主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告が原告に対し平成12年3月27日付けでした地方公務員法による懲戒免職処分を取り消す。 (2) 訴訟費用は,被告の負担とする。 2 被告主文と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は,那賀町に勤務する地方公務員であったところ,被告が原告に対し,平成12年3月27日付けで,横領等を理由として懲戒免職処分(以下「本件懲戒免職処分」という。)をしたことから,本件懲戒免職処分は,その理由の基礎となる横領の事実が存在せず,また,被告の裁量権を逸脱ないし濫用した違法なものであるとして,その取消しを求めた。 これに対し,被告は,本件懲戒免職処分は,原告が職務上保管していた公金であるし尿収集手数料を着服し横領したことなどを理由としてされたものであり,裁量権の逸脱濫用を否定して,争っている。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠(甲1の1・2,2ないし5,6の1・2,7,乙1の2・3,2,3の1ないし4,5の1ないし4,6ないし9,11,15ないし17,21ないし27,証人A,原告本人)及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる(1) 当事者原告は,昭和49年から那賀町に勤務していた地方公務員であり,平成9年4月1日以降,同町保健衛生課(同町の機構改革により,平成11年10月1日以降健康衛生課と名称変更。以下「保健衛生課」という。)の課長補佐として,し尿収集業務に関する事務,斎場(火葬場)建設工事の現場管理及び事務等を担当していた。 (2) 平成11年当時の那賀町におけるし尿収集業務の概要那賀町は,直営でし尿収集業務を行っており,その収集手数料は,予算及び決算に計上される公金である。 し尿収集は,那 及び事務等を担当していた。 (2) 平成11年当時の那賀町におけるし尿収集業務の概要那賀町は,直営でし尿収集業務を行っており,その収集手数料は,予算及び決算に計上される公金である。 し尿収集は,那賀町住民からの申込みを保健衛生課において受け付け,し尿収集担当の現場職員(以下「現場職員」という。)が,し尿収集車を運用して,収集に当たる。 現場職員が収集に赴いた際,家人が在宅している場合には,現場職員が,直接家人からし尿収集手数料を徴収し,領収書を交付する。 収集先において家人等が不在であった場合には,現場職員は,「し尿収集料金のお知らせ」と題するメモに収集年月日及び収集料金を記載し,それを収集先のポストに投函するなどして収集先の家人にし尿収集をした旨及び収集料金を知らせる。収集先の家人は,保健衛生課に出向き,収集料金を支払い,保健衛生課において領収書の交付を受ける。ただし,家人がし尿収集当日に支払いに来るなどしたため,保健衛生課において領収書を交付できないときには,仮領収書を交付する。 現場職員は,し尿収集業務を終了し帰庁すると,現場集金分と未収分の計算をし,当日集金できた現金と家人不在のため現場で集金できなかったため交付できなかった領収書を担当者(平成11年当時は原告)に提出する。 担当者は,現場職員から受け取った現金については,那賀町歳入金収入調書(以下「収入調書」という。)に金額,件数等を記載し,同町出納室(以下「出納室」という。)に納入する。 他方,現場で集金できなかった収集手数料(収集の際には不在であったが,当日のうちに住民が収集手数料を窓口に持参した場合を含む。)については,その住民の氏名及び収集手数料額等を保健衛生課にある貸し方台帳と題する帳簿に記載する。 住民が,後日,保健衛生課の窓口に収集手数料を持参しこれを支払った際,貸し方 口に持参した場合を含む。)については,その住民の氏名及び収集手数料額等を保健衛生課にある貸し方台帳と題する帳簿に記載する。 住民が,後日,保健衛生課の窓口に収集手数料を持参しこれを支払った際,貸し方台帳に領収日,取扱者を記載し,受領した現金を貸し方封筒と呼ばれる封筒に入れ,同封筒に住民の氏名,領収額,領収日等を記載する。原告は,貸し方封筒の28件分の記載枠がすべて埋まった後に,未収金用の収入調書を作成し,受領した現金を出納室に納入していた。 (3) 本件懲戒免職処分に至る経緯那賀町におけるし尿収集手数料の未収金は,平成7年度決算時においては6万1900円,平成8年度決算時においては2万5400円とされていた一方,原告がし尿処理業務に関する事務を担当するようになった平成9年度決算時においては26万5000円,平成10年度決算時においては162万4900円となった。 那賀町監査委員は,原告に対し,平成11年8月13日,同町における平成10年度の決算監査の際,平成9年度及び平成10年度のし尿収集手数料未収金一覧表の提出を求めた。これに対し,原告は,平成9年度におけるし尿収集手数料未収金残額が38万1000円であり,平成10年度における同未収金残額が41万9200円であったにもかかわらず,平成9年度の未収金26万5600円は全額納入済みであり,平成10年度の未収金は40万7700円であるとの虚偽の報告をした。そして,原告は,同町監査委員会に対し,同月16日,平成9年度し尿収集手数料未収金は全額回収済みであるとのし尿収集手数料未収金一覧表を提出し,同時に,平成10年度し尿収集手数料未収金残額が40万7700円であるとのし尿収集手数料未収金一覧表を提出した。 原告は,那賀町監査委員に対し,平成11年10月12日の同町例月監査の際においても,平成9年 ,平成10年度し尿収集手数料未収金残額が40万7700円であるとのし尿収集手数料未収金一覧表を提出した。 原告は,那賀町監査委員に対し,平成11年10月12日の同町例月監査の際においても,平成9年度し尿収集手数料未収金は全額回収済みであるとの内容虚偽の報告をした。 しかし,同町監査委員の調査により,平成9年度のし尿収集手数料未収金の残額が,36万8200円であり,平成10年度の同未収金残額が,41万9200円であり,原告の前記各報告が虚偽であることが発覚し,原告は,同町監査委員に対し,その旨を認めるとともに,未収金一覧表及び貸し方台帳に虚偽記載したことを認めた。 その後,同町監査委員は,原告に対し,平成9年度及び平成10年度のし尿収集手数料の領収書綴り,収入調書の控え,日計簿及び貸し方収入封筒等の提出を求めたところ,平成9年度の貸し方収入封筒の一部及び平成10年度の同封筒の全部並びに平成9年度及び平成10年度のし尿収集手数料の領収書綴り及び収入調書控えが紛失していた。平成11年度のし尿収集手数料の領収書等を調査したところ,別紙1のとおり,原告が出納室に納入した金額が,原告が現場職員から受領した現金の金額よりも合計8万0100円不足していたこと,別紙2の番号1,2記載のとおり,し尿収集先が保健衛生課にし尿収集手数料を支払い,仮領収書を交付したもののうち2件について,原告が出納課に納入した金額がし尿収集先から受領した金額から合計2万円不足していたこと,同別紙の番号3ないし6記載のとおり,し尿収集先が保健衛生課にし尿収集手数料を支払い,領収書を交付したもののうち4件について,原告が出納課に納入した金額がし尿収集先から受領した金額から合計2万1100円不足していた(不足額合計12万1200円)ことが発覚した。 原告は,平成11年10月29日に開 たもののうち4件について,原告が出納課に納入した金額がし尿収集先から受領した金額から合計2万1100円不足していた(不足額合計12万1200円)ことが発覚した。 原告は,平成11年10月29日に開催された協議会において,平成11年4月から9月までの間に,原告が現場作業員から受領したし尿収集手数料と出納課に納付された金額との間に,2000円ないし2100円の不足があり,合計約8万円の不足が生じていることにつき質問を受けた際,上記不足金額のうち1万円については,そのころ発生したし尿収集手数料の不足に補填し,残金については,着服した旨供述した。 那賀町は,同年11月5日,8日,12日,16日,17日,29日及び同年12月8日,原告を懲戒処分に付するか否かを審査するための賞罰審査委員会を開催した。 原告は,同年11月8日に開催された同委員会において,別紙1のとおり,現場作業員から受領したし尿収集手数料と出納課に納付された金額との間に生じた合計8万0100円の不足のうち1万円については,そのころ発生したし尿収集手数料の不足に補填し,残金については,着服した旨供述した。 また,原告は,同日,同委員会において,現場職員が現場収集先でし尿を収集したが,し尿収集先の家人が不在のため現場作業者において手数料を受領することができず,後日収集先の者が那賀町に手数料を支払ったもののうち,別紙2記載のとおり,6回にわたり,合計4万1100円を着服した旨供述した。 これらの供述は,同委員会が終了するまで一貫していた。 原告は,同年12月8日に行われた同委員会において,平成11年度において11万1200円を着服したとの報告書に自ら署名押印した。 被告は,原告に対し,平成12年3月27日,「し尿汲み取り手数料を職務上保管中ほしいままに着服又は費消して横領したこと等は,法令の 度において11万1200円を着服したとの報告書に自ら署名押印した。 被告は,原告に対し,平成12年3月27日,「し尿汲み取り手数料を職務上保管中ほしいままに着服又は費消して横領したこと等は,法令の定め及び職務上の義務に違反したもので,全体の奉仕者である公務員として,ふさわしくない非行のあった場合に該当する」として,地方公務員法29条1項1号ないし3号の規定に基づき,本件懲戒免職処分を行った。 (4) 本件懲戒免職処分後の経過原告は,本件懲戒免職処分を不服として,平成12年5月23日,那賀町公平委員会に審査請求を申し立て,同委員会において,保管中のし尿収集手数料を横領したとの点を否認するなどして,本件懲戒免職処分の相当性を争ったが,同公平委員会は,平成13年10月23日,原告の審査請求を棄却した。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 原告がし尿収集手数料を横領したか。 (被告の主張)ア原告は,以下のとおり,業務上保管していた那賀町のし尿収集手数料のうち合計12万1200円をみだりに着服し横領した。 (ア) 原告は,別紙1記載のとおり,平成11年6月14日ころから同年8月23日ころまでの間,合計40回にわたり,同別紙「領収日」欄記載の日に現場職員から交付を受けた同別紙「受領金額」欄記載の各し尿収集手数料を出納室に納入するために業務上保管していたところ,同別紙「出納室納入日」欄記載の日ころ,同別紙「不足金額」欄記載の額の現金(合計8万0100円)を出納室に納入しないで,これを着服横領した。 (イ) 原告は,別紙2記載のとおり,合計6回にわたり,同別紙「し尿収集先氏名」欄記載の者が同別紙「領収日」欄記載の日に保健衛生課にし尿収集手数料を支払い,原告を含む同課職員において現場職員から返戻を受けた領収書又は仮領収書を交付するとともに受領 り,同別紙「し尿収集先氏名」欄記載の者が同別紙「領収日」欄記載の日に保健衛生課にし尿収集手数料を支払い,原告を含む同課職員において現場職員から返戻を受けた領収書又は仮領収書を交付するとともに受領した同別紙「領収金額」欄記載の各手数料を出納室に納入するために業務上保管中,同別紙「不足金額」欄記載の額の現金(合計4万1100円)を出納室に納入しないで,これを着服横領した。 イ原告が,前記アのとおり,業務上保管していたし尿収集手数料を着服横領したことは,以下に述べる事実からも明らかである。 (ア) 原告の自白とその信用性原告は,前提事実(3)のとおり,平成11年10月29日に開催された協議会において,現場職員から受領したし尿収集手数料に関し,不足に填補したという1万円を除く約7万円につき着服したことを自認する旨の供述をし,同年11月8日以降開催された賞罰審査委員会においても,別紙1のとおり,現場作業員から受領したし尿収集手数料と出納課に納付された金額との間に生じた合計8万0100円の不足のうち1万円を除く7万0100円については,着服した旨供述するとともに,現場職員が現場収集先でし尿を収集したが,し尿収集先の家人が不在のため現場作業者において手数料を受領することができず,後日収集先の者が那賀町に手数料を支払ったもののうち,別紙2記載のとおり,6回にわたり,合計4万1100円を着服した旨供述し,自ら合計11万1200円につき着服した旨自認する旨の同委員会の調査報告書に署名押印している。原告のこれらの自白は,原告において懲戒免職処分を受ける可能性や刑事告訴を受ける可能性があることを告知され,これらのことを認識してされたものであり,その信用性は高い。 これに対し,原告は,当時担当していた斎場建設関係の仕事で多忙であり,協議会や賞罰審査委員会を早 事告訴を受ける可能性があることを告知され,これらのことを認識してされたものであり,その信用性は高い。 これに対し,原告は,当時担当していた斎場建設関係の仕事で多忙であり,協議会や賞罰審査委員会を早期に終わらせるとともに,他の職員に嫌疑がかからないようにするために,協議会及び賞罰審査委員会において虚偽の自白をしたと主張し,着服横領をしたと自白しても懲戒免職になるとは思っていなかったとも主張する。 しかしながら,原告が担当していた斎場建設関係の仕事は,1日1時間程度もあればこなせる軽微なものであった上,原告はほぼ毎日定時に退庁していたことからすると,原告が早期に協議会及び賞罰審査委員会を終わらせなければならないほど繁忙であったとは考えられない。かえって,原告は,紛失した平成9年度及び平成10年度の手数料関係の書類の所在,約46万円の不明金,原告が最後まで着服横領していたことを否認していた1万円について,賞罰審査委員会において相当追及され,同委員会が長期化していたことからすると,原告が早期に協議会及び賞罰審査委員会を終了させるために,虚偽の自白をしたとは考えられない。 また,原告が,最後まで1万円についての着服横領を否認していたことは,他の職員に嫌疑がかからないようにするためとの原告の主張とは矛盾するものであるし,原告が,賞罰審査委員会において着服横領をすれば刑事告訴を受けたり懲戒免職処分を受けることを事前に告知されていたことからすれば,自白が虚偽であるとする原告の主張は理由がないことは明らかである。 (イ) 原告の横領行為を裏付ける諸事実の存在前記ア記載の本件懲戒免職処分の理由とされる横領行為の外形的な事実関係である受領したし尿収集手数料の不足については,原告も認めるところ,この手数料の不足は,原告が職務上保管していたし尿収集手数料につき,平 記載の本件懲戒免職処分の理由とされる横領行為の外形的な事実関係である受領したし尿収集手数料の不足については,原告も認めるところ,この手数料の不足は,原告が職務上保管していたし尿収集手数料につき,平成11年4月27日から同年8月23日までの約4箇月間という短い期間に合計46回と多数回発生し,合計12万1200円の不足が生じたものである。これ自体異常な事態であり,職務上し尿収集手数料として受領していた金員を保管していた原告の関与なくしては生じるはずのないものである。そして,原告が,し尿収集手数料を最終的に確認し,収入調書を作成し,出納室に納入することとされており,現に原告がその職務を行っていたことや従前原告が手数料として保管していた金員が帳簿より100円程度多かった時に他の職員に対して注意をしていたことからすると,現実問題として他の職員が着服横領をしたとは考えられない。 また,公金を管理する公務員としては,かかる保管金不足の事態が生じた場合においては,上司に相談し原因究明や再発防止を執るなどしかるべき対処をするのが当然であり,原告は,前記のとおり,金員が帳簿額よりも100円多かった際にも職員に対し注意をしていたところ,原告は,前記のとおり,46回と多数回にわたる金員の不足が発生していたにもかかわらず,上記のような公務員として当然執るべき措置を何ら講じなかったばかりか,金員の不足が発覚しないように,貸し方台帳や貸し方封筒等を改ざんし,虚偽の収入調書を作成して,不正に少ない金額を正規の額であると偽って出納室に納入し続けるという公務員としてはあってはならない重大な規律違反行為をしていたことからすると,原告が,し尿収集手数料を着服横領していたことは明らかである。 (原告の主張)ア原告は,那賀町のし尿収集手数料を横領したものではない。すなわち,原 ない重大な規律違反行為をしていたことからすると,原告が,し尿収集手数料を着服横領していたことは明らかである。 (原告の主張)ア原告は,那賀町のし尿収集手数料を横領したものではない。すなわち,原告が管理保管していた公金であるし尿収集手数料につき,第三者による盗難又は紛失という事態が発生し,その金額が収集先から受領したとされる金額から不足するという事態が生じたため,原告は,平成11年4月から同年5月にかけては,別紙2の「し尿収集先氏名」欄記載の者から受領した受領額を同別紙「出納室納入金額」欄記載の金額であると出納室に報告し,同年6月以降は,別紙1記載のとおり,現場職員から受領したし尿収集手数料合計8万0100円を流用し,もって不足額を填補し,もって,し尿収集手数料額と実際に原告が管理保管していた金銭の額を合わせたにすぎない。 イ原告が那賀町の住民からし尿収集手数料として受領した金員を着服したとの被告の主張は,以下のとおり,いずれも理由がない。 (ア) 第三者による盗難の可能性①し尿収集手数料を保管していた手提げ金庫の錠が壊れていたこと,②この手提げ金庫は,職務時間帯においては,保健衛生課の机の上に置かれ,職員その他の第三者が接近可能である一方,職務時間外においては,同課のロッカーの中に保管されていたところ,このロッカーの合い鍵は,鍵のかからないレターケースに置かれ,そのことは那賀町職員の多くが知っていたことからすれば,やはり職員その他の第三者が接近可能であったこと,③那賀町総務課にはマスターキーが置かれていたが,同課の部屋には錠がなかったことから,休日においても保健衛生課への出入りは自由であり,現に休日における保健衛生課への人の出入りも頻繁にあったこと,④原告は,し尿収集手数料の保管管理のほか,平成11年当時,斎場建設を担当してお とから,休日においても保健衛生課への出入りは自由であり,現に休日における保健衛生課への人の出入りも頻繁にあったこと,④原告は,し尿収集手数料の保管管理のほか,平成11年当時,斎場建設を担当しており,非常に繁忙であったため,し尿収集手数料金銭管理を十分にすることができなかったことからすれば,原告以外の那賀町職員その他第三者によって,し尿収集手数料として保管されていた現金が盗取された可能性は否定できない。 そして,平成11年6月ころ,那賀町税務課において,2万7000円の現金が紛失し,同町住民課において,ノートパソコン1台が紛失したことに照らすと,し尿収集手数料12万円余の紛失も,これらと同時期に発生した盗難事件であり,原告以外の第三者が犯人である疑いが大いにあるというべきである。 (イ) 原告の自白が虚偽であること原告は,協議会及び賞罰審査委員会において,11万1200円について横領した旨自白しているが,①原告が平成11年当時特に金銭的に困窮している状況にはなく,那賀町職員である妻と合わせて相当の収入があった一方,原告が着服横領したとされる額は12万1200円と低額であることからすれば,原告が横領するに至った動機が不明ないしあまりにも薄弱であること,②原告は,監査委員会において監査委員に対し虚偽の報告をしたことで非難された上,仕事が重なったために疲労が蓄積していたし,斎場建設を中心として職務が繁忙であったことや,他の職員に嫌疑が掛からないようにしたいこともあり,虚偽の自白をしても後で訂正すれば済むだろう,減俸,停職程度の軽微な処分で済むだろうなどと安易に考えていたのであり,協議会ないし賞罰審査委員会において,資料を与えられずに詳細な説明を求められるという適切に説明ないし反論をするのが困難な状況で,虚偽の自白をする動機があったことに照らす と安易に考えていたのであり,協議会ないし賞罰審査委員会において,資料を与えられずに詳細な説明を求められるという適切に説明ないし反論をするのが困難な状況で,虚偽の自白をする動機があったことに照らすと,原告の前記自白は虚偽であったというほかはない。 (ウ) 原告が着服横領したと仮定した場合の方法の不統一性原告は,従前から,し尿収集手数料として不足が生じていた場合に,自己の所持していた金員でこれを補てんしていたが,平成11年4月から同年5月にかけては,書類を改ざんすることにより,不足金の発生を隠し,同年6月以降は収集されたし尿収集手数料から一部を差し引いて納入することにより,不足金を補てんするという方法をとっていた。もし,原告が,し尿収集手数料として保管していた現金を着服横領していたのであれば,このように途中で方法を変更する理由はなく,かえって,書類の改ざんよりも判明しやすい一部差し引いて出納室に入金する方法を選択する理由はない。 (2) 本件懲戒免職処分に裁量権の逸脱ないし濫用の違法はあるか。 (原告の主張)本件懲戒免職処分は,原告が平成11年度のし尿収集手数料に関し横領行為を行ったことを前提とするものであるが,前記(1)の原告の主張のとおり,原告はし尿収集手数料の横領をしておらず,被告の処分は,そもそも前提を欠くものであるし,被告が本件懲戒免職処分の理由として横領以外に主張する各事実も,後記のとおり,そのような事実は認められないかそれだけでは懲戒免職処分という重大な処分を正当化するほどの重大な職務違反があったということはできないから,本件懲戒免職処分は,相当性を著しく欠き,懲戒権を逸脱ないし濫用した違法なものである。 ア監査委員に対する虚偽の報告について原告は,監査委員会において,監査委員に対し,し尿収集手数料の未収金額について虚偽の 処分は,相当性を著しく欠き,懲戒権を逸脱ないし濫用した違法なものである。 ア監査委員に対する虚偽の報告について原告は,監査委員会において,監査委員に対し,し尿収集手数料の未収金額について虚偽の報告をしたことは前提事実(3)のとおりであるが,これは,担当課長から,未収金はないよう報告せよとの指示を受けたからであり,原告1人が責めを負うべきものではない。 イ不明金の発生についてし尿収集手数料として収集した現金から不明金ないし不足金が発生したという事態は,原告がし尿収集手数料の管理をする前からあったのであり,不明金46万6000円の発生の責任が原告のみにあるということはできない。 ウ書類の紛失について平成9年度及び平成10年度のし尿収集手数料関係の書類の紛失については,平成11年6月ころの原告が不在の際に,これらの書類を保管していた書庫を職員の事務所とするために掃除が行われ,担当課長及び保健婦(当時)が書類の整理をしていたのであり,その際に誤って捨てられたものと推測される。したがって,これらの書類の紛失については,原告に落ち度はない。 (被告の主張)公務員の公金横領は,法律違反であることはもとより,地域住民の公金を預かり,住民の福祉の増進を図ることを基本とする地方公共団体の行政運営に対する住民の信用を著しく失墜させる行為であり,地方公務員が決して行ってはならない重大な職務上の義務違反行為であり,非行行為の最たるものであるところ,前記(1)の被告の主張のとおり,原告は,平成11年度のし尿収集手数料に関し合計12万1200円にのぼる横領行為を行った。また,原告は,着服横領の発覚を防ぐために貸し方台帳及び貸し方封筒を改ざんするとともに虚偽の収入調書を作成して,不正に少ない額を正規の額と偽って出納室に納入するという悪質な隠蔽工作を行っていた った。また,原告は,着服横領の発覚を防ぐために貸し方台帳及び貸し方封筒を改ざんするとともに虚偽の収入調書を作成して,不正に少ない額を正規の額と偽って出納室に納入するという悪質な隠蔽工作を行っていた。 さらに,原告は,以下に詳述するように,監査委員に対し虚偽の報告をし,手数料関係書類を紛失し,手数料について多額の不明金を発生させるといったそれ自体懲戒事由に該当するような職務違反行為を行っていたのであり,これらの行為も到底容認できるものではない。 以上によれば,本件懲戒免職処分は,相当なものであり,被告が懲戒権を逸脱ないし濫用した違法なものということはできない。 ア虚偽の報告原告は,前提事実(3)のとおり,平成11年8月13日の監査委員会において,監査委員に対して,し尿収集手数料の未収金額につき,虚偽の報告をした。 これに対し,原告は,このような虚偽の報告をした理由を,当時の担当課長からの指示であったと主張するが,そのような事実はない。 イし尿収集手数料につき不明金を発生させたこと原告は,し尿収集手数料について,46万6000円にのぼる多額の不明金を発生させた。 ウ書類の紛失原告は,前提事実(3)のとおり,職務上管理すべき平成9年度及び平成10年度の手数料事務関係の書類を紛失した。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(原告の横領行為の有無)について(1) 前提事実(1)ないし(3)のほか,証拠(甲2,4,5,7,乙1の2・3・4の1ないし4・5・6・7ないし10の各1ないし3・11,2,3の1・3,4,8,11ないし13,15ないし27,証人A,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,平成9年4月1日,保健衛生課の課長補佐に就任し,し尿収集業務の責任者として,し尿収集手数料の保管,管理を行い,現場職 人A,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,平成9年4月1日,保健衛生課の課長補佐に就任し,し尿収集業務の責任者として,し尿収集手数料の保管,管理を行い,現場職員がし尿収集先から受領したし尿収集手数料の金額に誤りがないかを確認し,収入調書を作成し,現金と収入調書を出納室に納入していた。また,原告は,し尿収集先が,収集当日に不在であったため現場職員に支払えなかったし尿収集手数料を保健衛生課に持参して支払った現金についても,貸し方封筒の28件分の記載枠が全て埋まった後に,同封筒在中の金額に誤りがないかを確認し,未徴収であったし尿収集手数料を徴収した旨の収入調書を作成し,現金と収入調書を出納室に納入していた。住民からのし尿収集手数料の受領は,保健衛生課職員が全員で担当していたが,現場職員及び住民から受領したし尿収集手数料の金額の確認,収入調書の作成並びに現金及び収入調書の出納室への納入の業務は,原告のみがこれを行っていた。 イ現場職員は,午後4時ころまでに,収集先から那賀町役場に帰庁し,集金してきたし尿収集手数料を集計し,担当者であった原告に,集金してきたし尿収集手数料及び家人不在のため交付しなかった領収書を交付した。 原告は,現場職員から交付を受けたし尿収集手数料の金額を確認し,当日の出納室における銀行業務が終了する午後4時30分ころまでに,し尿収集手数料及び収入調書を出納室に納入していた。もっとも,このし尿収集手数料が,当日中に出納室に納入されないことも時々あり,原告は,その場合,し尿収集手数料を入れた封筒を貸し方封筒(住民から受領したし尿収集手数料在中のもの)とともに保健衛生課備え付けの手提げ金庫に保管していた。この手提げ金庫は,錠が壊れているため施錠できない状態であり,執務時間内においては,保健衛 貸し方封筒(住民から受領したし尿収集手数料在中のもの)とともに保健衛生課備え付けの手提げ金庫に保管していた。この手提げ金庫は,錠が壊れているため施錠できない状態であり,執務時間内においては,保健衛生課内の空いている机の上に置かれ,執務時間外においては,同課内の施錠されたロッカーに保管されていた。このロッカーの鍵は2本あり,1本は原告が所持し,もう1本は,保健衛生課課長補佐のB課長補佐が所持しており,Bは,これをレターケースに保管しており,保健衛生課の職員らは,鍵がレターケースに保管されていることを知っていた。 保健衛生課の部屋の出入口は,夜間及び休日には施錠され,鍵は,保健衛生課長,原告,現場職員が所持するとともに,那賀町総務課に保管されていた。 ウ原告は,平成9年度及び平成10年度においては,時折,貸し方封筒に保管された現金と貸し方封筒に記載された金額とが100円ないし数百円程度過不足があったとして,保健衛生課の職員らに対し,不平を漏らしたり,注意するなどしていた。しかしながら,このころにおいて,貸し方封筒に保管された現金と貸し方封筒に記載された金額との間に,数千円ないし1万円単位で齟齬が生ずることはなかった。 エ原告は,平成10年1月以降,ほぼ連日,午前8時30分ころないし午前8時40分ころに登庁し,午後5時40分ころに退庁し,帰宅しており,残業をすることはほとんどなかった。 那賀町は,平成10年から平成11年までの間に,斎場を新設することとなり,平成10年9月28日から平成11年3月31日まで用地の造成工事が,同月8日から同年11月2日まで斎場建物の建設工事が行われ,斎場は,和歌山県知事の許可を受けて,同年12月1日から営業を開始した。その間,原告は,斎場建設工事の現場管理及び事務を担当していたが,那賀町役場において残業するこ 日まで斎場建物の建設工事が行われ,斎場は,和歌山県知事の許可を受けて,同年12月1日から営業を開始した。その間,原告は,斎場建設工事の現場管理及び事務を担当していたが,那賀町役場において残業することはほとんどなかった。 オ(ア) 原告は,平成11年5月7日に出納室にし尿収集手数料及び収入調書を納入するに当たり,貸し方封筒及び貸し方台帳に記載されたC(別紙2の番号1記載のとおり,同年4月27日に2万4800円領収)から領収したし尿収集手数料額2万4800円を1万4800円と改ざんし,同年5月7日付け収入調書に14万7600円と記載すべきところ,13万7600円と虚偽の記載をし,保管していたし尿収集手数料14万7600円のうち13万7600円及び収入調書を出納室に納入し,そのころ,差額の1万円を着服横領した。 (イ) 原告は,平成11年5月13日に出納室にし尿収集手数料及び収入調書を納入するに当たり,貸し方封筒及び貸し方台帳に記載されたD(別紙2の番号2記載のとおり,同月12日に4万3000円領収)から領収したし尿収集手数料額4万3000円を3万3000円と改ざんし,同月13日付け収入調書に13万1600円と記載すべきところ,12万1600円と虚偽の記載をし,保管していたし尿収集手数料13万1600円のうち12万1600円及び収入調書を出納室に納入し,そのころ,差額の1万円を着服横領した。 (ウ) 原告は,平成11年5月19日に出納室にし尿収集手数料及び収入調書を納入するに当たり,貸し方封筒及び貸し方台帳に記載されたE(別紙2の番号3記載のとおり,同月13日に1万4900円領収)から領収したし尿収集手数料額1万4900円を3900円と改ざんする一方F(同月11日に1900円領収)から領収したし尿収集手数料額1900円を2900円と改ざんし, 同月13日に1万4900円領収)から領収したし尿収集手数料額1万4900円を3900円と改ざんする一方F(同月11日に1900円領収)から領収したし尿収集手数料額1900円を2900円と改ざんし,同月19日付け収入調書に11万3200円と記載すべきところ,10万3200円と虚偽の記載をし,保管していたし尿収集手数料11万3200円のうち10万3200円及び収入調書を出納室に納入し,そのころ,差額の1万円を着服横領した。 (エ) 原告は,平成11年5月24日に出納室にし尿収集手数料及び収入調書を納入するに当たり,貸し方封筒及び貸し方台帳に記載されたG(別紙2の番号4記載のとおり,同月18日に7800円領収)から領収したし尿収集手数料額7800円を2600円と,H(別紙2の番号5記載のとおり,同月19日に5800円領収)から領収したし尿収集手数料額5800円を2900円と,I(別紙2の番号6記載のとおり,同日3900円領収)から領収したし尿収集手数料額3900円を1900円とそれぞれ改ざんし,同月24日付け収入調書に8万8200円と記載すべきところ,7万8100円と虚偽の記載をし,保管していたし尿収集手数料8万8200円のうち7万8100円及び収入調書を出納室に納入し,そのころ,差額の1万0100円を着服横領した。 カ(ア) 原告は,平成11年6月14日,現場職員から収集した別紙1の番号1ないし5記載にかかるし尿収集手数料を出納室に納入するに当たり,収入調書に同別紙「受領金額」欄記載の金額を記載すべきところ,同別紙「納入金額」欄記載の金額を記載して虚偽の収入調書を5通作成し,これらの収入調書と併せて,保管していた同別紙「受領金額」欄記載の額のし尿収集手数料合計20万6700円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計19万6700円を出納室に納 虚偽の収入調書を5通作成し,これらの収入調書と併せて,保管していた同別紙「受領金額」欄記載の額のし尿収集手数料合計20万6700円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計19万6700円を出納室に納入した。 (イ) 原告は,平成11年6月22日,現場職員から収集した別紙1の番号6ないし10記載にかかるし尿収集手数料を出納室に納入するに当たり,収入調書に同別紙「受領金額」欄記載の金額を記載すべきところ,同別紙「納入金額」欄記載の金額を記載して虚偽の収入調書を5通作成し,これらの収入調書と併せて,保管していた同別紙「受領金額」欄記載の額のし尿収集手数料合計19万0900円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計18万0900円を出納室に納入した。 (ウ) 原告は,平成11年7月26日,現場職員から収集した別紙1の番号11ないし18記載にかかるし尿収集手数料を出納室に納入するに当たり,収入調書に同別紙「受領金額」欄記載の金額を記載すべきところ,同別紙「納入金額」欄記載の金額を記載して虚偽の収入調書を8通作成し,これらの収入調書と併せて,保管していた同別紙「受領金額」欄記載の額のし尿収集手数料合計29万3300円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計27万7200円を出納室に納入した。 (エ) 原告は,平成11年7月27日,現場職員から収集した別紙1の番号19及び20記載にかかるし尿収集手数料を出納室に納入するに当たり,収入調書に同別紙「受領金額」欄記載の金額を記載すべきところ,同別紙「納入金額」欄記載の金額を記載して虚偽の収入調書を2通作成し,これらの収入調書と併せて,保管していた同別紙「受領金額」欄記載の額のし尿収集手数料合計10万9000円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計10万5000円を出納室に納入した。 (オ) 原告は,平成11年8月2 書と併せて,保管していた同別紙「受領金額」欄記載の額のし尿収集手数料合計10万9000円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計10万5000円を出納室に納入した。 (オ) 原告は,平成11年8月2日,現場職員から収集した別紙1の番号21ないし29記載にかかるし尿収集手数料を出納室に納入するに当たり,収入調書に同別紙「受領金額」欄記載の金額を記載すべきところ,同別紙「納入金額」欄記載の金額を記載して虚偽の収入調書を9通作成し,これらの収入調書と併せて,保管していた同別紙「受領金額」欄記載の額のし尿収集手数料合計31万5400円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計29万7400円を出納室に納入した。 (カ) 原告は,平成11年8月6日,現場職員から収集した別紙1の番号30ないし35記載にかかるし尿収集手数料を出納室に納入するに当たり,収入調書に同別紙「受領金額」欄記載の金額を記載すべきところ,同別紙「納入金額」欄記載の金額を記載して虚偽の収入調書を6通作成し,これらの収入調書と併せて,保管していた同別紙「受領金額」欄記載の額のし尿収集手数料合計22万6300円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計21万4300円を出納室に納入した。 (キ) 原告は,平成11年8月23日,現場職員から収集した別紙1の番号36ないし40記載にかかるし尿収集手数料を出納室に納入するに当たり,収入調書に同別紙「受領金額」欄記載の金額を記載すべきところ,同別紙「納入金額」欄記載の金額を記載して虚偽の収入調書を5通作成し,これらの収入調書と併せて,保管していた同別紙「受領金額」欄記載の額のし尿収集手数料合計23万3000円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計22万3000円を出納室に納入した。 (ク) 以上のとおり,原告は,平成11年6月から同年8月までの間,現場職員 」欄記載の額のし尿収集手数料合計23万3000円のうち同別紙「納入金額」欄記載の額合計22万3000円を出納室に納入した。 (ク) 以上のとおり,原告は,平成11年6月から同年8月までの間,現場職員が住民から受領し原告が管理していたし尿収集手数料40件合計157万4600円のうち,合計149万4500円のみを出納室に納入し,その各納入のころ,残額8万0100円のうち少なくとも7万0100円を自己のために着服横領した(残額1万円についても横領が認められることは後記(2)のとおりである。)。 キ原告は,平成11年4月以降,保管していたし尿収集手数料に過不足が生じている旨を保健衛生課の職員に対して告げたり,上司に対して報告するなどして,し尿収集手数料の紛失,盗難といった事態に対する対策を講じてはいなかった。 (2) 原告は,前提事実(2),前記(1)アないしウ,カ,キ認定のとおり,平成11年6月から同年8月までの間に,7回(40件)にわたり,出納室に納入すべき現場職員から受領し,自ら保管していたし尿収集手数料のうち合計8万0100円を納入せず,原告は,このうち7万0100円については,協議会及び賞罰審査委員会において着服横領した旨自認していたところ,し尿収集手数料を保管管理し出納室に納入するのは,原告の職務であり,もし,原告の関与なくしてし尿収集手数料の紛失等の事故が発生すれば,速やかに原因の究明及び再発防止に努めなければならない職責があったにもかかわらず,上司への報告や職員への告知などそのための措置を一切講じなかったばかりか,収入調書に虚偽の記載を繰り返し,不足金の発生が発覚することを阻止しようとしていたことに照らすと,原告が,現場職員からし尿収集手数料として受領し保管していた金銭のうち,現場職員から受領した現金で出納室に納入しなかった8万 り返し,不足金の発生が発覚することを阻止しようとしていたことに照らすと,原告が,現場職員からし尿収集手数料として受領し保管していた金銭のうち,現場職員から受領した現金で出納室に納入しなかった8万0100円のうち,原告が協議会及び賞罰審査委員会において自認した7万0100円のみならず,残額の1万円についても自己のために着服横領したものと推認される。 これに対し,原告は,前提事実(3)のとおり,協議会及び賞罰審査委員会において,現場職員から受領したし尿収集手数料のうち出納室に納入しなかった分のうち1万円については,貸し方封筒に保管していた現金の不足分に充てた旨陳述しているが,証拠(甲4,7,原告本人)によれば,原告は,最初に上記の陳述をしたことから,自己の性格として後から訂正することができず,意地を張って上記の陳述を継続したことが認められ,このような陳述の動機にかんがみると,1万円についてのみ原告が着服横領しなかったとの上記陳述は信用することができない。 (3) 以上によれば,原告は,前記(1)オ(ア)ないし(エ)の合計4万0100円に前記(1)カ(ク)及び前記(2)の合計8万0100円を加えた12万0200円を横領したものである。 (4)ア原告は,保管していたし尿収集手数料のうち,別紙1及び別紙2の各「不足金額」欄記載の金額が消失したのは,第三者が貸し方封筒に入っていた現金を盗んだか紛失によるものであり,原告は,この不足金の発生を隠すために,平成11年4月から同年5月にかけては,別紙2の「し尿収集先氏名」欄記載の者から受領した同別紙「受領金額」欄記載の額を同別紙「納入金額」欄記載の額であったと報告し,同年6月以降においては,別紙1記載のとおり,現場職員から受領したし尿収集手数料を流用し,これを貸し方封筒に保管していた現金に生じた不足に充 欄記載の額を同別紙「納入金額」欄記載の額であったと報告し,同年6月以降においては,別紙1記載のとおり,現場職員から受領したし尿収集手数料を流用し,これを貸し方封筒に保管していた現金に生じた不足に充当していた旨主張する。そして,貸し方封筒に保管された現金が第三者により盗取された根拠として,①現金の入った貸し方封筒を保管していた手提げ金庫は施錠できないものであったこと,②執務時間中には保健衛生課職員その他第三者が手提げ金庫に接近することが可能であり,執務時間外であっても,手提げ金庫が保管されていたロッカーの鍵の所在を那賀町職員の多くが知っていたことから,同町職員その他の第三者において接近可能であったこと,③休日においても保健衛生課への出入りは自由であったこと,④原告は平成11年当時し尿収集関係の事務以外に斎場建設関係の事務等も担当しており,非常に繁忙であったため,し尿収集手数料の金銭を十分に管理していなかったこと,⑤同年6月ころ,同町税務課における現金の紛失や同町住民課におけるノートパソコンの紛失といった事故があったことを挙げている。 (ア) 前記(1)オ,カ認定のとおり,し尿収集手数料は,平成11年5月から同年8月までの約4か月間に11度にわたり,4000円ないし1万8000円といった必ずしも少額とはいえない額が消失しており,しかもその額が1万円前後と概ね一定していることからすれば,し尿収集手数料消失の原因が,保健衛生課の通常の業務における現金の取扱い過程で起こる過誤ないし事故によるものとは到底考え難く,同課においてし尿収集手数料を受領し,原告が出納室に納入するまでの間に,何者かが故意に保管中の現金を抜き取ったものとみざるを得ない。 (イ) 現場職員から原告が受領したし尿収集手数料のうち,受領当日に出納室に納入されたもの(別紙1の番号4 が出納室に納入するまでの間に,何者かが故意に保管中の現金を抜き取ったものとみざるを得ない。 (イ) 現場職員から原告が受領したし尿収集手数料のうち,受領当日に出納室に納入されたもの(別紙1の番号4,5,17ないし20,28,29)については,前記(1)イ認定のとおり,現場職員が午後4時ころまでに帰庁して原告にし尿収集手数料を手渡してから,原告が当日の午後4時30分ころまでに金額を確認して出納室に納入するまでの時間が約30分と短いことにかんがみると,外部の者ないし原告以外の保健衛生課職員がこれらの現金を盗取する機会はないというほかはない。 他方,現場職員から原告が受領したし尿収集手数料のうち受領当日中に出納室に納入されなかったもの及び貸し方封筒内に保管された現金については,前記(1)イ認定のとおり,施錠されていない手提げ金庫の中に保管されていたところ,執務時間中には,保健衛生課内の空いている机の上に置かれており,外部からの第三者が盗取する機会がなかったとはいえない。 しかしながら,前記(1)オ,カ認定のとおり,平成11年5月から同年8月までの4か月間に11回にわたって同様の不足金が発生している一方,保管されていたごく一部の現金しか不足を生じていなかったことに照らすと,外部の者が手提げ金庫から現金を盗取したと考えるのは不自然に過ぎるというべきである。 また,現場職員から原告が受領したし尿収集手数料のうち受領当日中に出納室に納入されなかったもの及び貸し方封筒内に保管された現金を保健衛生課の職員が盗取していた可能性についてみると,前記(1)イ認定のとおり,現金等を保管していた手提げ金庫は,施錠されないものであり,執務時間中は保健衛生課内の空いた机の上に置かれており,執務時間外においては施錠可能なロッカーに保管されていたが,ロッカーの鍵は,施錠され 現金等を保管していた手提げ金庫は,施錠されないものであり,執務時間中は保健衛生課内の空いた机の上に置かれており,執務時間外においては施錠可能なロッカーに保管されていたが,ロッカーの鍵は,施錠されていないレターケースに保管され,その位置を課員が知っていたことからすると,保健衛生課の課員が,手提げ金庫内にある貸し方封筒内の現金又は現場職員から原告が受領したし尿収集手数料のうち受領当日中に出納室に納入されなかったものを盗取する機会はあったということができる。 しかしながら,前記(1)ア,ウ認定のとおり,原告が最終的に金額を確認して出納室に上記金員を納入していたこと,原告が貸し方封筒記載の金額と同封筒在中の金額との間に100円ないし数百円の齟齬があった場合に,同課の職員らに対し,不平を漏らしたり,注意をしたりしていたことからすれば,同課の職員らが,原告の監督下にある上記金員を盗取するとはにわかに考え難く,まして,前記(1)オ,カ認定のとおり,4か月間に11回にわたり,4000円ないし1万8000円の現金が消失するという多数回にわたる数千円を超える金員の消失につき,同課職員が関与していた可能性はほとんどないということができる。 (ウ) 他方,原告は,前記(1)ア認定のとおり,し尿収集手数料の金額を確認して出納室に納入するという職務を1人で行っていたことに照らすと,現場職員から受領したし尿収集手数料や貸し方封筒内の現金を最も容易に着服できる立場にあったということができる。また,前記(1)オないしキ認定のとおり,原告が,し尿収集手数料に不足金が生じたにもかかわらず,上司への報告等必要な措置をとらなかったばかりか,内容虚偽の収入調書を作成して不足金の発生を隠蔽する行動をとっていることにかんがみると,発生したし尿収集手数料の不足額全額につき,原告が着服横 わらず,上司への報告等必要な措置をとらなかったばかりか,内容虚偽の収入調書を作成して不足金の発生を隠蔽する行動をとっていることにかんがみると,発生したし尿収集手数料の不足額全額につき,原告が着服横領したことが推認されるとともに,協議会及び賞罰審査委員会における原告の横領を自認する旨の陳述を強く裏付けるというべきである。 (エ) また,原告が指摘する平成11年6月ころに発生した那賀町税務課における現金の紛失や同町住民課におけるノートパソコンの紛失といった事故についてみると,証人A及び弁論の全趣旨によれば,同町税務課及び同町住民課は,平成11年当時,保健衛生課と別棟の建物にあったこと,同町税務課において紛失したとされる現金は釣り銭として準備していた3万円のうちの2万7000円であり,紛失回数は1度だけであり,税務課の職員が帳簿を改ざんするなどこの紛失を隠蔽するような行動をとらなかったことが認められ,これらの事実に照らすと,同町税務課における現金や同町住民課におけるノートパソコンの紛失の場所や態様が保健衛生課におけるし尿収集手数料の不足金の発生と著しく異なっているということができ,これらの紛失の事実をもってしても,し尿収集手数料の不足金の発生につき,原告以外の第三者が関与していたことを窺わせるには足りないというべきである。 イ原告は,協議会及び賞罰審査委員会においてしたし尿収集手数料を着服横領したとの自白は虚偽であると主張し,その根拠として,①原告が平成11年当時特に金銭的に困窮している状況にはなく,那賀町職員である妻と合わせて相当の収入があった一方,原告が着服横領したとされる額は12万1200円と低額であることからすれば,原告が横領するに至った動機が不明ないしあまりにも薄弱であること,②原告は,監査委員会において監査委員に対し虚偽の報告を 方,原告が着服横領したとされる額は12万1200円と低額であることからすれば,原告が横領するに至った動機が不明ないしあまりにも薄弱であること,②原告は,監査委員会において監査委員に対し虚偽の報告をしたことで非難された上,仕事が重なったために疲労が蓄積していたし,斎場建設を中心として職務が繁忙であったことや,他の職員に嫌疑が掛からないようにしたいこともあり,虚偽の自白をしても後で訂正すれば済むだろう,減俸,停職程度の軽微な処分で済むだろうなどと安易に考えていたのであり,協議会ないし賞罰審査委員会において,資料を与えられずに詳細な説明を求められるという適切に説明ないし反論をするのが困難な状況で,虚偽の自白をする動機があったとする。 (ア) しかしながら,証拠(乙3の1・3)によれば,原告は,平成11年11月8日の賞罰審査委員会において,し尿収集手数料を着服横領して,小遣いないし飲食費に充てた旨陳述していることが認められるところ,前記(1)オ,カ認定のとおり,原告が出納室に納入しなかった金額が,1回につき1万円前後,1か月につき2万円ないし4万円前後の額であることからすれば,原告が特に裕福であったとの事情が認められない本件において,小遣いないし飲食費に充てたとする原告の陳述は,着服横領の動機として不自然なものということはできない。 また,原告が着服横領したとされる金額が,前記(1)オ,カ,(2)のとおり,合計12万0200円であったという点については,し尿収集手数料に不足金があることが発覚した時点における金額という以上の意味はなく,横領行為が継続されれば,より高額な被害金額になった可能性もあることからすれば,この金額をもって,原告の横領の動機が薄弱であったということはできない。 (イ) 他方,原告に虚偽の自白をする動機があったかという点について ば,より高額な被害金額になった可能性もあることからすれば,この金額をもって,原告の横領の動機が薄弱であったということはできない。 (イ) 他方,原告に虚偽の自白をする動機があったかという点についてみると,未収金について虚偽の報告をすることと公金であるし尿収集手数料を着服したことを認めることとは全く次元の異なる問題であり,後者の方が一般的に重い責任を問われることからすると,監査委員会で内容虚偽の報告について責任を問われたことによって,原告が着服横領をしたという虚偽の自白をするとは考えられない。 また,前記(1)エ認定のとおり,原告は,平成10年1月以降,ほぼ残業をすることなく退庁しており,このことは斎場建設が開始された同年9月28日以降も変わることはなかったことに照らすと,原告が繁忙であったとみることはできないし,繁忙であったことを前提として,原告が疲弊していたとみることもできない。 そして,証拠(乙1の11,2,3の1ないし3,11,25,証人A,原告本人)によれば,原告が協議会において懲戒免職処分になったら大変である旨述べていること,原告は賞罰審査委員会において刑事告訴を受ける可能性について告知を受けていること,原告は,賞罰審査委員会において,現場職員から受領したし尿収集手数料のうち出納室に納入しなかった8万0100円のうちの1万円については,最後まで着服したことを否認するとともに,紛失したし尿収集手数料関係の書類についても知らないという弁明で一貫させていたことが認められ,これらの事実によれば,原告が,協議会及び賞罰審査委員会(自己に対するものであることを原告が認識していたことは明らかである。)において,横領が認められ,懲戒免職処分を受ける可能性があったことを認識していた一方,1万円についての横領を否認し,紛失書類の紛失の原因や所在に であることを原告が認識していたことは明らかである。)において,横領が認められ,懲戒免職処分を受ける可能性があったことを認識していた一方,1万円についての横領を否認し,紛失書類の紛失の原因や所在について明言しなかったことからすれば,他の職員に嫌疑がかかるか否かという点について特段の認識がなかったものと推認される。また,前記認定のとおり,原告が紛失書類の点や1万円について,一貫して弁明していたことに照らすと,原告が,資料がない状況で回答を迫られていたから,虚偽の自白をしたとみることはできない。 (ウ) 以上によれば,原告が協議会ないし賞罰審査委員会でした着服を認める旨の自白が虚偽であるとの原告の主張を採用することはできない。 ウ原告は,し尿収集手数料を着服横領するのであれば,平成11年4月ないし5月にかけて書類を改ざんするという方法をとっていたが,同年6月以降は現場職員から受領したし尿収集手数料から着服するという方法に変更したことになるが,このように途中で方法を変更する理由はなく,かえって,書類の改ざんよりも判明しやすい一部差し引いて出納室に納入する方法を選択する理由はないと主張する。 しかしながら,前記(1)オ認定のとおり,原告は,貸し方封筒から現金を抜き取って着服するに当たり,貸し方封筒及び貸し方台帳の金額の記載をカッターナイフで削ったり修正液を用いて(乙26)改ざんしていたところ,この方法では,貸し方封筒及び貸し方台帳という複数の書類を改ざんする必要があることや改ざんの痕跡が残り,他方,現場職員から受領した現金を着服する方法であれば,書類改ざんの労をとる必要がなくなり,書類上改ざんの痕跡も残らないという利点があることからすれば,原告が,前記(1)カ,(2)認定のとおり,平成11年6月以降,現場職員から受領した現金の一部を着服するとい んの労をとる必要がなくなり,書類上改ざんの痕跡も残らないという利点があることからすれば,原告が,前記(1)カ,(2)認定のとおり,平成11年6月以降,現場職員から受領した現金の一部を着服するという方法に変更したとしても,それほど不自然ではないというべきである。したがって,原告の上記主張は理由がない。 2 争点(2)(本件懲戒免職処分の裁量権の逸脱等)について原告は,自らがし尿収集手数料を着服横領していないことを前提として,本件懲戒免職処分は裁量権を逸脱ないし濫用した違法なものである旨主張するが,前記1説示のとおり,原告が同手数料を横領したと認められる以上,原告の上記主張は,その前提を欠くものというほかない(なお,証拠《甲4,5,乙8,証人A,原告本人》によれば,被告は,自己所有の家屋に対する固定資産税を低く算定した那賀町税務課の職員2名に対し,降格及び停職6か月とする懲戒処分をし,人身事故を起こした同町総務課長を停職3か月とする懲戒処分をしたこと,平成11年6月に同町税務課で発生した現金2万7000円の紛失については,担当課長が紛失分を弁償するとともに同町助役から口頭で注意を受けたのみであり,懲戒免職処分を受けた者はいなかったことが認められる。しかしながら,前記各事実は,いずれも本件と事実関係を異にするものであるから,これらの事件において,懲戒免職処分を受けた者がいなかったことが,本件懲戒免職処分の違法性の存否に消長を来すことはないというべきである。)。 かえって,原告は,前記1(1)オ,カ,(2)認定のとおり,平成11年4月27日ころから同年8月23日ころまでの約4か月間に,11回(46件)にわたり,自己が保管する公金であるし尿収集手数料のうち合計12万0200円を着服横領するとともに,内容虚偽の収入調書を作成し(この行為は,有印虚 年8月23日ころまでの約4か月間に,11回(46件)にわたり,自己が保管する公金であるし尿収集手数料のうち合計12万0200円を着服横領するとともに,内容虚偽の収入調書を作成し(この行為は,有印虚偽公文書作成罪に該当する。),併せて,平成11年4月27日ころから同年5月24日ころまでの間に6回にわたり,貸し方封筒及び貸し方台帳を改ざんしていたのであり,これらの各行為は,地方公務員法29条1項各号所定の懲戒事由に該当するものということができる。このような公務員による公金の着服横領は,金額の多寡や回数を問わず,それ自体犯罪行為である上,那賀町における行政運営ひいては公務全般に対する同町民の信用を著しく傷つける重大な懲戒事由であることは明らかである。そして,本件懲戒免職処分は,原告が,前記のとおり,約4か月間に11回,46件分につき合計12万0200円を着服横領したことにつきされたものであるところ,前記のような横領行為の重大性はいうまでもないところであるが,原告の横領の回数は決して少ないものではなく,また,横領の金額も1回当たりのし尿収集手数料の額にかんがみると,決して少額とはいえず,さらに,横領の手段として内容虚偽の収入調書を作成するという有印虚偽公文書作成罪に該当するような行為をしていたことに照らすと,被告において,原告に対し,本件懲戒免職処分をしたことが,社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権を逸脱ないし濫用したとは到底認められないというべきである。 3 結論以上によれば,本件懲戒免職処分は,原告のし尿収集手数料の横領という懲戒事由に基づきされたもので,裁量権を逸脱ないし濫用したと認められない適法な処分であるということができる。よって,原告の本件請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり,判決する。 和歌山地方裁判所第二民 たもので,裁量権を逸脱ないし濫用したと認められない適法な処分であるということができる。よって,原告の本件請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり,判決する。 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官秋本昌彦裁判官成田晋司
▼ クリックして全文を表示