の参入はほとんど考えられないものであった。 エ畜産公社に対する県の関与の状況畜産公社は,上記のとおり,県が中心となって,市町村や関係団体に参加を呼びかけて設立されたものであり,県は,その出資金総額7億8000万円の約46パーセントに当たる3億5930万円を出資する最大の出資者であった。また,県は,畜産公社の設立時から,多数の県職員やそのOBなどを派遣しており,畜産公社の理事長及び常勤の理事については,県の推薦に基づき,県の幹部職員又はそのOBが就任する慣例となっていたほか,非常勤の理事や参与,事務局長などのポストにも,県農政部畜産課の現職の職員などが就任していた。 本件貸付けがされた当時の理事長は,県農政部長在職中の平成6年に非常勤の理事長として就任し,平成9年に県を退職後,常勤の理事長に就任した者であり,また,常務理事は,平成9年に県畜産試験場長を最後に県を退職し,就任した者であった。なお,同常務理事は,本件貸付けがされた日に,県畜産課の現職職員が就任するまで,事務局長も兼任していた。そのほか,2名の県畜産課職員が参与に就任していた。 また,県は,畜産公社が行っていた多くの事業に対して補助金を交付するとともに,その事業に必要な資金のうち,県や国からの補助金で足りない部分について,畜産公社が金融機関から長期融資を受ける場合には,金融機関との間で損失補償契約を締結し,その資金調達 補助金を交付するとともに,その事業に必要な資金のうち,県や国からの補助金で足りない部分について,畜産公社が金融機関から長期融資を受ける場合には,金融機関との間で損失補償契約を締結し,その資金調達を支援していたほか,公社運営補助金として,事務所賃貸料や常勤役員の報酬等を補助したり,本件貸付けのような短期運営資金を融資するなどして,畜産公社に対し,毎年度多額の財政支援を行っていた。 オ畜産公社の経営悪化について畜産公社は,上記のとおり,県などから多額の補助金等の支援を受けて,各種事業を実施していたが,そもそもその設立当初から,その前身である財団法人秋田県草地開発公社の11億7000万円に及ぶ債務を引き継いでいたことに加え,その事業内容が,もともと収益を上げることを目的とするものではなく,時代の要請に基づくパイロット的事業や農家の立替払いを含むリスクの高い事業等が多く,畜産農家の離農等により負担金の未収等が増加したこと,経営に行き詰まった市町村の牧場の管理運営を引き受けたこと,子牛価格の下落やオイルショックによる飼料価格の高騰,近年の牛肉の輸入自由化による価格低迷など畜産経営を取り巻く状況が悪化したこと,畜産公社の牧場内でヨーネ病が発生し,家畜市場への出荷自粛を余儀なくされたことなどから,その経営状況は,当初から厳しく,ほぼ毎年度赤字状態が続き,平成2年度における畜産公社の借入金は合計38億7600万円余に上り,累積損失は3億8500万円余に及んでいた。 カ畜産公社の経営改善計画について畜産公社は,平成3年11月,このような状況を踏まえ,経営状況の改善を図る必要があるとして,県の全面的な指導の下で,経営改善計画を策定した。 経営改善計画は,経営改善の目標年度を平成3年度から平成7年度までの5か年間としたものであり,その骨子は,次 経営状況の改善を図る必要があるとして,県の全面的な指導の下で,経営改善計画を策定した。 経営改善計画は,経営改善の目標年度を平成3年度から平成7年度までの5か年間としたものであり,その骨子は,次のとおりである。 ・基幹事業の拡充と運営の合理化草地造成等受託事業については,その受託量の確保に努め,家畜導入事業及び肥育素牛育成供給事業については,県の計画に沿って適切な実施に努め,牧場運営事業については,仁賀保山牧場及び大野台牧場を肥育経営牧場として枝肉の格付け向上と低コスト生産に努め,椈森牧場及び熊取平牧場を繁殖育成牧場として繁殖雌牛の計画的な更新と受精卵移植技術を活用した二卵移植も一部実施し,生産率の向上に努める。 ・未収債権の回収家畜導入事業等に係る農家納付金については,償還促進活動と併せて,農家の経営実態をも踏まえた弾力的な納入方法を講じるなどの円滑な収納に努め,かつての行政需要により実施した母親牧場設置事業等の回収困難な未収債権については,県及び会員並びに関係団体の財政援助による処理に努める。 ・累積損失金の解消累積損失金のうち,かつての行政需要により実施し,既に終了した事業に係る損失金について,全額,県の助成金で解消を図る。 ・職員定数の見直し草地造成の受託量の減少に対応し,計画的な定数の見直しを進める。 経営改善計画によれば,上記の各措置をとることによって,職員数が平成2年度の39人から27人までに減少し,平成7年度までの間に毎年1500万円から4000万円程度の当期利益が見込まれ,それに応じて相当額の累積損失が解消されることになっていた。そして,資金繰りに関しては,毎年度5億円超の長期借入金が予定されるとともに,県から,毎年度7億6300万円の短期借入れを受けることが盛り込まれていた。 キ平成7年度 れることになっていた。そして,資金繰りに関しては,毎年度5億円超の長期借入金が予定されるとともに,県から,毎年度7億6300万円の短期借入れを受けることが盛り込まれていた。 キ平成7年度の新経営改善計画について畜産公社においては,経営改善計画期間中,会計書類上の単年度収支は黒字で推移していたが,平成3年からの牛肉の輸入自由化に伴い子牛価格等が低迷し,畜産農家の事業投資意欲が減少し,その影響で畜産公社の事業量が落ちてきたこと,畜産農家の経営環境が悪化し,公社事業に参加した畜産農家が畜産公社に納入すべき事業負担金を計画どおりに納入することができず,未収金が増加するようになったこと,公社牧場に発生したヨーネ病の影響により牧場部門の経営が悪化したことなどから,累積損失の解消が計画どおりに進まなかったため,平成7年度になって,再度,県の指導の下で新経営改善計画が策定されることになった。 新経営改善計画は,期間を平成7年度から平成13年度までとしたものであり,その骨子は次のとおりである。 ・草地造成及び畜産環境整備については,県の新総合発展計画(後期実施計画)に基づき,一層の推進を図るほか,公社単独事業についても,積極的な掘り起こしに努め,団体営草地基盤総合整備事業を主体にしながら,その他事業の受託事業量確保に努める。 ・牧場運営及び目的を達成した事業は,段階的に縮小(牧場の返還を含む。)し,経営の減量化を図ることとし,肥育素牛供給事業を平成6年度をもって終了し,大野台牧場を平成8年度末に,熊取平牧場を平成9年度末に,仁賀保山牧場を平成10年度末までに段階的にこれを廃止し地元に返還する。 ・基幹牧場である椈森牧場(西神分場)は,肉用素牛供給牧場としての機能を段階的に縮小し,畜産に関する新技術を推進する牧場 賀保山牧場を平成10年度末までに段階的にこれを廃止し地元に返還する。 ・基幹牧場である椈森牧場(西神分場)は,肉用素牛供給牧場としての機能を段階的に縮小し,畜産に関する新技術を推進する牧場としてその運営に取り組む。 ・事業量に見合った職員数の適正化を図ることとし,平成6年度で30人であったものを,平成13年度までに,段階的に20人にまで削減する。 ・未収金の回収及び効率的経営管理に努め,累積損失金の早期解消を図ることとし,社内に常勤役員を班長とする事業プロジェクト班を設置し,債権の把握,回収方法の分析を行うほか,回収にあたっては,専従職員らが主体的に定期的な巡回と督促を行い未収金の早期回収に努める。 新経営改善計画によれば,上記の各措置をとることにより,平成13年度には,畜産公社の累積損失が解消されることになっていた。また,資金繰りとして,毎年度5億円程度の長期借入れが予定されていたほか,県から,平成7年度及び平成8年度は7億円,平成9年度は6億5000万円,平成10年度は6億円,平成11年から平成13年度までは5億5000万円の短期資金の融資を受けることが盛り込まれていた。 ク新経営改善計画の実施状況等について新経営改善計画策定後,平成9年度までの畜産公社の主要事業の実績は,草地造成等事業については全体として計画を上回る受託量となり,畜産経営環境整備事業についてもおおむね計画どおりの実績となった。また,家畜導入事業については,計画を下回る結果となったものの,職員数の削減,牧場の市町村への返還については,熊取平牧場の返還が計画より1年遅れたことを除き,ほぼ計画どおりにすすみ,損益状況としては,平成7年度,8年度と連続して,計画を上回る黒字を計上するなど,少なくとも会計書類上の数値において ついては,熊取平牧場の返還が計画より1年遅れたことを除き,ほぼ計画どおりにすすみ,損益状況としては,平成7年度,8年度と連続して,計画を上回る黒字を計上するなど,少なくとも会計書類上の数値においては,順調に経営改善が進んでいることが示されていた。 しかしながら,現実には,計画初年度の平成7年度から,牧場部門において,ヨーネ病に感染し発症した繁殖雌牛の処分や,平成6年度から実施していた乳子牛哺育育成事業による導入乳子牛の大量死などによって大幅な赤字が発生しており,これを後記の不正な会計処理を行うことによって隠ぺいしていたに過ぎず,この時点で,既に事実上計画どおりに経営改善を図ることは不可能な状態にあった。 ケ畜産公社で行われた不正な会計処理及び業務執行について畜産公社においては,平成3年度以降,会計書類上の単年度収支が黒字で推移していたものの,実際には,経営状態を良く見せるため,固定資産の減価償却や,回収不能債権の償却を行わずに先送りにしたり,家畜等の資産を過大に計上するなどの不適切な会計処理が行われていた。 また,畜産公社においては,平成7年度に,牧場部門で1億4100万円もの巨額の赤字が生ずる見込みになり,当該年度が新経営改善計画の初年度であったこともあり,上記損失を秘匿するため,総務部を中心とする幹部職員らによって,特別会計の流動資産である棚卸資産を減少させ,その分だけ,固定資産である建物と草地を増加させる不正な操作を行い,黒字決算を装う粉飾決算が行われていた。 なお,畜産公社におけるこれらの不正な会計操作は,真実の経営状態が明らかとなることで,金融機関からの融資が受けられなくなることや,県が畜産公社の存続をあきらめ,整理の対象とされることを危惧して行われていた。 さらに,畜産公社においては,家畜導入事業に関し,県が定 明らかとなることで,金融機関からの融資が受けられなくなることや,県が畜産公社の存続をあきらめ,整理の対象とされることを危惧して行われていた。 さらに,畜産公社においては,家畜導入事業に関し,県が定めた「農業農村対策大綱」の導入計画頭数を達成する必要があったことに加え,少しでも多くの手数料収入を得ようと考えたことなどから,事業対象外の牛を対象扱いにして,不正に導入したり,実際には導入していない牛を導入したように装うなどの不正行為が行われていた。また,平成6年度から実施した乳子牛哺育育成事業により導入した乳子牛が多数死亡したことから,この事実を隠ぺいするため,法律上の許可を得ていない場所に乳子牛の死体を埋めたり,死亡した乳子牛を販売したように装って,肉用子牛生産者補給金を不正に受給したほか,平成7年度から9年度にかけて,約3700万円の架空の飼料代を計上して,その中から乳子牛を買い足したり,架空の販売代金として流用したほか,食糧費として約1500万円を不正に流用するなど,業務執行に絡む種々の不正行為も行われていた。 これらの事実は,後記のとおり,平成10年5月に,家畜導入事業に関する不正が新聞報道されたことを契機に,県の数回にわたる調査によって明らかとなった。 コ被告の県知事就任と畜産公社に関する発言被告は,平成9年4月に秋田県知事に就任したが,畜産公社に関しては,平成10年8月31日の知事記者会見において,「昨年の夏だったですか,異常な借り入れだとかを含めて懸念がある状態だったので,事務レベルに調査をするということでヒヤリングした。」と述べ,また,同年9月11日に開催された県議会9月定例会本会議において,畜産公社が「このような事態に立ち至るまで適切な管理・監督を怠ってきたことに対し,県民に深くお詫び申し上げる」,「これまでに 」と述べ,また,同年9月11日に開催された県議会9月定例会本会議において,畜産公社が「このような事態に立ち至るまで適切な管理・監督を怠ってきたことに対し,県民に深くお詫び申し上げる」,「これまでに見られた問題提起の遅れや対応の先送りが課題解決を困難にしてきた」などと述べた。 サ県による畜産公社の財務状況の把握状況県は,「知事の所管に属する公益法人の設立及び監督に関する規則」(昭和46年秋田県規則第36号)に基づき,畜産公社から,毎年度,業務報告書その他の報告書類の提出を受けていた。 そのほか,担当課である県農政部畜産課においては,各種事業の執行に関し,畜産公社と打ち合わせをする際,随時,畜産公社の経営状況について確認していたほか,県議会等で,畜産公社の経営状況に関する質問がされることも多かったため,その資料づくりのため,直接畜産公社から聞き取りを行うなどして,その経営状況の把握に務めていた。 また,県は,社会経済情勢の変化に対応した簡素で効率的な県政の実施を目標として,平成7年2月8日,「秋田県行政改革推進委員会」を設置したが,同委員会の審議を経て,平成8年1月に策定された「秋田県行政改革大綱」において,畜産公社は,財団法人秋田県観光物産公社と並んで「抜本的に経営を見直すべき法人」に挙げられ,新経営改善計画に沿って,平成13年度までに累積損失を解消することとされていた。 他方,畜産公社は,その定款によって,「理事長は,毎年度事業年度終了後遅滞なく,事業報告書,財産目録,貸借対照表,損益計算書を作成し,監事の監査を受け,総会の承認を得て,秋田県知事に報告しなければならない」(35条)とされ,細目については「社団法人秋田県畜産開発公社経理規定」及び「社団法人秋田県畜産開発公社会計処理基準」に基いて,毎年度,総務課を中心として業務報告 秋田県知事に報告しなければならない」(35条)とされ,細目については「社団法人秋田県畜産開発公社経理規定」及び「社団法人秋田県畜産開発公社会計処理基準」に基いて,毎年度,総務課を中心として業務報告書等の会計書類を作成し,公社監事による監査を経て,理事会及び総会の承認を得た上で,これを県に提出していた。 しかしながら,上記のとおり,その作成にあたった総務課の一部職員の間で,以前から資産の水増し等の不適切な会計処理が行われていたことから,県に提出された事業報告書等の内容は畜産公社の真実の経営状態を示すものではなかった。 なお,平成9年度の業務報告書が県に提出されたのは,本件貸付け後であったため,本件貸付け時における直近の報告書は平成8年度のものであったが,同報告書によれば,同年度の畜産公社の当期損益は3441万9000円の黒字であり,累積損失は2億9541万8000円,長期借入金残高は23億4178万4000円,短期借入金残高は23億0500万円,借入金残高の合計は46億4678万4000円であった。 シ県による畜産公社に対する運営資金の貸付けについて県は,当初から厳しかった畜産公社の経営を支援するため,昭和58年度から,毎年度低利で運営資金の貸付けを行っており,その額は,当初,2億5000万円から始まり,その後,増減を経て,平成7年度からは,毎年度7億円が貸し付けられていた。同貸付けは,上記のとおり,経営改善計画及び新経営改善計画において,畜産公社の資金繰りの予定に組み込まれており,県は,「畜産開発公社経営改善対策事業」として,毎年度当初予算案に計上し,予算として県議会の承認を経た上で,財務規則及び公共牧場等運営資金貸付要綱に基づいて,貸付けを実行していた。 そして,県は,平成10年度についても,前年度同様7億円の貸付けを実 初予算案に計上し,予算として県議会の承認を経た上で,財務規則及び公共牧場等運営資金貸付要綱に基づいて,貸付けを実行していた。 そして,県は,平成10年度についても,前年度同様7億円の貸付けを実行することとし,既に平成10年度当初予算案の中に盛り込み,県議会による審議を経て,承認がされていた。 ス本件貸付けの実行について畜産公社は,県から平成10年度分の運営資金の貸付けを受けるため,財務規則236条及び上記貸付要綱に基づき,平成10年3月20日,被告に対し,次の内容の「貸付金申込書」を提出した。 ・資金名畜産開発公社運営資金・借入予定額  7億円・利率年1パーセント・償還方法平成11年3月31日に元利一括償還・借入期間貸付けの日から平成11年3月31日まで同申込書は,同日,畜産公社を所管する県農政部畜産課が収受し,平成10年4月1日付けで,財務規則85条1項の規定に基づき,同課総務担当職員が,申込書どおりの貸付けを行う旨の支出負担行為伺を起案し,同起案文書は,同日中に,畜産課内及び農政部長の回議を経て,財務規則3条1項1号の決裁権限の定めに基づき,決裁権者である被告が決裁をし,財務規則237条1項の規定に基づき,本件貸付けが決定された。 なお,財務規則236条によれば,「貸付金の貸付けを受けようとする者は,貸付金申込書に,資産内容を証する書面を添えて申し込まなければならない。」とされているところ,本件貸付けに係る貸付金申込書には,この「資産内容を証する書面」は添付されておらず,また,財務規則241条1項本文によれば,「契約担当者は,貸付契約を締結する場合には,連帯保証人の保証又は担保の提供を求めなければならない。」とされているところ,被告は,本件貸付けにつき,同 おらず,また,財務規則241条1項本文によれば,「契約担当者は,貸付契約を締結する場合には,連帯保証人の保証又は担保の提供を求めなければならない。」とされているところ,被告は,本件貸付けにつき,同項ただし書の「知事が必要がないと認めるとき」に該当するものとして,畜産公社に対し,保証人又は担保の提供を求めなかった。 県農政部畜産課は,被告の上記決裁を得て,財務規則237条2項の規定に基づき,被告名で畜産公社理事長あての貸付決定通知書を送付し,同日付けで,被告と畜産公社理事長との間で,財務規則238条の規定に基づき,借入金額を7億円とする借用契約証書が作成され,同日,同額の貸付金が畜産公社に交付された。 セ本件貸付けに係る金員の使途について畜産公社は,前年度の平成9年度における県からの貸付金元利合計7億0700万円を返済するため,同年度末に秋田銀行及び農林中金から合計7億円の融資を受けていたことから,本件貸付けがされた日の翌日である平成10年4月2日,本件貸付けに係る7億円全額を,上記秋田銀行及び農林中金に対する返済に充てた。 ソ畜産公社の債務超過が発覚した経緯本件貸付けがされた後の平成10年5月になって,JA皆瀬における畜産公社の牛預託事業にかかる不正疑惑が新聞報道され,それを契機に,畜産公社の家畜導入事業をめぐる不正に関する報道が相次いでなされた。 そこで,県は,同年5月15日から同月29日まで,畜産公社に関する調査を行い,その結果,上記のとおり,畜産公社が,家畜導入事業に関し,事業申請について正規の手続を経なかったり,事業対象外の牛を導入していたことなどが発覚し,同調査結果は,同年6月の県議会において報告された。 さらに,その後の県の第二次調査において,税理士による畜産公社の財務状況の調査が行われ,その結果, 事業対象外の牛を導入していたことなどが発覚し,同調査結果は,同年6月の県議会において報告された。 さらに,その後の県の第二次調査において,税理士による畜産公社の財務状況の調査が行われ,その結果,畜産公社において上記のような不正な会計処理が行われていたことが発覚し,畜産公社の資産を再評価したところ,平成9年度決算上は資産が負債を2億6970万円上回るとされていたのに,実際には22億2721万円もの債務超過に陥っていたことが判明し,平成10年8月27日,同調査結果が公表された。その結果,畜産公社の経営は事実上破綻状態にあることが明らかとなり,本件貸付金の返済も事実上不可能な状態にあることが判明した。 ・手続的問題について上記認定事実によれば,本件貸付けに係る貸付金申込書には,財務規則上,添付が要求されている「資産内容を証する書面」が添付されておらず,形式的に財務規則に違反していることが明らかである。 しかしながら,財務規則が,貸付けを申し込む際に「資産内容を証する書面」の添付を求めている趣旨は,県が,貸付金の返済確実性を判断する際の資料として必要であるからにほかならないところ,上記のとおり,畜産公社に関しては,県知事の所管する公益法人として,毎年度業務報告書等の提出を受けており,既に平成8年度までの業務報告書が提出されていたこと,また,平成9年度決算に係る会計書類は,本件貸付けの時点では作成中であり,これを添付することが不可能であったこと,県農政部畜産課は,畜産公社に対し,事業の打ち合わせ等の機会に,その経営状況についても随時確認していたこと,畜産公社に対する貸付けは,昭和58年度から毎年度継続して行われてきたものであって,本件貸付けについても,既に平成10年度の予算に盛り込まれ,議会の承認を受けていたこと等の事実に照らすと,本件貸付 畜産公社に対する貸付けは,昭和58年度から毎年度継続して行われてきたものであって,本件貸付けについても,既に平成10年度の予算に盛り込まれ,議会の承認を受けていたこと等の事実に照らすと,本件貸付けの申込みがされた時点で,被告ないし県職員において,既に返済確実性を判断する情報が得られていたものといえるから,あらためて「資産内容を証する書面」の添付を求めなかったことが,実質的に財務規則に反するものとはいえず,この点をもって本件貸付けが違法であるということはできない。 また,被告が,本件貸付けについて,保証人や担保を要求しなかったことについても,上記のとおり,本件貸付けの申込みがされた時点で,被告において,既に返済確実性を判断する情報が得られているとの判断のもとに,財務規則241条1項ただし書の「知事が必要がないと認めるとき」に該当するものとして,畜産公社に対し,これらを求めなかったものといえるから,この点をもって本件貸付けが違法であるということはできない。 ・実体的問題についてア地方公共団体による貸付けについて地方公共団体による貸付けは,補助や寄付等と異なり,法にこれを直接規律する規定はないものの,「貸し付け」という文言が法の中で使用されており(法238条の4,5),実質的にもこれが許されない理由はないことから,当然に認められているものと解される。 しかしながら,貸付けという法形式上,当然にその返済が前提とされていること,地方公共団体による貸付けは,住民の税金を財源とする公金支出の一形態であること,県の財務規則においても,貸付申込に際して,資産状況を証明する書面の添付を求め,また,原則として保証人又は担保を付すことを要求していることなどに照らすと,その実行に際し,返済確実性が必要とされることは明らかである。したがって,貸 に際して,資産状況を証明する書面の添付を求め,また,原則として保証人又は担保を付すことを要求していることなどに照らすと,その実行に際し,返済確実性が必要とされることは明らかである。したがって,貸付担当者が,当該貸付けを行う際に,貸付金の返済確実性がないことを知りながら,又は,過失によりこれを知らずに融資をした場合には,その貸付けは違法と評価されるというべきである。 また,地方公共団体による貸付けは,そもそも償還が予定されていない補助や寄付と異なり,原則として,これらについて規律する法232条の2の適用はないものの,当該貸付けが,金融機関等による一般の融資と比較して有利な条件となっている場合には,その有利となっている限度で,補助と同視できるから,法232条の2が類推適用され,当該貸付けについては,公益上の必要性がなければ許されないと解すべきである。 イ本件貸付けについてこれを本件貸付けについてみるに,上記のとおり,畜産公社は,本件貸付けがされた時点で,客観的には既に大幅な債務超過状態にあったものといえるから,被告が,この時点で,畜産公社が既に大幅な債務超過状態にあったことを認識していたか,あるいは過失により認識しなかったのであれば,本件貸付けは返済確実性がないにもかかわらず実行されたものとして違法と評価すべきである。 また,本件貸付けは,金利年1パーセントという低利で,かつ,保証人や担保を要求せずに貸し付けられたものであって,一般の融資と比較して有利な条件でされたことが明らかであるから,公益上の必要性があったことも必要となる。 そこで,以下,①被告が,本件貸付けをする時点で,畜産公社が既に大幅な債務超過状態にあったことを認識していたか,あるいはこれを認識しなかったことに過失があるか,②本件貸付けについて公益上の必要性が認 そこで,以下,①被告が,本件貸付けをする時点で,畜産公社が既に大幅な債務超過状態にあったことを認識していたか,あるいはこれを認識しなかったことに過失があるか,②本件貸付けについて公益上の必要性が認められるかについて,順次検討する。 ウ畜産公社の財務状況に関する被告の認識について上記認定事実によれば,畜産公社が大幅な債務超過に陥っていたことが明らかになったのは,平成10年5月に入って,畜産公社の不正な業務執行に関する報道がされ,これを契機として県の畜産公社に対する調査がされた時点であると認められ,本件記録を精査しても,被告ないし県職員において,これ以前に,畜産公社が大幅な債務超過に陥っていたことを認識していたと認めるに足りない。したがって,被告が,本件貸付けをする時点で,畜産公社が既に大幅な債務超過に陥っていた事実を認識していたと認めることはできない。 次に,被告がこれを認識しなかったことについて過失が認められるかについて検討する。 上記認定事実によれば,畜産公社においては,真実の財務状況が公になることによって,県による支援が打ち切られ,整理の対象とされることを畏れていたことが認められ,畜産公社の職員としては,県に,不正な業務執行や会計処理が発覚することのないように十分に気を配っていたことが窺われる。また,被告ないし県において,畜産公社の不正行為に関する報道がされる以前に,その事業執行や会計処理に疑念を持っていたことを窺わせる証拠はなく,むしろ,本件貸付けが,昭和58年度から継続して行われてきた畜産公社に対する短期貸付けの平成10年度分として実行されたものであること,県の全面的な指導の下で策定された畜産公社の新経営改善計画を支援するものとして,既に平成10年度予算案にも盛り込まれ,県議会の承認も経ていたこと,畜産公社から提出さ して実行されたものであること,県の全面的な指導の下で策定された畜産公社の新経営改善計画を支援するものとして,既に平成10年度予算案にも盛り込まれ,県議会の承認も経ていたこと,畜産公社から提出された業務報告書等の会計書類によれば,畜産公社は一貫して資産が債務を上回っている状態にあるとされ,また,平成3年度から継続して単年度収支が黒字で推移し,特に平成7年度及び8年度については,計画を若干上回る黒字が計上されていたこと,畜産公社は,金融機関から返済資金の融資を受けていたとはいえ,これまで,毎年度の貸付金が返済期限までに返済されていたこと等に照らすと,被告ないし県職員において,畜産公社が既に大幅な債務超過に陥っていたことを認識することなく,本件貸付けに返済確実性があると判断したことについて,過失があったと認めることはできない。 ところで,被告ないし県においては,本件貸付けをする当時,畜産公社が多額の借入金債務を抱え,相当厳しい経営状態にあったこと,本件貸付けに係る金員は,その貸付け直後に,全額が金融機関への返済に使用され,年度末に,再度金融機関から融資を受けた上で償還される予定であったことなどを認識していたことが窺われるものの,この当時,畜産公社においては,その厳しい経営状態を改善するための経営改善計画が実施されており,上記のとおり,少なくとも書面上は,その計画の達成が期待しうる状況にあったこと,返済原資が金融機関からの借入金であること自体は,返済確実性を否定するものではないこと等に照らすと,被告ないし県がこれらの事実を認識していたことをもって,上記認定を左右するということはできない。 原告らは,会計の素人である原告らでもすぐに業務報告書等の記載の不備を発見することができたと主張するが,業務報告書等は,県とは別個の組織である畜産公社 ,上記認定を左右するということはできない。 原告らは,会計の素人である原告らでもすぐに業務報告書等の記載の不備を発見することができたと主張するが,業務報告書等は,県とは別個の組織である畜産公社の責任において作成し,その正確性についての監査を経て,理事会及び総会の決議を経た上で,県に提出されているものであって,監査機関ではない県が,畜産公社において,不正な会計処理がされていることまで予測し,その正誤を確認する法的義務を負っているということはできず,また,既に県による調査結果が出た後に,書類を閲覧した原告らと県職員とを同視することもできないところであり,このことから直ちに,未だ畜産公社の不正な業務執行等が明るみに出ていなかった時点で,県職員が容易に書類の不備を発見し,かつそれを契機に畜産公社の真の経営状況を認識すべきであったということはできない。 さらに,原告らは,被告の平成10年8月の知事記者会見や,同年9月県議会における発言をとらえて,被告が,遅くとも平成9年夏ころには,畜産公社の経営状態が劣悪であることを認識していた旨主張するが,上記各発言からは,被告において,畜産公社が大幅な債務超過に陥っていることを認識していたものとまで認めることはできず,また,これが被告ないしは県職員の具体的な法的責任についてまで認めたものと解することもできないから,上記被告発言の存在も,上記認定を左右するものということはできない。 以上のとおり,本件貸付けがされた時点で,被告ないし県職員が,畜産公社が既に大幅な債務超過に陥っていたことを認識し又は過失により認識しなかったということはできず,この点に関する原告らの主張は採用することができない。 エ本件貸付けの公益上の必要性について本件貸付けに,公益上の必要性が認められるかについて検討する。 により認識しなかったということはできず,この点に関する原告らの主張は採用することができない。 エ本件貸付けの公益上の必要性について本件貸付けに,公益上の必要性が認められるかについて検討する。 そもそも,ある公金支出に公益上の必要性が認められるか否かの判断は,公金支出の対象自体が有する公益性の程度,当該支出の地方公共団体の財政に与える影響,当該公金支出により期待される効果の程度及び他の行政施策との関連性等,諸般の事情を総合的に考慮した上でされるべきものであって,高度に政治的な判断を要する事項であるから,基本的には,住民に直接の基盤を有する地方議会ないし長に,広範な裁量が認められているものと解すべきである。ただし,公金の支出が,住民の税金を財源としてされるものである以上,全く住民の利益とならないような公金支出までも許されていると解することはできず,少なくとも当該公金支出が,住民の利益との間に一定の合理的関連性を有していることが必要であると解すべきである。そして,当該公金支出が,①公益とは無関係の目的で支出された場合や,②公益目的が認められるとしても,その効果が皆無であるか,支出額に比して極めて僅少であるような場合には,当該公金の支出は,地方公共団体に与えられた裁量権を濫用ないしはその範囲を逸脱するものとして違法と評価されると解するのが相当である。ただし,②については,公益上の必要性の判断が当該公金支出時にされるものであることからみて,事後的客観的に,当初の期待された効果が発生せず,住民の利益とならなかった場合であっても,当該公金支出時の事情に照らし,その効果に関する判断を誤ったことに相当の理由が認められる場合には,なお,裁量の範囲内にあるものとして,公益上の必要性が認められると解すべきである。 これを本件についてみるに,秋田県におい 照らし,その効果に関する判断を誤ったことに相当の理由が認められる場合には,なお,裁量の範囲内にあるものとして,公益上の必要性が認められると解すべきである。 これを本件についてみるに,秋田県においては,産業に占める農業の割合が比較的高く,畜産についてもその振興を図る必要性があったこと,畜産公社は,県の畜産振興の必要性に基づき,その畜産行政を補完する目的で設立された県知事の所管にかかる民法上の公益法人であること,畜産公社は,県の企画立案に基づく各種畜産振興事業の事業主体として活動していたこと,その事業の多くが,国や県の補助事業であることから,畜産公社以外にこれらの事業を行う主体として適当な組織がなかったことなどに照らすと,畜産公社の存続自体に公益性を認めることができる。 そして,上記認定事実によれば,本件貸付けは,昭和58年度から始まった畜産公社の短期運営資金の貸付けの平成10年度分として実行されたものであるところ,特に平成3年度以降,畜産公社は,経営改善計画に基づく経営改善が実施されており,本件貸付けも新経営改善計画に盛り込まれていたことに照らすと,本件貸付けは,畜産公社の資金繰りを支援し,究極的にはその経営改善を達成させる目的で実行されたものと認められるから,本件貸付けについても,公益性を認めることができる。 そこで,さらに,その効果について検討するに,上記のとおり,本件貸付けは,畜産公社の資金繰りを支援し,究極的には畜産公社の新経営改善計画の達成を目的としてされたものと認められるものの,実際には,本件貸付け後に畜産公社の巨額の債務超過が発覚したことで,畜産公社の経営は事実上破綻し,後に本件貸付けに係る貸金債権は利息を含めて全額放棄されており,本件貸付けは,畜産公社の破綻を若干先延ばししたに過ぎず,その支出額に比して,有意な効果 が発覚したことで,畜産公社の経営は事実上破綻し,後に本件貸付けに係る貸金債権は利息を含めて全額放棄されており,本件貸付けは,畜産公社の破綻を若干先延ばししたに過ぎず,その支出額に比して,有意な効果がなかったといわざるを得ない。 しかしながら,被告が,本件貸付けをする時点で,畜産公社が既に大幅な債務超過に陥っていることを認識していたとは認められないばかりか,これを認識しなかったことに過失が認められないことは上記のとおりであって,むしろ,被告ないし県としては,本件貸付けをした当時は,畜産公社が,不採算部門である牧場の地元返還等の踏み込んだ内容を有する新経営改善計画に基づいて経営改善に取り組んでいる最中にあって,県に提出された業務報告書等によれば,平成7年度及び平成8年度と連続して,計画の目標を若干上回る単年度黒字が計上されていたことから,このまま畜産公社の新経営改善計画を支援することにより,その健全化が図られるとの認識を有していたものと認められる。また,本件貸付けを実行しなかった場合には,畜産公社はただちに資金繰りに窮して破綻していた可能性が高く,逆に,本件貸付けが行われれば,畜産公社の運営資金の金利負担が軽減され,金融機関からの信用も増す効果が期待されていたと認めることができる。これらの事情に照らすと,被告が,本件貸付けについて,畜産公社の経営改善に資すると認識したことには,相当の理由があったものと認められる。 したがって,本件貸付けについては,公益上の必要性があったものと認められる。 ところで,原告らは,畜産公社が,不正な会計処理及び業務執行を行っており,理事長らが刑事処分も受けていることから,このような畜産公社には公益性を認めることができないと主張する。 しかしながら,原告ら主張の不正行為は,いずれも本件貸付けがされた後に発 務執行を行っており,理事長らが刑事処分も受けていることから,このような畜産公社には公益性を認めることができないと主張する。 しかしながら,原告ら主張の不正行為は,いずれも本件貸付けがされた後に発覚したものである上,これらの不正行為があったからといって,それまで畜産公社が行っていたすべての事業の公益性が失われるものではないことは明らかであり,さらに,畜産公社の個々の事業の必要性に関する原告らの主張に関しても,その政策の当不当を問題とする余地はあるとしても,畜産公社の存続が住民の利益と一定の合理的関連性を有すること自体を否定するものとはいえないから,結局,この点に関する原告らの主張は採用することができない。 ・以上のとおりであって,本件貸付けを違法と評価することはできない。 2 本件債権放棄の違法性について・上記争いのない事実等並びに証拠(甲3,5,6,11,17,21,22,35,丙17ないし19,31ないし34,36,37,41,42,証人c)及び弁論の全趣旨によれば,本件債権放棄に至る経緯として,次の事実が認められる。 ア畜産公社の経営破綻畜産公社は,上記のとおり,平成10年5月から実施された県の調査によって,平成9年度決算時において,約22億2721万円の債務超過があったことが明らかになり,事実上経営破綻状態に陥った。 なお,この当時における畜産公社の長期借入金の残高は,合計約20億円で,このうち県が損失補償していたものが約14億5000万円,県農業信用基金協会が保証していたものが約4億5000万円であり,残り約1億円が無担保であった。また,平成10年8月末時点における短期借入金の残高は,合計約33億円で,このうち7億円が県からの本件貸付けに係るものであり,残りの金融機関からの借入金のうち,約10億円について, 無担保であった。また,平成10年8月末時点における短期借入金の残高は,合計約33億円で,このうち7億円が県からの本件貸付けに係るものであり,残りの金融機関からの借入金のうち,約10億円について,畜産公社の理事長及び常務理事の双方あるいは一方による個人保証がされていた。 イ県議会の畜産公社に関する審議経過被告及び県は,上記の調査結果を踏まえて,畜産公社に対する今後の対応策について検討した結果,畜産公社を破産又は清算するのではなく,今後も存続させる方針を定め,畜産公社の今後の事業について,①不適正な事業執行を行っていた家畜導入事業について,事業主体を農業団体に変更し,②これまでの公社経営の赤字要因となっていた牧場事業については,県営椈森牧場を県の受精卵移植技術推進の基幹的牧場として位置付け,受精卵移植技術を推進するための各種事業を展開するとともに,市町村等から運営を受託している牧場を地元に返還し,③草地基盤等の整備を行う事業については,管理業務にとどめ,実際の施行を民間に移行し,④公共事業については,統合する財団法人秋田県農地管理公社の農地流動化等の機能と有機的に連携した「畜産経営環境整備事業」や「草地畜産活性化特別対策事業」等の畜産公共事業等を実施するなどの改革を図った上で,人員の削減を図り,県費の投入によって,債務を大幅に償却し,財団法人秋田県農地管理公社と統合再編することによって存続させることを内容とする畜産公社整理,再編案を策定した。 そして,被告は,県議会9月定例会に,上記整理・再編案に沿って,畜産公社に対する35億7333万円の補助金の交付を盛り込んだ補正予算案を提出した。この時点においては,県が,さらに平成11年度以降も3億3414万円の補助を行い,畜産公社に対し,本件貸付けに係る7億円の償還資金も含めて総額 33万円の補助金の交付を盛り込んだ補正予算案を提出した。この時点においては,県が,さらに平成11年度以降も3億3414万円の補助を行い,畜産公社に対し,本件貸付けに係る7億円の償還資金も含めて総額約39億円の補助を行うこととされていた。 しかし,県議会においては,それまでに明らかとなった畜産公社の不正行為や,これに対する県の監督責任等について,厳しい意見が相次ぎ,県のみが多額の負担を負うのではなく,さらに,畜産公社及び出資者並びに金融機関と,その責任も含めて十分協議した上で,改めて対応策を示すべきであるとの意見が出され,被告も,このままでは県議会の同意を得られる見込みがないものと判断し,同年9月28日,畜産開発公社に対する補助金部分に係る予算案を取り下げた。 被告は,上記予算案を取り下げたものの,畜産公社が同年10月中に資金繰りが行き詰まるおそれがあるとして,①畜産公社の借入金のうち,本件貸付けに係る7億円を含む約18億円について,民事調停の手続に委ね,金融機関の負担額も含めて調整した上で処理し,②残りの約22億円について,県費投入を図るため,臨時議会で処理するとの内容で,新たな公社処理案を作成し,10月26日に臨時議会を開催することで議会と協議したが,議会の同意が得られず,臨時議会を開催することができなかった。 そこで,被告は,同月26日,県の公社資産の再調査の結果,債務超過額が新たに約6億円増加し,28億8700万円になったとした上で,県費投入額を43億5000万円と予定し,そのうち民事調停に委ねた約18億円と経営者負担,出資金運用分等を除いた部分に関する補助金を盛り込んだ補正予算案を11月中旬の臨時議会に提出し,調停確定後に改めて県費投入額を議会に提案するという内容の公社処理案を県議会各会派に提示したが,これについても議会の 等を除いた部分に関する補助金を盛り込んだ補正予算案を11月中旬の臨時議会に提出し,調停確定後に改めて県費投入額を議会に提案するという内容の公社処理案を県議会各会派に提示したが,これについても議会の同意が得られず,臨時議会の開催は再び見送りとなり,同処理案は,県議会12月定例会に持ち越されることになった。 ところが,この間の,同年11月21日,畜産公社から牛の飼料代が不正に支出されたのではないかとの報道がされ,県が,畜産公社に対する3度目の調査を行った結果,上記のとおり,畜産公社が,平成7年度から平成9年度までの3年間に架空の飼料購入費として約3700万円を捻出し,そのうち約1500万円を職員らの食糧費に流用し,2200万円を乳子牛のカラ売りや購入の「見せ金」に使い,国の補助金を不正に受給していたことなどが明らかとなり,同調査結果は,同年12月10日に公表された。 被告は,県議会12月定例会において,畜産公社の平成10年度末の負債見込額から,資産処分額,公社引継額,出資金運用分等及び民事調停に委ねた額を除いた合計19億5352万円の補助を行うことを盛り込んだ補正予算案を提出したものの,畜産公社による上記の不正行為が新たに発覚したこともあって,議員から厳しい意見が相次ぎ,議員から,補助金額を原予算案から4億9674万3000円減額し,えさ代や返済期日が迫っている借入金返済資金などの「緊急措置分」にあたる総額14億5677万7000円のみを今議会で処理する旨の修正案が提出され,同年12月16日,同修正案が県議会で可決された。 さらに,被告は,平成11年県議会2月定例会において,平成10年県議会12月定例会で「緊急措置分」として承認されたもの以外の支援額13億1440万9000円の補助金支出を盛り込んだ補正予算案を提出し,同予算案が,同月 成11年県議会2月定例会において,平成10年県議会12月定例会で「緊急措置分」として承認されたもの以外の支援額13億1440万9000円の補助金支出を盛り込んだ補正予算案を提出し,同予算案が,同月23日,県議会において可決された。 ウ本件債権放棄について被告は,畜産公社の整理・再編策の一環として,本件貸付金についても県の負担により償却することとし,当初,畜産公社に同額の補助金を交付した上で,これを県に償還させて処理することを検討していた。 しかし,被告は,上記のとおり,当初の案を取り下げざるを得なくなったことから,本件貸付けに係る貸金債権については,畜産公社の取引金融機関の負担額の調整も含めて,調停手続によって処理する方針を定めた。 畜産公社は,被告の上記方針に基づき,同年10月21日,秋田簡易裁判所に対し,県並びに秋田銀行,北都銀行及び農林中金を相手方として,本件貸付けを含む借入金約18億円の調停継続中の返済猶予及び債務の減額を求める民事調停を申し立てた。 なお,上記調停の対象となった借入金の内訳は,県の本件貸付けに係る7億円のほか,北都銀行に対する5億5600万円,秋田銀行に対する3億5000万円,農林中金に対する約2億1245万円(いずれも借受金額)であったが,これらの金融機関に対する債務については,県の損失補償契約が付されておらず,第三者の保証等のついていない秋田銀行の1億円の長期借入金を除いて,いずれも県職員OBである畜産公社理事長及び常務理事の個人保証が付されているものであった。 上記調停手続においては,畜産公社に対し,県が本件貸付けに係る貸金債権及び利息金の全額7億0700万円を放棄するとともに,金融機関3行も,各1億円ずつの債務を免除するとの内容で,概ね各当事者が合意するに至り,平成11年2月2日,第4 し,県が本件貸付けに係る貸金債権及び利息金の全額7億0700万円を放棄するとともに,金融機関3行も,各1億円ずつの債務を免除するとの内容で,概ね各当事者が合意するに至り,平成11年2月2日,第4回調停期日において,裁判所から,その旨の調停案が示されるに至った。 被告は,県議会平成11年2月定例会に,上記調停案を受け入れ,畜産公社に対する本件貸付けに係る貸付金7億円及びこれに対する利息債権700万円の全額を放棄するとの内容の議案を提出したが,その際,合理的な理由を記載した資料とその根拠となる相当量の資料を提出しており,その上で,各県議会開会前の政党懇談会,本会議の代表質問及び一般質問に対する答弁,各農林水産委員会,各総務企画委員会,農林水産委員協議会,決算特別委員会等の場を通じて詳細にわたり,被告,副知事,出納長,農政部長以下の農政部幹部及び総務部長以下の総務部幹部が説明をしたほか,県議会議員との真摯な質疑を経て,県議会は,同月23日,法96条1項10号に基づき,同議案を可決した。 被告は,同年3月9日,上記議決に従い,畜産公社及び金融機関3行との間で,本件債権放棄とその他の金融機関3行の各1億円の債務免除を内容とする調停を成立させ,これによって,畜産公社に対する本件貸付けに係る7億円及び利息債権700万円の全額が放棄された(本件債権放棄)。 エその後の経緯について上記各補正予算により,本件債権放棄のほか,県から畜産公社に対する総額27億7000万円の補助金が支出され,これらは畜産公社の金融機関に対する借入金等の債務の弁済に充てられることになった。 その後,畜産公社は,平成12年4月1日付けで,他の農業4法人と,畜産公社を存続法人とする形で合併し,社団法人秋田県農業公社が発足し,畜産公社が行っていた事業のうち,受精卵移植 れることになった。 その後,畜産公社は,平成12年4月1日付けで,他の農業4法人と,畜産公社を存続法人とする形で合併し,社団法人秋田県農業公社が発足し,畜産公社が行っていた事業のうち,受精卵移植事業,畜産経営環境整備事業,草地畜産活性化特別対策事業等が,引き続き,上記農業公社の畜産振興部によって継続されている。 ・債権放棄の法的規制について地方公共団体が有する債権の放棄については,法240条3項,地方自治法施行令171条の7において,地方公共団体の長による免除が規定されているほか,法96条1項10号において,地方議会の議決事項の一つとして,「法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがあるほか,権利を放棄すること」が規定されており,議会の議決があれば,法240条3項に基づく免除によらなくても,地方公共団体が有する債権を放棄することが許されていると解することができる。また,法は,放棄をすることのできる権利の種類,要件,範囲等について,特段の制限を加えていないこと,地方議会が住民によって選ばれた議員から構成され,その議決は住民の意思に基づくものといえること等に照らすと,地方議会の議決がある限り,基本的には,これらの点を地方公共団体の裁量に委ねているものと解することができる。 したがって,本件のような金銭債権についても,議会の議決を経ることによって放棄をすることが可能であって,上記認定事実のとおり,本件債権放棄は,被告がその議案を提出する際,合理的な理由を記載した資料とその根拠となる相当量の資料を提出し,県議会による十分な審議の上,その議決を経て行われている以上,その手続自体には何ら違法な点を見出すことができない。 ・本件債権放棄の公益上の必要性について上記のとおり,地方公共団体が有する権利の放棄は,その議会の議決を経ること 議決を経て行われている以上,その手続自体には何ら違法な点を見出すことができない。 ・本件債権放棄の公益上の必要性について上記のとおり,地方公共団体が有する権利の放棄は,その議会の議決を経ることによってこれをすることができるものであって,基本的には地方公共団体に裁量が認められていると解されるが,他方で,それが,住民の税金を財源とする地方公共団体の財産の処分にあたる以上,その裁量の範囲に何らの制約がないと解することはできない。とりわけ,金銭債権の放棄は,実質的に補助金の交付と同じ効果を有するものであるから,公益上の必要性がない場合にこれを認めることは相当といえず,その判断については,法232条の2に関する上記判断基準が当てはまるものというべきである。 そこで,本件債権放棄について公益上の必要性が認められるかについて検討するに,本件債権放棄は,上記のとおり,被告が,畜産公社の経営破綻の状況を踏まえ,畜産公社整理・再編策の一環として,県議会に対し,本件債権放棄に係る議案を提出し,県議会の議決を経た上で,これに従い,本件債権を放棄する意思を民事調停において表明してされたものであるから,その公益性の有無は,畜産公社整理・再編策自体に公益上の必要性が認められるか否かによることになる。 上記のとおり,秋田県における畜産振興の必要性や,それまで畜産公社が実施していた事業内容に照らすと,畜産公社の存続自体に公益性が認められるところ,上記認定事実及び証人cの証言によれば,被告ないし県において,畜産公社整理・再編策をとらずに,畜産公社の破産ないし清算を選択した場合には,①畜産公社に代わる組織を設立するため,新たな出資者の募集,資産の造成,役職員の選任,牧場等の施設の設置等の準備が必要となるが,これらはいずれも困難である上,これらが実現可能であるとして 場合には,①畜産公社に代わる組織を設立するため,新たな出資者の募集,資産の造成,役職員の選任,牧場等の施設の設置等の準備が必要となるが,これらはいずれも困難である上,これらが実現可能であるとしても相当な時間と費用が必要となること,②県が畜産公社を事業主体として行わせていた各種事業が中断され,県の畜産行政に混乱と停滞が生じること,③畜産公社は,県が中心となって市町村,農協,関係団体の協力を得て設立された公益法人であるところ,これらの出資者に負担を強いるほか,金融機関に畜産公社に対する債権の回収不能等の損害を与え,県とこれらの関係諸機関との間の信頼関係を損ない,その後の行政運営に悪影響を及ぼすおそれがあることが認められ,そうすると,その政策的判断の是非はともかく,本件債権放棄を含む畜産公社整理・再編策は,公益を図る目的でされたものと認めることができる。 原告らは,畜産公社整理・再編策は,専ら金融機関や個人保証をしていた県職員OBの救済のためにされたものであって,公益性を有しない旨主張する。しかしながら,確かに,畜産公社整理・再編策によって,金融機関の畜産公社に対する債権の大部分が回収され,特に本件債権放棄により結果として畜産公社の債務に多額の個人保証をしていた県職員OBが保証債務の履行を免れており,被告や県にこのような認識もあったことが窺われるものの,これらの認識を有していたことが,必ずしも公益目的と矛盾するものではなく,また,上記認定事実に照らすと,被告や県が,専ら原告ら主張の目的のみで,畜産公社の整理・再編策を実行したということはできないから,原告らの上記主張は採用することができない。 そして,畜産公社は,本件債権放棄を含む県の支援により破産を免れ,その財務状況が大幅に改善され,平成12年4月1日をもって,農業関係法人4社と合併 から,原告らの上記主張は採用することができない。 そして,畜産公社は,本件債権放棄を含む県の支援により破産を免れ,その財務状況が大幅に改善され,平成12年4月1日をもって,農業関係法人4社と合併し,社団法人秋田県農業公社として,円滑に事業を継続していることに加え,畜産公社が破産ないし清算された場合に予想された上記の諸事情や,県農政部の試算によると,畜産公社が破産ないし清算された上で,新公社が設立された場合においても,必要となる県の負担額に顕著な差がなかったことなどを併せ考えると,畜産公社整理・再編策は,ほぼ期待された効果を上げたものと評価することができる。 したがって,本件債権放棄を含む公社整理・再編策は,公益上の必要性があったものと認められる。 ・まとめ以上のとおりであって,本件債権放棄が違法であるということはできない。 第4 結論以上のとおり,本件貸付け及び本件債権放棄は,いずれも違法であるということができないものであるから,その余の点について判断するまでもなく原告らの請求はいずれも理由がない。 よって,原告らの請求をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法65条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。 秋田地方裁判所民事第一部裁判長裁判官今泉秀和裁判官剱持亮裁判官菊池絵理は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官今泉秀和・

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