昭和39(う)33 公職選挙法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和40年6月28日 広島高等裁判所 松江支部
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【DRY-RUN】主 文 被告人Aの本件控訴を棄却する。 原判決中被告人B同Cに関する部分を破棄する。 被告人Bを懲役六月に、同Cを懲役四月に処する。 但し本裁判確定の日から四年間右各刑の

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主 文被告人Aの本件控訴を棄却する。 原判決中被告人B同Cに関する部分を破棄する。 被告人Bを懲役六月に、同Cを懲役四月に処する。 但し本裁判確定の日から四年間右各刑の執行を猶予する。 原審における訴訟費用は被告人B同Cの負担とする。 理由主任弁護人矢田正一の控訴の趣意は記録編綴の同弁護人名義及び弁護人青木健治名義各控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する検察官の意見は意見書記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。 これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。 弁護人矢田正一の控訴趣意第一、二点について控訴趣意第一点は要するに、原判示(同第二(一)事実を除く)授受金員は選挙運動実費の前渡しであるのに、原判決が選挙運動の報酬であると認めたのは事実の誤認であるというのであり、控訴趣意第二点は要するに、かりにそうでないとしても、原判示第一、第二(六)、第三は、供与罪の共謀者間における金員授受であるから、交付、受交付罪は成立しないというべく、原判決がその成立を認めたのは、理由にくいちがいがあるか、事実を誤認しひいては法令の解釈適用を誤つたものであるというのである。 原判決挙示の証拠に、当審公判廷における各被告人の供述を参酌すると、次の事実を認めることができる。 被告人Bは島根県飯石郡a村に居住し、D有限会社会計主任として勤務しながら、同村々会議員、消防団長等の要職についているものであること、被告人Cも同村に居住し、E有限会社の支配人格の仕事をしているものであること、被告人Aはその隣りに当る同郡b町に居住して材木業薪炭業を営み、同町々会議員であること、被告人B同Cは予てより、他の村内有志と共に、右a村々長を四期も勤め、人格、識見ともに秀でた原判示Fを原判示の県議会議員選 その隣りに当る同郡b町に居住して材木業薪炭業を営み、同町々会議員であること、被告人B同Cは予てより、他の村内有志と共に、右a村々長を四期も勤め、人格、識見ともに秀でた原判示Fを原判示の県議会議員選挙に推挙し、当選せしめようと考えていたこと、被告人Aは地元町内から同選挙に立候補予定のものがあつたのであるが、従前の県議会議員選挙において、自己の推挙する者に対する応援を、F等a村有力者に依頼したこともあるし、自己の営業上の取引先であるD有限会社がF支持である関係等から、右選挙においてFを応援することを決意していたものであること、被告人Bは他の者と共に、a村においてF後援会を結成し、自らはその幹事となつていたが、b町においても被告人A等の力により後援会を結成して貫いたいと考え、昭和三八年三月四日、a村有志と共にb町G旅館において被告人A等と会い右の件につき話合つたこと、その際被告人Aは被告人Bに対し、「三刀屋では地元から立候補する者があるため、選挙運動をする人はやりにくい。金がなくては細工にならぬ。世話して貰う人に、一人二―三〇〇〇円出してほしい。」と申入れ、被告人Bはこれを承諾したこと、そこで被告人Aは自分が平素伐採人夫として使い、今回の選挙に選挙運動をさせようと考えているH、I、J、Kと、従前より恒に自己の意を体して選挙運動をしてくれており、今回も選挙運動をしてくれるL、M、N、Oの八名の氏名を被告人Bに知らせたこと、被告人Bは「金はまとめて後日送るから適当にやつてくれ。」というと、被告人Aは「自分は金は扱いたくないから直接本人に配つてくれ。」と答えたこと、同月一五日には被告人A、P、Qが発起人となつてb町におけるF後援会発会式が催され、被告人Aの意を受けて選挙運動をする前記八名の者も出席したこと、同月一八日b町において郡内消防 」と答えたこと、同月一五日には被告人A、P、Qが発起人となつてb町におけるF後援会発会式が催され、被告人Aの意を受けて選挙運動をする前記八名の者も出席したこと、同月一八日b町において郡内消防団特別研修があり、郡消防団副団長として出席した被告人Bと、町会議員である関係上来賓として出席した被告人Aは、その席上右選挙運動について打合せる機会があつたこと、被告人Aは「従前話合つたように、b町の選挙運動員に対し、早く金を二〇〇〇円、三〇〇〇円に区別して送るよう。」申入れ、被告人Bは再度これを承諾したこと。 被告人Bはその帰途、F後援会連絡事務所が設置されている同郡c町R旅館に立寄つたところ、右事務所に出入りしている被告人Cと会つたこと、被告人Bとしては、被告人Aのいう選挙運動員が適当な人物であるかどうかにつき一抹の不安もないではなかつたので、b町の出身でありa村に養子に来た関係にある被告人Cに聞けば、右の点がはつきりするのではないかと考え、被告人Aの指示する人物について相談したこと、被告人Cは「そのうち三名の者しか知らぬが、Aのいうことだから間違いないだろう。金を出した方がよいのではないか。」と答え、金を出すことになつたこと、そこで被告人Bは、選挙告示前ではあるが、被告人Aが指示する前記八名の外、他の情報によりb町内でFのため選挙運動をしてくれると考えられる人々に金を送ろうと考えたこと、同月二四日、被告人Bは後援会事務所でもあるa村内F宅において、同じく選挙運動の下働きをしているSに対し、前記八名の外b町におけるFの運動員数名の氏名を赤色罫紙に記入したもの(以下メモという。)及び二〇〇〇円入りと三〇〇〇円入りの二種類の茶封筒計一四通位総計三万円を下らない金員を渡し、「これを被告人Cに渡し早急に配るようにいえ。」と命じたこと、Sは同日 に記入したもの(以下メモという。)及び二〇〇〇円入りと三〇〇〇円入りの二種類の茶封筒計一四通位総計三万円を下らない金員を渡し、「これを被告人Cに渡し早急に配るようにいえ。」と命じたこと、Sは同日直ちに前記R旅館に赴き、連絡事務所に詰めている被告人Cに会つて、被告人Bから託された右メモと金員入り茶封筒を手渡したこと、被告人Cが受取つたメモには、前記八名の外、T、U、V、W、X、Y、Z運送の記載があつたこと、もつとも他はボールペンで記載してあるのに、Z運送だけは最後に普通のペンで記載し、書添えた形になつていたこと、なお、メモには二〇〇〇円を供与する人と三〇〇〇円を供与する人を区別する印がついており、茶封筒にもこれに符合する印がついていたこと、被告人Cに右交付があつた直後、被告人Bは右R旅館において被告人Cと直接会う機会があつたので、至急に右封筒を配るよう指示したこと、被告人Cは告示前である同月二五日、原判示第二(三)の如く前記Hに六〇〇〇円を供与したこと、同月二六日同(四)の如く前記Tに三〇〇〇円を供与したこと、又その際Tに対し、「Uにも同趣旨の金を供与するのだが家は何処であろうか。」と尋ねると、同人は「それは遠いから自分が渡してやろう。」と答え、そこで宮崎分を原判示第二(五)の如く交付したこと、もつともTは宮崎分を同人に交付せず、後に自己が費消したこと。同月二五日有限会社Z運送を訪ねたところ、社長甲某は、地元出身の乙某を右選挙に応援すると語つたので、金員を提供する話までしないで終つたこと、そこで被告人Cとしては、Z運送分二〇〇〇円を持帰るよりは、b町においてFのため選挙運動をしてくれる他の人に与えた方がよいと考え、平素より自己が自動車の修理を頼んでいる有限会社丙修理工場を訪ね、丁に対し、原判示第二(二)の如く選挙運動を依頼し、現金二 りは、b町においてFのため選挙運動をしてくれる他の人に与えた方がよいと考え、平素より自己が自動車の修理を頼んでいる有限会社丙修理工場を訪ね、丁に対し、原判示第二(二)の如く選挙運動を依頼し、現金二〇〇〇円を供与しようとしたが受領を拒まれ申込に終つたこと、被告人Cにおいては、右メモに記載された者のうち家を探しあてることができないものがあつたため、被告人Aに聞けばこれが判るだろうと考え、同月二六日被告人A居宅を訪ねたこと、被告人Aは「それではK、M、N、O、W、Aは自分の方で配つてやろう。」と答え、メモと照合して封筒に直接氏名を書き、原判示第二の(六)第三の如く右六通の封筒を受取つたこと、被告人Aは右の如くこれを配る積りで受取つたが、後にこれを思い止まり、右金員は同人の手中に止つて選挙運動打合せのための酒料理代等に費消されたこと、右封筒には計一万三〇〇〇円入つていたこと、被告人Cは、Z運送分及び三上分を結局本人に配布しないて終り、又被告人Bに返すこともせず、後日これを小遣銭として自ら費消したこと、その金額は計五〇〇〇円であること、以上の事実が認められる。 先ず控訴趣意第一点につき判断する。 右の如く授受された金員は、すべて選挙運動の報酬をすくなくとも不可分的に含むものであるということができる。被告人Aを除き授受した当事者は、各検察官に対する供述調書において、それが選挙運動の報酬の趣旨を含むものであることを明瞭に述べるところであるし、前記認定にかかる周囲の事情からいつても、それが選挙運動の報酬を不可分的に含むものであつたことが認められる。被告人Aが検察官調書において報酬であるというのは、公職選挙法第一九七条の二にいう報酬の趣旨であると考えられるところ、被告人Bに金員供与方を申入れた際取り交わされた言葉やその前後の事情からいつて 。被告人Aが検察官調書において報酬であるというのは、公職選挙法第一九七条の二にいう報酬の趣旨であると考えられるところ、被告人Bに金員供与方を申入れた際取り交わされた言葉やその前後の事情からいつて、被告人Aも又、選挙運動の報酬の趣旨を含む金を授受するものと考えていたと認めるのが相当である。各被告人及び受供与者等は原審及び当審公判廷において、右は実費の前渡しであつて、検察官に対し選挙運動の報酬であると供述したのは、取調が初めての経験である上に、捜査官の態度が詰問的で心理的圧迫を受けたためであるとか、身柄を拘束されている他の関係人の身の上を案じ、かようにいう方が釈放に有利であると考えたためである等と供述する。 検察官調書の形式は整つており、供述内容も殊更不自然とはみられず、やむを得ず虚偽の事実を語つたとする理由も極めて合理性の乏しいものである上に、本件全証拠を精査しても、検察官において供述の任意性を疑わしめるような取調態度をしたとは認め得ないので、右公判廷における供述は措信し得ないということがてきる。 以上の次第で、授受金員が選挙運動の報酬であると認定した原判決にはこの点に事実の誤認はない。論旨は理由がない。 次に控訴趣意第二点について判断する。 前記認定事実、要約すると、供与資金が被告人Bから被告人Cに渡され、被告人Cの手中にその一部は残つたけれども、同人の手で、一部はH、Tに供与され、一部はTに交付され、一部は丁に供与の申込がなされ、一部は更に被告人Aに渡されたとの事実(原判決でいうと、第二(一)を除く全事実)は、全体として被告人三名による供与の共謀の範囲内のものであるということがてきる。若干敷衍すると次のとおりである。 被告人Aは自己の勢力下にある八名のみへの買収資金供与を考えていたものであるから、その余の受供与者については共謀の範 の共謀の範囲内のものであるということがてきる。若干敷衍すると次のとおりである。 被告人Aは自己の勢力下にある八名のみへの買収資金供与を考えていたものであるから、その余の受供与者については共謀の範囲外であるとか、メモに記載された人物に供与しようとの趣旨であるから受供与者は限定的のものであり、被告人Cの一存による丙修理工場丁への供与申込みは、他の被告人の共謀の範囲外であるとの論があるかもしれない。 先ず被告人B同A間の共謀の内容を考えるに、被告人Aが同Bに対しb町地区の選挙運動者に金を送れといつたのは、直接的には自己の勢力下にある者を指示していつたのではあるが(両被告人は原審及び当審公判廷において、両被告人間においては当初より一四名位全員に金員を供与しようとの合意があつたと供述するが、右は供与の共謀者間の金員授受は何等の罪を構成しないとの知識を得て、三者間に緊密な共謀があつたことを殊更強調するため、事実を曲げて供述するに至つたものであることが、各証拠を総合して認定できる。Tの父はb町における後援会発起人の一人である前記Pであり、同人はb町におけるFの選挙運動において、被告人Aとは別派をなす有力者であつて、被告人Aが直接的には自己の勢力下にある者への供与について話合つている際、右T及び同派に属するXを格別指示するとは考えられない。)、地元に対立候補もあることであるし、その地区におけるその余のF派選挙運動者に金を送る必要もあることは、協議の内容に入つているとみることができる。それ故にこそ被告人Aは、後に自己が指示しないW、Xへの封筒の配布まで引受けたのである。次に被告人B同C間の話合いも、メモに記載された人物に配布することが一応予定されてはいたけれども、b町地区の選挙運動者であつても、その余の者には配布しないとの趣旨は存しなかつたとみるべ けたのである。次に被告人B同C間の話合いも、メモに記載された人物に配布することが一応予定されてはいたけれども、b町地区の選挙運動者であつても、その余の者には配布しないとの趣旨は存しなかつたとみるべきである。被告人Bはb町地区における人物判定につき被告人Cに相談している位であるから、被告人Cを信用し、若干の人物の変更があつても、これを許すところであつたということができる(被告人Aの手によつて供与させるため、同人に交付することも、もとより許されている。)。なお、三者直接話合いがなされなくとも、順次共謀理論を援用することにより、全体としての共謀の成立を認め得る。 原判決は、交付、受交付者の間に単に交付の目的について意思の連絡があるに過ぎない場合、あるいは両者が供与罪につき教唆的又は幇助的結合をしているに止まる時は、供与罪の共同正犯が成立しない趣旨を論じている。供与の共謀者間の金員授受が、何等の罪を構成しないとの不合理な考えを是正するため採られた見解で、傾聴すべきものを含んでいるが、にわかに賛成できない。我が判例の共謀共同正犯理論による限り、供与の手段、金額、相手方等について具体的に緊密な協議がなくとも、両者の結合にやや教唆的幇助的色彩があつても、共同正犯の成立を認め得る。もとより心理的関与が持つ役割の程度、自己の犯罪を実行する意思等の点から、共同正犯の成立を認め得ない場合は論外として、供与罪についてのみ、共同正犯の成立する範囲を限定的に解しなければならぬとする根拠は何処にもない。被告人三名は選挙運動において略々同格であつて、前記の如き意思の連絡があるのであるから、共同正犯の成立を認めるに十分である。 弁護人は供与罪の共謀者間の金銭授受は、供与実行のための準備行為であるから、何等の罪も構成せず、原判示第一、第二(六)第三は無罪であるという。 るのであるから、共同正犯の成立を認めるに十分である。 弁護人は供与罪の共謀者間の金銭授受は、供与実行のための準備行為であるから、何等の罪も構成せず、原判示第一、第二(六)第三は無罪であるという。 <要旨第一>然しながら、それが供与の共謀者間の金銭授受であつても、交付即ち、「他の選挙運動者又は選挙人に供与</要旨第一>するため、寄託の目的を以てする金銭等の所持の移転」という構成要件に該当する限り(露見を虞れての保管替等単なる所持移転は、「供与するため」ということがないので交付ではない。供与への発展方向を示す所持移転が交付である。)、交付罪が成立することに支障はない。昭和九年法律第四九号により交付罪受交付罪が新設された趣旨は、現実に買収が行なわれる一歩手前において、換言すれば、買収をその準備行為の段階において把え、これを罰しようとするのであるから、供与の準備行為であるの故を以て交付罪の成立を否定するのは自己矛盾である。 更に所論は、引用する判例からいつて、共同正犯は法律上同身一体の関係にあるものであるから、共謀者間の授受は金銭等が右手から左手に渡されたと同じであつて罪を構成しない、との見解を主張しているとみえる。 共謀共同正犯理論は、身体的動作としては犯罪の実行をしない者にも、他人との共謀という心理的関与に、犯罪の実行としての価値を見出し得るという考えである。即ち、犯罪実行の共同ひいては正犯としての罪責評価の論理である。その内容として共同意思主体を唱えることにより、反転して共謀者間の別の犯罪構成要件に該当する行為に付きその該当性を否定する方向へ使われなくてはならぬ論理的必然性はない。殊に交付はされたけれども供与行為の存しない段階、即ち犯罪実行行為のない段階において、共同意思主体を援用することはできない筈である。又、交付罪は前記の如く へ使われなくてはならぬ論理的必然性はない。殊に交付はされたけれども供与行為の存しない段階、即ち犯罪実行行為のない段階において、共同意思主体を援用することはできない筈である。又、交付罪は前記の如く、「他の者に供与させるため」ということが構成要件の内容となつている。構成要件の内容に、供与の共謀が予定せられるものを含んでいるのに、その供与の共謀であることを以て罪の成立を否定するのは矛盾した考え方といわざるを得ない。もしかような論が許されると、交付罪の成立する場合は皆無に近い。  以上の次第で供与の共謀者間の金銭授受であつても、交付、受交付罪が成立するに何の支障もないと考える。 <要旨第二・第三>もつとも受交付者が、交付者の意を体して供与しめるいは交付(それぞれ申込、約束を含む)したときは、</要旨第二・第三>前の交付受交付の罪は後の供与あるいは交付の準備行為として後者の罪に吸収される。交付を受けた金員等の一部が供与あるいは交付されたときは、その部分のみが後の罪に吸収され、残余は交付受交付罪として残る。 全体として吸収されるとの考えもあるが、引渡されたものが極く一部であるとき、殊に後者も交付罪であるときは、僅か一部が再交付されたことにより(時には再交付の申込がなされたに止まることもある。)始めの交付罪が全体として後者の罪に吸収されると考えるのは不合理であつて、この考えをとることはできない。 以上の次第で、被告人Bについては、原判示第一の交付の罪にかかる金員即ち三万円中、原判示第二(二)ないし(六)に該当する部分即ち計二万五〇〇〇円は、被告人Cとの共謀による供与罪等に吸収され、Cに対する交付罪は成立しない。即ち原判決は、事実を誤認し、よつて不可罰的事前行為を罰するという法令適用の誤りを犯したことになり、この誤りは原判決に影響を及ぼすので、被告 謀による供与罪等に吸収され、Cに対する交付罪は成立しない。即ち原判決は、事実を誤認し、よつて不可罰的事前行為を罰するという法令適用の誤りを犯したことになり、この誤りは原判決に影響を及ぼすので、被告人Bに関する部分は破棄を免れない。 無罪であるとの所論は採用できないけれども、右の限度で論旨は理由があることになる。 被告人Cについては、原判決は前述の如く共犯にかかるところを単独犯と認定しているが、右認定の誤りは原判決に影響を及ぼすといえない。被告人Aは全体を共謀した者であるけれども自己が交付を受けた金員は結局手許に止めたものであつて、吸収さるべき他の罪はなく、受交付罪そのものが成立する。即ち原判決にはこの点に事実の誤認はない。よつて被告人C同Aについての論旨は理由がないことに帰する。 なお職権を以て調査するに、被告人Cは受交付罪について起訴されず、したがつて有罪の認定を受けていないのであるから、その手許に残り後日費消した五〇〇〇円につき、公職選挙法第二二四条により追徴することはできないものというべく、これをなした原判決には法令適用の誤りがあり、右誤りは判決に影響を及ぼすので、被告人Cに関する部分は右の点につき到底破棄を免れない。 弁護人矢田正一の控訴趣意第三点について所論は要するに、原判示第二(一)において被告人Cが提供した酒食は、選挙運動の報酬ではないというのであるが、原判決挙示の証拠によつて、右は選挙運動の報酬であり、饗応するものも受けるものも、かように認識していた事実を認定できる。証拠として援用された検察官調書(謄本)が不当な取調べにより作成され、供述に任意性がないと疑われる事情は全くない。 弁護人矢田正一の控訴趣意第四点について所論は原判決の刑は重過ぎるというのである。然しながら、被告人A(他の被告人についての判断は により作成され、供述に任意性がないと疑われる事情は全くない。 弁護人矢田正一の控訴趣意第四点について所論は原判決の刑は重過ぎるというのである。然しながら、被告人A(他の被告人についての判断は省略)の罪責は決して軽くない。買収事犯は選挙犯罪中最も悪質なものであつて、幸い被告人Aが交付を受けた金員は現実の買収には供せられなかつたけれども本件選挙運動上における地位及び受交付金額からいつても、原判決が科する刑は相当であるということができる(起訴せられていないけれども、前叙の次第で、被告人Aは被告人B同C共謀にかかる供与の罪等について共犯の立場にある)。論旨は理由がない。 弁護人青木健治の控訴趣意について弁護人矢田正一の控訴趣意に対して説示したところを、すべてここに援用する(なお若干補足するに、Fが右選挙後、島根県選挙管理委員会に対し選挙運動費用の支出報告をした額が、法定の金額の約半額に止まるからといつて、あるいは交通不便な地における選挙運動には、交通費や宿泊費を要することが多いからといつて、本件授受金員が公職選挙法第一九七条の二所定の実費等であるとする根拠はない。実費の前渡しであるとするには、その当時使途か種目、金額等によつて具体的に予定され、なお後日それが資料によつて証明されるような方法で支給されなくてはならないが、本件ではかような事実は存しない。又かりに一部は実費前渡しの趣旨が存しても、選挙運動の報酬が不可分のものとして含まれていることは前述のとおりである。選挙の経験からいうと、告示前に選挙資金授受の実際上の必要があるからといつて、それは選挙運動に該当するのであるから、事前運動禁止の規定に触れることは否定できない。)。 よつて刑事訴訟法第三九六条に則り被告人Aの本件控訴を棄却する。又同法第三九七条第三八〇条第三八二条に則り原判 は選挙運動に該当するのであるから、事前運動禁止の規定に触れることは否定できない。)。 よつて刑事訴訟法第三九六条に則り被告人Aの本件控訴を棄却する。又同法第三九七条第三八〇条第三八二条に則り原判決中被告人B同Cに関する部分を破棄するところ検察官は訴因の予備的追加をなしたので(被告人Bについても、主たる訴因たる交付と予備的訴因たる供与は基本的事実関係において同一である。 被告人Bから被告人Cへ原判示第二(二)ないし(六)の選挙運動者等に供与させる目的で、特定の日特定の場所で特定の金員の所持移転があつたという社会的事実は同一で、ただそれを交付とみるか供与の共謀とみるかの差に過ぎない。なお、予備的訴因を採用する結果併合罪加重の規定を適用することになるが、原判決の刑より重い刑を言渡さない限り、不利益変更禁止の規定に抵触することにもならない。)、同法第四〇〇条但書により当裁判所において直ちに判決をする。 (罪となるべき事実)被告人B同Cは、昭和三八年四月一七日施行の島根県議会議員選挙に際し島根県飯石郡地区から立候補したFの選挙運動者であるが、昭和三七年一〇月末頃から、Fが同選挙に立候補する決意を持つていることを知つており、第一、共謀の上、右Fに当選を得させる目的を以て、立候補届出前である(一) 同三八年三月二五日頃、同郡b町大字ef番地有限会社丙修理工場において、選挙人丁に対し、右Fのため投票並びに投票取りまとめの選挙運動を依頼し、その報酬等として現金二、〇〇〇円の供与の申込をし(二) 前同日、同郡同町大字同g番地戊理髪店において、選挙運動者Hに対し前同様の依頼をし、その報酬等として現金六、〇〇〇円を供与し(三) 同月二六日頃、同郡同町大字h己商店附近路上において、選挙運動者Tに対し前同様の依頼をし、その報酬等として現金三、〇 動者Hに対し前同様の依頼をし、その報酬等として現金六、〇〇〇円を供与し(三) 同月二六日頃、同郡同町大字h己商店附近路上において、選挙運動者Tに対し前同様の依頼をし、その報酬等として現金三、〇〇〇円を供与し(四) 前同日、前同所において、右Tに対し選挙運動者Uに前同様の趣旨で供与することを依頼し、現金三、〇〇〇円を交付し(五) 前同日頃、同郡同町大字ei番地のj被告人A方において、同人に対し選挙運動者K外数名に前同様の趣旨で供与することを依頼し、現金一三、〇〇〇円を交付し第二、被告人Bは右Fに当選を得させる目的を以て、立候補届出前である同三八年三月二四日頃、Sを介し、同郡c町k番地R旅館内F後援会連絡事務所において、被告人Cに対し、同郡b町地区の選挙運動者に右Fのため選挙運動をする報酬等として供与することを依頼して現金五、〇〇〇円を交付し第三、被告人Cは右Fに当選を得させる目的を以て、立候補届出前である同三八年三月一六日頃、同郡b町大字lm番地庚方において、選挙人辛、同壬、同癸の三名に対し、右Fのため投票ならびに投票取りまとめの選挙運動を依頼し、その報酬として一人あたり約二四九円相当の酒食の饗応接待をなしよつてそれぞれ立候補届出前の選挙運動をしたものである。 (証拠の標目)冒頭の事実を含め全事実一、公判調書中被告人B同Cの原審公判廷における供述記載一、右被告人の当審公判廷における供述第一、二事実(全事実について)一、被告人Bの検察官に対する供述調書(昭和三八年五月一七日、同年六月一四日付)一、被告人Cの検察官に対する供述調書(同年五月二日、同月九日、同月一二日、同月一三日付)(第一(一)事実について)一、公判調書中証人丁の原審公判廷における供述記載(第一(二)事実につい 、被告人Cの検察官に対する供述調書(同年五月二日、同月九日、同月一二日、同月一三日付)(第一(一)事実について)一、公判調書中証人丁の原審公判廷における供述記載(第一(二)事実について)一、 Hの検察官に対する供述調書謄本(第一(三)(四)事実について)一、 Tの検察官に対する供述調書謄本一、公判調書中証人Tの原審公判廷における供述記載(第一(五)事実について)一、被告人Aの検察官に対する供述調書(同年六月一三日、同月一四日付)(第二事実について)一、 Sの検察官に対する供述調書(同年五月一六日、同月一八日付)第三事実一、辛、壬、癸、庚の検察官に対する供述調書謄本一、被告人Cの検察官に対する供述調書(同年五月二日付)(法律の適用)被告人B同Cの判示第一(一)(二)(三)の所為は公職選挙法第二二一条第一項第一号第二三九条第一号第一二九条罰金等臨時措置法第二条刑法第六〇条に、第一(四)(五)の所為は公職選挙法第二二一条第一項第五号、第二三九条第一号第一二九条罰金等臨時措置法第二条刑法第六〇条に、被告人Bの判示第二の所為は公職選挙法第二二一条第一項第五号、第二三九条第一号第一二九条罰金等臨時措置法第二条に、被告人Cの判示第三の所為は公職選挙法第二二一条第一項第一号、第二三九条第一号第一二九条罰金等臨時措置法第二条に各該当し、以上の供与もしくは交付の罪と事前運動の罪の点は一個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるから、刑法第五四条第一項前段第一〇条により重い前者の刑に従うべく、所定刑中懲役刑を選択するところ、以上は被告人両名にとりそれぞれ同法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文第一〇条により犯情最も重い判示第一(二)の罪の刑に法定の加重をなし、その刑期範囲内で被告人Bを 刑を選択するところ、以上は被告人両名にとりそれぞれ同法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文第一〇条により犯情最も重い判示第一(二)の罪の刑に法定の加重をなし、その刑期範囲内で被告人Bを懲役六月に、被告人Cを懲役四月に処する。而して情状刑の執行を猶予するのが相当であると認め、同法第二五条第一項により被告人両名に対しこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。原審における訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文により被告人等の負担とする。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官高橋英明裁判官竹村寿裁判官干場義秋)

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